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絹恵「うん? どしたん、上機嫌で」

京太郎「いえ、なんか重い空気だったんで、和ませようかと」

絹恵「ああ……そやねぇ、なんていうたらええか……」

絹恵「いまはまだ、お姉ちゃんおるやん?」

京太郎「そうですね」

絹恵「けど、再来月に卒業して、おらんくなってまうやろ?」

京太郎「あー……それで、ちょっと空気がしんみりと?」

絹恵「いや、そこは問題ないねん」

洋榎「おい!」

京太郎「バッサリとひどいですね……じゃあどうして?」

絹恵「うーん、問題ない、いうたらあれやけど……そういう、頼るもんがない中で春の大会や。それをどう、攻略するかと思てな」

京太郎「なるほど……けど姫松って、秋は南大阪一位だったじゃないですか」

絹恵「――近畿大会、私らは……漫ちゃんも、三箇牧に手も足もだせんかった」

京太郎「……北大阪ですね」

絹恵「あそこの荒川憩ちゃん、今年の夏もすごかったやろ……秋もあれやし、そんなんで春はどうなるかって――」

絹恵「まぁ、そんな不安が出てしもた、いう感じやろか」

京太郎「………………」

京太郎「……諦めますか?」

絹恵「そんなわけあらへんやろ!」ガーッ

京太郎「なら――とことん足掻きましょうよ。いいじゃないですか、挑戦者」

京太郎「清澄も、夏はそんな感じでしたよ……実績もないし、地区には龍門渕がいたし、チャンピオンは照さんだったし」

京太郎「それでも部長たちは、頭捻って身体動かして、麻雀に熱中して――団体優勝しました」

京太郎「どっかの学校のレジェンドは、団体戦は総合力だ、なんてことも言ってました」

京太郎「たしかに、個々では負けることもあります。だけど団体戦は、それを補えるっていう利点がありますから」

京太郎「一人が強くても、そこをしのいでほかが勝てば、団体戦は抜けられるんです」

京太郎「……そこはちょっと、じゃなく……かなりうらやましいですね」

絹恵(そうか……京太郎くんは、団体戦には出られへん……)

京太郎「やりましょうよ。チームワークを磨くのでもいいし、平均力を上げるのでもいいですし」

京太郎「悩む暇があるなら、打ちましょう。俺も打たせてください」

京太郎「手も足もだせなかったなら、手か足か、頭でもだせるようになりましょう」

京太郎「やれることをやって、やり尽くして――試合直前だけ、ちょっと悩みましょう。あとは当たって砕けろってことで」

絹恵「…………あほ」

京太郎「なんで!?」

絹恵「砕けてどうするん。砕けんように考えてるんやろ?」

京太郎「そうでした……」

絹恵「――けど、京太郎くんの言う通りや。砕ける気持ちで、やれることやり尽くすわ……そやないと、勝てるもんも勝てん」

絹恵「先輩らは……努力もせんと、名門を強うして、結果残してきてるんと違うもん」

絹恵「名前に甘えるんでもなく、いまの状態に満足するんでもなく……上を見なあかんわな、なっ!」

京太郎「――はいっ!」

絹恵「ふぅ、なーんやすっきりしたなぁ……うん、秋の大会からこっち、ずっと引っかかってたんはそれかもしれへん」

絹恵「……それが原因で、京太郎くんにも負けっぱなしやしな~」

京太郎「お、言いますね! じゃあ一勝負、やりましょうか」

絹恵「そやな、休憩も十分やし……今日こそ勝つで!」

京太郎「こっちも負けません、よろしくお願いします」


絹恵(……そうや、私は弱い……だからこそ、強くなれるんや……憩ちゃんに、いつまでも負けてられるかいな!)

絹恵「……おおきにな、京太郎くん……」


【入れ忘れおまけ】


京太郎「まぁ――清澄の団体優勝はあいつらの努力で、俺が自慢げに言うことじゃないですけどね」

絹恵「はぁ? そんなわけあれへんやろ。知ってんねんで、えらい大荷物背負って、ホテルから会場まで歩く男子部員がおったん」

京太郎「あー、たしかに……色々持ってましたからね」

絹恵「そういう支えがあってこそ、あの子らも麻雀に集中できたんやろ。それを蔑ろに考えてるようなら、なんぼ強うても、私はあの子らを許さへん」

京太郎「いや、その……あいつらは、ちゃんとわかっててくれてると思いますけど……」

絹恵「せやったら、自分も自慢げにしとったらええやないの。胸張って、な?」ボイーン

京太郎(は、張ってる……さすがっす……)

絹恵「??」

京太郎「いえっ、その通りだと思います!」マエカガミー

絹恵「えっ! なに、お腹でも痛いん?」

京太郎「や、大丈夫っす……ちょっと、その……休めば、治るんで……」モジモジ

絹恵「ふぅん、なんや体調悪いんやったら……私の膝使う?」

京太郎(それは余計悪くなるからダメぇぇぇ――っっ!)

漫「私のでもええでー」

京太郎(おなじく!)

洋榎「なんやー、うちのがええんかー、しゃーないなー」

京太郎「………………ぎり、セーフか?」

洋榎「なんや失礼なオーラ感じたで、勝負するか? 麻雀楽しませたるで」

京太郎「」スマセン

京太郎「お腹も膨れたし、部活やるぞー!」

京太郎「今週も今日までだし、買いだし行くかな。来週の分だ」

京太郎「……あ、洋榎先輩」

洋榎「おぅ?」

京太郎「買いだし行きますけど、一緒にどうですか?」

洋榎「……うちはなぁ、これでも先輩でやなぁ……それも去年のエースやねんで? 元主将やで?」

京太郎「すごいですね、さすがです。で、行きません?」

洋榎「…………行こか」

京太郎「はいっ!」

洋榎「ほんでや、なんか買うもんでもあんのか?」

京太郎「いっぱいありますよー。今日使ったせいで、材料関係はほぼ切れてますし」

京太郎「あとは部室の麻雀用卓、あれの椅子の部品です」

洋榎「椅子?」

京太郎「一軍のはそうでもないですけど、二軍三軍のが、かなり弱ってますからね」

京太郎「買い直しまではできないですけど、修理くらいはさせてもらわないと」

洋榎「はぁー、働きもんやなぁ」

京太郎「そのために呼ばれたようなもんですからねー」

洋榎「…………いまはちゃうけどな」ボソッ

京太郎「ありがとうございます」

洋榎「!? き、聞こえてたんかい!」

京太郎「気づいてないかもしれませんけど、洋榎先輩の声、おっきいですよ」

洋榎「失礼やな!?」

京太郎「……重い」

洋榎「買いすぎや、アホぉ! っちゅーか、これもう椅子そのもの作る材料ちゃうんか……」

京太郎「だって安く投げ売りしてるんですもん!」

洋榎「……あーもう、しゃーないなぁ。こっちかしぃや、持ったるわ」

京太郎「す、すみません……」

洋榎「麻雀以外で手伝えるとは、思とらんかったなぁ」

洋榎「ほな帰ろかー。そろそろ部活終わるで」

京太郎「うぃー、了解です」

洋榎「ほらー、キリキリ歩かんかい、京太郎ー」

京太郎「ちょ、ちょっと待ってくださいって、ぬおぉぉっ……」

洋榎「ほんましゃーないやっちゃなー……しゃーない、もうちょっとだけ手伝うたろか――ぁ?」

京太郎「あっ」

雅枝「ん?」

雅枝「誰や思たら京太郎と、洋榎やないの。なんや二人して、デートかいな」

洋榎「!? ででで、デートちゃうわアホ! 買いだしやろが!」

雅枝「姫松の元主将がなぁ……嘆かわしいもんやで」

洋榎「あ、あほぉ! うちかて忙しかったんやけど、京太郎がどうしてもいうから――」

京太郎「すみません、忙しいところを無理に……」

洋榎「!? やっ、ちゃうて、いまのは言葉の綾いうか――」

雅枝「なんや、やっぱりデートかい」

洋榎「ちゃういうてるやろおおおおおおお! 話聞けえええええええええええ!」

雅枝「まぁなんでもかまへん、なかようしぃや。あと、車に気ぃつけなあかんで」

京太郎「了解です。それじゃ、失礼しまーす」

雅枝「ほななー」

洋榎「……………………」

京太郎「洋榎先輩? 行きましょう」

洋榎「…………なんで余裕やねん」

京太郎「まぁ誤解されても平気ですから」

洋榎「!?」

京太郎「はぁー、買いだし終了。洋榎先輩、ありがとうございました」

洋榎「んー……はぁ、なんやもう、ごっつ疲れたわ……あとよろしくー」テフテフ

京太郎「足取りが重いな……無理に付き合わせたのは、悪かったかもしれない……」


漫「あ、お疲れさーん。あれ、洋榎先輩は?」

京太郎「途中で雅枝小母さんに会いまして、疲れてらっしゃるみたいです」

絹恵「おかーちゃん、なにしてんのやろ……」

京太郎「ご自宅のほうに向かってらしたようですけど、なにか用事でしょうかね」

漫「まぁええやん。それより、そろそろ部活終わりやでー。荷物片づけたら、帰ってええからな」

京太郎「はい……って、あれ? 掃除は? 俺、今日は当番のはずですけど」

絹恵「当番以外の日にも、よう手伝ってる部員がおるらしいねん」

京太郎「」

漫「ごっつい手際ようしとってなぁ、ほかの部員が頼りきりなんやて」

京太郎「へ、へー……そ、そんな掃除が得意なら、俺も色々と聞きたいんで、手伝っていっても――」

絹恵「――誰のことか、わからんかなぁ?」

京太郎「」スマセン

漫「はい、部活終わりやでー。帰った、帰ったー」

京太郎「……お疲れさまでした」

絹恵「うん、おつかれー。また明日なー」

京太郎「……ま、まぁ、あれだ。待ち合わせまでの時間が確保できたと、思っておこう」

京太郎「午後からは、健夜さんとデートだからな……さて、準備しないと」

京太郎「――よし、こっちの準備はオーケーだ」

京太郎「服も用意しておいたし――あ、ちなみに執事服ではないです、ご安心を」

京太郎「ま、冬だしコート着るから、ちょっとオシャレしても見えねーんだけどな」

京太郎「さーて、待ち合わせ場所に行くとしよう……あ、メール入れとくか」

京太郎「いまから向かいますね、遅れてしまったらすみません、と」

京太郎「ま、ここからならすぐだし、15分前にはつくけどな、どう頑張っても」


~駅前集合

京太郎「日曜はさすがに人多いな……まぁ有名な待ち合わせ場所みたいだし、仕方ないか」

京太郎「健夜さんは、まだかな……どうだろう」

~15分後

健夜「……わっ、京太郎くん!」

京太郎「あ、健夜さん。こんにちは」

健夜「う、うん、こんにちは……って、ごめん! お待たせしちゃって……」

京太郎「いえ、いま来たところですから、大丈夫ですよ」

健夜「……ふふ、テンプレだね」

京太郎「一度言ってみたかったんですよねー、このセリフ」

健夜「それはなにより……じゃなくて! 時間、合ってるよね?」

京太郎「はい、五分前にいらしてくださるあたり、さすが社会人ですよね」

健夜「それより早く来てる子に、言われたくないよ……いつから待ってたの?」

京太郎「来たばかりですよ。ちょうどよかったです」

健夜「……もうっ、そう言われたら、そう納得するしかないでしょっ」

京太郎「へへー、早く会いたかったので、気が急いちゃいまして」

健夜「そ、そう/// えへへ、嬉しいなぁ」

京太郎(かわいい)

健夜「それでもごめんね? もうちょっと早く来ようと思ってたんだけど、色々と――」

京太郎「大丈夫ですよ。女性が時間をかけてくださるのは、それだけ綺麗になってきてくださるってことですから」

京太郎「――まぁ、健夜さんは手をかけなくても、綺麗ですけどね」

健夜「はぅ//////」

京太郎(かわいい)

京太郎(――いや、しかし、あれだな……)

京太郎「髪、整えて来てくださったんですね。お綺麗です、とても」

健夜「っっっ! あ、ああ、ありがとぉ~~~~/////」

健夜(気づいてくれたっ、やったぁっ!)

京太郎「このくらいの長さから変えないのは、なにかこだわりあるんですか?」

健夜「う、うーん? そういうこともないかな……でも、短すぎると子供っぽく見えちゃうしね」

京太郎「すごく若く見えますもんね。けど、健夜さんお綺麗ですから、ショートも似合いそうです」

健夜「も、もうっ、やめてっ、褒めすぎ////」

京太郎「って言われても、思ったまま言ってるだけなんで……」

健夜「京太郎くんも、大人っぽいコートだよね。素敵だよ」

京太郎「いやー、買ったときは友達にも親にも、背伸びしすぎ、似合ってないって言われたんですよ」

京太郎「高校生になって、似合うようになったってことですかね」ドヤァ

健夜(あ、かわいい)

健夜「ふふ、そうかも。頼りがいあるもんね、京太郎くんは」

京太郎「健夜さんにそう言ってもらえると、すげー嬉しいです」

京太郎「健夜さんも、素敵なコーディネートですよね」

健夜「そ、そう? えへへぇ、よかったぁ……」

健夜(結局自分で決めたんだよぉぉぉっっ! わーいっ!)

京太郎(やっべぇ、すげーかわいい……私服最高だな)

京太郎(中は大人っぽい上品なブラウスで、アウターはニットの白いコート……)

京太郎(しかも、指導にくるときはパンツが多い健夜さんが、今日はスカートだ!)

京太郎(ミニじゃない、フレアな膝丈で……黒タイツ、いい仕事してるぜ!)

