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【3月第一週日曜】

 書いてるのは月曜以降になりますが、日曜日、春の予選大会の報告を。
 無事、予選を突破し、月末の全国大会に駒を進めることができました。

 一晩置いたことで、なんとか冷静に書けてはいますが、本当に嬉しいです。
 落ち着いたかと思ったのですが、新聞を見て、余計に嬉しさが込み上げました。

 しかもあれです、インタビューとかもされちゃって、地方欄の小さいとこですが、全文掲載ですよ。
 あまりにも嬉しすぎるんで、今日の日誌に拡大画像で載せておきます。

 本当に、多くの方のおかげで優勝できました。
 ですが、ゴールはまだです。
 皆さんの教えを無駄にしないよう、全国でも勝ち進めるよう、さらに努力を重ねますので。
 これからもどうぞ、よろしくお願いします。

…………

『……京ちゃんが、私こんな風に思ってくれてたなんて、知らなかった。嬉しい、すごく』
『こ、これは……』
『はやー、全国に血の雨が降りますよー』
『……さ、最初の派遣先だったからでしょ』
『その通り。これが別の学校、たとえばうちなら私が挙がってたはず』
『いや、自分たちでもこの癒し効果がだせたか、想像してみたほうがいい』
『余裕』
『問題なかった』
『膝枕もあるし』
『なんでそんな、自信過剰な人ばっかりなの……』
『ハルーずるい!』
『学園祭に来てた、あの子……だよね』
『うちの神社にも挨拶来てた……はず』

 そうだった、名前……インタビューで思いっきり挙げてたから、もろに……。
 メールで謝っといたほうが……いや、電話か……どうしたもんか……。


 メールしたら、絶対消さないでって言われた……心なしか嬉しそうだったような。
 はるるがいいならいいんだけど……俺のミスに、気を遣ってくれてるのか?
 だとしたら申し訳ないし、別のなにかで、フォローしておこう。うん。


『師匠への挨拶が足りない、やり直し』
『従妹に完全敗北したプロ(笑)がいると聞いて』
『飛んできたぞ☆』
『き、気にすることないと思うよ?』
『まぁ実際は、メールで報告をもらっていますけどね。よくやりました、京太郎』
『ぐぎぎぎぎ』
『私ももらっています。全国でもこっそり応援すると伝えたら、とても嬉しそうでした』
『私も応援するからね!』
『わたはやりんも応援してると思うぞ☆』
『男子のほうも、昨日解説してたんだが……』
『メイン女子でしょ、知らんけど。あ、そうそう。全国で扇子持つの、忘れんな~?』

 おっと、そうだった……咏さんにもらった扇子、これは忘れずに持って行こう。

『一回戦突破の報告はしたのに、なんで優勝の報告がないんや』
『メールもろた人もおんのになぁ……』
『噂では、疲れ切って何人かメールしたとこで、泥のように寝落ちしたとか』
『具体的すぎやろ、どんな噂やねん』

 あ、合ってる……いや、ほんとすいません。

『報告なんかせんでも、信じとったからええけどな』
『自分一人いい子に!』
『……あ、私も信じてました。ちなみに私も勝ちましたんで、全国行けます』
『うちらも勝ったで!』
『私も、勝ったよ……?』

 おお、誰が誰やらって感じになってきたけど、色んな人が勝ってるみたいだな。
 けど、そうなると――ちょっと困ったことになるかな。

『仮に――仮にの話だけど。京太郎が合宿しようと言いだしたら、どうする?』
『行く』
『呼ぶ』
『いつでも』
『どこでも』
『だよね……でもそれ、清澄の人も来るよね?』
『当然です』
『行かない理由がないじぇ』
『――はい、個人戦の人たちはどうやって対局しますか?』
『あ』
『い』
『う』
『え』
『こ』
『おい、なんでやねん』
『あああああああああっ! そうやん! いや、京太郎くんとは対局できるんやし、別に――』
『でもそれだと、清澄の女子部員にメリットがないでしょ?』
『……ああ、なるほど……そんな合宿を、京太郎が提案するわけがないんだ』

 まあ、個人戦出場外の人と、対局すればいいんだけどさ。

『そこでプロの出番』
『誰か知らないけど、いいこと言ったね』
『いまならシーズン前、どこにでも出張できんねー』
『でも、地元以外はあと2人じゃないっけ? 連盟の通知だと』
『おいいいいいい!』
『新人プロは地元なら数に含まないからお得』
『じゃあ東京がいいね、合宿先は。新人プロ一番多いし』

『閃いた! OGと打てばええねん、個人戦のやつは!』
『うちはOG3人』
『うちもや』
『こっちも3人……1人は東京だけど』
『やっぱり東京がナンバーワン!』
『なに言うてんねん、大阪やろ!』

 一つ言っておきますけど、まだ合宿って決まってないですからね?

――――――――


~清澄

「――靖子呼んで、私たちだけの合宿でいいんじゃない?」
「ですよね」
「私もそう思います。まあ、どのみち咲さんのお姉さんは来られそうですが」
「けど、鶴賀のお姉さんや風越のお姉さんはどうするんだじぇ?」
「あの二人も、出場する後輩がおるけえ……まあ、考えはあるじゃろ」
「ただねぇ――」
「なにか問題あるんですか?」
「あなたたちもだと思うけど、携帯ジャンジャン鳴ってない?」

『……鳴ってます(鳴っとるわ)』
「たぶん週末まで、合宿のお誘い続くと思うわよ」


~白糸台

「キョータロー、優勝したんだ……じゃ、東京来るんだよね、なーんだ。私たち勝ち組じゃん!」
「合宿の心配はいいの?」
「合宿くらい、くれてやる!」
「宮永さんと弘世先輩、上手くいけば宮守の人たちも呼べないかな?」
「そっかー、プロもいっぱいいるしねー……あれ、もしかして合宿も大勝利?」
「……でも、宮永さんとは打っちゃだめだよ?」
「そうだった! うーん、サキーと打てないのはつまんないなー……どっかでコッソリって、だめ?」
「……バレたら出場停止だから、絶対ダメ」
「ぶー」
「ぶーたれても駄目だよ」ツン
「ふしゅー」
「まあとにかく――京太郎くんに、祝福メールしとこっか」
「ふぁーい」


「……おめでとう、京太郎くん」
「やりましたね、菫さん!」
「まあこれくらいは当然だろう……が、嬉しいものは嬉しいな」
「はい! これで月末は、京太郎くんはこっちにいます!」
「そうだな……」
(……とはいえ、寮に呼ぶのはまずい……と、ということは、その……やはり私が、京太郎くんの……ほ、ホホホ、ホテ……に……っっ////)

「……なんね、タコみたく赤なりよっと」
「ロクでもないことを考えてる顔だ、放っておけばいい」
「智葉は会いに行かんと?」
「知り合いでもないしな。臨海にでも派遣されれば、会う機会くらいはありそうだが」



~永水

「ま、なにはともあれ優勝ですよー」
「おめでとう……京ちゃん」ギュッ
「はいはい、パソコン抱かないの」
「これで月末は、京太郎さんと……お会いできます」
「そうねぇ。昨日の誕生日のお礼も、また改めてしないといけないわよ?」
「はふっ……も、もちろんです/// ご挨拶に、来てくださると……おっしゃってましたし……」
「京ちゃん、嬉しい……最初はそっけなくして、ごめんね……でも、私が変われたのも、京ちゃんのおかげで――」
「……春さん、行くとこまで行ってるね」

「優勝はおめでたいですけど、男子の大会ですし、そこまで騒ぐことですか?」
「湧ちゃん」
「は、はい!」
「湧ちゃんは夏の大会が終わるまで、ずっと雑用よ」
「――っっ! そ、れは……」
「――って、言われたらどうする? ううん、言われなくても、実質そんな扱いだったら」
「それは……ショック、ですけど……」
「そのショックを乗り越えて、あちこちの学校で諦めずに練習し、全国大会出場を決めた――しかも、それが知り合いなら、嬉しいのは当然でしょう?」
「……はい……」
「好ましく思わないのは仕方ないけれど、祝い事くらいは、素直に祝ってあげてもいいんじゃないかしら?」
「……はい」
「ごめんなさいね、お説教くさくって……でも、ひねくれて考えるよりも素直でいるほうが、湧ちゃんにとってもきっと、いい影響があると思うの」
「……ありがとう、ございます……」
「……大丈夫、お姉さまも怒ってるわけじゃないから。元気だしなって、湧」ポンポン

「というか、霞のほうはもう少し抑えるべきですけどねー」
「そうでしょうか? 私も嬉しいですよ、わーいってなりました!」ワーイ
「そりゃそうなんですけどー……昨日の夜、京太郎からメールで報告があったらしくて――」
「……ずるい、霞ちゃんばっかり」
「まあ、よくメールしてるみたいですからね……ま、それはともかく。その報告で霞ときたら――」
「……はっちゃん? その話、長くなるかしら?」ニコニコ
「――つ、続きはまたの機会ですよー」

「……明星、なにがあったの?」
「歓声上げて、部屋の中転がって、障子破いてた」
「…………霞さま……さすがに、それは……」
「かわいいです、霞ちゃん!」


「……報告はくれなかったけど、でもいいの……インタビューで、こんな風に……それは、どんなことより……すっごく、嬉しいこと……」
「だ……だい、す……ぅぅぅぅ……はふぅぅぅっっっ/////」ギュー



