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宥「マッサージされたなら、きっと……ううん、絶対……そうなる……」

シロ「…………気になる……」

春「わ、私にもしてみてっ、京ちゃん!」

咲「京ちゃん、私も!」

京太郎「いや、それは……」

宥「ダメだよ! きょ、京太郎くんのマッサージは……」

絹恵「……あっ、そ、そうや! 漫ちゃんの誕生日!」

宥「えっ?」

絹恵「あっ、や……その、えーっと……ゆ、宥さんの言わんとしてることは、ようわかります……」

絹恵「これは警告やないけど……京太郎くんにマッサージしてもらうんは、人のおらんとこがええと思う」

京太郎(余計いかがわしくなったんだけど……まあ、たしかにちょっと声は大きくなるからな、うん)

咲「そ、そうなんだ……/////」

春「わかりました……あの、京ちゃん……それなら、二人きりのときに、お願いします……」

シロ「……逆に、人がいるところのほうが、牽制になりそう……」

宥「ほかの子になんて思われてもいいなら、それでいいかもだけど……」

シロ「…………わかった、自重する。ありがと、宥」

宥「う、ううんっ、別に……」

咲「でも――宥さんは、それを受けたってことですよね、マッサージ」

宥「へっ? う、うん、まぁ……」

春「なら――感想、聞かせて欲しい」

宥「~~~~~~~っっ!?」

絹恵「そやなぁ。私も、肩をちょっと触ったくらいしか見てないし……」

シロ「お願い、宥」

宥「あ、う……あと、えっと……その……」

京太郎「――あ、あのっ、宥先輩も困ってますから、この辺で……」

シロ「黙ってて」

京太郎「」ハイ

宥「えっとね――」


宥「と……とっても、気持ちよくって……お腹の、奥が……きゅ、キュゥンッて……なりました////」

京太郎(あかん)


咲「」

春「」

シロ「」

絹恵「」


咲「どっ――――」

京太郎「さ、咲……?」


咲「どういうマッサージしてるのっっ、京ちゃんっっっ!」


京太郎「」フ、フツウノ

シロ「普通ってどこ。胸? お尻?」

京太郎「」チガイマス

宥「そ、そんなとこ触らせてませんっ!」カァァァッ

絹恵「ならなんで赤なるんや……」

京太郎「宥先輩をいじめないでください! 本当に、えと……肩とか脚とか腰、です……」

春「…………ほかには?」

京太郎「うおぉ、はるるの視線が冷たい……」

春「ご、ごめんっ、そんなつもりじゃ……」

京太郎「ほかって……首、腕、背中ぐらいだな。ヘッドマッサージは苦手だし」

咲「…………」

京太郎「本当だっての!」

宥「ほ、ほんとだよぉ……」ブルブル

絹恵「そんなん……それで、なんで……お、お腹の奥て……」

シロ「完全にアレなんだけど……」

宥「だって、そうとしか表現できなくってっ……」

春「――――いい、わかった」

京太郎「は、はるるぅ……」ジワァ

春「受けてみればわかる。やって」

京太郎「」

咲「でも、人前ではダメだって……」

春「それも全部、わかる……」

シロ「一理ある」

絹恵「いや、でも……漫ちゃんの誕生日があれやと……」

宥「……どうするの、京太郎くん……?」ジー

京太郎「………………そう、ですね…………」

春「……お願い、京ちゃん……」ウルウル

京太郎(その上目遣い反則だから!)


京太郎「――――うん、決めた」

春「っっ、それじゃあっ……」

京太郎「ここじゃダメだ、やっぱりな」

シロ「…………まあ、そう言うだろうね。宥の感想が本当なら」

絹恵「そら、あんなんがずっと続いたらなぁ……」

咲(絹恵さんはいったい、どんなのを見たんだろう……)

春「…………だめ、なの……?」

京太郎「はるるのためだ、わかってくれ……な?」ヨシヨシ

春「はふっっ……わ、わかった……////」

シロ(ちょろい子だなぁ……)

絹恵(可愛いけど、心配なるわ……)

咲(ああやって、撫でてくれてたのは……私だけだったのに……)シュン

宥(あったか~い)ポワー

京太郎「――ってことで、この話はもう区切っていいですよね?」

春「うん……あっ、まだだめ!」

咲「そうだね」

シロ「肝心なとこが抜けてる」

京太郎「えっ」

宥「私のときは、合宿の旅館だったけど――」

絹恵「……戒能プロには、どこでしたんや? 二人きりやったんやろ?」

京太郎「…………あっ」

春「良子姉さんは、愛媛か鹿児島がホーム……態度が変わった先月は、大阪にいたはず……」

咲「出張みたいな感じだよね? だとしたら、ホテルか旅館に泊まってたはずでしょ?」

京太郎(理詰めやめて!)

シロ「…………ホテル、行ったの?」

絹恵「あああああ、あかんでっ! そんなんあかんっ、高校生が!」

京太郎(助けて……誰か助けて……)

宥「きょ、京太郎くん……」

京太郎(ヘルプミー、宥先輩!)

宥「自分の、お部屋に……呼んだりは、してないよねっ……」ジワァ

京太郎「してないですぅぅぅうわあぁぁぁぁぁんっっ!」

シロ「あ、泣かせちゃった」

絹恵「たぶんあのときちゃうかなぁ、お弁当作ってあげた日ぃか、その前の日」

京太郎「マッサージですっ、それしかしてないですよぉぉぉっっ!」

春「わ、わかったから、落ち着いてっ、京ちゃん!」

咲「京ちゃん、泣かないでっ、ねっ?」

京太郎「うぐぅぅぅっ……ほ、本当なんだよ、そんな……変な噂が立ったら、良子さんに申し訳ない……」

京太郎「あの人は良識ある大人だから、俺みたいな高校生にそんなことしないし、させないっての……」

宥「わかったよ、わかった……ほら、京太郎くん、あったかいよ~。ぎゅ~」

京太郎「うぅぅぅ、宥先輩……」スリスリ

咲「なにしてるの!」

シロ「宥、抜け駆けはずるい」

春「京ちゃん、こっち!」

絹恵「私の膝もあるで! 遠慮せんと!」

怜「…………ほう、なかなかええもんや……けど、日本じゃ二番目やな……」キュピーン

竜華「いきなりなにを言うてんの……それロンやで」

怜「はぁ……平打ちするんて辛いなあ」

浩子「普通はそういうもんですよ」

春「――つまり、良子姉さんは京ちゃんにマッサージをされて……」

シロ「それが気に入ったから、密かに? どころか堂々と自慢してて……」

咲「またしてもらおうと狙ってて……」

絹恵「したんはホテルやけど……」

宥「マッサージしか、してない……まあ、私たちのときもそうだったからね、大丈夫だよ」ナデナデ

京太郎「わかって、いただけましたか……」グッタリ

咲「ごめんね、京ちゃん」

シロ「つい気になって……」

春「信じてたよ、京ちゃん」

絹恵「ちゃっかりと!」

宥「これで仲直り、あったか~い」

京太郎「とんだ誕生日になった……はぁ……」

シロ「あ、そうだ……これ、みんなからのプレゼント。誕生日おめでとう」

京太郎「ありがとうございます……おっ、懐かしい帽子! 豊音先輩のと同じやつですね!」

シロ「そう。執事服にも合うからって……」

京太郎「たしかに、色合いはいいかも……まあ仕事中は使えないんで、私服でも合わせられそうなコーデを探しておかないとな……」

咲「そういえば、気になってたんだけど……なんで制服じゃないの?」

京太郎「いまさら!?」

宥「えっ? 京太郎くんの制服は、これ……だよね?」

春「そのはず……」

シロ「うん、間違いない」

絹恵「うちでは学ランやったけど」

咲「うちもです」

京太郎「千里山には制服ないからな。制服のない学校では、俺の制服はこっちなんだよ」

咲「だってそれ、えーっと……龍門渕の、執事さんみたいじゃ――」

京太郎「マジで!? おおおおっ、俺も師匠に近づいてるのか、すげー嬉しいっ……」

咲「」

シロ「あの人か……」

春「いままでで、一番嬉しそうな顔……複雑……」ムー

絹恵「そういうたら、誕生日に言うてたっけ……ほんまやったんやなぁ」

宥「私はこっちの京太郎くんがいいなぁ……見慣れてるし、その……か、かっこいい、から……」///

京太郎「ははっ、ありがとうございます……まあ、服がかっこいいおかげですよね」

春「そういうことでもないんだけど……」

京太郎「慰めはいいって……けど、俺もいつかは服に着られるんじゃなく、着こなしてみせるぜっ……」ゴッ

咲「……私の知ってる京ちゃんじゃない……」

シロ「いつもこんな感じだったけど。特に、あの……ハギヨシさん? と会ったときとか」

絹恵「学ランのときより、ハツラツとはしてるかもしれへん」

春「…………ちゃんと、麻雀もしないとだめだから、ね?」

京太郎「う……ま、まあそれなりにやってるし――」

宥「京太郎くんは麻雀部でしょ?」

京太郎「はい」

シロ「素直だなぁ……私には、色々口答えするのに。生意気」ギュー

京太郎「ひたいれふ」

絹恵「生意気なんもかわいいもんやで、なー?」ナデナデ

京太郎「あいあほうごらいまふ」

春「……あの、宥さん……」

宥「えっ? どうしたの、春ちゃん?」

春「……宥さんは……京ちゃんと、どんな風に過ごしてた……?」

宥「う、う~ん? えっとねぇ、朝起こしてもらったり、ご飯食べさせてもらったり、お昼は中庭でお昼寝したり……お世話になってばっかりかなぁ」

シロ「私と変わらないのに……どうしてこうも差が」

咲「京ちゃん面倒見よすぎ! 私には面倒見られてばっかりだったのにさぁ……」

京太郎「それはねーよ」

春「それでも言うこと聞くのは……やっぱり、宥さんが……いいの?」

宥「ふぇあぁぁっ!?」

京太郎「……なら、春も一回説教されてみればいい。わかると思う」

絹恵「なんやそれは……いや、でも――」

絹恵「松実家の姉がどれほどのもんか、見る機会でもあるなぁ……」

京太郎「では、宥先輩、お願いします」

宥「え、えぇ~……」

春「………………」

宥「え、えっと……春ちゃん!」

春「…………っっ……」ピクッ

宥「……えーっと……あんまり京太郎くんに、難しいこと聞いちゃだめ、ね?」ニコッ

春「………………」キュン

春「…………はい」

宥「えへへ、よかったぁ~……いい子だね~」ナデナデ

春「…………////」

咲「……あんなお姉ちゃんが欲しかった……」

シロ「……塞とは真逆だなぁ……」

絹恵「くっっ……なかなかの姉力や……これは、玄ちゃんが自慢するんもようわかるわ……」

京太郎「ブラヴォーッッッ! さすが宥先輩っ、さすがですっっ!」パチパチパチッ

シロ「…………まあいいか……私は、違う方向から行くだけだし……」

春「それじゃあ、年上が特別好きとか、そういうことでもないの……?」

京太郎「ちょっと弱いってのは認めるけど、必ずしもそれに直結はしないだろ……最終的には、その人次第なんだからさ」

京太郎(……って、なんで真面目に語ってんだ、俺は……)

咲「ほっ……」

シロ「惜しい……」

絹恵「……まあ、年上らしさを見せられんかったら、同じやんな……」

宥「うぅ~……」

春「そっか……うん、わかった。頑張るね、京ちゃん」ギュッ

京太郎「おうっ……こうやってくっついてくんのも、最終日以来か……なんか懐かしいぞ」ナデナデ

咲「っっ! だ、だ、抱きっ、つ、つつつ……」

シロ「……当てていってるね、完璧に」

絹恵「これができるんは、なんちゅーか……同い年の特権やろ……」

宥「あったかそ~」

春「……京ちゃん、京ちゃん……えへへ」グリグリ フニフニ

京太郎「………………」シャキーン

シロ「咲、ドクターストップ」

咲「は、はいっ……」

咲「しゅ、終了――っっ! 交代っ、順番にしよう!」

京太郎「いや、そろそろ練習に戻らないとだろ。各校の順位も決まっただろうし、監督が対戦表作ってるぞ」

咲「」

京太郎「ふぅ……なんとか全員と話せてよかった……」

京太郎「監督、そろそろ対局順決まりましたよね?」

雅枝「ふぅ~む……」

玄「なるほどなるほど……」

宥「玄ちゃん、邪魔しちゃ、めっ!」

雅枝「――あかんな、決まらん」

京太郎「なんでやねん」

雅枝「イントネーションがちゃうで」

京太郎「すんません」

雅枝「まあええ……京太郎、3人選び」

京太郎「は?」

雅枝「うちの部員をギリギリまで減らしても、3人余る。その3人を、あんたの対局相手にする。選び」

京太郎「…………千里山女子から、ですか?」

雅枝「それも込みでや。来てる中から、自由に選んだらええ」

京太郎「なんか、ペナルティとかありますか?」

雅枝「うちの部員から選ばんかったら、あと一ヶ月大変やろなぁ……」

京太郎「」

雅枝「アホ、冗談や。せっかく祝いに来てくれとるんや、強うなったとこ見せたり」

京太郎「――わかりました」

京太郎「――ということで、よろしく」

憧「うぅ……恨むわよ、あんた……」

京太郎「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」

憧「なんつー化物卓に……」

霞「あらあら、私なんてもう引退して随分たつのに」

咲「えへへ、二回戦以来ですね。よろしくお願いします、霞さん。憧ちゃんもね!」

憧「あー、はいはい……ま、やるだけやってみますかっ」

京太郎「なんだかんだ、諦めないで向かってくのがお前のいいとこだよなぁ」

憧「負けて元々、勝てば金星……なにより、逃げるなんてかっこ悪いとこ見せられないでしょ?」

京太郎「――だな、阿知賀はみんな来てるんだし」

憧「……そうね、みんな……阿知賀女子麻雀部、6人が揃ってるんだから」

京太郎(……あれ? 晴絵先生は来てないよな……?)

