~1月第一週木曜
京太郎「――さて、今朝はやることが二つ」
京太郎「一つは、絹恵先輩へのモーニングコール。ま、こっちはしばらく継続だけどな」
京太郎「で、もう一つがお弁当だ。良子さんに、おいしく栄養のあるものを食べてもらわないと」
京太郎「……松花堂風じゃないにしても、見た目のバランスは保って……」
京太郎「煮汁が溢れるなんて、もってのほかだ」
京太郎「もちろん傷まない料理を、そして冷めてもおいしいように……」
京太郎「……おにぎり……俵型でいくつか、にぎって並べる形で――」
京太郎「よし、こんなもんか!」
~良子のホテル
京太郎「――朝からすみません、良子さん」
良子「……昨夜、あんなことをして、謝るのはそこですか……」ボソッ
京太郎「はい?」
良子「!! い、いえ! こちらこそ、朝から手間をかけさせてしまって、申し訳なかったですね」
京太郎「とんでもありません。では、忘れないうちに――どうぞ、お弁当です」
良子「……ありがとう」
良子「そうですね……今日はテレビも入る仕事なのですが、これはあなたに作ってもらったと紹介して構いませんか?」
京太郎「えっ」
京太郎「えっと……そういうのは、いいんですか?」
良子「マスコミ関係者とも知り合いでしょう? それに、日誌を呼んでいるマスコミは大勢います。なにより、私たちは各所でそういったことを説明しています」
京太郎「どういったことを!?」
良子「あなたと懇意だということ。それはともかく――子供が気にすることではありませんよ。あなたが困らないなら、堂々と紹介し、味の宣伝をしておきましょう」
京太郎「それは……少し、照れますね」
良子「実際おいしいでしょうから、ノープロブレム。さて、京太郎くんは、もう朝食を?」
京太郎「ええ、来る前に。お弁当の残った材料で作ったありあわせですけど」
良子「育ちざかりの高校生男子です、まだ食べられるでしょう? 私はこれからなので、少し付き合ってください」
京太郎「もちろん、喜んで」
良子「……嬉しいですか?」
京太郎「はい!」
良子「……よかった」ホッ
良子「では行きましょう。あちらのレストランです」
良子(……終わったら、食後の……を、し、しては……もらえないでしょうか……)
良子(っっ! いえ、無理を言ってはよくない……彼を遅刻させてもまずい、私も仕事の前に……)
良子(あんな……顔、してはいけないでしょうし……)////
京太郎「良子さん?」
良子「!! あ、は、はい!」
京太郎「行かないんですか?」
良子(……京太郎くんの、指が……レストランを、指している……私に、触れた指……)ポー
良子(~~~~~~~~っっ!!)ブンブンッ
良子「……い、行きましょう」
良子(……なんてことでしょう、私は……まるで、春のことを考えなくなっている……)
良子(恐ろしい少年ですね、京太郎くんは……)
京太郎「?」
良子「いいえ、なんでも……さ、こっちですよ」キュッ
京太郎「!? ちょ、ちょっと、手はさすがに――」
良子「……春は私にとって妹のようなもの。その相手の君は弟のようなもの。弟の手を取って、なにが悪いのです?」
京太郎「や、その、別に、悪くは……って、相手ってなんですか!」
良子「いずれは……ということです」
京太郎「春だって困りますよ」
良子「はぁ……やれやれですね、本当に」
良子(やれやれ、なのは私ですか……いい年をして、従妹を言い訳にアプローチとは……私もすっかり、独り身をこじらせていたようです)
良子「さ、着きましたよ……たくさん、食べてくださいね」ニコッ
良子「男性の健啖な姿は好きですから」
京太郎(ほんとは結構食べてきたんだけど……一流ホテルのレストランだ、味の研究にもなるしな)
京太郎「……いただきます」
良子「奢りませんけどね」
京太郎「えっ」
良子「冗談です。私が持ちますので、遠慮なくどうぞ」ニコニコ
京太郎「……すげー、うまかった……なんだあれ」
良子「お気に召したようでよかった」
京太郎「っと……すみません、なんか思いっきりご馳走していただいて」
良子「気にしなくていいです、お弁当をいただいたのですから」
京太郎「そういっていただけると……では、俺はこれで」
良子「もう少し時間はありますよ?」ニコニコ
京太郎「さすがに遅刻しますよ……それに、少し用事がありまして」
良子「そうですか、残念……」
京太郎「今日のお仕事は何時に?」
良子「お昼をいただいて、そのあと一局――16時には終わるかと思いますが」
京太郎「……あー、でもお疲れか……いえ、わかりました。そのあとはホテルに?」
良子「どうでしょう。一応、その予定ですが」
京太郎「では、こちらも部活が終わってから、伺わせていただきますね」
良子「!? え、えっと……それは、また……マ……-ジ、を……」ボソボソ
京太郎「お弁当箱、回収させていただきますから。お持ちいただくのもご迷惑でしょうし」
良子「――あ……あ、ああ、そっちですか……ですが、そうですね……」
京太郎「?」
良子「……うん、そうですね……わかりました。では、お願いします」
京太郎「はい」
良子「一応確認しますが、学校が終われば放課後に部活動。それが終わる、少なくとも19時くらいまでは、学校にいますね?」
京太郎「はい、そのつもりです……あ、早く伺った方がいいですか?」
良子「いえいえ、できるだけ遅いと助かります。では、こちらもそのつもりで動いておきますので」
京太郎「はぁ……では、よろしくお願いします」
良子「了解です。では、いってらっしゃい。一日、頑張るんですよ?」
京太郎「良子さんも。それでは、失礼します」
良子「……そういえば、お弁当箱は洗って返すべきなのでしょうか……」
良子「まぁ、返す段になってから聞けばいいでしょう……幸い、洗う場所はあるでしょうからね」
良子「姫松高校には、ね」クスクス
京太郎「……さて、絹恵先輩に電話しないとな」
京太郎「…………もしもし、おはようございます」
絹恵『……んー……あー……だぇ、やぁ……?』
京太郎「絹恵先輩の後輩の者です。朝ですよ、そろそろ起きたほうがよいかと」
絹恵『んぅー……ふぁ……んみゅ……もうちょい、寝かせてーな……』
京太郎「まぁ、朝練ないですからいいですけど……それならもう少しだけどうぞ」
絹恵『ふぁぁぁ……おおきにぃ……ほな、おやしゅみぃ……』
京太郎「これから起こしに伺いますから、30分後くらいに着きます」
絹恵『んー……わかった、れぇ……えっ!?』
京太郎「では、またあとで」
絹恵『ちょっっ……ちょお待ちぃぃぃっっ! えっと、ごめんなっ、京太郎くんか!?』
京太郎「はい、俺です。お目覚めですか」
絹恵『起きたわ! えっ、ま、待ちぃや! ほんまに、その……うううう、うちに、来るんか?』
京太郎「先輩が起きなければ、ですけど……起きられたようですし、大丈夫じゃないですかね」
絹恵『――――――』
絹恵『……あ、あかんっ……』
京太郎「えっと、それは起こしに来いってことで――」
絹恵『ちゃ、ちゃうって! えと、お……起こしに、来んでもええってことやで……もう、起きたからな』
京太郎「ならよかったです。それじゃ、また学校で」
絹恵『うん……あ、あの!』
京太郎「はい?」
絹恵『その……おおきにな、モーニングコール……嬉しかったで』
京太郎「お役に立てて、なによりでした」
絹恵『ほ、ほなな』
絹恵「ああぁぁぁぁぁぁ……うちは、ヘタレや……せっかく、来てくれる言うてんのに……あぁぁぁぁっ!」
洋榎「おう? どないしたー、絹ー? もう朝やでー」ヒョイッ
絹恵「わ、わかってる……」
雅枝「二人ともはよ――なんや、起きとるやん。はよ下りてきぃや。もうおとんは出かけてもーたで」
洋榎「高校生にもなった子ぉに見送られたかて、おとんも嬉しないやろ」
雅枝「……あんたはまだまだやなぁ」
洋榎「?」
雅枝「たまには見送ったりや。絹、起きてるんやったらはよ着替え」
絹恵「……うん」
雅枝「……ほぉー、絹ももう、そういう年か」
絹恵「えっ!?」
洋榎「なんや、どうした?」
雅枝「顔、にやけとるでー」
絹恵「~~~~~~~~っっっ////////」
洋榎「????」
雅枝「ヒロも、はよええ男見つけーやー」
洋榎「はぁっ!? なな、なんでそんな話になんねん、いきなり! わっけわからんわ!」
絹恵「そういうんとちゃうから!」
雅枝「はいはい。なんでもええからはよしー。こっちかて急いでるんやからなー」
※この後、学校でモーニングコールの話をすることに。日誌参照
~木曜、昼
京太郎「そういやさ、教室ってテレビあるじゃん」
モブ子「あー、あんねー」
モブ田「そうそう、あれ実は昼に使っていいんだぜ」
京太郎「マジで!?」
モブ田「おう、どれ……ちょっとつけてみるか」
『――さて、午前の対局が済み、選手たちも食事に入ったようです』
『まぁ、選手といってもプロは数名、残りはタレントたちですが――』
『おっと、どうやら外食ではなく、こちらに残って食事をされる方もいるようです』
『何人か交え、お話をお伺いしましょう』
『戒能プロは、お弁当ですか……こちらは、ホテルで?』
京太郎「あ、良子さん……なるほど、これが番組だったのか」
モブ田「みたいだな。平日昼に対局って、誰か見てんのか?」
モブ子「タレントとか、主婦層に麻雀教える企画みたいよー」
京太郎「なるほど」
良子『いえいえ』
『ほほう、ではご自身で? 実においしそうです』
『麻雀にお強く、容姿端麗……さらには、お料理まで得意とは。これは世の男性が、放っておかないでしょう』
良子『はは、そうならよかったのですか。これは私の手作りではありません。弟子の少年が、作ってくれたのです』
良子『とてもおいしいですよ、京太郎くん。これで午後も、頑張れそうです』ニコッ
『……いまの、放送してオッケーですか? あ、オッケーですか……えー、上の許可も下りましたので、詳しくお話を』
良子『知っている方もいらっしゃるかと思いますが、少し有名な高校生の麻雀部員……いえ、執事でしょうか……』
良子『彼にはたまに指導しているのですが、私のことを師匠と慕ってくれていまして……こうして、お弁当も用意してくれたのです』
京太郎「」
モブ子「ヒューッ! こいつはクールだぜ!」
モブ田「息してっかー? あ、一応放送は大阪だけだから。ま、近畿圏ならだいたい見られると思うけど」
晴絵「あ、戒能プロ……ふーん、京太郎くんの手作りかー」
憧「なっ……なななな、なんですって!」
穏乃「おいしそう……」
玄「わっ、涎すごいよ、穏乃ちゃん!」
灼「一方ハルちゃんは、コンビニのおにぎりなのだった」
宥「シッ……だめだよ、灼ちゃん」
晴絵「あんたらてきびしーよ」
京太郎「あわわわわ……こ、これ放送していいのか?」
モブ子「いんじゃね? プロが自分で言ってんだし」
モブ田「マネージャーとか事務所とか、チームとかにも相談してるだろうし」
モブ子「テレビもオッケーだしてるし」
モブ田「そもそもお前がプロ数人と仲良いことくらい、業界の常識らしいし」
京太郎「なんでだよ!」
モブ田「東京のローカルで料理番組しただろ」
京太郎「あっ」
モブ子「奈良で瑞原プロ、戒能プロと麻雀したの、放送されたしね。あれ、全国だよ?」
京太郎「」
モブ田「というわけで、問題ナッシング」
『なるほどー。おっと、視聴者からのメールで、お弁当の献立と、作り方を知りたいとのことですが』
良子『――残念です、彼が出演していれば、解説してもらえたでしょう』
『続けてのメール、娘が日誌を見ている彼のことなら、ぜひ出演してもらいたい、目の保養になる――とのことですが』
良子『それは本人にオファーを。まぁ、目立つことが好きではないはずですから、色よい返事は聞けないでしょうね』
モブ子「――とのことですが」
京太郎「アナウンサーのマネすんな……出ねーよ」
モブ田「もったいねー」
京太郎「俺がそんな勝手したら、どんだけの人に迷惑かかると思ってんだ」
モブ子「ここでメールを一通、清澄高校、竹井久さんからです」
京太郎「!?」
モブ子「面白そうだから、チャンスがあればやってみてもいいわよ。ちゃんと清澄の宣伝はしてね」
京太郎「なんでテレビ見れてんの!?」
モブ田「続いて、松実館からのメールです。姉と妹、どちらでもいいんじゃよ? とのことで――」
京太郎「なに言ってんだ旦那さああああああああああんっ!」
京太郎「板場からじゃねーのかよ、しかも!」
『――はい、ありがとうございました』
良子『ごちそうさま。京太郎くん、またお願いしますよ?』ニコニコ
京太郎「ドッと疲れた……」
モブ子「ドッwwwww」
モブ田「ドッwwwww」
京太郎「うぜぇ……」
モブ子「まーまー、気分転換でもしてきなよ」
モブ田「そうそう、俺らが付き合ってやってもいいけどな」
モブ子「ふぇ!? つつ、付き合うって、そんな////」
モブ田「そういう意味じゃねーよ。ってか俺らって言ってんだろ、俺が付き合うわけねーだろ」
モブ子「知ってた。まぁ京×田もありじゃね?」
モブ田「ねーよ」
京太郎「ねーな」
モブ子「ノーマルで安心した」
京太郎「安心?」
モブ子「な、なんでもねーし///」
京太郎「――まぁ、昼休みもまだ少しあるし、なんかするか」
京太郎「……あれ見てたの、何人いるんだ……まぁ、あんま気にしないほうがいいんだろうけど」
漫「そうやで、京太郎くん。まぁ目立つんは悪いことちゃうで、ここでは特にな」
京太郎「えっ、漫先輩……お疲れさまです」
漫「お疲れ。へへー、まぁかくいう私も見てたんやけどな……おいしそうなお弁当やったなぁ」
京太郎「恐縮です」
漫「それに絹恵ちゃんにはモーニングコールやろ? 私にはなんかないん?」