京太郎(あとはブーツか、短いのだから……どこかに上がることになっても、脱ぎやすくてよさそうだ)

京太郎(っつかその帽子なんですか、すげーかわいいんですけど)

健夜「……くん……京太郎くーん?」

京太郎「……ぁ……あ、ああっ、はい! すんません、かなり見惚れてました」

健夜「ふぇ!? や、いや、その、はい……ありがとう……///」

京太郎「――さて、と。いつまでも駅前にいたって仕方ないですよね。まずはお昼ですし、食事しましょうか」

健夜「うん、そうだね。私もいくつか調べてきたんだけど――」

京太郎「ここからだと、一、二駅くらいかな。隣のビジネス街のビルに、夜はバーになるお店があるんですよ」

京太郎「お昼はランチだしてるんで、そこにしようかなと」

健夜「タワービルのランチ……? その、無理しなくて大丈夫だよ?」

京太郎「平気ですよ、1000円しませんから。夜は結構するみたいですけどねー」

健夜「へー、ならそこにしよっか。移動は――あ、そうか」

京太郎「すいません、車じゃなくて……」

健夜「ふふ、平気だよ。電車使おうね」

京太郎「はい――あ、それか歩くのでもいいですよね」

健夜「……大丈夫かな」

京太郎「駅と駅の間くらいなんで、次の駅まで歩く時間が増えるだけですよ。15分くらいかな」

京太郎「電車と違って、その時間は二人でいられます」

健夜「」

健夜「………………な、なら、その……歩こう、か、ねっ?」

京太郎「はい。行きましょう、健夜さん」スッ

健夜「!? きょ、京太郎くん、そのっ……て、てて……手を……」

京太郎「あ、まずかったですか……?」

健夜「ドンとこいだよ!」

京太郎「Don't来い、ですか……やめますね」

健夜「英語じゃないよ!」

京太郎「冗談ですって。それじゃ、行きましょうか」キュッ

健夜「う、うん/////」


~某ビジネスタワービル、2X階

健夜「へー、メインが二つ選べるんだ」

京太郎「こっちの二種から一つ、こっちの四種から一つですね」

健夜「京太郎くんは決めてるの?」

京太郎「部活終わって、結構お腹空いてますからね。手ごねハンバーグでしっかりいただきます。もう一種類はアスパラのつくね焼きを」

健夜「ふふ、男の子だー。じゃあ私はローストビーフにするね。それと、お造りにしようかな」

健夜「食べたかったら食べていいからね……あっ、ローストビーフ! ロストビーフのことだから!」

京太郎「はい。お造り、好きなんですね」

健夜(違う!! けど、変な誤解されなくてよかった////)

健夜「すごいねー、お昼は夜景と違って、街並みがよーく見えるみたい。夜景はどんなだろうね」

京太郎「大阪って、夜も結構明るいですからね。東京も街のほうはそうなんでしょうけど」

健夜「うーん、そうかな……うん、そうかも」

京太郎「俺の地元だと、そこまでじゃないですからね……想像もつきません」

健夜「私も、そんなに見慣れてないよー。ほら、その……京太郎くんに会ったときみたいな、だから……」

健夜(自分から自爆していくスタイルぅーっ!)

京太郎「だめですよ、深酒は……最近は大丈夫ですか?」

健夜「もちろんだよ! 京太郎くんに言われてから、すっごく飲まなくなってね……月に二回ほど、缶ビール空けるくらいかな」

京太郎「そうなんですか……なんかすみません、大人の方の楽しみを奪ったみたいになって」

健夜「ううん、平気だよ。京太郎くんが私を心配してくれたのが嬉しくて、そうしてるんだから……」

健夜「でも、京太郎くんが飲める年になったら、一緒に飲めるといいね」

京太郎「一緒に来たいですね、ここの夜景も見られます」

健夜「……うん。そのときは――」

健夜(……そういう関係ならいいね、とかは……まだ早いかな?)

京太郎「そのときは?」

健夜「京太郎くんもプロになってるといいね。試合のあとに、こういうお店で食事とか、いいだろうなぁ」

京太郎「俺がプロですか? いやー、難しいと思いますよ」

健夜「そうだね、いまはまだ……だけど、その素質はあるって思ってるよ?」

京太郎「……誰にでも、そういうこと言ってませんか?」

健夜「私ね、麻雀に対してだけは真摯なの。だから、お世辞や軽々しく褒める言葉なんて、絶対に言わない」

京太郎「そうでした……解説が厳しいって、よく言われてますもんね」

健夜「うっ、うん……ごめんね」

京太郎「そのほうがためになるでしょうし、褒めるばっかりの解説よりいいと思いますよ」

健夜「そうかな……まぁ、そういうことだから。誰にでも、プロになれるよなんて言わない」

健夜「宮永さんにだって、そういうことは言わなかったからね……」

健夜(そういえば、宮守の姉帯さんには、もう一つ武器があれば通用する……なんて言っちゃったかな?)

京太郎「そっか……健夜さんにそう言ってもらえるなら、自信が持てますよ」

京太郎「頑張ります。ですから――これから先も、ご指導いただけることがあれば、よろしくお願いします」

健夜「うんっ……って、せっかくお出かけなのに、仕事っぽくなっちゃったね」

京太郎「素の健夜さんがそうなら、俺は問題なしです」

健夜「ふふ、ありがとう。あ、ランチ来たみたいだよー」

京太郎「ここです!」

健夜「大阪城……結構近いところにいるのに、来てなかったんだね」

京太郎「毎日朝から晩まで、学校と部活ですからね……」

健夜「……平日は朝早いんだよね。それで夜まで……で、日曜日は昼から休みがある、だけだったっけ?」

京太郎「そうですね。まぁ早いって言っても5時か5時半ですし、夜は8時くらいには帰ってますから」

健夜「……一般の企業だと、残業手当つくよ。早朝手当とかもね」

京太郎「龍門渕で働かせていただいてたときは、そのくらいの手当てはいただいてたと思います」

健夜「働いてたんだ! え、しかもその時間ずっと……?」

京太郎「修行中は、二時間しか寝てませんでしたよ。それが終わって仕事に就かせていただいたので、天国みたいなもんでした」

健夜(修行ってなに!? あっ、執事のだ……えっ、執事の修行ってなに!?)

京太郎「いいなー、大阪城は。雄大で、眺めも爽快だ」

健夜「私も来たことなかったなかなー。大阪はよく来てたんだけどね」

京太郎「そのときは、どこか行かれましたか?」

健夜「うーん、食事に出るか、飲みに行くか……くらいだったかも」

京太郎「それ以外は、なにを……いえ、なにしに来てたんですか?」

健夜「麻雀」

京太郎「……お疲れさまです……いや、それだけ麻雀が好きってことですか」

健夜「そうだねー。それしか取柄なかったからねー」

京太郎「そのわりには、タレント活動も立派にされてますが」

健夜「麻雀ありきだよぉ……でも、あれだと地方もよく行けるから、タイミングよければ京太郎くんに会えるよね」

京太郎「鹿児島ではそんなこともありましたよね」

健夜「そうそう、あのときは大変だった……でも、おかげで各地の観光地、よく移動するようにはなったかな」

京太郎「じゃあ、大阪だとほかには……USJとかは?」

健夜「あそこは番組にできないからねー。友達は麻雀しかしない子ばっかりだし、恋人もいないし……USJなんて行く機会ないよ」

健夜「そもそも、異性と出かけることだって、まるでないわけだし――あっ」

京太郎「………………」

健夜(うわああぁぁあぁっっっっっ!)

京太郎(…………えっ)

京太郎(……それは、つまり……その……)

京太郎「………………」

京太郎「――じゃあ、これが初デートってことですね」

京太郎「嬉しいです、健夜さん」

健夜「」

健夜「わ……私の、ほうこそっ……」

健夜「嬉しい、です……はい……////」

京太郎(ぐっはあああああああああ! やばい、健夜さんが真っ赤になってるっ……)

健夜「…………//////」

京太郎「それじゃ、もう少し……初デート、続けましょうか」

健夜「はっ、ふっっ……ふぁいっ!」

京太郎「急にレフリーに!」

健夜「ファイトじゃないよ!」


~移動後、ブティックにて

京太郎「ここで、健夜さんの服をですか?」

健夜「京太郎くんの好みが知りたいなーって。どういう服が好きか、選んでみて?」

京太郎「難しいなー。けど健夜さんだったら……」

京太郎(……ミニスカ、本人は苦手だろうけど……脚が綺麗だから、似合うとは思う)

京太郎(この時期だと寒いだろうから、もう少し暖かくなってからのほうがいいと思うけど……)

京太郎「……健夜さん、ニットが似合いますから……この、ニットワンピとか、いいと思います」

健夜「…………なるほど。ミニだね」

京太郎「し、下心があるわけではっ」

健夜「冗談だよ。だけど、男の子だから、そういう基準もありだと思うよ?」

京太郎「まぁ……苦手とかじゃないなら、履いてもらえると、似合うとは思いますけど」

健夜「なるほど……でもなぁ、脚は……」フニフニ

京太郎「なにか問題が?」

健夜「筋肉ついてないし、お肉でプヨッと――」

京太郎「なら最高じゃないですか」

健夜「えっ」

京太郎「あっ」

健夜「………………え、エッチ///」

京太郎「誤解ですぅぅぅぅっっっ!」

京太郎(――でもないか、うん)

京太郎「――結局買っちゃいましたね」

健夜「うん……き、着るかどうかはわかんないけどねっ」

京太郎「えー。せっかく買ったんですから、着ましょうよ」

京太郎「そうだ、俺が全国大会に出場して、解説にくることがあれば、着てくださいよ。ねっ?」

健夜「えぇぇぇ……」

京太郎「えぇぇぇ……意外なリアクションでした」

健夜「だって、私が解説するときって、相方が――」

京太郎「福与恒子アナですね」

健夜「こーこちゃんが、私のニットミニワンピなんて見たら……」

京太郎「撮影するでしょうね」

健夜「生放送されるよ! そんなの……困るし……」

京太郎「でもせっかくの……」

健夜「そうだよ! せっかく……きょ、京太郎くんに、見せるために買ったんだから……」

京太郎「」


京太郎「」

健夜「/////////」

京太郎「……あれ?」

健夜「えっ?」

京太郎「着るかわからないって話だったのに、俺には着て見せてくれるってことになりました?」

健夜「あっ」

京太郎「やったぜ」

健夜「ま、待って、いまのなし! えっと――」

京太郎「んー。じゃあ、交換条件付けるってことにしましょうよ。そちらから」

健夜「じゃ、じゃあ! 私とはやりちゃんと理沙ちゃんと囲んで、トップだったらいいよ!」

京太郎「」

健夜「ど、どうかな////」

京太郎(仕草と要求が釣り合ってない!!!)

京太郎「……ど、努力します……(震え声」

健夜「わーい、やったぁ」

京太郎「……取れると思いますか?」

健夜「うーん、どうだろう……わりといいとこ狙えると思うよ」

京太郎「いまだに、健夜さんから上がるビジョンが見えないんですけど」

健夜「大丈夫だいじょうぶ。初めて会ったとき、私を直撃してるでしょ? うろ覚えだけど、たぶん」

京太郎「つまり、酔いどれた状態で打ってくれるんですか?」

健夜「そうじゃないよ! まぁ、酔ってても私はそうそう負けないから、それだけ打てるんだし、可能性はあるんじゃないかなってこと」

京太郎「すごい自信だなぁ」

健夜「これでも国内では一回も負けてないからねぇ」

京太郎(えっ、なにそれは)

健夜「――ところで、これはどこに向かってるのかなぁ?」

京太郎「喫茶店です。俺がこっちに来てお世話になりだした場所で、茶葉とかコーヒー豆とかも、販売してくれてるんですよ」

健夜「そこでちょっと休憩?」

京太郎「でもいいんですけどね。そこでは買い物を――危ないっっっ!」

健夜「えっ――」

 こちらは青信号、一応は向こうも青信号。だけど曲がるときには、歩行者を確認すべきだと思う

京太郎(――っっ、間に合えっっ……)

