京太郎「たっぷりと」
淡「私の笑顔を想像して?」
京太郎「喜んでほしいなって思ってたよ、ずっとな」
淡「うぇへへへへへ……えへへへ、えへぇぇぇ……ふふっ、うふふー♪」ニヨニヨ
京太郎「顔、すげー崩れてるぞ」
淡「だって嬉しいもーん。次あれー、お肉のチューリップ♪」
京太郎「よっと……どうぞお姫さま、あーん」
淡「はむっ♪ もぐもぐ……頭撫でて」
京太郎「はいはい」ナデナデ
淡「髪梳きながらねー」モグモグ
京太郎「仰せのままに」ナデナデ
淡「あわぁぁぁ……えへへへへへ」
菫「ブラックコーヒーでも飲もう……あまっっ! 誰だ、私のブラックに砂糖を入れたのは!」
照「……大丈夫、今夜だけだから、明日には戻ってるから……今夜だけ今夜だけ今夜だけいまだけいまだけ」
尭深「すごいね、大惨事だよ」
誠子「尭深、楽しんでるね……もう私、料理に集中しとこ。どれもおいしいからね、やっぱり」モグモグ
淡「ずーっとね、朝からだよ? ずーっとだよ?」
京太郎「はいはい、悪かったって……俺だって朝から我慢してたんだよ。おめでとう、淡」
淡「ありがとー、キョータロー♪」
京太郎「んー……そろそろ、料理も底だな。よし、ちょっと降りてくれるか、淡?」
淡「やだ」
京太郎「即答だと……いや、ちょっと厨房に行かないと。ケーキ持ってこられないしさ」
淡「わっ……もー、勝手に降ろしちゃだめ! 私も連れてけー♪」ピョンッ、ムギュッ
京太郎「こらっ、背中に掴まんなって……おうふっ、首がっ……肩にしろ、手回すなら」ヨイショッ
淡「えへへー、やっぱおっきいねー、キョータローは」
京太郎(……やばい、この体勢は……)
淡「? どしたの?」ムニュムニュ
京太郎「い、や……なんでも……」
淡「変なのー、まぁいいや。ほらー、ケーキはよ!」
京太郎(でかいな、うん……すげーわ。まぁ、シロさんほどじゃないけど……あの人もよく、乗ってきたからなぁ……)
京太郎(……って、いかん! いいのか、俺はこのまま……こいつをおぶったままで、いいのか? 紳士としては、やることがあるだろう?)
京太郎「……よいしょ」ムニッ
淡「!? あっ、わっ……い、いま、その……私、の……お、おし……」
京太郎「すまん、オシリスの天空竜に当たったのはわざとじゃないんだ」
淡「う、うん……しょうがないもんね! 私、落ちかけてたし!」
京太郎「そうそう……あ、ちょっと支えるぞ。おんぶなら、ちゃんとしないと実は危ないから」ムニッ
淡「はふっっ……あっ、うっ……んっ……そ、そこ……」
京太郎「悪い、太ももだけど……そこでも支えないと、そっちだけ掴まってても疲れるだろ?」
淡「んっ……わ、わかってる、から……くふっ、あっ……んっ……」
淡(うぅぅぅっ……なんか、そこ……さ、触られると、思いだしちゃうっ……んっ、やっ……)ゾクゾクッ
京太郎「ほい、到着。ちょっと降りてくれ、さすがに。ケーキださないとだからさ」ヒョイ
淡「あ……うん、ごめん……わおっ!」
京太郎「あ、こら見るなよ。一応箱に入れて、と……」
淡「見ちゃったー♪ でっかいね、チョコレート♪」
京太郎「気合入れたからな、当然だ」
淡「それも……私のため?」
京太郎「もちろんです、お姫さま」
淡「ふへっへへぇ……ローソク、忘れてない?」
京太郎「ちゃんと買ってあるよ。向こうでつけるから、それから消すんだぞ。ちゃんと一息でな」
淡「ふわーい。えへへっ、ありがと♪」
『……ハッピバースディ、トゥーユー』
淡「ふーーーーーーーーーーーーーーーーーー……いよしっ、消えた!」
「おめでとー」
「立派なケーキだな、買ってきた――わけないか」
「これはクリスマスにも期待できそうね」
京太郎「よーし、切るぞ……あ、これはカット用だけど、人数分足りるように、小さいのもいっぱい作って冷やしてるから。悪いけど、誰か取ってきてくれ」
誠子「相変わらずの手際だね……」
菫「慣れ、というものなのか……」
京太郎「ほい、これが淡の分な。上の板チョコもな。ほい、どーぞ」
淡「違うでしょー?」
京太郎「……あーん」
淡「はむっ♪」パリッ
淡「はむはむ……ん~、甘いっ、おいしっ♪ お返しあーげるっ、はいあーん」
京太郎「えっ」
淡「あーん?」
京太郎「…………」
淡「…………下着」ボソッ
京太郎「いや、そうじゃなくて……まぁ、いいか……いいんだな?」
淡「? いいよ? はい、あーん」
京太郎「いただきます……あーん」パクッ
淡「!? へっ、ひ、一口で……私が、口つけたとこまでっ……///」
京太郎「だからいいのかって……うん、冷やしたから余計にしっかり味が引き立ってる」
淡「あ、わ……あわぁぁぁぁぁ……っっ///」
京太郎「こっちのケーキ本体も食ってくれよ。ほい、あーん」
淡「あわ……あわーん……はむ、もぐもぐ……っっっ!!!! おいしいっ!」パァァッ
淡「こっちもお返しあーげる! はい、あーんして♪」
京太郎「フォーク、変えなくていいのか?」
淡「うっ……ま、まぁ? もう気にしてもしょうがないでしょ?」
京太郎(齧ったチョコと口に含んだフォークじゃ、全然違うだろうに……ま、いいか)
京太郎「あーん……もぐもぐ……うん、うまいな」
淡「じゃあ次はこっちー」
京太郎「どうぞ……あーん」
菫「……た、誕生日で少しハイになってるだけだ……明日には淡も恥じらっているだろう、きっとそうだ……そうに決まってる(震え声」ブツブツ
照「微笑ましい光景だと思う言うなれば兄と妹もしくは弟と姉であって私と京ちゃんならもっと――」
誠子「先輩方の動揺がすごい……けどほんと、目に毒だねー、これは///」
尭深「写真、撮っておきましょう」パシャパシャ
誠子「――そろそろ、お開きにしよっか?」
菫「そ、そうだな! 淡も、もう十分堪能しただろう? そろそろ降りたほうがいい、うん」
照「菫の言う通り。明日も学校だし、あまり遅くなってもよくない。解散にしようか」
尭深「諸々考慮すれば、そのほうがいいですね……淡ちゃん、それでいいかな?」
淡「うん、今日はありがとね、みんな♪」
「あわいい」
「ああ、あわいいな」
「これだけあわいければ、年越しも耐えられる……ありがたやありがたや」
京太郎「さて、それじゃ俺は片づけを――」
淡「キョータロー、お部屋まで送って♪ このままで」
京太郎「」
照「」
菫「」
誠子「」
尭深「……京太郎くん、よろしくね?」
京太郎「…………」
京太郎「すまん、さすがにこんだけの片づけは人に任せられん……」
淡「えーっ……んー……わかった……」
京太郎「すまん……」
淡「いいよ、終わるまで待ってるから」
京太郎「ああ、今日はこれで――えっ」
淡「だから早くねー。あ、お茶淹れてってくれると嬉しいなー」
京太郎「」
菫「……もう、いいか……私は先に戻るよ、疲れた……」
照「お風呂で熱いお湯浴びて、寝て起きればいつもの日常……京ちゃんが甘い紅茶淹れてくれてる……はず……だよね……」
誠子「宮永先輩、こっちです。段差に気をつけて……涙拭きましょうか」
尭深「……それじゃね、京太郎くん?」
京太郎「了解です……」
「お疲れー」
「悪いな、片づけまで」
「なにか手伝おっか?」
京太郎「気持ちだけもらっとく。ありがとよ」
京太郎「さーて、それじゃ始めるか」
淡「……ねぇ、キョータロー」
京太郎「おー、どうした?」カチャカチャ
淡「あのね、その……今日は、ありがとう……色々と……みんなにもだけど、やっぱり……一番は、キョータローだと思う、から……」
京太郎「どういたしまして。いいんだって、最初にも言っただろ? お前が生まれてきた日なんだから、ちゃんとお祝いしないと」
淡「……ん、そっか……ありがと……い~っぱい、ありがと♪」
京太郎「なんだよ、いっぱいって」
淡「んー、色々……今日だったら、お料理とか、わがまま聞いてくれたりとか……それ以外なら、一緒にいてくれたり、起こしてくれたり、勉強見てくれたり」
京太郎「――気にするな、淡のためだからな」
淡「――な……もう、ばか……ばか……キョータローの、バーカ……えへへぇ……」
京太郎「なんでだよ……ほい、おーわりっと」
淡「終わり? じゃあお部屋!」
京太郎「おう、けど……その前に、ほれ」
淡「??」
京太郎「改めて……誕生日おめでとう。それは俺からのプレゼントだ」
淡「えっ――」
京太郎「なんだ、意外か?」
淡「う、ううん! じゃなくて……料理が、プレゼントかと思ってて……」
京太郎「あれはみんなの分もあっただろ? これは、俺から――お前だけに、用意した分だ」
淡「あ、わ……うっ、くっ……」ゴシゴシッ
淡「ありがとっ……ありがとう、キョータロー!」
淡「ねっ、開けてもいいっ?」
京太郎「もちろんだ。気に入らなかったら、まぁ遠慮なく言ってくれよ」
淡「もちろん♪ 私のセンスは厳しいからねー」ガサガサ
淡「…………わぁ!」
京太郎「お前の誕生日の石、探したら髪飾りがあったから……お前の髪、綺麗だしいいかと思ってさ」
淡「星、ついてる……」
京太郎「名前に合うと思ってな……どう、だ?」
淡「うん……うんっ……嬉しいっ……すごく、嬉しいっ……」
京太郎「……ならよかった」
淡「ありがとう……大事に、するね……ね、どうかな?」
京太郎「……似合う、すげー似合うぞ」
淡「えへへ、素材がいいからね♪」
京太郎「まぁそうだな」
淡「……だけど、プレゼントもいいからだよ……ありがと、ほんとに」
京太郎「……おう」
京太郎「はぁー……気に入ってくれて、よかったな……」
京太郎「……まずいな、淡の顔が……頭から離れん……どうも、顔が熱い……」
京太郎「どうするかな、熱を冷ましたいんだけど……この状態で、誰かに連絡して大丈夫なのか……」
京太郎「……せっかくジムがあるんだし、ひと汗流すかな」
京太郎「そういえば、テスト期間はあんまり鍛錬できなかったし、ちょっと気合入れて頑張るか……」
京太郎「……ふぅ、いい汗かいたな……」
京太郎「さて、あとはシャワーでも浴びて……あったまれば、ゆっくり寝られそうだ」
京太郎「……寮にジム、これは本当に羨ましいな……」
京太郎「こんな施設を、清澄に作ることもできたってことだよな、なのに――」
京太郎「部長は、その権利を俺のために使ってくれたんだよな……意図はわからないけど、それには感謝しないと」
~12月第三週月曜、終了
【12月連休】
今月の連休は岩手で合宿だった。場所は懐かしの宮守女子。
早い冬休みに入っていたこともあり、生徒のいない校舎での合宿。
場所自体も懐かしいものだったが、一番はやはり、麻雀部の先輩方だ。
熊倉先生、それにみなさんも、お元気そうでよかった。
今回の合宿は、プロ入りの決まったSさんと受験生のS先輩を交換する形で、受験勉強組と麻雀合宿組にわかれて活動。
とはいえ初日は麻雀ができました。
テスト勉強、テストと部活できない日が続いていたので、久しぶりの麻雀はとても楽しめた。
まぁ来週からの放課後はみっちりと部活なわけだけど。
さて、その麻雀ですが、自分が打ったのは初日と二日目の午前。
色々打って疲れたけど、TさんやSさんに褒められたのは、すごく嬉しかった。
また、ご指導に来てくださったプロの方々もありがとうございます。
呼んでくださった熊倉先生も、ありがとうございました。
それ以外は受験生組と、勉強をさせてもらった。
自分のことをやりながらだったので、うまく教えられたかはわからないけれど……来年の春には、みなさんが志望校に合格していることを願っています。
そういえば、麻雀を打っていて思ったことが一つ。
宮守の方々と打つと、よく勝てている気がする。
とはいえ、みなさんが弱いなんてことではない、そりゃそうだ。
おそらく相性がいいということなのだろう、一緒に卓を囲むと非常に打ちやすい。
ようするに、毎局かなりツイているってことだ。
でもおかげで、Sさんには少しいい所を見せられたかな、と思ってます。
これを実力にできるよう、もっと上手くなりたいもんだ。
…………
『そこ恥ずかしいセリフ禁止!』
『相性かぁ……それはもちろんいいと思う、だって……京太郎と私たちだからね』
『ううう、うれしいよー! ちょーうれしいよー!』
『まぁ、そう思われて悪い気はしないわね。カモにしてる、とかじゃないんでしょ?』
『英)京太郎がそう思ってくれるって考えるだけで、すごく幸せな気分よ』
大絶賛いただいた。うーん、照れる。
『私たちでは、お役に立てませんか……?』
『そんなことないよね? きっと私たちとももっと打てば、相性がいいってわかると思う……京太郎が良子姉さんに勝ったとき、一緒にいたのは私たち』
『そうですよー、なんだったら全校合宿でもなんでもして、どこが一番か確認するですよー』
『それがいい。どこの学校かわからないけどいいこと言う』
『……そもそも、我々とはあまり練習していないだろう? 残るは半月だが、それだけでも十分相性は磨かれるはずだ』
『そーだよ! 合宿二回でちょっと絡んだ程度じゃわかんないでしょー!』
『ふきゅっ! か、絡むとか、いきなりなにをっ……』
『私のせいかなぁ……私が三倍満上がったから、相性悪いって思われてるの?』
『大丈夫、京太郎くんはどこかが悪い、なんて考えないよ~』
大不評である……あとでフォローしておこう。
『名前を呼ばれてしまいましたし、少しだけ。京太郎と最初に打ったプロは私です、いわば最初の師匠。まさか、その師と相性が悪いなんて言わせませんよ?』
『私が教えたら……秋の予選で……だめだったもんね、ごめんね……』
『私の教えを活かして勝っている、という記事もたまに見ますよね。これは相性がいいってことにならないかな?』
『私もそうです。お教えできる機会があれば、立派に指導してみせます。お約束します』
『私だってまだ指導してねーんだぜぃ? ま、相性とかは知らんけどね』
そしてこの延焼である。だから違うんだってば……こっちもフォローかな。
『ごめんね、京ちゃん……本当に、ごめんなさい……』
『すみませんでした、京太郎くん……』
『悪かったじぇ、京太郎……』
『ほんに、すまんかったのう……この通りじゃ』
やべぇ。
――――――――
~清澄
「――会長はなにも書かれないんですね」
「あら、私になにが言えるっていうのかしら? 事実は事実よ、私は悪の元凶……あなたたちとは違うからね、気にしないで」
「まーたそういうことを……」
「久さんがそういうなら、私たちだって……」
「あの頃の私にあったら、タコス没収してやるじぇ……本当に、馬鹿だじぇ……」グスッ
「優希、泣いてはいけません。あなたが泣いたら、一番気にするのは京太郎くんになりますから」
「わ、わかってるじぇ! これは心の……サルサソース、なんだじぇ……」
「なにそれからそう」
~白糸台
「部活……本気でやらないと」
「……わ、私も参加しよう。思えば部活での対局は初めてになるからな、うん……」
「そこまで気にしなくても大丈夫だと思いますけど――」
「なに言ってるの亦野先輩! 天下の白糸台が、よそに負けてるって言われて引き下がれないもん!」ガルー
「誠子、空気読まないと……」
「いや、だって……京太郎くんはそんな、誰かが悪いなんて言う人じゃないでしょ……いい子だしさ」
「誠子はいいこと言った、このお菓子あげる」ハイ
「!?」
「なん……だと……」
「テルーが、亦野先輩に……」
「あ、ありがとうございます……」
~宮守
「また勝利してしまった……」
「敗北を知りたいよー」
「これで名実ともに、京太郎くんはうちの子だね!」
「そんな風に思ってくれてたなんて……すごく、嬉しいなぁ……」グスッ
「サエ! ナカナイデ!」
「いいのよ、エイスリン……これはね、うれし涙なの……うっ、うぅぅ……」
「涙脆いなぁ、塞は……」
「感動屋だもんねー」
「豊音がそれ言っちゃう?」
「ダガソレガイイ!」
~永水
「……大丈夫、最初の派遣先はうちだった、から……良子姉さんと対局したあの瞬間、京太郎はなにかが違ったし……絶対、私たちも特別……」
「わ、わかったから、はるる……一旦お湯のみ置こう、ね? こぼれちゃうよ、そんなに震えてたら」
「落ち着いたように感じてましたけど、まだまだ子供ですねー」
「はっちゃんも相当動揺してたけれどね……全校をお招きするのは、予算も会場も大変そうだわ」
「えっ、永水でお招きするんですか!?」
「もちろんよ、小蒔ちゃん。だって――京太郎くんがうちに戻ってきたときの話なんですもの、ねぇ?」ニコニコ
「かか、霞が本気ですよー」
「……無理に、想ってはもらいたくない、けど……悪くは、想われたくない……ごめんね京太郎、私、わがままなままだ……」
「はるる、それは我儘じゃないないよ。誰だって、大切な人にはそう考えちゃうもんだからね」ナデナデ
なお――十数分後にフォローの記事が上げられ、各校の士気は戻ったと言われている。
宮守勢は逆に消沈したのだが――それはまた、別の、話。
~おまけ、というか忘れてた阿知賀
「……私の、指導が……悪かったのかなぁ……」ゴロゴロ
「んー、そうなんじゃなーい?」
「灼とか、ハルエとか、プロの人たちはちゃんとやってたしさぁ……たぶん私のせい、だよね……」モゾモゾ
「かもねー」
「京太郎……阿知賀のこと、嫌いになるかな……」グズグズ
「そだねー」
「!!!! ならないわよっ、あいつはそういうやつじゃないもん!」
「自分で言ったんでしょうが……」
「否定してほしいのっ、もう!
