憧「…………やっぱり、さ」
京太郎「ん?」
憧「そうなったら、あたしが夜明かし付き合ってあげるわよ。ロビーとかでさ、ずっとしゃべってればいいんじゃない?」
憧「――む、無理にとは、言わないけどさ……」
京太郎「――いや、それもいいよな。教師と相部屋にされかけたら、よろしく頼むわ」
憧「ん、りょーかい。まっかせなさい♪」
憧「ん、ここでいいわよ。ありがとね――って」
京太郎「お、どうした?」
憧「!? い、いつの間に、こ、ここっ……もう家の前じゃない!」
京太郎「あー、まぁな。いや、もう夜も遅いし、お前の家だけ遠いしさ……一人は危ないだろ?」
憧「なっ、ばっ……い、いっつも一人だし、平気よ!」
??「おー? 憧ー、どうしたの、なに騒いでんのー?」
憧「――っっっ!! やっば……ちょっ、京太郎、あの、ありがとう! じゃあバイバイ!」
京太郎「ええええ……いや、まぁ帰るけどさ。そこはほれ、上がってお茶でもー、って場面じゃねーのか?」
憧「そ、そういう状況じゃないの、いまは! とにかく見つからないうちに――」
??「残念、見つけてしまった! ほー、君が噂の高校生執事、須賀京太郎少年かぁ」フムフム
憧「」
京太郎「どちらさまで――あ、もしかして……」
望「あ、誰かに聞いたのかな? なら自己紹介。憧の姉の、新子望、この神社の跡取り予定です、どうぞよろしく」
京太郎「憧さんにはいつもお世話になっています、須賀京太郎と申します。よろしくお願いします」
望「あらー、礼儀正しいわね。いまどきの高校生なのに、感心かんしん」ウンウン
望「よぉーし、
お姉ちゃんあなた気に入っちゃったから、お茶ご馳走しちゃうぞー」
望「いや、それよりご飯のほうがいいか! ねっ、夕飯作るの、手伝ってってよ!」
京太郎「えっと……よろしいんですか? その、俺の方はお願いしたいくらいですけど……」
憧「!?」
望「えっ、マジで!? なになに、憧と一緒にご飯食べたいの、そんなに?」
憧「~~~~っっ!?」
京太郎「いえ、そうではなく――あ、いえ、憧と食べたくないわけじゃないんですけど」
憧「」
京太郎「以前、友人がこちらでご迷惑をおかけした折、庇っていただいたと聞きまして――」
京太郎「お礼ができれば、と常々考えておりましたから」
京太郎「春のこと、あいrがとうございました。本当に。よければ夕食、手伝わせていただけませんか?」
望「ふぅ~む、なるほど……あの永水の子かぁ……たしかに?」チラッ
憧「ちょっと!」バッ
望「うちのも結構育ってるんだけどねぇ、さすがにあそこまではまだねぇ……まぁでも、これからよ?」
京太郎「はぁ……?」
憧「やめてってば、お姉ちゃん!」
望「さて、それじゃ……どうする、憧?」
憧「ど、どうって……」
望「お夕飯、手伝ってもらうかどうか、あんたが決めなさい」
憧「」
憧「~~~~~~~~~っっっ//////////」
憧「わ、悪いんだけど、その……やっぱり、それは……」
憧「お父さんもお母さんも、いるん……でしょ?」チラッ
望「んー、まぁねぇ。けど、二人とも気にしないと思うわよ。いや、お父さんは気にするかぁ」アハハッ
京太郎「あぁ、そりゃそうか……ま、この時間におしかけて台所借りるのもなんだしな」
京太郎「というわけで、すみませんが、今日はこれで失礼します」
望「あら残念。じゃあまたの機会にね」
京太郎「はい。えっと……春のことですけど、こちらの神主様にも、お礼を伝えておいてください」
望「はい、お任せください。でもさぁ……京太郎くん、随分と入れ込んでるわね、永水の滝見さんに」クククッ
京太郎「それは、まぁ……」
憧「っっ……」
京太郎「派遣の最初の学校で、戸惑うことばっかりだったけど……」
京太郎「同じ一年に、麻雀部のあいつがいたから助かったってのもあるんで」
京太郎「そういう意味では、いま俺がこうしてるのも、あいつのおかげかもしれません」
京太郎「だから、まぁ……思い入れは、それなりにありますね。やっぱり」
望「なるほどね……あくまで友人として、同級生として、大切ってことかしら?」
京太郎「ええ、もちろん」
望「そういうことらしいけど?」
憧「……別に、私はなにも……」
望「はぁ……もっと素直にならないと、色々困るわよー?」
憧「ほっといてよ、もう!」タタッ
望「あーあ、行っちゃった……あっ、戻ってきた」
京太郎「なにやってんだお前、忙しいやつだな」
憧「あ、あのっ……送ってくれて、ありがとう! それだけだから!」タタッ
京太郎「――おう、また明日な」
望「ふーん……ふふっ、いい感じじゃない。それじゃ京太郎少年、またいつでも来てちょうだい」
京太郎「はい、失礼します」
~金曜、夜行動
京太郎「あ、そういえば――永水一年、麻雀部……」
京太郎「モブ子もそうだったな。宮守と阿知賀では違ったから、忘れてたぜ」
京太郎「まぁいいんだけどな、同じ相手かもわからんし」
京太郎「よし、メールするかぁ! あれだと何人かに送れるし……」
京太郎「まぁ、まずは誰か、長く付き合ってくれそうな相手だけど……」
京太郎「面倒がるから、シロ先輩意外だな」
京太郎「霞先輩……」ゴクリ
京太郎「い……いやいやいや! もうあれだ、俺はやましいことは考えない!」
京太郎「そうだ、せっかく望さんにも会ったし、小蒔先輩のこともあるし、色々聞いておこう」
『新子様の望さんにお会いしたそうね、先ほどご連絡をいただいたわ』
『わざわざ春ちゃんのことを気にかけてくれてありがとう、それに――』
『小蒔ちゃんの春日様へのお供もありがとうね』
『おかげで、京太郎くんを繋がりに、横の関係も広がりを持ちそうよ』
『なにかお礼ができればいいのだけど……』
京太郎「前の写真は……なんていうか、その……上目遣いでエロかったから(直球」
京太郎「できれば笑顔の写真を、送ってください……と」
『……ふふっ、少し意外だったわね。でも、とても嬉しいわ』
『その、私……写真映りがあまりよくないのだけれど、これで……』
『どうかしら?』
(はにかんだ笑顔、頬は赤らんで、瞳は困ったように潤んでる)
京太郎「」
京太郎「最高です、家宝にします」
『ふふ、大袈裟よ。だけど気に入ってくれたのなら、よかったわ』
『……一応言っておくけど、悪用はしないでね?』
『これはあなたのために撮って、送ったのだから……』
『誰かに見せたりはしないで。その、こ……』
『個人的に、なら……どう使っても、へ、平気だからっ……』
『それじゃあ、おやすみなさい』
京太郎「」
京太郎「…………」
京太郎「………………ふぅ」
霞「……私、疲れてるのかしら……あぁっ、もうっ……な、なんて、変なことをっ//////」
京太郎「さて、あとは近況メールを何人かに――」
京太郎「随分増えたよなぁ、登録相手も」
京太郎「近況メールも、5人くらいに送らないと間に合わないぞ☆」
京太郎「――だめだな、疲れてるのかな」
京太郎「よーっす、タコス娘。言っとくけどタコスレストランは開かねえ。あれはお前用のタコスだからな、と」
京太郎「誕生日以来、お変わりはないですか? 最近は大荷物を抱えると、部長のことを思いだします」
京太郎「……さすがにそれはひどいな。寒くなりますから、風邪とか引かないようにしてください、と」
京太郎「そろそろテストだぞ? 勉強の準備はしておくように。わかんないとこあれば、いつでも聞けよ」
京太郎「ご無沙汰しています。勉強にお邪魔にならないよう、控えていたのですが――」
京太郎「あまり根を詰めず、適度に息抜きをしてください。なにかあれば、いつでも質問くださいね」
京太郎「新子神社、俺も挨拶しといたぞ。そこでお前のこと聞かれたよ。すごく思い入れがあるって答えちまった、悪いな」
京太郎「よし、こんなもんか」
~金曜終了
【11月第三週金曜、近況メール後】
~清澄
「………………///////////」
「どうしたんですか、優希? 携帯を見つめたまま……」
「!? なっっ、なんでもないじぇ! べべべ、別に、なんっ、なんでもっっ……」カァァァッ
「あらー、もしかしてたらされちゃったのかしら?」
「た、たらされてねーじぇ! だ、誰が京太郎なんかに――」
「なに、京ちゃんからメールだったの?」
「ぁ――」
「ふふ、よかったですね、優希」
「あ、う……うぅぅぅぅっ……」
「真っ赤になっちゃって、かーわーいーいー」
「あんたは後輩をいじめとるんじゃないわい」ベシッ
「えー、だって私のメール、そんなときめく内容じゃないんだもーん」
「身体を気遣ってくれとるじゃろ、それで十分ちゅうもんじゃけえ」
「もー、まこは乙女心が足りないわねー」
~白糸台
「あわぁぁぁっっ……テルー! キョータローがいじめる!」
「そんなことするわけない。淡が悪いんでしょ」
「照、決めつけることはないだろう。淡、なにを言われた?」
「キョータローがメールでさぁ! 勉強しなさいって!」
「京太郎くんが正しかったですね」
「さすが宮永先輩、よくわかってる……」
「すまんな照、京太郎くん絡みでは、お前を疑う必要はなかった」
「わかればいいよ」フフン
「なんでよー、もー! キョータローのバカー!」
~宮守
「……えへっ……へへへ、だよねー、そうだよねー……あ、もしもし胡桃? うん、週末のー。やっぱり行くわね、そうそうこの前見たあの店――」
「そっか、なら商店街で、お昼に――」
(……この変わり様、京太郎くんからメールかな? グッジョブだよ!)