憧(……あ、自分込みってわかってない顔だわ、これ)

咲「よーし、私も頑張るぞー。いいとこ見せるからね、京ちゃん!」

京太郎「お、おう」

霞「うふふ、お手柔らかにお願いね」


憧25000→23400
咲25000→28200
霞25000→24200
京太郎25000→24200

咲「ツモ――嶺上開花です」

京太郎「…………くっ」

憧「……ねえ、本当に見えてるの? そういうのって」

咲「うん、なんとなくね」 ※完璧にです

霞「あらあら、怖いわねぇ」タプーン

憧「こっちはこっちですごいし……」

咲「憧ちゃんだって十分……」

京太郎「…………」ジー

咲「なに見てるの」ツネー

憧「はいはい、集中する」ツネリッ

京太郎「いでぇよっっ!」

霞「京太郎くん」

京太郎「は、はい!」

霞「そ、そういうのは……あとでね?」

京太郎「」

憧(ま……)

咲(負けられないっ、麻雀だけはっ)ゴッ

憧25000→23400→24900
咲25000→28200→29700
霞25000→24200→22700
京太郎25000→24200→22700

憧「ああああああ、押さえるだけで手一杯……」

咲「ふふ、和ちゃんが言ってた通り。牌効率もいいし、注意力もすごいよね」

咲「それに、他人の能力をちゃんと受け止めて、その上で対策してるもん」

憧「和はSOAだもんねー。まあ効率で負けるから、そのくらいはなんとか……っていうか、親流れてよー」

咲「ざーんねん」

 ※進行の都合上、親は移動します

霞「ふふ、同じ点数ね、京太郎くん」

京太郎「いや、負けそうなのに落ち着いてられませんって」

霞「そうねぇ……なら、私もそろそろ――」

霞「……苦手分野、いっちゃおうかしら」ゴッ

憧25000→23400→24900→40900
咲25000→28200→29700
霞25000→24200→22700→6700
京太郎25000→24200→22700


憧(…………あれ? これって、たしか――)

咲(霞さんの、アレかぁ……しまったなぁ……)

京太郎「……あれ? すげー偏りが……これは……」

霞「ああ、そういえば京太郎くんには見せてなかったわよね……」

霞「私も、霧島の巫女としてある程度は――」

憧「ロ、ロンッ! 倍満、16000です!」

霞「…………あら?」

京太郎「すっげ……」

咲「わっ、すごい」

憧「ま、まーね」

憧(あっぶなぁ……夏の牌譜、色々見といてよかった……あれかな、姫松の末原さんに感謝!)


憧25000→23400→24900→40900→47300
咲25000→28200→29700
霞25000→24200→22700→6700→300
京太郎25000→24200→22700

憧(っっ……やった、トップ……このまま一気に終わらせる!)

咲(……まずいなぁ、流れが完全に……これは追いつけないかな)

霞(ふぅ……参ったわね、途中で終われないし……)

京太郎(…………強い、やっぱり……それでこそ、俺も……成長しがいがあるっ……)


憧「――ロン、6400で……ああああ、お疲れさまぁ……」

咲「お疲れさまでした」

霞「お疲れさま……ちょっとごめんなさい、祓ってもらってくるから」トトト

カスミーナニヤッテルンデスカー ハルルーイドウヨー ナニシテルノ… ツカエルオヘヤ、キイテキマス

京太郎「……お疲れ……はぁ、完敗だな……っていうか、蚊帳の外って感じだった……」

憧「ふふんっ、私になら勝てるかもって、思ってたでしょ」

京太郎「そ、そんなことねーよっ」

憧「あはは、いいってば。私も勝てると思わなかったし……あ、京太郎にじゃなくて、咲にね」

咲「ううん、憧ちゃん強かったよ。すぐに霞さんにも対応したし、やっぱりすごい」

京太郎「ああ、さすがだよ。もしかしたら、穏乃より大将に向いてたりしてな」

憧「それは言い過ぎ。うちの大将はシズ、これは揺るがないの」

京太郎「なんで?」

憧「んー、なんていうかね……今日はこういう結果だけど、必死に食い下がる気力、みたいなのかな……私はそれが足りないって思うのよね」

咲「それに穏乃ちゃんは、大舞台だと燃えちゃうみたいだから……大会の大将は、すっごく向いてるんだよね」

京太郎「お祭り女ってことか」

憧「あっはは、そーかも! ま、今日の勝ちはいい栄養にさせてもらうわ、また打とうね!」

咲「次はぜ~ったい! 負けないから!」

京太郎「俺もだな……まだまだ弱いってことが、よくわかったよ。ありがとな」


 ――その頃、別室では上半身裸の霞と春が胸を押し合い、巴が汗だくで祈りを捧げていたのだが……
 その場にいない京太郎は、知る由もなかった。


京太郎「はぁー、疲れた……けど、みんなが祝ってくれてよかったなぁ」 (執事服脱ぎながら)

??「………………」

京太郎「その分、みなさんの誕生日も忘れないようにしないと……ん?」 (上半身裸、下半身はボクサー一丁)

??「………………」コソコソ

京太郎「………………あの、いったいいつから……」

??「………………」コソコソ

京太郎「いや、見えてるからな? なにしてんだよ、淡」

淡「あ、あははは…………ちょっと、困ったことになって……」

京太郎「それは見ればわかる……いや、それ以前にだよ!」

京太郎「お前っ、こんなとこでなにやってんだよ! ちょっと前に見送ったじゃん! んで、照さんたちと――いや、菫先輩と一緒に駅に行っただろ!?」

淡「そこ言い直さなくても……って、だから困ったことになったって言ってるでしょ!」

京太郎「なんで逆ギレしてんだ!」

淡「キレてないよ! 私を怒らせたら大したもんだからね!」

京太郎「ああああ……もういいっ、キレててもなくてもいいからっ、なにがあったか話せよ、な?」

淡「う~……」

京太郎「っつか、ここにいるって……あれだろ、帰ってくるときに尾けてきたってことだよな?」

淡「っっ! ち、違うもんっ、偶然見かけて追いかけてきただけだもん!」

京太郎(なら声かけろよ……)

京太郎「まあ、それはいい……どっちにしろ、俺に用があるんだろ?」

京太郎「というか、こっちで知り合いらしい知り合いもいないだろうし、俺を頼るしかなかったってことだろうけど……」

淡「頼ってないっ!」

京太郎「だったら頼れ! 俺を!」

淡「――――っっ!」

京太郎「……最低でも、俺のこと友達とは思ってるはずだろ? なら気にしないで頼れよ、ちゃんと……情けなくなるだろうが」

淡「………………うん、ごめん……」

京太郎「いや、俺も言いすぎた……」

淡「……話していい? すっごい迷惑かけちゃうけど……」

京太郎「ああ――いや、ちょっと待ってくれ。その前に……」

淡「??」

京太郎「――服着ていいか? 2月だし、すっげー寒いんだよ、このままだと」ウエハダカー シタパンツー

淡「!?!?」

京太郎「なぁ――」

淡「ばっ――――」

淡「バカぁぁぁぁっっっ!!!! 乙女の前でなんてカッコしてんのっ、信じらんないっ、スケベ! 変態!」

京太郎「お前が着替え中に押し入ってきたんだろうが、この痴女おぉぉぉぉぉっっっ!」

淡「――――ってことがあって……」

京太郎「あほか」

淡「アホじゃない!」

京太郎「つまりまとめると――照さんが駅限定のお菓子を買いに行って、菫先輩が探しに行くからお前は先に乗ってろって言われて――」

淡「荷物積んだ後、お手洗い済ませて、どうせテルーたちも行ってるしって、ちょっと売店に寄り道しに行って――」

京太郎(そこでなんで寄り道したし……)

淡「買い物済んだけど、二人に会えなかったから、戻って乗る前に連絡しようとしたら、携帯忘れたのに気づいて、もっかい売店行って――」

京太郎「そこにもなくて携帯探してる間に、新幹線が行っちまったと……で、携帯は?」

淡「あったよ! カバンに入れてたの、忘れてた!」ペカー

京太郎「あほか」

淡「アホじゃない!」

京太郎「まあいい……で、その携帯がピカピカしまくってるわけだが?」

淡「菫の着信が、いっぱい……メールも……」

京太郎「返事は」

淡「………………」フルフル

京太郎「あ、またかかってきたな」

淡「――っっ!」ビクッ

京太郎「…………はぁ……いいよ、貸せ」

淡「や、やだっ……」

京太郎「いいから貸せっての……あ、もしもし、菫先輩ですか?」

淡「ちょっと勝手に――」

菫『!? なっ……京太郎くんっ?』

照『えっ、京ちゃん!? 代わって!』

菫『黙ってろ……いや、当然の流れか。あいつが頼れるなら、京太郎くんしかいないからな』

菫『それで、そのバカはなにをしてる……いや、そもそもどうして、新幹線に乗らなかった?』

京太郎「…………その、ですね……」

菫『……悪いが、庇わないでほしい。私は引率者としてもちろん責任を負うが、そいつにしてももう二年になる頃なんだ。しっかりしてもらわないと困る』

菫『――と、君に話しても仕方ないな。ともかく代わってくれ、そこにいるんだろう?』

京太郎「………………」

京太郎「……わかりました」

淡「……うぅ……」

京太郎「とにかく謝ったほうがいい。それは俺じゃなく、直接淡が言うべきだ……フォローはそのあとにしような」

淡「……わかった……も、もしもし?」

菫『…………こ、のっ……バカ者ぉぉぉぉぉっっっっ!』

淡「ぴぃぃっ!?」

菫『乗っておけと言っただろう! しかも荷物だけ積んでおくとはどういうことだ! そのせいで乗っていないと気づかなかっただろう!』

淡「ごご、ごめっ、な……さ……」ブルブル

京太郎(……まずいな……)

菫『なにをしていた! そもそも――どうして電話に出なかった!』

淡「だ、だって、お……おこ、られっ……」

菫『――――当たり前だっっ! こっちがどれほど心配したと――』

淡「ごめ、んっ……なさいっ……ぅぐっ、ひっく……うぅ……」

京太郎「――よく頑張った、あとは任せろ」ポンッ

京太郎「――すみません、もう一度代わりました」

菫『だいたいお前は――どうして代わった。申し訳ないが、いまはそう落ち着いていられる状態では……』

京太郎「俺からも言って聞かせます。で、今日の最終には間に合わせま――」

京太郎(……のぼり最終は、21:20だったか……?)

京太郎「――21:10……?」

菫『……間に合いそうにない、だからこちらも焦っているんだ……いまどこにいる?』

京太郎「お、俺の家です……」

菫『そこから駅までは何分だ』

京太郎「…………10分じゃ、どうあがいても着きません……」

菫『――淡に代わってくれ、お願いだ』

京太郎「……できません」

菫『これ以上叱るつもりはない、今日と、明日のことを話すだけだ』

京太郎「……今日は、俺がなんとか宿の世話をします」

菫『それだけじゃない、交通費だって……おそらくあいつ、持ち合わせが足りないはずだぞ』

京太郎「それも、俺がなんとかしますからっ……」

菫『ならなおさら、あいつに代わってくれ……これだけ迷惑をかけるのに、一言二言いっておかないと、気が済まないんだ……』

京太郎「…………ちょっと待ってください」

京太郎「淡、電話出られるか?」

淡「む、無理……また、怒られる……」ガタガタ

京太郎「――もう怒ってないって、おっしゃってるぞ」

淡「…………怖いよ……」ブンブン

京太郎「はぁ……すみません、菫先輩。やっぱ出られないみたいです」

菫『……そんなに、厳しかったかな、私は……』

京太郎「俺も同じ立場だったら、そう言ってたと思いますけど……心労、お察しします」

菫『ともかく、心配して悪かったと思うなら、あとでメールでもいいから送れと伝えておいてくれ。照も心配していた。買ったお菓子が手つかずだぞ』

京太郎「それは相当ですね」

照『菫、余計なこと言わないで。京ちゃんが私を誤解する』

菫『大丈夫だ、まったく誤解されてないぞ』

照『そう? ならいいか』ムフー

菫『どちらにせよ、宿代と交通費がいるな……どうしようか……』

京太郎「俺がだします、これは淡にいつか返してもらうんで……それと、宿なんですけど」

菫『どこか安宿でいい――いや、あいつも女子だ、しかも可愛いからな、あれで……なるべく安全な場所がいいだろう』

菫『平日なら、まだ空いているだろう……すぐに探そう。ああ、いや……それでも、こんな時間に宿のある場所まで向かうのは、危なくないだろうか……』

京太郎(……妹を心配する姉ちゃんみたいな……いや、娘さんを心配するお母さんかな?)

