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京太郎「すいませんでした!」

恭子「いや、京太郎くんまで謝らんでも……まぁええわ。ほな、いつも通り私らは勉強しながら見とくから」

絹恵「はい! ほなら、二軍と三軍は所定の部屋に移ってー……」

洋榎「よっしゃ! 新レギュラーはうちが相手したる、かかってきぃ!」

洋榎「あとは――京太郎もやな。なんやったら、プロ何人か呼んでも構わんからな」

京太郎「そうですね、まぁ……あちらの都合もありますから、それが合えば、ということで」

漫「呼べへん、とは言わんとこがすごいですね……ほんまに、広いコネ持ってるねんなぁ」

洋榎「おっ、そうや。うちのことも、そのコネに入れといたるわ。ほれ、ケータイ貸しー」ヒョイ

由子「あ、ずるいのよー。私も登録しといたげるねー」カチカチ

絹恵「ほな私も」

漫「じゃあ私も、ですかね……末原先輩はええんですか?」

恭子「う、うん、私はまぁ、別に……」

洋榎「くくくっ、なーにが、別に……や。もう入っとるやん、末原恭子て」

恭子「~~~~~~っっ!?」

郁乃「あらあら~、やっぱりお熱やんなぁ……あ、私のも登録しといたるからな~」

京太郎「いきなり女子の連絡先が5個も増えた」

恭子「よかったなぁ……」

京太郎「こっちに来ての、記念すべき一人目は恭子先輩ですね。それ入れると6つです」

恭子「き、記念か……なんや恥ずかしいな」

京太郎「昨日知り合えてよかったです、今日も心細くありませんでしたから」

恭子「それなら、なによりやわ」ニコッ

京太郎「さて、それじゃ今日は……どうするかな。初日だし、慣れるとこから始めたいけど……」

京太郎「んー、とりあえずは部室の掃除か……牌譜整理とかから始めるかな」

郁乃「あかんあかん~、そんなんはいつでもできることやろ~」

京太郎「……っと、郁乃監督……代行……」

郁乃「呼びにくかったら、監督だけでも代行だけでも、さんでも先生でもええよ~?」

京太郎「なら――」

京太郎「なら――失礼かもしれませんけど、郁乃さんでいいですか?」

郁乃「あら~、それ選ぶんや~。なんか意外~」

京太郎「え……あ、やっぱまずいですか?」

郁乃「いやいや、照れるな~いうだけで。あ、でもほかの先生がおられるときは、先生でお願いな~」

京太郎「わかりました……で、掃除や牌譜整理ってだめですか?」

郁乃「そやねぇ……せっかく部員になったんやし、麻雀しやへん? 最初は~」

京太郎「……俺は構わないんですけど、その……郁乃さんは、俺がマネージャー活動以外することを、反対するのかと」

郁乃「ん~……ああ、そういうこと~。あれはねぇ、ちゃうんよぉ~」

京太郎「と、言いますと?」

郁乃「レギュラーの子ぉらは、わりと簡単に受け入れてくれてるけど~」

郁乃「転校してきたばっかりの、強いか弱いかもわからへん、無名の一年生が一軍と一緒におると、面白くない思う子もいるんやわぁ」

郁乃「そういう子ぉらも、みぃんな一軍目指して頑張ってはるやん? やる気削がれることになったら、姫松にも本人にも、よくないことや思うて」

郁乃「……だから、やり方は最悪やったけども……京太郎くんは、そういう扱いやないって、知らせとく必要があったんよ」

京太郎「なるほど……理解しました。でも、最悪ではなかったと思いますよ」

郁乃「そうやろか……だって少なくとも、京太郎くんは嫌な思いしたやろ? あと、末原ちゃんもなぁ?」

京太郎「恭子先輩はたしかに、俺のことを庇ってくださったし、嬉しかったですけど……俺は郁乃さんにそう扱われて、お役に立てたなら本望です」

郁乃「はぁ……ほんまに、君はお人好しさんやねぇ~」

京太郎「俺がそうなら、あえて悪役になった郁乃さんこそ、お人好しですよ」

郁乃「――あ、あはは~、かなわんなぁ、もう~」

郁乃「まぁそういうわけで、あれは建前ゆう意味もあったから~……麻雀したかったら、うちか真瀬さんか末原ちゃん、あとは絹恵ちゃんにお願いしてな~」

京太郎「ここだと主将の漫先輩はエースですもんね。洋榎さんはプロ入りのために練習、俺に時間を割くのはもったいないですから」

郁乃「まぁ、そうやねんけどぉ……あの二人は、感覚が強いタイプやからねぇ。指導には向いてないだけやで~」

京太郎「あら、そっちですか……なるほど、照さんタイプですね」

郁乃「あぁ~、宮永さんもそやろねぇ~、わかるわ~」

京太郎「じゃあ――今日のところは、郁乃さんにお願いしていいですか?」

郁乃「あら、若い子やなくて、うちでええの~?」

京太郎「十分お若く見えますけど、お綺麗ですし」

郁乃「あかんで~、はやりさんやら健夜さんと比べたら~」

京太郎「ご、誤解ですから」

郁乃「ほい、ならこれいっとこか~。定番やけど、なに切る百問~」

京太郎「おふっ……的確に、俺の弱点狙いますね……」

郁乃「あら~、せやったん? そら好都合やったわ~」

京太郎「……んーと……これは、これ……で、こっちが……これ……」

郁乃「んん?」

京太郎「これはこうだろ、んで……こっちはこれかな……どうでしょう?」

郁乃「……あの、ほんまに弱点なん? なんや、うまいこと捨ててるけども……しかも判断早いしなぁ」

京太郎「そうですか? このくらいしてても、手加減してくださってるプロの方々に、ぼっこぼこにされましたけど」

郁乃「――ああ、そういう……目指してるとこ言うか、そもそもの視点がちゃうかったんやね……」

京太郎「なんか、まずかったですか?」

郁乃「ううん、逆やよ。ええと思うわ、そのまま続けて……いずれは、二軍三軍とも打たせて、きっちり教えたるからな」

京太郎「名門校なら、二軍三軍の人もお強いんでしょうね。よろしくお願いします」

郁乃「――わからせるんは、京太郎くんの実力をやで。君自身にも、二軍三軍の子ぉらにも、な」

京太郎「ふぅ……こんなとこかぁ。うぉ、もう一時間以上経ってる!?」

郁乃「おつかれさ~ん」

郁乃(百問やけど……一日でやる分とちゃうんやで~?)

恭子「ん? 京太郎くん、こんなとこでなにしてたん?」

京太郎「あっ、恭子先輩、お疲れさまです。いえ、郁乃さんにご指導いただいてました」

恭子「……郁乃、さん?」ピクッ

京太郎「――イクノ=サン、監督代行です」

郁乃「あいえええ~……ほな、うちはほかの教室回るんで~」ヒラヒラ

恭子「……言うたやろ! あの人は、人をからかうんが好きやて! それを真に受けて、さんづけとかっ……さ、さんづけとか!」

京太郎「す、すいません……」

恭子「……ほんで、ご指導ってなにしてたん?」

京太郎「これです、なに切る百問を」

恭子「指導自体はまともやな……どのくらいできた?」

京太郎「一応、百問とも。正解率は八割強ってとこでした」

恭子「えっ……ほ、ほんまに?」

京太郎「……ええ、まぁ……」

恭子(ど、どういうことや……普通のなに切るや、こんなん百問も一時間で……しかも八割強正解!?)

恭子(……夏まで、完全に初心者やったって書いてたやん……そんなに強うなったんか、この子は……) ※女子全国最低レベルが雀力300

京太郎「え、と……どうかしましたか?」

恭子「……いや、なんでもあらへんよ。お疲れさま。ちょっと休憩したほうがええで、部活続けるにしても」

京太郎「はい、ありがとうございます」

京太郎「優しいなぁ、恭子先輩は。さて、とはいえあんまり休んでばかりもいられないか」

京太郎「さて、麻雀指導もいただいたことだし……いよいよ掃除だな!」

京太郎「せっかく郁乃さんが、みなさんのためにしたことだ……俺もマネージャーらしくアピールしないとな」

京太郎「まずはレギュラー部屋、一軍部屋、二軍部屋、三軍部屋の掃除からだ――さて」

京太郎「――軽く、掃除するかな」

京太郎「――ふぅ、まぁこんなもんかな」

洋榎「いやー、すまんすまん。さて続きやろかー」ガチャッ

洋榎「」

洋榎「す、すまんな、部室間違うたわ……」バタン

京太郎「ん?」

洋榎「いや、あっとるやん! なんやこれ! うちの知ってる麻雀部部室とちゃうで!」

京太郎「軽く掃除しただけですけど……そんなに変わりましたか?」

洋榎「軽く!? これで軽くやと、そんなわけあるか!」

絹恵「どないしたん、お姉ちゃん。そんな騒いで――あれ、ここどこ?」

洋榎「そうなるやろっ?」

京太郎「えええええ……」

漫「洋榎先輩、遅いですよー。はよ再開して――あれ?」

漫「いつの間に、こんなとこに……」キョロキョロ

洋榎「嘘やろ……部屋におった人間ですら、気づいてないて……ありえへんやん……」

由子「んぅー、一休みするのよー……あら?」

恭子「どうしたん、由子……えっ?」

絹恵「ああ、被害がゾクゾクと……」


京太郎「同じ出来事が一軍、二軍、三軍の部屋でも起こっていた」

京太郎「以降――断りなく掃除することを禁止された。邪魔しないようにって、気を遣っただけなんだけど……」ショボン

恭子「気ぃの遣い方がおかしいやろ」

京太郎「まぁ、掃除のことは怒られたけど、マネージャーアピールはできたんじゃなかろうか」

京太郎「なんにせよ……これで一日目、終了だーっ」

京太郎「緊張してた分、ちょっと疲れたな……早いとこ帰るか」

漫「あれ、京太郎くんもいま帰りなん?」

京太郎「漫先輩、お疲れさまです」

漫「いや、京太郎くんほどやないで……よう動いたやろ?」

京太郎「んー、それほどでもないです。このくらいは、いつものことですから」

漫「えええ……どんだけなん、それは……」

漫「ま、まぁええわ。でもお腹くらいは空いてるやろ?」

京太郎「ええ。急いで帰って、ご飯作らないと」

漫「――あー、うん……せやった、一人暮らしやったな、京太郎くんは」

京太郎「寮があるとかじゃない限り、基本的にはそうですね」

漫「うーんと、ほんなら……っ……そ、そうや!」

漫「ご飯食べるまでに、お腹空いて倒れんように……た、たこ焼きでも食べに行かへんか?」

漫「おいしい店がな、ちょっと隠れたとこにあるねん。時間あるんやったら、行こや」

京太郎「いいですね。ぜひご一緒させてください」

漫「よっしゃ決まりや! ほな行こか、こっちやで」


京太郎「はふっ、ほふぅ……んぐっ、これは、おいしいですね……生地のダシ味が、たまりません」

漫「せやろー? 私もな、末原先輩に教えてもろて、この味の虜やね~ん」ハムッ モグモグ

京太郎「……恭子先輩と仲良いんですね、漫先輩は」

漫「私の師匠いうか……もちろん洋榎先輩も尊敬してるけど、末原先輩は別格やねん。世話になりっぱなしやし、頭上がらへん」

京太郎「……俺にも、そういう人がいますから、わかりますよ……いつか恩返ししたいです、俺も師匠には」

漫「そやねん! 絶対にインハイ優勝して、末原先輩に恩返しするんやっ……」ガツガツッ

京太郎「慌てて食べると、大変ですよ……ほら、顔上げてください」

漫「んぅっ……な、なに、ちょ、やっ……」

漫(あああああ、あご、あごに指っ……顔、持ち上げられて――)

京太郎「ソースとカツオ、唇についてますよ……取れました。綺麗になりましたよ」ニコッ

漫「ひゅっっ! あ、う……お、おおきにぃ……」カァァァッ

京太郎「――たこ焼きか……粉モノも練習しないとな、こっちで暮らす以上は」

京太郎「と思って、たこ焼き器を買ったんだが……時間、取れるのかな」

京太郎「さて、まずはたこ焼き粉を溶いて――だな」

京太郎「なんでも、これにはダシが最初から入っていて、初心者向きらしいな」

京太郎「薄力粉にダシを足すやり方は、上手く焼けるようになってからだ……」

京太郎「ふんふむ、これで……あとは卵、と……山芋はどうすんだ?」

京太郎「入れるパターンもあり、なくてもよし……まぁ、素人は凝ったことをしないほうがいい」

京太郎「熱したたこ焼き器に油を引いて……生地を流して、湯がいたタコ、天かす、紅ショウガ、そして刻みネギ投下――」

京太郎「周囲が固まり、焦げ目が軽くついたら返して……おぉっ、上手くできた!」

京太郎「わりといけるもんだな……よっ、この、調子で……あー、なるほど」

京太郎「最初の一つを目安にすると、残りのほうがやや焦げ付くのか……火が通りやすいんだな、要チェック、と」

京太郎「ってことは、ある程度の固まりで返しつつ、それをまた返して、両面をバランスよく焼くべきかな」ブツブツ

たこ焼きの修行は続く――。

~月曜、終了


【1月第一週月曜】
 今回の派遣先は大阪の名門、姫松高校だった。
 到着早々、麻雀部の方にお会いするなど色々あったが――楽しそうな土地でよかった。
 学校でもさっそく友人ができた、楽しい学校生活にしたい。

