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下を見ると暗い暗い底になっていて、ルフクトゥが笑いながら落ちていく様子が見えた。

それを唖然と見ているとルフクトゥの姿が闇に紛れ見えなくなる。


「おもっ!」

「がんばです!部長!」

京太郎「おわっ!?」


呆然と見ていると上から声が聞こえ、ぐいっと上に引っ張られた。

すぐに視線を上に向けると真っ暗な空の一箇所に穴が空いており、そこから鎖が伸びている。

その鎖は真っ直ぐに京太郎の腕に延びており絡まり、これが支えになっていたのだと判った。


京太郎「哩?姫子?」

哩「今度は引き上げっと!」

姫子「私も!」


ずるずると次第に上に上に行くと2人の顔が見える。

その光景を見て、2人が助けてくれたのだと判り、泣きそうになった。

そして……最初の頃の遺跡で姫子と哩とを助ける為に穴に飛び込んだ時を思い出した。


哩「やっ………と!」

姫子「はふぅ………」

京太郎「っ……はぁ」


最後の最後まで引き上げられ、ようやく硬い地面へと降り立つ。

哩と姫子は体力的に京太郎は精神的に疲労ており地面へと倒れこんだ。

そんな3人を心配そうに煌達が駆け寄り世話をしていく。


京太郎「……ありがとう」

哩「んっ……借りは、返した」

姫子「えへへ……無事でよか」


なんとか体を動かし、2人をぎゅっと抱き寄せ、お礼を言う。

そんな京太郎に2人も同じくぎゅっと抱きしめお互いに安堵する。




煌「ご無事で何よりです」

京太郎「本当にな」

姫子「京太郎~……」

哩「無事で安心した!」


ぐでーと地面に横たわっていると煌が上から覗き込んでくる。

煌の顔は安心したかのように微笑んでおり、此方も釣られて微笑む。

そんな2人の横で姫子と哩は京太郎に引っ付き離れないとばかりに胸に乗っかる。


京太郎「こっちは大丈夫でした?」

美子「問題ないかな」

仁美「ぴかー光って京太郎が居なくなったぐらい」


此方に問題はなかったか聞いてみるとそんな答えが返ってくる。

どうやら巻き込まれたのは自分だけで他の人達には問題なかったようだ。

そのことに少しほっとし一息つくとそのままぐったりと横たわったままになる。

結構早めに終わった戦闘であったが今までとのと密度が違い、精神的にも肉体的に疲れた。


煌「何かやっておくことありますか?」

京太郎「あー……ならそこら辺を探索してもらって何か見つけてもらっても?」

美子「なにかあるの?」

京太郎「アイツの事だから『奴』についての研究書とか隠してるかもと」

仁美「奴?」

京太郎「後で話します」


ぐったりとする京太郎を見ているせいか、それ以上の追求もなく皆が皆、バラバラに散らばり辺りを探索していった。


煌「これですかね?」

京太郎「えっと……」

姫子「京太郎~……」

哩「うぅ……」

京太郎「……あぁーそれっす」

美子「これでいいんだ」


煌が持ってきた資料の文字を読み解き、それだと当たりをつける。


仁美「とりあえず……外に出よ?」

京太郎「そうですねっと……ほら2人も……俺は大丈夫だから」

姫子「あい」

哩「うん」


京太郎はよろよろと起き上がると同時に2人に手を貸し起き上がらせる。

そして外へと出るのであった。

智美「わはは」

京太郎「あれっ……幻覚が見える」

智美「迎えに着たのに酷いな」


外へと出ると眩い光を浴びせられ、智美の幻覚を見る。

この場所に居る事を誰に伝えてないので幻覚かと思い目を擦るも目の前の智美と車は消えない。


京太郎「なんでここに……」

智美「そこに乗っている人がここに居ると教えてくれた」


智美の言葉に従い車の上へと視線を向ける。

そこには先ほどまで傍に居た筈の存在が寝転がりのんびりとしていた。


咏「やーやー……おつかれぃ」

京太郎「何処にも居ないと思ったら」

仁美「便利やね」

咏「役に立つだろ?」

京太郎「……そうですね」

咏「あれ?」


咏のドヤ顔に少しだけ返し車に乗り込む、正直もう疲れきり会話をしたくない。

全員が無言で乗り込むと、荒い運転の元、船へと帰宅するのであった。



<咏と哩姫>

京太郎「………」

哩姫「………」

咏「ん~……♪」


新道寺の部屋で哩姫と咏が向かい合い……向かい合っている、たぶん。

咏は寝転がり、京太郎の膝の上でのんびりとし、哩姫の2人は、それを忌々しく見ている。

2人が咏を離そうとしないのは無駄であるからだ、どうせ退かそうとしても透けて触れなくなる。

だからこそ、何も言わず視線だけを送っているのだ。


京太郎「仲良く……できない?」

哩姫「無理!」

咏「私は別に構わないぜい?」

哩「とりあえず……京太郎から離れろ」

咏「えー……」

姫子「話はそいから」


2人の言葉に咏は渋々と離れるとそのまま隣に正座する。

それを見て、2人はようやく、ため息を付いて話し合う姿勢へとなる。


咏「……膝『駄目』……ちぇ-」


チラっと膝へと視線を送る咏に2人がすかさず答えた。


京太郎「……そのー咏さんは、俺に好意があるので?」


話が進まないと思い、しょうがなく京太郎から切り出す事にした。

前から気になっている事を素直に聞いてみる、若干自分で言うのは気恥ずかしいがこればかりはしょうがない。


咏「う~ん……わっかんねー」

京太郎「あぁ……うん、わかんないんだ、そんな気はした」

姫子「うー!」

哩「はぁ……」

姫子「そん年になって恋とかしてなかと?」

咏「麻雀一筋だったしなー……私なんてまだ、ましじゃね?」

哩「麻雀プロって……」


咏はバチンバチンと扇子を閉じたり開いたりして遊びながら答える。

その際に咏は困ったような表情で視線をあっちこっちに向けているので本当の事だとわかった。


京太郎「こういう時はどうすれば?」

姫子「自覚なしやけん、自覚してから振ればよか」

京太郎「あっ……振るんだ」

哩「浮気すっと?」

京太郎「……しない」

姫子「とりあえず、一時休戦!話はそいからやね」

咏「う~ん……どうなんだろうな」

結局の所、 咏が自分の気持ちに気付けてからと言う事で一時休戦となった。


<哩と会話>

京太郎「何してんだ」

哩「あー……京太郎」


廊下を歩いていると浮き輪に乗りプールで浮いている哩を見つける。

下に降り哩の元へと近づくと浮き輪が丁度近寄ってきていた。

哩の顔を覗くように上から見ると哩は気だるげな表情でこちらを見てくる。


京太郎「どうした」

哩「ん~~……昨日ん疲れがあって……な」

京太郎「そっか……飲むか?」

哩「ん!貰う」


丁度持っていた飲み物を差し出すとのんびりと手を伸ばしそれを取ろうとする。


京太郎「あっ」

哩「わぷっ」


変な形で取ろうとした結果、バランスを崩しそのままプールの中へと消えていく。

哩が居た所を唖然と見ていると、そこからぶくぶくと泡だけが水面に浮き出てくる。


哩「ぷはっ」

京太郎「大丈夫か?」


暫くすると水面から哩が顔を出し、げほげほと咳き込む。

手を伸ばし、哩を地面へと引っ張り上げると声をかける。


哩「は~……問題なか、はふ」

京太郎「気抜けてる?」

哩「かも……昨日んは今まで体験したことなかことやったし」

京太郎「だな」


2人は並び、昨日の事を思い出す。

昨日の事なのに遠い昔のように感じられ、頭がぼーとしてくる。


哩「……ん~、暇なら傍に居って?」