京太郎「!? な、なんでそれを……」
漫「ふっふっふ、私らはなんでも知ってるんやで……」
漫(まぁ教えてもろただけやけどな)
京太郎「……では、こちらをどうぞ。屋上に来る前にちょっと焼いてきた、フィナンシェです」
漫「」
京太郎「お茶淹れますね、どうぞ」
漫「!?」
京太郎「フィナンシェは、お嫌いでしたか?」
漫「う、ううん、そんなことあらへんよ……あ、おいしい」
京太郎「よかったです」
漫「んー、紅茶もあったまるなぁ……なぁ、これってマドレーヌとは違うん?」
京太郎「マドレーヌは小麦粉とベーキングパウダーが主ですけど、こっちはアーモンドパウダーが主です」
京太郎「あとは、形が違うってのもありますね。こっちは金塊の形を模してるとか……そもそも、発案者が違うんです」
漫「はぁ、これ金塊なんや……あっちは貝やっけ」
京太郎「そうですねー。漫先輩はどちらがお好みですか?」
漫「んー、そやなぁ……」ハムッ モグモグ
漫「……どっちも好きやなぁ」ゴクッ
京太郎「では、またお作りしてもいいですか?」
漫「大歓迎やで」
京太郎「では――誕生日には、ご期待ください」
漫「!!!」
京太郎「ケーキだけじゃなく、焼き菓子もご用意しますから」
漫「ん……楽しみに、してるわ」
京太郎「はい」ニコッ
京太郎(プレゼントが後日になっちゃう分、サービスしないとな!)グッ
~木曜、放課後
京太郎「さーて、今日も部活だー!」
モブ田「がんばれよー」
京太郎「お前もだるるぉっ!?」
モブ田「俺は男子部、お前は女子部、オッケー?」
京太郎「ああ、そういうことか」
モブ子「私が男子部に行ってやろうかー? んー?」
モブ田「ノーセンキュー」
モブ子「」
京太郎「やれやれ……ん?」
『1-Eの須賀京太郎くん、保護者の方が来ています。職員室へ』
京太郎「!?」
京太郎「……えー? なんでだ……おふくろがわざわざ、大阪まで?」
京太郎「失礼しまーす」
良子「どうも、京太郎くん」
京太郎「」
良子「お弁当、とてもおいしかったですよ、ありがとう。それとこちら、洗ってお返ししましょうか?」
京太郎「――ぁ――あ、え……いえ、大丈夫です……」
良子「ではこのまま……お箸、舐めないでくださいね?」
京太郎「しませんよ! っていうか、あの……なんでこちらに?」
良子「お弁当箱をお返しに。何度も足を運んでいただくのも、申し訳ないですから」
京太郎「……ありがとうございます」
良子「あとは京太郎くんに会いに」
京太郎「へっ」
良子「さて、せっかくですから麻雀部に行きましょうか。練習にお付き合いしますよ」
京太郎「そんな、疲れてらっしゃるのに……お昼休憩でも、テレビに映っていたんですから」
良子「おや、見ていましたか? 照れますね」////
良子「ですが、疲れてなど――いいえ、疲れなど、京太郎くんと麻雀をすれば、すぐに癒えますよ」
京太郎「ああ、そうですね。俺も掃除とか雑用とかしてると、元気になってきますし」
良子「……そういうのとは違います」
京太郎「同じだと思うんだけどなぁ……」ウーン
良子「違いますから……まぁ、ともかく行きましょう。先生方、ありがとうございました」
「いえいえ、戒能プロにお越しいただくなんて光栄ですよ」
「全員分のサインまでいただいて」
京太郎「なにやっとんねん、教師陣……」
良子「私からのサービスですよ。弟子がお世話になっているのですから」
京太郎「……弟子って名乗って、いいんですか?」
良子「もちろん。私の打ち筋を、覚えてくれているのでしょう? たとえ、複数人のものを真似ていても……私の技術も使ってくれるなら、あなたは弟子です」
京太郎「ありがとうございます。では……麻雀部にご案内します、師匠」
~部活
京太郎「そういうわけで、ご指導いただいてもよろしいですか?」
郁乃「かめへんよ~。よろしくですー、戒能プロ」
良子「二度目……いえ、三度目ですね。改まった挨拶もいらないでしょう。みなさん、よろしく」
漫「……お弁当箱返しにきはったんやろなぁ」
絹恵「たぶんなぁ」
洋榎「そうや思うで」
恭子「マメですね」
由子「なのよー」
京太郎「読まれてますね」
良子「グッド、さすが姫松高校です」
京太郎「さて、言ってる間に部活が始まったか」
京太郎「んー、人数も増えたし、ちょっと早いけど仕込みに行くか」
京太郎「ということで、少し離れます」
郁乃「ええよ~。時間できたら、ちゃんと練習するんやで~?」
京太郎「はい、ありがとうございます」
京太郎「ん……よし、下拵えはこれでオッケー」
京太郎「あとは焼き上げ、と……あれ?」
良子「京太郎くん、少しよろしいですか?」
京太郎「良子さん……どうかされました?」
良子「君の指導が目的だというのに、いないから探しに来たんですよ」
京太郎「あっ……す、すみません!」
良子「ふふっ、冗談です。お菓子を作っていると聞いて、こうして来たのですよ」
京太郎「あー、すみません……下拵えは終わっちゃいましたので、リクエストはちょっと――」
良子「そうではなく、その……」モジモジ
京太郎「?」
良子「お……お菓子の、作り方を……教えては、いただけないかと……」
京太郎「えっ――」
京太郎「あ、ああ、すみません、えっと……良子さんが、ですか?」
良子「むっ、なんですかその反応は。私が料理に興味を持ってはおかしいですか?」プンッ
京太郎「い、いえいえいえいえ! 滅相もございません!」
良子「だったら――教えて、ください」
良子「な、なんでもしますからっ」カァッ
京太郎(ん? いまなんでもするって――じゃなくて)
京太郎(まぁ、理由があるんだろうな……あまり深く聞かないほうがいいか)
京太郎「いえ、構いませんよ。それじゃ、せっかくだし……ちょっとお願いを」
良子「はい」ドキドキ
京太郎「あとは型に生地を流して焼くんですけど、その手伝いをお願いします。焼き方まで、お教えしますので」
良子「は……はい!」ニコッ
京太郎「こっちのアルミカップにベーキングカップを、こう……で、生地はこんな風に、量は八分目くらいで」
良子「なるほど……こう、でしょうか」
京太郎「お上手ですよ。ではこれだけ、お願いします」
良子「わかりました……京太郎先生」
京太郎「!!」
良子「どうしました? 今日はあなたが先生ですよ?」
京太郎「いや、恥ずかしいです……」カァッ
良子「謙遜なさらず……ご指導お願いしますね、先生?」ニコッ
成功
良子「……焼く間は、見ているしかできないのですか?」
京太郎「こういうオーブンなら、温度調整は勝手にしてくれますからね。最初にミスしなければ大丈夫です」
京太郎「とはいえ、やることはありますよ?」
良子「……なるほど、そういうことですか。では先生、私が」
京太郎「いえ、こういうのは一緒にやるんです。ね?」
良子「はい。では……少しわけたほうがいいですね」
京太郎「量が多いですから、流しを二つ使いましょうか。あとで濯ぐときに、隣に来てもらえますか?」
良子「……ぁ……は、はい///」
京太郎「濯いだら拭いて、乾燥棚にしまっておきましょう。では、お願いします」
良子「あの、京太郎くん」
京太郎「はい?」
良子「今日は、ありがとうございました……また、教えていただいても構いませんか?」
京太郎「もちろんです。いつでも、お力になりますよ」
良子「よかった……ありがとう」ニコッ
京太郎「――さて、休憩も終わりか」
由子「……困ったのよー」
恭子「そうやんなぁ……どうしたもんやろ」
絹恵「思いっきり頭使って、燃焼するしかないんでしょうか……」
漫「帰りにダッシュする言うんは」
恭子「短距離より長距離やな……」
洋榎「京太郎が来てから、間食増えてるからな……いつこれが、身体に返ってくるか思うと……」
良子「若い子でもこれですよ。大変ですね、赤阪監督代行」
郁乃「ん~? どういう意味やろか~?」
良子「学生でなければ、体育などもなく継続しての運動は難しい、と思っただけですが」
郁乃「ああ~、せやけど自分もやろ~?」
良子「若いうちは、カロリーコントロールだけで十分ですよ」
郁乃「……あはは~、言われてしもたな~」
良子「あの、ところで赤坂さんはおいくつで?」
郁乃「え~? 17やけど~?」
良子「あっ(察し)」
京太郎「女性陣が頭を抱えてる……色々あるんだろうな、麻雀名門校ともなれば」
京太郎「ま、俺は俺のできることをするだけだ」
京太郎「漫先輩、ちょっとよろしいでしょうか?」
漫「うん、ええよ」
京太郎「いまちょっと牌譜の整理をしてたんですけど……元の形とは別に、検索用のファイルを作っていいですか?」
漫「え、なんか使いにくい?」
京太郎「いえ、十分なんですけど……まぁ俺用というか、似たような打ち筋でまとめたいな、と」
京太郎「手間が増えるんで、ちょっとずつ埋めてく感じになるんですけど」
漫「そうかぁ……まぁ、いつものまとめも続けてくれるんなら、ええと思うで。わかりやすく、別にしといてくれたら、それで」
京太郎「わかりました。ありがとうございます」
漫「あ、それと代行には説明しといてんか?」
京太郎「了解です」
京太郎「……で、こっちとこっち……たぶん、元はこっちだと思います。それを真似したのが、これで――」
郁乃「はぁ~……うん、けどそう考えるとしっくりくるなぁ……ん、ならこっちのまとめもお願いしよかなぁ」
京太郎「はい。あー、でもどうしましょう……俺の感覚だけですから、誰かがやるときにまで、これをしろっていうのは――」
郁乃「ほんまは、こういうのを自分で言いだしてくれたらええんやけど~……まぁ、ほかの子には言わんでええと思う」
郁乃「京太郎くん用、いうことでまとめといたらええよ。あ、でも――」
郁乃「うちはまとめた分、使わせてもらうで~?」
京太郎「それは大丈夫です。けど、使えますか、これ?」
郁乃「うん、そらぁもう……ほな、遠慮なくね~。おおきにな、京太郎く~ん」
~部活終了後
京太郎「……よしっと。先輩方失礼します、掃除と牌磨き、終わりました!」
「ん、こっちも終わったでー」
「お疲れさん。二軍と三軍の分やってもろて、悪かったなぁ」
京太郎「いえ、俺が一番下っ端ですから、当然です」
「そんなことないて」
「けど、こういう機会やないと、一軍とレギュラーの牌に触れへんから……ほんま、ごめんなぁ」
京太郎「そうしていただくことで、先輩方のモチベーションが向上するなら。俺はなんだってしますよ」
京太郎「それが、俺にできる先輩方へのご奉仕です」
「」キュン
「」キュン
「」ジュンジュワー
京太郎「それじゃ、お疲れさまでした。これで失礼します」
「お、お疲れー」
「ああああ、あの、よかったら……送って、くれへんかなぁ……」
「もう帰ってもうたで」
京太郎「ふぅ……すっかり暗くなっちまったな。寒いし、急いで帰ろう」
京太郎「さすがに誰にも会わないか……ふぅ、寒かった」
京太郎「さて、さっさと飯作って……夜の鍛錬も行かないとだな」
京太郎「こういうときは、白糸台のジムがうらやましい……」
京太郎「ま、施設や機材がないならないで、やりようはある」
京太郎「外の空気に触れられる分、得るものも違うしな」
京太郎「――ということで、外回りと筋トレ終了」
京太郎「夜の公園は、色々と筋トレに使える遊具が多くてありがたいもんだ」
京太郎「けど、汗流したら、結構な時間になっちまいそうだな……充実してるってことか、それだけ」
京太郎「……そうだった、昨日良子さんに会って、牛乳買うの忘れてたんだ……」
京太郎「なにやってんだか、いったい」
京太郎「うーむ、湯上りに外に行くのはちょっと寒いんだけど……なるべくあったかくして行くか」
京太郎「」
良子「ぐ、偶然ですよ?」
京太郎「こっちを見て言ってください」
良子「本当です! それよりも、二日続けて京太郎くんがいることに、私は驚いていますよ」
良子「……もしかして、その……京太郎くんこそ、わ……私を、ですね……」
京太郎「いえ、俺は牛乳を。昨日買いそびれてしまったので、今日こそはと」
良子「ああ……すみません、私と会ったせいですね」
京太郎「それで忘れたなら、俺の不注意ですよ。はー、これでなんとかなる……」
良子「しかし……なるほど、だからお弁当は和食だったのですね?」
京太郎「そういうわけでもないんですけど……なんとなく、お弁当っていうと和食じゃないですか?」
良子「たしかに、海外でのランチボックスはパンと果物だけ、ということも多いようですし」
京太郎「良子さんはどちらがお好みでしたか?」
良子「本家や、実家の稼業のためか、和食のほうがなじみ深いですね」
良子「好みとしては洋食なのですが、おいしい和食を口にするとホッとします」
京太郎「今朝はモーニングプレート、洋食でしたよね」
良子「そうでしたね……京太郎くんの和食もおいしそうでしたが、ねだるのもはしたないと思いましたので」
良子「本当は、お味噌汁を少しだけいただきたかったのです」
京太郎「言ってくだされば……」
良子「いいんですか? 一つの椀に、口をつけることとなりますが?」フフッ
京太郎「……そうでした」
良子「私は気にしませんが」
京太郎「気さくでお優しいですからね、良子さんは」
良子「……相手が君だから、なのですが……わかってはくれないですよね、やれやれです」ハフゥ
京太郎「あ、そうだ」
京太郎「明日は、洋食の弁当にしましょうか?」
京太郎「で、朝からは和食にされたらいいかと」
良子「ふふ、魅力的な提案です……が、明日は休みなので」
良子「それでお弁当だけ作らせるというのも、申し訳ない。今日の分だけで、十分ですよ」
京太郎「そうですか、残念ですね……」
良子「そんなことを言うと、また頼んでしまいますよ? それこそ、仕事があるときには毎日」
