清澄の団体優勝、照の個人優勝で夏のインハイを終え、数日後の新学期――。
京太郎はハギヨシの指導もあって、夏休みを明けたころにはセミプロ執事レベルといえるほどに。
なんでも器用にこなす雑用王子へと、進化を遂げていた。
インハイ期間中には東京で、他校の目に留まるほどに目まぐるしく働いた京太郎。
彼のようなマネージャーが欲しいと、どこの学校も願っていた。
そんな折、清澄と対戦した姫松高校からオファーが入る。
御校麻雀部男子マネージャーである須賀京太郎を、一ヶ月お借りしたい、と。
京太郎「俺、マネージャーじゃないんですけど……それに、学校はどうするんですか」
久「こまかいことはいいじゃない」
「あと、単位に関しては出向した学校で授業を受ければ、問題なく扱ってくれるそうよ」
「もちろん、テストも在籍してる学校でね」
京太郎「えっ」
久「インハイ優勝校ですもの、それくらいのワガママは通るわ」
京太郎「あの」
久「というわけで、一ヶ月は姫松ね。どうせ清澄にいても雑用ばっかりだし、変わらないでしょ?」
京太郎「…………」イラッ
(――でも、たしかに……)
(実力も実績もあるあいつらが、先のために練習してるとこで、俺にも打たせろなんて……)
(……県予選一回戦負けの、下手くその俺が、そんなこと……)
久「須賀くん?」
京太郎「……はぁ」
(逆に考えようぜ、これはチャンスなんだって……行っちゃってもいいやって考えるんだ……)
(もしかしたら、ほかの学校で打つチャンスがあるかもしれない……そうだろ?)
(――うん、そうだ)
京太郎「わかりました、一ヶ月ですよね? 姫松に行ってきます」
久「おー、ありがとう、須賀くん」
「フフッ、これで姫松に貸し一つ……ほかにはどこからオファーが来るか、楽しみね」
京太郎「……はっ?」
久「麻雀部のサイトで応募してるから、須賀くんには全国の学校からオファーが来るわ」
「他校、他地域での雑用を活かして、男を大きくして戻ってきてちょうだい」
京太郎(……勝手なことしてくれるなぁ、この人)
(とはいえ、ここであちこちの麻雀部で鍛えてもらえば、胸張って清澄麻雀部だって言えるしな)
(部長のためじゃない、俺のために――全国武者修行だ!)
久「雑用のね」
京太郎「麻雀ですよ! っていうか心を読まないでくださいよ!」
久「――説明はこんなところかしら」
京太郎「誰に言ってんですか……まぁいいや。行ってきます」
久(……きっと帰ってきなさいよ、須賀くん……信じてるからね)
咲「部長? あれ、京ちゃんどうしたんですか?」
久「あら、咲。彼なら今日から一ヶ月、大阪で過ごすことになって、出発しちゃったわ」
咲「へー、そうなんですか。あ、お土産頼むの忘れちゃったなぁ」
久(……意外ね。もっと寂しがったりするかと思ったんだけど)
(これはあれかしら、このコ自身、まだ自分の気持ちに気づいてないとか)カレガスキナノカシランケド
(面白くなりそっ……)ゾクゾクッ
京太郎「……マジで来ちまったよ、永水に……」
霞「――というわけで、今日から一ヶ月。我が部でマネージャーをしてもらう須賀京太郎くんです」
「彼は清澄の男子部員ですが、そこの部長さん、竹井久さんの申し出で、各地の高校へ派遣されることとなりました」
「代替わりの時期でなにかと忙しいこともありますし、永水は女子校ですから、殿方の手が必要なこともあるでしょう」
「困ったことがあれば、彼を頼ればいいと思うわ」
「それと、こちらからは彼に麻雀の指導も行います。手が空いてる人は、積極的に教えてあげてね」
「さて……須賀くんからは、なにか補足があるかしら?」
京太郎「えっ……あぁ、いえ、大丈夫です。特に問題は」
(ゴクリ……さすが永水の、石戸
霞さんっ……圧倒的な乳力だっっ……)
霞「あらそう? だけどあんまりジロジロ見ないでね、さすがに恥ずかしいわ」タユーン
京太郎「……すみません、善処いたします……」
霞「女子校だから、殿方に免疫がない子も多いわ。その辺りを注意して、接してあげてくれるかしら」
京太郎「イエスマム! 了解であります!」
霞「ふふ、元気がよくてなによりね。それじゃ、短くてもいいから挨拶をお願いしようかしら」
京太郎(よし、ここは――)
京太郎(師匠の顔に泥を塗らないよう、丁寧にしないとな……)
京太郎「はじめまして。清澄高校麻雀部より参りました、須賀京太郎と申します」
「どれだけ貢献できるかわかりませんが、微力ながら尽くしていく所存です」
「雑用については清澄流、それ以外の細かな作業については龍門渕流となりますので」
「至らぬ部分があるかと存じますが、ご用の際は遠慮なくお申し付けください」
「本日より一ヶ月間、どうぞよろしくお願いします」
霞「では、顔合わせはここまでとしましょうか」
「今日からは秋季大会に向けて、二年中心に頑張ってもらいます」
「部長職は……そうね、おいおい決めていくことにしましょう」
「小蒔ちゃんは役職を務めるよりも、数打って麻雀に強くなりましょうね」
「では、対局に移ってください」
全員「はい!」
初美「あーのー、その前にちょっといいですかー? えーっと、須賀……くん?」
京太郎「はい、なんでしょうか」
初美「制服がないのはわかりますが、清澄は学ランでしたよねー?」
「どうして執事服を着ているんですかー?」
京太郎「あ、すいません……なんていうかですね、仕事の師匠のような方にいただいた、大切な服なんですが」
「仕事のときはこれを着てないと、やり辛いというか落ち着かないというか、そういう状態でして」
「学校にいる間は、この姿でいさせてもらえればと……あ、先生方には許可を取っています」
「部活の邪魔になるようでしたら、学ランにしますけど……だめでしょうか?」
初美「まぁそう言う理由なら……判断は霞ちゃんにお任せしますよー」
霞「うーん……そうねぇ」チラッ
モブ子「やばいやばいやばいやばい」
モブ美「金髪長身執事とか聞いてないんですけどしかもイケメンとかもっと聞いてないんですけど」
モブ絵「しかも衣装の由来が……これは薄い本が厚くなるかも……ね、狩宿先輩?」
巴「!? 妙な風評被害を広めようとしないでください!」
霞「えーっと、その……気持ちはわかるけれど、やっぱり学ランのほうが――」
京太郎「だめ、なんですか……?」ステラレタコイヌノメー
霞「うぅっっ……」キュン
(ずるいわ、このコ……こんな大きい身体で、なんて可愛らしい雰囲気をっ……)
京太郎「だめなら、仕方ありませんから……着替えてきますね……」
霞「あっ、ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「そうですね、無理に好まない格好をさせて、仕事が滞るよりはいいでしょうから……」
「部員が若干浮き足立っているのは気になりますが、特別に許可しましょう」
「その代わり、お仕事はきちんとお願いしますね?」
京太郎「ありがとうござます! 優しいですね、石戸先輩は!」パァッ
霞「はうっっ! んっ、わ、わかったから……」カァァッ
初美(……んー?)
霞「それじゃあ、初日の指導は私がしようかしら」
初美「……異議ありなのですよー」
霞「あらあらはっちゃん、まだなにかあるのかしら?」
初美「大ありですよー。霞ちゃんには暫定部長として、部員や姫様の指導があると思いますー」
「部長職に雑用の指導をさせるというのも、いかがなものかと思いますしー」
「ここはわたしが、須賀くんを指導するほうがいいかと思いますよ?」
霞「……私の打ち筋は防御主体だもの。火力重視のはっちゃんの指導のほうが、小蒔ちゃんには向いていないかしら?」
初美「はぁーん、苦手分野とか言いながら宮守を引きずり下ろした人の言うことですかねー?」
霞・初「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
小蒔「あわわわわわわ、どど、どうしましょう……」
春「気にしなくて、いい……かも……」ポリポリ
巴「こーら、春ちゃん。部活が始まったら黒糖はなしでしょ」
京太郎(うわぁ、傍観者すぎる……あっ、なんか嫌な予感)
霞「ねえ、はっちゃん? それだったらいい方法があると思うのだけれど」
初美「奇遇ですねー、わたしもたった今思いついたのですよー」
霞・初「須賀くん、あなたに決めてもらいたいのだけれど(なのですよー)」
京太郎(ですよねー)
霞「対局……まぁそうね。では勝ったほうが、須賀くんの指導を――」
京太郎「いえ、そうではなく、勝ったほうが神代先輩の指導をしたほうがいいんじゃないでしょうか」
初美「んー、たしかにそうかもですねー。強いほうが麻雀を教える、それは当然の帰結なのですよ」
霞「それだと、本気の対決にならないんじゃないかしら……わざと振り込んだり、なんてことも……」
京太郎「では、負けたほうは……そうですね。俺があとで用意するお茶菓子を食べられない、っていうのはどうでしょうか」
霞「あら……うふふっ、それは困るわね。じゃあ、苦手分野だけれど、頑張ろうかしら」
初美(むー、須賀くんの指導ができないのもあれですけど、お手製のお菓子ともなれば……)
(仕方ありません、ちょっとだけ本気で行くとしましょうかー)
京太郎「決まりですね。それじゃ、あと一人入ってもらわないといけないので――」
京太郎(狩宿先輩、かなりのモノを隠しているのは明らかだ……)
(そして一年の滝見、同い年の和ほどではないが相当なレベル……だがっっ!)
京太郎「では、神代先輩……入っていただいてもいいですか? 先輩の指導者を決める対局でもありますし」
小蒔「えっ、わ、わたしですか!? ははは、はい! 頑張らせていただきます!」
京太郎「いや、あの、そんな硬くならなくて大丈夫ですよ。落ち着いて打ってください」
「俺なんてズブの素人ですから、そうそう負けることはないと思います」
「勝っても負けても、お茶菓子はきちんと差し上げますから、安心してください」ニコッ
小蒔「えっ……ち、違いますっ、そんなつもりだったわけではっ……」カァァッ
京太郎「ははっ、わかってます、冗談ですよ。リラックスできましたか?」
小蒔「……はい、できました! ありがとうございます!」パァッ
京太郎(っっっ! さすがはお姫様、なんて癒しオーラだ……そして、なんてオモチ力!)