京太郎「判った」


擦り寄ってくる哩の頭をポンポンと叩き、2人は暫くの間、くっ付きのんびりと水面を眺めていた。



京太郎「咏さん居る?」

咏「どうした~?」

京太郎「探索するから一緒に来てくれません?」

咏「……別に離れられないんだから、呼びかける意味なくね?」

京太郎「それもそっか」

咏「まぁ、いいや。ほらいこうぜ」

京太郎「………俺の肩に乗らないで貰えますか?」

咏「別によくねー?重くないし」

京太郎「確かに重くないけど……その、お尻が顔に……」

咏「うりうり♪」

京太郎「ちょ!?」

咏「まぁ……遊ぶのはこのぐらいにしとくか」

京太郎「まったく」


ケラケラと自分の肩で笑う咏にしらけた視線を送るも咏は気にせず、扇子を広げあっちあっちと示すばかりだ。

ため息をつき、しょうがなく、咏の指す方向へと足を進める。






京太郎「ここは……」

咏「ありゃ……山の中央付近に出たねぃ」


あっちこっちへと進んでいると何故か山の中央に出ることになった。

暫し休憩をし辺りを探索すると丁度泉が湧いている所があり、一休みできそうである。


京太郎「……頂上行く時にここいいかも」

咏「ボス戦前の休憩ポイントだな!」


言い方がアレだが、確かにそうのようだ。

近道になるうえに休憩も出来良いところだと思いつつ忘れないように地図に刻み込む。

暫くの間、咏と共に安全を確認しつつ麓を眺めていた。


山の休息所を発見しました。



<咏と会話>

咏「なーなー」

京太郎「……ここお風呂場なんすけど」

咏「別によくね?」

京太郎「よくねーよ!?」

咏「うへへ……お姉さんに見せてみ」

京太郎「………」


お風呂に入っているといつの間にか咏が入り込んでおり、のんびりとお風呂に浸かっていた。

そして変な笑い声を上げ、人の物を見ようと近寄ってくる。

色気などまったくなく、正直嫌な気分になる……美人なのが余計に台無し感を出していた。

次第に面倒になり、近寄ってくる咏に向かってバスタオルを取って見せた。


咏「あ……う……」

京太郎「ドヤ」

咏「あばばばばば」

京太郎「勝った!」


すると咏はそんな反撃をされると思わず、顔を真っ赤にさせ煙のように消えていった。


京太郎「………なにしてんだろ、俺」


その後、急に虚しくなりしょんぼりとお風呂に浸かるのであった。




<研究書の解読>

京太郎「う~ん」

姫子「どげんしたと?京太郎」

哩「……持ち帰った書類ば見とったか」

京太郎「そそ、少しでも山の上の奴の事を探らないと……」

姫子「こいが終われば、帰っかな?」

京太郎「たぶん」

哩「そいで進みは……」

京太郎「実はまったく、内容がな……専門的過ぎてきつい」

姫子「そっかー……こいばかりは京太郎に頼るしかなか」

哩「うん、私らじゃ何書いてあっかわからんし」

京太郎「文字が昔の奴だしな……こればかりは英雄の記憶に感謝だ」

姫子「うん、そいばかりはね」

哩「不死必要なもんも多かったけどね」

京太郎「まーな」



<咏の憂鬱>

咏「わかんねー……わっかんねー!」


月明かりの下、大きく手を広げガォーと叫ぶ。

その叫びは思いのほか大きく、遠く遠くへ届く。

だが、その叫びに反応した者はまったくといっていいほど存在しない。

何故なら今現在咏が居る世界は『生物が存在しない世界』なのだから。


咏「うがーー!」


更に大きく叫び、乗っていた崖からぴょんと飛び降り、下へ下へと落ちていく。

地面に激突すれば咏の命など呆気なくなくなるだろう。

だが、咏は気にせずに落ちながらずっと何かしらを叫び表情豊かに顔を動かしていく。


咏「だーー!!」


遂に地面に衝突する瞬間、咏の体はその場から何事もなかったかのように消え去った。


京太郎「!?!?」

咏「到着!」


咏の体が次に現れた場所は、元の世界の京太郎達の私室だ。

パっと現れた咏はそのまま空中に投げ出された状態で現れ、下で寝ていた京太郎へと抱きつくように落ちた。

勿論、そのまま落ちたせいで京太郎に衝撃が伝わる。


京太郎「うごごご………」

咏「はーすっきりした、んじゃ、おやすみ」

京太郎「………」

咏「すぴー」

京太郎「なんなんだよ」


何が起きたのか、何が行なわれていたのか、まったくもって理解できず、目の前で寝ている咏を見て

京太郎は不思議そうに傷むお腹を擦るのであった。


<哩と会話>

京太郎「哩も散歩か?」

哩「ん、会議がお休みになってな」


外へと出ると波と戯れている哩を見つける。

彼女は、押し寄せる波を避け、引いていくとその波を追っていくという遊びをしていた。

微笑ましく思いつつ声を掛けると、どうやら会議は休みらしい。


哩「最近、色々とあったから」

京太郎「あー……そしてこれからが本番と……」

哩「んっ、久達も気にしよっらしか」


哩は、そう言うとスカートが濡れぬ様に両手で抱え込み、また波を避ける。

その様子は可憐で良く似合っていて、可愛いと思った。


京太郎「そっか、ならゆっくりと休まないとな」

哩「んっ、熊やゾンビは久達で対処すっらしか」

京太郎「そっか」

哩「うん」


それだけの会話を終えると2人は黙り込む。

たぶん思っていることは同じ事なのだろう。


京太郎(いつになったら帰れるのか)


そんな事を思ってしまう。

漂流して、島に流れ着いてから心休まる時が少なすぎる。

もしもだ、このままずっと続けば心が壊れるかも知れない、そう思うと不安になってくる。


哩「あっ」

京太郎「あっ」


そんな事を思っていると哩の足に波が当たる。

話に夢中になっていて忘れていたようだ。


哩「負けた」


とりあえず、何があろうと目の前の笑う彼女を守ろうと心に決めた。







京太郎「姫子も……!?」

姫子「きょー……!?」


それは森に入った瞬間に起こった。

森の中に姫子を見つけ、声を掛けた瞬間、姫子の影が蠢き、彼女を包み消えた。

一瞬の出来事に呆気に取られるも、慌てて辺りを見渡す。


京太郎「っ!!……姫子!!」


腰につけていたナイフを逆手に取り、必死に姫子の名前を呼ぶ。


姫子「わぷっ」

咏「ほいほい」

京太郎「あ……?」


必死に探しているといつの間にか傍に居た、咏が姫子と共に現れた。

これには必死に探していた京太郎も驚き、目を見開く。


京太郎「……なにが」

姫子「そこ!」

「………」


何があったのか判らず、ふらふらと姫子の無事を確かめる為に手を伸ばそうとすると

姫子が地面に倒れつつも銃を握り、ダァン!と拳銃をぶっばなす。


咏「ほれほれ、敵だ」

京太郎「っ!!」


咏の言葉にしゃがみながら振り向き、持っていたナイフで一閃を放つ。

何かが切れた感触を手で受け止めながらもすぐさま体を地面に投げ打つようにするりと転がった。


姫子「逃げた?」

咏「だな」

京太郎「なんなんだ」


姫子の言葉に注意深く辺りを見渡すも、周りはただただ森が風に揺れる音が残っているだけだ。

1分が経ち、5分が経った頃、ようやく安全を確認し終えた。


姫子「きょ……わぷっ」

京太郎「良かった!良かった!」


名前を呼ばれる瞬間に姫子に抱きつき、温もりを感じ、姫子の存在を確認しほっとする。


京太郎「それで何があったんだ?」

姫子「私も良く判らなか」

咏「……ん~…黒い影が姫っちを取り囲み攫おうとしたっぽい」

京太郎「影?」

姫子(……姫っち?)

