<3の扉 クリア>
京太郎「………」
姫子「………」
二人は手を繋ぎひたすら前へと歩く。
足取りは重く進んでるのかさえ判らなくなってきた。
言葉もなく歩いていると姫子がポツリと呟いた。
姫子「京太郎、皆大丈夫かな」
京太郎「………」
姫子の言葉に答えられない。
大丈夫だと思いたいが根拠もなく言葉にでない。
気づけば足を止め下ばかりを見てしまう。
姫子「こん先に行って何があっのかな」
京太郎「………」
そもそも自分は、何故こんな目に合っても先に進もうとしているのだろうか?
ルフクトゥが居るかもしれないから?
居たとして前に1度倒して復活している相手だ、もう一度倒した所で同じ事では?
なら此処にいる理由は……?
大事な人達を置き去りにしてまでこの先に進む理由ってなんだろうか?
京太郎「……っ!」
姫子「京太郎?」
暫し考え込んでいると視線の先で蠢くものを見た。
あの形…姿…間違えない……ルフクトゥだ。
京太郎「……あの野郎!」
姫子「京太郎!」
体が勝手に反応し気づけば走り出していた。
姫子が必死に呼ぶが京太郎の体は止まらない。
あいつを倒せと…心が強く思うのだ。
京太郎「ッ!!!落ち着け!姫子を置いていくのか!」
怒りで身を焦がさんとばかりに頭に来ていた京太郎を踏みとどめたのは姫子だ。
たった一人最後まで着いて来てくれた大事な人を残していく気かと京太郎は踏みとどまる。
京太郎「姫子!」
姫子「京太郎!」
後ろを振り向き姫子へと視線を向ける。
まだ10mも進んでいない為か視線の先に姫子は居りこちらをへと駆けて来ている。
そんな一生懸命な姿にほっと和んだ。
京太郎「こっち………おいおい」
和んだのも束の間、姫子に向かって手を振ろうとすると視線の先から姫子の姿が消えていく。
先ほどの原因不明の霧がまた出てきたのだ。
10mもない距離を一瞬で霧が覆い隠し何も見えなくしていく。
京太郎「姫子っ!!」
霧が晴れ大きく姫子の名前を呼ぶが誰も返事をしない。
いつの間にか京太郎はホールに居て先ほどと同じように扉の前に1人で居た。
唖然としつつ立ち尽くしていると扉が開くと音が聞こえた。
京太郎「…でだ?なんで勝手に開いた」
京太郎はまだ何もしていない……それなのに何故か扉が開いた。
ふらふらと先ほどと同じように描かれた絵を見てみると…一人が扉に入って喜んでいる絵が描いてある。
京太郎「なんだ…これ、ふざけんなよ」
つぶやけたのはそれだけだった。
今まで散々人を置いてけと催促していたのに今度は無条件で通れと言っているのだ。
何処まで人を馬鹿にしてるのだろうか?
腹が立つもののどうしようかと悩んでいると扉を奥で先ほどの影がゆらりゆらりと揺らめいていた。
奥にはこれ以上通路がなく1つの部屋だけのようだ。
ここで終わり、これ最後…あの部屋に入ればゴールだ。
京太郎は少し悩み部屋へと足を向ける。
姫子達が心配だ、さっさと終わらせて戻ろうと思ったのだ。
『迷う事や疑問に思うことがあったら立ち止まって……し、しっかりと後ろを振り向いてな、進む事より戻る事も大切やから』
京太郎「………」
扉を乗り越えようとした時に京太郎の足がぴたりと止まった。
何故か怜の言葉を思い出しのだ。
京太郎「……あぁ……そっか」
京太郎はようやく理解した。
<戻る>
京太郎「先に片付けるじゃない、先に助けるだ!」
そう言って京太郎は踵を返し走り出す。
さっさと終わらせて助けにいく?違う!
先に皆を助けて、その上で皆と一緒に此処へ来るのだ。
それが最良、戻る事が先決だ。
こんな簡単なことに気づけなかった自分に少しばかり笑った。
走り出し通路を出ると先ほど仁美達と別れた部屋へと出る。
何故か閉まった筈の扉が開いているがそれを気にせず走った。
この辺りにいないことから皆戻ったのだろう。
京太郎は開けられている扉を横目に走ろうとして倒れた。
京太郎「あ……れ?」
立ち上がろうとするも足が動かない、手が動かない。
ここまで休まずに来た事が災いとなった。
寒さに体力を取られて動けなくなってしまったのだ。
京太郎「あぁ……やべぇな」
次第に眠くなり、目の前が暗くなってきた。
早く皆と合流したいのにそうはいかないらしい。
京太郎「………」
動かなくなった京太郎を待ってましたとばかりに霧が覆い隠していく。
それに抵抗も出来ず京太郎は霧の中へと消えていった。
哩「まったく………面倒な」
一息つくと口から白い息が漏れる。
そう言いつつも哩は先ほどと同じように天井を見上げた。
見上げた先の天井はひび割れ今にも崩れ落ちそうになっている。
哩(そうやっと思った、生き埋めにすっつもりやったね)
ギシギシと氷が擦れる音がして些かばかりの氷の結晶が降り注ぐ。
今にも崩れ落ちそうなのに未だに保っているのは、哩の御蔭だ。
自分の能力である鎖をあっちこっちに付け補強している。
こればかりは煌にも姫子にも出来ない芸当だ。
哩(入り口ば崩せばそれでお終い……お見通しばい)
敵の策に気づき残ったはこの為だった。
哩「はぁ………寒か、皆は無事やろか」
今にも落ちてきそうな天井を見上げ哩は逃げ出さずひたすら待ち続ける。
美子「っ!」
ガンっと大きな音を立て相手の攻撃を盾で受けきる。
受けきった後に硬直した相手を持っている斧で叩き伏せた。
叩き伏せられた影は、何事もなかったかのように地面に消えていく。
美子「悪いけど此処からは、退かないから」
美子が残ったホールでひたすら円の中に踏みとどまる。
ジャンケンに負けて残ると決まったとき悲しかった。
だが、同時に自分にしか出来ない事を思い出したのだ。
この円の中から出れば扉が閉まってしまう。
美子「私の役目は皆が帰ってくるまで-守る事-」
影1「ッ!」
影2「ッ!」
影3「ッ!」
同時に襲い掛かる影を盾で防ぎきる。
これは身長が他の子より高く体格がいい自分しか出来ないだろう。
運動部に所属していた事もあり他の子よりは動ける。
美子を退かし円の外に押し出そうとする影を相手に美子はひたすら防ぎきる。
美子「皆は無事かな」
親友の仁美に部長として皆を引っ張って来た哩、時々無茶をする後輩の煌
自分達の中で誰よりも優しく明るい姫子……そして……
美子「京太郎君…皆をよろしく」
無人島というルール無用な残酷な世界で皆の生きる希望となっている少年を思い出す。
煌「まったく!素直じゃないですね!」
仁美「どっちが」
煌の呟きに仁美は答えながらも手を休めず相手を打ち抜く。
仁美の持っていたパチンコからヒュンと風きり音が聞こえ相手の額を貫く。
たかがパチンコされどパチンコ……出来次第では相手の額を割るなんてお手の物だ。
影1「ッ」
煌「ナイスです!」
額に石が当たり硬直した相手を煌が自慢の拳でぶん殴る。
殴られた影は空中で1回転し、そのまま地面に落ち伏せる。
あまりの威力に仁美は少しばかり呆れた。
仁美「攻撃的になったな」
煌「こうでもしないと皆のお役に立てませんからね」
そう言って二人は背中合わせになる。
2人の周りには幾つ物影居り二人を越えて通路の先へと行こうとしている。
煌「いつから気づいてました?」
仁美「美子と別れたときに着いて来るのが見えた」
仁美は敵が付いてきてるのを知っていた。
知っていたのに教えなかったのは数が多いからだ。
あそこで教えれば一斉に襲い掛かられどうなっていたか判らない。
狭い通路を使い二人は、少しずつ相手にしていく。
煌「あちらは平気ですかね」
仁美「問題ない、姫子もいるし」
だからこそ京太郎を姫子に託し時間稼ぎにこうして残った。
仁美「親玉を倒せばきっと!」
煌「それまでは、時間を稼ぎましょうか!」
そう言って二人は笑いもう一度影達を相手にしていく。
敵のやろうとしている事は判っている。
最初に皆を別れさせ自分達の偽者を出し、その後誰かを残すという試練を被せる。