霞「あら、小蒔ちゃんが入るのね……うーん、練習で眠られても困るわね、どうしようかしら」
初美「仕方ありませんねー、オカルトはなしでいきましょうか」
京太郎「すみません、お手数をおかけします……薄墨先輩」
初美(せ、先輩っっ! やっぱりいい子なんですねー)
「別に、気にすることありませんよー。平で打てば実力も上がりますし、須賀くんの指導にもなりますからね」
京太郎「はい、ありがとうございます」
初美「(ティンときたですよー)あ、だけど須賀くんが負けたら、これからは京太郎と呼びますからねー」
霞「!?」
京太郎「それくらい、普通に呼んでくださってもいいんですけど……まぁいいや、了解しました!」
初美(ふふふん、これで須賀くんの名前呼びゲットですよー)
霞「」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
京太郎(初美さん的には名前で呼ぶの、嫌がらせなのかな……)ワカラン
小蒔(むにゃ……いけません、リラックスすると眠気が……起きていないと……)ウツラウツラ
小蒔「ロンです、5200点ですね」
初美「はうっ! うう、まさかの姫様ですかー」チャラッ
霞「……わざとじゃないわよね?」
初美「そんなことしても、姫様のためにならないですよー」
京太郎(やばい、石戸先輩の胸見てて、見逃したなんて言えない……)
霞「ロン、7700(チッチー)よ」
京太郎(乳ですね)
初美「顔に出てますですよー」
京太郎「えっ、なっ、なにがですかっ!?」
初美「冗談ですよー」クスクス
霞「ふぅ、これで終了ね、ありがとうございました」
小蒔「ありがとうございました。あぁ、最後に捲られてしまいました……」
霞「寝ないでここまでできれば、上出来だと思うわよ」ニコッ
初美「……って、あれ? わたし……最下位ですかーっ!?」
京太郎「あ、俺が二位ですね。ありがとうございました」
霞「小蒔ちゃんの当たりが、ことごとくはっちゃんに入ってたかしら」
小蒔「それを全部、霞ちゃんに吸われちゃいました……」シクシク
初美「うぅ、まさか須賀くんにも負けるなんて……でもこれで、指導係はわたしですねー」
霞「はいはい、わかりました。それじゃあ小蒔ちゃん、続きを始めましょうか」
小蒔「はい、よろしくお願いします。あ、それと……す、須賀、さん!」
「楽しかったです、ありがとうございました! また一緒に打ってくださいね!」
京太郎「はい、ありがとうございました」
初美「ではこちらも、雑用のお仕事を説明しますよー」
初美「えーっとですね、マネージャーさんにしてほしいお仕事は、買いだしや牌譜整理が主ですねー」
「それ以外にも、部員からなにか頼まれたり、あとは部室や牌、麻雀卓の掃除なんかもありますか」
「牌譜は紙媒体でもいいですけど、PCやIpadにもまとめてもらえると助かりますですよー」
「それ以外なら、お勉強をしてもいいですし、さっきみたいに対局でも大丈夫ですね」
「テスト前なんかに誘ってもらえると、みんなで勉強して捗るかもしれません」
京太郎「……………………」
初美「?? どうかしましたかー?」
京太郎「あ、いえ……大丈夫です。だいたいは清澄と変わらないなって感じですね」
(言えないっ……意外としっかりしてたんですね、なんて……言えるわけがないっ!)ブルブル
初美(ふふふ、しっかりしたところを見せて、大人の女アピールですよー)
初美「さて、なにか聞きたいことはありますかー?」
京太郎「あ、掃除用具はどこですか?」
初美「ふふっ、まず掃除用具を気にする辺り、雑用魂が染みついてるようですねー」
京太郎「うっっ……言わないでください、全部部長が……あーっと、竹井部長が悪いんですから」
キャッキャウフフ
小蒔「初美ちゃん、楽しそうですね……ひっ、か、霞ちゃん!?」
霞「あらぁ? どうしたのかしら、小蒔ちゃん?」ニコニコ
春「……霞と初美、様子がおかしい……」
巴「二人も女性だったってことですね……まぁ、須賀くんのルックスのせいでもありますけど」
小蒔「どういうことでしょうか、巴ちゃん!」
霞「巴ちゃん、姫様になにを吹き込んでいるのかしら?」
巴「……ヒメサマニハ、マダマダハヤイカトオモイマスヨー」
小蒔「そうですか……」シュン
京太郎(さて、今日は夏休み明けだから、すぐに終わるようだけど――)
京太郎「ちょっとくらいなら用事ができそうだな、なにから手をつけるべきか……」
京太郎「一応、こっちでの授業の進み具合は調べておいた方がいいよな……」
京太郎「だったら、同じ一年に聞いたほうが……あ、滝見さん。いま手空いてるか?」
春「……まぁ、空いてる。なにか用?」
京太郎「明日から授業始まるし、どこまで進んでるのか教えてもらいたいなーって……悪いな、部活中に」
春「……いい。それで、教科書は持ってる?」
京太郎「いや、明日届くからさ。とりあえず、この参考書だとどの辺りまで進んでるか教えてほしいんだけど……」
春「わかった、見せて……えっ」
京太郎「えっ?」
春(……数Ⅲ? こっちの物理も化学も、歴史も明らかにやってる範囲がおかしい……わたしは、まだやってないとこ……)
京太郎「滝見さん?」
春「……大丈夫、それなら授業にはついていけるはずだから……」
京太郎「そっか、ありがとな」
春「……聞きたいんだけど、その参考書は自分で解いた?」
京太郎「いや、俺の師匠が……執事にも最低限の教養は必要ですよって、空いてる時間とかに教えてくれてさ」
春「……そう」ポリポリ
京太郎「あ、そうだ。よかったらちょっと勉強しないか、一緒にさぁ――」
春「……無理。頑張って」ポリポリ
京太郎「えっ……あぁぁ、行ってしまった……仕方ない、一人でやるか」
部活終了、帰宅し、夜行動へ移ります。
京太郎「はー、初日から色々あったなぁ、疲れたぜ……」
京太郎「こんなときは、誰かに電話かメールでもしたいとこだが……」
京太郎「あー、だめだ……さすがに新天地ってのは疲れるよ、なんもやる気が起きない……」
仁美「なんもかんも政治が悪い」
京太郎「そう、なんもかんも――っていまの誰だ!?」
京太郎「誰もいねーよ、相当疲れてるな、これは……風呂入って、さっさと寝よう」
~おまけ~
マネージャー日誌
【チュートリアル】
永水に通学した初日、石戸先輩から部員に紹介される。
挨拶してる間、自然と視線が惹きつけられてヤバかった。今度から注意しないと。
石戸先輩、薄墨先輩にはわりと気に入られたんだろうか、なぜか俺の指導を巡って対局することに。
二人とも和、咲相手にすげえ麻雀を見せた人だ。俺一人ではヤバいと思い、神代先輩に入ってもらう。
意外にも、俺は二位だった。というか、蚊帳の外に置かれていた感じだな、もっと精進しないと。
とはいえ、ここでの俺の役割はマネージャーである。執事修行が無駄でなかったことを、証明したい。
下手な悪評を流してしまうと、師匠の顔にまで泥を塗ってしまう。真面目に頑張ろう。
…………
「っと、こんなもんかぁ……」
疲れてはいたが、これだけはしっかり書くようにと、部長から念を押されている。
マネージャーのオファーサイトで、誰でも自由に見られるようになっているとか。
オファーする際の参考にされるかもしれない、そう聞いてはいるが、ここまで本音を書いて大丈夫だろうか。
「……いや、だめだろ、普通に考えて」
自然と視線が――の件を削ろうと、投稿した日誌の編集ボタンを押す。だが――。
「えっ……はぁぁっ!? おいっ、なんで修正できねーんだよ!」
連打しても、そもそも編集ボタンが反応してくれない。
それでも躍起になって連打していると、今度はメールボックスにメールが届いたと、ポップアップが映る。
『残念だけど須賀くん、投稿後の編集はあなたの権限を超越してるのよ』
『でも安心して、それを読んでの読者の反応は概ね好評だから』
『ムッツリじゃなく感情を素直にだす辺り、好感を得ているようね』
部長からだった。というか、へこむわ、ンなこと言われたら。
「おっ、またメール……っっ!?」
『正直なのはいいと思うけれど、その……あのときも言ったけど、あまりジロジロ見ないでちょうだいね?』
『地獄に落ちやがれなのですよー』
『エ、エッチなのはいけないと思います!』
最後のは狩宿先輩かな、わかりづらい……。
まぁ神代先輩に見られてないだけ、よしとするしかないな。滝見さんはスルーしてるだけか?
ともかく、明日からはもうちょっと……その、内容に気をつけるかな、うん。
~清澄
「京ちゃん、頑張ってるんだねー。毎日神代さんと打てるなんて、羨ましいなぁ」
「まったくあの犬ときたら、私のタコス係としての自覚がないじぇ!」
「はぁ……まったく、こんなことになるなら、視線についてもっと早く注意しておくべきでした」
「ところで部長よ……あいや、元部長よ」
「あら、なにかしら?」
「これから時間ができようって人間が、なぜこんなことをさせとる?」
「麻雀の指導をするんなら、これからいくらでも相手できたじゃろ」
「……そう、ね……」
(ワケあり、っちゅーわけか……まぁ、深くは聞いたらんほうがよさそうじゃの)
「まぁ、京太郎に頼りきっとった分、わしらも分担して雑用せんといかんな」
「っちゅーわけじゃ、一年ズ。明日は分担表を持ってくるけぇ、毎日練習の合間に作業せいよ」
「ぶぅーっ! あの犬めっ、戻ってきたらお仕置きだじぇ!」
「優希、須賀くんが悪いわけじゃありませんよ」
「そうだよ。寂しいのはわかるけどね」
「じぇっ!? べ、別に寂しいわけじゃないし!」
「あははっ、まぁそういうことにしとこうかな?」
~龍門渕
「ハギヨシーっ……おお、こんなところにいたか! ……なにを見ている?」
「これは衣さま、申し訳ありません。お呼びでしたか」
「いや、よい! それよりこれはなんだ?」
「これは、私の弟子……いえ、友人の日誌ですよ」
「ほう、ハギヨシの友か! ということはあれだな、以前から何度か手伝いに来ていた清澄の――」
「ええ、彼です。いまは永水にて、雑務を執り行っていると……」
「永水……神代小蒔の学校か。羨ましいものだ、あれほどの相手と毎日遊べるのだからな!」
「そうですね、いずれは彼も……全国へ打って出ることができるかもしれません」
「ほう、それは楽しみだな。成長したあかつきには、ぜひ衣とも打ってもらいたいものだ」
~白糸台
「菫、このサイトを見させてほしい」
「お前は……まったく、少しはネットの使い方くらい覚えてくれ」
「テールー、なに見てるのー?」
「これは……確か、清澄のマネージャーか。日誌? あぁ、そういえば派遣マネージャーをするのだったな」
「……もういい、消して」ムスッ
「なんだ、まだ繋いだばかりだろ……あぁ、なるほど」
「なに?」
「いいや、別に」(彼だって男子なのだから、仕方ないことだと思うがな……)
「んー? あぁ、永水ってあのおっぱいオバケの学校じゃん!」
「ってことはこれ、胸ばっか見てたってことかなー? あの金髪、エッチそうだったもんねー」
「淡」
「なーにテルー?」
「いまから特打ち。半荘4回ね」
「えーっっ!? もう夜だよ!? そりゃ雀卓は使えるけどっ……」
「グズグズ言わない、早く来る」
「……ん? そういえば、なぜこれで照が怒る必要がある……彼とは顔見知りなのか?」
京太郎「冷静になって考えてみると……女子校に男子一人ってヤバくないか?」
京太郎「部長はああ言ってたけど、だったら高校麻雀連盟ってどんな権力持ってんだよ……」
京太郎「俺が一人暮らしさせてもらってるアパートも、連盟が用意してくれたっていうし……」
京太郎「もしかして俺、どこかで見張られてんじゃないだろうな……はっ!」
京太郎「いかんいかん! 考えだしたら怖くなってきた、もっと前向きに考えないと!」
京太郎「実際、女子校に通える機会なんてそうない上に、お姫様まで通ってる超お嬢様学校だもんな!」
京太郎「こんなすげー学校に通わせてもらって、女子とお近づきになれないなんてあり得ないだろ」
京太郎「この通学路も、見渡す限り女子だらけだし……あぁっ、なんか夢が膨らんできたなぁ……」
チョットアレナニー ナンデダンシガー マージャンブノマネージャーダッテー
ナンカブツブツイッテルンダケド ザンネンイケメンッテヤツネ オオコワイコワイ
京太郎「あかん、めげるわ……おっ、あれは?」
京太郎「おはようございます、薄墨先輩!」
初美「はう? あらら、おはようですよ、京太郎」
京太郎「さすがにまだまだ暑いですね、長野とは全然違います」
初美「軽井沢とか、涼しそうですからねー。夏ばっかりは羨ましいですよー」
京太郎「そうですね、あのあたりは避暑地ですから。とはいえ、場所によっては長野も暑いんですけど」
初美「ほほう、ならこれくらいは平気ですかねー?」
京太郎「九州の暑さはさすがにキツいっす……まぁ、あの有名な永水に通えるなら気になりませんけど!」
初美「現金なもんですね。でも周りが女の子ばっかりというのに、気後れしたりはしてませんかー?」
京太郎「男子がいないってのは、ちょい心細い感じですかね。まぁ慣れでしょうけど」
初美「あらあら、そうですかー。仕方のない後輩ですね、ではこれを……」
京太郎「こ、これは!?」
初美「わたしの携帯番号と、メアドですよ。寂しくなったら、連絡してくれれば相手しますよー?」
京太郎「う、薄墨先輩っ……あり、ありがとうございます! あざっす、あざーっす!!」ドゲザー
初美「ふぇぇ!? こここ、こんなとこでなにをしてるんですかー、みっともないのでやめるのです!」
ウワードゲザサセテルー ハッチャンセンパイエグーイ ソウイウプレイカナー
初美「違いますからね!? い、いい加減顔を上げなさい、上げたら名前で呼んでもいいですからっ」
京太郎「うぃっす! よろしくお願いします、はっちゃん先輩!」
初美「……もう一回土下座しますかー?」
京太郎「さーせんっした! 初美先輩! お許しください!」
初美「はぁ、まったく……もういいですから、さっさと学校行きますよー、京太郎」
~忘れてた昼イベント挿入してみたりする
京太郎「しまった……弁当用意するの忘れてたぜ。どうすっかな……学食、売店、どっちかあるのか?」
モブ子「どっちもあるよー。でも売店だとパンくらいしか買えないから、学食のが人気あるかなー」
京太郎「サンキュー、モブ子。ま、とりあえず行ってみるか。途中で誰かに会えたらラッキーだし」
京太郎「おおぉぉぉ! こ、ここにもあるのか、レディースランチ……ん? あれ?」
京太郎(女子しかいないのにそれはどうなんだ? 普通のランチでいいんじゃないのか?)
モブ子「なに難しい顔してんのー?」
京太郎「おう、モブ子か。いや、レディースランチが懐かしくてな、清澄ではよく食べてたんだよ」
モブ子「へー、女装でもしてたの?」
京太郎「するか! 幼なじみに頼んで買ってもらってたんだよ。おかげでよく冷やかされてたもんだ」
モブ子「むっ、まさか地元に彼女がいるパティーン……?」
京太郎「彼女じゃねーっつの。ってか麻雀部なら知ってるか、宮永だよ、宮永咲!」
モブ子「み、宮永咲っ……石戸先輩相手に、±0決めたっていう……清澄の魔王っ……」
京太郎「そんな大層なもんかね、あの迷子文学少女が……まぁいいや。なぁ、これ買ってきてくんないか?」
モブ子「えー、あたしもそれ食べたいのに。二つも食べるブタ子って思われちゃうじゃん」
京太郎「今日だけでいいからっ……そうだ、お近づきの印ってことで奢ってやるよ、だから頼む!」
モブ子「オーケー、任せなボーイ。2セットでも3セットでも買ってきてやらぁ!」
京太郎「男前だな、おめーはよ」
~とか言ってたら、あっという間に放課後~
京太郎(ふー、食いすぎたけど、授業中に寝るわけにもいかなくて……必死に石戸先輩のバストを想像して、眠気を耐え抜いたわけだが)
京太郎「授業が終わったら部活だよなぁ、こっちの部室はベッドなんかねーし……ふぁぁ……」
京太郎「ま、言ってても始まんねーし、さっさと部活行くかぁ! あ、その前に差し入れ用のお菓子を仕込まねーと……」
モブ子「ねーねー、須賀くん。さっきの英語なんだけど……ここわかんないんだー」
モブ代「あっ、私も数学の課題聞いときたい! こことここ、明日当たるんだよー」
モブ菜「ごめん、古文のノート見せ……すごっ、なにこれ、わっかりやす!」
キャーキャーワイワイ
京太郎(……生きててよかった!!!!!!)
