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~再び部室

咏「あれー、野依さん?」

理沙「お待たせ!」

咏「いや、待ってないですけど……野依さんも、ここの監督さんに?」

理沙「……京太郎くんに」フッ、ドヤァ

咏「……あー、えー……その、よかったっすね、はい……」

理沙「頑張る!」ニコニコ


京太郎「ということで、こちらでお願いしてました、野依プロなんですけど」

誠子「……普通の練習でこれって、あり得ないよね、なんていうか……まぁありがたすぎるんだけど」

照「……あとで二人と囲ませてもらおう。もう一人は誠子がいいかな」

誠子「っっ……は、はい、頑張ります!」

照「いい返事。期待してるよ」

淡「私はー!」

尭深「遅刻の罰だから。今日は牌譜整理だね」


理沙「京太郎くん、よろしく!」

京太郎「はい……えっと、どうして、俺の隣に?」

理沙「よ、横で……教えます!」

京太郎「……よ、よろしくお願いします」

咏「……笑ってる野依さん、すげー久々に見たなぁ……」

京太郎「……こっち、かな……」トン

理沙「…………」コクコク

京太郎「……ぁ……いや、まだ――」

理沙「ポン!」

京太郎「!?」

理沙「流れ!」

京太郎「は、はい! えっと……他家に、流れが行ってたってことですか?」

理沙「黙って!」

京太郎「はい! すみません!」

理沙「……ごめん」

京太郎「いえ、ありがたい限りです。厳しいほうが、むしろ嬉しいというか……」

理沙「……ドM?」

京太郎「違います……まぁ、厳しいほうが覚えやすいみたいなんで。叩かれて伸びるタイプなんですよ」

京太郎「よっと……んー、いらないか――」

理沙「だめっ!」ガシッ

京太郎「えっ……ん?」

理沙「入れ方! 牌の!」

京太郎(えーっと……さっきの対面の牌の収め方からして、張ってるってこと? んで、これが当たりなのか……まさか――)


京太郎「……っ、ロンです! えーっと……2000ですね」

新虎姫2「!? なんでそんなっ……私の待ち、そこで止めて……そんな安手に、乗り換えたの!?」

京太郎「……すごいですね、理紗さん」

理沙「っっ……プロ、だから……っっ!」

京太郎「はー、今日もしっかり……というか、今週は麻雀しすぎのような……」

理沙「麻雀部!」

京太郎「はぁ、そうなんですけど……」

咏「おいおい、しっかりしろよ~」

京太郎「そうですね。せっかくプロのお二人に見ていただいたのに、こんなこと言ってちゃダメですよね」

咏「うんうん、んじゃ、私らはこれで……ま、もしかしたら外でまた会うかもねー」ヒラヒラ

理沙「お仕事!」

京太郎「? 理沙さんがですか?」

理沙「咏ちゃん!」

京太郎「ああ、そういうことですか。咏さん、急いだほうが」

咏「まぁ急ぎじゃないかんね、のんびり行くとするよん。ほんじゃまた~」

京太郎「お疲れさまでした。理沙さんも、帰られるなら気をつけてくださいね」

理沙「うん!」

理沙「た……楽しかった、またね!」ギュッ

京太郎「はい、またよろしくお願いします」ギュッ

 ※握手です

京太郎「……さて、お見送りも済んだし……掃除だな。淡の牌譜整理も、終わってなきゃ手伝ってやらねーとだし」

~夜

京太郎「はぁー、疲れた……けど、今日は結構寝ちゃってたせいで、あんまり眠くならん……」

京太郎「さて、なんかできることはあるかなっと」

京太郎「こういうときは、誰かの声を聞けば寝やすい……とかなんとか」

京太郎「はやりさん、良子さん、咏さん、理紗さん……」

京太郎「藤田プロは連絡先知らないから、仕方ないけど……」

京太郎「合宿でもお会いできなかったし、健夜さんにも連絡したいな」

京太郎「もしもし、京太郎です。健夜さんですか?」

健夜『う、うん、そうだよ。久しぶり……っていっても、二週間くらいかな』

京太郎「久しぶりですよ、間隔あいちゃってますし……あ、お忙しくなかったですか?」

健夜『平気だよ、今日は実家に戻っててね……ちょっと余裕があったんだぁ』

京太郎「そうなんですか。それはまた……おくつろぎのところを、お邪魔してよかったのかどうか」ハハッ

健夜『じゃ、邪魔だなんてとんでもないよ! むしろ大歓迎だから、家に来てもらってもいいくらいだから!』

京太郎「は、はぁ……」

健夜『ぁ――ご、ごめん、なに言ってるんだろ……ほんと、ごめんね』

京太郎「いえ、大丈夫です。どうしたんですか、なにかありました?」

健夜『いや、そうじゃないんだけど……いや、やっぱりそう……なのかも』

健夜『合宿にね、咏ちゃんと理沙ちゃんとはやりちゃんが行ったでしょ?』

京太郎「そうでしたね、はやりさんは麻雀しに来たんじゃなかったですけど」

健夜『らしいね。まぁそれは置いといて……最近は、理紗ちゃんの相方のみさきちゃんに会ったり――』

健夜『あと、白糸台によくプロ雀士が出入りしてるって聞くしさぁ、ちょっと不安……というかね』

京太郎「不安ですか? 永世七冠の健夜さんが?」

健夜『そ、それは関係ないよっ……えっとね、私が教えてたときの、大会で……全国、行けなかったでしょ?』

京太郎「――あれは、自分の力不足ですから」

健夜『京太郎くんがそう思うのはわかるけど、同じように、私は自分の――指導が、至らなかったからだと思ってるんだ』

健夜『あれから随分あいちゃったし、京太郎くんが上手になってるっていうのは、みんなから聞いてるから……』

健夜『自分以外なら、京太郎くんは強くなれるんだ――って思っちゃって、ちょっとね』

健夜『永世七冠なんて言っても、後に続く人になにも伝えられないんだったら、そんな冠なんて無意味なんだなって……』

京太郎「――称号なんて、関係ないじゃないですか」

健夜『…………そう、かな……だけど……』

京太郎「すいません、さっきは無神経に、永世七冠なんて言っちゃって……」

健夜『ううん、それはいいの。それは、もう私の名前の一部みたいなものだから』

京太郎「だけど、いまのを聞いてわかったんです。称号とかは関係ないんですよ」

京太郎「俺は――宮守にいたとき、健夜さんに教えてもらって……すごく、楽しかったです」

健夜『――――っ』

京太郎「永世七冠に教えてもらって、強くなれたからじゃないです。小鍛治健夜さんに、麻雀を教えてもらって――」

京太郎「楽しいから、強くなれたんです……その全部をだしきれなかった、だけど――」

京太郎「教えてもらった麻雀の楽しさは、ちゃんと……覚えてますから」

京太郎「だから、もっと……もっと楽しませてください、健夜さんの麻雀を」

健夜『っ……ぐすっ……んぅ……うん、わかった……ありがと……』

健夜『ありがとう、京太郎くん……っ』

健夜『ごめんね、いい大人なのにこんなグチなんて言って……しかも、慰めてもらっちゃって……』

健夜『はぁ……ほんと、嫌になっちゃう。情けないよね……って、これもグチになっちゃうか、あはは』

京太郎「――もっと聞かせてください」

健夜『えっ』

京太郎「……その、なんていうか……健夜さんがそうやって、本気のグチをこぼせる相手って、そうはいませんよね?」

健夜『う、うん、まぁ……仲のいいプロの子には、聞かせたくないし……』

健夜『というか、弱み握られたくないし……』ボソッ

京太郎「えっ?」

健夜『う、ううん! なんでも! それに昔の友達も、こんなの言われても困るだろうし、あとは仕事関係の人とか親だけだし……やっぱり、言えないかな』

京太郎「だからですよ。その捌け口になれるなら、俺は嬉しいです……小鍛治健夜って女性が、俺には心許してくれてるって」

京太郎「なんていうか、役得じゃないですか」

健夜『……はぁ、もう……』

京太郎「だめ、ですか……?」

健夜『……ずるいなぁ、京太郎くんは……そうやって、すぐに……優しく、私の……心の中に入って、居場所作っちゃうんだもん……』

京太郎「すいません、なんか……まずかったですか?」

健夜『まさか。すごく嬉しいよ……年下にそんな風に言われたら、さ……もう意地でも、グチはこぼせないよね』

京太郎「えっ」

健夜『あははっ、残念でした。でも安心してね、心は許してるから……だからこそ、京太郎くんには強いところを見せたい。見てほしいんだ』

健夜『いま聞いてくれた分で、もう十分だよ……だから……』

健夜『――グランドマスターじゃない、小鍛治健夜を……また、麻雀のお相手に呼んでいただけますか?』

京太郎「俺なんかでよければ」

健夜『……だめだめ、そこはへりくだるとこじゃないよ。私はただの健夜、あなたは京太郎くん』

健夜『対等の立場で、麻雀がしたいだけなんだから、ね?』

京太郎「う、そうですね……すいません。さすがに実力差は、実感してるもので……」

健夜『あはは、まぁ仕方ないよ。いまはそれで、十分かな』

健夜『いつか肩を並べてくれるって、信じてるからね?』

京太郎「――邁進します」

健夜『うん、よろしい』

京太郎「……よかったです、元気が出たみたいで」

健夜『そうだね……なんていうか、つまんないことで悩んでたって、気づいたみたい』

健夜『みんなみたいに、教えに行ってもいい? って連絡してもいいわけだもんね』

京太郎「そうですよ……あれ、そういえば――」

健夜『ん、どうしたの?』

京太郎「いえ、その……麻雀の指導で悩んでたなら、プロの方たちの行動が気になるのはわかるんですけど……」

健夜『うんうん』

京太郎「みさきさんに会ったことは、なにか関係あったのかなって……さっき、言ってましたよね」

健夜『』

京太郎「あれ? も、もしもし?」

健夜『――――』

京太郎「……あのー」

健夜『イッテナイヨ?』

京太郎「なんで片言なんですか」

健夜『わ、忘れて……あれは、その……なんでもないから』

京太郎「いいですよ、なにかあるなら言ってください。今日だけは、つまんないグチでも聞かせてくださいよ」

健夜『いや、あの……でも……』

京太郎「聞かせてください」

健夜『……笑わない?』

京太郎「はい」

健夜『呆れない?』

京太郎「もちろんです」

健夜『じゃあ……あの、みさきちゃん、なんだけど……可愛い、でしょ?』

京太郎「えっ……ええ、まぁ……」

健夜『テレビの人と比べると……いや、そうじゃなくてもだけどさ……ルックス、自信ないから……比較されたら、やだなって……お、思っちゃいました////』

京太郎「怒りますよ」

健夜『ご、ごめんなさい!!』

京太郎「あのですね……気づいてないなら言いますけど、健夜さんってすげー美人ですよ? 肌も綺麗ですし、髪もサラサラですし、あと――」

健夜『あと?』

京太郎「……すいません、なしにしていいですか、いまのは」

健夜『だめ』

京太郎「あ、あと……その、近くにいくと、い……いい、匂い、しますし……」

健夜『~~~~~~っっ!? な、なな、なに言ってるのっ!?』

京太郎「だからっ、なしにしていいですかって、言ったじゃないですか!」

健夜『で、でもそんな……そんな、風になんて……お、思ってなくて……』

京太郎「くっ……と、とにかく、そんな……ルックスに関して気にする必要は、まったくないですよ。自信持っていいと思います」

健夜『……慰めで、言ってるわけじゃ――』

京太郎「怒りますよ」

健夜『は、はい! うん、わかった……ありがと』

京太郎「なんか、すげー、汗かいちゃいました……恥ずかしいです」

健夜『……ふふ、そっかぁ……いい匂い、したんだ……えへへ』

京太郎「あの、もうやめてください……あと、人に言わないでくださいね、変態扱いされますから、俺が……」

健夜『うーん、どうしようかなぁ』

京太郎「お願い、グランドマスター!」

健夜『あはは、大丈夫だよ。絶対言わないから……その代わり、お願い聞いてもらえるかな』

京太郎「なんなりと……か、可能な範囲で」

健夜『……こ、今度ね……麻雀、教えに行くことがあったら……それで、い……いい匂いって、思ったら……』

健夜『直接、教えてくれると……う、嬉しい……ですっ……////』

京太郎「……ハードルたっけぇ……あー、はい……わかりました、善処しますってことでいいですか?」

健夜『ご、ごめんね、変なお願いで……なんていうか、その……そういう、甘い経験とか……してみたくって……一度も、ないから……』シュン

京太郎「大丈夫ですよ。それに俺、結構思ったこととか口に出ちゃうほうですから……自然に、言っちゃうと思います」

健夜『……ふふ、ありがと。それじゃ、おやすみ。またね、京太郎くん』

京太郎「はい、おやすみなさい」

京太郎「健夜さん、そっか……高校女子校からプロ、そんで永世七冠だもんな……」

京太郎「そんな人の、心許せる男友達……いや、弟子? まぁ男の知り合いって感じか……やべぇ、嬉しい」ニヤニヤ

京太郎「この嬉しさを誰かに伝えたい! いや、伝えないけどな? なんかメールで発散しときたい……」

京太郎「……プロってやっぱりすごいです。最近、とみに実感してます」

京太郎「でも、シロさんならやっていけると信じてます。助けが必要なら、いつでも言ってくださいね」

京太郎「昨日の電話のおかげで寝覚めがよくてさ、朝からお重で弁当作っちまった」

京太郎「春との電話は、俺に元気をくれるみたいだな」

京太郎「……なんか、恥ずかしいこと言ってないか? まぁ送っちまったもんは、仕方ないな」

~12月第三週木曜、終了


【12月第三週水曜】

 今日も今日とて麻雀だ――と思ったら、朝からトラブルがあった。
 先輩を不快にさせてしまう、なんということだろう。
 色んな方にご助力いただき、なんとか許していただけた。
 優しい先輩でよかった、俺も後輩が出来たら、こういう先輩になりたいと思う。
 本当にすみませんでした。二度とないよう、肝に銘じておきます。