~永水
「~~~~~~~~っっっ///////////」ゴロゴロゴロゴロ……ゴンッ
「あうっ……はっ、ふぅ……うぅ……」アタマサスサス
「どうしたのかしら、はるる……」
「あの子のあの反応なんて、京太郎絡みしかありませんよー」
「はぁ……本当に、私ったら……でも、喜んでくれたんだし……はぁぁ……////」
「あの、霞ちゃんまで……」
「私たちは……」
「ああはなりたくありませんし、いいんじゃないですかー?」
~11月第三週土曜
京太郎「土日は入るって決めてるからな、うん……よし行くか!」
~板場
京太郎「はよーっざいます!」
板長「おお、気合入ってんな! さっそく始めんぞ、時間が惜しい!」
三人『よろしくお願いします!』
テリー「うっ……リングシューズの紐がっ……」
京太郎「テリーマンさん、包丁落とさないでください」
京太郎「うん、オッケー……味見お願いします!」
A「……腕を上げたな。よし、盛りつけていいぞ」
B「焼き物これで終わりです!」
板長「っしゃ、配膳任せたぞ!」
~賄い
京太郎「いい感じにできたぞ、こっちも……」
玄「おはよー。ごめんね、板場に顔だす余裕もなくって……」
京太郎「おはようございます、玄先輩。どうぞ、賄いできてますよ」
玄「ありがとう。あ、お姉ちゃん呼んでこないと」
京太郎「なら俺が呼んできますよ。玄先輩はお疲れなんですから、ゆっくりと召し上がっててください」
玄「そう? じゃあ、お願いしようかなぁ……あ、私たちのお部屋はわかるよね?」
京太郎「はい。それでは」
松実父「ついに二人のプライベートルームまで把握……これはもう秒読み段階ですね」
玄「お父さん?」
松実父「……ハイ」
玄「冷めちゃう前に食べようよ、ね?」
松実父「はい」ホッ
~宥玄の部屋
京太郎「失礼しまーす。宥先輩、朝ですよー」
宥「うぅ~ん、玄ちゃん、あと5分……」
京太郎「寝ぼけないでくださいーい。失礼しますね」スッ
宥「むにゃ……うぅん……お布団、あったかいよぉ……」
京太郎「おおう、湯たんぽが3つも……宥先輩、起きて――」
宥「!!!! あったかいの、捕まえた!」ガバッ
京太郎「ぇ――」
宥「ふわぁぁぁ……ん~……むにゃむにゃ」スリスリ
京太郎(あ、ありのままに、いま起こったことを言うぜっ……)
京太郎(宥先輩を起こそうとしたが、逆に抱きつかれ、布団に引き込まれてしまった……)
京太郎(なにを言ってるかわからねーと思うが、俺もなにをされたのか――あ、わかってたわ)
京太郎「宥、先輩……あの……」
宥「ん……あ、れ……京太郎くんの、声……?」ボー
京太郎「お、おはよう……ございます」ジー
宥「…………」ギュー
京太郎「…………」ジー
宥「……っ……っっっ!?!? えっ、きょ、きょうたろっ……な、なにっ……なに、したっけっ!?」
京太郎「してませんから! 落ち着いてください!」
宥「だ、だめだよっ、いけないんだよ! そそそ、そういうことは、あのっ……け、結婚してからだから!」
京太郎「わかってますから落ち着いてええええええっっっ、誤解っ、誤解されますからぁぁぁぁっっ!」
~昼、移動なし、昼食後部活
京太郎「ふぅ……ごちそうさまでした」
穏乃「ごちそうさまでした! うん、やっぱりおいしいよね、旅館のご飯は!」
玄「ふっふっふっ、これは旅館のではなく、賄いなのです……それも、京太郎くんのお手製!」ババーン
憧「……ほんっと、これじゃ……いくら練習してもさぁ……」
灼「今度は洋食がいいんだけど。賄だと難しい?」
京太郎「洋風な和食、ならいけるんですけど……まぁ、板場に行かない日にでも、ご用意しますよ」
宥「うふふ、京太郎くんはなんでも作れるねぇ……私も、教えてもらっていいかなぁ?」
京太郎「もちろんで――ぇ」
玄「お、お姉ちゃんが……自ら!?」
憧「ど、どうしちゃったの、宥姉! どこか具合悪いの!?」
穏乃「体調悪いなら、無理せず休んだほうが――」
灼「ハルちゃんに送ってもらって――」
宥「……あったかいのに、あったかくない……」ブルブル
――このあと滅茶苦茶謝って、許してもらいました
京太郎「宥さんがやる気を見せてくれた、俺らも続かないとな!」
穏乃「お、おーっっ!」
灼「だね、元気だして行こう!」
憧「声だして行くわよ、打つわよ!」
玄「お、お姉ちゃんに負けるな、ですのだ!」
宥「……む、無理しなくていいからね?」フルフル
京太郎「さて、みんなが気合入ってるんだ。俺も気合入れて準備しないとな――」
京太郎「お茶の時間までは、3時間もない……さぁ――」
京太郎「ショータイムだ!」
京太郎「……よし、冷めたな、あとは切って、並べて、クリームをーっと」
京太郎「で、周りにもこう……あとは、チョコと、フルーツで……」
京太郎「ふんふんふ~ん♪」
京太郎「――よし、完成だ」
京太郎「お待たせしましたー、お茶のご用意が整いましたよー」
灼「ん……もうそんなじか――」
玄「ついつい熱中してしまったので――」
穏乃「今日のお菓子は――」
憧「ん~、疲れたときは、甘い物よ――ね」
宥「……おいしそう」ポワァ
京太郎「はい、ホールでケーキをご用意しました」
京太郎「こちらが定番のイチゴショート、こちらはカスタードとチョコですね」
京太郎「切り分けますので、どちらでもお好きな方を――」
穏乃「りょ、両方って、いいの……?」ダバー
京太郎「もちろんです。では両方、お取りしますね」
京太郎「お茶もいつでもおだしできるよう、準備万端です」
京太郎「ごゆっくり、お召し上がりください」
憧「」
玄「」
灼「」
宥「お茶おいし~い」ホッ
京太郎「動いてない人もいる……どうしよう」
京太郎「――さま、お嬢さま……憧お嬢さま」ユサユサ
憧「……はっ!? って誰がお嬢さまよっ、正気に戻りなさい!」
京太郎「いてぇ! いや、いいからどっち食うか選べってば。ほい」
憧「……部活の休憩のお茶菓子に、まさかホールでケーキ出てくるとか思わないじゃない」
京太郎「ああ、それでみんな驚いてたのか」
憧「ケーキにっていうより、あんたとあんたの行動にね」
京太郎「そういうもんか……まぁそれよりさ。どっちにする?」
憧「……え、と……その……ど、どっちがオススメ、かな?」チラッ
京太郎「難しいな……定番のほうは、イチゴの酸味に合わせたクリームで、生地もそれなりに甘くしてるし――」
京太郎「逆にチョコとカスタードの層があるほうは、フルーツの種類も多くて、色々な味を――」
憧「あ、あんたねぇっ……わざと言ってるでしょ!」
京太郎「わざと?」キョトン
憧「だ、だからさぁ! どっちも……お、おいしそう、なのにさぁ……その、どっちもは食べられないじゃない……」
京太郎「お腹いっぱいなのか?」
憧「……いや、それは……空腹、気味だけど……」
京太郎「甘いものは?」
憧「うぐっ……だ、大好き、です……」カァッ
京太郎「ならいいじゃん、どっちも食えるだろ――」
京太郎「余ったら残しとけばいいよ。俺が責任もって食うからな」ポンポン
憧「ん……まぁ、それなら――」
憧「――は?」
京太郎「いや、俺がちゃんと食うからって……だめか?」
憧「!?!? えっ、や……だ、だめって、いうかっ……そ、れは、だって……ねぇ?」
京太郎「うん?」
憧「~~~~~っっっ///// そ、その、あたしの、食べかけってことは……く、口つけた、フォークがぁ……」
憧「け、ケーキに、ついて……それを、ほら……京太郎が、た……食べ、たらさぁ……」モジモジ
京太郎(なんかブツブツ言ってるけど、いまのうちに分けてしまおう……このくらいでいいかな、小さ目で)
憧「か、かかかか、関節、わざ……って、いうか、それっぽい、なにか……に……」カァァッ
京太郎「――はい、どうぞ。ブツブツ言ってないで、おいしいうちに食べてくれ」スッ
京太郎「お茶のお代わりもな。自信作だ、食べてみれくれよ」ニッ
憧「……はぁ、もう……はいはい、いただきます」パクッ
憧「……お、おいひ……おいひぃ……」トローン
京太郎「ちょっ!? お前っ、いま放送できない顔してんぞ!」
憧「だ、だって……こんな、おいしいのぉ……食べたことないもんっ……」アムッ
京太郎「……まぁ、気に入ってくれたのは嬉しい。けど、口元と顔には気ぃ遣えよ?」フキフキ
京太郎「よし、綺麗になった。いや、元々か」
憧「ふきゅぅっ!?」
京太郎「――結果として、ホール二つは綺麗に、6人の胃袋に収まりましたとさ」
京太郎「――って、いつまで休憩してるんですか! もう二時間くらい休んでますよ!」
灼「誰のせいだと思って……」
宥「お腹いっぱ~い」
玄「ふぅ、もうしばらく甘いものはいりませんのだ」ポンポン
憧「玄、はしたないわよ」
穏乃「京太郎、とってもおいしかった! ありがとね!」ニコー
京太郎「そっか? ならいいんだけど――」
京太郎「――じゃねえよ! そろそろ練習しましょうよ!」
晴絵「お待たせ! いやー、会議長引いちゃってさぁ……あら、おいしそうな匂い」クンクン
晴絵「ね、ね、私のは?」
京太郎「あっ」
五人「あっ」
晴絵「…………須賀くん」
京太郎「ハイ」
晴絵「緑茶、すげー渋いのお願い。あとは順番に、卓につきなさい」
五人「」カタカタ
晴絵「休憩は十分よね? そろそろ練習、始めよっか」ニコー
京太郎「……まずいな……」
晴絵「はい、ローン。倍満ねー。さて、最下位は……憧かぁ。じゃあ残りでほかは入れ替わってー」
憧「」
灼「ぬ、抜けられた……」ゼーゼー
玄「うう……もういやなのです……」フラフラ
宥「あったかくない……」
穏乃「よろしくお願いします!」ゴッ
京太郎「――あいつ一人、元気だなぁ……ま、そろそろ止めるかな」
京太郎「赤土先生、失礼します」スッ
晴絵「なーにーよー、いま忙しいの、わた――」
京太郎「どうぞ。先生のために用意していました、レアチーズタルトです。温かい紅茶も入れ直しました。どうぞ、お召し上がりください」
晴絵「……私に?」
京太郎「はい」(ついさっき用意したんだけど)
晴絵「そ……そっかー、じゃあちょっと休憩にしよっかー。あ、憧も疲れたでしょ、お疲れー」
憧「」フラフラ
京太郎「それで、ですね……その、俺もそろそろ、打ちたいなーって……」
晴絵「んー。なら指導にしよっか。どうする、またプロ呼ぶ?」
京太郎「えーっと、ですね……ほら、みんな疲れてるじゃないですか、集中しましたし」
晴絵「まぁ、そうだね……私もちょっと疲れたし」モミュモミュ オイヒー
京太郎「で、先ほど指導の先生を呼んでおきました。先日から、こちらのほうにいらしたみたいなので、もう来られるかと――」
京太郎「あ、電話が……到着されたようなので、お連れしますね」
晴絵「はーい、よろしくー……誰だろ、また戒能プロかな?」
京太郎「本日の講師をお願いしておりました、瑞原はやりプロです」
はやり「仕事が終わったところで、ちょうどよかったんだ☆ よろしくね、阿知賀女子のみんな☆」
憧「」
灼「あ、はい、どうも……」
玄「よろしくお願いします……」
宥「いらっしゃいませ……」フルフル
穏乃「うはぁっ、牌のお姉さんだ! よろしくお願いします!」
はやり「……なんだか元気がないのは、はやりのせいなのかなぁ……?」ウルウル(演技)
京太郎「いえ、うちの顧問が無茶な指導を繰り返しまして……あちらでケーキをパクついてるのが、その顧問です」
晴絵「ごほっ……なんつータイミングで振るのよ! っと……失礼しました、阿知賀女子顧問の赤土晴絵です」
はやり「戒能プロから話は聞いてます。どうぞよろしくおねがいしますね」
京太郎(!? はやりさんが、プロっぽい……だと……)
はやり「んー、ならそうだなぁ……元気が余ってる、高鴨さんと、京太郎くんに指導していこうかな。ほかの皆さんは、少し休んでてくださいね☆」
穏乃「いやったーっっ! ありがとうございます!」
京太郎「はい、よろしくお願いします!」
はやり「はーい、ロンだぞ☆」
穏乃「うふぅっ! あ、ありがとうございましたぁ……」
京太郎「さすが……絶好調穏乃でも、まるで歯が立たない……」
はやり「ううん、高鴨さんもとっても強いなって思うよ。これからも頑張ってね☆」
穏乃「はい! ありがとうございます!」
はやり「京太郎くんは、はやりの教えたことをしっかり守ってくれてて、とっても嬉しいなぁ~☆」
はやり「そのあたりも踏まえながら、検討していきますね☆」
二人「よろしくお願いします!」
~部活終了、放課後
はやり「それじゃ、今日はありがとうございました。これで失礼します」ペッコリン
晴絵「いえ、こちらこそありがとうございました。また機会がありましたら、よろしくお願いします」
一同『ありがとうございました!』
京太郎「ぁ――あの、えーっと……灼先輩、ちょっといいですか?」
灼「どしたの?」
京太郎「いえ、ちょっと用事がありまして……片づけできないんですけど、先に帰っていいですか?」
灼「…………だめ」
京太郎「で、ですよね……」
灼「――なわけないでしょ、バカ。京太郎がこれまでしてくれたこと考えたら、勝手に帰ってもいいくらいだからね」
京太郎「えっ、い、いや、そこまでは……」
灼「ふふっ、どうかな? まぁとにかく、今日は帰っていいよ。お疲れさま」
京太郎「はい……ありがとうございます、お疲れさまでした」
京太郎「っっ……いたっ……はやりさんっっ、ちょっとストップ!」
はやり「えっ? きょ、京太郎くんっ? どうしたのかなぁっ☆」
京太郎「いえ、その……言ってたじゃないですか、約束――」
京太郎「次にお会いできたら、一緒に食事をするって……」
はやり「――――」
京太郎「あー……すいません、その……もしかして、社交辞令とかそういうので――」
はやり「ちっ――違う! 違うよっ、本気だったから! ただ……お、覚えててくれたって、思わなくって……」グスッ
はやり「も、もう! 大人を泣かせるなんて、京太郎くんは悪い子だね☆」
京太郎「はは、すみません……それで、どうしましょうか」
はやり「二人っきりはまずいって、言ってたもんね……ちょっと待って、近くにいる子に声かけるから」
はやり「あ、これはやりの車のキーだよ☆ 乗って待っててね!」
京太郎(車で移動、それから合流して食事会――ってとこかな?)