お姉ちゃんどっか行っててよ!」
「はいはい……まったく、我が妹ながら面倒だわー……でもそこが可愛いのよねー、ね、飲まない?」
『テスト終わったしいいわよー、そっち行くわね』
「え、うちはまずい……あ、ちょっ――切りやがった」
「私のせいですよね……合宿の、三倍満の……ほかにも、練習で……ほとんどフルボッコに……」
「だだ、大丈夫だよ、穏乃ちゃん! 京太郎くんは、そんなの気にしないよ!」
「私の指導も、ちゃんと通じてるはずだから……気にする必要な……」
「それに、いつだったか穏乃ちゃんと憧ちゃん、それと私で打ったときに、トップだったからね……大丈夫、そんなの気にする京太郎くんじゃないよ」ナデナデ
「だったら、いいんですけど……」
「あの元気な穏乃ちゃんが、ここまで……」
「京太郎に懐いてたからね……ちゃんとフォローしないと、許さな……」
「大丈夫だいじょうぶ、すぐに新しい記事がくるよー」ニコニコ
十数分後の記事を見て、神社の娘さんも和菓子屋さんの娘さんも、安堵したそうだ。
――――――――
【12月第三週月曜、Aの誕生日】
今日は部員の誕生日、夜に寮で、ちょっとしたパーティーを開く。
喜んでくれたなら嬉しい、本当におめでとう。
思えば、このAがいないと俺は、クラスに馴染むのも時間がかかったかもしれない。
自分で思っている以上に、彼女の存在に助けられていると、少し感じた。
他校でも、似たようなことはあったな、そういえば。
なんだかんだで、麻雀部に同い年がいるのは助かる。同じクラスならなおさらだ。
なんてことを書いてたら、またAに怒られそうだ。
せっかくの誕生日に違う人の話題を――とか言ってな。
でも怒ってる女の子はわりと嫌いじゃない、そういうとこが可愛いってこともある。
とはいえ、怒らせないようにはしないといけないが。
内輪の話はこのくらいにして、今日の部活のことも。
プロのお二人が、撮影の合間の時間を使って訪ねて来てくださり、ご指導くださった。ありがたい限りです。
局からはかなり離れた学校までいらしたということは、また近くで撮影だったのだろうか。
買いだしに行けば、またそういう、仕事をしているプロの方々を見られるのかもしれない。
やっぱり仕事をしている大人はかっこいい、自分もそんな大人になれるよう、精進しなければ。
…………
『別に怒らないよー? すごくね、嬉しかったから! それにキョータローを助けられたなら、大満足!』
『ま、まぁ? あたしだって、その……同じクラスになった縁もあったし、ちょっとくらいはさぁ……』
『最初の同じクラスは、私……会ったばかりの頃は、変な態度取っちゃったかな。恥ずかしい……ごめんね』
『うちはみんな三年だったからね……なにか困ったことなかったかなって、今更考えてる』
『わ、私は中学三年間、同じクラスだったよね!』
『高校では、私と……』
『私もだじぇ! 嬉しいだろー?』
そういや、咲とは別のクラスだからな……あいつ、クラスで浮いてないだろうな。
で、和と優希が同じクラス……その縁で麻雀部にも入ったんだ、懐かしい。
派遣先だと、春、憧、んで淡か……あ、モブ子もか。宮守ではあいつの世話になってたな。
永水では春と仲良くなるの、時間かかったもんだ……それまではモブ子に救われてたのか、なんか悔しいぞ。
『あちゃー、うちも一年レギュラーおらんやん……いまのメンバーには入ってるんか?』
『どうでしょうね。まぁ新レギュラーなら一人くらいは、一年が入る余地もあるかと思いますけど』
『お姉ちゃんら三人も抜けたからなぁ……いまは二年だけやで。春の前には、また選抜するけど』
『南はしゃーないなー。あ、北は安心してや、高一最強の女子がおるから』
『やめてくださいっ、そういう変なフレコミするんは!』
『打ち上げのとき、自分で言うてたからや』
『うちも、伝統的に一年ばレギュラーには入れん……10年前の野依プロは特殊やったと』
『大丈夫ですよ、下の学年は私がフォローしますから。長野では、中学のとき部長でしたし、ええ』
『私らだと、一年は一人だねー。でもバツグンに可愛いから、期待してなよー?』
『男子がくるのは楽しそうですね、同じクラスなら確かに、可能性は私だけです』
『衣装と同じで、全然抵抗しないなぁ……ちょっと心配です』
『こちらは二人ですが……残念、私は二年ですからね』
『私も、もう春には卒業ですカラ……』
『お金かからないなら、同じクラスがいいかな?』
『かかりませんよ、大丈夫です。私たちは同じクラスですから、どちらも同じか別れるか、ですね』
『……もう迎え入れる気満々だな、お前ら……』
そっか、夏にレギュラーだった一年がいないと、一軍つきのマネージャーとしては困るんだよな……。
ま、その辺はこっちで上手いこと対応しよう。そのための、日々の修行なんだからな。
『……それよりも、その……パーティーでの君の行動なんだが……いや、なんでもない……』
『明日からはいつもの京ちゃんに戻る、私は信じてるからね』
『写真、いりますか? よければこちらにアップしてもらえると、誕生日会がみんなも楽しめていいかと』
『あの写真はだめでしょ』
『えっ……と、撮ってたの!? あわわわわわわ……だ、ダメだからね! 掲載禁止! ケンエツだよ!』
そんな恥ずかしいことだったか?
俺なんて、でかい図体くらいしか取柄ないんだから、おんぶも抱っこも喜んでさせてもらうけど。
それで役に立てるんなら、なおさらな。
シロさんなんて、ことあるごとに背負ってたし。
『撮影はそちらのほうでしたから。近くにいるなら休憩中に、ということで寄らせていただきました』
『――まぁ、本当は局内でしたが』
『……どうしてバラすのかなぁ、京太郎くんが気を遣っちゃうでしょ?』
『そう思うのであれば、本当についでのあるときに出向くべきでは?』
『そうですよ。まだ彼の指導に伺えていないプロもいるんです、もっと気を遣ってください』
『大丈夫だった、京太郎くん? 変なことされてない?』
『そんなことしません!』
『……あぁ、あの二人か。いや~、従妹のためとかっつって、あいつもやるもんだね~、いや、誰か知らんけどねぃ?』
『飛び火させないでください。私は連絡が届かなかったから、足を運ぶことになっただけです』
『――とりあえず、一回集まろっか。ここでの糾弾は、見てる方々にもご迷惑だよ』
申し訳ないな、とは思うけど……わざわざ教えに来てくださったんだから、文句なんかはないかな。
それに気を遣ったりはするけど、普通にお客様へ対応するのと同じレベルだし、問題はない。
……記事、追加しとくか。事前にご連絡くだされば、歓迎です、と――よし。
――――――――
~清澄
「あ、あの、咲さん?」
「いいもん、別に気にしてないもん……来年は、同じクラスになれるもん、絶対だもん……」
「泣くな、咲ちゃん! 部長、会長! 慰めてやってほしいじぇ!」
「わしらは同じクラスになれんけぇ、可能性があるだけでも羨ましいんじゃが……」
「まぁ来年、うちに何ヶ月いるかわかんないけどね」
「ちょっと会長!」
「う、うぅぅぅぅっ……」ブワッ
「久ァ! あんたまた、余計なことを……ほれほれ、泣いとったら余計に、幸が逃げるぞ?」
「ごめんごめん、冗談にしても性質が悪かったわね。まぁ大丈夫よ、少なくとも3月には会えるから、ね?」
「? なんで3月なんだじぇ?」
「ほら、3月って卒業式があるじゃない」
「ありますね……それが?」
「私が卒業するんだし、きっと見に来てくれるわよ。そのとき、しっかりアピールして、戻ってきてもらえるようにしときなさい」
「……そうですね。久さんの卒業式ですもんね、京ちゃんならきっと戻ってきますよね」
「まぁ、期待せんと待っとくか……」
「ちょっ、なんでよ!」
~白糸台
「渋谷! お前いま、写真送っただろ!」
「ええ、綺麗に撮れましたから……大丈夫です、アップするかは京太郎くん次第ですから」
「しないと思うけどなぁ、変な誤解されたら淡に迷惑だって考えそうだし」
「そうだね。京ちゃんはそういうとき、自分のことより相手を気遣うから」
「ならいいが……ところで、その淡はどこだ?」
「真っ赤になって部屋のベッドで転がってたので、そっとしておきました」
「……それはよくやったな」
「誠子も、気が利くよね?」
「えっ、私の評価低くない?」
「安心して、私と菫、あと三年はちゃんと評価してる。じゃないと、部長は任せない」
「あ、ありがとうございます!」
「……新しい記事が追加されましたよ」
「!?」
「!?」
「大丈夫ですってば。プロのご指導がいただけるなら歓迎ですっていう、フォローの記事ですよ」
「べ、別に心配などしていない!」
「私は京ちゃんを信じてるから」
(そのわりにはすごい顔だったけど……とは言わない)
(誠子も危機察知が鋭くなったよね)
(こいつ、頭の中に直接……っ)
(Lチキください)
(ちくわ大明神)
(小声で会話してるだけでしょ)
(待って、いまの誰よ!?)