菫『――――そうか、その手が……い、いや、でも……京太郎くんではなく、淡のほうで問題が……いや、さすがに……だがしかし――』

京太郎「ん? あの、どうかしましたか?」

菫『…………もう、辺りは暗いよな?』

京太郎「ええ、まあ」

菫『そこから、駅の近くに宿を取って、淡が移動して――危なくない、という保証はあるかな?』

京太郎「……大丈夫だとは思いますけど、確証は……」

菫『ならやはり、移動せずに宿を取り、明日の早朝に駅まで移動するほうがいいだろうな』

京太郎「でも、この辺りに宿なんて……知り合いでもいれば、話は別で――」

淡「――――――っっ!?」

京太郎「――――まさか……」

菫『…………すまない、が……ほかに手立てはないんだ』

京太郎「……落ち着いてください、菫先輩」

菫『落ち着いているよ。さっき怒鳴ったからな、これ以上ないほど冷静だ』

京太郎(絶対嘘だ!)

菫『私もこちらの麻雀部も、照も淡も、君のことは信頼している』

京太郎「……さっきからこいつ、すげー不安そうにこっち見てるんですが」

菫『緊張しているだけだ、大丈夫』

京太郎「……絶対、移動のほうがいいと思いますけど」

菫『なにかあったら責任が取れない。だが、君との間なら……君が責任を取れる』

京太郎(!?)

菫『そして、君が責任を取るような事態にならなければ、なにもないということだ……うん、実に安全だな』

京太郎(菫先輩……心労と受験ストレスで、頭を……)ホロリ

菫『ああ、安心してくれ。私ももちろん、鬼ではない……淡に確認して、それで泊まるとなればの話だ』

京太郎「…………わかりました、確認してみます。説得とかなしで、一回だけですからね。それで無理なら、おとなしく宿を探しますから」

菫『ああ、構わん』

京太郎「…………淡、お前今日は俺んチに泊まれ。んで、明日の朝に始発で帰るんだ、できるか?」

淡「……………………」

京太郎(…………よし、返事なし!)

京太郎「もしもし、菫先輩? 聞いての通りです、返事がないので――」

淡「…………かった……」

京太郎「ない、ので……ぇ?」

淡「わ……わ、かった……と、泊まる……ます……////」

京太郎「なん……だと……」

菫『――聞いての通りだ。では、6時発の始発なら、8時半には東京に着くな。迎えに行くからと伝えておいてくれないか』

京太郎「」

菫『…………淡のことを、頼んだ……』

京太郎「ぁ――は、はい……えっ」

菫『では、任せた……それと……さっきの、フォローも……お願いできれば……』

京太郎「…………わかりました。大丈夫です、少し怯えてますけど……しばらくすれば、ちゃんと反省して元通りだと思いますから」

菫『そう願うよ……では、世話をかけるがよろしく頼む』

京太郎「はい」

京太郎「…………………………大変なことになってしまった」

淡「そ、それは……こっちも同じっ……」

京太郎「お前がいいって言ったからだよ!」

淡「しょーがないでしょ! 大阪とか、あんま知らないし……知らないとこで、ホテルで一人とか……ちょっと、こわ――あ、危ないし!」

京太郎「――――――そか」

淡「な、なにさっ、いきなり静かになって!」

京太郎「いや、悪かった……と思って。まあ、うん……狭いとこだけど、ゆっくりしてけ」

京太郎(…………だよな。俺は男だから、夜中も一人で出歩くし、一人暮らしも気にしてないけど……普通の女子高生だったら、知らない街で夜一人ってのは、さすがに心細いか)

京太郎(…………ならせめて、ここにいる間は不安がないように、もてなしてやらないとな……)

京太郎(あ、そうだ……缶詰と、お菓子の材料はこっちにならあるし――)

京太郎「なあ、淡?」

淡「――あわぁっ!? なな、なにっ!?」

京太郎「…………腹、減ってないか?」

淡「……減って、な――」クゥ~w

淡「」

京太郎「飯とお菓子、どっちがいい?」

淡「お菓子!」

京太郎「――プリンアラモード、食べられるか?」

淡「モチのロン!」

淡「――ごちそうさまでした」ペッコリン

京太郎「参考までに、いまの分のカロリー教えとこうか?」

淡「やめてっっ!」

京太郎「時間もなぁ……10時回ってるってのは、かなり――」

淡「やめてって言ってるでしょ、バカーッ!」

京太郎(ふぅ……なんとか、いつも通りって感じにはなったかな……)

淡「? どしたの、いきなり黙り込んで」

京太郎「いや……まあ、今日はここに泊まるとして、だ。明日の朝イチの新幹線で、東京に帰る。それは大丈夫だな?」

淡「うん、へーきっ! あ、でもチケット……お金、ないけど……」

京太郎「さっき予約した。現金もそこそこ手元にあったから、明日の朝、窓口で買えば問題ない」

淡「ありがとっ! ちゃんと返すからね!」

京太郎「そうしてくれ……んで、始発の時間はわかってるか?」

淡「まったくです!」

京太郎「驚くなかれ、朝の6時だ」

淡「わーお!」

京太郎「ってわけで、なにかあったときのこと考えて、明日は5時起きな」

淡「えーっ! 早すぎる! 寝不足はお肌に悪いんだよ!」

京太郎「お前の肌は綺麗すぎるから、一日くらい平気だ。あと、新幹線で寝ろ」

淡「えっ……そ、そう、かな……えへへ……」

京太郎「とにかく、風呂入ってあったまって、ゆっくり寝ろ……そろそろ、風呂も沸くころだ」

淡「わーい、おっふ……えっ」

京太郎「風呂」

淡「……誰が?」

京太郎「お前。あ、先に俺が入ろうか?」

淡「……………………」

淡「………………」

淡「…………」

淡「……」

淡「」

淡「えっ――」

淡「えっ、な……な、ななっ、なっ……おおおお、おふっ、お風呂っ、ろろっ、っててて……」

京太郎(なに動揺してんだこいつ)

淡「な、ななっ、なにすんのっ!? 変なことしないんでしょっ!?」

京太郎(…………妄想逞しすぎるだろ、こいつ)

淡「黙り込んだ! ムッツリしてる! スケベ!」

京太郎「ムッツリじゃねーよっ、オープンだ!」

淡「開き直らないでよっ、バカーッ!」

ギャーギャー スケベー ムッツリハオマエダー ワタシハチガウッ

隣室の住人「………………」

 ドンッッッ!

京太郎「……す、すいません……」

淡「やーい、おっこらっれたー!」

京太郎「お前のせいだろうがっ!」

淡「キョータローもでしょっ!」

ギャーギャー ダカラー オマエガー

 ドンッッッ! ドンッッドンッッ!

二人『す、すいません……』

京太郎「…………ふぅー、さっぱり……」

淡「………………」

京太郎「…………なんだよ、その顔は」

淡「私のあとの、お風呂……狙ってたでしょ……」

京太郎「別に?」

淡「」

淡「…………っ」ムッカー

淡「なんで! 淡ちゃんだよ!? こーんな美少女の入浴したあとだよ!」

京太郎「はぁ……つっても淡だしなぁ」

淡「ふざくんな!」ゲシッ

京太郎「おっと……んっとに、めんどくせーなぁ、お前は……」ヒョイ

淡「わふっ!? ちょ、ちょちょっ、下ろしてよっ、バカー!」

京太郎「はい、お布団とうちゃーく」ドサッ

淡「ベッド!? ちょあっ、やっ、だ……ま、待って、まだっ……ここ、ここころの準備、とかっ……」

京太郎(………………やだ、この子……マジどうしよう)

京太郎(……ちょっとからかってやるか)

京太郎「………………男の部屋に泊まるんだぞ、わかってるだろ?」ギシッ

淡「――っっ! え、う……あ、の……」

京太郎「そんなビビるなって、誰でもするんだから……ん? なんだ、震えてんのか」ギュッ

淡「」

淡「……て、手っ……痛い……っ」

京太郎「こうしないと逃げるだろ?」グイッ

淡「んっっ……ちょ、ちょっと……キョータロー! 私、そのっ……」

京太郎(…………あれ、けどこいつ……ほんとに、ちょっと震えてるような……)

京太郎「………………」

京太郎「…………すまん、やりすぎた」スッ

淡「…………………………えっ」

京太郎「いや、ちょっとお灸をすえてやるかーとか思って……けど、なんか……」

京太郎「本気で怖がらせたんだとしたら……マジで悪かった……」

京太郎「変なことしたあとで、説得力ないかもしれんが……その、そういうつもりはない、本当に」

淡「」

京太郎「だから、安心して朝まで休んでくれ……っと、俺はほら、あっちの部屋で寝るから」

淡「」

京太郎「……こっちの部屋、一応カギもついてるし……そうだな、あとは――」

京太郎「護身用に、このバット置いとくから……なにかあったら、容赦なく殴ってくれ」

淡「ひ――」

京太郎「……そんなつもりはなかったんだ、すまなかった……それじゃ、おやすみ」

淡「人が――」

京太郎「…………? なんだ、さっきから――」

淡「人が、せっかく覚悟決めたのに……ふっ、ふふっ……ふふふふ――」


淡「ふざけんなあぁぁぁぁぁ――――っっっ!」ガシッッ ブゥンッッ


京太郎「!? なにかあったらって言っただろ! いま振るんじゃねえ!」ガシャーン

淡「黙れっ、女の敵ぃぃぃ――っっっ!」ブゥンッ ゴンッッ

京太郎「ぎゃーっ! かか、壁っ、傷はっ……な、ない、か……? お前っ、落ち着けって――」

淡「ううううう、うるさいっ! これが落ち着いていられるかっっ、覚悟しなさいよぉぉっっ!」

京太郎「また壁ぇぇぇっっ! 淡っ、隣! また隣に壁叩かれる!」

淡「知るかバカああぁぁぁぁっっ! うわぁぁっっっ! 私の覚悟っ、返せぇぇぇっっっ!」ブンッ

京太郎「待てっ、なにがあったか知らんが、ひとまず――ぁっ」ズルッ

京太郎(やばい、滑った……っていうか、これ……直撃しそう――)

京太郎「くぉっっ……おぉぉぉおっっ!」ゴキンッッ

淡「はぁっ、はぁっ……や、やったか!?」

京太郎「やってねーよ! あぶねえ! 死ぬとこじゃねーか!」

 片手を床について反転、空いた腕をバットの根元に添えて方向をずらし――。
 かつ、万が一にも淡の指が怪我しないよう、柔らかいクッションを叩かせる。

淡「……ざんっねん……けど、まだまだぁ――」ブンッ

京太郎「はい、残念でした」ヒョイッ

淡「わふっ!? か、返してっ!」

京太郎「お前にこんな危ないもん持たせとけるか……いや、ほんと悪かったよ……」

淡「許さない! ぜーったい許さない! 一生許さない!」ガーッ

京太郎(…………たしかに、女性にするイタズラ……というか、ブラフじゃなかったな……)

京太郎「すまん……としか、言えん……とにかく、休んでくれ。明日は早いから……」

京太郎「こっちの部屋にはこない、お手洗いと洗面所は廊下の途中だからな。用があったら声かけてくれ……」

京太郎「じゃあ……おやすみ」ガチャッ バタン

淡「あっ…………」


淡「っっ……バカッ……キョータローの、ばかぁ……」


  • 淡好感度+2(雑用ボーナス込み)


京太郎「……どうも、淡相手だと……元気な咲が相手みたいで、遠慮なくなっちまう……最低だな、ほんと」

京太郎「寝よう……なんとか、朝飯で……許してもらうしかない……」


~2月火曜、終了

~2月第一週水曜

京太郎「ん…………朝か、何時……4時、半……ふぁ……」

京太郎「あれ、なんで居間のほうに……ああ、そうか」

 傍に転がったバットで気がつく。隣の寝室には、お姫様がお休みのはずだ。

京太郎「とりあえず、朝飯か……時間ないし、ホットサンドにしよう……飲み物……俺は紅茶、あいつはココアだな……ふぁ……」

 微妙に寝不足の感じがする、けど仕方ない。
 色々あって、睡眠時間は4時間くらいのはずだ。寝不足は美容の敵なんだぞ……って淡が言ってたな。

京太郎「――起きてくれば、いつでも食べられるけど……ちゃんと起きてくるのか?」

京太郎「あいつ、寝起き悪いしなぁ……けど、昨日の今日で、なんか起こし辛い……」


~AM5:10

淡「…………おはよう」

京太郎「おはようございます、お嬢さま」

淡「ん、ごめん……あふぅ……ちょっと遅れたかも……」

京太郎「いや、まだ大丈夫。とりあえず朝飯にしよう。顔は洗ってきたな?」

淡「うんっ!」


京太郎(……大丈夫、だよな? まあ、あんまり遺恨を残す方じゃないと思うけど……)

淡(……大丈夫、だよね? 普通にできてるよね、たぶん……泊めてもらったのに、変なことして……謝らないと、だけど……)


