【2月第三週火曜】
今日は、というか昨日からか、よく他校の方に会う。
俺が北大阪に移っての初日から、色々と親切にしてくださった方だ。
ライバル校の生徒にも優しいその性格、見習いたいと思う。
そして本日の部活は、残念ながら禁止。
全国大会前で歯痒くもあるが、自分たちは学生だということを忘れてはいけない。
まずは基礎学力を保ち、その上で他方向への能力向上を目指さなければ。
ということで二週間、皆さんも頑張ってください。
あ、こちらは本日焼いたチェリーパイです。時期が早めですが、好評でなによりでした。
…………
『北大阪のどこかですね』
『言われんでもわかるわっ』
『言うてないで、書いてるで、おねーちゃん』
『わかっとるわ!』
『んー、三箇牧?』
『あの子やろなぁ……』
『一人だけずるい』
『うちだって派遣先に入ってないのに』
『私も……もう卒業だけど』
『そ、そんなんうちのせいとちゃうやん?』
そういえば、憩さんを通じて知り合った人と練習したって、灼さんが……うーむ、俺も会ってみたい。
愛知とか静岡だったか、東京までの途中にはあるんだよなぁ……長野からも、地図上でなら近いんだけど。
『昨年夏の個人決勝卓メンバー、だいたいが知り合いでスネ……』
『誰か一人、知り合っていないような気がしますけれど』
『もうその人のせいで、こっちに来てくれないんじゃないかという気もしてきました』
『………………言いたいことはそれだけか』
『チェリーパイ、おいしそうだけど高そう……』
『彼が作ってくれるのは、無料のようですよ。連盟の予算がありますから』
『なら作ってもらいたいね、お金かからないなら』
『あー、もう好きにしろ。来月には私はいない、私が原因だと思うなら、これで来てくれることになる、よかったな』
三年生なのか、この人は。
たしか卒業式は、好きな学校に出席していいって言われてたな……いや、逆に悩むっての。
くっそぉぉぉ……なんでこういうのだけは、俺の意思を尊重してくれるんだよ! ありがたいけども!
『ところで皆さん、テスト勉強はどんな具合でしょうか?』
『まぁまぁ……』
『が、頑張っています!』
『受験も終わったし、もう引っ越しの準備くらいしかしてないかなぁ』
『同じくだよー』
『私は実家からだから……毎日ゴロゴロしてます……』
『……太らない? いや、煽りとかじゃなく、心配で』
『
お姉ちゃんは食べても太りませんのだ! その分おもちに……くぁwせdrftgyふじこlp』
『あと残ってる受験組って、都市部の国立だけ?』
『大変ねぇ、卒業間近まで』
『部活禁止中て、練習相手足らんな』
『プロの人らも、あんま来てくれへんなぁ……開幕近いし、大会の打ち合わせとかもあるんやろけど』
『プロ入り組で、合宿とかしたい』
『お前にしてはまともな提案だな』
『おもろそうやん』
『京ちゃんもそこに呼ぶ、きっと来てくれる』
!?
『プロ入りじゃなくても、暇を持て余した三年を呼べば、練習相手が増えるわよ?』
『一年だけど行きます』
『私も一年だけど、行く』
『プロ入り組の合宿とちゃうんかい……』
~清澄
「よーっし、合宿頑張るぞー!」
「その前に咲さん、試験勉強しましょう」
「地方大会優勝者が、赤点で出場停止とか……シャレにならんわい」
「とんだ赤っ恥よね」
「っていうか、合宿決まってないじぇ……」
「試験期間は後輩が練習相手にならないから、ということですけどね、そもそも」
「プロ入り組じゃなくてもいいなら、私も行けるんだけど」
「京太郎がおらんでもか?」
「あのね……別にそれだけが目的じゃないし、強い人たちと打ちたいじゃない、たまには」
「――それに、よその三年が京太郎をどう思ってるか、聞くいいチャンスだし、ね」
~白糸台
「ということで、菫。企画を――」
「……週末が本試験だと、知っているよなぁ?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「じょ、冗談だから……」
「気が立ってますね……どうぞ、お茶……落ち着きますよ」
「ああ、すまんな尭深……ふぅ……」
「甘い物もどうぞ。このあとも、もう少し勉強されますよね」
「うん、まぁ――って、さりげなく甘い物を進めようとするな!」
「えーっ! でも大事ですよ、勉強に甘い物! それに先輩、言いたくないですけど、全然太ってませんし!」
「……自分の身体のことだ、自分が一番よくわかってるさ」フッ
「なにその末期症状の重病患者的なの」
「ある意味重症かも……」
「誰が病気だ! これくらい、乙女ならよくある悩みだろうが……んっ……ふぅ……」
「どうしたんです、なんだか苦しそうですけど」
「いや、最近苦しくてな……どうも胸が締め付けられるというか……体重も増えるし、ロクなことがない」
「……そうですか」
「くっ……」
「……カップサイズ、上がったんじゃないかな」
「たぶんね……」
「買い物とか行く暇もないしねー。計ってもらわないと、わかんないんじゃない?」
「どうして……まさか、菫に吸われて――」ハッ
『それはない(です)』
「…………くっ」
~永水
「……あ、ここちょっと難しいかも……」
「そう? ちょっと見せて、春」
「ううん、いい……もしもし、京太郎?」ピッ
「…………むー」
「あー、やっばいです、この問題……」
「私にも見せてもらえるかしら、巴ちゃん?」
「あ、いえ、大丈夫です……ごめん、京太郎くん。ちょっといいかな、と……」カチカチ
「あらあら」
「……二人して、ナチュラルに京太郎を使ってますねー」
「試験期間中は、いつでも聞いて来いって、言ってくれたから」////
「私も、苦労かけてるから困ったことがあればなんでもって……提案したら、即OKで」
「……チョロいヤローですね、あいつはー」
「まあ、誰に聞くより確かだものね……さ、小蒔ちゃんは私とお勉強しましょうか。春ちゃんに教えてる余裕、ありの?」ニコニコ
「お、お願いしますっ……」アワアワ
「はー、退屈ですねー……お茶でも淹れてきますかー」
~宮守
「……合格発表、いつだっけ」
「全試験終わった翌週末――つまり、今月末ね」
「なのに、荷作りしてるんだ」
「絶対合格してるからね! その自信の表れだよ!」
「……ちょっとくらい、心配しないの?」
「ヘーキヘーキ! ダイジョブダカラ!」
「なんの根拠があって……」
「
過去ログによれば、浪人はなしってことらしいよー」
「過去ログ?」
「こっちの話だよー」
「そんなことよりシロ、あんたこそ荷作り進んでるの?」
「えー……まあ、ぼちぼちと」
「言っとくけど、向こうに持っていく分と、実家に返す分と作るのよ?」
「だからやってるって……」
「…………これで?」
ゴチャァッ
「……頑張ってるんだけど。やっぱり京太郎がいないとなぁ……力仕事は」
「コウハイ、タヨラナイ!」
「しょがないなぁ、シロは!」
「はぁ……京太郎くん呼ばれたら申し訳ないし、手伝おっか?」
「あのコ、呼ばれたらすぐ来そうだもんね……わかった」
「みんなでやれば、すぐだよー」
「ありがと……頑張って」
「あんたもやるの! ほら立って!」
「人遣い荒いなぁ……」フゥ
「誰の荷物だと思って……」
「(背中を蹴る人の絵)」カキカキ バッ
「……ふざけんなってこと?」
「っっ!!」コクコクッ
~阿知賀
「……玄ー、生きてるー?」
「大丈夫だよ、落ちてるだけだから~」ニコニコ
「そ、そうなんだ……」
「……宥さんって、怒らせると怖いんですね……」カタカタ
「だだ、大丈夫でしょ、そう怒らせることなんて……」
「にしても体重かー、なっつかしー。周りの子たちも必死だったなー」
「お姉ちゃんも?」
「望ぃ? あー、あのコも色々やってたっけなー。穀物抜いたり、水飲んだり、野菜生活に切り替えたり」
「こらぁぁっっ! なに人の恥部を晒してんのっ、しかも妹に!」
「へっへー、もう聞いちゃった~♪ けどいっがーい、お姉ちゃんもそういうの、してたのねー」
「あんたもやってんでしょー? 特にほれ、京太郎少年とメールしたあととかは、意識して――」
「うわああああああああああっっ! しししし、してないっ、別にしてないでしょっ、そんなこと!」
「やれやれ……っていうか、ハルちゃんはしなかったんだ?」
「私、食べても太んなくてねー。その分、縦に伸びちゃって」
「最近は結構、お腹柔らかくなってますけどね!」
「眩しい! 無邪気な悪魔の笑顔が眩しい!」
「ぅ?」
「穏乃、そういうこと言わないの」
「?? わかりました! お腹柔らかいっていうのは、やめときます!」
「」
「はぁ……ところで宥さん、実際のところはどうなの?」
「ふぇっ!? な、内緒ぉ……」カァァッ
「――京太郎に、お腹見せられる?」
「~~~~~~~~~っっ!? む、むっ、むっ……無理いぃぃぃ~~~~~~っっっ!」ダバー
~姫松
「っちゅーか、オカンはいつなったら、京太郎連れて帰ってくるんや」
「もう半月経ったのになぁ……」
「部活禁止の前の、貴重な練習期間でしたからね……そっちに集中してたんとちゃいます?」
「試験期間中に、教師が生徒を連れて帰るわけにもいきませんし……」
「え~? 私は別に、気にしやへんけどぉ~?」
「代行はそういう人ですからね……」
「そういう人って~?」
「良識に欠ける、言うことかなー?」
「ひどいわ~、末原ちゃ~ん」
「まぁそれはともかくとして――主将、絹ちゃん」
「お?」
「もし連れて帰って来られたら……連絡くださいね」
「!!! な、な、なんでですか!」
「あ、私も連絡欲しいのよー」
「真瀬先輩までですか、珍しいですね」
「……ああ、そうか……ま、今週末までにあったらな」
「あっ! そ、そういうことでしたか、すいません……」
「なるほど、受験勉強の一環ですか」
「京太郎くん以上の先生て、そうおらへんからなぁ……実際のところ」
「慰めも励ましも上手で、頼りになるんもんねー」
「……ここに、先生がおるんやけど~」
「代行に聞くくらいなら、自力でなんとかします」キッパリ
~千里山
「泉、目撃証言」
「今朝の登校中、荒川さんと話してデレデレしてるとこ、写真に撮られてます」
「で、デレデレやて……」
「うちが見たんは昨日やな。買いもん行ったらスガキョンも買いだしに来とって、帰る途中に憩ちゃんと」
「な、なんか話した……?」
「真の主を探してるやとかなんやとか。あとは憩ちゃん優しいて」
「や、優しいっ……」
「真の主ってなんやねん」
「執事の考えることはようわかりません……それじゃ、最後の目撃証言を」
「えー? 俺が買いだしついていったら、帰りに会うたなぁ。けど、ほとんど俺と荒川でしゃべっとったで?」
「そ、そうなんや……」
「二人でしゃべっとったこと言うたら……もちには拘らんとかなんとか。ようわからんけど」
「!?」
「あ、それうちも言われたわ」
「そうなんや。それで、もちってなんのことや?」
「江口先輩は知らんでもええです」
「えっ、ひどない?」
「さて、どう思います?」
「ふむ……別に三箇牧に移るいう気はなさそうやけど――」
「当たり前や!」
「憩ちゃんとは仲良さそやなぁ。初日にも会うたて、なにしとったんや、ほんま……」
「あかん! あかんでそんなん!」
「お、落ち着いてください、清水谷先輩」
「落ち着いてる場合か! た、対策せんと……」
「対策言うても、特になんもできへんやん」
「そうですねぇ……まあ、この件については時々いじるくらいで、放っといてもええんとちゃいますか」
「ええわけないて!」
「めんどいなぁ……ほな、竜華はスガキョンが、うちら捨ててあっちに行く薄情モンやて思てるんか?」
「そんなわけないやん! 京太郎くんは、男気あるええ子やで!」
「なら大丈夫やん……そんな慌てんでも」
「……そ、それはそうやけど……」
「まあ……明日会うたら、注意しときます」
「そんなとこやろなぁ」
「ちゅ、チューするやて!?」
「言うてへんで」
「だいぶ入れ込んでますね……ああいうんが好みですか、ええデータになります」
「そのデータ、なんの役に立つんや」
