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宥「――――」

宥「――――っっ!?!? ふぇっ、えっ、なっ……ど、どうしてぇっ!? 玄ちゃん!」グイッ

玄「えっ、どうしたの、おね――ひ、ひひ、弘世さん!? どうして反対側から!?」

尭深「申し訳ありません、少々遅れてしまいました……」

淡「責任はすべて、うちのテルーにあります」

照「もうひわふぇないれふ」モグモグ

菫「食べ終わってからにしろ、バカ! あ、いや……そもそもいつまで食べてるんだ!」

照「ごっくん……すみません、少々道に迷って遅れてしまいましたが、白糸台チーム虎姫、ただいま到着しました。本日より三日間、どうぞよろしくお願いします」キリッ

京太郎「――照さん、口元にミツが。みたらしですか?」フキフキ

照「うん、おいしそうな匂いでつい……京ちゃん久しぶり、元気そうでよかった」ニコッ

灼「…………はっ! ハルちゃん、挨拶をば……」

晴絵「!! あ、ああっ……ようこそ白糸台の皆さん。えっと、遠路遥々お疲れさま――ま、とにかく中へどうぞ。あ、これは私の役目じゃないや」

玄「どうぞ、遠いところをようこそ。お荷物お預かりを――」

宥「わ、私もお持ちしますので」ハワワ

京太郎「重い物は自分が――」

菫「いや構わないさ。今日は三人も、お客さんのはずだろう? ことさらに気を遣う必要はない」

誠子「そうそ、気楽にしててよ。じゃあとりあえず、入りましょうか」グイッ

京太郎「わっ、ちょっ……」

照「――待った、誠子。なぜ京ちゃんの腕を取るの?」ギュルルルルル

玄「お、落ち着いてください宮永さん」カタカタ

穏乃「く、玄さんのトラウマが再発してる!」

淡「そーそー、もう疲れちゃったよー。キョータロー、早くはーいろっ」ギュッ

京太郎「おわっ……お、おぉっ?」

淡「? どしたのー?」フニフニ

京太郎(見た目以上に……ある、だとっ……これが着痩せってやつか……)ゴクリ

憧「……な~に~を~、してんのよ、あんたは!」

京太郎「誤解だから!」

憧「誤解の人間がそんな鼻の下伸ばすか! んっとにもー……もういいや、玄、早くはいろーよ、宥姉も」

玄「そ、そうだね! では皆さん――」

宥「ようこそ、松実館へ――」

~~

灼「さて、あらためての自己紹介も終わりましたし、さっそくですが、いくつかの確認を」

灼「まずお取りくださった3部屋――と、一部屋。1人用の1部屋は京太郎、それ以外には1~3年がそれぞれ宿泊する、という振り分けです」

灼「自動卓は荷台、4人ずつが入り、2人はできれば牌譜を取ってください」

灼「京太郎は――とりあえず、いつものように自由でいいよ。その代わり、朝夕の食事は板場に入ってもらうのと、お昼を作るのだけお願いね」

京太郎「はい」

灼「お昼は三日分、それぞれに阿知賀から一人、白糸台から一人、お手伝いを選んでいいからね。ただ、被らないようにだけお願い」

京太郎「わかりました」

灼「今日の午後、明日の午前と午後、明後日の午前が練習予定――と。以上が計画となります、なにか質問はありますか?」

虎姫『………………いえ』

誠子「本当に同い年か、不安になる……」

穏乃「灼さんは普通以上にしっかりしてますからね! それより亦野さん、渓流釣りとかどうですか!」ウズウズ

誠子「おー、いいね!」

菫「……コホンッ」

誠子「――と、言いたいんだけどね……まぁ、今日は練習合宿だから……ま、また機会を見つけて、ね」

玄「穏乃ちゃん、困らせてはだめなのです!」

穏乃「てへー、すいません」

淡「あっ……はーい! しつもーん!」ブンブン

灼「どうぞ大星さん」

淡「今日のお昼はいつー? できれば早め希望!」グーキュルルルル

尭深「……淡ちゃん、淑女らしい慎みを……」コホン

淡「鳴るものは仕方ない!」

照「その通り」

菫「お前の影響で、入学時は多少はレディだった淡がすっかり天真爛漫になった、責任を取れ」

照「だが私は謝らない」

菫「お前はっ……」

京太郎「ま、まぁまぁ弘世さん……その、なるべく俺も、二人のこと見てますから。なにかあったときのフォローだけ、お願いします。適当にリラックスして、くつろいでください」

菫「……ああ、そうだな。すまない」

京太郎「淡、人前では空腹を隠す努力をしような。すぐに作りに入るから」

淡「あ、うん」

誠子「やけに素直だな……まぁいいや。実のところ、宮永先輩以外は、軽くお腹空いてるんだよね、やっぱり」

京太郎「わかりました、ならまずは、お昼にしましょう。メニューは簡単ですけど、今日はカレーです」

憧「おー、旅館っぽくはないけど、合宿らしくていいじゃん」

玄「板場、ある程度自由に使わせてくれるみたいだからね。本格的なのは、朝夕っていうことで、お願いします」

照「無理を言って昼食までご提供いただくんです、むしろありがたい限りで」キリッ

京太郎「また無理して……さて、それじゃ――」


京太郎「じゃあ玄さん、お願いします。あとは淡な」

玄「おまかせあれ!」

淡「オッケー……って私!? なんで!」

京太郎「だって、お腹空いてるんだろ? なら早くできるように、協力してくれよ」

淡「えー、お腹空いてるのに料理なんてできなーい、匂いで倒れちゃうよー」

京太郎「……料理人の特権その1、つまみぐい」ボソッ

淡「はい! やります! よろしく、キョータローシェフ!」

誠子「陥落はやっ!」

穏乃「えーっ、いまなに言ったの? 京太郎!」

淡「ふふーん、しずのんにはなーいしょ! とーっても、いいことだけどね」ニッシシ

憧「ふきゅっ!? ちょ、あ、あんたね! こんな昼間っからなにささやいたわけ!?」

京太郎「お前が想像してるよーなことは1ミクロンも関係ねーよ! あーもういいから、皆さん適当にくつろいでてください、宥さん、なにかあればご案内お願いしますね!」

宥「は、はい!」

灼「大丈夫、私もいるし……あと、ハルちゃんも」

晴絵「んじゃ、悪いけど自動卓の調子だけ見とこっか。昨日もチェックしたけど、一応ね」

菫「承知しました。尭深、照、誠子、行くぞ」

照「菫、そういうのは誠子にさせないと」

菫「おっと……いかんな、このメンツだと部長気分に戻ってしまう」

宥「面倒見がいいんですね、弘世さん」

菫「そんなことはないさ、包容力もないし……たまにあなたが羨ましくなるよ、松実さん」

宥「宥で構いませんよ、同い年ですから」

菫「なら私も、菫で構わないさ」

照「私も照で構わない。できれば皆さんも」

尭深「いっそ……みんな、名前で呼び合ったほうが……」

穏乃「そうですね! そのほうが合同合宿ーって感じですし!」

憧「んー、皆さんがいいならそれで構いません」

灼「じゃあそれで、あ、でも京太郎のことは……」

晴絵「唯一の男子だしね、そこは個人の感情にお任せします。じゃ、行きますか」

ゾロゾロ



~板場

京太郎「淡、野菜洗ってー。玄さんは皮剥きを。俺もある程度はやりますので――」

玄「うん、おまかせあれ」スルスルー

淡「手ぇーつめたーい!」バシャバシャ

京太郎「我慢しろ……って言いたいけど、まぁ辛いか。このビニール手袋でも使え、多少はマシだと思う」

淡「むぅー……ま、気休め程度だねー」

京太郎「生意気言うなっつーの」

玄「二人は仲良いんだね、京太郎くん、白糸台にはまだ行ってなかったはずだけど……合宿で、一日だけ交流したんだっけ?」

京太郎「はぁ、まぁそのとき、妙に懐かれたというか……菓子をねだられたというか」

淡「ま、私が面倒見てあげてたから、その縁ってやつだね! はい、野菜洗いしゅーりょー!」

京太郎「よし、じゃあ俺はこっちから炒め始めますんで、玄さん野菜の残り――淡に指示しながらお願いできますか?」

玄「うん、大丈夫だよ。そっちはお願いするね」

淡「キョータローが教えてくれないのかー。ま、ここはクロで我慢するか」

京太郎「こら、年上にそんな態度はだめだ。照さんや菫さんとは長い付き合いかもしれないけど、玄さんとはあまり会ったことないだろ?」

淡「……はーい、わかりましたー」

玄「ふふ、かわいいねぇ……京太郎くんの言うことはもっともだけど、私にはあのままでいいよ」

淡「ほんとー!? わーい、クロすきー!」スリスリ

京太郎「まぁ玄さんが言うなら……おいこら、なんだその勝ち誇った顔は」

淡「いぇーい、あわあわ大勝利ー!」ブイッ

京太郎「あーそうかい。なら勝者にはあとで、味見させてやるよ。そっちの手伝い、しっかりやればなー」

淡「高校101年生に任せなさい!」

京太郎「何留してんだよ……さて、こっちも始めるか」

京太郎「すべてーはー愛のーターメリック、ハラハーラーハラペーニョ~♪」

淡「ぶっふ! あははははっ、なにその歌~!」

京太郎「てめぇ! カレーの歌バカにすんな! 俺の師匠が教えてくださった、最高にカレーをうまくするスパイスなんだぞ!」

玄「へぇ~、すごいんだねー」

京太郎「そうです、師匠はすごいんです、なんだってできるんですから! よし、乗ってきたぞ」

京太郎「泣かれちゃやだもん~……錯乱してサフラン~……でも明日があるもん~」

淡「………………」グギュ~

京太郎「……ほれ、味見だ。軽くだけどな」

淡「ぺろんちょ……っっ! んっまーい! ☆みっつあげる!」ブイッ

京太郎「お前、それ三個なのか二個なのかはっきりしろよ……ま、うまいならなによりだ」

京太郎「どれ……」ペロッ

淡「!?」

京太郎「うん、いい感じだ……あ? どうした、淡?」

淡「ふぇっ? う、ううん! なーんでも!」

京太郎「おかしなやつだな……まぁいいや。あ、玄さんもお願いできますか?」スッ

淡「!?」

玄「ふぇっ!?」

京太郎「――あ、あぁ! そっか、すいません、皿を――あ、淡もすまん! さっきのは――」

淡「えっ? ううん、いいよ! キョータローなら許しちゃう、許容範囲だからね!」

京太郎「ありがとな。よし、お詫びにサラダのゆで卵、一個だけ食わせてやろう」ホイ

淡「うわっふー! ありがとー、キョータロー!」ギュゥッ

玄「う、あぅ……あ、あの、私にも味見……」

京太郎「っと、すみません。お願いします」

玄(……皿、一緒でもいいのになぁ……)

京太郎「どうかしました?」

玄「い、いえっ、なんでもないですのだ! ……うん、おいしいよ!」

京太郎「ならこれで……おいしっい、カレーっの……♪」

三人『できあ~~~~~~がっりっ♪』ジャッジャン

~~

穏乃「はぁー、おいしかったー!」マンプクマンプク

灼「穏乃、行儀わる……他校の方の前だよ」

穏乃「あっ、す、すみません、つい……」カァァッ

誠子「いやいいよ、むしろ健康的で可愛いし」ニコニコ

穏乃「そーですかー? えへへー」

尭深「穏乃ちゃんも、淡ちゃんとは違うかわいさがあって……いいね」ナデナデ

憧「シズは年上受けいいなー。でもたしかに、カレーはおいしかったわ。どこかのレジェンド手製とはわけが違う」

晴絵「あれは伝統のレシピだって――憧はそういう生意気なとこが、年上受けしないの」

憧「でもそこが可愛い?」

晴絵「まーね……って調子に乗らない! だいたいあのカレーは、シズのプロテインによって完成を――」

菫「ほう、意外だ……」

宥「どうかされました?」

菫「いや、そちらの新子――憧は、年上には礼儀正しいほうだと思っていたが、顧問にまであんな態度を見せるのに、少し驚いてね」

憧「あっ、やば……す、すいません。なんていうか……私、結構人見知りしちゃうほうで。慣れた人間には、グイグイいけるんですけど……」

照「淡とは反対だね。あのコは基本的に物怖じしない、それに心を許していない相手には、めっぽう攻撃的だった」

玄「へー、そうなんですか。すっごくいい子に思いましたけど」

菫「インハイ後は、なにかと改善されてきてね……まぁそれもあってか、敬意を知らない一年坊になってしまったようだが」フゥ

宥「ふふふ、可愛らしくていいと思いますよ。ご苦労も多そうですけどね」クスクス

照「宥さんの言う通り、淡は色々と手がかかる子、でもそこが可愛い」

菫「お前が言うな」

照「でもそこが可愛い」

京太郎「そうですね、照さんはそういうとこが可愛いです」

照「京ちゃん!」ヒシッ

京太郎「はいはいっと」ナデナデ

淡「わたしはー!」

京太郎「はいはいっと」ナデナデ

憧「……わ、私は……」

京太郎「はいはいっと」ナデナデ

憧「!? なにしてんのよ、スケベ!」ビシッ

京太郎「理不尽!?」

淡「やーい、キョータローのすっけべー!」

憧「スッケベー♪」

京太郎「小学生かお前らはあああああああああ!」


淡「ふふん、小学生がこーんな胸してるかな?」グイッ

憧「ちょっ……み、見ないでよっ」バッ

京太郎(……たしかに、淡は思った以上にあった。そして憧……最近、さらに成長したようにも――)