春「……………………」ジー
京太郎「」ビクッ
京太郎「えっ、な、なんで見てるんだ?」
春「……別に。先、行ってるから」
京太郎(わからん……けどあれだな、滝見さんと同じクラスだったのか、いま気づいたぞ。ま、知り合いがいてよかった)
モブ子(わたしも一緒なんだけどなー)
春(……なんだろ、なんかモヤモヤした……黒糖不足かな……)ポリポリ
京太郎「部室についたぞ!」
霞「遅いわよ、京太郎くん? 授業が終わってから、随分経ってるんだけれど」
京太郎「あっはい、すいません……ちょっと用事が……」
霞「春ちゃんからは、女の子に囲まれてデレデレしてたって聞いてるわ」ニッコリ
京太郎「」
霞「男の子だから多少は仕方ないけれど、マネージャーとしてここに来ていることを、忘れないでね」ツンッ
京太郎(ジーザス! 女神さまに嫌われたら生きていけねーよぉぉぉぉぉぉ!)
京太郎「っしゃ! 今日の活動で挽回してやるぜ!」
初美「あらー、なにやら燃えてますねー、京太郎?」
京太郎「はい、そりゃもう……京太郎?」
初美「なんですかー? 負けたやつから名前で呼ばれる筋合いはねーですかー? っていうか、朝からそう呼んでましたけど?」
京太郎「いえいえいえ、滅相もございません! けど、そっか……なんというか、自然すぎて気づいてませんでした。すんません!」
京太郎「本当に名前で呼んでもらえるとは思ってなかったんで、その……嬉しいです、純粋に」テレテレ
初美(あらかわいい)ドキッ
初美「ま、まぁ可愛い後輩ですからね。そのくらいはしてあげますよー」
京太郎「ありがとうございます、初美先輩!」
初美「うっ……や、やっぱり照れますね、男性から名前で呼ばれるのは……」ポソッ
京太郎「え、なにか言いましたか?」
初美「ラノベ特有の難聴スキルはノーセンキュー、って言っただけですよ」
霞(私だって名前で呼んだんだけど……気づかれてないわね)ハァ
小蒔「霞ちゃん、なにか悩み事でしょうか」
巴「色々あるんですよ、霞ちゃんにもね」
小蒔「ふふっ、その言い方まるで、巴ちゃんがお母さんみたいです」
巴「」ガーン
京太郎「お待たせいたしました、お嬢さま方。本日のデザート、バナナを使用しましたクリームチーズムースでございます」
京太郎「茶葉は夏摘みダージリン、セカンドフレッシュをご用意いたしました。茶請けが冷菓子ですので、こちらはホットでどうぞ」
デザートデスヨ、デザート マァナンデモ、イイデスケレド
ンメッコレンメッ ハムッハフハフッハフッ ムーシャムーシャ
京太郎(あれ……お嬢さま、学校……?)
小蒔「ふわぁぁぁ……おいひいれふぅ……」トローン
霞「これは……すごいわ、お店で食べるのとまるで遜色がないわね……」
巴「味もそうなんですけど、見た目に清涼感があって、残暑には持って来いですね」
初美「そこにホットの紅茶で、身体を冷やしすぎない配慮まで……この人、本当に高校生でしょうか……」
京太郎(っっ! 師匠なら、ここでっ……)
京太郎「いえいえ、私はあくまで……執事です」ニッコリ
巴「TDN高校生ですよね」ズバァッ
京太郎「」ゴフゥッ
春「……………………」
京太郎「って、あれ? 滝見さん、どうかしたか?」
春「……ううん、そうじゃない……けど……」
京太郎「」ハッ
京太郎「ご、ごめん、やっぱり皆と一緒のほうがよかったか!?」
京太郎「いや、いつも黒糖齧ってるから、それを活かしたので作れないかと思って……」
京太郎「滝見さんのだけ、黒糖蜜を使った和風ムースにしたんだけどっ……すまんっ、気遣いが下手だった!」
春「……っっ!」
京太郎「悪いな、すぐに取り換えるから……ちょっと待ってて――」
春「ち、違う! そうじゃなくてっ……」
京太郎「えっ?」
春「あ、の……えっと、う、嬉しく、て……食べるの、もったいなくて……」カァッ
春「あ、ありがとう、須賀……くん……」
京太郎「……いえ、喜んでいただけたなら、光栄です」ニコッ
春「……///」
霞(たらしだわ……)
巴(たらしですね……)
初美(たらしですよー)
小蒔(おいひいれふぅ……)トローン
京太郎「差し入れは好評だったな、まずまずだ。さて……次はなにしよう」
京太郎「えっ」
巴「? どうしたんですか、須賀く……」
京太郎「あ、ツ、ツモです! 1600、3200」
巴・春「!!」
モブ子「ふぇー、すごー」
春25000→23400
モブ子25000→23400
巴25000→21800
京太郎25000→31400
霞「あらあら、京太郎くんすごいわね」
小蒔「綺麗な上がりでした、お見事です」
初美「はるるー、巴ー、油断ですかー?」
巴「くっ……こ、こんなはずでは……」
春「まだ、あと一局ある……っ」ゴッ
●流局
春テンパイ 23400→24400
モブ子テンパイ 23400→24400
巴ノーテン21800→18800
京太郎テンパイ 31400→32400
なんやかんやあって、点数動かず終了
京太郎「ありがとうございました!」
巴「ありがとうございました……」
春「ありがとうございました」ポリポリポリポリポリポリ
モブ「惜しかったねー、春ちゃん。お疲れ様でしたー」
小蒔「お強いんですね、須賀さん!」キラキラ
京太郎「いや、いまのは本当に運がよかったです……下手したら飛んでましたね」
霞「巴ちゃんも春ちゃんも、最後に逆転手を狙ってたみたいだけど、間に合わなかったわねぇ」
初美「まぁこういうこともあるですよー(はぁぁ、京太郎に負けたのは、これでわたしだけじゃないですねー」
春「悔しい……けど、おめでとう……」
巴「次は負けませんよ」
~考えていなかった下校イベント~
京太郎「よし、部室の戸締りオッケー、家庭科室の片付けも終わったし、これで帰るか」
京太郎「いやー、今日は気持ちよかったな。またこんな風に勝てればいいんだが……お?」
京太郎「おーい、初美せんぱーい!」
初美「おや? 京太郎、遅かったですねー」
京太郎「ははっ、色々と片付けるものがありまして。で、ついでに家庭科室の掃除なんかもしてたら、なぜかこんな時間に」
初美「来たばっかりなのに、ちょっと張り切り過ぎじゃないですかー? あまり飛ばすと、この暑気ですからバテちゃいますよー」
京太郎「大丈夫です、そんなヤワな鍛え方してませんから。ジョギングも筋トレもしてますしね」
京太郎「それに清澄にいたときは、もっと遅くまで山道歩いて買い出ししてましたから、これくらいなら余裕ですよ」
初美(あわわわわ、恐ろしいまでのブラック部活動なのですよ……)
京太郎「それより初美先輩は、どうしてこんな遅くまで?」
初美「……まぁ、受験生ですからねー、これでも。さて、都合よくナイトも手に入りましたし、近くまで送ってもらいましょうか」キュッ
京太郎「おわっ、と……先輩、待ってください! これじゃ、人に見られた事案扱いされ――」
初美「なにか言いましたかー? よく聞こえませんでしたけどー?」ニコニコ
京太郎「いえ、なんでもございません、お嬢さま」
初美「誤魔化したって無駄ですよー、事案で悪かったですねー」プンッ
京太郎「あー、その……すいません、冗談が過ぎました」
初美「あははっ、大丈夫ですよー、そこまで気にしてはいませんからねー」
初美「この見かけですから、そう思われることもあるでしょうし」
初美「もっとも、得していることもあるですから、損ばかりでもないのですけどねー」
京太郎「…………すいません」キュッ
初美「だから謝らなくても――はわっっ!?」
京太郎「罪滅ぼしではないですけど、家のお近くまではナイトを務めますので……」
京太郎「非礼をお許しください……お姫様」
初美「……生意気な後輩ですねー、百年早いのですよー」
初美(……たまにはお姫様扱いも、悪くないものですね……ふふっ)
~夜行動
京太郎「そうだよな、背は小さくても先輩なんだから……一人の女性として接しないと」
京太郎「師匠にもそういう注意は何回か受けたんだけど、すぐには身につかないもんだな」
やえ「にわかは相手にならんよ!」
京太郎「!? い、いや、気のせいだよな……」
「ふぅ……須賀京太郎くん、ですかー」
なにかと不思議な感じのする少年、だとは思う。
まだ二日目だというのに部活動はもちろん、クラスでもそこまで浮いていないとも聞いている。
学校全体で見れば、なぜ男子がという目で見られているのは確かだ。
「なにしろ執事服ですからねー、ぷぷっ」
「でも、うん……あれは、なかなかのなかなかですよー」
背が高く、肩幅の広い彼にはよく似合っている。
あの姿でレディーファーストな対応を取られたり、給仕されたりすれば、たちまちコロンとなってしまうだろう。
普通の女性ならば。
「ま、わたしは違いますけどねー」
悪石の巫女、六女仙、その一角である自分が、まさか男のうつつを抜かしたりはしない。
霞が彼を呼んだのも、自分たちや姫様の精神修行の一環としてだろう。
まぁ、異性がいない環境で育ったのだから、多少は気になってしまうのも仕方がないことだ。
部活中にチラリと見てしまうのは、彼が悪目立ちしているからに過ぎない。
しばらくすれば彼の存在にもなれ、彼は期間を全うしてまた、どこかの学校へ向かうのだろう。
「……そうなるまでは、どうしましょうかねー……」
住み慣れた地を離れ、一人九州にまでやってきているのだ、心細くないわけもない。
しばらくは彼のことも見守ってやり、困っているようなら手を差し伸べてあげるのが、先輩の務めだろう。
「まったく、手間のかかる後輩ですねー」
そうそう、後輩と言えば彼女――滝見春は、彼と同じクラスだそうな。
麻雀部員を同じクラスに置いた気遣いは、霞の手回しだろうか。
「……はるるは京太郎と、上手くやっているのですかねー」
無口で黒糖を齧っているクールな態度、けれどその実、彼女は人懐っこい性質も持っている。
頼りがいがあり、彼女が好きなお菓子のレパートリーを複数所持する彼なら、相性も悪くはないかもしれない。
「っっ……いけませんね、湯冷めしちゃいましたかー」
身体の奥にチクッとなにかの刺激を感じ、読みかけの本を置いて、初美は寝床へ入る。
明日の朝も早い、儀式や神社の掃除や――また登校で、彼に会ったら、など――。
色々なことを考えているうちに、意識は睡魔に取って代わられた。
~執事見習いの朝は早い~
ピピピピッ、ピピピピッ、カチッ
京太郎「んぐぁっ、ふぁぁぁ……おえうえーーーるえうおおお……さーて、走りに行くかぁ」
京太郎「と――軽く10キロほどジョグして、筋トレも済んでっと……飯が炊けるまでもうちょいだな、シャワー浴びとくか」
京太郎「おっけーい、今日は弁当もバッチリ! 朝飯も食ったし……ほんじゃ、行ってきやーす」
京太郎「しかしあれだな、一人暮らしなんて初めてだけど、あんま困らないもんだな……」
京太郎「これも師匠が色々仕込んでくれたおかげだな、感謝してます!」
京太郎「まー、誰もいない部屋にいってきますとおかえりっつーのは寂しいもんだけどなぁ」
京太郎「そう思わねーか、モブ子?」
モブ子「朝からよくしゃべんねー、君は」
京太郎「はー、あいっかわらず女の園だねー……っと、あれ? なんか見かけない制服が……」
モブ子「あんたの制服……っていうか執事服ほどじゃないってゆー」
モブ子「あれは永水女子中等部の制服だねー、って……」
明星「あ、モブ子先輩だ、おはよーごじゃいまーす」
湧「朝から彼氏連れとはいいご身分でございます……って、彼氏!? なんで男子!?」
明星「あっもしかして、お姉ちゃ……姉が言ってたのって……」
京太郎「姉?」
湧「はじめまして、清澄高校麻雀部の……須賀、京太郎さん? 永水女子中3年、十曽湧と申します。そして――」
明星「姉がお世話になっております、同じく中等部三年、石戸明星と申します。お見知り置きください」ペッコリン
京太郎「石戸……それじゃ、石戸先輩の……なるほど、道理で中学生にして……」ゴクリッ
モブ子「イエローカード。すでに110は押し終えた、通話ボタンはまだだがな。ちなみに霞先輩にはメールした」
京太郎「やめてっ、殺されちゃう!」
明星「まぁ、なんというか……」
湧「霞さまの仰っていた通りの方ですね、距離を置かせていただきます……それでは」ペッコリン
京太郎「ち、違うんだっ、誤解がある、待ってくれ! いや待ってください! お願いします!」
モブ子「ご……かい……?」
~あっという間にお昼だ!