 さて、麻雀部のほうだが、やはり名門校だけあって部員数は非常に多い。
 俺が所属するのは女子麻雀部のほうだが、男子部も負けず、強豪のようだ。
 自分の実力ではまだまだだろうけれど、いつかはそちらの練習にも参加させていただけると嬉しい。

 今日のところは掃除や牌譜整理にしようと思っていたが、代行監督が指導を申し出てくださったので、お願いする。
 なに切る? の百問をしていたのだが、訝しむような視線が気になった。
 もっと正解率を上げないといけないんだろう、時間もかけすぎだったように思う。

 問題を終えたあとは、少しだけ休憩させていただき、部室の掃除をした。
 前主将、現主将、現副主将、その他部員の方々から大いに叱られ、掃除する前にはひと言かけるように義務化された。
 こうして書いてみると、当然のことだ。なぜしなかったのだろう。
 練習の邪魔をしないよう――と思ってのことだったが、不意に音が鳴ることもあるのだ。
 ちゃんと説明し、お時間をいただくほうが正解だった。
 こんな心配をする必要があるということは、まだまだ師匠には及ばない。
 及ばないで終わらせず、鍛錬しなければ。

…………

 『ようやっと京太郎釣れたで! よろしゅーなー。プロとかもう、バンバン呼んでええからな!』
 『それ目当てみたいに言わんとってください。その……よかったら、私も練習に付き合うからな? 気軽に言うてくれてええよ』
 『私もやるでー。ほかにも困ったこととかわからんことあったら、聞いてくれたらええからな』
 『先輩から聞いたことがほんまやったら……一回、対局付き合ってもらえると嬉しいです』
 『頭いいんも聞いてるよー。できたら、お勉強も教えてくれると嬉しいのよー』
 『あ、そうそう~。私のことさんづけで呼んでるのは、内緒やよ~』

 あの……わざとですよね、それ絶対。

 『姫松……ああ、彼女ですか』
 『教師のくせにさんづけさせるなんて、どうかと思うぞ★』
 『……こっちが大阪には行けないと思ってるのかなぁ』
 『年末年始は色々仕事があるからねぃ……関西も、結構多いんだぜ~』
 『関西リーグの絡みで、私はよく大阪にも行きます。いつ呼んでくださっても構いません。よろしくね』
 『……あの人はちょっと面倒だからな。注意しておくといい、一応』

 みなさん顔見知りですか、そうですか。
 たしかに飄々としてる感じだけど……生徒想いの、いい先生だと思うけどなぁ。

 『!! もしかしてっ、部室が突然綺麗になってたのって、キョータローの仕業だったの!?』
 『お前、気づくの遅いだろ……』
 『京ちゃん、寂しい……』
 『まだ一週間も経ってないですよ!』

 『大阪かー、だったら奈良からも近いよね!』
 『姫松とは交流ないからなぁ……千里山なら余裕なんだけど』
 『大丈夫、私たちが修学旅行で姫松の人とも、色々話したから』
 『そうだったね! ということで、なにかあったらよろしくね~』

 『ぬがー! 南に取られてしもた! 新部長、どうなってんねん!』
 『運はしゃーないです』
 『麻雀は運の要素も絡むで。ちゃんと鍛えやぁ?』
 『というかそれやったら、練習試合でも組んだらええんとちゃいますか?』
 『南に借り作るんいややて、意地張るからなぁ……ほんで後輩に当たるんやから、困った先輩やで』

 『ねぇねぇ、末原さんとも打てるんだよね? いいなぁ、京ちゃん』
 『やめーや』
 『すみません。ですが勝手にそちらに行くことはないですし、辿りつけませんのでご安心ください』

 色んな思惑が錯綜してる……あと和、それはひどいだろ。
 けど、そういやそうか。阿知賀の灼先輩と玄先輩は、旅行中に絹恵先輩、漫先輩と打ったらしいな。
 なんか姉談義で、漫先輩が大変な目に遭ったんだったな、たしか……。

――――――――


~清澄

「ひどいよ、和ちゃん……」
「阿知賀の学園祭のときのこと、お忘れですか?」ジトー
「……は、反省してます」ショボン
「ま、まぁまぁのどちゃん、そのくらいで勘弁してあげるんだじぇ」
「はぁ……ともかく、引退して受験勉強に集中している方なんですから、名前までだすのはやめてあげましょう。いいですね?」
「はぁい……」
「和が一年をまとめてくれると、わしゃ楽できるわぁ」
「新しい部員はどうしてるの? まだ四人だし、団体戦にエントリーできないけど」
「……ら、来年は和らの後輩が入ってくれるじゃろ……」
「ムロちゃんね……ま、このコたちが入るまで誰も入ってくれなかったわけだし、いまさら新入部員は難しいかぁ」


~白糸台

「京ちゃん……このたこ焼きの写真はなに?」
「追加されたな……夜食に作ったのか?」
「行って一日二日で、プレートまで揃えて万全じゃないですか……さすがというべきか」
「おいしそう……知ってましたか? 熱々のたこ焼きにはキンキンのラムネを合わせて、炎天下で飲むのがおいしいそうですよ」
「私もそれ聞いたことあるー! ノドカが言ってたんだー、キョータローが戻ってきたら、たーめそっと♪」
「京ちゃん、もうクリームとスポンジとチョコはしないの? 関西のおやつは粉物しかしない予定なの?」
「いや、一日でそう判断するなよ……というか、洋菓子を作っても、お前は食べられないんだぞ?」
「……あ、宮永先輩が行けばいいじゃないっていう目、してる」
「私は付き添わな――いや、そうだな……まぁ、そういう理由があるなら……つ、付き添ってやらなくもない」
「スミレも、折れやすくなったねー」
「恐るべし、京太郎くんの魅力……」


~龍門渕

「……ハギヨシ、これはどういうことですの」
「家事をする際には、家主の邪魔にならないよう――と指導しましたので……私の責任です、申し訳ございません」
「部屋の掃除なら声かけないとねー、さすがに」
「ま、掃除の技術は文句なしなんだし、いいだろ。今回で学習したわけだし」
「……というか、ここまでどうして誰も、指摘しなかったの……」
「技術に仰天し、そこまで注意が回らなかった、というところか。難儀な男だな、京太郎も」


~永水

「……あそこの大将の子、強かったわねぇ」
「霞ちゃんの絶一門にも、柔軟に対応してた……」
「麻雀のことより、大事なことがあるんじゃないですかー?」
「京太郎くん、ああいうメンタル弱そうな子って、よく気にかけてるからねぇ」
「いいことを思いつきました!」
「なんですかー?」
「私は部長になりましたし、先鋒で当たった上重さんも部長さんです!」
「主将ですけどね」
「その縁を持ちまして、練習試合などいかがでしょうか!」
「――――」
「――――」
「い……いかがでしょうか……?」オソルオソル
「小蒔ちゃん」
「は、はい!」
「いい考えよ、成長したわね」
「そ、そうですか」ホッ
「姫様、素敵……まさに部長、一生ついていく……」ギュー
「えへへ、よかったです……頑張りましょうね、春ちゃん」
「新たな火種が……」
「……でも、そうすれば合法的に会えますからねー、京太郎に……えへへへ」
「!? は、はっちゃんまで……」
「そうは言っても、巴ちゃんだって会いたいんでしょ?」
「……ひ、否定はしません」カァァッ


~宮守

「今度は姫松かぁ……」
「どうしよう、変なこと言っちゃったんだけど……本当に言ってないよね、うるさいそこ! って……」
「えええ……胡桃がそんなこと言うなんて、珍しい……」
「た、たまたまだよ! 魔が差して……」
「だ、大丈夫だよー、京太郎くんならー」
「(胡桃ブリーダーに従う忠犬京太郎の画)」カキカキ バッ
「」
「……だ、大丈夫よ! 愛宕さんなら、笑って受け止めてくれるって!」
「や、やっぱりメールで確認する!」

「……で、結果は?」
「」
「あちゃー……ん? でも、笑ってくれたって書いてるじゃない、よかったわね」
「よくないよ……」
「ジゴージトク!」
「どうしてそんなこと、言っちゃったのー?」
「……お正月、シロと二人っきりで初詣したから……ちょっと、意地悪で……」
「あー」
「これはシロが悪いねー」
「ギルティ!」
「ええええ……なんで私に……」


~阿知賀

「灼、早く連絡して! 早急に練習試合!」ゴッ
「おお! 憧燃えてるね!」
「いや、そんなすぐとか……京太郎があっちに慣れる時間とかも、あげたいし……」
「そうだねー。日誌見る感じだと、いい感触みたいだけど」
「あったか~い人たちみたい、よかったね~」
「あ、そうだ。宥姉ももちろん行くでしょ?」
「えっ、い、いいのかなぁ……」
「向こうも三年の愛宕さんが参加するだろうし、いいんじゃないのー?」
「だったら……お邪魔しようかなぁ……」
「いや、だからまだそんな、いつするとか、本当にするとかなにも……」


~姫松

「くききききっ、見てみぃ絹。江口のやつ、めっちゃ悔しがっとるで~」
「悪趣味やで、お姉ちゃん……でもよかったわぁ、ええ人そうで」
「せやなぁ。ま、絹が京太郎見とった目ぇは、その程度のもんやなかったけどな~」ニヤニヤ
「!? なな、なに言うてんの、そんなっ……ち、ちゃうからね! 勘違いせんといてや!」カァァッ
「またわっかりやすいなぁ、あれか、ツンデレいうやつか」
「ちゃうて言うてるやろ! もー、おかーちゃん、お姉ちゃんに言うたってよ~」
「――あのなぁ」
「おう、なんやオカン」
「飯食うてるときに、パソコンいじりな。何べん言わすんや?」ギロッ
「」
「」
「返事」
「ご、ごめんなさい……」
「堪忍やで、おかーちゃん……」
「よろしい。おとなしゅう食べや」


「ふぅ、寒ぅ……予備校通いも楽やないなぁ」
「もう慣れたのよー。それより、京太郎くんの日誌見た?」
「ん……まぁ」ドキッ
「うちのことは気に入ってくれたみたいよー、よかったなぁ」
「そうやな……」
「元気ないのよー? どしたの?」
「ううん、ちょっとなぁ……うちと同じ凡人や思てたんやけど、そういうわけでもない――みたいに思わされてしもて」
「あぁー、なに切るの話なのねー。気にせんでもええ思うよー? あの子はあの子なりに、恭子とは違う努力してきたんやろし」
「……そうやんな。そうやわ……うん、あの子の頑張りまで、否定するとこやったわ」
「指導してれば、どこかに穴もあると思うのよー。それを埋めてあげるのが、先輩の役目じゃないかなー」
「それも、そうやねんけど……漫ちゃんにもいい影響あればええなぁ、とも思うわ……」

「もしもし、漫ー? いまねー、恭子が――」
「っっ!? やめーや!」
『えっ、ちょっ、なんですか、いきなり!』
「ほら、恭子ー」
「うぅ……も、もしもし、漫ちゃんか? あー、その……京太郎くんと、いっぱい練習しぃや?」
『えっ……はぁ、まぁ……そりゃしますけど……どうしたんですか、いきなり』
「日誌見てるか?」
『はい、開いてますけど……』
「なに切るのこと書いてあるやろ? それ、一時間で全問、正解率八割強らしいから」
『は――』
「そこそこやる、くらいに思てるやろうけど、もっとできるみたいやから。なるべく多く打って、互いに成長するんやで、ええな?」
『……ありがとうございます、わざわざ連絡してもろて』
「いや、ごめんな……引退しても口うるさい先輩で」
『そんなん思たことありません! その……嬉しいです、頑張りますから!』
「うん。期待してるで、ほなな……ふぅ」