照「京ちゃん、ちょっと……お話ししようか」ギュルルルルル

灼「そういうのは、飾りだと思……」

尭深「そうかな? あるとないでは、やっぱりあるほうが色々と……」タプーン

穏乃「ぅ? なんの話ですか?」

誠子「穏乃ちゃんにはまだ早いよ!」ミミオサエッ

穏乃「な、なんですかー、気になりますよ!」ジタバタ

誠子「あ、ちなみに私は気にしてないんでー。でもないのが好みじゃないなら、残念かもね」

京太郎「女性は心ですよ、あとは気が合うか、それにつきます」キリッ

晴絵「説得力ゼロの顔よね。ちなみの和とシズだったら、どっちが――」

京太郎「……ノーコメントです」

灼「……わっかりやす」ハァ

京太郎「いや、マジな話だと、どっちもいい所がいっぱいですからね。どちらか選べだったら悩みますよ、普通に」

菫「綺麗にまとまったな……が、優柔不断はいかがなものかな?」ニヤニヤ

京太郎「あまりいじめないでください……」

宥「それじゃあ、食休みもこれくらいにして、そろそろ打ちましょうか」

玄「待って、お姉ちゃん! まだおもち談義が――」

宥「玄ちゃん?」ニコニコ

玄「れ、練習頑張りましょうですのだっ」アセアセ

照「すごい、これぞ姉の威厳。姉より優れた妹などいない」

菫「いるじゃないか、長野に」

照「個人戦、優勝したのは誰?」

菫「女性としてのアピールポイントなら、彼女は家事ができるだろう? お前は?」

照「私には京ちゃんがいる」

宥「あ、でも……私は玄ちゃんに、なにも敵わないなぁって思いますよ」

菫「見ろ、これが優れた姉というものだ」

照「ぐぬぬ……きょ、京ちゃーん! 菫がいじめる!」

京太郎「はいはい、あんまり弘世さんに迷惑かけないようにしましょうねー」

誠子「すごいなぁ、あのいなし方……真似したいよ」

宥「あれは、幼なじみ特有の気安さだろうね。憧ちゃんが私たちに見せるのと、同じようなものだと思うの」

尭深「そういえば、阿知賀の皆さんは幼いころからのお知り合い同士で……?」

灼「私と玄が、あと宥さんとも少し。玄と穏乃と憧は小学校から、憧は宥さんとも長くて、穏乃は中学から、かな?」

灼「私と憧、穏乃は中学からになるね」

玄「お~、お見事な説明だね! さっすが灼ちゃん」

淡「いいなぁ~、昔っからの知り合い! 私もキョータローとかしずのんとか、アコともそれがよかった!」

憧「ま、いいじゃない。いまから仲良くなれば……ね?」

淡「いいこと言うねー、さっすがアコ! Dを目指すC同盟だね!」

憧「!? そそ、そういうことおっきな声で言わないでよね!」カァァァッ

尭深「だから、慎みを持って……」

誠子「さっきバストアピールしてた尭深が言う?」

尭深「記憶にありません、まったくもって」ニッコリ

淡「あっははー、私のマネしてるー」

京太郎「――淡にとっては、いまの虎姫メンバーが、昔馴染みくらい馴染んでる感じだな」

照「そうかもね。さすが京ちゃん、いいこと言う」

菫「ああ、今度こそ綺麗にまとまったし、練習を始めるか」

京太郎「さて――午後の練習だな。といっても、本日初の練習なわけだけど」

京太郎「白糸台にとっても、練習より交流がメインなのかもな……言いだしっぺは照さんだろうけど」

京太郎「なら俺は……なにをするべきだ?」






京太郎「ありがとう!」

胡桃「対局中にうるさい!」

京太郎「すいません!」

~~

穏乃25000→61000
照25000→
淡25000→
京太郎25000→-11000 四位



穏乃「あー……あっはははは……ご、ごめんね、なんか……」

照「」

淡「あっははははは! って笑ってる場合じゃなーい! なんなのいまの! キョータローありえない!」

京太郎「えっと、すまん……照さんも、すいません……」

照「いや……いい、大丈夫だから……」


 ※検討の前に、鏡イベント

照「京ちゃん、いまの……」

京太郎「いや、ほんとすいません……完全に、無警戒でした」

照「いや、そうじゃなくて……いま見えた、鏡のこと――」

京太郎「鏡……? あ、そういえば……俺の、能力が鏡だとかなんとか……」

照「そ、そうなんだ!」パァァッ

照「やっぱり私と京ちゃんは運命で結ばれてる! 同じ――あれ、同じ……?」ウーン

京太郎「どうかしたんですか?」

照「う、ん……鏡は、鏡だと思う……だけど私のとは少し……というか、だいぶ違ったように思う」

照「私のは相手を映す。でもそれは相手の背から、相手を覗き込むような形」

照「一瞬だけ見えた京ちゃんの鏡は、たぶん……みんなの正面を、映してたように見えた。それも、すっごく眩しく……」

京太郎「正面から、ですか……?」

照「でもすぐそのあと、鏡は元に戻って……だけど、変だな――」

照「鏡は、私の背中にもあったような……そんな気がする……」


照「――とりあえず、いまの検討だけしようか。主に、京ちゃんの捨て牌研究になると思うけど」

京太郎「は、はい、よろしくお願いします――」

淡「んーでっ、誰が見てたのかなー?」

穏乃「あ、菫さんでしたか! どうでしたか、いまの私の!」ワクワク

菫「ああ、見事だった。もちろん、須賀くんの不注意もあったが……まぁ、照は一局目は上がらないクセがあるからな。個人では気をつけろよ、本当に」

照「そうだね、鏡に頼りすぎるのはよくない。そこは改善しようと思ってる」

淡「っていうかさー! いきなり支配権広げるって、どういうことなのー!?」

穏乃「いやぁ、合宿っていうのでテンション上がっちゃってー……あとは、京太郎のカレーがおいしかったからかな!」

照「それなら私もじゃないとおかしい」

淡「私もだよー、ちょーおいしかったもん!」

菫「ややこしくなるから黙ってろ……まぁ、調子が良かったにしろ、幸運もあっただろう。最初の配牌がよく、捨て牌が少ないままテンパイでき、須賀くんも読み切れなかった――というところか」

京太郎「……でも、他の人は振りませんでした。やっぱり俺に、なにかが足りてないんだと思います」

菫「牌に愛される――という言葉はある。けれど、それに取りつかれないほうがいい。愛されずとも強い打ち手はいくらでもいるんだ。気を落とさず、練習に励めばいいさ」ポン

京太郎「あ……ありがとうございます、弘世さん……」

穏乃「そうだよ、先週は学園祭の準備で、あんまり打てなかったしさ!」

照「それで思いだした。京ちゃんごめんね、ちんすこうは淡と菫が食べちゃった」

京太郎「いや、別にいいですから」

菫「牌に愛される――という言葉はある。けれど、それに取りつかれないほうがいい」

菫「愛されずとも強い打ち手はいくらでもいるんだ。気を落とさず、練習に励めばいいさ」

菫「一緒に頑張ろう――京太郎くん」

京太郎「あ、ありがとうございます、弘世さん――」

菫「菫でいいさ。先週は多忙だった、そのせいもあるだろうな」

穏乃「そ、そうだよ――」





京太郎「あのあと、俺は差し入れを作ったり、掃除をしたり、客室掃除をしたり、そりゃもう色々働いて――」

京太郎「その間に女性陣は、合宿らしく延々と打ち続けていた」

京太郎「が、意外にも阿知賀メンバーは疲れた素振りなし。なんでもインハイ前の特訓は、もっと長くやっていたとか」

京太郎「そして見た目通り、淡はすぐにサボっては、菫さんに怒られ、宥さんに宥められ、また卓に戻っていたようだ」

京太郎「――そして、夜が明けた」

憧「明けてないわよ!」

灼「でも、午後の練習は終わりだから……色々、感謝す……」

京太郎「お役に立てればなによりです!」

穏乃「それじゃ、私たちは早速――」

淡「レッツ、オフリングターイム!」イェー

誠子「おふりんぐ?」

照「たぶんお風呂のこと」

玄「淡ちゃん、それはバスタイムっていうんだよ! そしてまたの名を――」

誠子「呼んだ?」

玄「呼んでねーですのだ! またの名を、おもちチェックタイムと――」

宥「呼ばない」ニッコリ

玄「お、おもちチェ――」

宥「呼ばないよね?」ニコニコ

玄「アッハイ」

憧「ここのお風呂、お肌にすっごいいいんですよ~」

菫「ほう、それは楽しみだ」

憧「えっと……お、お背中、お流ししましょうか?」

菫「そこまで気を遣わなくてもいいさ」

憧「や、じゃなくて、あたしのためって言いますか……」モジモジ

菫「?」

憧「気を遣わなくていいよう、もっと仲良くなりたいっていうか……それにほら、あたしお姉ちゃんの背中流したりしてましたから、慣れてますし!」アセッ

菫「……そうか。なら頼むとしようか、憧」フッ

尭深「じゃあ、私が憧ちゃんの背中流してあげるね」ニコッ

憧「わっ、ありがとうございます! それじゃ、そのあとお返しに流しまーす。ついでに、お二人のナイスバディの秘密、聞かせていただきますので♪」

 ※阿知ポの菫さんなんてなかった


菫「特別なことはしていないがな……」

尭深「……マッサージ、すごくいいのがある……」

照「詳しく」

灼「聞かせて」

玄「欲しいですの――」

宥「玄ちゃん?」

玄「あ、私はいいので……先に浴場へ向かってます、はい」

淡「待った、タカミー! 私も聞きたいよ!」

憧「よぉし、淡! なら二人で尭深さんの背中流すわよ!」

淡「おまかせあれ!」

穏乃「わ、わたしも――」

誠子「三人は尭深も困っちゃうよ。それなら私のをお願いできる?」

穏乃「はい、もちろんです!」ニッコー

尭深「私の背中は、万来歓迎だけど……?」

京太郎「! なら俺が――あ、いえ……なんでも……はい……」ショボン


憧「…………」ハァ


京太郎「…………」トボトボ

憧「……ちょっと」

京太郎「!? い、いや、別にやましいことなんて――」

憧「――あたしたち、いまからお風呂だから」

京太郎「し、知ってるし……」

憧「その、悪いけど……板場のほう、お願いします」フカブカー

憧「おいしい料理、き……期待、してるから……頑張って、ね……」カァッ

京太郎「お、おう……」

憧「…………」モジモジ

京太郎(ワンチャンある? いや、ねーって……あれ、でもなんか緊張……なぜだ)オロオロ

照「私も期待してる」

憧「!?」

京太郎「!?」

照「京ちゃんが手伝う料理、期待してる。期待しながらお風呂入ってくるから……京ちゃんも、早く行ったほうがいい」

京太郎「――はい、わかりました。憧も期待してろ、板長さんの手伝いは完璧にこなすぜ!」タタッ

照「いってらっしゃい……じゃ、こっちもお風呂行こうか?」クルッ

憧「あ、あの……いつから?」

照「ため息ついた辺りから見てたよ。だから妨害に来た」

憧「!!! い、いえ、そんなっ、私はそういうつもりじゃ――」

照「なんてね、冗談。憧の気持ちは、少しだけわかる。恥ずかしいとこよく頑張ったね、偉いえらい」ナデナデ

憧「うっ、えっ、そんな……きょ、恐縮です……」カァッ

憧「その、抜け駆けとか、そういうんでもなく……男子一人で、寂しそうなのが、気になったっていうか……で……」

照「……大丈夫、憧の思いやりは伝わるよ。優しいね」テルテル

照「さ、せっかくみんなでお風呂だし、乗り遅れないようにしないと。それに尭深と菫が風邪引いちゃう、早く行こう」クイクイッ

憧「そうでした! い、行きましょう、照さん! あとそっちじゃないですっ、浴場はこっちですから!」

照「」テルーン


憧「……はー、やっぱあたしって妹だわ……こうもお姉ちゃんって感じの人に、弱いんだもんなー」フフッ

――大浴場

玄「はぁ~、こんなにたくさんの大小おもちがあるというのに、手がだせないなんて……まるで画に描いたモチなのです……」ショボン

菫「……君は普段はもっと違う性格だと思っていたんだが、なにがどうしてこうなったんだ?」

玄「よくぞお聞きくださいました! あれは私が10歳の頃、お姉ちゃんが――」

宥「その話はダメって言ったでしょ、もう……はぁ、あったかぁい……」

誠子「いいお湯ですよね、ほんとに……しかし、やっぱり――」

菫「?」タユーン

宥「アッタカーイ」タユーン

玄「――で――が、モニュッと~」タユン

誠子「……このお湯、が原因でもないだろうなぁ……いや、一概にそうとも……」ブツブツ ポヨン

憧「誠子さんは形きれいじゃないですか。うちの同級生と先輩は、そういうレベル以前で……」チラッ


穏乃「ど、どうですかっ、尭深さん! 痛くないですか?」

尭深「うん、平気……とっても……んっ、あっ……んふぅうっ……うん、きも、ちっ……あぅっ……いい、よ……///」

灼「いかがわしい声ださないでほし……けど、綺麗な肌、背中、そして……安産型」ナデナデ

尭深「うひんっっ!? ちょ、ちょっと灼さんっ……ふぁっ、んくぅっ……」

淡「まーまー、お堅いコトはなしだよー! 私もあらったげるねー、脚とかおもちとかー♪」

尭深「んぁっ……だ、めっ……んっ……はぁっ、はぁ……」

穏乃「だけど本当に肌きれいですよねー。お茶のおかげだったりするんですか?」

尭深「ど、どう、だろぉ……ひゃっ、ふぅんっ……んっ、あはぁ……」

灼「だから、変な声ださないで……」

尭深「それ、ならぁっ……そ、その……そういう、とこ、さ……触っちゃ、やっ……ぁんっ……」

淡「? そういうとこって、どういうとこ?」キョトン

穏乃「す、すみません! 痛かったですかっ? もう少し優しくしますね!」

照「ごめん、腕の回転は止めるから」ギュルルルル……キュルル……キュル……ピタッ

尭深「な、なにで洗ってたんですか!」

照「? 手だけど。それが一番肌にいいって聞いた」

淡「そうなのー? じゃあ私も!」

穏乃「それじゃあ私も!」

灼「そこまでされて空気読まないほど、子供じゃな……手でやるね」

尭深「~~~~~~~~っっ!? だ、めっ……いまは、ほんとにっ……んぁぁっ! あっ……んぅっ……///」ビビクンッ


憧「………………」カァーッ

菫「……誠子、止めてきたらどうだ」

誠子「い、いや、私ではどうにも……宮永先輩もいますし」

宥「あったか~い」ポカポカ

誠子「宥さんは温泉の魔力で陥落してますし……」

玄「そのとき私は悟ったのです! この世に、これほどの美――美の究極というものが――」

菫「こっちは見えてないな、なにも……まぁそのほうがいいだろう、尭深にとっても、本人にとっても」ハァ

誠子「……穏乃ちゃんと憧ちゃん、代わってもらってよかったなぁ……背中洗うの。まぁ尭深には悪いけどね」

憧「あ、あたしがあっちだったら……あんなの、してないですっ……///」カァァッ

菫「ふふ、これも意外だな。君はもう少し、その……」

憧「遊んでる感じ、ですか?」

菫「まぁ、その……すまないな。気に障ったなら謝るが」

憧「いえ、大丈夫です。まぁ意識はしてるっていうか、オシャレとかは好きですから……そのせいで、勘違いした男からの面倒もありますけど……」パシャッ

菫「それだけ君が魅力的ということだろうが……まぁ、嫌な気分にはなるだろう。可哀想に」ヨシヨシ

宥「ふふ~、だけど……彼だけは、別だよね~?」ニコニコ

憧「かかか、彼って! あいつは別にそんなんじゃ!」

宥「私は、彼としか言ってないよ~、憧ちゃ~ん?」

憧「あ……ゆっ、宥姉~っっっ!」バシャバシャ


淡「お? あっちで面白そうなことが起こってる! 宥ちゃんのピンチだ!」ピョインッ タタタッ

灼「こら、温泉で走っちゃだめ」ヨイショット

淡「おっとと、ごめんね、灼先輩」ペッコリン タタタッ

穏乃「宥さんのピンチ!? 私も行く!」ダッシュ

照「一年生は元気だなぁ……でも、尭深は一年の頃からおとなしかったよね」

尭深「そっ……ぅ、で……しょ……か……」ヒクヒクッ

照「大丈夫? 湯船まで歩ける?」

尭深「はぅっっ/// あっ、んっ……す、すみま、せ……もう、少し……そっと、して、て……んぁっ、はぁっ……あぁ……」ビクッ

照「まったく、あの三人には困ったもの」テルーン

尭深「せん、ぱ……い、がっ……い、うな……ですっ……」


~板場

京太郎「はー……ああは言ったけど、今頃――」

板長「おうこら京太郎! ボサッとしてんじゃねえ!」

京太郎「だって 板長! いま大浴場で! 女子高生が! 10人も! 入浴中なんですよ!?」

板長「あのなぁ、おめぇ――」

A「……京坊、気持ちはわかるぞ」ポンッ

京太郎「Aさん……」

B「ったりめぇだろ、誰だって思うことだぁ、そりゃ」ウンウン

京太郎「Bさん!」

テリーマン「俺もいるぜ」

京太郎「テリーマン」

ブロッケンJr「お前だけに、いいカッコさせるかよ」

京太郎「ブロッケンJr……」

ロビンマスク「見に行きたいのは、おまえだけじゃないんだぜ 」

ウォーズマン「コーホー」

京太郎「みんな……」

板長「こ、これが友情パワーか」

A「だがいまは仕事中だ」

京太郎「ですよねー」

板長「落ち着いてる場合か! サボってねぇで手ぇ動かせ!」

全員『はい!』コーホー

京太郎(板長もノってたのに……とは口にださない)