咏「何かよくわかんねー、咄嗟に庇ったけど…相手はよく見えんかったな」





京太郎「………」


咏の話を聞いて暫しの間、考え込む。

さっきのはなんだったのか……英雄の記憶を手繰り寄せるもそんな存在はまったくもってない。


咏「とりあえず……帰って報告だな」

姫子「そいがよか、他ん人達にも教えんと」

京太郎「そうだな、そうするか」


2人の言葉に頷き、その場を後にする。


咏「ただ……」

京太郎「ただ?」

咏「ん~……上に踏ん反り返っている奴と似てるなと」

京太郎「……そうかな?」


咏の言葉にルフクトゥに見せられた夢を思い出す。

夢の中で『山の上に存在』する奴を見ているが、形所か大きさもばらばらである。


咏「形とかじゃなくて中身かねぃ、雰囲気が似てた」

京太郎「……ルフクトゥの研究書を読み進めれば判るかもな」

姫子「はふぅ…結局食べ物、見つからなかった」


しょげる姫子に苦笑しつつ、京太郎達は帰路へと着いた。




<煌と会話>


あれから報告を行い、鬱々とした気分を代える為に外へと出る。

相変わらず天気が良く、憎たらしいほどの太陽の光をあび、腕で日光を遮断すると遠くに煌が見えた。


煌「おや、こんにちは!京太郎君!!」

京太郎「こんにちは、畑の具合はどうですか?」


近くにより、言葉を交わす、そこなしの元気な煌の笑顔に幾らか心が和らいだ。


煌「う~ん、難しいですね。海の上ですし、潮風が厳しいかと」

京太郎「やっぱりか……」


デッキの上で作物を育てられないかと試しているものの上手く行ってない様だ。

それもしょうがないことだと思い、批難はしない。


煌「まったくもって知識ないですからね」

京太郎「そうなんですよね」

煌「京太郎君は、何か育てた事は?」

京太郎「サボテン……なら」


煌の問いに正直に返すとカラカラと笑われた、解せぬ。

まぁ……花など咲いた事ないのだが。


煌「どうです、一緒にやりますか?」

京太郎「いいんですか?」

煌「問題ないかと、何時もやってるのは尭深さんと咲ちゃんぐらいですし」

京太郎「わかりました、やりますか」


その後、何処から持ってきたのか麦わら帽子を被らされ午後いっぱい農作業をたっぷりと体験した。





<咏と会話>

マストによじ登り、空を見上げる。

昼間が快晴であった為、雲ひとつ無い綺麗な夜空が此方を静かに見守っていてくれた。

暫くの間、ボーと何も考えず見つめ続け、満足した頃にポツリと呟く。


京太郎「………います?」

咏「いんぜ」


呟けば、トンと背中に軽い衝撃が走り、咏の声が聞こえてきた。

咏の存在を認識すると振り向くこともなく、もう一度空を見上げる。


京太郎「………」

咏「………」


2人の間に会話らしき会話もなく、下から聞こえてくる微かな喧騒に耳を傾ける。

別に喋りたかった訳ではない、ただ……ただ、空を見ていると1人で居るのが不安になり悲しくなった。

そんな気持ちが咏に通じたかは判らない。

それでも、何時もは騒がしい咏も静かに黙り、2人は背中合わせなり座り続けた。



京太郎「ありがとうございました」

咏「別にいいぜぃ、こんぐらい」


暫くし、下からの声も聞こえなくなり始めた頃、ポツリと静かにお礼を言った。

その声を聞き、咏は先ほどとは打って変わって陽気に笑い声を出す。

そんな咏に苦笑しつつ、京太郎は一言断りを入れマストから降り部屋へと戻っていった。


咏「………はてさて」


マストに残こった咏は、京太郎が見えなくなるまで見守り続け、見えなくなると静かに霞のように消えた。



<麻雀大会>

京太郎「さてと……打つか」

姫子「おぉ……京太郎がやる気に!?」

哩「珍しか」

京太郎「そうかな?」

姫子「うん、珍しか」

京太郎「……一応これでも麻雀部員だぜ?」

哩「……麻……雀?」

京太郎「………」

姫子(いつもスコップ担いとっとやけん、園芸部かと……)

哩(姫子ん言いたか事はよく判っと、ばってんそい言うと京太郎が泣くな)

京太郎(なんとなく2人の言いたい事が伝わってくるわ)


京太郎「さーて………誰と打つかなと思ったが!哩と姫子に目に物見せてくれる!!」

姫子「わわ……勝負すっと?」

哩「ほほーぉ……私らと打つか」

京太郎「いざ……勝負!」


<咏乱入>

咏「うんじゃ、よろしく!」

姫子「……よ、よろしく」

哩「オワタ」

京太郎「あぁ……(どうしてこうなった、勝って二人にお仕置きと思った矢先にこの人かー!)



咏「うわははははは!4000オールだ!」

京太郎「くっ!!」

姫子「やばか……こん人、手加減知らなかよ!?」

哩「まぁ……プロやし、プライドもあっけん、仕方がなかよ……ばってん!!!」


哩(1人じゃ無理でも!)

姫子(3人なら!!)

京太郎(勝てる!勝ってみせる!!)


咏「無理無理♪ほれほれ、またリーチだ!」

姫子「リーチ……したとですね?」

咏「ひょ?」

哩「ポン!」

咏「一発消されたか」

京太郎「………」タン

姫子「そいばポン!」

咏「あれ?」

哩「ここば通す!」タン!!

咏(おいおい、無茶すんな~……そこはど真ん中だぜ?だけど……その度胸認めてやる。それは安牌だ)

京太郎「……!」タン!

姫子「更にポン♪」

咏「うえ?……あれれ、もしかしてやばくね?私引けてねーんだけど」

哩「更に通す!」

咏「………」

京太郎「……ぬるりと来たぜ、リーチだっ!」

咏「………もしかしてこれ?」

京太郎「それです、ロォォォン!!!」

咏「まじかよ……でもさ、京太郎2位じゃね?私が落ちて2位の哩が上がって点数届いてないし」

京太郎「あれ?」

姫子「ぶちょーが1位になったね」

哩「ぶい!」

京太郎「あれれ???」

1位 哩   +100
2位 京太郎+121
3位 咏   +115
4位 姫子  +71 




お姉ちゃんですから>

煌「京太郎君!」

京太郎「は、はい?」

煌「しっかりと歯は磨かなければいけませんよ!」

京太郎「はぁ……」

煌「虫歯になったら大変です!無人島には歯医者さんが居ませんしね」

京太郎「そう……ですね」

煌「大事な歯を守る為に一緒に磨きましょうか」

京太郎「………うっす」


何故か煌と一緒にはを磨く事になり困惑するも嬉しそうにしているのでいいかと思い、歯を磨く。

チラっと横を見れば煌が嬉しそうにしており、謎が深まるばかりであった。


姫子「うへへ……♪」

哩「ん~~♪」

京太郎「……ぐー」

煌「おはようございます!」

京太郎「うぉ?!?」

煌「朝です!寝すぎは逆に体に悪いですよ!」

京太郎「………煌さん?」

煌「ほらほら、姫子もシャワー浴びてきなさい」

姫子「ふぁ~……しゃわー……」

哩「うう~ん……しゃわー……」


煌は、2人に服を渡すと背中を押し、追い出すとテキパキと掃除を始める。

呆気にとられ見ていたが、流石に汚したベットシーツまで掃除されそうになって慌てて煌を止めた。


京太郎「ストップ!スタァァァァァップ!!」

煌「どうかしましたか?」

京太郎「それは、それだけは俺が洗いますので!!」

煌「むーもっと甘えてもいいのですよ?」

京太郎「いえいえ、十分甘えてますよ。それより、どうしたんですか煌さん」


なんとかシーツだけを死守し、ほっと息をついた。

そして、何時もより前向き過ぎな煌に脅え、理由を問いただしてみる。


煌「私はお姉ちゃんですから!!」


そう元気に返された。


京太郎(お姉ちゃんよりおかんだな、うん)


京太郎は笑顔の煌に何ともいえずに黙り、心の中でそんなことを思った。

カンッ!


京太郎「寝てればいいのか?」

姫子「うん」

哩「そいでよか」


姫子と哩の言葉に素直に横になる。

なんでも今日は自分達が奉仕するからと言う事らしい。

出来れば彼女達を自分が喜ぶより、喜ばす方が嬉しいので何時も攻める側なので落ち着かない。

それでもと押され現状のように状態になった。


姫子「ちょっと重いけど我慢してね?」

京太郎「うん?」

哩「ん~……こいでよか、姫子乗って」

姫子「あいあい♪」


暫く待っていると哩が自分の上にお尻を乗せ足を開いた。

何をするのかと待っていると姫子も同じような格好で乗り、もぞもぞと動く。


京太郎「何を……」

哩「ん~意外と難しか」

姫子「こう……とですかね?」

哩「ん、できた」

京太郎「これって……」


黙ってみていると2人は、自分達の秘所で一物を挟み込み上下に動かし始める。

一物の両側から擦り合わせられ、2人の秘所の感触にが気持ちよく声が漏れた。

その声に2人は反応し、姫子は嬉しそうに、哩はやったとばかりに満面の笑みを浮かべ動きを早めた。


姫子「んっ……あっ、はぁ…♪」

哩「ふぅ……あんっ、あっしょこは……よか♪」

京太郎「くっ」


2人の柔らかい秘所がぐにぐにと一物に寄せられ形を変えていく。

その様を少しだけ体を起こし、眺めていると更に一物が硬くなっていった。


姫子「あはっ……硬く……なった♪」

哩「ん~~っ♪」


ぐちゅぐちゅと卑猥な音な水音を立てながらも2人は貪るように腰を動かしていく。

姫子はうっとりと目を細め、哩は絶頂に達したのか唇を噛み耐えるかのように顔を天井へと向けた。

何もせずに2人の乱れる様子をただただ寝ながら見るのも悪く無いと思いつつも腰を少しだけ動かした。



姫子「ひゃっ!?」

哩「ひぅ……こっちは逝ったばかりやけん!!」

京太郎「もうちょっと刺激欲しいなって」


腰を軽く動かすと二人はあわあわと慌てつつも腰の動き合わせて秘所をすり寄せてくる。

両手を後ろにつき体を支えているため、きつい筈なのだが快楽に溺れ2人はやめる気配すらなかった。


哩「っ~~~~~❤」

姫子「ぶちょー……また逝ったっとですか?」

京太郎(姫子はまだ余裕そうだな……なら)