此方の仲間割れを誘っていたのだろう。
煌「私達には効きませんけどね!」
仁美「問題ないね」
何時も通りにストローで飲み物を飲む仁美にキメ顔をする煌、2人の心の中に皆を疑うなんて言葉は存在しない。
姫子「京太郎」
京太郎「あぁ……姫子か」
気づけば目の前には姫子が居り此方を見て微笑んでいた。
ずーと起きるまでの間、抱きしめて暖めてくれていたのだろう。
先ほどより動ける体と姫子の暖かさに感謝した。
京太郎「はぁ……油断大敵だな」
姫子「しょうがなか、京太郎はまだ高校生なんだから」
京太郎「あー…そうだな、高校生だったな」
ここに着いてから色々ありすぎて自分が高校生である事を忘れてしまう。
こんな高校生なぞ、何処を探してもいないだろう。
暫し苦笑し京太郎は起き上がる。
京太郎「さて……」
姫子「皆ん下に行く?」
姫子の言葉に頷き2人は歩き出す。
京太郎「あれ?」
姫子「なにこい?」
3歩ほど歩くと京太郎の足元にポンと蕗の葉が咲いた。
あまりのことに2人は驚き見ていると蕗の葉の下からちっこい爽が顔を出した。
姫子「可愛い!なにこい!」
京太郎「蕗の葉……に小人……もしかして-コロボックル-か?」
姫子はしゃがみ込み小さい小人を楽しそうに見ている。
そんな姫子の横でこの現象は何なのかと考え込んだ。
京太郎(えーと…爽さんの能力だな、たぶん)
小人が爽に似ている事ととコロボックルがアイヌと関わりがある事に気づき爽の能力だと気づく。
確かに爽には困ったときに影を3回踏めと言われてはいた。
だが、しかし京太郎は影を3回踏んでいない……何故起きたのだろうか疑問だった。
京太郎「影を3回……あっ」
そこでようやく気づく、自分の影が光の加減で丁度目の前にある。
3歩歩いただけで影を3回踏む形となることに気づいた。
京太郎「……爽さん、適当すぎんだろ」
今まで発動しなかったのが不思議なぐらいだった。
ガバガバな発動条件に京太郎は肩を落とした。
京太郎「それでお前は何してくれんだ」
チビ爽「………!」
姫子同様しゃがみ込むとチビ爽がなにやら壁の一部を指差す。
その壁を見ていると不思議な事に気づいた。
デコボコになっている壁の一部なのだが、影の付き方がおかしいのだ。
良く見ると人影のようにも見えた。
京太郎「なるほど…姫子準備を」
姫子「了解!」
京太郎は理解し走り出す。
そんな京太郎を補助すべく姫子は胸元から鍵を出した。
京太郎「ハッ!!」
『!!』
持っていたスコップで思いっきり壁を叩くと其処にあった陰は慌てて逃げ出す。
それを眼の端で捕らえつつ構えるとその影の動きが止まる。
姫子「ロック」
ガチャリと音が鳴り影の動きを姫子が抑えた。
京太郎「趣味悪いな、ずっと見てやがったのか」
姫子「楽しんでたんやね」
2人がそう言うと影が笑い形を変えていく。
暫くするとその影は京太郎そっくりに変化する。
京太郎「お前が親玉か!ドッペルゲンガー!」
ドッペルゲンガー「ケラケラケラ」
スコップを相手へと向けると敵は笑い出す。
あざ笑うように馬鹿にしてるように…。
京太郎「ハッ!」
京太郎(影)「ハッ!」
お互いがお互いにスコップを相手に振りかぶりガンと音を立てお互いに弾かれた。
動きも早さも思考も全てが京太郎と同じようだ。
これまでの相手と違い全てが判ってるゆえにやりにくい相手だと思った。
何度も打ち合い時に相手を出し抜き行動するも全てが同じ行動で防がれる。
京太郎「くっきついな!」
京太郎(影)「ケラケラケラ」
それでも違いは出てきた。
京太郎が防御の構えを取るとそれに合わせて相手も同じ行動をする。
それを見届けると京太郎はスコップを大きく振りかぶり相手へと振り下ろす。
勿論相手も同じ行動をしようと体を動かすが……体が動かない。
姫子「私がいっばい!」
京太郎「そういうことだ!」
京太郎(影)「ガッ!」
姫子に動きを止められスコップをもろに受けると相手が吹き飛んだ。
京太郎「さぁ…反撃だ!」
姫子「おーっ!」
チビ爽「ッ!」
京太郎の言葉に姫子とチビ爽は大きく片手を上げた。
京太郎「もう一度だ!」
先ほどのダメージで動けないのか地面に倒れ伏せる京太郎(影)に追い討ちをかける。
大きく振りかぶり相手に振り下ろすと相手がニヤリと笑った。
腰にあったナイフを逆手に抜くと京太郎の腹部へと切りかかってきた。
京太郎「ッおら!!」
京太郎(影)「!?!?」
それを何とか足で蹴り上げる。
なんとか回避に成功したが勢い余って二人揃って倒れこんだ。
京太郎(あっぶねー!!)
京太郎(影)「ギロギロ」
バっと地面に手を付きお互いに離れる。
今回ばかりは危なかった。
頬を伝う汗が何時もより冷たく感じた。
京太郎「ゲホっ」
姫子「京太郎!」
京太郎「だ、大丈夫だ」
京太郎(影)「アタッタ、アタッタ、ウケケケ」
何度も何度も打ち合わせ、隙を見て蹴りを叩き込むも同じく蹴られた。
初めて受けた自分の蹴りに本当に人間かよ、と思いつつふらふらと立ち上がる。
京太郎(今度から人に蹴りを入れるときは手を抜こう)
それでも最初に攻撃を加えた分、まだこちらの方に分がある。
どう相手を攻めぬくかを考えつつ京太郎は相手と同じく構えた。
京太郎「はぁ……くっ!この野郎!」
京太郎(影)「!!」
息が上がる京太郎に対して京太郎(影)はニヤニヤと此方を見ている。
普通の人間と化け物の違いがあからさまに出てきたのだ。
汗が噴出し、寒さのせいで体力を大幅に取られる。
京太郎「ッ!」
京太郎(影)「ヤハハハ!」
そんな京太郎の隙をつき京太郎(影)に押し込まれ馬乗りにされた。
そのまま相手が拳を振りかざす瞬間に姫子のサポートによって動きが止まった。
京太郎「はなれろっ!!!」
京太郎は相手の胸元を掴むと力任せに地面と叩き付ける。
なんとか引き離す事に成功するも相手はまだまだ元気そうだ。
京太郎「しつけー……」
京太郎が相手に拳をぶつけようと手を伸ばすと相手にガードされた。
隙をつく心算が読まれていたらしい。
驚く京太郎に影がカウンター気味に拳を振ってくるのが見える。
京太郎「!?」
京太郎(影)「アガッ」
京太郎が覚悟した瞬間、攻撃を受けたのは相手のほうだった。
何が起きたのか判らず辺りを見渡すと自分と影の位置が逆転していた。
何かしらの能力が発動されたのだろう。
それにしても自分の能力で自爆するとはなんともマヌケだなと思った。
京太郎「はっ!!!」
京太郎(影)「!?!?!」
京太郎の渾身の拳が京太郎(影)の顔面を捉えた。
猪の突進をも物ともしない筋力から放たれたパンチに空中できりもみしながら壁へとぶつかる。
壁に当たると大きな音と共に氷がひび割れ砕け散る。
京太郎「なんとかなるな」
姫子「私達んコンビは無敵ばい♪」
姫子の居る居ないの差が激しかったのだろう。
1人で戦っている影は徐々に押され遂に虫の息までとなった。
京太郎(影)「ギロギロ」
京太郎「うげ」
姫子「うそ!」
2人が暢気に構えていると相手に変化が訪れる。
影の隣にもう一体の影が出てくると姫子同様の姿になった。
京太郎「まじか」
姫子「うぅ……なしてー」
まだ終わらないようだ。
京太郎「はぁ……はぁ……」
姫子「んっ、頑張ったね」
消えていく影を見ていると姫子がやってきて優しく抱きしめてくれた。
暖かい温もりを感じながら京太郎は終わったことを理解する。
京太郎「これで騙される人も減るだろう」
姫子「うん、帰ろっか」
京太郎「いや、まだ奥に部屋があったから」
姫子「なら先に行く?」
姫子の言葉に京太郎は考え込む、既に親玉を倒している。
他に敵がいれば別だが、危険は格段に下がったろう。
合流してもしなくてもどちらでも今回はいいと思った。
チビ爽「!!」
京太郎「あれ…お前まだ居たのか」
服をぐいっと引っ張られ其方を見るとコロボックルが居て服を引っ張っている。
ガシャーン!