~宮守組

「京太郎くん、おめでとー!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「オメデト!」
「……おめでとう」
「やっばい、ちょー嬉しいんだけどっ!」
「私も、ちょーうれしいよー」
「私は信じてた……連絡もくれるって、信じてた」
「あとは塞と豊音だよね? どうせなら片部屋に一通ずつにしてよねー」
「シカタナイ、ネオチ!」
「送ってる途中に寝るくらい、か……嬉しくって、はしゃいでたんでしょうね」
「ちょーわかるよー」
「あとは全国優勝か……私たちができなかったこと、京太郎に託してもいいよね?」
「当然でしょ。私たちの自慢の後輩だもん」
「まあ、永水の滝見さんに、ああいうのは仕方ないとしても……最初の派遣先だし?」
「卒業式は、私たちだもんねー」
「トックン、シナキャ!」
「合宿もこっちに来てくれればいいねー」
「よそまで行く予算がないからね……こっちで合宿しますよーに!」パンパン
「しますよーに!」パンパンッ
「よーに!」

「そういえばシロ、こっち来てて大丈夫なの?」
「んー、わかんない……」
「いや、それまずいでしょ……」
「わりと自由なんだよね……キャンプとかシーズンとか、あとチームで受けた仕事以外は」
「……プロ、楽しそうね」
「塞もなってみる? あと豊音も」
「へ、わたしー?」
「スカウトの人が、あのコがプロにならないのはもったいないってさ」
「へー、すごいじゃん」
「わ、わたしはいいよー。みんなと一緒に、学生したいからねー」
「トヨネ、テンシ!」
「眩しいなぁ」
「肩身が狭い……」
「そうならないように、結果だしてよー」
「はいはい……」



~阿知賀

「灼ちゃん、おめでとー!」
「ありがた……」
「憧ざんねーん!」
「うっさい! あぁぁ、ほんっと……」
「京太郎くん、優勝おめでと~」
「これで穏乃、玄、灼が出場か……よくやったぞー」
「ありがとうございます、ウェヒヒ」
「じゃあ、次は連休の予定考えないとなんだけど……」
「長野行こうよ!」
「日誌にもあるけどさ、個人戦同士で当たらないように、気をつけないといけないじゃん」
「それだったら、赤土先生にプロのどなたかを紹介してもらえば……」
「あ、ごめーん。私、連休はプロ試験なのよ」
「えっ」
「なっ!?」
「ちょ――」
「だから頼むのはいいけど、いざ来られたとき、みんなだけで対応できないことがあったら困るでしょ? だからやめといたほうが――」

「ちょっと待って!」
「ん?」
「ハルちゃん、いま……プロ試験って」
「おー? なにをいまさら、受けるってずっと言ってたっしょ」
「どこ!? どこのチーム!」
「受かったら教える――じゃ、引き下がらないか」
「もちろんです!」
「ま、しゃーないか。私が行くのは札幌、北海道のチームだよ」
「ほ、ほっかい――」クラッ
「あ、灼ちゃん!」
「寒そう……」ブルブル
「ずいぶん思い切ったわねー。ま、北海道展のチラシでも見て、決めたんだろうけど」
「」
「……マジなんだ」
「そ、そ、そそ、そんないい加減に決めて、いいと思ってるの!」
「おー、灼ってば動揺しちゃってー。寂しいかー?」
「……当たり前っ」
「そっか……ん、すまん。だけどさ、距離を開けるなら、これくらいじゃないと、中途半端でしょ」
「そうだけど……」
「春の大会が、私が見られる最後だから……頑張れよ、みんな」
「……はい! 絶対優勝します! そんで京太郎とツーショットで、朝刊飾ります!」
「わ、私もそれ!」
「……私も、やる……ハルちゃんに、優勝するとこ見せるからっ……」
「あーあ、みんなして燃えちゃって……んじゃ、私たちはなんとかサポートしますか。ね、宥姉?」
「うん……できる限りのことで、お手伝いするね……」

「……いいチームになったわ、ほんと……私らの頃より、よっぽどだよね」
「うちはあんたのワンマンチームだったからねー」
「え゙っ……そ、そんなだった?」オロオロ
「……じょーだん。ま、そのうち連絡ちょうだいよ。遊びに行くからさ」
「はいはい。おいしい店も探しとくわ」



~姫松~千里山

「京太郎くん、おめでとう……そんで、うちらもおめでとう!」
「南大阪やったら、どうにかなるなぁ……」
「漫ちゃん、ネガはあかんで」
「すいません、末原先輩……」
「まーまー、今日はお祝いよー」
「そうやで~。教え子三人も全国行って、うちも鼻が高いわ~」
「ちょいまち赤阪。三人て誰や」
「絹ちゃん、漫ちゃん、あと京太郎くん~」
「京太郎は私の教え子や」
「どっちでもええやんけ……」
「洋榎、寮戻らんでええんか。ここにおっても京太郎のメシはないで」
「そ、そんな根に持たんと……ジョーダンやん。可愛い娘のジョーダンやで~」
「お前が可愛いて、それが冗談やな」
「言うたなぁ、男女」
「なんや、やんのか」
「隣に卓用意しとるで」
「ええで、やったろやんけ!」
「……おかーちゃん、止めへんの?」
「祝い事でケンカするような輩は、よう相手せんわ」

「オバ……監督も相変わらずで……」
「っちゅーかフナQ、あんたさらっと負けて、どないしたん」
「怜、容赦ないな……けど、ほんまやで。一回戦は余裕やったやん」
「いや、あのあと……京太郎くんからメールありまして、一回戦勝ったて」
「あ、あのときメールみて笑てたん、それですか」
「泉」
「はい」
「余計なこと言いな」
「」
「そんでっ! メールがどうしたん!」
「清水谷さん、えらい食いつきですね……」
「そやねん、絹ちゃん。竜華はもう、スガキョンの話題に飢えとってなぁ……」
「スガキョン?」
「須賀京太郎やからな……ところで絹ちゃんや」
「はい?」
「あんたも、えらいええ太ももしとるらしいやん」グヘヘ
「――っ! あ、あきませんて! これは……その、きょ……京太郎、くんので……////」
「まぁまぁ、彼氏は長野やろ。バレへんて……」フヘヘ
「こら園城寺ぃ! うちの妹になにさらしとんねん!」
「おーこわ……こっちも可愛いジョーダンやろ?」
「まぁ洋榎よりは、怜のがかわええわなぁ」
「あんなオヤジみたいなとこ見て、よう言えんな……」

「で、メールがなんて!」
「いや、それに――優勝してから報告しろ、て返したんです。そしたら連絡こんようなって……」
「……まさか、二回戦負けたんちゃうか、とか……思ったんちゃいますよね?」
「いやいや、そんなアホなこと――」
「はいはい、どーせアホですよ!」
「あちゃー、浩子ちゃん究極のミスなのよー」
「京太郎くんにそんなんいうたら、ほんまに送んのやめるやん……」
「いや、それでも勝った報告はあるかなー、思て……あああああ、ほんまアホやった……」
「しかも結局、優勝報告もなかったですしね」
「」
「泉、華麗に鬼か」
「で、この日誌やもんねぇ……ま、途中で寝落ちしたんやったら、許したらんと」
「むしろ報告より気になるんは、こっちのインタビューやろ」
「永水か……この滝見って、誕生日に来とったやんなぁ?」
「……たしか、おもちがなにげにすごい子や」
「またおもちか」
「結局おもちか」
「これやから京太郎は……」

「……漫ちゃん」
「なんやろ絹ちゃん」
「やっぱりおもちなんやって」
「……みたいやね」
「やったな!」
「めっちゃええ笑顔やなぁ!?」

「……まぁ、スガキョンはいまごろ、理想の膝枕探しとるはずやけどな」
「京太郎くん、私がおるやん……京太郎くん……」
「竜華、怖いわ。ヤンデレみたくなっとんで」
「病んでへんわ! あー、せやけど……大阪来てくれへんかなぁ、合宿でもなんでも……」



~プロ

「男子の全国は何試合だっけ?」
「五試合!」
「となると、五人まで解説可能……」
「私グランドマスター! これはもう、決勝解説しかないよね!」
「女子のですね」
「これですこやんが抜けたから……」
「抜けてないよ!?」
「おとなしくジャンケンしますか……」
「えっ、靖子ちゃんもやるの!?」
「女子の解説がない分、男子の解説仕事が回ってくるんですよ……」
「じゃあ私と交代しようよ!」
「無茶言わないでくださいよ、小鍛治プロの代わりに入ったら、視聴者からクレームきますよ」
「人気者は辛いっすね~」
「咏も!」
「野依プロもです……」
「良子ちゃんもね☆」
「はやりちゃんだって……」

『………………』

「ねえ、あの――」
「い、言わないでください!」
「もしかして、私たち……」
「男子の解説……」
「できない!?」
「……私以外、無理でしょうね」

『い、いやああぁぁぁぁぁっっっ!』


 ※全国大会は試合がずれるので、一試合は仕事できるようになりました


~連休導入(数日前)