「周辺校の男子に高ぅ売れます」ベロォ
(げっすいなぁ……)
~某居酒屋
「京太郎くん分が足りないぞ☆」
「ま、まあ二週間だけだし……」
「来月まで会えないってのは、ちょっと長いっすよね~」
「そういえば、来月はどこになるんでしょうね、派遣先は」
「解説!」
「そっか、予選から解説入れるとこだといいなぁ」
「――取り決め、しておきませんか?」
「え?」
「関西なら私か野依プロ、関東ならそちらの三人で……ということで」
「なるほど――って、騙されないよ!」
「甘いぞ良子ちゃん☆」
「あれ、けど派遣先ったら関西5で関東6じゃないっすか?」
「関東は来月から5校だよ。それに、北海道まで脚を運ぶのは、さすがに大変だからね」
(鹿児島まで行ってた人が、なにを……)
「まあ――行ける人がいれば、その中の誰かってことにすればいいんじゃないかな」
「なんだったら、連盟の人に誰が解説すっか、決めてもらえばいいんじゃないっすかね~。知らね~けど」
「また勝手なことを……」
「ありかも!」
「おっと――そうそう、それで思いだしちゃった☆」
「ん、どうしたの?」
「来月から、会えるプロは三人までになるそうだぞ☆」
「指導の対象人数が増える、ということですか?」
「ううん、そうじゃなくて――毎月、京太郎くんの周囲に行けるプロは、週に三人までになるんだって」
「なるほど……」
「まあ、プロなら誰でも自由に全国へっていうのは、チートっぽいもんね」
「あ、地元チームの県なら、その三人に入らないから安心してって」
「つまり、東京なら……あ、私東京じゃないや」
「東京の学校は、関東圏ってくくりにするみたい」
「東京なら小鍛治プロ、三尋木プロ、瑞原プロ、あとは新人の二人、いえ三人ですか」
「そこに三人!」
「高校生上がりどもが増えて、うちらの枠が減るって感じかねぃ」
「ま、仕方ないよ……バランス見て、人数は増えるんでしょ?」
「たぶんね☆」
「ひとまず試しに、来月は三人なのね……了解だよ」
「大会!」
「ですね。大会中はそこそこ自由に会えそうですから、試験的にはちょうどいい機会かと」
「良子ちゃんはいいの? 松山、派遣先にならないけど」
「鹿児島に田舎がありますから、そこに捻じ込んでもらいますよ」
「ずるい!」
「ずるくはないです、やむを得ない処置です」
~2月第三週水曜
京太郎「ふぁう……」
モブ子「おぉ、珍しいね、超絶眠そう。なに、昨夜は一人でお楽しみでしたか?」
京太郎「うるせーよ、余計なお世話だよ」
京太郎「ちょっとテスト勉強用の問題をな……」
モブ子「泉ちゃん用かー、くっそうらやまけしからんなぁ」
京太郎「お前のもあんだよ、だから眠いんだよ、時間かかったし」
モブ子「えっ」
京太郎「忘れるのもなんだし、渡しとくぞ」
モブ子「あ、うん……ありがと」
京太郎「お礼はテスト結果で返してくれ」
モブ子「わ、わかった! 赤点回避はしてみせるから!」
京太郎「せめて平均は目指してくれ……」
京太郎「あ、フナQ先輩だ。おはようございます」
浩子「ちょお待ち、いつからそんな呼び方するようなったん」
京太郎「じょ、冗談です……おはようございます、浩子先輩」
浩子「うん。さて、あんたへの今週の課題は一個だけや」
京太郎「はい、泉のテスト勉強ですよね」
浩子「そや……江口先輩と違て、奨学生やないからな……それやのに成績不振やと、今後にも影響する」
京太郎「今回の試験を乗り切ると同時に、教えたことを忘れないよう、叩き込んでおきます」
浩子「……まあ、簡単にできるとは思てへんけどな」
京太郎「そうですかね。ちょっと見てた感じだと、頭もいいし、淡に教える50倍は楽ですけど」
浩子「大星淡はどんなんやねん……」
京太郎「あいつの場合は集中力と真面目さですから。なんだかんだ、泉はどっちも優れてますし」
浩子「そうか……それならええんやけど。なんしか、よろしゅう頼むで」
京太郎「はい! まあ、これまでのテストでも似たような感じで、色々詰め込んできてる感じですから、大丈夫なはずです」
京太郎「先生か友達か知りませんけど、これまで教えて来た人も、かなりいい先生になってくれたんだと思いますよ」
浩子「………………そ、そうか」
京太郎「むしろ俺のほうこそ、その人に色々聞いてみたいです。効率のよさとか、参考にしてみたいですね」
浩子「……あの、それやったら――」
京太郎「はい?」
浩子「……いや、ええわ。とりあえずは泉の面倒、しっかり頼むで」
京太郎「了解です!」
浩子「あんたのほうは、問題ないな?」
京太郎「麻雀部の顔に泥を塗るような結果は、おそらく回避できます」
浩子「謙遜やろ。まあ、信頼してるわ……なんかあったら、頼ったらええからな」
京太郎「ありがとうございます!」ニッコリ
浩子「//// ほ、ほな、学校急ごか……朝練ないから、ゆっくりめやしな」
京太郎「そうですね。あ、お荷物を――」
浩子「それはええ。後輩コキ使ってるて、妙な噂立ってしまうわ」
京太郎「なら俺が宣言してやりますよ。進んで喜んで、先輩の荷物を持たせていただいてるって!」
浩子「……引くわー」
京太郎「」
~2月第三週水曜
京太郎「いやー、今日もパンがうまい!」
泉「へ、珍しいなぁ。いつもお弁当や――」
京太郎「え?」
泉「……ああ、そらそうやんな。パン使ってお弁当くらい、普通やんなぁ」
京太郎「……い、いる?」アーン
泉「あー……って、アホ! なにさせんねん!」パーン
京太郎「ひどい!」
モブ子「じゃあ私が」アーン
京太郎「てめぇ!」
モブ子「はぐっっ! ふはははははっ、ほれはひははいへいふぞ! はらはら!」
京太郎「弁当箱返しやがれこらああああああああああああああ!」
京太郎「くそっ、なんて逃げ足の速い……」
泉「お気の毒さん」モグモグ
京太郎「無事だったのは、手に持ってたこの食いかけだけか……」チラッ
泉「………………」
京太郎「あ――」
泉「あかんで! 私かて、お腹空いてるもん!」
京太郎「……だよな」ショボーン
京太郎「はぁ……いまから学食行っても混んでて、席空くの待ってる時間ないだろうしなぁ」ウルウル
京太郎「……お腹空くなぁ、放課後まで保つかなぁ……」チラッチラッ
泉「……ああっ! もう! そんな目で見な!」
京太郎「泉! 信じてた!」
泉「ただ! 言うとくけど、半分はやらへんで! せやけど――」
泉「……おむすび一個と、これ……玉子一切れだけ、あげるわ」
京太郎「おおおぉ……ありがとう、ありがとうっ……」
泉「放課後までは、それで保つやろ?」
京太郎「ああ、十分だっ……ほんと、悪いな。今度埋め合わせするから」
泉「放課後でええやろ。部活前に、なんか奢ってや」
京太郎「学食?」
泉「放課後行くやろ?」
京太郎「うーん、部活遅れるとまずいし……そうだな、作るよりは早いし、そうするか」
泉「よっしゃ、決まりやな! 特別メニュー、高かったからなぁ」
京太郎「えっ、なにそれ。そんなのあるのかよ、レディースセットじゃなくて?」
泉「女子校にレディースセットて、普通の日替わりでええやろ」
京太郎「それもそうか。んで、特別メニューって?」
泉「なんやったっけ……千里山特製チョコレートパフェwithバナーヌおいしおいし、やったかな?」
京太郎「…………え?」
泉「千里山特製チョコレートパフェwithバナーヌおいしおいし」
京太郎「おいしおいし?」
泉「そこまで名前やねん。変わっとるやろ」
京太郎「うまいの?」
泉「さぁ……3500円もするから、誰も確かめてないねんて」
京太郎「たっけぇっ!」
泉「私があげた、オカン特製デカおにぎり、それくらいの価値ないか?」
京太郎「……あ、あります……」
泉「私の卵焼きもやったしな。十分等価交換やろ」フフン
京太郎「……えっ、これ泉が焼いたのか?」
泉「――――あっ」
京太郎「ほう……むぐむぐ」
泉「~~~~~~~~~~っっ! か、返し!」
京太郎「残念、もう食った。すっげーうまい」
泉「~~~~~~~~っっ///// あ、あほぉ!」
京太郎「もう一個食いてー」
泉「あ、うっ……くっ、あ、あと一個だけやで!」
京太郎「サンキュー」
「……なんやの、あの夫婦」
「ええい、茶をもてい! 飲まずにはいられない!」
モブ子「ふっ……私のやったチャンス、無駄にしていないようだな……」
「モブ子ちゃん、ええからお弁当返して来たら?」
モブ子「……もう箱だけだよ?」
~2月第三週水曜、放課後
京太郎「――といったことがあって、学食に寄ってました」
浩子「ほう」
泉「……思っとったより、千里山特製チョコレートパフェwithバナーヌおいしおいしが、量多くて……」
セーラ「あれ食ったんかー。俺も呼んでくれやー」
京太郎「3500が安いと思えたのは初めてですよ……なんなんすかね、あの量」
怜「それはともかく……別に部活とちゃうし、遅れてもええんやで?」
泉「……あっ」
竜華「……泉も、なかなか油断ならんなぁ」
泉「ご、誤解ですって! ほんまたまたまですっ、たまたま! 千里山特製~(ry、が食べとうて――」
浩子「目撃証言、モブ子」
モブ子「へい! えーっと、泉ちゃん一人じゃ食べらんなーいとかって、京太郎くんに食べさせてあげてました、同じスプーンで」
泉「!?」
怜「押せ押せやな」
泉「ちゃ、ちゃうんですて! スプーン一本しかもろてなくて、もらいに行くんも面倒で――」
セーラ「そ、そんなことしとったんか、学校で……やるなぁ」
竜華「な、なんちゅうことを……」ワナワナ
泉「そんな言い方してませんし! こんなん食べ切れへんわって、したら食べてくれる言うから、スプーン渡そうとして――」
怜「どやった、スガキョン。パフェの味は」
京太郎「あの量であの味なら、複数人で食べるべきでしょうね」
浩子「なんでレビューみたいな感想……」
怜「報われんなぁ、泉」
泉「そういう意図ないんですぅぅぅっっ! うわあああぁぁぁぁんっっ!」
京太郎「痛い」ヒリヒリ
セーラ「お前が悪いんちゃうか?」
京太郎「うーむ、泉はよくわかりませんね、いつもながら」
京太郎「しかしあれですね、パフェ食べちゃうと、ちょっと差し入れで甘い物作る気が……」
セーラ「!!」
京太郎「ま、別のもの作るにしても材料不足なんで。腹ごなしもかねて、買い物行ってきます」
浩子「はいはい、気ぃつけてー」
怜「完璧私用の買い物っぽいけど……まあ部活ちゃうし、ええんか」
竜華「そういえば、昨日はノータイムでパイ作ってたなぁ」
京太郎「ちょっと久々すぎて、選択肢忘れてまして……」
竜華「まあそういうこともあるて、ええよ。気ぃつけて行ってらっしゃい」
京太郎「あ――そうだ、竜華先輩も行きませんか?」
竜華「えっ!?」
京太郎「ほら、怜先輩とは一昨日会いましたし、昨日はセーラ先輩と行きましたから」
京太郎「今日は竜華先輩と、お出かけしようかと」
竜華「……なんやの、そのとっかえひっかえみたいなん……」
京太郎「そ、そういうことではなく……」
京太郎「卒業間近の先輩方と話せる、数少ない機会ですし……」
竜華「…………」
京太郎「えっと、ほら、先輩のよく行くお店とか、買い物の穴場とか、教えていただけたらなー、なんて……」
竜華「…………」
京太郎「……すいません、一人で行ってきます……」
竜華「ふふっ、うそうそ、冗談やって。一緒に行こ、京太郎くん」ギュッ
京太郎「っ!」ドキィッ
竜華「ふふ、制服で一緒に出掛けるんは、初めてやね」ギュー ムニュッ
京太郎「お、おっす、恐縮です」ドキドキ
竜華「緊張せんでええよ。ほな、行ってくるわなー」
怜「えらい嬉しそうなことで」
セーラ「竜華も背ぇ高いほうやけど、京太郎と並ぶと低く見えるなぁ」
浩子「あ、そうそう。ついでにドクペ、買うて来てもらえます?」
京太郎「は、はいっ、メッコーラですね!」
浩子「ちゃんと聞け!」
泉「……完全に舞い上がっとる……ふーんっ」
竜華「ふふー、どこ行こかな。あ、映画行かへん?」
京太郎「や、あの、買いだしですし……」
竜華「わかってるて。そやなぁ……あ、あっちの商店街、行ったことある?」
