アットウィキロゴ
恭子「なんや、京太郎? こんな時間に遊びに来るなんて」


京太郎「いや、本当なら午前中に来たかったんだけどさ、洋榎たちに捕まっちまって」


恭子「……ふーん」


京太郎「拗ねるなよ」


恭子「別に拗ねてなんかないし。コーヒー? 紅茶? どっち?」


京太郎「……んー、今はいいや」


恭子「あっそ」


京太郎「それより恭子に渡したいものがあってさ」


恭子「なんやねん」


京太郎「ほら。バレンタインのお返しだよ。今日がなんの日か忘れたのかよ」


恭子「……あー、ホワイトデーか。別にそんなん気にせんでええのに」

京太郎「いやいや、そこは俺も男だしさ。それに……恭子の彼氏なわけだし、な。しっかりやりたいよ」


恭子「……そっか。うん……そっかぁ」


京太郎「……ああ」


恭子「……ありがと」


京太郎「どういたしまして。……というわけで、手作りなんだけど、ほら」


恭子「……なんや、えらいガサツに包んであるなぁ」


京太郎「違う違う。手を抜いたんじゃなくてこれだけ特別なんだよ」


恭子「どこが?」


京太郎「これはな? こうやってすぐ取り出せるようにだな……」


恭子「は? なに自分で口にくわえっ……!?」


京太郎「…………」


恭子「……! ……っ……♡」


京太郎「……どうだった? 上手にできたつもりなんだけど」

恭子「っぷは! わかるか!? キ、キスされたら!」


京太郎「ごめんごめん。でも、まぁ、俺が好きなのは恭子だけだからさ。それをわかってほしかったんだ」


恭子「……アホ。そんなんせんでも信じてるっちゅうねん」


京太郎「そっか。じゃあ、これ残りは適当に食べておいてくれ。俺はもう帰るよ」


恭子「ま、待ちぃや!」ギュ


京太郎「恭子?」


恭子「ほ、ほら、さっきは味分からんかったし、おかんたちもおれへんし、一人やったら寂しいし……だから、その……もうちょい一緒に食べよ?」


京太郎「っっ! 恭子―!!」


恭子「あ、バカ! ここ玄かっ……あんっ♡」



………………


…………


……




「――はっ!? ゆ、夢か……」


「あー、なんであんな夢見てもうたんやろ……。もう変な気分やわ……」


「…………」チラ


「……あー……最悪や。…………さっさと着替えよ」


洋榎「海やー!!」


絹恵「海やでー!!」


京太郎「海だー!!」


恭子「嬉しいのはわかるけどちょっとは静かにしぃや……」


由子「まぁまぁ、貸切やからたまにはこんなのもいいのよー」


洋榎「ほんまにありがとうな、由子!」


京太郎「いやー、やっぱ金持ちってすごいな!」


絹恵「こんな立派な別荘と綺麗な海が使い放題やもんな!」


由子「はっはっは。こういうところで使わないと勿体ないからいいのよー」

洋榎「さっすが由子やな! じゃあ、いっちょ泳ぐでー!」


京太郎「おい、洋榎! ちゃんと準備運動してから入れ!」


洋榎「だいじょーぶ、だいじょーぶ! うちはいつでも準備万全のええ女やか―――つった!?」


絹恵「お姉ちゃーーーん!?」


京太郎「言わんこっちゃないー!? うおぉぉぉぉ!!」


恭子「はぁ……心配やわぁ」


漫「あ、末原先輩! あっちでビーチバレーしませんか?」


郁乃(保護者)「あ~。それなら私も混ぜて~」


恭子「……まぁ、ええですよ。じゃあ、あと二人、誰にします?」

漫「えっ! 先輩やらないんですか!?」


恭子「ああ、うん。うち、ちょっと疲れたから休んでから混ざらせてもらうわ」


洋榎「そういうことなら愛宕洋榎! 飛び入り参戦や!」


漫「ええっ!? さっき、あしつってたのに大丈夫なんですか!?」


洋榎「心配ない! あれは京太郎おびき寄せるための演技やからな!」


絹恵「お姉ちゃん! 後ろ! 京にぃ、めっちゃ怒ってる!!」


京太郎「はぁ……殺す。あとで……ぜえぜえ……絶対にしばきたおす……」