京太郎「こええ……なんていうか、いまだに石戸先輩と顔合わせてないっていう状況がこええ……」ガクブル
春「……なにか、あったの?」ポリポリポリポリ
京太郎「ななななな、なーんせんよー!? なんもしてねーって、マジで!」
春「……そう」
モブ子「え? いやぁ、朝から須賀っちってば、中学生の胸ジッと見ててさぁ。かなりやばい雰囲気だったよ」
春「……………………そう」ヒキッ
京太郎「うぉらあぁぁぁっっっ! なんで風評被害招こうとすんだてめぇーはよぉーっ!」
モブ子「霞先輩に誤解でしたってメール送って欲しかったら、焼きそばパン買ってきな!」
京太郎「ははぁぁっ! 謹んで購入してまいります、しばしお待ちくださいませ!」ダッシュ
京太郎「ひでーめにあった……ほんと、このクセなんとかしないと、永水で生きていけねー」
京太郎「さーて、一昨日も昨日も掃除できなかったからなぁ……って、あぁぁ!」
?「どうしたのかしら、そんな声をだして」
京太郎「いや、部室の掃除を昼のうちにって思ってたんだけど、カギは石戸先輩が……」
?「あらあら、それはご苦労さま。鍵を開ければいいのかしら?」
京太郎「はい、お願いしま――」
霞「はい、開けたわよ? でも掃除するなら、事前に言ってちょうだいね。そうすれば手伝えるから」
京太郎「い、石戸先輩っっ! うおうぅぅぅっ、す、すみません、でもあれは誤解なんです! ですから潰さないでっ!」
霞「……私がなにを潰すっていうのかしら、うふふふふふ」クルミゴシャッッ
京太郎「イエナンデモゴザイマセン、カンチガイデゴザイマシタ」
霞「まったく……あら、京太郎くん。お弁当もまだみたいね、先に食べてしまったらどう?」
京太郎「ええ、そのつもりだったんで……カギ開けてくださって、助かりました。ありがとうございます」
霞「ううん、別に構わないわ。それじゃ、手早く食べてしまいましょうか」
京太郎「えっ」
霞「あら、だって掃除するんでしょう? マネージャーとはいえ、あなた一人に任せるのも悪いわ」
京太郎「て、手伝ってくれるんですか?」
霞「もちろんよ。あっ、他の子にも声かけましょうか、そのほうがすぐに終わるわよね」
京太郎(咲……見てるか……? 女神さまってのは、鹿児島にいたんだぜ……そして、悪魔は長野にいるんだ、魔王もな)
霞「あ、そうそう。ところで京太郎くん?」
京太郎「はい! なんでしょうか女神さま!」
霞「明星の胸は、お気に召したのかしら?」
京太郎「」ギャー
~掃除は成功、みんなで和やかに終えたよ! そして放課後~
京太郎「てめー、マジで送ってやがるとは思わなかった」
モブ子「女に二言はない」キリッ
京太郎「あーもういいよ。さっさと部活行こうぜ」
モブ子「おう任せなー。おっと、その前におっはなっつみーっと」
京太郎「待ってらんねーから先行くぞ……おわっと!」
春「……部活、行く?」
京太郎「ん、ああ。じゃあ一緒に行くか、滝見さん」
春「……ん」
京太郎「………………」
春「……………………」ポリポリポリンキー
京太郎「ポリンキー!? あ、いや、黒糖だよな……」
春「……?」
京太郎「いや、なんでもない。疲れてんのかな……」
春「…………あまり、頑張らないほうがいいよ」スッ
京太郎「え、お……くれんの? サンキューな……うん、あっさりして食べやすいな」ペロッ
春「それが自慢」ニコッ
春「……あっ」
京太郎「ん? なんだ、どうした滝見さん」
春「……いや、なんでも……忙しそうだし、またあとで……」
京太郎「あぁ、大丈夫だよ。これは明後日までにすればいいから、まだ余裕あるし。なにか用か?」
春「……ん、ごめんなさい」
京太郎「気-にすんなって」ポンポン
春「……///」
京太郎「で、なに?」
春「……ん、と……ちょ、ちょっとこっち……来て……///」
京太郎(……って、ここはっ……部室の隣の倉庫だ……)
京太郎(いつもは暗くて人が少ないのに、今日に限っては昼に掃除したばっかで綺麗な部屋!)
京太郎(こ、ここ……こんなとこに呼びだして、まさか滝見さんっ……)
春「……で、お願い、したいの……」
京太郎「よ、喜んで! 俺でよかったらぜひとも!」
春「……よかった。それじゃ……お願いします。黒糖、取って?」
京太郎「……あっはい、少々お待ちください……」
京太郎(うんまぁ、そうだよね。わかってる。昼に掃除したとき、棚の上に置いちまった箱に、予備の黒糖が入ってたわけね……)
春「あっ……き、気をつけて、危ないから……」
京太郎「おう! ま、こんくらいならへーきへーき……っとぉ、取れたぞ……ほら――」
春「ん……っっ!? きゃぁっっ!」ドンッ、ギュゥッ
京太郎「おわぁぁっっ!? ちょっ、どうした、なにがあった!?」ダキツカレー
春「あああああ、あそこっ……くく、黒いの、アレがいたかもっ……」
京太郎「うげ、マジか……ちょっと見てくる、ここにいてろ、な?」
春「……うん、ごめん……なさい……」
京太郎「いいっての。こういうのは男の役目だしな……さて、とぉ……」ソロー
春「ど、どう……? いた?」
京太郎「いやー、黒いのはいたけど。ほれ」
春「ひっっ……マグネット? と、磁石?」
京太郎「ああ、プラスチックの中に入ってる、あれが取れたからしまってたんだろうな。それが落ちてただけみたいだ」
春「……よかった」ホッ
京太郎「しかし、これと見間違うくらいデカいとは……南国のGはおっそろしいな……さて、戻ろうぜ」
春「……うん」
京太郎「……お約束ってやつか、これは」
春「ごめんなさい、私がさっき……ぶつかって、倒しちゃったから……」
京太郎「大丈夫だって。こんくらいすぐにどかすから。ちょっと持っててくれよ」
春「あっ……うん……」
春(須賀くんの上着……やっぱり、おっきい……)クンカクンカ
春(っっ……男の人の、匂い……)スゥゥゥ
春「……っっ……///」
京太郎「……っしょ、っと! ほい、終了だ。上着ありがとうな、滝見さん」ヒョイッ
春「あっ……」
京太郎「えっ? なに、まずかった?」
春「~~~~~っっ! う、ううん、別にっ……行こっ……」ガチャッ、バタンッ
京太郎「おいおい、ドア閉めていくなよ……っておい! 大事なモン忘れてんぞ!」
春「っっ……そうだった、つい……」ガチャッ
京太郎(そういや、この箱さっき落としちまったよな……砕けてるとかねーよな?)
京太郎「あちゃ……すまん、滝見さん。割れちまってる……」
春「ううん、これくらいなら……平気、はい」スッ
京太郎「えっ……もらっていいのか?」
春「ん……手伝ってくれたし、ドアも開けてもらえたし、う、うわ、ぎ……///」
春「とにかくっ……お礼に、あげる……半分こ……」カァッ
京太郎「そっか……ありがとな」
春「……おいしい♪」
京太郎「ああ、食べやすくて甘い、いい黒糖だと思う」
春「それが、自慢……」ニコッ
京太郎「そろそろ日も暮れてきたな……つっても、まだまだ明るいけど。さて――」
京太郎「あっれ……石戸先輩と初美先輩は……あ、いたいた」
京太郎「先輩方、こんな隅っこでなにやってるんです? 部活はいいんですか?」
霞「あら、京太郎くん。まぁ、うん……よくはないんだけれど、やっぱり半分引退の身だものね」
初美「そうそう、部のことは次世代に任せて、わたしたちはわたしたちのやるべきことを、ですよー」
京太郎「あぁ、受験勉強ですか……へー、ここやってるんですね。懐かしいなぁ」
霞・初「…………えっ」
京太郎「えっ?」
霞「……も、もう、冗談よね? だってこれ、私たちがまだやってない範囲の、予習なのよ?」
初美「わたしは復習……というか、夏休みの宿題の残りですけどねー」
京太郎(だめじゃん……)
京太郎「えっとですね、執事の修行の途中で教わったんで、この辺りならなんとか解けるんですよ。多少は時間かかりますけど」
霞「……あら、それはいいことを聞いたわ。ねぇねぇ、京太郎くん、こ・こ……教えてくれないかなぁ?」フッ
京太郎「!? あっ、ふっ……ふぁいっ、い、いいですとも! こここ、ここは、ですねぇっ!」
京太郎(耳に息がぁぁぁっっ! 腕におも、おももも、おもちっちがぁぁぁぁっっ!)ムクムクッ
初美「」ムッスー
初美「京太郎! わたしにも教えるのですよー! これ提出しないと、受験どころか卒業も危ういんですよー!」
京太郎「それって自業自得なんじゃ……」
初美「ほほーう、先輩に逆らうなんて、いい度胸なのですよ……ほらぁ! 教えると誓わないと、離しませんからねー?」
京太郎「いや、そんな腕にしがみつかれたくらいで――っっ!?」
京太郎(い、いや、これは違うぞ京太郎! ははは、初美先輩の未成熟な、ふと、ふとももぉっ……)
京太郎(ふとももももがぁっ! 手の平を、ムニュッて! こう、ムニュムニュッてぇぇっ!)ムクムクムクッ
霞「んっねぇ、京太郎くぅん……お姉さんに、お・し・え・て……くれないかなぁ?」
初美「わたしにも教えるのですよー……んっ、あっ……んふふー?」
京太郎「お、教えます、教えますからっっ! とにかく、離れてくださいっっ!」
京太郎(そうしないと理性が保たないんだぁぁぁぁ――っっ! もったいねぇけどぉぉぉ――っっ!)
京太郎「――と、いうわけでっ……ここは、こう、こうこうなって、こうなります。大丈夫ですか?」
霞「ふんふむ……うん、わかりやすい説明だったわ。どうもありがとう、これで明日当てられても安心ね」ニッコリ
京太郎「そうですか、お役に立ててよか――あれ? 当てられても、えっ……予習、えっ……?」
霞「」ニコニコ、タユン、プルッ
京太郎「お役に立ててよかったです」キリッ
初美「こらーっ、こっちはどうなってるんですかー」
京太郎「こっちは……えーっと、どこだ……あ、この問題を教えたほうがいいですね。この解き方を理解すれば、こっちのは全部応用ですから」
初美「その応用が苦手なんですが、それはー」
京太郎「んーと、じゃあ家で考えてもわからなければ、電話かメールで救援要請してください。説明しますから」
初美「ふむー、まぁそれで手を打ちましょうか。じゃあ、こっちから教えてもらえますかー?」
京太郎「はいはい、こっちはですね――」
京太郎(煩悩に打ち勝つ試練、すべてはこのためだったんだ――俺は、無事に成し遂げたよ……)
~下校、秋の夕暮はつるべ落とし。なおまだ夏のもよう~
京太郎「はぁー、あっつい……こりゃ帰ったらまずシャワーだな……」
京太郎「飯も、あんまり熱いのは勘弁だな、こりゃ……優希だったら、こういう暑い日こそタコスだじぇ、とか言いそうだが」
京太郎「ま、暑い日に辛い物っては悪くないけど……おっ?」
京太郎「おーい、滝見さん! いま帰りか?」
春「ん、うん……きょうた……須賀くんも?」
京太郎「あぁ、先輩方に勉強教えてたら、大変な目に遭ってな……危うく色々と危ういところだったよ」トオイメ
春「……ふーん?」
京太郎「あ、そういや滝見さんって、辛いモンって食べられる?」
春「得意、ではないかな……どうして?」
京太郎「いや、この暑さだろ? 辛い物でも食って、耐性つけようかと思ってさ」
春「……晩御飯の、ご招待?」
京太郎「お、食いに来るなら大歓迎だぞ? となれば、カレーより……うーん、タンドリーチキンとか? いや、むしろ辛子高菜で――」
春「……須賀くんは、変わってる」
京太郎「だとするとスープを……って、え? なんでだ?」
春「私……あまり、話したり、表情を変えたりするのが、得意じゃないから……」
春「そうやって誘われても、嬉しいか困ってるかわからないって、あまり誘われない」
京太郎「そうかぁ? たしかにわかりにくいけど、よく見てれば結構、表情が動いてると思うぞ?」
京太郎「表情っていうか、感情が表情に出てるっていうのかな、なんていうか――」
京太郎「ちゃんと見てれば、よくわかるよ。滝見さんの感情は」ポンポン
春「…………あ、りが、と……///」カァァッ
京太郎「おっと、またやっちまった。悪い……で、どうする、ほんとに食べに来るなら、材料買いに行くけど」
春「ううん、今日はやめとく……家でもう、準備してあると思うから」
京太郎「そっか、まぁこの時間じゃ仕方ないな」
春「ごめん、気を悪くした?」
京太郎「いや、全然」
春「ありがと」ニコッ
春「……そうだ、これ……」スッ
京太郎「お、黒糖――じゃねーな。あれ、これって……」
春「私の携帯番号と、メールアドレス。これで事前に誘ってくれれば、食べに行けるから」
京太郎「……おうっ、ありがとな」
~一人なのでカレーにしました。ボンカレー最高や!~
京太郎「モグモグ……ごちそうさまでした! うむ、カレーとトマトサラダの組み合わせは最強だな」
京太郎「――で、食休みを挟んで、晩のトレーニングして、予習して、風呂も入ってと……」
京太郎「学校では華やかな生活な分、家は寂しいなぁ……」
京太郎「メールでも送るか、誰に送るかな……」
京太郎「よし、電話してみるか」
京太郎「よし、照さんに電話してみよう」
トゥルルルルル ポチッ
京太郎「あ、もしもし照さん? 俺です、京太郎です」
照「うん、京ちゃん久しぶり……元気そうだよね、日誌見てるよ」
京太郎「そうなんですか? いやー、インハイチャンプに見てもらえるなんて、光栄です」
照「本当は、うちに来てほしかったんだけど、抽選にもれたみたいで……」
京太郎「そうなんですか……」
京太郎「次は当ててくださいね、照さんのお世話したいですから」
照「ん、そう? なら、頑張って当てるね。もうされなくても平気だけど、お世話させてあげる」
京太郎「はい。もし次になったら、鹿児島のお菓子いっぱい買って行きますから」
照「お菓子っ……それは楽しみ! かるかんとか黒糖饅頭とか、黒豚せんべいとかっ……」
京太郎「わかりました、もし次が白糸台じゃなくても、送りますからね。白糸台の寮でよかったですか?」
照「うん、大丈夫」
京太郎「了解です。でも……」
京太郎「了解です、でも……やっぱり、照さんに会いたいです」
照「っっ! わ、私も、あいた――」
?「あーれー? テルー、なにしてんのー、誰と電話ー?」
?「こら、電話中に話しかけるやつがあるか……」
?「いーじゃん、だれー? あ、わかった、サキーだ! おーい、サキー、元気かにゃー?」
照「……京ちゃん、また電話するね。いまはちょっと……久しぶりに、ゴッてするから……」
京太郎「アッハイ……じゃあまた」
京太郎「……元気そうでよかった。白糸台にも行ってみたいな」
京太郎「さて、どうするかな……」
『よう、久しぶり。咲たちは元気にしてるか? 永水、っていうか鹿児島はほんと毎日暑いよ』
『そっちはそろそろ涼しくなってそうで羨ましいぞ』
京太郎「あとは……」
京太郎「おっとそうだ。せっかくアドレス教えてもらったんだし、滝見さんにも送ってみるかな」
京太郎「お、返ってきた……どれどれ?」
『お久しぶりです、須賀くん。咲さんたちも皆、元気にしていますよ』
『優希は須賀くんがいないせいで、少し寂しそうですが』
『こちらもまだ残暑は厳しいです、須賀くんも体調には気をつけてください』
『練習中の話ですよね? トップ、おめでとうございます』
『まぁ、長い間打っていれば、どうしてもスコアが振るわないときはありますから』
『勝つ、負けるというのは起こり得るものです』
『大事なことは、その成績をいかにして継続させるか、いわゆるレートを上げるということですね』
『ですが……その勝利が、須賀くんの連勝の一歩になることを願っています』
『本当におめでとうございます、須賀くん』
京太郎「おお、SOAじゃないんだな……ん、続きが」
『日誌、読みましたよ』
『女性は視線に敏感ですから。あまりそういったことをしないように、意識して気をつけてください』
京太郎「……ごめんなさい、海よりもなお深くごめんなさい、黄昏よりも暗くごめんなさい」
京太郎(なんて返せばいいんだ……?)