と大きな音を立て京太郎達の後ろに氷の塊が降って来た。
京太郎「………」
姫子「………」
チビ爽「!!」グイグイ
頬に汗が伝う、京太郎と姫子はギギギギと音が鳴りそうな程ゆっくりと視線を天井に向けた。
向けた先には次々に罅割れていく天井が見える。
京太郎「やばい!!」
姫子「やばか!」
2人は慌てて立ち上がると荷物を持った。
<奥の部屋へ>
京太郎「っ……奥の部屋へ行って来る」
姫子「………」
京太郎「取り合えず、姫子は先に皆と……」
姫子「でもでも!」
奥へ行こうとする京太郎を姫子は服を掴んで引き止める。
この氷が振り注ぐ中を抜けて行くのは、命に関わる。
流石に姫子も頷いてくれなかった。
京太郎「ここに来た意味が……」
姫子「うーうー」
涙目で呻る姫子の頭を軽く叩き、少しばかり力を篭めると姫子の拘束が解ける。
そして、京太郎は走り出す…後ろで姫子が何か叫んでいるが氷の割れる音で聞こえなかった。
京太郎「ここら辺だな!」
何とか奥の部屋に辿り着くと辺りを見渡す。
そこには、様々な空瓶や草が置いてあり、貯蔵庫のようだった。
何か無いかと探っていると……。
京太郎「………」
暫しの間、見渡すと正面の所に紙が張られていることに気づいた。
文字が昔の文明の文字だったが、大盾の英雄の記憶の御蔭で読めた。
紙には………。
- ハ・ズ・レ!ギャハハ!騙されてやがんの!生き埋めになっちまえよ ルフクトゥ-
京太郎「………」
ソレだけが書かれている紙があった。
あまりの事に京太郎は思考が停止した。
京太郎「あーと……つまりだ、ここを作ったのはアイツで俺は騙されて、のこのこと着ちまったと」
どうやらここの存在そのものが罠だったようだ。
あまりに大掛かり過ぎる為、偽者の可能性を考えていなかった。
紙を乱暴に取ると京太郎は力の限り破り捨てようとする……が。
- まぁ…ここまで来た事に(騙された事に)敬意を表して1つ教えてやる-
京太郎「………」
裏にそんな事が書かれていた。
そして続きには……。
京太郎「まじかよ」
そこに書かれていたことに驚きながらも京太郎は、すぐに踵を返し脱出へと足を向けた。
姫子「こっち!こっち!」
京太郎「だー!死ぬ!まじで死ぬ!」
哩「急げ!」
仁美「はよっ!」
美子「京太郎君っ!」
あれから部屋を出てすぐに走り出した。
結構な時間が経っているせいで何度も押しつぶされそうになる。
だが、幸運にも入り口付近まで怪我なく戻ってこれた。
入り口には既に京太郎以外の人が合流していて必死な表情で此方を見ていた。
疲れていることと哩達の姿を見て油断していたのだろう。
速度を少しばかり落としてしまう。
それが仇となった、最後の最後で京太郎目掛けて天井が崩れる。
京太郎「駄目かっ!!!」
「いえ!よく頑張りました!!
天井から降り注ぐ大きな塊を見て京太郎は、完全に足を止めた。
間に合わないと覚悟を決めていると聞きなれた声が聞こえる。
煌「せーのっ!!!」
S M A S H !!!!
いつの間にか飛び出していた煌のパンチが空中の氷の塊を打ち砕く。
大きかった氷は悉く粉砕され小さな小さな粒になり京太郎に降り注ぐ。
たまに尖っている氷があり体を傷つけるも致命傷に至らない軽症だ。
哩「はっ!」
京太郎「おわっ!?」
煌「あわわわ」
暫しの間、唖然としていると哩の鎖が伸びてきて煌と京太郎に巻きつくと引っ張られた。
その直後、後ろにあった氷の遺跡は完全に崩壊する。
姫子「後でお説教」
仁美「…私らのもあるから」
美子「5人分のかな」
哩「覚悟しろ」
煌「ぷは~……皆ご無事のようですばらです!」
京太郎「ははは…しっかりと受けるよ」
それから次第に皆笑い、お互いの無事を喜び合った。
抱き合い、笑い、談笑しそれは、大きな音で様子を見に来た咲達が来るまで行なわれた。
<新道寺シナリオ 3章-仲間割れ- カンッ>
京太郎「………はぁ」
あれから休む事が先決だという事で近くの清澄の拠点で休ませてもらうことになった。
御代の代わりに今回あったことを洗いざらい吐かされたが。
特に俺の話になると無茶をすると呆れたり泣かれたりと大変だった。
京太郎「………どうっすかな、この情報は」
皆が寝に入った深夜、京太郎はただ1人拠点近くの岩の上に座り込んでいた。
手に持って悩んでるのはルフクトゥの手紙だ。
そこに書かれていたことが、本当かは判らないが2つだけはっきりした。
京太郎「……あいつの目的がね」
その目的を知って京太郎は複雑そうな顔をした。
京太郎「黄金の破壊ね?」
それがルフクトゥの目的……望みだ。
中央の山の山頂に大きな黄金の石版が置いてあり、それを破壊するのが目的と書かれている。
なんでも昔から不思議な力を持っていて他人にオカルトの力を与える力を持っていたと書かれていた。
京太郎「うーん……そもそも、その黄金の御蔭で俺達はオカルトが使えるわけで此処で生きていけるんだよな」
オカルトがあるからこそ京太郎達は無人島で生きていける、壊されたら力も失うのだろうか?