「……いや、それ私の携帯なのよー。しまわないで欲しいなー」
「あ、か、堪忍やで」
「別にいいのよー。二人は仲良しねー」
「まぁ……あの子を引っ張り上げた責任いうか、そういうんもあるから」
「ふーん、なのよー……そうそう、思いだしたんやけどな」
「なに?」
「今日の帰り、漫ちゃんと京太郎くん、二人でたこ焼き買い食いしてたのよー。口元のソース拭わせたりしてねー、真っ赤になって――」
「もしもし漫ちゃんか、遊んでる場合とちゃうやろ。真面目に練習せな、なに買い食いなんか――」
『えぇぇぇっっ!? す、すんません、いやっ、えっ? なな、なんで知ってるんですか!?』
「……恭子には、大事なものがもう一つ、できちゃったみたいなのよー」クフフ


~某居酒屋

「打倒赤阪郁乃会議!」プンプン
「とりあえず、私と野依プロはチームの地元に帰って――いつでも大阪に出られるよう、準備しておきましょうか」
「私たちは、関西のお仕事多めに入れるぞ☆」
「もう取りましたんで、こまめにあっちにいけるっすよ、私は~」
「……うぅ、あの仕事はもう受けないつもりだったけど……あの旅番組、次は大阪みたいだし、また受けようかな……」
「こういう場合、関西リーグでよかったと思いますね」
「まったく!」
「けど――指導で行ったら、あの人に会わなきゃだめなんだよねぃ……はぁ」
「大会中に一度行きましたが、監督業のためか、落ち着いてましたよ?」
「でも教え子にコナかけるような教師だよ! 油断禁物だぞ☆」
「……だよね、京太郎くんのためだし……こーこちゃんにメールしとこ、あの仕事行くって……はぁ」
「京太郎、変な風になんなきゃいいけどねぃ……」
「まぁ……厚意で教えてるんだって、信じてるけど……」
「好意なんて許さないぞ★」
「意味が違います」

~1月第一週

京太郎「寮じゃない、と思ったら大阪だったな」

京太郎「せっかくだし、粉物とご飯っていう組み合わせも試したいな、大阪にいるうちに」

京太郎「なお、朝食はパンのもよう」

モブ田「俺はご飯」

モブ子「私はなし」

京太郎「果物だけか」

モブ子「じゃなくて絶食」

京太郎「不健康だぞ」

モブ子「いやー、朝ごはん予定の分を、昨日の夜中に食べちゃって (・ω<)」

モブ子「朝から食べるものなかったんだー」

モブ田「デブまっしぐら」

モブ子「は、流行のマシュマロ系やから(震え声」

京太郎「実際のとこモブ子はちょいぽっちゃり、だがそれがいい」

モブ子「!?」

モブ田「同意」

モブ子「や、やめろ//////」

京太郎「まぁ女子の体重にあんまり触れるのもよくない、やめとくか」

モブ田「そうだな」

モブ子「そうして」

「おはよう、モブ子ー」
「お腹揉ませてー」
「あぁ~、手頃な感覚が心地いいわぁ」モミュモミュ

モブ子「ぬぎゃああああ! やめろっ、お腹が育っちゃうっ!」

京太郎「刺激によって燃焼され、減っていくパティーン」

モブ子「揉んで! 私のお腹を揉みくちゃにしてぇぇぇぇっ!」

モブ田「痴女か。なんだこの百合のようで百合でないなにかは」

京太郎「もう学校の前だぞ、あらぬ噂が立つ前にやめとけー」

モブ田「手遅れの予感、あそこに新聞部が」

京太郎「よし、他人のフリするか」

モブ田「そうだな。あ、ところで今日の英語――」


モブ子「やめてっ、撮影は事務所を通して!」

京太郎「ノリノリじゃねーか」


~お昼

京太郎「――そういえば朝練のこととか聞くのを忘れてた」

モブ田「おっ、そうだな」

モブ子「昼のうちに聞いてきたら?」

京太郎「……そうだな、さっと飯食っちゃうか」

「おっと逃がさへんで、須賀ぁ」
「ここを通りたければ俺らに――」

京太郎「なんだ、倒せばいいのか?」

「いや……数学の宿題を教えてからにしてくれへんか」
「今日絶対当たんねん。頼むわ~」

京太郎「だから日頃から真面目にやっとけとあれほど」

「オカンか!」
「教師か!」

京太郎「まぁいい。急いでるからさくっと終わらせるぞ」

京太郎「誰かいらっしゃるかな……ちーっす、失礼しまーす」ガラッ

由子「あら京太郎くん、いらっしゃいなのよー」

京太郎「由子先輩、勉強中に失礼します。ちょっと聞きたいことがありまして――えっと、二年の方はいらっしゃいますか?」

由子「なによー、私やとあかんの?」

京太郎「いえ、本当は昨日確認すべきだったんですけど、朝練とかどうなってるのかと思って――三年の方は、出られてないでしょうし」

由子「ヒロが出てるのよー。あと恭子もたまに。んー、せやけど……日程はわかるよ。こんな感じ」サラサラ

京太郎「よかったです。メモ取らせてもらっていいですか?」

由子「メモ帳だし、このままあげるのよー。けど熱心なのねー」

京太郎「ありがとうございます……まぁ好きなことなんで、つい熱中しちゃうって感じですね」

由子「それは麻雀が? それとも執事?」

京太郎「どっちもですかね。両方とも、自分の成長には欠かせませんから」

由子「その上真面目、しかも実力というか、能力が伴ってるのよねー……よその学校でも相当モテたでしょー?」

京太郎「だったらよかったんですけどね。まぁみなさん好意的には接してくださいますけど、モテるってこともないです」

由子「あらそーなの? 意外なのよー」

由子(――これは気づいてへんだけやろなぁ……まぁ、それやったらこっちもありがたいわ)

由子「――そうそう、用はそれだけやったら、時間あるやろ?」

京太郎「ええ、なにか用事でしょうか?」

由子「せっかくやし、勉強見てってくれへんかなぁ。一人でやるより効率ええやろから、お願いなのよー」

京太郎「はい、わかりました。あれ……これ、学校指定の問題集とは違いますね」

由子「あはは、予備校のテキストなのよー。全体復習に便利やねん……で、ここがようわからんくてなー」

京太郎「ああ、ここですか――お隣、失礼しますね」

由子「どうぞどうぞー」

京太郎「……髪型、可愛いですね。その編み込み」

由子「ふぇっ!? ちょっ、なっ……いきなりなに言うてるのっ」

京太郎「す、すいません、近くに行ったら目に入っちゃって、思わず……えっと、この問題は――」

由子「も、もう、真面目にやってくれへんと困るのよー」

由子(不意打ちはあかんてっ、ほんまにーっ!)/////


~火曜、部活前

京太郎「調理室の鍵も貸してもらえたし、ひとまずは安心だな」

京太郎「さて、あとは部活の前に、ちょっと部屋の掃除でも――」

恭子「……ひと言声かけ、言うたやろ」

京太郎「」ビクゥッ

漫「ま、まあまあ、そんなきつぅ言わんでも……」

恭子「最初が肝心やからな。あかんで、京太郎くん」

京太郎「はい、すいませんでした……で、その……掃除、してもいいですか?」ウルッ

恭子「――――」キュン

恭子「しゃ、しゃあないな……みんなが来るまでやで、私らが見てるとこだけな」

京太郎「はい!」


絹恵「なにしてるんですか、末原先輩。それに漫ちゃんまで」

漫「掃除の監督やで」

絹恵「手伝わへんの?」

恭子「どこ掃除したらええかわからんもん、綺麗すぎて」

絹恵「たしかに……なんでかわからんけど、京太郎くんがいたとこが、余計に綺麗になってる……なんでや……」

京太郎「――ふぅ、掃除は気持ちがいいなぁ」

京太郎「……みんなが来てしまった……だが、俺にはまだ部活の時間がある!」キリッ

京太郎「うう、掃除してたの見られてるから、掃除がしにくい……なら、誰かに麻雀教えてもらえないかな」

京太郎「洋榎先輩が楽しみにしてたし、誰かお呼びできれば、なおいいんだけど――」

京太郎「……もしもし。突然すみません、京太郎です。お世話になっています」

良子『堅苦しいあいさつは結構ですよ。ひょっとして、指導の依頼ですか?』

京太郎「ええ、その……俺もなんですけど、先輩で、プロ入りする方がいらして――」

良子『……ああ、洋榎ですね。以前にも指導したことがあります、彼女の相手も楽しいでしょう』

京太郎「えっと、もしかして来ていただけますか?」

良子『もちろんです。まぁ――偶然、こちらで麻雀の仕事を受けていたので、いま大阪にいますから』

良子『日程的に、しばらくは余裕がありますので、今日はノープロブレムです。すぐに伺いましょう』

京太郎「あ、ありがとうございます!」

京太郎「ということで、指導に来ていただきました。松山の戒能プロです」

良子「ハローみなさん、お久しぶりです。目新しい相手でなく申し訳ありませんが、どうぞよろしく」

洋榎「ようやったで須藤!」

京太郎「須賀です」

洋榎「わぁーっとるわ、京太郎! こういうトッププロと打てるんは、なかなかないからな、ほんまありがたいで」

郁乃「以前はありがとなぁ~。ほな、京太郎くんの指導のあとで、全体に参加してもろてええかなぁ?」

良子「……はい。ところで、京太郎くんのことですが――」

郁乃「そ、それじゃね~、私はほかのとこ見てくるから~。あとで二軍、三軍からも何人かこっちに参加させるから、よろしく~」

良子「……シット、逃げられましたか」

京太郎「どうかされましたか?」

良子「いえ……ときに、つかぬことを伺いますが。赤阪郁乃という教師を、どう思いますか?」

京太郎「……熱心で、優しい先生だと思いますよ。誤解されやすそうですけど」

良子「そうですか……」

良子(うまく、そう見せている……というわけでもないでしょう。彼を前に、本音を隠せる人物は、そういないはず――)