漫「えーと、じゃあ、須賀先輩も無理そうだから……絹恵ちゃんもやろ!」


絹恵「うん、別に構わへんで! なら、姉妹と漫ちゃん&赤阪先生チームでいい?」

漫「問題ないです! じゃあ、いきますよー。それ!」ボイン


絹恵「ひゃっ!? いきなりはずるいわ、漫ちゃん!」プルン


郁乃「次はうちやな~。それ~」プルル


洋榎「よっしゃ、任せろ!!」ペターン


漫「俊敏な動き! だけど、これなら!」ブルン


絹恵「ふっふーん! 元キーパーなめたらあかんで!」プルプルッ


郁乃「きゃあ~! 絹ちゃん、怖い~」ポヨン


洋榎「こんなヘロヘロボールはこうや!!」ペターン


漫「ああっ! 届かへんー!」バインッ


洋榎「…………負けてへん! 試合には勝ってる!」


絹恵「お姉ちゃん、ナイスアタックやでー!! ハイタッーチ!!」ポヨヨン


洋榎「……絹も敵や!」


絹恵「なんで!?」

恭子「……あー、よかった。あれに参加しなくて」


由子「……全く同意なのよー」


京太郎「……あっ」


恭子「……京太郎? 何に気づいたんか、ちょっとじっくり話そうや? なぁ?」


由子「大丈夫。悪いようにはしないのよー?」


京太郎「ひぃっ!?」



膝枕。それはこの世に存在する最強の寝具の一つ。


男にとっては夢の一つといっても過言でもない。


仕事帰り。甘やかされて、膝枕されて、寝たい。そんな妄想をしたはずだ。


俺だってするもん。


可愛い彼女が頭を撫でながら、優しい言葉をかけてくれて、癒してくれるんだ。


なんか……こう、さ。もう最高じゃん?

京太郎「い、いいのか? そう……簡単にしてもいいものじゃないんじゃ」


竜華「ええの、ええの。うちと京太郎君はもう他人じゃないやろ?」


京太郎「……いいんだな?」


竜華「うん。今は男女間の友情も成立するんやで。おいでおいで」


京太郎「じゃ、じゃあ遠慮なく……」


ゴクリとつばを飲み込んだ。


普段、園城寺が寝ているのを見ていて気持ちよさそうだとうらやましく思っていた。


それをついにこの手中に収められるのか。


考えるな、感じろ。そっと、そっとそこに頭を乗せればそれだけで――。


ぱふっ。

京太郎「はぅ」


はっと口を押える。な、なんだ、今の声は!?


思わず体を起き上がらせてしまう。


経験したことのない気持ちよさに変になってしまった。


竜華がクスクスと笑っている。苦笑いをして、もう一度失礼する。


今度もゆっくりと傾けていき、膝にダイブする。


京太郎「――っ」


至福。


そう表現するのが正しい。


頭を置いた瞬間、眠ってしまいそうになるような安らぎを得てしまった俺は快眠レベルに達する。


眠りそうになったのを手の皮をつねることで我慢する。

竜華「どー? 気持ちいい?」


京太郎「……こうなんていうか、やべえよ。とりあえず、なんていうかすごく気持ちいい」


竜華「そ、そう? 怜も褒めてくれるんやけど、京太郎君も気に入ってくれて嬉しいわ」


頭を預けると一瞬、吸い込まれるような感覚に陥り、すでにフィットする。


適度な肉つきと張り。若さあふれる健康的な太ももがあるからこそ。


そして、熟練度は全く持って反する。


例えるなら実家のような安心感。心から安心できるのだ。


包み込むような優しさが確かにあった。

京太郎「……ふわぁ」


竜華「大きなあくびやなぁ」


京太郎「それくらい気持ちいいってことだよ」


竜華「ふふっ。このまま寝てもええんやで?」


竜華はいたずらするような笑みを向けてくる。


彼女が目線を合わせようとすると、綺麗な黒髪がかすかに触れてこそばゆい。


なにより眠気が吹き飛ぶ衝撃があった。


京太郎「(お、おもち……! 圧倒的おもち……!!)」

自然に前かがみになったことで彼女の持つ絶対的饅頭が近づくわけだ。


もうやばい。だんだん近づいてきてるみたいで迫力がすごっ……んん!?