~夕食

京太郎「よし、配膳はこれで……終わり!」

玄「うん、ありがとね、京太郎くん」

京太郎「いえいえ、玄さんこそ入浴中だったのに、早く上がってくださって……助かりました」

玄「いいんだよ……どうせ長風呂のお姉ちゃんが見張ってて、なにもできないんだから」グスン

京太郎「――は?」

玄「あっ!? ううん、こっちの話……それじゃ、小さいほうの広間、第二宴会場に集合ってみんなに言ってくるからね~」

京太郎「はい、よろしくお願いします」


灼「それでは――」

誠子「食材に感謝を……いただきます!」

全員『いただきます!』



穏乃「あむっ、もぐっ、もぐっ……おいしい!」

京太郎「うまそうに食うなぁ、穏乃は……板長さんたちも喜ぶよ」ヨシヨシ

穏乃「へへー、だっておいしいんだもーん」モキュモキュ

菫「そういえば――合宿なんかでは、こうした立派な旅館にはめったに泊まらないからな。なんとも贅沢な気分だよ」

尭深「穏乃ちゃん、ついてるよ……ゆっくり食べるように、教えたでしょ?」

穏乃「いふぇない、ほうれひた……んぐっ……ふぅ、すみません」

照「気にしないで。ご飯はモリモリ食べたほうがおいしいから」

宥「照ちゃんはもう少し気にしよっか?」フキフキ

照「これは失敬」テルテル

灼「でも……あの話が本当だとしたら……」

照「あの話?」

淡「あー、テルーと憧は最初いなかったから聞いてないんだっけー? タカミーが言うにはね、ご飯をよく噛んで食べると、おっきくなるらしいよ!」

照「!?」

憧「……あっ」

照「ご飯はゆっくり食べよう。食材と作り手に感謝しないといけない」キリッ モグモグ

憧「……あの、それって……身長、ですよね?」

誠子「さすが、鋭いね、憧ちゃんは……宮永先輩には、内緒だよ?」シー

憧「ふふっ、了解でっす♪」

菫「見事なものだな、老舗旅館の料理というのは……うん、どれも手がかけられている」

京太郎「…………」

菫「……あまり、食事中の女性を眺めるものじゃないぞ?」

京太郎「あっ! す、すいません、つい……箸の使い方があまりに綺麗なので、思わず……」

菫「そうか? まぁ親の躾の賜物だよ……だが、褒められて悪い気はしないな。ありがとう」モグモグ

照「むー……京ちゃん、私は!」

京太郎「よく噛んでゆっくり食べてくださいね。あ、お箸はお上手ですよ」

照「~♪」

菫「本当にあしらい慣れているな、君は」

京太郎「うーん、まぁ……小学校のときと、ほぼ変わらない対応ですよ。照さんも俺を、そこまで意識してないからできる感じですね」

尭深「……鈍感とは罪である、byニーチェ」

灼「ニーチェはそんなこと言わない……あ、尭深さん」

尭深「な、なにかな……?」ビクビク

灼「いや、そんな警戒しないでほし……その、お風呂ではごめん。ちょっとどうかしてた、我を忘れちゃって」

尭深「う、ううん、平気……気にしないでいいよ」ニコッ

灼「……後々のために、注意しておくと……そこでもう少し怒らないと、再発を招くと思……念のため」

京太郎(いったいなにがあったんぁぁぁぁぁっっっ!)


京太郎「――ほどほどに食事が終わってるな、ん? あの人の湯呑が空っぽだ」チャーンス

京太郎「どうぞ、お茶お注ぎしますね」コポポポポ

菫「ありがとう……ふぅ、はしたないが、おかげで満腹だよ。随分と堪能させていただいた」

京太郎「お気に召してくださって、なによりです。板長たちも喜びますよ」

菫「ふふ、そうか……だが、この煮物は君の手製じゃないかな?」

京太郎「!!! ……すごいですね、驚きました……照さんにしかわからないと思ってましたが」

菫「はははっ、それはたしかに! おっと、すまない……んっ、そうだな。味についても包丁についても、他と遜色ないのは確かだ」

菫「ただ、味付けが少し……なんというのだろう、渋好みではないというか……若者によるものかと感じたんだ。微妙な加減ではあるがな」

京太郎「なるほど……そういえば板長たちにも、ほぼ完璧だって言われました。そのほぼが、菫さんのおっしゃることなんですね」

菫「そうかもしれない。ただ、勘違いしないでほしいのは、とてもおいしかったということだ。その――」

菫「……私は、こちらのほうが好みだ。ごちそうさまでした、京太郎くん」

京太郎「いえ、お粗末さまでした」

京太郎(湯上りのほんのり上気した肌、そしてしっとりとした黒髪、綺麗な座礼……)

京太郎(……大和撫子って、最高だな!)グッ

菫「――君はそういう所を、もう少し注意すべきだな」

京太郎「えっ」

菫「声に出ていたぞ、小声ではあるがな」

京太郎「」

菫「……ふふ、褒め言葉としてもらっておこう。そちらもな」

京太郎「さーて、食事の片づけも終わったし、これでようやく風呂に入れる……」

京太郎「そういえば、ここのお風呂は初めてだな……たしか、露天もあったはずだ……」

京太郎「なんだとっ、貸切!?」

京太郎「いやー、ラッキーだ……ちょっと冷えるけど、ありがたやありがたや」ジャバー

ガラララ
京太郎「……ん? 隣にも誰か……この声は?」

玄「ふぁー、星がきれいだなー……さ、冷えないうちに入ろーっと」パシャパシャ

京太郎「……玄先輩、ですか?」

玄「ふぇ……っっ! 京太郎くん!? き、きき、聞いてたっ?」カァーッ

京太郎「ああ、いえ……だ、大丈夫です、俺も同じようなこと言ってましたから」

玄「あぅ……そ、そこは、聞いてないフリをしてほしかったなぁ……まぁいいや、えへへ」

玄「京太郎くん、いまからお風呂なんだね。お夕食はありがとう、とってもおいしかったよ」

京太郎「いえいえ。玄先輩も、今度はこちらですか」

玄「うん! せっかく晴れてるんだし、夜空を見ながらゆっくり浸かろうかなーって」

京太郎「あぁ……たしかに、綺麗な星です……長野を思いだしますね、どうにも」

玄「そっかぁ……よかった」

京太郎「えっ?」

玄「だって、この星空を見て、京太郎くんが長野を思いだしたってことは……私と、京太郎くんが見てきた夜空は同じってことだよ?」

玄「それって、すごいことだよね! 遠く離れて、別々に育っても、同じ思い出があるんだもん!」

京太郎「…………」

玄「…………へ、変かなぁ?」

京太郎「いえ……とても、素敵な考えだと思います……玄先輩って、ときどき、すごいですっ……」

京太郎「ちょっと、感激しました……」グスッ

玄「えへへー、そうでしょ? これでも京太郎くんより先輩だからね、色々考えてるんだよ~」ニコニコ

京太郎「……一つお願いがあるんですけど、いいですか?」

玄「うっ……え、えっちなことじゃ、なかったら……」ゴニョゴニョ

京太郎「しませんよ、空気読んでください……もう少し、ここで一緒に星を見てもらえませんか?」

玄「……うん、いいよ! もちろん!」


京太郎「――マッサージ、ですか?」

宥「う、うん、そうなの……京太郎くん、できるかなぁって思って……」

京太郎(風呂から上がり、卓球やら麻雀してた人たちとひとしきり遊んで――)

京太郎(もう一回お風呂に入って、部屋に戻って、のんびりしてたところに――)

京太郎(宥さんが部屋を訪ねてきたと思ったら、このセリフである……なんだこれ、誘われてんのか?)ソワソワ

宥「あ、えっとね、その……で、できないなら、別にいいの、気にしないでっ……」

京太郎「ええ、一通り仕込んでもらいましたし……あっ、そうそう」

京太郎「試験の時期じゃないんですけど、連盟の偉い人をマッサージしたときに、名誉マッサージ師なんて免許ももらっちゃいましたよ、ははは」

宥「――っっ! すごいっ、名誉マッサージ師さんなんだ……うん、だったら……お願いしよっかなぁ……ううん、お願いします!」

宥「マッサージ、手伝ってください!」


京太郎「……なるほど、全員がマッサージをするように、頼んできたわけですね」

宥「そうなの、最初は尭深ちゃんと菫ちゃんだけだったんだけど……それなら私もって、全員に頼まれちゃって……」

宥「だけど、私も見習いで、まだそんなに上手くないし、遅いから……京太郎くんができるなら、何人か受け持ってもらおうかと思ったの」

京太郎「俺でいいんですか? 男子ですけど」

宥「一応確認したけど、マッサージならいいって、みんなが……」

京太郎「どうなってるんだ、昨今の若者の貞操感というか……貞淑さというものは……」ニヨニヨ

宥「――京太郎くん、ほっぺた緩んでるよ?」ニコッ

京太郎「わかりました、俺でよければ協力させていただきます」キリッ

宥「そうだなぁ……残り9人だから、6人担当してもらっていいかな?」

宥「それと、その後で……わ、私も、してもらえる……かなぁ?」

京太郎「構いませんよ。それじゃ、その6人ですけど、誰をすればいいんですか?」

京太郎「――失礼します。須賀ですけど、マッサージのご依頼をいただきまして……入っていいですか?」

菫「……なぜ誰も応えないんだ。ああ、構わない、入ってくれ」

京太郎「失礼します――おぉ……」

 圧巻だった。
 4部屋のうちの1つ、二年が4人泊まるやや手広な部屋に敷かれた布団、そこに6人が並んで寝ている。
 うつ伏せで。

灼「その、おぉ……はなに……」

淡「なーんかへんなこと考えたでしょー、キョータローはスケベだからなー♪」

京太郎「考えてねーよ! アホなこと言うな!」

穏乃「へんなことって?」

京太郎「だから考えてねーって……あー、もういい、そこで寝ててくれ。じゃあ、端から順にやっていきますので……まずは玄先輩から」

玄「はっひゃっ! よ、よろしくお願いします……」モジモジ

京太郎(やめて、その反応は。大変なことになるから、色々と)

照「――聞いてない、こっちに京ちゃんが来るなんて。そうとわかってたら、もっと可愛いのを――」

菫「おいやめろ。友人のそんな話聞かされる身にもなってみろ」

照「なら菫も言っていいよ。どんなの穿いて――」

菫「お前、やめないか! ちょっと、本当に……手を伸ばすな、バカ! おとなしく寝てろ!」

京太郎(無心、無心……)


~玄の場合

京太郎「それじゃ、失礼します……あ、どこか凝った部分はありますか?」

玄「特にっていうことだと、肩と腰……かなぁ……でも全体的にお願い――あっ、ぜ、全体っていっても、その……げ、限度はあるからね!」

京太郎「……はい、心得ております」

京太郎(――そうだ、忘れるな……俺は執事としてここにいるんだ、そう意識すればなにも――)

玄「んっ……しょっと……」モゾモゾ チラッ ムチィッ

京太郎(――誘ってんのか、あんたは)

 着慣れているはずの浴衣わずかに捲れ、真っ白はふくらはぎが覗く。
 腰が浮いたせいで、より強調されたお尻の膨らみが、薄手の浴衣に浮かび上がり、柔らかそうな肉感を訴えていた。
 そしてほんの少し――三角のラインが目立ちかけたところで、なんとか視線を逸らし、持ってきたタオルを被せる。
 本来なら指圧の箇所に乗せ、その上からマッサージしていくのだが――いまは理性保護が優先だ。
 ヒップと太ももを隠すように乗せ、さりげなく浴衣を正し、足元に手を添える。

玄「んひゃっっ……ん、ううん、平気……」

京太郎「そりゃ、まだ触っただけですから……」

菫「――京太郎くん、本当に頼むぞ……私も、警察沙汰にはしたくないからな」

京太郎「しませんよ! 信じてください、お願いですから……」

照「信じてるよ、京ちゃん」

京太郎「……と、とりあえず順番ですから……じゃあ玄さん、始めますので」


玄「ん……うん、上手……すごいね、京太郎くん……」

京太郎「そうですか? ありがとうございます」

 まずは肌を押し込みながら撫でる、それで血行をよくしながら、全体にリラックスしてもらうのだ。
 ふくらはぎから始めた刺激は、太もも、お尻を避けて腰、背中、首筋、そこから肩と腕へ。
 もちろん、これはただの準備なのだが、それでも準備だけではない。
 こうして触れることで、そして強く押すことで、どの程度の凝りがあるのかを識別できる。

京太郎(……本人の言った通り、腰と肩だな……それに麻雀のしすぎか、腕にも相当――)

 下半身は後回しにし、まずは腕から肩を重点的に擦る。

玄「んっっ……あ、ふぅっ……はぁぁ……そこ、いいっ……」

淡「ちょっと、クロー! な、なんか……声、やらしい……」

菫「淡、黙ってろ……」

玄「ご、ごめんねっ……あっ、うぅんっ……」モジモジ

京太郎「いま触ってるのは腕です、あと肩もちょっと」

菫「そ、そうか……いや、すまない。私も黙っていよう」

 とはいえ、疲労の溜まった部分へのマッサージなのだから、どこをされても心地よいのは仕方がない。
 そして血行が良くなり、凝った部分を解されるのは、本能に訴えるような癒しの快感だ。
 だから――。

京太郎「……ここ、ですよね? どうですか、玄先輩?」

玄「んはぁぁっ! あっふ……ぅんっ、んっ、そこっっ……す、ごっ……あぅっ……」

 くれぐれも誤解ないように。指圧で首筋と肩の間、そして肩甲骨の上から背中を、なぞるように押しているだけだ。
 そして時折、肘を曲げてもらって二の腕を揉み解し、具合を見ながらまた肩を指圧する、それだけだ。

 そういえば、二の腕っておもちと同じ柔らかさだとか、どこかで――ゴクリ。

京太郎(――オーケー、落ち着け、クールになろう。まだ慌てるような時間じゃない)

玄「はぁっ、あっ……んふっ……も、もう少し、強くても……んぁっ……んっ、い、いいよっ……」

淡「………………っ///」

灼「ちょ、く、玄っ、ほんとにっ……」

菫(ただのマッサージだ、ただのマッサージだ、ただのマッサージだ……本当に嫌なら、玄も止めるはずだ)

照「……いいなぁ、私も早くしてほしい」

京太郎「順番です、次は淡、それから照さんです」

淡「あわっっ!? えっ、なに、次、私なのっ!?」

京太郎「そりゃ隣だし……あ、玄先輩、ちょっと強くしますね」グッ

玄「ぇ――んきゅぅうっ!? あぃっ……ひぁっ、んっっ……くふぅぅぅっっ……」ゾクゾクッ

淡「~~~~~~~~~っっっ!? あ、あわぁぁ……///」

穏乃「…………むにゃ、むにゃ……」


 一人寝かけているようだが、するときに起こせばいいだろう。
 それよりも、肩と腕を指圧しているだけで、さっきから玄先輩が腰を跳ねさせているのが、妙に落ち着かない。

京太郎「――玄先輩?」ヒソッ

玄「んぅ~~~~~っっ!? はっ、ひゅっ……んろっ、ろう、ひたのっ、きょたろ、くんっ!?」

京太郎「いえ、さっきから腰が動いてますので……先にそっちのほうがいいですか?」ヒソヒソ

玄「~~~~~~っっ」ゾクゾクッ

玄「う、ううん、どっちでも……」

京太郎「ならもう少し、肩をやって……反対側、やりますね?」

玄「は、いっ……あぅっ、はぁっ……あぁっ、んふぅぅ……はっ、ぁんっ……」

 同じように、首筋からのラインを丁寧に擦り、指圧で凝りを解いてゆく。
 そのたびに玄先輩は声を殺すように枕を抱いて、足先をピンと伸ばし、手の平でギュッとシーツを握る。
 皺だらけになったシーツが引っ張られ、彼女の腕がフルルッと切なそうに震えていた。