 心の広い先輩のおかげで、その後、プロにご指導いただいたときも、部活に集中することができた。
 この方は、かなりの有名人です。しかも強いです。めっちゃくちゃ強かったです。
 でも、この方より強い人もいる……プロって怖い。

 とはいえ――こういうことを書いていいかはわからないけど、怖くはないです。むしろかわいい人です。
 少し寒さに弱いようなので、和装に合う上着みたいなものを、持ち歩くようにしてもいいかもしれない。
 着物に手袋は、どうなんだろう。なしならなしで、対応が必要だろうか。
 これは今後の課題にしよう。

…………

 『いや、別に……私が悪かったんだからね? 気にしなくていいよ、京太郎くんは』
 『その通り。京ちゃんは悪くない、心配しなくて大丈夫だよ』
 『そうやって甘やかすのよくないと思うなー』
 『お前が言うか……とはいえ、京太郎くんも悪いところがあったのは事実だ。まぁ、次がなければいいだろう』
 『私も、なるべくおねだりは控えるからね、ごめんね』
 『ふきゅ』

 誰だ最後。
 みなさん、やっぱり優しいな。でも周りが甘いなら、自分が厳しくならないといけない、これも課題だ。

 『和装のプロ……あっ』
 『……あぁ』
 『あぁ』
 『ああ、あの方……』
 『やはりロリコンだった!』
 『? ろりこんとはなんだ?』
 『お気になさることではありませんよ』
 『あいつもマメに通ってるもんだな……まぁ、あいつのことはよろしく頼むよ』
 『……手袋がないのなら、どうしたんですか?』
 『というかあの人、京太郎くんより年上だよね?』

 おかしい、名前を伏せたのにすごい勢いで正体がバレてる。

 『和装のプロだって、別に一人じゃないっしょー? わっかんねーけど』
 『特定した!』
 『火消し乙だぞ☆ あとで集合ね、いつものとこで!』
 『訴訟!』
 『そこまでせずとも……まぁしかし、お話は聞きたくありますね』
 『……でも、それで……京太郎くんが強くなれるなら、いいと思うけど……』

 自演バレてるじゃないですか……咏さんの口癖、特徴的だからなぁ。

 『――ところで、うちの一年生が、その……ときどき、変なんだけど』
 『しかも指摘すると、変なのを肯定するんですよー』
 『なにか知らないかしら?』
 『心配です、すごく……』

 ………………心配ないです、とメールしておこう。

――――――――


~清澄

「……優しい先輩だってさ」
「そうですね、書いてあります」
「先輩はだいたい、優しいもんだじぇ。花田先輩とかな!」
「……わしはどうじゃったか……あいつに、少しでもなにか、してやれてればよかったが……」
「………………もういや、この話題……」
「そ、そんなつもりではっ……」
「……大丈夫ですよ。京太郎くんは、誰かが優しくなかったとは、ひと言も書いてません」
「のどちゃん! 言いたいことはわかるけど空気読むんだじぇ!」
「まぁ、たしかに思っとりゃあせんじゃろ、あいつはのう」
「だといいけどね……だめね、長いこと会ってないから……ちょっと弱ってるのかも」

(……そうね、冷静に考えたら……誕生日に電話なんかもくれたし……そう、嫌われてはないわよね?)ニヤニヤ

「……急に笑いだしましたよ」
「落ち込んどるよりはえぇわい」


~白糸台

「優しいんだって」
「優しいらしいな」
「まー、優しいもんねー」
「よかったね、誠子」
「……あの、ほんとやめて……やめてください……」カァァァァッ
「真っ赤だね」
「優しい赤色だな」
「怒ってるのかな?」
「照れてるんだよ」
「っ……ち、違うから、ほんと……もう、勘弁して……」カァァァッ
「こんな先輩になりたい、か……」
「先輩としては言われてみたいセリフだな」
「先輩ミョーリに尽きるってやつだね!」
「優しい誠子、お茶飲む?」
「~~~~~~~っっっ////////」カァァァッ
「可愛いね」
「珍しくな」
「いつも可愛いよ?」
「かっこいい系なのにね、可愛いとこあるから」
「もう許してぇぇぇぇ――っっっ!」


~龍門渕

「――で、ろりこんとは――」
「気にする必要のない単語ですわ」
「そうだね。っていうか、誰さ、あれ書いたの」
「ちょっと待ってて……北海道だって」
「範囲ひろっ! 高校だけでも何校あんだよ……」
「なぁハギヨシ、いったいろり――」
「衣様が、お気になさることではございません」ニッコリ
「……う、うむ、そうか……ならば重ねて聞かぬ」

「ハギヨシは、意外と過保護な親になりそうですわね……」
「意外でもなんでもないような……」
「まぁ息子は厳しく鍛えそうだけどな」
「でも……不思議と、結婚相手が想像できない……」
『たしかに……』


~永水

「……誰か、理由を聞いてちょうだい」
「じ、自分でやればいいですよー」
「もう、なんていうか……幸せすぎて溶けてる感じですね……」
「そーなの……ふふ、えへへぇ……」
「また、京太郎さんのことでしょうか……うらやましいです、私もあんな――」
「だめよ、小蒔ちゃんまで、あんな風になっちゃ」
「……次に来たときは、ちゃんと守る必要がありそうですねー」
「隙があったら手とか繋ぎやがりますからね、あの男は……まぁ、仕方ないですし、私が彼の手を塞いでおきましょうか」
「私がするから大丈夫よ?」ニッコリ
「私が繋いだほうが、微笑ましい光景でいいと思うのですよー」
「奈良で繋いだことは、言わないほうがいいですか?」
「……いま、聞いちゃったわよ?」
「あっっ! き、聞かなかったことにしてください!」
「あのスケコマシは……やれやれですよー」ハァ
「……いいなぁ、姫様……」

「京太郎が、言ってくれた……私の、顔が見たいって……んふっ、ふふーふふふふ……えへへへへ……」




~宮守

「……キョータロト、マージャン……」ボソッ
「急にどうしたの、エイスリン」
「……豊音、エイちゃんの携帯確保!」
「合点承知だよー」
「!? ダ、ダメ! オ、オシエルカラ!」
「まぁ見なくても察しつくけどねー。で、メールになんて?」
「アエテ、ヨカッタ……マージャン、イッショニ……////」
「まーた歯の浮くようなことを……」
「嫉妬はみっともないよ、塞!」
「嫉妬じゃないから!」カァァッ
「一緒に打ったのはシロと私だったよねー?」
「うん……ごめん、私だけ二回も打っちゃった」
「そういえばどうだった? 私、あんまり見られなくて」
「強くなってたよー。しかもねー、勝ったあとがさー……きゃーっっ///」
「豊音、それは内緒に……」ヒソッ
「アヤシイ!」
「なにがあったの、そこ!」
「あのねー、シロがねー。勝ったら先輩呼びをやめるようにって――」

 少女事情説明中

「……で、勝っちゃったんだ、京太郎くんが……」
「しかもなに、そのあとの対応! イケメンすぎでしょ!」
「カ、カッコイイ……英)なんてクールなの、京太郎……私も、そうされてみたい……」ポー
「……私もちょっと、気負って手がおかしかったのかもだけど……」
「同じ状況で、京太郎くんは勝ったもんねー、ちょーかっこよかったよー///」

(……私も、一緒に打つことになったら……そうやって、お願いしてみようかしら……ね)フフフ


~阿知賀

「すごいねー、三尋木プロだってさー」
「うちに来たのは、瑞原プロと戒能プロだけだったわよね」
「三尋木プロは私も会ったことないな。やるわねー、京太郎くんも」
「また一人ライバルが……大変ねー、憧も」
「……ん、頑張る……ちゃんと、向き合うんだから、あたしも……っ」ギュッ
「おぉ! なんかわかんないけど、憧燃えてる! だよね、私も三尋木プロに、勝つぞー!」
「!? なに、シズも……そう、なの?」
「うん! だって、強い人と打ちたいし、勝ちたいじゃない!」ゴッ
「……あぁ、そういう……うん、そっちも頑張ろうね。春はシズと玄の個人戦だけだけど」
「私がいなくなっても、ちゃーんとインハイ行きなよー? レジェンドがいないとだめなんて、思われたくないでしょー?」
「ま、レジェンドはこの望さんがいないとだめだけどね」
「そりゃあんたでしょーが。毎晩毎晩、飲みに誘わないで」
「仲良いなぁ、お姉ちゃんたち」
「私たちもでしょ、憧!」
「まーね。中学のときは、疎遠だったけどねー」
「そ、それは言わない約束でしょ」
「んな約束してないっつーの」

「大変な事実が明らかになった」
「ど、どうしたの灼ちゃん」
「松実館のモデルの宿と、鷺森ボウルのモデルになったボウリング場が、すごく離れてることが判明したみたい」
「な、なんだってー!」
「ということで、明日からはあまり来られないかも」
「……あったかくない……」
「そうだよ、寂しいよー」
「んー……じゃあ、造詣のモデリングだけってことで、立地的には近距離だってことにしとく?」
「それなら毎日来てても平気だね!」
「あったか~い」
「じゃ、明日からもよろしく」


~某居酒屋

「理沙ちゃん、ひと言どうぞ」
「……もう、諦めた」ショボン
「これは深刻ですね」
「だ、大丈夫だよ! ほら、相方のみさきちゃんにも会ってるんだし、三人で会ったりとか――」
「……バーター?」
「……あのー、野依さん。自分からアピったらいいんじゃないっすかね」
「それは……」
「それは?」
「……は……恥ず、かしいっ……」モジモジ
「乙女か!」
「……新道寺って女子校だったよね」
「高卒プロ……これは紛うことなき乙女ですね」
「はやりも乙女だぞ☆」
「……言ってて、虚しくなんねーっすか?」
「」
「」
「」
「……恐ろしい火力ですね」
「し、知らんし、私のせいじゃねーし!」

【12月第三週木曜】
 今日は、俺の原点というか――目指すべき方向、あるべき姿を、再認識させられた。それも朝から。
 その代償に、一人の少女を気絶させてしまったらしい。悪いことをした。
 でもまぁ、ご飯喜んでくれたなら、それで許してほしい。
 これからも、なるべくおいしく作るから、よかったら食べてくれ。

 その絡みの相談をお昼にしたところ、先輩からありがたい言葉をいただいた。優しい先輩だ。
 でもその先輩も、その言葉はさらに上の先輩からいただいたらしい。
 どちらも尊敬する先輩で、想いのようなものがしっかり伝えられていることを、眩しく感じた。
 白糸台のような上下関係の厳しい学校は、こういう部分がとても素敵だと思う。

 聞いた話では、大阪の名門校や、福岡の新道寺女子、東東京の臨海なんかもしっかり体育会系のようだ。
 そうした学校の先輩後輩関係も、興味深い。
 もちろん、フレンドリーな上下関係な学校も好きですけど。

 そういえば阿知賀では、顧問に普通の口調で話すやつがいた。
 先輩にも同じようにしていたが、それで許されるのは、やはり愛嬌の勝利だろう。
 俺にはマネできないな、うん。


 それと、本日の謝罪枠です。なるべく恒例にはしたくないんだけど、仕方ないというか……。
 これまでご指導いただいたことのない方に連絡して、お呼び立てしておきながら、危うくすっぽかしてしまうところだった。
 事情を説明したところわかってくださったが、それでもいい気はしないはずだ。
 謝るばかりではなにも解決しないけれど、いまの自分には謝ることしかできない、本当に不甲斐ないな。
 すみませんでした。それと、許してくださってありがとうございます。

…………

 『本当に自分は運がないのかなと思っていましたが……事情もやむを得ないことでしたから、気にしていません。また呼んでください』
 『よかったっすね。今回は私もいたんで、次はお一人でどうぞ~』
 『私もすごくやる気になったからね、呼んでもらえると嬉しいな』

 理沙さん、ありがとうございました……口数は少ないけど、すごく熱い人だってわかりました。
 それに健夜さんも、立ち直ってくれてよかった。 

 『プロ二人呼んで練習やと……どないなっとんねや、須賀の周りは!』
 『須賀くんやなくて、監督の差ぁやないかと思ってしまいますね』
 『え~。大会中にまで練習に呼んだけても、まだ足らへんの~? いやしんぼさんやね~』
 『ほら、あたしだけじゃないじゃん。よそだって監督っぽい人に、ちょっとキツいでしょ?』
 『いや、特定の先輩が代行にだけ厳しいんであって……うちはわりと厳しいよ?』

 『大阪はどこもそうちゃうか? うちだってあの鬼の監督に、誰がなめた口きけるかっちゅーねん』
 『くっきっき、オカンは手ぇ抜かんからなぁ、そういうとこで』
 『なに言うてんの。こんな優しい監督つかまえて、よう言うわ、あんたら』
 『優しいってなんやっけ』
 『腕上がらんようなるまで、しごくことちゃうのん?』
 『……なんやなぁ。引退した教え子に、こう厳しいこと言われると堪えるわ、ほんま』
 『なんやかんやで、娘の誕生日にははよ帰ってくれるおかーちゃん、キライやないで』
 『……あほ、ボケ倒してるとこに、マジで答えてどないすんの。ほんまあんたは……』