 右折の単車が突っ込んでくる。あと二歩前に進めば、見事に相手の進路に踏み込むことになるだろう。

京太郎「健夜さん、こっち――」

 彼女の腕を取って、思いきり引っ張る。片脚が浮いていたから、残り足に変な体重が乗ったかもしれない。

健夜「ひゃっっ――」

京太郎「っっっ……うおぉぉっっ!」

 健夜さんがめちゃくちゃ軽くて助かった。
 抱き寄せて倒れ込んだ、そのすぐ傍を、大型バイクが駆け抜けてゆく。

京太郎「あっぶね……だ、大丈夫でしたか、健夜さん!」

健夜「……あ……うん、大丈夫……」カタカタ

京太郎「バイクは当たらなかったですね、よかった……すいません、思いっきり引っ張っちゃって」

健夜「だ、大丈夫……ありがとね。助かっちゃ――ぅっっ……」

京太郎「健夜さんっ!?」

京太郎「――立てなさそうですね、すいません……」

健夜「ちょっと捻っただけだから、休めばマシになると思う……けど、謝ることないよ、京太郎くんは」

健夜「引っ張ってくれなかったら、もっと大変だったんだから……あーあ、だけど残念」

健夜「デートは、ここまでかな?」

京太郎「………………」

京太郎「…………今日って、日曜ですよね」

健夜「えっ……うん、そうだね……」

京太郎「たぶん、病院はほとんどやってません。開いてるとこに寄るとしても、探してる間に時間かかっちゃいます」

健夜「う、うん……でも、この足だと歩けないだろうし……」

京太郎「大丈夫、俺にいい考えがあります」

健夜「いい考え? っていっても、できることなんてそうそう――ふぇ?」

京太郎「俺の首に、腕回してくださいね――よっ、と」

健夜「ひゃうぅぅっ!?」

京太郎「ひとまず、このまま移動しましょう。やすめるところまで。そこで、応急手当します」

健夜「ちょっっ……ちょちょちょ、ちょっと待ったっっ! まま、待って京太郎くん!」

京太郎「なんでしょうか」

健夜「おっ、おお、下ろしてっ! その、は、恥ずかしいから!」

京太郎「ケガしてるんだから大丈夫です」

健夜「心情的には大丈夫じゃないよ!? それに、その、あの……わ、私……軽くない、でしょ?」

京太郎「羽かと思うくらい軽いです。もうちょっと食べたほうがいいですよ、健やかになります」

健夜「私、身体は健康なんだけど……いや、でも前に、こーこちゃんが私を持ち上げようとしたときは、無理で……」

京太郎「あの人、よく持ち上げてるじゃないですか。そのあと落としますけど」

健夜「そっちじゃなくて物理的な意味でだよ!」

京太郎「そりゃ、社会人とはいえ女性の腕と、高校生男子の腕力は違いますから……大丈夫、本当にめちゃくちゃ軽いですから」

健夜「そ、そりゃ、さっきからひょいひょい運んで歩いてるけどっっ……というか、これどこ向かってるの!? さっき言ってた喫茶店!?」

京太郎「いえ、俺ン家です」

健夜「」

健夜「だだだだだ、だめっっ、だめっ、絶対! アウトっ、私アウトだから!」

京太郎「大丈夫ですって、なにもしませんから……信じてください」

健夜「そっちは問題ないよ! むしろ――ってそうじゃなくて! 私のほうが、問題あるっていうか――」

京太郎「健夜さん」

健夜「っっ……は、はいっ」

京太郎「応急処置しないと、変な戻り方したり、腫れがひどくなったりするかもしれませんから」

京太郎「申し訳ないんですけど、俺の家で治療させてください……それと」

健夜「な、なんでしょうか……」

京太郎「これ、予定通りです。順序は変更になりましたけど」

健夜「へっ」

京太郎「喫茶店寄ってから、俺の家には行くつもりでした。その、どうしても来ていただきたかったので」

健夜「」

健夜(………………なんだ、夢か)

京太郎「どっこい、現実っ……これが現実ですっ……」

健夜「なんで聞こえてるの!?」

京太郎「いや、現実逃避してる表情だったんで……あ、そんなことより、もう手遅れです」

健夜「ななな、なにがっ!? 誰かに見られたっ? 知ってる人っ?」

京太郎「いえ、そうじゃなく――うち、ついちゃいましたから」

健夜「………………えっ」

京太郎「ここのアパートです。まぁ狭い部屋ですけど、上がってってください……っていうか、無理やり上げちゃいますね」

健夜「あっ、あ、ああああ、あのっ、あのあのっ、やや、やっぱり――」

京太郎「はい、いらっしゃいませー。どうぞ、お上がりくださいませ」

健夜「だめだってばああああああああああ!!」

京太郎「ブーツ、脱がせますねー。ゆっくりずらします、痛かったらおっしゃってください」

健夜「い、いいよっ、自分でやるから!」

京太郎「そうですか……じゃあ、脱げたらおっしゃってください。ベッドまでお連れしますので」

健夜「ベッッッ……は、はわわ、あわわわわわわ//////」

京太郎「俺の部屋、ソファじゃなく座椅子なんで……立つことも考えると、腰かけるならベッドのほうが楽でしょうから。そこで治療しましょう」

健夜(うん、知ってた)

京太郎「――よし、これで大丈夫。骨には異常ないはずです。近日中に、病院には行ったほうがいいですけど」

健夜「ありがとう……すごいね、こんなこともできるんだ」

京太郎「まぁ執事の嗜みですよ」

健夜(執事ってなんだっけ……)

京太郎「すぐに歩くのも大変でしょうから、ここで休んで行きましょう。というか、最初の目的を果たさないとですし」

健夜「き、きたっっ!」

京太郎「えっ?」

健夜「う、ううんっ、なんでもない!」

健夜(おおおお、落ち着いて、大丈夫……シミュレーションは、色んなパターンでやってるからっ……)

京太郎「ってことで、ちょっと待っててください。支度してきますから」

健夜「そ、そうだよねっ! あ、でも私どうしようっ、この足じゃ、シャワーなんてっ……」

京太郎「さっき、手洗いをうがいはしていただきましたし、十分だと思いますけど……」

健夜「で、でも汗かいちゃってるしっ……」

京太郎「気になりませんよ。さっき抱っこしてるときも思いましたけど、香水、いい匂いですね」

健夜「はっ、ふぅっ……あ、ありがとぉ……////」

京太郎「それじゃ、取ってきますねー」

健夜「ごご、ごゆっくりっっ!」

健夜(…………どうしよう、どうしたらいいかなっ……ふ、服は、どうしようっ……)

健夜(あ、待って! たしか、脱がせるのが好きっていうパターンもあったから……ここは、上着だけ脱いでおけば大丈夫)

健夜(……タイツ、破られたり……しないよね?)

京太郎「お待たせしましたー」

健夜「はひぃっっ! だだ、大丈夫、いま来たとこです!」

京太郎「え、ええ……」

健夜「……ごめん、なんでもない……」

京太郎「それじゃ……んー、ちょっと机寄せますね」

健夜「ど、どんなプレイ!? 机使うの!?」

京太郎「いえ、健夜さんはベッドに座ったままで大丈夫です……そこからでも手が届くようにってことで」

健夜「そ、そうなんだっ、色々知ってるんだね!」

京太郎「それで――えーっと、実はですね。今日はこれを、お出ししたかったんです」

健夜(来る! ボロンッって来るのっ!?)

健夜「――って……あ、れ……これって……」

京太郎「ほんっと、何ヶ月も遅れて申し訳ないんですけど……お誕生日、おめでとうございます」

京太郎「お約束していました、誕生日ケーキです……どうぞ、お召し上がりください」

健夜「あ……あ、ああ……あり、が……とっ……」ジワ

健夜「覚えてて、くれたんだ……」

京太郎「もちろんです。忘れたりしません」

健夜(――――なんっっって勘違いしてるのっ、私っっ!? うわああああああああ、最低だああああああ!)

健夜「………………」ブルブルブル

京太郎(あれ、感極まってってやつ? うわ、すげー、嬉しい……作ってよかった)

京太郎「ま、眺めてても仕方ないですし、取り分けましょうか。それで……こちら、ハーブティーを合わせてみました。果物の甘味と、相性は悪くないと思います」

京太郎「注文してた茶葉は、別のだったんですけどね」

健夜「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

京太郎「健夜さん?」

健夜「はいぃっ! あ、うん……大丈夫です……それと……本当にありがとう! すっごく嬉しいよ!」ニコッ

京太郎「では、ご賞味ください……どうぞ。あーんしてください」

健夜「!?」

京太郎「寄せましたけど、やっぱりテーブル低いですからね……どうぞ、あーん」

健夜「……ふ、あ……あーん////」

京太郎「…………いかがでしょうか」

健夜「んむ、んっ、ふむ……っっ……すごいっ、おいっしい……っっ」

健夜「あ、あのっ、もう一口、先に!」

京太郎「ふふっ、ありがとうございます……それじゃどうぞ、あーん」

健夜「あーんっ……うん、おいしい……えへへー、おいしいなぁ」

健夜「――ふぅ……ごちそうさまでした。とってもおいしかったです」

京太郎「お粗末さまでした……んー、あとは……ちょっと予定がずれちゃいましたね。映画でも見ます?」

健夜「本来なら、どういう流れだったの?」

京太郎「喫茶店に寄って、ここに戻って、お茶して――夕食にしてから、これをお出しする予定だったんですよ。なもんで、いまから夕食だとお腹大きいかなと」

健夜「軽いのなら食べられるけど……でも確かに、お腹空かせてからじゃないと、京太郎くんの料理に失礼だよね」

京太郎「そう言っていただけると、腕の振るい甲斐もあります……それじゃ、映画か……麻雀かのどっちかってことで」

健夜「どうして麻雀?」

京太郎「観光地でも麻雀する方ですから、そっちのほうがいいかな、と」

健夜「もうっ……私だって、男の子と一緒だったら、麻雀以外のことも考えるよ」

京太郎「……でも麻雀しますよね?」

健夜「うっ…………は、はい」

京太郎「なら、並べますね。少しだけ打ってから、料理にかかりますから」

健夜「はーい。せっかくだから、お腹空くくらい、しっかり楽しませてね?」ゴッ

京太郎(あかん)

健夜「よーし、やるぞー。そうだ、ケーキのお礼ってことで、私の持ち点5000でいいからね」ニコニコ

京太郎(なんという舐めプ! こ、これは……やってやるしかない!)ゴッッ

健夜「………………あれ?」

京太郎「よっしゃああああああああ!」

健夜「おおおおっ! お見事! やっぱりすごいよっ、京太郎くん!」

京太郎「いやー、そう言っても5000点削れたってだけなんで……普通の勝負だったら、余裕で負けてます」

健夜「ううん、5000点でも削れないって思ってたから……本当にごめんなさい。侮っていて、申し訳ありませんでした」

健夜「――次は、本気で打とうか」ゴッ

京太郎「」

京太郎「そ、そそ……そろそろ、夕飯の支度に、かか、かからせて、いた、いたたた、いただきっ……」

健夜「ふふ、なーんてね。冗談だよ。お夕食、お願いできますか?」

京太郎(ほっ……)

京太郎「はい、それじゃ作ってきます……適当に、くつろいでてください。なにかあったら、声かけてくださいね。無理に歩かないように」

健夜「はーい」

~食事後、日曜夜

健夜「うーん、すっかり長居しちゃったね、ごめんなさい」

京太郎「いえ、大丈夫です。それより、タクシー一人で大丈夫ですか? お部屋まで、お送りしたほうがいいかと思うんですけど」

健夜「十分休ませてもらったし、部屋までは戻れるよ。おいしいものも、食べさせてもらったからね」

京太郎「……本当に大丈夫ですか?」

健夜「もう、しーつーこーいーよー? それとも、ホテルまでついてきたいだけなのかな?」

京太郎「めめ、滅相もない……」

京太郎「それじゃ、お気をつけて……今日はありがとうございました。とても楽しかったです」

健夜「私のほうこそ……ありがとう。また、こうしてお出かけできたらいいね」

京太郎「そうですね……また機会があれば、お誘いします」

健夜「ふふっ、楽しみにしてます。それじゃ、おやすみなさい」

京太郎「……おやすみなさい、健夜さん」

~デート終了

【1月第三週日曜】

 本日は試験、お疲れさまでした。
 また明日からは二次試験等に備えることかと思いますが、今日のところはゆっくり休まれてください。

 今日は色々とありますので、フレンチトーストやケーキの写真、貼っておきます。
 それと買いだしに付き合ってくださった先輩、ありがとうございました。

 こちらでお世話になる残り一週間、また明日から気合入れ直して臨みます。
 どうぞよろしくお願いします。

…………

 『こっちは余裕だったわよ、当然ね』
 『私たちも頑張ったよ~。京太郎くんのメールのおかげかなぁ』
 『最後の励ましのおかげで、どの問題にも真剣に取り組めたよ。ありがとう』

 よかった……あとは二月中だよな。こっちは学校ごとに日程が違うみたいだから、追いかけようがないか。

 『フッレンチトーストッッ! なにそれおいしそう!』
 『淡は勉強不足。フレンチトーストっていうのは――』
 『北アメリカ、ヨーロッパの一部、アジアの一部の国・地域、ラテンアメリカなどで朝食や軽食、デザートとしてよく食べられているパン料理の1種である』
 『溶いた鶏卵と牛乳などの混合液をパンに染み込ませ、フライパンなどで焼き直したもので、パンがしっとりした食感に変わる』
 『です』
 『コピペ乙』
 『知ってるけど説明を書きだすのが大変だからそうしただけ』
 『こちらの揚げたものは、香港で見たことがありますね。台湾のものは、焼き上げるほうですが』
 『っていうかこっちのケーキなんや? 練習んとき食べてへんで』
 『うちで焼いたんやろ。ケーキ作りの練習かな』

 あ、そうか。健夜さんしか見てないんだった。

 『こっちのケーキ、おいしかったよ。どうもありがとう』
 『……誰ですか?』
 『誰でもいい。大事なのは食べた人がいる、それも一人。そしてそれが私じゃないってこと』
 『うらやまー!』
 『フルーツ多めだ、おいしそう……』
 『涎っ!』
 『残念ながら』
 『そろそろ本気でうらやましくなってきた……来月、ラストチャンスっ……こいっ、こーいっっ!』
 『雑念は余計に失敗しますよ?』
 『お祈りしましょう。早朝ミサ、サボらないでね』

 三年の方かな……再来月は卒業式、そこからは三年生はいないんだよなぁ。
 けど地元に進学した人たちなら、なんだかんだで学校に顔だしそうな気がする。
 東京の人たちとは、どうやったら会えるかな……卒業校じゃない学校には、顔だせないだろうし。