哩はガクガクと振るえ、後ろへと軽く倒れこむ、そんな哩を姫子は少しだけ余裕そうに見守っていた。

くすくすと笑う姫子にちょっとだけ、イタズラ心が湧き起こり、体を起こし姫子のバランスをわざと崩した。


姫子「わわわ……京太郎……っひ~~~あぁん♪」

京太郎「1人だけ余裕なのは……どうなんだろなっと」

姫子「よ、よゆうじゃ……あっ、ん、あはっ❤」


姫子を汲み倒し、両手を掴み後ろを向かせると、丸見えの秘所に合わせそのまま一物を膣内へと沈める。

姫子の言うとおり、それほど余裕があった訳ではないのか、入れた瞬間にぎゅっと軽く一物が締め付けられた。

どうやら入れた瞬間に軽く絶頂してしまったようだ。

両手を掴んだまま、無理矢理のような形で腰を後ろから遠慮なく振っていく。

先ほどの行為で焦らされて限界近かったのですぐさま奥へと挿し込んでいった。


姫子「っ~~~~~~~~❤❤❤」

京太郎「ふぅ……」


そしてそのまま、一番奥で射精を行なう。

ドクンドクンと一物が脈打ち中に流れていく感覚を味わい、快楽で背筋がぶるっと震えた。

やはり、中で外では中のほうが断然に気持ちが良かった。

それは姫子のほう同じなのだろう、子宮に勢い良く熱い精液を与えられ一気に頭の中が吹っ飛んだ。

声にならない喘ぎ声に精一杯背筋を逸らしガクガクと体を震わす。

暫くし、体が前と力なく倒れこんだ。

それを腰と胸辺りに手を回し受け止めるとそのまま後ろから抱き着く形でぐいっと引き寄せる。


姫子「あぅあぅ……」


姫子は、だらしない顔をし満足げにしていた。

そんな姫子に出したばかりであった一物が元気を取り戻し、姫子の膣内で大きくなっていく。


姫子「ひぅ……お、大きく」

京太郎「まだ、足りねーや」

姫子「あっ……はぁ、ん~~は、はげしかよ」


片手を太股に持っていき支え、もう片方を腰辺りから胸へと伸ばし体を密着させ腰を突き上げる。

姫子は手をじたばたとさせ逃れようとするも筋力の差のせいか、まったくといってほど動けなかった。


姫子(うっ~~~愛して貰えとっとはよか。ばってん、今はイッたから厳しかよ)


涙目になりつつ、どうにか離してもらおうかと思い手を京太郎の腕に乗せるもまったく動かない。

そうこうしているとドンドンと動きが激しくなり、手に力が入らなくなった。


姫子「あっ❤あっ❤あっ❤~~~~や、やめっ❤」

京太郎「そうは言うけど……嬉しそうだし」

姫子「そんにゃこと……んっ~~~♪」


必死に耐えていたが、呆気なく絶頂し潮を噴き悶え天を仰いだ。

息をするのも苦しく、口を大きく開け涎が垂れるのも気にせず舌を出し喘ぐ。

目の前がチカチカと光、何も考えられなくなった。


姫子「ひぅ……」

京太郎「姫子」

哩「私も……」

京太郎「むぐっ」

哩「んちゅ……」


まだ射精をしていないのでぐったりとしている姫子の中を擦っていると顔を捕まれ、視線を強制的に変えられた。

そしてそのまま、哩に口付けをされる。

最初から、舌を入れお互いに貪りあうかのように上下左右、舌を絡めた。


哩「もっと……」

京太郎「ん、ちゅ」

姫子「あん、あっ、むりぃ♪」

哩「っ!!」


キスを続けていると秘所に何かが触れた。

驚き振り向くと、いつの間にか京太郎の片手が秘所へと移り弄り中へと入っていた。

ぐにぐにと膣内で縦横無尽に遠慮なく動く指に腰が引ける。

自分でする場合は、ある程度抑えることが出来るが他人からされているので遠慮もない。



哩「あっ、あっ……遠慮なさすぎ…っあんっ♪」

京太郎「哩、口」

哩「ん、ちゅっ……はぁ~…そこびりって❤」

京太郎「ここか」


膣を弄くられながらも苦しくなるほどキスを重ねる。

丁度感じる所を触られ、腰が少しだけ浮き上がった。

すぐにそこの場所から指が離れ、少々物足りなくなり、再度おねだりをする。


哩「はぁ……ん、ちゅ」

京太郎「ん~~」

姫子「っ」

京太郎「そろそろ限界!」

姫子「は、やく、……あんっ」

哩「こっひも……ちゅ」


そうしていると限界が訪れる。

姫子の中を押し上げるかのように突き上げ、哩の膣内を激しく傷つけないように弄った。

そして、奥で全てを出し切るかのように射精を行なう。


京太郎「っ」

姫子「あっ~~~~~~~❤❤❤」

哩「イっ、あんっ❤❤」


2回目の射精を行なうと姫子と哩がほぼ同時にお互いに絶頂しあう。

2人供、膣内をぎゅっと指と一物を厳しく締め付けあげ、搾り取るかのように動いた。




姫子「あ~………」

哩「ひぅ」

京太郎「はぁ……はぁ……」


流石に疲れ、姫子の中から引き抜くと、そのまま優しく姫子をベットへと寝かせる。

姫子は疲れたのだろう、目を瞑りぐったりとそのまま寝息を立て眠ってしまった。

少々無理をさせてしまい、心配になり顔を覗くも姫子の顔は幸せそのものを現しているかのように満足そうだった。


京太郎「……ごめんな、そしてありがとう」

姫子「ん~~♪」


自分の全てを受けきってくれた姫子の頭を優しく撫でる。

そうして、姫子の頭を撫で楽しんでいると腕を引かれた。


哩「う~~~~」

京太郎「……ま、まだいけるから」


振り向けば、頬を膨らませ不満げな哩と視線が合う。

姫子ばかりに構っていたからだと、すぐに判り哩を静かに押し倒す。

流石に2回もやっているので厳しいものがあるが、2人は彼女だ。

2人に優勢をつける訳もなく、姫子同様に哩もしっかりと愛していく。


哩「んあっ……ゆ、指もよかやけん、ばってん、こいがよか」

京太郎「くっ…いきなり締め付けるな」

哩「姫子ばっかりずるか、私も同じように愛して?」

京太郎「もちろんだ、好きだ。愛している」

哩「んっ、私も好いとー、くー好いとーっ」


正面から足を開き、京太郎を受け入れ、首に両腕を回すとそのまま口付けを行なう。

先ほどの激しい物ではなく、優しく、愛を確かめるように何度も何度も……。

この夜、3人は朝になるまでお互いの愛を確かめあっていくのであった。


カンッ!