京太郎「……なんか俺、場違いじゃないですか? っていうかこの店、すげー高そうなんですけど……」
はやり「まぁまぁ、子供が細かいこと気にしなくていいよ! 初めて会ったときのお礼も兼ねてるから、気にしないでね☆」
京太郎「あれは――いえ、恐縮です。ありがとうございます」
はやり「はーい、というわけで、このコが例の高校生執事、須賀京太郎くんでーす!」
健夜「ひ、久しぶりだね、京太郎くん!」
京太郎「ご無沙汰してます、健夜さん。えと、ケーキのことはまたの機会で……」
健夜「あ、覚えててくれたんだね、ありがとう」
良子「連日お会いしますね、京太郎。喜ばしいことです」
京太郎「良子さん……あの、いまさらなんですが、俺が良子さんと知り合いだって、三人に言ってしまったのって……大丈夫でしたか?」
良子「ノープロブレム、問題ありません。色々と聞かれはしましたが、黙っているよりは遥かにマシだったはずです……たぶん、おそらく……メイビー……」
理沙「歓喜!」
京太郎「理沙さんも、お久しぶりです。地元が福岡だと伺いましたので、さすがにそれをお呼び立てはできないかと……今日はお会いできて、嬉しいです」ニコッ
理沙「わ、私も!」カァッ
はやり「で、こっちは初対面だよね? 佐久の藤田靖子ちゃんと、横浜の三尋木咏ちゃんでーす☆」
靖子「なるほど、スキャンダル防止の役割ですか……やあ、はじめまして。久から話は聞いたことがある、よろしく頼むよ」
咏「おーおー、本当に執事服なんだねー、知らんけど。三尋木咏、日本代表の先鋒もやってるよーん、よろしくねい」ヒラヒラ
京太郎「部長から何度か、まくりの女王という異名とお名前は伺っています。あと染谷先輩からも。よろしくお願いします」
京太郎「三尋木プロも、色々なメディアでお見かけしますし、よく部員の話題にも上がっていました。どうぞ、お見知り置きください」
靖子「ああ、よろしく。どんなガキかと思ったけど……案外普通というか、むしろ礼儀正しくて、言葉遣いも丁寧だね。久が自慢するのもわかるよ」クスッ
京太郎「そ、そうですか? ありがとうございます」ペコッ
靖子「そう畏まらなくてもいいよ。それでなくても、原村や宮永よりは、よほど礼儀正しい、挨拶もしっかりできていてね。もちろん、久よりもさ」
靖子「ときに――君は料理が得意なようだね。カツ丼は作れるかい?」
京太郎「――藤田プロの好物、ですよね。染谷先輩から何度か。お口に合うかはわかりませんが、機会があれば召し上がっていただきたいと思います」
靖子「ああ、楽しみにしてるよ――おい、咏。さっきからどうした?」
咏「――ぇ? あ、ああ、いや別に、なんでもねーし、知らんし」
京太郎「大丈夫ですか? 少し顔が赤いようですが……」スッ
咏「うひぃっっ!? やっ、ちょっ……ち、近く、ないかい? いや、し、知らんけどぉ……」カァァッ
五人(……あっ)
京太郎「風邪、ではないみたいですけど……なにかあったら遠慮なく言ってくださいね」
咏「う、うん……いや、悪いね……」
咏「はぁー……えー、マジかぁ……これ、写真より数段……先輩方が入れ込むワケだねい……まったく」
京太郎「――えっ、それじゃ皆さん、赤土先生とお知り合いだったんですか!?」
靖子「私は違うけどね、あと咏も。なぁ?」
咏「へっ? あ、ああ、はい、そう……まだ会ったことないかなー、知らんけど」フリフリ
靖子「……お前ももういい年だろ。男子高校生相手にしたくらいで、そうおたつくな」ヒソヒソ
咏「!? べ、べべ、別におたっ、おたたっ、ついてねーってのに……」ヒソッ
京太郎「? えーっと、この前のインハイでってことですか?」
良子「いえー、その以前から……ですね。まぁ部室では、お互い大人ですし、教え子の前でプライベートを晒させるのも可哀想でしょう」クスクス
京太郎(えー、レジェンドでも……いや、まぁ……そう、かな? もうそれでいいか)
はやり「ふふっ、私と
すこやん、それに理沙ちゃんとはるえちゃんは、インハイで会ってるんだよ~☆」
京太郎「……つまり、10年前ってこと……ですよね?」
健夜「うう、すぐにそう言ってくれて嬉しいよぉ……ありがと、ほんとにいい子だね」ナデナデ
京太郎「ああ、福与アナ……」
健夜「そうなの、こーこちゃんってばさぁ!」
理沙「あとで!」
はやり「そうそう、仕事の愚痴は別にしよ~☆」
良子「すごい試合でしたよ、あれは……見たのは小学生の頃でした。いまでも覚えていますよ」
京太郎「へえ、いいですね……そういう、短い出会いだったのに、10年後も付き合っていられる関係っていうのは」
理沙「誰でも!」
京太郎「あー、たしかに……夏の大会で会っただけで、合宿して……阿知賀と白糸台なんて、かなり仲良いですからね、いま」
健夜「それだけ、いい試合だったっていうこともあるんだろうなぁ……」
理沙(……はるえちゃんはとんでもないトラウマ抱えたけどね)
はやり(それだけ強烈な印象、ってことかな☆)
靖子「きっかけはなんであれ、強く結びつけば、長い付き合いにもなるさ。夫婦だってそういうものだと、私は思うが?」
京太郎「なるほど……さすが大人の女性の言葉ですね、勉強になります」
靖子「……まぁ、一般論だよ。私もさほど、経験があるわけではない」
京太郎「け、けいっ……」カァッ
良子「藤田プロ、思春期の男子を前に、そういう言葉はいかがなものかと」
靖子「良子っ! そ、そういう意味じゃなくてだなぁっ……あぁっ、もう!」カァッ
健夜「と……ところで、京太郎くんは……そ、そういう相手はいるのかなぁ~?」
はやり(ナイスだぞっ、すこやん☆)
理沙「興味津々!」
京太郎「えー、俺のことなんて聞いてもつまらないですよ……咏さんも、そんなの興味ないですよね?」
咏「い、いや、あるし! すげーあるし!」ガタッ
京太郎「えっ」
咏「あっ……や、ま、まぁ? 酒席の、肴にはいいかな~って。ほれ~、話してみろって、京太郎~」
京太郎「――って言われましてもねえ、いまは特に……」
京太郎「恋人とかいるわけもないですし――まぁ、強いていうなら、気になる人がいるくらいですね」
靖子「ほう」
良子「春ですかね」
残り『――っっっ!!!』
咏「……ほーん、そっかい……んで、どんなやつよ」グビグビ
京太郎「――咏さん」
咏「!?」
靖子「ほう」
残り『!?!?!?』
京太郎「お酒は強いほうなんですか?」
咏「ふぇっ? え、やっ……まぁ、うん……酔いつぶれたり、記憶飛んだりってことは、ないかなぁ?」
京太郎「ならいいですけど……ペースが速いようですから。合間に摘んで、ゆっくり飲まれた方がいいですよ。身体に障るといけませんから」
咏「あ、うん……その、悪いね、ありがと」パクッ
京太郎「失礼……すみません、唇にソースが」フキフキ
咏「あ、りが……と……/////////」カァァッ
残り『』イライライライライラ
靖子「……んっ、うんっ! ところで京太郎くん、その想い人――という扱いでいいのかな? その人は、どういう人なのかな」
京太郎「そこまで大したものでもないですよ。まぁ、なんていうか……ちょっと前に、俺は……いわゆる失恋を経験しまして」
健夜「――っっ! そ、そうだったの!?」
理沙「いつ!?」
京太郎「夏……の、終わりくらいですね。で、気分転換にこうして、執事の真似事なんてしてるわけなんですけど――」
はやり「それはまた、変わった転換方法だね☆」
京太郎「まぁ、そこからこうして、派遣で執事なんてことになったわけですが……まぁ、その中で知り合った方に、少し気になる人がいるってだけです」
京太郎「好きかどうかっていうまでは、まだわかりません。もう少しゆっくり、確かめてみたいです」
健夜(ぐぅぅぅっ……だ、誰のことかっ……)
はやり(気になるなぁ……)
理沙(せめて、年上か、同級生かだけでもっ……)
咏「――あんさぁ?」
京太郎「はい、どうしました、咏さん」
咏「それって年上? 同い年? それとも下?」
良子(ファインプレーです、三尋木プロ)
靖子「そうだな、それくらいなら構わないんじゃないかな、言っても?」
京太郎「うっ……ちょっと、恥ずかしいのが強くなってきたんですが……」
健夜「む、無理強いはよくないよ……だ、だけど、ねぇ?」
はやり「うん、かる~く、こう……ほら、お酒の場ってノリで、さ?」
理沙「気になる!」
良子「少し気になる相手、というだけです。これからいくらでも変わる可能性はあるのです、言うくらいは大丈夫でしょう」
京太郎「――そうですね」
京太郎「――えっと、と……年上、ですね。やっぱり」
四人(いよっしゃああああああああああっっっ!)ガッツポ
靖子「ふむ、意外だね……君は同級生に好かれるタイプだし、逆もそうかと」
良子「まったくです……はぁ、春になんて言えば……」
靖子「……お前という可能性は考慮しないのか?」ボソッ
良子「考慮したうえで悩んでいますが、なにか?」ヒソッ
靖子「図太いなぁ、お前……」
京太郎「まぁせっかくなんで言っちゃいますけど、初恋が年上なんですよね。まぁ小学生のころですけど」
京太郎「そのせいか、年上に弱いって自覚はあります。ただ、年上に甘えるんじゃなく、頼られる男になりたいってくらいには考えてますね」
京太郎「ですから――うん、年上のその人が好きかっていうより、どう思われてるか気になる……という意味合いが強いかもしれません」
京太郎「同級生でも、放っておけないのはいますからね、手がかかるっていうか」
良子「…………」ウンウン
四人(ぐぬぬ……)
靖子(カオスな空間になってきた……)
京太郎「そんなとこですね。それに――あれですよ、ぶっちゃけ俺って、モテないですから」
靖子(お前、それはギャグで言ってるのか?)
京太郎「色々女性にも失礼なこと言っちゃいますし、気遣いも足りませんし……」
健夜「そんなことないと思うけどなぁ~?」
はやり「そ、そうだぞ☆ 約束もちゃんと覚えてるし、十分だよ~」
京太郎「それに……まぁ、あとは外見ですよね。褒められることもありませんから、ははは……」
咏「――か、かっこいいし!」
京太郎「えっ」
咏「ま、まぁ、その……一般論として、だけどさっ……かっこいい部類だと思うよん、京太郎は」
咏「それこそ、あれだ……わ、私がさ! 携帯の連絡先教えたくなるくらいには、男前だと思ってるから!」
京太郎「――ははっ、ありがとうございます。なら調子に乗って、交換してくださいってお願いしてもいいですか?」
咏「ん、いいよん」ヤッタゼ
京太郎「マジすか! えっと、その……これ、麻雀のご指導ってお願いしてもいいんですか?」
咏「そだねー……まぁ、時間があるときならねい。私は多忙だからねー、そうそうないと思うけど」
京太郎「なら機会がありましたら、よろしくお願いします」
京太郎「はぁー、すっげ嬉しい……女の人に外見褒められたの、すげー久しぶりです。小学生とか中学生になら、言われるんですけどね」ハハハッ
はやり(咏ちゃんっ……恐ろしい子!)
健夜(出遅れたぁ~~~~~~っっっ!)
理沙「かっこいい!」
はやすこ『!?』
京太郎「えっ?」
理沙「京太郎くん、かっこいい!」マッカッカ
京太郎「あ……っと……その、ありがとうございます」カァッ
理沙「~~~~~~~~~っっっ/////////」プルプルプルッ
はやり「そ、そうだよ! 京太郎くんはイケメンさんだから、自信持っていいからね!」
靖子(……その追い込みは、逆効果ですっ……)
健夜「私も、かっこいいって思うよ……努力家だし、優しいし……」
良子(優しいも、男性にとっては……まぁ、複雑なものもありますよ)
京太郎「……ありがとうございます。なんかすみません、泣き言ばっかり言ったみたいで」
靖子「気にすることはないよ。さぁ、まだ食事は残ってる。ほかの話題にしようか」
良子「そうですね。では京太郎くん、鹿児島の――」
はやり「別の話題になってなくないかなっ☆」
~はやりお見送り
京太郎「――そういえば、今日は飲まれてなかったですよね、はやりさん」
はやり「んー、まぁね☆ 車だっていうのもあるし――」
京太郎「あぁ、そうでした。だめですね、学生だとそういう発想がどうにも……」
はやり「ふふ、いいんだぞ☆ それに、車じゃなくても飲まなかったと思うから」
京太郎「どうしてですか?」
はやり「決まってるでしょ?」
はやり「京太郎くんと、約束したからだよ……それから私は、ほとんどお酒を飲んでいません」
はやり「驚いたかなっ?」
京太郎「……あの、すみません……あのときは、子供のくせに生意気なことを――んっ」
はやり「(人差し指を唇に押し当てて)」
はやり「謝らなくていいよ。私はね、それをとっても感謝してるから……私のことを一番に考えて、言ってくれた……大切な言葉だからね」
はやり「だからむしろ、お礼が言いたいな☆ あらためて――ありがとう、京太郎くん」
京太郎「――はやりさんには、元気でいてほしいですから」
はやり「えっっ!」
京太郎「最初はただ、相手の健康を考えてってだけでしたけど……」
京太郎「色々と、はやりさんのお世話になって、交流するうちに……綺麗なまま、元気でいてほしいって思いましたから」
はやり「…………そ、そうなんだ……///」
京太郎「テレビで見る牌のお姉さんは、元気で明るくて、子供に麻雀の楽しさを教えてました」
京太郎「ですから、お酒も適切に飲んで、健康的な姿をもっと見せてくださいね。これからも」
はやり「……うん、わかった。ちゃんと、制限は守るからね……京太郎くんとの、大事な約束だから」
京太郎「はい、ありがとうございます」
京太郎「……結構遅くなったな。けど、大人にとってはこれも、まだ早い時間なんだろうな……」
京太郎「大人って……でかいよなぁ、うん……」
京太郎「いや、そういう意味でなくね? だってほら、霞先輩とか――」
京太郎「なんか寝付けそうにないな……明日は日曜だし、電話出られる人、いるかな……」
京太郎「……気になるっていえば……春も、なんだよなぁ……」
京太郎「最初はそっけなかったけど、いつの間にか距離が近くなって……」
京太郎「この前も、こっちまで来て……いかん、声が聞きたくなってきた」
京太郎「……もしもし、すまん。寝てなかったか?」
春「…………平気」ムスー
京太郎「あの、本当に寝不足とかじゃない?」
春「……良子姉さんから、電話があって――」
京太郎「えっ」
春「……やっぱり、京太郎が……っ」グスッ
京太郎「お、おいっ、春!?」
春「っ……と、年上が、す……ぃっ……って……」ヒック
京太郎「それは――」
京太郎「それは――気になってるってだけだ」
春『……でも、それは……京太郎が、その人を――』
京太郎「説明が難しいんだけどさ……うーん……そうだな、お母さんだな、言ってみれば」
春『……お母さん?』グシュッ
京太郎「春の家は神社だろ? そのお勤めをしてるってことはさ……お母さんに、それなりに認められてるってことだろ?」
春『ん……たぶん、そうだと思う……』
京太郎「それは、嬉しいことじゃないか?」
春『…………うん、嬉しい……』
京太郎「その嬉しさと同じのを、俺はその人から認められて、感じたいんだよ」
京太郎「気になってるのは好きっていうのじゃなく、認められたいっていう……対等になりたいっていうのか」
京太郎「俺が、もっと立派になりたいっていう……そういう欲求に近いのかもしれないな」
春『……わかる、ような……わからないような……』
春『……騙してない? 本当に、好きじゃない?』
京太郎「――そういうのとは、違うよ」
春『……そっか……うん……うんっ、ならいい』
春『京太郎が言うなら、信じる……ごめんね、泣いたりして……』
京太郎「いや、なんかわからないが……泣き止んでくれたなら、それが一番だ」
京太郎(……これは、なんだろう……照さんが東京に行ったとき、俺が感じたのを……)
京太郎(俺が誰かを気にしてるって聞いた春が、感じた――的なこと、だよな?)