『無事に帰れたか? 途中までしか送ってやれなくて悪かったな』
京太郎「こっちも返ってきてるな、なになに……?」
『平気、慣れた道だから。だけどありがとう』
『優しいね、須賀くんは』
京太郎「文面だとすげー饒舌だな、だがそれがいい!」
京太郎「よし、そ・ん・な・こ・と・ねー・よ・じゃ・あ・ま・た・な、と……うしっ、送信!」
『そういや前に、夏のレギュラー二人と打って、トップ取ったぞ』
京太郎「お、返ってきた……どれどれ?」
『お久しぶりです、須賀くん。咲さんたちも皆、元気にしていますよ』
『優希は須賀くんがいないせいで、少し寂しそうですが』
『こちらもまだ残暑は厳しいです、須賀くんも体調には気をつけてください』
『練習中の話ですよね? トップ、おめでとうございます』
『まぁ、長い間打っていれば、どうしてもスコアが振るわないときはありますから』
『勝つ、負けるというのは起こり得るものです』
『大事なことは、その成績をいかにして継続させるか、いわゆるレートを上げるということですね』
『ですが……その勝利が、須賀くんの連勝の一歩になることを願っています』
『本当におめでとうございます、須賀くん』
京太郎「おお、SOAじゃないんだな……ん、続きが」
『日誌、読みましたよ』
『女性は視線に敏感ですから。あまりそういったことをしないように、意識して気をつけてください』
京太郎「……ごめんなさい、海よりもなお深くごめんなさい、黄昏よりも暗くごめんなさい」
京太郎(なんて返せばいいんだ……?)
『無事に帰れたか? 途中までしか送ってやれなくて悪かったな』
京太郎「こっちも返ってきてるな、なになに……?」
『平気、慣れた道だから。だけどありがとう』
『優しいね、須賀くんは』
京太郎「文面だとすげー饒舌だな、だがそれがいい!」
京太郎「よし、そ・ん・な・こ・と・ねー・よ、と……うしっ、送信!」
京太郎「返信早っ! どれどれ……」
『素直に言ってくださってよかったです。それでは、おやすみなさい』
京太郎「はいよ、お・や・す・み、と……ふぅ」
京太郎(電話とかメールとか安価ミスとかコピペミスとかあったが、これでようやく寝られそうだ……)
【9月第一週火曜】
今日は昼休みを利用して、部室の掃除をした。が、鍵を忘れたことに気づき、途方に暮れる。
しかし部の代表を務めている石戸先輩が開けてくれたので、無事に掃除をすることができた。
が、問題は掃除の内容である。すごい、ありがたい。本当に助かった。
なんと、掃除をするという連絡を部員に回してくれたおかげで、手の空いていた部員が手伝いにきてくれた。
一昨日、昨日と掃除ができなかったので、今日明日で少しずつ終わらせようと思っていたのだが。
部員一丸となって掃除ができる、こんなに嬉しいことは他にないだろう。
執事としては失格かもしれないが、麻雀部のマネージャーとしては心から感謝したい。
うーん、これだけでは不足かな。なんだろう、お弁当の写真でも上げておこうか。
…………
「……よし、アップ終わりっと」
学生の、特に男子学生の昼飯は、本気で腹持ちするようカロリー重視、肉多めのオカズラインナップだ。
豚肉のショウガ焼き、アスパラベーコン、刻み野菜の卵焼き、ピーマンのミンチ詰め、ご飯には梅干しだ。
大き目の弁当箱でさえ溢れるほどの、豪快なメニューを詰めた今日の昼食は、日誌の最後に貼られている。
お、さっそく反応が……お?
『強う気ぃ持ちや! 負けたらアカンで、生きてたらもっとええことあるんやからな!』
『うちらの学校に来たら、あったこう迎えたる! 一緒に麻雀しようや!』
なんだこれ、関西……姫松とか、あと千里山、だっけか? どっちかか、その両方だろうなぁ。
『ひどいかんきょうそしょうもじさない。もしさきがおなじめにあっていたら○○はちりものこさない』
メールにフィルター!? えっ、このサイトってそんなことできんの?
メールじゃなくてメッセージが送られてるだけだからか? っていうか、これ照さんだよな?
『うぐぅぅっ! か、かわいそうだよー、うちにおいでよー! 岩手県は寒いけど、人の心はあったかいよー』
岩手、たしか宮守女子高か。あの大きいけど可愛い人が、こんな話し方だったような。
『え、和ってそんな環境で麻雀してたんだ……大丈夫なのかな、和もいじめられてなかったらいいけど』
『あなたも、辛いことがあるなら声を上げるべき。待っているだけじゃ、誰も解決してくれないと思……』
……あっ、思いだした。たしか和の小学校のときの友達の、阿知賀女子の……高鴨さんだ。
こっちは部長さんかな? とりあえず、和は大丈夫だったって返事はしておこう。
さて、そろそろ寝ようかな……ん? またメールか、今度は――。
『麻雀部は、皆の部活です。マネージャーだからといって、一人で抱え込まないでください』
『なにか問題があるなら提起してください、きっと皆で話し合い、最良の答えを導きますから』
『それと、お掃除は皆が進んでしたことです。お礼なんていりません、当然のことですよ』
『明日からも頑張りましょう、神代小蒔』
……名前書いちゃってるよ、この人!
あぁ、もう……抜けてるっていうか、真面目なのか……放っとけない人だな。
だけど、誰よりも優しい人って感じがする。巫女さんたちが守りたいって思うわけだ。
「さて、寝るかなぁ……明日もまた、頑張らねーと……あふぅ」
~清澄
「…………あの、言いたくはありませんけど、部長……いえ、元部長……」
「言わないで、わかってるから……うん、あの……本当に、ごめんなさい……」
「すごい勢いでお叱りのメールとメッセージが届いとるぞ。どうするんじゃあ」
「京ちゃん……ごめんねっ、ごめんねっ……いまは毎日、掃除してるからっ……」
「戻ってきたら、一緒に掃除しようじぇ、京太郎ぉ……うぐっ、ぐすっ……」
~龍門渕
「ほう、これは美味しそうなお弁当だ……男子学生なら大喜びでしょうね」
「ボクはもっと、野菜が多い方がいいなぁ、あと彩りも足りない」
「そうかぁ? オレはこういう弁当好きだけどなぁ、で、昼休み前にかっ込むんだよ」
「……思考が、完全に男子高校生……」
「エビフライだ! 衣ならエビフライを入れるぞ!」
~白糸台
「ツモ、4000オール。はい連荘続行」ギュルルルルルルルッ
「んーもー、夜中だよー、テールー!」
「なにをそんなに怒っているかは知らないが、いい加減に明日に障る……そろそろ寝かせてくれ」
「お、お疲れ、さまさまです……」
(お茶を飲んだら寝付けなくなりそう……どうしよう)
~永水
「……すごいお弁当だわ、これだけ食べて消費しきれるなんて、殿方ってパワフルなのね……」
「触ってみたらわかるですけど、筋肉すごいですからねー、京太郎は」
「えぇっ!? さ、ささ、触ったんですかっ!?」
「? まぁ、しがみついたりしますから、服の上からでもわかりますしー」
「あ、あぁ、服の、上……から……///」カァァッ
「……そんなことより問題は、彼の元の学校……」
「彼自身がなんとも感じていなかった、といえばそれまでなのだけれど……」
「あの勝利も、彼の献身的な支えがあってこそ……なのでしょうか」
「そうだとしても、わたしたちが彼にできることは少ないのですよー」
「そうね、仲間だと思ってはいるけれど……彼はいずれ、帰ってしまうんだもの。寂しいけれどね」
「で、ですが、帰るまでは麻雀部の仲間です!」
「そうですね。少しでも心と身体が癒されるよう、私たちで彼を支えてあげましょう」
「……ん」ポリポリ
~霞さんがどうしても京太郎に名前を呼んでほしいそうです(掃除のとき変えるの忘れたなんて、言えない)~
京太郎「まだ三日なんだけど……この通学路にも慣れちまったなぁ」
京太郎「この道の、学校と反対側が神社……初美先輩も滝見さんも、あっちのほうに帰ってったっけか……」
京太郎「ってことは、神代先輩と石戸先輩、狩宿先輩もあっちなんだろうな」
京太郎「そういえば、神代先輩が姫様って呼ばれてるのは知ってるけど……」
京太郎「本家とか分家とか、どういう生活してるとかは全然知らねーよな」
??「あら、気になるなら教えてあげましょうか?」
京太郎「! その声はっ……」
京太郎「石戸先輩! それに、狩宿先輩も……おはようございます!」
霞「はい、おはよう。それで、本家のことが気になるのかしら?」
京太郎「あー、いや……ちょっと興味があるっていうくらいですね。難しい話は苦手ですし」
巴「そうですね……込み入った話はしても仕方ないですし、教えるわけにもいきませんが。では少しだけ」
霞「簡単に説明すると、この鹿児島に伝わる由緒正しい神社の本家が、小蒔ちゃんの神代家……」
巴「そして分家が、石戸・薄墨・狩宿・滝見、そして十曽……その娘の六人が、六女仙と呼ばれるの」
京太郎「本家筋の跡取りだから、神代先輩がお姫様ってことですか?」
霞「そうよ。だから小蒔ちゃんには絶対、手をださないように……ね?」
霞「その代わり、私のことを霞と呼ばせてあげるから、これで我慢すること。いいかしら」
京太郎「え、えぇっ!?」
霞「あら、ご不満?」クスクス
京太郎「い、いえいえいえ! そんなことはっ、光栄至極でございます!」
京太郎(しかし、やっぱ神代先輩はお姫様なんだな……色々あるんだろうな、血筋とかしきたりとか)
京太郎「まぁ、俺のことはともかくとして、それだと皆さん、自由に恋愛とかできないんじゃないですか?」
霞「うーん、そうねぇ……血筋を薄めないため、という名目がある以上、それもやむないと思っているわ」
巴「だけど、そう悲観するものでもないですよ。分家の私たちならまだ、条件付きではありますが、相手を選ぶことはできます」
霞「それに世の中には、ごく稀にだけれど、伴侶の力を強くする血筋もあるみたいだからね」
巴「廃れてしまっただけで、特別な血筋の家柄が、普通に生活している例もあることですし……」
霞「自分が好きになって、添い遂げたいと思った方がそういう血筋なら……ロマンチックだと思わない?」
京太郎「まぁ、わからなくはないですけど。どっちにしても難しくないですか? 確率が低いっていうか」
霞「ふふっ、男の人はリアリストっていうけれど、本当にそうなのね」
京太郎「あー、すいません、否定したいわけじゃなくて。その……」
京太郎「やっぱり女の子なら、好きな人と自由に恋愛したいんじゃないかって……思っただけなんです」
京太郎「いやまぁ、そういう話を昔、友達から聞いたってことですが」
友「へぇ、お友達……ふふ、女の子ですね?」
京太郎「皆さんもご存じの、魔王姉妹ですよ」
霞「宮永咲ちゃん、それにチャンピオンもなのね……」
巴「あの二人とそれだけ昔から知り合いなんですね、なんだか意外です」
京太郎「すみません、俺だけ麻雀弱くて……まぁ、二人がそんなに強いって知ったのは、高校入ってからなんですけど」
巴「そうなの?」
京太郎「照さんと知り合ったのは小学校の頃なんですが、中学上がる頃には東京に行っちゃいましたからね」
京太郎「で、中学に入ってから知り合った相手が、似た雰囲気の子だと思ったら、名字が一緒で……」
京太郎「妙な縁だと思って、なんとなく世話焼いてたんですが……それから高校入って、色々知ったわけです」
霞「ふんふむ、面白いわね。だけど京太郎くん、宮永姉妹とは縁で結ばれているのかもしれないわ」
霞「その縁を繋ぐも断ち切るも、あなた次第だから……よく覚えておくといいわね」
京太郎「は、はい……まぁ、仲がこじれないようには、気をつけておきます」
巴「ふふっ、脅かしてるだけですよ、心配しないで。霞ちゃんも、妬いてるからってイジワルしないの」
霞「!? べ、別にそういうことじゃ……あ、そ、そうだわ! それよりもちょっと思いついたのだけれど」
巴(わざとらしいなぁ……ふふっ)
京太郎「どうしました?」
霞「来週の末から、ちょうど三連休があるでしょう?(※注 この
安価スレ独自のカレンダーです)」
霞「そのときに、いまの一・二年生の強化合宿をしたいなぁって思っていてね……」
京太郎「あ、なんか嫌な予感がするんですけど」
霞「いやだわ、嫌な予感だなんて……ただ、その合宿先に、長野か東京なんてどうかしら、と思ったの」
京太郎「嫌な予感的中じゃないですかー、やだー!」
巴「いい勘してるね、須賀くん。そういう人って、血筋の中に神職の人がいるかもしれないのよ?」
京太郎「へー、そうなんですか。でも残念、そういう話は親父たちからも聞かされてないですよ」
巴「うーん、まぁ記録に残るより昔、っていうこともあるからね。そうだと思っておくのも、面白くない?」
京太郎「まぁ、ロマンって感じではありますね。伝説のなんとかの血筋――なんて主人公っぽい」
巴「あ、須賀くんって意外に、そういう方面もイケるんだ」
巴「……いや、ね? 違うのよ? 私は別に、詳しいわけじゃないからね?」
霞「……寂しい、無視しないでちょうだいね……」
~お昼だよ!~
京太郎「はぁー、やっぱ授業って疲れる……」
モブ子「へいメーン! だらけてんじゃねー、昼飯の時間だぜー! ヒャッハー!」
京太郎「時々思うんだ、俺……お嬢さまってなんなんだろって、さ……」
モブ子「それはあたいのことだぜ、ヒャッハー!」
京太郎「全世界のお嬢さまに謝れ」
春「……相変わらず、仲良い」
京太郎「俺はそっちより、滝見さんとかと仲良くしてーよ……」
モブ子「照れんな照れんなー、はっはっは」
春「……///」ポリポリ
京太郎「――とか言ってると、時間がなくなりそうだな、さて……」
京太郎「ま、時間ももったいねーし、ここで食うか」
モブ子「いよっしゃー、あたしも!」
京太郎「お前は弁当もなしに……さっさと学食行ってこい」
モブ子「おっといけねえ、そうだった!」
京太郎「騒がしいやつだな……あ、滝見さん悪い、隣で食ってていいか?」
春「ん……」チョットツメル
京太郎「サンキュー、おっ、可愛い弁当だな。親御さんの?」
春「うん、朝は……弱いから、わたし」
京太郎「なるほどなぁ、道理で。弁当に黒糖が入ってないわけだ」
春「……別にいい、黒糖は黒糖で食べるし……」ポリポリ
京太郎「って、こらこら。弁当食べながらは作ってくれた人に悪いだろ、あとにしなさい」
春「……むー」ムスー
京太郎(膨れてる、かわいい)
京太郎「なら……今度オカズに、黒糖使ってみるか」
春「……甘そう、美味しいとは思うけど」
京太郎「いや、勘違いしてると思うから訂正するけど、食材じゃなくて調味料だぞ?」
京太郎「煮物とかの砂糖代わりに、ちゃんと溶かして使えば、風味があって美味いらしい」
春「……ごくり」ダラー
京太郎「涎拭きなさい、はしたない」フキフキ
春「……んむっ」フカレフカレ
京太郎(もしかすると、咲とか照さんなみのポンコツなのか……?)