 『さりげなくポイント稼いでいく我が従姉妹、なかなかのやり手やね』
 『そ、そういうんとちゃうから!』
 『よかったですね、監督』
 『……ところで、やっぱり団体全国チームやないと、来てもらわれへんのですかー?』

 どうなんだろ……晩成もなかったし、やっぱり無理なのかな。
 けど、来年以降でずれる可能性もあるし……そうなったら行けるのかな。
 しかしなんだな、大阪って学校関係なく仲良いよな。

 『うちはどげんやろ。一部が異常に仲ようしすぎち思とーけど……』
 『それ以外は普通に、上下関係がある程度でしょうか』
 『ちょっと待て、そいばどげん意味で言いよっと』
 『自覚あっとやろ、そんツッコミしようゆーことは』
 『私と部長とん繋がりば、そげん言わんでほしかよ』

 なに、そういう学校なの? ゆりんゆりんなの? やばいテンション上がってきた。


~清澄

「うちは結構厳しいかな?」 
「前部長が会長でしたからね……学校全体で、あの人はすごいって見てる感じでしたから」
「あらそうなの? いやー、照れちゃうわねー」
「まーた心にもないことを言うとるの」
「そんなことないわよ? 私なんてすごくもないし、大した才能もない、ただの凡人なんだから」
「こんな凡人、見たことないじぇ……」
「そうですよ、会長がそうなら、私なんて……」
「のどちゃんには立派なモノがあるじぇ! 自信持てばいいんだじぇ!」
「そうだよ……それを言うなら、私のほうが……」
「それはひょっとして、ギャグで言うとるんか?」


~白糸台

「また誠子か」
「今回は弘世先輩ですよ。受け売り言っただけですから」
「私が? 亦野には色々言ったからな……どれのことだか覚えてないぞ」
「けど、お礼は弘世先輩にって言っておきましたよ」
「!!! あ、あぁ……あれは、そういう……」
「さっそく、お礼言ってたみたいだね……」
「私が厳しくしても、みんなが甘やかしちゃう!」
「お前は自分に厳しくしなよ。なんで学校に来てるのに、部活に遅刻するのさ」
「あ、あれはっっ……キョータローが悪いの!」
「お姫様抱っこさせて登校して、そんなこと言うんだ……」
「許さない、訴訟も辞さない」
「後輩を脅かすな、バカ」
「こわいよー、先輩がいじめるよー」
「上下関係の厳しい学校ですね」
「京太郎くんが来てから、異常に緩くなった気がするよ……」


~永水

「うちはそう厳しくもないですよね」
「そうねぇ。だけど、学校というか、街が――それに土地も、少し特殊だからね」
「ですねー。どうしても、家の関係が尾を引くというか……」
「少し、寂しいです……」シュン
「……その関係を、いい意味で乱してくれた、人がいる……」
「そうね。京太郎くんには、感謝してもしきれないわ」
「はい、京太郎さんといると……みんなも、私を神代ではなく――小蒔として、見てくれましたから」
「彼がいなくなっても、その関係はそこそこ続いてますもんね。いい影響を与えてくれたって思います」
「定期的に来てくれないと、戻っちゃいますよー。早く帰ってきませんかねー、あの子も」
「……大丈夫。きっと、すぐに……じゃなくても、気がついたらひょっこり、帰ってきてるはず……だから」

「……そ、そのときは……私の家に、住んで……ほしいな……////」
「アウト」
「許されません」
「…………むー」ポリポリポリ
「嫁入り前だってことを、自覚しましょうねー」
「じゃあお婿さんに取ればいい、ということでしょうか?」
「そういうことでもないのよ、小蒔ちゃん?」
「難しいです……」


~宮守

「なるほどね、それでこのメールなんだ……」
「こっちはわりとわかってたけどねー、昔っからプロの試合とか見てたし」
「京太郎くんは、麻雀打ちだして日も浅いからね」
「シロの心配してくれたんだねー、ちょーやさしいよー」
「ナンデモ、タスケルッテ、イッテルヨネ?」
「なんでもとは言ってないんだよなぁ……」
「でもいつでも、とは言ってるじゃない。よかったわね」
「……寮で、住み込みの執事やってもらえないかな……」
「どこに住まわせる気なの!」
「二部屋ももらえないよ、そりゃ同じ部屋でしょ」
「はわわっ/// どど、同棲だよー、大人だよー////」
「なんでだろ、介護にしか思えない……」
「デモ、サイキンノ、シロ! チャント、シテル!」
「たしかにね。麻雀にも熱心だし、トシさん喜んでたよ」
「……そりゃ、これだけ信頼されたら……応えないと、かっこ悪いから」


~阿知賀

「これ憧のことだね」
「……ねー、ハルエー。敬語のがいい?」
「新しい監督入ったらそうしなよー。私はもう慣れたけどさー」
「昔っからの付き合いなんでしょ? お姉さんの関係で……なら、好きにしたらい……」
「おかしい、灼ならちゃんと叱ってくれると思ったのに……」
「わずらわし……」ハァ
「冷たい! 望ぃ、灼が冷たいのよー」
「はいはい、いい大人が高校生に混じらないの」ズルズル
「まぁ赤土先生は長い付き合いだとしても……灼ちゃんは、一年弱の付き合いなのに、敬語使わないよね」
「卓囲みだしてからは長いもん。合宿とかで、裸の付き合いもあったしさー、いまさら気取っても……ねぇ?」
「……ほんと、憧は……まぁ、いいけど」
「シズちゃんはそのあたり、しっかり敬語使うよねー」
「あははは、家の手伝いで、お客さんとかには敬語ですから」
「あー、家が商売だと、そういうのあるよねー」
「……あれ、憧の家……というか、ここって……」
「じ、神社は商売じゃないから……」
「お客様には、誠意を持って対応しないとだめだよ? 憧ちゃん?」
「はいはーい、わかってるって、宥姉」
「宥さんだけは、敬称みたいなのつけるよね」
「憧はお姉ちゃんっこですから」
「そこ! 勝手なこと言わない!」
「なになにー、お姉ちゃん大好きだってー?」
「ほら出た! もー、ハルエの相手してなよー」


~某居酒屋

「奢り!」
「マジっすか、あざーっす!」
「お大尽ですね……では遠慮なく」
「そんなに嬉しかったんだ、よかったね☆」
「いいなぁ。私も早く、指導に呼んでもらえるといいけど……今度は、もっと楽しめるからね」
「健夜さん、なにかいいことありましたか?」
「うん、あったよ。京太郎くんに、慰めてもらっちゃた」
「!?」
「詳しく!」
「こいつはシラフじゃ聞けないねぃ……おねーさん、一番きっついの、燗にしてー」
「あ、すこやんちょっと待って! オッケー、録音準備できたよ! はりきってどうぞ!」
「こーこちゃん!? なんでいるの!」
「あー、私が呼びましたー。局でたまたま会ったんで、よかったら来るかいって」
「さぁさぁ、小鍛治プロ! 高校生との爛れた性生活を、余さずご報告ください!」
「ないから! そそ、そういう慰めじゃないのっ、人に言うことでもないの!」
「いっそのこと、須賀京太郎くんを呼ぶのはどうですか、みなさん?」
「それはいけません。私は全力で止めます」
「うん、迷惑かけるのはダメだぞ☆」
「これは同意だねぃ、あいつは巻き込んじゃだめ」
「右に同じ!」
「お、おお、そーすか……なんていうか、大事にされてるんですね」
「癒しだからね☆」
「希望の星でもあります」
「……や、優しい!」
「見守ってやんねーと、あぶなっかしーからねー、知らんけど」
「そういうこと、かな……だからこーこちゃん! マイクしまって!」
「あ、スイッチ入ってなかった……もう一回! もう一回、同じのでお願いします!」
「しないよ!」



~12月第三週金曜

京太郎「そろそろ終業式だな」

モブ田「っていうか明日な」

京太郎「遠くから来てるやつって、地元に帰ったりすんのか?」

モブ子「するよー。だってお正月あるし」

京太郎「そういえばそうか……じゃあ最終日は、みんな帰っちゃってそうだな」

モブ田「こっちに家ある連中は、ギリギリまで残って、年越したりするぞ」

モブ子「そうじゃなくても、年明けてから帰ったりする子もいるしね」

京太郎「……ああ、そうか。長期滞在だと、荷物多くなるもんな」

モブ田「で、お前はどうすんの?」

京太郎「大晦日に帰るよ。夜には着くだろうから……年越しはあいつとだな」

モブ子「誰!? 地元に彼女!? もしかして魔王!?」

京太郎「咲じゃねーよ、うちのカピバラだ」

モブ田「さらっと幼なじみを魔王呼ばわりに草不可避」

京太郎「着替えとかを取りには帰ったけど、滞在するとなれば帰郷って感じがするなぁ」

尭深「えっ……京太郎くん、長野に帰っちゃうの?」

京太郎「尭深先輩! おはようございます!」

尭深「おはよう。それで、どうして?」

京太郎「あぁ、違いますよ。年末――というか、年始のことです」

尭深「なんだ……もう、びっくりさせないで」

尭深「だけど、それだと年越しは一緒にできないんだね……」

京太郎「すみません、やっぱり久々に家族に会いたいものですから」

尭深「うん、もちろんそうだよね。いくらしっかりしてて、なんでもできるっていっても」

尭深「まだ高校生だもん。長く実家から離れるのは、大変だよね」

京太郎「まぁ、よそから来てる生徒はみんな同じだと思いますけど」

京太郎「そういえば、尭深さんはどちらから?」

尭深「私はね……ん……内緒」

京太郎「えっ」

尭深「一緒に里帰りしてくれるなら、教えてあげるけど?」

京太郎「……魅力的なご提案ですけど、遠慮しておきます」

尭深「残念……でも、気が向いたらいつでも言ってね」クスクス


京太郎(どこなのかな、気になってきた……)


 ※都内じゃない、よね? 知らんけど


~金曜、お昼

京太郎「――ってなことを話した。淡、知ってるか?」

淡「知ってるよー、でも教えなーい」

京太郎「なんでだよ」

淡「女の子は女の子の秘密を、男の子に教えたりしないよーだ」

京太郎「くそぉ……尭深先輩の地元、行ってみるかな……」

淡「!? だ、だめだよ、実家帰るんでしょ!」

京太郎「まぁそうなんだけどさ。お前が止めなくてもいいだろ」

京太郎「そういや、淡はこっちなんだよな?」

淡「そだよー、テルーとスミレもねー。あれ、亦野先輩もだったかな?」

京太郎「照さんはどうすんだろ、長野帰るのかねー」

淡「さー。聞いてみたら?」

京太郎「前に聞いたらわかんないって言われたんだよ。プロ入りの準備とかあるし、こっちに残るかもな」

淡「そっかー。ま、それなら年越しはテルーと一緒だね♪ 京太郎も残りたかったら、残っていいよー」

京太郎「俺はあいつとの年越しのために帰るんだよ」

淡「!? だ、誰よ!」

京太郎「秘密だ」

淡「~~~っっ、バカッ、バーカッ!」

京太郎「なんでだよ……」

京太郎「ということでですね、誠子さんはいつ帰られるのかな、と思いまして」

誠子「私は京太郎くんを見送ったら、帰ることにするよ」モグモグ

誠子「ところで今日はなに、味噌汁じゃないんだ」

京太郎「なんかおでん――あれ、関東炊きだっけ? これ、作るように言われて」

誠子「ダシ引くのが上手だからかな。これもおいしいもん」ハフハフ

京太郎「ありがとうございます。タネはどれが好きですか?」

誠子「んー、好きな人は多くないらしいけど、ちくわかな。あとは厚揚げ」

京太郎「あ……ちくわって、もしかして昔――」

誠子「や、やったかなぁ……いや、あんな形だし、そうしたくなるでしょ?」

京太郎「わかります。舌、火傷したでしょ?」

誠子「残念。ちゃーんと冷めてからやったよ」

京太郎「じゃあどうぞ。熱々のダシと、ちくわおまけです」

誠子「ありがとっ……でもいいの?」

京太郎「全種、一つなら食べていいそうなんです。けど俺、もうお昼食っちゃいましたから」

誠子「そういうことなら遠慮なく。あと卵も好きなんだよねー」

京太郎「いいですよ、どうぞ」

誠子「……あはは、なんか悪いね。本当にくれるとは思わなかったから」

京太郎「誠子先輩にはお世話になってますから」

誠子「たいしたことできてないと思うけど」

京太郎「俺が部に馴染めるように、根回ししてくれたでしょう?」

誠子「……してないよ。京太郎くんの人柄が、みんなに受け入れられてるんだと思うよ」

京太郎「そうですか……それなら、そういう部を作ってくださったお礼、ということで」

誠子「そっちは弘世先輩」

京太郎「そんな謙虚な誠子先輩に、ということで」

誠子「ふふっ、降参だよ。じゃあ遠慮なくいただきます」

誠子「……ん、おいしい。優しい味だね、京太郎くんみたい」

京太郎「恐縮です」



~金曜、部活前

菫「――私もその予定だな。京太郎くんを見送ったら、実家に戻る予定でいる」

照「年越しは?」

菫「元旦は家にいろとうるさいんだ……夜遅くに帰るのも、体裁が悪いしな」

照「しょうがないね」

京太郎「照さんもこちらに?」

照「うん、お母さんと。だって長野に帰っても、京ちゃんに会っちゃだめなんでしょ?」

京太郎「条件があるみたいですからね、よくわかりませんけど」

 ※>>2に書いてある、かな?