玄「はぁっ、あぁっ……あぁぁ……んっく、あっ……はぁんっ……」

京太郎「……次、腰やりますからね。脚の上に跨ります、乗りませんけど」

玄「ふぁ……いぃ……あっ、んぁぁっっ!!」

 ――繰り返すが、誤解ないように。太ももに軽く手を添えて脚に跨って膝立ちに、そこから尾てい骨の位置を確かめただけだ。
 背中からその位置までを撫で下ろし、いわゆる腰のラインを、中央からサイドへ流すように撫でる。
 その際は圧力を強くし、身体全体にしていたのと同じように、リラックスさせてやる。

玄「はっ、うぅんっ……んはぁ……はぁっ、あぁうっ……」

淡「んっ……あっ……ね、お、お願いだから、声ぇ……」

玄「ご、ごめんっ、口……お、押さえる、からっ……っうっっぅ!?」

 玄先輩が片手を口にやったのと同時に――いや、偶然だけどね?
 尾てい骨の少し上、腰の中央とお尻の境界線辺りを、指先で押し込み、グリグリと回転させる。
 その瞬間、彼女の腰が大きく、まるでお尻を突きだすように持ち上がり、直後――。

玄「んぅっっ……ふぁっ、くっふ……んっ、んぅぅぅ~~~~~~っっ!!」

 バタバタと腰を振って布団を叩きながら、涙目になって口を押さえ、その刺激を噛み殺したようだった。

京太郎「――大丈夫ですか? 痛かったなら、もう少し優しくしますけど……」

玄「そう、りゃ……な、なく、へぇ……き、気持ち……よかった、のっ……///」

 真っ赤になった肌と、潤んだ瞳がなんとも艶めかしい。
 緩んだ唇と、押さえた指の隙間から、か細く熱い吐息が溢れているようだった。

京太郎「――そうですか、じゃあここを重点的に、解していきます」

玄「うん、よろしく……ぅんっっ! あっ、はぁぁっ……ひぅっ、いっ……ひぁぁっ!」

 うん――効果が出てる証拠だね。
 このあと腰を解したら、最後に太ももと脚全体をやって……あ、足裏もやらないとな。

京太郎「続けますね――」

玄「は……ひぃ……あっ、あんっ……」

四人(………………っっっ///)

穏乃「…………すー、すー……むにゃ……」

~淡の場合

玄「あぁ……ふっ、んぅっ……」ピクピクッ

淡「あわわわわわわ……」カタカタ

京太郎「お疲れさまでした、玄先輩……よし、次は淡だな」

淡「ぴっっ!? や、やー、私は、もう……い、いいかなーって、あ……あはははは」

京太郎「そうか? んー、なら無理にとは言えないか……よし、じゃあ照さん――」

照「ま、待ってたよ……あの、や、優しく――」

淡「ちょっと待って! なんでよっ、どうしてよ! そこはいいから言う通りにしろって、無理やりするとこでしょー!」

京太郎「いや、マッサージなんて無理やりするもんじゃないだろ……」

照「京ちゃんの言う通り。嫌なら、淡が無理にしてもらうことじゃない」

淡「べ、別に嫌ってことでも……その、ちょっと怖いっていうか……」

京太郎「なんだよ、いつものお前らしくもない……まぁ、怖いっていうなら、俺は優しくするとしか言えないんだが」

淡「……そっか、うん、それなら……まぁ……」

淡「なら仕方ないね、やらせてあげるよ!」

京太郎「なんで偉そうなんだよ……」ハァ

淡「……っっ」ビクッ

淡「ご、ごめんっ、その……や、やって、いいよ……」

京太郎「ふむ……もう一声」

淡「~~~~~っっ/// マ……マッサージ、して……く、くださいっ……」カァァッ

京太郎「よし、いいだろう。ならそこに寝てくれ」

淡「は、はいっ……よろしく、お願いしますっ……」コロンッ


京太郎「……白いな、すげー綺麗な肌だ」

淡「そ、そうかなっ……え、えへへっ、なんかうれしー♪」

 玄先輩の肌も綺麗なものだが、淡のそれは別格だった、まさに淡雪。
 肌理細やかとはこういうものを指すのだろうか、触れるだけで指に吸いつき、それでいてサラサラと滑ってゆく。
 あ、滑ってるのは首筋だから。ここは浴衣ないから仕方ないんだよ、ほんとに。

京太郎「で、淡はどこが凝ってる?」

淡「んー、だるいのは腕かなー。毎日練習キツいからねー、亦野先輩も厳しくなってきちゃってー」

菫「あれくらいでは温いほうだが……まぁ、新一年が入る前には改善してくれればいい」

灼「うちももう少し厳しくしたほうがいいのかなぁ、どうだろう……ねぇ玄?」

玄「はぁ、ふぇぇ……んっ、な、にぃ……?」トローン

灼「……いや、いい……そのまま寝てて……」

京太郎「そうか……なら腕と背中、あとは全体的に様子見ていくからな」

淡「あーい、よろしくぅー」

 菫さんが、天真爛漫と表現していたが、たしかにそうだ。
 警戒心がなく、こちらにすべてを委ねているような態度で、安心して横になっている。
 それなら、しっかり期待に応えて、完璧なマッサージをしてやらないと。

京太郎「――なら、上半身からだな。ちょっと腰の上あたりに立つから。体重はかけないけど、気配がするくらいは許してくれよ」

淡「んっ……う、うん、平気……だけど……なんか……んっっ」

 場所を動くと、腰のあたりにある気配を感じてか、居心地悪そうに淡が腰を捩る。
 そのたびに膨らんだ浴衣のお尻が揺れて、扇情的な色香を醸しだしていた。

京太郎「さて、と……まずは首筋と肩、背中までのラインを――」

淡「ひゃっっ! ちょ、キョータっ……んくっ、ふぁっ……」

京太郎「――くすぐったいか?」

淡「っっ……う、ううん、大丈夫っ……ぁっ……ぅっ……くぅんっ……」

 こいつがウソついてるのはすぐわかる、首筋に触れた瞬間、そして背中を撫で下ろした瞬間、思いっきり身体を動かして、身悶えたからだ。
 とはいえ、これ以上くすぐったくないようには、俺もできない。

京太郎「敏感なのは仕方ないから、ちょっと強くするぞ。そのほうがくすぐったいより、痛いって感じでマシなはずだから」

淡「い、痛いのっ? やだっ……」

京太郎「いや、いまに比べてってだけ……抓るよりも痛くねーよ、安心しろ」ナデナデ

淡「あわぁぁ……んっ、わかった。我慢する、キョータローを信じるからねっ」

京太郎「いい子だな……よっと……」


淡「んふぅっ……ふわっ……ふぅっ、あぅっ……んぅ……」

 痛みを――といっても、少しの圧迫感があるくらいだろう。
 刺激をやり過ごしながら、手の動きになれた淡が甘えた吐息をもらして、身体を弛緩させた。
 おかげで凝りの部分もはっきりとわかり、マッサージすべき点が見えてくる。

京太郎「じゃあ腕からな……たぶんここだろ? 優しく揉んでいくから、それでも痛かったら言えよ。あとくすぐったくても」

淡「揉むっ!?」

菫「きょ、京太郎くん、それはっ……」

照「腕でしょ、落ち着きなよ……」

菫「わ、わかっている! 淡も落ち着け」

灼「いや、菫さんがね……」

 なにやら外野が騒がしいが、ともかくこちらに集中しよう。
 しかし柔らかい腕、そして白い肌だ。マジでおかしな気分になっても仕方ない。
 そんなやましい感情を次元の彼方に放り投げ、彼女の二の腕を両手でしっかりと揉む。
 もちろん加減をし、かつ強弱をつけ、手の平を滑らせながら――そう、二の腕を扱くように。

淡「ふぁふっ、あっ……なん、これっ……やっ、らぅっ! はぅっ……んぁっ……」

京太郎「うん、大丈夫……これを手首までやって、また戻ってくるから……声は遠慮せずだしていいぞ」

淡「んくぅぅっ! わ、わかって、る、けどっ……やっ、はぁんっ……き、聞かれ、ちゃっ……ぅんっ!」

京太郎「大丈夫だって、マッサージだってわかってるんだから。おかしなことじゃないだろ」モミモミ

淡「そ、そう、らけどっ……んひゃうっ! は、恥ずかっ……はじゅ、かしっ……ひぃんっ!」ビクッ

 肘の関節を通過し、腕の先へ向かうと、彼女の反応はますます如実になる。
 やはり腕全体に疲労が溜まり、相当筋肉も凝り固まっているようだ。
 その血行を戻すため、筋肉に負担をかけない微細な力加減で彼女の肌を揉み、優しく擦ってゆく。

淡「はぁぁぁ……あぅんっ、あっ……や、らっ、こえぇ……声っ、とまんないよぉっ……あっ、うぅっ……」

京太郎「大丈夫だって、可愛いから。自然なことだぞ、気にするな」

淡「そっ、そうなのぉ……? 変じゃない? き……嫌いに、ならないぃ?」

京太郎「ならねーっての。むしろそうやって反応してくれる方が、マッサージのしがいがあっていい」

淡「わ、かった……んっ、はぁぁんっ! あっ……うくっ、くふぅっ……や、やっぱり、無理っ……恥ずかしっ……///」

京太郎「大丈夫だって、可愛いかわいい……よし、こっちの腕はこれで大丈夫だ」

淡「はぁっ、はぁっ……ふぅ、やっと……終わったぁ……」ビクッビクッ


京太郎「――よし、次は反対側だな」

淡「――えっ」

京太郎「いや、両腕しないとだめだろ?」

淡「!? へへ、平気だから! 私右利きだし!」

京太郎「それでも日常的に両腕使うだろ、この機会にバランスよくしといたほうがいい……よっと」

淡「ふにゃうっっ!? ちょ、いきなり――あっ、やっ……もぉっ、そうやって……むりっ、やりぃっ……んっ、んんぅぅっ!」

 反対側の肩から腕に手を滑らせる、それでようやく、淡の抵抗が収まった。
 たしかに彼女の言葉通り、それほどの凝りはない。適度なマッサージを終えて腕を離すと、微かに汗ばんで浴衣の張りついた背を上下させ――。

淡「はぁっ、はぁぁ……ふぅぅ……」

 布団の上で完全に弛緩し、クタァッと倒れ込んだ淡が、潤んだ瞳を振り返らせた。

淡「バ……カぁっ……は、恥ずかし、かったんだからっ……」

京太郎「ごめんごめん。けどあとは背中やって、脚やったら終わりだからな」

淡「」

 瞳をまん丸に見開き、直後に彼女の全身がガクガクと震えだす。
 これはいけない、筋肉が硬直しているかもしれないからな。背中から念入りに揉みほぐしていこう。

淡「だ……だめっ、これ以上は、もうっ……あっ、んふぅぅっっ! ふぁっ、やらっ、らめっ……きょ、きょーた、ろっっ……んくっっ///」

 肩甲骨から背中へのライン、その細くてしなやかなボディラインを、手の平全体で圧迫し、優しく揉む。
 枕に顔を埋めた淡のお尻が何度も跳ね、せっかく解した腕にも再度力がこもり、抱き締めた枕を強く握りしめていた。

京太郎「――ほら、背中も相当だったんだろ? こことか、すげー効くんじゃないか?」グリグリ

淡「――っっっ!? ひああぁぁうっっ! んぁっ、だ、だめって……やっ、うぅんっ! んはぁぁぁっ!」

 背骨の左右の、筋肉を指圧で解す。
 その瞬間に彼女が思いきり仰け反り、枕も手放してガクガクと布団の上に身悶えながら、絶叫にも近い声を響かせる。
 だがそれは、身体の奥へ広がる、マッサージの快感によるものだ。なにもやましいところなどない。

京太郎「だいぶ疲れが溜まってるぞ、もしかしたら姿勢が悪いのかもな。猫背気味だとか――」

淡「わ、わっかんっ、な、ひぃっ……ひゃぅっ、ひゃぁぁんっ!」

菫「」

照「」

灼「」

穏乃「むにゃぁ……」

玄「ふへぇ……」トローン

 とにもかくにも、そのまま背中を念入りに――やがて淡が心地よさを受け入れ、布団の上で倒れ伏すまで。
 丁寧なマッサージを繰り返した。

~照の場合

京太郎「さて――お待たせしました、照さん」

照「う、ん……よ、よろしく……」カタカタ

 おかしい、なぜだろう。あの照さんが少し緊張してるようだ。

京太郎「あの、いつもみたいにしててくれたほうが、ありがたいんですけど」

照「む、無理っ……」カァァッ

京太郎(あれ、照さんが可愛い)

京太郎「――まぁ、いいですけど。とりあえずやっていきますね、照さんは……見たところ、腕と脚でしょうか」

照「か、肩も――」

菫「ふっ……」

照「――なに?」

菫「いや別に」クククッ

京太郎「まぁまぁ……とりあえず、全体を見ます。あれでリラックスしてもらってから、重点的にする部分を見極めますので」

照「わかった、お願い」

京太郎「それじゃ、始めますねー」


 思ったより、腕の凝りはなかった。実はあの使い方、筋肉に負担をかけないのかもしれない。参考にしよう。
 で――まぁ、肩もね。うん、その……そ、そこそこにしか、ね……すみません。

京太郎「肩はこれくらいで。というか、照さんの上半身はすごくしなやかです。柔らかくて、凝りがほとんどありません」

照「そっか……」ショボン

京太郎「きっと身体の使い方が上手なんです。いいことですよ」ナデナデ

照「そっか♪」パァァッ

京太郎「では腰と、あと脚をやっていくことにしますね。やっぱり座っていることが多いせいか、太ももの血行が悪いかもしれません」

照「うん、よろしく」

 無防備なおねだりで、ポフンッと布団に倒れる照さん、かわいい。
 だけど、そんな感想では済まされない、立派な膨らみが浴衣を突きだしている。

京太郎(……そういえば、照さんも二つ上の女性だった……おもちがないから、油断してたなぁ……)

 お尻が、すげーエロい。
 なんだこれ、下手すると抱きつきたくなるぞ、形が綺麗すぎる。
 そのくせ、ボリュームあるからか、浴衣にピタって張りついて、下着のラインまでくっきり見えすぎ。
 だから言ったんだよ、浴衣着るときはノーパンか、ラインでない下着にしろって!(血涙)

京太郎(いかんいかん、無心だ……)

 軽く首を振って、ひとまず膝の裏側あたりに手を添える。と――。

照「ふっっ……んっく……んっ、なんでも……」モジモジ ユサッ

京太郎「――――」

 ちょっと触っただけなのに、照さんのお尻がピクッと跳ねた。そして、柔らかさと弾力を見せつけるように、小さく揺れる。
 しかもよく見れば、太もももしっかりと、狭まった浴衣の下半身部を張りつめさせて、非常に艶めかしい光景が広がっていた。

照「どう、したの……?」フフッ

京太郎「――いえ」

 軽くこちらを振り向いた照さんが、口元を緩めて瞳を細めて、挑発するように微笑んだ。
 普段の、天然で甘えん坊で、少し子供っぽい姿などまるでない、妖艶で大人びた――年上の表情を見せる。