京太郎(ちょっと気まずい……)

淡(ちょっと気まずい……もういいや、ご飯食べちゃお……)



淡「おっいしーい♪」

京太郎「そ、そうか? ならよかった……ココア、おかわりいるか?」

淡「んー……ううん、いい。飲んでたら、遅れちゃいそうだし」


 なんとも自然な会話をしつつ、微妙に遠慮をしあいながら、朝食を終え――。
 気がつくと早朝から、新大阪の駅構内に辿り着いていた。
 チケットも揃え、時間はAM5:50


京太郎「……それじゃ、チケットなくすなよ?」

淡「大丈夫、おサイフだからね! あ、と……あり、がとう……お金とか、色々……」

京太郎「ん……気にすんな。返すのも、俺がそっち行くときか、なにかの企画で会うときくらいで……無理に、返しには来なくていいぞ」

淡「わかったー……それじゃ、行くね」

京太郎「ああ……またな、淡」

淡「うん……また、ね……キョータロー」

 ドアが閉じるまではまだ時間がある、けれど淡はそのまま、デッキの扉から座席へ向かった。
 座席はホームの反対側、見送るには距離がある。
 そして、淡は最後まで向こうを向いたままだった。

京太郎「…………じゃあな」

 そんな俺の呟きはたぶん、あいつに届かなかっただろう。
 らしくないことをした、そんな反省を抱えて、小さく頭を小突き。
 俺は、登校準備のために、家に帰ることにした。


~本当の朝、AM5:45

京太郎「――という夢を見たんだ」

淡「バッッッッッカじゃないのっ、キョータロー!」

京太郎「バカじゃねえ! っていうか、お前も寝坊しただろうが!」

淡「寝坊してない! 起きたけど二度寝しちゃっただけ!」

京太郎「それを寝坊っつーんだよ! あ、すいませんっ、これ予約券! 精算お願いします!」

京太郎「んで淡っ、お前はこれ持ってけ。新幹線で食えばいいから!」ポイポイッ

淡「わふっ! なにこれ?」

京太郎「朝飯作ったまでは夢じゃねーんだよ! で、時間ないから詰めといた!」

淡「わーいっ♪ ありがとー!」

京太郎「で、チケットなくすな? 東京駅ついたら、菫先輩に電話しろ。ちゃんと謝れよ?」

淡「わかってるってば! 何回聞いたと思ってんの!」

京太郎「あとでメールもしとくから、目とおしとけ!」

淡「はいはいはいはいはい」

京太郎「はいが多い!」

淡「はい、はい」

京太郎「違う! もっと真剣になるのだ!」


 ――という感じで、新幹線に乗せたのは発車の、たぶん二分前くらいだった。

京太郎「……しかし、いつもより登校が遅れちまった……急がないと遅刻まであるぞ、これ」

京太郎「あ、もちろん朝練の話な? しかしこれ、弁当作ってる余裕もない……」

京太郎「とにかく朝練だ、急ごう」

京太郎「い、そ、げっっ……はぁっ、はぁっ……」

怜「お? おー、そこ行く執事、ちょっと待ったってー」フリフリ

京太郎「はぁっ、はぁっ……あ? あ、怜先輩……はよーっす」

怜「おはよーさん。ちゅーか、あれ? なんで全力疾走?」

京太郎「いや、先輩はいいかもですけど、俺っ……朝練、遅れそうなんでっ……」ハァハァ

怜「ちょおちょお、この怜ちゃんがえらい美少女なんはわかるけど、あんまり息荒いと通報すんで」

京太郎「そういう、呼吸じゃ、ないんですけど……」ハァハァ

怜「それと、あっちを優雅に歩いとるんは、同じ一年生やないの? それやったらあれも遅刻ちゃうか?」

京太郎「いや、麻雀部じゃないなら、別に――あれ?」

泉「ん? あ、園城寺先輩、おはようございます……ついでに京太郎くんも」

怜「おはよーさん」

京太郎「はよー……いや、落ち着いてる場合じゃないだろ! お前、遅刻するじゃねーか!」ハァハァ

泉「えっ、まだ余裕やし……っちゅーか、なに息荒くしてんの、キモッ」

怜「美少女怜ちゃんに興奮したらしい、変態やで」

泉「」

京太郎「嘘だから! ダッシュして、息切れてんだよっ……」ハァハァ

泉「朝からダッシュて、なんか用なん? それとも、追われてるとか」

怜「いつかやるとは思ってました」

京太郎「当局の手が回ってたなんて……じゃなくて! のんびりしてる場合かって言ってるだろっ、朝練!」

泉「今日は休みやで」

京太郎「」

泉「昨日はプロも来て、チャンプも来て、練習時間延長してまでやったからて……あれ、連絡してなかったっけ?」

京太郎「…………ぜ、全然……」

怜「おお、そう言うたらそうか。うちらあれやん、スガキョーの連絡先知らんし、逆もまた然りやで」

泉「あ゙っ」

京太郎「…………そういえば」

怜「ふむ、これは不便やな……しゃーない、うちのと竜華と、あとセーラのも教えといたるわ」ポピポピッ

京太郎「そんな勝手に!」

怜「あとでちゃんと言うとくから、安心しぃ」

京太郎(いまいち不安だな……)

泉「ほ、ほな、せっかくやし、私も……はい、登録しといたで」

京太郎「さんきゅ……あれ、こっちから、浩子先輩のとかは?」

泉「勝手に教えたら怒られるやん……」

怜「そこをやってこそ一人前の麻雀部員やな」

泉「ただの礼儀知らずですやん……」

京太郎「ま、いいよ。本人か監督か、絹恵さんか洋榎さんにでも聞くから」

泉「そーしたって……さて、と。朝練ないこともわかったし、ゆっくり行きましょか」

怜「これで事案発生ささんですむな」

京太郎「元から違いますから……けど、それじゃなんで、泉はこんなはえーんだ?」

泉「………………昨日の、宿題、終わってへんから……学校でやろと思て……」

京太郎「あ、なるほど……ま、いーや。それなら教えてやるよ、一緒にやろうぜ」

泉「えっ……ええのんっ、ほんまっ?」

京太郎「困ったときはお互い様、連絡先も教えてくれたし、朝練ないのも教えてくれたしな」

泉「っ……おおきに、助かりますっ」ニコッ

怜「ふむふむ、青春やなぁ……」

泉「そ、そういうんやなくてっ……園城寺先輩は、なんでこない早くに?」

怜「それがなぁ、ようわからんけど目覚ましなって、しゃーなしに……お?」ピローン

泉「携帯鳴ってますけど」

怜「ふむ……お、竜華のメールや」

『朝から図書室で勉強する言うから、迎えに行ったのに……なんでもうおらへんの! いまどこや!』

怜「………………おお!」

泉「あきませんやん……」

怜「ま、先に学校おるて言うたら大丈夫やろ……ほな、ぼちぼち行こか」

京太郎「……竜華先輩、お疲れさまです……」


~2月第一週水曜、昼

京太郎「いやー、まさか朝練ないとは思わなかった……弁当、作ればよかったなぁ」

泉「まぁ私は、そのおかげで助かったけどな……あ、そや」

京太郎「?」

泉「お礼、いうわけちゃうけど……これ、おにぎり一個あげるわ」

京太郎「いいのか? 泉、結構食うのに……あでっ」

泉「誰が大食いや! 私はモブ子ちゃんとちゃう!」

モブ子「ひどい風評被害だ」

京太郎「いや、風評ってか事実だろ……ま、ありがたくいただくよ。サンキュー、泉」ニッ

泉「けど、それくらいやったら足りへんやろ、京太郎くんこそ」

京太郎「そうだなー、どうするか……」

京太郎「――おっ、ラッキー! カギ開いてる!」

京太郎「いやぁ、ダメ元で来てみたけど、あいててよかった……失礼しまーす」ガチャッ

竜華「あら?」

京太郎「竜華先輩でしたか、こんにちは」

竜華「京太郎くんか。お昼はもう済んだん? えらい早いけど」

京太郎「いえ、その絡みでちょっとこっちに用事が……あ、失礼しますね」

竜華「ん? そのロッカーは……」

京太郎「ここは、俺の非常食が……もとい、非常用食材が保存してあるんです」

竜華「あんたは……部室に勝手にそんなもんを……」

京太郎「しょ、しょうがないんですって! ここの調理教室、食材置いとくの禁止って言われてて……」

竜華(普通の学校てそうちゃうの?)

京太郎「で、冷蔵庫置こうと思ってるんで、それまでの仮の置き場なんです……見逃してください!」

竜華(あかんで、そっちのがアウトやで……)

京太郎「お願いします……」グゥ~

竜華「ん? お昼は結局、まだなんか?」

京太郎「はい……で、これ使って色々作ろうと」

竜華「缶詰と調味料メインやん……こんなんでいけるん?」

京太郎「色々できるもんですよ、これでも。よかったら、竜華先輩もいかがですか?」

竜華「いやぁ、私はお弁当あるから。そろそろ開くとこやねん」

京太郎「そうですか……あ、でしたらなにか、デザートもお作りしますね」

竜華「へ? い、いや、ええって、そんなん! お腹空いてるやろし、自分の作ってはよ食べたらええやん」

京太郎「いえいえ、朝のこととかあって、先輩疲れてるでしょうから……労いってことで、ぜひ召し上がっていただければと」

竜華「いや、でも……」

京太郎「あとは、怜先輩に教えていただいた、先輩の連絡先のお代ってことで――」

竜華「へ?」

京太郎「…………あれ、もしかして……」

竜華「……と……とぉ~きぃ~っっ!」

京太郎「お、落ち着いて! 確認しとくとおっしゃってたんですが、朝の先輩からのメールで、失念してらっしゃったんですよ!」

京太郎(たぶんワザとだと思うけど)

竜華「もうっ、ほんましゃーないなぁっ……はぁ、ドッと疲れたわ」

京太郎「そういうときこそ、甘いものですよ」

竜華「はぁ……はいはい、わかったコーサンや。出来立て食べたいし、作ってる間にお弁当食べてしまうで?」

京太郎「はい。それでは、少々お待ちくださいませ。すぐにご用意させていただきます」ゴソッ ゴソゴソッ ゴッソリ

京太郎「では」ペッコリン

竜華「……おかしいな、ロッカーに収まらんほどの量、持って行ったけど……あの中、どないなってるんや……」


~幕間

京太郎「ふぅ、放課後かぁ……」

泉「ごめん、ちょっと先生に呼ばれとって。遅れへんと思うけど、一応言うといてくれへん?」

京太郎「おう、わかったー」


京太郎「さて、なら俺は急ぐとするかな……ん?」

京太郎「メール、いま来たのか? いや、昼か……なになに」


淡『昨日はありがとう、あと今日も』

淡『それとごめんなさい、変なことで怒って』

淡『キョータローの家に泊まるって決めたときは、どうってことなかったんだけど』

淡『あとから、色々意識しちゃって。反省してます』

淡『あれだけお世話になったのに、変な態度ばっかりで、ごめんなさい』

淡『また、お菓子作ってください』

淡『連絡もください』

淡『身体に気をつけてください、じゃあね』


京太郎「…………ワナ、か……?」

京太郎「ってなんのだよ……」

京太郎「んー、そうだな……」カチカチ


『俺のほうこそ、無神経なことしたり、すまなかった』

『お前がそうなら、俺も相当おかしくなってたんだと思う』

『それと、これは嘘じゃない。ただ、失礼だとは思うけど』

『風呂上がりに、お前の肌がちょっと赤いのは、すげー見惚れそうになった』

『俺の服着て、俺の部屋にいるとか、かなり危なかった』

『そういうの、誤魔化そうとしたせいかもしれない』

『悪かった。また連絡する。じゃあな』

京太郎「――ま、あいつが真面目にくれたんなら、たまには真面目にな」

京太郎「やれやれ、淡のやつめ……」

怜「お、スガキョン。あわあわちゃんどないしたん?」

京太郎「いやー、急にガラにもなく真面目なメールを……スガキョン?」

怜「そっちのんがかわええやろ」

京太郎「普通に京太郎じゃだめなんですか」

怜「うーん、かわいないなぁ」

京太郎「ひどぅい……」

竜華「京太郎くんは淡ちゃんとなかええの?」

京太郎「俺的にはまぁ……向こうにはどうですかねー。時々、すっげー嫌われてる気もしますが」

セーラ「素直になれんお年頃ちゅうやつやな!」

浩子「江口先輩がおっしゃいますか……」

竜華「素直に可愛いかっこしたらええのに……」

セーラ「するか、あほ! 素直にしたいとも思とらんわ!」

京太郎「っつーか俺、こっちきていまだに、セーラ先輩のスカート姿見てないんですけど」

怜「卒業式はさすがに制服ちゃうかな」

竜華「けどそれは来月やしなぁ」

京太郎「なんとか穿いてくれないですかね」

浩子「策を練らな無理やろなぁ」

セーラ「本人おる前で悪巧みすなや……」

泉「遅なりましてー。あ、もう始まってる」

京太郎「お、来たか泉。じゃ、俺らも始めますか」

泉「……なんでダベってますのん、先輩方」

京太郎「いや、勉強を――」

怜「スガキョンが雑談振ってきてなぁ」

竜華「うちらの邪魔すんねん」

セーラ「ほんましゃーないやっちゃで、こいつは」

浩子「――ということやて」

泉「京太郎くん、頼むで……」

京太郎「」

浩子「…………なんちゃって」

泉「なんや冗談ですか」

京太郎「最初からわかってくれよぉっ!」

京太郎「厳しい先輩方のイジメにも負けず、部活しよう……」

セーラ「いじめてへんて……」

怜「案外メンタル弱いなぁ」

竜華「もうちょい優ししたったほうがええんやろか」

浩子「いうても、清澄ほど厳しくはしてないはずですけど」

泉「別ベクトルできっついですから、うちは……」

京太郎「清澄は厳しくないっすよ、すげー緩いです」

泉「…………ほんまにMちゃうのん?」

京太郎「ちっげーよ!!」

泉(……っちゅーことはSなんか……)