京太郎(まさか、春が……いやよそう、俺の勝手な想像で、混乱を招きたくない)
春『京太郎? どうしたの?』
京太郎「いや、春のことが気になって……」
春『はっ、うっっ!? ま、また、そんなこと言ってっ……それに、気になるっていうことは……』シュン
京太郎「いや、いまのは……まぁ、春がどんなことを考えたか、それが気になるってことだ」
京太郎「悪いな。気になる、なんて言葉で色々悩ませて」
春『私は――いつも、京太郎のこと考えてる、かな』
京太郎「えっ――」
春『……それも、気になる、でしょ?』クスッ
京太郎「……あぁ、そういうことか」
春『うん。京太郎がどういう意味で気になってたか、それが気になったの……ごめんね、変な態度取って』
春『大丈夫……私の気持ちは、なにがあっても変わらないから』
春『いつでも、京太郎と会いたいって……一緒にいたいって、思ってるだけ』
京太郎「そっか……また、永水に行けるといいな。行きたいよ」
春『っっ……ほんとにっ?』
京太郎「本当だって」
京太郎「もう――春を泣かせたくないからな」
春『……京太郎』
京太郎「どうした?」
春『……私も、強くなるね。約束する――』
春『今回とか、同じようなことがあっても……』
春『私、泣かない』
京太郎「……そっか」
春『京太郎が、私のことを考えてくれているのも、わかったから――』
春『私は、そうしてもらうに相応しいくらい、強く――』
春『そ、それと……えっと……き、綺麗に、なるねっ……///』
春「あと、可愛くもなるから! 絶対!」カァァァッ
京太郎「……なら、次に会えるときが楽しみだな。期待してるぞ?」
春『うん、任せて。私はもう迷わないから……今日は、本当にごめんなさい』
京太郎「いや、俺が良子さんに変なこと言ったせいだ……悪かったな」
春『なら、これでお相子……ね?』ニコッ
京太郎「だな……じゃあ、おやすみ、春」
春『おやすみ、京太郎……』
春「…………そう、京太郎はまだ、私と……そういう、関係じゃないんだもん……」
春「……いつか、そうなれるようにっ……頑張らなきゃっ……」
【11月第三週土曜】
この所、連日でプロ麻雀プレイヤーのお世話になっているような気がする、ありがとうございます。
その流れで、さらに別のプロの方とお知り合いになれた。俺のような若輩に会ってくださり、嬉しい限り。
しかし、さすがはプロの方々、皆さん考え方が大人だった。
友情や恋慕、そういった方面にもお詳しい、目から鱗が落ちる。
そして、俺のような若造の話も聞いてくれ、そのいなし方も知っていらっしゃるようだった。
ああいう大人に、俺もなれればいいのだけれど。
そうそう、隠しておいてもあれなので、一つだけ。
俺は気になっている人がいます、もちろん、そういう意味ではなく。
彼女は俺にとって、常に憧れでした。
だから彼女に、真正面から認められたくて、いまはこうして修行に励んでます。
恋慕とかじゃなく、憧憬に近い感情でしょう。
でも、彼女に対して最初に抱いたのは、間違いなく恋慕でした。それはいまでも覚えてます。
そのせいで――いや、そのことは置いといたほうがいいですね。
ともかくそういったわけで、これまでに、そしてこれから先にお世話になった方、なる方。
どうぞ俺をコキ使って、一人前の男に鍛え上げてください。
努力は怠りません、よろしくお願いします。
…………
――照さんのことなんだけどな、ぶっちゃけると。
小学校のときのあの人は、色んなことを知ってて、大人で、尊敬できる女性だった。
それが東京に行ってしまったとき、俺は果てしない寂寥感を覚えたものだ。
再開したときは、それが美化された思い出なんじゃないかって思うくらいの変わり様だったけど――。
それでも、あの人は俺にとって、一番認めてほしい相手だ。
あの人が心から、真正面から俺のことを見つめて、立派になったと言ってくれれば、それはとても嬉しいことだろう。
『――なるほど、そういうことでしたか……すみません、彼女に色々……あることないこと吹き込んでしまいました』
『ないことも、だったの……? 姉さんひどい』
ないこともって、本当にひどいよ、あの人。
『そういう、気になるだったんですね。立ち入ったことを聞いてしまい、すみませんでした』
『私も謝ります。でも一つだけ、あなたは自分が思うよりも、ずっと立派な人間になっています』
『同感ですね。自覚は追いつかなくとも、成長はしているはずです。私たちが保証しても、当てにはならないと思いますが』
『初対面の私も、お三方に同意するよ。一つアドバイスをするなら、肩ひじを張るな、というところかな』
『そーそー、なにごとも楽~にね。わかんねーことがあれば、わかんねー自分じゃなく、わかんねーモンのほうが悪いってことで』
それはどうなのか……まぁ、それくらい楽にしろってことかな。
さすが大人の方々、いいことを言ってくださる。
『……春ちゃんの顔が、目に見えて違うんだけど……なにかあったのかしら?』
俺のために可愛くなってくれるそうです――とは言えないな。
けど必要あるか? あいつ可愛いぞ、普通に。
――――――――
~清澄
「へー、京ちゃんにそんな人がいるんだ……誰なんだろ」
「案外、咲さんのお姉さんだったりしませんか?」
「あはは、それはないよー。お姉ちゃん、麻雀以外はまるでだめだもん」
「……ま、まぁそうよね。咲はほら……お、お父さんと二人暮らしで、家事も少しはできるものね」
「でもお料理でしたら、部長のほうがお上手ですよね。卵焼きなんて、とても美味しくて――」
「ま……まーまー、和、そう言わんと。咲の料理も見事なもんじゃったけえ」
「そ、そうだじぇ! お掃除だって、ずいぶん上手になってるし……な、なぁっ?」
「えへへ、そうかなぁ///」テレテレ
~白糸台
「これは私。絶対にそう」
「時々お前が、すごい自信過剰に見えるよ、私は」
「でも小さい頃から知り合いなら、その可能性もあるんじゃないですか?」
「昔の宮永先輩が、とても聡明だったのかも……」
「尭深、それはどういうこと?」ギュルルルルル
「すみません、昔から、と言い間違いを」シレッ
(タカミーうまっ!)
(ほんっと、尭深のこういうところがうらやましいっ……)
~宮守
「ふーん、そっか……だから、年上に弱いのかなぁ……」
「もう少し年上らしいところ、見せるべきだったかしらね」
「十分見せつけたよ、私たちは! 塞は最後に、ポロポロ泣いちゃったけどね!」
「私だけじゃなくて、エイスリンもシロも、豊音もでしょ!」
「トシウエデモ、ナクトキハ、ナク!」
「そうだよー。私なんて、泣き虫だからー」エヘヘー
「……それに、そういう部分が好きになる、可能性もある……尊敬する相手は憧憬だけど、可愛い相手は恋慕じゃないの?」
「……で、実際のところ、シロはどんな風に?」
「んー……最近、なんだけど……家族みたいに思ってるって……言われた、かな……」
『!?!?!?!?』
(カピバラのことだけど……嘘じゃないし、いいよね……)
~永水
「……私との電話で、整理できたのかな……それなら、嬉しい……」
「な、なんなんですかー、あのはるるの余裕ある表情はー」
「とても一年生とは思えませんっ……わ、私、二年生なのに……」シュン
「……恋って、人を変えるんですね、本当に……」
「あら巴ちゃん、乙女ね」ウフフ
「い、いけませんか! 私が恋愛小説好きで!」
「……いいと思う。恋って、すごくいいものだから」
「はぅっ……はるるに、こんなこと言われちゃうなんて……」
~阿知賀
「……今日はさぁ、ケーキ焼いてくれてさー」
「うん……」
「そのときにね、色々言われてさぁ……」
「うん……」
「そういうこと、ちょっとは日誌に載るかなって……期待、したんだけどさぁ……」
「うん……」
「なんかさー、全部持ってかれたっていうか……あいつほんと、なに考えてんだろ……」
「聞いてみたらいいじゃない」
「できたら苦労しないよー、もー」ジタバタ
(ひっさびさに甘えてきたと思ったら、まー……あー、妹可愛い。よくないんだけど、やっぱりついつい甘やかしちゃうわね)
「よしよし……まぁ大丈夫よ。こっちに来て、まだ一ヶ月でしょ?」
「んー」
「ほかの学校の子も、一ヶ月でどうこうなってないんだし……離れても、ちゃんと連絡しなさいよ?」
「んー……考えとく……」ゴロゴロ
「ということで、今日は憧が妹モードだったので、こっちにお邪魔してます!」
「いらっしゃーい、穏乃ちゃん。お蜜柑食べる?」アーン
「玄ちゃんこっちも~」アー
「宥さん、玄が帰ってきた途端に……どうぞ」アーン
「お昼は京太郎に、料理教えてって言って、やる気だったじゃないですか」
「あれはあれ、これはこれだよ~」モグモグ
「いいのです! お姉ちゃんは、やるときはやる子ですから!」
「それに……これを見る限り、なんでもできたほうがいいってことでも……ないかなぁって」
「しっかり者は、尊敬されるだけ……なのかなぁ」
「灼さん、隙とかないですもんね! かっこいいです!」
「はぁ……うん、ありがと」
「……えー、もしかして……プロの人たちと食事してたってこと? 変なこと言ってないでしょうね、あの人たち……」
「もしもし、はやりさん? うん……えっ、嘘、えええええっ! ちょっと、私の威厳がっ……いや、まぁ……いや、ありますって、それくらいは!」
~11月第三週日曜、板場
京太郎「よし……焼き上がりです、お願いします!」
A「こっちも終わりだ。盛りに入るぞ、手伝え」
B「了解!」
板長「……よし、よくできてる。さーて、追い込みだ!」
玄「受け取りにきましたー。あ、これですね、持っていきまーす」
京太郎「ふぅ、日曜は大忙しだな……」
玄「――というわけで、今朝のご飯はとっても好評でした。板場のみなさん、ありがとうございます!」ペッコリン
京太郎「そりゃよかった。こういうのは励みになりますね、板長!」
板長「だなぁ。そのためにやってるってもんだ」
A「――さて、労いの朝飯といくか。できたぞ」
B「しっかり食って、今朝も部活に励めよ!」
京太郎「宥先輩はどうするか……」
京太郎「おはようございまーす、朝ですよ、宥せんぱ――」
宥「んしょ、んしょっ……」
京太郎「――なにやってんですか、布団に包まってモゾモゾと」
宥「はううぅぅぅっっ!? きょ、京太郎くん!? だ、だめだよっ、こっち見たらだめぇぇ~~~っっ!」/////
京太郎「いや、見るなもなにも、布団しか見えませんが」
宥「うぅぅ~~~/// な、中で着替えてるから……いま、その……上、脱いじゃったし……」
京太郎「お手伝いします」キリッ
宥「ふぇぇっっ!?」ボッッ
京太郎「――じゃねえ! すみませんっ、間違えましたっ、失礼しますうぅぅぅぅっっ!」バタンッ
宥「……はぅっ……ふ、服、脱いだとこなのに……あったか……あつぅい……」カァァッ
京太郎「……ふぅ」
玄「? 京太郎くん、お姉ちゃんは?」
京太郎「も、もうすぐ来られるそうです! ささ、先に食べてましょう!」
玄「う、うん……?」
~部活
京太郎「今朝は本当に、申し訳ございませんでした」フカブカー
宥「も、もういいから……ほら、頭上げて、ね? 男の子がそんな簡単に、頭下げちゃだめだよ」ナデナデ
灼「といいつつ、簡単に頭を撫でる宥さん……なにがあったの?」
玄「知りませんのだ!」エッヘン
憧「胸張って言わないの! どーせあれでしょ、京太郎が着替え覗いたとかそういう――」
宥「~~~~~っっ、ち、違うもん! 見られてないからね!」マッカッカ
憧「」
京太郎「そそそ、そうだぞ、本当に見てないからな!」
灼「あやし……」
穏乃「それか……マッサージ、したのかも」ボソッ
晴絵・憧以外『///////////////////////』
晴絵「なにあれ」
憧「それがわかんないのよねぇ……は、はだ……だったら、あたしも……見られたんだけどぉ……」ボソッ
京太郎「宥さんは優しい、きっと女神だな。豊音先輩に続き、こんな場所にまで……ありがたやありがたや」
憧「うちの神社ディスるのやめてよね」
京太郎「さて、みんなも練習始めたし、俺も差し入れの準備にかからないとな」
京太郎「ここの調理室も結構慣れたよなぁ。掃除もかなりさせてもらったし、ありがたいことだ」
京太郎「ん、焼き加減は……よし、大丈夫だな」
京太郎「昨日のケーキでだいぶ材料を使ったからな、一つしか焼けなかったけど……」
京太郎「穏乃には我慢してもらおう、それで足りるだろう」
京太郎「はーい、今日のおやつは抹茶バウムクーヘンですよー」
穏乃「やったー! 一本全部ちょうだい!」
京太郎「……すまん、一本しか焼いてないんだ。カットした分で、我慢してくれ……」
穏乃「」
穏乃「そ、ん……なぁ……」ポロポロ