京太郎「あの……?」

良子「いえ、なんでもありません。では、打ちましょうか」

良子「……ふむ、なるほど……」

京太郎「ど、どうでしょうか……」

良子「ええ、通しです。よくなりましたね、お見事」

京太郎「ふぅ……いえまだまだです」

良子「そうですね、その前に上がっておくべきでした……ツモです。終了ですね」

京太郎「」

良子「ショックを受けずともいいではないですか。私はプロで、あなたの師なのですよ?」ニコニコ

京太郎「師匠、もっと優しさをお願いします」

良子「痛くなければ覚えないでしょう?」ニコニコ

京太郎「……はい」


恭子「見事なバランスですね」

由子「京太郎くんに偏った性癖がついちゃうのよー」

洋榎「戒能プロ、ほんまやらしい打ち方するなぁ……ええわぁ、楽しみや」

絹恵「京太郎くん、大丈夫やろか」

漫「打たれ強そうやし、平気やって。それより次、私らも指導してもらおな」

京太郎「だよなぁ……麻雀は守りも大事、でも守りのゲームじゃない……」

京太郎「どこかで攻めて、上がらないと勝てないんだ……はぁ、先は長く険しい」

京太郎「良子さんも、一軍の方たちと打ち始めたみたいだ……俺はどうするかな」

京太郎「――だな、差し入れを挟もう」

京太郎「たこ焼きがいいのかもしれないが、まだ修行中だ……まずは、俺の得意を見せるしかない」

京太郎「――ふぅ、ちょっと気合入れてみた。みなさんの好みがまだわからないからな、最上級の出来でないと」

京太郎「ま、この出来が毎回だせないとだめなんだけどな。まだまだ成長しないと」

京太郎「すみません、甘いもので申し訳ないんですが……冬の果実のタルトを、ご用意してみました」

良子「……いつもながら、おいしそうですね、本当に……いえ、この出来はいつも以上でしょうか」

京太郎「恐縮です……あと、すみません。粉モノの料理は、まだ練習中でして……」

洋榎「いや、なんちゅーか……そ、そんな気にせんでええで? たこ焼きなんかよそでも食えるし、それよりは……ほれ、あれや」

洋榎「京太郎が得意なもん、作ってくれたらええわ。うちらも好物が食べたいわけやない、うまいもんが食べられたら文句ないわ」

京太郎「あ……ありがとう、ございます!」

恭子「まぁ、好きは好きですけど、たこ焼きもそこまで好物いうわけやないし……」

絹恵「そもそもお姉ちゃん、かなり甘いモン好きやから、平気やで?」

洋榎「ちょおっ!? きき、絹っ、いきなりそんなん、バラすなや!」カァァッ

絹恵「なんでぇ、可愛いやん。なぁ、京太郎くん?」

京太郎「はい、とても」

洋榎「!? ああああ、あほぉっ、か……からかうなやぁ……も、もう知らんわっ」

京太郎「そういうことでしたら、遠慮なく召し上がってください……どうぞ」

洋榎「……おおきに……」パクッ

洋榎「!? ふ、ふぁ……ん、んまぁい……なんやこれ、ほんまうますぎるやん……」ムシャムシャ

由子「ゆっくり食べないとはしたないのよー」

京太郎「みなさんもどうぞ、すぐにお茶をお淹れしますので」

漫「……すごい、めっちゃおいしい……こんなん食べたら、もうお店でよう食べられへんわ……」キラキラキラ

恭子「なに言うてんの、なんぼすごい言うたかて、素人の腕で――」パクッ

恭子「ふわぁぁぁぁ……こ、こぇ、あかんわぁ……」トローン

由子「い、いままでお店で落としたお金が、あほみたいなのよぉ……」フルフルッ

絹恵「よその学校は、いままでこんなん食べて……う、うらやまひぃ……」

京太郎「お代わりもありますよー」

全員『いただきますっっっ!』

京太郎「……ど、どうぞ」

良子「レディがはしたないですよ、みなさん」

京太郎「あれ……良子さんの分、お取りしてませんでしたっけ! すいませんっ……」

良子「……いえ、その……た、食べ終わった、だけです……ソーリー」カァァッ

京太郎「……気に入っていただけて、よかったです」

京太郎「――ふぅ、よその部屋にも回ったし、とりあえずは好評だな」

京太郎「レギュラーのみなさんに、お茶のお代わりでもお伺いしようか」

京太郎「――失礼します、どうぞお茶を」

洋榎「おお、すまんなぁ……あかんわ、しばらく店でケーキは食われへん」

京太郎「すみません、食べきってもらちゃって」

洋榎「あほ言いなや、そうちゃうて」

京太郎「えっ?」

洋榎「京太郎のケーキがうますぎてやな、もう店のもんなんかで満足できへんいうことや」////

京太郎「あ……ありがとうございます、洋榎先輩」ブワッ

洋榎「ちょちょちょ、泣かんでええやろ……せやけど、あれやで?」

洋榎「もう京太郎のやないと満足できへんねんから……せ、責任取ってもらわな困るわ」

京太郎「と、いいますと……えっと、先輩のお宅でもご用意したほうが、ということでしょうか」

洋榎「なっ!? ちゃ、ちゃうわ、あほぉっ! その……ちゃんと、部活のたびに、用意してもらおっちゅーことや……わかるやろ」

京太郎「ああ、なるほど……ええ、承知いたしました」

洋榎「そ、そーか! まぁ、けど……い、家でも焼いてくれる言うんなら、うちは別に――」

郁乃「あら~、そらあかんでぇ~、洋榎ちゃ~ん」

洋榎「っっ!? だ、代行かい! 脅かすのなしやで!」

郁乃「あはは~、かんに~ん。せやけど、家に京太郎くん呼んだら、大変なんと違う~?」

洋榎「あちゃー、せやな……オカンに見つかりでもしたら、もうなんちゅーて冷やかされるかわからんわ……」

京太郎「楽しそうなお母さんですね」

洋榎「笑いごとちゃうわ、ほんま……普段オニババのくせに、そういう下世話なんが好きでなぁ……困るわ」

郁乃「それは言いすぎちゃうかな~。まぁ、そういうわけやし、京太郎くんのお菓子はしばらく、部活専用かな~」

京太郎「わかりました。その分、しっかりと仕上げさせていただきますので」

郁乃「あぁ、せやけどぉ~……その、あの……あのねぇ?」////

京太郎「はい?」

郁乃「うちは、その……ひ、一人暮らしなわけやしぃ……誰かに見つかることもないから、き……」

郁乃「来て、もろても、その……う、うぅ……」モジモジ

京太郎「?」

郁乃「や、やっぱり……なんでもあらへんよぉ~」カァァッ

京太郎「……はい。どうぞ、郁乃さんも……お茶のお代わりです」

郁乃「お、おおきになぁ……」

京太郎「……今日俺が学んだ教訓は――」

京太郎「大阪の方のおやつが、たこ焼きと決まっているわけではないということだ」

京太郎「けど、いつかは俺のたこ焼きも食べてほしいもんだな……よし、片づけ終了」

京太郎「さて、出遅れたけど、そろそろ帰らないとな」

京太郎「……にしても、気に入ってもらえてよかったよ」

京太郎「今日は誰にも会わず、か――」

京太郎「にしても、夜はどうするべきかな……とりあえず、コンビニも選択肢に入れておくか」

京太郎「……うん、今日のは十分だな。もう焼き加減に関してはマスターしたかもしれない」

京太郎「けど――ここからが最重要、オリジナルレシピの開拓だ」

京太郎「ダシの比重によって、焼き加減もずれてくるだろうから……味のバランスも考えつつ、焼き時間も見極めないと」

京太郎「ダシはとりあえず、一番だしで……薄力粉、それと……そうだな、卵を使おう」

京太郎「あとから鰹節も使うんだし、このくらいの……いや、もう少しか」

京太郎「……いかん、水っぽい……」

京太郎「となると、バランスは……対……くらいか、うん、これなら香りもほどよく残る」

京太郎「さて、焼いていくかな……」

京太郎「…………焦げた」


~火曜、終了

~1月第一週水曜、朝

京太郎「さて、今日も一日頑張るかー」

京太郎「とはいえ、登下校で誰にも会えないのは、微妙に辛い……」

京太郎「せっかくの機会だし、麻雀部の方たちともっと仲良くなりたいなぁ」

モブ田「聞きましたか、奥様。あのたらしな発言」ヒソヒソ

モブ子「ええ、この耳でしっかりと。私というものがありながらっ」

モブ田「まさかの浮気設定!?」

京太郎「……無視むし」

京太郎「っっ……おはようございます、由子先輩!」パァァッ

由子「あらおはよー、京太郎くん……なんや嬉しそうなのよー。なんかええことでもあった?」

京太郎「はい! 由子先輩にお会いできました!」ニコニコッ

由子「」

京太郎「どうかされましたか? あ、カバンをお持ちしましょうか」

由子「……ふ、深い意味はないのよねー?」

京太郎「え、ええ、ただカバンをお持ちするだけで……」

由子「いや、そうじゃないのよー……まぁいいや。カバンは持たんでええよ」ニコッ

由子「せっかくやし、一緒に学校行こか。そや、学校で困ったこととかはないのー?」

京太郎「ええ、いまのところはなにも。みんないい人ですし、よくしていただいてます」

由子「麻雀部はどうやろか?」

京太郎「最初の掃除の失敗以外は、なにもありません。優しい人たちばかりです。あと可愛い人が多い」

由子「あらー」

京太郎「……すみません、最後のはなかったことに」

由子「もう聞いちゃったのよー。困った子やねー」ニコニコ

京太郎「ああああ、言うつもりでは……なんというか、その……由子さんの笑顔がずるいです」

由子「またそんなん言うてー……なにかおかしいかなぁ?」ホッペフニフニ

京太郎「人懐っこそうといいますか……こう、同級生にしか話さないようなことまで、話させられるっていうか……」

京太郎「ああ、緊張がほぐされるんですよ。それで、つい……」

由子「あららー、嬉しいなぁ。ええねんよ、好きなこと話してくれたらー」

由子「そのほうが私も、京太郎くんのこと、いっぱい知られるのよー」ニコニコ

京太郎「……はい、ありがとうございます」

由子(かわいい子なのよー)