照「会えないならいいよ。そのあと、また白糸台なら嬉しいんだけどね」

京太郎「そればっかりは、運次第ってことで」

淡「ねーねー、それってなんか裏ワザないの? 絶対当てられる、的なやつー」

尭深「あったら、清澄の部長さんがやってるんじゃないかな」

京太郎「あの人は裏技をこっそり使うんじゃなく、これは禁止だからって公にするタイプですよ」

菫「ほう、正々堂々としたものだ」

京太郎「――で、それより非合法な手段を、合法に見せかけてやる人ですよ」

誠子「えげつない!」

京太郎「そういうところは、逆に憧れますけどね。突き抜けてて、いっそ清々しいです」

照「どうしよう、京ちゃんが悪い女に捕まった」

京太郎「部長はいい人ですよ」

淡「――残念、手遅れです」


京太郎「おかしい、なぜわかってもらえないんだろう」

京太郎「さて、そろそろ始まるな」

京太郎「さて、今日は先に差し入れ作っちまうとしよう」

京太郎「そろそろクリスマスのネタも考えたいし、久々にケーキの試作でもしてみるか」

京太郎「――こんなもんか」

京太郎「ふんふむ、やっぱ季節感をだすフルーツのと――」

京太郎「定番のブッシュドノエル、あとはこっちだな……」

京太郎「シュークリーム使って、クロカンブッシュ」

京太郎「よし、この三つをデカいサイズで提供できるようにしよう」

京太郎「とりあえず、このプチケーキ群は差し入れだな。さっそく持っていくか」


「このブリュレは私んじゃー!」
「どけい! 何人も私のレアチーズには触れさせんぞ!」
「イチゴは私のものよ、引きなさい!」
「ブルーベリーは目の癒し! 全部私のものだ!」
照「この三つは私の。手を伸ばすなら覚悟して」
「は、はい……」

京太郎「」

菫「なんだこの阿鼻叫喚は……」

尭深「さりげなく混ざってる最上級生もいるんですけど……」

誠子「どこのチームのエースですかね、あれは」

淡「恥ずかしいなぁ、もう」

京太郎「ま、まぁ……照さんはあれがいいんですよ、可愛いじゃないですか」

淡「まぁね」

京太郎「というか、みなさんは取らないんですか?」

誠子「二個も三個も食べるのは、宮永先輩だけだからね。残ったのを頂戴するよ」

尭深「どれもおいしいの、わかってるからね」

菫「それよりは、先にお茶をもらいたいな。お願いできるか?」

京太郎「承知いたしました。ダージリンと、フレーバーをいくつか……」

淡「アールグレイで!」

京太郎「なんだその、最近知ったから言ってみました、的な」

淡「最近知ったから言ってみました!」フフン

京太郎「ま、いいや。ではそれもご用意しますね、淡お嬢さま」

淡「うむうむ、よきにはからえ」

京太郎「さて、ケーキはこれで全部はけたな」

京太郎「……おっと」

京太郎「お注ぎしますね、菫先輩」

菫「ああ、ありがとう……すまないな、私にだけわざわざ、コーヒーを淹れさせてしまって」

京太郎「平気です。むしろ、そっちの練習もできるのでありがたいですよ」

京太郎「……っと、すみません。練習なんて言っちゃって」

菫「ふふ、気にしなくていい。実際、練習なんてものではないくらい、おいしいよ……」

京太郎「酸味少なめのブレンドなんですけど、豆の香りが強いんですよね、今回のは」

菫「ああ、いい香りだ。酸味が薄くて苦味が強いのは、私の好みに合っている」

京太郎「少しミルクを足せば、ほどよくまろやかじゃないですか?」

菫「そうだな……そうか、そういうことか?」

京太郎「なにがでしょう」

菫「その、自惚れではないと思いたいんだが……私がいつも、ミルクを足すから……」

京太郎「………………」

菫「それを踏まえて、このブレンドを作ってくれた……のだとしたら、嬉しいんだが」

京太郎「……さぁ、どうでしょうか」

菫「はぁ……誤魔化すのが下手だな。顔が赤いぞ」フフッ

京太郎「……そもそも、コーヒーは菫先輩しか飲みませんからね」

菫「家ではお茶ばかりだった。それ以外で許された飲み物は、父が挽いたコーヒーだけだったからな」

菫「どうしても、紅茶よりそちらを選んでしまう。手間をかけさせて、申し訳なかった」

京太郎「一ついいですか?」

菫「なにかな?」

京太郎「手間なんて思ったこと、ありません。菫先輩のコーヒーを淹れるのは、俺の楽しみでもあるんです」

菫「――――」

京太郎「俺のコーヒーをおいしいと言ってくれて、ありがとうございます」

菫「……こちらこそありがとう。おいしいコーヒーを、毎日淹れてくれて」

京太郎「こちらにいる間は、ずっと用意させてくださいね」

菫「ああ……頼むよ。君のコーヒーが一番だ」

誠子「よーし、休憩は終わり! 練習再開するよ!」

誠子「京太郎くん、いつまでも先輩とイチャイチャしてないで!」

菫「!? なな、なにを言っている、亦野!」

京太郎「すいませんでした! 片づけしたら、すぐ戻りますので!」

菫「君も否定してくれ!」

「とか言ってねー。毎日顔だすの、京太郎くんがいるからだよねー」
「暇さえあれば、じーっと見てるしねー、バレバレだよねー」
淡「スミレはムッツリって感じだよねー」
尭深「ほんと、気づいてないのは京太郎くんくらいだと思う」

菫「…………っっっ…………」プルプルプル

誠子「そこも! 無駄口きいてないで、対局なり検討なり、部活に戻って!」

照「誠子もしっかりしてきたね。赤くなって震えてる、前部長さん」

菫「……そんなこと、してないのに……」グスン

照「無意識だとしたら、相当だね」

京太郎「戻ってきたら、菫先輩が顔を合わせてくれなくなった……なにがあった?」

淡「しーらなーい」

尭深「私も、知らないかな」

照「>そっとしておこう」

誠子「>ハイカラでしょ?」

京太郎「意味がわかりません……はぁ、俺も部活に集中しよう」

京太郎「さて、俺もそろそろ指導をお願いしようかな……いいですか、健夜さん」

健夜「うん、大丈夫だよ。それじゃ、お疲れさま」

「おつかれ、さまでした……」
「プロこわいプロこわいプロこわい、グランドマスターこわい」
「もう二度とアラフォーなんて言いませんから……」

京太郎「なにがあったんですか?」

健夜「なんでもないよー。熱心な子たちだったからね、張りきっちゃっただけ」


照「さも自然にいるトッププロだけど――」

誠子「実は部活始まったときからいました」

尭深「という設定でないと、なんで途中から来るんだよってなっちゃいますからね」

淡「今度は、二回目のみ指導なら、プロは呼べないようにしようか、など検討中です」

菫「まぁ、仕事をしてから来た――という設定もできるが、無理をさせていると思えば、京太郎くんが遠慮するだろうからな」

新虎姫1「以上!」

新虎姫2「です」


京太郎「すみません、すぐにご指導いただくべきだったのに」

健夜「ううん、大丈夫。ケーキ、私もいただいたけどおいしかったよ、ありがとう」

京太郎「よかったです。それでは、よろしくお願いします……健夜さん」

健夜「よーし、頑張っちゃうよ!」

健夜「えーい、ツモー! これはバレバレだから出なかったなぁ、はい。緑一色だよー」

京太郎「」

誠子「」

尭深「」

淡「大変、三人が息してないの!」

照「三人はどういう……とか言ってる場合じゃない!」

菫「しっかりしろ、京太郎くん!」

京太郎「……はっ、あ、ああ、ありがとうございました、健夜、さん……」

健夜「……ごめんなさい、やりすぎました……」

京太郎「いえ、本当に大丈夫です。なんていうか……普通に、楽しく打ってくれて、すごく嬉しかったです」

健夜「そ、そうかな、ごめんね……昨日の今日だから、ちょっと……やる気が、溢れちゃって///」

京太郎「楽しんでいただけるのが一番です……その、できれば今度から、少し手加減していただけると嬉しいですけど」

健夜「はい、善処します……」

京太郎「さて――それじゃ、続けましょうか」

健夜「えっ……あ、あの、ほんとに無理しなくても……」

京太郎「無理なんてしてませんよ。楽しいから――健夜さんと打つ麻雀が楽しいから、もっと続けたいんです」

健夜「っっ……あ……あり、がと……嬉しいっ……」

淡「タカミーのリベンジだー!」ガオー

照「可愛い後輩の仇、取らせていただきます」ゴッ

健夜「うんっ……麻雀、楽しもうね!」ゴッ

菫(……あかん)

京太郎「つよい(確信)」

「……というか、あの人とあんな麻雀して、よく平然としてられるね」
「何人か、別室でも雀牌握れてなかったよ……」
「でも何人かは、黙々と麻雀するようになったよね」
「あ、当たり外れがでかいんやろ(震え声)」