久「――ねえ京太郎、ちょっとクジ引いてくれない? この箱から」

京太郎「……なんでレジェンドの顔が書いてあるんです?」

和「本当、赤土先生です……」

久「まぁまぁ、細かいことはいいから。はい♪」

京太郎「では……指令とか書いてないですよね?」

久「私とキスくらいはあるかも♪」

京太郎「!?」

和「!?」

咲「――――――」

久「なーんてね、じょーだんよ。あ、それにする?」

京太郎「……破く直前でしたよ。なんなんですか、これ」

久「開けてみてー?」

京太郎「……東京?」

久「あちゃぁ……はーい、みんな注目」

まこ「で、わざわざバイトの手ぇ止めて、なんのつもりじゃあ」

優希「そういえば、お姉さんと先輩は仕事中だったじぇ……」

京太郎「俺もな」

咲「京ちゃんは練習しようよ……」

久「はーい。京太郎が東京引いちゃったので、連休は東京で合宿しまーす」

京太郎「――は?」

久「ま、あれよね。どうせ月末行くんだし、下見とキャンプを兼ねてってことで、いいわよね」

和「サッカーや野球じゃないんですから……」

まこ「まあ、麻雀プロも謎のキャンプやっとるがの……」

優希「あれはキャンプ地の地域活性のため、プロチームが企画してるらしいじぇ」

咲「へー、そうなんだ」

優希「――って、池田に聞いたじぇ」

まこ「途端に胡散臭く――」

美穂子「すみません、華菜が適当なことを……」

久「ねえ、話続けてもいい?」

~連休初日

京太郎「――ってことがあって、東京に向かってるわけだけど……ほんと、旅費は出て助かったよ」

和「急ですよね……でも、個人戦の県代表が4人ですからね。清澄同窓会も、気を遣ってくださってるみたいです」

咲「それもあると思うけど……ね、去年の夏の合宿……京ちゃんは、その……」

京太郎「――ああ。俺は選手じゃなかったし、女子ばっかりだったから、仕方ないだろ」

咲「それで、先輩も気を遣ってくれて、大会前の合宿を色々考えてたらしいよ」

優希「色んな学校にコネ作ってるから、誘いが多かったらしいじぇ……そんで、お前にクジを引かせたらしい」

まこ「……っちゅうか、わしは選手じゃないけえ、残ったほうがよかったと思うが……」

久「なに言ってんの。部長がいないなんて、よその学校に舐められちゃうでしょ」

京太郎「あれ、そういえば……部長は今回、どういう立場で行くんです?」

まこ「……お前にとっては、久が永遠の部長なんじゃのう」

京太郎「あー、すいません……」

まこ「構わん……で、久よ。あんたの立場は――なにしとんじゃ」

久「っっ……べ、別に……/////」

和「……照れてますね」シラー

咲「永遠の部長でグッときたみたいだね」

優希「乙女だじぇ~」

久「あんたたちうっさい!」

久「ゴホンッ――とにかく、私は今回、あなたたちの監督扱いです」

まこ「……ま、妥当なとこか」

咲「前々から、そんな感じでしたもんね」

京太郎「よろしくお願いします、監督!」

久「ふふん、命令は絶対よ♪」

京太郎「…………よろしくお願いします、部長」

京太郎「うん、こっちのがしっくりくるな」

久「……それさ、将来もずっとそう呼ぶつもり?」

京太郎「たぶん……ですけど」

久「…………」

京太郎「駄目、ですかね?」

久「ん……ま、いいけどさ」

~連休初日、朝

移動中

京太郎「近いっていっても、それなりに距離はありますね」

まこ「そりゃのう……まあ着いたら麻雀三昧で、休むヒマはないけえ。いまのうちに休んどりゃええ」

京太郎「けど、まこ先輩はさっきから、その書類……」

まこ「大会関係のじゃ。出場は個人とはいえ、部長の仕事じゃこれは。お前さんらには、負担かけんようにせんとなぁ」

京太郎「先輩……」ジーン


京太郎「――ってなことがあった。来年は、誰がそうするんだ?」

優希「……咲ちゃん?」

咲「……和ちゃん?」

和「……ゆーき、には……お願いできませんよね……」チラッ

京太郎「俺もいたら手伝うけど、たぶんほとんど県外だぞ」

和「ですよね……」

優希「ま、春になったらムロミカが入ってくるじぇ!」

和「!! そうです、室橋さん……それに加藤さんが来てくれます! これは戦力になりますよ、京太郎くん!」

京太郎(……やべえ、誰だ、わからん……)

咲「……和ちゃん、和ちゃん」

和「なんです、咲さん?」

咲「スモークチーズは……じゃない、これは三尋木プロのネタだよ……」

和「?」

咲「その、ムロちゃんマホちゃん、あと……えっと、加藤さん? のこと、京ちゃんは知らないよ……合宿でのことだから……」

和「…………あっ」

和「す――すいません! 京太郎くんっ……私、なんてことを……」カタカタ

京太郎「」

優希「……京太郎、なんか言ってやってくれ……」

京太郎(トラウマになりすぎだろ……)

京太郎「……これはいつか、みんなと話しないといけないかもしれないなぁ」

京太郎「――あ」

京太郎「やべえ、そうだ! 今日……夜は電話とかできるかわからないからな」


京太郎「……もしもし、玄さんですか? お久しぶりです、須賀です」

玄『は、はひ! 玄です!』

『……ふむ、京太郎くんか。どれ、私も――』

『お父さんはあっちに行ってようね~』

玄『…………』

京太郎「……あの、いいですか?」

玄『う、うん、ごめんねっ』

京太郎「いえ、大丈夫です。突然すみません……」

京太郎「今日、玄先輩の誕生日だったって、思いだしたので……おめでとうございます」

玄『――っっ!』

京太郎「すいません、プレゼントとか、なにもなくて……」

玄『ううん、そんなことっ……大会の予選とか、準備とか、色々あるもん! それに、お祝いしてくれただけで、十分だよ!』

京太郎「そう言っていただけますと……」

玄『それで、連休中は合宿とかするのかなぁ? そうだ、よかったら松実館に――』

京太郎「そうなんです。東京で、ちょっと集中して打つみたいで」

玄『』

京太郎「阿知賀のみんなも、合宿とかですか?」

玄『あ、うん……い、色々とね! 計画があるのです!』

京太郎「そうですか……それじゃ、お互い頑張りましょう!」

玄『……そうだね。阿知賀はみんなで行くから! 京太郎くんの応援もするよ!』

京太郎「宥先輩と、憧もですか?」

玄『そうだよ……みんなで応援するから、絶対――優勝してね!』

京太郎「……頑張ります。玄先輩も、穏乃や灼さんが相手ですけど……全力で、ぶつかってくださいね!」

玄『もっちろん! 朝刊で京太郎くんとツーショットは、私なのです!』

京太郎「はい?」

玄『ぁ――う、ううん、こっちのこと……それじゃ、またね!』

京太郎「あ、はい。では……ツーショット?」


東京到着

京太郎「東京駅から二時間……」

久「本大会では、もっと近くに泊まるから安心しなさい」

咲「でもこんな遠くに、練習できる場所があるんですか?」

久「あるわよー。古い旅館を連盟が買い取って改築したとかでね、宿泊施設と練習場があるの」

まこ「そりゃすごいのう」

和「採算の問題もありますけど……そんな場所なら、もっと利用者が多いのでは?」

久「遠いからねぇ……そこまで多くはないと思うわよ。大会前だし、わざわざ東京で合宿する人もいないし」

優希「うちが特殊だったんだじぇ……」

久「ついでに、お風呂の管理をしてくれる人はいるけど、食事に関しては自己負担です」

京太郎「なるほど……俺の出番ですね!」

久「」

まこ「ええんじゃ! お前はっ……お前さんは、練習してればええっ……」

咲「そうだよ! 私も料理するし……和ちゃんだって、ねぇっ?」

和「そ、そうです! それに京太郎くんとのディナーは、今年の――」

優希「今年の?」

和「――いえ、なんでも……と、とにかく京太郎くんは、麻雀に集中してください!」

京太郎「いや、お前らも練習しないとだろ」

まこ「ふむ……ならわしと、久で用意するか」

久「そうね……あー、こんなことなら美穂子連れてくればよかったわ」

まこ「池田が泣くぞ……」

施設到着

京太郎「……たしかに、元旅館だ……小さ目だけど、しっかりしてるし、部屋数も多い……」

京太郎「厨房も広いな、これは使い勝手もよさそう。うーん、アップして松実館のみなさんに見られるのは困るけど……」

京太郎「小さく日誌に更新しとかないとな。連休は東京の某所、連盟の施設で合宿です」

京太郎「元旅館らしく、厨房は広いですね。板長は俺だ! なーんて」


『……旅館の経営とか、興味あるの?』
『ほら! 板長さんも後継者探してるし、お父さんも乗り気だし! あれだったらいつでも――』
『落ち着け』
『板場に入りたいなら、いくつかアテがある。その気なら、ここででも聞かせてくれ』