な、なんだ、これ!? 急に視界が暗くっていうか顔全体に柔らかな感触が!?


頭も顔もふにふにで包まれている!?


竜華「あっ、京太郎君。しゃべったらあかんってー」


棒読み! 見事な棒読み!


も、もしかしなくてもこれはおもちっ!? 


俺の顔に押し付けられているのはおもちなのか!?


竜華「(……京太郎君、いつもこれ見てるもんな? つまり、気になるってことやろ? なら、うちの武器として使わなあかんで!)」


京太郎「ふ、ふがががっ!?」


竜華「んっ……気にせんでええねんで? 好きなだけ楽しんでくれたらええんや。うちの膝枕」

膝枕だけじゃないんですがっ! 


もういろいろとすごいことに……あっ。


……なんか……その、固くなってる部分があるような……。


こ、これはもしかしなくても……あ、あれなんだろうか?


竜華「(あっ。京太郎君の息が当たってなんかうちも……変な気分に……)」


……やばい。意識したらさらに呼吸が苦しく……。ていうか、俺の一部分も固くなって……。


竜華「……き、京太郎君っ」


甘い声。息がちょっとずつ荒くなっている。もう正常な判断ができなくなってきた……。


京太郎「り、竜華……」


怜「あー! 京ちゃん、なにやってんの!?」


京・竜「「っ!?」」


跳ね上がるように俺達は咄嗟に離れた。


さっきまで飯を食べるのに必死だった園城寺が竜華の膝枕を奪おうとこっちにやってきた。

怜「……二人とも顔赤いけど何してたん?」


竜華「な、なにって膝枕やで!?」


京太郎「そうそう! 膝枕膝枕!」


怜「……のわりには、やたら距離が近かったような……」


竜華「あ、あれやから! えっと、そのほら! 京太郎君の髪の毛に芋けんぴがついてたのをうちが取ってあげたんや!」


怜「……芋けんぴ?」


京太郎「違う違う! 目にゴミがついてたんだ! そんなことよりどうしたんだ、園城寺! もう食い終わったのか!?」


怜「はっ!? ちゃうで! 竜華―。うちも膝枕してーやー」


竜華「う、うん! いくらでもしたるからおいでおいで!」


怜「ありがとう。それじゃ、失礼するわ」


そう言って怜は竜華の左ひざに。

怜「ほら、京ちゃんもこっち使いーや」


京太郎「園城寺が決めるのか……」


怜「竜華の膝枕はうちのものやからな! しゃーないから京ちゃんにも分けてあげるわ」


京太郎「なんだそれ……」


竜華「いらへんの?」


京太郎「いります、ごめんなさい!」


俺も再度、頭をその至宝へ。


……ふぅ。


俺、もう一生このままでいいや。

女の子に膝枕ってどうやったらしてもらえるんですかね……


あと、ほんのちょっとだけ過去編する


恭子「よっしゃ、やったるでー!」


そう意気込んで、うちが入学したのは地元でも有名な強豪・姫松高校やった。


中学の進路懇談で迷っている時、先生のアドバイスで大好きやった麻雀を中心に考えることにした。


そうなれば、いっそのこと……と思い立って姫松を受験することにしたのだ。


姫松高校と言えば、過去に何度もインターハイ出場を決めている名門中の名門。


正直言うて、うちの実力が通用するかどうかはわからへん。


でも、それならやれることはやってみたいんや。

洋榎「おーい、恭子―。さっそく行ってみよーや」


幸先のいいことに同じクラスに麻雀部志望の友達もできた。


愛宕洋榎。聞けば、あの愛宕プロの娘さんらしい。


流石、姫松。一年でもレベルが高い。


恭子「あ、待ってーな、洋榎!」