春「……楽しみ」
京太郎「師匠に詳しく聞いとくか、時間があったら……って」
春「……?」
京太郎(楽しみって……あぁ、やっぱ食べたいってことで、いいのか?)
京太郎(まぁ、作ったら食べさせてやるかな、うん)
京太郎「ま、いつにするかわかんねーけど。美味しい黒糖、売ってる場所教えてくれよ」
春「……うん、わかった」ニコッ
~放課後~
京太郎「さぁ、今日も部活だ!」
初美「掃除は昨日しましたし、しばらくは平気でしょうねー」
京太郎「えっ」
初美「えっ」
京太郎「そういえば、紅茶用の茶葉とミルク、それに自動卓の部品とか掃除用具……」
京太郎「んー、ダメだな。これは買いだしに行くしかないか」
京太郎「……なにか要る物あるか、聞いたほうがいいか?」
京太郎「あの、神代先輩?」
小蒔「あ、須賀さん。どうしましたか?」
京太郎「備品の買いだしに行くんですけど、なにかいるものはありますか?」
小蒔「お買いものですかっ? では私も行きましょう!」フンスッ
京太郎「い、いえ、大丈夫ですから! というか、先輩は一局でも多く打ったほうがいいですって」
小蒔「そうですか……」シュン
京太郎(なんだろう、物凄い罪悪感がある……)
小蒔「あっ……あっ、あ、いえ!」
京太郎「ん、なにか思いつきました? なんでもいいですよ、言ってください」
小蒔「えっと、その……お行儀が、悪いとは思うんですけれど……あ……ま……」
京太郎「はい? すみません、よく聞こえなくて……」
小蒔「あ、あめ……飴玉を、なにか……ええと、あればお抹茶味のものを……」
京太郎「抹茶の飴ですね、了解です。でも別に、お行儀悪くなくないですか?」
小蒔「いえ、対局のとき……練習で寝てしまっては申し訳ないですから、そのときに舐めようと思って……」
京太郎「あぁ、なるほど。眠気覚まし用ですね。でもそれなら、薄荷とかのほうがよくないですか?」
小蒔「う……えぇと、辛いのは、どうにも……苦手ですから……///」カァッ
京太郎(結婚したい……)
京太郎「ただいま戻りましたぁ! 神代先輩、お約束のブツです、どうぞお納めください!」
小蒔「ありがとうございます。えっと、お代金のほうは……か、霞ちゃーん!」
京太郎「大丈夫です、部費の自由費からですから。ただ、他の皆さんにもわけてあげてくださいね?」
小蒔「はい、もちろんです! ではさっそく、いただきます……あむっ」コロンコロン
京太郎(かわいい)
京太郎「しかし、暑い中の買いだしは疲れる……」
京太郎「そうか、だから回数が多くならないように、部長は一回の買いだしを多く頼んで……」ハッ
初美「」
霞「なんていうか……不憫、だわ……」
巴「こう、魂まで縛られている……そんな感じですね……」
京太郎「うーん、手が空いてしまった……牌譜も取らなくていいみたいだし」
京太郎「見学でもいいんだけど、ちょっと勉強しとくか」
モブ子(ちょっと……?)
モブ絵(あれ、高三の範囲さえ越えてるよね、確か……)
京太郎「言ってる間に、もう下校時間だな。やっぱり麻雀は、時間かかる競技だなぁ」
京太郎「最近は麻雀してない気もするけど、きっと気のせいだよな、うん!」
京太郎「おっ、あれは……おっす、帰りか?」
春「……須賀くん」
京太郎「途中まで送ってっていいか?」
春「……いいよ、よろしくね」
京太郎「そういや、この学校って帰りの寄り道とかってどうなの? 禁止されてる?」
春「……どうだろ、わからない」
京太郎「麻雀部でどこか寄ったり、買い食いしたり、そういうのもなしかー」
春「他の子はしてるかも……」
春「でも、レギュラーは家の仕事もあるから……終わったらだいたい、すぐに帰ってる」
京太郎「そういうもんか。あれ、でも滝見さん、今日はちょっと遅くないか?」
春「!! ……ちょっと、用事があったから……」
春(待ってた……とは、言わない……別に、待ってないし……会えたらいいな、くらいにしか……)
京太郎「ふーん、そっか……お、校則にはなんも書いてないな」
春「だったら、どこか……寄っていく?」
京太郎「お、不良だな、滝見さん。どこかって、いい店とかあるのか?」
春「……さぁ、知らない」
京太郎「うーむ、遅くなりすぎるのもあれだし、いまから探すわけにもいかねーな」
京太郎「買い物ついでに、どこか探しとくから。次があれば、寄り道してみるか、な?」
春「……ん、期待してる」
京太郎「期待してくれるのか、そいつは嬉しいな」
春「っっ……言葉の、綾……」カァッ
京太郎「鹿児島に来てよかったことはいくつかある」
京太郎「中でもこれだ、普通のスーパーで良質の豚肉が手に入る、すげーありがたいもんだ」
京太郎「これを塩胡椒で下味つけて、バターを絡めながら焼いて……」
京太郎「最後に煮込んだケチャップソースかければ、ポークチャップの完成だ!」
京太郎「肉を煮込むやつもあるが、俺はバターで焼くジューシーさを大事にしたい」
京太郎「添え野菜にはほうれん草、豚肉との相性は最高だからな」
京太郎「スープは悩んだがポタージュ、コンソメスープでもよかったかもしれないな、玉ねぎのスライスを入れて」
~食事後、夜行動~
京太郎「腹いっぱいだ……さて、食休みの間、誰かと連絡してみるか」
京太郎「……あ、もしもし。滝見さん、いま大丈夫か?」
春『……ん、平気』
京太郎(さて、なんの話をしようか……)
春『……あの、ちょっと聞きたいことが』
京太郎「ん? ああいいよ、なんだ?」
京太郎(滝見さんが話題振ってくるとは、珍しい……)
春『清澄にいたときのこと。本当に、雑用は一人でさせられてたの?』
京太郎「雑用だと思ったことはないよ、皆のサポートだからな」
春『……無理、してない?』
京太郎「無理だったらそう言ってるよ。っていうか、本気で嫌ならやめてたと思うし」
京太郎「本当に、掃除や買いだしや、タコス作りだって嫌なんてことはなかったよ」
京太郎「やって当然、なんて思われてなかったし、仕事すれば労いの言葉もあったからな」
京太郎「周りがどう思ってたか、どう見てたかはわからないけど、特に気にもならない」
京太郎「ただ、女子団体で優勝したとき――咲が言ってくれたんだよ。俺のおかげだって、ありがとうって」
春『…………(宮永咲……)』
京太郎「それに、あの鬼の部長の泣き顔も見られたしな。それだけで十分、元は取れたって感じだよ」ハハッ
春『じゃあっ……』
京太郎「ん?」
春『っっ……じゃあ、いまは……永水での環境は……どう?』
京太郎「どうだろうな……」
京太郎「皆が喜んでくれるから平気だな、苦でもなんでもない」
春『……そう、なら――』
京太郎「それに――」
春『なら、いい……えっ?』
京太郎「それに……滝見さんもいるからな、楽しいよ」
春『……っっ!!』
京太郎(あ、やべ……いまちょっと、調子乗って変なこと言わなかったか?)