京太郎(妙な誤解を受けた気がする……まあいいか)

京太郎「そういえば、月末は試験だったな……それに、先輩お二人は今週末に、大事な入試だ」

京太郎「勉強、お付き合いするべきか?」

京太郎「――ということで、勉強しましょうか、怜先輩」

怜「ええええ……」

京太郎「いや、えーじゃなくて……竜華先輩は?」

怜「私がおったらサボるやろ言うて、やることだけ言うて出て行ってしもた……うぅぅぅぅ、りゅ~か~」

泉「恋しがるんやったら、最初から真面目にやっときましょうよ……」

京太郎「いいこと言うな、泉」

怜「生意気な一年やで」

泉「来年には……いうか再来月には上級生ですから」

京太郎「その頃に……ま、まあともかく、怜先輩も真面目にやりましょう」

怜「…………せやな。浪人生になって、この部室に来るんはごめんや」

泉「やる気なりましたね」

怜「あんたもやっていき。月末に備えて」

泉「なんでですのん! いや、私は来月大会なんで、ちょっとでも江口先輩にお相手してもらいとうて――」

京太郎「いや、お前も勉強しよう。ちょうどいいことに、試験対策の問題を作ってある」

泉「!?」

京太郎「万が一にも麻雀部から補習者ださんように……って、監督から言われてるからな」

泉「さ、再来週でええやろ?」

京太郎「鉄は熱いうちに打たないと」

泉「まだ熱なってない! 冷たいでっ、熱なるんが再来週やろ!」

京太郎「本当に熱くなるかわからないし、いまのうちに熱入れておかないとな」

泉「鬼や!」

怜「ひー、こわ……」

京太郎「竜華先輩がいない分、先輩も俺がしっかり見ますから」ニッコリ

怜「……ぁ……なんか、フラついてきて……」

京太郎「俺の太ももでも泉の太ももでもご自由にどうぞ。さて、それじゃここの問題から――」

京太郎「見えますかー、怜先輩?」

怜「…………ちょっとボリューム足らんなぁ。泉、もうちょい肉つけな、竜華にはほど遠いで」

泉「余計なお世話ですよ!?」

怜「ま、これで泉にも怜ちゃんついたら、多少は強うなるかもなぁ……」ナデナデ

泉「うひぃっ!? ちょあっ、な、撫でんのやめっ……んっ、あっっ……」

京太郎「(冷静になろう、冷静に……) この問題、大丈夫ですか?」

怜「んー、ちょおわからん……あれ? これほんま、どうやるんやっけ……」

京太郎「まず最初の式ですけど……こうしてみたら、わかります?」

怜「ああ、見たことあんなぁ……こうやったっけ?」

京太郎「そうですー。で、ここがその数字なんで、こっちの式がこの形で――」

怜「ほうほう、なるほど……なんや、簡単やな」

京太郎「ま、一問目ですから。似たようなので難しいのを、二問目にご用意してます。そういう感じで繰り返しですね、この問題は」

怜「ほんまや、だるいなぁ……この問題作ったやつは、こんじょ曲がりやで」

京太郎「すいません、曲がってて」

怜「…………問題集、作った人のことやで?」

京太郎「俺の手製ですから」

怜「」

怜「……そら、すまんかったな……んっ、よいしょ……ほな、真面目に解かな悪いなぁ」

泉(ほっ、離れてくれた……)

京太郎「なら次は――」

泉「!? あ、あかん! 京太郎くんには、さすがに膝枕は――」

京太郎「…………お前用の問題の説明ってだけだが」

泉「」

泉「~~~~~~~っっ!? わ、わわ、わかってるわっ、あほぉっ!」

京太郎(じゃあなんで怒ってんだよ……)

怜(泉もムッツリやからなぁ……まあ、そこは純情やて言うといたるか)

京太郎「じゃ、とりあえず30分だけ集中ってことでー、始め。泉はこれ終わったら、思いっきり打っていいからな」

泉「わかったわっ、もうっ……あれ、なんや仕切られてしもてる……」

怜「ま、さくっとやったるかいな……答案の、一巡先……おう? 真っ白や……」

京太郎「……あんまりよく知らないですけど、負担大きいんですよね? 使わないでくださいよ……」

怜「そのほうがよさそうや……実力でやらなしゃーないな」

京太郎「はい、終了ー。採点したら、帰る前に渡すんで……ひとまずは休憩してください。泉もお疲れー」

泉「……これ、テストより難しいない?」

京太郎「範囲絞ってるし、難易度的には緩いはず、たぶん」

泉「……やべーす」

京太郎「今月中なら見てやれるから、安心しろ」ポンッ

泉「うぐっ……お願い、します……」

京太郎「おう。ま、その代わり麻雀のほうとか、部活関係では頼らせてもらうから」

泉「っ……ま、任せときや!」

怜「……なんや、一年同士なかよなってきてるなぁ……」

竜華「ただいまー。怜~、真面目にやって――ちょっと、ノート白紙やないの、どないなってんの!」

怜「えっ……ちゃ、ちゃうねんっ、スガキョンが作ってくれた問題やっとって――」

竜華「言い訳は聞かへんで! いまからやりっ、私が見張っとくからな!」

怜「せ、せっしょやで、それは……うぅ、スガキョンのあほぉ……」

京太郎「……俺、悪くなくね? ま、いいか……さて、次は――」

京太郎「休憩に入りそうだし、差し入れの準備でもしてくるか」

セーラ「!!」ギランッ

京太郎「……いや、先輩はいいかもですけど、ほかの方々は、飽きてるかもしれませんし」

セーラ「…………そうか」ショボン

京太郎(やべえええ、すぐにでもたこ焼きを食わせてやりたいんですか、構いませんね!)

怜「…………竜華ぁ、疲れた……甘いもん食べたい……」

竜華「ゴロゴロしてるし、太ってまうで……」

怜「おもちおっきなるかもしれんやん」

竜華「またアホなこと言うて……」


京太郎「――よし、なにか甘いもの作るか。砂糖たっぷりで、バターどっさりの」

怜「脂肪と糖質少な目で頼むわぁ……」

京太郎「うぃっす」

京太郎「……そだな、健康にも気を遣って作らないと、うん」

京太郎「……んー、そうだな……シンプルに、かつ余分な脂がいらないように……」

京太郎「シロップも甘さ抑えめで、あとはメレンゲ……それに苺を……」

京太郎「――という感じで、本日のお菓子はメレンゲで、ウ・ア・ラ・ネージュを」

セーラ「うあら?」

京太郎「シロップを混ぜて、硬く泡立てたメレンゲを湯に落として、苺のソースをかけた洋菓子です」

怜「ほふ、おいひぃ……甘さもほんのりで食べやすいなぁ」

竜華「メレンゲだけ、やったらバターとかもなし?」

京太郎「はい。まあ、それだけだと卵黄があまりますので……バターも使って、焼きプリンも作ってみましたが」

セーラ「うまそー!」

浩子「うぐ……でも、両方はなぁ……」

京太郎「保冷剤ありますので、今夜中に食べてくださるならお持ち帰りできますよ」

泉「ほな、私も持って帰ろかな」

竜華「怜は……どうする?」

怜「ふむ、大丈夫や思うし、もろて帰るわ。とりあえずいまは、これがあれば十分やなあ」ハムッ

京太郎(……よかった、お口にあったみたいだし、身体にも悪くない気はする)