京太郎「え、そんなのあるんですか?」
竜華「あるでー。ほな、今日はそっちにしよか。案内するわ」
京太郎「はい、よろしくお願いします!」
竜華「ほんでなー、このお店は昔っから、私の家からよう来てて……こんにちはー!」
「はーい。あら、清水谷さんの竜華ちゃんやないの。久しぶりやねぇ、あら――」
京太郎「こんにちは。竜華先輩の後輩の、須賀京太郎と申します」
「ほっほう、なかなかのイケメンさん……竜華ちゃんのこれ?」b
竜華「そ、そういうんとは……違う、こともないんやけどぉ……まだ、はっきりとはぁ……」モジモジ
「あらまぁ、もうそんな年なんやねぇ……あ、ごめんねぇ、彼氏さん」
京太郎(……俺にはわかる、この人は否定しても、話聞かない類の人だ……)
京太郎(竜華先輩には申し訳ないけど、はぐらかしながら、話を合わせる感じにしよう……決定的なことは、言わないようにしてないと)
京太郎「いえ。先輩のおすすめってことで、寄らせていただきましたけど……いいお店ですね。見せていただいていいですか?」
「どうぞどうぞ。うちの人が、毎朝市場で仕入れてくるから、毎日新鮮、それにおいしいものばっかりやで」
京太郎「たしかに、これなんかズッシリしてて、瑞々しいです……ほら、竜華さんも見てください」
竜華「ややわぁ、瑞々しい肌やなんて……」
京太郎(言ってない……)
竜華「……ん? 竜華、さん?」
京太郎(あ、やべ……)
京太郎「す、すいません、竜華先輩っ……」
竜華「え、ええよ、別に! これからは、そっちで呼んでくれても……むしろ、そのほうが嬉しいし!」
竜華「京太郎くんと、距離縮まった感じするもん……な?」ニコッ
京太郎(うん、これは断れないな)キリッ
京太郎「……はい、竜華さん」
竜華「~~~っ! うん、いいやん! おばちゃん、気分いいから、これとこれ、あとこれもちょうだ~い♪」
「毎度~♪ あ、ご実家のほうにお祝い、また送っとくからねぇ」
竜華「ありがとう、おばちゃん」
京太郎(ほ、包囲網ががががが……)
竜華「どないしたん、京太郎?」
京太郎「い、いえ、なにも……京太郎?」
竜華「えっへへ、京太郎が先輩からさんにしてくれたから……私からも、ちょっと距離縮めてみました///」
京太郎(いいねっ)b
竜華「……あ、あかんかったら、やめとくけど……」
京太郎「そんなわけないじゃないですか。嬉しいです、竜華さん」ニコッ
竜華「京太郎……」ポー
「……はぁー、冬やのになんや、あっついなぁー」パタパタ
京太郎「はっっ! あ、す、すいませんっ、えと――その、このことはあまり……」
「大丈夫だいじょうぶ、おばちゃんこれでも、口はかたぁいから、安心して」ニッコニッコ
京太郎「………………」
京太郎「――では、これとこれをいただきます。こっちのは箱で、夜に……ここの住所に届けていただけますか?」ニコッ
「あらあら、毎度~。これは、清水谷さんとことちゃうねぇ?」
京太郎「あ、俺の家です」
「……ああ、そうやんねぇ。まだ同棲は早いもんねぇ」
京太郎「………………ま、まあ、まだ学生ですから。付き合うとしても、節度が大事だと思います」
「は~、しっかりしてるねんなぁ、おばちゃん感心したわ……ん、じゃあお値段ちょっとサービスで」
京太郎「ありがとうございます」
「ま、これはおばちゃんからのご祝儀よ。仲良くしてね」
京太郎「はい、もちろんです」
竜華「あ、当たり前やん!」
「ほなね~。今日はありがとう、また来てな~」
京太郎「はぁ……なんとか、上手く逃げられたかな?」
京太郎(そうでもない感じだけど……)
竜華「逃げられた?」
京太郎「あ、いえ……こっちの話です」
竜華「……ごめんな、誘ってくれたんが嬉しいて、変なこと言うてしもて」
竜華「あ、大丈夫やで。親とかには、ちゃんと説明しとくから……」
竜華「ただ――呼び方は、あのまんまがいい。私は京太郎って呼びたいし、京太郎には……竜華さんって、できれば竜華って呼んでくれてもええし」
竜華「それくらいは、近づいてもええんとちゃうかって……思ってる。勘違いやなかったら、やけど」
京太郎「……はい、もちろん。これからもよろしくお願いします、竜華さん」
竜華「っっ……うん、京太郎! おおきにな!」
京太郎「そんな、お礼なんて……それじゃ、そろそろ帰りましょうか」
竜華「むー、せっかく距離縮まったのに、なんか冷たない?」
京太郎「……もちろん、遠回りしてです。商店街のお店、ゆっくり見ながら、帰りましょう?」
竜華「っっ! うんっ、そうしよ♪」
~学校
京太郎「ただいま戻りましたー」
竜華「ただいまー。あー、寒かったぁ」
怜「おっつーん」
セーラ「おわっ、気ぃついたら、雪降ってるやん!」
泉「清水谷先輩、お疲れさまでしたー」
京太郎「……あれ、俺には?」
泉「はっ」
京太郎「えええええ……」
浩子「これはしゃーないで……あ、ドクペは?」
京太郎「メッコーラじゃなかったですっけ?」
浩子「話聞け言うたやろぉ――っ!」
京太郎「じょ、冗談ですっ……これ、どうぞ」
浩子「ったく……」
京太郎「ふぅ、こわいこわい」
竜華「あかんで、先輩からかったりしたら」
京太郎「すいません、竜華さん」
竜華「まあ私やったらかまへんけどな、京太郎やし」
京太郎「ははっ、ありがとうございます」
イチャコライチャコラ
怜「」
セーラ「……なにがあったんや」
泉「くっっ、ぐぅぅっっっ……」
浩子「……絹ちゃんとヒロちゃんに……いや、監督に言うといたらええか」
京太郎「竜華さんは優しいから許してくれたけど、あまりポロッとさんづけで呼ばないようにしないとなぁ」
京太郎「照さん、シロさん、絹恵さん……それ以外、派遣先じゃない人たちをそう呼ぶから、たまに出ちゃうんだよなぁ、反省しないと」
京太郎「さて、と……そろそろ休憩の時間ですね。たこ焼き作ってきます」
セーラ「いよっしゃ!」
怜「もうちょい慎もうや」
竜華「はしたないなぁ」
セーラ「」
浩子「女子の制服、着ます? 落ち着けますよ」
セーラ「着るか、そんなもん!」
泉「私らが毎日来てるもんを、そんなもんて……」
怜「スガキョンはどう思う?」
京太郎「セーラー服っていいですよね」
怜「」
竜華「」
浩子「」
セーラ「おい」
泉「うわぁ……」
京太郎「なんでそんな反応!? 普通に答えただけじゃないですか!」
怜「いや、普通はセーラに似合うとか似合わんとか、そういう答えやろ?」
京太郎「そんなもん扱いについてだと思ったんですよぉぉぉっ!」
浩子「まあ、セーラーフェチなんはわかりましたけど……江口先輩に似合うとは思うか?」
京太郎「フェチとかじゃないのに、一般論として可愛い服だって思っただけなのに……まあ、セーラ先輩にも似合うと思いますよ」
京太郎「それじゃ、俺は仕事に行ってきます……うぅぅぅ……」
泉「意外にも、ダメージ大きかったですね。悪いことしたかな……」
竜華「でも困ったなぁ、春から着られへんやん……」
怜「こっちに顔だすときだけ、着たったらええやん? 大会の応援とかでも」
セーラ「お、俺は絶対着やへんからな!」
浩子「似合うと思うて、言われましたけど?」
セーラ「うっ……い、いや、関係ないで! 着やへんからな!」
怜「あら、こんなとこに予備のセーラー服が」
竜華「あらまぁ、セーラにピッタリやないの、サイズ」
セーラ「!?」
泉「すいません、先輩!」
セーラ「泉ぃ!? は、謀ったな! 離さんかい!」
浩子「まぁまぁ、すぐ済みますよって。あ、写真撮るだけなんで――構いませんよね?」
セーラ「いいわけあるかアホおぉぉ――っ!」
京太郎「……なんか、部室で楽しいことが起こってそう……いいなぁ……」
京太郎「いや、気持ちを切り替えろっ……上手く作れれば、先輩のセーラー服姿が……」
京太郎「だぁぁっっ! 雑念を入れるなっ、集中しろぉぉっっ!」
京太郎「お、お待たせしました……黄金たこ焼き、ポン酢仕立てとソース仕立て、お好みで七味、マヨネーズ、ネギ塩コショウ、柚子スコ、各種ご用意しております」
泉「……なんで頭に包帯?」
京太郎「雑念を払おうと思ってな、壁に頭突きした結果だよ」フッ
泉「なんでかっこよく言おうとしてるん……かっこようないで?」
京太郎「うるっせーよ! 知ってるよ! くそう!」
怜「……いや、それは自分わかってないやろ」
竜華「かっこいいのに……」
浩子「言うたら調子乗りますって。このくらいの謙虚さが、またええんですし」
怜「一理ある」
竜華「でもちょっと、俺ってかっこいいやろ? 的な京太郎くんも見てみたい」
浩子「そういうんは、アイドルになったときにでも、させてみたらええんとちゃいます?」
竜華「アイドル……プロデューサー……うっ、頭が……」
京太郎「?? ま、いいか……」
京太郎「あ、セーラ先輩。どうぞ、先輩のぶ――どうかされました?」
セーラ「京太郎か……いや、なんでもないねん……ちょっとな、俺の尊厳の問題で……ええねん、気にせんといて……」
京太郎「な、なにがあったんですか! なにか、誰かにひどいことでも!?」
セーラ「ああ、まぁな……そや、京太郎……もし俺が、無理やり女装させられても、嫌わんといてくれるか……?」
京太郎「えっ」
セーラ「はは、なんやその反応……まあそうやんな、俺の女装なんか、おかしいだけや……」フッ
京太郎「……いや、それ普通に、制服着たのと変わりませんよ。夏の大会だと、着てたじゃないですか」
セーラ「それはそ――ちょお待て」
京太郎「えっ」
セーラ「なんでそれ知ってんねんっっ! お前あれやろっ、Bブロックやったやんけ!」
京太郎「あ、阿知賀の打ち筋研究のビデオとかで、セーラ先輩の制服姿はっ……あと、阿知賀にいたとき、夏の写真見たとき、写ってたりで――」
セーラ「」
京太郎「えっと……お、お似合いでしたよ、とても。だからさっきも、そう言ったんですし――」
セーラ「お……」
京太郎「お?」
セーラ「お外走ってくるうううううううううううううううううううっっ!」
京太郎「セ、セーラせんぱああああああああい!」
怜「……ま、腹減ったら戻ってくるやろ」
浩子「すでに減ってましたし、すぐでしょうね」
泉「食べながら待ってましょうか」
竜華「んぅ、おいひ~♪ やっぱり京太郎のたこ焼きは格別やなぁ」
京太郎「あれはなんだったんですか……」
竜華「ちょっとなぁ、不幸な事故があって……」
泉「人災でしたけど……」
京太郎「ダメですよ、無理やり着替えさせるとかは」
竜華「着替えさせてはないで」
京太郎「あ、そうでしたか……すいません、疑っちゃって」
泉「……無理やり着させてたからなぁ」
京太郎「」
竜華「素直に着替えてくれたら、そうはならんかったのに……」
京太郎「な、なな……なにやってんですか!!」
竜華「!! い、いやっ、ちゃうねんて! 確かに嫌がってた、せやけど……本気ではなかった、それは間違いないねん!」
京太郎「犯人はみんなそう言うんですよ!」
泉「……まあ、私も嫌がってるいうようには見えんかったけど」
京太郎「じゃあなんで、外ダッシュ行っちゃったんですか」
竜華「そら……恥ずかしいからやろ」
京太郎「やっぱり嫌がってるじゃないですか!」
泉「――言うても、来年からプロ行かはるわけやん? そこで、もしかしたらチームの広告として、そういう仕事もあるかもしれへんし」
竜華「それまでの慣らしをしたらんとなぁ、て……これも、本人のためやで」
京太郎「む……たしかに、それなら仕方ないかもですね……でも、無理やりはよくないですよ」
京太郎「お二人だって、無理やり――たとえば俺に、なにか恥ずかしい格好させられるとか、最悪でしょ?」
竜華「えっ」
泉「なっ――」
京太郎「ですから、そういうことは慎みましょうよ。セーラ先輩が戻ってきたら、謝ったほうがいいです」
京太郎「で、自主的に着てもらえるよう、理由をきちんと話せばいいじゃないですか」
竜華「………………」
泉「………………」
京太郎(おやぁ? 黙って聞いてるはずなのに……なぜか、話を聞いてくれてない気がするなぁ?)