そもそもルフクトゥ自体今動けるのは、その黄金の力の御蔭なのだ、それを破壊すれば自分自身消えることとなる。
それに何故、衣や久を襲ったりしたのだろうか?そこも不思議な所だ。
京太郎「………あいつと会って話してみないとわからんな、最後の言葉も気になるし」
手紙の最後には、破壊しなければ必ず後悔する と書かれていた。
「どいつもこいつも……邪魔ばかりしやがって…特に金髪野郎、まだ生きてやがる」
「それはあなたのやり方が荒いせいでは?」
暗い暗い森の中で二つの影が喋りだす。
1つはルフクトゥ、もう1人は霞だ。
月が2人を照らし始め辺りを照らす、2人の周りには人が倒れていた。
全員が全員巫女服を着ている、六女仙の3人だ。
霞「出来れば小蒔ちゃんを返してくれないかしら」
「力を貰った今、いらん」
そう言って抱えていた小蒔を霞へと投げ返す。
霞は投げられた小蒔を慌てて受取る。
受取った小蒔を霞は丁寧に見ていく、どうやら怪我らしい怪我もなく寝ているだけのようだ。
霞「はぁ……石版を壊すのも辞めてもらいたいのだけど」
「別に辞めてもいいが今度は誰が犠牲になるかわからんぞ?」
霞「……それが問題なのよね」
ルフクトゥの言葉に霞は大きなため息をついた。
破壊しなければ最低限の犠牲が壊せばオカルトを失う。
どっちを選ぶにしても犠牲は避けれない。
「ククク…これが天照大神の力か」
霞「既に3人の力も集めてるなんてね」
「ようやくだ、ようやく」
霞の言葉に反応せず、ルフクトゥは影の中に消えていった。
そんな相手の様子を見て霞はため息をつく、どうやら準備に取り掛かったらしい。
霞「どっちに転ぶにしても脱出する準備がいるわね」
小蒔「むにゃむにゃ……すぴー」
人の気も知れず暢気に寝ている小蒔の頬を突っつきながら霞は苦笑した。
京太郎「……3日離れてただけなのになんか懐かしいな」
京太郎は拠点に帰ってくると外から拠点を眺める。
懐かしさと同時に何処か違うように思えた。
京太郎「………また1つ部屋が増えてやがる」
暫く見て気づく、部屋が1個多くなっていた。
京太郎「成長したってことか」
苦笑しつつ拠点内部へと京太郎は入っていった。
<怜のお見舞い>
京太郎「お久しぶりです……怜さん寝てましたか」
竜華「おかえり」
憩「おかえり~……って怪我しとるし」
拠点に戻ってきて最初に気になったのが怜の事だ。
出て行く前に倒れたので様子を見にきたのだが、寝ているようだ。
京太郎「氷の塊避けて帰ってきたから」
竜華「何がどうなったらそんなんなるん?」
不思議そうな竜華に京太郎は苦笑した。
確かにほぼ熱帯に近い気候の無人島で氷の塊を避けて脱出など想像できないだろう。
むしろそんな経験をすることがない。
憩「そこ座ってなぁ~」
京太郎「は~い」
暫しの間、竜華と雑談していると何処かに行っていた憩が戻ってくる。
包帯などを抱えて京太郎に自分の前に座るように指示した。
ここで彼女の機嫌を損ねるのも馬鹿らしいので素直に座る。
そしてそのまま治療を受け治した。
京太郎「それで怜さんは?」
竜華「えーと…ぞれがずっと寝たままでな」
京太郎「……俺たちが出て行ってからですか?」
京太郎の言葉に竜華はこくりと頷く。
たまたま運悪く寝ている所に来たとばかり思っていた京太郎には衝撃的な話だった。
不安げに憩を見るとその視線に気づいたのか憩が近寄り耳もとで囁く。
憩「……あの薬まだ持っとる?」
京太郎「あるけど…なんで小声?」
憩に言われて思い出すのは前に貰った赤い薬だ。
結局あれがなんなのか判らず使えなかったなと思った。
憩「あれ、よければ返してくれへん?」
京太郎「なんで?」
憩「怜ちゃんに使いたいんよ」
京太郎「…なるほど、結局あれってなんなんだ?」
憩「えーと……エリ○サー?」
憩の言葉で京太郎は完全回復する自分を思い浮かべた。
つまりは体力回復財だったらしい。
京太郎(…どうすっかな)
あれば便利な品だ、だが怜に使えば怜は助かるだろう。
京太郎「ほい」
憩「自分で言うた事やけど……簡単に渡すんやね」
京太郎「友達の命に代えられないだろう、それにお世話になったし」
憩の言葉に京太郎は気恥ずかしげにそっぽを向いた。
あの氷の洞窟の中での出来事を思い返したのだ。
怜と爽にはものすごくお世話になった。
京太郎「その代わりに怜さんの事お願いな」
憩「任せといてな」
京太郎の言葉に憩がにこやかに笑った。
<白糸台と交流>
京太郎「お風呂上りですか?」
菫「ふむ、私達が来たのは君には伝えてなかった筈なのだが」
京太郎が傷を癒す為、2階でのんびりしていると菫たちとで出会った。
既に拠点の近くと内部は京太郎の領域だ、誰か何処に居るか位すぐ判る。
そのことを知らない菫は驚かない京太郎を不思議そうに見つめた。
誠子「お風呂ありがとう」
京太郎「いえいえ」
淡「これなら毎日使ってあげてもいいけどね!」
尭深「…毎日来てるけどね、後ありがとう」
京太郎「いえいえ」
淡「むわー何するの!」
1人だけ生意気な奴が居たので京太郎は頭を掴むとそいつの頭を手でぐりぐりとした。
淡は、京太郎の攻撃に涙目になりながら逃げようと手足をバタバタさせている。
照「………」
そんな様子を照は、一歩はなれて見ていた。
<照と咲>
京太郎「そういえば、清澄も来てる筈ですけど咲とは?」
照「会ったよ」
京太郎の問いに本人である照が答えた。
おそるおそる照を見ると優しく微笑んでいる。
どうやら良い方向へ進んだようだ。
照「さっきお風呂で会って思い出したから大丈夫」
京太郎「なるほど」
お風呂で会って……なんだか浪漫の欠片もない出会い方だなと思った。
照「それで私が記憶をなくした時のことだけど」
京太郎「教えてくれるんですか?」
照「知りたいんでしょ?」
京太郎「はい」
照の言葉に京太郎は素直に頷く。
元々知りたかった情報だ断る事はありえない。
照「手短に話すと私は能力を奪われた」
京太郎「ふむ」
照「奪った相手はルフクトゥだね、私は最後まで抵抗したから後遺症で記憶が」
京太郎「……(あの世界で力が強くなっていたのはそのせいか!)」
思い出すのはあちらの世界に閉じ込められたときだ。
前までは月と星のみだったのに前回は太陽まであった。
京太郎「……(まて太陽?)」
京太郎はそこまで考えて思い出した。
宮永照が麻雀界でなんと呼ばれてるかを……。
京太郎「天照大神」
照「そ、淡も既に奪われてるよ」
淡「あわ?」
京太郎と照は淡を見る。
見られた淡は暢気に髪を梳かしていた。
京太郎「…月が衣、星が淡、太陽が照さん」
照「当たり」
京太郎&照「「残りは神代小蒔-気候-」」
二人の声が重なった。
<水汲み>
京太郎「はぁ……」
京太郎は最後の水を樽へと移し終えた。
頻繁に使うが故に大事な仕事なのだが、結構な労働になる。
京太郎「昔の人はこれが普通だもんな、頭下がるな」
そんな事を考えた。
水が満タンになりました。
<煌と美子>
美子「っと」
煌「わわわ」
京太郎「なにしてんの?」
なにやら2人が砂浜で何かをしていたので気になって見に来ると煌が美子に投げられていた。
投げられた煌は目を回しふらふらとしている。
美子「私元々柔道部でそれを教えたら、煌ちゃんが教えてくださいって」
京太郎「なるほどね」
美子の言葉を聞いて京太郎は、納得した。
煌は確かに強くなった、だが強くなったのは筋力だけだ。