京太郎「っと、悪い、滝見さん。いまのは――」
春『……春』
京太郎「えっ?」
春『……春って、呼んで……かまわない』
京太郎「――ああ。春がいるし、こっちでの生活は楽しいよ」
春『そう……よかった』ニコッ
京太郎(あ、なんとなくいま、笑ったっぽいな)
京太郎「じゃあな。急に電話してすまん、またな」
春『ううん、いい……またね、京太郎』ブツッ
京太郎「おう……えっ? あれ、いま……名前で?」
~9月第一週木曜日 重視行動:執事+1
京太郎「最近麻雀打ってないかと思ったが、マネージャーだし別にいいと気がついた」
京太郎「そういえば、例の中学生コンビ……明星ちゃんに湧ちゃんだっけ」
京太郎「まだ誤解されっぱなしなんだよなぁ……なんとかできないものか」
京太郎「噂をすればあの二人だ……けど、なんか声をかけるのは躊躇われるな」
湧「ん? あっ……明星、あれ……」
明星「なに? あら……おはようございます、須賀京太郎さん」
湧「あ、そこで声かけに行くのね……おはようございます、先日はどうも」
京太郎「お、おはよう。まぁ、なんというか……先日のことは、忘れてもらえますと……」
湧「年下に低姿勢って、ちょっとみっともないですよ」
京太郎「」グサッ
明星「もう、湧! すみません、友人が失礼なことを……」
京太郎「いや、とんでもない。俺のほうこそ、先輩の妹さんとご友人に失礼なことをしました」
京太郎「非礼、お詫びいたします。申し訳ありませんでした、お嬢さま方」ペッコリン
明星「………………」ポー
湧「………………はっ」ドキッ
湧「だ、騙されるもんですか! 行こっ、明星!」
明星「えっ、ちょっと待って、湧! もうっ……すみません、それじゃまた、京太郎さん!」
京太郎「……誤解は、解けたかな?」
モブ子「まぁな! だが霞先輩の誤解は解かせない!」
京太郎「てめぇぇーーー! またメールしやがったなこらぁぁーーっ!」
湧が01でなく00だったら、12+50で62だったもよう(大好き寸前)
京太郎「くそぉぉぉぉっ、あの悪魔がっっ……」
モブ子「誰のことかなー? んー?」
京太郎「てめー、いつかヒデー目に遭わせてやる、泣いたり笑ったりできなくしてやるからな!」
春「…………むー」
京太郎「どうした、春?」
春「別に……」ムスー
京太郎「??」
京太郎「さて、どこで飯にしようか」
京太郎「ふー、やっぱ学食はいいな、お茶も注ぎやすいし」
京太郎「……違う学年、年上のお姉さま方も多くて、実にいいっ……」
京太郎「清澄にいたときは、年上の女子なんて……なん、て……うわぁぁあぁあっっ!」
京太郎「はぁっ、はぁっ……なにか、思いだしてはいけないものを……」
京太郎「でも、染谷先輩は優しかったなぁ……はぁ、癒される」
巴「……あの、さっきから何してるの? すごく声かけようか迷う状態だったんだけど……」
京太郎「うぉうっ!? か、狩宿先輩っ……いえ、ちょっと嫌なことを思いだして……」
京太郎「もう大丈夫です、ご心配をおかけしました」
巴「そ、そう……あんまり無理しないでね。辛いようなら、部活休んでもいいから……あっ、そうだ」
京太郎「あれ、これは」
巴「携帯番号と、メアドだよ。一応、副部長もしてるから、休むときは私か霞ちゃんに連絡してね」
京太郎「はい、お気遣いありがとうございます」
巴「いえいえ。さ、それじゃお昼にしよっか」
京太郎「一緒に食べてもいいんですか?」
巴「うん、もちろん。学校唯一に男子だし、視線集まるからね。ちょっと優越感あったりして♪」
京太郎「狩宿先輩、お淑やかに見えて、結構お茶目ですよね」
巴「見える、だけで悪かったねー」ニッコリ
京太郎「そ、そういうつもりでは……申し訳ございません」
巴「じゃあお詫びに、お茶でも淹れて来てもらおうかなぁ?」
京太郎「はい喜んでー!」ダッシュ
巴「ふふっ、ありがとう」カワイイナー
~部活通常行動、一回目~
京太郎「そういえば、今日まで一回も体育受けてないんだけど……どうなってんだ?」
春「……ある。だけど……京太郎は、たぶん別……」
京太郎「えっ」
春「……たまに、ほんとたまにだけど……いやらしい目、だから……」
京太郎「」
春(本当は、体力差があるから、わけるしかないんだけど……)
京太郎「」シクシクシク
春(うん……かわいいから、このままでいい……)ニコッ
京太郎「この辛さは……部活で解消だ!」
京太郎「そういえば……あの、霞先輩」
霞「どうしたの、京太郎くん?」
京太郎「長野の先輩の実家が雀荘で、よく(咲たちが)練習に行ってたんですけど……」
京太郎「永水はそういうの、ないんですか?」
霞「あぁ、そういえば……卒業生が近くでやってるみたいね」
霞「卒業した先輩方は、たまに行ってたみたいだけれど、去年からは……ね」
京太郎「あー、そうですね……」
京太郎(お店自体は普通でも、変な客が来るとお姫様の教育に悪いだろうしなぁ)
霞「あ、でも部員が部活動中に行くのは止めないわよ」
霞「場所は教えてあげるから、興味があるなら行ってみたらいいわね。地図を渡しておくわ」
~移動~
京太郎「なんとなくルーフトップに似てるな……」
京太郎「さーて、空いてる卓は……おっ、あの席は」
モブオッ 24600 三位
モブサ 23200 四位
モブン 27400 一位
京太郎 24800 二位
京太郎「ありがとうございました」
京太郎(つ、つええ……特に起家だったオッサン、何者だよ……)
モブオッ「おう、お疲れ。しかし兄ちゃん、なかなかやるもんだな」
京太郎「いや、自分は最初くらいしか」
モブオッ「へへ、謙遜すんなよ。マナー悪ぃが、ちょいと拝見」
京太郎「えっ」
モブオッ「思った通りだ、俺の待ちを完璧に押さえてやがる」
京太郎(マジか……なんとなく、危ないって気はしたけど……)
モブオッ「打ち筋は甘いが、素質はありそうだ。頑張りな」
京太郎「あ、ありがとうございます!」
京太郎「さて、そろそろ戻ったほうがいいかな……それとも、もう少し続けるか」
京太郎「…………皆、勉強しないのかな」
モブ子「そりゃそうでしょ、部活中だもん」
京太郎「部活外で掃除をし、部活中に勉強するというのも……」
モブ子「麻雀はどこ行った」
京太郎「戸締りオッケー、火の元よし! あとは鍵を職員室に返してっと」
京太郎「さて帰るかな……あれ、昇降口に誰か……」
京太郎「……あ、れ……いないっ、そんな……確かにさっき人影が……」
ざわ……ざわ……
ゴトンッ、ヒタヒタ……ヒタヒタ……
京太郎(おおおお、落ち着け、誰もいるはずないっ……ここ、これは、風かなんかだ、きっと……)
「ネエ、ホントニソウオモッテル……?」
京太郎「うぁっ、うああああああああああああああああ!」ダットノゴトク
~世の中には、科学で証明できないことがあるそうな~
京太郎「き、気のせいだよな、うん……はぁ……なんか疲れた、丼物で済ませておこう」
京太郎「寝るのも怖い……誰かにメールしてまぎらわそう」
京太郎「んー、まずは初美先輩に送ってみよう」
京太郎「そういえば、今日の帰りの昇降口でなんですけど……」
初美『……それは、何時くらいのことですかー?』
京太郎「え……なにそれ、マジすぎて怖いんだけど」
京太郎「おっ、返ってきた」
『ふーむ、それならまだ、カシマさまが出るには早い時間なのですよー』
『クルシミさまももっと遅いですし、きっと気のせいですねー』
『ただ、永水には色々な伝承がありまして、ほぼすべてが事実です』
『多くの生徒はなんらかの能力がありますし、血筋柄平気ですが』
『京太郎はそういうのがありませんから、気をつけたほうがいいですよー』
『夕方以降、校舎をうろつく場合は、誰かと一緒が懸命でしょうねー』
京太郎「…………は、はは、はははは、SOASOASOASOASOASOA」
京太郎『……まだ、最後の一行が……』
『ああ、それと――念のためですが、今日は背中を振り返らないようにしてくださいねー』
京太郎「」
京太郎「はっっ! いかん、危うく意識が飛ぶとこだった……」
京太郎「ここ、こういうことは……和だ、そうだ和だ! 和にそんなのあり得ないって言ってもらおう!」
京太郎「はっ、返ってきた!」
『永水の校舎は木造で、歴史ある建物だと聞いています』
『木造建築は頑丈で、木材によっては鉄筋よりも遥かに長持ちすると聞きますが』
『家鳴りや風による軋みの影響も受けやすいでしょう』
『多少大きな音がするのは当然だと思いますよ』
『あと、妙な声や足音という話ですが、誰かのイタズラではありませんか?』
『さもなくば聞き違いだと思います、人がいないのに声や足音なんて、そんなオカルトあり得ません』
京太郎「……あぁ、ホッとする……あとは和のおっぱい写メでもあれば完璧だったなぁ」
京太郎「よし、落ち着いたし、お礼のメールを打っておこう」
【9月第一週木曜】
これは本当のことなのか、いまでも判別がつかない。だけど、書かずにはいられないので報告しておく。
今日の部活後、帰宅直前のことだ。いつものように部室の戸締りを確認し、鍵を返す、ここまでは同じ。
だがそこから昇降口に向かった、ちょうどそのときだった。時間は、正確には把握してないけど、18時頃。
確かに俺は、そのとき昇降口に人影を見た。だから声をかけたんだ。けれど――。
次見たとき、その影は消えていた。影なんてなかったっていうみたいに、忽然と。
えっ、と思って周りを見たけど、どこにも気配がない。誰かが隠れてるなんてこともなかった。
外だって、夕方とはいえそこまで暗いってわけじゃない、誰かが走っていけば見えたはずだ。
だけど、周囲には誰もいなかった。気配もなかった。それなのに――。
背後から、その少し離れたところから、物音が聞こえた。気配はないのに、音だけが。
俺はそっちへ向かって、音のした場所を覗き込んだ。だけどそこには、物音を立てそうな物すらなかった。
そこで初めて、俺は状況の異常さに気がついた。だけど遅かった。
暗がりに伸びる、木造の廊下の奥から――足音が聞こえた。
とっさに廊下から目を逸らしたけど、俺はその場から一歩も動けなかった。
なぜなら、近づく気配に気づかれたくなかったからだ。
早く遠のいてくれ――そう願っているのに音は近づき、廊下の軋みがうるさいくらい頭に響いている。
その直後、耳元にいきなり気配が生まれた。生温かい息と同時に、声が聞こえたんだ。
ネエ、ホントニ、ソウオモッテルノ・・・?
あとのことはよく覚えてない。気がつくと駆けだしていた俺は、いつの間にかアパートの前に戻っていた。
できることなら、これが錯覚とか気のせいだって、皆に笑い飛ばしてほしい。
むしろ、そのほうが気持ちが楽になる。
事実、ある先輩には気のせいだと言ってもらえたし、友人にもそう言ってもらえた。だけど、まだ――。
――俺の耳元には、あの気配がこびりついてるみたいだ。
…………
やばい。なにがやばいって、先輩のメールからこっち、マジで後ろを振り返れない。
ずっと気配が残ってる気がするのに、そっち見たらやばいっていう感じしかしない。
正直、自分がここまでビビリだとは思ってなかった。
けどそれは、いままでホンモノの経験をしてなかったからなのだろう。背筋がゾクゾクする。
ピポンッ
っっ!? あ、あぁ、メールのポップアップ音か……
『だだだ、大丈夫だよ、京ちゃん! そそ、そんなのないって……和ちゃんもSOAって言ってるし!』
『にひひっ♪ まったく犬はビビリで困るじぇ!』
うるせーよ、俺だってそう思ってんだよ。くそぉ、優希にここまで言われるのは、正直腹立たしい……。
『ちょっと、ほんとそういうのやめてよね! うわぁ、もう……読むんじゃなかったわよ、ほんとに……』
『憧って前もそうだったよね、合宿のとき! 私が、寝る前に天井の四隅を――』
『だからやめてって言ってるでしょ! しかも、そういうのって結局気になっちゃうから……はぁ……』
あれ、これマジでメールじゃないのか? メッセージを受信って出るけど、リアルタイム?
『寒気がするんやったら、風邪の可能性もありますよーぅ。なんやったら病院も行ったほうがええよ?』
『場所が場所だけに、気になるところではあるんだけどね……近くだし、行ってみようかしら』
関西の人と……近く? 九州の人か、それも鹿児島? 誰だろ、わっかんねー。
しかもその言い方、なんか気になるし……先輩方と同じタイプの人なのか?
『須賀さん、大丈夫ですよ。さっき霞ちゃんが見に行ってくれたみたいですけど……』
『もう、気配は千切れているみたいですから、後ろを向いても平気だそうです』
『おつかれさまでした』
んー? あははー、なんだ、そっかそっかー。「もう」気配は千切れたかー、よかったー。
ノ……ノオオオオオオオオオォォォォォォォォ――――――ッッッ!!!!
~清澄
「あり得ませんそんなオカルトあり得ませんそんなオカルトあり得ませんSOASOASOA……」
「あのー、そろそろ鍵閉めたいんだけどー」
「はぁ、まったく……和はわしが送っていく。久ははよ帰りんさい」
~龍門渕
「……オカルトチック、これは興味深い」
「残暑も厳しいしなぁ、久々に肝試しでもしてみっか?」
「ここここ、衣はもう寝るぞ! ハギヨシ、部屋まで供をしろ!」
「承知いたしました」
「あり得ませんわそんなオカルトあり得ませんわそんなオカルトあり得ませんわSOASOASOA……」
~永水
「うーん、気のせいだって言ったのは逆効果でしたねー」
「最後に振り向くなって言ったからでしょうか。まぁその指示を守った須賀くんは、いい勘をしています」
「ただいま。ふぅ、やっぱり学校から離れない相手だから、大丈夫だったみたい」
「お帰りなさい。春ちゃんも、ご苦労さまでした」
「……ううん、京太郎が無事でよかった」
「これからは帰りに、できるだけ誰かがいるといいですねー」
「まぁ、時間が一分でもずれれば平気なのだけれど……戸締り、これからは私がするわね」
「ま、京太郎にはわたしがついてってあげるですよー」
「……戸締りをしてから、私が送っていけばいいんじゃないかしら?」
「私がするから、平気……」
「い、いえ! ここは神代の嫡子として、私が――」
「姫様はおとなしくなさっててください、話がややこしくなりますから……」ハァ
「????」
~~9月第一週金曜日 朝遭遇判定
京太郎「……あ、朝だ……うん、気配も消えてる……」
京太郎(けどまだ後ろが怖いから、鏡は見ない)
~~
京太郎「んー、ひとっ走りしてきたからかな。汗流すと気分も晴れるな、やっぱ」
京太郎(でもなんとなく、そう。ほんとになんとなく、弁当は塩むすびにしとこう、あとオカズ)
京太郎「……とりあえず、人影が見えただけだったら、もう声はかけないでおこう」
京太郎「誰がいるか、ちゃんと確認してから声をかける。もしくは声をかけられるのを待つ」ウム
京太郎「うーむ、初美先輩にああ言われたし、誰かと一緒に登校したかったな……」
モブ子「へーい、お呼びかね、京太郎氏!」
京太郎「呼んでねーよ……いや、お前でもいまはありがたいか」
モブ子「まさかのデレ!?」
~午前終了、なお3・4時間目が体育のもよう
京太郎「聞いてねーぞ……永水にまだ、ブルマが残ってたなんて聞いてねえぞおぉぉぉぉぉっっっっ!」
春「……ほんとに、京太郎一緒じゃなくてよかった」ジトー
京太郎「ハッ……い、いや、違うんだ春! これは、その……俺の中の内なるガイアがなんやかんや」
春「肩のそれ、はらってあげようと思ったけどやめる……」
京太郎「!? なんかついてんの!? ねぇっ、春! 春ちゃん! 答えて!」
春(ゴミがついてるだけだけど……ま、いいか)
京太郎「やべぇ、誰かに見てもらわねーと……」カタカタ
京太郎「あ、あのさー、春……?」
春「……なに?」パクパク
京太郎「その、マジでなにかついてるなら……なんとかしてくんないか、頼む!」
春「………………」
京太郎「お、お願いします……」
春「…………」ハァ
春「……ちょっと、こっち来て……はい、取れた」
京太郎「……ん? あぁ、埃が乗ってたのか。サンキュ」
春「…………ん」ムスー
京太郎「……あっ、そうだそうだ! 忘れるとこだった、ほれ……いまののお礼だ」
春「……キーコン?」 ※黒糖と醤油の煮物、郷土料理だってさ!