竜華(は、は、はは、恥ずかしいカッコて……や、やっぱり、あんな……い、いや、ひょっとしたらあんな――あかん、拒めへん……どうしよっ////)
泉(無理っ……そ、そんなん、無理やっ……けど……どうしても、言うんやったら――って! あ、あかん! やっぱりあかん!)カァァッッ
京太郎「…………」
京太郎「それにほら――恥ずかしがりながらも、自分のために自主的に着てくれるって、そのほうがいいじゃないですか」
竜華「」
泉「!?」
京太郎「無理やりっていうのは、どうも趣味じゃなくて……だからやっぱり、セーラ先輩は可哀想だったなーって……」
竜華「……かった……」
泉「……い……くや……」
京太郎「はい?」
竜華「わ、わかった……そういうこと、やったら……その……どんな、格好でも……が、我慢するわ!」カァァッ
京太郎「えっ」
泉「最悪やっ……って、思うのにっ……そんなんっ、断りにくい言い方して……っ」
京太郎(どこが!?)
京太郎「っていうか、落ち着いてくださいよ!? そういう格好してくれとかじゃなく、その……本人の意思を尊重するのが大事だってことを――」
竜華「だ、だから――」
泉「し、したるて言うてるんやろ! な、何回も言わしなや!」
京太郎(話聞けぇぇぇ――っっっ!!!)
竜華「それで、その……どんな格好なん! せ、制服系か、それか……職業っぽいのんか……」
泉「せめて普通に服がいい……それなら、アニメ系のコスプレでも許すからっ……下着とか水着は、なしの方向でっ……」
京太郎(…………晩ご飯、なににしようかなぁ)
――なんて現実逃避は認められず、二人を正気に戻すのに、苦労させられた。
なんとか、特殊な趣味はないってことは、理解してくれたようだ。
でも泉のナースとか、竜華先輩の巫女は見てみたかった。(小並感)
セーラ「ハァー、ハァー……戻った、で……」
京太郎「お疲れさまです。あ、これ先輩のたこ焼きです」
セーラ「あ、うん……おおきに」
セーラ「っっ! ふはぁっ、時間経ってもうまいなぁっ、生き返るわ!」
京太郎「そりゃもう、そういう風に作ってますから」
怜「っていうか、どこまで走ってたんや。もう練習時間ないで……」
泉「そろそろ帰ったほうがええですね……」
浩子「そういえば、オバ――監督、顔ださはらへんかったなぁ」
竜華「テスト中は、いつもこんなもんやで。テスト作りもあるけど、質問ある子が職員室来たとき、おらんかったら困るやろからって」
京太郎「なるほど、さすが監督……さて、それじゃ戸締りして帰りましょうか」
浩子「そうやな。先輩方も、忘れもんないようにお願いします」
竜華「はー、外寒いんやろなぁ……京太郎、腕貸してー」ギュッ
京太郎「っ……それ、俺があったかいだけなんですけど」
竜華「そうか? 私はこれ、あったかいけど……あかん?」ギュゥ ムニムニ
京太郎「ま、まさかぁ、はははは。竜華さんがいいなら、いつまででもどうぞ」
竜華「よかったぁ」ニヘー
泉「ぐぎっ、ぐぎぎぎぎっ……」
浩子「はいはい、どうどう」
怜「えらい仲ようなって、まぁ……うちにも、させてくれへんかなぁ」ジー
セーラ「ふぅ、うまかったー。おーい、京太郎、皿どうする?」
怜「あの状況に話しかけるんか……やるなぁ」
京太郎「おっと、そうだった……すぐに洗ってきちゃいますので、先に帰っててください」
竜華「えええええ……」
京太郎「すみません、でもすぐですから」
竜華「わかった……早めにしてな?」
京太郎「はい、すぐに追いつきますよ。俺のことは気にしないでください」
浩子「……これは……」
怜「死んだなぁ……惜しい人を失くしたわ」
京太郎「死にませんよ!」
京太郎「一瞬で終わりっと……さて、すぐに追いかけるか」
浩子「お、生きとったか、よかったわ」
京太郎「浩子先輩、待っててくださったんですか」
浩子「みんなもゆっくりやから、まだ見えるとこにいるで、ほら」
京太郎「あ、ほんとだ……なんかすみません」
浩子「……まあ、夜道は暗いしな。男と一緒のほうが、危なないやろ?」
京太郎「そうですね、俺でも役に立てるなら、しっかりお守りしますよ」
浩子「園城寺、清水谷先輩は言うまでもなく、江口先輩も顔立ちは整ってるし、泉もあれでなかなかやからなぁ」
京太郎「……そうやって意図的に自分を弾くの、ちょっと嫌味っぽくも聞こえちゃいますよ」
浩子「なんでやの」
京太郎「自覚の有無はともかく、先輩は掛け値なしに美人の部類ですから」
浩子「なっ――」
京太郎「従姉妹のお二人や、監督ともそっくりですしね。先輩は、お三方がそれほどでもないって思ってます?」
浩子「ぐっっ……な、なかなか上手いこと持っていくなぁ……」
京太郎「ありがとうございます」
浩子「はぁ……まぁそれでも、あとは振舞いとか華があるかとか、スタイルの良しあしも絡むやろ」
京太郎「たしかに、絹恵先輩と監督のは……」ポワー
浩子「……ほう」
京太郎「じょ、冗談で(もないけど)……」
浩子「まあええよ。絹ちゃんと監督は、たしかにそうや。ヒロちゃんも、言動は色々とあれやけど、可愛いとこも多いしな」
京太郎「はい、それに対局中は目が離せないですし」
浩子「うん、せやろ。だからこそ、やろなぁ……三人と比べると、地味に思ってまうことはあるわ」
浩子「――あんたも、そういうとこあるやろ?」
京太郎「オレェ?」
浩子「……京太郎くんは、ほんまに全国レベルの実力がある。せやけど、清澄での環境とか、夏・秋での結果を受けて、自分のいまの実力を計れてない」
京太郎「俺は、別に強くなんて――」
浩子「ちょっと嫌味に聞こえるで?」フフフッ
京太郎「うっ……意趣返しですか」
浩子「自信持ちや、いうことや」
京太郎「その言葉、そのままお返しします」
浩子「あほ、さっきのはあんたの推測やろ? 部員の中でうちを外して言うたんは、言うまでもない美少女やからや」
京太郎「――なるほど、それは失礼しました」
京太郎「では、夜道に危険がないよう、しっかりと護衛させていただきます」
浩子「うむ、よきにはからうよーに」
京太郎「行きましょう、遅れると見失っちゃいます」キュッ
浩子「気安ぅ手を……」
浩子「……ま、ええか」タタッ
~2月第三週水曜
京太郎「……そういえば、部室で全然勉強できてないな……大丈夫かな」
京太郎「一応、予想問題は作ってみたし……ちょっと解いてみるかな、テストまでに」
京太郎「それはそれとして――ちょっと時間ができたな、なにかしたいとこだが」
京太郎「ふむ、今日はメールにしておこうかな」
京太郎「なんたってメールの利点は、複数に送れるってことだ……便利な世の中だよなぁ」
京太郎「小学校のときはまさか、こんな時代がくるなんて想像もしてなかったぜ」
京太郎「そういえば、前に送ったとき……家族の方にはなにも言わなかったけど、見られてて、なにか言われたとかないかな」
京太郎「うーん、考えるとちょっと不安になってきた……」
京太郎「――ってことで、メールしてみました。なにかありませんでした?」
『ええとこ気づいたなぁ』
『実はオカンに見られとってなぁ、会わせぇ、紹介せぇてうるさいねん』
『来月には別の県に行くから、言うてんねんけどな』
『まあ迷惑やなかったら、そのうち遊びに来てええで』
『あ、オカンがおるときな。おらんときはあかんで、まだ』
京太郎「うわちゃ、見られてたか……けど、余計な心配かけたとかじゃなくて、安心だな」
京太郎「さて、なんて返すか――」
京太郎「――よし、それなら……」
京太郎「手土産ご用意して、ご挨拶に伺います。つきましては、お母さまのお好きなものなど――」
『』
『いや、あの……ちゃうで? そういうんやなくて、普通に……後輩やって、紹介するだけで……』
『ああ、ちゃうわ。わかってるやんな、そんなん……さっきのはなしで』
『オカンは栗ようかんが好きやったような気ぃするわ。あとプリンやったかな』
『来るんはまあ、ええねんけど……その、変なこと言いなや? わかってる思うけど』
『あ、料理やったら麻婆豆腐やて。甘いんか辛いんか、どっちかにせぇいうねんなぁ、ほんま』
京太郎「なるほど……つまり、甘い物をデザートにお持ちして、晩御飯に中華をご用意すればいいんだな、了解りょうかい」
京太郎「ふふ、この日のため――ではないけど、中華も練習してんだよな。腕を振るうチャンスだぜ!」
怜「……あかんで、怜……竜華が、うちよりも大事なもんを見つけたんや。うちが邪魔するんは、あかん……」
怜「なーんて、うちのガラちゃうしなぁ……うちもスガキョンわりとお気にやし、これ家に来たら、とんとん拍子でなるようになるんちゃうかな」
怜「ふふふーん、おもろなってきたでー♪」
京太郎「まだ時間あるよな……で、こういうときに思い浮かぶのが、なんでか憧なんだよなぁ」
京太郎「ツンケンしてるしさー、生意気だしさー、乱暴なんだけどなー」
京太郎「なんかこう……思いやりがあるというか、いいやつだよなぁ……かわいいし」
京太郎「――い、いや、最後のは違う……ああっもう!」
京太郎「……そうだな、まあ適当でいいか」
京太郎「いまなにしてる?」
『い、言うわけないでしょ! ヘンタイ!』
京太郎「!?」
京太郎「」
京太郎「………………」
京太郎「……あ、その、悪かった。忘れるから、うん 」
『!?』
『あ、あああ、あっ、あのねぇっ! あんたがなに勘違いしてるか知らないけどね!』
『違うからね! そういうんじゃないから!』
『お風呂入ってただけだし! もう出たし!』
『だから、か……勘違いしないでよ!』
『あっ! お、お風呂上がり想像するのもやめてよっ、ヘンタイ! バカ! さいってー!』
京太郎「……あ、トイレじゃなかったか」
京太郎「っていうか、そんな想像してねーよ。バーカ、自意識過剰なんだよ、お前は」
京太郎「そういうことは淡みたいに、Dになってから言え」
『……えっ、あのコD乗ったの? マジで!? っていうかなんで知ってんの!?』
京太郎「いや、もうちょいで乗るってだけらしいけど。お前も頑張れよ」
『なっ……』
『~~~~~~~~~~~~っっ、うるさい! 余計なお世話よ!』
『アホ! 覗き魔! デリカシーゼロ!』
京太郎「話題に食いついてきたの、お前だろが……いや、けど言いすぎか、さっきのは」
京太郎「すまん、言いすぎた」
『……こっちも、ゴメン。お風呂中にメール来るから、ビックリして……』
『頑張るから。私』
『乗ったら、報告するから』
京太郎「…………いや、いらねーよ。ってか恥ずかしいだろ。そんで俺はどうリアクションすればいいんだよ」
京太郎「…………あー、なんか疲れた……早めに寝るか」
憧「もうちょい、もうちょい……育てっ、育てっ……淡には負けないからっ、絶対!」
望(ファイトよ、憧……)
京太郎「はぁ……あ、そろそろ近況メールも送らないと」
京太郎「来月から、生活環境変わる人多いしな、連絡はマメにしないと」
京太郎「……内容については、さすがに省略で……」
京太郎「さて寝よう……今夜はおもちの夢が見られたらいいなぁ」ムニャムニャ
~2月第三週水曜、終了
【2月第三週水曜】
本日も、買いだしと差し入れ、あとは勉強をしていた。
途中、何度か他校の方とも連絡し、問題の質問をし合ったりもする。
効率よく勉強できるし、こういうのは大歓迎だ。
そうそう、よく質問のある問題は、ここで解説しておきます。
まず――。
…………
『そういうことすると、またいっぱい質問くるんじゃないの? 気をつけなさいよ』
『日誌でまでテストー? もうやだー!』
『嫌がるほど勉強してないだろ、お前……』
『わかりやすい……ありがとう、京ちゃん』
『! 私も助かったよ、京ちゃん!』
『京ちゃん、今日のお菓子は?』
……さすがにこれ以上は、京ちゃん呼び増えないよな?
いや、困るとかじゃないけどさ……連呼されると恥ずかしいぞ、わりと。
『京太郎くん、この問題の解説もお願いできるかなぁ?』
『ごめん、こっちもお願いできたら……』
『二年って、あんまり質問してない? なら、ここの解説してほし……』
あ、一気に二年が増えた。
んー、まあこれくらいなら今日中にいけるかな。まずは――。
『……面倒見がいいのは構わないが、それで自分を疎かにしないようにな』
『そうねぇ。まあ、自分のためにもなるから、なんて言いそうだけれど』
『それ、本心の場合と気遣いの場合があるから。ちゃんと見極めてあげてね、近くの人たち』
『わ、わかりました』
……気遣いでなんて、言ってませんよ?