~清澄

「んーっ、疲れたわー」
「んで、京太郎からはどんなメールが来たんじゃ?」
「へっ」
「見るからに嬉しそうですから、よくわかりますよ」
「…………来てないけど?」
「ダウトだじぇ」
「き、来てないって言ってるでしょ///」
「わしの携帯に、津山さんからメールがあったんじゃ。先輩がお世話になったちゅうて、京太郎に礼をとな」
「詳しく聞いたら、京ちゃんが久さんにメールしたんだって言ってました!」
「ゆみぃぃっ……いや、智美かしら……」
「池田からも私にメールが来てたじぇ。キャプテンに変なこと教えるなーって、会長に苦情だじぇ」
「SとかMとかの話かしら……」
「し、試験前になんの話をしてるんですか!」
「話逸らさないでください! 京ちゃんのメール、なんて言ってたんですかっ」
「んー? まぁいっかな……大学でも私の後輩になりたいから、私が合格したら、そこ目指すんですって」
「そういう嘘はええから、ほんまのこと言いんしゃい」
「う、嘘じゃないわよ!」
「SOA」
「本気だとしたら、だいぶマゾだじぇ」
「見なさいよっ、ほら、ホントでしょ!」
「」
「oh……」
「SOA」
「じょじょ、冗談だよ、きっと……久さんの緊張を和らげようってことで……」
「あんたたちねぇ……」


~白糸台

「そういうテルーは、食べたことあるのっ?」
「ある」
「わりとどこにでもあるぞ。淡はないのか」
「パン屋にもあるし、メーカーの菓子パンにもありますよね」
「意外と、お茶に合う……」
「むー……だって、お母さんそんなの作ってくれたことないし、お店でそういうの買わないし……」
「お菓子には詳しいのになぁ」
「それより、弘世先輩の試験のほうはいかがでしたか?」
「話流された!」
「謙遜なしに言えば、かなりできたほうだ。そういえば、会場で辻垣内に会ったな」
「京ちゃんの話した?」
「臨海にはまだ行ってないし、彼女は興味がなさそうだろう。していない」
「……ならいいけど」
「テルー、なんか気になってる顔してるー」
「私のセンサーでは、辻垣内さんは京ちゃんの日誌欠かさず見てる、そんな気がする」
「それはないですよ、辻垣内さん、堅くて真面目そうですし」
「……逆に、そういう人がすっごいミーハーだったりしそうだけど……」
「純粋に、彼女は苦労する人を心配する傾向があるから、そう思うだけ」
「まぁ一言二言挨拶しただけだし、向こうからも聞かれなかった。照の思い違いだろう」
「……そうかなぁ」ウーン


~永水

「はぁー、長時間の試験は大変ねぇ」
「あああぁぁぁぁ……英語の長文、なんか致命的なミスしてそう……大丈夫かな、採点したくないなぁ……」
「お疲れさまですよー」
「ありがとう、はっちゃん。それにみんなも、お弁当、おいしかったわよ」
「よかった……」
「姫様も手伝ってくださったようで、とても嬉しいです」
「い、いえっ、お二人にはいつもお世話になっていますから!」
「小蒔ちゃん、成長して……」ホロッ
「お母さんじゃないんですからー」
「誰が子持ちの人妻ですって?」ゴッ
「い、言ってないですよー」
「霞ちゃんがお母さんなら、旦那様はどなたになるんでしょう」
「……そ、そんなの、決まってるじゃないのっ……もうっ////」
「阻止」
「はるる、間髪入れずにこれを阻止」
「まぁ私も阻止ですがー」
「続いてはっちゃんもだ! まぁ私もそうしますけど」
「では私も!」
「あら、息が合ってよかったわ。来月は京太郎くんの誕生日だもの、ね?」
「もちろん、忘れてない」
「とっておきのお祝いをしないとですよー」
「学校はどうしましょう」
「休みましょうか、事前に届けをしておきます」
「と、巴までやる気に……これは……」
「勝った……待っててね、京太郎」

(お祝い……京太郎の家に行って、メ……メイドさんに、なってあげるから////)


~宮守

「疲れた……」
「シロ、お茶淹れて!」
「コイメデ!」
「お茶菓子もねー」
「ダル……」
「そうそう。来月、京太郎くんの誕生日だったわよね、たしか」
「ダルくなくなってきた」
「そうだよー、どうしよう! なにかプレゼントしないとー」
「物欲なさそうだからなぁ……」
「ゴホーシ! シヨウ!」
「そうねぇ、彼いっつも人にしてばっかりだし……なにかしてあげたほうが、喜びそうね」
「京太郎の家に行くか、こっちに呼ぶか……うん、行くしかないかな」
「そうだねー。学校はもうお休み状態だし」
「旅費は……卒業旅行の分、削って……ギリギリね」
「近くならいいんだけど」
「ここだったら一番だよね」
「ちゃんと引き当ててよっ、部長!」
「部長……」
「ブチョウサン!」
「安いよ安いよー」
「ゲンピンカギリノ、ショブンヒンデスヨー」
「最後おかしいでしょ! っていうか、私を拝まないで!」


~阿知賀

「宥姉お疲れー! まぁ飲んで飲んで」
「あ、ありがとう……でも、まだ次があるから……」
「そうは言っても、自信ありげな顔だったのです! 大丈夫だよね、お姉ちゃーん」スリスリ
「ありがと、玄ちゃーん」ナデナデ
「仲良し姉妹……」
「相変わらずだな、この姉妹は」
「小走さんも、お疲れさまでしたー!」
「ああ、ありがとう高鴨。しかし、私まで呼んでくれてよかったのか?」
「まーったく、問題ないですっ。うちって無駄に広いですし、インハイのときは初瀬とかも、こっち来てましたから」

「なーにが無駄だってぇ? あのねぇ憧、神社ってのは地元の寄合でも使えるように、社務所とかも広く作られて――」
「まーまー、友達が遠慮しないようにって憧の計らいでしょ。聞き流してやりなよ」

「試験って緊張したりしませんでした?」
「大丈夫だよ~。行く途中に京太郎くんがメールくれたからね~、すっごく落ち着いたんだぁ」ニコニコ
「……ま、まぁそうだな……あのメールには、救われた部分が多々ある、ような……」
「やえちゃん、かわいいって言われて真っ赤になってたよ~」
「!? なな、なんですかそれっ、詳しく教えてください!」
「あああああ、憧ちゃんっ、落ち着いて!」
「玄も落ち着いたほうがいいと思……」
「さっすが京太郎、しっかり二人ともに送るって、気が利いてるよね!」

「……試験前にかわいいって、どんなメール送ってんの、京太郎……」
「おのれ京太郎少年、憧というものがありながら……」


~姫松

「どやったー、試験は」
「まぁぼちぼちやな」
「ぼちぼちよー」
「便利ですよねぇ、ぼちぼち」
「実際どんな感じですか?」
「えらいようできたで。地元より、ええ大学狙えるかもしれへんわ」
「えぇっ! ほ、ほんなら、大阪出られるんですか……?」
「大丈夫よー、願書だしてへんからねー」
「まぁそういうことやな。本命に絞ってるから」
「私は滑り止めも入れてるけどねー」
「ほっ……びっくりさせんとってくださいよ」
「っちゅーても、再来月からはうちらもおらんわけやし、出て行っとっても変わらんやろ」
「それに、先輩らなしでも強ならなあかんて、昼に言うたやん」
「わ、わかってるけど……いきなりは、心の準備が足らんから」
「準備期間は、あと一ヶ月しかあらへんよ?」
「そろそろ先輩離れせなかんのよー、漫ちゃんはー」
「わかってますってぇ、もう……」


~某ホテル

「お医者様が詰めてるホテルでよかったぁ……足もなんともなかったし」
「えへへ、京太郎くんとデート、楽しかったなぁ……」
「………………一応、下着はかわいいのにしてたけど……」
「真面目に、相手高校生だもんね……うん、犯罪はよくないよ」


~某居酒屋

「……ふむ、なるほど」
「なにっ?」
「このケーキ、あとから板チョコを乗せる予定だったようです。この端に映っていますね」
「!! や!」
「はい、ラストがやとなっています……誕生日用なら、それは名前の最後の文字……」
「す、こ、や……」
「小鍛治プロ、でしょうね……」
「は、はやりの真ん中の文字とか……」
「りはどこに行ったんですか」
「はやりが食べちゃった、とか……」
「食べたんですか?」
「食べて、ないけど……」
「yaじゃなくtaなら、三尋木プロの可能性もありましたね」
「もう帰った!」
「はい、ですからやはり……でも、小鍛治プロの誕生日って、随分前ですよね」
「約束してたから、焼いてあげたのかも。京太郎くん、約束はちゃんと覚えてる子だからね☆」
「義理堅いですね……こんなことなら、やはり次のマッサ――の約束をしておくべきでした……ジーザス」
「マッサ?」
「気になる単語だぞ☆」