~永水
「もう! 京太郎の……ば、バカっ……し、知らないっ……はぁ……」
「……あの、はるるはなにを……?」
「怒ってる女の子も可愛いそうなので、怒る練習をしているそうですよー」
「微笑ましいですね!」
「あらあら、可愛らしいわね……私もよく怒ったけど、それもよかったということかしら?」
「どうでしょうかー。霞のは可愛いじゃなく、普通に怖い怒りですからねー」
「特に藤原利仙さんが絡んだときなんて、それはそれは――」
「あ、あの、そのくらいにしたほうが……霞ちゃんが、涙目に……」
「……そんなことないもの、京太郎くんのためにしたんだもの、嫌われてないわよ……」クスン
「怒ってるより、こっちのへこんでるほうが可愛い感じですねー」
「優しい怒り方、なんて研究してもいいんじゃないですか? 霞ちゃんは包容力ありますから」
「そ、そうよね? こんな感じかしら……んんっ……」
「も、もう、だめよ、京太郎くん? いけないコなんだからぁ……これは、オ・シ・オ・キ……優しくしてあげる、ふふっ……」
「お仕置きは可哀想だと思います……」
「それ以前の問題ですねー、あれは」
「でも京太郎くんなら喜びそうですね、男の子ですから……はぁ……」
「きょ、京太郎なんて、あっちに――あっちに、行って……や、やっぱり行っちゃやだ!」
「いつまでやってるの、はるるは……」
「しかも最後は怒ってませんよー」
「やっぱり仲良くが一番ですね!」
~宮守
「そうよね、麻雀部に馴染んでくれることばっかり考えてたけど――」
「うん。学校に馴染んでもらうためには、なにもできてなかった……」
「ワタシガ! ワカッテ、アゲナイト……ダメ、ダッタ……」ショボン
「エイちゃんも、留学してきてしばらくは大変だったもんね……でも、エイちゃんは悪くないんだから、気にしないでいいよ」
「そうだよー。それに、みんながエイスリンさんにしたこと、私にしてくれたこと……全部、京太郎くんにはあげられたはずだよー」
「うん、まぁ……同学年なら、それでいいんだけどね……一年生だったんだから、もっとなにか、あったんじゃないかなぁって」
「京太郎、しっかりしてたからなぁ……私たちも甘えてたね、そこに」
「シロハ、トクニ!」
「うーん……でもさぁ、私思うんだ。白糸台のみんなといた京太郎くんと、私たちといた京太郎くん……どっちも、大きくは違わなかったよ」
「そ、そうだよー……そうだよ! それにっ……次に、この反省を活かせばいいんだよー!」
「次って、もうすぐ私たち卒業……」
「……ああ、そうか。そうだね、次に活かしてよ……私は、あんまり手伝えないけど」
「!!!! ソウ、ツギガンバレバ、イイ!」
「どうしたの、みんなして……」
「塞、わかんないの? 来年の春に私たちが卒業、その次の次の年に、京太郎くんが卒業――そしたら?」
「そ、そしたら?」
「ふふー、京太郎くんがー……大学に、入学するんだよー」ニコー
「――っっ!! うん、そっか……そうだよね! そのとき、私たちと同じところに来てくれたら、今度こそ……」
「キョウリョク、デキル!」
「違う大学になっても、大学一年生が不安なこととか、教えてあげられるよ、きっと!」
「プロに来るかもしれないから、そのときは私だね……」
「……うん。後悔なんてするより、新しいこと考えるほうがいいわよね……よし、やる気出てきたなぁ」ノビー
「さー、もうひと頑張りだよー」
~阿知賀
「……えへへ……そっかぁ、私……役に立ててたんだ……えへへ……」ゴロゴロ
「晴絵、飲もう!」
『いや、学校始まってるから……ほぼテスト返しだけど、冬休み前は色々あんのよ……休み入ったら相手するからさ』
「そしたら年末じゃない! うちは年末年始、めっちゃ忙しいのよ!」
『憧に手伝わせればいいでしょうが』
「いまの憧は使い物になんないからだめー。それに京太郎くんが帰ってきたら、仕事させてらんないじゃない」
『あんたさぁ、極力憧は甘やかさないようにー、なんて言ってたのに……よその姉妹と一緒で、シスコンよね』
「いないとこではしっかり褒める、可愛がる、それが姉の役割よ」
「とかって電話してたよ、望さんたち。憧、大丈夫?」
「!? シズ!? あんたどっから……」
「え、玄関から。お邪魔しまーすって、おばさんには言ったよ? あ、日誌見てたんだー」
「みみ、見てないから! たまたま開いちゃっただけよ!」カァッ
「そうなの? 私はさっき見たよー。同じクラス、次はなれたらいいなー」
「来年かぁ……また11月にも来てほしいわよね。そしたら、修学旅行も一緒に行けるし」
「そうだね……あ、でも旅行先のホテルって被るんじゃなかった?」
「あ」
「一年、全員集合だね!」
「……そのときは二年だけどね」
「これさぁ……プロの指導ってあるじゃない?」
「あるね~、それがどうしたの?」
「ハルちゃんがプロになったら……京太郎が指導、頼んだりするのかな?」
「ふぅ~む、なるほどなるほど、なるほどぉ~」
「でもそれだと、違う麻雀部に赤土先生が指導するっていうことになるよね……」
「ああ!」
「そういうこと。ハルちゃん的に、それはどうなのかな」
「……京太郎くんの指導を、断る、とか?」
「時間が空いてれば、行きそ……お菓子で釣られたりとかで」
「プロになったら、それも仕方ないっていう気はするけどね~」
「だよね……うん、ちょっと寂しいけど、それだけハルちゃんが前進するってことだし……受け止める」
「春にはプロ試験だね! どこを受けるかで変わってくるから、京都や大阪なら、阿知賀に呼んだりもできるよ、きっと!」
「はは、そだね……小鍛治プロや瑞原プロもいるから、東京のほうだと思うけど……」
「そうなったら、インターハイで会えるよ~。来年も頑張ってね、灼ちゃん、玄ちゃん?」
「うん、ありがとう宥さん」
「頑張るよ、お姉ちゃ~ん」
~某居酒屋
「――で、会いに行ったんだよね?」
「まぁそうかな☆ でもお礼も本当だよ、ちゃんと指導したから問題ないよね☆」
「仕事を抜けたわけではない、というのは事実です。私は連絡の不備で勘違いをしましたが」
「理沙ちゃんには悪かったな☆」
「激おこ!」
「つってもねー……別にあいつが、誰かのってわけでもねーんだし……文句のつけようはないんすよね」
「うぐっ……いや、別に文句なんて言ってるわけじゃ……」
「たださぁ――誰かのために、なーんて言い訳は、あんま好きじゃないんだよねぃ」
「……事実として、私はみなさんのような入れ込み方ではないですよ。彼のことは、一人の雀士として買っていますが」
「と、申しております彼女ですが☆」
「はい、以前にメールをもらってグラッと来ていますね。11月の上旬、阿知賀の文化祭の頃でしょうか」
「……黙秘します」カァッ
「不可!」プンプン
「なるほどねぃ、良子も悪女になったわけだー、うんうん」
「従妹から掠めとるなんて、ちょっとはやりんには真似できないかな☆」
「わ、私はそう積極的に行動を起こしはしません!」
「なるほど、遠まわしにアプローチして、京太郎くんから手をださせるんだ……油断ならないなぁ、最近の若いコは」ゴッ
「そういう意味でもありません! おっと……ソーリー、私は用事を思いだしましたので、そろそろ――」
「まーまー、そう慌てないで。ほれ、ワインが届いたとこだ。グィ~っと言っとこうか、ねぃ?」
「」
「別にねぇ、気持ちをはっきり聞きたいわけじゃないんだぞ☆」
「そうだね。良子ちゃんが京太郎くんのどこを、いいと思ってるか――もとい、従妹ちゃんの彼に相応しいと思ってるか、聞きたいなぁって」
「麻雀!」
「そうそう、雀士としてどこを買ってるかも、興味あるねぃ……ほい、注いだよ~」
「なんて、ナイトメアですか……」
~12月第三週火曜
京太郎「……今日も朝練はあるのか、どうなのか……ま、遅れないように早めに起きるか」
京太郎「ジムは……お、開いてるな。この時間でも空いてるってのはありがたい、シャワーも使えるし」
京太郎「ふぅ、朝の鍛錬終わりっと……」
モブ子「朝から賢者モードっすか、お疲れさまですwwwwwwww」
京太郎「おう、モブ子……その、あちこちで世話になってるよな。これからも、よろしく頼む」
モブ子「えっ……う、うん……なに急に、難病でも患った?」
京太郎「いや、色々思いだしてな……お前がいないと、色んな学校でももっと大変だったかと思って」
モブ子「……でもないと思うけどねー。たぶん京太郎なら、うまくやれたよ」
京太郎「そか……ま、それでも助かってはいるんだよ。素直に受け取ってくれ」
モブ子「はいはい。なんか調子くるっちゃうんだけど……あとお礼なら言葉より、態度とか物とか紙幣とかがいいな」
京太郎「じゃあ弁当作ってやるよ」
モブ子「マジでか! 言ってみるもんだな、ヒャッハー!」
京太郎「さーて、忙しくなってきた……朝練も遅れないように、早いとこ支度しないと」
モブ子「朝練ないよー。月水金だけのはず、ほかは自主練だから」
京太郎「おおう、詳しいな……けどそれなら、誰かいらっしゃるかもしれないだろ。とりあえず行ってみるわ」
モブ子「へーい、がんばれよー。あ、弁当はみんなが見てるとこで渡してね//// 自慢したいから///」
京太郎「最後のひと言で台無しだよ、お前」
京太郎「おっ……おはようございます、誠子先輩!」
誠子「あれっ? 今日は朝練ないんだけど――」
京太郎「誰かいらっしゃるならお手伝いできないかと思って、早めに出ました」
誠子「熱心だねぇ、偉いえらい。淡にも見習わせてやってよ」
京太郎「あいつはあいつで、あいつなりに真面目にやってると思いますよ」
誠子「優しいね……じゃあ、遅れないように行こうか」
京太郎「はい、お供します。ところで、朝練の自主練って、主になにをしてるんですか?」
誠子「大したことはやってないよ、掃除したり、牌譜整理しながら見直したり、面子が揃えば打ってみたり、そんな感じかな」
京太郎「じゃあ掃除と整理はやりますから、みなさんで打っててください」
誠子「あはは、やっぱりそっちを取っちゃうんだね」
京太郎「そりゃもう、それは俺の役割ですから!」
誠子「……一応言っておくけど、京太郎くんはもう十分強いからね? 男子だと、普通に全国レベルだと思う」
京太郎「えっ……いや、いくらなんでもそれは――」
誠子「そう思うなら構わないけど……ただ、なるべく多くの部員と打ってくれると、みんなの練習にもなるから」
京太郎「はぁ……」
誠子「時間があれば、そうしてあげてね。部長命令、かつ白糸台からのお願いってことで」
京太郎「実感はないんですけど……わかりました、尽力しますよ」
誠子「あとは――楽しんでね、麻雀も。あと雑用も、京太郎くんが楽しいなら、私はそれでいいって思ってるから」
京太郎「……ちょっと変わってますね、誠子先輩は。ほかのとこだと、あんまり雑用してると怒られました」
誠子「清澄での活動が、尾を引いてるって思われてるんだよ。私は君を見てたら、すっごい軽やかにやってるから、止めようと思わないけどね」
京太郎「まぁ……師匠が俺に教えてくれた、俺の取柄みたいなもんですから。それが活かせるのは、楽しいですし、嬉しいんです」
誠子「謙虚だねぇ……京太郎くんの取柄は、それだけじゃないって思うよ。優しいし、逞しいし……あとはなんだっけ、マッサージも上手いんでしょ? あははっ」
京太郎「どうなんですかね、満足はしてもらってるような、そうじゃないような……よくわかんないですから」
誠子「暇があったら、私もお願いするよ。部屋はそれなりに防音だし、ジムもそうだからね。二人だったら、誰かに聞かれたりしないでしょ?」
京太郎「誠子先輩がよろしいのでしたら、いつでもお伺いします」
誠子「うん、そのうちにね」
~火曜、昼休み
京太郎「昼休みだー!」
淡「だ、だー……」
京太郎「どうした淡、元気ないな」
淡「えっ……そ、そんなことない、よ……」カァッ、モジモジ
「ご覧ください、あの淡ちゃんのお顔、まっかっかですこと」ヒソヒソ
「誕生会で、京太郎くんに抱かれてご満悦だったとか」ボソボソ
「京太郎がDT切ったと聞いて」
「それはまだらしい。ただ抱き締めて、お膝に乗せてあーんしてたとか」
「なにそれうらやまけしからん」
「その状況で手ださないとか、紳士すぎわろたwwwwwwwww」
京太郎「」
淡「……きょ、キョータローのせいだよ! バカッ! どーすんのさ、これ!」
京太郎「なっっ……お、お前が頼んだんだろ!」
淡「嫌ならいやって言えばよかったでしょ!」
京太郎「嫌なわけないだろうがっっ! じゃなきゃ最初っからやんねーよ!」
淡「なっ、うっ……あ、わぁぁぁ・・・・/////////////」
「お聞きになりましたか――ゴフゥッッ!」
「!? さ、砂糖を吐いて、息絶えただと……メディック、メディーーーックッッ!」
「こっちは全滅だ、援軍を頼む」
「アパム持ってこい! 間に合わなくなっても知らんぞー!」
京太郎「……もう、知らんし……飯にしよ」
モブ子「いやー、うまいですなぁ。京太郎の作った弁当はwwwwwwwくはー、染みるぜ!」
「二股?」
「いやー、違うだろ、モブ子だし」
「だよね」
モブ子「全モブが泣いた」
京太郎「俺は騒ぎにならなくて安心したっつーの」
京太郎「教室の空気に耐えかねた……ここなら人もいないし、安心だなぁ」フゥ
照「京ちゃん!」ガバァッ
京太郎「!? な、なんだっ……って、照さんですか」
照「? 私に会いに来てくれたんでしょ?」
京太郎「いや、偶然ですよ」
照「この寒いのに、中庭に出てきておいて?」
京太郎「まぁ……色々と事情が。頭を冷やそうかと」
照「……そうだね、昨日のことは、頭でも冷やして反省したほうがいい」
京太郎「えっ」
照「誕生日の主役を持ち上げて、場を盛り上げるのはわかる。だけどやりすぎは、翌日からの自分を苦しめる」
京太郎「……仰る通りです」
照「反省した?」
京太郎「はい」
照「もうしない?」
京太郎「はい。照さんの誕生日には、もっと節度を持ちます」
照「それとこれとは話が別」
京太郎「えっ」
照「私にもしてね、お姫様抱っことお膝乗せと、あとあーんも」
京太郎「……照さんからも?」
照「うん、私からもあーんする。ちゃんと食べてね」
京太郎「……拒否権は?」
照「あると思ってる?」テルダケニ
京太郎「……いえ、やります。照さんに頼まれたら、断れません」
照「よかった」ムフー
京太郎「まぁ……二月はどこに派遣されるかは、わかりませんけどね」
照「」テルーン
京太郎「……すみません、自由にならない立場で」
照「ううん、いいよ。いまはここにいてくれるんだから、それだけで十分……」
京太郎「はい……ありがとうございます」
照「お茶、淹れられる?」
京太郎「はい、すぐにご用意できますよ」
照「あったかいの……ううん、あっついのお願い。ここで飲んで、あったまってから戻ろう?」
京太郎「承知いたしました」
~火曜、部活前
京太郎「テストもだいぶ戻ってきたな……平均すると、96……いや、97か?」