フェイントや相手の攻撃を受け流すといった技術がまったくもってないのだ。
煌「う~ん…力ズクでいいなら投げれますけど」
美子「それじゃ意味無いしね」
京太郎「確かに」
何処まで力ずくが通じるが判らないのだ。
技術を学んでおくのは良いことだと思った。
<哩の告白>
京太郎「あー…たぶんそうだよな」
ざくざくと小粋な音を立てながら砂浜を歩く。
夜中に何故こんな所を歩いてるのかと言うと哩に呼ばれたのだ。
なんとなく呼ばれた意味も理解している。
出てくる際に姫子に視線を送ると
姫子「京太郎に任せる」
と言って早々に眠りに就いてしまった。
京太郎「来たぞー」
哩「んっ」
ある程度歩くと岩の上に哩が座り空を眺めていた。
京太郎が声をかけると哩がすっと岩から飛び降り砂浜に着地した。
そして、此方を真剣な眼で見つめてくる。
京太郎「………」
哩「………」
暫しの間、2人は無言になる。
聞こえてくるのは、虫のざわめく音に風の音、涼しげな波の音だけだ。
哩「京太郎……私は京太郎ん事が好き」
京太郎「うん」
哩「1人の男として好きです、姫子の事は判っとる、それでも我慢できなか」
そう言って哩はお辞儀して此方に手を差し出してきた。
その手は微かに震え、小刻みに揺れている。
京太郎「俺は………」
京太郎に決断の時が迫った。
<受け入れる>
京太郎「はぁ……姫子になんと言えばいいかね」
そう言って哩の手を取った。
触ったときにビクっと体を震わせた。
そして暫くするとわなわなと震えだし何滴かの雫が砂浜濡らす。
哩「断られっと思った」
京太郎「………断れないなー」
そう言って優しく哩を抱きしめた。
哩「私ん初めて受取ってくれる?」
京太郎「もちろん」
二人の影は静かに重なり、また静寂が辺りを支配した。
<あなたがいるから>
美子『最近頑張ってるね』
煌「………」
地面にひかれた布団の上で煌は美子に言われた事を思い出す。
柔道の技を教えてもらう時に言われた言葉だ。
煌「う~ん」
考えながら煌はゴロンと寝返りを打つ。
元々煌は戦い向きな性格ではない。
麻雀でもそうだ、戦うよりは守る方が向いていた。
どんな逆境でも粘り粘り粘って次へと託す、それが煌だ。
そんな自分が何故こんなにも好戦的になったかそれを考える。
京太郎「それじゃ行って来る」
姫子「いってらっしゃい」
煌「おや?」
そうこうしていると京太郎が夜更けに外へと出て行った。
何だろうかと姫子に声をかけると教えてくれた。
姫子「部長に呼ばれた」
煌「それは……」
告白している哩の姿を容易に思い浮かべる事が出来た。
既に姫子という恋人がいるのだが、それはいいのだろうかと姫子へと視線を向けた。
その視線に気づいたのか姫子は苦笑し よかよかとだけ言って布団へと戻った。
煌「……京太郎君ですか」
ぼーとしながら先ほどの事を考えてると京太郎の顔が思い浮かぶ。
自分の1個年下の男の子、遺跡で槍に刺さって居た所を助けられて以来行動を共にしている。
何時も前に出て誰よりも体を張りながら笑っている男の子。
不死身な自分をも気遣い服をプレゼントしてくれた男の子。
今まで会った事ないような男性で………。
煌「あぁ……そういうことですか」
そこまで考え煌は、自分が何故こうにも頑張るのか理解する。
煌「あなたがいるからですね」
仁美「なんかいった?」
煌「何でもないです!さぁ寝ましょうか!」
ニヤニヤと笑う煌に仁美が不思議そうにするも煌は気にせず眠りに就く。
明日も今日以上に頑張れそうだ。
カンッ
<私の仕事>
美子「………」
煌「何でもないです!さぁ寝ましょうか!」
なにやら元気になった煌を一瞥し美子も眠り就いた。
だが火を消し暗くなっても美子は眠れない。
美子(………私が出来る事ってなんだろ)
前から思っていたことだが、前の遺跡のことで更に思い募るようになった。
特にこれといって特徴もない自分だ。
煌のように体を張る事も哩姫の二人のように京太郎を精神的に支えたり、仁美のようにムードメイカーになる事もできない。
ただただ後ろで皆を見守るばかりだ。
そんな自分が少しばかり嫌になる、悩みを抱えつつ美子は眠りに就いた。
眠っていると物音で眼を覚ます。
暗闇に慣れてない眼で暫しの間見てると姫子だと判った。
姫子はこっそりとこっそりと外へと出て行った。
何事かと眼鏡をかけ辺りを見渡すと京太郎と哩までもがいない。
どうやらアレから帰って着てないようだ。
美子(う~ん)
一瞬探しに行こうかと思ってやめた、オカルトと絆で哩と繋がっている姫子が騒がないのだ。
哩達は無事なのだろうと思ったのだ。
美子(仲良いな)
会った当初から特別仲が良かった2人だが、まさか恋人まで同じとは思わなかったが。
姫子だけでも風紀が少しばかり乱れてたのにこれでまた、余計にこじれそうだとも思った。
自分達はまだいい、あの2人を知っているのだから、だがここでは千里山や有珠山といった関わりが薄かった人達も居るのだ。
2人を恋人にした京太郎に風当たりが強くなるかも知れない。
美子(明日辺り注意しておかないと)
煌は、仲が良いことはすばらですといいそうだし、仁美はマイペースに我関せずを貫きそうだ。
結局自分が注意するしかない。
美子(あぁ……そっか、私にも出来る事あったな)
其処まで考えてようやく1つ出来る事を思いついた。
その行動は、京太郎達に嫌われるような行動かもしれない。
口うるさいと言われるかもしれない。
それでもその行為は大切な事だ。
美子(2人が表で支えるなら私は裏で支えよう)
それが唯一私が出来る仕事だ。
カンッ
告白を受け二人でのんびりと砂浜を歩いて帰って来た。
帰ってくると既に灯りが消え皆が眠りに就いている。
それほど長く居たと感じなかったのは、哩と居たからであろうか?
ふとそんな事を思ってニヤニヤと笑ってしまった。
「……こっち」
「うん?寝ないのか?」
そんな事を思ってると哩に引っ張られ2階へと上がる。
そしてそのまま、お風呂へと連れて来られた。
「……んーあーあー…やるの?」
「んっ!」
なんとなく此処に来て何をしようとしているのかを悟った。
まだ告白されてから数時間しか経っておらず、京太郎のほうが些か動揺してしまった。
姫子とでさえ数日掛かったのだが、哩はとことん行くようだ。
京太郎は、ため息をつきつつも哩同様服を脱ぎ始める。
男子高校生なのだ、性欲があって当然であった。
「……んで、するんじゃなかったのか?」
「ん……そのはず」
脱ぎ終え中に入ると2人して体を洗い湯船に浸かり、一息ついた。
特に何をするでもなく ほっと息を吐くとのんびりとし始める。
「そうじゃねーだろ」
「やーその、やっぱり恥ずかしかよ」
京太郎のツッコミにそう言って哩は体を小さくすると顔近くまで湯船に浸かった。
先ほどの余裕などなく、顔を赤くしてチラチラと此方を見てくる。
「んーしょうがないな」
「あわわわ……なんばすっと!」
立ち上がると隣に居た哩をひょいっと持ち上げお姫様抱っこで運ぶ。
いきなりの事であわあわと慌てる哩に京太郎はお構い無しに何処かへと運んだ。
「……もう一度体洗うと?」
「少し当たってる」
壁際に移動させられると木で出来た椅子に座らされた。
哩を座らせると京太郎は哩の後ろにつき膝立ちとなる。
何をしようとしてるのか判らずクエスチョンマークを出していると手がぬるりと哩の秘所へと入ってきた。