 軽くこちらを振り向いた照さんが、口元を緩めて瞳を細めて、挑発するように微笑んだ。
 普段の、天然で甘えん坊で、少し子供っぽい姿などまるでない、妖艶で大人びた――年上の表情を見せる。

京太郎「失礼します」

 なにかを期待するように生唾を飲み、彼女の太ももへ手を滑らせた。
 フニッ……とマシュマロのような柔らかさが、浴衣越しでもはっきりわかるくらい、指に伝わる。
 手の平でのマッサージはすでに済んだ、ならばあとはこの指先で、太ももを解していくまで。

照「っっ……ふぅっ、くんっ……ふっ、ふふっ、ちょっとくすぐ――」

 照さんがそう口にしかけたのと同じタイミングで、指先は太ももの中央へ差し掛かる。
 そこは、最初の全体マッサージで一番大事だと思っていた、彼女の脚で一番負担がかかっているであろうポイントだった。

照「きゅふぅんっ!? いっ、はっ……んぅっ、ち、ちがっ、いまのは――」

京太郎「やっぱり、ここが弱いみたいですね、照さん……大丈夫です、俺に任せてください」

 すぐさまその部分の周辺に指を集める。けれど、すぐにそこを刺激するわけではない。
 いきなり急激な刺激を与えても、逆に痛みが増し、回復が滞ってしまう。まずは周辺へ緩い刺激を送り――。

照「んくっ……あっ、はぁぁ……こ、これ、くらいなら、まだ……んぁっ、あっ……んっ……」

 その刺激を持って、患部への緩やかな治療とする。これが肝要だ。
 柔らかさを跳ねさせる柔肉を、ピアノでも弾くように優しくタッチし、指先を添わせてグッグッと押し込み、少し滑らせてはまた押し込む。

照「あうぅぅんっ……んはっ、あっ……京、ちゃっ……ぁんっ、はぁっ……」

 緩やかに揉みほぐしているだけだが、それはそれで心地よくなってくれているようだ。
 浴衣にピッタリと形を浮かばせた美尻が、押し込むたびにクイクイと持ち上がって、いやらしく揺れるのが視界の端に映る。
 そして指を滑らせると、浮いた腰がビクッと小さく跳ねて、さらにその揺れを大きくしていた。

京太郎「痛くないですか? なんでしたら、もっと優しくできますけど――」

照「ううん、平気――すごく、きっ……ぃんっ、あっ……気持ち、いい、からぁっ……」

照「できれば……もっと、強くして……京ちゃんの、感触……いっぱい、広げてっ……」

菫「お、まっ……くっっ……き、聞こえない、私はなにもっ……」

 隣で菫さんが、ひたすらモジモジとしてるのが気になるが、彼女は次だ。もう少しだけ我慢してもらおう。
 ある程度の事前準備は済んだ、そしてここからが――最重要な施術になる。

京太郎「わかりました……それじゃ、奥に行きますからね」

照「――っっ!? いっっっ……ひゃふぅぅぅっっ!? んぁっ、くっ、あっ……ぅあぁぁっ……ぁんっっ……」

 いままで周囲から、ひたすらに甘い刺激で蕩かし続けた患部を、指先で包むように押し捏ねた。
 そのまま、周囲へ広げるような動きで指を滑らせると、彼女の反応が硬直から一転、弛緩へと移り変わる。

照「はあぁぁぁぁ……い、まのっ、なに……すご、く……よかった……ぁっ、ふぁうっ、んくぅっ……」

京太郎「ここが照さんの、一番疲れてる場所ってことです。ほら、意識してください、また触りますから」

照「うっ、うん……ひっ、ひゃぁぁあぁ……はぅっ、あうぅぅんっ……京、ちゃんっ、すごぃっ……///」

 焦らすような刺激で丁寧に解したおかげか、指を強く押しつけても問題なく、太ももの中央が心地よい反応を示しているようだった。
 そのたびに足先がビクビクと跳ね、お尻が何度も上下に揺れる。
 それでもこちらの施術を拒む素振りはなく、指が触れると意識しているかのように、下半身の痙攣を抑えて、快感の受け入れ準備をしていた。


照「はぁっ、うぅぅぅんっ……んはぁっ、あっ……そんな、にっ……すごい、京ちゃんの(マッサージ)、すごいよぉっ……」

菫「お前っ……わざと、やってるんじゃないだろうなっ……」

灼「私、あと二人分もこれ聞いて、そのあとなのっ……?」モジモジモジ

京太郎「はい、この次は菫さん、それから穏乃――あ、寝てやがるな。まぁ起こしてやって、それから灼先輩です。最後に宥先輩もですけど」

照「京ちゃん、いまは私――あっひ、いぃんっ! んっ、ふぅっ……い、きなりっ……///」

京太郎「わかってます、拗ねないでください」

 別の人と話して、施術が疎かになっていると怒られては困る。
 そうではないことのアピールのため、指先に全神経を集中し、中央部分から太ももの付け根へと、指圧の場所を滑らせてゆく。
 お尻とのギリギリ境界線辺り、太ももの付け根の裏側という、非常に敏感な部分を撫で擦ると、それで照さんの機嫌も直ったようだった。

照「す、拗ねて、なんてぇ……はにゅっ、んっ、ひぃぃっ……ご、ごめん、なさっ……あうっ、あうぅぅんっ!」

照「ごめんなさいっ、京っ……京ちゃんっ、きょっ……あぁぁぁぁぁんっっ!」ビクビクンッ

 そうして――個別部分を終えた後、もう一度脚全体を丁寧に揉んで、終了だ。
 右脚は。

京太郎「さて、次は左脚ですね。力抜いてくださいねー」

照「は、いっ……んぅっ、はぁぁ……あっ、くぅぅんっっ……んっ、ひゅっっ……」ゾクゾクッ

京太郎「照さんの太もも、柔らかくてマッサージしやすいです」

照「へぇっ、んっ……変、じゃ……ないかなぁ……?」

京太郎「もちろんです」

 いいながら、右脚と同じように膝裏から、中心部を遠巻きに見ながら刺激の波を広げ、血行を正してゆく。

照「んんぅぅ……はぁっ、はぁぁ……もっと、してぇ……う、上の、ほうもぉっ……」

京太郎「だめです、いきなりすると痛いですから……ゆっくりゆっくり、時間をかけないとね……」

照「はっ、ふぅぅぅっ……い、いじ、わりゅっ……やっ、あうぅっっ!」

 照さん腰が大きく跳ね、すぐさま布団に崩れ落ちる。
 その状態でカクカクと小さく揺れ、その振動――痺れは、足先にまで広がっているようだった。

菫「…………」カタカタ

穏乃「ウェヒヒ……」スヤスヤ

灼「……も、どうにでもな……」

淡「ふにゃぁぁ……」トローン

玄「んふぅぅ……」トローン

~菫の場合

京太郎「よい、しょっ……と。うん、これで大丈夫かな」フキフキ

京太郎「前二人もそうでしたけど、照さんも汗すごかったんで……軽くですけど拭いておきました、これで風邪ひいたりはしないかと」

菫「あ、あぁ……そう、だな……」

京太郎「それでは、菫さんの番です……よろしくお願いします」

菫「う、む……」

菫(本当なら、やめておきたい……だが、後日にでも淡と照がその会話をし、私が混ざれなければ――)


淡『えぇ~、スミレってばマッサージしてもらわなかったの~、ヘッタレ~♪』

照『仕方ない。菫は臆病で情けない子だから』モグモグ

淡『うーん、そっかもねー。ま、高校102年生になった私には、敵うわけないかー、あはは♪』


菫(それだけは許さん! あとまた一年経ってるんじゃない、お前は!)

京太郎「――菫さん? どうかされましたか? 調子が悪いのでしたら、今夜のところは――」

菫「はっ……いや、大丈夫だ、問題ない。よろしく頼む」ゴロン

菫(私はバカかあぁぁぁぁっっ! せっかく京太郎くんが水を向けてくれたというのに、むざむざ――)

京太郎「はい、では施していきますねー。リラックスしてください」ニコッ

菫(……いや、そうだな。先ほどから思っていたが、三人の反応がアレだっただけで……彼自身は、実に誠実にマッサージしているじゃないか)

菫(それを断るなんて、彼に対して失礼だ――)


京太郎(さて、菫さんは、と――)チラッ

 やはり一番に目につくのは、あの巨――おもちだ。
 だが、それはよく聞く話ではある。そこで肩を重点的にやろうものなら、セクハラと取られかねない。
 ひとまずは全体をやって、腕と腰を済ませて――穏便に済ませておこうか。

京太郎「それでは、全体を丁寧にほぐして……凝っていそうなところだけ、集中しますので」

菫「あ、ああ……」

 高身長ながらスレンダー、それでいて身体の凹凸もしっかりしている菫さんは、女性なら誰もが羨むプロポーションだろう。
 肌も、淡には負けるがやはり綺麗だ、そして髪も。
 マッサージのためにまとめてくれているおかげで、うなじのほつれた髪が、とてつもなく艶めかしい。
 そしてなにより、うつ伏せの体勢のせいで――横から溢れてる。

京太郎「……日頃から、ストレッチなんかをされてますよね? ほかの人と違って、凝りが緩いです」

菫「そうだな……以前は弓道を嗜んでいたこともある。そういった筋肉の手入れは、普通の女子より知っているつもりだからな……んっ……」

 おもちを意識しないよう、そして照さんに負けぬほどの立派な――愛らしい尻房にも目を奪われぬよう。
 細心の注意を払いながら、身体のあちこちに手を這わせる。
 指先と手の平を使い分け、その部位に適した刺激を送りながら、凝りの具合を確認する。
 最初は緊張に強張っていた彼女の肢体も、いつしかゆったりとリラックスし、布団に柔らかく沈み込んで、蕩けたような吐息が溢れていた

菫「はぁ……んっ、ふぅ……ふふ、たしかに、これは……ぁんっ……いい、ものだな……くふっ……」

京太郎「大丈夫ですか? 力加減は変えていませんけど、くすぐったかったり痛かったりは――」

菫「問題ないよ、そのまま……ぁくっ……んっ、ふっ……っっ……すまないな、大丈夫だ……」

 甘く声を吐きながらも、彼女がそれを上擦らせたのはやはり、肩を解したところだった。
 首筋の、首からまっすぐに下りたラインの硬い膨らみ、そこを指で押し擦ると、彼女の身体は正直な反応を示す。
 腰をヒクつかせ、足先を突っ張り、僅かに肩を持ち上げて背中を丸めた。
 快感に悶える、魅惑的な女性の色香だ。

京太郎「その、すみません、菫さん……」

菫「――ああ、よかったよ」

京太郎「えっ?」

菫「いや、私にだけ聞かなかっただろう? どこか凝っている部分はないか、と――」

京たる「あ……いえ、それは……」

菫「気を遣ってくれたんだろう? 当然だ、私には目立ったものがあるからな……その上でそれを聞けば、セクハラのようなものだ。だが、案ずることはないよ」

 枕を抱き、顔だけを振り返らせた年上の女の子が、可愛らしく唇を緩める。

菫「私のための施術だ、文句などない……その、頼むよ――」

菫「か……肩が、凝っているんだ……とてもね」

灼(穏乃は寝てるからいいとして、私がいるの忘れてないかな……ってか、待ちくたびれ……)


京太郎「失礼します」

菫「はぅっ……んっ、はっ……あぁっ、いいっ……くぅぅっ……」ビクッ

 玄先輩の凝りは、日頃の労働によるものもあるだろう。
 そして全員が麻雀部であることもあり、そういった疲労も積もってはいる。
 だがこれは、明らかに別格だ。まさにキング……いや、クイーンof凝り。
 重い荷物を外すことなく装着しているからこそ感じる、最高級の凝りだ。これに比べたら照さんの凝りなんて、綿クズが乗っているようなものだろう。

京太郎「ゆっくりと……優しく、しますからね」ヒソッ

菫「はぁっ! あっ、あぁ……わ、かって……んくっ、い、るぅっ……あっ、はぁっ……」

 ささやきながら、手の平の付け根で首筋のラインを擦る。背中へ向けて血行を促し、時折左右にも圧力を伸ばす。
 そのたびに、枕を抱いたまま彼女が頭を浮かせ、喘ぐような声をもらして、全身をヒクつかせていた。

京太郎(ひどい凝りだ、多少は強くしてもいいんだけど……)

 それでも、あまりに強い刺激を短時間に浴びせては、揉み返しの心配も出てくる。
 なるべく時間をかけながら、時折でいい――。

菫「んひゅっっ! いっ、そ、そこはっ、あんっ……っ、す、すまな――いひっ、ひゃぅんっ!」

 ――こうして、首から肩にかけての部分に手をかけ、指で揉むというのがいいだろう。

京太郎「大丈夫ですか? この方法、くすぐったがる人も多いですから……やっぱりやめたほうが――」

菫「う、むっ、だが……あぁぁっ、だがぁ……これ、いいっ……気持ち、いいからぁっ……」ゾクッ

菫「た、頼む……つ、続けて、くれぇ……」ウルウル

 潤んだ瞳で、上気した頬で、振り返った彼女が懇願するように告げた。
 やはり相当に凝りがひどかったのだろう、そうでなくてはこの刺激は、ただ痛くてくすぐったいだけだ。
 実際、指にかかる硬さもかなりの反発だ。
 肩の上側を、そしてやや前側を四本の指で。そして背中側を親指で丹念に押し解し、手の平でその部分を撫でてマッサージする。

菫「はっ、あぁぁぁっ……んくっ、あっ、はぁんっ……はぁっ、はぉっ……んぉっ、くふぅぅぅっ……」ビクンビクンッ

 膝立ちになって彼女の身体を跨いでいるから、それが大きく跳ねるたびに、それが、その――身体の一部に強く押し当てられる。
 お尻とか、ああいうとこに、彼女の腰やお尻が。
 伸びきった足先がバタバタと布団を叩き、抱き潰さんばかりに彼女の腕は、枕を抱えて顔を埋めようとしていた。

菫「んっ、くぅぅぅぅ~~~~~~っっ……ふぁっ、ふっ……んああぁぁっっっ! あっ、はぁぁんっ!」

 けれど刺激が加わるとそれもできないらしく、反射的に顔が跳ね上がって、甘酸っぱい声が轟く。
 すぐさま恥じ入るように耳まで真っ赤にし、枕に顔を埋めるのだが――次に強く指圧すると結果は同じだ。
 息も絶え絶えに布団の上で暴れ、首筋にも汗の粒が浮かんでいる。
 背中も当然、濡れた肌に浴衣が張りつき、ブラ紐がくっきりと刻まれているのが見えた。

菫「はぁぁぁっ、あっ、ふぅぅ……んぃっ、いぃ……よぉぉ……京太郎くん、すごいっ……あぁっ……」

 けれど――心地よさに甘えた声をもらしているのだが、どうにも彼女は苦しげに見える。
 それはマッサージによりものでも、自分らしからぬ声を聞かれている羞恥によるものでもなく、もっと普通の――人として当然ともいえる苦悶だった。

京太郎「あ、の……もしかして、苦しいですか? この姿勢……」

菫「――っっ!? そんな、ことは……いや……うん、そうだな……」

 手を止めたことで、普通に話せるようになった彼女が、息を乱しながらも答える。

菫「その、やはり……ねが、な……圧迫されるんだ……」

京太郎「そう、ですか――」

 対応策はある、けれどそれは彼女が好まないだろう。だから黙って、耐えるようにお願いしようと――口を開きかけたときだった。

菫「な、なぁ、その……仰向けでも、いいだろうか」


京太郎「――っ! いいんですか、菫さんは?」

菫「ああ……ここまで、これだけ真摯にしてくれたんだ、いまさら気にはしないよ」

 多少息苦しくはなるけど、うつ伏せよりはマシだから――と。笑いながら彼女が身体を反転させる。

京太郎「」

 浴衣を正したとはいえ、そのボリュームも、合わせから覗く汗ばんだ白肌も、隠すことなどできない。

京太郎(これを見下ろしながらマッサージ? マジで? 拷問?)