って言っても、信じてくれなさそうだなぁ。
俺なんかよりよっぽど、皆さんのほうが気遣ってくれてんだよな。ありがたいことだ。
――――――――
~白糸台
「げー、キョータローからメール……」
「どうして嫌そうなの、淡の贅沢者」
「だってさー……ほらーっ、テストのことだよー!」
「心配してくれてるんだ、感謝するところだろうに……おっ」
「……ふふ、わかってるさ。大丈夫、心配は無用だよ……」
「弘世先輩にも届いたみたいだね」
「受験生と、心配そうな同級生かぁ……わかってるね、京太郎くん」
「……どうして私にはこないの」
「いや、ですから受験生と心配そうな――」
「私だって不安なのに。来月から、恵比寿入りだよ?」
「……なら、来月来るんじゃないですか?」
「なるほど!」テルンッ
「……これでメールなかったら、私のせい?」
「責任重大だね、部長」
~永水 霞
「……もうっ、またなの? しょうのないコなんだから……ふふっ」
「?」
「あ、ごめんなさいね。ちょっと席外すわ、すぐに戻るから……」スッ トトトト
カシャッ カシャッ ソウシーン
「――
霞さん、京太郎くんのメールのあと、いっつもどこでなにしてるんです? 席外してますけど」
「え゙っ……な、なにもないわよ?」カァァッ
(あやしい……)
(あやしい……)
(この問題、難しいです……霞ちゃんも巴ちゃんも忙しそうで、聞けません……)シュン
「そ、そんなこと気にしてないで、追い込みかけないと、ね?」
「……まあ、そうですね……」
「むー……」
「どうしたんですー、はるるー?」
「なんでも……ただ、霞さんにお願いでもしてるなら……私にも、してほしいなって……」
「霞は母性の塊ですからねー。そもそも京太郎は、同級生には甘えませんしー」
「だからこそ……甘えて欲しいのに……」
「ま、はるるはまだまだ幼いですからねー」ポンポン
「……初美ちゃんに、言われたくない」
「な、なんでですかー! これでも最年長ですよっ、最年長!」
~宮守
「あ……はぁ、仕方ない。荷物まとめよう」
「えっ、どうしたの急に」
「ヤルキ、デテル!」
「京太郎くん?」
「うん。塞たちに迷惑かけちゃダメだって」
「さすが、よくわかってるよー」
「ちゃんと返事した?」
「もちろん。それなら京太郎がこっち来てよって――」
「もしもし、京太郎くん? いいからっ、来ないでいいから! そうさせるくらいなら、私たちがやるから!」
「そうだよ! そっちはとにかくテスト勉強! 終わったら練習!」
「シロのお世話くらい、任せてほしいよー」
「英)京太郎は少しくらい自分のことを考えて。ワガママ過ぎかなって思うくらいが、ちょうどいいわよ」
「いや、あの……冗談、なんだけど……」
~阿知賀
「京太郎くん、なんて?」
「玄ちゃんが無理しないように、いいところで止めてあげてって~。玄ちゃん、無理してない?」
「大丈夫なのです!」
「その玄には、京太郎なんて?」
「なにかわからないところがったら、聞いてくださいって。だから日誌で聞いちゃった~」
「……そうよね。普通メールだったら、そんな話になるわよねぇ……」
「? どしたの憧、顔赤いよ?」
「!? べ、べべ、別に!?」
「そっかー。体調悪いなら、無理しないでね!」
「はいはい、どーも。けど私が見ないと、あんたのテストやばいでしょ」
「うっ……ま、まあそうなったら、京太郎に聞くことにする!」
「だーめ。あいつはほかにも教える相手がいっぱいいるんだから、あんたは近くにいるあたしを頼んなさい、わかった?」
「ちぇー、はーい」
「よろしい、それじゃ再開ねー」
「………………」
「? どしたの玄、憧のことジッと見て」
「まさかとは思うけど……いややっぱり……」
「ん?」
「憧ちゃん……もしかしたら、カップサイズが――」
「……玄ちゃん?」
「!!!! な、なんでもないのですっ、お姉ちゃん!」カタカタ
「よろしい」ニッコリ
~姫松
「あ、由子ー。これ、聞いといた問題、解説転送しとくわ」
「助かるのよー」
「なんやなんや、年頃の女が男とメールして、色気ないやり取りしとんなぁ!」
「メールせんよりマシです」
「」
「そやで、おねーちゃん。私もそんな、い……色気あるやり取りとかは、してへんもん」
「近況知らせ合う、くらいやんなぁ」
「私も~」
「代行まで!?」
「……もしかして、私らだけ……メールできてへんのー?」
「やめえええ! ちゃ、ちゃうやろ、これは……ああああ、なにをしとんねん、京太郎はぁっ!」
「おねーちゃんも真瀬先輩も、自分からしてみたらどうやろ?」
「あかんで絹ちゃん、二人ともわりとヘタレやから……」
「だ、誰がヘタレや!」
「私は恭子が聞いてくれるから、特に言うことないだけやし……」
「ほな――洋榎、メールしてみたらどうです? 色気あるん、お願いするわ」
「ぐっ、ぐぬぬぬぬっ……」
「ちょっと興味ありますね。色気ある、洋榎先輩のメールて」
「お姉ちゃん、意外に純情やからなぁ……会いたい、とかそういうのんとちゃう?」
「!?」
「シンプルやけど、可愛くてええんちゃうかな~」
「いいですね。ほな洋榎、さっそく送ってみ――」
「お、お、送るかアホおぉぉぉっっ!」
~千里山
「どないしたん怜、携帯ジッと見て」
「スガキョンがうちに挨拶来たいて」
「」
「なっ――」
「……それはどういった?」
「オカンに会いたいらしいわ」
「……ガチで?」
「ガチや」
「そ、そ、そんなオカルトありえへんやろ!」
「せ、せ、先輩っ、それ原村のネタです」
「一巡先と怜ちゃんの時点で、オカルトない言われてもなぁ」
「まあ落ち着けて。この前、買いモンの帰りに送ってもろたんやろ? その関係ちゃうんか」
「お、セーラにしては鋭いなぁ、正解や」
「にしてはって、どういう意味やっ」
「な、なんやそうかぁ……もう、脅かさんといてや」
「そうは言いますけど、実際挨拶に行って、お母さんが気に入らはったら、色々トントン拍子ちゃいます?」
「ほら、監督とこも。絹ちゃんヒロちゃんは、両親公認みたいなもんらしいですし」
「」
(船久保先輩えげつないわぁ)
(実際、自分も落ち着いとらんくせになぁ)
「どうなるかはわからんけど……あれや、早いもん勝ちでええやろ、こういうんは」
「え、ええけどっ……いや、やっぱりあかん!」
「どっちですのん」
(竜華からかうんは面白いなぁ)
~2月第三週木曜
京太郎「――そういえばさ」
モブ子「んぉ?」
京太郎「なんだその声……いや、最近なんだけどさ、泉があんまり殴ってこない」
モブ子「なにその、殴るの前提みたいな話」
京太郎「実際そうだったからな……で、それが減ってきたなー、と」
モブ子「いいことじゃん」
京太郎「ああ、まあ俺は助かるが……それであいつが無理してないか、ちょっと気になる」
モブ子「人を殴らないのが無理してるって、かなりやばいしょ」
京太郎「そういうことではなく」
京太郎「殴っても俺がわからないから、諦めて接触回避してるのかなー、なんて」
モブ子「はぁ、そうなんじゃない?」
京太郎「えっ……い、いや、そんなわけないだろっ?」
モブ子「じゃあ違うんじゃない?」
京太郎「いい加減だな、おい」
モブ子「本人に聞けばいいじゃん」
京太郎「状況にもよるんだけど……殴られてたようなシチュで殴られなくてさ、聞こうとするだろ?」
モブ子「ほむほむ」
京太郎「真っ赤になって逃げるんだよ、あいつ」
モブ子「」
京太郎「怒らせてんのか、嫌われたのか……その辺がわからないのもきつくてな。まあ、普通の会話とか勉強の話はできるんだけど……」
モブ子「だめだこいつ、はやくなんとかしないと……」
京太郎「だよなぁ……」
モブ子「おめーのことだよ」
モブ子「あっ……ほれ、ちょうどいいとこに本人いるじゃん。聞いてみんべ」
京太郎「へ?」
モブ子「うぉーい、いずみーん!」
泉「ん? ああ、おはようさん」
モブ子「こっちのおバカがあんたのこと気にしてんだけど、なにかあった?」
泉「!?」
京太郎「おまっ!」
泉「……べ、別に、そんなんちゃうし……」カァッ
モブ子「けど殴られないって、寂しそうだけど」
泉「マゾか!」
京太郎「マゾか!」
モブ子「マゾでしょ?」
京太郎「ちげーよ!」
泉「えっ、サドなんや……ちょい引くわ」
京太郎「マゾより!?」
モブ子「ちょっとー、朝からマゾとかサドとかやめてよー」
泉京太郎「お前が言うなああああああああ!」
モブ子「だ、ダブルで突っ込まれちゃった////」
京太郎「はぁ……まあ、とにかく……泉の元気がないかなと思って、ちょっと気になってんだよ」
泉「……そうかぁ……ん、おおきに。けど平気やで。ただ、勉強疲れが出とって」テヘヘ
京太郎「ほんとに?」
泉「ほんまやって。またテスト終わったら、いつも通りや」
京太郎「そんときは、俺――」
泉「……ああ、そやったな。でもええやん」
泉「電話でもメールでも、ちゃんと反応するから」
泉「ちゃんと、連絡してな」
京太郎「……おう」
泉「どしたん?」
京太郎「やっぱ、お前変わったなと思って。前はもっと、ツンケンしてたじゃん」
泉「……京太郎くんに慣れた、とかちゃうかな」
京太郎「俺って、慣れいるような存在なの?」
泉「うん」
京太郎「」
泉「ぷっ……冗談やって。でも、最近はちゃんと……ええ男やなって思ってるから」
京太郎「えっ」
泉「――さ、さーて、学校行こか! テスト前やし、時間は大事やでー」
京太郎「……だな、行くか」
モブ子「……やれやれ、手間のかかる奴らだぜ」
~2月第三週木曜、昼
京太郎「泉ー」
泉「なに?」
京太郎「これ、前のお返しな。よかったらデザートにでもしてくれ」
泉「えっ……いやっ、パフェ奢ってもろたやん!」
京太郎「あれ、結局俺も食っちゃったしな。あとこれ、俺も今日、おむすびにしてみたから、よかったら食ってみてくれ」
泉「……なに企んでるん?」
京太郎「た、企んでねーし!」
京太郎「だから……朝言った通りで、まあ……色々心配して、対策してみた結果がこれだ」
泉「はぁ……あのなぁ――」
京太郎「おっ、殴る? いいよこいよ!」
泉「殴らんわっ、あほ! とにかく、これはありがたくもろとくけど――」
京太郎「あ、ちゃんともらってくれんのね。ま、食欲があるのはいいことだ」
泉「うぐっ……とにかく、心配はええよ。勉強いややなー、とは思ってるけど……身体は元気やからな」
京太郎「……みたいだな。安心したよ」
泉「心配性やんなぁ。よそでもそうなん?」
京太郎「いや、そんなことない――よな?」
モブ子「微妙」
泉「なんでモブ子ちゃんに聞くん?」
京太郎「色々と事情があって……」
泉「? まあええか……」
泉(――あれ? けど、よそではそうでもないって……それは、その……私、やから心配してる……いう、こと?)カァッ
泉「…………」チラッ
京太郎「?」モグモグ
泉「~~~~っ」カァァッ
京太郎「どうしたー。熱でもあんのか?」スッ
泉「!? さ、触らんでええっ」パーンッ
京太郎「おうっ……」
泉「あ、ご、ごめん! かんにんや!」
京太郎「……いいね! それでこそ泉だ!」バチコーン
泉「なんでそんな反応やねん!」
京太郎「泉の調子も戻ったようで、なによりだ」
京太郎「屋上に来れば、竜華さんに会う確率が高い――そんな情報を鵜呑みにして、ホイホイ屋上に来たわけだが」
竜華「正解やったなぁ、京太郎」
京太郎「はい、正解でした」
竜華「……気持ちええ?」
京太郎「そりゃもちろん……っ……こんなことされて、気持ちよくないわけないです……」
竜華「ふふ、遠慮せんでええよ。いつでもしてあげるからなぁ?」
モブ子「――い、いかがわしい行為禁止!」バーンッ
竜華「……は?」ナデナデ
京太郎「へ?」ゴロゴロ
モブ子「…………あれ?」
モブ子「……ヒザマクラ?」
竜華「うん」
京太郎「見りゃわかるだろ」
モブ子「膝枕ソムリエールの、園城寺先輩絶賛の太ももで……?」
京太郎「あの人さすがだわ。もう、ほんと……やばい、溶けそう……」
竜華「大袈裟やって//// でも、喜んでくれて嬉しいわぁ……毎日お疲れやもんな。ゆっくり休んでなぁ」