「ひゃぁ!?」
「………女性って陰毛ないのか?」
雑誌や借りたAVではあったのだが、姫子も哩もかなり陰毛がかなり薄い。
他の子を経験していない京太郎には、判らない事だった。
少しばかり思考がズレるもすぐに立ち直し哩の秘所を弄っていく。
「んっ…いきなり、そがんところ!」
「やー濡らさないと痛いみたいだし」
姫子と初めてやった時、焦りと興奮のせいで姫子に負担を強いてしまった。
その経験があり、慎重に焦らしながら攻めていく。
「あんっ…恥ずかしかっ…ばってん」
自分でするのと違い、触って欲しい所に手がいかない。
声に出すのも恥ずかしくただただ、京太郎の手が其処へと辿り着くのを待つばかりだ。
好きな人に触られるとは不思議なもので自分でする以上に胸が高鳴り興奮した。
「ひうぅ♪」
「ありゃ……姫子と同じ所感じるのか」
なかなか喘ぎ声を出してくれない哩に少しばかり焦りながらも息を整え攻めていると
意外にも……いや、意外でもないが、姫子と同じ所が弱いらしい。
京太郎は、ようやくかと思いながらも執拗にクリトリスの周りを触り続ける。
直接触るのでなくこうやってもどかしく攻められるのが、姫子と同様好きらしい。
「あっ……なして、直接触らんと」
「このほうが好きだろ?」
「あっ……あっ……はぁ、知らなかった」
哩とて普通の女子高生だ、そういうことに興味があった年頃だし週に1・2度ほど発散する程度にはしている。
それでも自分の弱い所知らなかった。
むしろ姫子と同じ所が弱いとか……姫子の事も好きなのだが、なんとなく知りたくなかった情報だ。
「うりうり♪」
「ぴぃ!!」
少しばかり落ち込んでいるとクリトリスを直接挟まれる。
気を逸らしてたばかりに反応が遅れ体をピリピリと走る感覚に身を震わせた。
あまりの快楽に頭に電気が走りはしたない声を上げる。
そして……足をがくがくと震わせるとそのまま出してしまった。
「………」
「………」
哩の秘所から流れ出す、黄金の液体を見て京太郎と哩は無言になり固まる。
我慢してたのか勢い良くでる様子に哩はぷるぷると先ほどとは違う体の震え方をした。
「………ぬっと」
「いやいや…まてまて」
哩は、ほぼ半泣き状態である。
好きな人との最初のことでこれは流石にない。
京太郎は慌てて立ち上がろうとする哩の肩を掴み座らせる。
「離せ!離して!」
「えーと…いや、ほら」
そうしたはいいものの言葉が見つからない。
どうしようかと悩みに悩んで………取り合えず押し倒す事にした。
「ふぁ!?」
「てい」
ぐいっと肩を押しこみ倒すとそのまま両手で足を広げ秘所へと顔を近づける。
そしてそのまま口を秘所に埋め一口舐めた。
「あぅ……ってなにしとると!」
「舐めてる」
思わず声をだしてしまい恥ずかしさで顔を更に真っ赤にさせた。
だが、京太郎は気にせずそのまま行為と続ける。
丁寧にクリトリスから膣の内側まで舐め舌を入れていく。
「き、きたな…か、っ」
「汚くないって」
哩は感じているのを悟られぬように両手で口を押さえ必死になる。
耳まで赤くし我慢するも、京太郎には感じていると判っていた。
既に膣から愛液が溢れ少しずつ準備を整えているのだから。
「ひぅ♪あぅ…なして…こんな❤」
「やー……さっきの失敗は俺のせいでもあるしさ、あれで初めてが終わるのも嫌だろ」
そう言って口を離すと自分の一物を手に取って哩の膣へと摺り寄せる。
「あっ……」
「貰うぞ」
「んっ……❤」
京太郎の言葉に哩が頷く、恥ずかしさと好きな人と繋がれる嬉しさとどちらもあるが、嬉しさのほうが勝った。
しずしずと足を広げると両手で自分の秘所を開いて京太郎へと見せる。
先ほどは口を埋めるようにしていた為見れなかったが、綺麗なピンク色の神域を見て一物が更に大きくなる。
(……ひぇ!?あいはもっと大きくなっと!?)
「っ……入れるぞ」
「ひゃい!」
一物を見て目を回す哩を他所に京太郎は我慢できないとばかりに一物を何度も入り口で擦らす。
上へやればクリトリスに触り、下に擦れば膣の入り口を刺激する。
くちゅくちゅと音が鳴り哩の頭を熱で溶けるような感覚を味わった。
そして……。
「っ~~~~~♪」
「っつ!」
勢い良く中へと差し込んだ。
愛液で満たされてるとはいえ初めての混入だ。
勢い良く入れても抵抗が激しく少しずつしか入っていかない。
それでも京太郎は止める事無く息を止め差し込んでいく。
どんなに哩が痛かろうがここで止める訳には、いかないのだ。
「……大丈夫か、哩(地味にこっちも痛い)」
「っ……はぁっ……」
そんな事を思いつつ哩へと視線を向けると哩はいつの間にか腕で顔を隠している。
頬からは涙が見え痛かったのだと判った。
それに対して少しばかり心が痛むも哩を自分の物にしたという幸福感や独占欲が上回る。
男とは何処まで行ってもこんなのかなとと少しばかり悟るもやはり好きな人と共になれるのが嬉しいからなのだろう。
「哩……」
「……はぁ……問題なか❤」
哩にもう一度声をかけると哩は腕を解きにこっと笑った。
どこまでも強い人だと思いながら今度は優しく抱きしめ、暫くしてから抱き上げる。
「ゆっくり動くぞ」
「ん、問題なか…なんにっ♪」
哩の言葉を区切り京太郎は哩を軽く持ち上げ腰を動かす。
その時の衝撃で少しばかり哩が言葉に詰まった。
それが痛みからなのか快楽からのかは、京太郎には判らなかった。
姫子と何度も致した事だが、既に京太郎に余裕が無い。
まるで姫子と初めての夜を経験したときのように……。
「うぐっ……はぁ……ふふ、こんな感じか」
「痛むか?」
「少し…やけど、嬉か、とてもとても嬉かよ♪」
「………」
哩は涙が溜まる目を瞑りニコッと笑う。
その際に涙が流れるもその涙は綺麗にみえて悲しさと逆の涙なのだと思った。
それから哩も少しずつ腰を動かし自分でも快楽を得ていく。
くちゅくちゅとなる水音と哩と自分の吐息しか聞こえない。
「あんっ♪」
何度も何度も静かに奥へと差込み外へと引っ張る。
そんな行為を続け少しばかり角度を変えてみるとここ一番大きな喘ぎ声を上げてくれた。
「なれた?」
「ないた……かも」
お互いに口を重ね、舌を絡めていく。
秘所から聞こえてくる音とは違う音がなり頭を快楽が解かした。
「ちゅ、はっ、ん~~~」
「ぷはっ…同時だときついな」
ピストンを繰り返しながら膣内を弄るっては、舌を絡めあう。
する度に激しくなり最後には我慢できずに口を離した。
「んっんっ……あっ……奥に!子宮が…あん❤」
「哩も奥は大丈夫か」
角度を変えながら一番奥へと長く押し込むと哩は足をジタバタさせ背を背けた。
顔を見るに喜んでいるようなので少しほっとした。
昔見た雑誌に奥は嫌がる子も多いと書かれていたのを思い出した。
京太郎自身は、深くつながる方が好きなので問題ないと判ると更に押しこみながら動かした。
「あっ…あっ!もう無理!来っと!」
「いけ!イケ」
哩の言葉に京太郎は答え激しく早くピストンを繰り返した。
2人に余裕がなくなり最後とばかりに勢い良く奥へと差込、子宮を精液で満たしていく。
「ッ~~~~♪中に!中に❤❤」
「ッはぁ」
2人共々体が震え、汗をかき息を荒くした。
「哩……姫子共々大好きだ!」
「ぶ~……そこは、一番好いとーって言ってほしか」
京太郎の言葉に哩はくすくすと笑い、視線を合わせ最後にキスをした。
と思ったら
バンっ!!!