憧「泣かないの! っていうかさぁ、そんだけ食べて、なんで太らないの?」
玄「ぜ~んぶ消費しちゃうんだろうねぇ……ふふふ、でも私の目はごまかせないのです」キランッ
玄「……穏乃ちゃん、ちょっとだけおっきくなったよね?」
穏乃「!? わ、わかります、か……?」カァァッ
憧「うそ!?」
穏乃「憧ぉ、どういう意味?」
憧「あははは、つい……」
灼「で、そうなの?」
穏乃「はい、まぁ……カップまでは変わってませんけど、ちょっとだけ……合宿のあとから、なーんとなく……」
灼・玄・宥『!?!?!?』
灼「な、なら私も……?」
玄「おおおお、お姉ちゃんのおもちが、かがみもちにっ!?」
宥「く、玄ちゃん、めっ!」
憧「……ふきゅっ!」
京太郎「おーい、切り分けますよー」
晴絵「今回は私の、忘れないでね」
京太郎「どうぞ、玄先輩。緑茶とも合いますよ、あとはほうじ茶なんかも。もちろん紅茶もご用意できますけど――」
玄「だとしたら、だとしたらだよっ? 私のおもちもお姉ちゃんほどに……はわわわ、ここ、これはすごいよぉ……」
京太郎「戻ってきてください、松実先輩」
玄「玄って呼んでよぉぉぉっっっ!」ブワッ
京太郎「うぉわっっ! 聞こえてるじゃないですか! もういいです、淹れちゃったんでほうじ茶どうぞ」
玄「あ、ありがとう……ねえ、一つ聞いていいかなぁ」
京太郎「なんなりと」
玄「えっとねぇ……その、ま……マッサージの、やり方なんだけど……お、教えてもらってもいいかなぁ?」
京太郎「俺ですか? まぁ、構いませんけど……宥先輩に教わったほうがよくないですか?」
玄「ううん! 京太郎くんのやり方を、教わりたいの!」
玄(じゃないと、女の子たちのおもちおっきくできないもんね! ふへへへへ)
京太郎「んー、それじゃぁ……」
京太郎「誰かで実践しないとなぁ……」
玄「!? あ、あの、ここでっ!?」
京太郎「? そうですけど……あのー、すみませんけど、誰かマッサージの――」
四人『!?!?!?!?』
晴絵「???」モグモグ
京太郎「あ、玄さんにマッサージの指導をしたいので、誰か受けてくれないかなーと」
宥「はっ、うっ……わ、私は……できれば、ふふ……二人っ、きりで……」/////
穏乃「私も、そっちかなぁ……あ、あはは、ごめんね!」モジモジ
灼「……家で、やってほし……いまは、ごめ……」カァァッ
憧「……あたし、やってみてもいいかなぁ……」ボソッ
玄「!? だだ、だめだよ! そういうことなら私にしてよ! か、身体で覚えるから!」
京太郎(なにいってだこの人)
憧「でも手元とか見たいでしょ? だったら、誰かに一緒にやるほうが……それに、あたしも……ちょっと、興味が……」ボソボソ
玄「そ、それはそうだけど……っっ! そうだ! あ、仰向けで受ければいいんだよ、ねっ!」
京太郎「……えっと、まぁ……それは……」ムクムク
京太郎(いいのか俺!? それじゃ、菫さんや尭深さんのあれが、また――)
晴絵「はーい、そのへんにしよっかー! いまは部活中、お仕事のことは、部活のあとでねー」パンパン
玄「あ……はい、すみません」
晴絵「いや、謝んなくていいって。それより、そろそろ休憩終わりだから、練習再開するよー」
憧「……やれやれ、しゃーないか」
晴絵「じゃ、みんなで一回打ってみて。その間、須賀くん?」
京太郎「はい」
晴絵「そのマッサージ、私にやってみてよ。最近さぁ、肩と腰が凝っちゃって、ほんと」コキコキ
京太郎「はい、いいですよ。じゃあそっちで横になって――」
晴絵「本格的だねぇ、こりゃ楽しみ」
全員『だ、だめぇぇぇ~~~~~~~っっっ!!!』
――阻止されました。
京太郎「じゃあ先生、座ってお茶でもしててください。その間、肩揉むくらいなら……」
晴絵「おう、サンキュ♪」
宥「だめ」
晴絵「えっ」
玄「だめですのだ」
京太郎「いや、でも……」
灼「それ以上いけない」
京太郎「でも、先生だし……」
穏乃「部活中だよ、弁えようよ」
京太郎・晴絵「はい……」
憧「……本気で、興味湧いてきた……うぅ……家でやってもらおっかなぁ」
京太郎「……俺のマッサージ、本当は下手なのかなぁ」ショボン
京太郎「部活中、マッサージ禁止令かぁ……仕方ない、掃除でもしてよう」
晴絵「どういう理論なのか……まぁいいや。部活のあとにでも、時間あったらお願いね」
京太郎「はいはい……さて、なら掃除するかな。パパパッとやって、終わらせないと」
京太郎「ふぅ、こんなもんか……」
晴絵「よし、じゃあ次は須賀くん、入って――あ、あれ?」
京太郎「はい、了解です」
晴絵「ちょい待ちなさい! え、なにこれ、なんでこんな綺麗になってんの?」
京太郎「掃除しましたから」
晴絵「いつ」
京太郎「いま」
晴絵「……誰が」
京太郎「俺が、ですけど……だめでした? 邪魔になってましたか?」
晴絵「……須賀くん」
京太郎「はい」
晴絵「結婚して。あと部屋のお掃除して」
五人『!?!?!?!?!?』
京太郎「自分でやってください」
五人(……ほっ)
~日曜、昼
京太郎「部活は終わり、っと……このあとって、自由なのか?」
穏乃「うん、そうだよー!」
憧「まぁ勉強したりお買い物したり、そのあたりは好きにすればいいんじゃない?」
玄「お昼は旅館のお仕事も少ないからね、私たちはゆっくりできるよ~」
灼「私は……店番したり、色々と……」
宥「コタツに入ってるとねぇ、ついウトウト~って……」
京太郎「なるほど……」
京太郎「どうしたものかな……今日は利仙さんの誕生日だけど、さすがにプレゼントは間に合わないか」
京太郎「――そうだな、昼食も兼ねて、色々と備品の買いだしでもしておこうか」
京太郎「せっかくだし、誰か付き合ってくれないものか……」
京太郎「一応、帰る前に誘ってみとくかな」
京太郎「すみません、せっかくお休みなのに、部活の仕事に付き合ってもらっちゃって……」
玄「う、ううん! いいよ、全然!」
京太郎「よかったです。それじゃ、せっかく買い物に来たんですし、どこかでまず、昼食にしましょう」
玄「わかった~……えへへ、ねえ京太郎くん」
京太郎「はい?」
玄「あ、あのね! 手……つないでも、いいかなぁ?」
京太郎「まぁ、構いませんけど……いいんですか?」
玄「もちろんだよ、ありがとね!」キュッ
玄(ひゃわぁぁぁ~~~~……ててて、手つないじゃったよ、これもう、デートだよね!)
※違います
京太郎「……そうだな、駅の方に行けば、軽食も食べられる喫茶店がありましたよね。そこにしましょう」
京太郎「たまには洋食も、召し上がりたいでしょう?」
玄「うん! どうせだったら、京太郎くんに作ってもらいたいけどなぁ……なんて」テレテレ
京太郎「わかりました。今日は準備もできてませんので、また後日――それじゃ、行きましょうか」
京太郎「どうぞお入りください」キィッ
玄「うん、ありがとう」
京太郎「こちらにどうぞ」イスヒキー
玄「えへへ……な、なんか照れるねぇ」
京太郎「――あ、す、すみません! ついクセでっ……」
玄「え、く、クセになるくらい……その、お……女の子と、ここ、こういう……?」
京太郎「いえ、そういうのではなく(真顔)」
玄「えっ」
京太郎「……修行です。師匠に従い、主と、主のお客様に尽くすための仕草を、延々と……」
京太郎「ああ、一番最初のですね、懐かしいなぁ……たしか一日2時間くらいの睡眠で、ひたすら基礎を叩き込まれて……」ブツブツ
玄「きょ、京太郎くん! お願い、戻ってきて!」ユサユサ
京太郎「はっっ!? あ、あぁ……そうか、ここは……すみません、取り乱しました」
玄「もう、驚かさないでっ……でも、そうだよね。京太郎くんだって最初からなんでもできたわけじゃなくて」
玄「ここまで来るのにも、ずいぶんと練習したんだよねぇ……」
京太郎「まぁそうですね。けど、玄先輩もですよね? 毎日、小さい頃から旅館のお仕事で――」
玄「それこそ、家のお手伝いってだけだもん……いまだとクセになってるようなものだし」
玄「それを考えたら、京太郎くんのは……これまでの暮らしとはまるで違うことに、取り組んだってことだもんね」
玄「それをするのって、とっても勇気がいると思うんだぁ」
京太郎「いえ、俺はただ……夢中になるものが、欲しかっただけで……」
玄「だとしても、夢中になるものに取り掛かるのだって、相応の勇気はいるよ。それができた京太郎くんのことは、尊敬しちゃうなぁ」ニコッ
京太郎「……ありがとうございます」
ロビンマスク「……そろそろ注文を聞いてもいいかな?」
京太郎「ああ、はい、すみませ――!?」
玄「!? どどどっど、どうしてここここにっ!」
ロビンマスク「ちょっとした手伝いでな。安心しろ、松実館には黙っておく」
京太郎「……はぁ、ありがとうございます」
玄「そ、そうだ、メニューも見てないよ! ちょっと待ってくださいね!」
京太郎「まさか顔見知りに会うなんて……世間は狭いもんですね」
玄「うん、驚いたよ。だけどあの店、おいしかったね~」
京太郎「そうですね。長く店を開いているようですし、あれならかなりの常連さんがいそうです。やっぱり店を構えたら、そうでないと大変でしょうね」
玄「京太郎くんなら、いっぱい常連さんがつくと思うよ~」
京太郎「いや! ですから俺、店構えませんからね?」
玄「喫茶ブラック……ううん、カフェ・ブラックだよねぇ……そ、それとも、カフェ・ユウ? カフェ・YOUにしちゃうのかなぁ?」
京太郎「なんの話ですか……それに、カフェだったら和食がだせませんよ」
玄「――?」
京太郎「いえ、せっかく板場で色々教わったんですし……和食だってやりたいですよ」
玄「!?!? そそそ、それって、その……やや、やっぱり、わ、私と、旅館で――」
京太郎「和食をだしても問題ないような、幅広いニーズに応えられる店がいいですよね。洋菓子、洋食、和菓子、和食……あと最近、中華も勉強してるんです」
玄「……ですよねー」
京太郎「いずれは手打ちのそばやラーメンも扱いたいですし……あー、でもそれしながら接客は、難しいかぁ……うーむ、悩ましい」
玄「ほんとに京太郎くんは、いまはお仕事のことばっかりなんだね」
玄「やっぱり、日誌に書いてた――誰かさんのことが、関係してる?」
京太郎「ああ……ええ、根本はそれだと思います。けど、ただ俺の性格が、そういうことに向いてたってのもあると思います」
京太郎「麻雀ももちろん楽しいですけど……やっぱり、こうして夢中になれるものが見つかったのは嬉しいですね」
玄「……じゃあ、そうなるようになった原因……その、言いたくはないけど……清澄のこととかは、気にしてないの?」
京太郎「清澄については、俺なりに感謝してますから。周りの方は色々誤解してますけど、俺自身はなにも言いたいことなんて……いえ、一つだけですね」
京太郎「部長に一つだけ、聞きたいことがありますけど。それ以外には特に、文句や恨みだってありませんよ」
京太郎「感謝してるくらいなんです」ニコッ
玄「……京太郎くんが、最初からうちにいてくれたらよかったのになぁ……」
京太郎「それもそうですよ。清澄でのことがなかったら、こうして阿知賀に来られることもなかった。まして、女子校になんて通えませんし」
玄「あっ……そ、そうだったね! じゃあ私も、感謝しないといけないんだ、えへへ」
京太郎「そうしてもらえると嬉しいです……さて、つきましたね。手早く買い物してしまいますから」
玄「あ、私も行くよ。せっかく一緒に来たんだもん、手伝わせて、ね?」
京太郎「――はい、よろしくお願いします」
京太郎「玄先輩は、そこの棚でこの機材とこっちのをを――俺はあっちで、残りの分を取ってきます」
京太郎「揃ったら、この棚の前で待ち合わせましょう」
玄「おまかせあれ!」フンスッ
京太郎「……うん、大丈夫ですね。ありがとうございます」
玄「ほっ……よかったぁ。せっかく一緒に来たのに、お手伝いどころか迷惑になったらやだもん、ね!」
京太郎「とんでもないです。一緒に来られただけで、すごく楽しかったですよ」
玄「ふぇへへへへ……そ、そうかなぁ……えへへ」
京太郎「それじゃ、買ったらすぐに戻りましょうか」
玄「えっっ……」
京太郎「……すみません、言葉が悪かったですね。その……学校、閉まっちゃいますから」
玄「えっ? わわっ、ほんとだ! さっきの喫茶店かな、ずいぶんゆっくりしちゃったね!」
玄「そ、それじゃ急がないと!」
京太郎「大丈夫ですよ。普通に帰れば、十分間に合いますから……それじゃ、行きましょう」
玄「あ、に、荷物をっ……」
京太郎「……そうですね。じゃあ、こっちは重いですから……こっちのをお願いします」
京太郎「軽いですけど大きいですから。玄先輩に持っていただけると、手が空いて助かります」ニコッ