京太郎「俺としては、手間でもありませんけど」
良子「それは嬉しい。ですが、私が気を遣いますので……また、夕食をコンビニで買っているときにお会いしたら、お願いしましょう」
京太郎「コンビニ弁当は、ほどほどにですよ?」
良子「わかっています。それに、今日は違うものを目的に……」
京太郎「なんですか?」
良子「……内緒です」
京太郎「そうですか……」
良子「ええ。京太郎くんも、牛乳をお忘れなく。先に買ってきてはどうですか?」
京太郎「そうします」
京太郎(――と、見せかけて……)ジー
良子「…………」ジー
京太郎「」
良子「お見通しですよ、京太郎くんの行動は」
京太郎「すみません、つい……」
良子「気になるなら聞く、そうでないなら踏み込まない。覗き見は最低です」
京太郎「うっ……」
良子「私は大人ですし、あなたは高校生……気後れするのはわかりますが、聞かれたくないことを聞かれたとしても、怒りはしません」
京太郎「はい……」
良子「ですから、気になるなら聞いてください。わかりましたか?」
京太郎「すみませんでした」
良子「それで、聞きますか?」
京太郎「……買いに来たものって、なんですか?」
良子「ストッキングです。伝線してしまったので、予備を購入しておこうと。近くのコンビニでは、なぜか品切れだったので」
京太郎「あ……す、すいません! デリカシーのないことをっ……」
良子「聞かれても怒らない、と言ったでしょう? 本当に答えたくないことは言いませんから、答えたことは気にしなくていいですよ」
良子「では、レジに並びましょう。お先にどうぞ、京太郎くん」
京太郎「……はいっ」
京太郎「ふぅ、やっぱり外は寒いですね……」
良子「そうですね」
京太郎「まぁでも、二人で歩けば多少はマシでしょう」
良子「…………はい、では……お願いできますか?」
京太郎「もちろんです。女性一人では、危ないですから……あ、でも」
良子「?」
京太郎「なんでしたっけ……ソロモン王とかイタコとか、あと傭兵とかなら、それほどでも……」
良子「oh……それは根も葉もない噂です。信じないように」
京太郎「そうだったんですか!?」
良子「君の素直さは長所ですが、短所にならないことを願いますよ……さ、送ってもらえますか?」
京太郎「ええ、そういうことならなおさらです。まぁホテルまでですし、すぐですけど」
良子「……部屋までは、だめですか?」
京太郎「明日はお休みですよね? お部屋にお邪魔はしませんから、ゆっくりと休まれてください」
良子「はぁ……ええ、そうします。お気遣い、どうも」
京太郎「……なにか、怒ってますか?」
良子「べ、別に……怒ってる、わけでは……」カァァッ
- 良子好感度+4 (1、0+雑用ボーナス、1+雑用ボーナス)
~木曜終了
【1月第一週木曜】
お約束通り、お弁当をお届けする。
その後、別の約束通り、モーニングコールも。
こちらはしばらく継続したほうがよさそうだ、すごく朝が弱いとお見受けした。
特に寒い日なんかは、起こしに行くべきかもしれない。
昼にはちょっと大変なことが。
教室のテレビを点けたところ、お弁当をお作りしたプロが出演しておられた。
そして俺のお弁当を公開、放送に至る。確かに紹介すると言ってたけど、本当になるとは。
近畿圏でしか放送されていないそうなので、一安心。
していたら、ネットでも見られる放送枠だったらしい。道理で長野からメールが来るわけだ。
どうしてあの人がそんなのをチェックしていたかは、不明。
ほかの人が見ていないことを祈るばかりである。
部活中は特になにごとも。強いてあげるなら、お弁当箱をわざわざ返しに来ていただいた、ということか。
その後、お菓子作りを手伝っていただく。とても丁寧な動きで、女性らしい繊細さが感じられた。
そういえば、牌譜整理中に気づいたことがあり、別ファイルを作らせていただいた。
顧問の監督代行に許可も得たので、しばらくはこの形でもまとめも作っていこう。
やはり牌譜を見るのは勉強になる。誰がどういった打ち筋をしているか、見えてくることが多い。
掃除まで終えると、帰り道は暗い。その時間に帰る人は、なるべく送ってあげるべきだろうか。
そんなことを考えて夜、牛乳を買っていなかったことを思いだし、再びコンビニへ。
またも、あの人にお会いする。デリカシーのないことをしてしまった、二度としないよう肝に銘じよう。
…………
『あれも麻雀番組やからなぁ、うちでもかけとったわぁ』
『麻雀風景、昼休みにはいっこも流れんかったけどな』
『やっぱプロはうまそうなモン食うてるなぁ思たら……あれやもんなぁ、姫松うらやましすぎるわ』
『……言っとくけど、別に京太郎がいても、お昼にあんなの食べられないわよ? お味噌汁は出たけど』
『お弁当、毎日作ってもらってたけど?』
『詳しく』
『……私は、あーんしてもらってた』
『!?』
『なにをやっとるんじゃ、お前さんは……』
だって、隣の家だったり、同じクラスだったり、隣の席だったりで……つい、です。はい。
『弁当もおいしそうだな。以前のカツ丼の味を、思いだしてしまう』
『良子ちゃん、普通にうらやましいぞ☆』
『わ、私はお鍋作ってもらったことあるし……』
『っつーかエンカウント高くね? 知らんけどさ……』
『狙ってるんではなさそうやで~?』
『……当然です。理由がなければ、出向いたりはしませんよ。彼に迷惑はかけられませんから』
『そうですよね。偶然、そう……偶然会えれば……私も、きっともう少しなの……どうしてだろ』
挟まれたり、安価ずれてたり、コンマ1違いだったり……偶然って怖いですね、本当に。
『――にしても、あんたは偉いなぁ。うちの娘らも、あれくらい自分で作ってくれたらええんやけど』
『あれくらいて……無茶言わんといてーな。旅館でも働いてたプロの腕やで、あれ』
『まぁそうですね。でもお菓子作り教えてくれるくらいですし、頼めば料理もいけるんちゃいますか?』
『おまっ、余計なことを――』
『そらええなぁ。機会あったらウチに呼んだり。揃って飯炊きでも教えてもろたらええわ』
『きょっ、きょきょきょきょ、京太郎くんがウチに!? あああ、あかん、あかんて、ほんまっ……』
『そう言いながら、真っ赤になってるのよー?』
『なってません! 見えるんですか!?』
『見えてないけど、想像つくで……』
うーん、シロさんや健夜さんやはやりさんには教えてるし……いつでも言ってくれれば、なんだけど。
――――――――
~清澄
「会長がお昼に見てらしたのは、これでしたか……」
「そうよー。ほんと、おいしそうよねぇ。靖子はカツ丼作ってもらったみたいだし、私もなにか食べたーい」
「私もお願いしたいです!」
「そろそろ、京太郎の作ったタコスを……」
「優希に禁断症状が出とる……じゃから言うたろ、作り方を教えてもろうとけと」
「あの頃は、こんなことになるなんて思ってもみなかったじぇ……うぅ……」
「失ってから気づくありがたみ……よ~く噛み締めなさいよ」
「会長がおっしゃらないでください」
「そういえば、久さんっていつまで会長なんですか?」
「2月に次期会長選挙があるんじゃないかしら、たしか。卒業式の仕切りは、新生生徒会と教師のはずよ」
「じゃあ、次の会長は――また部長が?」
「なんでじゃ……今年度は、久が特別だっただけじゃろ」
「なんだかんだで、能力のある方でしたからね」
「ちょっとー、過去形にしないでよねー」
~白糸台
「なんで?」
「なにがだ」
「毎日お弁当、お味噌汁、あーん」
「私たちやってないよ! なにこれずっこい!」
「淡は誕生日にやってもらってたろ」
「そーでした……でも毎日じゃない!」
「……頼まなかったら、なのでは」
「そうだと思うが……頼むのも気が引けるからな、さすがに」
「頼んだら喜んでやってくれそうだから、なおさらですね」
「そのくらい読み取ってよねー、執事ならさー」
「京ちゃんは執事じゃない、京ちゃんは京ちゃん」
「じゃあキョータローなら、私たちの考えはちゃんと汲んでほしい!」
「十分すぎるほど汲んでくれてただろ……」
「淡は京太郎くんに甘えっぱなしでしたからね」
「甘えてない!」
「宮永先輩も、同じようなものだったけど」
「甘えてないよ? むしろ甘えさせてたと思う」
「どの口が言うのか」
~永水
「良子姉さん、ずるい……」
「さすがははるるの従姉ですね、戒能プロ」
「おねだり上手なんでしょうねー」
「春ちゃんも、京太郎くんには甘えっぱなしだったものね」
「……そ、そんなことないっ……////」
「いまは違いますもんね! 春ちゃん、頑張ってます。私も負けていられません!」
「姫様ー、それはフォローのようでフォローになってませんよー」
「過去の甘えんぼは肯定してますからね」
「あ、甘えてないもんっ……」プクー
「あら、可愛いわね」ナデナデ
「……次に会ったら、京太郎を甘えさせてあげる……もんっ……」ニヘー
~宮守
「差し入れでしょー、プロ入り祝いのパーティー料理でしょー、お鍋でしょー?」
「毎日のお弁当……」
「摘ませてもらったこと、何回もあるしね……あとは、夕食」
「ビーフストロガノフ……」
「私たち、よくよくお世話になってたんだねー」
「その結果――」
「がっちり胃袋を掴まれちゃいました、と……はぁ」
「モウ、ケッコン、スルシカ!」
「だ、だめだよー、重婚は犯罪だよー」
「一人が結婚して、同じ家に全員住むのは……?」
「夫婦生活に支障をきたすわよ、それ」
「大丈夫、気にしないから」
「同居人が気にするでしょ!」
「っていうか、なんでシロが結婚することになってるの!」
「ワタシ、ガンバルヨ!」
「わわ、京太郎くんと結婚なんてー……そんなー、えへへー、照れちゃうよー」
「誰一人拒否しないどころか、まんざらでもないって……」
「塞は?」
「……ノーコメント」
~阿知賀
「すごかったねー、味噌汁の広まり」
「最後のほうには、全クラスから集まって列になってたわね」
「さながら配給の行列……」
「そんな状況でも、京太郎って私たちのために、一定量は確保してくれてるんだよね!」
「あったかかったぁ……」
「ほんと、気が利きすぎっていうか、気ぃ遣いすぎっていうか……」
「でもそこがいいんでしょ?」
「まぁね……って、
お姉ちゃん! ミーティング中だって言ってるでしょ!」
「あ、私が呼んだの。そっちのほうがミーティング盛り上がるから」
「ミーティングっていうか、ダベってるだけじゃない!」
「あ、自分で言っちゃうんだ……」
「京太郎の話、盛り上がりますからね!」
「でもやっぱり、料理の腕は上がってるんだよねぇ……」
「そうなのです! 板長さんたちも、お弁当だけはしっかり見て、批評したり同じものを作ったり、試していたのです!」
「見ただけで再現できるあたり、本職さんよね……ところで、松実館の旦那さんの反応は?」
「……聞かないでください」ブルブル
「むしろ邪魔しているってことに、気づいてないんだ……」
「まー、それで憧は助かってるわよねー」ニヤニヤ
「だからやめてってばぁ!」
~姫松
「大変なことになってもうたな」
「せやな……どないしよ、お姉ちゃん」
「いやぁ、大変ですねぇ、主将……いえ、洋榎」
「誰のせいや思っとんねん!」
「んー? ヒロは嫌なのー?」
「うっ……べ、別に嫌とちゃうけど、なんちゅーか……悔しいやろ」
「京太郎くんやからしゃーない、と思いますけど……」
「私はそう思うのよー。そうねー、どうせだったら私が、教えてもらおうかなー」
「!?」
「……由子、その……そんなら、そのとき私も……」
「!! 末原先輩ずるいです!」
「ほんまやで! まず話題に上ったんはうちの家やろ!」
「なら、頼めばいいのよー」
「それにあれやん、絹ちゃん、朝から頼めば起こしにも来てもらえるやろうし」
「ええなぁ、絹恵ちゃん……」
「漫ちゃんまでなに言うてるん! そ、そんなんやったら……みんなも起こしに来てって、言うたらええやん」
「寝起きの顔見られるとか、恥ずかしいやん」シレッ
「ええなぁ言うたやろ!?」
「でもー、愛宕監督は京太郎くんのこと、えらく気に入ってるみたいなのねー」
「うちに家事仕込む、ええ機会や思とるだけやろ……せやから、そんな目的で呼んだりたないねん。可哀想や、京太郎も」
「……千里山に呼ぶ前に、どんな塩梅か見とこ、いうのかもしれませんね」
「もういっそ、娘をからかいたいだけかもしれないのよー」
「オカンならやりかねんな……」
「私、朝から散々からかわれたあとやねんけど……」
「起こしにきてもろたら、もっとやろなぁ。楽しそうでええやん、絹恵ちゃんのとこ」
「他人事や思てぇ……」
(……でも、ほんまに起こしに来てもろたら……//// あああ、あかんっ、想像できんくらい恥ずかしなってきたぁっ……)
「乙女の顔してるのよー」
「……うらやましなってきた」
「!? す、末原先輩……?」
「……あれ、うちに来られたら、うちも朝から会うことなるんか?」
「いまごろ気づくなんて遅いのよー」
~某居酒屋
「はーい、お疲れさま良子ちゃーん☆」
「お疲れさまー」
「お疲れぃ」
「お疲れ!」
「お疲れさんやで~」
「はぁ……って、どうして赤阪代行まで?」
「まぁまぁええやん、お呼ばれしたんやも~ん」
「――で、単刀直入に聞きますけど、赤阪さんは京太郎くんをどうしようとお考えですか?」
「え~? 別にどうとも~……まぁ、ずっとうちにいてもらえたらな~、とは思うてるけどぉ~」
「……なるほど、あんたも京太郎狙いってわけかい。いやー、もってもてだねぃ、さすが」
「ね、狙うとかそゆんでは、ないいうか……あ、あはは~、なんや恥ずかしいわぁ」////
(……あれ?)