と大きく扉が開いた。
気を抜いていたせいもあり、二人揃って驚き視線をそちらに向けると裸の姫子が立っている。
湯気のせいで禍々しく見て2人して少しばかり震えた。
「まだ…まだ終わってなか、此処からが本番たい!」
どうやら……まだこの夜は終わらないようだ
「それでなんでこうなった」
「私んセリフ」
「えー…嬉しかないです?」
先ほどのやり取りの後に姫子がまさかの乱入で2回戦開始である。
左に姫子 右に哩が居り姫子はやる気満々で京太郎の一物を触る。
あれほどしたのに体は正直らしい、瞬く間に大きくなり元気になった。
「しないと?」
「………だーしますよ!すればいいんだろ!」
「わぁ」
こうなったら自棄である。
姫子を抱き寄せるとそのまま貪るようにキスをした。
勿論舌を入れてである。
「ちゅ…はぁ…ん~~っ♪」
「むぐっ」
「……人がしてっとこ見るんは恥ずかしかね」
先ほど間で自分もしていた事なのだが、改めて見ると恥ずかしくなってきた。
姫子と京太郎の舌が絡み合い空気を吸う為に離すと銀色の糸が舌と舌の間を繋がる。
それを見て哩は顔を真っ赤にさせた。
「むぐっ……んー!んーっ❤」
「ふふふ」
暫しの間、やっていると姫子が目を広げ慌て始める。
どうかしたのかと注意深く見ていると京太郎の手が姫子の秘所を触っていた。
何度も何度も指で姫子の膣内を差し入れしくちゅくちゅと卑猥な音を立てる。
明かりの加減で京太郎の手が濡れてるのが哩から見えた。
既に何度も致してる御蔭か哩より濡れるのも早かった。
「んっ……はぁ、ひぅ♪♪」
「達した……な」
ビクンと姫子は口を離すと京太郎の肩に両手を置きビクビクと体を震わせた。
達したらしい、姫子はそのまま息荒くぐったりと京太郎に体を摺り寄せた。
姫子の顔は、満足げで嬉しそうだ。
「はぁ……はぁ……ん~、部長…こっちとです」
「わ、私もか?」
手で呼ばれる。
少しばかり迷うも結局は姫子の傍に寄った。
それを見ると姫子は、京太郎を優しく押し倒した。
「わっと……何すんだ?」
「よかから」
姫子と哩は、京太郎の上で抱き合い秘所と秘所で一物を挟む。
「こいなら部長にも負担かからんとです!」
そう言って姫子は体を上下に動かし一物を擦っていく。
「うぉっ」
「!?」
姫子が動いたせいで刺激が京太郎と哩が襲う。
2人は快楽の波に煽られ声が出てしまった。
「部長……」
「姫子……」
哩も気分が乗ったのだろう。
2人は両手をお互いに合わせ口を合わした。
京太郎の上で2人が淫らに腰を動かし、先ほど京太郎と姫子がしたようにキスを続ける。
そんな2人を見て京太郎は……。
(胸あれば完璧だったのに)
と思いつつも手を伸ばし2人のお尻を揉み始める。
「「!!」」
(お尻はお尻でいいけどな)
ビクっと反応する2人を見ながら腰も動かし始めた。
2人の柔らかい割れ目に何度もピストン運動を行い刺激を与え、刺激を受ける。
行き成りのことに驚いていた2人だったが、次々に来る快楽に目をとろ~んとさせ自ら腰を振り出す。
2人のキスの水音に一物と秘所が擦れる音…3人の息遣いだけがお風呂場に響いた。
「はぁ…あっ……あぅ❤」
「んっ……あっ…も…もうっ❤」
「くっ…!」
どんどんと動きが激しく早くなり、京太郎は体を震わせビクンと一物の先から精液を出し二人のお腹を汚した。
精液がお腹にかかると姫子と哩の2人もまたビクビクと体を震わせ絶頂する。
「はぁ………んっ♪」
「……美味か?」
「ん~……幸せん味とですかね?」
姫子がお腹にかかった精液を手で取ると口に含む。
そんな姫子に哩は不思議そうに声をかけた。
その後も2回続けて動き続けていた京太郎はぐったりとし笑いながら談笑する二人を見ていた。
(無人島だけど幸せだな)
そんな事を想いつつ京太郎は深い欠伸をした。
カンッ
<あなたが好き>
あれから3人でもう1度体を洗い下に降りて来ると京太郎と哩はすぐに眠ってしまう。
流石に疲れたのだろう。
姫子はまだ興奮しているのか、眠れない事もあり2人を見ていた。
気持ち良さそうに寝ている二人を見て姫子は嬉しそうに笑った。
どちらも大切な人だ。
憧れの部長に誰よりも好きな京太郎……どちらも手放したくない。
「ん~♪」
片手を伸ばし京太郎の頬に触れる。
何度も何度も擦りその手を自分の頬へと持ってくる。
京太郎の暖かさが自分にも移るような感覚を受けた。
それがとてもとても幸せだ。
あなたが好き……明日は今日より好き……明後日は明日よりも好きだと思った。
上限知らずに姫子の心を満たしていく。
大切な人が出来る事はなんて素晴らしい事だろうか。
「あなたば好いとーなってよかった」
それだけ呟くと姫子も京太郎に抱きつき眠りに就く。
今日見る夢はきっと誰よりも幸せで素晴らしいものだろう。
カンッ
<食料探し>
京太郎「久々な感じがするな」
姫子「そうだっけ?」
食料を探しに哩姫の2人を森へ入った感想がそれだった。
木の上を覗き果物を見つけ、草を掻き分け野草や山菜を採取していく。
最近戦ってばっかりだったなと思うとホロリと涙が出てくる。
哩「んー……こいは、食べれる」
京太郎「まてまて……それは無理だから」
そうこうしていると哩が食べれないキノコを籠に入れようとしている。
確かに良く似た物も多いのだが、相変わらず哩は食べれない方を探し出す。
前から思っていたがわざとでないかと疑い始めた。
哩「ダメやったか……ならこいは」
姫子「こいもよさげ……」
京太郎「どっちも毒だから」
2人が採って来る物、全てが危ないものであった。
京太郎はため息をつきつつ楽しそうにする2人を眺めていた。
<仁美と美子と食料調達>
京太郎「………」
仁美「どうかした?」
午後となり無くなってきた食料を探しに来たのだが、京太郎が木の傍にしゃがみ込み何かを見ている。
それが気になり京太郎の傍へと近づく。
京太郎「これ」
仁美「ん~?」
美子「どうかしたの?」
京太郎が避けると仁美がしゃがみ込み先ほどの京太郎同様見始める。
すると今度は美子が近づいてきた。
仁美「これ」
美子「……んー熊?」
京太郎「かも知れない」
3人が覗き込んだ木の幹には、何者かの爪痕が残っていた。
それを見て3人は辺りに注意を向けるが特に気配はない。
京太郎「気をつけてみるか」
仁美「注意必要だね」チュー
美子「……オカルトある人は大丈夫だろうけど」
拠点に帰ったら注意を呼びかけようと3人は決めた。
<幸運を鍛える>
京太郎「……表」
キーンと甲高い音を鳴り響かせ空中に浮いたコインが裏表裏と何度も姿を変えて下へと落ちてくる。
それを手の甲で受け止めて中を開く、表だった。
京太郎「裏かな」
もう一度キーンと甲高い音を鳴り響かせコインを空中へと投げる。
先ほどと同じように手の甲で受取ると中を見た。
コインは裏だった。
京太郎「結構当たるな」
彼此9回ほどコインを見ずに当てている。
京太郎「……それにしても暇だ」
何故こんなことをしているのかというと……暇だった。
寝るにしてもお風呂に入りたいのだが、女性達が入ってるので時間を潰していた。
<出会い話>
京太郎「そういえば…」
姫子「うん?」
煌「なんでしょうか?」
お風呂から上がりのんびりと過ごしている姫子と煌に声をかける。
それにしても……姫子は何故自分のYシャツを着ているのだろうか……と気になったがそれは、まぁいい。
京太郎「前に聞いた話あったろ」
姫子「まえ?」
煌「えーと……」
京太郎の言葉に2人は疑問符を浮かべる。
京太郎「2人の出会い話し」
姫子「あーあー……」
煌「そういえばありましたね」
京太郎「それ、聞きたいなって」
前に聞いた二人の話が気になっていたのだ。
前聞いた話では、何かあったらしいのだが何があったのだろうかと、気になった。
姫子「話してもよか?」
煌「姫子さんがよければ」
姫子「それじゃー……」
こうして2人の昔話が始まった。
煌「おーおー!人がいっぱいです!」
目を輝かせながら辺りを見渡す。
中学校の頃の部室と違い、広く綺麗であり、麻雀に必要な物が用意されている。
人も多く麻雀部だけでも数十人は居るだろう。
煌「流石は新道寺!すっごいですね」
煌は嬉しそうに辺りをパタパタと見ていく。
中学校の時と比べ物にならないぐらいなのだ。
テンションが上がり止まらない。
「そこの1年生、こっちに並びなさい」
煌「あっ…!すみません!」
辺りを見ていると先輩から注意をされた。
そういえば、紹介の為にここに呼ばれたのだ。
顔を赤くし列へと戻る。
そうすると先輩たちとの顔を合わせに規律などを教えられていった。
煌(むー…やはり1年生は上に上がらないと満足に打てませんね)
渡された本を読みつつ煌は自室で呻る。
流石に厳しくランキング上位者しか時間が取れなさそうだ。
元々人が多く麻雀卓にも限りがあるのだから仕方がないのだが……中学の時は自由に打てた分窮屈だ。
煌「明日から頑張りますか!」
「わっ」
煌「あぁ…すみません」
「別によか、煌ちゃん張り切ってるね」
煌「勿論!麻雀の実力を上げる為に来たのですから!」
煌は手で胸をドンと叩き自信有り気に胸を叩いた。
そんな煌に同室の子もくすくすと笑った。
同室の1年生の子と雑談をしつつその日は終えた。
翌日からはランキング戦が始まる。
自分がどのぐらい出来るのか楽しみであった。
「それじゃこれからランキング戦を始めるんだけど……鶴田姫子さん」
姫子「はい」
「あなたは2年生の方へ行って練習してください」
姫子「………はい」
一年生の中から1人の少女が前に出た。
茶色かかった綺麗な髪の毛を肩口まで伸ばし髪をピンで留めている。
目元はパッチリとして整えっており、まつげが特徴的だ。
そのせいか少しばかり目がキリっとして気が強そうにも見える。
別嬪さんだ。
煌(ふぁ~……綺麗な子ですね)
姫子は呼ばれるとチラっと此方を見て少しだけ悲しげな表情をすると2年生の方へと歩いていった。
その表情に少しばかり思うものがあるものの、今は声をかけられずじっとする。
煌(どうしてあの人だけあちらに行ったのでしょうか?)