~1月最終日

京太郎「それじゃ、お世話になりました」

絹恵「っっ……元気で、おるんやでっ……絶対っ……」

洋榎「絹は泣きすぎや。京太郎とはまた、春か夏にでも会えるやろ。なぁ京太郎?」

京太郎「そのつもりですよ。だから絶対、絹恵先輩も漫先輩も、東京で会いましょう!」

漫「んっ……せやなっ、もちろんそのつもりや。京太郎くん、その……今日まで、ありがとうな!」

恭子「ほんまに、今日でお別れやねんなぁ……延長はできへんのかなぁ」

由子「噂の、理事の投票で取れへんかったんやろねー。当選やったら、最終日の前に連絡来てるんやもん」

京太郎「名残惜しいです……大学生になっても、よければご指導お願いしますね」

由子「もう私らより、京太郎くんのほうが強いかもしれんからなぁ……」

恭子「そのときは、私らの指導頼もかな……なーんて」

京太郎「まだまだおこがましいですけど……いずれはそうなれるよう、もっと強くなりますよ」

洋榎「そらなぁ。いずれ京太郎もプロになるんやろし、強うなってもらわんと困るわ」

絹恵「そ、そうなん!? ほな、私チケット取る! 毎日行くから!」

漫「遠方での試合もあるで、絹ちゃん」

恭子「そのツッコミはおかしいやろ」

由子「絹ちゃんはここ一年で、さらに京太郎くんにハマっちゃったのよー」

郁乃「それ言いだしたら、うちらみんなや~ん。な~、洋榎ちゃ~ん?」

洋榎「な、なんでうちに振るねんな! 恭子やろ、そういうんは!」

恭子「言うても、麻雀にしっかり絡んどった二年コンビのほうが、あれですし……」

由子「あとは代行が、思った以上に入れ込んでるのよー」

郁乃「そ~んなことあらへんけどぉ~……ずっといてくれたらええなって、思っとるんやで?」

京太郎「――ありがとうございます。そういう評価をしていただけて、本当に嬉しいですっ……」

恭子「……泣かんとっ、しっかり頑張りや! 一時期でも名門姫松におったゆう、矜持を忘れんように!」

京太郎「はいっっ!」

由子「あとは、私らのこと忘れんとってねー」

京太郎「もちろんです!」

洋榎「ときどき連絡するように」

京太郎「努力します!」

漫「身体気ぃつけて」

京太郎「先輩方も!」

絹恵「………………これ、大事にするわ。試合中は、絶対身に着けとくから。京太郎くんが傍におる思て、頑張るからっ……」

京太郎「俺の、プレゼントですね……ありがとうございます。なにかありましたら、いつでもお声をかけてください」

郁乃「最後にもっかい、あのたこ焼き食べさせて~」

恭子「代行、なに無茶言うて――」

京太郎「そうおっしゃられると思って、ご用意してました。みなさんの分も、どうぞ」

恭子「!?」

郁乃「わ~い」

由子「相変わらずなのよー」

漫「それでこそ京太郎くんですし……ふふっ、変わらんいうんは、ええことやなぁ」

洋榎「――にしても、オカンは見送りこれんかったなぁ。オトンもやけど」

京太郎「まぁ、平日ですし……お二人とも、お仕事でしょうから」

絹恵「挨拶、するんやったら……いつでも、うちに来てええからな!」

京太郎「そうですね、お世話になりましたし……小父さんのほうは、親父も世話になったみたいですから。またお伺いできればと思っています」

郁乃「名残はつきんもんやなぁ~」ハフハフ

恭子「楽しかったですからね、この一ヶ月は特に」

京太郎「――でも、そろそろ新幹線の時間ですね」

漫「……はい、これ。餞別やで」

京太郎「っ! なんですか、これ……」

漫「鰹節や。前に連れてったったたこ焼き屋、あるやろ? あそこの裏が鰹節屋さんでな、あの店でもつこてる上物らしいわ」

漫「市販の鰹節つこてたから、そこだけ気になっててん……これつこて、よそでも黄金たこ焼き、披露したるんやで!」

京太郎「っ……はいっ、ありがとうございます!」

洋榎「ま、よその県にはわからんやろけどな~、あの味のよさは」

由子「それ、北大阪ならわかる言うことなのよー」

絹恵「それやったら、近すぎるやないですか……こんな大泣きして別れたん、めちゃくちゃ恥ずかしなるんですけど」

恭子「いやいや、わからんで~」

京太郎「そうなったら、練習試合や合同練習なんかも、気軽にできそうですよね」

漫「なったらええなぁ……あかん、また時間かけてもうた」

京太郎「おっと……それじゃ、みなさん……またお会いしましょう!」

郁乃「気ぃつけてな~、ほなまた~」

恭子「元気でっ……あっかん、目に……埃、入ってもうたっ……」グスッ

絹恵「ええやないですか、普通に泣いたら……京太郎くん、またなぁ!」

洋榎「プロに用あるときは、うちにも声かけや。天王寺の次期エース、ルーキースター洋榎とは……うちのことやで!」ビシィッ

由子「またアホなこと言うてー……春にはいい報告するからねー。そのときは、お祝いしてなー」

漫「真瀬先輩ちゃっかり……見ててや、京太郎くん。春は東京やで! 約束や!」

京太郎「――はい……では、行ってきます!」

~姫松編、カンッ


~新幹線内にて

京太郎「ふぅ、また移動か……おっと、電話だ。デッキに移らないと」


京太郎「もしもし?」

久『――――ごめんなさい』

京太郎「!? 部長がいきなり謝罪……なんか、雲行きが怪しくなってきたんですけど」

久『――――ほんっと、ごめんなさい……連絡遅れました』

京太郎「ツッコミもお叱りもなしなんて……えっ、本当になにかあったんですか?」

久『いえ、そうじゃないの……ただ、もう新幹線乗っちゃったわよね?』

京太郎「ええ、けど一旦長野で荷物を交換する予定ですし――」

久『たぶんね、いらない……1月と2月だと、服の変化もそうないし』

京太郎「でも、気候の変化とかあったら――まさか……」

久『発表します……次回の移動先は……北大阪、千里山女子高校です……』

京太郎「」

久『ほんっと、ごめんなさい……怒ってるわよね?』

京太郎「…………いえ、俺は別に…………」

久『あらそう? よかったー、実はすっごい焦ったのよねー。京太郎が人格者で助かったわ、愛してるぅ♪』

京太郎「それは光栄です、けど……はぁ……」

京太郎「先輩方、これ知ったら怒るだろうな……特に絹恵先輩」

久『まぁそこはそれ、私のせいにしてもいいし、京太郎が自力で乗り切ってもいいから』

京太郎「――あぁっ、もう! 部長のせいにするわけないでしょっ、乗り切りますよ!」

久『ふふっ、ありがと――それじゃ、健闘を祈ります。あ、それと――』

京太郎「まだなにか!?」

久『――3月、私の卒業式だからね。ま、それだけよ……バーイ』

京太郎「――――そう、ですね……それだけは、俺の意思で決めないとな……うん」

【1月最終日】

 謝罪を申し上げます。
 姫松高校のみなさん、あれだけ盛大に別れを惜しんでくださり、ありがとうございました。
 俺自身も、とても別れを惜しみ、涙を堪えたものです。

 ですが、次の派遣先は――千里山女子高校でした。こちらの不手際で連絡が遅れ、申し訳ございません。
 もしどこかでお会いしましたら、遠慮なくお声をおかけください。

 そしてまだ見ぬ千里山のみなさん、あと――知っていたであろう、愛宕監督。
 明後日よりどうぞ、よろしくお願いします。

 新幹線の中から、須賀京太郎でした。

…………


~姫松

「」
「…………ちょお……」
「す、末原先輩と真瀬先輩がフラグ立てたから……」
「私らのせいとちゃうやろ!?」
「き、清澄の部長の罠なのよー」
「……おかーちゃん、知っとったんやんっ……だからか! 見送りにも来んかったんは!」
「あらら~、まんまとやられてしもたなぁ~。けどまぁ、逆によかったやろ~?」
「なにがですか、絹ちゃん恥ずかしすぎですよ……」
「絹だけちゃうけどな」
「まあまあ……せやから~、知らんかったおかげで、そういう本音を京太郎くんに見せられた、いうことで~」
「…………なるほど、代行もたまにはええこと言いますね」
「ほんと、たまになのよー」
「ひどいわ~」
「……まぁ一理あるわな。っちゅーことでどや、絹」
「うっ……そう言われたら、そうかもしれへんけど……」
「……これでほんまに、すぐ合同練習とか練習試合とかしてもうたら、どうしよ……」
「セーラちゃんと洋榎ちゃんの試合見られるや~ん」
「お別れのときのお姉ちゃんの様子、江口さん知ってたらどうするん?」
「!? あっ、なっ……きょ、京太郎はそんなん、ペラペラよう言わんやろ!」
「まぁヒロはそこまで恥ずかしくなかったし、ええのよー」
「涙ぐんでたんくらいは、知られそうですけどね」
「ぐ、ぐんでへんわっ、あほぉっ!」


~千里山

「いよっしゃあああああああ! ギリギリやっ、ギリギリ間に合うたで!」
「はいはい、おめっとさーん」
「叔母ちゃ――監督は冷静なもんですね」
「知っとったからなぁ」
「うちらの試験は、前期で終わりやし……ふふふっ、春大会前の特打ち、参加できるなぁ! 怜ぃっ!」
「そうやなぁ……試験のときは、気ぃ遣わせてしもたし、お礼はせんとな」
「部長、お疲れさまですー」
「私はなんもしとらんし……ま、これで直にデータ取れるわな。ふへへっ、吸い放題やぁ~」
「そういやあの子、住むとこはどうするんやろなぁ」
「こっちとちゃなうんですか?」
「うちがミナミから通えとるのに、わざわざ引っ越すほうが手間かかるやろ。なんやったら、毎朝送ったってもええしな」
「えぇ~、ずっこいわぁ、それ……また洋榎らの近くとか、こっち損ちゃうか?」
「大丈夫っぽいですよ。連盟によると、キタにアパート用意してるて」
「ふむ、そういうことやったら、私になんかあっても世話してもらえんなー、大助かりや」
「怠けなや! ほんま、ビッとしたとこ見せたらんと、また気ぃ遣わせてまうで」
「善処するわぁ……」
「やる気ゼロな返事ですね……まぁ気ぃ遣わせる言うたら、泉もやで」
「わ、私ですかっ?」
「この須賀京太郎、日誌読む感じやと、一年にはえらい甘えられとる。そんだけ、同学年を甘やかすんがうまい、いうことや」
「はぁ……まぁ、私は別に、甘えたりしませんけども」
「よう仕切ってくれてる一年やったしなぁ」
「はい、そらもう」
「――そういう、しっかりした風のモンほど、甘えたい本能があるいうて……何人も落とされとるんちゃうやろか」
「しっかりしてるいうたら、竜華もやなぁ」
「私が一年に甘えるか……んー、それもええなぁ。怜甘やかした分、そっちに甘えたろか」
「ほな、私がスガキョー甘やかしらって、バランス取ろか」
「スガキョーってなんやねん」
「呼びやすいやろ?」
「スガキヤみたいで、微妙っすわ……」
「まぁ呼び名はなんでもええけど――あの子、来月すぐ誕生日やからな」
「へっ」
「祝えとは言わんけど、おめでとうくらいは言うたり。絹恵の誕生日では、えらい世話なったからな」
「あら、絹ちゃんの……そういえばそうでしたね。わかりました、その節はて言うときますわ」
「うぃーす」
「よっしゃ。ほなそろそろ練習しよか! なんや、気合入ってきたわぁ!」
「私らは勉強やな。そろそろ起きや、怜ー」
「んー、もうちょい……この太ももは、離れがたいわぁ……」
「あ、それで思いだしましたわ。須賀京太郎も、なかなか膝枕ソムリエらしいですよ。姫松の前レギュラーは制覇したとか」
「――ほっほう、そら……相手にとって不足なしやな。竜華の膝枕は渡さへんで」
「なんの勝負しとるんですか……」


浩子「……あっ」

竜華「んー? どないしたん?」

浩子「いえ……先輩ら、前に2月前半でテスト終わるから、三週目から練習付き合えるて言わはりました?」

怜「竜華がそんなこと言うてたような……」

竜華「えっ、そうやろ? なんかおかしいか?」

浩子「私ら、三週はテスト期間なんで……練習できませんよ」

竜華「――へ」

怜「あぁ~、そういうたらそやったな~。いやー、残念無念やわー」

泉「感情込めて言うてくださいよ」

怜「誰が血も涙もない冷血女やて」

泉「そこまで言うてへんでしょ!」

セーラ「俺とやったら打てるで!」

浩子「須賀くんとは無理でしょうけどね」

竜華「浩子と泉もやろ! 意味なっ!」

セーラ「ひどいこと言いなや……」

怜「んー……見えたで」

竜華「なにがや?」

怜「二週目週末が練習か合宿やったら、大勢で打てそうやわ。チャンスはそれだけやろな」

竜華「ほんまか……まぁ、少なくても打てるならええか」

浩子「そういうわけでして、先輩らは前半に勉強詰め込んで、後半は勉強の邪魔するいうことになります」

竜華「せぇへんわ!」

浩子「二人と麻雀するには、二週目の連休しかないみたいですね。竜華先輩の能力はまるで決まってないみたいですけど」

竜華「怜ちゃんと完全状態は?」

浩子「未実装です」

怜「えらいザコやん……」

セーラ「俺の敵とちゃうな!」

浩子「セーラ先輩のも、和了判定下がって打点上がる、劣化三尋木プロですけどね」

セーラ「」

泉「わ、私は……」

浩子「あんたは無能力や」

~2月0日、北大阪到着

京太郎「お疲れさまでしたー。どぞ、よかったら甘いもんと缶コーヒーです。持ってってください」

京太郎「またよろしくお願いしまーす、ありがとうございましたー」


京太郎「――ふぅ、業者の見送り終了っと。荷物も整理できたし、また散策するかなー」

京太郎「まぁその前に、千里山の情報も見ておかないといけないけど」

京太郎「さて――まずは先鋒、園城寺怜さん。三年か」

京太郎「隣のブロックだったからよく知らないけど、照さんと麻雀して倒れて病院送りになったとか……」

京太郎「うーん、確かに……守ってあげたくなるような、か弱い女の子って感じだ」

京太郎「玄先輩、照さん、そして園城寺さん……あとは、和たちの先輩の花田さんだっけか」

京太郎「その中でやってたってことは、この人も相当強いんだろうな……」

京太郎「で、次鋒が二条泉、一年か……一年!?」

京太郎「まあ、咲たちや穏乃たち、それに淡のことも考えればおかしくはないのか……こいつも相当強いんだろうな、なんか妙な能力あったり」

京太郎「菫先輩と宥先輩、それに新道寺の人も三年だったか。その中でがんば――あ、マイナスだ」

京太郎「まぁ仕方ないか、あのメンツなら……名門千里山の一年レギュラーってだけで、十分な実力なのはわかるし」

京太郎「けど、なんでこいつ腋全開なんだよ……冬もこれだったらちょっと引くな」

京太郎「露出が多いだけなら、長野でも日常だけど……さて、気を取り直して中堅は、と」

京太郎「江口セーラ! これは知ってる、大阪二位指名の人だ」

京太郎「うおー、しかもすげー美人、っつかかわいいし……洋榎先輩とはライバルなのかな、プロでも当たることはありそうだし」

京太郎「大阪ダービーとなれば、どっちも出るんだろうな……これは見逃せない、できれば生で見たいもんだ」

京太郎「さてさて、お次の副将さんは……千里山の部長さんなのか。船久保浩子――あれ?」

京太郎「あー、従妹ってこの人か、なるほど……どことなく雰囲気が似てる。やっぱ美人の家系なんだな」

京太郎「おもちは……残念、洋榎先輩タイプか」

京太郎「趣味、データ収集って……あ、ひょっとしてこの人か、この前データがどうこう言ってたのは」

京太郎「俺のデータなんてどうするんだと思ったけど、趣味なら仕方ない」

京太郎「んで、大将……この人は、すごい……」

京太郎「菫先輩か、それ以上……霞先輩ほどではないけど、小蒔先輩とどっちが……いや、身長とのバランスではやはり……」ブツブツ

~二時間後

京太郎「――――はっっ!」

京太郎「ふぅ、理論構築はここまでにしておくか。あとは会って、実際に確かめてみることにしよう」

京太郎「で、なぜか監督まで載ってるし……元プロ、愛宕雅枝監督」

京太郎「お母さんもやりつつ、名門校を全国常連に育てる名監督か……部長とか、そういうタイプになりそうだけど、どうだろ」

京太郎「……秋以降のメンバーは、この中だと二人……だけど、目ぼしい結果はまだ出ていない」

京太郎「北大阪には、あの人……インハイで咲とも打った、荒川憩さんがいるからな」

京太郎「漫先輩、絹恵先輩が手も足も出ないって言ってたんだ……その人を抑えて、千里山は春の大会に出場でき――あ、違ったか」

京太郎「秋の地方優勝で、三箇牧は出場確定だから、千里山にも可能性はあるのか……」

京太郎「とはいえ、全国に出れば三箇牧とも当たるわけだし、そこでの勝利を支えるのが俺の役目か」

京太郎「――やれる限りのことを、精いっぱいやらないと」

京太郎「まあ、咲たちや穏乃たち、それに淡のことも考えればおかしくはないのか……こいつも相当強いんだろうな、なんか妙な能力あったり」


京太郎「まあ、咲たちや穏乃たち、それに淡のことも考えればおかしくはないのか……春も一年レギュラーだし」

京太郎「ってことは、こいつも相当強いんだろうな、なんか妙な能力あったり」

京太郎「そうと決まれば、まずは買いだし先の確保だな。街に出てみよう……」

京太郎「ミナミとはまた雰囲気が違うな。でも活気があるのは変わりない……さて」

京太郎「どこから回ってみるか」

京太郎「病院か、でけぇな……」

京太郎「俺もお世話になるかもだし、あと……先輩の、あの人が身体弱いみたいだからな」

京太郎「学校からも近いし、ここに連れてくることが多いだろうから、念のために場所を覚えておこう」

京太郎「……しかし、どこの科にお世話になるかはわからないんだよな、どうするか……全部覚えとくか」

??「んー? あらー、そこの方、ちょっとよろしいですかーぁ?」

京太郎「階層毎に違うから、まぁ覚えやすいほうか……どれどれ、なるほどなるほど……」

??「ちょちょちょ、無視せんとってやぁ……君のことですよーぅ」

京太郎「へっ? えっと、俺ですか?」

??「そう、あんたさんですぅ……あ、やっぱりせやんな?」

京太郎「なにがやっぱりかわかりませんけど――」

京太郎「………………えっと、間違ってたら申し訳ないですけど、よろしいですか?」

??「はぁーい、なんでもどうぞー」

京太郎「……三箇牧高校の二年生、荒川憩さんじゃありませんか?」

憩「…………はららー、これは驚いたなぁ。まさか天下の派遣執事くんに、うちの名前知られてるとは、思わへんかったわぁ」

憩「はぁい、仰る通りですよーぅ。三箇牧の荒川憩です、どうぞよろしゅう」ニコッ

京太郎(かわいい)

京太郎(って、見た目に騙されてはいけないっ……この人は穏やかに見えて、めちゃくちゃ打ち筋が鋭いんだ)

京太郎(咲や照さんも、かなり手を焼いてたみたいだし……でも、それだけ強いってことだ……)

京太郎(かわいくて、強い……いいね!)グッ

憩「???? あ、あのー、もしもし?」

京太郎「はっっ! す、すみませんっ、申し遅れまして……清澄高校麻雀部、現在は――というか、明日より千里山女子でお世話になります、須賀京太郎と申します」

京太郎「どうぞよろしくお願いします」

憩「はーい、よろしゅーに」ペッコリン

憩「それで――さっきはなにを、ボーッとしてはったん?」

京太郎「いえ、試合では見たことありましたけど、素の荒川さんとお話しするのは初めてだったので」

京太郎「つい見惚れてまして、申し訳――」

京太郎「――すいません、いまの忘れてください」カァッ

憩「」

憩「や……」

憩「や、その……なんや、そんなんっ……」

憩「す、すんません、こっちこそ……そんなん、言われたん……は、初めてで……」カァァァッ

憩「お恥ずかしゅう……思てます……」


憩(な、なっ……なんやの、この人いきなりっ……)

憩(いまのっ、完全にアレやんっ、あの……く、口説いてた、やんなぁ?)