淡「なにそれずっこい」
京太郎「ちゃんと頑張ったんだから、ずるじゃないだろ……淡はどうだった?」
淡「へへー、なんと! 理数がすごいよ!」
淡「……キョータローのおかげだよね、ありがと……」
京太郎「……昨日も言っただろ、お前が頑張ったからだよ」ナデナデ
淡「……えへへ」
京太郎「さて、部活行くかぁ」
淡「うん♪ よーし、今日はキョータローをビュンビュン飛ばしちゃうぞー!」
京太郎「おいやめろ」
京太郎「さて、部室についたな」
淡「ちょっと早かったね。テルーしかいないや」
京太郎「じゃあ掃除しとくか。こっちは朝やったから、ほかの部屋回ってくる」
照「待って。そこは私の相手をしてくれるとこ、違うの?」
京太郎「照さんにはお願いしたいことがあります、頼めますか?」
照「……しょうがないかな。京ちゃんのお願いなら、仕方ない」
京太郎「よかった……じゃあ、淡の相手をお願いします。部活中に、俺を飛ばせなくなるよう、しっかり叩いておいてください」
照「淡、席について。二人打ちしとこう」
淡「……キョータロー入れて、三人打ちじゃだめなの?」
照「いいね、採用」
京太郎「裏切るのはやっ!」
誠子「おつかれー……あ、宮永先輩でしたか。それに京太郎くん、淡も……そろそろ、部活始めるからね」
淡「ちっ」
照「ちぇっ」
京太郎「助かった……」
京太郎「結局、掃除の時間が取れなかった」
菫「……すまない、私にはこの部屋を、これ以上どう掃除するかわからないんだが」
京太郎「色々ありますよ。まぁ掃除しようとしてたのは、別の部屋ですけど」
尭深「あ、京太郎くん、ちょっといいかな。急須の茶渋が取れなくて……」
京太郎「お任せください。そこはですね――」
照「しまった、部活の前にお菓子買ってこようと思ってたのに……」
新虎姫1「わ、わたし買ってきます!」
淡「ダッシュでな」
新虎姫2「私のも頼むわ」
誠子「なんだこのカオス空間……あーっ、もう! 部活始めるからね!」
京太郎「誠子先輩、お疲れだな……さて、どうしよう」
京太郎「……そうだ、誠子先輩。昨日、良子さんになにか、お願いしたって聞いたんですけど」
誠子「そうそう。なんていうかね、プロ勢で……一番ガツガツしてない感じだからさ、今日もできないかお願いしてみたの」
京太郎「ガツガツ?」
誠子「ああ、ううん。こっちの話……それでね? そろそろ来られると思うから、お出迎えよろしく」
京太郎「了解です!」
京太郎「ご足労いただきまして、ありがとうございました」
良子「いえ、約束ですから……はぁ……」
京太郎「あの、お疲れみたいですけど……なんでしたら、俺のほうから伝えておきますし、やめておきますか?」
良子「大丈夫です……ちょっと先輩方に、厳しい追及……いえ、指導を受けまして」
京太郎「へー。良子さんにも指導できる先輩、ですか……プロのチームは違いますね」
良子「……同じチームではないし、麻雀の指導ではないですけどね……恐ろしい飲み会でした」ボソッ
京太郎「……大丈夫ですか? すぐに、温かい紅茶をお持ちしますので……」
良子「サンキューです……やはり、京太郎くんは優しいですね……私の癒しです」
良子「……はっ! い、いけない、これはっ……このままでは、あの意地の悪いアラフォーたちの言う通りですっ……」
京太郎「疲れてるみたいだな……あ、戻りましたー。戒能プロをお連れしました」
誠子「ご苦労さま。ありがとうございます、こんな遠くまでお越しいただいて」
良子「負けません、私は彼の誘惑になんて――えっ……あ、ああ、いえ! こちらこそ、お世話になります」
良子「来年のルーキー、そのトップと打てるのですから、こちらこそいい刺激になりますよ」
照「ルーキーオブザイヤー受賞者に言われると、光栄です。さっそく始めま――失礼、京ちゃんへの指導が優先でしたね」フフッ
良子「ええ、それも約束事ですから……ということです、京太郎くん。おや……?」
京太郎「はいっ……すみません、お茶を淹れてきましたので……どうぞ、ハニージンジャーティーです。温まりますよ」
良子「……うん、甘くておいしい。これはいいですね、毎日でも飲みたいくらいで――」
京太郎「?」
良子「違うんです、そうじゃないんです……あぁ、もう……私はなにを、これでは春に申し訳が立たない……」ブツブツ
京太郎「えっと……ご指導を、お願いしても……?」
良子「えっ……あ、は、はい……大丈夫です、やりましょうか……集中、集中です……」
良子「その待ちは甘すぎますね。流れを見なさい、どこにそれらの牌があるのか、よく考えるんです」
良子「ロンです。だから言ったでしょう、ダマでも焦りから打ち回し続ければ、こうしてボロが出るのです」
良子「安易なカンは、相手の手を助けるだけです。清澄のモンスターや、こちらのモンスターとは違うのですよ」
京太郎「……はぁ、ふぅ……ありがと、ございました……」
良子「……お疲れさまでした」ツーン
良子(……大丈夫ですね、私はやれている……問題なんて、なにもありません)
京太郎「あの、良子さん……」
良子「なんですか?」
京太郎「……ありがとうとざいました、俺……絶対、これを活かしてみせます。全国大会、出場しますから!」
京太郎「良子さんの教え、全部覚えます! どれも無駄にしたりしませんから!」
京太郎「これからもご指導いただけたら……また、よろしくお願いします!」
良子「――――――」キュン
良子「……ああ、もう……本当に、京太郎くん……あなたという人は、もうっ……」
京太郎「? あの、なにか失礼なことを――」
良子「……いいえ、そうじゃありません……まぁ、なんにせよです」
良子「君の指導は、私にとっても苦ではありません……こちらこそ、これからもよろしくお願いします」ニコッ
京太郎「なんか悩んでたみたいだけど……落ち着かれたみたいだな、よかったよかった」
京太郎「でもちょっとだけ、顔が赤いような気もするな……けどあまり生姜ばっかりもなんだし……」
京太郎「柚子かレモンか、柑橘系でなにかお作りしておこう」
京太郎「さて――」
京太郎「さて、全員に柚子ドリンクもお持ちできたし……ん?」
尭深「ふぅ……」コキコキ、トントン
京太郎「尭深先輩、お疲れさまです……ひょっとして、凝ってますか?」
尭深「――っっ!!」
京太郎「先輩?」
尭深「……あぁ、うん……凝ってる、よ……すごく、肩凝ってるの……」ゾクゾクッ
京太郎「えっと……その、もしよかったら、なんですけど……」
尭深「ねぇ――」
京太郎「はい?」
尭深「……マッサージ、お願いしていいかな。そろそろ部活も終わりだから……そうだなぁ、寮で……」
尭深「――私の部屋で、お願い……できるかな?」
~一時間後
尭深「どうぞ、入って……それじゃ、どうしようか」シュルッ
自然な手つきで、先輩がネクタイを緩め、衣擦れを響かせて外す。
女性は男性がネクタイを緩める動きに惹かれると言うが、逆もまた然りだ。
白い指が艶めかしく動き、胸元のボタンを外して、首を絞める首輪のような布地を外すのだ、そうならないわけもない。
京太郎「え、と……お邪魔します。それじゃ……上着だけ、脱いでいただいて……」
尭深「……脱ぐんだね、うん……それじゃ……脱ぎ、ます……ん、しょ……」スルッ、スルリ、スッ……パサッ
分厚い生地に隠されていた、尭深先輩の肢体が露わになる。
以前と変わらない、ほどよく肉の乗った――男好きのする身体のラインを、ブラウスの下に浮かばせて。
こちらを向いていた状態から背を向け、まるで肉体美を見せつけるようにターンし、ブレザーを床に脱ぎ落した。
尭深「畳まないと、皺になっちゃうかな……ふふ、だめだね、私ったら……よい、しょ……」
下着は間違いなくつけているはず、なのに――豊満な膨らみがタプッと揺れて、瞳を釘づける。
目を逸らそうとすると、無防備にしゃがみ込んでブレザーを拾おうとした彼女の、白く眩い太ももが――そして、その奥の布地までが――。
京太郎「……っっ……じゃあ、その……ベッドに、寝てください……うつ伏せで」
見せそうになったところで懸命に顔を背け、それだけを告げる。耳が熱い、鼓動が激しい。
そんなこちらの感情がわかっているのか、クスッと小さく笑いを響かせて、彼女はダイブするようにベッドへ身体を沈めた。
尭深「それじゃ、お願いします……あ、そうだ……」
京太郎「えっ――」
12月の夜だ、外は相当暗い。
にもかかわらず尭深先輩は、部屋の電気を消して、ベッド傍のムードランプだけに、スイッチを入れる。
尭深「節電、してるから……細かい作業じゃないし、これだけでいいよね?」
桃色とオレンジ色の混ざったような、艶めかしい仄かな光が、部屋を薄く照らしだす。
その奥で、丸い眼鏡の下に――彼女が瞳を妖しく輝かせた、そんな錯覚を覚えた。
京太郎「…………っ……」ゴクリ
尭深「ほら、早くして……肩、すっごい凝ってるんだよ……重たいから、これが……ね……ふふっ……」
これ――というのがなんのことなのかは、極力考えない。
はい、と短く返事をして彼女の足元からベッドに上がり、腰の上に跨る。もちろん、座らないように。
尭深「……はぅっ、んっっ!? やっ……ふ、ぅんっ……そ、っか……ぁんっ……」
尭深「ふふ、ちょっと……い、がいっ……だった、かなぁ……んっ、はぁ……声、かけないで触ってくるんだ……」
しまった、うっかりしていた。
京太郎「す、すいませんっ……それじゃ、施術を始めますので……」
尭深「謝らなくって、いーよ……好きにして、好きに触って……揉んで、捏ねてくれればいいから……ね?」
主語を省くのをやめていただきたい(切実)
以前と同じくらいに凝り固まった、肩口から首筋にかけての筋肉に手を這わせると、血行を促すように摩擦を加えてゆく。
その一方で、時折指や手の平を動かし、優しく揉み解すことも忘れない。
尭深「んぁっ、はっっ……んぅっ、くっっ……ふぁっ……はぁぁんっっ!」
すぐさま響く甘い声音に、思わず手が止まりそうになる。
けれど時間をかけては、すぐに夕食の時間が迫ってしまう。ここは声に負けず、しっかりと施術すべきだろう。
尭深「あっ、ふぅぅんっ……んくっ、くっふぅぅっっ……やっ、あっ……んぁ……んっ……」
以前と同じくらいではあるが、時間経過を考えても、一ヶ月ほどの凝りだ。
それならさほどキツくはしなくても大丈夫、柔らかな刺激を身体の奥へ染み込ませるように、指圧を摩擦を繰り返して、筋肉を温める。
尭深「はぁっ、はぁぁ……んぅっ、そう、そこ……あぁぁっ、そこっ、そこいいのぉっ……」
だが――その刺激でさえも、かなり心地よく感じてしまうほどに、彼女の身体は固まっていたらしい。
十数分後にはそんな甘い声を上げ、まるでおねだりするような響きを含ませて、彼女の媚声が誘ってくる。
尭深「そこぉぉ……もっと、強く、してっ……あんっ、んふっ、くっふぅぅっ……はぁっ、あぁ……そこっ、いい、ですっ……やぅんっっ!」
ムードランプに照らされ、艶めかしく光った肌に、汗が浮かんでいるのが見えた。
髪が張りつき、頬が染まり、振り返った瞳が蕩けて細められている。
目が合うと、彼女はさらにそれを細め、ニッコリと、耽美で艶やかな笑みを浮かべて見せた。
尭深「ねぇ……そこが終わったら、その……腰と、脚と……お願いできますか?」
汗ばんだ肌の湿り気と、火照った熱さがブラウス越しでも手の平に伝わる。
彼女の問いに答えず、小さく頷いてから、肯定するように片手を腰に這わせ、柔らかく揉みしだく。
と――。
尭深「はぁぁっっ、うんっっ! んくっ、はぁっっ……ん、もうっ……ふふ、いたずらっこ、なんだからぁ……めっ」
嗜めるように微笑みながらも、いまの刺激を歓迎するように彼女は腰を捩り、微かにお尻を上げた。
スカートの生地に浮かんだヒップラインと、ショーツのラインがはっきりと見えてしまう。
だが、その部分には手を触れるわけではないと、気にしないよう目を逸らした――その瞬間。
尭深「脚はね、こ・こ……お尻と、太ももの間くらいかな……ちょっと痛いんだよね……念入りに、お願いします……ふふっ」
腰を浮かせ、スカート越しのお尻が――いや、太ももが脚に擦れてくる。
柔らかさと熱さを感じさせ、フリッ、フニッと揺り動かされた身体が再度、ベッドに沈み込んだ。
尭深「ほら、続けて――はぁんっっ!? あっ、んぅっっ……ちょっと、激しい、ね……やんっ、はぁっ……あぐっっ、んっっ……はぁぁぁ……」
その火照ったのを利用して筋肉を解すべく、少しだけ指の動きを激しくし、指圧を強くして――。
肩から背中へのラインを、何度も往復させてマッサージしていく。
気を鎮めるために深呼吸をすると――彼女の部屋の甘い香りと、彼女自身の汗の、甘酸っぱい香りが鼻腔に溢れてきた。
このあと滅茶苦茶マッサージした。
京太郎「尭深先輩に、マッサージ……しかも、部屋に呼ばれるとか……まずいな、うん……まずい……」
照「なにがまずいの?」
京太郎「いえ、マッサージが――」
照「……なに、また誰かにマッサージするの?」ムスー
京太郎「」
照「するの?」
京太郎「あの、いつから……どこから、聞いてました……?」
照「全部だけど(って言っとこう)」
京太郎「」
照「それで、マッサージするんだよね?」
京太郎「……はい。でも、その……肩を凝ってらっしゃるからで、特に意図があるわけでは――」
照「……じゃあ、私もお願いするね」
京太郎「えっ」
照「肩凝ってるから」キリッ
京太郎「……そ、そうですよね。麻雀してますもんね、合宿では毎日でしたもんね」
照「そう。それ以外の部分でも、凝るから」
京太郎「はい……」ブワッ
照「どうして泣くの?」
京太郎「わかりません、ただ自然に……大丈夫です、それじゃ始めますから……椅子に座ってくださいね」
照「よろしくね」テルテル
あなどっていた、まさか本当に凝っているとは。
照「んっ、あっ……くっ……ふぅっ、あっ……んぅっ……」
京太郎「あの、できればもう少し、声を抑えていただけると……」グッ
照「わ、か……って、る、けどっ……んふぅっっ! あっ、んっぅっ、はぁっ、あんっっ……」ビクンッ
さすがの照さんでも、合宿での麻雀はかなり堪えたらしい。
そういえば、半分は手積みだったから、そっちのほうで打った妙な疲労が残っていたのだろうか。
以前よりもかなり張っている肩から背中、そして首筋のラインを何度も擦り、時折指先で、丁寧に揉みしだいてゆく。
照「んんんっぅぅぅっ……くっ、ふぅぅぅぅ~~~~~……はぁっ、はぁぁぁ……あぅっ、な、にっ……んぅっ!」
照「やっ、ひっ、ひゃうっっ! んなっ、にっ……なに、これぇ……すっごい、のっ……きゃうっ、あんっ……はぁっ、すっごい、気持ち、いいっ……」ゾクゾクッ
背中を曲げ、首を竦め、何度も腰を捩って、照さんが身悶えるように暴れる。
これまでは、肩を凝るなんて皆無だったのだろう。初めて感じる、本当の意味での肩もみの快感に、戸惑いを隠せないようだ。