京太郎「実際、そうだと思うけどな……俺の場合は、やる気出るほうだったってこと」

京太郎「よーし、掃除終わりっと。お疲れさん」

「手際いいよね、須賀くん」
「あ、あの、よかったら……お掃除とかお料理とか、教えてもらえないかな/// できれば、二人きりで……」

京太郎「部の風紀を乱すのはよくないらしいから、そういうのは菫先輩か照さんを通すようにってさ」

「え、なにそれは」
「保護者か!」

京太郎「まぁ、俺が部の預かりってことは、そうなるんじゃねーの? っつーわけで、許可が下りたらいくらでも付き合うよ」

「つ、つつつ、付き合――」
「意味違うから、落ち着け」
「いまどき純粋な子だねー。どこから来てるんだっけ――」


京太郎「さて、帰るとするかな」


誠子「やっ、お疲れさん」

京太郎「誠子先輩! お疲れさまです……いま、お帰りですか?」

誠子「ん、まぁ……ちょっと監督と、話したりとかね」

京太郎「やっぱ部の部長って大変ですね。でも残念です」

誠子「えー、なにが?」

京太郎「ちょっとだけ、俺のこと待ってくれたんじゃ――なんて、期待してました」

誠子「……バレたか」

京太郎「えっ」

誠子「監督と話があったのは本当だけどね。帰る準備ゆっくりしたりして、偶然一緒になったらいいな、くらいには」

京太郎「………………」

誠子「どうしたの、意外だった?」

京太郎「は、あ……ええ、ちょっと……というか、その……そういうことを、言う方とも思ってませんでしたから」

誠子「イメージと違ってがっかり?」

京太郎「――は、しないです。その、ご一緒できて光栄です」

誠子「あははっ、すっごい反応だね。まぁいいや、さくっと帰ろうよ。寒いしさぁ」

京太郎「はい! お供します」

誠子「しっかしあれだねー、清澄でもそうだったの? あの竹井さんに、そういう感じで」

京太郎「部長は、そうですね……いや、そうか? そんなこと……うーん、してないですね」

京太郎「あの人、基本的に自分見せないし、踏み込んだら茶化してかわしますから。光栄とか、思っても言いません」

誠子「ほー、そりゃもったいない。けど、京太郎くんは竹井さんのこと、特別に慕ってるよね」

京太郎「……そんなこと、ありませんよ。普通です。普通に、先輩としてなら」

誠子「だったら質問、私のこと、いつまでたっても部長って呼ばないのはなーんでだ?」

京太郎「…………さぁ、なんででしょうか」

誠子「さらにもう一つ。引退した部長さんのことを、いつまでも部長って呼ぶのはどうして?」

京太郎「はぁ……まぁ、そうですね……あの人は、俺にとっては唯一の部長ですから。しばらくはこのままですよ」

誠子「私も一度くらいは、部長って呼んでほしかったなー」

京太郎「すいません、融通の利かない男で」

誠子「いいよいいよ。名前に先輩ってのも、悪くないからね」



~金曜、夜

京太郎「寒い!」

モブ田「うっせーよ、よけーに寒くなんだろ」

モブ子「そうだそうだー、出ていけー」

「かえれー」
「お菓子だせー」
「お茶淹れろー」
「終わったら戻ってよし」

京太郎「ここ俺の部屋だろ!」

京太郎「お前らこそなんでいるんだよ!」

モブ田「冬休みの予定立てるのに、場所がいるだろ?」

モブ子「お茶菓子とお茶が出る場所、検索したらここが最寄だった」

京太郎「終わったら出てけよ」

「ま、ほんとはここで計画すれば、お前も乗ってくるかと思ったんだけどなー」
「まぁ実家帰るなら仕方ない」
「久々の里帰りだろ。ゆっくりしろよな」

京太郎「…………おう、サンキュ」


京太郎「……あんなこと言われたら、あいつらが出てったあとが、やけに寂しいだろが……まったく」

京太郎「誰かの声でも聞かんことには……なんか、寝られない」


京太郎「…………なんか、自然と……」

京太郎「春の番号、探してるな……」


京太郎「――ってことで、またかけちまった、悪い……」

春『大歓迎。どうしたの、なにかあった?』

京太郎「いや、そうじゃないけど……一ヶ月しかいなくても、みんなよくしてくれるなって、思ってさ」

春『……それは、反対もそうだから』

京太郎「反対?」

春『京太郎が、みんなによくしてるから……それで、一緒にいると、楽しくて……居心地がいいから……』

春『京太郎にも、なにかしてあげたいって……考えるんだと思う』

京太郎「……俺は、そんな大したことできないって……」

春『して、くれたよ……』

春『された相手が言ってるから……信じて』

京太郎「……俺が、春になにかしてやれたってのか?」

京太郎「最終日に、泣かせたくらいだぞ」

春『……それも、含めて……たとえ一ヶ月でも、そのお別れに泣いちゃうくらい……』

春『京太郎っていう存在が、大きくなったんだよ……』

京太郎「自分ではわかんないもんだな……」

春『……だったら、わかるようにしてあげないと……だめかな……』

京太郎「どうやって?」

春『……秘密。次に来たとき、教えてあげる』

京太郎「どうやって教えてくれるんだ?」

春『……いっぱい、歓迎して……おもてなしして……』

春『こんなにも京太郎が大切だって、いてくれて嬉しいって、みんなで伝える……』

春『それで、私たちのことも……大きな存在だって思ってくれたら……』

春『私たちが京太郎を、そう思ってるって……わかると思うから』

京太郎「……なるほどな……でも、それ言ってよかったのか?」

春『…………あっ……い、いまのなし、忘れてっ……』

京太郎「だーめーだー、忘れねーよ」

春『ひどい……京太郎が、意地悪する……』

京太郎「すでにそうしようって思ってるんなら、俺のことを大事に思ってくれてるんだってわかるからな」

京太郎「――ありがとな、春」

春『……どういたしまして……でも、複雑……』

春『……どうせなら、ちゃんとおもてなし……して、教えたかった……』

春『京太郎はせっかちさん……』

京太郎「そう言うなって……でも、ちゃんと覚えとくからな。おもてなし、忘れんなよ?」

春『っっ! うんっ、する! いっぱいする……いっぱい、いっぱい……』

春『お料理も、勉強してるから……おいしいもの、食べさせてあげる……』

京太郎「そりゃ楽しみだな」

春『あっ、でも……京太郎のほどじゃないから、満足はできない……かも……』

京太郎「――俺のために、作ってくれるんだろ?」

春『……うん、そうだけど……』

京太郎「なら問題ない。春の気持ちが入ってんだ、満足しないわけあるかよ」

春『――――』

京太郎「前の、阿知賀での料理指導でもさ、うまくできてたろ……大丈夫だ、俺が保証する」

京太郎「春は料理上手だし、もっとうまくだってなれるよ。なんだったら、俺もまた、協力するから」

京太郎「……一緒に、頑張るんだろ?」

春『……はい……そう、です……春は……だん……きょ、京太郎と……一緒に、頑張ります……』ポー

京太郎「だん?」

春『――っっ! な、なんでもないっ……ありがとう嬉しかった……』

春『そうだ、なにか食べたいもの、あったら教えて……』

京太郎「そうだな……じゃあ、一つだけリクエスト」

春『うん、言って』

京太郎「あーん、ってしてくれよ。前は俺がやっただろ?」

春『』

京太郎「よろしくな」

春『……はい、絶対にします……だんな……京太郎の、ためだから……』ボー

春『………………えへへへへぇ…………』

京太郎「だんな……? ま、まぁいいや……あ、それと……もう一ついいか?」

春『京太郎は、食いしんぼ……』

京太郎「そう言うなって。子供っぽいけどさ、俺……ハンバーグ好きなんだよ、かなり」

春『……わかった。頑張る……おいしいの、作って……あーんしてあげる』

京太郎「おう……ありがとな」

春『うん。待ってるから……じゃあ、おやすみ』

京太郎「ああ、おやすみ」


京太郎「……だんな? なんだろ……」



春『……き、聞こえてないよね、大丈夫だよね……でも、もし……きき、聞こえて、たら……』

春『はぁうぅぅぅっっっ/////////』

京太郎「……まだ時間あるし、最近メールしてない人に、送るかな」


京太郎「……やばい、なんか久々に送ることになったな……」

京太郎「今月の頭以来か、ひょっとして……」


京太郎「長野だったら、もう雪も大変だろ? 風邪とか引かないようにな」

京太郎「それと、テスト期間は大変だったと思う……お疲れさん、よく頑張ったな」


京太郎「今日はお疲れさまでした、大丈夫でしたか?」

京太郎「自分の古巣に入るルーキーと打つからか、厳しかったと思いますけど……」

京太郎「健夜さんはそれだけ、照さんを買ってるんだと思います」

京太郎「俺も――照さんの強さを、信じてます」


~金曜夜、終了

~12月第三週土曜

京太郎「今日は終業式か。通知表返ってくんなぁ……」

モブ田「お前のはないらしいぞ」

京太郎「」

モブ子「テスト受けた学校から、結果が清澄に伝わって、成績がつけられるらしい」

京太郎「通知表は?」

モブ田「実家に送られるんだってよ。もう届いてんじゃねーかな?」

京太郎「ジーザス……」

モブ子「いいじゃん、成績優秀なんだからさぁ」

京太郎「自分より先に親が成績知ってるって、嫌じゃね?」

モブーズ『なんとなくわかる』

京太郎「おっと……尭深先輩、おはようございます」

尭深「ん、おはよう。昨日も会ったよね。もしかして、私のこと探してくれてる?」フフッ

京太郎「ち、違うんです、そんな……ストーカーみたいなことは……」アワワワワ

尭深「えっ……か、軽い冗談だから! なにがあったか知らないけど、落ち着いて!」

京太郎「はっ! あ、ああ、すみません……」

尭深「大丈夫だよ。京太郎くんがそんなことする子じゃないってわかってるし……むしろ、探してくれてたら、嬉しいから」

京太郎「いや、同級生でもない、後輩男子に付き纏われるって、嫌じゃないですか?」

尭深「よく知らない子だったら怖いけど……京太郎くんは平気。よく知ってるし、優しいし、マッサージも上手だし、ね?」

京太郎「最後は関係なくないですか?」

尭深「私の中では、比重がおっきいよ? もういまだって、すっごい……」コキコキ

京太郎「………………」ゴクリ

尭深「だーめ。日の高いうちは、我慢して、ね?」

京太郎「っっ……い、いえ、そんなつもりでは……」ゴニョゴニョ

尭深「男の子だね、京太郎くん///」

京太郎「……尭深先輩が、その……そういうこと、言うからです……」

尭深「へー、私のせいにしちゃうんだ……ずるいなぁ」クスクス

京太郎「あう……その、そろそろ許してください」

尭深「うーん、タダではなー……学校ついたら、濃い目の熱いお茶淹れてくれるかな。それで許してあげる」

京太郎「了解しました! 心を込めて、お淹れしますので」

尭深「はーい、期待してるね」クスッ

~土曜お昼=部活前

京太郎「始めて入ったんだが、式典の講堂、すっげー綺麗じゃないか?」

淡「入学式もあれだったけど、普通だよ?」

京太郎「空調完備だし、イスもソファっぽくフカフカで……校長の話で三回は寝かけたぞ」

淡「私は寝てたけどー?」

京太郎「そこは起きとけよ」

淡「起きようとはしてたもん! 校長が寝かそうとしてくるのが悪い!」

京太郎「お話を考えてくださったのにこの言い様、申し訳ありません、先生……」

京太郎「といったことが――」

照「大丈夫、私も寝てたから」

菫「お前プロチームのミーティングとかで、そういうことはするなよ?」

誠子「麻雀関係の宮永先輩は、常識ありますから大丈夫ですよ」

尭深「そうですね。むしろ弘世先輩のほうが……入った大学の講義で、居眠りグセがついちゃったりしそうです」

菫「するか! 勉強に行く場所で寝るなんて、もったいないことはしない」

京太郎「ちなみに志望はどちらの学部を?」

菫「法学部だが、経営のほうにも興味はある……なにか決定的なことがあれば、そちらに転換するかもしれない」

京太郎「決定的なこと……?」

菫「誰かさんが店を持って、経営を手伝ってほしいとなれば、そうするだろうな」

京太郎「起業されるかもしれないご友人がいるんですか、すごいですね」

菫「…………はぁ」

誠子「……さ、さぁ! 練習始めるよー!」パンパン

尭深「いい頃合いだね」

淡「やーい、ニブチン!」

京太郎「???」

照「気にしなくていいよ、さ、練習れんしゅう」

京太郎「よし、休み前最後の部活だし、気合入れて練習だ!」

淡「えー、お菓子はー?」

京太郎「それも気合入れる」

淡「わーい♪」

京太郎「その前にちゃんと練習しないとな。さて、今日の指導は――」

京太郎「…………」チラッ

菫「……わたしか、構わないぞ」スッ

京太郎「いえ、そんな……勉強しているのを、邪魔するわけにも……」

菫「集中したければ、寮に帰るか図書室に行くか、あるいは予備校に行くかしているさ」

菫「君に麻雀を教える、そのためにここに顔をだしているんだぞ、私は」

京太郎「す、菫先輩……」ジーン

菫「プロの方々には劣るだろうが、よろしく頼むよ」

京太郎「そんなっ、もったいないくらいです……よろしくお願いします、菫先輩」

菫「ああ、始めようか」ニコッ

菫「そう、相手の待ちの範囲を見定め、少しずつ寄せて――」

京太郎「は、はい……」

新虎1「…………」トン

新虎2「…………っ……」タン

京太郎「――ロン」

新虎2(――は……こ、こっちかいな……)

菫「うん、いい感じだよ。守りもいいが、やはり麻雀は攻めないとな。特に君は、出上がりのほうが打点が上がりそうだし」

京太郎「はい、勉強になります」

菫「……教えがいがあって、吸収力があって……いい生徒だな、京太郎くんは……」

菫「……このまま、清澄には返したくないよ、本当に……」ボソッ

京太郎「? あの、なにか……」

菫「いや、なんでもないさ。続けよう」

京太郎「はい、よろしくお願いします」

京太郎「んー……雑用ばっかのときは気づかなかったけど、あれだな……」

京太郎「麻雀って、集中してると疲れるもんだな」グッ

淡「」

照「」

菫「……とのことだ、部長からなにか言ってやれ」

誠子「ほ、本人がそう思うならいいじゃないでしょうか」

尭深「日頃の雑務を、こっちが肩代わりしたら次の日は動けなくなるんだけどなぁ……」


京太郎「さーて、疲れてばかりもいられない。頑張るぞ!」

照「頑張りすぎないでね、京ちゃん」

京太郎「ありがとうございます!」

淡「……お茶、どうぞ」

京太郎「!?」

淡「なにその反応ー!」キー

京太郎「あ、ありがとうな」ナデナデ

京太郎「さて、引き続いて集中しよう……あと一週しかないんだ、白糸台で麻雀できるのは……」

京太郎「一日、一日、大事にしていかないと」

京太郎「誠子先輩は指導中、菫先輩は……あれ、いないな」

照「…………」ジー

京太郎「となると……いまさら、誰かお呼びもできないし……うーん」

照「…………」チラッチラッ

京太郎「牌譜でも取ろうかな、あっちの対局で……」

照「…………」ギュルルルルルル

京太郎「冗談ですよ。すみません……照さん、ご指導いただいてもよろしいですか?」

照「うん、任せて!」パァァッ


誠子(…………大丈夫かなぁ)

尭深(なるようになるよ、それよりそれ、ロンだよ)

誠子()


京太郎「よろしくお願いします」

照「やるぞー」テルテル

京太郎「」

照「そこはもっとガッと引いて」

照「ちょっと違うかな。そこでこう、ギギーって」

照「勝負所だから集中して。振り込まないように」

京太郎「えっと、どうすれば……」

照「……ハッときたやつか、ビビッときたやつが危ない。逆にフニャっとしたのは安全」

京太郎「」

京太郎「……ありがとうございました」

照「どうだった?」ニコニコ

京太郎「照さんが楽しそうでよかったです。またお願いしてもいいですか?」

照「うん! もちろん!」


誠子「……あの、お疲れ……」

京太郎「本当に疲れたのは照さんだと思います。俺の覚えがよくないから……」

京太郎「……照さんの言うことなら、わかってあげないといけないんです……あれが理解できないと、同じように強くはなれないですから」

誠子「…………そっか、頑張りなよ」ポンポン


誠子「私って、だめな後輩だね……京太郎くんみたいに、思ってあげるべきだった」

尭深「二人は付き合いも長いからだよ。そう思える機会があってよかったって、思えばいいじゃない」



~部活終了、お掃除

京太郎「……終業式だしな、廊下も念入りに、隅々まで……」

「ここまで真剣に掃除してるのは、逆に怖い」
「そ、そうかなぁ……真剣な横顔、素敵だと思うけど……」
「あんたはおかしい」
「え、私もかっこよく見えるけど」
「私もー」
「え、異常に見えるのが少数派!?」
「須賀くん=掃除、掃除=須賀くん」
「掃除を料理に変えても成り立つ公式です、覚えておきましょう」
「そう言われれば、そんな気も……」グルグル
「正気に戻っテ!」


京太郎「ふぅ、すっきりした……やっぱ掃除は、心の洗濯だな」

京太郎「さーて、そろそろ帰るかな」

京太郎「あっ」

尭深「あっ」

京太郎「……偶然ですよ?」

尭深「ふーん、そうなんだ……じゃあね、バイバイ」

京太郎「えっ」

尭深「一緒に帰りたいんなら、ちゃんと言ってくれないとなぁ」チラッ

京太郎「……尭深先輩、一緒に帰っていただけませんか?」

尭深「一緒に帰って、友達に噂とかされると、恥ずかしいし……」

京太郎「」

尭深「うそうそ、冗談だよ。ごめんね、一緒に帰ろう?」

京太郎「ありがとうございます!」

尭深「それにしても寒いね……ねぇ、腕借りてもいいかな」

京太郎「はい? どうぞ」スッ

尭深「ありがと」ギュッ

京太郎「」

尭深「わぁ、すごいね、これ……本当にあったかいんだ。やっぱり寒いと、くっつくに限るね」ギュウギュウ フニュン ムニュムニュ

京太郎(規格外のパワーだ!)