京太郎「……うん、余計なことしたな。写真だけにしとけばよかったか……」

京太郎「とりあえず荷物だけ置いて、練習開始かな……うーん、やっぱ昼も夜も作ってもらうのは悪いし、厨房は使いたいし、あとで話しておこう」

久「大丈夫、話し合いで、昼は私たちが。夜はみんなでってことになったから」

京太郎「おうわぁっ!? 部長、ここ俺の部屋ですよ!」

久「知ってるわよ、呼びに来たんじゃない……へー、結構広いわね。一人で使うには、広すぎるかしら?」

京太郎「男子部員が入ればって感じですね……けど、みんなの部屋から一番遠いのが、この部屋ですし」

久「……夜こっそり入っても、バレないわよね?」

京太郎「ちょっ、駄目ですよ!?」

久「ふふっ、冗談に決まってるでしょ……さて、練習場はわかってるわよね? すぐ来なさいよー」

京太郎「心臓に悪い人だ……」

施設前

??「……ここが連盟所有の、高校生雀士練習宿泊施設……」


誠子「ここがそうなんですね。けどなんで、今年はこっちに?」

淡「そーだよー! いつもだったらあれじゃん! ゴージャスな新設計合宿所使ってるじゃん!」

尭深「都心から離れてて、のんびりしてる……いいかも」

菫「その辺の理由はコイツに聞け……っていうか、お前プロだろ。フットワーク軽すぎるぞ、それに仕事あるだろ」

照「本大会で解説してって。あとは優勝者とエキシビジョンとかも」

菫「それまでの仕事は?」

照「新人動かして迷子になられても困るから、当日までなにもないって。失礼」

菫「さすが、よくわかってる……」

尭深「エキシビジョン、やるんですか?」

照「やらない。男子は打たないらしいから」

淡「えー! いいじゃん、私と打とうよー!」

菫「優勝する気なのは頼もしいが、油断はするなよ……」

誠子「団体、今度は宮永さんいないんだから、ネリーに勝ってよ」

淡「個人だって勝つよ、勝つからね!」

尭深「それで……ここに来た理由っていうのは?」

菫「ああ、そんな話だったな」

照「ここ、京ちゃんが来てるみたい。ほら」

誠子「……ほんとですね」

菫「お前……それだけのために、ここまで連れて来たのか!?」

照「誘ってほしくなかった?」

菫「そうは言ってないだろう!」

誠子「素直になりましょうよ……あれ、おとなしいね、淡」

淡「……ちょ、ちょっと待って、キョータローいるの?」

照「いるよ。あと、咲たちも」

菫「……それは、まずくないか?」

照「どうして?」

誠子「私たち、清澄のメンバーとは打てないですよ?」

照「私と菫と、京ちゃんと打てばいい。あと誰か、プロの人と」

菫「お前、新人のくせに誰か呼んだっていうのか……」

照「たぶん、京ちゃんが誰か呼ぶんじゃないかなって」

尭深「ありえますね……」

照「シロには連絡しといた。ダルそうだったけど、予定なかったら来るでしょ、京ちゃんいるし」

菫「やりたい放題だな……私も、巴に連絡しておくか、一応」


淡「……なんか、やばい……お宿に、キョータローとって……想像したら、なんか……変……」キュンッ


~白糸台組が施設に潜入、そのしばらく後

泉「ふひー、着いたぁ……」

浩子「なるほど、練習場と合宿所が一緒なんは便利ですね。ちょい遠いですけど」

雅枝「大会予算確保して、その余りで泊まれるいうたら、こんなとこや。ご飯も各自で用意するように」

千里山モブ1「了解でーす」

千里山モブ2「ところで監督は、ここ止まらんのですか?」

雅枝「寝んにだけは戻ってくる。それ以外はあっちこっち挨拶回りやな」

千里山モブ3「えっ、ちょ、ご指導いただいたりとかは……」

雅枝「ここまで来て、付け焼刃な指導してもしゃーない。とりあえずは身内で打ちまくって、地力を伸ばし」

雅枝「……ま、それ以外の分はちゃんと考えとるから、私がおらん間は、普通に打っとればええ」

浩子「はいはい、承知です」

雅枝「あとは任せんで、浩子。ほな、夜までハメ外さんと、真面目になー」

千里山モブ4「……ほんまに行ってしもた」

泉「しゃーないです。私らの結果やと、監督の言葉だけで、色んな人納得させなあかんのやろし……申し訳ないわ」

浩子「大会で最低準決勝、及第点なら決勝、合格するには優勝しかないわな」

泉「三箇牧だけでもあれやのに、永水と龍門渕、白糸台に臨海……ほんま、頭痛なります」

浩子「悩んでもしゃーない。入ろか」

千里山モブ1~4「はい!」


千里山モブ5「……んー? あれ、ここって……やっぱり、そうだよねぇ……」

千里山モブ5「須賀くんおるやん……ちゅうことは、清澄もおる? 練習にはなりそうや……あ、泉は打てへんのか」


~連休初日、昼


久「さて、とりあえず練習場に到着ね」

京太郎「元は宴会場って感じですかね。ひろっ!」

和「……あれ? 先輩、どなたか先客が――」

まこ「おかしなことじゃないわい。連盟に登録しとる学校なら、だいたい利用できるみたいじゃあ」

久「全国出場組なら、使用料も安いみたいだしねぇ」

優希「なるほど、それで私らも……」

咲「でもそれだと、一緒には打てないですよね……」

京太郎「大会前にトラウマ植えつけてやるなよ……」

咲「そ、そんなことしてないもん! 麻雀を楽しんでるだけだよ!」

久「愉悦、か……」

和「父の口癖ですね」

優希楽しそうなお父さんだじぇ」

まこ「……そうか?」

京太郎「ともかく、挨拶はしておいたほうがいいですよね。向こうも7人いらっしゃるみたいだし――」

久「そうね。まこと京太郎と、一年一人行ってきなさい」

京太郎「………………和、頼むわ」

まこ「じゃな」

和「あ、はい」

久「無難ね」

咲「異議あり!」

優希「選抜に偏見があるじぇ!」

京太郎「あのー、こんにちは。練習中お邪魔しますが――」

誠子「ん?」

京太郎「俺たち、今日からここを使わせていただく、長野の清澄――ぇ……」

誠子「や、久しぶり」

まこ「ん、あんたぁ、白糸台の――」

誠子「白糸台高校麻雀部部長、亦野誠子です。どうぞよろしく――って、いまさらか。まこは修学旅行以来だっけ」

京太郎「誠子先輩!?」

誠子「そりゃね、東京だし、いてもおかしくないでしょ?」

京太郎「そりゃ、まぁ、そうですが……」

和「白糸台ならほかにもっと、利便のいい合宿所があるのでは?」

誠子「あるよー、先代たちの遺産でうっはうは。けどまぁ、その先代の意向でね、とりあえず初日の練習はここ。宿泊所は違うけどさ」

京太郎「……先代の、意向……?」

和「まさか……」

照「そのまさか、京ちゃん!」ガバァッ

京太郎「出たな、照さん!」

久「……まーたいるし、照ってば」

咲「お姉ちゃん……」

優希「ほう、これは……去年のリベンジをする、いい機会になりそうだじぇ」

照「出た、なんてひどい……」

京太郎「すいません……」

まこ「ま、OG連れとるんはこっちもじゃ、それはええが――そっちはプロじゃなかったか?」

誠子「色々あってね……とりあえず、大会までヒマみたい」

尭深「ということで、どうぞよろしく……個人戦メンバー同士打たなかったら、問題ないよね?」

京太郎「こっちはほとんどなんですが」

菫「淡のようなやつは、そちらの竹井と打たせて経験を積ませたいものだがな」

京太郎「菫先輩まで……」

菫「そう呆れた目で見るな……照に呼びだされて、ここに来るまで知らなかったんだ」

淡「とか言いながら、キョータローが来るって聞いて、一番嬉しそうにしてたけどねっ」

菫「だ、黙れ!」

京太郎「こら淡、わかりやすい嘘ついてんじゃねーっての。ねぇ?」

菫「…………そうだな」

京太郎「あるぇー?」

まこ「やれやれ……」

和「他人事とは思えません……」

久「では――僭越ながら、監督代わりに私が仕切らせていただきます」

照「菫は?」

菫「任せる。お前と違って、あっちは頼りになるからな。貸しは絶対に作りたくないが」

久「あらひどい……んーと、それじゃルールね」

久「京太郎の部屋には入らないこと」

京太郎「そこ!?」

和「……妥当ですね」

咲「お姉ちゃんに言ってるんだよ?」

照「そんなことで私と京ちゃんの愛は止まらない」

淡「……は、入らないけど……でも、呼ばれたら、仕方ないよね? よね?」

京太郎「呼ばねーよ」

淡「むっ……ふーんだ!」

久「で、次は……咲、和、優希は、誠子ちゃん、尭深ちゃん、淡ちゃんとの対局禁止ね。照と菫はオッケー。ほかの虎姫の子もね」

久「で、そっちの個人戦組も、咲たちとは打たないように。私と京太郎、まこでよければお相手するわ」

尭深「昨年のリベンジ、果たさせていただきます……」

久「いいわよ。楽しみにしてる」

照「そうそう、こっちはシロにも声かけてるから。間に合えばそっちも使っていいよ」

京太郎「……シロさんは照さんと違って、忙しいと思うけどなぁ……あと、ダルそうだし、こっちには来ないと思いますけど」

照「……ひどいことを言われた気がする」

菫「来たら、の話だよ。そうそう、こっちは巴に声をかけておいた。来るかはわからないがな」

京太郎「え……」

菫「大学と寮が同じでね。まあ……常識人の彼女がいてくれれば、なにかと助かるだろう」