(もしかして、わりと純情なタイプなのかな☆)
(油断禁物!)
(ま、様子見ってとこかねぃ。あと良子は、あんま積極的に行きすぎんなー?)
(……か、彼のほうに惚れさせれば、関係ありませんし……)
(!?)
(ギルティ!)
(本気なのかな☆ だったらこっちも押していっちゃうぞ☆)
(あ、あんまり迷惑にならないようにだよっ、わかってるの!?)
(なんでみんな、視線で会話してるん~?)
(しかも通じちまってんのがね~、これもうわっかんね~な~)
「まぁ――せやけど、みなさん色々心配されるんもわかりますしぃ……あれやったら、毎日誰かしら、来てもろてもかめへんよ~?」
「……牽制なのか、愛宕さんや次世代の指導役を呼ぼうとしてるのか、わかりませんが……」
「申し出を受けたなら、行くしかないかな☆」
「望むところ!」
「……とか言ってますけど、ただ京太郎くんに会いたいだけですよね?」
「うっ……ひ、否定はしないかなぁ///」
「ったりめ~だろ~? お前と違って、こっち来てからまだ会ってねーんだぜぃ?」
「会いたい!」
「理沙ちゃん切実だぞ☆」
「ま~、私は毎日会えてるけどね~。ややわ~、もう眼福やわ~」
)))
~1月第一週金曜、朝
京太郎「もしもし、おはようございます。今日は朝練ですけど――」
絹恵「…………お……おぁ、よぉ……」カァァッ
絹恵(わ、私はなにやってるんやっ……起きてんのに、こんな寝ぼけたフリしてからにっ……)
絹恵「………………あかん」
京太郎「あれ? もしかして、起きてましたか?」
絹恵「あー……うん、おはようさん。起きてたよ」
京太郎「なら、逆に邪魔になっちゃいましたかね、ひょっとしたら」
絹恵「あっ、ううん! そんなことあらへんよ、かけてもろて嬉しかったし」
京太郎「ならよかったです。俺も、朝から絹恵先輩の声が聞けて、かなりラッキーですし」
絹恵「なっっ! あああ、あほっ! あほなこと言うてんと、はよ学校行き!」
京太郎「すいません、お母さん」
絹恵「誰がオカンや! もう、ええから――はぁ……ほな、学校でな」
京太郎「はい! 今日も一日、がんばりましょう!」
絹恵「……ふふっ、元気やねぇ、京太郎くんは。さすがに若いもんや」
京太郎「いえいえ……って、一才しか違いませんよ?」
絹恵「高校生の一才って、大きいと思わへんか?」
京太郎「……思います」
絹恵「よろしい。ほんなら、その若さで一日盛り上げてんかー、任せたで」
京太郎「了解です!」
京太郎「……年齢の差は大きいけど、若さに関しては関係ないじゃん……騙された……」
京太郎「さて、ともかくこれで絹恵先輩も遅れないだろうし、俺も急ぐかな」
郁乃「あら~、そんな急いでどこいくの~ん?」
京太郎「………………おはようございます」
郁乃「んん~?」
郁乃「…………あっ」
郁乃「ちゃ、ちゃうねん! いまのはそういう……そんなん、狙たわけやのうて……っ」
京太郎「冗談ですよ。関西の人って、なんとかのん、とか、なんとかやねん、とか使いますもんね」
郁乃「そやね~ん。せやけど、そっかぁ……行くに関してはおかしなことになってまうなぁ、注意せな」ウンウン
京太郎「ははは……まぁそれじゃ、せっかくですし、ご一緒してもいいですか?」
郁乃「ええよ~、ほな行こか~」
洋榎「おっと、京太郎やん。それに代行――朝からえらい仲良しやん。どこいくのん? なんちゅーてなぁ!」
京太郎「」
郁乃「……あ、あら~、おはようさ~ん、洋榎ちゃん」
洋榎「こら京太郎、先輩に挨拶もなしかい」
京太郎「……お、おはようございます。えっと……テンション高いですね、なにかありました?」
洋榎「そやなぁ……朝飯のとき、茶柱が立ってたわ。こらええことあるやろ、間違いなく!」
京太郎「縁起いいですねー……あれ、そういえば絹恵さんは?」
洋榎「なんやなんや~? 朝から洋榎姉さんだけや物足らんか~? まーしゃないわなぁ、うちの妹はごっついかわええからなぁ」
郁乃「姉バカさんやね~」
京太郎「俺の知り合いにも、妹溺愛してるのが二人ほどいますよ」
洋榎「ほっほう……ま、なんにしてもナンバーワン妹はうちの絹恵や。こら揺るぎないで。残念やろ~、朝から会いたかったわなぁ~?」
京太郎「まぁ、それは否定しませんけど……いえ、電話したときには起きてらっしゃったので、一緒に来られなかったのかなと気になりまして」
郁乃「あらま~、京太郎くんは絹恵ちゃんにお熱なんかぁ~?」
洋榎「ほうほう、こら挙式まで秒読みやなぁ……まぁ心配いらんで。呼んだんやけど、髪の毛必死に梳かしとったから、先行く言うて、出てきたんや」
郁乃「洋榎ちゃんも、それくらい気ぃつこたほうがええんとちゃう~?」
洋榎「学校行くだけやのに、気張ってもしゃーないやろ」
京太郎「でももったいないですよ、綺麗な髪してるんですから……そうだ、よければ俺が梳きましょうか?」スチャッ
洋榎「!? おまっ、どっからクシを……いやいや、そうやのうて! ええって、うちはそういうん、気にせんから!」
京太郎「そう仰らずに、その綺麗な髪……手入れさせてください、お願いします」キリッ
洋榎「///////// ま、まぁ、そ……そうか? そんな言うんやったら……た、頼むわ」スルッ フワサッ
京太郎「……下ろしてもお綺麗ですね。じゃ、丁寧にやりますので」
郁乃「……あの、うちは~?」
京太郎「あ……あ、あとで! あとでやらせていただきますので!」
郁乃「え~? 冗談のつもりやったのに~、けど嬉しいわぁ、ほな頼みます~」
洋榎「ちゃっかりしとんなぁ、代行は」
京太郎「あ、後ろ振り返らないでくださーい。クシ引っかかりますので」
洋榎「あ、すんません」
京太郎「……サラッサラですね」
洋榎「……う、うっさいわ、黙ってせぇ/////」
~金曜、昼
京太郎「……なんだろう、視線を感じる」
モブ子「はい、こちら目撃者のモブ田さんに、インタビューしたいと思います。モブ田さーん?」
モブ田「ええ、俺ははっきりと見ましたよ。朝からですね、この男……姫松女子麻雀部の前主将、愛宕洋榎さんの髪に、クシ通しながら登校しやがったんですよ」
京太郎「」
モブ子「あら^~」
モブ田「で、目撃した俺はもう言葉を失いまして、思わず男子部員全員に広めたんですか――」
京太郎「失うどころか有り余ってんじゃねーか!」
モブ田「それがどういったわけか、クラス中、果ては学園中にまで広がったという有様で――」
モブ子「それはそれは……ところで、そのあとには赤阪郁乃監督代行の髪も、丁寧に梳かしていたとか?」
モブ田「えっ、それは知らねーんだけど」
モブ子「あ、それは私が広めたんだった。てへぺろ☆」
京太郎「お前ら、ほんとえげつないよな」
モブ田「まぁ広めたのは確かだけど、広めなくてもだいたい見てたみたいだけどな」
京太郎「」
モブ子「朝練中、見られてたの気づかなかったん?」
京太郎「ぜ、全然……作業に集中してたし……」
モブ子「全員、結んだ髪下ろしてたのも?」
京太郎「それは褒めたよ。新鮮で可愛いですって」
モブ田「そこでなぜ梳かさないのか」
京太郎「部活の邪魔になるから」
モブ子「だめだこいつ、早くなんとかしないと……」
京太郎「なぜダメだしされるのか、これがわからない」
京太郎「やばい、廊下歩くだけでめっちゃ見られる……ひとまず、部室に隠れてやり過ごそう」
洋榎「せやな、うちも同意や」
京太郎「!? ひ、洋榎先輩っ……あっと……その、すいません、俺のせいで」
洋榎「ほんまやで、頼むわ……まぁ、やらせたうちも悪いんやけど」
京太郎「というか、こんな噂になるなんて、普通予想できませんって……あ、でも――」
洋榎「ん、どないした?」
京太郎「いえ、俺が髪梳くのはいいんですけど、相手が洋榎先輩だってことを、注意すべきでしたね」
京太郎「なんたって、プロ入りまで決まった姫松の前エース、来年からは天王寺のルーキーエースなんですから」
洋榎「せ、せやろー? さすがやろー?///」
京太郎「はい。有名で、みんなに慕われてるってことを考えれば、ああいうのはよくなかったですね」
洋榎「えっ」
京太郎「すみません、今後は気をつけ――」
洋榎「ままま、待ちぃな! いや、ええんとちゃうか? うん、うちはええと思うなぁ、別に……」
京太郎「そうでしょうか」
洋榎「アホ、当たり前や! ほかならぬ本人が言うてるんやで、周りの反応なんか気にしとってどないすんねん!」
洋榎「そんなもん気にしとる暇あったら、もっと目の前の相手に気ぃつかい、アホ」
京太郎「……えっと……」
洋榎「…………」カミイジクリー
洋榎「…………」カミクルクルー
京太郎「よ……よろしければ、もう一度……梳かさせていただいて、いいですか?」
洋榎「お、おお、すまんなぁ……なんや、要求したみたいやん///」
京太郎「いえ、そんなことは……どうぞ、お茶淹れましたので。座ってお飲みになってください。その間、梳かしますので」
洋榎「お、気ぃ利くなぁ、おおきに~」
京太郎「……どうでしょう、痛くないですか?」
洋榎「ん~、気持ちええで~」
洋榎「……っっ! ちゃ、ちゃう! いまのは言葉の綾やで!」
京太郎「すいません、もっと精進します」
洋榎「……そ、そうか……ほんなら、また練習に付き合おうたるわ」
京太郎「ありがとうございます」
~金曜、放課後
京太郎「あのあと、一緒に部室出るところを見られたらしく――」
洋榎「まーた変な噂になっとったな」
京太郎「まぁ気にしませんけどね。洋榎先輩がいいなら、それで」
洋榎「いやー、うちも罪な女やで」
恭子「……楽しそうですねぇ、洋榎」
由子「あんまりそういうことしてると~、引退した三年が一年生をこき使ってるって、噂が立つのよー」
洋榎「うっ……そ、そんな噂気にせぇへんわ! なぁ、京太郎っ?」
京太郎「はい」
由子「あらー、今度は脅して従わせてるって、噂が立っちゃうのよー」
洋榎「なんでやねん!」
京太郎「……なら、発想を逆転させるしかないですね」
恭子「――と、言うと?」
京太郎「させられてるじゃなく、俺が進んでやってるというのを、周囲にアピールすればいいんですよ」
京太郎「ということで、恭子先輩の髪も、梳かさせてください!」
恭子「」
洋榎「なっ」
由子「のよー」
京太郎「じゃ、クシ通しますねー」
恭子「待ちや! まだええて言うてへんやろ!」
京太郎「だめですか……すいません、では……先に由子先輩、よろしいですか?」
由子「へっ? あ、ああ、もちろんなのよー////」リボンホドキー
恭子「!?」
漫「あ、なら次……私、ええやろか」
絹恵「その次、私も予約なー」
恭子「ちょっ」
京太郎「んー、できれば人がいるところで、俺から頼むって形でやらせてもらっていいですか?」
漫「うん、かまわへんよー」
絹恵「ほな、あとでよろしくなー」
恭子「待っ――」
京太郎「じゃあ、由子先輩、漫先輩、絹恵先輩で――あ、次に洋榎先輩、もう一度いいですか? 影響大きそうですし」
洋榎「しゃ、しゃーないなー///」
郁乃「ほなそん次わたし~、よろしくな~」
京太郎「はーい」
恭子「」
恭子「………………めげるわ」
京太郎「噂は若干和らいだ――けど」チラッ
恭子「………………」
京太郎「真面目に勉強してる恭子先輩の後ろ姿が、煤けてる……」
漫「京太郎くん、そろそろ始めるでー」
京太郎「あっ、はい!」
恭子「…………はぁ……私はほんま、なんでこう……はぁぁ……」
京太郎「さて、そろそろ備品の買いだしも行ってこないとな。買いたいものというか、足りないものが多すぎる」
郁乃「え~? そんなに~?」
京太郎「自動卓の、摩耗しやすいベルトなんかの部品が全然置いてませんからね……いざ故障したとき、修理ができませんよ」
郁乃「えっ」
郁乃(……故障したら、予備の台つこて修理にだすんやけど……っていうかなに、自分で直せるん? なんで!?)