京太郎「さて、お茶をお淹れしないと」

京太郎「どうぞ、怜先輩。梅こぶ茶です」

怜「なんでやねん!」

京太郎「冗談です。こぶ茶の塩気はちょっと合わないかもですね、本日はキーマンを」

怜「紅茶はようわからんなぁ……あ、いけるかも」

京太郎「ウバ、ダージリンに並んで称される中国紅茶です。デザートに合うんですよ」

怜「ほうほう……おおきに」

京太郎「お口に合ってよかったです」

怜「んー、これのことやのうて……いや、これもやねんけどな」

怜「さっきのデザートのことやん。うちの身体気にして、シンプルなんにしてくれたんやろ?」

京太郎「な、なんのことでしょうか」

怜「なんや、うちのことなんて気にもかけてくれへんかったんか……」ショボンヌ

京太郎「……まあ、バターとかは使わないようにとか、ちょっとだけ考えましたけど」

怜「そやろ? まあ、なんちゅうかありがたいなぁ、ああいうんは」

怜「夏のインハイ前も、竜華ら4人で食事メニューも考えたり、うちの負担が少ないようしてくれてなぁ……なんや懐かしいもんやで」

怜「世話かけっぱなしやったけど、部活引退してからは、症状もマシになってきてな。やからまあ、そこまで気にせんでもええんや」

京太郎「っていっても、ふんだんに使うのはまずいでしょう?」

怜「そらなぁ……バター丸ごと揚げてハチミツかけたもんとか出されたら困るわなぁ」

京太郎「ありましたね、アメリカのジャンクフードでしたっけ……」

怜「いっぺんくらいは食べてみたいけどな、一口だけでも」

京太郎「想像だけで胸やけしますけど」

怜「想像しただけで血圧上がってきたわ……ふぅ」

京太郎「だ、大丈夫ですか」

怜「冗談や。けどあれやな、こういう冗談は気ぃ遣わせてまうし、控えんとあかんわな」

怜「けど、今日の気遣いは嬉しかったで、おおきに」

京太郎「それが執事の仕事ですから」

怜「ほう、仕事人やなぁ……ま、無理はせんようにな」

京太郎「んー、別に無理にってことでもないですからね、大丈夫です」

怜「そんならええけども……そうそう、これはおかわりもらえるんかなぁ」

京太郎「あります、けどだめです」

怜「いけずやなぁ」

京太郎「健康には腹八分目です」

怜「まだ三分も溜まってへんで」

京太郎「言葉の綾です。ともかく、食べ過ぎはよくないってことですよ」

怜「はいはい。仕事熱心な執事さんやなー、もうええわ」フンッ

京太郎「拗ねないでくださいよ……」

怜「セーラにはようさん食べさせてるくせにー」

京太郎「あの人は隙あらば動いて、エネルギー消費してますから」

怜「うちかて頭にエネルギーいるねん!」

京太郎「その分は、さっきので補えましたよ。さ、頑張りましょう」

怜「うぅ、生きるんて辛いなぁ……」

京太郎「その分楽しいんですよ」

怜「毎日仕事仕事の人生でもかぁ……?」

京太郎「いいじゃないですか、仕事! 買いだしも掃除も、楽しいもんですよ!」

怜「おぉう……こらほんま、筋金入りやな……ふぅむ、あっちこっちの子が心配しとるわけやで」

京太郎「心配?」

怜「いやいや、こっちの話や……ほな、せめてお茶のお代わりくらいはもらえるか?」

京太郎「えーっと、規定のカフェイン量は……」

怜「」

京太郎「じょ、冗談ですから……どうぞ、熱いのでフーフー冷まして飲んでくださいね」

怜「子供ちゃうで……あつっ!」

京太郎「だから言ったのに……」


~水曜、部活終了

京太郎「――おお、気がついたら外も真っ暗だな……」

浩子「あんまり遅なったら大変やな。私らみんな、か弱い女子高生やで……」

京太郎「………………そうですね」

浩子「なんやその間ぁは」

京太郎「いえ、全員をお送りしつつ、掃除も終わらせるルートを考えてまして」

浩子「」

京太郎「全員をお送りしてから、学校に戻って掃除して、自動卓のメンテをするのが一番――」

泉「お、お、お疲れさーん!」

セーラ「よし、今日も無事部活終了やな!」

竜華「掃除当番も決まってるし、用のない子ははよ帰ろうなー、不良になるでー」

怜「へとへとやぁ……こういう日はなんもせんと、まっすぐうちに帰るに限るなぁ」

京太郎「そうですね、気をつけてください。それじゃ、お疲れさまで――あれ?」

泉「掃除当番ちゃう子は、はよ帰ろなぁ?」ニッコリ

京太郎「」アッハイ

京太郎「なんてこった、無理やり追いだされてしまった……が――」

京太郎「ふふふ、調理室だけなら掃除できるんだぜ? それを条件に、食材置いてもよくなったからな!」ヤッタゼ

京太郎「――ということで、掃除してから帰宅。やっぱり誰とも出会わなかった、と……」

京太郎「まあ代わりに、晩飯とか弁当用の買い物ができたけどな」

京太郎「あのスーパー便利だよなぁ、学校からは距離あるけど……できれば買いだしにも使いたい」

京太郎「いかに早く、学校とスーパーを往復できるか……うーん、ジョギングだけじゃなくダッシュもメニューに入れるべきか」

京太郎「さて、いかがいたそうか」

京太郎「昨日まで色々あったけど、落ち着いたし、メールでもするかな」

京太郎「昨日世話になった人か、お会いできなかった人か……さて」

京太郎「ゆっくりお話できなかったし、照さんにメールしておこう」

京太郎「昨日はありがとうございました。いただいた手帳、大事にします」

京太郎「携帯よりもいざというときは役立ちそうなので、スケージュールはそちらで管理しようかと」

京太郎「そういえば、照さんの写真が入ってました。あれはいただいていいんですか?」

『気に入ってもらえてよかった。本当はロケットに写真を入れて渡そうとしたんだけど、菫に止められて……』

『手帳に入れておいた写真を、私だと思って大事にしてね』

『再来週の私の誕生日には、京ちゃんの写真が欲しいな。よろしくね』


京太郎「……ロケットだったら、持ち歩かないとだよなぁ……さすがにそれは誤解される、うん」

京太郎「菫先輩、ありがとうございます。いや、照さんのためだったのかな?」

京太郎「さて、と――」

京太郎「ツーショットですよね? 撮りに窺うのは難しそうですが、頑張ります」

『……その気持ちだけで十分』

『なんて言わない。待ってるね、京ちゃん』

『それか、私が行ったほうがいいかも、どうなんだろ』

『時期的に、前倒しになっちゃうかもしれないね、どっちにしても』

『楽しみにしてる』

京太郎「……そうか、バレンタインのあとだから……」

京太郎「っていうか、バレンタインもどうするか考えとかないとなぁ」

京太郎「さて――昼にアホなメールを送ってきたあいつ……まあ、俺もアホなメールを送ったわけだが」

京太郎「あれで、遺恨はなくなったと思っていいのか……軽く送って、様子を見ないと」


京太郎「先輩から連絡はなかったけど、無事に帰れたってことでいいんだよな?」

京太郎「お前だったら迷子にもならないだろうから、心配はしてないけど」

京太郎「怒られたとかで、困ったりへこんだりしてたら、なんでも言ってこい」

京太郎「なるべく力になってやるから」

京太郎「さて……」

淡『ふーんだ、余裕で帰れたしー!』

淡『この淡ちゃんが迷うかってのー、スミレもあんまし怒ってなかったし』

淡『でもなんか、目が赤かったかも』

淡『心配させちゃったよね、それは反省』

淡『ちゃんと謝ったよ、えらいでしょ』


京太郎「菫先輩は、いい先輩だな……受験前なのに、迎えにまで」

京太郎「こいつもちゃんと反省はしてんだな、ちょっと驚いた――は、失礼か」

京太郎「先輩に苦労かけちまったな、俺もお詫びしとくかな、なにがいいと思う?」

『お菓子!』

京太郎「そりゃ、おめーが欲しいもんだろうが!」

京太郎「……あー、もういいや。そのうち、菓子折りでも送っとこう」

京太郎「メールだと短時間でやり取りできるな……そうだな、昨日会えなかった人にも、近況連絡しておくか」

京太郎「多い(小並)」

京太郎「まあ、会えなかった人たちだからな……」

 ※文面はカット、か、あとで上げるか……

京太郎「…………こ、この人数だと送るだけでも疲れるな……」

京太郎「うん、けどこれでいいだろ」

京太郎「それじゃ、そろそろ寝る――前に! 明日の準備だ!」


~2月第一週水曜、終了

【2月第一週水曜】

 昨日の日誌は、諸事情でカットです。
 そして本日の日誌。

 今朝は遅刻かと思い、弁当も持たず慌てて登校したものの、朝練はなかった。
 なんでも昨日の猛練習で、部員の疲労も濃厚だから、とのこと。
 そりゃたしかに、あれだけのメンバーに見てもらえたのだから、当然だろう。
 俺も相当打てた……いや、負けたんだっけ。あいつはとても強くなってた、俺も負けられない。
 また打ちたい、次は勝つ。

 それはともかく、教えてくれた同級生が、お昼を少しわけてくれた。腹減ってたので非常に助かる。天使かもしれない。
 まあ量は足りないので、それで繋ぎつつ、なんとかお昼を調達。居合わせた先輩への口止めに、デザートを提供。
 放課後は先輩の勉強を見たり差し入れを作ったり、帰る前に、世話になった調理室を磨き上げておいた。

 実に充実した一日だったと思う。
 それと最後に――昨日お世話になった皆さん、本当にありがとうございました。
 いらっしゃらなかった方も、お気持ちは届けていただいてます。ありがとうございます。

…………

 最高の誕生日――と書きかけたけど、断念。最高の誕生日は、さすがに去年だと思う。

「ま、絶対あいつには言わねーけど……お?」

『私と打ちたいくせに……天使とか、浮気もの……』
『だだ、誰が天使ですのん!』

 ……打ちたいのと天使は別だろ、うん。

『一年は強い子がいっぱいだよねっ、三年間楽しみだなー』
『に、二年も負けてませんからね!』
『憩ちゃんも呼んだったらよかったか……』
『新人王のライバルもいっぱいいたし、気は抜けない、私も』
『もっとお話したかった……』
『みんな連れてくればよかった……京太郎に勉強見てもらえたかもしれないのに』

 そ、そういえば三年の先輩方がいっぱい……しまった、俺……普通に麻雀してたよ!
 勉強、見させてもらうチャンスだったのに……不覚だ。

『行き帰りで困るし、京太郎くんに悪いよー』
『そうそう。日誌がないからどうかと思ったけど、ひと言もらえたし十分よ』

 あぁっ、女神さま!
 日誌のことは、すいません……いや、突然の来客で、ほんとに。

『……しもた、勉強のこと忘れて普通に打ってしもてたやん……』
『あれだけのメンバーだったし、仕方ないかと……』
『楽しかったですよ、将来有望な子ばかりで』
『潰さないように』
『潰さないよ!?』

 いや、たぶん……そう簡単に潰れないだろうな、みんな。

『私とは違うし、ダメになるような子はいないってね』
『自虐なのか自慢なのか、わかりづら……』
『大丈夫ですよっ、私たち頑丈ですから!』
『まあ、一年二年ともに、負けん気だけは強い連中だからな』
『あとは……どうも、卒業が近づくと後輩が生意気になると感じるな』
『先輩方の先輩も、卒業前には思ってらしたのでは』
『……ほんま、毎年の風物詩なんやろなぁ』
『そういうとこも可愛いものよ、後輩っていうのは』
『まあうちが一番やけどな』
『残念、うちなのよね』
『ま、まあうちも可愛くなくは……』
『こっちだって可愛いってー、そりゃもうバツグンに!』
『うちのに比べたら、どこも見劣りすっとはしゃあなかよ』

 親バカァ――ッッ!
 俺も来年以降はこうなんのかね……実感湧かないもんだ。
 さて、そろそろ寝るか。

『こういうの、参加できないわね』
『うちもいるでしょ、最高の一年が』
『待った、それはうちのだろう』
『だからうちの後輩だって何度言えば』
『私の、後輩ですよ?』
『……うちの後輩よ、悪いけどね』

――――――――


~清澄

「………………まだ怒ってるの?」
「あたりまえじゃあ、勝手なことしおってからに……ひと言、はっきり宣言してけばええもんを……」
「ふーむ、信頼されてないんだって、拗ねてるわけね」
「久のあとの部長じゃあ、誰でもそう思うわい」
「あのねえ……私がそんなに、しっかりやれてたって思うの?」
「事実やれとったろ。学生議会長もやり、部長もやり、二足のわらじで全国優勝。並の所業じゃないわい」
「――唯一の男子部員を犠牲にして、ね」
「……………………」
「元気にしてたってさ」
「そりゃあ聞いとる」
「だから、今回のは私がそれを確認して来てもらった――ってことじゃ、ダメかしら」
「……お前さんがそうやって、いつまでも手ェ回すからわしは……」
「一年(こども)を躾けるのは二年(おや)の役目、三年(おばあちゃん)は無責任に可愛がるものなの」
「――はぁ……それを注意するんは、二年の仕事じゃのう」
「はーい、反省してまーす」
「……ちゃんと親をやれてりゃあ、わしも悩まんちゅうのに……」
「やれてるから、怖がってるんじゃない。私なんて、まこに怖がられたことないわよ?」
「信頼はしとったろ。わしは、ほんまに信頼されとるかどうか……」
「せめて京太郎がいればねえ……まこを信頼してたって、証明できるのに」
「あいつが一番じゃろ。庇うべき立場じゃったくせに、放っといて……いまさらなんも言えんわ」
「――ま、その辺は本人に確認すればいいわ。もしまこが頼りなかったら、いくら私のお願いでも、こんなの引き受けなかったと思うけど」
「どうかの……っちゅーかなんじゃ、その、お前さんの頼みならだいたい聞くじゃろちゅう自信は」
「だって自信あるもーん」
「言っとりんさい」

(……ま……あながち、間違いでもないかのう……)
(まこが頼りなかったら、残ってたとは思うけど……私なんて、命令して言うこと聞かせてるだけなのよね、実際……)

『…………はぁ……』


~白糸台

「元気にしてたみたいですね、よかったです。けど、結局あの食券は使えなかったかー、残念」
「選択肢次第では、使いに帰ってこられたのにね……」
「使いに、ではないがな……まあ、まだ可能性はあるさ」
「そう、私の誕生日に――」
「バレンタイーン! でしょ!」
「違う、私の――」
「彼なら、当日に全国行脚くらいはしそうだからな……」
「お昼に来るよう、メールしておきましょうかね」
「要求してるみたいにならないかな……」
「へーきへーき! どうせ来るつもりだってばー!」
「散々迷惑かけたお前が言うと、妙に腹が立つ……」
「もーっ、謝ったのにー……けど、まだ足りないかな……」
「…………もういい、過ぎたことだ。今月の残りは、真面目に過ごせよ」
「ふぁーい、了解♪」
「ちゃっかりしてるなぁ、淡は」
「弘世先輩、淡ちゃんに甘いからね」
「そ、そんなことはないだろうっ」

「……あの、私の誕生日だから、だよ……?」


~永水

「春、妙にツヤツヤしてますね」
「キョウタロニウム、いっぱい……」ツヤツヤ
「怪しげな薬品名が出てきましたよー」
「それはいいのだけれど……春ちゃん?」
「?」
「合宿の話、二条さんとしたの?」
「………………あっ」
「ま、仕方ないですねー。お目当てがすぐそこにいたわけですから」
「いっぱいご奉仕できました!」
「せっかく作ったし、これ着た写真でも送ってあげますかー?」
「はっちゃん」
「」ビクッ
「名案ね」
「で、でしょー」
「じゃあさっそく……」
「すでに着てる!?」
「ダメですよ、春」
「珍しく姫様がお説教を――」
「ちゃんと身を清めてから、撮影しないと」
「ん……それじゃ、まずお風呂から……」
「――するわけないですよね、そりゃ……」

「この服は、お気に入りにする……」
「あら、こういうのが好きっていうのは意外でしたよー」
「京太郎が、似合うって……可愛いって、言ってた……////」
「」
「はっちゃん、お口から砂糖がもれてるわよ?」


~宮守

「……ただいま」
「部屋にきたのは私たちのほうなんだけど」
「いらっしゃい?」
「こんにちはー!」
「もう夜だけどね!」
「どしたの、今日は遅かったけど……」
「シロ、ツカレテルト、オモッテ!」
「当日往復だし、今日の昼くらいはゆっくりさせたげようかと思ったのよ」
「ふーん……あ、大阪みやげ」
「変な味つけのスナックとかやだよ?」
「京太郎の焼いたクッキー。一日くらい、大丈夫でしょ」
「シロ、オチャ!」
「人遣い荒いなぁ……」
「あ、私やるよー」
「……いいよ、みんな座ってて……」
「真人間になったわねー、あのシロが」
「来月から寮だから、さすがに……」
「で、京太郎くんはどうだった?」
「んー……女の子いっぱいだった」
「でしょうね」
「グヌヌ……」
「あと……永水の滝見さんが、京ちゃんって呼んでた」
「!?」
「宮永さんじゃなくて!?」
「京太郎も、はるるって呼んでた」
「なっっ……」
「ず、するいよー!」
「……そういえば、シロもさんづけよね。私たちは先輩なのに」
「ヌケガケ! シュクジョキョウテイニ、イハン!」
「難しい単語知ってるね……あれは、京太郎が私に勝って、そう呼びたいって言ったから……」
「だ、だいたい合ってるけど……なにか違うよー」
「私たち……ずっと、先輩のままなのかな……」
「そ、そのうちなんとかなるってば!」
「結婚しても先輩だったら、ちょっとときめくよー」
「けっっ!?」
(『ねえあなた……』『なんですか、エイスリン先輩』『もうっ、また先輩って』『ああ、すいません……じゃなくて、ごめん』『ふふ、いつまでも可愛いんだから』……ありね)ニヤニヤ
「エイちゃんっ、戻ってきて!」