私は洋榎とお目当ての麻雀部室へと向かう。


新入部員歓迎! と書かれた看板とビシっとポーズを決めたスーツ姿の女性のパネルが立てかけてあり、明るい装飾が施されていた。

恭子「うわー、すごい人数やなー」


洋榎「今からこんな並ぶんかいな……」


形成されているのは長蛇の列。男女入り交ざって、もう廊下の半分ほどにまで達している。


だけど、洋榎は案があるのか、ニヤリと笑ってみせる。


洋榎「大丈夫や、恭子。うちには作戦がある。それもこれを省くことのできる方法がな」


恭子「な、なんや? そんな方法あんのか?」


洋榎「ああ。うちには一人、幼馴染がおってな? そいつが並んでるはずなんや」


??「へぇ。その幼馴染ってのは誰のことか教えてくれよ?」


洋榎「須賀京太郎っていう便利な男が――え?」


洋榎は驚いたのか、後ろを振り向くやいなや面白いように固まった。

何故なら問うたのはうちじゃないから。


タレ目少女につられる形で、くるりと顔を向けた。


恭子「んー?」


見えたのは黒の学ランに鈍い色の金属ボタン。


視線を上へとずらしていくと整った顔をした金髪がいた。


眉をひそめて怒っているのがよくわかる。


京太郎「よぉ、洋榎。今朝ぶりだな」


洋榎「ちゃ、ちゃうねん! 京太郎のことは大切な幼馴染やて恭子に紹介しようや思うてやな……」


京太郎「言い訳はそれだけか?」


洋榎「うっ……うぅ……かかってこいやぁぁ!」


開き直った洋榎は腕をぐるぐると回して反撃するが全く届いてない。


兄妹のじゃれ合いみたいで微笑ましいくらいや。


……しかし、注目されすぎた。周囲から好奇的な視線が集まってきてる。

恭子「よ、洋榎! そ、そのへんにしてさっさと並ぶで!」


京太郎「俺もそれに賛成だな。ほら、さっさといくぞー」


洋榎「あっ、こら離せや! 抱きかかえんな! いてかますで!」


京太郎「それはこっちのセリフだ。てめえ、あとで覚えておけよ」


洋榎「はっ! 精々負かしたるから吠えとけ。ほら、さっさと運べや。恭子もいくで」


ええ……。こんな目立つのについていくんか……。


といっても、このままじゃ麻雀部に入れへんし……。


恭子「……しゃ-ないか」


確かに騒がしいけど退屈はしなそうやし……三年間、楽しくなりそうやな。







絹ちゃん小ネタ

=================



……どうやろ、京にぃ?


最近、髪伸ばしたんやけど……似合ってるかな?


……ほんと? よかったぁ。


うん、ちょっと気分転換でもしようと思うてな?


似合ってるて言ってくれて嬉しいわぁ。


明日からポニーテールにでもしてこよーっと

え? なんの本読んでるかって?


ちょっと漫才勉強しよう思うてな?


関西人といえばお笑いやし、最近ちょっと興味でてきてん。


もちろん、麻雀も手は抜かへんから安心してな?


それ……よかったら今日も教えてほしいなーって。


うんうん、京にぃの家で!


ほんまに!? なら、うち楽しみにしてる!


学校終わったらすぐ行くな?





――本当に楽しみや






どうどう? 京にぃ?


眼鏡じゃないのも新鮮やろ?


コンタクトに変えてみたんや。ほら、流行にのってな?


それで明日、買い物に行くつもりやねんけど……ついて来てくれへん?


……えっ、お姉ちゃんと買い物?


あ、そうなんか。なら仕方ないかぁ。








仕方……ないか…………(ギリ)

ん? お姉ちゃん?