京太郎「ありがとうございます……はぁ、癒される」
竜華「ふふ、頭撫でてええ?」
京太郎「お願いしたいくらいです」
竜華「よーしよーし……綺麗な髪やねぇ」
京太郎「竜華さんほどじゃないですよ」
竜華「んー、私もたまに枝毛が……あ、今度よかったら、触ってみる?」
京太郎「いいんすかっ!?」
竜華「ええよぉ、京太郎やったらいつでも」
京太郎「それじゃ、せっかくだし櫛の用意もしておきますね。嬉しいです……竜華さん」
竜華「私もやで、京太郎……」
モブ子「>そっとしておこう」
~2月第三週、放課後
京太郎「はぁ~……さすが竜華さんの膝枕だ……」
怜「ほう、スガキョンも味わってしもたか……」
京太郎「あれはやばいですね。国宝にすべきじゃないですか」
怜「それはうちも常々思ってたけど……そうなると、気軽に寝られへんようになるからなぁ」
京太郎「!! そ、そうか……実用できないとなると……むやみに申請できないですね」
怜「悩ましいとこや……」
泉「……あの――」
浩子「無視や」
セーラ「本人はどうなん、あれ」
竜華「えっ? まあ……ええんちゃうかな、冗談やろうし」
竜華「それに褒めてもろて、悪い気はせぇへんなぁ」ニヘー
セーラ「ええんかい」
浩子「清水谷先輩も、なんやかんやで無防備ですしね……」
泉「足か……私も、もうちょい……」
怜「泉のは全然なってないで」
泉「」
京太郎「よし、またあの膝枕で癒されるためにも……俺はやるぜ!」
京太郎「さて――たまには真面目に勉強するか」
浩子「日頃からせえ」
京太郎「うっす」
泉「いや、普段からしてますよ、京太郎くんは」
浩子「ほーん、随分甘いんやなぁ」
泉「そ、そういうことちゃいますけど……」
京太郎「いや、だけど普段、この時間はあんまり集中してなかったからな、いい機会だろ」
浩子「ま、熱心なんはええことや。しっかりやりや」
京太郎「えっ、浩子先輩も一緒にしましょうよ、勉強」
浩子「うーん、私は誰かに聞いたり教えたりより、一人で集中するタイプやからなぁ」
京太郎「みんなでやったほうが、楽しくないですか?」
浩子「勉強は楽しくないもんやろ」
泉「なんちゅう身も蓋もないことを……」
京太郎「そうですか……残念ですけど、無理強いもできないですよね」シュン
浩子「…………ま、まあ? その……せっかく部室で勉強するんやから、たまには……人と勉強するんも、ええとは思うけどな?」
京太郎「やったぜ」
泉「……先輩」
浩子「た、たまにはええやろ!」
泉「ハイハイソーデスネ」
怜「……さて、後輩らが勉強しとるわけやけども。うちらはどうする?」
竜華「……教えたる、いう流れで強引に絡めへんやろか」
セーラ「俺の学力でか……京太郎には、なんも教えられへんな」
怜「フナQにもな」
竜華「下手したら泉にもなぁ」
セーラ「」
京太郎「それじゃ――とりあえず、勉強始めましょうか」
京太郎「これで、先輩用に作った問題集も使えます。どうぞ、予想テスト問題なんですけど」
浩子「ふむ、興味深いな……ちょっとやってみてええ?」
京太郎「どうぞどうぞ」
京太郎「――で、泉にはこっちな。そろそろ応用のほうも進めないと、間に合わなくなりそうだ」
泉「ん……あの、私には予想問題は……」
京太郎「ああ、ちゃんと作ってる……けど、それが解けるくらいになるまで、しばらくはこっちのプリントだな」ニコッ
泉「お、鬼や……笑顔の鬼がおるで」
竜華「鬼なぁ……えらい優しい鬼やと思うけど」
京太郎「竜華さん、お疲れさまです。対局のほうはいいんですか?」
竜華「うん、大丈夫やで。それより京太郎くん、なんかわからへんとこないやろか?」
竜華「泉も、聞きたいことあれば言うてな」
泉「ありがとうございます……けど――」チラッ
京太郎「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ、竜華さんはせっかく受験も終わったんですし、しばらくは勉強のことも忘れてくださいよ」
竜華「……まあ、そうなるわな」
泉「そうなりますよね……あの、本人悪気はないんですよ」
竜華「わかってるて……」
竜華「むー……」ジロー
京太郎「?」
竜華(けど……実際、京太郎くんに教わってた私が、教えることなんてないしなぁ……)
京太郎「………………」ピーン
京太郎(なるほど、そういうことか!)
京太郎「……あの、竜華さん?」
竜華「……なんやの」ムッスー
京太郎「ちょっと古文のことでお伺いしたいんですが――」
竜華「私に聞くことなんかないやろー」
京太郎「たしか、先輩が古文教わってるの、うちのクラスの担当と同じ先生ですよね?」
京太郎「問題の傾向とか、ちょっと見ていただきたいなって……この問題に似たの、見たことないですか?」
竜華「ああ、そうなんや……ええよ、ちょっと見せて?」
竜華「ふんふん……んー、これはやった覚えないなぁ。これよりは、むしろこういうんが……」
京太郎「へえ、なるほど……」
竜華「あ、よかったら過去の問題。テスト残してるし、明日でも持ってきてあげよか?」
京太郎「あ、それは嬉しいです。あと、ほかの科目なんですけど――」
竜華「これとこれは、私も習ったことあるなぁ。あとは新任の先生と、習ったことない先生かな」
京太郎「……それじゃ、申し訳ないですけど、このお二人のも……ありましたら、でいいんですが」
竜華「ふふ~、どうしよっかなぁ~」
京太郎「……なにかご要望がありましたら、お応えしますが」
竜華「あはは、ええよ。冗談やからね。持ってきてあげる」
京太郎「ありがとうございますっ」
竜華「かわいい後輩くんのためやからねぇ」ナデナデ
京太郎「助かります……よかったな、泉。お前に予想問題渡す頃は、もうちょい実際のに近づいてると思うぞ」
泉「え……あ、ああ、はい……おおきに」
竜華「」
京太郎「……あ、当然ですけど、俺も助かりますよ? このお礼は、きちんとさせていただきます……なんなりと、お申し付けください」
竜華「べ、別にそんなっ……ほんまに?」
京太郎「ええ、もちろんです」ニッコリ
竜華「……考えとくわな」
竜華(……なんでもって言った、言ったやんな!?)
泉(なんでもて言うたなぁ……なにさせはんのか、ちょっと気になるわ)
京太郎「さて――それじゃとりあえず、古文だけでも問題傾向修正していくかな」
京太郎「――ん、まあこんなもんかなぁ」
竜華「あ、の……京太郎、くん?」
京太郎「はい?」
竜華「その、時間あるときでええからな……」
京太郎「はい」
竜華「帰り、家まで……送ってくれると、嬉しいねんけど」
竜華「それが、お礼ってことで……どうかな」
京太郎「……わかりました。そういうことなら、喜んで」ニッコリ
竜華「ん、お願いします」
竜華(やったで!)
京太郎「今日が木曜……あと三日か、ギリギリだな……」
浩子「余裕かまして遊んでるからや」
京太郎「すいません……」
泉「あれ? でも京太郎くんの成績で、そんなギリギリやなんて……」
京太郎「俺じゃなくて泉の話だからな」
泉「」
京太郎「ま、安心しろ。今日と明日で間に合わせて、土曜には予想テストやらせてやるから」
泉「お、お願いします……」
怜「……この問題知ってる、スガキョンの予想問題でやったとこや!」
竜華「あれのすごいとこは、勉強も部活も恋愛も、すべてがうまくいくいうとこやな」
セーラ「そんなうまい話、あるわけないのになぁ」
浩子「すべては本人の努力次第ですからね」
怜「問う苦ああいうんは、一日やらんかったいつの間にか一ヶ月分積まれるからなぁ……」
竜華「乙会やってた子も、同じこと言うてたわ」
京太郎「……まあ、問題って先生の個性出るからなぁ。実際、俺のもそこまで予想が当たるわけじゃないし」
泉「これまでの実績は?」
京太郎「たぶん、6割くらいかな。数字が変わっただけ、みたいなのも含めて」
泉「……十分やろ」
京太郎「でも俺は、完全的中させていたいんだよなぁ」
京太郎「さて――それじゃ、今日も元気に買いだし行くかな!」
泉「ちょちょちょ、ちょい待ちぃや!」
京太郎「おう? 一緒に行くか、泉!」
泉「行かへんわ、アホぉ! っていうか、買いだし行ってる場合ちゃうやん、さっきギリギリや言うたやん!」
京太郎「――すまん、あれは嘘だ」
泉「ふぇ?」
京太郎「いや、嘘じゃないんだけど。こういう時間も含めて、ギリギリだなーってことで」
泉「……遊ぶ時間込みでってこと?」
京太郎「遊びじゃねえ! お前……一年からレギュラーだったからって、雑用あなどってるだろ」
京太郎「やってるほうはな、命賭けてんだよ!」ドーンッ
泉「そこまで!?」
浩子(……京太郎くんだけやな)
怜(スガキョンだけやな)
セーラ(京太郎だけやろ)
竜華(京太郎、かっこええ……)ポワー
京太郎「ということで、俺は俺の戦場へ向かう……」
泉「……あ、はい。えと……行ってらっしゃい」
京太郎「ってことで浩子先輩、一緒に行きま――」
浩子「あかん」
京太郎「なんでですか!」
浩子「いや、京太郎くんや三年の先輩方はともかく、部長が率先して行ったらあかんやろ、さすがに……」
京太郎「えええええ……」
浩子「まあ、そんな堅いこと言わんでも――いう気持ちはわかる」
浩子「けど、万が一にも見つかって問題になったら、私一人やのうて、千里山女子全体に問題や」
京太郎「はい……」
浩子「そういうわけやから、仮に私用の買い物でも、ついていくことはできへん」
京太郎「……なんでですか?」
浩子「だから、私は部長で――」
京太郎「部活禁止ってことは、本来ならいま、家で勉強してるはずですよね」
浩子「まあそうやな。ここは集中しやすいし、ほかの部員もおるから、残ってるわけで……」
京太郎「なら、個人の買い物は部活にならないと思います」
浩子「うーん……いや、そうやなくても、そうやったんちゃうかと言われたら、証明できへんしな」
京太郎「レシートで証明できるじゃないですか」
浩子「ほかの買い物してないっちゅう証明にはならんなぁ」
京太郎「……なら、最後の手段です。部活中――つまり、学校から来てると思われなければいいわけですよね」
浩子「そうなるな」
京太郎「なら、これに着替えましょう。制服じゃなければバレません」
浩子「」
泉「……なんやあれ」
セーラ「メ、メイド服……か?」
怜「おっそろしいもん持って歩いとるな」
竜華「い、言うてくれたら着たんのにっ……」
京太郎「サイズはたぶん大丈夫と思います。どうぞ」
浩子「…………あ――」
浩子「アホかぁぁぁ――っっっ!」スパーンッ
京太郎「なにゆえっ!」
浩子「……私はなんで、こんなもん着て、ここにおるんや……」
京太郎「いやぁ、お似合いです、浩子先輩」ニコニコ
浩子「うっさいわ、しにさらせ」
京太郎「」
浩子「……全部先輩らのせいや、特に江口先輩……日頃の着せ替えの恨みや知らんけど、えらいノリノリで着替えさせてくださいましてからに……」
京太郎「でもこれで、どっから見ても執事とメイドです。主人の命令で買い物に来てるのは、確定的に明らか」
浩子「で、主人が買うてこい言うたんはなんや」
京太郎「泉がシャーペンの芯、セーラ先輩はファイチュウドリアン味、怜先輩はさえずりのみつ配合はちみつレモン、竜華先輩がのど飴です」
浩子「途中おかしいもんあるけど、まあええ……はよ買うて帰ろか」
京太郎「あと、俺の買い物が茶葉と小麦粉と、ちょっとミナミのほうに行きますけど、某店の鰹節です」
浩子「ミナミ!?」
京太郎「漫先輩に教えてもらった店でして、あっちにしかないんです」
浩子「いやいやいや! 近場でさえあれやのに、姫松の近くとか行ってられるかいな!」
京太郎「大丈夫です、洋榎先輩も絹恵さんも、似合ってるって言ってくれますよ」
浩子「会わせること前提か! アホッ、絶対行かへんからなぁ!」
京太郎「あ、浩子先輩、あんまり騒ぐと――」
浩子「なんやっちゅーねん!」
「……えっ、メイドと執事?」
「撮影?」
「コスプレ?」
「でもイケメンと可愛い女の子だ……」
浩子「」