「…………やっぱり、京って呼んでもよかったかな……また考えとこ」


~阿知賀

「咲ちゃんに勝ったってー? 憧、ナイス!」ナデナデ
「ま、まーね/// まあ、石戸さんに助けられてって感じだけど……」
「京太郎がすっごい喜んでたんですよっ、自分のことみたいに!」
「一方その頃、玄は……」
「うぅぅぅぅ、宮永さん、宮永さんが……なに切っても止まらないし、当たっちゃいそうな気がするよぉ……」ガタガタ
「玄ちゃーん! 大丈夫、大丈夫だよ~、あったかいよ~」
「ど、どうしましょう、赤土先生!」
「…………ま、大丈夫でしょ。前は乗り切れたんだし、こんなので潰れるようなか弱いのは、阿知賀女子にいないって♪」
「うちって一応、お嬢さま学校のはずじゃ……」
「無責任だなぁ、ハルエは」
「怖がってるけど、目が活きてるでしょー。なら平気」
「…………ちょっとだけ、お別れ!」タンッ
「玄ちゃん!」アッタカーイ
「ドラ切っても大丈夫なように、色々教えてるんだ。それくらいやってもらわないと困る」
「そうだね、春からは私たちも、三年になる……」
「私たちも二年ですっ、しっかりしないといけませんね!」
「そうそう、その意気。そのしっかりした一年筆頭、京太郎くんの様子はどうだった?」
「京太郎くんなら、お姉ちゃんがいっぱい話してました!」
「ほっほう、では宥。報告を」
「え、ええっと……永水の一年の子を、はるるって呼んでました」
「なにそれ!? 私聞いてないんだけど!」
「あと、その子から京ちゃんって呼ばれて……あったかくない……」ブルブル
「あ、あいつ……なにやってんのよ、ほんとっ……」
「宮永さんみたい! あ、私も京ちゃんって呼んでみよっかなー、次来たときは。ウェヒヒ」
「だ、だめよシズ!」
「ぅ? なんで?」
「な、なんでって……ね、ねえ、宥姉!?」
「きょう……ちゃん……宥、さん……はぅぅ、あったかい……」ポワァ
「ゆうねええええ!?」
「……そういえば、姫松の絹恵さんは絹恵さんだったね」
「宮守の小瀬川さんはシロさんだったよ!」
「……学園祭のときは、シロ先輩って言ってたくせにぃ……っ!」

「ふんふむ、なかなか面白そうね……憧を神代へ、お遣いにやってみようかしら」ワクワク
「泊りがけで?」
「そりゃそーでしょ。夜通しガールズトーク……あ、でもそれじゃ、会話が聞けない! 私も行かないと!」
「あんたがいるとこで、そんな話しないでしょうに……」


~姫松

「……………………」
「洋榎先輩、ちょっと機嫌悪ない?」
「う、うん、ちょっとだけ……でも、自分に怒ってるだけみたいやから」
「セーラと互角、小瀬川に押されて、宮永に完敗……そらへこむやろな」
「私たちが慰められる状況でもないのよー」
「おかーちゃんが言うには、しばらくそっとしとき、いうことなんですけど……」
「……そのわりには、小母さんが一番煽ってなかった?」
「おかーちゃんは、期待してる相手にほどきつぅ言うから……私なんか、そこまで言われたことないもん」
「漫ちゃん、なんで地雷踏み抜くのん」
「これはあかんのよー」
「私のせいですか!?」
「………………あー、くそっ……んまになぁ……」
「………………はぁ、私はダメや……」
「ほらー、どうするのよー」
「そんなん言われましても……」
「……ま、心配いらんやろ。ほっといたらすぐ戻るわ」
「けど、この調子やと……」
「言うとくけど、数日とかちゃうで? 数分やから」
「そんなうまいこと、いくわけないのよー」

「…………京太郎くんやったら、なんて言うてくれるかな……絹恵さんて、また言うてくれるやろか……」ニヘヘ
「…………あー、あかん! うちのこと尊敬しとる言うたあいつのためにも、もういっちょやるか!」

「わかりやすいとこまで、似た者姉妹なのよー」
「な、だから大丈夫やて言うたやろ、漫ちゃ――」

「…………絹恵さんて、え……京太郎くんが、絹ちゃんのこと……先輩、やなしに? ほ、ほんま……?」

「しもた、今度はこっちか……」
「これはどのくらいなのよー」
「……さて、勉強しよか、由子」
「諦めてどないすんのよー、懐いてくれてる可愛い後輩やろー!」
「きょ、京太郎くんが電話してくれること、祈っとこやないの」
「……頼むのよー、京太郎くーん」


~千里山

「あほ。なんで帰らんと調理室の掃除なんかしてんの……」
「心配ですか、やっぱり天使さんは違いますね」
「!?」
「まあ天使やなくても、心配はしたらんとな」
「……無理はしなって、言うてんのに……わからん子やな、ほんま……」
「それでまた、無理はしてへんて言うねんもんなぁ……」
「自己管理が、あんまりうまないんでしょうかね……しゃ、しゃーないですね。私が注意しといたります」
「船Qので聞くやろか……」
「それで聞かせるんが部長ですから」
「できれば肩書きやのうて、自然にそういうん言ってあげられるほうが、ええんやけど」
「無理すなーって言うより、別の切り口のがええんとちゃうか」
「おお、セーラが頭よさそうなことを」
「どういうことですか、先輩」
「うーん……ちょっとわからんなぁ」
「そこが大事な部分ですやん……」
「う、うっさいなぁ!」
「……あの子の休みになるようなことを、私らがお願いする感じで、させたったらええんかな?」
「おお、そらええな……竜華なら膝枕ゆーわけか」
「えぇ!?」
「ま、この膝枕は渡さへんけどなぁ~」ゴロゴロ
「とはいいますけどね――」
「ん? なんや問題あるんか、船Q」
「はい。実は京太郎くんにはおもろいデータがありまして……」
「まさか膝枕が嫌いやと――」
「いっぺん膝枕から離れぇ」
「そういうことやなく、実は京太郎くんは――」

「働いたり動いたり、頼まれごと処理したりすると……体力回復するらしいんですわ」

「――さ、真面目に考えよか、そろそろ」
「いや、船久保先輩の病院が先とちゃいますか?」
「部長やもんなぁ、そら疲れるわ」
「肩揉むでっ!」
「ちゃいますて! ほんまにそういうデータが――」
「そんな人間、おるわけないですよ……」
「ほんまやで。働いたり動いたりで、回復するわけあるかいな。そんなんやったら、私が苦労してへん」
「最近のあんたは、わりと楽そうやけどな……っちゅーか、楽しそうなんか」
「スガキョンからかうの、おもろいしなぁ」
「やめたりや、あんた……」
「ほんまのデータやのに、信じてもらえへんなぁ……まあ、私が一番疑ってるんですけどね」
「そら、妙にイキイキしとるんは認めるけどな」
「回復は言いすぎやろ。普通に休ませるほうがええて」
「異議なーし」


~某居酒屋

「――結局、健夜さんの一人勝ちだったねぃ」
「悔しい!」プンスカ
「悔しいのはこっちだよ……」
「結局、全員が回って、全体を満遍なく見られたからね☆」
「私たちも、京太郎と話す機会を得られました……さすが愛宕プロ……いえ、監督です。よく見ておられる」 
「プレゼントも渡せたし☆」
「まあ、それはいいんだけどさ」
「ふっふっふ、いやー、見えるねぃ……あいつが全国で、私の扇子片手に打ってる姿。くぅ~、照れるねぃ」
「はぁぁぁ……私のヘタレ、どうしてあんな……」
「そういえば、良子ちゃんはなにあげたんだっけ?」
「時計!」
「ああ、見た見た。鎖ついた、懐中時計ってやつだよねぃ」
「ええ、まあ……執事らしいかと思って」

(春があんなことを言わなければ……いえ、むしろよかったのでしょうね。そう思っておきましょう……)

「それより、そろそろ大会だぞ☆」
「予選だね来月頭に……って、まだまだ先だよ」
「そういえば、うちら京太郎が勝ち抜くって勝手に決めてっけど……マジで大丈夫なんすかねぃ」
「余裕!」
「よほどのことがない限り、予選だけなら……」
「まあ今月いっぱい、練習に使えるからね」
「使えない!」
「えっ」
「……ああ! 月末にテストがあるから、学生は練習できないんですよ、たしか」
「つまり――」
「今週と来週だけですね、練習期間は」
「大丈夫かねぃ……」
「だ、大丈夫!」
「はやりもそう思うぞ☆ 最近は、私の打ち方もしっかり身についてるみたいだからねっ」ニヤニヤ
「わ、私のも!」
「まあ一番の師匠は私です。もちろん私の技術もね」
「……どーせ火力重視で上がり速度軽視ですよ」
「おかしいなぁ、私のだってそんなに難しくないはずなのに……」

(モンスターがなんか言ってやがりますが……)
(聞こえないフリ!)
(スルーが一番だぞ☆)
(あんなんが簡単にできたら、魔物が量産されるってーの)


~2月第一週木曜

京太郎「気がつくと、週も折り返し過ぎてるのか……いや、待てよ」

京太郎「月・火・水、木、金・土・日と考えると、今日が折り返しなのか……」

モブ子「つまんないことで悩んでんねー、ハゲるよ?」

京太郎「親父はフッサフサだけどな」

モブ子「もうちょいあとになったら、どんどん後退していくって。まあ見てな」

京太郎「イヤな予言すんじゃねえ!」

モブ子「そんなことより、今日はお弁当持ってきた?」

京太郎「ああ? まあ、昨日の分までしっかり気合入れたぞ」

モブ子「よかよか。なら、昨日わけたげた分のお返し、ちゃんとするように」

京太郎「ああ、わかって――ちょっと待て」

モブ子「なにかおかしなことでも?」

京太郎「わけてくれたのはお前じゃねえ、泉だ」

モブ子「そこに気づくとは……やはり天才……」

京太郎「お前も、いい加減に節制しないとさらにふと――あれ?」

モブ子「な、なんだよう」

京太郎「言うほど肥えてねーよな。元からは元からだけど、それ以上にってのがない……」

モブ子「元からは余計だ……だがまあ、色々秘訣があってな。必要以上には肥えないのだよ」

京太郎「サナダムシとか飼ってるのか……」

モブ子「飼ってねーよ!」

京太郎「珍しく誰にも遭遇しなかったな……ま、いいか。部活行ってくるぞ」

モブ子「あいよー、いっといでー」

京太郎「…………待て」

モブ子「おう?」

京太郎「お前も麻雀部だろうが!」

モブ子「…………ああっ!」

京太郎「設定忘れてんじゃねーよ!」

モブ子「設定違うし! 麻雀好きだもんっ、レギュラー目指してるもん!」

京太郎「いま何位だっけ」

モブ子「……二軍の、十……四位、かな?」

京太郎「先はなげーなぁ。ま、いいや。さっさと行くぞ」

モブ子「はぁ、だっるぅ……」

京太郎「テンション落ちるようなこと言うな」

モブ子「小瀬川先輩のときは、甘やかしてたくせに」

京太郎「あの人のだるいは、こう……癒されるからいいんだよ」

モブ子「差別だー! バカー! グレてやるー!」ダダダッ

京太郎「……って、部活サボるだけじゃねーか……まったく」

~木曜、昼

モブ子「ふっはー、腹減ったー」

泉「モブ子ちゃん、朝練サボったやろ」

モブ子「ギクッ」

泉「二軍リーダーぶちぎれてたから、ちゃんと謝っときやー」

モブ子「ちゃ、ちゃうねん! 京太郎のせいやねん!」

京太郎「おう、俺のせいにすんのやめろ。ついでにエセ関西弁もやめとけ、怒られるぞ」

泉「京太郎くん、なにしたん」

京太郎「だから俺のせいじゃねぇ!」

京太郎「くそう、なんて信用ないんだ……」

モブ子「日頃の行いの差よ!」

京太郎「まだ努力が足りなかったか……くっ」

泉(悪いことしてもうたかな……)