~水曜、昼

モブ田「いやー、めっきり寒くなったなぁ」

モブ子「ほんとほんと、ご飯でも食べないと寒くってねー」

京太郎「自然に俺の弁当を奪うな」

モブ田「まぁまぁ、減るもんじゃなし」

京太郎「減ってるよ! 見ろっ、もうご飯だけしかねーだろうが!」

モブ子「仕方ねえなぁ……私の弁当、わけてやるよ」

京太郎「お、悪いな……って、お前も白飯しか残ってねーじゃねーか!」

モブ子「いっけね、早弁でオカズ食べ終わったんだった」

モブ田「ったく……おら、俺のをわけてやるよ」

京太郎「おにぎりだけ!」

モブ田「ふふ、しかも……塩むすびだ!」

京太郎「おお、もう……学食行ってくる」

モブ田「あれ、いつもみてーに、調理室で作るんじゃねーの?」

京太郎「まだ調理室に食材揃えてねーんだよ、昨日、鍵借りたとこだからな」

モブ子「やる気ではあるんだ……」

京太郎「はぁ、なんてやつらだ……しかし、すごい学食だったな」

京太郎「なんか外部の出店らしいけど、お好み焼きまで食えるとは。さすが大阪だ」

漫「せやろー、さすがやろー?」

京太郎「洋榎先輩? じゃない、漫先輩でしたか」

漫「あははー、ひっかかったー」

京太郎「どうしたんですか、先輩の真似なんて」

漫「たまーに部活で言うてはるやろ? あれがなんや、耳に残ってなぁ」

京太郎「あー、人の口グセってそうなりますよねぇ」

漫「京太郎くんはどないしたん、屋上なんて、珍しい」

京太郎「ただの散歩です。友人に飯取られて、学食で腹いっぱいお好み焼き食べちゃったんで、腹ごなしに」

漫「そ、壮絶やな……そんでどうやろ、姫松の屋上は」

京太郎「いい眺めですね、街並みがよく見えます」

漫「うん、私も好っきゃで」

京太郎「それに漫先輩がいました、ラッキーです」

漫「ふぇっ!?」

京太郎「部活だと、先輩はエースとして、あと主将として率先して練習してますから」

京太郎「こういう機会でもないと、あまり話せないじゃないですか」

京太郎「だからラッキーだなー、と」

漫「あ、ああ、そういう……ちょお、紛らわしいなぁ、京太郎くん」

京太郎「? なにがですか?」

漫「な、なにがて、それは……」

京太郎「それは?」

漫「それは、その……ああああぁぁっっ! な、なんでもあらへん!」

京太郎「あっはい」

漫「もうええやん……それより、ラッキーなんやろ。なんか話そや」

京太郎「そうですね……じゃあ、二回戦で当たったメンバーの話なんてどうですか?」

漫「!! せやっ、神代小蒔の話聞かせてや! あとは、プロ決まった小瀬川さん!」

京太郎「いいですよ。お二人とも、やっぱり普段から強くて――」

~水曜、部活

京太郎「よーし、今日も張り切って部活だ!」

絹恵「おー、燃えとるなぁ、京太郎くん。うちも負けてられへん」

京太郎「絹恵先輩、お疲れさまです」

絹恵「まだなんもやってへんわ、これからやで、疲れるん」

京太郎「そうでした……でもこういうとき、なんてあいさつするんですかね」

絹恵「うーん……普通に、こんにちは、とか?」

京太郎「もしくは、よろしくお願いします、でしょうか」

恭子「なに悩んでるん、二人して」

京太郎・絹恵『恭子(末原)先輩、お疲れさまです!』

恭子「あー、授業もいい加減疲れるわなぁ」

絹恵「ああ、そういうことでお疲れさまがええんか」

京太郎「しかも結局、絹恵先輩もお疲れさまって言ってるじゃないですか」

絹恵「ほんまや、あははは」

恭子「なんや知らんけど、仲ええなぁ」

由子「恭子が恨みがましく見てるのよー、二人ともー」

京太郎「えっ」

絹恵「す、すいません、恭子先輩!」

恭子「なんも恨みがましく見てへんわ! ゆ・う・こぉ~!」

由子「きゃーなのよー」

洋榎「おっ、盛り上がっとんな~」

漫「練習前にバテんとってくださいね」

京太郎「ここの麻雀部も、仲良いなぁ」

京太郎「昨日は良子さんにしてやられた……いや、勝てるようなら、俺もプロになれるってことになんだけど」

京太郎「いつかは勝てるように、今日も練習だ!」

京太郎「あの……恭子先輩、お勉強中恐縮ですが……」

恭子「ん、どないしたん?」

京太郎「いえ、いま手隙の先輩がおられなくて……その、よければ指導いただけないでしょうか……」

恭子「――京太郎くん」

京太郎「は、はい!」

恭子「そんな遠慮はいらんで。あんたをうちに呼んだいうことは、そういうのも織り込んでのことや」

京太郎「はい……」

恭子「そんなん、頼まれたら喜んで教えたげるわ、先輩やもんな」

京太郎「……はいっ! ありがとうございます!」

恭子「やけど――あれやで。うちも凡人やから、そんなうまいことは、教えてあげられへん」

恭子「それでもええん?」

京太郎「……俺は、清澄の部員でしたから、咲の強さは十分知ってます」

恭子「…………」カタカタ

京太郎「永水で霞先輩の怖さも、宮守では豊音先輩のオカルトも、色々知ってきた……つもりです」

京太郎「その上で、言わせていただきたいです……あのメンバー相手に、負けずに勝ち上がった先輩は、強いと思います」

恭子「……せやろか」

京太郎「そんな強さを、俺は教えてほしいです」

恭子「……ん、まぁ……そ、そうまで言うんやったら……できることは、教えるわ」

京太郎「はいっ、よろしくお願いします!」

恭子「――まぁ、うちはこんな感じで対応するかなぁ」

恭子「もちろん相手にもよるで? 得体のしれんやつが相手なら、それごとに対応を変える」

恭子「これはあくまで、普通の……普通の麻雀させてくれる相手用やわ」

京太郎「なにごとも臨機応変、ということですね」

恭子「そういうことやな。あとはそれだけ、多くの牌譜を見て、相手と牌譜を頭に叩き込むことや」

京太郎「牌譜整理なんかも、大事ってことですね」

恭子「ただ整理するだけやなしに、見といたら有利にはなるやろうな」

京太郎「あとは多く打つことですかね」

恭子「最終的にはそうやろうな。私も石戸の麻雀に対応できたんは、洋榎と由子と打った、三麻のおかげやった」

京太郎「そうなんですか……なら、恭子先輩」

恭子「ん、どないしたん?」

京太郎「もう少し打ちましょうか。あ、お時間があれば、ですけど……」

恭子「……あとで」

京太郎「はい?」

恭子「あとで、勉強に付きおうてや?」

京太郎「……はい!」

京太郎「――打ち終わったあと、しっかり勉強に付き合わせていただきました」

京太郎「まぁ、あれくらいじゃお返しにならないな。また今度、お付き合いさせていただこう」

恭子「こ、声にだして、その……そういうん、言いなや……」カァッ

京太郎「またいつでも、お付き合いします」

恭子「言うな! あほ!」ペシッ

京太郎「すいません!」

京太郎「怒られないようにしよう……」

京太郎「んー、さっきの恭子先輩の指導がわかりやすかったからかな、調子がいいみたいだ」

京太郎「もうちょっと、麻雀に集中したいな……」

恭子「――京太郎くん、ちょっときぃ」

京太郎「はい!」

恭子「あの……さっきはおおきにな、ちゃんと勉強見てくれて」

京太郎「いえ、教えていただきましたから、お返しです」

恭子「はっきり言うてな、予備校の先生よりもわかりやすかったし……えらい助かってん」

京太郎「そんな……褒めすぎですってば」

恭子「ほ、ほんまやで! 少なくとも、うちにとっては……そ、そんでや、その……」

恭子「もしよかったら、もうちょい……ま、麻雀、せぇへんか?」

京太郎「え――いいんですか?」

恭子「うん、ええよ……そのかわりやねんけど、また……」

恭子「わからんとこ、あったら……教えてもろてもええかな」モジモジ

京太郎「俺なんかでよければ、よろこんで」

恭子「そ、そうか。ありがとう……ほな、ちょっとだけ打とか。メンツ、あそこで手ぇ空いてる子ぉ、呼んで来てや」

京太郎「了解です!」


恭子「……はー、なんやもう……えらい緊張するわぁ」

恭子「――ツモ、4000、2000」

京太郎「ぐっ……親かぶりで、逆転ですか……」

恭子「はー、危なかった。まったく、えらい一年生やなぁ、京太郎くんは」

京太郎「っていっても、恭子先輩には余裕があるように見えましたけど。だからこそ、余計に焦ったんですから」

恭子「あ、そう見えててくれたか……よかった」

京太郎「どういうことです?」

恭子「逆境のときこそ、笑わんとな……私もわりと、顔に出やすいほうみたいやから」

恭子「ピンチや思ても、むしろ勝ってる状況やと思い込んで、余裕を見せてただけやねん」

恭子「そういうブラフも必要なんよ。まぁ、通用する相手には、やけどね」

京太郎「うぐぅ……そうですね、素直に受け止めすぎました」

恭子「まぁ、実際に余裕があって笑てる人もおるから、どういうタイプかはよう観察せんとあかんで」

京太郎「はい、勉強になります」

恭子「はぁ……素直な返事やなぁ。けど、嬉しいわ」ニヤニヤ

「あのー、私らはどうすれば……」
「邪魔したらあかんわ、そっとして戻っとこ」

~下校時刻

京太郎「みっちり麻雀できたな――合間に、お菓子も焼いてたけど」

京太郎「しかし、あれはすごかった……パイ生地が、絹恵先輩の……」

京太郎「なんというか、そう……絹恵先輩のパイを包む制服の生地の上に、パイ生地のクズが乗ってた……」

京太郎「霞先輩とか神代先輩は、おしとやかに食べてらしたんだな、乗らないってことは……」

京太郎「和でもなるんだろうか……見たい……」

京太郎「……バカ言ってないで帰るか、暗くなってるし」

京太郎「あれ……絹恵せんぱーい」

絹恵「ん? あ、京太郎くん。今度こそお疲れさまやね」

京太郎「はい、お疲れさまでした」ジー

絹恵「?」

京太郎「やば……んっ、えーっと、いつもお一人で?」

絹恵「お姉ちゃんは、代行と色々話したりするしなぁ。漫ちゃんとはたまに帰ってるで」

絹恵「方向ちゃうときもあるから、まぁ色々やな」

京太郎「じゃあ、今日は俺がお供しますよ。夜遅いし、危ないですから」

絹恵「そう? 優しいね、ほな頼むわ」

京太郎「この命に代えましても!」

絹恵「重たいわww ふぅー、しっかし寒いねぇ、毎年この時期は」

京太郎「そうですね。一番きついのは朝ですけど」

絹恵「せやんなぁ。もう、布団から出るだけで、その日一日のやる気、全部飛んでまう気ぃするもん」

京太郎「寒さと、あと眠気も残りますからね」

絹恵「そうやねん! 私なんかもう、低血圧やしさぁ……寝ぼけてしもて、洗顔で歯ぁ磨いたりするしな」

京太郎「ベタですねー」

絹恵「ちゃうで、これは王道いうねん」

京太郎「無理にでも起きられれば、朝にジョギング、もしくはウォーキングなんかできれば、目も覚めて、身体も熱くなるんですけど」

絹恵「あかんあかん、ギリギリまで寝てまう弱い人間やねん、私は」

京太郎「そうですか、残念です……」

絹恵「へ?」

京太郎「いえ。俺はいつも、朝5時くらいに起きて、一時間ほど走ってますから」

京太郎「付き合ってもらえたらなーっていう、ちょっとした期待もありました」

絹恵「あ、そ、そうなんやっ……うー、でも……無理やなぁ、ごめんな」

京太郎「いえいえ、平気です。でも、そうですね……だったら、朝から起こしに行くとか、できればいいんですけど」

絹恵「あ、朝から!? えっ、うちに来るん!?」

京太郎「起きるのが辛いならーってことですよ。まぁ、先輩方の家は知りませんからね」

絹恵「……ま、麻雀部名簿に、載ってたんやないかなぁ」ボソボソ

京太郎「そうなんですか。なら確認して、見ておきますね」

絹恵「ほ、ほんまに起こしにくるん!?」

京太郎「いやー、寝起きの顔を見るのは失礼って学習しましたから。まずはモーニングコールとかにしますよ」

絹恵「せ、せやんな……あ、でもそれは助かるかもしれへん」

京太郎「いつも何時に起きられますか?」

絹恵「支度も考えて、朝練の日やったら6時半くらいかなぁ。ないときは7時な」

京太郎「わかりました」

絹恵「えっ、ほんまにしてくれるん?」

京太郎「ご迷惑でなければ」

絹恵「……じゃあ、お願いしよかな」///

京太郎「うん、ということで絹恵先輩にモーニングコールすることになった」

京太郎「女の子は朝の支度が大変だっていうし、それくらいは協力してあげたい」

京太郎「一応、麻雀部名簿で住所も見たけど、起こしに行くのはは許可が出てからだな」

京太郎「――というか、それで気がついたことが一つある」

京太郎「今月、絹恵先輩と漫先輩が誕生日だ……特に、漫先輩は今週末……」

京太郎「ああああぁっっ! プレゼントとかぜってぇ間に合わねえし!」

京太郎「……当日はケーキ焼かせていただくとして、あれだな……」

京太郎「プレゼントは、後日……買いに行って、それこそお届けしないと……」

京太郎「平日の帰りは店も閉まってるし、買いだしで行ける範囲にも、目ぼしい店なんてないしなぁ」

京太郎「さて、色々考えてるうちに、すっかり遅くなっちまった」

京太郎「なっっ……マジか、牛乳切らしてるし……」

京太郎「コンビニの高いんだけど、仕方ないか……はぁ、ダル……」

京太郎「……やばい、妙な口グセがつきそうだ、注意しよう……」

京太郎「寒い……まったく、こんな時間に出歩くはめになるとは――」

京太郎「……あれ?」

良子「おや……グッドイブニング、京太郎くん。買い物ですか」

京太郎「良子さん……そういえば、しばらくこっちだって言ってましたよね。お仕事ですか?」

良子「ええ、終わったところです。おかげで、料理屋もなく、料理をする気も起きず……まぁ、宿暮らしでは料理などできませんが」

良子「こうしてコンビニで食事を済ませているわけです、お恥ずかしい……」

京太郎「いえ、頑張って仕事しておられるなら当然ですよ。でも――」

良子「はい?」

京太郎「いえ、体力のいる仕事で、そういう食事ばかりでもどうかと思いますし……」

京太郎「日頃お世話になっている、お礼もしたいですから……」

良子「――っっ!」

京太郎「……いや、さすがに家にはまずいか……体面もあるだろうし……」

良子「…………別に、それは……」ボソボソ

京太郎「そうだ、お弁当をお作りしますよ。よければ、明日、お昼にお届け――は、無理か」

京太郎「お泊りの場所を教えていただけたら、明日の朝、お届けしますけど」

良子「そんな……さすがに悪いでしょう。朝に時間を取らせるのもなんですから――」

京太郎「作る手間なら、どうせ自分のも作りますから、変わりませんよ。あ、でもご迷惑なら――」

良子「迷惑などではありません、大歓迎です」キリッ

京太郎「えっ」

良子「あっ……いえ、その……でも、本当によろしいのですか?」

京太郎「ええ。朝も早く起きるほうですから。あ、でも場所があまりに遠い、とかだと困りますけどね」

良子「それは大丈夫です――いや、京太郎くんの家がわかりませんが、ここからだと――」

良子「駅のほうへ向かい、その反対側の大通りにあるホテルですね。名前は――」

京太郎(聞いたことあるぞ、すげー、高いホテルじゃん……え、コンビニのご飯より、ルームサービスのほうがよくないか?)

京太郎(いや、宿代が張るから、そこは節約……とかか? まぁいいや)

良子「大丈夫ですか? 遠いようなら……」

京太郎「いえ、大丈夫です。ここから俺の家までは、10分くらいですから……あ、そうだ」

良子「なんでしょう」

京太郎「よかったら、これからホテルのほうへお邪魔していいですか?」

良子「」

京太郎「朝から届けるにしても、ある程度の道筋は知っておきたいですし――あれ、良子さん?」

良子(こ、こ、ここ、こっ……こここ、これはっ!? いいいい、いえ、落ち着いて、落ち着くのです、良子っ……)

良子(私は焦っているアラフォー連中とは違うのです、落ち着いて……そう、まず彼には春がいる……)

良子「……でも、なんというか……色々な女性に、声をかけているようですし、不安ではありますが……」

京太郎「?」

良子(……道筋を知るだけ、なら部屋に招かなくても……いえ、ですが……せっかく来てもらうなら、もてなしの一つも……)

良子(でも、もし……彼が、その……強硬な態度に出たら……あぁぁっ、いえ、太刀打ちはできますが……)

良子(もし、真剣に、こう……せ、迫られ、たら……////)

良子(拒みきれません、絶対に……い、いえ、拒まないと……春に申し訳が……ああああ……)

京太郎(すげー悩んでる……なんで?)