知らんよ。うちも。あんな女のことはどうでもええやん。


ほら、今日も京にぃのうちに勉強しにいくな? 


……え? なんであかんの?


洋榎はどこだって?


さぁ? どこやろな?


……なぁ、京にぃ。


うち、京にぃの好みの女子になったやろ? 


それに洋榎よりうちの方が胸も大きいし、料理もするし、何より京にぃのことが大好きやから。


……だから、ちょっとだけ静かにしててな?


大丈夫、大丈夫。








――これからは二人でいーっぱい、楽しも?







姫松高校麻雀部は土日も夕方五時まで麻雀練習がある。その分、祝日は基本的に休みだ。


ゴールデンウィークだから学校も部活も休みー。


存分に羽を伸ばして、日帰りで旅行に行ってー、幼馴染も連れて行ってやるかーと計画していたところに無慈悲な教科担任からの連絡。


休日担当だったことを伝え忘れていたらしく、いきなり呼び出され登校。


ひどい。もう……うちのせっかくの休みがー!


「やっとお昼や~」


他の先生方は昼食を食べに外へ行った。


うちもその流れに乗りたかったけど、一人は残っていなければならず一番若いうちはお留守番。


しゃーない。うちは若いから。若手やから。


それで今朝は急いだせいで弁当も持ってきていない。準備もできてない。

「う~、お昼抜くんもな~」


足をパタパタ。手をバタバタ。書類はバサバサ。


拾うのも面倒くさい……。


そんな時、特定の相手からだと、すぐにわかる着信音が鳴った。


――郁乃お姉ちゃん! 電話だよ!


「は~い! 郁乃お姉ちゃんだよ~! きょーたろー君、助けて~!」


『……なに言ってんだ、郁乃姉さん』


電話の相手は愛しの男の子、きょーたろー君。


可愛い顔立ちから立派な男前になった年の離れた幼馴染。


そして将来のお婿さん。


きゃっ。

同級生やプロ時代の友人はみんな今期に差し掛かり、頭を悩ませている。


だけど、うちには小さい頃から手塩にかけて育ててきた有望物件がいる。


もちろん、下心なしに好きやし、アイシテル。


彼が卒業したら即刻、籍を入れるレベル。


まだちゃんと話してはないけど、きょーたろー君やったら受け入れてくれるやろ~。

『おーい、姉さん?』


「あ~、ごめんな~。何のようやろ?」


『何って……今日、郁乃姉さんが予定空けとけって言ったんだろ? それなのに連絡もないからさ』


「あ」


『ちょっと待て。あ、ってなんだ。あ、って』


「きょーたろー君~……」


『なんだよ』


「ごみ~ん、忘れてた~」


『ええっ!?』


電話越しでも驚いているのがよくわかる。怒っているのもよくわかった。

「ごめんな、きょーたろー君。本当は今日、一緒に旅行連れていくつもりやってんけど急に仕事が入ってもうて……」


『……なんだ、それならそうと言えばいいのに』


「サプライズのつもりやったから。そこで~お願いがあるんやけど聞いてくれへん?」


『いや、俺も疲れてるから休みたいんだけど』


「また一緒にお風呂入ってあげるで~?」


『いらねぇよ! どうぜ弁当忘れたとかその辺りだろ? 郁乃姉さんはそういうところ抜けてるからなー』


「そんなことないし~」


『じゃあ、行かなくていいよな?』


「手作りがええな~」


『素直になったら開き直るのやめろよ……』


「一時間以内でお願いな~」


『はいはい』


「愛もいっぱい詰めといてや~」


『はいはい。マジlove1000%で作っとくから。ちょっとだけ我慢していてくれよ』


「うん~! 愛してるよ、きょーたろー君~!」


――と、言う途中で切られた。

むぅ~、きょーたろー君はイケズやわ~。


でも、照れちゃって可愛いんやから~。


ちらっと時計を見る。


……今からとなると30分はかかるかな~。


「……先に仕事終わらしておこうかな?」


ご飯は食べさせてもらいたいし。それを考えればさっさと済ませてしまおう。


うん、ちょっとだけやる気出た。


カタカタとキーボードを叩く音が職員室に響く。


自分でも驚くほどに集中していた。


ご褒美を目の前にぶら下げられたら人間やれるもんやな~。

「ん~……こんなもんかな?」


グっと凝り固まった肩をほぐして、背もたれに体重を預ける。


そろそろかな~と思って時計を見ると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


「すいません。二年の須賀京太郎です」


グッドタイミング!