京太郎「おっと、そうだ……泉、これ。よかったら食ってくれ」コロン

泉「わっ! んーと、おにぎり……かな?」

京太郎「昨日のお返しだ」

泉「あらま、律儀に……ほな、ありがたく」

モブ子「私も一個プリーズ!」

京太郎「どの口が言ってんだ、ああ?」

モブ子「ビエーッ! 京太郎が怒ったあああああああああ!」

京太郎「冗談だろ……」

「きょ、京太郎くん怒ったんやて」
「怒ってもかっこええなぁ……」
「むしろワイルドさが増す、ぜひ持ち帰りたい」キリッ

京太郎「怒ってないからっ、超温厚だから、俺!」

泉「怒っとっても人気者ですねー、うらやましいことで」

京太郎「……なんか怒ってる? そっちこそ」

泉「いーえ、なんも!」

京太郎「はあ、女の子のご機嫌は複雑だ……生きるんて辛いなぁ」

京太郎「教室の空気が重い、胃に刺さる……ということで、部室に避難してきたわけだが」

京太郎「鍵がねーと入れねーんだった……さて、どうしたものか」

浩子「……ゴチャゴチャ言うてんと、はよ入ったらどうや」ガチャッ

京太郎「おうわっ!? あ、ああ、浩子先輩……いらっしゃったんですか、お疲れさまっす」

浩子「おったんや、すまんなぁ。これでも部長でな」

京太郎「いえいえ、開いてて助かったくらいで……あれ、なにかお仕事されてたんですか」

浩子「春大会のレギュラー決め、監督から候補だされて、そのメンバーに対してのコメントやなんやと」

京太郎「なるほど……あ、お茶お淹れしますね――さ、どうぞ」

浩子「気ぃ遣いなや――て、もう遅いか。おおきにな」

浩子「さて、ほなちょっと休憩しよかな」

京太郎「候補は一軍の十位までですか」

浩子「そのうち五人がレギュラーになるわけやな。まあしかし、似たり寄ったりなメンツで、監督も頭痛いやろて」

京太郎「……そういえば、監督は叔母さんなんですよね?」

浩子「おー、監督に言うといたるわ。オバハンやて陰口叩いとったて」

京太郎「悪意ある取り方しないで! 叔母と姪でしょってことですよ!」

浩子「わかっとるがな……まあ、そうやけど?」

京太郎「普段は叔母さんって呼んでるなら、学校で出ないのかなーと」

浩子「公私はわけるもんや。当然やで」

京太郎「そうなんですけど……こう、クセってつい出ちゃうもんですから」

浩子「言いかけることはあるな。せやけど、私はレギュラーで、しかも部長や……あんまり馴れ馴れしいしてたら、妙な憶測されるやろ」

京太郎「――ああ、なるほど……」

浩子「コネでレギュラーにした、されたと思われたないし……それで迷惑かけるわけにもいかへんやろ」

浩子「なにより――私は麻雀が好きなんや。そこに余計な要素は入れへん、データも歪んでまう」

京太郎「まあ……実際、浩子先輩は強いですから。普通に話しても、誰もなにも思わないと思いますけど」

浩子「そうは言うても、緊張感が保てへんやろ。練習するからには集中や、それやったら気ぃ張っとかんと」

京太郎「なるほど……参考になります」

浩子「参考?」

京太郎「俺もときどき、執事だとかマネージャー業だとか、そういうのを忘れそうになるんで……うまく、気を張っとかないとと思って」

浩子「……ああ、うん……そこはええやろ、別に」

京太郎「いやー、よくないっすよ。ただでさえ馴れ馴れしいですから、必要最低限の礼儀は守らないと」

浩子「……データにあるわけやないから、たしかなことは言えんけど……」

浩子「日誌のコメントやら見る限りでは、その……京太郎くんを呼んどる人間は、そういうもんを求めてるんとちゃう思うで」

京太郎「? えっと、それはどういう……」

浩子「詳しいことは言わへん。確証あるわけやなし……自分で気づかな、意味ないからな」

京太郎「はあ……(よくわからん……)」

浩子「ま、思った通りに動けばええわ……とりあえずは、お茶、もう一杯淹れてもらおかな」

京太郎「承知いたしました!」ガタッ

浩子「さて……仕事進めるかな、そろそろ……叔母ちゃんも、めんどいことばっかりさせはるわぁ」



~木曜、放課後

京太郎「お昼にちょっと仕事できて回復できたからかな、午後も無事に乗り切れたぜ!」

泉「……もしかして、先輩の言うてたことはほんまやったんやろか……」

京太郎「よーし、部活行こうぜ、部活!」

泉「はいはい、ちょお待っとって……ん、行こか」

京太郎「重そうだな、持ってやろうか?」

泉「別にかまへん。こんなん、いつも持ってるわけやし」

京太郎「だからこそだろ。いつも持ってんなら、たまには楽しろって」ヒョイ

泉「あっっ……もう、かまへんて言うてんのに……」

京太郎「ま、いいからいいから。せっかくの男手だ、いるときに頼れよ」

泉「…………そんなんしとって、いざ慣れてしもたときにおらんようになるとか、最悪やろ……あほ……」ボソッ

京太郎「おー? どうした、なんか言ったか?」

泉「いや、別に。まあええわ、ほなよろしくー……さ、行くで」

京太郎「おう。あ、そうそう」

泉「んー?」

京太郎「またなんかあったらさ、ちゃんと言ってくれよ。せっかく同じクラス、同じ部活の同じ一年なんだ。協力し合おうぜ」

泉「…………はぁ」

京太郎「ええええ……」

泉「いや、そうやのうて……まあ、はい。そんときは、またよろしゅう」

京太郎「おうっ」


泉(…………いつまでもおるんやないのに、甘えたら……あかんで……うん)


~部室

京太郎「――ってな感じなんですけど、どう思います?」

泉「なにをあっさり話しとんねん!」

竜華「あれか。はやりのデキる女目指してるんか、泉」

怜「はぁーん、かっこええもんやな、応援するで。ま、うちは遠慮なく頼るけども」

京太郎「お任せを!」

セーラ「俺は泉の言いたいこともわかるけどなぁ」

竜華「言うても、せっかく男手あるんやし、普段大変なこと任せるんは悪くないやろ」

京太郎「ですよね」

セーラ「大変なことでもやるから、実になるんちゃうか」

京太郎「うっ……一理ありますけど、それだと俺の存在意義が……」

怜「スガキョンは癒し要因や。おるだけで雰囲気が柔らこうなる……」

京太郎「と、怜先輩っ……」

怜「その癒し空間にある、竜華膝枕……ああ、たまらん……これぞ至福のひと時やでぇ……」

浩子「えらいお楽しみで。でも残念なお知らせがございます」

怜「!? 船Q、まさか……」

浩子「そろそろ部活開始です。お二人も、お勉強なさってください」

竜華「さ~て、お待ちかねやで~」

怜「ひっ……い、いやっ、いややぁ……スガキョン! 助けてぇな!」

京太郎「怜先輩……」

怜「キョン……」

京太郎「さ、今日も頑張りましょうか! 問題用意してきましたよ!」

怜「鬼ぃぃ~~~~~っっ!」

竜華「なんやかんや、馴染んできとる……ん、かな?」


京太郎「さて、俺も始めるか」

京太郎「――さて、とりあえず二日は空けてみたし、今日の分をたこ焼きにしてもよさそうだな」

京太郎「火曜は色々していただいたし、昨日はメレンゲ菓子だったわけだから……そうだな、そろそろおだしするか」

京太郎「……なんか、セーラ先輩のほうから多大なプレッシャーを感じるし」

セーラ「なっ! べ、別に楽しみにしてへんわっ、あほぉ!」

怜「語るに落ちるとは……」

竜華「このことやなぁ……」

泉「先輩はなんちゅーか……裏表ないですよね」

浩子「男前やなぁ」

セーラ「くそっ、みんなしてバカにしよってからに……」

京太郎「そうですよ、先輩は男前っていうか、可愛い系じゃないですか」

浩子「ふむ、たしかにせや。こら一本取られたわ」

怜「髪伸ばしたらええのになぁ」

竜華「ちょっと化粧したほうが、プロになったあともテレビ映えするやろうし」

泉「あとは仕草もですかね。もうちょい淑やかにしたら、グッと色っぽなる思いますけど」

セーラ「~~~~~~~~~~っっ」プルプルプルプル


京太郎(かわいい)

怜(おもろい)

竜華(かわいい)

泉(かわいい)

浩子(データが潤うわぁ)パシャッパシャッ

京太郎「……さて、ご機嫌取るためにも、マジでたこ焼き作るかなっと」

京太郎「――お疲れさまでーす。たこ焼き置いときますので、どうぞー。はい、こちらもどうぞー」

セーラ「うっ、うぅぅぅ……くっそぉ、うまいっ……やっぱ、どうしようもなくうまいわぁ……」

京太郎「よかった……セーラ先輩のために作りましたから、どんどん召し上がってください」ニコッ

セーラ「ふぐっっ!? な、なな、なにを言うとんねんっ、あほ!」

怜(GJやで)

竜華(いや、あれは天然や……恐ろしいこっちゃで)

泉(まーたあんなこと言うて……ほんま、どうしょもないな)

浩子(データが……データが、潤うわぁ……)カシャカシャ

雅枝「おかしいなぁ。部内の空気が、おかし歪んできとるやないの」

京太郎「? そうですか?」

雅枝「前のを知らんと、ようわからんか……まあええ、それより京太郎や」

京太郎「はい?」

雅枝「まだ休憩とちゃうで」

京太郎「はい。けどもうすぐですし、これだったら突つきながら練習できますから。手も汚れませんし」

雅枝「そうは言うてもなぁ……」

京太郎「なにか問題ありますか?」

雅枝「ある、おおありや」

京太郎「では、その問題とは」

雅枝「こんなとこでええ匂い垂れ流して、ジュージューうまそな音立ててることや」

京太郎「……練習の励みになるかと」

雅枝「励みにはならんなぁ……むしろ、えっらい気ぃ散っとるで」

京太郎「……うぅむ、失敗か……」

雅枝「――ま、かまへんわ。このまま続けとき」

京太郎「えっ、いいんですか?」

雅枝「こっちに気ぃ取られて集中切らしたやつは、お代わりなしや。匂いと音で集中切らさんように、練習続け!」

浩子(はら、うまいこと練習に繋げはったで)

泉(ちょっと強引ですけど、まあ集中力鍛えられる……ん、かな?)

セーラ(食いながらやったら、そこまで気にならんわな)

怜(うちら、勉強しながらやねんけど……)

竜華(ここまでできへんかったら、お代わりはさせへん)

怜(殺生やなぁ……)

セーラ「いよっしゃトップやー!」

雅枝「ふむ、さすがやな」

セーラ「京太郎! お代わり頼むで!」

京太郎「どうぞ焼き立てです。それとこっちのは、タコに少々アレンジを」

セーラ「ほう、どれどれ……おふっ、すっご、味濃いやん!」

京太郎「下茹でしたものをタレで炊きました。タコだけでもおいしく食べられて、かつ生地にも合います」

セーラ「やるなぁ、はふっはふっ」

竜華「おいしそうやなぁ。私ももろてええかな?」

京太郎「竜華先輩、お疲れさまです、どうぞ……あの、怜先輩は」

竜華「怜は置いてきた……勉強はしたけど、この休憩にはついてこられへんで……」

京太郎「……そうですか……」

怜「りゅ……りゅうかぁ……お代わり、三個でええから持ってきて……」

京太郎「なんかおっしゃてますが」

竜華「ノルマ終わってへんからあとやな。さて、焼き立てのお味を……んぅっ、あれっ、ピリ辛っ?」

京太郎「こっちは一味と塩で軽く炙ったものを入れてます。オカズになりそうな味を追求中ってとこですね」

竜華「たしかになぁ、ちょっとご飯に合いそう……いや、タコそのままご飯と食べたいな、これやと」

京太郎「そうですか……むぅ、ならもうちょい生地に馴染ませないとだめか、ふんふむ……」サラサラ

セーラ「うわっ! めっちゃメモ取ってる!」

竜華「まだ改良されんの、この黄金たこ焼き」

京太郎「もちろんです。まだ洋風のレシピも途中ですからね……デザート用も作らないとですし、研究してて飽きませんよ」

セーラ「熱心やけど……別にたこ焼きだけやなくてええんやで?」

京太郎「なるほど、お好み焼きですね! あれも調べましたけど、相当難易度高いです、タネも具材も」

セーラ「おお! それもええなぁ……ついでにご飯とみそ汁もろて、食いながら打てたら……ああ、あかん……涎が……」ズズ

竜華「もう休憩のレベル越えてんで、それ……」

京太郎「監督に見られると、本気で怒られそうですからね――」

雅枝「………………」ジー

セーラ「ほんまや、めっちゃ見られてるわ……」

京太郎「なら、お昼にご馳走するってのはいかがでしょう。といっても、研究中ですから、まだそこまでおいしいものはできないですけど」

セーラ「昼言うても、どこでそんなん作るんや」

京太郎「調理室でよく色々作ってますから。そのときにでも」

セーラ「いやぁ、鉄板ないやろ?」

京太郎「えっ」

竜華「えっ」

セーラ「えっ?」

京太郎「……えっと、フライパンで焼くのじゃダメですかね?」

竜華「うん、それで皿に取ったらええやん」

セーラ「えぇ~、それやったら鉄板からコテで食えんし、ソース焦がして絡めたりできへんやん」

京太郎「そうか、お店だとそういう提供になるんですよね……うーん、ならフライパンを加熱しながらだせるように……いや、いっそ鉄板皿を用意して――」ブツブツ

竜華「そ、そこまでせんでええやん! ちょっとセーラ! 部活外でまでえらい手間かけさせてっ、どないすんの!」

セーラ「ええ!? 俺のせいかいな……きょ、京太郎? そんな無理せんでええで、無茶言うて悪かった――」

京太郎「いえ、大丈夫です……俺が甘かっただけなので。安心してください、そのうち、リクエストに応えられるよう、ご用意させていただきますので」

セーラ「あ、ほんまに? いやー、なんか悪いな……けど、それやったら期待して――ぁ」

竜華「セ・エ・ラァ~~~~~?」

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最終更新:2026年01月17日 13:28