京太郎「たしかに……」


久「さて、以上のルールを守って、楽しく麻雀を――」

ガラッ

泉「ここが対局場ですね――うわっ、広っ!」

浩子「あら、先客さんおるやん。すんません、騒がしいして――あっ」

京太郎「あっ」

誠子「……千里山女子?」

菫「……すごい偶然だな」

照「こっちは私が呼んだんじゃないよ」

久「でしょうね」

まこ「新体制のレギュラーっちゅうとこか」

和「団体戦は、三箇牧だったのでは?」

優希「それは地方王者枠だじぇ。予選は千里山女子に決まったみたいだな」

咲「それと、個人戦も誰か……いた、かな?」

泉「……私や」

京太郎「だったな。おめでと、泉」

泉「ん、おおきに……京太郎くんも、おめでとう」

京太郎「サンキュー」ニッ

泉「が、がんばろな///」

和「敵ですね」

咲「ろ、露骨だよ、和ちゃん」

久「では――追加で、個人戦は泉ちゃんも、他校の個人戦枠とは試合しないこと」

久「それに加えて、千里山と白糸台は、全員が対局禁止です。これ守らないと、全校出場停止になりますから」

浩子「はいはい、心得てますよって。弘世さん、よかったらうちの泉、見張っといたってください」

泉「え゛っ」

菫「……そうだな。私と同じ卓にいれば、注意してやれる。あとで相手をしよう」

泉「」

淡「ぶーっ、スミレってばあの……い、いず……イズミ、ばっかり可愛がっちゃってー」

照「二条さんは素直なタイプだからね。ここにいる一年じゃ、一番菫の好きそうなタイプ」

尭深「昔の誠子に似てる、よね? あ、いまもか」

誠子「……褒め言葉と思っておくよ」

尭深「褒めてるよ?」

誠子「あ、そうなんだ」

京太郎「……人数増えたな、足りるかな……」

和「……なんのお話ですか?」ニコッ

京太郎「いや、差し入れとか、あと晩飯も食うなら――と、思って……」

和「………………」ニコニコ

京太郎「あ、や、あの……なぁ?」

和「………………」ニコニコ

京太郎「息抜きだから! 練習した上でだから!」ドゲザッ

和(……あ、楽しい)ゾクッ

優希「のどちゃん、タコスくらい作らせてやってほしいじぇ……」

咲「タコス限定なんだ……」

まこ「……いつんなったら練習するんじゃあ」

三日間、初顔合わせがあったら会話する、はず……はず……



~練習開始


京太郎「しっかし、この人数がいても対応できる……自動卓の多さはさすがですよね」

泉「……そうか?」

淡「少ないくらいじゃない?」

京太郎「清澄と比べてんの!」


久「……個人で準備できるなんて、一台しか無理に決まってるじゃない……」

和「誰も先輩を責めてませんよ……」

咲「うちのを持ってきてもいいんだけど……」

照「家に帰ったとき打てないからダメ」

咲「だよね……」

優希「……咲ちゃんとチャンピオンの、家打ち……見たいような、怖いような……」

咲「楽しいよ、お正月とかもやってるから、おいでよ」

照「さすがにもう、お年玉は賭けてないから平気」

菫「プロになったんだ、なおさらだな」


京太郎「正月、咲に呼ばれてたらやばかったな……」

浩子「そういえば、正月は姫松やったなぁ?」

京太郎「松の内は長野にいましたよ。あと岩手」

誠子「岩手? 宮守?」

京太郎「シロさんに呼ばれて、初詣に……みんなだと思ったら、シロさんだけでした」

尭深「デート?」

京太郎「そんな色っぽいもんじゃないですって」

浩子「……長野から呼ばれて岩手にって、十分色っぽいいうか……友達の気軽さではよう行けへんやろ」

誠子「それが京太郎くんでしょ」

浩子「せやな」

京太郎「よーし、練習頑張るぞー」

京太郎(……白糸台に千里山女子、それに卒業した先輩方の影……)

京太郎(なぜだろう、まだ参加者が増えそうな気がする……大丈夫なのか? 持ってきた材料、6人の三日分程度なのに……)

京太郎(買いだし行かないとな、今夜でも大丈夫だろうけど)


ガラッ
シロ「はぁ……ダル……」

京太郎「やっぱり!」

シロ「……なに、その反応」

京太郎「な、なんでも……あ、お疲れさまです。お茶どうぞ」スッ

シロ「ん、ありがと……あんま驚かないね、いきなりなのに。あと、久しぶりなのに」

京太郎「卒業式に会いましたよね?」

シロ「……二週間だよ、久しぶりでしょ」

京太郎「おっしゃる通り……お久しぶりです、シロさん」

シロ「うん。照から聞いたの?」

京太郎「はい。照さんならあちらに。文句言います?」

シロ「お礼言っとく」

京太郎(なぜ!?)

シロ「さて、と……じゃあ、ダルいけど練習しよっか。京太郎、指導してあげる」

京太郎「……あれ? 対局じゃないんですか?」

シロ「プロになった私や照は、もういままでの私たちじゃない」


咲「……って言ってるけど、そうなの、お姉ちゃん?」

照「すごいよ解説用に、知識いっぱい詰め込まされたから。詰め込み教育ってよくないと思う」

久「打ち筋見る限り、変わんないのよねぇ……」

優希「よーしっ、ここで一発――こないじぇ!」タンッ

照「ロン、7700」

優希「じぇ……」


京太郎「……大丈夫かな」

シロ「いやならやめる?」

京太郎「いやではないですけど、不安です」

シロ「大丈夫、色んなところ取りながら教えてあげる」

京太郎(不安だ……)


照「ちょっと抜けていい?」

久「最後まで打ちなさい、終わったら私もすぐ行く予定だし」

優希「せ、先輩方の気迫がやばいじぇ」

咲「……全員飛ばして、次は京ちゃんだね♪」

優希「こっちも!?」

シロ「全然ダメ。なんでここで、それが切れるの」

京太郎「え、だってこっちに取れば、牌効率いいですよね? テンパイ率上がりますし、和了も近いですよ」

シロ「それで勝てるのは男子だけ。女子のトップ相手には通用しない」

京太郎(……俺の相手、男子なんだけど)

シロ「……女子にも勝ちたいでしょ?」

京太郎「もちろんです」

シロ「なら、こっち捨てて。そのまま続けて」

~数巡後

京太郎「おっ」カチャッ

京太郎「おぉっ」カチャッ

京太郎「なんと!?」カチャッ

京太郎「シロさんすげぇっす!」

シロ「尊敬した?」

京太郎「しました!」

シロ「惚れた?」

京太郎「惚れました!」


一同『』ガタッ

モブ一同『座っててください』


シロ「もっかい言って」

京太郎「シロさんすげぇっす!」

シロ「そこじゃなくて……」

京太郎「尊敬しました!」

シロ「でもなくて……」

京太郎「惚れました!」

シロ「……ふふ、愛いやつ」ナデナデ

京太郎「続き、お願いします!」

シロ「えっ……いいの、続けて?」

京太郎「えっ、そりゃ、指導しにきてくれたんですよね?」

シロ「……ああ、指導か。ん、了解」

京太郎(なんのつもりだったんだろう……)

照「シロずるい」

シロ「呼んだの照でしょ……」

久「っていうか、白望が来る前に指導してあげればよかったじゃない」

照「……咲が、久しぶりに打ちたそうにしてたから……」

咲「してないよ!?」

和「してましたよ? ジーッとお姉さんのほうを見て、卓と見比べていました」

咲「う、うそっ!?」

優希「残念ながら事実だじぇ」

咲「~~~~~っっ////」

照「でも楽しかったよね」

咲「……うん」

誠子「美しい光景ですね」

菫「ああ」

泉「卓の惨状はやばいですけどね」

浩子「せやな」

尭深「白糸台では日常茶飯事です」

まこ「マジか……」

淡「もうちょいマシだよ。サキーとテルーが一緒だと、こうなるんだー。楽しそう―!」


京太郎「すごいな……シロさん、前に打ったときとは全然違う……けど、そりゃそうだ」

京太郎「プロになったんだ。ってことは、健夜さんたちと同じ位置、同じ強さってことで――俺も、もっと上手くならないと」


シロ「……後輩のプレッシャーが凄まじい」

照「まあ、そのうちなるだろうし(いま同じとは言ってない)」

久「あのバケモノトップ連中に追いつくんだ、大変ねー、二人とも」

シロ「洋榎とセーラもだよ。ほかにも色々」

咲「…………」

優希「咲ちゃんもそうなるんだじぇ?」

咲「私は……決めてないから。ただ、楽しく麻雀を打てる環境にはいたいけど」


菫「宮永姉妹が楽しく麻雀を打てる環境」

泉「地獄か」

浩子「まあ地獄に勝たな優勝はないな」

誠子「生きるって辛いなぁ……」

尭深「それが現実だよ、誠子」

和(なんてネガティブなんでしょう……)



京太郎「――っと、いかんいかん。いつまでも余韻に浸ってる場合じゃない」

シロ「浸っててもいいよ。浸しやすいように、くっついてようか?」

京太郎「結構です。さて、練習再開しましょうか」

シロ「真面目だなぁ……」

京太郎「ダルくなりました?」

シロ「京太郎がいるのに、それはない」

京太郎「……ども」

シロ(照れちゃって、かわいい)

巴(……よ、呼ばれたっていうか、教えてもらったんだものね……)

巴(で、後輩が大会に向けて練習中なら、顔をだしてもおかしくないし……)

巴(さ、差し入れもってきても、大丈夫だよね……?)