京太郎「あの、本当に声をっ……いまは俺たちだけですけど、誰が来るとも知れないんですからっ……」
照「わ、わかってるって、ごめ……ぁんっっ! はひっ、ふっくぅぅぅんっっ……んぁっ、だ、めっ……ひゃふぅっっ!」
椅子をギュッと掴んで足をバタつかせ、それでもこの快感を味わっていたいとばかりに、ここから逃げようとはしない。
汗ばんでいるというより、ブレザーの下はかなり汗を掻いているはずだ。
京太郎「――すいません、脱がせますね」
照「え――やっ、やだっ、ちょっと待って、それはまだ早――」
抵抗されるが、風邪を引いてもらっては困る。ブレザーを脱がせて汗を抑えないと、帰るときにかなり冷えてしまうはずだ。
京太郎「続けますね」
照「ひぃんっっ! ま、待って、これ……なんか、指、直接っ……くっ、あぁぁんっ……あっ、はぁぁっ……さ、触られてる、みたいぃ……んくっ……」
ブレザーを失ったブラウスは、濡れるほどではないが、湿り気を帯びていた。
そこにタオルを宛がって拭き取りながら、片手で首根っこを掴むように、激しめの刺激を送り込んでゆく。
照「んっはぁぁぁぁっっ! あふぅっ、はぁっ、あっ……んぁっ、やっ……はぁぁっ、こんなっ、これっ……すっごい……あぁぁっ、いいっ……」
いつもクールな照さんが、ここまで声を乱して、息を荒くして、身悶えている。
こんな姿を誰かに見られでもしたら、あらぬ誤解を受けてしまいかねない。
京太郎「……ちょっと強くしますね」
照「えっ――んひっっ、ひゃっ、んやぁぁぁっっ!?」
タオルを広げて背に張りつけ、その状態で背中を――そしてもう一度肩から首へと戻り、指圧を繰り返す。
肩を押さえながら、患部だけを押し込み、捏ねるように指を蠢かせ、同時に血行も促してやる。
照「はふぅぅぅっっ……んぅぅっ、はぁぁっ、あっ、うぅぅんっ……すごいっ、京ちゃんっ、京ちゃぁん……京ちゃんの、気持ちいいよぉっ……」
スカートがシワだらけになるくらい、彼女の脚がモジモジと擦れ合い、裾が微かにめくれ上がる。
そこから見える照さんの白く、健康的な太ももの輝きからなんとか目を背け、凝りを解すことに集中する。
照「あくっっっ……んっくぅぅぅぅんっっ……んはっ、んはぁぁぁぁ……それ、そこぉぉ……クリクリッて、し、しちゃだめぇ……あぁぁぁ……」ゾクゾクゥッ
京太郎「――ここですか?」クリッ
照「~~~~~~~~~~~っっっっ!?!? んきゃっ、きゃふっ、はひっっ……くふぅぅぅっっ……」
言われたところがだめってことは、して欲しいってことだ。
これまでの経験を活かして、その部分を重点的に捏ねると、確かに指先に硬い凝りが伝わってきた。
強くしすぎないように、けれど時々強く刺激を与えて、翻弄するように肩のラインを解してゆく。
照「はぁっ、んっっ、やぁぁぁあっっっ! あうっ、はうぅぅぅんっっ!!」
ひと際大きく声を響かせ、白い喉と蕩けた顔を真上に向けた照さんが、背筋をピンと伸ばして、大声で嬌声を響かせた。
椅子を掴み、内股になりながら足先だけを伸ばして、ビクビクッとその肢体が跳ね躍るのがわかる。
照「っっ……はぁっ、あっ……んっ、あぁぁぁ……はぁっ……ふぅぅぅ……」
ポタッポタッと、粒になった汗が額から落ちて、スカートを濡らすのが見えた。
それをタオルで拭き、彼女の顔も、丁寧に拭き取ってあげる。
京太郎「……大丈夫ですか? すごい汗ですから……よかったらこれ、使ってください」
照「んっ、あ……ぁんっ、あ……あり、がとぉ……」
艶めかしく声を震わせ、けれど微笑んだ彼女がタオルで首周りや、ブラウスの下を拭き始める。
それを見届けながら、耳元にささやいた。
京太郎「あと少しで終わりですから、ちょっとだけ我慢してくださいね」
照「…………えっ、あ……ま、待っ――んくぅぅぅっっ!? やひっ、やっ、はぁぁぁんっっ!」
反対側の肩のラインも同じようにする。
すると今度は、伸びきった身体が折り曲げられ、なにかを抱くように縮まった身体が、さきと同じようにビクビクッと痙攣した。
照「ふぁぁぁぁ……あぁぁんっ、あぁぁ、だめぇぇ……だめに、なる……なっちゃう、京ちゃんっ……京ちゃぁん……んぅぅっ!」
なにかに怯えているような声だが、逃げないなら大丈夫だろう。
肌を擦るだけで、面白いように跳ねる彼女の身体を優しく押さえつけ、緩やかにマッサージする。
京太郎「もうすぐですよ……やめたほうがいいですか?」
照「そ、れは……だ、めっ……このまま、つ……つづ、けて……京ちゃんの、好きに……してぇ……」トローン
部活終了後、尭深の部屋でのマッサージに続く。
夕食時の尭深はツヤツヤとした顔、京太郎はなぜか前屈みだったそうだ。
京太郎「……ジムで汗をかいて、多少はすっきりしました。ふぅ……」
京太郎「どうするかな、風呂入っちまったけど、もう一汗流しに行くか……」
京太郎「それとも、この邪な感情を誰かに拭ってもらえないもんか……」
京太郎「……いや、それよりは外に買い物でも行ってこよう。寒さで多少は、荒れた気も落ち着くよな」
京太郎「寒っっ! あほかっ、いやマジで……さっみぃ……なんだかんだ、冬の夜だよなぁ……」
京太郎「阿知賀の夜よりも寒いとはな、畏れ入った……なんかあったかいもんでも買うかなっと」
京太郎「……しかし、学校の寮だってのに、コンビニが近いのはありがたいな。もう見えてきた――ん?」
京太郎「あれは……」
京太郎「…………どこかで見たことあるような……知り合いではないはずだけど」
京太郎「うー、まぁいいや……さて、とりあえずコンポタまんとチンジャオまんと――」
みさき「すみません、コーンポタージュまんをいただけますか。それとこれを」
店員「シャッセー、アリャッシター、マシャーシャッセー」
京太郎「……チンジャオまん、それとファミチキお願いします」
みさき「ふふふ、高校生でも、夜中にそれはお肉がつきますよ?」
京太郎「ん? えっと……俺ですか?」
みさき「はい、あなたですよ。須賀、京太郎くん?」
京太郎「――――」
みさき「どうかしましたか?」
京太郎「……すみません、覚えてなくて……どこかで、お会いしたことが?」
みさき「ああ、いえ。すみません、申し遅れました……私、アナウンサーの国吉みさきと申します」
京太郎「アナウンサー……あれ、ますます接点が……」
みさき「こう見えても、麻雀の試合の実況なんかもしています。コンビの解説は、野依プロですね」
京太郎「理沙さんの、ですか……あ、すみません」
京太郎「こちらこそ申し遅れました……はじめまして、清澄高校麻雀部……いまは白糸台高校の麻雀部、一年の須賀京太郎と申します」
京太郎「理沙さんには、たびたびご指導いただいたり、お世話になっております。どうぞ、よろしければお見知り置きください」
みさき「………………」ボー
京太郎「? あの、えーっと……村吉、アナ? でいいですかね、お呼びするのは……」
みさき「……はっ! ああ、いえ……えっと、はい……あ、やっぱりいいえで!」
京太郎「はぁ……」
みさき「う、やっ……えっと、それではみさきで……お願いします。私は京太郎くんとお呼びしますので」
京太郎「じゃあ……みさきさん、でよろしいですか?」
みさき「//// はい、結構ですよ……うーん、なんといいますか……意外でしたね、話題の高校生執事が、まさか……」
みさき(なんていうか、物腰柔らかで落ち着いてて……とても高校生の貫禄じゃありませんよ、これ……)
京太郎「え、なんかおかしかったですか、俺?」
みさき「いえいえ、逆です。落ち着いた、立派な男性だと思いますよ。これは野依プロを始め、多くのプロを魅了するわけです、と」
京太郎「そんな……こちらこそ、プロの方々の麻雀を打つ姿、向きあう姿勢には、いつも心惹かれてますよ。自分はまだまだだって痛感します」
みさき「大人びた応答ですね……でも、うん……嫌いじゃありませんよ、そういうの」
京太郎「へ?」
みさき「あ、いけない……あんまり遅くなると、門限が危なかったりしませんか、京太郎くん?」
京太郎「っと、そうでした。すみません、なんか慌ただしくて……どうぞ、理沙さんにもよろしくお伝えください」ペコッ
京太郎「――それと、なにかの機会でまたお会いしましたら、どうぞよろしくお願いしますね」ニコッ
みさき「――っ」ドキッ
京太郎「それじゃ、失礼します」ペッコリン
みさき「……まいったなぁ、ほんと……相手は高校生なのに、私ったら……」コツン
~火曜、終了
みさき「……そうだ」グッ
京太郎「……いやー、危ないあぶない、あと五分か」
みさき「ちょっと、待って……はぁっ、はぁっ……ください、京太郎くんっ……はぁっ……」
京太郎「えっ……む、村吉っ……じゃない、みさきさんっ?」
みさき「はぁ、はぁ……歩くの、早いですね……ふふっ」
京太郎「ど、どうしたんですか、走ってまで追いかけてきて……もしかして、俺なにか落としてました?」
みさき「いえいえ、そうではなく……その、ですね……」
みさき(……困った、なんだか少し恥ずかしい……けど、もう! 追いかけてきて、そんなこと言ってる場合じゃないって!)
みさき「えっと……せっかくお会いできたことですし、野依プロという共通の知り合いもいますから……よければ、連絡先を交換しておきませんか?」
京太郎「えっ……お、俺とですか!?」
みさき「はい」
京太郎「あ、アナウンサーさん、ですよね……テレビ局の」
みさき「はい、女子アナです」
京太郎「い、いいんですか? 俺なんかはもう、大歓迎ですけどっ」
みさき「元気がいいですね。高校生らしいところもあるって、少し安心しました」
みさき「じゃあこれ、私の連絡先ですから……よければ、野依プロも誘って、お食事でもしましょう」
京太郎「ああああ、ありがとう、ございますっ……っと、それが俺の分です。番号と、メアド」
京太郎「おぉぉぉ……女子アナの、連絡先だと……うわ、なんかニヤけてくる……」ニヤニヤ
みさき「ふふ、イタズラ電話はやめてくださいね?」
京太郎「は、はい! もちろんです!」
みさき「では、今度こそ……またお会いしましょう、京太郎くん」
【12月第三週火曜】
今日のプロからの指導は、随分と厳しかった……けどその分、かなり色々と学べたはずだ。
そのことを伝えると、とても優しく笑ってくださった。
飴と鞭、というわけでもないだろうけれど、ああして労わってもらえると、また頑張ろうという気持ちになれる。
ありがとうございました。
そして、そんな俺にご褒美をくれたのは天の采配だろうか。
色々あって火照った頭を冷まそうと、門限ギリギリにコンビニに行ったのだが――。
なんとそこで、アナウンサーさんに遭遇した。
麻雀関係の仕事もなさっているらしく、俺のこともご存知だった。
さすがアナウンサー、という感じの、可愛くて綺麗で、オシャレな方だった。
妙な態度を取ってしまわなかったか、少し不安である。
調べてみると、清澄の試合を実況してくださったこともあるらしい。
これは書いたらまずいかと思い、確認してみると、面白いからいいですよ、とのことだった。
優しくて品もある、それでいて、気取ったところはまるでない。
働く女性っていうのは、誰もがああなのだろうか。
いかん、なんだか惚れっぽい男みたいになったけど、そういうことじゃありません。
ちょっとテンションが上がってしまっただけです、あとは純粋に、テレビで見る人に会ったのを喜んでるだけです、はい。
い、言い訳じゃないです、本当に。
…………
言い訳くせー……だってテンション上がっちゃったもんは、仕方ないだろ?
『部活中にあんなにしたのに……そのことは書かないの?』
『私も……お部屋で、ね?』
おいやめろ。
『……なにをしたんだ、京太郎くん……いや、言わなくてもわかる。わかるが、その……そういうのは……』
『朝に約束したの、私なのに……まぁ、今日は忙しかったからいいけどね』
『やらしー! テルーにタカミーに、それにアナウンサーなんて!』
やばい、延焼し始めた。
『……確認したということは、連絡先を交換したということですよね?』
矛先が逸れた! けどそっちもまずい!
『はーい、アナウンサー組は集まってくださ~い☆ あ、こっちはいいや、メールしますねー☆』
え、なに? なにが始まるの?
『京太郎は気にしなくていいよん。大丈夫だいじょうぶ、酒の肴が増えるだけだから』
『それにしても、その……指導のことより、出会いのことについての比重が大きいですね……いえ、構わないのですが、でも……』
……すみません。ちょっとその、ついさっきの出来事なんで、興奮のあまり……。
『女子アナ好きなの? 意外ねー、そんなの聞いたことなかったから』
『……アナウンサーですか……進路としては、悪くないですね……面白そうですし』
『むむむっ……また色んな女に手をだそうと……は、発情期のバカ犬ぅーっ!』
『これは同意するわね。っていうかさぁ、働いてる女性がみんなそんななわけないでしょ、うちの顧問のこと、思いだしたら?』
『おい、どういう意味よ』
『……京太郎、年上のほうが好きだもんね……でも、私も……頑張るから、ね』
『そっちだったか……プロじゃなくて、アナウンサーかぁ……いまから転向はできないから、ごめん……』
『一応フォローしておくと……男子高校生というものは、年上の女性や社会人の女性に惹かれるものらしいぞ。はしかのようなものだ』
『そして年を取れば次第に年齢を下げ、同級生、そしてさらに年下を好きになっていくものらしい。因果なものだな』
前もフォローしてくれた人だ……ん? これフォローなのか?
『ふぅ~む、なるほどなるほど、なるほどぉ~。でもそれだと、おもちの大きさが反比例――』
『うちの妹が妙なことを書き込もうとしました、申し訳ありません』
ともかく――みさきさんに迷惑がかかりそうなら、考えないとな……メールで謝罪だけはしておこう。
あとの書き込みは、荒れてくるようなら対応するってことで、うん。
まぁ大丈夫だと思うけど。
――――――
~清澄
「さすが東京ねー、歩けば芸能人に、プロに、テレビ関係者に当たるってこと?」
「京太郎が目ざといだけだじぇ! まったく、女と見ればすぐに色目を使って……しょうがないじぇ!」
「でも、東京で、しかもアナウンサーさんだもんね……綺麗な人なんだろうなぁ。京ちゃん、美人タイプに弱いし……」
「あとは胸じゃな、あのスケベは本当に……」チラッ
「っっ! な、なんでこっちを見るんですか、部長!」
「おお、すまん。立派なもん下げとるから、ついのう……」
「まこも部長らしくなってきたわねー」
「そりゃどういう意味じゃ」
「っていうかそれ、久さんが自分を貶めてるだけじゃ……」
「あら、そんなことないわよ。可愛い女の子は、見てるだけで張り合い出るじゃない?」
「発想が完全にオヤジじゃのう、あんた……」
「あらやだ、冗談よ、ジョーダン♪」
「本気の目だったじぇ……」
「そういうのも、セクハラになりますから気をつけてくださいね、会長」
~白糸台
「……ふぅ」ツヤツヤ