<咏と鍛える>

京太郎「たまには体を動かなさないと」

咏「おーぅ、頑張れ~」

京太郎「………咏さんは鍛えたりとかは?」

咏「私は鍛えても変わらんし、意味ないからねぃ」

京太郎「そういうもんなんですか?」

咏「そういうものだよ。少年」


<器用を鍛える>

咏「これがこうで」

京太郎「なるほど」

咏「出来る限り自然に……」

京太郎「こんな感じで?」

咏「そそ、後は速度と精密さかね」

京太郎「なかなか厳しいですね」

美子「何をしてるの?」

京太郎&咏『イカサマの練習』

美子「………ほどほどにね?」

<哩と会議に出席>

久「それでそっちはどうなの?」

智葉「やはり侵攻は進んでるな、此処最近ゾンビを良く見かけるようになった」

久「そう……」

菫「東のほうも同じだな、前より遭遇する確立が上がっている」

霞「川の魚もやられてるわね。海のほうは大丈夫なのだけど」

京太郎「………」


壁に寄りかかりながら少し遠めに会議を眺める。

今回初めて参加したが、空気は張り詰め緊張が漂っていた。


京太郎「いつもこんな感じ?」

哩「うん、こんな感じやね」

竜華「朗報のほうが少ないからな~」

京太郎「そっか」


会議の中身を隣の哩に聞いてみると常にこんな感じらしい。

改めて哩達含め、まとめ役の人達に感謝をする。


京太郎「それにしても……ゾンビを見かけないと思ったら対処してくれてたんだな」

竜華「見回りは、順番こやね」

哩「私らは、特別に免除されてるから」

京太郎「特別?」

哩「ルフクトゥとか、色々と解決しとるから」

京太郎「あぁ……」


一度も見回りをしていない事を聞こうとすると先に答えられる。


京太郎「……早めに解決しないとな」

哩「まだ余裕はある。失敗せんようやればよか」

京太郎「あぁ」


哩と会話をしつつ会議の話に耳を傾けていく。



<食料調達>

京太郎「う~ん、このキノコは食べれるな」

咏「よくわかんねぃ」

京太郎「何度か食べているので」

咏「なるほど、でも似てる奴かあるだろ?」

京太郎「1度見れば判ります……何度かお腹壊してるので」

咏「た、逞しいな」

京太郎「いやいや、俺なんかまだまだですよ。姫子なんか……ほら」

咏「うん?」

姫子「どげんしたと?」


咏と共に姫子のほうを見れば姫子は、獲れた蛇の頭を落としびりびりと皮を剥いでいる。

最初こそ触るのも嫌で泣いていたが、慣れとは恐ろしいもので今では普通に取って調理できるぐらいになっていた。


咏「………」

京太郎「空腹の時って何でもするから」

姫子「あー……ザリガニとか以外に美味か」

咏「逞し過ぎね?」

京太郎&姫子『いやいや、生き抜くためですから』


京太郎と姫子の言葉に咏は大変なんだなと改めて理解した。


<煌と会話>

煌「おや、こんばんは」

京太郎「こんばんは、何をしてるんです?」

煌「紐を編んでロープを作ってます!」

京太郎「……紐なんてありましたっけ?」

煌「木の繊維を取って編み込めば作れますよ?」

京太郎「なるほど」

煌「次は山登りですからね、備えあればなんとやら!少々耐久性はありませんがないよりはマシかと」


煌はそう言って、嬉しそうに1つ1つ丁寧に紐を編んでいく。

暫くの間、そんな光景を見ていくと次第に紐は1本のロープへと姿を変えていった。


京太郎「すごいですね」

煌「まぁ、本を読んで知った知識ですが、以外に役に立つものです」

京太郎「………」

煌「京太郎君もやってみますか?」

京太郎「いいんですか?」

煌「ええ、というか1人だと地味に大変で」

京太郎「あー……手伝わせてもらいます」

煌「どうぞ、どうぞ」


煌の言葉に気まずそうに頷き、勧められながら隣に座るとあれやこれと煌に教わりながらも紐を作っていくのであった。


<研究書の解読(2/3)>

京太郎「これが……こうか」

美子「ん、飲み物どうぞ」

京太郎「ありがとうございます」

美子「うん、結構進んだね」

京太郎「はぁ……たまに変な方向に話が逸れるのが面倒ですけどね」

美子「研究者……らしいかな?」

京太郎「どうでしょうね、ぶふっ」

美子「あー……やっぱり苦い?」

京太郎「…めっちゃ苦いっす」

美子「デッキの上で育てたお茶葉なんだけど、苦味出ちゃったらしくて」

京太郎「な、なるほど。眠気は覚めますね」

美子「上手く行かないものだね」

京太郎「ビニールハウスとかで潮風とか防ぐのは?」

美子「風が強いから……」

京太郎「ならいっそ、プールを畑にしちゃうとか」

美子「プールを?」

京太郎「あそこの上は日が当たるように作られてますし、いいかと」

美子「なるほど、ちょっと相談してみるね」

京太郎「ええ……さて気分転換も済んだし残りを進めるか」


<キス!キス!!キッス!!!>

「京太郎……んっ」

「……いきなりだな」


朝起きると目の前に姫子の顔があり、口付けをされた。

口付けと言っても軽いもので唇と唇が少しくっ付く程度だ。


「おはよう、姫子」

「おはよう、京太郎♪」


人の上に乗っかっている姫子の頭をゆっくりと撫で、挨拶を交わした。

姫子はうっとりとしたような表情で目を細め、嬉しそうに体を震わせる。


「哩は?」

「ぶちょーは、会議に」


姫子を抱きしめつつ起きると隣で寝ているはずの哩が居ない事に気づく。

聞いてみれば、会議にもう出ているらしい……寝過ごしたか。


「ふぁ~……」

「朝食用意してくっ」

「了解」


ばたばたと嬉しげに駆けて行く姫子を見つつぐぐっと背伸びをする。

今日も良い日になりそうだ。



「京太郎~♪」

「よっす!」


昼になり、食堂兼レストランへと出向くと姫子と出会う。

辺りを見渡せば、他にも人がチラホラと居て思い思いに食事を楽しんでいた。


「姫子は?」

「ごめん、既に食べちゃった」


済まなそうにする姫子に問題と伝える為に笑う。

無人島の場合時計は据え置きタイプの物が多く、時間も気にする人は少ない。

その為か太陽が真上に来たら食べるという事が多く、合わない事も多かった。


「用意してくっ!」

「あー……」


自分で用意をしようとするも既に姫子が厨房へと走り去ってしまう。

こうなっては断る訳にもいかず、大人しく待つことにする。


「ご馳走様でした」

「うん、あっ……」


用意された食事を終え、手を合わせると姫子にじっと見られた。

どうかしたのかと思い見つめていると両手を頬へと当てられ動きを止められた。


「動かんで」

「うん?」

「んっ」

「むぐっ」


動かないでいると口付けをされた。

朝の時とは違い、数秒ほどくっ付け続けるものだ。


「ご馳走様でした♪」

「いきなりだな」

「食べカスついとった!」


両手を腰に当て胸を張る姫子に無いも言えずに黙る。

手で取ればと思うも姫子がしたのかったのだろうと察し何も言わない。



「京太郎~♪」

「はいはい」


夜になり、ベットに潜り込むと姫子が此方にダイブしてくる。

それを慌てず騒がず受け止めると優しく腰へと手を回し抱きしめた。


「んっ、ちゅ………ん~~♪」

「むぐっ」


夜の口付けは朝や昼と違い、濃厚な舌と舌を絡める激しい口付けだ。

お互いに貪るように何度も続ける。

離した時とかに涎が垂れるも気にせず、口づけに没頭する。


「あっ……残念、ババを引いてしまいました」

「……部長は混ざらんと?」

「私は、明日甘えっけん問題なか」

(あぁ……また苦情来そうだな)


そんな二人の隣で4人が思い思いにそんな事を言い合っていたとか。


姫子イベント カンッ!





<控えめな彼女>


「………ん」


朝起きると隣から視線を感じる。

のっそりと横へと体を動かしてみると隣で寝ていた哩と目が合った。


「……おはよう」

「ん、おはよう」


挨拶をすれば哩もしっかりと挨拶を返してくれる。


「起してくれればいいのに」

「ん~、見てるだけでよか」

「そうなのか?」

「んっ!」


起してくれれば相手も出来たものの、哩は否定し薄く笑うと手を繋いでくる。

自分の腕を抱きしめるかのように体ごと絡め、恋人繋ぎでぎゅっと手を重ねた。

哩の行動にきょとんとするもすぐにこれが彼女の甘え方と判り、そのままにさせる。


「………」

「………」


その後、静かに目を閉じ、姫子が呼びに来るまでゆったりとした時間を二人で過ごした。




「――であるからして」


午後は、哩に着いて会議に参加をする。

今日もいつもどおりに定期報告とこれからについての連絡。

相変わらず朗報と呼べるものは少なく、厳しいものばかりだ。


「……京太郎」

「おぅ」


自分の前に居た哩が振り向かずに小さな声で名前を呼んでくる。

その声に答え、体育座りからあぐらへと体勢を変え、哩を受け入れた。


「ありがと」

「どういたしまして」


床に座りながらも新道寺の為に頭を使い疲れたのだろう。

大人しく、哩の背もたれになり、彼女を支える。


「………仲良いのは良いことなのだけど、ほどほどにね?」

「あはははは」


お互いに微笑み会っていると注意を受けてしまい苦笑いを浮かべる。

姫子よりは控えめなので許して欲しい。


「―――っ!」

「お疲れだな」


会議も終わり、夕食まで残り僅かとなった時間。

哩と共にデッキに出ると体を思いっきり伸ばし、ほぐす。

二人で並び外の柵へと体を預け、沈んでいく夕陽を眺める。

特に会話らしき会話も無いのだが、嫌にならずむしろ心地良かった。


「………」

「………」


ぴったりと寄り添い、一緒に夕陽が落ちるまでの間、暖めあいながらずっとずっと眺めた。


夜になると自分の背中に背中を合わせ静かに読書をしている。

今日はとことん甘えたいようだ。

背中から伝わってくる暖かい熱が妙に心地よく、心を落ち着かせてくれる。

姫子のような激しさも明るさもない。

だが、哩にしか出せない静けさと心地よさがあり、大事な人と自信を持って言える。


「哩」

「ん?」

「大好きだ」

「………んっ、私も」


くるりと振り向き、言葉にすると哩はくすりと笑い、軽く口付けをしてくれた。


哩イベント カンッ!