京太郎「こっちですよね? とりあえず行きましょう、良子さん」

良子「ふぇ? あ、あああああ、あのっ、京太郎くん! なにを――」

京太郎「夜も遅いですから、お送りします。で、場所だけ確認したら帰りますので」

良子「ぁ――あ、そ、そうですか……」

京太郎「お疲れみたいですから、ゆっくり休んでください。明日のお仕事は、何時からですか?」

良子「9時ですね。6時ならすでに起きていますし、7時まではホテルにいる予定です」

京太郎「じゃあ、その時間内にお持ちしますので」

良子「すみません……」

京太郎「良子さんが謝られることじゃありませんよ。俺が、わがままで差し入れをしたいだけなんですから」

京太郎「日頃から俺の面倒を見てくれる師匠のお役に立てるんです、これほど嬉しいことはありませんよ」

良子「――――」キュン

良子「……あ、ありがとう……京太郎くん」

京太郎「どういたしまして。あ、まだお弁当はお届けしてませんけどね」

良子「その気持ちが嬉しいのです。結局、お弁当が間に合わなくても、怒りはしませんよ」

良子「がっかりはするでしょうけれどね、ふふっ」

京太郎「なら、気合入れて作ります……そうだな、松花堂風にしようかな」

良子「思った以上に本格的ですね!?」

京太郎「っと……ここですね、ホテル」

良子「え、冗談じゃないんですか……本当に、そんなすごいのを……」

京太郎「んー、それでもいいですけど。もっと栄養のバランスを考えるので、たぶん、普通のお弁当にするはずです」

良子「そ、そうですか……でも、そのほうが嬉しいですね。京太郎くんらしさがあります」

京太郎「なら、腕を振るいますよ……それじゃ、ゆっくり休んでください。お疲れさまでした」

良子「ええ、お疲れ――」

良子「………………」

良子「……あの、京太郎くん……」

京太郎「はい?」

良子「よ……よかったら、その……上がって、お茶でも飲んでいきませんか……ここから帰るのも、寒いでしょうから……」

良子(ああ……春、すみません……これは、違うんです……そんなつもりではありませんから……)

良子「送っていただいた、お礼です」ニコッ

京太郎「……えと、俺は嬉しいですけど……いいんですか?」

京太郎「なにか問題になるとか……」

良子「……ふふ、これは驚きました。なにか、問題になるようなことをするつもりですか、京太郎は?」

京太郎「えっ――し、しませんよ!」

良子「そうでしょう? なら問題はありませんよ……どうぞ、遠慮なく」

京太郎「……では、お邪魔させていただきます」

良子「あまり広い部屋ではありませんが――どうぞ」

京太郎「っっ……」

京太郎(思った以上に広いな……っていうか高っけー、あ、夜景綺麗だな)

良子「いい眺めでしょう? ですが、こう仕事に追われていては、堪能する余裕もない」フフッ

京太郎「もったいないですね……あ、俺がやりますよ」

良子「私からのお礼なんですよ? 構いませんから、座っていてください……ただのドリップコーヒーですけれど」カチャカチャ

京太郎「ではお言葉に甘えて……」キョロキョロ

良子「そちらの、窓際の椅子でも……なんでしたら、ベッドにでも腰を掛けていてください」

京太郎「!! じゃ、じゃあ椅子を……」

良子「ベッドのほうが便利ですよ? なにかとね」フフッ

京太郎「どど、どういう意味ですかっ」

良子「さて、どういう意味でしょう……さ、どうぞ」

京太郎「あ、どうも……うん、あったまります」

良子「それはよかった……では私も。はぁー、疲れました……」コテン

京太郎「……ああ、便利ってそういう……」

良子「ええ、椅子では寝そべることができませんから……なにか、勘違いをしましたか?」

京太郎「っっ……してませんっ……」

良子「かわいい反応ですね」クスクス

京太郎「勘弁してください……でも意外ですね。そんな風に、ダラけた――といっては失礼ですけど、くつろいでる良子さんの姿は」

良子「ああ、はしたなくて申し訳ない……ヒールにスーツというのは、歩くだけで疲れるもので……」

良子「ですがご安心を。京太郎くんの前以外では、そうそうこんな姿は晒しません」

京太郎「――――」ドキッ

良子「君は私の大切な弟子ですからね……これでも、気を許す相手は選んでいるつもりです」

京太郎「俺だったら、言いふらしたりもしないし、幻滅したりもしないと?」

良子「そう思わせるだけの姿は、麻雀で披露したつもりですが」

京太郎「もちろんです。良子さんはかっこいい、素敵な女性ですから……これからも、ご指導よろしくお願いします、師匠」

良子「師匠……そう呼ばれた人間は、何人いるのですか?」

京太郎「執事の……ハギヨシさんという師匠だけです。熊倉先生や大沼プロは、一度指導いただいただけですから」

良子「あのお二人を越えたのは嬉しいですね……では、そんな可愛い弟子に、一つお願いをしましょうか」

京太郎「なんなりと、マスター」


良子「――マッサージを、していただけませんか?」

京太郎「」

良子「? なにを固まっているんですか、日誌で時々見ましたよ。マッサージが得意だと……」

京太郎「ぁ――あ、ええ、まぁ……得意かはわかりませんが、資格もいただいてます」

良子「グッド。では、そうですね……肩も凝っていますので、お願いしたいんですが……まずは脚を、念入りにお願いできますか?」

京太郎「は、い……えっと、その格好で……でしょうか?」

良子「おっと、失礼……では、これで」スルッ

京太郎「」

良子「上着は脱ぎましたから、しやすくなったでしょう」

京太郎(ブラウスとスカートだけになっとるやないかい!)

良子「ではお願いします……ほら、あまり女性を待たせるものではありませんよ」

京太郎「……わ、わかりました……でも、一つだけ――」

良子「?」

京太郎「不快に思われたら、やめるよう指示をしてください。それだけです」

良子「ええ、わかりました。ではよろしく」コロン


 仮にも健康的な男子高校生を前に、なんて刺激の強い格好をするのだろうか(憤慨)
 控えめに言っても、良子さんの体型は、その――いわゆる巨乳で、しかも安産型だ。
 そのくせウエストの細さときたら、抱くと簡単に手折れてしまいそうなほどだ。

京太郎(いや……なんでも、傭兵だとかイタコだとかいう噂もあるし……鍛えてはいるんだろうな、うん)

 イタコは関係なかったか。
 ともあれ、そんな魅力的な肢体がベッドに横たわり、無防備な背中を晒していた。
 タイトなスカートはピッタリと身体に張りつき、ヒップのラインが浮かび上がっている。
 手には到底収まりきらない、肉感溢れる柔らかそうな膨らみが山なりに弧を描き、スカート生地を張りつめさせていた。

 その膨らみに、三角の――あれ?
 浮かんでいない、なにも、ラインが。ノーパン? そんなわけがない。

京太郎「」

 どんな下着つけてるんですか、良子さん。
 目を疑いそうになるが、これだけくっきりとお尻の形が浮かぶスカートに、下着のラインが浮かばないわけがない。
 緊張に手汗が滲み、眩暈まで感じられた。

 なんとか、成人女性の無意識な誘惑から視線を逸らして、その上を見つめる。
 細いスカートに収まる腰も魅惑的、次――あ、だめだ。

 真っ白なブラウスの向こうには、彼女の染み一つない白肌が収まっている。
 部屋の暖房のせいか、しっとりと汗ばみつつあったのだろう。薄い生地は肌に密着し、それが見える。
 黒色のライン。あと、ホックの膨らみ。

京太郎「ぁ……」

 声が出ない、喉がカラカラになって、張りついているようだ。

良子「京太郎……あまり、待たせないように」

 それは反則だろ。
 普段あまり聞かれないような、拗ねたような響きで、良子さんがマッサージを――こちらの手が触れるのをねだっている。
 ようやくゴクリと唾を飲み下して、覚悟が定まった。

京太郎「……し、失礼します」

 さすが高級ホテル、膝から上がらせてもらったベッドが深くたわみ、ギシィッと重く軋んだ。
 なるほど、ギシアンってのはあながち間違いではないらしい。そんなことはどうでもいい。

 近くで見ると、お尻だけではない。脚も素晴らしく美しい、これぞ美脚だろう。
 スカートの後ろに入るスリット、そこから覗く太ももはムッチリと膨らみ、ストッキングでキツく締めつけられていた。
 そこから膝へ、そして脹脛、足首へ続くラインは、まるで彫像のように芸術的なバランスだ。
 黒ストッキングの足先はキュッと丸まり、微かな緊張を孕んでいるように見える。

 まずはその緊張を解さなくては――。
 そうだ、彼女のマッサージを頼まれたのだから、怖気づいている場合じゃない。


京太郎「脚に触りますね」

良子「ストレートですね……んっ、んぅ……」

 ストッキング越しの太ももは、その生地の感触のためか、サラサラと手に馴染む感覚を伝える。
 あまり強く押し込んではいないが、それでもやはり、硬い凝りを感じさせるくらい、肌と筋肉が張っているのがわかった。
 そこから上下に、足裏、反対に膝の少し上――それと、スカートの裾の、やや上側まで。

良子「ちょっ……ど、どこをっ……んふぅっっ……」

京太郎「少しだけです……太ももの張りを確認するので。ひどければ、こちらも施術しますが」

良子「あっ……すみません、つい……気にしないで、続けてください……」

 女性なのだから、スカートの内側に対して神経質なのは当然だ。
 謝罪の言葉をかけると、気にしないというように、僅かに腰が浮いて、お尻が振られた。
 そういうことはやめてください、危ういので。

 誘惑を跳ねのけ、両脚を指先で揉み、ある程度の硬さは確認した。
 歩き疲れた、その疲労が脹脛を中心に溜まっているように思う。
 それを手の平で押し伸ばし、奥にある血行をスムーズにする、それだけでも相当心地が良いはずだ。

良子「はぁ……んっ……そうです、そこ……ぁっ……んっ、はぁぁ……よく、わかりますね……」

 脚を跨ぐようにして膝立ちになり、片脚を両手で掴んで、ストッキング越しの脚を撫で回す。
 スベスベの感触はやばいくらいに気持ちいいが、それ以上に気になるのは患部の状態だ。
 時折、指での押し込みを加えながら摩擦を強くし、肌を撫でるというよりは捏ねるように――強い刺激も織り交ぜ、彼女の反応を窺う。

良子「はぁぁぁ……あぁ、んっ……はぁっ……あうっ、んっ……くっ、はっ……」

良子「こ、れはぁ……んんぅ、あっ……はぁんっ……な、なか、なかぁっ……くっふぅっ……」

 効果覿面――という言葉が相応しいだろうか。
 硬かった筋肉に指が通るようになり、その奥の肉を蕩かすように、指圧の甘い波を、彼女の身体の深くへ染み込ませてゆく。
 弱い刺激の中に、ランダムで強い刺激を混ぜる。
 そのたびに良子さんの声が愛らしく上擦り、喘ぐような声を響かせながら、時々ビクンッと足先が跳ねて、突き上がったヒップが揺れ躍った。

 そんな反応を余さず見つめながら、脚の硬直と、筋肉の小さな痙攣を指先に確認する。
 刺激に耐えようとする防衛反応、それを感じて今度は、最初よりもさらに優しく、けれど手を広く密着させたマッサージに切り替える。
 撫でるというよりは、優しく掴んで扱く――という感じだろうか。

良子「っっ……ぁはぁっ、んぅ……はぁぁぁ……いい、ですよ、とても……あぁぁっ、くっっ……ふぅぅんっ……あはぁぁ……」

 温泉に浸かったときに、ついもれてしまうような、感極まったため息。
 血行を押し上げるように脹脛を両手で扱く、その上下運動に、良子さんはゆったりと下半身を弛緩させ、足先までリラックスして寝転んでいた。

 落ち着いたのと同時に、脹脛の硬さがずいぶんと解れてきたのを感じる。
 それなら次は、少し上のほうも攻める必要があった。

京太郎「少し……膝裏と、その上を触ります……スカートに触れるかもしれません」

良子「ん……ええ、大丈夫……太ももまでなら、オーケーですよ」

 やんわりと嗜める口調だったが、マッサージの余韻に声が震え、荒い息をこぼしながらの返事は、妙に官能的な響きだった。
 逆に誘ってるようにさえ聞こえる声を、なんとか言葉通り受け止めて、脹脛への刺激を片手だけにする。

良子「あっ……んぅ、あっ……ひぅっっ! あんっ……んっ、な……くぅんっっ!」

 刺激の減ったことで、不服そうな声を響かせた瞬間、良子さんの声は甘く跳ねた。
 片手の親指が膝裏の中心から、肌を圧迫してググッと上側へ這い進んだからだ。

 太ももの半ばまでのラインを往復させつつ、脹脛は鷲掴みにして揉み解し、同じように上下にスライドさせてゆく。
 二箇所への刺激、というのが予想外で、対応が追いつかないのだろう。