尭深「……意識してもいいよ?」ニコー

京太郎「」

尭深「かわいい……さ、かえろっか。あったかくても、外にいつまでもいたら風邪引いちゃう」

京太郎「あ……は、はい……」


京太郎「……無防備すぎます、尭深先輩……」



~土曜、夜

京太郎「……おかしい、風呂にも入ったのに……腕に、感触が……」

京太郎「柔らかかったなぁ……服着てるのに、なんであんなに柔らかいんだ……」ボー

 ~十数分後

京太郎「……はっ! い、いかん、煩悩を振り払わなくてはっ!」

京太郎「…………毎晩同じ相手にかけるのは制限したかったけど、毎度電話が選ばれるわけでもないからな……」

京太郎「まぁ、その制限はやめておこう、うん」

京太郎「さて、誰にかけようかな」

京太郎「さて……そうだな、シロさんは……なにしてるだろ。風邪とか引いてないかな」

京太郎「もしもしシロさん、大丈夫ですか?」

シロ『なに、唐突に……大丈夫だよ。ちゃんと生きてるから』

京太郎「大丈夫です、死なせたりしませんから、俺が」

シロ『……ありがとう。それで、どういうこと?』

京太郎「いえ、風邪でも召されてないかと心配で。部屋とか、布団とか、あったかくしてますか?」

シロ『してるよ。換気もしてるし、過湿もしてる。適度に水分取ってるから』

京太郎「今晩はなに食べました? あ、こっちは丼でした。でもメインは味噌汁ですね、具だくさんの」

シロ『なに食べたかな……ああ、そうだ。塞がね、クリームパスタ頼んでたよ。私はピザとサラダ』

京太郎「……外食ですか」

シロ『終業式だったからね、打ち上げで』

京太郎「あれ、そっちはもうお休みだったんじゃ――」

シロ『京太郎の終業式だからだよ。みんなで、京太郎がいないのを寂しがってた』

京太郎「…………あの、それは……」

シロ『すみません禁止』

京太郎「すみまなくないですね」

シロ『ぶふっ……なに言ってるの?』

京太郎「いきなり禁止されたんで。こっちの日程、よく知ってましたね」

シロ『合宿のときにね。一緒に休み迎えたら、どこか食べに行けたなーとか、そんなこと話してたかな』

京太郎「一緒に作りましょうよ、そういうときは」

シロ『ああ……そうだね。京太郎と一緒に作るのは、楽しかったから……』

京太郎「はい。俺も、シロさんと台所に立つの、好きですよ」

シロ『…………私も、好き……』

シロ『あっ……その、料理……一緒にするのがね』

京太郎「そだ、なにかレパートリー増えましたか?」

シロ『特には……煮物の種類が増えたかな。でも魚って難しいね』

京太郎「あー、たしかに。天然と養殖、あとは個体によっても時間とか変わりますから」

シロ『……また教えてね。そうしたら、私の手羽煮込み、食べさせてあげる』

京太郎「!? なんですそれ、おいしそう!」

シロ『甘辛いダシで、煮詰めながら手羽煮込むの。お野菜と一緒に……おいしいよ』

シロ『みんなも褒めてくれたから、自信ある』

京太郎「うーん、俺も負けてられないな……なにか、新しいメニューを考案したいな」

シロ『……私を、とか……』ボソッ

京太郎「えっ?」

シロ『な、なんでもない……///』

シロ『だけど、そうだなぁ……京太郎は、頑張らなくていいよ』

京太郎「?」

シロ『……私が作る料理、黙って、座って、待っててくれたら……そういうところも、見てみたいかな』

京太郎「シロさんは、いいお嫁さんになりそうですね」

シロ『……無理、かな……』

京太郎「どうしてですか、俺ちょっと、グラっときましたけど」

シロ『そういう風に、自分で全部やるのは……一日しかもたな。それが限界だと思う』

京太郎「……シロさん、がっかりですよ」

シロ『本当に、そう思ってる?』

京太郎「……いえ、むしろホッとしてます……それでこそです」

シロ『そういうと思った、だから期待に応えたの』

京太郎「お見通しですね」

シロ『京太郎のことだからね……私が一番、京太郎の体温を知ってるって、自負もあるし』

シロ『一番わかってる自信あるよ……照よりもね』

京太郎「照さんはやっぱりライバル視してますか?」

シロ『うん、たぶん妹さんよりも、照が一番のライバルだと思う……いや、永水の子もかな』

京太郎(? 咲はたしかに強いけど、プロ行くかわかんないし、まだ一年だけど……)

京太郎(永水ってのは、小蒔先輩のことかな?)

シロ『……たぶん、考えてることはどれも間違ってると思うよ。あと、永水の子は……なんだっけ、春って子だから』

京太郎「!? シロさん、サトリだったんですか……いや、俺がサトラレなのか?」

シロ『言ったでしょ、京太郎のことは一番わかってるって』

京太郎「――参りました、シロさんが一番です」

シロ『勝った』ブイ

京太郎「参ったな、ほんと……俺はそんなに、シロさんのことわかってないのに……」

シロ『それは当然。私は二年も先輩だから』

京太郎「二年って、でかいですね……」

シロ『そうだよ、長いの……同い年なら、よかったのにね……』

京太郎「俺が一年で、シロさんが三年だから、こうして会えたんですよ」

シロ『……そっか。前言撤回、京太郎が一年でよかった』

京太郎「はい」

シロ『……それと、一つ間違ってるよ。私のこと、わかってないって……そんなこと、ないからね』

京太郎「えっ?」

シロ『今日、こうして電話してきてくれたでしょ? すごい、絶妙だったから』

シロ『不意にね、京太郎の声聞きたいって思ったら……かかってきた、ちょっとね……泣きそうだった』

京太郎「――――――」

シロ『ありがとね』

京太郎「……俺のほうこそ。いま、泣かされました」

シロ『また勝った』ブイブイ

シロ『じゃあおやすみ、そっちもあったかくしないとだめだよ』

京太郎「はい、おやすみなさい」

京太郎「……シロさん、不意に泣かせてくるから困る……」

京太郎「あっ、そうだ。せっかく正月帰るんだし……会えないかもしれないけど、誰かに連絡しとくか」

京太郎「うーん……咲には、なんかかけづらいし……うん、やっぱりここは和だな」


京太郎「……もしもし、京太郎だけど。いま大丈夫か、和」

和『ん……ふぁ、い……どなた、ですかぁ……』ムニャムニャ

京太郎「うお、寝てたか……って、まぁ結構遅いし、仕方ないよな。すまん、またかけ直す――」

和『……んー……んっ……んんっっ!? ちょ、ちょっと待ってください! 京太郎くんですか!?』

京太郎「えっ、ああ、そうだけど――」

和『~~~~~~~っっ//////// す、すいません、ちょっと寝ぼけて――いいいいいえ、えっと、その……急に、電話を取ったもので!』

京太郎「眠いなら改めるけど」

和『平気です! 目は冴えてますから! ええ、もうこのまま! 一週間は起きていられますから!』

京太郎「ははは、それは寝たほうがいいぞ。肌に悪いだろ、せっかく和は綺麗な肌なんだしさ」

和『はっ――も、もうっ、なに言ってるんですか、京太郎くんは!』////

京太郎「冗談――でもないか。本当のことだ、別にいいだろ」

和『あ、うっ……あぁ、あ……ありがとう、ござい、ましゅ……』プシュー

京太郎「噛んだ?」

和『かか、噛んでません! こほんっ……それより、どうされたんですか?』

和『電話は、先月以来でしたか……今月はテストで忙しく、メールくらいしかしてませんでしたね』

京太郎「ああ、それもあって、どうしてるかと思ったのと――あとは、正月のことで」

和『帰ってきてくださるんですよね、それは嬉しいですけど……会うのは、だめなんですよね』

京太郎「……ああ、すまん」

和『それは京太郎くんのせいじゃありません……でも、会えないなら会えないなりに、楽しみはありますから』

和『こうして電話するのも、近況のメールができるのも、遠くにいてこそな気がしますし』フフッ

京太郎「遠距離恋愛のカップルみたいだな……なるほど、そういう楽しみ方もあるか」

和『』

和『カ――カカ、カ……カッポゥッ、で、ですかっ……た、たしかに、その……言われてみれば、そうですけど――』カァァァッ

京太郎「あ、すまん。嫌だったよな、こんな――」

和『とんでもありません! わ、私も、その……そんな風に、お……思ってます……素敵です……』

京太郎「ならよかった。まぁけど、会えるなら、それに越したことはないんだよなぁ、結局のところ」

和『そうですね……って、それ言っちゃったら、さっきのいい話が台無しじゃないですか!』

京太郎「いやー、悪い。けどほら、本音は隠せないから」

和『本音……えっと、それは……』

京太郎「会いたいってことだよ、そりゃあ」

和『……そうですね。会って……顔を合わせて、直接……話したいです……私も』

京太郎「だよなー! まったく、誰だよ。こんな派遣なんて考えたのは」

和『ふふっ、会長にお会いしたら、伝えておきますね』クスクス

京太郎「い、いまのは冗談だから」

和『大丈夫です。ちゃんと、冗談でしょうけどってつけておきますから』

京太郎「やめて!!!! いや、ほんとに……その、なんでもしますから」

和『』

和『……なんでも、ですか?』

京太郎「え――」

和『――はっ……い、いえ、別に……こほんっ……大丈夫です、本当に冗談ですから』

京太郎「ほっ」

和『だって、京太郎くんは……この派遣の状態も、なんだかんだで、楽しんでますよね?』

和『たぶんそれは、会長にはなにかの思惑があって、それが自分のためになることだって、理解してるからだと思うんです』

和『少しだけ、会長がうらやましいですね……』

京太郎「まぁ――そこまで大袈裟なことじゃないけどな。部長は、清澄が優勝するために、打てる手は全部打ってた……」

京太郎「その知恵を俺のために使ってくれたんだから、それならって信用してるんだよ」

和『そうですね。私たちも、そう思います……だから、会長を責める気持ちは一切ありません』

和『――いえ、一切は言いすぎでした』

京太郎「なに、恨み言でもある?」

和『もちろんです。だって、そのせいで……京太郎くんに、会えないじゃないですか』クスッ

和『それだけは、ちょっぴり不満です』

京太郎「わがままだな、和は」

和『えっ』ドキッ

京太郎「でもそこが可愛いと思う。なにその文句、すげー可愛いんだけど」

和『かわっっ――かか、か、かわ……な、なにを言うんですかっ、もう!』

京太郎「いや、かわい――」

和『ききき、聞こえてますから! 何度も言わないでください!』カァァッ

京太郎「……照れてる?」

和『――し、知りません!』

京太郎「照れなくてもいいだろー」

和『………………』ツーン

京太郎「あれ? おーい、のどかー」

和『………………』プンッ

京太郎「のどっちー、おーい」

和『………………』ウズウズ

京太郎「……ごめんな、和」

和『……いえ、その……すみません、怒ってませんし、その……て、照れて、ました……はい……』

京太郎「いや、からかったのが悪いんだよ、うん」

和『え……か、からかったん、ですか……?』シュン

京太郎「可愛いってのはほんとだぞ? そんなの言われたら、照れて普通なのに……それを囃し立てて、悪かった」

和『――――――』ドキッ

和『は、うっ……えっと、そ……そういうことでしたら、その……仕方、ないですね……許してあげますっ』ニコニコニコ

京太郎「おう……ありがとな、和」

和『いえ、私のほうこそ……お電話、ありがとうございました』

和『これで今夜は、気持ちよく眠れそうです……おやすみなさい』

京太郎「ああ、おやすみ……和」

和「はふぅぅ……あ、あ、熱い……です、顔が……手も、すごい汗で……」

和「もう一度、シャワーを……いえ、お風呂に入りましょうか……」

和「……で、でも、電話のあとにお風呂に入るのは、なぜか……は、恥ずかしい、です……」///

京太郎「そろそろ寝ないと……ちょっとだけメールして、寝るか」

京太郎「お久しぶりです。日誌でコメントされると、よくわかりますよ。お元気そうで嬉しいです」

京太郎「年末年始はお忙しいと思いますが、身体に気をつけて、無理をなさらないでくださいね」


京太郎「変な書き込みで、宥さんを怒らせないようにしてくださいね」

京太郎「だけど、玄さんらしいなって、安心しました」

京太郎「旅館のお仕事も、そろそろお忙しい時期でしょうけれど、身体に気をつけて」

京太郎「重い物とか、危ない物は、自分で持ったりしないでくださいよ」


京太郎「ふぅ、こんなもんか……あれ、変身が」

『まるで旦那か彼氏のような心配ぶりだね、うんうん、結構けっこう』

京太郎「!?」

玄『ご、ごめんね! お父さんが勝手に返信を――ちゃんと、叱っておいたから!』

京太郎「驚いた……っていうか、年頃の娘のメール……いや、そもそも携帯を見るなよ、旦那さん……」

~土曜、終了

淡「思いだした……ネズミの前にケーキ置いとけないとか、シツレー言ってたときだ!」

京太郎「あー……余計なことを……じゃない、悪かったな。けど、ちゃんと焼いてただろ?」

淡「そだねー。なんか味も思いだしてきた、ふわふわモコモコしてて、甘々だったなー」


【12月第三週土曜】
 今日から冬休みだ。正確には明日からだが。
 とはいえ、部活は続く。

 今日はお忙しい最上級生の二人からご指導いただいた。
 受験勉強の合間に面倒見てくださり、本当にありがとうございます。
 まぁ、もう一人は受験関係ない進路でしたが。