玄「……優しいなぁ、京太郎くんは。そうやって、私のことばっかり気遣ってくれて……」
京太郎「あー、いえ、そういうのでは……その、本当に……」
玄「ありがとねっ」ニコッ
京太郎「……はい、どういたしまして……です」
京太郎「ふう、収納は終わりですね。調理室の食材も、これで完璧だし――」
玄「いっつも京太郎くんは、これを一人でやってるんだね……」
京太郎「半分趣味ですからね。さ、帰りましょう。遅くなっちゃいました」
玄「そうだね、もう日も暮れそう……旅館のお仕事、送れちゃうかなぁ」
京太郎「なら……一緒に謝りましょう、ね?」
玄「……うんっ、そうだね!」
京太郎「それじゃ、ゆっくり帰りましょうか。急いで事故とかに遭っても大変ですから」
玄「そうだね……」キュッ
京太郎「寒くないですか?」
玄「うん、平気だよ~。京太郎くんの手、あったかいからね~」ニコニコ
玄「お姉ちゃんの言ってた通りだよ!」
~昼行動終了
~夜行動
京太郎「そういえば、洋食のリクエストが何件か……明日の分とかも考えて、仕込んでおくか」
京太郎「ふぅ、やっぱり洋食も捨てがたいな……」
京太郎「さて、わりと早く終わったし、なにかできることはないか」
京太郎「……そろそろ、夜出歩くのも寒い季節になるし……」
京太郎「その前に、散歩に行っておくか」
京太郎「どっかで○チキか○○○チキでも買えればいいんだけど」
京太郎「たまーに食べたくなるよな、あのジャンクな味って」
京太郎「…………と思ってたら、怪しい人影を発見」
憧「はぁ、さっむ……もー、牛乳切れる前に買っといてって言ってるのに……」
京太郎「ふぅん、新子家では牛乳の減りが早いのか」
憧「そうなのよー。お姉ちゃんが好きでさぁ……あと、あたしも最近よく――」
憧「」
憧「……きょう、た、ろ?」
京太郎「はい。いつもニコニコあなたの傍に、侍り世話する須賀京太郎です」ペッコリン
憧「~~~~~~~~~っっっ!?!? いい、いっ、いつからよっ、どこからつけてたの! ストーカー!?」
京太郎「いや、違うっての……俺もコンビニに用があったんだよ。おまえんちあっち、おれんちそこ、コンビニあっち、な?」
憧「うえっっ!? え、マジで……じゃあ学校からだとあたしの家、あんたの家と逆方向っ……」
京太郎「まぁ、そりゃな……」
憧「……なのに、一昨日は……送ってくれたんだ……ご、ごめん! 知らなくて、あたしっ……」
京太郎「あー、いいって、別に。それに毎日じゃない、あの日はたまたま、話が盛り上がったから――それでいいだろ?」
憧「……ごめん、ほんと……」
京太郎「――むしろ、俺のが得したわけだし。まぁそんくらいは、な?」
憧「ぇ――な、ななっ、なに言ってっ……いまの、どういう――」
京太郎「よっしゃ到着ーっと。うー、さむっ……早く入ろうぜ」ウィーン ッシャーセー
憧「だ、だから待ちなさいっての! どういうつもりで、さっきのは――」
京太郎「まじかよ、○○○チキなしとか……くっそ、これが○ーソンなら○○あげクンでも……」
京太郎「中華まんの気分でもないし……どうしたもんか……」
憧「いつまで悩んでんのよ、もう……あたし、もう牛乳買ったし、先帰るわよ?」
京太郎「うぉいっ! 見捨てんのかよ、薄情者!」
憧「やー、だってこれでも、ほら……嫁入り前の乙女ですから? 遅くなると心配されちゃうし♪」
京太郎「あー、そうかよ……」
京太郎「ちっ、仕方ないか……すみません、やっぱ結構です」
京太郎「よし、帰るぞ憧」
憧「えっ、いいの? さっきまで散々、ジャンク食べたいって騒いでたのに」
京太郎「だってお前帰るんだろ? なら俺も行く」
憧「なっっ……ば、バカにしてんのっ? あのね、あたしこれでも地元民!」
憧「こんくらいの道、昔っから歩き慣れてるし、危ない目に遭ったこともなかったの!」
京太郎「だろうなぁ」
憧「だから! いちいち、その……遠いとこまで、送ってくれなくても……平気だから」
憧「せっかくの申し出は嬉しいけど、それは遠慮します。ってことで――」
憧「また明日ね、京太郎」フリフリ
京太郎「…………」
京太郎「だが断る」
憧「んじゃね――って、おいィ?」
京太郎「お前はそれでいいとしよう。なら俺は?」
憧「えっ?」
京太郎「このままお前を帰らせて、途中なにもなかったとしてもだ」
憧「う、うん……」
京太郎「それを明日の朝確認するまで、俺はずっと悶々としてないといけないのか?」
憧「ふぎゅっっ!! も、悶々っっ//////////」
憧「いいいい、いきなりなに言いだすのよ、へ、ヘンタイ!」
京太郎「ヘンタイはお前の発想だ……いや、だからさ!」
憧「なによ!」
京太郎「このまま一人で帰らせたら、心配なんだよ! 無事に帰れたかとか、考えちまうだろうが」
京太郎「――自覚ないようだから言っとくけど、お前可愛いんだからな?」
憧「ふぇっっ!? いぇっ、あっ、やっ……な、なに言って――」
京太郎「だから、クラスメートの可愛い女子が一人で帰るのを、俺は心配します」
京太郎「送っていく、不思議があるか?」
憧「ひっ、やっ……えと、ない……かな?」
京太郎「よし、なら行くぞ……うお、さむっ……ほれ、いつまで立ち止まってんだ。来いっての」キュッ グイッ
憧「~~~~~~~~~~~~~~っっっっ!?!?!? あ、あ、き、京太郎っ、てて、手っっ!」
京太郎「うわ、お前の手ちっこいな……しかも、すげー冷たいじゃねーか」
憧「そそ、それは、ほらっ……私、心があったかいし!」
京太郎「なら、その心のあったかさわけてもらうぞ。手の冷たさからな」ギュゥッ
憧「//////////////// あ、ぅ……は、い……」カァァァッ
京太郎「よし、帰るぞ」
憧「お、お願い、します……」
京太郎「……ちなみに、望さんに見つかったらまずい?」
憧「……ううん、平気」
憧「もう……わかったから……見られても、いい」
京太郎(……俺が望さんに会ったから、もういいやってことか?)
京太郎「なら、このまま帰るか」
憧「……うんっ♪」
【11月第三週日曜】
土日の板場はまさに鉄火場、いやぁ忙しかった。けどその分、正確さと手際が磨かれる。
そしてそのあとの、賄い飯のうまいことといったら――。
……ふぅ、失礼しました。
それにしても今日は、一日中なにかしらしていたように思う。
菓子を焼いて、掃除をして、午後は買い出しに。K先輩が手伝ってくださった。
そのとき色々な話をした。清澄のことを、少しはわかってもらえただろうか、それなら嬉しいのだが。
K先輩、ありがとうございました。
そういえば、夜中――まぁ、そこまで遅くはないけど、出歩くには遅い時間だった。
少し出歩いたのだが、そうしてよかったと思う。
あまり心配かけるなよ、俺がいるうちはいいけどさ。
…………
『ほんまよう働くなぁ、自分――うちに来るときも、その調子で頼むで』
『手際がええ、いうんはありがたいですね。下の子らになるべく、そういう部分を指導してやってくれると助かります』
『それは彼の思う所と異ならないか? 自分が役割を受け、周りに麻雀をしてもらいたそうだが』
『もちろんそのつもりです。ですから、なるべく全体がある程度のことをできるようにして、分担し、総合的に打てるようにしたいんです』
『なるほど、そういうことか。立ち入ったことを指摘した、気分を害したなら謝る』
『こちらこそです、どうも』
『――ずいぶんと気にしているようでスネ、なにか心境の変化デモ?』
『そういうことじゃないさ。邪推はいらないぞ』
……この人は、優しい人なんだな、とても。
やばい、すっげーお世話したい、こういう人こそ。
『そういえば、買い出し手伝ったこと……なかった、よね?』
『……べ、勉強で忙しかったから……』
『言い訳になりませんよ?』
『私たちもですけどね……はぁ、迂闊でした。掃除ばかり気にしてましたけど……』
『いないときなにをしてたか、考えるべきだった……』
『悔やんでも仕方ありません。次回は誤らないよう、反省を活かしましょう』
や、そういうつもりだったのではなく……うーん、日誌って難しいな。
『清澄でのことは、私たちが心配することではないのかもしれませんね』
『そいは後輩ばおるけん、そげん思うだけやなかと?』
『それもありますが、彼なりに納得している――なら、あまり指摘するのは却って、彼に返るのではないかと思っただけです』
『――横からで悪いけれど。彼が納得していようと、させていたのは私。それを責めるのは、当然の発想よ。京太郎も、それを庇ったりしないで、いいわね?』
『あら、ご本人さんも見てたんやね。なら、うちも横から一つだけ、ほかの部員さんはどうやったん?』
『もちろん関係ありません。部長は私でしたから、皆には指示通り動いてもらってました』
『わかりました。答えてくれてありがとうな』
――なんだってこの人は、そうやって悪ぶろうとするのか……一人で損をするのはやめてほしい。
俺たちは、同じ学校の、同じ部活の仲間なのにさ。
――――――――
~清澄
「ぶちょ……久さん、いいんですか? こんなこと……」
「京太郎だって色々言われたくないでしょ。こうしておけば、私にメールが来るじゃない、それでいーの」
「……正直に言えば、私も会長のしたことは、不可解です」
「こら和っ……」
「ですが――それは私たちも同罪です。それに、会長にはそうするだけの理由があったと思っています。ですから……」
「会長がそうすると言うなら、また私は従います」
「……ありがとね」
「難しいことはわかんないけど……先輩の言いつけは守るじぇ!」
「ほんに、聞き分けのええ後輩じゃあ……咲もそれでええな?」
「はい、もちろんです。でもなにかあったら、私たちを頼ってくださいね」
「ふふっ、そうね。お願いするわ」
~白糸台
「……揉めてるね、ちょっとだけ」
「なに、大丈夫だろう。彼女の発言は部長として部員を案じている、その彼女が京太郎くんを案じていないなど、誰が思うものか」
「だったら、どうしてこういう……派遣みたいなことを始めたんでしょうか」
「彼女にしかわからない、なにか……」
「どーでもいいよー、そんなこと! おかげでキョータローと遊べるんだから、気にしない!」
「淡はいいこと言う。早くうちに来ないかなぁ」テルテル
「抽選次第ですってば……お願い、ほんとにきて……先輩が卒業する前に、なんとか……」
「お茶、飲む?」
「胃に効くやつ、お願いね……」
~龍門渕
「清澄の、ねぇ……まぁ大丈夫だろ、いいやつらばっかりだったし」
「そうですわね。どちらにせよ、よその部のお家事情に首を突っ込むなど、無粋千万ですわ」
「うん。なにより彼自身が平気だって言ってる、これで話は終わりだよ」
「……ほかの学校の方は、それだけ彼に興味があるということ……」
「これだけの努力と結果を見せている、当然のことだろう」ウムウム
「多くの方に想われる、彼にとってもよい影響があることでしょう」
~永水
「……そういえば、私……買い出しから戻った京太郎くんを、叱ったことが……」サァッ
「ああ、利仙ちゃんと会った……」
「それは仕方ないですよー、京太郎の浮気ですからねー」
「う、うわっ……も、もうっ、いやぁね、はっちゃん! 私と京太郎くんは、まだそんなっ……////」カァッ
「ふふ、霞ちゃんかわいい……」
「春ちゃん、大人ですね……」
「ん……京太郎のために、大きくなりたいから」
「あー、あれはでっかいの好きですからねー」
「そ、そういうことじゃなく……人として……でも、それなら……こっちも、育たないかなぁ……」モミュモミュ
~宮守
「大沼プロと会ったときもさぁ、買い出し行ってたわよね、そういえば」
「あー、そうだったかも……」
「でもそれ以外は、気づかないうちに買い物してたよね?」
「(なにもない冷蔵庫と、ぎっしり詰まった冷蔵庫)」カキカキ バッ
「そうだよねー。気がついたら、備品とか食材とか部品とか、勝手に補充されてたよー」
「……もうっ、ひと言くらいかければいいのにさぁ……」
「配慮、足りなかったかなぁ……」
「はいはい、反省終わり。次に会ったときに、労って、甘えさせてあげればいいよ!」
「ヒザマクラ! ジュウデン!」
「それはいいかもー。ねっ、ねっ、交代で膝枕してあげよー」
~阿知賀
「ほーほー、なるほど……それで、一緒に帰ってきたと……」
「う、うん……///」
「あらま、すっかり恋する乙女の顔しちゃって……自覚、できた?」
「は、い……うん、した……すっごい、ドキドキする……」
「くぁーっ、甘酸っぱーいっっ! もしもしハルエ、飲も!」
『明日月曜でしょっ、いい加減にして!!!』
「……いよっしゃー! ストライク!」
「いや、営業時間外だから……どうしたの、穏乃」