京太郎「こんな感じで目立ちますから、静かにしないとです。執事は影となって、主人に仕えるもので――」
浩子「もうええわあぁぁぁ――っっ! おらぁっ、さっさと買うて帰るで!」
京太郎「うっす、了解です!」
京太郎「すいませーん、いつもの鰹節お願いします!」
「へいまいどー! おう兄ちゃん、今日はえらい別嬪のメイドさん連れてんなぁ。同僚さんか?」
京太郎「うちの先輩です」
「若いのに大したもんやなぁ。ほい、いつもの分に、たこ焼きおまけやで。お二人でどーぞ、と」
京太郎「ありがとうございます。浩子先輩、せっかくですし、ここでいただいて帰りましょうか」
浩子「あー、もう好きにせえ……ほんまにこないなとこまで連れてこられるし、もう見つかってもしゃーないわ……」
京太郎「熱いですからねー。気をつけてください……ふー、ふー……はい、どうぞ」
浩子「だぁっ! 自分で食えるわ、あほんだらぁっ!」
京太郎「まあまあ、遠慮なさらず……ほいっと」
浩子「あふぅっ!?」
京太郎「だから熱いって言ったじゃないですか」
浩子「おはっ、おふぁえっ、いひなぃあにふんねんっ!」
京太郎「お、落ち着いてください、冬場なのにキンキンに冷えたソーダです、どうぞ」
浩子「んぐふっ、ごっふ、ごほぉっ……はぁっ、はぁ……こ、殺す気ぃかい、炭酸詰まるし、口焼けるし……」
京太郎「すいません、ちょっとテンション上がってました……」
浩子「なんでやねん」
京太郎「やー、浩子先輩っていつも忙しそうですし。二人で出かけるとか、初めてじゃないですか」
浩子「……ああ、そういえばそうかもわからんな」
京太郎「新鮮で、なんか楽しくなっちゃって……」
浩子「……はぁ、わかった。もう諦めたわ……はいはい、あーんでもなんでも、お好きにどうぞ」
京太郎「いいんですか?」
浩子「ここまで来たら、急いで帰っても同じや……」
京太郎「じゃあどうぞ! ふー、ふー……はい、あーんしてください」
浩子「あ~……んぅっ、はふっ……はぁ、あっふいなぁ」
京太郎「寒いからちょうどいいですよ」
浩子「……暑いんは、たこ焼きのせいとちゃうけどな……ほんま、変な汗かいてまうわ」
京太郎「はい、もう一個どうぞー」
浩子「……いや、あんたも食べ。私がしたる、覚悟してあーんせえ!」
京太郎「へっ――んぶっ、あつっ、はつっ! ちょっ、まだ口開けてないですからっ、あふぅっっ!」
浩子「ふははははっ! 人を熱がらせて暑がらせた罰や!」
京太郎「はぁっ、はぁ――はぁ……ね、浩子先輩」
浩子「んー?」
京太郎「楽しいですね、たまに羽伸ばすと」
浩子「……ま、たまにはなぁ」
京太郎「あっ」
洋榎「ん?」
浩子「」
京太郎「お久しぶりです、洋榎先輩」
洋榎「おう、ひさ――ぁ?」
浩子「ひ、人違いです(裏声)」
洋榎「いやいやいやいや! 人違いやあるか! どっからどう見ても浩子やろ!」
浩子「どっからどう見ても――て、こんなメイド服着た私が、いまだかつておったか!」
洋榎「おらんかったけど、私て言うた時点で浩子やないかい!」
京太郎「どうですかっ、お似合いだと思うんですけど!」
洋榎「こんなとこで、こんなペアルックて……えっ、なんや? 罰ゲーム?」
京太郎「なにを仰いますか、これは俺の正装にして制服ですよ」
洋榎「お、おう……んで、浩子は?」
浩子「……罰ゲーム、みたいなもんやねん……」
洋榎「そやろなぁ……くくっ、でも似合とるで」
浩子「もうほんま、許してや……」シクシク
京太郎「ええええ……罰ゲームじゃないですよ、喜んで――は着てなかったですけど」
洋榎「なんや、罰ゲームやんけ」
浩子「……そーやねん、罰ゲ――」
浩子「…………」
洋榎「大変やなぁ、浩子もそんなん……あ、写真撮ってええ?」
浩子「いやぁ、さすがにそれはなぁ。京太郎くんが、『どうしても』『私に着てほしい』て頼みよるから、しゃーなしで着てるのに……写真は困るわぁ」
京太郎「えっ」
洋榎「!?」
浩子(……まあ、これくらいの仕返しはええやろ)
京太郎(……どうしてもって、言ったっけ……まあ、似たような感じだったか)
京太郎「そうなんです、どうしても着ていただきたくて」
浩子「!?」
洋榎「!?」
京太郎「で、どうですか――あ、さっき仰ってましたよね、似合ってるって。いいでしょう? メガネかけてるとこがまた、メイド長って感じで」
京太郎(そういえば、智紀さんがメガネかけてたなぁ……あの人はメイド長じゃないけど)
洋榎「……どういうこっちゃ、浩子……」
浩子「わ、私にもなにがなにやら……」
洋榎「京太郎、ほかにもメイド服はないんか」
京太郎「え、ありますけど?」ビランッ
浩子「どっから!?」
洋榎「か、貸せ! うちも着たる! 浩子に負けてられるかい!」
浩子「!?」
京太郎「いいんですか! やったー!」
浩子「お、落ち着いて、ヒロちゃん! そんなん、赤っ恥やで!」
洋榎「黙らんかい! 女愛宕洋榎っ、従妹に負けるくらいやったら、赤っ恥上等や!」
洋榎「なあ京太郎! うちにも着てほしいやろっ?」
京太郎「はい、ぜひ! 洋榎先輩はポニーテールですし、メイド服にも映えますよ、絶対!」
洋榎「にっひひひ……せやろー、さすがやろー?」
浩子「…………あー、あーなるほど……京太郎くん、私の髪もちょお整えてんか。こんくらいやったら、ワンサイドアップくらいはできるやろ」
京太郎「おまかせあれ! いいですねっ、浩子先輩も乗ってきましたね!」
洋榎「くっ……とにかく、はよ着やんと……おばちゃん、店のトイレ借りんで!」
「ええけど、あとでたこ焼き買うてってやー」
浩子「ヒロちゃん、本気やな……京太郎くんっ、ほかはなんかないんか!」
京太郎「……そうですね……では、靴下を変えましょうか。ニーソックスか、ストッキングがいいと思いますけど」
――このあと滅茶苦茶撮影会した。
そのあとしばらくして正気に戻った二人に、データは抹消された。
京太郎「あああ、せっかくのお宝が……」
浩子「なにがお宝や……私はアホや、もう二度と着やへんわ……」
怜「ほう、なんかあったようやな」
セーラ「えらい打ちひしがれてるな……役満振り込んだあとみたいな顔しとるで」
泉「船久保先輩だけならともかく、京太郎くんもですからね……余計謎ですわ」
竜華「ともかく――そろそろ下校時間やし、とにかく部室出よやー」
京太郎「そうですね……浩子先輩、行きましょうか」
浩子「ああ、もう……もういやや……貝にでもなりたいわ……」
京太郎「本当に似合ってたのに……」
浩子「そ、そうか……ってちゃうわ! もう二度と、そんな甘言に踊らされへんからなぁ!」
京太郎(マジだったのに……)ショボーン
京太郎「ふぅ……」
泉「お疲れ……どないしたん、ため息多いで」
京太郎「ああ、それがな……」
少年事情説明中……
京太郎「――ってことで」
泉「犯罪か」
京太郎「犯罪じゃねーし! ちゃんと許可取ったし! むしろ撮れって言われたし!」
泉「まあ、テンション上がって、ようわからんくなることはあるから……とにかく、船久保先輩が許したにせよ、やりすぎや」
京太郎「……確かに、そうかもしれん……そもそもは、部活中ってことがバレないための変装だったんだもんなぁ」
泉(変装ってなんやねん)
京太郎「けどなぁ、ほんと似合ってたのに……」
泉「……京太郎くんはあれか、メイド服好きなん? そういう趣味なん?」
京太郎「いや別に?」
泉「あっさりと!?」
京太郎「っつーかお前らもそうじゃん、前のカフェ。執事カフェだったじゃん!」
泉「あれはちゃうやろ!? それに、イベントごとにちゃう制服らしいし……って、それはええねん!」
京太郎「いや、だから趣味じゃないって、別に。ただ、学校の制服以外だと一番馴染みある衣装だから、知り合いが着たらどうなるかってのに、興味があった」
泉「それはそれでどうなん……いや、でも……それやったら……」
京太郎「?」
泉「あー……ごほんっ、その……私が着るんでも、興味あったりはするん?」
京太郎「着てくれんの!?」
泉「き、着るかい! 聞いてみただけやっ!」
京太郎「なんだ……」ショボンヌ
泉(ほんまに趣味とちゃうんかい……)
京太郎「そりゃまあ、興味はある……」
泉「ほ、ほーん、そうか……そっかぁ……」ニマニマ
京太郎「なに笑ってんだよ。データ抹消された男がそんなに滑稽か」
泉「!? 別に笑てへんわ!」
京太郎「……で、着てくれんの?」
泉「なんでそうなんねん……ん、まぁ……気ぃ向いたらそのうちな」
京太郎「マジで!? ありがとう泉っ、お前……最高に輝いてるぜ!」ギュッ
泉「……ああ、うん……おおきに」
泉(手ぇ握られてんのに、こうも嬉しないとは……)
京太郎「まあけど、泉はなに着ても似合いそうだな、実際」
泉「――――え」
京太郎「美人だしな。髪はいまは短いけど……実はロングも似合いそうだな」
泉「なっ、そ……なっ、えっ」
京太郎「ま、伸ばそうと思ったら言ってくれよ。伸ばすまで髪整える、くらいならやれるから」
泉「あ、うっ、うん……それも、気ぃ向いたら、な?」
京太郎「おう、楽しみにしてる」ニコッ
泉「……くっそぉ……なんやあれ、反則や……」カァッ
~2月第三週木曜、夜
京太郎「……はぁ、癒される……霞先輩のミニスカ巫女メイド……」
京太郎「普通のメイドなら絶対ロングだ……けど、この衣装はミニってのがいい……」
京太郎「ふぅ……さて、これだけ回復すれば、いつも通り動けそうだな」
京太郎「夜はどうしよう――」
京太郎「よし、電話するかな――誰にかけよう」
京太郎「菫先輩、そろそろ試験だな……」
京太郎「う、うーむ、どうしたものか……いや、俺が心配することじゃないだろ、あの人はしっかりした人だし……」
京太郎「けど……だからこそ、なにかあっても連絡しないってことがあるわけで……」
京太郎「と、とにかく、さりげなく……様子を窺ってみるか、うん」
京太郎「……もしもし、こんばんは、菫先輩。須賀です」
菫『京太郎くんか……ああ、こんばんは。先日はメールをくれたな、ありがとう』
京太郎「いえ、そんな……あ、いま電話は大丈夫ですか?」
菫『ああ、部屋だから問題はない。しかし珍しいな、電話をくれるなんて……』
菫『……なにか、困ったことでもあったのか?』
京太郎「えっ。いえ、俺のほうはなにも……ただ、先輩の試験も近いので、少し気になったので」
菫『ふふ、そんなに心配かけるような態度を見せたかな?』
京太郎「あー、いえ……そういうこともないですが」
菫『そうか、ならよかった……実は、少しだけ心配したよ。そうでないなら、大丈夫だ。なにも問題はない』
京太郎「ぅ……そ、そうですか……なら、いいんですけど……」
菫『どうした? 声に元気がないぞ。私が困っていなくて、不服だったか?』クスクス
京太郎「まさか! そういうことではなく――」
菫『それとも――それは建前で、私の声を聞きたかったから、電話をくれたのかな?』フフッ
京太郎「なっ――」
京太郎「ど、どうしてそれを――ぁ」
菫『えっ』
京太郎「…………う、嘘ですよ?」
菫『あ、ああ、うん……そ、それはそうだろう! 男子の後輩が、そんな女々しいことでは困る!』
京太郎「で、ですよね!」
菫『ああ、その通りだ! 京太郎くんは、その……そんな、私のことを気にしたり……し、しないよな、ははは――』
京太郎「…………すいません、めっちゃしてました……」
菫『』
京太郎「うわあああ! すいませんっ、先輩と電話したくて、無理やり理由作りましたぁぁっ!」
菫『……ほ、本当にか?』
京太郎「はい……お恥ずかしい限りで……」
菫『そうか……ふふ、そうか……そう、かぁ……ふっ……ふふっ……』ニッヤァァァ
菫『まったく、しようのない後輩だな……少しだけだぞ。私だって、ヒマではないんだからな』ニヨニヨ
京太郎「はい、ありがとうございます……あ、でも手短に済ませますので――」
菫『そ、その必要はない!』ガタッ
京太郎「えっ」
菫『えっ? あ、や――その……なんでもない、えと……』
菫『き、気にすることはないと言っただろう。休憩中だからな、気分転換にもなるし、しばらく話をしよう』