京太郎「どうかしましたか?」
郁乃「えっ……い、いいや~? ほ、ほな、お願いするわなぁ~」
郁乃「そうそう、三年の子ぉら、気ぃ張ってるんもあれやし、なんなら連れだしてもろてもええで~」
京太郎「わかりました。あ、ほかに要るものって、なにかあります?」
郁乃「うちからはないで~。ほかは、適当に聞いて回ったって~」
京太郎「了解です」
京太郎「んー、こんなもんか……まぁ、急に言われて思いつかないだろうし、俺が気づいたものだけでいいかな」
京太郎「そういえば、三年の二人……いや、三人は――」
京太郎「洋榎先輩、対局は休憩ですか?」
洋榎「んー、京太郎かぁ……まぁ、そやなぁ」
京太郎「どうしたんですか?」
洋榎「いや……練習にはなるし、後輩の指導にもなるからええんやけど……」
京太郎「けど?」
洋榎「やっぱこう……プロ入りするからには、もっと強い相手と……とか、思てもうてな」
洋榎「一、二年も、たまに顔だす三年も、弱くはないんやけどな……まぁ、戒能プロとなんべんも打ったし、物足りんくてなー」
洋榎「いや、悪いわけやないねんけど、それでなんや、気ぃ乗らんからな……休憩いうか、ぼーっとしとって」
京太郎「でしたら……ちょっと、外行きませんか?」
洋榎「お、サボりかー? 悪いやっちゃなぁ、京太郎」
京太郎「買いだしですよ、名目は」
洋榎「物は言い様やなー、ははは!」
洋榎「まぁええで、付きおうたるわ! ついでに安い店、案内したる」
京太郎「わかるんですか?」
洋榎「あったりまえやろ! うちを誰やと思うてるんや!」
京太郎「洋榎先輩です! いえ、だからなんですけど……ずっとレギュラーで、雑用とかしてなさそうに思って」
洋榎「一年ときは、さすがにやってたわな……ま、それやなくても、地元の店くらいなんぼでも知ってるて、任せとき!」
京太郎「はい、ではお願いします」
洋榎「ここがなー、うちの行きつけの駄菓子屋……跡地や!」
京太郎「」
洋榎「ちっちゃいばーちゃんがやってたんやけど、息子夫婦の家に引っ越す言うて、店畳んでもうてなぁ……」
洋榎「ま、散々豪遊させてもろたし、元気でやっとってくれたらええわ!」
京太郎「……そうですね」
洋榎「ここのキャベツ焼き、めっちゃうまいやろ? しかもこれで百円、部活帰りに寄ったら、さらに半額やで!」
京太郎「やっぱり粉モンの街ですねー、屋台っぽい店でもレベル高いです」
洋榎「むしろこういう店こそ、ええもん扱うんやで。風情もあるしな」
京太郎「洋榎先輩、ソースが……」
洋榎「んぅ……おお、すまんな……ははっ、なんや照れるやん////」
洋榎「ここのケーキ屋、よう買ってたんやけど……もう買いに行けんわ」
京太郎「どうしてですか?」
洋榎「京太郎の作るやつほがうまいからなぁ……あ、また頼むで?」
京太郎「了解です」
洋榎「うちはシュークリームよりエクレアのが好きやから、そこんとこ頼むで」
京太郎「生クリームとカスタードだったら?」
洋榎「おお、難問くるなぁ……うまい生クリーム、カスタード、普通の生クリーム、っちゅうとこか」
京太郎「結構こだわりますねー」
洋榎「こだわる女はええ女やで」
京太郎「――いま気づいたんですけど」
洋榎「?」
京太郎「買いだしが、全然……」
洋榎「あっ……」
洋榎「ま、まあ気にしなや! ようあることやって、な?」
京太郎「……そうですね。洋榎先輩とデートできましたし、よしとします」
洋榎「!? デデデ、デートちゃうわ! これは、その……か、買いだしや!」
京太郎「買いだせてないんですが、それは」
洋榎「ええんや! うちが買いだし言うたら、買いだしで――」ピクンッ
京太郎「洋榎先輩?」
洋榎「静かに――」
はやり「――ということで、南大阪からお送りする、世界の雀卓から……でしたー☆」
はやり「それでは、また来週~☆ 次回は小学校にお邪魔して、子供たちと楽しく麻雀しちゃうぞっ☆」
洋榎「うぉっ、瑞原プロやんけ! しかもなんや、撮影しとったんか……」
京太郎「はやりさん、こっちで仕事だったんだ……偶然だな」
洋榎「……まさか思うけど、お前を追っかけてこっちに仕事取った、とかは――」
京太郎「いやー、ないと思いますよ? 毎週のレギュラー番組ですし、たまたまこっちでのロケになったんじゃないですか?」
はやり「もっちろんそうだぞ☆ でも偶然だね、会えて嬉しいぞ、京太郎くん☆」
京太郎「!? 背後に!?」
洋榎「うおぉっっ!? め、めっちゃビビったぁ……」
はやり「洋榎ちゃんはまだまだ甘いかな☆ そんなんじゃ、厳しいプロの世界でやっていけないぞ☆」
洋榎「いや、なんのプロですのん!」
京太郎「あー……お、お久しぶりです、はやりさん……えっと、お仕事中では?」
はやり「今日はおしまいだぞ☆ 夜に少し、打ち合わせがあるけどね。いまから夜までは、完全フリーだぞ☆」
洋榎「…………」
京太郎「……だったら、少し……いいですか?」
はやり「ん、なにかな?」
京太郎「せっかくお会いできたんですし、お茶でもいかがでしょう」
洋榎「…………えー」
京太郎「まぁ、俺たちもこれから学校に戻りますので、学校で――ってことになりますけど」
はやり「……ふふっ、別にいっかな☆ というより、主目的はそっちじゃないんでしょ?」
京太郎「ばれましたか……ええ、ぜひ麻雀もご一緒できればと。ね、洋榎先輩、いいですか?」
洋榎「!! そ、そらもう! こっちとしては大歓迎ですわ!」
はやり「ん~、それじゃ、お邪魔しちゃおっかな☆」
京太郎「ありがとうございます、では――行きましょうか」
はやり「オッケー♪」
洋榎「……あ……あの、京太郎……」
京太郎「はい?」
洋榎「あ……お、おおきに、な……うちのために、言いだしてくれたんやろ?」
京太郎「……いえ、俺のわがままですよ、ただの。許可してくださって、ありがとうございました」ニコッ
洋榎「はぁ……ほんま、かなわんなぁ」
京太郎「――ということで、街でお見かけした瑞原プロをお連れしました。一応、洋榎先輩にお許しはいただきましたが……」
はやり「よろしくねっ、姫松のみなさん☆」
漫「」
郁乃「買いだしに行って、プロ買ってくるんか~、すごいなぁ~」
恭子「なんでトッププロで、しかもアイドルがこんなホイホイ学校にくるんや……普通の部活させてーな」
由子「なら、恭子は打たないのー?」
恭子「……そら、まぁ……せっかくの機会やし?」
由子「普通の部活やなくて、よかったのよー」
恭子「……せやな、京太郎くんに感謝や」
絹恵「ま、まずは誰からにしますっ? やっぱり私と漫ちゃんと、お姉ちゃんで――」
漫「え、ええんですか!?」
洋榎「……いや、最初は京太郎入れなあかんねやろ、確か」
はやり「おっ、わかってるね、洋榎ちゃん☆」
絹恵「ああ、せやった……勘忍、京太郎くん。つい焦ってしもて」
京太郎「いえ、構いませんよ。お客様もいらしたし、俺は差し入れの準備もありますから」
はやり「」
京太郎「それが終わりましたら、ゆっくりとご指導いただきますので」
はやり「それなら許すぞっ☆」
郁乃「現金やね~」
漫「ほ、ほんなら、まずは私らと先輩とで――」
京太郎「……これで、少しは洋榎先輩のお役に立てたかな? はやりさんにも、しっかりお礼しないとな……」
京太郎「さて、と……まずはおもてなしの準備からだな。今日はなにを作るか……」
京太郎「一応、明日のこともあるし……あんまり凝ったものは用意できないけど、はやりさんにもおいしいものを召し上がっていただかないと」
京太郎「――ふぅ、やっぱり和菓子は時間かかるもんだな。高鴨堂でも、手伝わせてもらいたかったぜ……」
京太郎「あとは焼き目をつけて……うん、結構いい出来だ」
京太郎「ということで、本日はさつまいものきんつば、ご用意しました」
京太郎「抹茶、ほうじ茶、煎茶、玄米茶――お好みのものを、お申し付けください」ペッコリン
洋榎「洋菓子だけやない……やと……」
恭子「すっご……金色に光ってるで、おいも餡……」
由子「はむっ……ふわぁぁぁ……」トロー
絹恵「またー、大袈裟ですよ、真瀬先ぱ――はにゃぁぁぁ……」トレー
漫「前にも、似たような光景を見たような……」
はやり「イモの風味が残ってて、なおかつ甘い☆ とってもおいしいぞ☆」
郁乃「おいしいもの、食べ慣れてるいう感じやね~、瑞原プロは~」
はやり「そうじゃなくてぇ……京太郎くんの作るものを、食べ慣れてるんだぞ☆」
京太郎「よくご指導いただきますからね、お礼に差し入れをご用意する回数も、多かったと思います」
はやり「もう京太郎くんの手作りじゃないと、満足できないんだからね☆」
漫(飛ばしてはるなー、☆乱舞してるで)
洋榎「ふぉー、悔しいけどんまいなぁ……焼き目も硬すぎへん、ようできてるわ」パクッ
京太郎「よかった、好評で……こっちで和菓子作るのは、初めてだったからな」
京太郎「どうぞ、リクエストの抹茶のほう、立てさせていただきました」
はやり「わおっ、嬉しいぞ☆」
京太郎「といっても、抹茶粉末はあまり、いいものをご用意できませんでしたけど……」
はやり「ううん、無理を聞いてくれただけで、大感謝!」
はやり「それに、京太郎くんの和菓子食べながらお抹茶は、試してみたかったんだよね☆」
はやり「……うん、おいしい。ごめんね、作法通りのやり方しなくって」
京太郎「いえ、茶会というわけじゃありませんから。俺も、目の前で立ててませんし」
はやり「作法は知ってるのかな?」
京太郎「はい、師匠に一通りは……」
はやり「ほんと、なんでも出来ちゃうね……はい、結構なお手前でした」
京太郎「お粗末さまでした」
はやり「甘さも引き立つし、抹茶の香りと風味も引き立つし、よかったよ☆」
京太郎「ご満足いただけてよかったです……すみません、お仕事の合間に無理を頼んでしまって」
はやり「ううん、来年の新人さんと遊べて楽しかったし……京太郎くんとも会えたからね、平気だぞ☆」
京太郎「そういっていただけると……えっと、これの片づけが終わりましたら、俺も時間ができますので……」
はやり「うん、また指導させてもらうからね! 久しぶりに、対局形式で行こうか」
京太郎「お手柔らかに――いえ、全力で、お願いします」
はやり「もっちろん、そのつもりだぞ☆」ゴッ
恭子「……めげるわ」カタカタ
漫「末原先輩! しっかりしてください!」
~部活終了
京太郎「はぁ……やっぱり、はやりさんはつえーな……」
京太郎「と、引きずってても仕方ない……掃除して、さくっと帰るか」
京太郎「――まぁ、学校帰りに誰にも会えないのは仕方ないよな、うん」
京太郎「夜遅いから、先に帰る人たちは、まとまって帰るわけだし」
京太郎「はやりさんはタクシーだし、郁乃さんは教師だし……」
モブ子「おいおい、だから私が一緒に帰ってやってんだろ、メーン?」
「あんただけやないけどねー」
「きょ、京太郎くんに送ってもらえるん、嬉しいわぁ///」
「せやけど送り狼は勘弁やで」
「むしろあの子、送られ狼やないん?」
モブ子「……あかん、ほかのモブにキャラで負ける……関西弁強いなぁ」
京太郎「あほなこと言ってねーで、さっさとこい。はぐれると危ないぞ」
モブ子「まぁはぐれるほど純情派だからなぁ、しゃーないんよ」
京太郎「お前刑事だったのか」
京太郎「なんか、最後の一人まで送ってすげー歩いた気がする……」
京太郎「最後の一人は、執拗にお茶でも飲んでってって引っ張ってくるし……まぁ、親御さんのいない家に、上がってるわけにもいかねーよな」
京太郎「さて、やること済ませたら、今日はなにするかな――」
京太郎「こっちに来てからは、たこ焼き焼くか、コンビニ行くかしかできてなかったからな……」
京太郎「さて、誰に電話するか」
京太郎「――そうだな、せっかく近くにいるんだし、阿知賀の誰か……」
京太郎「玄先輩にはかけてなかったし、ちょっと電話してみるか」
京太郎「もしもーし、玄先輩ですか? ご無沙汰してます、京太郎です」
玄『ふぇぇっ!? きょ、京太郎くん!? ど、どうも、こんばんは、お久しぶりです!』
京太郎「いま大丈夫ですか? 一月頭だと、まだ忙しそうですけど」
玄『う、ううん、大丈夫だよ! あ、そうそう、テレビでお弁当見たよ~』
京太郎「あー、恥ずかしいですね……そういえば、板長たちが献立チェックしてたとか……なにか言われてました?」
玄『盛りつけは褒めてたよー、女性用らしいって。でも献立が、ちょっと男子高校生っぽいって』
京太郎「うぐっ……い、いや、だって俺、男子高校生ですし……」
玄『そうだよねー。だから私も、そう言って庇っておいたよ!』
京太郎「ありがとうございます……」
玄『でも私も、あの献立だと色々気になっちゃうかなぁ』
京太郎「栄養バランスはしっかりまとめましたよ?」
玄『ご飯が多いかな、ちょっとね。女性用のカロリーだと、もう少し控えめのほうがいいと思うよ』
京太郎「……なるほど、そうですね……その辺りが、男子高校生っぽいってことですか」
玄『だと思うよー。あとはねぇ、お弁当を開けるときの、びっくりが欲しいかなぁ?』
京太郎「驚くようなお弁当……どういう感じに?」
玄『そこは自分で考えてみよっか? 私に作るってことで、考えてみてね』
京太郎「ふぅーむ……」
京太郎「……そう、ですね……」
玄『ほらほら~、あと10秒~』
京太郎「えっ、制限時間あるんですか!?」
玄『ん~? わかんないかな~? 残り5秒だよ~』
京太郎「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って……そうだ、ご飯の上にハートマーク!」
玄『』
京太郎「ほら、あるじゃないですか。花でんぶでピンクのハート――」
玄『ふっ……ふえぇぇぇえぇっっっ!?』
京太郎「えっ」
玄『ハハハハ、ハートって、ハートってことは……ハートってことぉ!?』
京太郎「え、ええ……そうですよ、ハートです。開けたらびっくりしますよね?」
玄『するよぉっ!』
京太郎(力強いな……)
玄『わ、私のお弁当だよぉ? いいの? ハートなんてつけちゃって……ハ、ハート、なんてっ……////』
京太郎「まぁ、驚いてもらえるなら……あー、でもハートだけだとありきたりですかね」
玄『そ、そうかなっ? そんなこともないと思うけど……あ、で、でも! 参考までに聞いとこうかなぁ?』
玄『ハートだけじゃなかったら、その……な、なにで驚かせる!?』
京太郎(第二問か……)
京太郎「盛りつけを利用して、ハートを射抜くようになにかしたいですね」
玄『い、射抜かれちゃうんだっ……はわわわわ……』
京太郎「あなたのハートをシャープシュート、ってやつですね」
玄『……菫さんに、そういうお弁当作ってあげたの?』
京太郎「いえ? ああ、シャープシュートだからか……違いますよ?」
玄『ホッ……うーん、でもそれだけだと、ご飯にばっかり目線がいっちゃうよね』
京太郎「驚きはあくまで印象ですからね……」
玄『できればオカズでも、一工夫欲しいなぁ……』
京太郎「そっちもハートですか?」
玄『それだとご飯に負けちゃうからね! ここはやっぱり、相手の好きなものにするべきだよ!』
京太郎(なんだか嫌な予感がするのう……)
玄『ということで、ここはおもちだよ! オカズをおもちの形で作って、ドーン! と盛りつけて――』
京太郎(それ別のオカズやないかい!)