待ち遠しい人物の声がしたので俊敏な動きでドアまで到達すると、開けると同時に彼の頭を胸に沈みこませた。


「むっ!?」


「あ~ん、もうきょーたろー君。待ったわ~! お姉ちゃんお腹ペコペコなんよ~」


「むむぐっ! んんっ!」


逃げようとするけどガッチリ頭を押さえて離さない。


きょーたろー成分が最近、足りひんかったし、ここで補充しておくんや~。


うるさいおっちゃんたちもおらんし~。

「きょーたろー君~。ええ匂いやわ~」


「――! ――っ!」


「あっ、そんな息荒くしたらあかんて~。そういうのはお家に帰ってから~」


とか言いつつ、耳を甘噛みする。


はむはむ。


体は素直だ。


力が抜けていくのが手に取るようにわかる。


そのまま抱きしめて、職員室に連れ込んで昼食を一緒に取ろうとする――けど、腕に力を込めて無理やり引きはがされた。

「っぷはっ! な、何してんだよ、郁乃姉さん!」


「なにって――愛の確認?」


「いい年してやめろ! そういうのを外で大きく言うのはやめてくれ! 恥ずかしくて死んでしまうから!」


「別にええやん。うちら愛し合ってるんやし~」


「ないって!」


「うりうり~」


「だから、すぐに抱き着こうとするのやめろ!」


きょーたろー君の制止も無視して、たくましい腕に絡める。


そこで気づいた。


きょーたろー君の他に視線があることに。

恭子「な、な、なっ」


洋榎「胸なんか、やっぱり胸なんか……」


由子「ひ、ひゃー」


絹恵「グヌヌヌヌ……!!」


きょーたろー君と同じ麻雀部の仲良い面子。


顔を真っ赤にさせたり、ブツブツ呪詛吐いてたり、指の隙間からチラチラと覗いてたり、歯ぎしりさせたり。


四人それぞれの反応を見て、それが面白くて、んーと間延びした声を出すと。


うちはニィといたずらな笑みを浮かべた。

「なー、みんなー。見といてなー?」


「へっ」


わざと注目させ、グイっと引き寄せて、きょーたろー君の頬に軽く唇を当てた。


京太郎「――っ!?」


恭子「何しとるんですかー!?」


洋榎「何してんじゃワレェ!!」


絹恵「許さん! 許さへんで赤阪先生!」


由子「あー! そこは私の方が先にやってたのよー!?」


恭子「はぁっ!? ちょっと待て、由子、そんなん聞いてへんで!?」


絹恵「真瀬先輩も敵!? 敵なんか!?」


洋榎「やっぱりおっぱいやないか! 胸がすべてを物語ってんのか……!?」


恭子「と、とにかく! 赤阪先生は京太郎を返してくださいー!!」


郁乃「きゃぁっ」


京太郎「うおおおお!?」


全員がなだれ込むようにして飛び込んでくる。


……あー、もう。