憩(や、ば……顔、あっつぅ……っちゅーか、この人も赤なって……って、さっきのは、ほんまってことなんっ!?)

憩(ああああっ……なにを考えてるん、うちはぁ……そやないやろ、いま声かけたんは、そういうんと違て……)


京太郎(やべぇぇぇ! 俺のアホッ、そんなあっさりと、素直にいう奴があるか! 誤魔化せよぉぉっ……)

京太郎(最悪すぎる、絶対印象悪いだろ……軽いとか、変なやつとか、思われてるっつーに!)

京太郎(オワタ)


憩「/////////」

京太郎「/////////」


京太郎(……いつまでも黙ってたって、話が進まない……)

京太郎「ここは俺が、男らしく――」

憩「ひぃうっっ!? おお、男らしくっ!?」

京太郎(声にだすなって言ってんだろぉぉぉっ!?)

京太郎「――コホンッ……それで、荒川さん? なにか用事で、俺に声をかけてくださったんですか?」

憩「へっ? あ、や……その、用事いうたら用事のような、そうでもないような……」

京太郎「? ああ、なるほど……わかりました」

憩「――っ!」


憩(ゆ、有名な須賀くんや思て、ちょっと声かけてみたけど……み、ミーハーやて、思われてしもたやろか……)

憩(けどちゃうねんで! あのっ……そういう気持ちやのうて、疲れが溜まってるようなら、ちょっとでも楽に出来たら思て、声かけただけで――)


憩「………………あ、そ、の……」


憩(――って、言えへぇぇぇんっっ! さっきので、もう、えらい……は、恥ずかし、なってしもて……///)


憩「ちゃう、くて……」

京太郎「あれ、そうなんですか? 俺が案内図見て迷ってるから、見かねて声をかけてくださったと、てっきり」

憩「――っっ! そう、それ!」

京太郎「うおっ!?」

憩「ぁ――んっ、こほんっ……そうそう、そうなんですー。まぁうちの病院やないですけど、案内くらいはできますんでーと思て」

憩「そしたら須賀くんやったから、ちょっと驚いてしもて」

京太郎「そうなんですか……ありがとうございます、荒川さん。お優しいんですね」

憩「……あの、荒川て呼びにくいやろ? 憩でええよ?」

京太郎「わかりました。なら、俺も京太郎で構いません」

憩「はぁーい。ならよろしゅう、京太郎くん」ニコォッ

京太郎「よろしくお願いします、憩さん」

京太郎「で――案内、なんですけど……って、その前にいいですか?」

憩「はぁい?」

京太郎「憩さんの……働いてる? 病院じゃないとして、それならどうして――」

京太郎「ナースの服を?」

憩「ああ、これは趣味ですよーぅ」

京太郎(よいご趣味で!)

京太郎「まぁ、お似合いですけれど……それだと、ほかの患者さんに声をかけられたりしませんか?」

憩「ここの看護師制服は、みなさんパンツなんでー」

京太郎「……まぁ、憩さんみたいなミニスカの看護師がいたら、病院が繁盛してよくないですよね」

憩「」

憩「////」

憩「はっっ……も、もうっ、うまいこと言うて……///」

憩「えーっと、それに……うちのおる病院やないですけど、聞かれたらだいたいのことはお答えしてますから、問題あらへんのですぅ」

京太郎「ボランティアの案内、ってことですか?」

憩「ん、そんなとこやろか。それにほら……キャップ取ってしもたら、すぐにはわからへんやろ?」

京太郎「たしかに、それだと遠目には、ナースってわかりにくい……か、な?」

憩「あははー、まぁそんな気にせんと……それより、どこの科にご用なんですか?」

京太郎「大丈夫です、俺は健康体なんで」

憩「あら、そうなんや……前は風邪引いて大変やったし、注意はしとってねー」

京太郎「はい、ありがとうございます……って、それ4ヶ月くらい前のことですよ。よくご存知ですね」

憩「あっ」

京太郎「……それくらい前から、日誌のほうをチェックしてくださってたんですか?」

憩「やっ……ちゃ、ちゃうねん! それは……偶然、いうか……偶々、色々、あって……」

京太郎「――憩さんみたいな、強くて可愛い人にチェックしていただいてたなんて、光栄です!」

憩「………………はうっ……」

憩「か……軽々しく、そういうことは……い、言うたらあかんよ……?」

京太郎「えっ……あ、はい……すいません?」

憩「……ん、まあええよ……それよりも、健康ならなんで病院に?」

京太郎「それは――」

京太郎(……詳しく話すのも、よくないかな?)

京太郎「まぁ、部員の方の体調が悪くなれば、お連れする病院はここかと思ったので、どこに何科があるのか調べておこうと思っただけですよ」

憩「ああ――なるほどね、園城寺さんのためなんやぁ……ふふっ、優しいねぇ、京太郎くん」

京太郎「からかわないでくださいよっ……でも、園城寺さんのことだって、すぐわかっちゃいましたか?」

憩(…………通院してるんはここやから、よう見たけど……それは、うちから言うこととちゃうなぁ)

憩「千里山いうたらね、そうやろかて思て……ああ、安心してよ。誰かになんや言うたりもせぇへんから」

京太郎「はい、ありがとうございます……さて、それじゃ俺はそろそろ」

憩「えっ! ちょっと待ちぃや、もう覚えたん?」

京太郎「? ええ、まあ」

憩「ほんま……頭の使い方も、えらい上手なんやね」

京太郎「一度にいくつかのことを、それも素早くできないと、師匠には怒られますからね……これくらいはなんとか」

憩「…………高すぎる理想は、自分の器を知ったときに苦しむこともあるんよ」

憩「京太郎くんはそういうことならへんと思うけど……ちょっとだけ、心配なるわぁ」

京太郎「――大丈夫です。これでも俺、自分の限界は知ってますから……」

憩(そうならへん、いうのは逆の意味なんやけど……理想にも追いつける、ってな)

京太郎「目指すくらいは、凡人にも許される権利ですから。フル活用していきますよ」

憩「……ふふっ、ほんま……器を知って、苦しまんようになぁ?」

京太郎「はい。それじゃ、失礼します」

憩「んー、それも待ってほしいなぁ」

京太郎「お? なんでしょう、まだなにかありました?」

憩「んふふ、まぁそやね……えっと、このあとの予定は、なんかあるん?」

京太郎「えーっと、この辺りを一通り見て回って、お店の場所とか調べとく予定ですけど」

憩「あらぁ、そらちょうどよかったですよーぅ。あんなぁ、せっかくお会いできたんやし、よかったら案内でもさせてって、言おかと思てたんやわ」

憩「どうやろ、案内してかまへんかなぁ?」

京太郎「――それでは、お言葉に甘えまして」

京太郎「よろしくお願いします、憩さん」

憩「はぁーい、よろしゅう任されましたー。ほな、行きましょうか」

  • 憩好感度+2

憩「――あ、そうそう。なぁ、京太郎くん?」

京太郎「はい、なんでしょうか」

憩「うちのこと、怖い女やなぁて、思てるやろ?」

京太郎「――――――いえ」

憩「気遣いはいらへんよー。やっぱりあれやろか、イメージとしては、個人戦決勝卓のんが強いんかなぁ?」

京太郎「…………咲と照さんの強さは、心底わかってますので……それと張り合えるだけで、尊敬するくらい強いと思います」

憩「あはは……そうなんやぁ。でも、そんなうちでも怖がるんが、宮永照さんやねんよ?」

京太郎「うーん、照さんは怖くないっていうか……和みますよね、あの人」

憩「ぷふっ……ふふっ、あはははっ! そやろっ? 京太郎くんは、うちの怖がる相手でさえ、そんな風に見てしまえる人やねん」

憩「せやから――うちのことなんて怖がらんと、普通の女の子や思て、接したってなぁ?」

京太郎「……そうですね、すいませんでした……今後は改めますよ、憩さん」

憩「ならよしですよーぅ。さぁて、ほな参りましょうかぁ。まずは雀荘でも行ったりましょーぅ」

京太郎「打ちます?」

憩「いいえぇ、今回は案内だけで。また三箇牧から千里山に声かけさせていただきますよって、そのときによろしゅうお願いします」

京太郎「はい、わかりました」

京太郎「――っつーことで、ここが俺の家です」

憩「綺麗なアパートやね。ワンルーム?」

京太郎「一部屋とリビングダイニングって感じです」

憩「学生一人にしては広めやね」

京太郎「ですねー。引っ越しに継ぐ引っ越しで、まとめるのが大変だから荷物もあまり持ってませんし」

憩「二人でも住めそうやねぇ」

京太郎「一ヶ月後には別々になりますけど」

憩「あははっ、それもそうやぁ」

京太郎「さて、それじゃ荷物置きましたら――次は憩さんのお家、案内していただきますよ?」

憩「ふぇ?」

京太郎「ほら、もう真っ暗ですから。お送りさせてください――お姫様?」

憩「――――っっ!!」ズッキューン

憩「そ……ゆ、こと……やったら、うん……お、おねっ……お願い、しますっ……///」

京太郎「はい、心得ました。では、すぐに戻ります」


憩「……不意打ちはあかんて、ずっこいやん……もうっ」


~0日終了

~2月第一週月曜

京太郎「初登校――だが、弁当の支度も朝飯も、そして差し入れの用意も抜かりはない」

京太郎「昨日、色々と案内してくださった憩さんに、感謝しないとな」

京太郎「……しかし、よく考えたら今日から久々の女子校かぁ」

京太郎「執事服での登校、なんとなく違和感が――」

京太郎「あれ? そうでもないな……うん、やっぱりそうだよな」

京太郎「俺は執事として務めると認識していれば、なにもおかしくはない」

モブ子「いや、その理屈はおかしい」

京太郎「おっす、はえーな。あれ、モブ田は――」

モブ子「やつは置いてきた。修行はしたが、この戦いにはついて来られない……」

京太郎「――そうか……惜しいやつを……」

京太郎「あれ、その間ってどこで待機してんだ? 前の学校か?」

モブ子「企業秘密ー」

京太郎「き、気になる……」

モブ子「まーまー気にすんなよ。それよりどーよ、私のセーラー服、久々だぜ~」ヒラヒラ

京太郎「似合う」

モブ子「ふぇっ!?」

京太郎「悔しいが素材はいいからな、仕方ない」

モブ子「ばば、ばっかおめー……なにいってんの、もー」

京太郎「まあ安心しろ、妹の服が似合ってるって感覚だからな」

モブ子「キョータロー、シスベシ! ジヒハナイ!」

京太郎「ワザマエ!」


~朝のHR

雅枝「ほーい、っちゅーわけでやー。今日からうちの唯一の男子生徒として、エロボケ小僧の京太郎が通いよるからなー。なかようしいや」

京太郎「碌な紹介しない監督だな……」

雅枝「なんや言うたか、マネージャー」

京太郎「なんでもございません……えぇっと……みなさんはじめまして、長野県から参りました、須賀京太郎と申します」

京太郎「この前までは姫松高校におりましたので、大阪の勝手はある程度わかっているつもりですが――」

京太郎「久々の女子校ということで、また慣れない点も多いかと思います」

京太郎「可能な限り、注意を払って行動しますが、気に入らない点や用事などありましたら、遠慮なくお申し付けくださいませ」

京太郎「それでは、一ヶ月の間ではありますが、よろしくお願いいたします――お嬢さま方」ペッコリン

女子生徒一同『』ズッキューーーーーン

京太郎「………………」

京太郎(反応がない……やばい、引かれたか……? そりゃそうか、執事服だもんなぁ……)ショボン

千里女子A(やばい)

千里女子B(ちょっとトイレ行ってくる)

千里女子C(執事最高や!)

千里女子D(Vやねん金髪!)