菫「で、では……よろしく、頼む……っ///」

 肘を曲げて手を上げる、無抵抗なポーズ。
 この状態で前から肩に手をかけ、そこを揉みしだくことになる。ありえん。

京太郎「――失礼します」

菫「んっっ……あっ……ふぐっ……んっ、あぁんっ……」

 先ほどの刺激より、やや緩い刺激を与え始めると、すぐさま彼女の唇が綻び、声が溢れた。
 しかも身体が跳ねる、お尻で叩かれていたのと同じように、腰が跳ねて、そしておもちが揺れる。
 下着は着けている、にも拘わらず弾力を感じさせてタユンッと、胸元の膨らみが揺れたわむ。
 さらに、目の前では紅潮した彼女が顔を背け、瞳をキュッと固く閉じ、唇を懸命に噛み締めていた。

京太郎(――俺は石、岩、あるいは聖人……仙人でもいいよ、この際……)モミモミ

菫「あっ、はぁぁぁ……んふっ、ふぁっ、ふっ……ぐっ、くぅぅんっ……んっっ、あはぁぁっ!」

 プチンッ――と、いつ理性の糸が切れてもおかしくない。
 揉み刺激を強くするたび、堪えきれない声がますます大きくなって、彼女の赤面も激しくなる。

菫「はぅっ、んっぅぅっ! んぅっ、んぐっ、んむぅぅぅっ……」ジタバタ

 やがて彼女は口を手で覆い、潤んだ瞳を上向かせてはまた閉じ、声だけを必死に押し殺し、指圧刺激に身悶え続けていた。
 すでに浴衣はびっしょりと汗に塗れ、身体のラインを完璧にトレースしている。
 下の布団までしっとりと濡れた状態で、何度も何度も、腰とお尻が布団を叩くように躍っていた。

~穏乃の場合

菫「はぁーっ、はぁーっ、んっ……はぁっ、あぁぁ……ふぅぅ……」ヒクッヒクンッ

京太郎「――汗はオッケー、だけど布団が……バスタオルは引いたから、多少はマシだけど……」

京太郎「ここ、二年の部屋だったよな……誠子さん、渋谷さん、すいません……」

灼「わ、私は……この状態で、寝るって……」カァァッ

京太郎「ま、まぁその……あ、なんだったら俺の布団と交換するってのも――」

灼「いいわけないでしょっ!」クワッ

京太郎「ですよね!」

穏乃「ふえぇっっ!? そんなのってないよ、あんまりだよ!?」

京太郎「おっ、起きたか穏乃。お前の番だぞ、マッサージ」

穏乃「えっ、もしかして寝てた!? うわー、ごめんっ」

京太郎「いや、ちょうどいいよ。いま菫さんが終わったとこだから」

穏乃「やった、ナイスタイミングだよね! いいなー、みんな気持ちよさそうに寝てるしさー」

玄「ふえぇ……」トローン
淡「ふなぁぁん……」トレー
照「んぅ、はぁ……」テルー
菫「はぁっ、はぁっ……っ……はぁぁ……」ガクガク

穏乃「」

京太郎「よし、じゃあそこに寝て――」

穏乃「……あ、あの、京太郎?」

京太郎「ん?」

穏乃「ま……マッサージ、なんだよ……ね?」

京太郎「灼さん、お願いします」

灼「それは間違いない。ただ、とんでもなく上手い、テクニシャンだよ、京太郎は」

穏乃「そ、そうなんだ……うーん、怖いけど……よろしくお願いします!」


京太郎「……お前はなんなんだ、健康優良野生児か」モミモミ

穏乃「えー? どういうことー?」

京太郎「おかしいな、元気有り余ってるお前なら、あっちこっち凝ってると思ったんだが……ほとんどおかしなとこがない」

穏乃「まぁね! いつ山を走ることになるかわかんないし、整理体操もしっかりやってるから!」

京太郎「そっか……なら、まぁ……脚だけでも念入りにやっとくか」モミモミ

穏乃「ひゃっっ!?」ゾクッ

京太郎「!? ど、どうした、おかしかったか?」

穏乃「う、ううん、違うけど……なんだろ、いま――」

穏乃「ふくらはぎ、触られて……ゾクッてした……」ブルルッ

京太郎「ならそこが弱いのかもな……ちょっと重点的に見てみるわ」

 そう言うと、浴衣を小さくめくり、細くしなやかなその部分に目を、そして手を這わせる。
 小柄な体躯に相応しい、ほっそりとした脚だ。それでいてあの健脚、いったいどんな筋肉なのだろう。
 そんなことを考えながら、両手で脚を持ち上げ、指で指圧しながら踵から膝裏を刺激する。

穏乃「んぅっ、んんんぅっっ! あふっ、な、なんか、くすぐったい、ような――んっ、ひゃっ……」

京太郎「なら、このくらいでどうだ? 痛くないか?」

穏乃「うっ、んっ……い、痛くは、全然っ、けどっ……あっ、はぅっ、はぁぁっ……」ゾワゾワッ

 脚を持ち上げて、こちらの膝に乗せてマッサージしているからか。
 不安定さに悶えるように、反対の脚がバタバタと布団を蹴る。
 その度に浴衣が捲れ、どんどん深くまで脚が見えてしまいそうになる。
 誘惑に駆られそうになるのを堪え、視点はふくらはぎ一点集中、指先をゆっくりと押し込んで、彼女の凝りを探してゆく。

京太郎(たしかに、微かな凝りがある……うん、これなら緩いマッサージでも平気かな)

 細くて折れてしまいそうな脚を両手の指で、洗うように揉みほぐす。
 強い刺激ではない、甘いくらいの緩やかな手つきで、ふくらはぎを上下に、何度も往復する。

穏乃「はぁぁ……っ、くふっっ……んぅぅっ……はぁっ、あっ……」

穏乃「な、なんで、声っ……こんなの、や、山登りでも、一回もっ……息、きらしたこと、ない、のっ……んひぅっ!」ビクビクッ

京太郎「大丈夫、疲れてるとこにマッサージしてるから、気持ちよくなってるだけだ。他の人も声出てたから、心配はいらねーって」モミオミ

穏乃「なら、いい、けどさっ……んひぅっ! ひっ、ひゃっ……んんぅっっ……」

 スベスベの肌に傷がつかないよう、丁寧に擦ってやると、甘く身悶えた彼女が布団の上で脚をヒクつかせる。
 ついでに足裏も、足袋ソックスの上から少しだけついてやると、とうとう口を押えた彼女は上半身を丸め、ビクビクッと背中を痙攣させたようだ。

穏乃「っぅ~~~~~~~っっ!? んっ、あっ……はぁっ、ふっ……」カァァァッ

京太郎「平気だってば。でもいまの反応……そっか、盲点だった。足裏も色々疲れるもんなぁ」グリグリ

穏乃「きゃうぅぅんっっ! んっ、あっ……やっ、やだぁっ、こわいぃっ……」ジタバタッ

 感じたことのない刺激に、怯えたような声を上げる。
 さすがにこんな反応をされて続けるのは可哀想だ。いったん手を止め、脚を布団に置き、彼女の傍に寄る。


京太郎「落ち着け」

穏乃「で、でもぉぉ……」フルフルッ

京太郎「大丈夫だ、たしかにお前の身体はこれまで凝り知らず、疲労知らずだったかもしれない」

京太郎「けど、麻雀の練習で身体が鈍ったのと、日頃使わない筋肉を使ってたことで、あちこちにちょっとした疲れが溜まってんだ」

京太郎「さっきの、声はともかく……気持ちよくなかったか?」

穏乃「そ、れは……そう、だったけどぉ……」カァッ モジモジ

京太郎「それは気持ちよくて当然なんだ、疲れが取れてんだから。だから、声が出るのも仕方ないの。言っただろ、前の4人も全員そうだったって」

穏乃「そう、なんですか……灼さん……?」

灼「……うん、もっとすごかったくらい」

穏乃「――そう、なんだ……」ゾクゾクッ

穏乃(? あれ、なんだろ、いまの……)

京太郎「だからほら、安心していいぞ……まぁ、無理にってわけじゃないから、嫌ならやめるけど」

穏乃「ぁ――う、ううん! 平気だよ! このまま続けて! お願い!」

京太郎「よし、じゃあ……続きからな」

 再び脚を取り、ふくらはぎを解しながら、足裏を強く刺激する。内蔵のツボだけでなく、足裏だけの疲れも存在するその部分を、徹底して癒すように。

穏乃「あふっ、いっ……ひあぁぁっ! あんっ……んっ、きょうっ、たろぉっ……あうぅんっ!」

 怯えた様子もなく、初めて覚えた癒しの快感を受け入れるように――穏乃は甘く、甲高く声を響かせていた。

穏乃「ひあぁぁっ! あぁっ、んっ……いいよぉっ、あ、あしっ……もっとして、グリグリしてぇっ……」ビクンビクンッ

京太郎「ああ、もちろん……このあとは反対側もだからな」

穏乃「~~~~~~~~~っっっ////」ゾクゾクゾクッ

穏乃「た、愉しみ、だなぁ……あぅっ、んっ……んくぅぅぅっっ!」

~灼の場合

穏乃「はにゃぁぁぁ……んっ、きょう、たろぉ……」スリスリ

京太郎「よしよし、ゆっくり休めよ……さて、お待たせしました――って」

灼「……よろしく、お願いします」ピシッ

京太郎「どど、どうしたんですか、急にっ……そんな、三つ指ついて……」

灼「いや、敬意というか……この状況で、徹底してマッサージを尽くす姿に、感動したっていうか……」

京太郎「まぁ……正直、すげー疲れましたけど……けどやっぱ、喜んでもらえるなら、それに応えたいですからね」

灼「……ふむ、つまり……そういう気持ちにはなったと?」ジー

京太郎「……ノーコメントで」

灼「私にも、なるかな……どうかな?」

京太郎「……そりゃ、もちろん……ですけど……まぁ、全力で我慢します」

灼「なら嬉し……期待する……」

京太郎「はい、頑張りますよ」




京太郎「……灼先輩も、かなり全身凝ってますよね」

灼「まぁ……家遠いし、麻雀の練習漬けだし、家の手伝いもあるし、部長としての事務作業で肩も凝るし……」

京太郎「わかりました、なら……しっかりと、全身お相手します……」スススッ スリスリ

灼「ふぐっ、んっ……よろし……ぁっ……んっ、んぅっ……あはぁぁ……」

 まずは太ももの付け根、足回りが相当の疲労だと感じられた。
 太ももの半ばくらいを両手で包み、振動を与えながら凝りを解す。
 その一方で、お尻に近いギリギリの部分へ指圧し、彼女の反応を窺う。

灼「はっ、うぅんっ……んっ、くっ……はぁんっ……」

 その瞬間、逆脚をピンと跳ね伸ばし、枕に顔を埋めた彼女が、シーツを握りしめた。
 反応を横目に見つつ、改めて指圧を施すと、さらに強くシーツが引かれ、身体を縮めるようにしながら、彼女の小さな身体が震えた。

灼「だ、めっ、そこはっ……くっ、うぅうんっ……あ、あぁ……」

 否定の声が届くのを敏感に察知し、手を遠ざける。
 少しお尻に触れてしまったのだろうか、もちろんそんなつもりはないが――それならば申し訳ない。
 今度は触れないよう、最新の注意を払いながら、また念入りに太ももを解していく。

灼「ふぅ、はぁぁ……んぅっ、いいな……ふぐっ、あっ、またぁっ……」ビクビクッッ

 だがやはり、太ももの付け根から繋がる柔らかなライン――浴衣を突き上げる、小振りなヒップとの境目を撫でると、過敏な反応を示して彼女が跳ねる。
 そのたびに手を遠ざけ、それでも繰り返し、太ももを丁寧に揉みほぐす。
 何度も言うが、ここが一番疲れているからだ。

灼「はふっ、ひっ……ひぃぃんっ! いっ、ひぁんっ……はぁっ、はぁぁ……ちょ、っと、だめっ……んくぅっ……」

灼「あぁぁっ、んぅっ……ひっ、ふぅぅっ! んっっ、な、んぁっ、でっ……また、そ――くふぅぅっ!」

灼「ふあぁぁぁ……」ゾゾゾッ

灼「だ、めっ……あぁっ、ち、ちが、くてぇ……んっ、だ、だめじゃ……だ、だからっ……」

灼「だめじゃないっ、してっ、そこっ、い……いいからっ、もっとぉっ……」

 逆脚をバタつかせ、いつしか遠慮もなく、そしてはしたなくお尻を突き上げながら、それを左右に振り乱して、灼先輩が声を甘く蕩けさせる。
 触れられることを嫌がっていた部分へ、ようやく触れることを許してくれた反応に安堵しながら、今度こそ本格的に、太ももの付け根へ指を這わせた。

灼「あっ、んっ……~~~~~っっ!! くっひぃっ、いはっ、ひああぁぁんっっ!」

 触れた瞬間、痙攣したように激しく腰を震わせ、上半身を引きながらお尻を跳ね上げ、こちらに突きだしてくる。
 這わせた指でそこを押し込むと、声にならない悲鳴が響き、お尻が前後にカクカクと揺れていた。

灼「はぁっ、ふぅぅぅんっっ! んひっ、ひゃっ……そ、そこっ、いいっ、いいよぉっっ……んんぅぅっ!」


 もちろん、同じように反対側の脚もする。
 触れた最初は、元の脚と同じように、否定的な声が跳ねていたが、ゆっくりと周囲を解すことで慣れてくれたらしく、すぐさま先輩の声が上擦りだした。

灼「あひぃぃ……はぁっ、んっ、お、お願い、だからぁ……して、もっと、上っ、上のほうっ……グリグリッ、あぁぁ……」

灼「そう、それぇぇぇっ……いいよっ、いいっ、んっっ……くふぅぅぅっ……」ゾクゾクッ

灼「ああぁぁっっ、たまんないぃぃ……すごいのっ、強くしてよぉっ……」

 お尻を震えさせて、おねだりのように甘えるその声を聞きながら、ほとんどお尻だろという部分の筋肉――認識では間違いなく、太ももだ――を、揉み解す。

灼「あはぁぁ……いい、それ、すごくっ……好きっ、気持ちいいっ……」

 だがまだ終わりではない、そこを終えても、灼先輩はまだ――腰が残っている。

灼「う、そ……まだ、やるのっ……だってそこ、そっちはっ……あうぅうっっ……」ビクビクッ

 脚と同じくらい、腰にも相当の疲労が溜まっていたようだ。
 あれだけ浮いていたお尻――もとい、腰を押さえつけるようにして。
 今度はお尻と腰の中間地点から、凝りを解して血行を促し、指圧を浴びせてゆく。

灼「ふっ、あっ……あぁっ……ああぁぁあぁぁぁっっ、ふぐぅぅぅぅぅっっっ!!」

 行き場を失った反射は灼先輩の背中を反らさせ、跳ね上がったあごが上を向き、感極まった声を響かせる。
 その反応を確認しながら、灼先輩を癒すように、腰を丁寧に揉みほぐして、彼女に告げる。