「……はぁ」フルフルッ
「……おい、あの二人をどうにかしろ。なんだったら、部屋に連れて行くのでも構わん」
「そうやって構ったら思う壺じゃないですか。無視しましょうよ」
「そーだよ! あんな、の……~~~~~~~っっ//// バカッ、キョータローのスケベ!」
「……そもそも、前に弘世先輩が、部室で始めたのが原因じゃないですか?」
「なっ!? い、や……それは、その……だって、肩が……」カァァッ
「二人も同じじゃないですか、特に尭深は」ムスー
「おお、亦野先輩がスミレを押してる!」
「……もしかして、自分だけマッサージ受けてないのが、不満なのかな?」
「話題に混ざれないからだよ。誠子、ああ見えて寂しがり屋だからね」
「聞こえてますよ! もう……別に、そんなんじゃないですから」
「だだ、だから、その……私だって、別に進んで受けているわけでは――」
「いつまで言ってんの、スミレー? もう誰も聞いてないよ?」
~宮守
「女子アナ……ねぇ、こっちのテレビ局のアナウンサーって……」
「何人かは、若い女の人だよ……でも、華やかさでは東京のには敵わないだろうね」
「閃いた」
「ツウホウシタ!」
「なにか思いついたのー?」
「私がプロになって、解説の仕事も持てば……コンビを組む女子アナを、紹介してあげられる」
「――で、紹介して、どうなるの?」
「……その女子アナと、京太郎が……仲良くなったら、まずいよね?」
「そうだね」
「……ごめん、いまのなしで……なんか、疲れてるのかも……」
「そもそもさぁ、シロが解説なんて、ダルくないの?」
「ダルイヨネ!」
「まぁ、そうなんだけどさぁ……」ダル
「ふふー、全員でテレビ局受ければ、一人くらいは通るんじゃないかなー」
「四年後かぁ……その頃まで、京太郎くんの好みが変わってなきゃいいけど」
(……それまでに落としちゃえば、問題ないんだよなぁ……うん、ダルくなくなってきた……がんばろ)
~永水
「あーあー……あめんぼあかいなあいうえお」
「今度はなにをやってるんですー、はるるはー?」
「女子アナみたいに、発声練習ですって」
「でも女子アナにはならないですよね、はるるは」
「私と一緒に、神社を支えていってくれたら、嬉しいですけど……でも、春ちゃんの人生ですから……」ショボン
「……大丈夫。私はちゃんと、家を継ぐから……」キュッ
「春ちゃん! ありがとうございます!」パァァッ
「あら、お早いお戻りね。もう練習はいいの?」
「ん、うん……だって、その……」
「真っ赤でモジモジしてますね」
「嫌な予感しかしませんよー」
「京太郎は、そんな……話し方で、人を好きになったり嫌いになったり、しない、から……」
「くっ……なかなかの破壊力、ですが、この程度で――」
「だったら、ありのままの自分を……もっと、見てほしいから」ニコッ
「ぐっはぁぁぁっっっ!」
「と、巴ぇーっっ! しっかり、傷は浅いですよー」
「なにをしてるのかしら、この二人は」
「楽しそうです! 私も混ぜてください!」
~阿知賀
「やっほー、憧♪」
「げっ、ハルエ! なによ、なんか用?」
「いやー、働いてる女性の……なんだっけ? 優しさとか品とか、気遣いとか。そういうのをお見せしようかと思って」
「やっば……えっとー、なんであたしに?」
「誤魔化すなぁぁぁっっ! どうせ日誌見てんでしょ、貸しなさい!」
「わっ、ちょ! 変なこと書かないでよっ、あたしのIDで入ってるんだから!」
「ほらここぉ! この書き込み、あんたでしょーが!」
「……いや、まぁ……うん、ごめんなさい……」
「お、おお、殊勝ね……」
「ごめん、その……京太郎が、あんまりアナウンサーにデレデレしてるから、つい……」
「まぁ気持ちはわかるけど……だからって私を引き合いにだすの、やめてよね」
「ごめん、知り合いでビッとしてない大人って、ハルエくらいだったから……」
「なら仕方な――くないっ! どういう意味よ、だから!」
「あははっ♪ ま、しっかりプロになってくれたら、ビッとした大人って思ってあげる♪」
「はぁ……まったく、ちゃっかりというか……はいはい、その激励ってことで許してあげる」
「アナウンサー……寒いところのロケは、やだなぁ……」ブルブル
「でもスタジオはあったかそうだよ?」
「あったか~い」ポワー
「北国行ったりもしますけどね!」
「あったかくない……」ブルブル
「……宥さん、アナウンサー目指すの?」
「ううん、言ってるだけだよ~。旅館のことも考えたいから、マスコミは考えてないかなぁ」
「そっか……じゃあ、私がなったら、松実館の宣伝になる旅番組とか担当するね」
「えっっ!? 灼さん、アナウンサー志望なんですか!?」
「……冗談。でも、面白そうだな、とは思ったかな。麻雀大会の実況は、やってみたいよね」
「うーん、私には難しいなぁ……ドラが来ない手配だと、それだけでもう、グルグルしちゃって……」
「よしよし、大丈夫だよ~」ナデナデ
「うぅぅ、お姉ちゃーん」
「……ちょっと前までは、玄さんが宥さんを甘やかしてると思ったけど……」
「最近は逆だよね。ま、姉妹はよく似るってことかな」
~某居酒屋
「……えりちゃんかい?」
「まさか。こういうのは横から見ている方が面白いんですから」ニコニコ
「ま、そりゃそーか……というか、うちらはAブロックだったからねぃ」
「……恒子ちゃんじゃないよね?」
「私だったらカメラ持って撮影するからねー、いまごろ局のサイトで放映してるよ」テヘッ
「それはそれで、どうかと思いますが……では、佐藤アナですか?」
「急に呼ばれたと思ったら、例の高校生クンですか……私、仕事中なんですけど」
「ソーリー、失礼しました。となると、残るは――」
「みさきち!」
「はい、私ですよ?」
「ほっほう……んで、どうだったい、京太郎の感触は? うん?」
「咏さん、オヤジ臭いですよ」
「かっこいいですね、それに可愛いです。なんというか、野依プロの気持ちがわかりましたね」
「!?」
「!?」
「!?」
「……これは、ガチな感じですね……」
「面白くなってきましたね、お酒頼んでいいですか?」
「あの、私帰っていいですか?」
「そういえば佐藤アナってー、須賀京太郎くんと誕生日同じなんですよー、知ってましたか?」
「へぇ、そうなの……じゃなくて、あの、残業が――」
「背も高いですし、あとは……身体つき、しっかりしてますよね。かなり鍛えてる感じでした。ルックスは普通に合格ラインでしょう」
「…………」ピクッ
「話を聞く限りだと、家事も料理も万能、龍門渕ともコネがある――こういう言い方は好きじゃありませんけど、お買い得物件じゃないですか」
「まぁ、そうかも……だけど、その……そういうのじゃないの、私たちは――」
「そうだぞ☆ 純粋に、京太郎くんを……その、ね……////」
「真剣!」
「ああ、わかります。誤解しないでください、私もそうです……純粋に話してみて、いいコだなって思いました。あと文句なしに、かっこいいですし」
「………………」ピクピクッ
「……あらー? 佐藤アナ、帰られないんですか?」
「急いで来て、喉が渇きましたから……一杯くらい、いいかなと。ついでに肴として、お話を聞ければ――と、その……深い意味はなく――」
「くくく、餌に食いついたねぃ……あ、お姉さーん。こっちのポン酒、燗でお願いねー」
「咏さん、かなり悪い顔してますね……」
「そりゃねぃ? 良子にみさきちゃん、あとは裕子さんも加わればさぁ……」
「加われば?」
「……私がいじられることも、少なくなるっしょ?」
「……納得です」
~12月第三週水曜
京太郎「……女子アナの知り合いが、できた……」
京太郎「だが俺は、白糸台高校女子麻雀部の執事だ、そんなことにうつつを抜かしていられない」キリッ
京太郎「集中しよう、集中――」
京太郎「……昨日は、あれだ……色々あって、こう……煩悩もやばかったからな、うん……」
京太郎「――よしっ、いくか!」パンッ
京太郎「あ、今日は朝練の日だったな。早めに出ないと」
京太郎「おはようございます、誠子先輩!」
誠子「…………おはよう、早いね」ジロッ
京太郎「え……あ、あの……」
誠子「……先行くから」スタスタ
京太郎「っっ……ちょ、ちょっと待ってください、あのっ――」
誠子「なに」
京太郎「えっと……俺、なにかしま――あ」
誠子「…………」
京太郎「…………すみませんでした」
誠子「なにが」
京太郎「いえ、その……お約束を、していたのに……照さんや、尭深先輩を……」
誠子「っ!? いや、ちがっ……べ、別にそういうことで怒ってるんじゃないからっ……」
京太郎「……怒ってたのは、怒ってたんですね?」
誠子「――っっ! 違うよっ!」
京太郎「申し訳ありませんでした……約束を、軽視してたわけじゃないんですけど……」
京太郎「二人はたまたま時間が合ってしまって、誠子さんはお忙しそうだったし、それで……」
京太郎「……いえ、言い訳はしません。俺が、嘘つきでした……不誠実な対応をしてしまい、本当にすみません」シュン
誠子「あ、や……その、そうじゃなくて……」
京太郎「その、自分でも……いま改めて思えば、ですけど……はぁ、なにやってんだ、ほんと……」
京太郎「――すみません、先に行きます。あと……しばらく、反省してます」トボトボ
誠子「あっ――」
誠子「……ほんと、違うんだけど……けど、そういうこと教えるのも恥ずかしいし……でも、マッサージ待ちだったって思われるのもなぁ……」
誠子「ほんと、女子ってなんで……こういう、月イチがあるんだろ、きついなぁ……」
誠子「……けど、それで周りに辛く当たるのも、おかしいか……あとで、優しくしてあげよう、うん」
誠子「――それにしても、ほかの人が言う意味が、ちょっとわかるな……しょげた京太郎くん、なにあの可愛さ////」
~水曜、昼
京太郎「……昼か、ふぅ……」
淡「どしたの、朝練からずっと元気ないじゃん」
京太郎「……誠子先輩、すっげー怒らせちまった……」
淡「えー、うっそだー。亦野先輩は、そんな簡単に怒る人じゃないよー、個人的なことではさー」
京太郎「んー……だったらあれだ、部のことには厳しいだろ?」
淡「うん、最近は特にね。部長が板についてきたって感じ」
京太郎「言っちまえば、俺の仕事なんてだいたいが部のことだからさ……そのせいで、怒らせてるんだと思う」
淡「ふーん、まーよくわかんないけどさー……バッカだねー、キョータローは」
京太郎「わかってるよ……はぁ、俺はバカだな……」
淡「うわぁ……もう、しょーがないなー」
淡「これあげる、元気だしなよ」
京太郎「……サンドイッチ?」
淡「私のお弁当、わけたげるから。食べて元気だして」
京太郎「淡……」
淡「そんでさー、元気になったらちゃんと謝りに行きなよ」
淡「そんなイコジな人じゃないし、謝れば許してくれるよ、たぶん」
京太郎「……ありがとうな」
淡「いーよ、キョータローのお世話は私の仕事だからね♪」
京太郎「……あの、一緒に謝りに行ってくれたりは――」
淡「そこまで甘えるなー!」ガオーッッ
京太郎「すみませんっっ!!」
淡「まったく、お姉ちゃんも大変だよ。甘えん坊の弟でさぁ」
京太郎「すまん、姉ちゃん」
淡「ま、そこが可愛いんだけどね」
京太郎「発破かけられて、探しに来たけど……そうそう都合よくいるわけないよな、この広い学校で」
京太郎「……仕方ない、弁当はこっちで食べてしまおう、うん。学食って、弁当持ち込んでオッケーなのかな……」
照「大丈夫だよ。お茶と味噌汁がタダだから、ここでお弁当にする人も多いし」
京太郎「ひゃおうっっ!? て、照さん……今日はこちらでしたか」
照「うん、冬になるとお汁粉が売ってるから……白玉も入ってて、おいしいよ」
京太郎「へー……あ、お昼食べました?」
照「教室でね。だけどまだ食べられるよ、京ちゃんのお弁当ならなおさら」ジー
京太郎「……その、こういうことを訪ねるのは失礼ですが。色々と、体型とか気にしませんか?」
照「なんかね、太らない体質みたい」
京太郎「太らない……あっ」
照「――――――」ギュルルルルル
京太郎「ナニモイッテマセンヨー」
照「はぁ……そこに座ろう、ちょうど空いたし。お弁当食べててあげるから、お味噌汁とお茶、もらっておいでよ」
京太郎「……ちゃんと残しててくださいね、俺の分」
照「急がないと保証はできないかな。でも大丈夫、食べた分は、ちゃんと相談に乗ってあげるからね」
京太郎「――――――え」
照「悩んでるでしょ、顔に書いてあるよ」
京太郎「驚きました……俺、結構隠すほうなんですけど、バレバレですか?」
照「わかりやすいかな。人がそういうのだと、よくわかるんだけど……京ちゃんは特にわかりやすい」
京太郎「マジですか……やばいな、これまでも色んな人に筒抜けだったのかも……気をつけます」
京太郎「じゃあ、急いで取ってきますので……あの、本当に残しといてくださいね。それじゃ」
照「……京ちゃんだから、特にわかりやすいって……言ったほうが伝わったかな? 難しいね、京ちゃんはやっぱり」ハァ
~水曜、部活前
京太郎「――ということで、誠子先輩に謝りたいんですけど……」
菫「……京太郎くん、その必要はない」
京太郎「どうしてですか!」
照「……京ちゃんは気にしなくていいよ。とにかく、謝るほうがこじれると思う」モグモグ
淡「さっそくなんか食べてるし……でも、そういうことかぁ……そだね、キョータローはなにもしなくていいよ」
京太郎「ひどい! だって、俺が失礼なことをして怒らせて――」
尭深「話は私たちで通しておくから、誠子が話しかけるまでいつも通りにしていてあげて、ね?」
京太郎「……はい、すみません……お手数をおかけしました……」ションボリ
四人(かわいい)
誠子「……すみません、説得してもらっちゃって……」
菫「いや、言いだしにくいのはわかる……気にするな」
照「それに、京ちゃんの言ってたのもあながち間違いじゃないでしょ? 私たちも責任あるなら、これくらいは」
尭深「タイミング悪く、重なっちゃったね……大丈夫? お薬あるけど」
誠子「ま、気合でカバーするよ。それより、部活始めましょうか」
淡「でも亦野先輩も乙女だよねー。彼には知られたくないんで――なーんて、真っ赤になっちゃってー♪」
誠子「……うるさいよ」カァッ
京太郎「……なんかよくわからんが、普通にしておくか……俺ってだめだなぁ、周りに迷惑ばっかりかけて」
京太郎「――いいのかな、最近麻雀ばっかりしてるような気がする……」
照「大丈夫だよ。合間に差し入れもしてくれてるしね、それに私は嬉しい」
京太郎「お菓子がですか?」
照「それもだけど、京ちゃんと麻雀できるのが、だよ」
照「長野にいたときも……こっちに来てからも、こんなことになるなんて、想像もしてなかったからね」
照「すごく、嬉しい……」
京太郎「………………はい、俺もです」
京太郎(……やっぱり綺麗だな、照さん……って、いかんいかん! 気を引き締めるって、決めたばっかりだろ!)