千里女子E(う、うちぃ……うちだけの、執事やぁ……ふぇへへへへ……)


雅枝「………………目ぇがいっとる」

京太郎「はい?」

雅枝「いぃや、気にせんでええわ……まぁ、うまいこと逃げとり。なんやあったら、モブ子か――いや、あいつがおったわな」

雅枝「泉ぃっ!」

泉「へっ? あっ、は、はい! なんでしょう監督!」

雅枝「部活中以外、監督はやめて……まぁええ。クラスで京太郎の面倒は、あんたに任せたで」

泉「」

雅枝「ほなホームルーム終わりやー。授業の準備して待機ー」ガララッ

泉「――あっ、ちょっ、ま、待ってくださいて、監督――あぁぁぁ……」

京太郎「……行っちゃったな」

泉「丸投げとかひどいですやん……」

京太郎「なんか悪い、俺のせいで」

泉「いや、須賀くんには色々世話なったから、ええんやけど――」

京太郎「えっ? 俺、なんかしたか……っていうか、どっかで会ったことあったか?」

泉「日誌のサイトで、試験勉強手伝うてもろたことがありまして……」

泉「あ、すんません。挨拶遅れて……二条泉です、麻雀部ではレギュラーの席もろてます」

京太郎「そっか、すごいよな、一年でレギュラーなんて……あ、俺は須賀京太郎」

京太郎「改めてって感じだけど……ま、一ヶ月間よろしく。面倒はかけないようにするから」

泉(……やっぱあれやなぁ、ごっつイケメンさんや……)

泉(けど、接してみたらわりと気さくで、普通な感じかな……まぁ、そのほうがありがたいけども……)

京太郎「あれ? おーい、二条さーん?」

泉「えっ? あ、ああっ、はい! 大丈夫やで、よろしゅう……それと、私のことは泉でええから」

京太郎「そっか。なら、俺のことも京太郎で頼む。京ちゃんでもいいけど」

泉「なんでそんなフレンドリーな距離ですのん! まぁ、それやったら京太郎くんにしとくんで」

京太郎「うぅむ、関西の人はフレンドリーだと思ったんだが……姫松はそんな感じだったぞ?」

泉「あっちは男子もおるからやろ? 言うとくけど私ら、純粋培養のお嬢さまやで、これでも」

京太郎「――失礼いたしました。では泉お嬢さま、今後ともよろしくお願いいたします……」ヒザマズキー

泉「ふぇ」

泉「」プシュゥゥゥゥ

京太郎「あれ? お、おーい、泉! しっかりしろ、おーい!」

泉「や、ひゃ……へ、へい、平気、れしゅ……」カァァッ

京太郎「っておい! めちゃくちゃ顔あけーぞ、大丈夫か!」スッ

泉「わっ、ちょっ――」

京太郎「……ちょっと高いな。とりあえず保健室行くか。悪い、担ぐぞ」ヒョイ

泉「お姫様!? ちょっ、ほ、ほんまにっ、なんでも、なっ、ないて――」

京太郎「お嬢さま、暴れては体調に響きます――この執事に、どうぞお任せを」ニコッ

泉「」

泉「は…………い…………」クテー

京太郎「よしよし。それじゃ、すぐ連れてくからな。おっと、モブ子ー」

モブ子「へいどうしたよ、スケコマシ」

京太郎「悪評を広めようとするな。泉、保健室に連れてくから、そう言っといてくれ」

モブ子「おう、二時間だな。どうぞごゆっくりー」

京太郎「いや、そこまでかからんだろ……まぁいい、任せたぞ」

~初日、昼くらい

京太郎「お、戻ってきたか、泉」

泉「ようやっと落ち着いたわ……」

京太郎「大丈夫か?」ガタッ

泉「ちょっ……待ちぃっ!」ズザザッ

京太郎「おおお……露骨に距離取ってくんなぁ」

泉「は、半径、1メートル以内に入ったらあかん、ええな!」

京太郎「それでも十分近い気はするが……まぁわかった」

京太郎「あ、そうそう。それからこれ」

泉「ん? ノート?」

京太郎「午前中の授業の分、ノート取っといたぞ」

泉「…………おおきに、です」

京太郎「それと昼飯用に、梅粥と雑炊用意したけど、どっちがいい?」

泉「えっ」

モブ子「食べなかったほうは、私がもらうからどっちでもいいよー」

泉「いやいやいや、それ以前にどうやって用意したん!」

京太郎「え? さっき調理室借りただけなんだが……」

泉「その大量の米はどうしたんや!」

京太郎「持ってきたけど?」

泉「」


モブ子「この世には、普通のモノサシでは計れない、狂人がいるという……」

泉「そのようやで、ほんま……」

京太郎「食えるようなら食って、放課後には元気になっててくれよ?」

京太郎「部室に案内してもらわないとだからさ」

泉「はぁ……わかりました、ほな雑炊のほうを――お?」

モブ子「ズゾゾゾゾゾッ」

泉「……梅粥、胃に優しいなぁ」

京太郎「なんかすまん」

泉「モブ子ちゃんの前に、ご飯置いといた時点で、諦めるべきやったわ」

京太郎「初登校の学校で、すでに知れ渡ってるお前の食い意地ときたら……」ポン

モブ子「ズゾッ、ズゾゾッ、ズゾゾゾゾッ」

京太郎「落ち着いて食え! おっと、そういえば泉は、弁当とか持ってなかったか?」

泉「え? あ、ああ、平気やで。朝練前に食べてしもて、昼はだいたい学食やから――」

泉「――や、なくて……普段学食やから、弁当はないなぁ」

京太郎「いや、隠さなくていいだろ。目いっぱい頭使うのに、腹減ってちゃだめだろうし……」

京太郎「それで足りなさそうなら、部活の前になんか用意しとくからな」

泉「そ、そんな大食いとちゃうから!」

京太郎「俺用、差し入れ用、そのついでだ。余ったら食べてくれると助かる」

泉「――はいはい、わーっかりました!」

京太郎「おう、助かるぜ。サンキュー」

泉(…………なんやの、この人は……色々癪やわぁ……)

泉「……まぁ、悪い気ぃはせんけど」

~初日放課後、部室

京太郎「……………………」

怜「ほーん、これがあれか……」

竜華「こら、あれとか失礼やろ」

セーラ「あのたこ焼きの……」

浩子「先輩はちょお黙っとってください」

泉「とりあえず、京太郎くんから挨拶させましょうか。それから、先輩方にもご挨拶いただいて――」

浩子「部長差し置いて、よう仕切ってくれるなぁ」

泉「うぇっ! あ、す、すいません」

雅枝「あんたらがグダっとるからや。まあええ、京太郎、挨拶しとき」

京太郎「はぁ……(やりづらい……)」

京太郎「えー……清澄、永水女子、宮守女子、阿知賀女子、白糸台、姫松と渡り、今月よりこちらでお世話になります」

京太郎「マネージャーの須賀京太郎です。マネージャーですが、麻雀も打たせていただけると、ありがたいです」

浩子「そらもう、たっぷりぬっぽりねっとりと吸わせてもらいますんで……ごちそーさんです」ベロォ

セーラ「またゲッスい顔しとるで」

京太郎「あとは、見習いの執事としても修行中です。なにかありましたら、どうぞご遠慮なく」

京太郎「――ってとこで、大丈夫ですかね?」

雅枝「まあええやろ……そういうこっちゃ。用があるもんは、好きに頼んだらええ」

雅枝「あと、一年はヒマがあったら京太郎について、仕事の手際覚えとき。おらんようなっても困らんように、あと来年の後輩にも教えられるようにな」

京太郎「人に教えられる偉い立場じゃありませんけど、役立てられそうなことがありましたら、なんなりとお聞きください」

京太郎「それでは、短い間ですが、どうぞよろしくお願いします」ペッコリン

怜(礼儀正しそうや……それに、顔も知らん私のこと、あんなに心配してくれとったわけやし……優しい子やろなぁ)

セーラ(なんでもええからはよ! はよたこ焼きやいてくれ!)

浩子(…………絹ちゃんがえらいはしゃいで話すから、どないなもんや思たけど……これはまぁ、たしかに……その、それなりに……あれですね)///

竜華(……そういえば、膝枕好きなんかな……あ、あかんで! 私の膝は、怜のもんやっ……)

泉「……あのー、先輩方の紹介は、自分がやっていいですか?」

浩子「――はっっ! そ、そうやったな、うん……ほな、私からいきましょか」

浩子「えー、部長の船久保浩子です、趣味はデータ集め。そのうち京太郎くんのも取らせてもらいますんで、その際はよろしゅう」

雅枝「初対面から名前か、えらい気に入ったもんやな、浩子」

浩子「え? あっ――ちゃいますて、これは絹ちゃんやらヒロちゃんやらが、話すときに言うんがうつってしもただけで」

京太郎「まあ俺はどっちでも。それじゃ、よろしくお願いします、船久保先輩。俺なんかのデータでよろしければ、いくらでもどうぞ」

浩子「あら助かるわ。ほな、一ヶ月でたっぷりと」ジュルリ

京太郎(楽しそうだな……ほんと)

雅枝「京太郎、そっちだけ名前で呼ばれるんは不公平やろ。この子も浩子でええで」

京太郎「あ、了解です」

浩子「本人の承諾もなしに……まあ構いませんけど、そのくらいでしたら」

セーラ「っちゅーかいつまでかけてんねん! 次いくでー!」

セーラ「江口セーラ、去年の――エースは怜に持ってかれたけど、気持ちは千里山のエースのつもりや」

京太郎「尭深先輩や憧相手に、ぶっちぎりで稼いでましたもんね。それに、来年からはプロ入りですし」

セーラ「おっ、よう見とるやん! まあそんなわけで、そっちでも活躍するために、毎日練習せなあかんわけや。差し入れ頼んだで!」

怜「食い意地張っとるなぁ」

竜華「はしたないわ」

セーラ「はぁっ!? あんなうまそうなモン見て、こうならんほうがおかしいやろ!」

泉「私は、そこまでは……」

浩子「私も特に」

怜「おいしそうやとは思うけど、なんも必死にならんでも……」

竜華「プロなったら、ちょっとは自重してや」

セーラ「」

京太郎「俺はいいと思いますよ。いっぱい食べてくれる女性は、なんといっても健康的で好きですから」

セーラ「きょ――」

セーラ「京太郎おおおおおおおおおおおおおおっっ! ええやっちゃ、お前はええやっちゃなぁ!」ブワァッ

京太郎「泣くほどっ!?」

怜「いやー、泣いとるセーラはたまらんなぁ」

竜華「このギャップがええねんなぁ」

浩子「これにスカート着せたら……集客アップ、さらに倍してドンやでぇ……」キランッ

泉「え、えげつない先輩らや……」

京太郎「いや、お前も協力してたろ」

泉「そんなつもりなかったんやて!」

京太郎「はいはい……江口先輩、大丈夫ですか? ハンカチどうぞ」

セーラ「おお、すまんなぁ……ぐすっ……はぁ……あ、俺のことはセーラでええで。なんやったら、どっかの一年みたいにタメ口でもええけど」

京太郎「憧ほどなれなれしくはできないですよ、さすがに」

セーラ「ようわかったなー、いまので新子のことやて」

京太郎「阿知賀でよく聞きましたからね。あと、Aブロックの放送のビデオ見せてもらって、なんか仲良さそうでしたし」

セーラ「あいつと打つん、おもしろかったからなー。また打ちたいわ、せっかくやし京太郎おる間にな」

京太郎「そうですね。そういう機会もあるかもしれないですし」

怜「こらこら、勝手に自己紹介終わったみたいな流れ、作らんといてくれるか」

京太郎「あ、すいません――えっと、園城寺先輩」

怜「せや……あ、怜でええよ」

京太郎「そうですか?」

怜「こほんっ……えー、園城寺怜です。受験のときは、わざわざお参りに行ってもろて、ありがとう」

京太郎「――ああ、いえ。大事がなくてよかったです。試験のほうはいかがでしたか?」

怜「うん、よかったで。あとは今週末の二次試験で終わりや……はー、疲れたわ」

竜華「こらこら、まだ始まってもおらんやろ。なに終わった風にしてしもて」

京太郎「清水谷竜華先輩ですねっ、お会いできてうれしいです!」

竜華「」ビクッ

怜「なんや急に、えらい元気になって――はっっ!」

京太郎(やばっ、露骨すぎた……)