京太郎「大丈夫ですか? 痛かったら言ってください」

灼「へい、きっ……あぁぁっ、んふぅぅっ! き、気持ち、いいっ、すごくいいからぁぁっ!」ビクンビクンッ

 なら――安心だ、と。
 もう少し指圧を強くしながら、腰の凝りを念入りにほぐすのだった。

~宥の場合

京太郎「――さて、と。これで全員かな……?」

玄「はふぇぇ……」トローン
淡「ふにゅぅぅ……」トレー
照「あふぅぅぅ、んっ、あぁ……」テルーン
菫「くふぅっ、ふぁっ、うぅぅっ……」ビクビクッ
穏乃「はにゃぁぁぁ……」スリスリ
灼「いいっ、そこぉ……いいっ……」ガクガクッ

京太郎「――だ、大丈夫かな……」

宥「京太郎くん、お待たせ~。そっちはど――」

京太郎「あ――」


宥「……本当に? ちゃんと私の目を見て言える?」

京太郎「もちろんです! そんな、いかがわしいことなんて……絶対にしてません!」

宥「それなら……証明してくれるかな、普通にマッサージしただけだって、私に」ジー

京太郎「――と、言いますと?」

宥「さっき、マッサージお願いしたあとで、言ったでしょ? 私にも――マッサージしなさいっ」プンッ

京太郎(かわいい)

京太郎「わかりました。では、そちら――いや、無理か」

京太郎(バスタオルは敷いてるけど、6人が倒れてちゃスペースがない……)

京太郎「えっと、宥先輩がマッサージした部屋か、もう一部屋か、それか俺の部屋で――」

宥「……本当に、おかしなことはしてないんだよね?」

京太郎「それは当然です」

宥「――それなら、京太郎くんの部屋でお願いしようかな」モジモジ

京太郎「」

宥(……私も京太郎くんは信じてる、だとしたら……マッサージで、すごいことになるかもしれないから……)

宥「あ……でも、人がいればそれだけ恥ずかしくて……あったかい、かも……」ボソッ

京太郎「――は?」

宥「!! う、ううん、なんでもないよ……」カァァッ


~京太郎の部屋

京太郎「じゃあ、バスタオルも敷きましたし……」

宥「は、はい……お、お願いしますっ……」ブルブル

 浴衣を着たままの宥先輩が――マフラーを巻いたまま、そこに寝転がる。
 先ほどまでマッサージしていた宥先輩だが、力仕事のあとだというのに、汗をかいた様子はなかった。
 そんな彼女をしっかりと温めるために、マッサージは準備段階から念入りにしなければ。

京太郎「リラックスしてくださいね。あと、嫌なことがあったらちゃんと言ってください、すぐにやめますからね」

宥「うん、わかった……んぅっ……」

 ひとまずは腰に手を添え、そこから背中に、首筋に、肩にと、まずは一通りの施術。
 そこから再び腰に戻り、太ももからふくらはぎへと。

宥「んぅ、うん……あぁ、んっ……すごい、上手……だねっ……」

京太郎「それはよかったです。そういえば、宥先輩はどこか気になるところはありますか?」

宥「ううん、私はそもそも……あ、あまり立って動かないからね、疲れもそんなには……でも……」

 ポツッと彼女が続けたのを、聞き逃さない。
 もちろん、マッサージの反応からある程度のあたりはつけているが、実際のことは本人の口から聞かない限り、すべては憶測にすぎないのだ。

宥「やっぱり、その……肩、凝っちゃうかなぁ……尭深ちゃんもね、すごかったんだよ……」

 あぁ――それはそうでしょうね。菫さんもすごかったですよ。などと言えるわけもない。

京太郎「そうですか。じゃあ宥先輩も、そちらからやりますね」ニコッ

宥「うん、ありがとう……」アッタカーイ


京太郎「これは、かなり凝ってますね……」

宥「う、んっ……そう、なのぉ……あっ、んぅっ……」

 寒いところを無理してもらい、マフラーを緩めて隙間から肩へ指圧する。
 その僅かな指圧だけでわかるくらい、宥先輩の肩は凝り固まっていた。

 おそらく重たい持ち物だけでなく、彼女自身の姿勢、その体質のためもあるのだろう。
 夏場からマフラーを巻くほどの寒がりな彼女だ、冷える首筋を竦め、背中は曲がっているはず。
 その負担はすべて、肩に重くのしかかっているのだ。

京太郎「すみません、マフラー失礼します……代わりにこれを」

宥「うぅっ、寒いよぉっ……あっ、あったかぁ~い」ポワァッ

 肩と腕、それから背を覆うようにしてショールをかけ、なんとか首筋と肩の一部だけを肌蹴させてもらう。
 日頃、あまり外に出ない宥先輩ならではの、淡とはまた違う柔らかそうな肌が襟元から覗き、その僅かな上気に上品な色香を感じる。

京太郎「それじゃ、ゆっくりとしていきます。その方が温かくなりますから……身体の芯まで」グッグッ

宥「ん、うん……っっ……んっ、ふぅっ……はぁぁ……気持ちいい、コシュコシュされるの……」

 手の平を這わせて、少し強く押し当て、揉まないように気をつけながら、首から肩に向かってのラインを撫で下ろす。
 途中まで下ろすと、掌底部分で肩甲骨のラインを添いながら、背中の中心に向けて圧をかけてゆく。

宥「ふぁっ、あっ、んぅっ……はぁぁ、あぁ……んっ、くふぅっ……」ゾクンッ

京太郎「っと……大丈夫ですか? 寒くないですか?」

宥「あふぅ……うん、平気ぃ……そのまま、続けて……すっごく、上手だからね……」ポワァ

京太郎「ならよかったです……よっと」

 今度は少し、圧力を強めて刺激する。特に、手を滑らせるときにゆっくりと、強さを上げる感じだ。
 触れた瞬間は、ピクッと身体を跳ねさせるだけの、宥先輩の反応。
 だが圧を増して肌を擦りだすと、反応が目に見えて大きくなり、肩を跳ねさせてシーツを強く握り、懸命に反射を抑えようとしている姿が窺える。

宥「ふぅくっ……ふぅんっ、あっ……ふぅっ、んんぅっ……」

京太郎「だ、大丈夫ですか、宥先輩……?」

宥「うん、へいっ……ひぃんっ! いっ、はぁっ、ち、がうの、いまのっ……んぅっっ!」ビビクンッ

京太郎「だ、大丈夫ですっ、皆さんそうでしたから!」アセッ

 そう言って宥めるけれど、不意に上擦った声を大きく響かせ、それを俺に聞かれてしまった羞恥に、宥先輩の顔がカァァッと見る間に赤く染まってゆく。
 耳も、そしてうなじも、微かに見える背筋も、肩のラインも――すべてが上気して、僅かに震えている。
 その部分に指先を這わせると、怯えたようにビクッッと、彼女の全身が硬直した。

宥「あ、う……ど、どうしたの……?」

京太郎「いえ、その……やめたほうが、いいかなと思って……」

宥「――だ、だめ! えっと、そのっ……つ、続けて、いいから……ううんっ、してっ……」


宥「して……ください、マッサージ……私にマッサージを、してくださいっ……」カァァッ モジモジ


 そうまで言われて断れるわけもない。
 無言のまま、肯定の代わりに指を強く肌に押しつけ、固まった筋肉に刺激を送り込む。

宥「ふぁうぅぅっっ!? んっく……くぁっ、はぁんっ……あっ、ひぅっ……」カクカクッ

 すぐさま――今度は肩ではなく、腰が跳ねてお尻が持ち上がり、けれどすぐに力なく、布団に崩れ落ちた。
 そもそも体力がないからだろうか、支える力よりも弛緩によるマヒのほうが強いらしい。
 代わりに、その布団に密着した腰が――そして僅かに浮いたお尻が。

宥「くふっ、ひぃんっ……いっ、ひぁっ、んひぃっ……はうっ、はうぅうっっ……」

 指圧を滑らせるたびにビクビクッと震え、腰が捩れ、下半身全体が身悶えるように布団の上にのたうつ。
 さりげなく――それを知らせるように片手で、彼女の浮きかけた腰を触り、撫で、軽く揉みしだく。

宥「ひあっっ!? んっ、ひゅっ……うぅっ、あぅぅんっ……」

 その刺激でようやく、自分の反応を自覚したように、さらに耳を赤くして宥先輩が腰をペタンと落とした。
 けれどいまのタッチでわかったのだが、肩だけでなく腰も相当にきているようだ。

京太郎「……そうですね、すみません、ちょっと不安かもしれませんけど……両方やっていきますから」

宥「ふぇ……? あっひっ……んっっ、ふぅぅぅっ……くっ、あっ……きょ、うた、ろっ……くっ……んあぁぁっ!」

 片手の親指と人差し指で、首の両側にある凝りを押し捏ねつつ、もう片方の手で腰を優しく揉みしだく。
 両方の刺激に全身をガクガクと震わせながら、足先で円を描くように脚を何度も捩り、甘く声を蕩けさせる宥先輩。

宥「ふわぁぁぁっ……はぅっ、んっ、こ、こん、らぁあっっ……あ、あった、かぁいっ……あったかいのっ、わ、わら、ひぃ……んぅぅっ!」

 グッグッと首筋を押しながら刺激し、またずらして指圧。
 そうするたびに、甘い宥先輩の声が跳ね、身体がクタァッと弛緩していくのがわかった。

宥「こん、なにぃ……あったかいの……知らない、知らなかったよぉ、京太郎くぅん……んはぁぁ……」

 僅かに振り返った彼女の瞳は丸いまま、けれど目尻を垂れ下げて、甘えたように微笑んでいる。
 薄くリップを引いたように輝く、桃色の愛らしい唇が緩み、熱く吐息を吐いて、小さく動いた。

宥「もっと……して、ください……」

 そのおねだりに応えるように、指先に力を込めていく。

宥「ひあぁぁぁんっっ!! あっ、うぅんっ、んぅっ、いいのぉっ! そこっ、してっ、してください、京太郎くんっ……んくぅぅぅっ!」

 そのたびに彼女の腕がキュッと縮こまり、指先がシーツを握って、腰がバタバタと大きく跳ね躍った。

宥「気持ちいっ、いっ……気持ちいいですっ、もっとっ……ひあぁっ、あふっ、はふぅぅっ……」ゾクゾクゥッ

 腰を揉むたびにお尻が持ち上がり、まるでそれを押しつけてさえいるようだった――もちろん勘違いだろうけれど。
 だから、そこから身体を避けて、同じようにマッサージを続ける。
 そうすると、宥先輩は唇を震わせ、切なそうに声を響かせた。

宥「ああぁぁぁぁ……どう、してぇっ……そ、こも、して……して、ほしいのぉっ……あひゅぅっ、はっ、ふぁぁぁ……」

 まだ首筋と背中を、本格的に指圧し始めたばかり。
 その他の箇所も考えると――まだマッサージは、始まったばかりだった。


京太郎「あのあと、真っ赤になった6人――いや、7人はもう一度お風呂へ向かったようだ。まあ汗もかいたし、当然だよな」

京太郎「その前に玄先輩と俺は、布団の敷き直しやら換気やら、その他なんやらかやらをしたのだが――」

京太郎「玄先輩はそのとき、目を合わせてくれなかった」

京太郎「怒っているのかと思って謝ったが、そうではないと逆に謝られた。ただ、やはり目は合わせてもらっていない」

京太郎「――マッサージ、みんなどうだったのかなぁ。所詮、素人の真似事だもんなぁ……」ハァ

~一年部屋(憧・穏乃・淡)

「はぁー、さっぱりしたー」
「おかえりー。まーたお風呂行ってたの? もう三回目じゃない」
「う、うん、ちょっとね……」
「まーいーじゃん。それよりさー、トークしよーよ、トーク! ガールズトーク!」
「はいはい。でもガールズトークって……なに、麻雀の話でもすんの?」
「そんなミーティングみたいなのはだめー! えっとねー、そうだ、女子会!」
「じょしかい?」
「そう、前に虎姫でやった! お菓子食べながらしゃべるんだー」
「なにそれー、楽しそう!」ワクワク
「まぁいいけどさ、んで、お菓子は?」
「こんなこともあろうかと」ドチャッ
「うわっ、すごっ!」
「…………」チラッ(時計を見る)
(…………さすがに、こんな時間に甘いものは……)ウググッ
「どしたのー? 食べないのー?」ポリポリ
「おいしいよー、憧!」モグモグ
「あ……あー、うん……じゃあ、お茶淹れるわ」ヨイショット
(……お茶で誤魔化す、お茶で誤魔化すっ……あたしは絶対食べない、いいわね! うん!)
「お、お待たせー。んで、なんの話するのー? そういや来月テス――」
「わーっ!」
「ふむ、勉強はお気に召さないか……ならなんだろ、男子? うちは女子校だし――あ、一人いたか」アハハー
「………………」カァッ
「………………」モジモジ
(えっ……やだ、なにこの……なに、この空気?)
「……べ、べつにー? 私は忘れちゃたしー」シーラナイ モグモグ
「わ、私だってそうだもん! 食べて忘れるからね!」ガツガツッ
「?????」
(なにがあったって――あれ、ちょっと待って……たしか、あたしと誠子さんと尭深さんがマッサージしてもらって……)
(その間……ほかの、マッサージをしてたのって……)
「京太郎……」ボソッ
「!?」ビクンッ
「!?」ビビクンッ
(……間違いない、あいつ……なにしてくれやがったっての!?)チラッ
「も、もぐもぐ……」カァァッ
「むしゃ、むしゃ……」モジモジ
「」

「ふ、ふきゅぅっ……///」


~二年部屋(玄・灼・尭深・誠子)

「うん、うん……なるほど、練習量はやっぱり多い……えっ、これでも温いって怒られるの?」
「そう、弘世前部長はねー。かなり厳しかったから、やっぱり」
「だけど、おかげで団体戦は……二連覇、準優勝だから……」
「全体の底上げにもなるし、文句なんてあり得ないんだよね」
「そうか……ハルちゃんがいなくなったら、こっちは練習メニューと、相手も考えないといけな……ふぅ」
「あー、あのさ、ところで――」
「なに?」
「あの……あっちの、その……ドラゴンロードはどうすれば……」
「うふ、ふふっ……ふにゃぁぁ……」
「――無視しよう」
「ええっ!? いや、でも……」
「無視しよう」
「でも、さすがに……」
「無視しよう」
「……そういえばさっきのマッサージ、この部屋だったよね?」
「ひっふっ!?」
「……えっ、なに、そういうことなの? ねね、詳しく聞かせてよ!」
「べべ、別にっ、なにもないよ! 普通のマッサージだったし……」カァァッ
「うわー、ろっこつな反応ー」
「……冷静な灼さんがその反応、これは興味津々だね……詳しく聞こうかな」フフッ
「尭深、お茶淹れようよ。夜は長いからねー」
「そうだね。ついでに、玄さんも戻ってきてもらおうかな……素直にしゃべってくれそうだし」
「や、やめてっ、その子は放っておいて……」
「じゃあ灼がしゃべってくれるんだー。いいよ、聞かせて聞かせて」ワクワク
「う、うぅ……その、えっと……絶対、内緒にし……」
「わかってる、わかってるってー」
(……って言っても、残りの白糸台メンバーは知ってるはずだけど……)



~三年部屋(宥・照・菫)

「………………」ポー
「………………」カァァァッ
「………………」アッタカーイ
「…………えへへ……」
「…………もう、寝よう……あぁ、私はなんて……あぁぁぁ……」フトンガバッ
「…………あったか~い」
~11月第二週連休二日目、合宿二日目


~朝食準備

京太郎「おはようございます!」

板長「おう、京太郎……いや、若旦那! おはようございます!」

京太郎「……は?」

A「お前にそんな甲斐性があったとはな、見直したぞ」ポンッ

京太郎「へ?」

B「お嬢さんを泣かせたら、従業員一同が黙ってねぇからなぁ!」バシバシッ

京太郎「いてぇっす! いや、なんの話を――」

板長「いいってことよ、みなまで言うな!」

松実父「――おお、京太郎くん。やっと決心してくれたんだね、いやぁ、嬉しいことだ」

京太郎「」


京太郎「――なるほど、つまり夕べ俺が、宥先輩を部屋に連れ込んで……」

仲居1「ええ。あらぁ^~と思って、さりげなく待機してたら……」

京太郎(すでにさりげなくねぇよ! 一応、俺半分は客だからね!?)