玄『見て驚き、触って楽しい、食べておいしい、すごいよね! おもち!』
京太郎(お弁当の話ちゃうんかい!)
玄『はぁ……いいなぁ、おもち弁当……』ポワー
京太郎(あかん、このコ……早くなんとかせんと……って、関西弁がうつってきてる……)
京太郎「い、いえ、でもですよ? 女性のお弁当におっぱ――おもちを入れたら、普通なら嫌がられませんかね?」
玄『?? どうして? 私、おもち大好きだよ?』
京太郎(めちゃくちゃ澄んだ目で言ってそうだな……)
京太郎「玄先輩は好きだと思いますけど、えーっと……たとえば灼先輩と食べてたとしましょう」
玄『ふんふむ』
京太郎「で、それを灼先輩が見たら、あまりよくは思わないんじゃないですかね?」
玄『ふぅ~む、なるほどなるほど、なるほどぉ~……たしかに、灼ちゃんはおもちが小さ目だからね!』
京太郎(そういうこっちゃねぇんだよぉぉぉっっ! けどもういい、そういうことにしとこう!)
京太郎「ま、まぁそういうわけですから……それよりは、お渡しするシチュエーションで、驚かせますよ」
玄『あぁ~、なるほど。それはどういう風にするのかなぁ?』
京太郎「そうですね……まず、朝から玄先輩を起こしに、お部屋に伺います」
玄『ふぇぇぇっ!? へへ、部屋に……あ、でも私、朝早いよ?』
京太郎「……そうでした。ま、まぁ俺も板場に入りますし、もっと早いですよ、たぶん……」
玄『同じくらいだと思うけどなぁ……うん、それで?』
京太郎「で――いつまで寝てんのよ、早く起きなさいよねっ……」
玄『起きてるよ?』
京太郎「ですよね。で、早く朝ご飯食べちゃいなさいよ、これ、お、お弁当――ついでだからね! 勘違いしないでよね、と……」
玄『でも中はおもち……これは本命だよね!』
京太郎「おもちは入れません……んー、男女逆だと鬱陶しいですね、このパターンは」
玄『えー、シチュエーションとしては、いいと思うけどなぁ』
京太郎「普通に起こすことにしますよ。で……『玄先輩、朝ですよ……起きてください、味噌汁が冷めちゃいます』」
玄『!!! う、うんうん、いいね! 急によくなってきたよ!』
京太郎「そうですか? 『あはは、お寝坊さんですね、先輩は……じゃあ、目が覚めるように――』」
玄『さ、覚めるように……』ゴクリンコ
京太郎「朝のお茶をご用意しておきま――」
玄『ブーッ! NGでーす』
京太郎「厳しいですね……とにかく、味噌汁が冷めちゃいますから、早く起きてくださいね」
玄『はぁーい……なんの話だっけ』
京太郎「で、朝食を食べながら……そういえば、玄先輩ってつくねが好きでしたよね、と」
玄『ああ、おいしいよね、つくね! 塩もいいんだけど、やっぱりつくねはタレだなぁって、いつも思っちゃう』
京太郎「お弁当に、入れておきました……お昼、一緒に食べましょうね。屋上で待ってますから」
玄『ふわぁぁ……う、うん! ありがとう! 一緒に食べようね!』
京太郎「ってな感じでどうでしょうか」
玄『……いいなぁ、早くそんな風に、お昼食べたい……』
京太郎「次に阿知賀に行ったら、やりましょうか?」
玄『うん! 約束だよ! 待ってるからね!』
京太郎「わかりました。楽しみにしててください」
玄『わーい、ありがとう! うふふ~、楽しみだなぁ~』
京太郎「来月以降ですからね?」
玄『わかってるよぉ……それなら、早く寝て、早く来月にしないとね!』
京太郎「それは寝すぎですってば……それじゃ、おやすみなさい」
玄『はーい、おやすみなさい!』
京太郎「色々約束してる気がする、全部覚えとかないとなぁ……」
京太郎「うぉっ、もうこんな時間か。あとは、近況メールを誰かに……」
京太郎「センター試験、もうすぐですね。無理をなさらないよう、あと身体に気をつけて」
京太郎「わからないことがありましたら、遠慮なくおっしゃってください」
京太郎「正月はせっかく長野にいたのに、会えなくて残念だったな」
京太郎「でも今回は姫松だから、インハイで縁もあったわけだし、合同練習とか合宿で会えるといいよな」
京太郎「さて、寝よう……あ、明日は漫先輩の誕生日かぁ……」ムニャムニャ
~金曜、終了
【1月第一週金曜】
今日は一日、前主将とよくお会いしたように思う。
朝、昼、部活の買いだし、等々。学校周辺も案内してもらえて、とても助かった。
表情が豊かで、喜怒哀楽もはっきりと見える。一緒にいて楽しい方だと思う。
でもそれは、こっちが楽しくしてもらえているだけ。
その先輩は、強い相手と麻雀しているときが、一番楽しそうだと感じた。
それに見合える強さはまだない、もっと上手くならないと。
そう思っているが、気がつけばもう1月、派遣を始めて五ヶ月にもなる。
もう少ししたら二年になり、後輩もできるということだ。
いつまでも、もっと上手くならないと、精進しなければ――と言っていられない。
はっきりと自分の強みを見極め、後輩に指導していける自信を持たなければ。
そんな風に思い始めたのは、親しくしてくださる方に、先輩が多いからだろう。
基本的に、夏のレギュラーや一軍について行動しているからか、学校によってはお相手くださるのが、二、三年だけのこともある。
そういった方たちのように、立派な先輩にならなければ。
ひとまずこれが、今年の――春までの抱負です。
…………
『なるほど、つまり私たちの姿を見て、そう思ってくれたってことか……嬉しいこと言ってくれるわね』
『ちょい待ち、これは明らかにうちらのことやろ。なにしろいまいるんは、こっちなんやからな』
『よく見たほうがいい、過去の経験則で書いてる……つまりどうあがいてもうちのこと』
『……別に、一年がいる学校でも、そこに二年、三年に刺激されたということでいいだろう?』
『そうよねぇ。むしろ一緒の学年がいるからこそ、上級生のありがたみがわかるのかもしれないわ』
『もしくは、昔から知っている憧れのお姉さんの話かもしれない。つまり京ちゃんは私を先輩の鑑として――』
『それはない』
『プロの後輩を指導する、先輩プロの姿を見て……とかじゃないかな☆』
『あるいは学校の監督とかね』
『後輩を叩き潰す姿に、共感は覚えないかと……』
『うちらはそんな指導してません!』
『こ、こっちだってそうだ』
『それはどうでしょう……』
『私たちの、あったか~い部活がよかったのかな?』
なんてこった。
一応、全員から影響受けてるんだけどなぁ……とはいえ、それを書くのも恥ずかしいな。
『まだ来てもらってへんと、影響を与えたとは言えんわなぁ……』
『妙な争いに参加しなくていいのは、精神衛生的にいいだろう』
『でもつまらなくないですか?』
『だよねぇ。できれば在学中に、いい影響受けて欲しいって思うけど』
『はい。同じ一年でも、異なる環境に置かれた者同士なら、影響を与えることもあると思いますし』
『同感です。ということで、早くうちに……今年だったら、先輩の誕生日もあったのですが』
『月初めだろう。なにか要求しても、彼が困るだけだ』
『そういうつもりではなかったのですが……なにか要求するつもりでしたか?』
『お金?』
『違う! なにもそういうつもりで――いや、もう言い訳はしない、面倒だ』
『来てほしいなら、素直に言えばいいノニ……』
『ち・が・う!』
『あれやね? いやよいやよも好きのうちばいう――』
『なんもかんも政治が悪い』
今年中――先輩方がいる間となれば、来月だけになるのか。
一人でも多くの先輩から、学びたいもんだ。
――――――――
~清澄
「なにも言わないで、わかってるから」
「いえ、なにも言いませんけど……」
「でもこういう話題だと、参加しづらいよね」
「」
「うおぅ、咲ちゃんのクリティカル攻撃だじぇ」
「笑顔でザックリ、うちの大将はえげつないのう……」
「咲さん、言いすぎです」
「ふ、深い意味はないよ! というか、久さんだけじゃなく、私たちも原因だし……」
(お願いです、京太郎くん……一日でも早く、戻ってください……そのときは絶対に、償いをしますから……)
~白糸台
「菫の指導は立派だと思う。そして私は、京ちゃんが一番心を許す先輩だと思う」
「……亦野、どう思う」
「本音で言いますけど、先輩の指導はいまでも私の糧になっています」
「そ、そうか……」
「スミレ照れてるぅ~」
「照だけに」
「私のことなんだが……まぁ、京太郎くんが一番心を許してる――というか、甘いのは間違いないな」
「一ヶ月の派遣以外にも、他校との合宿でなにかとお世話になりましたしね」
「ということで、やっぱり白糸台がナンバーワン!」
~永水
「最初の派遣先は、私たちだった……そこで、京太郎の基礎を築いたのは間違いない」
「はるるの言う通りです。私たちは先駆者として、堂々としていましょう」
「そうね、張り合うことはなかったわ……」
「それに京太郎さんは、色々な人からなにかを学べる、そういう方だと思います」
「ですねー。こんな私でも先輩と慕ってくれる、ほんとにいい子でしたからー」
「――ということで、そのことを教えに、姫松との合同練習を企画しておきましょう」
「異議なし」
「望むところです!」
「引率は三年、レギュラーと、二軍のトップ3を連れてく――ってとこですかねー」
「連休のお役目は、湧と明星に任せる……」
「突っ込みがいないと、こうなるんだ……」
「姉様、目が怖いです……」
~宮守
「……私たちは、ちょっと甘やかしてたかもしれないよね」
「シロは甘えっぱなしだったでしょうが」
「オンブ、シタリ!」
「添い寝したり」
「お弁当作ってもらったリー」
「……それは置いといて」
「いや、置いといちゃだめでしょ」
「どうしよう、京太郎くんが後輩に甘えっぱなしになったら、シロのせいだよ!」
「えぇ、私だけなんだ……」
「ダイジョウブ、セキニン、トル!」
「そうか、結婚するしかないかぁ……」
「やっぱり私たちのせいだよ!」
「そうだねー、でも大丈夫じゃないかなー。京太郎くんも、そこだけ見てたわけじゃないと思うよー」
「とはいえ、京太郎くんの後輩がみんな、京太郎くんみたいになったら……」
「いや、そこまでできる子も、そうそういないでしょ……たぶん」
「その分、やさし~く指導しそうだよね、京太郎くんはさぁ!」
「ああ、想像つくわ……」
「結局全部自分でやっちゃうか、負担が減るように育成するか……」
「後者になることを祈ってるよー」
~阿知賀
「反面教師か……」
「いきなりなにを言うかね、この子は」
「いや、別にー?」
「そうだよー、赤土先生は立派な優しい先生だもんね!」
「シズはいい子だなー、よしよし」
「でもすごいね、穏乃ちゃん! 反面教師って言われて、赤土先生だって気づくなんて!」
「……玄ちゃん」
「………………シズ?」
「え、えーっと……憧が言うから、そうなのかなーって……ウェヒヒ」
「はいそこ、あたしのせいにしないの」
「でも実際、京太郎がハルちゃんをどう思ってたか……よくわからぬ……」
「……ちゃ、ちゃんとレジェンドらしさ見せたし! プロと対戦したし!」
「そんなこともあったわねー、懐かしい」
「でも、赤土先生……指導は憧ちゃんや灼ちゃんに任せて、よくケーキ食べてましたし……」
「ぐふっ」
「自分のがなくなってたときは、拗ねたりしてましたのだ!」
「あうっ」
「合宿のときも、二日酔いであんまりいなかったし……」
「」チーン
「あぁっ、赤土先生!」
「――まぁでも、麻雀の楽しさは教えてあげられたかもね。ほら、うちらの部って緩かったしさ。顧問のおかげっていうかさ」
「憧愛してるぅぅっ!」ギュムー
「あちょっ、バカッ、なにすんのっ!」
「大変! 写真撮って京太郎少年に送らなきゃ!」ピローン
「やめてっっ! だからミーティング中に入ってこないで、お姉ちゃんは!」
~姫松
「まーったく、よそのガッコまで出しゃばってきて、かなわんなぁ、ほんま」
「とはいえ、うちとこはまだ、一週間もいてもろてないわけですし――」
「影響を与えてる――とは言いにくいのよー」
「でも、京太郎くんもみんなと仲良うやってくれてるわけやし……」
「このままおってもろたら、私らのことも……その、いい先輩やて、思てくれるかなぁ……///」
「もう思とるて、間違いないわ。今日も買いだしで、色んな店教えたったからなぁ!」
「その割には買いだしで、なんも持って帰らんかったわけですけど」
「瑞原プロを連れてきたのには、驚いたのよー」
「あれは驚きましたけど、ほんま嬉しかったですね。えらい濃い練習になりましたし」
「うちも大満足やったわ……でも、あんなんがゴロゴロおるっちゅーんやから、プロは怖いなぁ。楽しみでしゃーないわ」
「その意気やで、お姉ちゃん!」