良子「あぐっっ、んっっ、ひぅんっっ! はぁっ、あぁぁんっ……」

良子「はぁぁぁ、あっ、そっ……ちっ、ひゃんっ! も、もぉっっ……んくっ、くあぁぁんっ!」


 感覚の異なる二つの波――けれど、どちらも甘く身体を蕩かす刺激を持って、良子さんの身体の奥を緩ませているようだった。
 膝が曲がり、足先が跳ねて、空中をバタバタと蹴ろうとする。
 先ほどまではそこに身体があったけれど、いまは横に移動しているから大丈夫だ。

 暴れ馬のような脚を宥めるように、凝りを正して脚を撫でる。
 そこでようやく膝裏の手を離すと、脱力した脚がクタァッと伸び、ベッドに沈み込んだ。

京太郎「お疲れさまでした。これで、スカートの中に手を入れる必要はなさそうです」

良子「え……もう、終わ――んぅっっ!?」

 彼女が身体を起こそうとしたところで、今度は両手を太ももに――スカートの上から、滑らせる。

良子「ひゃうぅっっ! あっ、んっ……はぁっ、そこぉ……」

京太郎「さっきので太ももの下のほうが解れてますから……これで、服の上からでも大丈夫だと思います」

良子「はぁ、そういう……ことぉ、でしっ……た、かぁっ……あぅんっ……」

 脹脛にしたのと同じ手つきで、太ももを両側から掴み、柔らかく解してゆく。
 二枚の布の上からと思っていても、その感触は紛れもなく女性の脚そのもの。

 少し圧を加えると、微かな弾力を返しながら肉がたわみ、指が沈み込むようだった。
 その奥には少し硬さがある、筋肉の凝りと硬直。
 その部分に指先の点で圧力を押しつけながら、全体を揉み、捏ねるように手を動かし、彼女の疲労を抜き取ってゆく。

良子「あぁぁぁっっっ……あぁっ、す、ご……いっ、んんうっっ! はぁぁぁ、こんなに、いい……のっ、あぁぁっ!」

 脹脛は疲労がわかりやすいが、その反面取りやすい、自分でもある程度は施術できるから。
 一方で本当に疲れている太ももは、自分でのマッサージがやり辛い。
 特に裏側ともなれば、親指の指圧が届かない。

 先ほど少し強めに刺激を与えたことで緩んだ部分を、何度も摩擦して徹底的に緩めた。
 そしていま、刺激を受け入れる準備が整った良子さんの太ももを、しっかりと手の内に包み込む。

良子「はぁぁっ、あぅっ、んんぅぅぅ……んくっっ、くああぁぁっっ!」

 親指を突き立てるように、太ももの中央へ指圧を浴びせる。
 それだけで彼女のお尻が跳ね、ベッドを大きく軋ませて腰が沈み、次に背中がガクガクッと跳ね震えた。

良子「あふぅぅぅっっ……はぁぁぁっ、はぁっ、あぁぁ……なん、そ……それ、こんなっ……くふぅっ……」

 突き立てた指を上下に滑らせ、左右からは四本の指で柔肉を揉みしだき、太ももを優しく蕩けさせる。
 戸惑いに顔を振り返らせる、その顔は真っ赤に上気し、汗が浮かんで、ほつれた髪が張りついていた。

良子「本当に……スカートの、上……」

 呆然とする彼女の視線は、指の這う患部を見つめ、そんな呟きをもらさせる。
 直接触れられている、そんな刺激を感じたのだろうか。

 筋肉の緊張を徹底してほぐしたから、太ももの柔らかさに指が埋まるのだ。
 だから彼女の勘違いは仕方ない、けれど――。

京太郎「ええ、そうですけど……もうやめておきましょうか?」

 それを不快に思われたなら、ここまでだ。そう判断し、問いかける。

良子「い、いえ……すみません、本当に……申し訳、ない……続けてくださいっ……」

 自分の疑念を恥じるように詫び、良子さんが再びベッドに身を沈める。
 耳まで赤くなった顔を枕に埋め、声をもらさぬようにか必至にそれを抱き、プルプルと震えていた。

京太郎「気にしていませんから。それでは――」

 続けますね、と。
 再び太ももを指圧し、両側から揉み扱く。柔らかな感触が手の平に返り、指先には硬い反応が伝わる。
 そこを指がなぞる、その動きに合わせて――スカートに浮かぶ柔らかそうな膨らみが、何度も上下に跳ねて、尻房を躍らせる。

 そのたびに腰が捩れ、タイトなスカートの裾が少しずつ、太もも側へめくれ返っていった。


良子「くっ……んぅっ……んんんぅぅっっ、んーっっ!」

 ブルブルと震えながら、真っ赤な顔を伏せたまま、腕だけを伸ばしてスカートを掴み、懸命に裾を押さえようとしているのがわかる。
 その手をそっと掴んで、一緒にスカートを正してあげる。

良子「~~~~~~~~っっっ////////// あぅっ、んっ、す、みまっ……きゃうっっ! んやっ、ち、ちが、うんっ……あうぅっ!」

良子「ちがっ、違う、のっ……んぁぁっ、はぁんっっ!」

 スカートを押さえようとした、それをマッサージへの不快と取られたかもしれないと、思ったのか。
 それともあられもない声をもらす、いまの自分を恥じたのか。
 真っ赤になって否定を繰り返す彼女の手は、スカートの裾をキュッと掴み、わなないていた。

京太郎「――大丈夫です。俺は、なにも思ってません」

良子「――――っっ! あ、う……そ、れなら……んぅっ、んんぅぅぅ……」

 優しく手を握ってそうささやくと、やがてスカートからも手が離れ、良子さんは元のように枕を抱く。
 だが今度は力が入ってるわけでもない、全身をリラックスさせて、ベッドに身体を預けていた。

 再び太ももへの施術を開始し、柔らかな肉を扱く。
 親指に指圧は弱め、けれども左右からの揉み込みを強くしつつ、筋肉への刺激ではなく血行を促す動きだ。

良子「あっっ……はぁっ、あうぅっっ……んくっ、んんぅぅっ……んひっ……」

 撫でられ、身体の内側を得も知れぬ快感が流れているのか、知らず膝が曲がり、丸まった形よいヒップが浮き上がってくる。
 扱くたびにクイッ、クイッとなにかを求めるようにお尻が揺れ、背後に突きだされる。
 しばらくその動きを続けていた良子さんは、数分ほど脚を扱いた辺りでようやく、その無意識の動きに気づいたように、慌てて腰を押さえつけた。

良子「んぁっっ……くっ、ち、ちがっ……あぁっ、もうっ……なにを、わた……しっ、ひぃんっ!」

 気にしないで、というように親指での刺激を二、三度送り込むと、恥じ入るように強張った身体がガクガクッと揺れ、すぐさま弛緩する。
 だがそれも少しの間、ようやくほぐれてきた太ももへの甘い刺激を続ける間、彼女の――官能的な、はしたない腰の動きは何度も繰り返された。

良子「くっ、ふぅぅっ……あぅうっっっ! んぁっ、ふっ、あぁぁぁ……また、こんなぁ……くっ、うぅぅっっ……」

 抑えよう――と、頭の中では意識しているのだろう。
 けれどマッサージの甘さに少しずつ身体が蕩け、気がつくと彼女の腰は大きく上がり、カクカクと前後に腰が振られていた。
 快感に緩む以上、当然のことなのでこちらは気にしていないのだが、良子さんにとっては顔から火が出るほどの想いらしい。
 枕を抱いて顔を振り、時折振り返る瞳には、うっすらと涙が浮かんでいるようにさえ見えた。

良子「ちがっ……本当に、違うっ……違うんですっ、違うっ……あぐっ、くぁぁんっっ……あぁっ、はぁっ……ぁっ、んっっ……ちが、ふぅっ……」

 否定する、その言葉を肯定するように優しく撫でると、落ち着いてくれる。
 けれどその動きが甘えるような喘ぎを促して、膝が曲がり、腰が持ち上がる。

 そして当然、その動きはスカートをずり上げて、気がつくと裾は太ももの半ば以上まで持ち上がり――。
 真ん中のスリットは、下手をすれば脚の付け根まで覗いてしまう、そんな危うい位置にまで上がっていた。

 そんな状況で申し上げるのは心苦しいが、時々ビクンッと跳ねる腰を撫でつけながら、良子さんの耳元へと顔を近づけた。

京太郎「良子さん――あの、いいですか?」

良子「っっ!? あ、あぁぁ……はい、なん……でしょう、か……」

 赤い顔を背けてそう返す、彼女の羞恥を慰めるように優しく答える。

京太郎「反対の脚に移りますけど、その……スカート、どうしましょうか……」

良子「ぁ……そ、れは……っ……」

 脱ぐか、そのままか――あるいはタオルを敷く、という選択肢。
 ただ、タオルを乗せると生地の厚さもあって、スーツ越しではやり辛くもなる。
 何度もスカートを直すというのも、彼女の疲労を促進するし、こちらの施術も止まる。
 もちろん、それでも構うことはない。ただ長引くだけだから。

良子「あ、の……よろし、ければ……」


 荒い息を吐き、その甘さを漂わせながら、熱っぽく――上擦った、掠れた声が告げる。

良子「その、ままで……いいですっ……構いませんから……続けてください……」

京太郎「心得ました」

 触れない部分、けれど視線に晒してはいけない部分にだけタオルを乗せて、施術してゆく。
 その動きに驚いたのか、彼女が小さく腰をわななかせ、直後にポツリと――。

良子「すみません……ありがとう、京太郎くん……」

 恥じ入るようにお礼を告げた。
 だがその声はすぐさま、脚への施術によって甘く上擦ってゆく。

良子「んくっ……あぁっ、またぁぁぁ……だ、めぇ……いけ、ま……せっ……んっくぅぅぅ……」

 脹脛の強張りが薄れるたび、先ほどまで揉み解していた、黒ストッキングを穿いた脚が艶めかしく捩られる。
 上に乗せたタオルは、あっさりとずり落ちていた。
 めくれたスカートは皺だらけになりながら、ほとんどお尻じゃないかというほどの太ももの付け根を晒し、さらに上がってしまう。

 その状態でも、彼女が止めようとはしない。
 いいのかと思いながら、膝裏から太ももへの刺激を経て――再度、もう片方の太ももを両手で揉みしだく。

良子「あぁっっ、あ゙っっ……あ゙あ゙ああぁぁあぁっっっ……んふっ、ふぅぅぅぅっっ! いっ、はぁぁっっっ……っっ!」

 片方で味わっている間、それを味わえぬ反対の脚へ溜まっていた快楽への疼きとフラストレーションが、指圧によって解されてゆく。
 その甘い波を太ももに、お尻に、そして腰から上――全身へと広げ、良子さんは心からそれを感じ入っているようだ。
 背中は大きく反り返り、あごが跳ね上がって、喉奥からは叫ぶような嬌声が響き渡る。

良子「んふぅぅっっ、あっ、うっ……くっふぅぅぅっ……うぅっ、んんっっ!」

 すぐさま恥じ入り、もう枕ではなく、口を両手で覆って声を押さえようとする。
 いまさら、それは普通の反応ですと言っても、彼女はそれを受け入れないかもしれない。
 だからあえてそのままにし、それよりは施術に集中する。

良子「ふっぐぅっぅぅっ……んぐっ、はっ……ふぁぁぁぁっ……なん、れぇ……はぁぁぁ、こ、れぇぇ……いい、のぉ……あぁぁぁ……」

 めくれ上がったせいで、かなり触りやすくなってしまった太ももに、ストッキングの上から、ほぼ直接の状態で触れる。
 脈打つような熱さを感じながら、柔らかな肌を揉み捏ねると、先ほどと同じくお尻が上がる。

良子「もっ、おぉぉっ……はぁぁっ、だめっ、だめぇぇっ……ごめんなさい、きょうっ、た……ろうっ、く……んぁぁぁっっ!」

 スカートが持ち上がるのがわかったのだろう、けれどそれを押さえることもできない。
 はしたない姿、はしたない動きを恥じて、良子さんは謝罪を口にし、声を震わせて嗚咽をもらす。

京太郎「平気ですけど……どうしましょう、やめましょうか」

良子「だ、めぇぇぇっっ……あぁぁっ、つづ、けてっ……続けてぇ、続けて、くださいぃぃ……んぁっ、くあぁぁぁんっっ!」

 申し訳程度にタオルをかけ――いや、こっちのほうがいいか。
 自分の顔に乗せ、視界を狭めながら、太ももだけを見つめて揉みしだく。
 タオルに染みた彼女の甘い体臭が鼻腔をくすぐり、僅かな汗の湿り気が肌に触れた。