「いやー、さっきですね……その、コンビニ行こうとしたら……憧と京太郎を、見ちゃって……」
「……そか」
「別にどうってことはないんですけど、なんとなく……モヤモヤしちゃうんで、発散できないかなって」
「……ん、いいよ。でもまだ、気にする段階ではないと思……まぁ、好きなだけ投げてって」
「ありがとうございます!」
「1ゲーム、身内割で100円にしたげるから」
「ありが――ゆ、有料?」
「和菓子、タダではくれないでしょ?」
「……ですね! あははっ!」
「あと一週間かぁ……ね、お姉ちゃん!」
「どうしたの~、玄ちゃん?」
「いっぱい……いっぱい、京太郎くんと思い出作ろうね! それでまた、来てもらおうよ! 派遣じゃなくても、お休みにでも!」
「……そうだね~。残りの日も、あったか~く過ごせたらいいなぁ~」ポワァ
~テレビ局廊下
「お疲れさまでした、三尋木プロ。今日はいつもより、しっかりしてらっしゃいましたね」
「あ~、えりちゃんかい、お疲れ~。そんなよかったかい? ま、知らんけどね~」
「そういうのも、あまりありませんでしたし。なにかいいことでもありました?」
「っっ/// い、や……べ、別に? 知らんけど?」
「そうですか……ああ、そういえば――」ニマッ
「昨夜は、関西のほうで瑞原プロたちとお食事されたとか。いかがでしたか?」ニヤニヤ
「存じ上げぬ」キリッ
「関西といえば――そうそう、あの派遣執事の高校生は、いま奈良でしたよね?」
「…………お、お疲れー」フリフリ
「まぁまぁ、明日の打ち合わせもまだですし。あら小鍛治プロ、ちょうどいい所に」
「ああ針生さん、お疲れさまです。それに咏ちゃん、昨日ぶりだね、お疲れさまー」
「す、健夜さんっ……昨日の話はそのっ……」
「そのこと、詳しく伺ってもよろしいですか?」
「え~、恥ずかしいなぁ……少しだけですよ。お昼、ご一緒しましょうか」
「はい、ぜひ! 三尋木プロも、ご同席くださいますね?」
「しっっっ……知らんしぃぃぃ~~~~~っっっ!」////
【11月最終日】
京太郎「わざわざすみません、駅まで来ていただいて……松実館の兄さん方まで」
板長「ま、最後くらいはな。ひと言かけたら、俺らはバスに戻ってるからよ、かっかっか!」
A「ああ、学校の皆と名残を惜しんでくれ」
B「じゃあな、また会おうぜ! 京太郎!」
テリーマン「俺も来たぜ。またな、京太郎」
京太郎「テリーマン」
ブロッケンJr「松実館の連中だけに、いいカッコさせるかよ」
京太郎「ブロッケンJr……」
ロビンマスク「板場の仲間は、俺たちも同じなんだぜ」
ウォーズマン「コーホー」
京太郎「みなさん……」
松実父「こ、これが友情パワーか」
京太郎「はい、お世話になりました! ありがとうございました!」
晴絵「それじゃ、元気でね、須賀くん! いや……最後くらい、京太郎くんって呼んであげよっか? ん?」
京太郎「そうですね、じゃあそっちで……ありがとうございました、晴絵先生」
晴絵「っっ……は、ははっ、なんか……っ……そっか、送られる側は体験したけど、送るって……こういう、気持ちだったのね……」ジワッ
憧「ったくぅ、ハルエは涙腺緩いんだから~」ニヤニヤ
穏乃「ぎょ……ぎょゔだろ゙ぉぉぉ~~~~~~~~っっっ!」ブワァッ
玄「ぎょゔだろ゙ゔぐゔぅぅぅぅ~~~~~~んんっっっ!!!」ブワァッ
京太郎「二人もありがとう……本当にお世話になりました。松実館への口利きも含めて、感謝しています」
灼「玄も穏乃も、そんなに泣いたら京太郎が行き辛いでしょ?」
京太郎「……そうですね。でも、嬉しいですから……穏乃、明日からはちゃんと笑えよ?」ナデナデ、フキフキ
穏乃「ゔぐぅぅっ……うんっ、わかっでるぅ……」グスグスッ
京太郎「灼先輩も、色々ご指導、ありがとうございました。これからも部のまとめ、頑張ってくださいね!」
灼「うん……元気でね、京太郎」キュッ(握手)
京太郎「はい」ギュッ(握手)
宥「……京太郎くん、またいつでも来てね。派遣じゃなくても、松実館はいつでも……京太郎くんが帰ってくるの、待ってるからね」ギュゥッ(抱きつきっ)
京太郎「」
憧「ゆっ、ゆゆ、宥姉! なな、なんてっ……だ、大胆なっ……/////」カァァッ
松実父(勝ったな……)
板長(ああ……)
ウォーズマン(コーホー)
玄「お姉ぢゃんのい゙ゔどお゙り゙だよぉぉぉぉ~~~~~っっ! いつでも、帰ってぎでね゙ぇぇぇっっ!」ガバァッ
京太郎「――はい、そうします……ありがとうございます」
憧「やれやれ、ならあたしくらいは……笑顔で見送ってやりますか」ニッコー
京太郎「……やっぱ可愛いな」
憧「っっっ……ふ、ふふんっ、まぁね~♪ ちゃーんと気ぃ遣ってんの、誰かさんのためにね?」
京太郎「そっか……誰だか知らねーけど、そいつが羨ましいな」
憧「あはは、やっぱそうなるわよね……ま、安心しなさいよ。あんたが羨ましがる必要ないから。この笑顔は、あんた用だってこと♪」
京太郎「っっ……お前、油断したとこに来るなぁ……ありがとよ、憧!」
憧「また……戻ってきてね、絶対」キュッ
京太郎「……ああ。オファー頼むわ」
灼「言っとくけど、私も笑顔だから……」ウルッ
憧「ちょっと潤んでるわよ」
灼「……花粉症で、ちょっとね」
京太郎「ありがとうございます、灼先輩」
穏乃「待ってるからね! 私も!」ガバァッ
京太郎「おうっ! 相変わらずの跳躍……ああ、待っててくれよ」
綾「お元気で……」ボロボロッ
よし子「もう一ヶ月、早いもんですよね。綾も寂しがりますんで、また来てやってください!」ペコッ
綾「あ゙い゙っ……ざみ゙じい゙でずぅっっ……」ボロボロ
凛「綾泣きすぎだってば」
ギバ子「お゙に゙い゙ざん゙ま゙だね゙ぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~っっっっ!!!!!」
春菜「今度は、その……どこか、遊びに連れてってください」
京太郎「小学生組も中学生組も、ありがとな……それに――」
初瀬「あ、の……ま、また! 電話とかメールとか、しますから!」
京太郎「サンキュー初瀬。」
やえ「私も……あっ、そ、そうだ! よければ連絡先を――」
京太郎「はい、喜んで……受験、頑張ってください」
やえ「あ、ありがとうっ……////」
由華「やえ先輩、真っ赤ですよ」
やえ「やかましっ……いいだろぉっ、私だって……こういのは、にわかなんだっ……」グシグシッ
由華「悪いとは言ってませんよ。可愛いし……ね、京太郎くん?」
京太郎「はい。由華さんも、わざわざありがとうございます」
由華「次会えるのは、来年の春かな?」
京太郎「はは、俺も頑張りますよ」
穏乃「むぅ~っ、なーんか晩成の人と仲良くなってるしぃ!」
憧「まーまー、結局はうちの子なんだし、それくらいいいじゃない」
京太郎「誰が子だ」
灼「だって年下だし」グッ
玄「可愛いし」グイグイ
宥「撫でがいあるものね~」ナデナデ
京太郎「……はい」
望「憧も撫でといたら?」
憧「逆のほうがいいから、パース」
穏乃「おおっ、憧ナイス! 私を撫でてよ、京太郎!」
京太郎「へいへいっと……って、望さん! 来てくれたんですか!」
望「まぁねー。それじゃまた会おうね、京太郎少年!」
晴絵「これで全員かなー……小5組は来てないのね。ま、面識ないなら退屈なだけか」
京太郎「やー、なんか大勢に見送っていただいて……賑やかでいいですね」
京太郎「あらためて言いますけど、ここでの生活、とても楽しかったです。皆さんと会えて、よかった……また戻ってきたら、よろしくお願いします!」
玄「おまかせあれ!」フンスッ
宥「また来てね、待ってる」フリフリ
憧「っ……絶対、来てよ……来なさいよねっっ!」ゴシゴシッ ニコッ
灼「京太郎は、私たちの大切なチームメイトだから」ウルッ
穏乃「いつだって、一緒だよ!」ニパァッ
京太郎「サンキュー初瀬。レギュラー取れよ、応援してる」
【11月最終日】
賑やかな見送り、ありがとうございました。
阿知賀だけでなく、阿太峯や吉野山、晩成の方に職場の方々にまで――俺は本当に、環境と人に恵まれていると実感します。
そんな人たちとは、いつも思うことだけど、別れ難いです。
でもそれ以上に、出会えてよかったと思っています。別れてもまた会える、とても幸せなことだ。
日誌もなるべく、怠らずに書くつもりですので、よければメッセージでも送っていただけると――。
いや、こんなことを書くと、その分メールか電話をしろと怒られそうだ。
あの無理やり笑ってたやつとか、怒りながら泣いてそ――いや、冗談です。
なので、なるべくメールにしたい……電話だと、ほら、時間が……すみません。
日誌の最後に、他校のみなさんに連絡を、というのもいいかとは思いますが。
それにしても、今回は本当に晴れやかな……しんみりとしない別れも、いいものだと感じています。
阿知賀の皆さん、ありがとうございました。またお会いしましょう。
――――――――
~阿知賀
「バカッ……誰、がっ……泣くかっ、バカァッ……うぐっ、うぅっっ……」ボロボロボロ
「はいはい、よく頑張ったわね……偉いえらい」ポンポン
「あ、憧、ぢゃぁぁぁんっ……」ボロボロ
「あ、あや゙ぁぁぁぁっっ……」ギュゥゥッ
「二人してさー、もうっ……そ、そんなの、わだじもぉぉぉぉっ……」ダバー
「お゙ね゙え゛ぢゃあぁぁぁぁぁ~~~~~~っっっっ……」ダバー
「……これは、また……宥さん、どうしよう……あっ」
「よーしよし、大丈夫だよ~……っ……ぐすっ……また会えるからね……」
「やれやれ、ほんと涙脆いんだから……灼も、今日のうちに泣いといたほうがいいわよ?」
「来年の春に取っといてあげる。京太郎と一緒にハルちゃん見送って、そのとき泣いてあげるからね」
「ほっほー、それで京太郎に慰めさせる作戦かぁ……晴絵の弟子は、あざといわねー」ニッシシ
「そ、そういうつもりじゃっ……」
「こらこら、妹のライバルはこの子だけじゃないでしょー、苛めないの」
【11月最終日、新幹線デッキ】
久『はーい、元気にしてた? あなたの久よ、マイダーリン』
京太郎「こいつは嬉しいね、ハニー……ってそのネタ、いつまで引っ張るんですか」
久『やー、なんか気に入っちゃってねー』
京太郎「……無理に強がったりとか、してませんよね?」
久『あら、心配してくれるの? ありがとー、でも大丈夫。あなたの部長は、そんなヤワじゃないわよ』
京太郎「ならいいですけど。で、次はどこになりました?」
久『はい、結果発表ー! 次の派遣先は……白糸台高校です!』
京太郎(尭深さんに菫さん、次点で淡……なかなかのおもち力だな)
京太郎「照さんたちの学校ですね。知ってるところになると、かなり気が楽になりますよ」
久『ふふっ、やっぱり初めての相手だと緊張しちゃうわよね? ま、顔見知り相手に、しっかり鋭気を養ってちょうだい』
京太郎「はい、ありがとうございます。では……あ、久々に家に帰って着替えの交換とか、カピの世話とかするんですけど、みんなには――」
久『会いたがってるわよ、みんな。だけど――これで会うのって、フェアじゃないでしょ?』
京太郎「他校の方たちに、ですか?」
久『色々なところで好かれてる京太郎だもん。派遣されなくても自由に会うなんて、それこそいい叩きネタになっちゃうわ』アハハー
京太郎「……俺が会いたいって、言ってもですか?」
久『休日に、帰ってくる分には問題ないわよ? まぁ連休しか無理だと思うけど』
京太郎「日誌でこのこと書いたら、部長は四人に嫌われますよね」
久『うーん、それは仕方ないかしら。ま、覚悟はしてるから、安心してちょうだい』
京太郎「――わかりました。なら、俺ももうなにも言いません。部長の指示には従いますよ」
久『……ごめんね』
京太郎「謝らなくていいですよ。俺が、部長の指示に従うって選択肢を選んだんです。逆らうこともできたんですから、ね?」
久『ありがと、ダーリン』
京太郎「気にすんなよ、ハニー。それじゃまた、機会があればお会いしましょう」
久『はーい、元気でねー』
【12月0日、入寮】
京太郎「――ふぅ、寮は結構便利だな。なにしろ家電を部屋に置かなくて済む」
京太郎「カピも久々に会えて喜んでたし、冬支度もオッケー……あとは、新しい制服かぁ」
京太郎「ブレザーは新鮮だな、学ランとはまた違って……ちょっとネクタイが面倒だけど、まぁ直に慣れるだろうし」
京太郎「一応、隣室と上下の部屋には挨拶しとこう」
京太郎「寮は驚きの6階建て、上から2階層ずつ一、二、三年で使ってるんだよな。で、ここが5階と――ふんふむ」
~~
京太郎「いやー、なんていうか、すげーいい人たちばっかだ。隣室なんて、麻雀部男子だし」
京太郎「俺の境遇、どんな風に思われてるか知らねーけど……ま、嫌われてないならなによりだ」