巴「すぅ……はぁ……よし!」

ガララ
巴「し、失礼しまーす」コソッ

菫「それだ――ロン」

和「はい……」

浩子「SSSさんキレッキレですね」

淡「なんでー!?」

誠子「それと松実さんと弘世先輩ので、次鋒戦ひどかったよね」

まこ「臨海の留学生がおったし、飛ばさんと撃ち落とされとったからう……」

尭深「最荒の次鋒戦だったって、サイトに出てたね」

シロ「相変わらず、東場は飛ばすね……」

優希「ふっふん、当然だじぇ」

シロ「でもこうされると止まると思うから。注意してね」

優希「くぎゅうっ!?」

巴「」

巴「……や、やっぱり邪魔になったらいけないし、帰ろうかな……」

京太郎「ん? あ、巴先輩! 来てくださったんですね、お疲れさまです!」

久「あ、狩宿さん。こんにちは。今日は後輩のために、わざわざどうも」ニッコー

巴「い、いえ……」

巴(清澄の、前の……京太郎くんを、こんな風にした張本人っ……)

久「……あ、あらー? 睨まれてないかしら」

泉「そら睨まれるでしょ。派遣先の人ら、みんなこんな感じちゃいます?」

久「……ああ、なるほど……泉ちゃんも、そう思ってるのかしら?」

泉「……京太郎くんが否定してなかったら、そう思ってたと思いますけど」

久「はぁ……ほんと、京太郎には頭上がんないわね」

泉「せやったら、もっとなんとか……してあげられるんとちゃうんですかっ」

久「……ま、ね。だけど、それで改善されるのは京太郎から私への感情でしょ? 私はね、あの子に嫌われても、憎まれてもいいの」

久「その上で、今後は尽くしてあげるつもりだから……踏み台にしてくれれば、それでいい」

泉(……思てたような、冷血女とは……ちゃうんかな?)

巴「あ、そ、そうだ! これ、その……よかったら、晩のオカズにでもして、ね?」

京太郎「……いい匂い。ガネと、キーコンもあります?」

巴「どっちかっていうと、北九州のがめ煮に近くしてるかな。でも味付けは、キーコンに近いからね」

京太郎「鹿児島の料理、懐かしいです……ありがとうございます」

巴「よかった……それじゃ、私はこれで……」

京太郎「ちょちょちょ、待ってください! せっかくですし、打っていってくださいよ」

巴「い、いや、私なんて、この面々に比べたら……ね?」

京太郎「――そんなことないです。俺はヘッタクソなときから、巴先輩に練習付き合ってもらって、ちょっとは上手くなれたって思ってます」

巴(……差し入れとか掃除ばっかりしてた気がするけど、そこは突っ込まないほうがいいかな)

京太郎「だから、俺にとって巴先輩との練習は、初心を思いだす練習です……上を向いて、上に行こうとする気持ちが、強くなるんです」

京太郎「大会前なら、これ以上の練習はないと思うんですけど」

巴「――もう、しょうがないなぁ。うまいことばっかり言って……わかった、それじゃ、ちょっとだけね?」

京太郎「ありがとうございます!」

照「……シロ、聞いた?」

シロ「うん、付き合ってたって」

菫「練習にな」

照「過去形ってことは……」

シロ「いまは、違うっ……」

菫「だから練習……」

浩子「弘世さん、そっとしときましょ」

菫「……そうだな」




京太郎「よろしくお願いします!」

久「……嬉しそうね、京太郎」

泉「なに。そんなこの人……えっと、狩宿さんと打つの、楽しみなん?」

巴「この子、いつもこんな感じじゃないですか?」

久「……怒ったり、泣いたりもするわよ」

泉「不安もようもらしてますよね」

巴「そっか……じゃあ京太郎くん、私と話すときは笑顔を意識してくれてるんだね」

久「………………」ゴッ

泉「………………」ゴッ

巴「………………」ゴッ

京太郎(すごい気迫だ、これは楽しくなるぞ……)

泉25000→
久25000→17000
巴25000→
京太郎25000→33000


京太郎「ロンです、8000点」

久「あいたたたた……はい、どーぞ」

京太郎「……余裕ですね?」

久「なに? 慌てる竹井久が見たいのかしら」

京太郎「まさか。それでこそって感じです」

久「でしょ? さーて、本気だすわよー」


泉「……ほんまに、あの人のこと信頼してんねんなぁ……なんでやろ」

巴「ねぇ……本人も、なにも聞いてないみたいなのに」

泉「……悔しいす」

巴「……だね」


泉25000→24700
久25000→17000→16500
巴25000→24700
京太郎25000→33000→34100


京太郎「ツモ――のみです、300、500」

泉「やすっ!」

久「景気悪いわねー」

巴「ま、まあまあ……」

京太郎「いいじゃないですか、早く上がって流すのも大事でしょ……」

泉「……まあ、この人はなにやってくるかわからんて、先輩にも聞いてるし。正解かも」

巴「春が言ってました。緊張してるとひどいけど、ノッてきたら怖いって」

久「」

京太郎「ああ」

久「ああってなによ!」

京太郎「洋榎先輩も、似たようなことを。あとは胡桃先輩も」

久「あ、あいつらぁっ……」

泉(対局経験あるとこやと、色々あるんやなぁ……私らも、阿知賀とか新道寺とか、白糸台やったらなぁ)


菫「SSS☆」


泉「……やっぱええわ」


泉25000→24700→21700
久25000→17000→16500→13500
巴25000→24700→18700
京太郎25000→33000→34100→46100


京太郎「ツモ――3000、6000です。どうですか?」

泉「ドヤ顔やめーや」

京太郎「いや、別にドヤってないだろっ?」

巴「調子いいですね……やっぱり、もう絶対届かないなぁ」

久「こらこら、後輩の前で諦めるとこ見せないの」

巴「わ、わかってますよ……京太郎くんは、どんなときでも諦めないで、打ってましたからね」

京太郎「……色んな人が、それを教えてくれたんで」

京太郎トップ終了


京太郎「よし、ツモ! これで終わりですね」

久「うーん、最後は結構よかったんだけど……しっかり早上がりにしたわね」

京太郎「予選で怒られましたから、照さんと部長に……」

巴「……えっ?」

泉「なんでチャンピオン、長野の予選に行ってるん……」

久「あなたたちも、お金と時間があればそうしたでしょ?」

巴「……まぁ」

泉「私はしませんて」

京太郎「俺だったら泉の試合見に行くけど」

泉「はうっ」カァッ

巴「……ひさっびさにキレのあるの見ましたね」

久「自分の試合なくてってことで、泉ちゃんの試合だったらってことだろうけど……私たち全員試合あったらどうするか、聞いてみたいわねぇ」

京太郎(……全部回れる、っていうのは黙っておこう……あれ、疲れるしな) ※あれ=ルーラ




久(――にしても……私は最初から、全力だった)

久(特に最後……これは上がれる、ともすれば捲れるって思ってた、なのに――)

久(ルーフトップでは、美穂子やゆみがいたにしても……それとは関係なく、京太郎には勝てるって思ってた)

久(……なんだ、私の油断ってこと?)