<燃えた想い、燃え尽きる想い>

「………はぁ」


静かに誰も居ない空間で咏はため息をつく。

チラっと横の空間を見れば哩姫の二人と仲良さげにしている京太郎が目に入った。

前までは何事もなかった光景も今は虚しく感じ、見るに絶えれない。

はぁ~と深いため息をつき、視線を逸らす。


「あ~~~っ」


痛い、心が痛い。

ズキズキと痛み、じわりじわりと涙が溢れてくる。

最初こそ奪ってやろうかと思い立ち、色々としていたが、京太郎の傍に居るだけ判ってしまった。

京太郎の眼には、二人しか写っていない。

勿論、新道寺のほかの子達もしっかりと見えてはいる。

だが、その中でも二人だけは特別なのだろう、二人を見つめる目は熱を帯び、愛しげに、深く……深く……。


「はぁ~……これが失恋かぁ」


倒れるように後ろに寝転び空を見上げた。

見上げた空では星が輝き、咏を慰めるかのように照らしている。

だが咏にはそれが妙にイラつき、手足をバタバタと動かしどうしようもない気持ちを発散させた。


「あ~………最初に会ってれば、いやいや」


そんな事を思うも既に会ってしまってる訳でどうしようもない。

能力で会ってない世界へと行く?

無理だし、そこの京太郎は自分の知っている京太郎ではないので嫌だ。


「しょうがないかーしょうがないかーっ!」


うがっーと叫び、わんわんと泣く。

誰も居らず慰めも無いがそれでいいのだ。

咏の初恋は、理解したと同時に燃え尽きた。

カンッ!



<咏と食料調達>

京太郎「これとこれと……」

咏「こっちにキノコあんぜぃ」

京太郎「ども!」

咏「これ食べれんのかな?」

京太郎「あー……どうだろ」

咏「まぁ持ってけばいいだろ」

京太郎「ですね」

咏「ところで……その蛙は……」

京太郎「食料っす」

咏「………」

京太郎「………」

咏「まじで?」

京太郎「咏さんも昨日は美味し…「うわーうわー!」……」

咏「わかんねー!何もわかんねーから!」

京太郎「あー………」



<哩姫と艦内探索>

姫子「あい、京太郎?」

哩「姫子?」

京太郎「哩もか」


艦内を歩いているとバッタリと出会った。

3人は奇遇な事もあるものだと思いつつ目をパチパチと合わせる。


姫子「二人は何して?」

哩「私は、暇つぶしに」

京太郎「俺も似たようなものかな」

姫子「私と一緒だ」


どうやら目的もなく彷徨っていたらしい。

3人は軽く笑い合うと丁度良いとばかりに合流し一緒に艦内を歩く事にする。



姫子「特になんもなし!」

哩「あらかた調べたしな」

京太郎「あー……あの部屋以外は……な」


歩きつつも何か真新しい事がないかと見渡すも特に何事も無い。

皆で船を何度も探索しているだけあって探していない部屋は一箇所を覗きないのだ。


姫子「あの部屋はいや!」

哩「あー……姫子が死にそうなった」

京太郎「あの時は危なかったな」


中からごそごそと聴こえて来る神話生物の部屋の前を通り過ぎ、何処で休もうかと歩き続けた。


京太郎「あれ」

姫子「どげんしたと?」

京太郎「いや……プールの水抜けてるなって」

哩「あぁ……なんでもプールで食料ば作るらしか」

京太郎(あぁ……あの案通ったんだ)