面白いわぁ、この子たち。





SHI・GO・TO  作詞:◆KBU2gmJaeI



本音を口にしたら クビになってしまいそうで

臆病な自分を ムリに追い出してみる

仕事はまだ増えていって でも今はそれがリアル

残業すべて



明日 家にいてるワケじゃない

増長した疲れにちゃんと 気づいてあげなきゃ



無くなって “お願い” ぎゅっと瞼を閉じるよ

希望(ゆめ)は希望(ゆめ)だと 自覚始めてる

解き放つ怒りと 書類(白紙)がかさなる場所

朝に 提出するから

朝日 感じてFly 日をまたぐ





なんもかんも疲れが悪い

今日は気づいたらお昼まで寝てた

明日、更新する。末原過去編は出会って、入部するとこまで出来た

だから、本日と同じ時間帯に更新するのでよろしくなのよー

……ああ。

明日は月曜日か。











恭子「はぁー、すごいなぁ」


やっとこさ回ってきた順番。


部室の中に入るとたくさんの麻雀卓が迎えてくれた。


先輩たちの動作の音があちこちから響き渡る。誰もが集中している証拠だ。


中学でのなぁなぁの雰囲気もなく、真剣に麻雀に青春を打ち込んでいるのがよくわかる。


ええなぁ、こういうの! テンション上がるわ!


善野監督「見学に来てくれてありがとう。私が監督を務めている善野一美だ。さっそく今日の説明を始めよう」


そう言ってさっきのパネルの人はレクリエーションの概要を話し出す。


うちらは四人一組に分けられ、半荘を好きなように打っていいことになった。


ただし、各自で対局ごとに反省会。その後、またその点に気を付けて打ち続ける。


これを3セットくらいしたら今日の活動は終わり。


対局ごとの点数を用紙に記入して提出。それで今日の活動は終わり。

監督「はい。それでは一年生。始めてみようか」


姫松の善野一美監督がパンと手を叩くとそれぞれがゲームを開始する。


もちろん、うちも例に違わない。


幸い(?)なことに洋榎たちと離れることなく、対戦することになった。


卓を囲むのは洋榎に幼馴染の須賀君、あと金髪クルクル少女。


洋榎「愛宕洋榎や。洋榎でええで。よろしゅうな~」


京太郎「須賀京太郎だ。俺も京太郎でいいぞ。よろしく」


恭子「末原恭子です。お願いします」


由子「真瀬由子なのよー。由子でどうぞなのよー」

あいさつをすませて親決めをすると、山から牌を取る。


よっし。まずはうちの実力がどれくらい通用するのか……試してみようか。


恭子「ポンっ」


早速吐き出された發を鳴いて手繰り寄せる。


せっかくの起家や。全員の実力を知るためにも連荘狙いでいってみようか。


ドラも二つあることやしな。


頑張るでー!!