(えっと煌ちゃんは、鶴姫のこと知らないの?)
煌(はて?)
不思議そうにしていると隣にいた子が小声で教えてくれる。
鶴姫という言葉に何処かで聞き覚えがあるのだが思い出せない。
(インターミドルで暴れた哩姫コンビなんだけど)
煌(あーあーあの2人ですか)
言われて思い出した。
奇特な上がり方をする2人で注目を受けていた。
残念ながら個人戦には出てなかったので思い出すのに時間がかかってしまった。
煌は、思い出したことにスッキリとして前を向いた。
(何であの子ばっかり)(白水先輩の御蔭じゃないかな)(ずるいな)
煌(………うーん?)
周りからのヒソヒソ話が聞こえてくる。
聞こえてくる内容は何とも素晴らしくないものだった。
妬みなどはどこでもあるものだと思いつつ煌は前を向き声を聞かない事にする。
とりあえず、ランキング戦が終わったら話しかけてみようと煌は思った。
煌「うわー………」
「煌ちゃん大丈夫?」
ランキング戦が終わり1つの卓で煌が煙を上げ倒れ込む。
名門なだけがあり、すごく強い人が多く集まっていた。
これでも優希や和といった強者と戦っていただけあって自信があったのだが、井の中の蛙だった事を思い知った。
煌「いやー参りました、ここまで強いとは」
「そんな事言ってるけど楽しそうだね」
煌の顔は笑っており、麻雀が楽しくて仕方がないとばかり輝いていた。
そんな煌の顔を見て同室の子はくすりと笑った。
自分自身ボコボコにされて落ち込んでいたのだが、煌の前向きさの御蔭で気持ちも晴れた。
煌「さて……と!」
「何かするの?」
煌は、時間を見て立ち上がる。
そろそろ部活も終わる頃だ、姫子のほうも終わっただろうと思い2年生のほうへと向かおうとした
「って何処いくの!?」
煌「鶴田さんに声をかけようかと!」
「あー……えーと……やめたほうが」
煌「何故ですか?」
歩こうとすると止められた。
不思議そうに顔を覗き込むとその子は顔を真っ赤にさせ俯くとボソボソと呟く。
「えっと……鶴田さんはあっちの気があるって話で……」
煌「うん?あっちの気?」
意味が判らなかった。
そんな煌に同室の子は、辺りを見渡し人が聞いてない事を確認して煌の耳元で話す。
話を聞いていって煌も顔を赤くした。
煌「うん……世の中は広いですね」
「あくまで噂だけど」
簡単に言えば同性愛者の話だ。
よく漫画などで男子校や女子高で話で出てくるが本当にあるとはと考え込む。
何でも気に入った子を……という噂が姫子には、立っているらしい。
煌「うーん……でも噂ですし、話してみないと判らないですしね」
「そうなんだけどね」
そうこうしていると扉が開き2年生と3年生が入ってくる。
そこには姫子も居り、姫子は髪を後ろで縛った女性に楽しげに話をかけている。
先ほどの憂いの表情が嘘のようだ。
「あの人が白水先輩だよ」
煌「ふむ……」
確かに仲良さげなのだが、煌から見たら優希と和みたいだなとしか思わなかった。
先ほどの表情などが気になっていたのだが、あの様子なら大丈夫だろう。
煌「しょうがありませんね、今度にします」
「ほっ……それじゃ並ぼうか」
煌「えぇ!」
2人並び列と並ぶ、皆で挨拶を交わし最初の1日が終わった。
煌「などがありまして」
姫子「懐かしか」
京太郎「なるほど……姫子と哩は仲良すぎるからな」
最初に会った時なんか哩に嫉妬したぐらいだ。
そんな事を思い出しつつ頷く。
京太郎「………」
煌「それじゃ寝ますか」
姫子「ぬっと」
そうして2人が眠る準備を始める。
そんな2人に京太郎は慌てて呼びとめた。
京太郎「えっ…ちょっと!続きは!?」
まだ姫子と煌が話しをしたところまで進んでいない、肝心の部分が聞けてないのだ。
そんな京太郎に姫子と煌は顔を合わせていった。
姫子&煌「「また今度」」
京太郎「そんな……」
息の合った二人の言葉に京太郎は項垂れた。
一体この二人には、どんな事があったのだろうか……今度また聞いてみよう。
<柵の作成 3段階目>
京太郎「柵を強化しておきません?」
姫子「んっ!賛成!」
哩「どうせなら竹で槍でも作って柵につけておくか」
煌「それはいいですね!」
仁美「おいそれと近寄らんね……たぶん」
美子「やらないよりましだしね」
皆で柵をどのように作るか考えていく。
最近周りで熊の痕跡が見つかった事もあり、今以上に注意が必要だろう。
ここには、オカルトが使えない者も多いし戦える者も少ない。
竹を削り側面につけることで出来るだけ近寄らせないようにする事にした。
京太郎「さて……誰に頼むか」
京太郎「……全員でやっても終わらないか」
京太郎「姫子意外でお願いします」
全員「了解!」
京太郎は夢を見る………
「何をしとるか、ルフクトゥ」
「………」
山の山頂付近で少年は、老人に声をかけられた。
声をかけられた少年はゆっくりと落ち着いた態度で声の方向へと視線を向ける。
そこには自分の祖父である老人が立っていた。
自分の祖父は既に70を越える年だというのに老いを全く見せず元気に山を歩いている。
「あそこには、何があるの?」
幼いルフクトゥは、山の山頂を指差した。
そこには大きく平らになった山頂に何やら物々しい神殿があり、周りを頑丈な柵で囲んでいる。
唯一の入り口には、門番と思われる二人の若者が険しい顔で周りを見ていた。
「あれか……あそこには神様がおるんじゃよ」
「神様?」
老人の言葉にルフクトゥは不思議そうな表情をしてもう一度神殿へと視線を向ける。
それに老人も気づき、普通の子より賢く好奇心に溢れている孫を優しく見守った。
「そうじゃ、かなり昔の話…大きな音と共に光と火を纏いて振ってきたのじゃ」
「降って来た?どこから?」
ルフクトゥの言葉に老人は指を天へと向ける。
それにつられてルフクトゥも空を見上げた。
其処には、青い青い空が広がり雲ひとつなかった。
「遥か空の彼方から金色に輝く石版を持って振ってきたのじゃ」
「……持って降って来た」
「そうじゃ」
そう言って老人は帰るぞと言って下山していく。
ルフクトゥは少しばかり考えてもう一度神殿を見た。
「……宇宙から飛来した神様か」
そう呟いてから見た神殿は、何か禍々しいオーラを纏っているように見えて嫌な気持ちになった。
最終更新:2026年01月14日 21:55