照「…………?」
京太郎「なんでもありません」
京太郎「さて、今日の指導は――」
理沙「訴訟!」プンプン
京太郎「そうそう、咏さんにお願いしておいたんだっけ」
照「合宿のリベンジができる」フンスッ
淡「私もやっちゃうよー!」
誠子「……じゃあ、お迎えはお願いしてもいいかな、京太郎くん」サリゲナク
京太郎「はい、行ってきま――」
京太郎「………………」
誠子「っ……な、なに……?」
京太郎「いえっ……それじゃ、行ってきます!」ニコッ
誠子「…………うん、よろしくね」ニコニコ
誠子「ふう……ふふ、よかった」
尭深「よかったね、誠子」
誠子「うんっ……ってぇっ!? なな、なにがっ」
菫「ちゃんと和解できて、なによりだ」ウンウン
照「だがのんびりもしていられない」
淡「咏ちゃんプロが来ちゃうよ! 支度しとかないとー!」
新虎姫1「大丈夫です、お茶と――」
新虎姫2「おせんべいはこちらに――」
二軍女子1「座布団を引いた椅子も、オッケーです!」
三軍女子1「寒くないよう、ひざ掛けも用意してあります!」
菫「……なかなか優秀だな」
モブ女子部員『いえ、マネージャーからの指示です!』
照「さすが京ちゃん」
尭深「京太郎くんが抜けた後も、このクオリティを維持できるか……今後の課題ですね」
誠子「麻雀部だよね?」
淡「執事メイド部かな?」
京太郎「咏さん、ありがとうございます。お忙しいところ」
咏「いやいや~、なんてことねーって、知らんけど~」
咏「そうそう、みさきっちゃんと会ったんだってね。どう、可愛い子でしょ」
京太郎「さすがアナウンサーって感じですよね」
咏「だろ~? けどねぇ、私のバディのえりちゃんもねぇ、こう年はそれなりだけど、美人さんなんだぜ~」
京太郎「っっ! 針生えりアナウンサーですよね!」キラキラ
咏「お、おうっ……食いつくねぃ。なに、ファンなん?」
京太郎「……いえ、別に……よくテレビでお見かけするので、その……」
咏「ほっほう。京太郎も男だね~、美人に弱いかぁ~?」
京太郎「そりゃ仕方ないですよ。実際、咏さんと話してても、かなり緊張するんですから」
咏「――――あ、あぁ、そう……そう、なんかい……ふーん、ほう……ま、いいやね、どうでも」パタパタ
咏「……えへへ」ニヤニヤ
京太郎「じゃ、こちらになりますので……失礼します。三尋木プロをお連れしました」
咏「さーて、そんじゃあ打つかねぃ。手取り足取りってのは苦手なんでね、京太郎と、あと二人適当についてくれ~」
菫「…………私でよろしいですか? 合宿ではお相手いただけませんでしたので」
咏「おー、SSSさんかい。いいよいいよ、大歓迎~」ヒラヒラ
照「なら私かな。菫といえば私、私といえば菫」
咏「おっほー、豪華メンツだねぃ。そんじゃ、始めっか!」
京太郎「よろしくお願いします!」
咏「うーん、いいねー。若い子と打つと、自分の勢いもついてくるよねー。ほい、ツモーっと」
京太郎「はっや……」
咏「ドーン! チャンタトイトイなんやらかんやらで、倍満だぜぃ」
京太郎「しかも高い!」
咏「ったりめーでしょ。麻雀は火力だよ、牌効率とか守りとかより、とにかく火力!」
菫「……驚いた、さすが日本代表エース……照まで、こうも弄ばれるのか」
咏「いやいやー。照ちゃんも成長してるって、東一局の隙もなくなってるしねぃ。いやー、来春からが楽しみさ」
照「……もっと早く、そして高く……徐々に上げるんじゃなく、高いところから始めてキープして……」ブツブツ
京太郎「照さん、大丈夫ですか?」
咏「こらこら、人のこと心配する余裕あんのかい? 京太郎ももっと火力だよ、しっかりしなねー」パタパタ
京太郎「はやりさんの打ち方だけじゃ、ダメってことですね……ふぅ」
咏「あー、あの人はねぇ……まぁ、あの人も早くて高いんだけど、どっちかってーと速さ重視だしょ。あと守りも」
咏「ま、相性ってのもあるんよ。でもギリギリのとこだと、勢いに勝るほうが勝つ――私はそう思ってる」
咏「なら勢いをもたらすのはなにか、それが火力――私はそう信じて、ずっと打ってきたよ」
京太郎「なるほど……勢い、か……」
咏「さて、続けてもいいけど……休憩挟みな? 私は、ほかと遊んでるからね~。ほーい、交代して入ったはいった~」
京太郎「……ありがとうございました」
京太郎「……さて、差し入れの仕込みも終わったし、休憩はこんなもんか」
淡「ごめん、いまわけわかんない言葉を聞いたんだけど」
京太郎「なにがだよ。お菓子作りは休憩だろ?」
淡「スミレー! 和訳して、わけわかんない!」
菫「……渋谷」
尭深「……誠子」
誠子「……宮永先輩」
照「私にお菓子を作ることが、京ちゃんにとっては癒しだってことだよね?」
京太郎「……だいたいあってます」
照「どやぁ」ムフー
淡「余計にわけわかんなくなった!」
菫「……まぁ、勤労、勤勉意欲があるのはいいことだ……」
誠子「強引にまとめすぎじゃないですかね」
尭深「まとめることが間違い、ということかな?」
京太郎「おかしい、なにか間違ってただろうか……ま、疲れは取れたし、次はなにしようか」
京太郎「咏さん、やっぱ強い……けど、それよりなにより……楽しんでるよなぁ、うん」
京太郎「……差し入れ、ちゃんとご用意して、労わって差し上げないと」
京太郎「……できた、黄金芋羊羹……」
京太郎「極力砂糖は控えて、芋の甘さを最大限に生かした芋餡――」
京太郎「そこに蒸かした芋を刻んで、歯応えもだした……お気に召すといいんだが」
京太郎「ということで、お持ちしました。いかがでしょうか」
咏「……え、買ってきたんじゃないの?」
京太郎「すみません、俺の手製です……あの、なんだったらなにか買ってきたほうが――」
咏「いやいやいや、そうじゃなくって! なんてーか、その……すげー、うまそうだよ、うん」
咏「むしろ食べんのがもったいない感じすんねー、綺麗だし、うん」
京太郎「よかった……どうぞ、見ていても乾燥しちゃうだけですから。お茶、お淹れしますね」
京太郎「――っと。すいません、みなさんのもお配りしますので……どうぞ」
照「よかった、忘れられてるかと思った」
菫「そういえば……初めてだしてもらったのも、羊羹だったな」
誠子「……あぁ、永水と合宿したときですね」
咏「ほー、そうなんかい……あぁ、思いだした。健夜さん、はやりさん、あと野依さんが来たんだっけねぃ」
尭深「彼の周り、なぜかプロの方が集まるみたいで……」
咏「ほんと、なぜか……だよねぃ……私も、そんときゃこうなるなんて、思いもしなかったっつーの」
淡「思いだした! あのときはクリームお願いしたのに、作ってくれなかったでしょ!」
京太郎「もうちょい思いだしてみろ、夕飯のときにだしてやったはずだぞ」
淡「……あれ、そだっけ?」
京太郎「ひでーな。お前が言ったから作ったってのに」
淡「えっ……あの、ご、ごめんっ、そんな……つもりじゃ、なくって……」シュン
京太郎「冗談だよ、まぁ作ってって言われたってのはあるが。だいぶ前のことだし、仕方ねーよ」
京太郎「舌に残る出来を用意できなかったのは、俺の責任だしな」
淡「……待って……思いだした、星三つあげたよね!」
京太郎「……思いだしてくれたのか、嬉しいよ」
淡「えへへへへ////」
京太郎「ほら、思い出より目の前のモンも、口つけてくれよ」
淡「ふわーい、いっただっきまーす♪」
京太郎「ふぅ、ほかの部屋にも配れたし……そろそろ給仕に戻らないとな」
京太郎「照さん、お茶お注ぎしますね」
照「んむもぐ、あいあとひょーひゃん」モグモグ
京太郎「どういたしまして。お味はいかがでした?」
照「あまふぎはい、ひょうひんっへはんひ。ふほはほはいはら、ひふふへもひへふ」モグモグ
京太郎「照さん用に、一本丸まま用意してもよかったみたいですね。お口、ついてますよ」フキフキ
照「もぐもぐ……ごくんっ……ありがと」
京太郎「お茶、薄めにしておきました」
照「うん、渋いの苦手だから……おいしい」ニコニコ
京太郎「知ってます。照さんの好みは、ずっと前から」
照「そうだよね、えへへ」テルテル
咏「なんじゃいあの空気は……おい、あの二人付き合ってんのかい?」
誠子「い、いえ……そんな話は、ねぇ?」
菫「だとしたら、淡の誕生日で大惨事が起こってただろう……」
淡「あの二人はねー、幼なじみなんだってー。だから仲良しってだけだよー」
咏「ほーん……ん? ってことは……いや、けど……んー?」
尭深「どうか、されました?」
咏「いやなんでもねーし。それよりさぁ、よくあの状態で会話成り立ってんねー」
菫「幼なじみならでは、ということでしょうか」
誠子「まさに以心伝心ですね」
尭深「ただし食べ物絡みに限る」
~部活終了、放課後
京太郎「――さて、掃除終わりっと」
「ごめんねー、手伝ってもらっちゃって」
京太郎「いえいえ、俺は女子部に仕える執事ですから。いくらでもお申し付けください」ニコッ
「……いいなぁ、一軍羨ましい……」
「だよねぇ、いっつも一緒だもんねぇ……」
「頑張ろうよ、上に上がれば隣に京太郎くんだよ」
京太郎「? まぁ、その……よくわかりませんけど、頑張ってください。俺も日々、努力しますから」
京太郎「よかったら、二軍や三軍のほうの練習にも混ぜていただきたいですし……」
「!? いいの!?」
「やったよ、一軍から奪還だよ!」
「むしろ奪取だよね!」
「これでもう、二軍三軍のままでいいわー、やれやれ」
京太郎「……いや、それはだめでしょ、頑張りましょうよ」
京太郎「――なーんつって話してたら、また遅くなっちまったな……急いで帰らねーと」
京太郎「けどあれだな。白糸台ってもっとガツガツギスギスしてるかと思ったけど、そうでもないもんだな」
京太郎「二軍三軍の先輩方も優しいし、しかもあれだ……これが重要なんだけど」
京太郎「女子のレベルがすげー高い……さすが都会、という感じなのかね」
京太郎「あれ……咏さん、お疲れさまです。どうしたんですか、随分前に見送ったと思ったんですけど」
咏「おー、京太郎かい。おっつー」
咏「あぁ、ちっと白糸台の監督さんと話をね……んで、さっき終わってタクシー呼ぶとこなんだけど……」
咏「…………」
京太郎「じゃあ、来るまでご一緒してもいいですか?」
咏「……ああ、うん……それなんだけど、間違って寮のほうについたらしいんだよねぃ」
京太郎「寮って、白糸台のですか?」
咏「ほかにあるかい? ってなわけで、そっちまで連れてってちょーだいよ。夜道は暗くて危ないからねー」ヒラヒラ
京太郎「了解です。では、えーっと……」
咏「ん? ああ、そうね……ま、ほんとなら腕に抱きつくとこだろーけど、いかんせんこのタッパじゃね……」
咏「手、貸してくれん? 繋いでねーと、寒くてさー」ハァー
京太郎「はい、喜んで」キュッ
咏「おー、あったかいねぃ。知ってっかい? そういう人間は、心もあったかいんだぜい?」
京太郎「逆じゃないんですか?」
咏「いやいや、手が冷たいのは心が温かい、ってのはあるっしょ? けど手があったかいのは心が冷たい、とは言わねーんだよ、これが」
咏「っつーわけで、手があったかい京太郎は、心もあったけーってことよ」
京太郎「それだと、心が冷たい人間なんていいないってことになりません?」
咏「なるねー。それでいーんよ、ほんとに冷たいやつなんて、あんまいねーもんよ。知らんけどね」アッハッハ
京太郎「……いいですね、そういう考え方。じゃあ追加でこういうのはどうですか?」
咏「お、なんだい?」
京太郎「手が冷たい人は、心がすっごくあったかいってことです。そうしたら、咏さんは心がすげーあったかい人ってことになりません?」
咏「――――」
京太郎「どうでしょうか」
咏「っ……はっ――あっははっははははは、いーねー、それ! 今度からそれ、使わせてもらうわ、あっはははは!」
京太郎「ちょっ……そ、そんなに変でしたか?」
咏「いやいや、逆ぎゃく! ちょーっとねぃ、嬉しくて、うん……京太郎にそう言われっと、胸にくるよ、じんわりねー」
咏「――ほんと、夢中にさせてくれるよ、お前はさぁ」ギュゥッ
京太郎「ん……寒いですか? じゃあ、このままポケット入れちゃいます?」
咏「……頼むわぁ。ふー、あったか……幸せだねぃ」
~水曜、夜
京太郎「……冷えるなぁ、今夜は」
京太郎「なんかあったかいもんでも買いに行くか、それとも――誰かに連絡して、寒さを忘れるか」
京太郎「……そういや、電話久々だな。この頃は外出多かったし……さて――」
京太郎「良子さんにも言われたし――って、わけじゃないけど……」
京太郎「春に……連絡したのは今月だけど、電話は先月ぶりだな」
京太郎「あ、もしもし、春か? 京太郎だけど」
春『っっ……も、もしもし、えっと……春、です……』
京太郎「うん、春の声だな。ホッとする……いま大丈夫か?」
春『大丈夫、もちろん……大丈夫じゃなくても、話すからね』
京太郎「それはだめだろ」
春『冗談、だけど……京太郎の声が聞けるなら、それでもよくなっちゃうくらい、嬉しいってこと……だから』
京太郎「そっか……そうだな、わかるかも」
春『そうなの?』
京太郎「ああ、だってさ……春から電話かかってきたら、ちょっと用事してても優先しちまうだろうし」
春『!? あ、うっ……え、と……そ、それは、その……なな、なんて言ったら……あぅ、あ……』
春『う、嬉しいっ……ありがと、京太郎……』グスッ
京太郎「えっ……な、泣いてるっ? なに、なんか悪いこと言ったか?」
春『ううん、逆っ……すごく、嬉しかった……』
京太郎「そっか……ならよかった。驚いたぞ」
春『えへへ……ねぇ、もし悲しくって泣いてたとしたら……どうしてたの?』
京太郎「――そりゃ、そっちに行ってるだろ」
春『――え』
京太郎「悪いことしちまったなら、顔見て謝りたいし……そうじゃなくても、傍で慰めてやりたいからな」
春『は、うっ……あの、その……それは、な……なんて、言えば、いいか……あうぅぅぅぅっ//////』
京太郎「春って、その……最後の日とかは、泣いてたけどさ……」
春『!? そ、そのことは忘れてっ……バカッ……』
京太郎「おお、悪い……でまぁ、泣いてたわけだけど――」
春『だから忘れてっ! もう、やだ……恥ずかしい、それ……あのときの、顔とか……わがままとか……子供っぽくて……』
京太郎「ははっ、悪い悪い。でも、そんな恥ずかしがることないぞ。春の素直な感情が見られて、俺は嬉しかったし」
春『…………そ、そうやって、上手いこと言って……だ、騙されないもん……』
京太郎「騙してないんだけど……んー、そこからさっきの話に繋げるぞ?」
京太郎「でも春は、普段はそう、涙脆くもないだろ? だから、そんな春が泣いてるんだとしたら――」
京太郎「よっぽどのことがあったってことだ。だから、傍に行ってやりたいんだよ」
春『…………バカ』
京太郎「えぇぇぇっ? なんでだよ、そこはもうちょい、なんかないか?」
春『あるよ……ある、いっぱいあるっ……だけど、その……全部込めたら、バカって、ことしか……言えない……言えないもん』
春『嬉しいのに、会えないのがもどかしくて……だけど、次に会えること考えたら……』
春『どうにか、なっちゃいそう……私、変かな』
京太郎「――ああ、変だな。けど俺だって変だよ」
春『うっ……やっぱり、変なんだ――え?』
京太郎「俺だって。いま、春がそういうの聞いたら、こう……」
京太郎「あのな、すげー恥ずかしいから。できれば聞いたら忘れてくれよ」
春『………………うん』
京太郎「……春の顔が見たくなった」
春『………………っっ!』
京太郎「……うわ、恥っず……すまん、忘れてくれ……マジで……」カァァッ
春『~~~~~~~~~~~~っっっ///////』ブルブルブルブル、ジタバタジタバタ、バタンバタンッ
京太郎「?? おい、どうした、すっげー音してるけど、なんかあったか?」
春『なん、でも……なんでも、ないっ……平気っ……』ニヤニヤニヤニヤニヤ
京太郎「ならいいが……な、俺も変だろ?」
春『うん、変……私も、京太郎も……変に、なっちゃうね』
京太郎「おそろいだな」
春『――っっ!!』
京太郎「つっても、変なのがおそろいってのも嫌か」
春『……ううん、嫌じゃない……変だけど、素直なんだもん……いいことだよ、たぶん』
京太郎「……いいこと、か」
春『……会えないけど、こんなに……電話で、声だけでこんなに……安心できたの、初めて』
春『前に言ったこと、覚えてるかな……次に会うまでに、綺麗になって、可愛くなって、驚かせるって……』
京太郎「ああ、覚えてる」
春『……絶対に、驚かせるから……私、頑張るからね……京太郎のために』