仲居2「中から、そりゃあもう艶やかな声が聞こえるじゃないの」

仲居3「で、しばらくして出てきた宥お嬢さんが、もう……いわゆる事後って顔してるもんだからさぁ」

京太郎「……誓って言いますけど、マッサージしかしてません。宥先輩の名誉のためにも、それだけは信じてあげてください」

京太郎「仮にそういうことになったら、間違いなく旦那さんにご挨拶しますから。俺はそういうことを、誤魔化したりはしません」

旦那「……そうか……はぁ……」ガッカリ

京太郎(一人娘が無事だったってのに、なんでこんな落ち込んでんだ、このオッサンは……たまげたなぁ……)

板長「まぁなんにせよ、誤解だったってことだな。よく考えりゃ、奉公先の娘に京太郎が手ぇだすわきゃねえってもんよ」ウンウン

A「俺は信じてたぞ、京坊」ポンッ

B「板場の人間はみんなそうだぜ、なぁお前ら」

テリーマン「当たり前だぜ」

ブロッケンJr「京太郎にそんな度胸はないだろうしな」

ロビンマスク「まずは婚約をする、それが紳士の在り方というものだ」

ウォーズマン「コーホー」

京太郎(もう二度と、松実館ではマッサージしない……)

京太郎「……はい、これで終わりですね。じゃあ、麻雀部のほうの配膳に回りますんで……あぁ、鍋借りて行きますね、味噌汁用の」

板長「おいおい、なにをカリカリしてんだ、若だん――」

京太郎「…………」ジロッ

板長「は、はははは……いやー、悪かったなぁ、京太郎!」

B「まぁおめーがいい男だからよぉ、俺らもつい、な……わはははは!」

A「――そもそも、そういう誤解を招いたのも、お嬢さん方がよく家で、お前のことを話しているからだ」

仲居頭「そうよぉ? だからね、今回はお嬢さん方のに免じて……ね?」

京太郎「……そうですね。俺も、世話になってる身でいつまでも、狭量でした……すんません。今回のことは、水に流しましょう!」

板長「おっ、それでこそ京太郎だ! いよっ、大統領!」

A「総理大臣!」

京太郎「いやぁ、もういいですってば……」

B「若旦那ぁ! あっ……」

京太郎「…………じゃ、配膳行きますんで。お疲れさまでした」

B「い、いまのは違うぞ? おぉぉぉぉいっ、悪かったっての!」


~朝食配膳

京太郎「はぁ、ひどい職場だ……そろそろ転職するかなぁ」

京太郎「っと……そろそろみんなが起きてくるだろ、不機嫌な顔を戻しておかないと」パンパンッ


京太郎(大事な娘が無事だったっていうのに――以下略)



京太郎「――あれ、っていうか……昨日手伝ってくれた、玄先輩がいない……?」

京太郎「たしかに今日はお客さんだから、寝ててもいいんだけど……けど遅いな」

宥「あ、おはよう、京太郎くん」

京太郎「おはようございます、宥先輩」

宥「えっと、ゆ、夕べは、その……あ、ありがと、ね……」カァッ モジモジ

照「宥だけずるい。京ちゃん、私もありがとう、すごく……よ、よか――」

菫「お前黙ってろ、もう! や、やぁ、きょう――っ、や……やっぱり、無理っ……すまない!」

京太郎「あっ……行ってしまった。うーむ、嫌われたかなぁ……昼までには機嫌直してくれるといいんだけど」

照「菫は純情だなぁ」モグモグ

京太郎「朝からなに食べてんですか。いただきますはまだですよ」

照「朝のお茶に立ってた茶柱だよ」モグモグ

京太郎「ペッしなさい」

憧「ふぁ……っとと……おはよー、京太郎」

京太郎「お、一年ズも起きてきたか」

憧「あんたも一年でしょうが。まぁ、それよりもさぁ……あんた、昨日なにやったのよ///」ヒソッ

京太郎「はっ?」

憧「いや、あれ……」チラッ

京太郎「だからなんだよ」チラッ

淡「!? お、おは……あっ、て、テルー! おはよー!」ダッシュ

穏乃「!!!! きょきょ、京た――ううぅぅぅぅっ……ゆ、宥さーん!」ガバァッ

京太郎「」

憧「ふ、ふきゅぅぅっ……///」

京太郎「俺がなにしたっていうんだ……」シクシク

宥「まぁまぁ。朝ご飯食べれば元に戻るよ。大丈夫だいじょうぶ」ニコニコ

京太郎「だといいんですけど……」

照「それより、二年が遅い。京ちゃん、呼んできてあげて」モグモグ

京太郎「今度はなに食べてるんですか」

照「お漬物。つまみ食いしちゃった」テルテル

京太郎「ま、いいか……あんまりしちゃだめですよ」

照「うん」ポリポリ


京太郎「さて……二年の部屋に来たはいいけど、どうしようかな」

京太郎「おはようございます、須賀ですけど――みなさん起きてらっしゃいますかー?」

灼「きょっっ!? う、うんっ、平気っ……すぐ行くから!」

尭深「……ゆうべはおたのしみでしたね」

玄「はうぅぅぅっっ!! たた、尭深ちゃん、もう許してっ……」

誠子「あははははっ! あ、ごめんね須賀くん。ちょっと朝から散歩行ってて、戻ってきたとこなんだ。すぐ行くよ」

京太郎「そうなんですか。脚疲れてたらいつでも言ってください、マッサージしますので」

四人「!?!?!?」

誠子「あ――あ、あー、うん……ま、またの機会にね、その……か、覚悟ができたら///」

灼「……そ、そういうのは、派遣で受け入れてからにしたほうが……」

尭深「……お願いしようかなぁ」ボソッ

玄「早まっちゃだめですのだ! ここ、こんな日の高いうちにっ! せめて夜まで――」

灼「落ち着いて、玄」

京太郎「……じゃ、俺戻りますんで。早めにお願いしまーす」

京太郎(なにも聞いてない、俺はなにも聞いてない、なにも知らない、悪くない……よな?)


京太郎「食事中を終えると、なんとなく落ち着いたのか、みんなも普通に接してくれるようになった……まぁ、二人で話そうとすると大変だけど」

京太郎「俺のマッサージ、そんなに下手だったのかな……悪いことをした」

灼「――で、練習もそろそろ始まるけど、京太郎はどうするの?」

京太郎「灼先輩が女神に見える」

灼「ちょっっ! や、やめてっ、みんながいるのに、そんな……///」

京太郎「」



京太郎「さて、それじゃせっかくだし、麻雀打つとしようかな……いいかな?」

京太郎「お、あっちがちょうど一人抜けたみたいだ。入れてもらおう」

京太郎「入っていいで――あっ」

灼「あっ」カァッ

玄「いっ」モジモジ

菫「~~~~~っっっ///」カァァァッ

京太郎「……す、すいません、失礼しま――」

菫「ま、待ってくれ!」ガタッ

京太郎「いや、でも……」

菫「だ、大丈夫だからっ……というか、そもそも君はなにも悪くない、私たちは感謝してるくらいだから――な、なぁっ?」

玄「は、はい! そうだよ! 京太郎くんは、なにも気にしないでいいんだからね!」

灼「それは、間違いないから……うん、ごめん……ちょっと過剰反応だった。いいから、卓について」

京太郎「あ……ありがとうございますっっ」ブワァッ

菫「……まったく、いい男が泣くんじゃない」ハンカチ フキフキ

京太郎「い、いえっ、だって……みなさんに失礼なことをして、嫌われたんじゃないかって……」グスッグスッ

菫「よしよし、大丈夫だぞ……さぁ、打とうか」ニコッ

灼「…………」ジー

玄「…………」ジトー

菫「…………っ……///」


京太郎「よし、それじゃ今日は――」

京太郎「昨日も短く打ってやられましたから、その改善をしたいんです、いいですか?」

灼「なら、東風戦で……」

菫「ああ、よろしく」

玄「お願いします!」

玄(よーし、まだ完成じゃないけど……赤土先生に教えてもらったの、試してみよう)




菫「ロン、2000点だ」

京太郎「おわっ……はい」

菫「……いや、別に昨日のことが、というわけではないよ……ほ、本当だからな」

京太郎「? はぁ……」

菫「……な、なんでもない……すまないな、まだどうも、調子が……」カァァッ モジモジ

灼(恥ずかしがるなら言わなきゃいいのに……)

玄「あうぅ……だめだぁ、これは集中が持たない……」

ドラ「じゃあの」


京太郎最下位

京太郎「あーっ! だめか……最初のがちょうど……」

菫「上がっていれば二位にはなれたが……ふふ、それでは不服のようだな」

灼「当然、目指すはトップしかない……」

玄「京太郎くんは頑張り屋ですのだ!」

菫「でなければ雀士の意味はない、か。京太郎くん、その調子だぞ」ナデナデ

京太郎「精進します……」グヌヌッ

灼「さて、検討だけど……」

玄「んーと、誰が牌譜取ってくれてたかな……?」

菫「亦野か、どうだった」

誠子「先輩の大人げなさに驚いた感じです」

菫「ぐっ……だ、だから関係ないと――いや待て。なぜ知っている、というかどこまで知っている!?」

灼「…………」プイッ

玄「…………」バッ

灼「……内緒にって、言ったのに……っ」

菫「~~~~~~~~っっっっ///////」プルプルプルッッ

誠子「だ、大丈夫です! そこまで詳しくは聞いてません、ですから――え、えっと、すいませんでした!」バッ

菫「――絶対にこの話を話題にするな。それで水に流してやる」

誠子「りょ、了解です!」アセッ

京太郎「やっぱり体育会系ですね、白糸台は」

誠子「まぁね……ただ、淡みたいな例外もいるよ?」ハハッ

京太郎「あー、なるほど……けど、あいつはそこがいいですよね」

誠子「さすが、わかってるぅ♪」

玄「そ、それで誠子ちゃん? どうだったかなぁ」

誠子「んー、玄の新しい打ち方、興味深かったなぁ。ドラ切ってもドラ来てたよね」

菫「なるほど、それで狙いが定まらなかったのか……結果は、京太郎くんを的にしたわけだが」

灼「玄、頑張ってるね」

玄「でへへ……」

誠子「で、京太郎くんのラストも立派だったね。全員の狙いを避けつつ、さらに当たり牌をかき集めつつ、テンパイ目指して――」

京太郎「結果はあれでしたけどね」

誠子「その姿勢があれば、次は上がりまで、逆転まで持っていけるよ」

誠子「灼も最後の気迫、凄かったよね。まるで――赤土晴絵が小鍛治健夜から上がった、あの試合みたいだった」

灼「私の、目標だからね」

誠子「トップはさすが、SSSって感じですね。以上です」

菫「雑にまとめるな……まぁ、仮にも先代部長として、後輩に遅れは取れないだろう」

京太郎「お見事でした」

菫「あ……あり、がとう……///」

~昼食

京太郎「さて、そろそろお昼ですけど――」コトン

憧「――とかいいつつクッキー置かないの!」

淡「ならアコの分までいっただき~♪」サクサクッ

穏乃「じゃあ私も、憧の分も~らいっ♪」サクサクサクッ

照「じゃあ私も――いや、私は憧にあげる、はい」

憧「あ、ありがとうございますっ///」サクッ

菫「なん……だと……」

宥「ふふ、照ちゃんもお姉ちゃんだよね~」

誠子「黒ゴマクッキーかぁ、おいしっ」

尭深「そして紅茶も緑茶もだしてくる、この隙のなさ……うん、おいしいです」ホワァ

玄「それで、お昼の話題は?」

灼「お手伝いは、京太郎のご指名だけど……?」

京太郎「そうですね――」

京太郎「じゃあ、菫さん、それと宥先輩、お願いできますか?」

宥「え、わ、私~?」

玄「お、お姉ちゃんがやるなら私が――」

京太郎「だめです。玄先輩は昨日手伝ってくれましたから」

京太郎「宥先輩も、やらないと覚えませんからね……いい機会だと思ったんです。だめですか?」

宥「――う、ううん! そうだよねっ、いつまでも玄ちゃんに甘えていられないし……頑張ります!」

京太郎「はい、ありがとうございます――えっと、それで……」

菫「――――」

照「………………」ツンツン

菫「――はっ……あ、ああ! 大丈夫だ、任せてもらおう」

京太郎(……大丈夫かな)

京太郎「あの、すみません……でも、その……も、もう少し、自然に話せたらって思いまして……」

菫「……すまないな、気を遣わせて」ハァ

京太郎「だ、大丈夫です、可愛いですから!」

菫「!?」

ほかの面々「!?」

京太郎「あっ……あー、いや、ほら! じ、事実ですし!」

菫「~~~~~~~っっ、も、もういい! 先に板場へ行っている!」

京太郎「……あわわわわ」

誠子「……あれ、わざと?」

憧「残念ながら天然です」

宥「あったか~い」ホワンッ

~昼食作り

京太郎「……二人とも、包丁慣れてますね」

宥「そ、そうかなぁ?」シュルシュル

菫「まぁ……これでも料理は好きなほうだ。弁当も自分で作ることが多いしな」スルスル トントントン

京太郎「なら、メインの串は俺が焼きますので、宥先輩はこれ……」

宥「ふふっ、昨日のカレーの食材余りだね。なら、和食みたいだし……肉じゃがでもしようか。肉控えめで」

京太郎「そうですね、串が鶏肉なので……で、菫さんはお味噌汁と、あと和え物をお願いします」

菫「山菜か、あまり馴染みはないが……少し、フォローしてくれるかな。下拵えまででいい」

京太郎「はい。味噌汁のほうの具はお任せします」

菫「ならコレと、あとコレを……あ、二つ使って構わないか?」

宥「そういえば、味噌汁の具は一つってこだわる人も多いよね」

京太郎「俺は具沢山のほうが好きですし、菫さんのお気に召すやり方でお願いできましたら」

菫「わかった。ではかかろうかな」

菫「しかし宥、本当に妹に頼りっきりなのか? 手際はとてもいいように思う」

宥「ま、まぁ……昔から、色々と教わっていたから……でも、玄ちゃん優しいから、つい甘えちゃって」

京太郎「玄先輩が面倒見いいから、甘えちゃうんですよね。実際、動いてないと落ち着かないみたいですし」

菫「面白い姉妹だな、あちらもそうだが……」

京太郎「色々ありましたけどね。まぁ咲はずっと姉好きだった反動か、いまは反発もあるみたいです」

宥「それは仲がいいからこそだよ、姉妹だもんね」

菫「私は一人っ子だからな、その辺りの感覚はわかりにくい……」

京太郎「それにしては、下の子の面倒見がいいですよね」

菫「あれも厳しくして、反発を押さえつけているだけだ……それ以外のやり方を知らなくてな」フゥ

宥「大丈夫、あの三人は菫ちゃんのこと、とっても慕ってると思うよ」

菫「なら、いいんだがな……さて、そろそろ完成だ」

宥「私も~」

京太郎「俺もです。うん、ご飯も炊けてますし……さて、盛りつけたら運びましょうか。お膳持ってきますね」

宥「お願いね~」

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最終更新:2026年01月15日 23:22