久「――じゃ、ないわよねぇ」クスッ

京太郎「? なにか言いました、部長?」

久「んーん。ただね、京太郎がおっきくなったなーって、思っただけよ」

京太郎「また伸びましたかね……身体測定来月ですし、わかったら教えましょうか?」

久「そゆことじゃないわよ。京太郎、ちょっと――」グイッ

京太郎「おっと……はい?」

久「…………」ジー

京太郎「……近くないですか?」カァッ

久「……ありがと、強くなってくれて……」

京太郎「……部長のおかげで――」

久「それ、もうやめましょ。私はたしかに、色んな学校を回らせたけど、それだけ」

久「あなたが強くなったのは、あなた自身の努力……自分で、認めてあげなさい、ね?」

京太郎「……はい。ありがとうございます」

京太郎「それでも――部長への感謝と尊敬は、忘れないです」

久「……余計なの、背負っちゃって……ま、好きになさい。推奨はしないけどね」

~練習終了


京太郎「そろそろ日も暮れてきましたし、夕食の準備をしないといけませんね」

久「朝から晩までは打てるけど、その辺りが大変といえば大変よね」

京太郎「なら、俺が――」

久「………………」ニッコー

京太郎「ナンデモナイデス」

久「……ま、みんなで作りましょ。そのほうが楽しいでしょ?」

京太郎「はい!」


まこ「対応が慣れてきとるの」

和「ところで――ええと、千里山のみなさんは、こちらにお泊りなんですよね?」

浩子「そうやね。お台所はまだ見てへんかったな、そういうたら……私らも入れるくらいかな」

咲「結構広いですよ。元旅館ですから」

泉「なら、私らも使わせてもらうわ」


淡「………………」

誠子「ほら、なにしてんの淡ー。旅館戻るよ、夕食の時間決まってんだから」

淡「…………えっ」

尭深「ここは近くにある練習施設として使うけど、宿泊先は旅館だよ?」

菫「京太郎くんがいるからといって、毎日来るわけにもいかない。ほかの練習予定も組んでいる……だったな?」

誠子「はい」

照「私と菫はこっちに来られるけどね」

淡「なにそれずっこい!」

尭深「……そうされるんですか?」

菫「き、決めていないっ」

誠子「昔の先輩なら、当然だろって即答でしたよね」

菫「悩むくらいはしただろ!?」

尭深「まあ、どちらでも構いませんけれど。どちらも後輩ですし、同じチームだったか、イケメン男子かの違いです」

菫「表現に棘があるな……」

照「私はこっちだよ、残念だけど」

誠子「知ってたので、別に残念でもないですね」

照「」テルーン

巴「ん? それじゃ菫さん、こっちに泊まるの?」

菫「いや、寮に帰るつもりだよ。巴もそうだろう?」

菫「そもそもここは、高麻連の施設だからな。部のコーチや監督でないと、泊まるのは引け目を感じる」

巴「そうですね……いえ、ではなくて。今日の夕食、智葉さんがお店の予約してるって――」

菫「ぁ――」

巴「ですから、こっちに戻ってくるなら、大変じゃないかなって……」

菫「いやっ、大丈夫! 覚えてるぞ!」

巴「ふふっ、意外とそそっかしいんですね、菫さん」

菫「その……智葉には内緒に……」

巴「ええ、承知しています」

照「それ私も行きたい」

シロ「私も。辻垣内智葉でしょ? さすがに気になる」

菫「……急だな」

巴「人数増やせるか、聞いておきます」

京太郎「楽しそうですね」

照「京ちゃんもおいでよ」

京太郎「すいません、こっちで準備がありますし……巴先輩から、お料理もいただきましたから」

シロ「照はここに残って、京太郎の料理食べると思ってた」

照「あまり知らないところだから、帰り道で迷うと困る」

菫「知ってるところでも迷うだろ、お前は」

シロ「だろうね」

巴「予約確認できましたよー。増やせるそうですけど、時間ギリギリですから、急ぎましょう」

菫「そうか。では京太郎くん、また」

京太郎「はい。皆さん、お気をつけて」

京太郎「さて、ということで夕食です」

泉「うん」

和「はい」

優希「だじぇ」

咲「だね」

まこ「おう」

久「そうね」

浩子「……あかんわ、普通の台所と色々違いすぎる……」

京太郎「――ってことなので、俺が指示するってことでいいですかね」

モブーズ『お願いします! 板長!』

優希「板長?」

和「料亭なんかの板場で、料理長を務める人のことです」

京太郎「……日誌、見た?」

モブーズ『さぁ、知りません!』

京太郎「……と、とにかく、指示はしますので……始めましょうか」

京太郎「――んじゃ、そんな感じでお願いします」

泉「……あの、私だけ呼ばれてないんやけど」

京太郎「お前は俺の手伝い頼む」

泉「!?」

久「……人選の理由は?」

和「私も気になります」

咲「私もだよ!」

浩子「……すごいな」

まこ「申し訳ないわ……」

優希「タコス作ってくれるなら、なんでもいいじぇ」

京太郎「作らねーから」

優希「異議ありだじぇ!」

京太郎「あのな……いや、正直なとこ、泉だけは料理の腕がわかんねーからなんだよ」

京太郎「和はわかる、咲もいわずもがな。まこ先輩もな。部長は……まあ、下手って感じはしないし、優希は不安だけど――」

優希「おい」

京太郎「それは清澄でフォローすればいいだろ。で、浩子先輩は、監督とか絹恵さんとかから、色々聞いてるし」

浩子「ほんま、口軽い一族やなぁ……」

京太郎「で、ほかのレギュラーとは、結構雑用仕事一緒にしてたから、色々できるの知ってるし」

モブーズ『ふふん』ドヤァ

京太郎「ってことで、泉だけは未知数なんで。なにがあってもフォローできるようにってこと」

久「……悔しいけど、なかなか説得力あるわね」

和「では白ということで」

咲「っていうか、揉めてる間にお腹空いちゃったよ……とりあえず準備しよっか」

優希「この芋の天麩羅うめーじぇ」

まこ「つまみぐいするなっちゅうに」

浩子「とりあえず回収しときますね……」


京太郎「ってことで、よろしくな」

泉「あ、はい……」

京太郎「で、ぶっちゃけお前、どれくらい料理できる?」

泉「……あんまり、かな?」

京太郎「家庭科の実習でやるようなことは?」

泉「えっと、こう……本とかレシピとかあれば、ある程度……」

京太郎「了解。なら、まずこっちの野菜を――」

京太郎「……で、そうそう……あ、手切らないように、注意しろよ?」

泉「牌掴めんようなったら困るしな」

京太郎「あほ。女の子の肌だからだろ」

泉「きゅう」

和「……こっちはできました」

久「こっちもよ。まこは?」

まこ「あ、ああ、もうすぐ……」

咲「あっためたよ。優希ちゃん、できた?」

優希「お、おう……できてるじぇ……」


モブーズ『清澄さん、雰囲気が……』

浩子「料理終わったらまともなるて。ほっとき……にしても、あのアホはなぁ……」


京太郎「おっと俺も終わらせないとな……よし、と。泉、口開けて」

泉「え?」

京太郎「あーん。熱いから気ぃつけろ」

泉「はふっ、ほっ……お、おいひっ」

京太郎「よし、ならこれで完成だ」


和「」

久「」

咲「」

優希「おお、もう……」

まこ「入れ込み過ぎるといかん、いうことはようわかった……わしも、気ぃつけんとなぁ」


浩子「…………」ビキッ

モブーズ『ぶ、部長、落ち着いて! 食事ですっ、もうすぐ食事です!』


京太郎「がんばったな、泉。毎日ちょっとでもやれば、もっとできるようになるかもしんねーぞ」

京太郎「……けど、麻雀の練習のが大事だよな。こういうのは、慣れてる俺とかに任せとけばいい」

泉「……いや、その……もうちょい、やれるようには……なるわ。頑張る」

京太郎「そうか?」

泉「やって……その、女の子のほうがって……かっこ悪いやん」

京太郎「俺は気にしねーけどなぁ。ほら、最近だと夫の主夫も流行ってるだろ?」

泉「~~~~~~~~~~っっ!」ボシュゥッ

京太郎「……こういう食事ってさ、よその学校と交流すんのも楽しみじゃね?」

久「そーかもねー」

咲「わかるよー」

和「友人が増えるのはいいことです」

京太郎「……お前ら、近くない? 部長も」

三人『気のせいよ』

京太郎「そーすか」

まこ「……大丈夫、ちょっと旅行でテンションおかしいなっとるだけなんじゃ」

浩子「いや、私こそ取り乱してしもて……泉、悪かったなぁ」

泉「いえ、私はなんも……へへ、へへへぇ……」

優希「戻ってくるんだじぇ、泉っ!」

モブーズ『揚げ直しやのに、おいしい天麩羅……』

モブーズ『煮物も、すっごい味がしゅんどる……』

モブーズ『あのメガネさん、ええ嫁さんなるで』

京太郎(……たしかに、巴さんの料理……めっちゃくちゃうめええええええええええ!)

京太郎「……こんなの、毎日食いたいなぁ」ボソッ

京太郎「お礼のメール、送っておこう」

久「あとにしなさい。お行儀悪い」

京太郎「もちろんです」

久「……あと、これも食べて」

京太郎「あっはい」

久「……毎日食べたい?」

京太郎「え? いや、まぁ……はい」

久「……そっか、そっかそっか」ニヘー

京太郎(おなじようなことを、咲と和にもされた……まあ、実際に毎日食べたら、だいたいは飽きるだろうけどな)



~食後

京太郎「はい、お風呂です。まあ片づけして、トランプしたあとだけど――まあそれはいいでしょ」

京太郎「男湯は貸切状態。そして壁の向こうには女湯がある――」

京太郎「さてどうしよう」

京太郎「ふぅ……まあ、天井まで壁で埋まってるし、覗いたりすることはできない」

京太郎「せいぜいが、聞き耳立てるくらいだ……普通ならな」

京太郎「けど、俺には……師匠との修行で身に着けた、超聴覚があるっ……」

京太郎「これがあれば、隣の浴室から壁越しでも、すぐ隣にいるように女子の声が聞ける――」


チャプ チャプ チャプ

京太郎「…………あれ?」


ガラガラガラ

京太郎「…………えっ?」


泉「せやから! インターミドルで当たっとんねんて! 稼ぎ負けてなかったら、私が一位やったんや!」

和「はぁ……」

京太郎「」

泉「はぁ……やないわ! ほんま、二位の名前くらい憶えときて……ん?」

和「すみません、三年時は進学や部活の引継ぎで色々と、バタバタしてて――泉さん?」

泉「ぁ……な、あ……え……えっっ!?」

和「はい?」クルッ

京太郎「」

和「」

泉「な、なな……なに――」ブルブル

和「……なにをしてるんですか、京太郎くん」ニコッ

京太郎(おわた)