「……楽しそうですね、洋榎。今日はえらいなごう、京太郎くんと一緒におったみたいやし。ご機嫌でなによりやわ」
「は、はぁっ? なに言うてんねん、恭子! お、おまっ、おままっ……う、うちは別にそんな……」
「恭子は意外と嫉妬深いんやねー、初めて知ったのよー」
「し、嫉妬!? 私が!? なに言うてんねん、そんなんあり得へんわ!」
「……自分のことって、気づきにくいんかなぁ」
「せやなぁ、間違いないのに。私も初日、一緒にたこ焼き買いに行ったいうんバレて、えらい怒られたわ」
「ちゃ、ちゃうて、あれは――そ、そういうんやなく、なんちゅーか……」
「……もうっ、京太郎くんのせいやで、あほぉっ……」
~1月第一週土曜
京太郎「今日は漫先輩の誕生日だ」
京太郎「一応、計画の進め方は恭子先輩からメールをいただいてたな」
京太郎「昼から部活をして、いつもの土曜なら夜まであるけど――」
京太郎「普段と同じ時間やったら切り上げて、そこから夜までパーティらしい」
京太郎「料理はケータリング、そう言われたけど無理を言って作らせてもらうことにした」
京太郎「プレゼントもご用意できなかったし、それくらいはさせてもらわないと」
京太郎「明日にでも、買いに行けたらいいんだが」
京太郎「それはともかく、料理の材料なんかもいるし、部活中に買いだしをしておこう」
京太郎「これは恭子先輩に言ったら、漫先輩以外なら誰かに声をかければいい、とのことだ」
京太郎「人手がいりそうなら、二人でもいいって言われたけど……俺含めて三人も抜けて、大丈夫かな?」
京太郎「まぁともかく急ごう」
※本日の通常行動にて、差し入れを選択できません
※本日の二回目の通常行動は、買いだし確定です。また遭遇もありません。漫以外から二人、選びましょう
京太郎「……あ、電話忘れてた」
京太郎「……もしもし、おはようございます。朝ですけど――」
絹恵『さすがに起きてるて……なにしろ今日は、漫ちゃんの誕生日やからな!』
京太郎「あ、さすがです……えーっと、どうしましょう。お迎えに行かなくて、大丈夫でしょうか」
絹恵『一応、パーティのことは内緒にしてるからなぁ……あ、お誕生日おめでとう、くらいは言うたってな』
京太郎「わかりました――いえ、いまのはそっちじゃなくて、絹恵先輩のお迎えです」
絹恵『ぇ――えぇぇぇっ!? い、いやいや、ええて、そんなん! それにほら、うち遠いし――』
京太郎「それなら大丈夫ですよ、俺の家からなら、そこまで離れてませんし」
絹恵『は――』
京太郎「では、これからお伺いしますね。そういうことでしたら、お気遣いされなくても平気ですから」
絹恵『せやからちゃうて――』
京太郎「少々お待ちくださいませ」ピッ
絹恵「…………ど、どないしょ」
京太郎「おはようございます」
絹恵「あ、あー、うん……お、おはよう、ほな急ごや」
京太郎「でもどうして、外にいらしたんですか?」
絹恵「う、うちはほら、あれやん……その、まだオカンもおるし……見られたら、なに言われるやわからんもん……」
京太郎「でも、さっき……玄関から顔をおだしになって、見ておられましたけど」
絹恵「」
京太郎「綺麗なお母さんですね、さすが絹恵先輩たちのお母さんです」
絹恵「か、からかわんとって……っていうか、それほんま?」
京太郎「はい、もちろん先輩方もお綺麗で――」
絹恵「そっちちゃうわ! えっ、ほんま……オカン、見とったん?」
京太郎「ええ、でも笑顔でいらっしゃいましたから。怒ってるのではなさそうですけど」
絹恵「そら、からかうネタ見つけて喜んどるだけや……あああ、うちに帰りとうないわ……」
京太郎(……そんな風には見えなかったけどなー。なんか俺と目があったときも、口が「娘をよろしゅーな」みたいに動いてたし)
京太郎「……あ、そうだ。外でお待ちになってた分、寒くなかったですか? これどうぞ、あっためておきましたから」
絹恵「あっ、カイロ……おおきに。あー、生き返るわぁ」
絹恵「……これ、一個だけ?」
京太郎「あー、すいません……両手分、ご用意すべきでしたね」
絹恵「や、そうやなくて……ほんなら、手ぇ貸して。んで、こう……わ、私のポケットで、一緒にあっためたらええやろ?」
京太郎「……ありがとうございます。とてもあったかいです」
絹恵「ん……ほんなら、学校いこか。遅れんようにな」
~土曜、昼
京太郎「土曜は授業短くていいよな」
モブ子「部活があるけどねー。あ、それと誕生日だから、忘れんなー?」
京太郎「任せとけ。っと、その前に、先輩の好みについて整理しとこうか」
モブ田「俺はわからん、モブ子頼むわ」
モブ子「了解よ。えーっと、あの人はなにかな……肉だね、豚でも牛でも鶏でも羊でもだって」
京太郎「ジンギスカンか……」
モブ子「素直に鶏か牛でええやろ」
モブ田「せやな」
京太郎「逆に嫌いなもんとかは?」
モブ子「甘い物」
京太郎「えっ」
モブ子「まぁ嘘だけどな」
京太郎「すげー汗かいたじゃねーか」
モブ子「なんでも好きそうだけど……セロリがだめって聞いたことある」
京太郎「なんだそれ、子供っぽくて可愛いじゃねーか」
モブ子「わ、私もぉ、セロリ苦手なんだー^^」
京太郎「今度セロリサラダ作ってやるよ、がんばって食えるようになれよ」
モブ子「扱いの差!」
京太郎「冗談だ。で、ほかに苦手なもんは?」
モブ子「目立ってはないみたいよ」
京太郎「オッケー、まぁなにかあるなら、買いだしのときに聞けばいいだろう」
~土曜、部活前
京太郎「さて――とりあえずは、部活だな」
恭子「とりあえずはないやろ、部活大事やで」
京太郎「おっと、すいません。そういうつもりでは」
恭子「ま、今日は見逃したるけどな。今日に限っては、メインが別にあるわけやし」
京太郎「みなさんは、プレゼントなんかご用意されてます?」
恭子「そらもちろん。まぁ京太郎くんは、準備期間も短かったんやし、あと料理もしてくれるんやろ?」
恭子「気にせんでええと思うで」
京太郎「はぁ……いえ、そうですね。ともかく料理は、俺に任せてください……気合、入れますから」ゴッ
恭子「」カタカタ
由子「あらー、京太郎くんなにしたのよー。恭子が二回戦のときみたいになってるのよー」
京太郎「ええええ……ちょっと気合入れただけなんですけど」
洋榎「それでこんななるなんて、どんだけの気迫やったん。まぁええわ、部活やる気やっちゅーことやしな」
京太郎「いえ、やる気になったのは料理のほうなんですけど」
由子「もうなに食らっても、こうなっちゃうのよー」
恭子「……い、いや、大丈夫やで……ちゃんと、準決勝で持ち直したからな」グッ
洋榎「やっぱ恭子は強いなぁ……おっと、そろそろ漫も来る頃やで」
由子「まずは普段通り、気にしてるようだったら、お祝いくらいは言ってあげるのよー」
京太郎「了解です」
絹恵「お待たせやでー。ほな、部活始めよかー」
漫「えらい張り切ってんなぁ……あ、先輩方もお疲れさまです。受験のほう、大丈夫ですか?」
由子「だ、大丈夫なのよー(震え声」
恭子「予備校も大変やで」
京太郎「なにかありましたら、遠慮なく声かけてくださいね」
恭子「うん、おおきに」
京太郎「――さて、買いだしの前にはある程度、部活にも集中しないと」
郁乃「あ、京太郎く~ん。ちょうどええとこに~」
京太郎「はい、なんでしょう」
郁乃「ちょっとあの卓空いてるから、入って打ってきてもらえるか~?」
京太郎「いいんですか?」
郁乃「大丈夫やで~、ほなよろしく~」
京太郎「よぉし! 久々の対局だっ……よろしくお願いします!」
恭子「ん……京太郎くんか、よろしゅう」
洋榎「ほほー、京太郎と打つんか……初めてやし、楽しみやな。期待してるで!」
絹恵「手加減はしやへんからね……ほな、よろしくお願いします」
恭子25000→
洋榎25000→26000
絹恵25000→
京太郎25000→24000
洋榎「まずはご挨拶やなー、京太郎、それやで……」
恭子「点数は?」
洋榎「ご挨拶言うたやろー? 挨拶は1000点や、きまっとるやろ」
京太郎「はい……」
京太郎(張ってるようにさえ見えなかったぞ……さすが、姫松エースで、来年のプロだ)
絹恵「お姉ちゃんすごいやろー?」
京太郎「ええ、でも……ここで負けてたら、全国なんて目指せませんよね!」
恭子「洋榎のが上やで、男子全国よりは」
洋榎「そんなん関係あるかい! やる気になったやつは、色々怖いからなぁ。全力できぃや、京太郎!」
絹恵「うちも負けへんよー」
恭子25000→24000
洋榎25000→26000→30000
絹恵25000→24000
京太郎25000→24000→22000 最下位
洋榎「一発くるでー、一発くるでー……ほらぁっ、ツモ!」
京太郎「ああぁぁぁっっ……お疲れ、さまでしたぁ……」ガクッ
恭子「よう食らいついとったけどなぁ」ヨシヨシ
洋榎「まっ、まだまだ言うことやなー。絹もやで、精進しーや」
絹恵「……うん、頑張らんとっ……」ギュッ
洋榎「せやけど……京太郎、本気やったとは思うけど……まだだしとらんなんか、あったんちゃうか?」
京太郎「そんなことは……まぁ、なくもないというか……あれやると、ぶっ倒れることもあるんで、最近は注意してるんです」
恭子「えぇっ! ちょっ、それ大丈夫なんか……?」
京太郎「体力とか、集中力的な問題なんで……まぁ、もうちょい体力がついて対局慣れすれば、改善されてくと思います」
洋榎「あー、せやな。今日は倒れられても困るし……ほんなら次や。倒れてもええとき、もっかい相手させたるからな!」
絹恵「……私も、そういう武器があらへんとな……お姉ちゃんにも漫ちゃんにも、負けんようにっ……」
恭子「ふ、普通の麻雀も悪ぅないもんやで……」
京太郎「しかし……強い、洋榎先輩……照さんとどっちが、と言われると……あれだけど」
京太郎「照さんもそうだけど、シロさん……あとは、利仙さんもプロ入りだったか」
京太郎「知ってる四人だとやっぱり、照さんが一番だな……あ、そういえば春にはレジェンドもプロ試験だったか」
京太郎「オープン戦から、見ておきたいなぁ」
京太郎「さて――それじゃ、そろそろ買いだしに行かないと」
京太郎「洋榎さん、ちょっとよろしいですか?」
洋榎「おっ、リベンジかー? ええで、いつでも相手なったるわ!」
京太郎「ではなく――そろそろ、パーティの買いだしに行きたいので、その……案内をお願いできましたらと」
洋榎「はぁ? 前に案内して――あ、ああ、せやったな」
洋榎「あんとき、店に連れてったれへんかったんや、すまんすまん」
京太郎「ってことで、お願いしていいですか?」
洋榎「ええでー、あっ……その前に……おーい、恭子ー!」
恭子「はい? なんや呼びました、洋榎?」
洋榎「京太郎が買いモン行く言うてるわ、うちらで案内したろか」
恭子「えっ、わ、私もですかっ?」
洋榎「なに言うてんねん、京太郎がうちに声かけたときから、ずっと聞き耳立てとったやないか」
恭子「い、言いがかりやろ! ちゃうで、京太郎くん!」
京太郎「はぁ……えーっと、なんでしたら、店の場所だけ教えていただければ、自分で行ってきますけど」
洋榎「どんんくらいいるかわからんし、人手おったほうがええやろ。うちは行くで」
恭子「あっ……ほ、ほんなら私も。ついてってええかな?」
京太郎「はい、嬉しいです」ニコッ
恭子「そ、そうか」ホッ
洋榎「いよっしゃー! なら出発や。あ、絹と代行にだけ、声かけとこか」
京太郎「さっき言っておきました、大丈夫ですよ」
恭子「しっかりしてんなぁ……ほな、行きましょか」
洋榎「ここやでー! 安いし、品ぞろえも多いしな!」
恭子「部でも、あと学校行事でも世話なっとるとこやから、それなりに顔も利くし、便利やで」
京太郎「ああ、ここだったんですか。たしかにいい店ですよね、いつも助かってます」
洋榎「ん?」
恭子「えっ」
「あらま、京太郎くんやん。なんや、今日はべっぴんさん二人も連れて、モテモテやねぇ」
京太郎「あ、おかみさん、毎度お世話になってます。お二人は学校の先輩なんです、案内していただいて」
「んー? なんや、よう見たら姫松のヒロと恭子か」
洋榎「なんやはないやろ、おばちゃん!」
恭子「今日はあれなんです、漫ちゃんのお誕生日なんで――」
「ああ、もうそんな季節なんか。去年もぎょうさん買うてもろたし、今年もサービスしよかな」
「京太郎くんもおるし、あんたやったらうまいこと料理してくれるやろ。食材も本望やろし」
京太郎「いえ、そんな……でも、使うからには大事に料理させていただきますよ」
「あの子はセロリ嫌いやからなぁ……あ、うまいこと料理したれる?」