全員『お疲れさまでしたー』


洋榎「おつかれさんさんさんころり~」


京太郎「なんだそれ」


洋榎「今考えた」


恭子「おもろないで」


洋榎「こういうのは勢いが大事やねんで」


京太郎「勢いを加味しても面白くないぞ」


由子「二人に同意なのよー」


洋榎「そんなんツッコミちゃう! ただの毒や!」


最初は硬さがあったものの、何度もぶつかり合い、議論したことで徐々に笑いも多くなってきた。


こうやって冗談を交えれるようにもなってる。


うん、雰囲気もええ感じやないか。

真瀬さんは結構毒舌っぽい。


あと語尾を間延びさせる癖があるみたいやな。


須賀君は場を読んでボケもツッコミも両方こなすオールラウンドプレーヤー。


特に洋榎との掛け合いは長年付き合ってるだけあると思った。


京太郎「まぁ、これで最後だし、対論始めようか」


須賀君が切り出すと、それぞれが真面目に対局を振り返る。


真瀬さんは多分うちと同じタイプのプレイヤー。


デジタル派で、オりるときはオりて決して無理はしない。


でも、鳴いて速攻を仕掛ける時もある。


洋榎はやはりプロを親に持つだけあってかかなり感性が鋭い。


それに聞けば麻雀特待生らしい。言動はかなりあれやけど実力は確かってことはよくわかった。


そんで須賀君は……そのめちゃくちゃ弱い。


正直言うて、なんで姫松に来たんやろうって思うくらいに。


……でも、一生懸命なことはわかったし、好感は持てた。

毎回ノート取ってる。


ちらっと見たけど、びっしり埋まってた。


今回だけじゃない。過去の対局も全部。


それに端がボロボロで取れかけているのは使い込んでいる証拠や。


麻雀がほんまに好きなんやなということはわかった。

京太郎「ほうほう。なるほどなるほど」


由子「……本当にわかってるのー?」


京太郎「おう。これでも何度も打ってるからな?」


洋榎「その割には弱いけどな」


京太郎「洋榎んちがおかしいんだよ!」


洋榎「でも、中学までハンドボールやってたならこんなもんやて。まだまだ伸びしろあるってことで頑張りや。…………旦那が弱いのは嫌やからな(ボソ)」


京太郎「任せろ! 後半、よく聞こえなかったけど!」


由子「アホ太郎やから仕方ないのよー」


京太郎「きついこと言ってくれるな、由子は……」


由子「京太郎のことを思ってなのよー」


京太郎「ほいほい、感謝感謝です」


……えらい気さくな感じで、仲良くなってるなぁ。


……あれ? うちだけ置いてかれてる?

恭子「す、須賀君!」


京太郎「うおっ!? どうした、恭子?」


恭子「恭子って呼ばんといて!」


京太郎「お、おう。なんかすまん」


恭子「あ、いや、そうじゃなくて……」


なんでや!


そうちゃうやろ! 


つい唐突な名前呼びに反応してもうて、あんなこと言うてもうた……。


なんで空気を読めなかったんや……。三人とも名前呼びOKやから、そらうちも問題ないて思うわ。


くっそ、人付き合いって難しい……。


……うち、なんかコミュ障みたいやん。


途切れる会話。


だけど、洋榎がすぐに継いでくれたおかげで気まずい雰囲気にはならんかった。


感謝感謝やで、ほんまに。

洋榎「あ、京太郎。うち、今日はなんや特待生制度とかなんとかで監督と話があるから先に帰っといて」


京太郎「おー、わかった。待っておかなくて平気か?」


洋榎「へーきへーき。うちを誰やと思ってるんや? 愛宕の洋榎やで?」


ドンと薄い胸を叩いた洋榎はドヤ顔で答えた。


洋榎「おかんが迎えに来るに決まってるやろ!!」


京太郎「ださっ!?」


由子「あそこまで言っといてまさかの親頼りなのよー」


洋榎「ピチピチで男をメロメロにしてしまううちを一人で出歩かせるわけにはいかんのやと。

   そういうわけで、安心して帰りや」


恭子「ピチピチでメロメロ……ねぇ」


京太郎「ロリコンしか釣れないんじゃないか?」


洋榎「やかましい! お前は一人寂しく帰れや!」


京太郎「わかったよ。ー―ということなので、由子と末原。一緒に帰らないか?」


恭子「えっ、えっ!?」


由子「別に構わないのよー」


真瀬さんは何も考えてはいないんじゃないかと考えてしまう。


どうやったら出会って数時間の男子と帰ることに賛成出来るのか。


普通はもうちょっと警戒するもんちゃうの? 


いくら洋榎の幼馴染とはいえ、その洋榎とも今日知り合ったばっかりやし……。


うーん…………。

恭子「……じゃあ、うちもお邪魔しようかな」


このままいったらなんかうちだけ置いてけぼりにされてしまいそうやし……そんなんメゲルわ。


それに二人とも麻雀についていっぱい語りたいのはほんまやからな。


疑いすぎたら始まるもんも始まらへんわ。


京太郎「なら、三人だな。どうだ、洋榎? うらやましいか?」


洋榎「ぜ、ぜぜぜ全然そんなことないし?」


由子「私、帰りに美味しい紅茶出すところ知ってるから寄るのよー」


恭子「お、ええやん。いこいこ」


洋榎「お、お前ら……! 大嫌いじゃぁー!!」


笑いながらうちも真瀬さんの提案に賛同すると、洋榎は叫んで須賀君の肩を叩きまくっていた。


キーンコーンとチャイムが鳴る。


こうしてうちらの体験入部一日目が終了した。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2026年01月04日 20:58