京太郎「あぁ、前に言ってたろ? で、調べたら黒糖の料理、こっちだとこういう風に使うみたいだから、作ってみた」
春「……あ、あー……」
京太郎「ほら、遠慮しないで食ってみてくれよ」トリワケー
春「…………ふんっ」パクパク
春「っっ……おいしっ……っ」ハッ
京太郎「お、いい反応。よかったぜ、地元民の、しかも春の評価なら安心だな」
春「…………」ムー
春「……誰の……」
京太郎「えっ、なに?」
春「誰の……その、ブ……た、体操着、見たかったのっ……」
京太郎「え、と……その、それは……」
春「…………えっ」
京太郎「は、初美先輩、です……」
春「」ドンビキ
京太郎「いや、違うんだって! 誤解すんなって!」
春「……いい、よくわかったから……もう、聞かない」
京太郎「だあぁぁぁぁ――っっ! マジでっ、聞いてくれ! 聞いてください!」
京太郎「だってあれじゃん! 先輩運動苦手っぽく見えるし、ほら、子供っぽいから!」 ←失礼
京太郎「だからそんな露出多かったら、ケガしたら危ないって思って、見守ったほうがいいかもって親心だから!」
京太郎「下心じゃないから! マジで信じてくれってば、春!」
春「……う、うん、わかったから……もう、いいから」
京太郎「」オワタッコ
モブ子「初美先輩、子供っぽいですってー。はい、送信」
京太郎「てんめえぇぇぇぇぇ――っっっ!」
京太郎「部活、顔だしづれぇ……はぁ」
京太郎「なんか春にまで距離取られるし、昨日からすげーついてねーよ……」
京太郎「いや、昨日はついてたっけか、ははは……」
春(……ちょっとやりすぎたかな……ごめんね)
京太郎「がんばろー」
モブ子「テンション低っ」
京太郎「部室居づらいし、買い物でも行ってこよ……」
京太郎(一昨日いったとこで、そんなに買う物ないけどな)
京太郎「食材中心に見ていくか。小麦粉と牛乳、卵は……使う予定あったかな、あとは……」
初美「コックかパティシエにでもなるつもりですかねー、あのコは」
霞「美味しくて食べ過ぎちゃうから、お腹周りが気になるんだけど……」ハァ
初美「年を取るとそうなりますよねー」ワカリマス
霞「初美ちゃん、楽しく麻雀しましょうか」ニコニゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
初美「か、隠しきれてないのですよー」
京太郎「おっと、ついでになにかないか聞いとこうかな」
京太郎「さて、買い物に来たはいいが……いまさらだけど、執事服で買い物って、かなり浮いてないか?」
京太郎「いつもは帰って着替えてるんだが……ま、誰も俺のことなんて気にしないだろ。自意識過剰だな」
ザワザワ ナニアノシツジ サイキンヨクミルコヨ
京太郎「重てえ、特に小麦粉が。けど部員全員分だしなぁ……」
??「そこのボーイ、ちょっとよろしいですか? 執事のボーイ、あなたです」
京太郎「へ、えっと……俺ですか?」
美人「あなた以外に執事服はいません。さて、一応確認させてもらいます」
美人「執事服を来た男子学生、あなたが須賀京太郎で間違いないですね?」
京太郎「はい、そうですけど……(なんで学生ってわかるんだ?)」
京太郎「あなたは?」
美人「おっと、ソーリー。はじめまして須賀くん。従妹の春からよく話を聞いています」
戒能「滝見春の従姉、戒能良子といいます。プロ麻雀で松山のチームに所属しています。よろしく」
京太郎「プロっ!? それに、春の従姉ですか……でも、松山の人がどうしてここに?」
戒能「まぁちょっとしたビジネスで。それはともかく、大荷物ですね。永水まで送りましょう、乗ってください」
京太郎(ボルボだと……さすがプロ麻雀士だ)
戒能「大丈夫、取って食ったりはしません。春に怒られてしまいます」ノーウェイ
京太郎「いえ、そんな……それじゃ、お邪魔します」
~~学校へ
京太郎「ありがとうございます、助かりました」
戒能「気にしないで。それより、麻雀部へ行ってもらってよろしいですか。あなたと一度、打ってみたい」
京太郎「えぇっ!? 俺、素人ですよ?」
戒能「だからこそです、私と打てばエクスペリエンスになるでしょう?」
京太郎「ちょっと待ってください、えっと……副部長に確認を――」
戒能「大丈夫、部長の霞から許可は取りました。さぁ、案内してください」
~~麻雀部
春「良子姉さん……」
戒能「会うのは久しぶりですね、春。元気そうです」
霞「戒能プロ、ようこそお越しくださいました。皆に指導をしてくださるそうで、ありがとうございます」
戒能「ええ、しかしまずは、須賀くんからです」
霞「はい、伺ってます。ではあとは小蒔ちゃん、それと……私が入らせてもらっても?」
戒能「姫にはあとで、個人レッスンをします。一人は須賀くん、あとは春、もう一人は……」
戒能「いえ、やはり巴ですね。姫と同じ、あなたが降ろしても祓うのが大変ですからね」
霞「わかりました。では、入ってもらえるかしら、巴ちゃん、春ちゃん、京太郎くん」
京太郎(なんか……あれよあれよと話が……大丈夫かな)
戒能「オールライト、手加減はします。リラックスして打ってください」
良子「ソーリー、ロンです春、リーのみ」
春「……意地の悪い……」
良子「起家でない東一局は安く、悪癖ですが、知っていたでしょう?」
良子(……ただ、狙ったのは須賀くんでしたが……春がかばった? それとも、彼が抱えた?)
京太郎→良子 放銃 12000
巴25000
良子26000→38000
春24000
京太郎25000→13000
良子「ロンです。一通ドラ4、12000ですね」
京太郎「は――え、は、はい……(全然わからなかった……」
巴「前局のリーチも隠れ蓑に、今度は黙……」
春「意地悪……」
良子「変幻自在と言ってほしいですね」
~~局は進んで(という設定)
巴→京太郎 放銃 32000
巴25000→-7000
良子26000→38000
春24000
京太郎25000→57000
良子(さて、これで國士無双テンパイですが……どう動くでしょうか)
春「……」トンッ
京太郎「…………っ……」タンッ
巴「…………」トンッ
京太郎「ロンです――」
巴「あう……点数は」
京太郎「さ……32000、四暗刻です……」
巴「は……?」
春「…………っ」ガタッ
良子「グレイト、お見事ですね」アンビリーバブル
終局
4 巴-7000
2 良子38000
3 春24000
1 京太郎57000
京太郎「へ……お、俺が、トップ……?」
春「……すごい」
巴「……あ、ありがとうございました……」ポカーン
良子(手加減していた……なんてのは言い訳ですね。私の負けですか)
良子「驚きました、京太郎くん。実に素晴らしい勝利です」
京太郎「い、いえ、そんな……(しかもいきなり名前呼びに……)」
巴「さっきのは、偶然やマグレじゃありませんよ。私が保証します、京太郎くん」
京太郎「あ、ありがとうございます、狩宿先輩……(ってこっちもだし!)」
巴「……前から気になっていましたが、巴で構いませんよ?」
京太郎(しかもさらにデレた!)
良子「巴の言う通りです。最後の上がり……あの瞬間、僅かながらモンスターの気配を感じました」
京太郎「えっ、昨日のあれかっ!?」ビクッ
良子「ノー、そうではありません。憑き物の話ではなく、麻雀におけるオカルトの片鱗、というべきでしょうか」
霞「あら、高校生に負けた言い訳をなさるんですか、戒能プロ?」クスクス
良子「あまり苛めないでください、霞。すぐに姫の指導に移りますから、容赦を……おっと、そうでした」
京太郎「ん? えっと、これは?」
良子「あなたの打ち筋は実に面白い、そしてツキもあるようです。それは私の連絡先、よければ連絡してください」
良子「たとえば、雀荘に行くときなど……近くにいれば、お相手できるかもしれませんよ」
京太郎「」ホケー ※まだ魂が抜けてる
春「…………」バシンッ
京太郎「いてぇっ! って、どうしたんだよ、春」
春「しゃきっとして……まだ、部活は終わってない」
京太郎「あ、あぁ、そうだった……悪い、実感なかったっていうか……役満初めて上がったからさ」
京太郎「は、はは……まだ手が震えてら、すげぇ……」
春「…………おめでと」ポソッ
京太郎「……ありがとな、春」
春「~~~~~~っっ!?」ボッ
春「き、きき……聞こえ、てた……?」
京太郎「おう、だからありがとなって」
春「…………///」
京太郎「しかし……手加減してくれてたって、どのくらいしてくれてたんだろ」
京太郎「ま、いつまでも呆けてられないな、仕事仕事!」
京太郎「……夏休みの宿題、これで最後ですよね?」
初美「あうー、すみません……いえ、これはやってなかったのではなく、本当に忘れてて……」
京太郎「言い訳はいいですから、手を動かしてください。口は質問があるときだけ」
初美「…………」シュン
京太郎「…………」
初美「…………」グズッ
京太郎「……すみません、言いすぎました。インハイや神社の仕事もあったはずなのに、勝手なことを……」ナデナデ
初美「……優しいですねー、京太郎は。こんな嘘泣きに騙されるようでは、将来悪い女に引っかからないか、心配ですよー」
京太郎「そういうことは、赤くなった目を隠すか、戻すかして言ってくださいね」
初美「あぅ……」カァッ
初美「ありがと、なのですよ……年上なのに、宿題を見させてしまって……」
京太郎「その分、麻雀の指導をしてもらえますから、winwinですよ。今度弁当でも作ってくれれば、先輩の勝ちです」
初美「それでは、味で負けてwinwinに戻りますねー」ニコッ
春「…………」ジー
京太郎「ん……うぉっっ! なんだ、そんな陰から……声かければいいのに」
春「……やっぱり、そういう趣味で……」
京太郎「だから違うってのぉっっ!」ブフォッ
初美「まー、仕方ないですねー。大人の魅力に京太郎はメロメロですからねー」フフン
春「…………」ムカッ
京太郎「あーはいはい、そういうことでいいですから、次進めてくださいねー」
初美「了解ですー」チラッ フフン ドヤァ
春「………………」ムカムカムカッ
春「……京太郎、私にも教えて。今日の宿題」
京太郎「えっ? まぁいいけど……春、たしか成績よかったろ?」
春「」ゴッ
京太郎「アッハイ、すみません……じゃ、ここ座って。教えるから」
春「……ん、ありがと」ムニュン
京太郎「!?!?!? あ、あの、春……できれば、もうちょい……」
春「なに?」ムニュゥゥゥ
京太郎「い、いいやぁ? さ、さて、どこがわかんないのかなー?」デレー
春「」チラッ フフン ドヤァァ
初美「」イライライラ
初美「あ、あー、ここわかりませんねー。きょ、京太郎、ここもー」ペタッ
京太郎「んー、はい。ここはですねー、こうこう、ここにこれを使ってください。あとはさっきと同じで解けます」サラッ
初美「」
春「京太郎、続きはやく……」ムニュ プニュン
京太郎「ふおっっ、ふぉぉぉぉぉ……はっ、す、すまん。えっと……」
春「」ニヤニヤニヤ
初美「」ブチィッッ
初美「終わったら、卓につくといいですよー、はるるー?」
春「……上等」
京太郎(おかしい、幸せすぎるのになにか寒気が……)
良子「春、頑張って……そこで一気にっ……」
霞「戒能プロ、真面目にお願いします」ゴゴゴゴゴゴゴ
良子「ソーリー、しかし嫉妬はみっともない、霞」
霞「……部活中は、どうしても指導ばかりになってしまって……最近、登下校でも会えないですし……」
良子「ホワイ? そんなもの、連絡すれば――そういえば、先ほど対局を申し込んだとき」
良子「京太郎はあなたではなく、巴に許可を取ろうとしてましたが……連絡先を渡していないのでは?」
霞「あっ」
良子「ノーウェイ」
京太郎「ふぅ……ああ、終わってしまった……」
春「……ん、終了。ありがと、京太郎」フニュフニュ
京太郎(あ、やばい……俺もう今日逝っても悔いないわ)
初美「ありがとでしたー、京太郎」ムカムカ
京太郎「先輩もおつか――あ、ちょっと待った。服に糸くずが……あっ」
初美「へっ?」
スルッ、パサッ
初美「!?!?!?」
京太郎「あ、え……い、いや、その……違うんです、わ、わざとじゃ……」
京太郎(糸くずじゃねえええええええええ!? ファ、ファスナーじゃねーか、スカートのぉぉぉぉぉっっ!)
初美「はわうっ、はっ、はなしっ、はなすのですよーっ! いつまで見てるですかっっ!」
京太郎「ちっちちちち、ちがっ、ちがくてっ、すんません、マジすんません!!!!」
京太郎(やばいやばいやばい、見た、見ちまった、ピンクのすっげーかわいいの、フリフリノのレースの!!)
※このスレの咲世界にはショーツが存在します。ご了承ください
京太郎(しかもちょいローレグで! 布ちっさめで! 日焼けした先輩の太ももプニュッて!)
京太郎(ここ、股間の、浮いた、筋まで……あ、やべ……)ツゥー
春「!?」
初美「!?」
京太郎「あ、ふ……こ、こぇは、そろ……す、すんません、保健室行ってきます!」ダットノゴトク
最終更新:2026年01月15日 22:26