京太郎「味のクセだけなら、誤魔化せますけど……まぁ、一品だけ作ってみます。あとは鶏と、そこの――」
「さすがやねぇ、お目が高いわ。ほな、これもあったほうがええやろ。サービスしとくで」
京太郎「いいんですか? ありがとうございます、じゃあこっちもいただきますので」ニコッ
「そうそう、サービスもろたら買ってお返しや……わかっとるなぁ、京太郎くんは。ええお客さんで嬉しいわ」
京太郎「自分なんてまだまだですよ」
「それにええ男やしねぇ……そうそう、うちの娘、来年中学二年やねんけど、これがまた可愛くてなぁ――」
京太郎「はぁ……」
「ところで、京太郎くんは彼女ておるんかいな」
京太郎「いえ、いませんけど」
京太郎(話飛ぶなぁ……)
洋榎「……なぁ恭子」
恭子「なんです……あ、ええですわ、言わんでも」
洋榎「ほんま、店だけ教えたらよかったんちゃうか」
恭子「言わんでええて、言うてますやん……ちゅーか、うちらより店のおばちゃんと親しいて、どういうことなん……」
洋榎「めげるわ……」
恭子「それ、私のネタやねんけど」
洋榎「ネタなんかい!」
京太郎「……はい、じゃあお代です。じゃ、また寄らせていただきますので」
京太郎「お待たせしました。行きましょうか、お二人とも」
洋榎「いや、なんでもないて……あれ、袋は?」
京太郎「ありますよ、お二人に持ってもらうのはこっちです。ちょっと重いですけど」
恭子「……あほ。あんたの持ってるやつ、うちらの五倍くらい重そうやで、どう見ても」
京太郎「ま、男子ですからね、これでも。女性の前でちょっとくらい、かっこつけさせてくださいよ」
恭子「なっ//// ほ、ほんま……あほぉ……///」
洋榎「恭子、真っ赤なっとるで」
恭子「なな、なってへんわ! そういう洋榎こそ!」
洋榎「ゆ、夕日のせいやろ」
京太郎「二人ともー、急ぎますよー」
洋榎「ちょっ、待たんかいな!」
恭子「慌てんでも、時間は間に合います。それよりは気ぃつけて帰ろや」
京太郎「はい、そうですね」
全員『漫(呼び捨て、ちゃん、さん、先輩)! 誕生日おめでとーう!』パンッ
漫「」
漫「あ……あ、ああ、ありがとうございます……」
漫「っていうか、ええ!? 今年もやってくれるん? 言うといてや!」
恭子「去年は教えた上でやったけど、今年はサプライズ考えてたからな」
絹恵「ふふふ、驚いたやろ? せやけど、驚くのはまだまだやで」
漫「え?」
洋榎「去年は料理もケーキも出来合いやったけど、今年はちゃうで――」
漫「うそっ、まさか、みんなで――」
由子「ふふー、その辺は料理長の口から、お願いするのよー」
京太郎「はい。お察しの通りです、みなさんと一緒に、ご用意させていただきました」
漫「うわぁっ、ほんまに!? めっちゃ嬉しいわ!」
洋榎(……買いモン行っただけやけどな)
恭子(や、野菜の皮剥きはしたから)
由子(私らがピーラー使うより、京太郎くんの包丁のが早かったのよー)
絹恵(これは本格的に、オカンに怒られかねんで……)
京太郎「――ってことで、お料理のほう運んできますね。いま保温してますから」
恭子「!! て、手伝うわ!」
絹恵「そうやね、私も――」
京太郎「みなさんは、漫先輩の接待を……あと、プレゼントなんかも、いまのうちに……俺、ご用意できてませんから」ボソッ
洋榎「ん……せやな、そうしとこか」
由子「ほい、漫ちゃーん。こっち座ってなのよー……はい、私からのプレゼントー」
漫「あ、ありがとうございます……」
「漫先輩おめでとー」
「漫ちゃんおめでとう、これうちらからなー」
ワイワイ ガシャーン
京太郎「……なんか割れた音聞こえたけど、大丈夫か?」
京太郎「さて、急いで運ぶとするかな」
京太郎「どうぞー。立食用に、大皿とトレイ、取り皿とご用意しましたのでー」
洋榎「やばいな」
恭子「作ってるとき……っちゅーか、できたときは思ってなかったけど」
絹恵「本格的なパーティみたいやで」
由子「さて、気になるのは漫ちゃんの反応なのよー」
漫「……………………」
漫「え、嘘やん?」
漫「も……もー、みんなしてからこうて、ほんま……こんなん、ケータリングやないと用意できへんやろ?」
恭子「……まぁ、そう思うわなぁ」
絹恵「漫ちゃん、現実見ようや」
漫「……ほんまかいな……京太郎くん、こんなすごいのん、作ってくれたん?」
京太郎「はい……なるべく時間をかけて、丁寧に作らせていただいたつもりです」
漫「あ……あり、がとうっ……ほんま、おおきになぁっ……」ボロボロ
京太郎「!? ちょっ、だ……大丈夫ですかっ?」
由子「あらー、涙腺きちゃったのねー」
恭子「私らのプレゼントもろたときより、よっぽど嬉しそうに見えるなぁ」
漫「そんなことっ、ないですっ……みんな、嬉しかったですて……ほんま、おおきにですっ……」
京太郎「……どうぞこちらに。お料理、盛らせていただきますので。あ、みなさんもどうぞ、お好きに――」
洋榎「ええんか! よっしゃ、狙うてた唐揚げもらいやで!」
絹恵「お姉ちゃん早いて! そら、昨夜の番組からこっち、ずっと食べたかったけどやな……」
恭子「しゃーないなぁ、洋榎は……ほな、漫ちゃんのお世話はいったん任せてええか?」
京太郎「はい、お任せください」
恭子「ん、頼むわな……漫ちゃんも、えらい嬉しそうやし」
漫「なっっ……すす、末原先輩、なにをっ……////」
京太郎「すみません、最初は俺にさせてくださるそうですので……プレゼントをご用意できませんでしたから、これくらいはさせてもらいたくて」
京太郎「お嫌でしたら、またあとで自由に動いていただきますから――」
漫「……あほやなぁ、京太郎くんは。嫌なわけあれへんやろ」
京太郎「よろしいんですか?」
漫「当たり前や。それに、こんな……おいしそうなプレゼントまで用意してもろて、もう……嬉しないわけないやん、ほんま……」
漫「嬉しすぎて、泣いてまうやんっ……」
京太郎「大丈夫ですか?」フキフキ
漫「んっ……よし、食べるで! あ、それと……その前に一つ、ええかな?」
京太郎「なんなりと。今日はプレゼントの代わりに、漫先輩のおっしゃることは、なんでもしますので」
漫「ん? いまなんでもするて言うたやんな?」
京太郎「はい」
漫「……ほんなら、その……今日は一日、私のそばで……私専属の、執事やってくれへんかな?」
京太郎「……承知しました」
漫「……離れんと、やで?」
京太郎「心得ております、漫お嬢さま」
漫「――っっ! ほ、ほな、頼むわ……たの、みます……わ……」カァッ
漫「んぅっ……おいしいわ、この一口カツ……こっちの唐揚げも、すっごいおいしいで!」
京太郎「喜んでいただけて、なによりです」
漫「こっちのハムの、サラダ……やんな? ドレッシングかな、甘いんがええわ……この細かい野菜の歯応えも、えらいええしな」
京太郎「こちら、なんの野菜かおわかりですか?」
漫「あはは、ごめんなぁ。料理とかは疎うて、ようわからんねん」
京太郎「実はこれ、セロリなんです」
漫「!? えっ、ほんま……全然、あの苦い感じせーへんで!?」
京太郎「気にならないよう、処理しましたから……もちろん、お気に召されなければ下げようと思ってたんですけど。お口に合って、よかったです」
漫「……うちが嫌いやて、知ってて?」
京太郎「お叱りは覚悟してます」
漫「叱らへんよ、そんなん……うちの苦手を、おいしいしてくれて……手間もかけてくれて、もうどんだけ嬉しいか……ありがとうな、京太郎くん」
京太郎「漫お嬢さまのためなら、苦労でもありませんよ」
漫「京太郎、くん……」ポー
恭子「」
由子「あぶないっ! さ、皿が落ちるとこだったのよー……ちゃんと持ってやー、恭子」
洋榎「聞いてないで、この顔」
絹恵「なんなんあの空気! 見てるこっちが、えらい恥ずかしなってくるわ////」
洋榎「くくくっ、今月は絹の誕生日もある……これは楽しみになってきたな!」
漫「ふぅ、ちょっと休憩やな……あ、お茶もらえるかなぁ? 紅茶じゃないやつでな」
京太郎「はい、どうぞ……ご用意しております」
漫「んー、至れり尽くせりやなぁ、最高や……けど、緑茶飲むと、お米食べたくなるなぁ」チラッ
京太郎「はい、それもこちらに……塩むすびに海苔ですけど、大丈夫ですか?」
漫「これこれ、こういうのがええねん、こういうんが……うん、ええ塩加減。それに結び方もええなぁ、口の中でポロッとほぐれるもん」
京太郎「喜んでいただけて、よかったです」
漫「んー、おいひいなぁ……あ、せや。ちょっと肩揉んでもろてもええかな、食べてる間に軽くでええから」
漫「得意やて聞いてるで?」
京太郎「ええ、大丈夫です……では、失礼して」
京太郎「肩から首筋まで、少し解すだけにしておきますね」
漫「あーい……はむはむ……っ……ぇ――っっ!?」
漫「んひゅっっ! ひぁっ、あっ……なっ、い、いまのっ……きょう――くふぅぅんっ!」
京太郎「痛くないですか?」
漫「へ、へい――っっ……い、いやっ、やっぱええ! そんな肩凝ってなかったし!!!!」//////
京太郎「触った感じでは、結構凝ってましたけど?」
漫「あ、うっ……ううん、ええねん……これは、日誌の書き込みの意味がわかったわ……」
漫「また今度、ゆっくり頼むわな……」
京太郎「……そうですね、お祝いの席ですし。今日は食事とケーキを、お楽しみいただけましたら」
漫(はうぅぅっっ……だ、大丈夫やったやろかっ……声とか、聞かれてへんかな……)
恭子「」
洋榎「な、なんや、さっきの……」
絹恵「//////」
由子「な、なんかすごそうだったのよー///」
漫「\(^o^)/」
京太郎「漫せん――お嬢さま、いかがなさいましたか? お顔が赤いようですけど……」
漫「はひぃっ!? ひゃっ、な、なんでもないで、きき、気にせんとって――」
京太郎「…………」
京太郎「……失礼します、熱を計らせていただきますので」スッ
漫「ふぁっ!? あ、あの、手ぇが……っ!?」
京太郎「…………」ピタッ
漫「」
漫「~~~~~~~っっっっ!?!?」
漫(か、かかかか、顔っ、顔ぉぉぉぉっっ!)
京太郎「……少し、熱いですけど……平熱、かな?」ブツブツ
漫「ひゃぅっ……あああ、あ、あん、ま……う、動いたら、あ……あかん……で……い、息も、近い……し」
漫(……って、そうやないやろ自分! なんでやっ、おでこ当てるておかしいやん! 手ぇや思たわ!)
漫(手ぇはあれか、髪上げるだけか! や、もうっ、それ以前に……ち、近いっ、京太郎くんの顔……く、口が、近いて……)カァァァァッ
恭子「……これはあかんやろ、ドクターストップでええやんな?」
由子「残念ながら、うちに医者はいないのよー」
洋榎「まぁええやん。それよりあっちのが問題ちゃうか?」
絹恵「えっ……代行!? なにビデオ回してるんですかっ、漫ちゃん怒りますよ!」
郁乃「え~? 最初から回しとったのに、いまさらやろ~」
恭子「だから黙っとったんですか……」
郁乃「あぁ~、最高やわ~。漫ちゃんええ顔してるで~」
由子「超悪趣味なのよー」
絹恵「それ撮って、どうするつもりですか……」
洋榎「これ、絹の誕生日でも撮るんとちゃうか」
絹恵「やめてくださいね!?」
郁乃「なんやて~、聞こえへんなぁ~」
京太郎「……熱はなさそうですね。ケーキ、食べられますか?」
漫「は……い……食べる、ます……から、そ、その……そろそろ……顔を……」
京太郎「……漫先輩、肌きれいですね」
漫「!? あ、あ、ああ……あ、ほぉ……なに、言うてるんっ……」/////
京太郎「それでは、ケーキのほうお持ちしますので……あ、少し離れますけど、大丈夫ですか?」
漫「そ、そうして……あんまり傍におられたら、ちょっと……こっちがもたんわ……」ハァハァ
京太郎「わかりました……すぐに、戻って参りますので」ボソッ
漫「~~~~~~~~~~っっ////// み、耳ぃ、あかんてっ……んっ……」
京太郎「さて、ちょっと大き目だけど……参加してる部員多いし、なんとかなるかな?」
京太郎「――ということで、こちらが本日のバースデイケーキになります」
京太郎「イチゴを混ぜ込んだレアチーズのタルトに……そちらが甘さを控えてありますので、甘味を詰めたフルーツのジュレソースを乗せました」
漫「……読めへん」
恭子「筆記体苦手か」
絹恵「ハッピーバースデイ、スズ……やね」
洋榎「こういう板チョコ、なんでか欲しなるなぁ」
由子「ただの子供なのよー。あれは、漫ちゃんのやからねー?」
洋榎「わかっとるー言うねん」
郁乃「カットの前に写真撮っとくな~、はい、ええよ~」
最終更新:2026年01月17日 13:26