京太郎「本当ですかっ? それだったら嬉しいですね」
京太郎「せっかくの電話がすぐに終わったら、もったいないですし、寂しいですから」
菫『っっ……ま、まったく調子のいいっ……誰にでも、そんなこと言ってるんじゃないのか?』
京太郎「弱音を見せられる相手だけです……かね」
菫『……それは、私には君の弱音を見せてくれている……と思って、いいのかな?』
京太郎「……すいません、やっぱ忘れてください」
菫『~~~~~っっ!!』
菫『い、いや、そうはいかないな……聞いてしまったからな、忘れることは難しい』
菫『物覚えはそれほど悪くないほうでね。だからすまないが――』
菫『君の弱音は、しっかり覚えておくよ』
京太郎「うっ、ぐっ……なんか、恥ずかしいです……」
菫『なにをいまさら……私たちは、お湯の中ですべてを見せ合った仲だろう?』
京太郎「……い、いまそれを言いますかっ?」
菫『……すまない、自分でも言ってて恥ずかしかったよ……だけど、それは事実だ』
菫『恥ずかしくても、私はあのとき、君との距離が縮まったと感じていた……』
菫『そして君がいま、弱音を見せてくれたと知って……私だけがそう感じていたのではないと、実感できたよ』
菫『……とても嬉しかった。本当に……涙が出るくらい嬉しいよ』
京太郎「……そう、ですね……思い込みじゃないです。先輩との距離は、あのときからゆっくりと縮まってます」
京太郎「先輩が俺に、強いところも強がってるところも弱いところも、見せてくださったから――」
京太郎「俺も見せられるんです……恥ずかしいですけど、嫌ではありませんよ」
京太郎「先輩が受け入れてくださるなら、とても嬉しいです」
菫『……っ……ふふ、本当に……恥ずかしいことを言うな、顔が熱くなってきたよ』
京太郎「俺もです……ってことで、次は先輩の番ですね」
菫『私の番?』
京太郎「弱音を、聞かせてください」
菫『――――ふっ……』
菫『ふっ、ふふふっ……ははははっ!』
京太郎「えっ……あの、先輩?」
菫『ふふふ、やられたよ……そのために、自分が電話したかった――なんて言ったのかな?』
京太郎「それは事実です」
菫『そうか……うん、なら構わないよ。ああ、誤解しないでもらいたい、疑ったわけじゃないんだ。もちろん冗談だよ』
京太郎「はい」
菫『……せっかく、私と電話がしたくてかけてくれたのに……グチでも構わないのか?』
京太郎「どんな話でも。そうしたくて、かけたんですから」
菫『っっ……ああ、本当にっ……っ……君は、ずるい後輩だなっ……』グスッ
菫『つまらない話だよ、本当に……少し前までは、一週間前は、余裕だったのにな――』
菫『失敗しても、自分が少し情けないだけなのに――それを怖いと、思ってしまうんだ……試合の前でもなかった、久々のプレッシャーだよ』
京太郎「……はい」
菫『わかってるよ、それが受験なんだ……もちろん失敗するつもりはないし、普段はそんな部分は見せないが……』
菫『もし失敗したら――と考えている自分、それを自覚して、滑稽に思ってしまう』
菫『……私は臆病かな。格好悪いかな……』
京太郎「……臆病だとは思います。だけど格好悪くはありません……怖がってるところも、魅力的です」
菫『――っっ……バカッ……恥ずかしいことを、言うなっ……』
京太郎「言います。恥ずかしい部分も見せ合える相手ですから」
菫『バカッ……本当にっ……なんて、後輩だっ……』
京太郎「……ありがとうございます」
菫『そこは謝らないかっ……まったく、続けるぞ?』
京太郎「はい」
菫『それで――が――で――』
京太郎「――ふぅ、気がついたら遅くなっちまった……菫先輩、大丈夫だったかな」
京太郎「もうあとは、近況メールするくらいしか、時間はないか……」
京太郎「……そろそろ、卒業式ですね、と――」
京太郎「……卒業式か……どうすっかなぁ」
~2月第三週木曜、終了
【2月第三週木曜】
色々とありました。
ごめんなさい。
…………
『……うちがどうかしとったわ』
『私もや……』
『えっ』
『ちょっ』
『な、なにがあったの!?』
『……詳しく聞きたい』
『誰か、事情を知ってる人は?』
『先輩がメイド服着せられて、京太郎くんと買い物に行った』
『帰ってきたら二人して落ち込んでた』
『着衣に乱れはなかった』
『和解はしとるみたいやな』
『……よくわからないけれど、いかがわしい事情ではないみたいね』
『二人で出かけたのに、もう一人絡んでるのはどういうことなの』
『たこ焼き買いに出かけた先輩が、えらい落ち込んで帰ってきました』
『家でも思いだしたように頭抱えてたわ、おねーちゃん』
『いつものことや、ほっときましょ』
『こっちはそれどころじゃないのよー』
恭子先輩と由子先輩も、週末だからな……。
メールでいくつか問題解説したけど、大丈夫だろうか。
――――――――
~清澄
「な、なにがあったの!」
「咲さん、そればっかりですね。落ち着きましょう、少しは。京太郎くんのことです、きっと大したことじゃありませんよ」
「のどちゃんはあいつの本質をわかってないじぇ。あのエロ犬、毎日のどちゃんのおっぱい、舐め回すように見てたからな」
「それは気づいてましたけど……でも、実際に手をだす人じゃないですから」
「遠回しにヘタレと言われとる……不憫なやつじゃの」
「事実でしょ……っていうか、これ相手、一人は洋榎でしょ? なら本当に大丈夫だと思うけど」
「なんでじゃあ?」
「だってあのコ、ぺったんこだし」
「」
「」
「……咲と優希に流れ弾が当たっとるぞ」
「ご、ごめんね、そういうつもりじゃ……」
「……まあ、その……昔は少し困りましたけど……いまだったら、言ってくださればいつでも……」///
「こっちはこっちで……こら、戻ってきんさい」
~白糸台
「京ちゃんなにしたの。ちょっと聞きに行ってくる」
「私たち、テスト期間ですからついて行きませんよ」
「弘世先輩も、試験前ですし……」
「私いけるよ、テルー!」
「ありがとう淡。それじゃ、ちょっと行ってくるね」
「ちょっ、宮永先輩!」
「弘世先輩、止めなくていいんですか?」
「ん? ああ、別にいいだろう、放っておけ」
「えっ」
「ど、どうしちゃったの、スミレ」
「あ、行こうとしてたほうが驚くんだ」
「でも本当に、なにかあったんですか?」
「……いや、なにもないさ。誰かから電話があったなんてことは、けしてないぞ。はっはっは」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
~永水
「……放して、行かないと……」
「こ、こらー、だめですよー。来週はテストだし、明日もまだ学校でしょうがー」
「と、巴ちゃん、春を止めないと……」
「こっちも手一杯だから、それどころじゃないんです」
「霞ー、はるるを止めてくださいよー」
「……春ちゃん」
「霞さん、止めないで」
「いまは我慢しましょう。こちらに来たときに、しっかりお仕置きしてあげればいいわ」ニッコリ
「……わ、笑ってはいますけど、般若が見えますよー」
~宮守
「まーた、なにやったんだか……」
「いつも通りいつも通り」
「平常運転だよー」
「キョータロ、ラキスケ!」
「そういう類のなら、いいんだけどね……」
「っていうか、一人は愛宕の洋榎さんでしょ? なら平気だと思うけどなぁ」
「京太郎の趣味じゃないってこと?」
「いや、あの人の雰囲気って……そういうことに繋がらないイメージなんだよね、なんとなく」
「騒がしかったもんねぇ……」
「ゲンキ、イッパイ!」
「純粋なんだよー、ちょーかわいいよー」
「あー……まぁ、そうだったかも……」
~姫松
「べっくしょいっっ!」
「おねーちゃん、風邪?」
「あぁ、あんなとこで着替えたせいかな……」ズズッ
「着替えたて、なにしとったんです」
「それは言えんな。ま、証拠も消したし誰かが言わんと、絶対漏れんやろ」
「そんなんどーでもいいのよー。もう明後日よー」
「絹ちゃん、どこまで進んだ?」
「一応、順調に……土日詰めれば、テスト前には終わるはず」
「ちょおっ! もっと興味持ったれや!」
「テスト終わったらなんぼでも聞きますから、しばらくおとなしゅうしとってください」
「」
「洋榎ちゃ~ん、よかったらうちが聞くけども~」
「えっ……あ、代行はええわ。口軽そうやし」
「え~、ひどい~。言いがかりやわ~」
「口は軽くないでしょうけど、余計なことは教えたないですね。変な脅しされそうですし」
「せ~へんよ~」タブンネ
~千里山
「怜っ! なんやの着衣の乱れはなかったて」
「視聴者が一番知りたがってることに触れたつもりやけど」
「ま、まあええやないですか、事実ですし」
「そもそも京太郎が、そんなんするわけないやろ」
「まぁそやけど……」
「で、実際はなんやったんでしょうね、船久保先輩」
「教えてくれへんなぁ……洋榎ちゃんとなんかあったみたいやけど」
「っていうか、買いだしでどこまで行っとんねん……洋榎と会うんやったら、俺も行けばよかったわ。あんなんでも、近場のええ練習相手やしなぁ」
「……それで気ぃついたんですけど、最近先輩ら、練習してますか?」
「してるで」
「けど、なんやあると、京太郎くんと遊んでません?」
「それは遊んどるスガキョンに原因あるやろ」
「たしかに……」
「実際、京太郎はいつ勉強してるんやろ……い、いっぺん家に行ったったほうがええやろか///」
「狙いスケスケやで、竜華」
~2月第三週金曜
京太郎「昨日はつい、悪ノリして迷惑かけたからな……今日は真面目に、かつ紳士的に、あくまで執事として接しよう」
京太郎「あくまで執事として……そう、師匠のように!」キリッ
怜「お? おっはよー、スガキョン。今日はえらい、シュッとしとんなぁ」ポン
京太郎「おはようございます、怜先輩。本日もお美しくて、なによりです」ニッコリ
怜「…………引くわー」
京太郎「ええええええええ! なんでですか!」
怜「単純にキモい。っちゅーか、そういうキャラとちゃうやろ」
京太郎「キャラってなんですか!」
怜「うちの知っとるスガキョンはなぁ……おもちと見れば、とりあえずチラ見して、気づかれてないと思ったらガン見する……」
怜「そんなムッツリさんかと思わせて、いざバレたら堂々とお願いするオープンなとこもある、根っからのヘンタイさんや」
京太郎「」
怜「そんで、そういうとこが好きや」
京太郎「!?」
怜「ということでや、普通にしとったらええで。師匠さんかなんや知らんけど、そんな気取る必要あらへんやん」
京太郎「……まあ、そうなんですけど……昨日はちょっと、浮ついてたというか、悪ノリが過ぎましたので反省を」
怜「フナQとは話ついとるやろ。もうええやん」
京太郎「……はい。でも一応、ほかの人にはご迷惑をかけないようにと思って」
怜「メイド服やろ? あんなん、言うてくれたらいつでも着たるよ」
京太郎「マジっすか!? あっ……」
怜「…………」ニヤリ
京太郎「ち、ちなうんです、いまのは……」
怜「あー、ほんま可愛いなぁ、スガキョーン」ダキッ
京太郎「ちょっ、と、怜先輩!」
怜「ええでー、持ってきたら着たるよー」グリグリ
京太郎「あ、ありがとうございますっ、だからその……ちょ、ちょっと離れて……」
怜「遠慮しぃなや、美少女怜ちゃんのありがたい抱擁やで」
京太郎「その言い回しだと、法要みたいですっ」
怜「ふむ、気分が乗ってきたな……このまま行こか、学校まで」
京太郎「さすがにまずいでしょ、色々と」
怜「あかんかなぁ……今朝はちょっと調子悪うて、スガキョンに会えてよかったと思てるんやけど……」ウルッ
京太郎「しっかり掴まっててください、全力で支えますから。行きましょう……あ、お荷物お持ちします」
怜(ちょろかわいいなぁ……大学でも世話焼いてくれんかなぁ)
ハギヨシ「……私はそんなこと言いませんよ、須賀くん……」
透華「どうしましたの、ハギヨシ」
ハギヨシ「いえ、なにも……どうぞ、今朝の紅茶はいつもとブレンドを変えております。お目覚めにはちょうどよいかと」
最終更新:2026年01月17日 13:30