怜「……スガキョー、さては……」

京太郎「なんすか、その名前は」

怜「京太郎よりスガキョーのが呼びやすいか思て……そんなことより、竜華見てそんなええ顔しとるいうんは……まさか――」

京太郎「………………」タラー

怜「あんた――竜華の膝枕、狙てるんやろ」

京太郎「………………は?」

怜「さすがミナミの膝枕ソムリエやな、キタ一番の膝枕に目ぇつけたんは、褒めといたる……せやけど!」

京太郎「はぁ」

怜「竜華の太ももは私のもんやで! 触りたかったら、それだけ竜華の信頼掴むこっちゃな~」ゴロンッ

竜華「いや、私の脚やし、私のもんやろ……って、そんなんどうでもええわ」

怜「大事なことやのに……」

竜華「えーと……私が前の部長、清水谷竜華やで。怜が言うとるんは、気にせんでええけども……千里山女子麻雀部のこと、よろしくな」

京太郎「はい、できる限りのことは、させていただくつもりです」

竜華「うん。ほんまは、私も一緒に麻雀できたらええねんけど、日程の都合上、来週末くらいしか機会はないみたいで……」

竜華「まぁそれでもよかったら、色々と教えさせてもらうわな」ニコッ

京太郎「美人ですね(よろしくお願いします)」

京太郎「」

浩子「まーたベタなことやっとるで、この男は……」

竜華「――大丈夫やろか、この子……」

京太郎「が、頑張りますから!」

泉「……はいはい、これで全員挨拶終わりですかね。ほな、部活に入りましょうか」

雅枝「なに怒っとるんや、泉」

泉「なーんも怒ってません。ほな、レギュラー一人ずつ卓ついて、一軍入って対局。二軍は別室で。三軍は入れ替わりながら牌譜と対局。始ましょ!」パンパンッ

浩子「相変わらず仕切ってくれんなぁ……まぁ楽でええか」

怜「部長やろ、だらけなや」

竜華「あんたが言いな! ほら、起き! 勉強始めんで!」

怜「あと五分~」ゴロゴロ

セーラ「京太郎! たこ焼き頼むで!」

浩子「データも取りたいんで、対局もよろしゅう頼むわ」

京太郎「――ふぅ。なんか流れるように練習始まったな、さて――」


 ――野生のスッガは綺麗好きだ。


京太郎「――さて、とりあえず掃除から入ろうかな」

セーラ「えー」

浩子「えー」

京太郎「いえ、その、お約束というか、最初はこれじゃないと落ち着かなくて……」

泉「そんな汚いですかね」

怜「いやぁ、普通やろ?」

竜華「そやなかったら、監督がえらいのん怒ってるやろし」

雅枝「好きにしたらええけど、練習の邪魔しなや」

京太郎「了解です!」



京太郎「さて、それじゃ掃除始めるか――ん?」

「あ、あのー」
「私ら、一年の三軍やねんけど……」
「よかったら、掃除手伝ってもええかなぁ」

京太郎「んー……いや、練習の邪魔しても悪いし、続けてていいぞ?」

「邪魔やないって!」
「そうそう、監督にも、須賀くんの仕事はよう見ときって言われてるし」
「うちらより手際ええんやろから、ぜひ見させてもらいたいわぁ」

京太郎「けど、牌譜とか取れないんじゃ……」

「大丈夫やで!」
「じゃんけんで、勝った方がこっちに来てるから!」

京太郎「そ、そうか、周到だな……」

浩子「…………普通、負けたほうがそっちやないか?」トンッ

泉「無視です、無視。練習しましょ」ムスー

怜「見てみ、泉がおこやで」

竜華「おこかぁ、大変やなぁ」

泉「怒ってませんて!」

セーラ「短気は損気やで、あ――」

泉「え?」トン

モブ子「ローン! チャンタドラドラ!」

泉「」

浩子「集中せんからや、アホ」トン

千里山新レギュ1「こっちもロンです。ホンイツイッツー、なんやらかんやらです~」

浩子「」

怜「まだまだやなぁ」

竜華「あんたの勉強もやで」

セーラ「ローン、倍満なー」

雅枝「セーラは調子ええなぁ」

京太郎「ま、いいか……えっと、それじゃ使ってる部屋は練習用が二部屋と、物置だっけ?」

「あとは部室として、ロッカールームもあるけど――」

京太郎「なら四部屋か……」

「けどそこ、更衣室にもなるから」
「ででで、でもやで! 須賀くんが、見たいんなら、その……は、入っても……」

京太郎「よし、そっちはみんなに任せる。掃除の手際だけ、やりながら説明していくぞ」

「はい!」
「はい!」
「……あれ、先輩?」
「ええやろ、二年のうちらが混ざったかて」
「そもそもうちは、マネージャー志望やったんやし……」

京太郎「大丈夫ですよ。それじゃ、一軍の邪魔にならないよう、物置から回りましょうか」

京太郎「――と、こんな感じかな」

「」
「」
「」
「」

京太郎「……あれ?」

「見えた?」
「いや、なんやわからんうちに……」
「先生! もう一回お願いします!」

京太郎「あ、ああ……それじゃ、ちょっとゆっくりやってくから。次の対局室のときは、一人ずつ隣につくってことで――」

「やったぁ」
「役得、役得やでぇ」
「て、手取り足取り……腰も、取ってもええから」
「やれやれ、一年はやかましなぁ」
「二年のうちらは、じっとしとっても大人の魅力で――」

京太郎「あの、ちゃんと聞いて……いや、見ててください、頼みますから……」

京太郎「すいませーん、対局室の掃除します。邪魔はしないようにしますのでー」

京太郎「お邪魔しましたー」

「えっ」
「来たとこやん!」
「って、ほんま綺麗になっとる!」

京太郎「失礼します、対局室の掃除させていただきますので」

泉「うるさせんとってや、邪魔なるから」

京太郎「ああ、気をつけるよ」

泉「気ぃつけるやなくて、邪魔せんように――」

京太郎「……こんなとこか」

泉「!?」

セーラ「浩子ー、データ取らんのか?」

浩子「こんなデータ、対局の役に立ちませんし」

怜「おー、あっちゅーまやなぁ」

竜華「よそ見してんと! 集中せな!」


京太郎「……なんというか、おおらかな先輩たちだな、千里山の方々は」

京太郎「それじゃ、掃除はさっきみたいな感じでお願いします。慣れないことがあれば、こっちでフォローしますので」

京太郎「大丈夫、俺でもあれくらいはできるようになったんですから」

京太郎「千里山女子のお嬢さま方なら、もっと簡単に、上手になりますよ」ニッコリ

「き、鬼畜執事……」
「この人のレベルに、追いつける気がしーひん」
「で、でもやらな、やらな怒られる……」

京太郎「いや、別に怒らないけど……ま、あと一ヶ月もあれば、なんとかなるかな」

京太郎「んー、それじゃそろそろ、掃除以外のことも始めないと」

京太郎「……さて、差し入れでも作ろうかな……んー、けど……」

京太郎「――よし、せっかくだしアレを……俺の黄金たこ焼きを、作らせていただくか」

セーラ「」ダラー

怜「それは女としてどうなん」

竜華「どんだけ楽しみにしてたんや」

浩子「ドン引きですね」

泉「やべーす」

セーラ「しゃ、しゃーないやろ! あほぉっ!」/////

京太郎「……あの、大丈夫です」

京太郎「できうる限り、おいしいものをお持ちしますので。楽しみになさっててください」

京太郎「それと、ハンカチです、どうぞ」ニコッ

セーラ「……お、おう、すまん……」フキフキ

京太郎「いえいえ。お嬢さまにお美しくいてもらうためなら、この程度」

セーラ「おっ……だ、誰がお嬢さまや!」

京太郎「セーラお嬢さまですが」

セーラ「」ボッ

セーラ「そ、そういうん、似合わんやろっ……やめーや」

京太郎「――真面目に言うと、先輩可愛いんで、似合わなくはないかと」

セーラ「」プシュゥゥゥゥゥッ

浩子「……ツモ。メンタンピンドラドラー。これで飛びやろ、ほな交代や」イライライラ

泉「ツモ、三暗刻チンイツドラ一。はい、入れ替わってください」

怜「ヒートアップしてきたで」

竜華「そろそろ集中せんと、私もヒートアップさせてもらうで」

怜「竜華がイケズやぁ~」ゴロゴロ


京太郎「さて、それじゃ調理室行ってきますのでー」

雅枝「はいはい、行ってきー。なんや、あんたおらんほうが部活スムーズに進みそうや」

京太郎「監督がひどいこと言う……」

雅枝「事実や」



~調理室

京太郎「くっそぉぉぉっっっ! 監督を見返してやる! これが俺のっ……全力、全ッ開!」

京太郎「――お待たせいたしました、本日はせっかくの機会ですので、オリジナルレシピのたこ焼きをご用意しました」

京太郎「ダシの味が活きてますので、そのままでももちろん、お召し上がりいただけますし――」

京太郎「こちらにソース、マヨネーズ、ポン酢、その他調味料もご用意しております」

京太郎「煎茶とほうじ茶、玄米茶、麦茶の準備がございますので、遠慮なくお申し付けくださいませ」ペッコリン

怜「おー、これが噂の執事スガキョーか」

竜華「玄ちゃんにメールで聞いとったなぁ、すごいんですよっ言うてたわ」

京太郎「恐縮でございます」

浩子「それでや、これがヒロちゃん絶賛のたこ焼きかいな……うん、たしかにおいしそうやな」

泉「言うても、たこ焼きはたこ焼きですやん?」

京太郎「ま、食ってみろって」

泉「………………」

京太郎「?」

泉「なんで、その……私には普通なん」

京太郎「だって同い年だし。これまでの経験上、同い年に執事らしくすると、すげー笑われたんだよなぁ」

京太郎「まぁ一部の先輩にも、えらく怒られたんだけど」

泉「……私は、別に笑わへんけど」

京太郎「なら――ありがとうございます、泉お嬢さま。どうぞ、冷めないうちにお召し上がりください」

泉「はぅっ……お、おおきに、です……」

セーラ「ふぁふっ、はふっ、ほふぅぅぅっっ! んまっ、めっちゃうまあぁぁあっっ!」

京太郎「ありがとうございます」

セーラ「ほんまっ、卒業する前にこれ食えてよかったわぁ……お代わりっ!」

京太郎「どうぞ、こちら焼き立てですので」

セーラ「サンキュッ!」ハグハグッ

浩子「はぁー、えらいがっつきようで……んっ、あふっ……けろ、はひかにおいひいわぁ……」ホッホッ

泉「すごぉ……生地のトロトロに、ダシの旨味が詰まっとって、口に広がるぅ……」モフモフ

怜「んぁー」

竜華「ふー、ふー……はい、あーん……って、なんでやの!」パクッ

怜「えええええ……」

京太郎「ふーふー……どうぞ、怜先輩。まだ少し熱いですから、気をつけてくださいね」

怜「ナイスやスガキョー! はふんっ……あふっ、ほふっ……ほぉっ、こらひゅまいっっ!」

竜華「と、怜が、私以外から……あーんて、あーんてっ……」

雅枝「自分で拒否っといてなにショック受けてるんや……しっかし、ほんまなかなかのなかなかやなぁ、これは」

京太郎「ふふふ、どうですか、監督」

雅枝「こんなん食うとったら、練習滞ってまうなぁ」

京太郎「」

雅枝「あほ、冗談に決まっとるやろ。うまいで、おおきにな」

京太郎「あ――ありがとうございますっっ!」

雅枝「こっちはええから、追加でも焼いてきたり。あと、二軍と三軍にも差し入れたるん、忘れなや」

京太郎「了解っす!」

京太郎「――よし、生地はこれで終わりだな。追加の差し入れ、持っていくかー」

京太郎「あとは茶葉を変えた急須も持って、と……」

京太郎「お疲れさまです、追加の分、お持ちしましたー」

京太郎「さて、どこから声がかかるか……」

竜華「京太郎くん、こっち追加でお願いや」

京太郎「はい、かしこまりました」

怜「私も~。あ~、あ~ん」

京太郎「はい、かしこまりました。ふー、ふー」

竜華「……京太郎くん、あんまり甘やかさんように」

怜「えぇー」

京太郎「えぇー」

竜華「なんやの二人そろて!」

京太郎「いや、なんというか……この、怜先輩のだらけっぷりが、どうも放っておけなくて……」

怜「せやろ。こう見えても病弱薄幸美少女の、怜ちゃんやからな……男子の庇護欲は集め放題やねん」フフフン

竜華「なんや意味合いがちゃうように思えるんやけど……」

京太郎「けど実際、怜先輩は可愛いですしね」

竜華「まぁ、そらそうやねんけど……」

怜「ようわかっとるで」パクパク

京太郎「まだ食べられますか? その、お身体のこともありますし、あまり多くは……」

怜「ほな、あと一個だけ~。あ~ん」

京太郎「わかりました、それじゃ――」

竜華「むぅぅぅ……京太郎くん!」

京太郎「はいぃっ!?」

竜華「あかん、これ以上甘やかしたら、怜が本格的にだめになるわ」

怜「なんや、ひどい言われようやな……」

京太郎「大丈夫ですよ。俺の知ってる先輩も、散々甘やかしましたけど、最終的にはしっかりしてきましたし」

竜華「怜もそうとは限らへん! 怜、最後の一個が欲しかったら、自分で食べ!」

京太郎「――そもそも、膝枕に寝かせておいて、それはどうかと……」

竜華「……はっっ! い、いつの間にっ……」

怜「遅いで」

京太郎「んー……それじゃ、こういうのはどうでしょう」

京太郎「竜華先輩もどうぞ、ふー、ふー……はい、あーんしてください」

竜華「」

怜「おぉー、そら面白いで」

竜華「いっ……いやいやいやいや、あかんて! なな、なに考えてんの、京太郎くん!」

京太郎「えっ。でも、そうしないと俺、誰にあーんしてあげればいいのか……」

竜華「せんかったらええやろ!」

京太郎「そうでした」

怜「まあ冷ましてもうたんはしゃーない……うちがもろとこか。あー」

京太郎「わかりました、では――」

竜華「あ、あかんて!」

怜「誰かが食べなあかんねん……うちが、犠牲になるっ……」

竜華「あかんっっ、やめて怜ぃ!」

京太郎(これは毒かなんかなのか)

怜「ええねん、竜華のためや……」ホロッ

竜華「う、うぅぅぅ……わかった! それやったら私が……はっ、はむっっ」

怜「食いついたで!」

京太郎「よかったです」

竜華「くっっ……もぐ、もぐ……うくっ、おいしいわっ……」

京太郎「それじゃ、もう一つどうぞ……あーん」

竜華「…………あ、あーん……////」

怜「くくく、照れとる……」

竜華「ふぇっ、ふぇれへへんふぁっ、あほぉっ!」ハフハフ

京太郎「どうぞ、お茶です」

竜華「ずずー……ふぁ、おいしかった……」

怜「…………あれ、うちのは?」

京太郎「あ、なくなっちゃいましたね」

怜「」

竜華「せやから、自分で食べて言うたやろ」

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最終更新:2026年01月17日 13:28