暫しの間、会話を続けつつも交流を深めていった。



<穏乃に登山について聞いてみる>

穏乃「山?」

京太郎「そ、山」

穏乃「うんとね、必要なのは、食料200、水200、ライター、木材10、ロープ、防寒服かな」

京太郎「そんなもの?」

穏乃「あの高さなら十分過ぎると思う」

京太郎「そうなのか」

穏乃「1日で登って降りれるぐらいだし」

京太郎「他に気をつけることは?」

穏乃「水をよく飲んで、よく休憩して、一歩一歩確実に進んだ方が良いね」

京太郎「なるほどね」

穏乃「落盤とかないとは思うけど……雨の日の次は行かない方が良いかも」

京太郎「やっぱり崩れやすいのか?」

穏乃「そんな所もあるね」

京太郎「ふむ」

穏乃「まぁ、行く時は着いて行くし、その時その時でも教えるよ」

京太郎「おーありがたいけど、いいのか?」

穏乃「うん、良くわかんないけど、元凶がそこにいるんでしょ?」

京太郎「あぁ」

穏乃「なら協力し合わないとね!」

京太郎「………ありがとう」

穏乃「どういたしまして!」



<咏と会話>

京太郎「ん~」

咏「何悩んでんだ~?」


自室で悩んでいると上からドサリと咏が落ちてくる。

それをなれた手つきで受け止め横へと転がす。


咏「わ~」

京太郎「まったく、咏さん何か変わりましたか?」

咏「うん?」

京太郎「なんか……違うんだよな」

咏「あぁ~ん?」


何時ものように扇子を構え、仰ぐ姿を見ると何処か余裕があり、妖艶な雰囲気をだしている。

前までは子供っぽさが抜けないような人であったが、今の咏は『大人』と言って差し支えない。


咏「なるほどね、今になって私の魅力に気付いたか」

京太郎「いえ、違いますけど」

咏「相変わらず取り付く暇ないねぃ~」

京太郎「あの二人一筋っすから!」

咏「二人の時点で一筋じゃなくね~?」

京太郎「うぐっ」


咏の容赦ない言葉に京太郎は胸を押さえる。


京太郎「そうなんだよな、戻っても両親達になんて言おうか」

咏「あっはっは、沈め!色男!」

京太郎「うぐっ、結婚も考えると頭も痛い」

咏「どうにかしないとな」

京太郎「うごごごご」

咏「まぁ、あの二人と悩めばいいさ」

京太郎「……本当になんか変わりましたね」

咏「変わんない方が良かったか?」

京太郎「いえ、今の方はいいと思います」

咏「だろ?」


そう言って咏はニッコリと笑った。



<寝る>

京太郎「ふぁ~……寝るか」

姫子「わーい♪」

哩「姫子、飛び込むんはめっ!」

煌「だいぶ元気ですね!」

仁美「雨やったしね」

美子「お疲れ様」

咏「お酒飲んでもいいのかね?」



<食料調達>

姫子「………」

京太郎「どうだ?」

姫子「駄目、ゾンビ所か動物も……」


辺りを探っていた姫子が首を横に振る。

やはり、ゾンビのせいで動物自体が減っているのだろう。

罠にも掛からず、姿形も全くもってなかった。


咏「あー……ゾンビ以外にも原因ありそうだな」

京太郎「何か心当たりでも?」

咏「まだ憶測だし、言わない」

姫子「あっ」


微妙な表情で辺りを見ていた咏も声を掛けられると直ぐに姿を消してしまう。

本当に憶測の域を出ない為、根堀り葉掘り聞かれたくないのだろう。

しょうがなく咏に聞くのを諦めて姫子と山菜などを取る事に集中することにした。


京太郎「山菜も数が無いな」

姫子「しょうがなか、50人以上居っと、やばかね」

京太郎「……だよな」

姫子「船ん備蓄で何とかなっとっとよ、無くなったら……」

京太郎「船の畑が上手く行けばな」

姫子「うん、願うしかなか」




<咏と食料調達>

「ふぅ………」

「木の上に逃げな~」


何処からとも無く聞こえてきた声に京太郎は、特に疑う事無く従った。

辺りを見渡し、手ごろな木を見つけると躊躇無く足を引っ掛け、脚力で駆け上がり、枝を掴んだ。

掴んだ拍子に足が木から離れ握力だけで浮いている状態になるも持ち前の腕力で浮き続ける。

暫くの間、ぶらぶらと揺れ勢い良く足を動かし逆上がりの要領で枝へと飛び乗った。

その直後だ、それが真下を通っていたのは………。


「……ゾンビ」

「流石にねぃ」


生きた屍となった憐れな元人、ゾンビが京太郎達の下を歩いていく。

一瞬だけ考え、ここで倒そうかと思い腰につけていたナイフへと手をかける。


「ダメだ」

「!」


それに待ったをかけたのは咏だ。

いつの間にか出現していたのだろうか、優しく諭すかのように京太郎の手を握り返して止めていた。

少しばかり抗議しようかと思うも直ぐに咏の思考を読み取り、ふっと止めていた息を吐く。


「……火もないもんな」

「そうそう、京太郎じゃ致命傷を負わせられない」

「直ぐに帰って報告かな」

「それがいいねぃ」


ゾンビをここで倒す事はできる。

だが、それは一時的だけの話だ。

死んでいる者に息の根を止めるというのは如何なものかと思うものの現状では、火で燃やし尽くすか姫子のオカルトで止めを刺すしかない。


「咏さんのじゃダメ?」

「私の力は、限度がある」


咏も火が使えるので聞いてみるも扇子で懐を突かれた。

たぶんカードの事を指しているのだろう。

流石にこんなゾンビ1体に貴重なカードをしよう出来ず、素直に頷く。

その後、ゾンビがどちらかに行ったかだけを確認するとすぐさま船へと戻った。



<登山用の杖を作る>

「そういえばだ」


ふと思い立ち、倉庫へ行くと壁間じかに置かれている木材を手に取る。

ある程度の長さが必要になるため、時間を掛け厳選していく。

出来る限り長く丈夫でしなりが良い物を6つほど選びに紐を結び、外へと出る。

流石に倉庫や部屋で作業するのは掃除が大変なのでデッキへと出て準備を始めた。


必要な物は、ナイフ、木材の二つと時間。

作ろうと思ったのは、登山用の杖だ。


「………力が上がってて助かったかな」


座り込み、ナイフで木の棒を杖のような形へと削っていく。

もしも、島に来る前の京太郎であれば10回も削り終わらない位で手が痛んであろう。

器用さと力の両方を合わせ、一つ一つ丁寧に丁寧に削り形を整えた。


「まだ一本か」


暫くし、形となった杖を眺め振ったり地面にコツンコツンと叩いてみた、どうやら問題なさそうだ。

満足げに頷き、杖を置くと残りの5本の木材を見た。

正直、これだけでも結構疲れたのだが……今夜は大変そうだなと苦笑した。


「こっちは私!」

「なら、こっち」

「私はこれが良いですね!」

「ん~これかな」

「これを削ればいんだよね?」


木材に手を伸ばした手は空を切った。

すべてがすべて別々の手によって取られたからだ。

不思議に思い、顔を上げれば新道寺の面々が傍に立っていて木材を手に取っている。


「えっと……」

「流石に京太郎にばかり負担はさせなか」


姫子がはにかみ答えた。


「自分ん分は自分で……な」


哩が惚れ惚れするぐらい綺麗な表情で言った。


「まぁ、合って困りませんしね!」


煌は元気良く答え、笑っている。


「明日は筋肉痛やね」


仁美はげんなりとしているものの木材を離さない。


「ゆっくりと寝れるように頑張ろうか」


美子は、準備良く皆にナイフを渡している。


「あ~……はぁ、作り方は教えますので」


これには京太郎も目を白黒させるが次第に理解していき笑う。

それぞれが自分で杖を作ってくれるお蔭で今日は徹夜しないで済みそうだ。

暫しの間、皆でわいわいと騒ぎながら作業を施した。





<煌と会話>

「どんな感じですか」

「こんな感じですね!」


楽しそうに木を削り続けている煌に声をかけると元気な声で返された。

差し出された木はある程度形になっているものの不恰好でまだまだ分厚かった。

暫しの間、見て少し考え込む。


「どうかしましたか?」

「いや、どうしたらもっと良くなるかと」


自分でやってしまうのが一番の近道だろう。

だが、煌達が自ら買って出てくれたのだ、ここで京太郎が手を出したら本末転倒だ。

なるべく彼女達を主体に京太郎は助言を行い、杖作りをしていく。


「こんな感じで」

「ふむふむ」


説明をしつつ、時折方法を変え煌が飽きない様にやっていく。

以外にもこの中で一番飽きっぽいのは煌なのだ。

話を聞いたところだと自分が始めた漫画も途中で他の人に投げてしまったのだとか。

誰かの為なら幾らでも耐えれるが自分の事なると耐えしょうがないのだ。


「できた!」

「おめでとうございます」


暫くし、出来た杖を誇らしげに掲げている。

そんな煌を京太郎は優しげに楽しげに見守った。




<怜の一周占い>

「たぶん、これが最後やね」

「最後?」


怜が呼んでいると報告があったのは、就寝前のことであった。

こんな時間にと不思議に思い、扉を叩き中へと入るとそんな事を言われた。

最後……最後、なんとも不吉な言葉だろうか。

全てを終える、つまりは解決すると言うと中々よさげに聴こえるが怜が言うと不吉でしかない。


「時間的にも能力的にも体力的にも……私の能力はこれで打ち止めや」

「それって」


怜の言葉に言葉を失った。

今まで頼りになり、大いに助けてくれた怜には感謝が尽きない。

それでもいざ終わりとなれば不安を伴った。


「さてと……最後の占いは、『相手』についてやね」

「………」


最後の占いは、怜自身は決めた。

京太郎は、それに口を出さずに静かに見守る。


「各高校との仲も良好やし、大丈夫やろ
準備も整えてあるし、装備も平気や
問題は、相手のことやね
奴の事は私にも判らん、どうやって生まれたのか、どの様な能力を持っているのか、どうしてこんな事をするのか
こればかりは私よか詳しい人が居るからな」

「………」


今向かっても問題と怜が言ってくれた。

先ほどまで不安だった心がスッキリとし道がはっきりと見えた。

怜の言葉を1つ1つ吟味し、しっかりと頭の中で整理する。

各高校との仲は、そのままだろう。 どうやら後ろから刺されることはないようだ。

準備や装備の件も穏乃に話は通してある上に準備もしてある。何があっても対処できる。

最後の『相手』の話しについては、詳しい人『ルフクトゥ』の研究書を解読すれば大丈夫だ。


「怜さん、ありがとうございました!」

「うん、ほな私の出番はこれでお終いやね。信じ取る」


90度のお辞儀をし、しっかりとお礼を言う。

何より、怜の言葉が背中を押してくれる、これほど頼りになる援護はない。

何があろうと怜の信頼を裏切らず真っ直ぐ進むもうと心に誓い、その場を後にした。




<咏と食料調達>

京太郎「ふぅ……」

咏「いつもいつもご苦労なこった」

京太郎「こればかりは……早めにしておかないと」

咏「まーねぃ、厳しくなってくるもんな」

京太郎「そうなんですよね……って姫子?」

姫子「京太郎?」

京太郎「どうしたこんなところで」

姫子「見張り中」

京太郎「あぁ……なるほど」

咏「珍しいねぃ、新道寺がやるなんて」

姫子「人が足りなか、あとたまには動かんと」

京太郎「その辺はまかせっきりだしな」

姫子「んっ、温存してって言われっけど流石に甘えっぱなしは……」

京太郎「あー……」

咏「良いと思うけどねぃ、お互いに利用してんだし」

姫子「そう簡単に割り切れなか」

京太郎「だな、それで何かあったか?」

姫子「特にはなんも」

京太郎「……そっか」

姫子「ゾンビやったら私が有利やけん、心配せんでもよかよ?」

京太郎「それは無理だな、姫子に何かあったら泣くぞ」

姫子「――っ、京太郎」

京太郎「姫子っ!」

咏(なんだろうねぃ、この三文芝居は)