 本能を揺さぶられながらも、それを振り払って、なんとか太ももへの施術を終わらせる。

良子「はあぁぁぁぁ……んっ、ふぅぅぅ……あぅっ、はぁっ……あっ、んぅぅっ……」

 いまはそこまで強くない、撫でるだけの簡単なマッサージで、マッサージによる負荷を和らげているだけだ。
 言ってしまえば、脚を撫でているだけ――その刺激にさえも、彼女の腰はカクカクと小さく動いて、ベッドに擦りつけられていた。


京太郎「――良子さん」

 その耳元にささやくと、こちらがいることさえ失念していたように、ビクッと肩を跳ねさせて、彼女の火照った顔が振り向いた。

良子「ぁ――きょう、た……ろう……」

 ポーッと、焦点の定まっていたなかった、熱に浮かされた瞳が虚空を彷徨い――やがて、こちらを見つめた瞬間。

良子「ん……あっ、きょっ……京太郎っ、くっ……あっ、うっ……な……なんで、しょうか……っ/////」

 ボシュゥッと真っ赤に染まった顔と、濡れた瞳を僅かに俯かせて。
 モジモジと指を絡ませながら、彼女が小さな声で問い返した。
 聞いていいものか、それを悩みつつも、彼女自身が触れたことを口にする。

京太郎「よろしければ、肩も――腰と背中も、していいですか?」

良子「………………そ……れ、は……」

 長い沈黙が支配する、けれども答えは促さず、じっと待つ――そして、数分後。

良子「……………………ん…………はい…………」

 やがてコクリと小さく頷き、脱力したように彼女は身体をベッドに横たえ、先ほどのようにうつ伏せた。

 許可が出たならしたほうがいい、そもそも下半身だけよりは、全身をしたほうがバランスも保たれ、疲労も溜まりにくくなる。
 とはいえ――先ほどの動きを見ていては、やはりそうしてよいか悩むものだ。

京太郎(――まぁ、仕方ないか)

 浮いてこないことを祈りつつ、お尻の上に跨るように膝立ちになって、腰に手を添える。

良子「んぃっっっ……ひやっ、あぅっ……んっ、あんっ……」

 浮いたお尻がフニュッと柔らかくたわみ、股間を下から叩き上げた。

京太郎「」

良子「あっっ……くふぅっ、ん……」

 意識を切り離し、無我の境地に達しなければ死ぬところだった。社会的に。
 手だけを背筋に這わして施術、その手の動きは肩のラインにも届かせる。
 想像していた通り、かなりの硬さ。

良子「はぁぅっ……あ、んぅっ……」

 思ったよりも時間がかかりそうだが、それでも、疲労を残したままにはしておけない。


 このあと滅茶苦茶マッサージした。


~良子の場合、終了


~おまけ、京太郎帰宅後

良子「あぁ……あぁぁぁっっ、私はっ……なんて、ことを……こんなっ……」

良子「すみません、春……でも、私は……もう、彼の感触を……知ってしまいました……」

良子「あんなの、忘れられるわけ……ない、です……また、して……もらわ、ないと……んっ……」

【1月第一週水曜】
 昨日の差し入れが、とても気に入っていただけたので、今日も頑張ってみた。
 いいリンゴがあったので、パイに仕上げてみる。
 あ、昨日のと一緒に写真をどうぞ。

 ただ、パイ生地は口に運ぶと齧ったときに、剥がれて落ちるのがいい……いや、難点だ。
 まさか乗るなんて……じゃなく、服を汚してしまうかもしれないから、なにか手を考えないと。

 そんなことを考えていると、その先輩と帰りにお会いする。
 暗いので途中までながらお送りし、モーニングコールをお約束した。
 忘れないようにしよう。

 夜中にコンビニへ、牛乳を買いに。こちらでお仕事中のプロがいらっしゃった。
 仕事帰りということだが、こんな夜中まで……と、少し心配になる。
 お送りして、明日はお弁当をご用意させていただく約束をした。腕によりをかけよう。

 ということで、今日はこの辺で締めておきます。明日の仕込みをしつつ、明日も早起きだ。

…………

『……アップルパイのことを考えとって、なんでその先輩になるん? 私ってアップルパイっぽい?』

 あっ……その、パイっぽいです、はい

『京ちゃん、私にもモーニングコールして』
『ずるい! 私も、京ちゃん!』
『私も、その……最近、寝起きが……悪くて……』
『朝から京太郎の声、聞きたい……』
『私は寝る前がいいな……』
『私もそっちかな~』

 全員とかやめて。というか、何時に起きるか知りませんし……。

『えーと……私以外にもせなあかんのやったら、無理せんでええよ?』

 お約束したんですから、絹恵先輩にします。

『え、そんでほんま、誰のことなん?』
『聞いたって名前書けるわけないのよー』
『ほっほう、パイか……つまり、二年のどっちかやな!』
『なんですのん、その発想……先輩、オヤジ入ってますよ』
『あほ言いなや、うちはれっきとした乙女やで』

 しかも鋭いし……先輩の冗談と思っててください、お二人とも。お願いします。

『……お弁当も、いいのですが……その、よ、よければ……朝から、あれを……お願いできましたら』////
『!? どういうこと!』
『お茶淹れてってことじゃないかな』
『そうですね。ですが紛らわしい発言はやめておいたほうがいいですよ、彼のためにもなりませんから』
『お茶……そうですね、持ってきていただいて帰らせるのも悪いです。モーニングティーをご一緒しましょう』
『……なーんか、反応おかしくねぇ? ま、知らんけど……ちょいと話聞きたいねぃ』

 さすがに時間がないからなぁ……でもお疲れなら、肩くらい揉ませていただこう。

『あの~、北大阪に来られる用事はありませんかー?』
『芦屋のほうにも来てほしいのよもー』
『後輩たちが毎日、日誌を見ては、ため息ばかりついて……』
『いっそ広島まで……』
『どうして愛知までこないの』
『そこまで来るなら静岡とかさぁ……』
『千葉……』

 おお、候補に上がってない高校まで……なんというか、嬉しい限りだ。

『な、奈良の強豪校なんかもいいんじゃないか?』
『阿知賀かな?』
『昨年の奈良県一位がいる強豪だ!』
『北海道や福岡もまだなんだ、無茶を言うのはよくないぞ』
『……さりげなく、東東京をスルーしますね』
『私たちは待っているのに……三年の先輩だけがそういうことを言っては困ります』
『先日まで東京にいたばかりだろう、彼は』
『東と西では違いまスヨ!』
『競争率高すぎっとやろ……もう私ん代は諦めとう』
『私も……2月に来ていただくのは、申し訳ないですし』
『私は諦めてないけどね!』
『綺麗な顔立ちだし、衣装の作り甲斐ありそ~』

 ん? いや、まさかとは思うけど……女装とかしないからな? マリアンデールじゃないんだから……。

――――――――


~清澄

「メールしとこう! えーっと……あ・さ・し・ち・じ・に……」
「……でも、無理強いするようですし……ご迷惑かもしれませんよね、いまさらですけれど……」
「やっぱりやめよう!」
「あっちの登校時間もわからないしねー。まぁ、派遣先の特権ってことでいいんじゃない?」
「うちはいつになるんだじぇ……」
「気長に待つんがええじゃろ」


~白糸台

「私もお願いしたい」
「お前、朝は強いだろ……むしろあっちだな」
「淡ちゃんはもう、寝顔も見られてるし、寝ぼけた声聞かれたって平気だよね」
「そんなのやだよ!///////////」
「あ、まんざらでもなさそう」
「そんなことない!」
「あとお弁当もお願いしたい」
「それこそ無理だろ……でも、あのお弁当は……おいしかったな」


~永水

「朝から電話してみて……だめかな、迷惑かもしれないし……」
「また乙女めいたことやってますよー、はるるが」
「春ちゃんは乙女ですから!」
「まぁ私たちは、境内の掃除もありますし、朝は強いほうですよね」
「慣れの部分は大きいわよねぇ」
「あの、私は……」
「ひ、姫様はいいんじゃないでしょうかー」
「そうですか……」シュン
「……立ったまま寝てること、あるものねぇ」
「その前は、パジャマのままいらしてましたし……」

「で、でも一応、かかってきた場合のシミュレーションくらい……お、おは……よ……うん、掃除中……///」

「……京太郎くん、早く帰ってこないかしらねぇ……」
「はるるのこういうところ、見せてあげたいんですけど」


~宮守

「モーニングコールかぁ……」チラッ
「されてみたかったよー」チラッ
「英)朝から、あのセクシーな声で起こされるなんて……いいわね」チラッ
「基本的に寒さにも強いからねぇ、私たち」チラッ
「……ごめん。一人だけ、電話どころか起こしてもらって……時々、一緒に寝たりして」
「参考までに聞くけど――どんな感じ?」
「んー、優しく抱いてくれる……あとあったかい、抱き締めて寝ると」
「そっちじゃなく!」
「起こし方だよー」
「ああ……それも、優しい……でも時々、シャワー中に入ってきたりもするから」
「ズルイ!」
「その反応はおかしい」
「……確認だけど、バスルームにじゃないよね? シャワー浴びてるうちに、部屋に入ってるってことよね?」
「残念ながらね」
「ざ、残念じゃないよー、それでいいんだよー///」
「イッショニ、シャワー……イイナ」
「あーもう! 海でもプールでも行って、そのときにしなさい!」


~阿知賀

「ふふ~」ニコニコ
「宥姉ごきげんだね」
「メンバーで、朝から起こしてもらったの、宥さんくらいだからね」
「でも合宿のとき……寝坊した私たちを起こしに、京太郎が来たって……」
「え゙っ……き、聞いてないよ!」
「私も誠子から聞いただけだから」
「ぶみぃぃぃぃっ! ね、寝顔、みみ……見られぇ……」
「大丈夫だいじょうぶ、私はいつもだったよ~」
「それもどうなの……」
「シズは朝早いわよね」
「お父さんたち早いし、私も山まで走りに行くからね!」
「逆に憧は遅……望さんは早起きなのに」
「そうだぞー、ちょっとは私を見習いなさいよー」
「!? お姉ちゃんっ、ミーティング中に入ってこないで!」
「なーにがミーティングか、日誌見てダベってるだけじゃない。いーれーてーよー」
「ハルエと遊んでればいいでしょ!」
「……あの、私まだ監督だからね? れ、レジェンドなんだよ?」


~姫松

「ほんで、誰なんやー? モーニングコール頼んだん」
「……私」
「あ、絹ちゃんか。そういえば、朝弱かったなぁ」
「ちゃ、ちゃうんです! その、頼んだいうか……流れで、そんな感じに……」
「ええやん、隠そうとせんでも」
「そうなのよー。朝から起こしに来てもらうー、いうことでもないんやし」
「………………」カァッ
「」
「えっ」
「き、絹……?」
「めげるわ……」
「そそ、それこそちゃうねん、ほんまやで! それは恥ずかしいから言うて! それやったら電話でーっていうことに――」
「めげるわ……」
「恭子! 傷は浅い、しっかりせぇ!」
「うぅ、やっぱり絹恵ちゃんはしっかりしてるもんなぁ……同じ二年で、主将やのに私は……」
「漫ちゃんも、色々と希望はあるのよー。むしろ三年が、ダメージ大きいのよー」
「わあぁぁぁぁっっ! だからちゃうねんて、誤解っ、誤解やねんっっ!」


~後日、某居酒屋

「偶然です」
「……まぁ、近くに行くようにはしてたからね。そうかもね」
「お弁当!」
「まぁ、その……夜遅かったですし、コンビニで食事を買っていたのを、見られまして」
「……頼んだってーの?」
「まさか。もちろん、申し出あってのことです……食事に誘ってくれるのでもよかったのですが」
「は、はやりだってお家に招くのは自重したんだぞ☆」
「はやりさん、アイドルだからねぃ……」
「その通りです。立場がある方は仕方ないかと……日本代表のエースや、永世七冠など」
「うぐっ……」
「七冠関係ないよね!?」
「私セーフ!」
「――というか、従妹ちゃんのことはもういいのかなっ☆」
「いえ……ですが、その……ちょっと、色々と……////」
「え、なにその反応……」
「」
「ふ、不潔!」
「……マジで? い、いやー、そりゃよくねーっしょ、良子……」
「誤解があるかと思いますが……しかし、概ねは変わりませんね……はぁ……////」
「いやああぁぁぁぁっっっ!? きょ、京太郎くんがぁぁっっ!」
「はやりちゃん、落ち着いて!」
「あーっ、もうなんなの! やっぱ胸かいっ、つまんねぇ! 姉ちゃん、ヒレ酒……やっぱ白子酒!」
「ホットウーロン!」

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最終更新:2026年01月17日 00:04