 でもなおさら、俺の指導なんてしてる場合じゃないはずなのに。
 少しでも多く人と打たないといけないのに、俺のお世話をしてくれる気遣い、昔から変わってない。
 尊敬してます。

 登下校やお昼は最近、二年のお二人によく会ってる気がする。
 片方は俺の味噌汁やおでんをおいしいと言ってくれ、片方はお茶がおいしいと言ってくれる。

 この学校の先輩方は厳しいけれど、基本的に誰もが気遣いできる、優しい方たちだと思う。
 そういうのを引き継いでいくのが、後輩の役割だろう。
 俺も頑張らないと。まずは、麻雀の指導ができるくらい、上達しないとな。

 でも最近は麻雀ばかりだ、執事としての役割も忘れないようにしよう。
 色々と言われて考えることはあったが、やはり俺は師匠の教えも大切にしたい。
 なら全部やってやろう、そのくらいの意気込みで臨もうと思う。

…………

 『……わかります。私も少しは……先輩方のように、なりたいですから』
 『跡を継ぐのは、後輩の役目……繋げるのも』
 『そうですね。伝統に泥を塗るんもあれですし、できる以上のことまでしないとって気ぃはします』
 『だよね! いつまでも先輩のお世話になってるばかりじゃない、乗り越える山なんだから!』
 『熱いわねー、みんなしてさ……でも、あたしもそういうの、嫌いじゃないかな』
 『偉大な先達を越えてこそ、上の方たちも安心できるはずですからね』
 『いっそ二年も飛ばしちゃってー、自分たちが上に立つ、くらいで――』
 『そ、それは言い過ぎじゃないかな……』
 『ノリ的にはそれでオッケーだじぇ!』
 『二年の方々も、そう簡単には許してくださいませんからね……』
 『私も……ご迷惑をおかけした分は、次の結果で……恩を、お返ししたいです……』
 『その意気でー。来年はうちらが優勝するんでー』

 『こういうのは、卒業式にするものじゃないかしら?』
 『だが嬉しいものだ、一年坊たちがやる気になってくれるのはな』
 『まぁ実力的にはまだまだやけどな。俺がいてやれるうちに、叩けるだけ叩いたらんと』
 『叩きすぎたらあかんで。メンタル弱いんやから』
 『そこが叩きがいあるんやけどな』
 『おー、大阪のしごきは怖いねー。うちでもやっちゃうかー?』
 『それは可哀想だよ。一年に厳しいのは二年の役目』
 『そして三年は二年に厳しく、か……来年のうちはどうなるだろうな』
 『私たちが気をモんでも仕方がありまセン、見守りましょう』
 『いいなぁ……』
 『まぁまぁ、そのうち私たちみたいに、自分たちで麻雀部立ち上げてくれる子もでてくるよ』
 『さて、そろそろ二年生の意見も聞きたいところよねー』

 『なんじゃあ、その誘導は……まぁ、伝えてくれたもんは、きっちり守っていくわい』
 『あわよくば大きくするけどね。これからは私たちの代、なんだから』
 『不安はありますけれど……一年の子に甘えているのも、格好悪いですからね』
 『衣装だけじゃなく、輝ける舞台も作ってあげないとね~』
 『部長が守った伝統ば、ちゃんと引き継いでいきます』
 『私のためにしてくれたことは、忘れません。今度は私が、下の代に伝えていきます』
 『まぁ……私は去年から、部長だったし……』
 『お姉ちゃんの分まで、お任せあれ!』
 『私も頑張るんや……お姉ちゃんの分まで』
 『下手なとこ見せたら、叱りにこられそうやもん』
 『どこも厳しいですね。うちの上も、そうなりそうです……ふふっ、気が緩められません』
 『まぁ……先輩方ばかりに任せるんもなんですから。これからはもうちょい厳しくやらんといけませんね』

 ……卒業式かと思ったら終業式だった。
 まぁ、次に学校が始まるのは新年だもんな。いい節目だったってことか。

――――――――


~清澄

「……しんみりするかと思ったのに、さっぱりしてるわねー、あなたたち」
「続きは卒業式まで我慢してください」
「まだ冬休みじゃからの……言うても、あと二ヶ月っちゅうとこか」
「三年は、受験のことで自由登校になりますもんね」
「? ぶちょ……会長は推薦もらったはずだじぇ?」
「まーねー。引き継ぎで学校もちょくちょく来るし、寂しがらせないわよ?」
「ほんに寂しいんは、どっちなんじゃか……」ヒソヒソ
「会長、寂しがりやで涙脆いですからね」ヒソヒソ
「……聞こえてるから」カァッ


~白糸台

「結局、こいつは生意気なままだったな」
「そう? でもこのぐらいのほうが頼もしいよ」
「えへへー、そういうことなのだー!」
「ちゃんと言うこと聞かせられるように、私たちも頑張りますから」
「聞いてるよー?」
「一年生に優しくする方法も、教えてあげるからね。春からは、淡ちゃんも先輩だから」
「そこはスミレ式で行くから大丈夫!」
「何人やめるかな」
「……私は、そんなに厳しかったか?」
「でも、やりがいはありましたよ」
「否定はしないんだね」


~永水

「来年は、小蒔ちゃんが最上級生……なんだか感慨深いわね」
「部長ですから! これまで以上に頑張ります!」
「まぁ努力家ですからねー、姫様は」
「心配はしてないよね。はるるも最近は、気配りもできるようになって安心だもん」
「……うん、大丈夫……京太郎に、恥ずかしくない姿見せるから……」
「来年、京太郎くんが戻ってきたらどう?」
「……えへ……えへへ……んふふふふ……えへぇぇ……」ニヨニヨ
「これは……」
「新一年生にいくら厳しくしても、言うこと聞かせられない顔してますよー」


~宮守

「…………ねぇ」
「私たちは仕方ないよ。この五人が集まっただけでも、奇跡みたいなもんだから」
「コウハイ、キョータロ!」
「そうだよねー。先輩らしいことは、全部京太郎くんに伝えたよー」
「むしろ、こっちが教えられたかもね」
「先輩後輩って、そういうものでしょ?」
「相互に教え合うってことね。そうかも」


~阿知賀

「ハルちゃん……長らくお世話になりました」
「遠くに行っても、教えられたことは忘れません」
「ありがとうございました!」
「元気でね……こっちも、頑張るから!」
「寂しくなりますけど、乗り越えます! お任せあれ!」
「」

「望ぃ……教え子たちが、まだ卒業でもないのに、あんなことぉ……」エグエグッ
「ああ、あれ私の仕込みだから」
「ふざけんなぁっっ!」

「予行演習でも、うるっとしちゃうね……」
「でも本番の耐性はついたんじゃない?」
「うぐっ、うっ、うぅぅぅぅ……二回目でも、づらいよぉぉぉぉ……」
「でも、あのときよりハルちゃんの次の舞台は大き……」
「ですよね! まさに新たな門出って感じで! 見送るんなら、京太郎も一緒がいいなー」