抱き合う二人を咏は呆れながら静かに見守っていた。



京太郎「………なんでこの顔?」


森を歩いているとプロカードを見つけた。

手に取り見てみると小鍛治プロの微妙な絵柄が載っており、拾えた嬉しさが段々と萎んでくる。

なんだろうか、キラ使用なのにハズレカードを引いたような気分になってくる。


京太郎「まぁ……いいか」


微妙でもプロの力を借りれるかもしれないのだ、ありがたく懐に入れその場を去る。



???「………」


そんな京太郎をとある影が木の陰に隠れつつ、はらはらと心配そうに見守っていた。




<仁美と美子と食事>


京太郎「こんなもんでいいですかね」

仁美「十分、十分」

美子「食べれるだけでもありがたいね」

京太郎「そうですよね」

3人『いただきます』

京太郎「流石に……食べ物も厳しくなりますね」

仁美「作物がなか」

美子「一応工夫をこなしてやってはいるんだけど」

京太郎「上手く行きません?」

美子「デッキの上では作れないね」

仁美「プールはまだまだ時間がかかっと」

京太郎「土運ぶのも大変ですよね」

美子「明華さんとかが頑張ってくれてるけど」

仁美「土に関連すっ能力ほしかね」

京太郎「そういえば……これだけ能力者が居て居ないんですよね」

美子「あと数日は掛かるかな」

仁美「全部埋めるには相当に」

京太郎(何か考えておいた方がいいかな)

美子「こっちはこっちでやっておくから京太郎君は京太郎君にしか出来ない事をお願い」

仁美「こんぐらいならこっちでなんとかすっ」

京太郎「……そうですか、判りました」

京太郎(咏さんのカードに小鍛治プロのカード、キーホルダーもあるし、そろそろ決戦が近いかな)


そんな事を思いつつ、部屋にある研究書を思い出し、頑張らねばと決意した。




<咏と筋力を鍛える>

京太郎「ふっふっふ」

咏「5~6~7~」

京太郎「………」

咏「8~9~10!」

京太郎「……あのー咏さん?」

咏「んぁ~?」

京太郎「腕立て伏せやるので乗ってくださいと俺は確かに言いました」

咏「言われたねぃ」

京太郎「……乗ってるか判らないぐらい重さを感じないんっすけど」

咏「………ほら、女性の体重知るのはいけないから」

京太郎「鍛錬にならないっす」

咏「………」

京太郎「………」

咏「応援だけするわ」

京太郎「ういっす」

<咏と筋力を鍛える>

咏「100~101102~」

京太郎「………」

咏「どした?」

京太郎「…今日1日鍛えて終わったような」

咏「気のせい気のせい、しっかりと働いてたって」

京太郎「そうっすかね?」

咏「そそ、それにお前さんは奴と戦わないといけないし、これ仕事仕事」

京太郎「うっす」

咏「それじゃ続きな!102~103

京太郎「ふっふっふ」




<研究書の解読>

京太郎「なるほどな」

姫子「判った?」

哩「………」

京太郎「すべて理解した、あぁ……まったくなんてこった」

煌「どういうことです?」

京太郎「俺たちが相手にする者は……まじもんの神様だ」


京太郎の言葉に一同は固まり、息を呑む。

実際に神話生物と戦った事はある、だがそれも最後はやられ咏に助けられた形での勝利だ。

そんな生物とまたもや戦う事となると知り、姫子は震えた。


京太郎「といっても『なりかけ』らしいけど」

美子「なりかけ?」


美子は首を傾げ問いかける。

それに対して京太郎はゆっくりと頷き 事の詳細を語り始める。




[研究書内容]

古来より、宙の果て人の認知も追いつかぬ、遠い遠い星々で数多の神々が争い、戦っていた。

中には、人の世界に影響をもたらす存在もいくつか存在し、今回の島に降り立ったのもその一柱であろう。

その一柱の神がこのような辺鄙な島に何用かと研究し、1つの結論に至った。

結論で言えば、『奴』は神々の戦いに負けた『残りかす』。

戦いに負け、存在を奪われ、神になり損なった『名無し』の存在。

『奴』には、他人に力を与える能力などなく、ただただ相手を喰らうだけの『化け物』である。


本来なら島に降り立った際に力を失い消えるはずだったのだが、『奴』は幸運にもそうならずに力を貯める事に成功する。

その成功と幸運を運んだのが、『奴』の傍にあった黄金の石版である。

神々の戦いの中、唯一掴んだ、『黄金の石版』。

その石版には幾つ物神々の力が宿っていた。

『他人に能力を与える力』 『新たな生物を作り出す力』

『奴』が力を取り戻すべく、その石版を利用し始めたのが事の始まり。

力を貯めるべく、神になる為に生物を摂取し始める。

だが、神に至るまでの過程に必要な量にはまったくもって足りない。

そこで『奴』が考えたのが、能力の譲歩だ。

能力を相手に譲歩し、育てさせ、十分な力を蓄えた所で自分が食べる。

それに適した存在こそが『人間』であった。

あらゆる状況に適応し個体数も良く増え、長生きする。

正にうってつけである。



『奴』は、人間に能力を渡し計画を実行する。

本来なら上手く行く筈だった計画であるが、ひとつだけ見落としていたものがある。

人間の『堕落』だ。

能力を使えるようになると生活が楽になり人々は堕落し始めたのだ。

これには『奴』も困り始める。

なんせ、力を適当に使い一向に向上しようとしないのだ。


どうしようかと悩み、次に実行したのは『外敵』を作る事であった。

敵が居れば否応にも無く戦わなければいけない。

戦うには知恵を使い能力を使い、日々向上しなければならない。

人々は最初こそ外敵に驚き戸惑い搾取され続けるも次第に適応し能力を伸ばしていく。

そして『奴』が能力を授けてくれる存在と知ると崇め生贄を差し出してきた。

これによって『奴』は、一年に1度、極上の餌をとることに成功した。


哩「餌……か」

仁美「……はぁ」

姫子「理由と敵は理解した、ばってんなして人が居らんと?」


姫子は話を聞いてそんな事を聞いてくる。

一年に1度の生贄、話が本当なら未だに人の繁栄が続き、無人島ではない筈だと姫子は言うのだ。

それに対して京太郎は困ったような表情をしつつも話を始める。


京太郎「奴は……なんというか『赤ん坊』のような者だったんだ」

煌「赤ん坊?」

京太郎「一年に1度の食事、幾ら寿命などが無いとは言え少なすぎたんだ」

美子「………」

京太郎「奴は考えもせず欲望のまま次第に要求を増やしていく、そうなれば……」

哩「人々が拒むな」

京太郎「だな、今までは1人で良かったのが2人、3人、と増え追いつかなくなる」

煌「そうなれば、命の危険を感じ取り『討伐』ですかね?」

京太郎「そうなるわな。思わぬ反撃を受けた奴は、怒りに怒り、そのまま全ての人を喰らい尽くした
    それがルフクトゥの結論だ」


『奴』は反撃を喰らい、怒りすべての人を飲み込み満足げに寝に入る。

すべての人を食べてしまったので島に次の人が近づくまでの間……ずっとずっと……。


姫子「そいで……近づいたのが私達?」

京太郎「そうなるな、後は前の人達か」

仁美「とういうことは……『奴』ん食事が始まっと?」

京太郎「ルフクトゥの予想だと『一度に大量の食事』を行なう事に悦を感じているのだとか」

美子「……時間ないかな」

京太郎「さぁ……どうだろ。人の感覚と『奴』の感覚は違うから」

哩「明日かも知れん、1年後かも知れん」

京太郎「そういうことだな」


全てを話し終え、自分達の相手を知り全員が暫くの間、落ち込んだ。

この日は、疲れたという事もあり、誰も喋らず眠りに就く。


<仁美と会話>

京太郎「先輩?」

仁美「んー?京太郎?」


朝食も終え、気分転換がてらに外へとぶらつくと仁美先輩と出会った。
先輩は何時ものように首から紐をぶら下げヤシの実を付けている。珍しく飲んでいない。


京太郎「何をしてるんです?」

仁美「んー気分転換、人間、日の光を浴びんと」


どうやら自分同様気分転換に来たようだ。
先輩は、ヤシの実を手に取り、徐に飲み始めた。うん、何時も通りだ。
時間も特に押している訳でもないので許可を取り横並びとなる。
ザザンと大きな音を立て波が引いては押してくる。
そんな光景を見ているとゾンビや熊と言った問題があるとは思えないほどの平和だと思った。


仁美「無理してない?」

京太郎「大丈夫っす」


ふとそんな事を聞かれ、反射的に答えてしまった。


仁美「無理しとっとね」

京太郎「………」

仁美「まぁ……しょうがなか。私も緊張しとっとよ」

京太郎「先輩もですか」

仁美「ん」


ふっと横顔を見れば先輩の顔はほんの少しだけど、強張っていた。
それに築かなかった事にして真っ直ぐ海を眺める。
真っ直ぐに見つめた海はどこまでも 青く青く続いていた。

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最終更新:2026年01月14日 21:58