京太郎「でもさすがに、強く生きろってのはなくないか……? 一回清澄に来てみれば、いい所だってわかるのになぁ……」
白糸台男子麻雀部員一年
「うぉーい、須賀ぁ! 麻雀部――女子部主催でが歓迎会やるらしいから、あとで食堂集合な」
「厨房の使い方もわかってんだろ? 一品くらい振舞ってくれよー」
京太郎「おーう、了解。っつか名前なげーよ」
白糸(ry 改め、モブ田「じゃ、俺はこれからモブ田で。まぁ清澄の嫁田みたいなもんだ」
京太郎「あいつのこと知ってんのかよ! うわ、すっげー、懐かしい……なにしてっかなー」
モブ田「んじゃ伝えたから、30分後くらいに来てくれー」
~20分後
ピンポーン
京太郎「んぁ? そろそろ行こうと思ってたんだが……またモブ田か?」
京太郎「へーい、いま出るよーっと」ガチャ
誠子「やっ」
京太郎「!!!! す、すいません、誠子さんでしたか! そろそろ行こうかと――」
誠子「いや、気にしないで。まだいいんだけどさ、ほら……早くって言う人が多くて」
京太郎「あー、照さんですか……すみません、お手数を」
誠子「あと、淡もね。ま、それだけみんな楽しみにしてたんだよ。もう準備はいい?」
京太郎「はい。じゃあ行きましょうか、誠子さ――っと、誠子先輩」
誠子「ふふっ、律儀だね。ま、学校ではそのほうがいいかな、たしかに。さんづけなんて仲良くし過ぎって、怒られるよ」
京太郎「そうですね、照さんは先輩って呼ぶと逆に怒りそうですけど」
誠子「違いないや」クスクス
誠子「あ、そうだ。先に言っとこうかな、呼びに来た人特権ってことで――ようこそ、白糸台へ」
誠子「制服、結構似合ってるね。執事服も素敵だったけど、私はこっちのほうが好みかな?」
京太郎「――はい、よろしくお願いします!」
~学生寮、食堂
京太郎(男子寮と女子寮は隣――というか、同じ外見の建物が向かい合う形で建っている)
京太郎(一階のロビーと食堂は共用、そこから両側へ廊下や階段が伸び、エレベーターもそちら側専用)
京太郎(夕方5時以降の、異性寮への出入りは禁止。門限は10時、決まりはこんなところか)
京太郎(で、お昼から歓迎会をしてくれるのは、その食堂だ。前に掃除して使わせていただいたときと、設備もさして変わっていない)
誠子「――というわけで、今日から一ヶ月。彼は白糸台の仲間であり、麻雀部のチームメイトだ。共に切磋琢磨し、成長してほしい」キリッ
京太郎「よろしくお願いします、須賀京太郎です」
照「京ちゃん、待ってたよ。ずっといてね、私が卒業するまで」
淡「やっほー、キョータロー! 私の卒業までよろしく!」
「あ、あの宮永先輩が、なんてフランクな……」
「気難しい淡まで……だと……」
「さすが、伝説の魔王姉妹を調伏した、高天原の勇者っ……」
菫「……なんだその噂は、初めて聞いたぞ」
尭深「高校生雀士の中では、生ける伝説状態ですよ、彼……」
誠子「――では、皆グラスを持って……新たな仲間の歓迎を、乾杯!」
全員『乾杯!!!』
京太郎「よっと、ほっ……これで6品、か……」
菫「すまないな、来たばかりの……それも歓迎会の主役に、料理までさせてしまって」
京太郎「いえいえ、キッチンを使わせていただいて、ありがたいです。材料もいっぱいありましたし、助かりました」
京太郎「あ、お料理のご不満などあれば、遠慮なくお聞かせください」
菫「まさか、全員がおいしさに感涙してるよ。恥ずかしいことにな」
京太郎「ならよかったです、中華はまだ練習中ですから……そうだ、辛い物苦手な人って――ぁ」
菫「ふふっ、やっと思いだしたか。ああ、不満といえばそれだな……あいつだけ、端っこで拗ねてるよ。デリバリーのピザを齧りながらな」
京太郎「迂闊でした……まだご飯があるし、卵も……あとは鶏肉、野菜も……」
菫「ま――せいぜいしっかりと、機嫌を取ってやってくれ」
京太郎「了解です! 菫先輩!」
菫「……さん、でもいいんだぞ?」
京太郎「あー、まぁ……菫先輩を慕う、ほかの部員に睨まれますよ」
菫「それは平気だと思うが」
京太郎「どうしてですか?」
菫「君とは親しいと、この半月でほぼ全員に伝えておいたからな」フフッ
京太郎「」
菫「まぁ、睨まれたとしても頑張ってくれ……よろしくな、京太郎くん」
京太郎「……はい、善処します」
京太郎「――すみませんでした」
照「……うち、人数多いもんね。それは仕方ない。大皿の中華が一番、気軽につつけるから」モグモグ
京太郎「だとしても、味付けには注意しないといけませんでした」
照「……頭上げて。もう怒ってない、これでチャラにしようよ」モグモグ
京太郎「ありがとうございます……オムライス、どこか変じゃありませんか?」
照「おいしいよ! 京ちゃんのオムライスは、いつ食べても……すごく、あったかい」ポロポロ
京太郎「!? だ、大丈夫ですかっ……」つ□ フキフキ
照「平気。これは嬉しいだけ……っ……やっと来てくれたから、安心したの」ポロポロ
京太郎「――お待たせしてすみません、照さん」
照「来てくれてありがとう、京ちゃん」
京太郎「これから毎日、甘い物焼きますから」
照「期待してる。ずっといてなんて、無茶は言わないからね……こっちにいる間は、いっぱい話そう」
京太郎「はい、もちろんです」ニコッ
尭深「どうしたの、淡ちゃん?」
淡「うーっ、キョータローがテルーとお話してるのーっ、つまんなーい!」
尭深「一緒に話せばいいのに……いつもなら、気にしないでしょ?」
淡「だってさー、なーんかさー……入りにくい空気ーって感じでー」ブツブツ モグモグ
尭深「それで、桃まんやけ食いしてるの? お茶も飲まないとだめだよ?」リョクチャー
淡「あわっ! ウーロン茶じゃないの?」
尭深「日本ではそう思われてるけど、あっちでは緑茶主流だよ。ね、京太郎くん?」
京太郎「さすが尭深さん……っと。尭深先輩です、よくご存知で。ウーロン茶もご用意しましたけどね、ケータリングの飲茶がありましたから」
尭深「うん、さっきいただいたよ。脂モノには合うよね、お口がさっぱりして」
京太郎「今度は蒸し物、俺の手製で提供したいですね」
尭深「わぁ、嬉しいな」ニコニコ
淡「む~~~っ、こらーーーっっっ! いつまで甘ったる~い会話してるのっ、キョータロー、タカミー!」
京太郎「おっと、拗ねんなよ、淡」
淡「誰が拗ねてるのさ! ふふんっ、どうせ最後には淡ちゃんの元に帰ってくるでしょ、キョータローは! だから平気だよー」ベー
京太郎「たいした自信だな、お前は」ポンポン
淡「にょわっ……もうっ、髪は女の命だよ、気安く触らないの!」
京太郎「あー、アコにも言われたような……なら、触れてもよろしいですか、お姫様?」
淡「うむ、よきにはからえ♪」
京太郎「では……って、意味わかってんの?」
淡「……私に従いなさい?」
京太郎「いい方向に持っていけってことだよ。この場合のいい方向となると――触るなってことか?」
淡「!!! ん、や……そういうことでは、ないというか……」
京太郎「ではこのような形で、失礼します」ナデナデ
淡「あわぁぁぁ……ふにゃぁ♪」
「おおお、俺たちのあわあわが、あんな無警戒に……」
「おのれ須賀ぁぁぁっ!」
「だが待ってほしい。彼がああすることで、我々ではけして見られない、あわあわの表情を見られるのでは?」
「万理ある」
「なら見逃そう、むしろ推奨しよう」
「異議なし」
「がんばれ須賀! 俺たちの希望!」
京太郎「――なんすかあれ、こいつそんな人気あるんですか?」
尭深「夏以降……穏乃ちゃんと妹さんにやられてから、色々丸くなったからね。いまじゃ一年女子のまとめ役、全男子のアイドルだよ」
京太郎「気難しいって意見もありましたが?」
尭深「一部はね、夏までの印象が強いみたい。いまはそんなことないから、可愛い女の子だよ」ニコッ
淡「えへー、そうだぞー? そんな私の髪を梳かせるキョータローは、さて、何者かな?」
京太郎「はいはい、三国一の幸せ者ですよっと」
淡「そこは日本一……いや、世界一? いやー、宇宙一でもいいよ、あはっ♪」
京太郎「ちなみに、三国一の~ってときの三国、どこかわかるか?」
淡「なんだっけ、ギ、ゴ、ショクだっけ?」
京太郎「日本、中国、インドのことな。そういや、来週はテストだ――」
淡「わー!」
京太郎「テス――」
淡「ぎゃー!」
京太郎「……桃まん、うまいか?」
淡「うん♪」
尭深「テスト勉強、始めないとね」
淡「またノーマークだった!」
京太郎「ほんっと嫌いなんだなぁ、そんなんじゃ留年するぞ?」
淡「大丈夫だいじょうぶ、特待生だからねー」
京太郎「それでも、ちょっとはできないと体面悪いだろ……俺でよければ、教えてやるから、な?」
淡「えっ……キョータロー、教えてくれんの!?」
京太郎「ま、同じ一年だしな。助け合おうぜ」ナデナデ
淡「わふーっ、やったー! じゃ、優しくお願いね♪」
京太郎「へいへい、前向きに検討しますよ」
淡「よきにはからえ、だよ!」
京太郎「はいはい、はからうはからう」
尭深「ふふ、仲良いねえ。兄妹みたい」
~12月0日、終了
~12月第一週月曜
京太郎「……そういえば、寮の食堂では基本的に飯があるんだよなぁ……」
モブ田「弁当もつくぞ。女子団体の二連覇、宮永先輩の春夏二冠、夏二連覇なんかで、色々潤ったからなぁ」
モブ子「さらに寮にはジムまである! すごい、すごいぞ、白糸台! 負けるな我らの白糸台!」
京太郎「お前らは兄妹かなにかなのか……」
田・子『他人です』キッパリ
京太郎「……まぁ、ジムがあるのはありがたいな。ロードワークも筋トレも、多少は楽になりそうだ」
モブ子「さすがに大浴場は別だけどねー。まぁ? 京太郎が一緒に入りたいなら許すけどぉ?」チラッ
モブ田「お、お兄ちゃんは許しませんよ!」
モブ子「すまぬ、兄上……」
京太郎「やっぱ兄妹なのかよ」
田・子『他人です』イェーイ
京太郎(そこはかとなくうざい……)
京太郎「……あっ、もしかして麻雀部って朝練とかあるのか?」
モブ子「あるけど自主練だよー。だから私はここにいるわけだ」
京太郎「なるほど……けどさすがに、夏レギュラーとか、各チームの人たちはいるだろうな」
モブ田「だろうな。お前のサボりは評価下がるぜ、くくく……」
京太郎「今日は登校初日だからゆっくり登校しろって、菫先輩からメールもらったよ」
モブ田「」
~朝のHR
「――あー、というわけで。一ヶ月の在籍となる、須賀京太郎くんだ」
「麻雀部所属、同じ部員は助けてやってくれ。では挨拶を」
京太郎「はじめまして、長野清澄、鹿児島永水、岩手宮守、奈良阿知賀と渡ってまいりました、須賀京太郎です」
京太郎「至らぬところもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。このクラスは麻雀部員も多く、頼りにしています」
京太郎「……頼りにしてるぞ」ポン
淡「まっかせなさい!」
京太郎「不安だ……まぁでも、知り合いがいるのは心強い。よろしくな」スッ(握手求め)
淡「任せろキョータロー!」ギュゥッ(抱擁)
京太郎「抱きつくな!」
「ざわ……ざわ……」
「なに、淡ちゃんの彼氏?」
「か、髪色一緒やし兄妹やろ(震え声)」
淡「キョータロー、誕生日いつ?」
京太郎「2月」
淡「私は今月だよ! 私がお姉ちゃんだね、姉弟だ!」
京太郎「はいはい、よろしくお姉ちゃん」
淡「♪」
~お昼
京太郎「疲れた……」
淡「…………」ムッスー
京太郎「おいおい、どうした姉キ」
淡「ふーんだ、女子にも男子にもチヤホヤされて、デレデレしちゃって! やーらしー!」ベー
京太郎「……あとで、学校の案内してくれないか?」
淡「!! ふ、ふーんだ……誰かにしてもらえばいいでしょー」
京太郎「お前にしてほしいんだけど」
淡「ぅ……ま、まぁ……そこまでいうなら、してあげても……」
京太郎「頼むわ。調理室さえ把握できれば、色々作ってやれるし」
淡「あわぁっ♪ よしっ、それならしてあげる! 放課後ねっ、部活前にね! 約束ね!」
京太郎「サンキュー、さて……と」
京太郎(今月、クリスマスだからなぁ……)
京太郎「さて、チマチマと始めてみますか……」
淡「なぁに、それ?」
京太郎「内緒――じゃなくてもいいか。四週にクリスマスパーティやるんだろ? その準備」アミアミ
淡「すごっ、編み物もできんの!?」
京太郎「ちょっとだけな。今回のは本気だから、昼休みいっぱいは使おうと思ってる」
淡「すごぉぉ……ねっ、ねっ、見てていい?」
京太郎「退屈だぞ?」
淡「いーもーん♪」
~五分後
淡「ふわぁぁ……ねー、なんかお話しよーよー」
京太郎「だから言ったのに……まぁいいか。なら、来週のテストの話でも」
淡「ぎゃーっっ!」
最終更新:2026年01月17日 00:02