 ※プロ試験は3月、プロ入団は4月ってことにします、とりあえず


プロ勢の反応はなしでー、もう10年も前だし
あ、戒能さんは2、3年前か


健夜「卒業か……懐かしいなぁ」

恒子「20年前のことだもんね!」

健夜「そういうことはすかさず言うよね」


~12月第三週日曜

京太郎「――いまさらだが、長期休みの寮食って、どうなってんだ?」カチャカチャ ジャー ジュー

淡「夜だけ来てくれるんだったかなー、あれ、昼だけだっけ?」

誠子「夜だよ」

尭深「朝と昼は、個人でってことみたい」

菫「夜が必要な場合は、食堂のボードに記入しておくんだ」

照「まさにダイニングメッセージ」

京太郎「照さん、推理小説も読むんでしたっけ」

照「オリエント急行とかね」

京太郎「いいですよね。アガサは好きです……はい、できました」

菫「おいしそうだ。……って!」

誠子「なんか、自然と作ってもらっちゃいましたね、朝ごはん」

尭深「食べたら学校行って、練習だね」

照「いただきます」モグモグ

淡「食べながら言ってるし!」

京太郎「みなさんも冷めないうちにどーぞー」

菫「いただきます」

残り『いただきます』

照「おかわり」

京太郎「はやいよ!」


京太郎「あのあと、部員ほとんどの朝ご飯を作ることになった。すごく充実した、と……」

誠子「日誌書くのは早いよ。さ、練習しよっか」

京太郎「はい」

~練習開始から二時間

京太郎「ふぅ……さて、練習で疲れた頭には、やっぱり糖分だよな」

京太郎「ちょうど手も空いたし、そろそろ調理室をお借りしよう」


誠子「練習で……疲れた……?」

尭深「私たちはね」

菫「京太郎くんはなにか、大掃除めいたことをしていたが……」

淡「聞いたところによりますと! あれは普通よりちょっとだけ手間をかけた掃除だそうです!」

照「大掃除はどうなるのかな」ワクワク

菫「いや、さすがにそれは我々でしたほうが……」

誠子「この調子で掃除されたら、私たちじゃ大掃除する場所を見つけられませんよ」

淡「やったー!」

尭深「喜んでちゃだめだよ。見てたなら、手伝わないと」

淡「そういったらねー、お前は手を出すな、俺に任せて先に行け! だってさー」

照「京ちゃん行かないで!」

菫「よせ……もう、間に合わない……」

誠子「なんのコントですか」

尭深「調理室でなにが起こってるんだろうね」ワクワク


京太郎「……クリスマス近いし、あんまり洋菓子に近いものはだしたくないなぁ、さて――」

京太郎「ということで、ぜんざいです」

 ※東京のぜんざいは汁がない、と聞いたことがありますが、汁とあずき粒のおぜんざいです

菫「温まるな……」

京太郎「すみません、手を止めないと食べられないもので」

尭深「大丈夫だよ」

誠子「以前は食べながらできるもの――と思ってたけどね」

誠子「こうして手間かけて作ってくれたんだから、ゆっくり味わいたいよ」

照「そう、それが食べる側の務め。誠子、成長したね」

淡「よかったねー、亦野先輩♪」

誠子「ありがとうございます、宮永先輩」

菫「麻雀じゃないところで褒められて、それでもかなり嬉しそうだな」

尭深「弘世先輩も、褒めてあげたら喜びますよ」

菫「甘やかすのは好きじゃない」

京太郎「厳しい先輩っていいですよね」

淡「うわぁ……」

菫「いや、きっと……そういう相手を、逆に――ということ、なんだ……京太郎くんは……」

尭深「生粋のSですね」

京太郎「違いますよ!」

誠子「Mなんだ」

京太郎「そうでもないです! う……うわぁぁぁ――んっ!」ガチャッ バタンッ

照「行っちゃった、おかわり欲しかったのに……」ショボン

京太郎「どうぞ。それじゃ、ほかの部屋にも回ってきますから」スッ ガチャッ バタンッ

誠子「!?」

尭深「残像だ」

菫「いや、部屋から明らかに出て行ったのに残像もなにも……」

淡「深く考えるだけ損だよー」ズルズル アムアム


京太郎「女の子って甘い物好きだよなぁ、ほんと……ま、照さんのお代わり分くらいは残ったか」

京太郎「さて、お茶も足したし、また一軍部屋に戻ろうかな」

京太郎「戻りましたー。あ、照さんお代わりどうぞー」

照「ありがとう」

淡「あわー! 私も!」

京太郎「えっ」カラッポ

淡「」

淡「……いいもん、別に……」

京太郎「…………わかった。これを食え」

淡「なんだー、あるんじゃーん! ありがと♪」

淡「あむあむ……おいしいなぁ、食べ過ぎ注意だよね」

京太郎「ならよかった。しっかり食えよ、練習はまだあるんだから」

淡「うん、京太郎は食べないの?」

京太郎「……ああ。作りながら味見もしたからな、十分だよ」

京太郎「それよりも、誰かがおいしいって言って食べてくれるほうが、嬉しい」

淡「和菓子もさー、悪くないよね。キョータローのスポンジとクリームは日本一だけどさっ」

京太郎「まだまだだよ、俺なんかな」

淡「…………あのさー」

京太郎「お?」

淡「…………ごめんね。京太郎の分まで、もらっちゃって」

京太郎「……なんだ、気づいてたのか。人が悪いな、お前も」

淡「ううん、いまふと気づいたんだー……ってことで、はい。残り半分は食べていいよ♪」

京太郎「……白玉全部、半分だけ齧ってるじゃねーか」

淡「半分こしたかったんだもーん」

京太郎「…………いいのか、食べて?」

淡「う、うん。もう何回もしてるし、いまさらだよ」

京太郎「その発言は誤解を招くぞ!」


「……え、いまのって……えっ……」
「何回も……まさか、ま、マウストゥーマウスを!?」

京太郎「間接をだよ!」

淡「お、おっきい声で言わないで! 恥ずかしいでしょ!」


菫「筒抜けなんだが……」

誠子「知らないフリしときましょう、まともに取り合っちゃだめです」

照「私がお代わりしたばっかりに……」

尭深「聞きながらも食べてましたよね、半分渡せばよかったのに」

照「そんな手が!」


淡「……ごめんね」

京太郎「いいっての。それよか、ありがとな」

淡「うん♪」

京太郎「半分だけ齧られた白玉は――」

淡(わ、私の味が……とか言うのかな)ドキドキ

京太郎「ネズミに齧られたみたいだった、全部ってのがよくないな」

淡「」

誠子「ほら、呆けてないで練習するよ、ネズミ娘」

尭深「チーズ食べる?」

淡「いらない!」

照「じゃあ私が」モグモグ

菫「いやしいマネをするな、まったく……」


京太郎「ネズミって別にチーズ好きじゃないんだよな、そういえば」

淡「ネズミネズミ言わないで!」

京太郎「お前はどっちかっていうとネコっぽいな……いや、虎だな」

淡「がおーっ!」

京太郎「カワイイ虎だな、おい。まぁいいか、練習するぞ、虎姫」

淡「がおーっ!」

京太郎「……そうだ、年末になったら店も閉めるとこがありそうだし、早めに備品の買いだしを済ませとかないとな」

誠子「そうだね。誰か手伝いに行かせようか?」

京太郎「いえ、女性にこの寒い中、大荷物持たせて歩き回らせられませんから」

京太郎「それじゃ、行ってきますね――」

淡「――それが、キョータローの残した最後の言葉に……」

京太郎「なってたまるか!」

照「淡、よくないよ」

淡「そうならないように注意してってことだよー」

京太郎「なるほど、んじゃ気をつけて行ってくるか」

尭深「素直に言おうね、そういうことは」

京太郎「構いませんよ。それだと淡じゃないですから」

菫「春までには、相応の落ち着きも持ってほしいところだがな」


京太郎「ここでの買いだしも久しぶりだ……前はよく、健夜さんたちに会ったっけなぁ」

京太郎「おっと、そんなこと考えてる暇はない。さっさとすませないと」

京太郎「よし、目当ての分はこれで揃ったな……」

京太郎「食材のほうは、クリスマスの分と……あまり、多くは足さないほうがいいな」

京太郎「……残り一週間、ないからな……自分で使えない分は、余らせてもよくないし」

京太郎「さて、帰るか」

京太郎「――あれ、あのショールとキセルは……」

靖子「ん? ああ、須賀くんか……奇遇だな、こんなところで」

京太郎「やっぱり、藤田プロでしたか。こちらにはお仕事ですか?」

靖子「そうだな。まぁ、私はほかのトッププロとは違い、テレビ関係に縁はないが」

京太郎「なるほど、麻雀関係ですね……それじゃ、お邪魔してもよくありませんし、これで」

靖子「……まぁ待ちたまえ。聞きたいことがある」

京太郎「なんでしょうか」

靖子「このあたりで、うまい丼ものの店はないか。時間が出来てな、早い昼食を済ませておきたい」

京太郎「俺たちも練習、そろそろ終わりなんですけど――あ、午前の部が、です」

靖子「さすが白糸台、午後も練習とは余念がないな」

京太郎「ええ、まぁ……それで、昼食に一度、寮まで戻るんですが――」

京太郎「よければ、俺のカツ丼を試していただけませんか?」ニコッ

靖子「ほう……随分と自信があるようだが。私の舌を満足させられるのか?」

京太郎「どうでしょう……ただ一つだけ、言えることは――」

靖子「…………」ゴクリ

京太郎「俺、この辺の飲食店ってあんまり知らないんですよね……」

靖子「おい」

京太郎「でもお役に立てないのもなんですから、それならいっそ、食べていただければなーと」

靖子「はぁ……そういうことをすると、先輩たちにも後輩たちにも睨まれるんだがな……」

京太郎「では、カツ丼のお店、探しに行かれますか?」

靖子「――いや、それも手間になりそうだ。ならご馳走になるよ」

靖子「噂の高校生執事の実力、見せてもらおうか(麻雀でとは言ってない)」

京太郎「満足させて、みせます――(料理で)」

~白糸寮

靖子「――――これは……」モグモグ

京太郎「はい、みなさんもどうぞ」

淡「わーい、カツ丼だー!」

照「半熟最高、これでないとカツ丼とは呼ばない」

誠子「サクッとしたカツもいいんだけど、卵とじのダシが染みた衣も最高だよね」

尭深「口の中の脂をお茶で流して、また一口……おいしいです」

菫「こちらの吸い物も、香りを殺さず、カツ丼のダシに負けず……むしろその味を引き立たせているようだ」

菫「――いや待て、なにかがおかしい」

靖子「どうしたSS、冷めないうちに食わないのはマナー違反だぞ」

照「藤田プロの仰る通り。カツ丼に対して失礼」

靖子「ほう、なかなかわかっているな。さすがインハイチャンプ……今年の恵比寿は手強そうだ」

照「妹が世話になったと聞いています、そのお礼もさせていただきますよ」

淡「そういえば、午後からの練習に参加したりすんのー?」

誠子「敬語! すみません、うちの一年が――」

靖子「今日は仕事の予定がある。とはいえ、ツレの新幹線が遅れていてな、少しだけなら時間がある」

尭深「それでしたらぜひ、練習に参加していただけると嬉しいですけど」

靖子「考えておこう」モグモグ

菫「………………私か? 私がおかしいのか? おかしくないよな、普通にプロが一緒に昼食っておかしいだろう?」

京太郎「菫先輩、どうかされましたか?」

菫「すまない、頬をつねってくれないか」

京太郎「えっ……あの、すいません……俺、そういう趣味じゃないんです、本当に……」

菫「私も違う! もういい、気にしないで食べるっ……冷めてはおいしくなくなるからな!」ガツガツ

靖子「いい食べっぷりだ。カツ丼はやはりこう食べなくてはな」


~昼イベント終了 執事成長がゾロ目サービスね

~日曜、昼行動

京太郎「さて、午後も練習なんだけど――」

京太郎「買い物なんかの外出はしてもいいって言われた、それはありがたい」

京太郎「特打ちするなら、藤田プロも参加してくれる、なんてことも言われたっけか」

京太郎「買いだしはさっき言ったから、今回はできないみたいだな」

京太郎「普通の買い物をするなら――クリスマスプレゼント、誰かに送ってもいいかもしれない」

京太郎「さて、どうしようか」

京太郎「予算はいつも通り、10000円……ま、まぁ、高校生の小遣いだもんな」

 ※預金額は0が6個

京太郎「プレゼントの最低額は3000にしよう、これなら三つまで買える」

京太郎「もちろん、土産を買うのでもいい。こっちは1000~2000だ」

京太郎「でかいのを二つ買うか、小さいのを三つ買うか……その辺りは自由にしよう」

京太郎「思った相手を選べなくても、せっかくの記念日だ。ドンと張り込むのもいいと思うぞ?」

京太郎「さて、まずは誰に買うかな。白糸台のメンバーは、パーティで交換するからなしだ」

京太郎「クリスマスプレゼントも上げられなかったし、なにかしてやりたいよな……」

京太郎「こんにちはー」

店員「あら、煮物のお兄さん、いらっしゃい」

京太郎「以前はどうも。あれ、喜んでもらえました」

店員「それはよかったわ。今回もプレゼントならこっち、土産ものも扱ってるからね」

京太郎「ありがとうございます。さて――」

京太郎「……手作りのお菓子だと、傷んじまうかもしれないからな」

京太郎「クリスマス用の、お菓子は……お、これなんかいいな」

京太郎「入れ物の籠が、小物入れにもなってる……ちょっとおしゃれだし、値段が……手頃すぎ!?」

京太郎「ま、まぁこういうのは気持ちだ、うん。メッセージカードも添えてあるし」

京太郎「さて、買い物はまだできるけど――」

京太郎「あとは、シロさんかな……なににしようか」

京太郎「というか、これがリーズナブルすぎる……数に限りがあるみたいだけど」

京太郎「シロさんもこれで……ああ、どうせなら俺のお菓子を食べてもらいたい……」

京太郎「これ、1000で採算取れるのかな……いや、俺みたいな貧乏学生のために、サービスしてくれてるんだろうな」

京太郎「さて、あとは――」

京太郎「……阿知賀では同じクラスで世話になったし、憧だな」

京太郎「けどあいつ、なんだかんだで衣装持ち、アクセもいっぱい持ってそうだ……」

京太郎「俺のセンスかつ、安物じゃ怒られるまであるな、うん」

京太郎「……すまん、憧……俺にはお前に送る物を選ぶ勇気がない……」

京太郎「またこれにしとくか……」

京太郎「便利すぎて困るな、これ……」

京太郎「さて、そろそろ予算が――なんだ、まだいっぱいあるじゃないか」

京太郎「そうだ、灼さんにも指導とかで随分お世話になったし、なにか――」

京太郎「……あれ?」

店員「あんまり一人で買わないでね、あれ」

京太郎「……すみません」

 ※土産の流用なので、土産は三つまでルール適用

京太郎「……仕方ない、普通に選ぶか」

京太郎「……あの人、見た目可愛いのに、飾りっ気ないからなぁ……」

京太郎「けど、センスも特殊だし、選びにくい……」

京太郎「すげー子供っぽいけど、この……動物系の、ファンシーなブローチとかどうだろうか」

京太郎「これなら服でも、カバンにつけてもいいしな。ファンシーなだけじゃなくて、綺麗めだし」

店員「あら、お目が高い。それもオススメよ。プレゼント包装でいいわよね?」

京太郎「はい、お願いします」

京太郎「久々に予算使い切った感」

~昼行動終了


京太郎「――あのあと練習に戻ったら、藤田プロはもういなかった。練習には参加してたみたいだけど」

京太郎「俺にしてみれば、カツ丼食べて帰ったようなもんだな……あ、感想聞いてなかったけど、どうだったんだろ」

京太郎「まぁ綺麗に食べてくれたし、満足してもらえたのかな」

京太郎「あー、なんかつっかれた……さて、夜はどうしよう」

京太郎「寒い季節に、宥先輩どうしてるかな……玄先輩は、たまにメールするけど」

京太郎「……電話口で、寒いよ、あっためて……とか言われたら……」

京太郎「やっべぇえええぇぇっっ! テンション上がっていた!」ヒャッハー

宥『あ、あの、もしもし……京太郎くん、だよね……?』

京太郎「」


京太郎「すいませんでした、ちょっと前後不覚に落ち入りまして……」

京太郎「お久しぶりです宥先輩、須賀京太郎です」

宥『よかったぁ……うん、久しぶり~。元気そうだね』フフッ

京太郎「お恥ずかしい限りです……そっちどうですか、そろそろ雪降ってますか?」

宥『……たまにね、そのときはもう……魂まで凍るくらい、寒いの……寒いっていうのも、寒いくらい……』ブルブル

京太郎「す、すみません! ほら、ストーブに近づいて! コタツ入ってください!」

宥『それしちゃうとね、玄ちゃんに……服が燃えちゃうって、怒られちゃうの……』ブルブル

京太郎「」

京太郎「それだけ近づいてるんですか……もうちょい、その……セーフティな距離で近づきましょうね」

宥『わ、わかってるよぉ……でも、なんていうか……あったか~いの感じちゃうと、つい』テヘッ

京太郎「じゃあ――俺に温めさせてください」

宥『ふぇ……』

京太郎「俺を呼んでくれれば、すぐにでも温めに参ります」

宥『っっ! そそそ、そんなっ、それは……そんなの、でも……い、いいの?』

京太郎「もちろんです。宥先輩が寒がりなのは知っています、それを温めるのはお仕えしていた俺の責務ですから」キリッ

宥『うぅ……ううう、嬉しいよぉ……遠くにいるのに、そんな風に思ってくれるなんて……』

宥『ありがとね、京太郎くん……大丈夫、その気持ちだけで……すっごく、あったか~くなれたからぁ』ポワァ

京太郎「えっ」

宥『大丈夫だよ、いまの言葉だけで、この冬は……う、ううん、それは言いすぎかなぁ……』

宥『年末……も、無理……クリスマスまでなら、乗り切れると思うから』ニコッ

京太郎(……呼んでもらえなかった、ちょっと寂しい……)

宥『それで、どうやって温めてくれるの?』

京太郎「へ――」

宥『えへへ、あったか~くなってきたからね、ちょっと余裕が出てきちゃった~』

宥『もしも呼んでたら、傍で温めてくれるんだよね……その、ど――』

宥『――お父さん、聞き耳立てないでね~?』

宥『ご、ごめんね……それで、どうやって、私のこと温めてくれるのかなぁ……って』

京太郎(旦那さん、なにやってんだよ、マジで……いくら先輩たちが女神でも、そのうち怒られるぞ)

京太郎「そう、ですね――」

京太郎「もちろん、おいしい手料理を振る舞わせていただきます」

宥『わぁ……いいなぁ、お鍋とかぁ?』

京太郎「そうですね、鍋もいいと思います。でも――それ以外だって、温められる料理はいくらでもありますよ」

京太郎「ですが最たるものは、温かい料理を温かいうちに食べる、ということだと思います」

京太郎「その、だから――」

宥『??』

京太郎「……作ったものをすぐに提供できるくらい、傍で……一緒にいて、料理をご提供できれば、と……」

宥『――――――』

京太郎「だ、だめですかね、これじゃ――」

宥『ううん……』

京太郎「あー、だめ、ですか……じゃあこれはなしで――」

宥『そ、そうじゃなくて! だめじゃないっていう、否定のううんなの!』

宥『すごく、素敵だと思う……京太郎くんが、私の傍で料理をしてくれて……それで、食べさせてくれるなんて……』

宥『夢みたいだと思う……合宿でも、そんなことなかったもんね』

京太郎「板場に入らせていただいたときは、よく朝食でご一緒しましたよね」

宥『うん……あれよりも、近くにいてくれるの?』

京太郎「もちろんです。絶対に、宥先輩を寒がらせたりしませんよ」

宥『……それなら、私も……寒いの、我慢しなくても大丈夫だよね』

京太郎「はい、そんな必要は――」

宥『じゃあ、一緒にお料理ができるね』

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最終更新:2026年01月17日 00:04