京太郎「そっか……なら、俺も驚かせないとな」
春『えっ?』
京太郎「そっちだけ綺麗になったら、釣り合い取れないだろ。俺も、もっと――かっこよく、強くなるから」
春『……それは困る』
京太郎「楽しみにして――えっ?」
春『そ、それ以上……か……かっ、こ……よ……く……~~~~~~~~っっ/////』
京太郎「……困るのか……」
春『う、ううん、そんなことない……楽しみにしてる。一緒に、頑張ろうね』
京太郎「ん、そうか……わかった。俺も楽しみにしてる。けど、あんまり変わりすぎないでくれよ?」
春『どうして?』
京太郎「ありのままの春が見たいからな。気取らず、素で見せられる春に会いたいってことだ」
春『――――――』
京太郎「……あれ? 外したか……おーい、春ー?」
春『あ…………は、はい! 大丈夫、聞こえてる、うん……』
春『嬉しい……大丈夫、だよ……京太郎に会ったら、きっと――』
春『なにも考えられなくて、思ったまま……振舞っちゃう、から……』
京太郎「そっか……うん、ならよかった。じゃあ……またな、春」
春『……はい、おやすみなさい……っ……』
京太郎「おやすみ」
春「~~~~~~~~~~~~~っっっ//////」 (ベッドでゴロゴロジタバタ)
春「そ、それ以上かっこよくなって、ほかの女の子が好きになっちゃったら困る、なんて……い、言えるわけ、ないっ……」
春「それより、危なかった……おやすみなさい、旦那様って……い、言いかけちゃった……バカッ、私のバカぁ……っ」
春「あうぅぅぅっっ……//////////」
京太郎「……はぁ……春のやつ、なんていうか……」
京太郎「落ち着いてる、っていうか……いい雰囲気になってる気がする……もしかして、彼氏ができたとか――」
京太郎「いやいやいや、ンなわけが……オーケー、落ち着こう、クールになれ」
京太郎「……そうだな、誰かにメールでもしておくか、うん」
京太郎「合宿ではお世話になりました。久しぶりにお会いできて、嬉しかったです」
京太郎「強いて言うなら、先輩と麻雀できなかったのが残念ですね……次の機会には、ぜひ」
京太郎「優希には……そっちの様子はどうだ?」
京太郎「当面の目標は、、東場のお前に勝つことだ。その方法、色々と教えてもらってるからな」
京太郎「……ネト麻じゃない、生の対局で、ぜってー土つけてやっからな」
京太郎「……ふぅ、冷静になれたな、なんとか」
~水曜、終了
~12月第三週木曜
京太郎「うーん、なんというか……目覚めのいい朝だな、うん」
京太郎「……あれかな、春と電話したからか、妙に落ち着いてる……」
京太郎「初めて会ってから、四ヶ月くらいか……連絡もこまめにしてるもんな、長い付き合いだよ」
京太郎「さて、俺も負けずに頑張らないとな!」
モブ田「……なんですかこのお重は」
京太郎「いや、張り切って弁当作ったら、なんか量が増えて……」
モブ子「あ、もしかして私の分? いやー、すまんね」ヒョイ
京太郎「どんだけ食う気だよ、慎め」
モブ子「あはは、ジョークジョーク。いくらなんでも、全部は無理だって」ヒョイ
京太郎「一段だけならいいってもんじゃねーよ! まぁいいや、昼になったら教室で開こう」
モブ田「こんだけの量なら、汁物も欲しいな」
京太郎「調理室、空いてたら昼に作るわー」
モブ田「マジか! なんか手伝いいる?」
京太郎「あぁ、買い置きのカツオ節が切れてたから……学校行く前に買って来てくれ」
モブ田「」
モブ子「ダッシュでな」
京太郎「お前は淡か」
モブ田「容赦なくパシらせるとか……めげるわ」
京太郎「冗談だからな? 手伝うなら、お椀の用意とお運びだけ頼むわ」
京太郎「さて、そろそろ登校すっかねー」
淡「おっはー♪ わっ、なにそれ、おせち?」
京太郎「正月にはまだはえーだろ。弁当だよ」
淡「……お花見でもすんの? まだ12月だよ」
京太郎「わーってるよ、ちょっと作りすぎたんだっての」
淡「どうやったら、こんなに作りすぎちゃうのさー……配分もできないなんて、執事失格だよねー」
京太郎「えっ」
淡「だいたいこれ、一人で食べきれるの? 誰かが食べてくれる、なんて考えじゃよくないよー? 自分でできる範囲で収めないとさー」
京太郎「ぐっ……」
淡「キョータローってさー、そういうとこあるよねー。人よりすっごいことすれば、執事っぽい、みたいな考えっていうのー?」
京太郎「」
淡「私はそれ、違うと思うんだよねー。人よりすごいんじゃなくて、それぞれへのベストを提供できてこそ、執事なんじゃないのー?」
京太郎「」ブルブルブル
淡「まぁ仕方ないかなぁ、キョータローって結局……まだ見習いだもんね」
京太郎「……っ……ひぐっ、ぐすっ……」ボロボロボロ
淡「!? えっ、ちょっ、マジ泣き!? やめてよ、私が泣かせたみたいじゃない!」
「……痴話げんか?」
「マジかよ、スッガがあわあわに泣かされてる……」
「俺も泣かされたい……うらやましすぎてもれそう」
淡「ごめんってば! 冗談、じょーだんだよー、ほーら、淡ちゃんだよー」
京太郎「違う、違うんだ……お前の言ってることが、あまりにも正しかった……」
京太郎「ありがとう、淡! いや淡さま!」ガシッ
淡「!? なっ、ちょっ……こ、こんなとこで、だだ、だめだから、まだ明るいし――」
京太郎「俺は正気に戻った! そうだよな、それが原点だよ……俺は大事なことを忘れてた」ギュゥー
淡「は、うっ……その、て、手を……つ、強いし……あと、指……かか、絡んで……////」
京太郎「ありがとう……お前のおかげだ。この弁当はお前に捧げる! そしてこの感情の昂ぶりもだ!」ガバァッ
淡「~~~~~~~~~~~っっっ!?」
淡「あ……わ……あわわわぁぁぁ……」プシュゥー
京太郎「いや、これだけじゃ足りないな……このまま抱いてっていいか? いいよな! 学校行くぞ、淡!」
淡「はふっ……」カクンッ
~木曜、お昼
京太郎「……淡、お前のための弁当だぞ。起きてくれー」
淡「……………………」
京太郎「だめか、学校についてからずっとこうだな……せっかく、いいダシ取って味噌汁も作ったのに」
モブ子「それ、学校に着く前からだよ。強いて言うなら、ガバァッのとこからで――」
モブ田「こいつ、夢中になってて自分がなにしたか気づいてねーよ。そのまま登校とか、もはや伝説」
モブ子「起きないかなー、ほーれ、京太郎のおにぎりだぞー、おいなりさんじゃないぞー」
モブ田「味噌汁の香りも送ってやろう……起きろー」
淡「むにゃむにゃ……うへへへへ、おいひぃなぁ……」
京太郎「起きたか! さ、食べようぜ」
淡「ひぃっ! だ、だめっ……私の身体は、盛り皿じゃないよぉ……」ビクビクンッ
モブ子「どんな夢見てるんだ、この子は……」
モブ田「マジ震えてきやがった、怖いです……」
京太郎「仕方ない、起きたら食ってもらいたいし、別に取り分けて残しとくか」
京太郎「……なんか知らんが、教室で振舞った味噌汁が話題になって、食堂にまで呼ばれてしまった……」
京太郎「しかもなぜか、無料の味噌汁を作る担当にまでされるし……これ、ここの職員さんが時給もらってやってることじゃ……?」
誠子「そうだろうねぇ……でも頼まれて、それやっちゃうんだね、君は」
京太郎「まぁ、味噌汁って結構奥が深いんで、やってると面白いんです……ん?」
誠子「へー。ま、やりがいあるならいいけどね、やりたくないときは言わないとだめだよ?」
京太郎「誠子先輩でしたか、お疲れさまです」
誠子「私にも一杯ちょうだいよ、それ」
京太郎「どうぞ……お口に合うかは、わかりませんが」
誠子「これまで何回、京太郎くんの作ったもの食べてると思ってるのさ。味噌汁だって、何回かもらってるでしょ」
誠子「……うん、やっぱりおいしい。ダシの味と、カツオの香り……味噌の風味も、絶妙だね」
京太郎「恐縮です」
誠子「どうしたの、元気ないね……えっと、昨日のこと、気にしてるなら――」
京太郎「い、いえ、そうじゃなく……淡のお説教をもらって、ちょっとやるべきことを見つめ直してる最中なので」
誠子「……淡に? お説教? したんじゃなくて、されたの?」
京太郎「はい」
誠子「……っ……くっふ……受けるっ……」ブルブル
京太郎「いや、気持ちはわかりますけどね……あいつ、なんていうか的確なんですよ。勘所を見極めてるっていうか」
誠子「ふふっ、あははははっっ……はぁ、あー、くるし……あぁうん、それはわかるけどね」
誠子「気にしすぎないように心に留めて、たまに思いだす感じでいいんじゃないの?」
京太郎「でも、それじゃ――」
誠子「……なんでもかんでも、完璧にやろうとしなくていいよ。年下にそうされたんじゃ、年上の立つ瀬もなくなっちゃうしさ」
誠子「京太郎くん、まだ15才でしょ? やりたいようにやっても、いい時期だと思うよ……それこそ、高校生のうちはね」
京太郎「そういうもんですかね……」
誠子「まぁ――その、お師匠さん? とか……あとは、清澄の部長さんとか。すごい人を目にして、焦る気持ちはわかるけどさ」
誠子「スタートラインが違う、持ってるものが違う、求められてるものが違う、求めてるものが違う――ってこともあるから」
誠子「まずは自分を見極めたほうがいい。私はそう思うよ」
京太郎「……はい。ありがとうございます」
誠子「お礼なら弘世先輩に言ってね。これ、受け売りだから」
京太郎「ちょっと! なんかいい話っぽいのに台無しじゃないですか」
誠子「いいのいいの。私はこれを先輩に聞いて、後輩に伝えるのが役目だって思ったから。大事なのは言葉で、誰からってのは重要じゃないしね」
京太郎「さっぱりしてますね、先輩は」
京太郎「でも、そこがいいと思います。素敵です」
誠子「……///……あ、ありがと……さて、もう一杯もらってもいいかな」
京太郎「一人一杯なんですけど……ま、いいか。菫先輩の分ってことで、サービスで差し上げます」
誠子「弘世先輩が来たらどうするの?」
京太郎「んー、俺の分か……いや、淡の分でもあげときます」
誠子「あっははは! いいね、元気になったみたいだ」
~木曜、部活前
京太郎「結局、淡が起きなかった……まぁ冬休み近いからか、授業もテスト解説と小話ばっかりだし、いいけど」
モブ子「連れを起こさないでやってくれ……死ぬほど疲れてる」
京太郎「そうもいかんだろ、部活始まるし……おーい、起きろー」
京太郎「……仕方ない、また抱っこで運んでやるか」
淡「あわぁっっ!? だめっ、させない! そんな何回も、運ばれてなんてやんないんだから!」
京太郎「うぉ!? お前、起きてたのかよ……っつーか、いつからだよ」
淡「え……あれ、うん……いま、かな? たぶん……なんか、夢見てたかも……」
京太郎「まぁなんでもいいけど……起きたんなら行こうぜ」
淡「ふぇ? どこに? 授業は?」
京太郎「もう放課後だよ。さっさと部活行くぞー」
淡「」
京太郎「よく寝てたなー、お前。あ、飯取ってあるけど食うか? 調理室の冷蔵庫に保管してるけど」
淡「食べる!」グゥー
京太郎「ん、わかった。あと味噌汁もあるから、あっためてやるよ。一緒に行こうぜ」
淡「わーい! ありがと♪」
京太郎「――ということで、淡は少し遅れます」
誠子「……ご苦労さま」
尭深「じゃあ、私は食後のお茶を淹れてきてあげようかな」
菫「甘やかすんじゃない。とにかく部活を始めておけ。京太郎くんも、あまり、その――女子に、無茶はしないようにな」カァァッ
照「お姫様抱っこで登校とか、普通はしない。私ならいいけど」
京太郎「……えっ、俺そんなことしたんですか」
尭深「……無意識って怖いね」
誠子「そんなにお説教が効いたんだ……淡のやつ、なに言ったんだか」
京太郎「それにしては、噂になってなかったようだけど……なんでだろ」
菫(誕生日会のことがあったから、周りが慣れたんだ――とは)
照(言わないし、言いたくない)キリッ
京太郎「にしても、あれですね。テスト終わって練習始まると、麻雀部って気がします」
誠子「先週は勉強ばっかりだったからねー。さて、今日もしっかり指導してあげるよ」
照「でも……最近は、プロばっかりだよね、京ちゃんの指導……」
誠子(合間に見ている、とは言えない雰囲気……)
菫(私も見ている、とは言えないか……すまんな、照)
京太郎(照さんの指導は、わかりにくいとの噂を聞いたんです……わかればすごく伸びるそうですけど、すいません)
理沙「」
だだ、大丈夫だから、まだ慌てるような時間じゃななななないから
咏「っつーわけで、小童どもー! また私が来てやったぞー!」
京太郎「……もしかして、昨日監督と話したっていうのは――」
咏「ん、ああ、京太郎には言ってたねぃ」
誠子「え、私聞いてないですけど……」
咏「まぁねー。行けたら行く、としか答えてなかったからねー、わっかんねーからさー」
京太郎「じゃあお忙しいところ来てくださったんですね、ありがとうございます」
咏「ん、まぁね」
咏「京太郎の手があったかかったから……とは、言えないやね、さすがにさ……」シランケド
照「三尋木プロ」
咏「!? あやっ、やっ、ちがっ……い、いまのは――」
照「わかります」ガシッ
咏「……だよなっ!」ガシィッ
尭深「謎の友情が、芽生えてる……」
菫「……まぁ、プロの大先輩でお強い方なんだ……心強いだろう、知らないがな」
淡「なにー、また咏ちゃんプロ来たのー?」ヒョコッ
誠子「こら淡! 遅刻してその態度はなに!」
京太郎「そうだぞ、口元にご飯粒ついてるだろうが」ヒョイパクッ
淡「」
誠子「」
菫「!?」
尭深「……宮永先輩たちが見てなくて、幸いでした……」
咏「よーし、指導始めるよん。京太郎、卓につきなー」
京太郎「よろしくお願いします」
京太郎「……っ……ツモっ……2000、4000です!」
咏「!? あ、ああ、うん……」チャラ
京太郎「はぁぁ……けど、すいません……ちょっとここで、リタイアです……」グラッ
咏「お、おい! どうしたんさ、しっかりしてっ」
京太郎「やー、大丈夫です、ちょっと無茶しちゃったんで、疲れただけで……」
京太郎「このまま最後まで続けなきゃいけないんですけどね、どうも体力が……」
咏(……目と頭に、すっげー負担かけて処理してるってことかねぃ……まったく)
咏「……それを楽にできるように、次は手抜きも覚えたほうがいいねぃ」
京太郎「手抜き、ですか?」
咏「休めるとこは休めって感じかねー。こればっかは、ちょっと説明しにくい……ま、場数を踏めば見えてくるよん」ポンポン
京太郎「ぁい、精進します……はぁ……」
咏「……私から満貫上がるなんてね、やっぱ面白いよ。京太郎はさ……」ナデナデ
京太郎「んー……んぅ、あれ……」
咏「おう、目ぇ覚めたかい?」
京太郎「咏、さん……っっ! やばっ、寝てました!?」
咏「泥のようにねー」ケラケラ
京太郎「うぉう、すいません……しかも咏さんの膝まで借りちゃって」
※部室に三人掛けくらいのソファがあるとしましょう、そこに咏ちゃんが座って、膝枕借りて寝てました
咏「いーよいーよ、ちょうど休憩してたからねぃ。もう起きて平気かい?」
京太郎「ええ、本当に疲労だけなんで。ちょっと寝ればすっきりです」
咏「やっぱ若いねー。んじゃ、部活再開だよん。色々やることあんだろう?」
京太郎「っと、そうでした。行ってきます!」
咏「あいよー、頑張ってねー」ヒラヒラ
京太郎「……しかし、参ったな……咏さんが来るの知ってたら、お呼びしなかったのに……」
京太郎「しかも寝ちゃってたせいで、連絡が……うお、メールが6件も……」
京太郎「もしもし、理紗さんですか? すみません、ちょっと色々ありまして……」
京太郎「ああ、はい、お叱りはごもっともです……いまどちらですか?」
京太郎「……わかりました。お迎えにあがります。本当にすみません。え、事情ですか?」
京太郎「はい、ご説明しますので……はい、失礼します」
~ちょっと離れた喫茶店
京太郎「――というわけでして。学校のほうで、咏さんを呼んでたみたいなんです」
京太郎「で、まだ理沙さんとの約束まで時間がありましたので、指導していただいたんですが――」
京太郎「ちょっと頑張りすぎて、倒れちゃったというか……疲れて、寝ちゃったんです」
京太郎「――すみませんでしたぁっ!」
理沙「……大丈夫?」
京太郎「はい、すっかり平気です。それよりも、とんだご迷惑をおかけして……今からでも、いらしていただけますか?」
理沙「もちろん!」
京太郎「では、ご案内いたします。先輩には話を通してますので、すぐに指導に入っていただけるかと」
最終更新:2026年01月17日 00:03