京太郎「――誓って言う、俺は絶対、男湯に入った」 ※タオルで目隠し中。下半身も完璧ガード

泉「私らかてそうや!」

泉(うわああああああああああああああ! 見られた、絶対見られたっ、湯気あったいうても見られたっ……し、しかも……原村と並んでとか、最悪やっ……)ペターン

和「それは間違いありません。でも、京太郎くんがそこで嘘をついて、女湯に入る必要性も感じません」

泉「そんなんあるやろ! 男やからや!」

和「いえ、それなら隠れているべきです。堂々と入っていたのは、誰かが入ってきても困らないか……あるいは、誰も入ってこないと思っていたからでは?」

京太郎「……冷静で助かる。松実館でも同じ目に遭ったけど、あのときは憧が暴れて大変だった」

和「憧は、派手に見えても奥手で、男性が苦手ですから――待ってください、いまなんと?」

京太郎「松実館で――あっ」

和「泉さん、やっぱり間違っていました。これは黒ですね」

泉「やな。常習犯とはたまげたで……とりあえずみんなに報告して、警察やな」

京太郎「許してえええええええええええ! 話! 話を聞いて!」

泉「――確認してきたで。おっそろしいな、ここの風呂」

和「どうでした?」

泉「赤地の暖簾に、男湯って書いてあったわ」

京太郎「だろ!?」

和「……えと、では……ここは男湯?」

京太郎「そりゃそうだろ!」

泉「けど、赤地やったらほかにも誰か、入ってくるんとちゃう?」

京太郎「ちゃんと字を見ねーなんて、お前らくらいだよ、ほんと……」


ガラガラガラ

久「長野の合宿でも広いお風呂だったけど、ここもいいわねぇ」

まこ「色々疲れたからのう……しっかり浸かって休むとするかいの」

咲「あ、和ちゃん。泉ちゃん。先に来てたんだね」

和「え、ええ、つい先ほど……」

京太郎「」ゴボゴボゴボゴボ

泉「堪忍やで、ちょっと我慢しててやっ」

和「……ゆーきがいません、これは不幸中の幸いですね」

泉「なんで?」

和「あの子は、隙あらば私の胸を触りにきますから……もしいま入ってくれば、こっちに近づき、京太郎くんの存在がバレてしまいます」

泉「そうなる前に、私らで隠して連れだすか――」

和「皆さんが上がるまで、ここに沈んでいるか、どちらかですね」

京太郎(……いや、死ぬだろそれ。ちなみにルーラは、建物内で使うと頭ぶつけるんだ)


ガラガラガラッ

優希「出遅れたじぇ!」

浩子「清澄さん、ちっこい子ぉが迷っとったんで、連れてきましたよ」

久「あら、ありがとう。お礼に背中流すわ、座って」

浩子「あら、おおきにです」

優希「いたーっ! のどちゃん発見、おっぱいの元を吸わせろー!」


和「状況は最悪です」

泉「せやな」

京太郎(……あ、やばい、意識が……)

 →to be continued


和「……泉さん、ここはお任せします」ザバァッ

泉「原村っ!? ど、どうする気ぃや……」

和「ゆーきの気を引いて、そちらに近づかないようにします」

泉「そ、そのあとは……っちゅーか、私だって先輩入ってきてんのにっ……」

和「私たちで皆さんの気を引き、京太郎くんにはソロで脱出してもらう必要もありますね……」

京太郎(俺のガタイと髪の毛……目立つだろうなぁ……っていうか、なんで俺、こんな冷静なんだ……)ゴボゴボゴボゴボ


和「入る前に、身体と髪を洗いましょうね、ゆー……っっ……」

和(そ、そうです、その手が――シャンプーしていれば、みんな目を瞑る!)カッ

優希「おっ、そうだな。んじゃ先に洗うかぁ! のどちゃん咲ちゃん、洗いっこしよーじぇ!」

和(あとは、いかにしてこれを伝えるか……)


京太郎「い、泉……ちょっと……」

泉「しっ、静かにっ……」

京太郎「ちょっと、吸わせてくれっ……」

泉「!? すすっすす、吸うってなにをや!」

京太郎「しっ、声でけぇよっ……息させろっつってんだよ!」

泉「~~~~っっ、ちゃ、ちゃんと言いや!」

京太郎「あー、頭クラクラしてきた……まだ無理なのか?」

泉「そら入ったばっかやし……いや、ちょい待ち。原村が――」


和「髪を洗ってから身体を洗うほうが、効率的なんですよ。ですから、先に髪から――」

まこ「ああ、それは聞いたことあるのう」

久「洗い直しじゃだめなの?」

浩子「エコロジーじゃないですからね、それやと」


和(これで、皆さんが髪を洗ってくれれば、チャンスが――)


少女洗髪中……

和(いまです、泉さん――)


泉「ナイスや原村! きょうっ……い、いまやで、ゆっくり出て……」

京太郎「……目隠し、取ってくれ」

泉「あっ……」

泉「……ゆ、誘導、するから……それで……」

京太郎「絶対見ねーって」

泉「あ、あほか! そんなん当たり前やけど、不可抗力とか事故とかあるやろ!」

泉「私と原村だけならまだしも、ほかにも人おるし……事情も知らんのに無防備晒させたら、可哀想やろ!」

京太郎「……わかった、そこまで言うなら……頼む」スッ

泉「……任しときや」


泉(……こ、ここで、失敗したら……あ、やばい、緊張で脚が――)カタカタ

京太郎(……手が震えてる、それに呼吸も……これ大丈夫か?)

ツルッ

泉「あっ……」

久「へっ?」

泉「す、すんませんっ……」バターンッ

久「ちょっ、なにすんのっ、め、目がっ……」バタバタッ

まこ「なんじゃ、なにがあった?」ワシャワシャ

浩子「いまの声、泉か?」

泉「っと、だ、大丈夫ですっ」

久「大丈夫じゃない! だ、誰かお湯! 目がっ、目に泡ぁっ!」

咲「た、大変、ちょっと待っててくださいっ」

優希「咲ちゃんは髪短いし、もう洗い終わってるしな!」


和(――い、いけません、このままではっ……)

泉(堪忍っ……堪忍、やで……京太郎くんっ……)ジワァッ


京太郎「――――――」

京太郎(いや、大丈夫……超聴覚で、みんなの位置を把握して――)

京太郎(空気の微かな揺らぎと、温度さから……出口を、感じ取る!)


京太郎(……出口はこっちだ、あとはみんなが気づく前に……)スッ カラカラカラ

カチャンッ
京太郎(ミッション――コンプリートだ)




京太郎「………………」

京太郎「だっっっ……はぁぁぁぁ~~~~~~~っ……つ、かれた、マジで……」

京太郎「けど、落ち着いてる場合じゃない……俺にはやることがある……」

京太郎「とにかく、着替えて、それから――」

京太郎「………………なんだこれ」

京太郎「えっ、ちょっ……えっ? マジで? 女子ってこんな……こんなの……マジかよ……すげぇ……」


泉「…………なにがすごいん」

京太郎「いや、だってこんなの……普通、見た、こと……ない――」

和「それはそうでしょうね。京太郎くんは男性ですから」

京太郎「あっはい」

和「ご無事でなによりです。泉さんは、ちょっとのぼせたということで、私と一緒に戻ろうとするところでして」

京太郎「そ、そうか、大変だったな……あ、それと、すまん。助かったよ、は、はは、はははは」

泉「…………ヘンタイ」

京太郎「ちゃ、ちゃうねんっ」

泉「私の失敗帳消しにしたんは、か、かか……かっこ、ええとおもたのにっ……」ブルブルブル

和「さすがに私もドン引きです」

和(……二人きりだったら、もう少し……違ったかもですけど……)

京太郎「しょ、しょうがないんだよっこれは!」

和「叫ばれるのと大急ぎで部屋に戻るの、どっちがいいですか?」ニコッ

京太郎「」

泉「ついでに暖簾作り直しといて」

京太郎「了解です!」

和「それで、いつまで見ているんですか? 私たちも着替えるんですが。京太郎くんが凝視していらっしゃった、その布地に」

京太郎「し……失礼しましたぁぁぁ――――っっっ!」

京太郎「……くそう、どうしてこんなことに……俺は男湯に入ったのに、ほんとどうして……」

京太郎「菫先輩、俺は、どうして……」

菫『……とりあえず、外で風呂に入るのはやめておいたらどうだ』

京太郎「……そうですね」





京太郎「……の、暖簾作ってきたんだけど」

泉「…………うん」

京太郎「か、かけても大丈夫だよな? ほら、いまなら誰もいないし」

泉「ええんちゃう……」

京太郎「……か、かけてくるわ」

泉「うん……」


京太郎(……はぁ、空気がめっちゃ重い……大丈夫か、これ……)

京太郎(とりあえず、お茶――は、目が冴えるし……ジュースでも買ってってやるかな)


京太郎「泉ー、ジュース飲むかー?」

泉「……あのさぁ、京太郎くん」

京太郎「はいっ!」ビクッ

泉「……いや、なんでそんなん?」

京太郎「な、なんとなく……怒られるかと」

泉「……怒られるんは、私のほうやろ?」

京太郎「――へ?」

泉「だってそうやん。さっきのんかって、男湯に入ってた京太郎くん、そもそも悪ないし」

泉「もうちょいで、京太郎くんを覗き魔にしてまうとこやったし……私のミスで……」

京太郎「泉……」

泉「それで、もっと怒ってくたらええのにっ……私になんや、気ぃつこてっ……優しいしてっ、なんでなん!」

京太郎「それは――」

京太郎「いや、まぁ……下着見たのは、俺が悪かったし」

泉「せやな」

京太郎「」

泉「……ふふっ、冗談――でもないかな、半分は」

泉「……なあ、京太郎くん?」

京太郎「はい……」

泉「……下着、見たい?」

京太郎「見せてくれんの!?」クワッ

泉「見せるかアホォッ!」

京太郎「よくも騙したなぁっ!」

泉「騙してへんわ! その……ちょっと確認したかっただけや」

泉(私のことも、女の子として見てくれてるんか、いうことをな……ま、ちょっと安心したわ)

泉「――けど、普通はあれやろ。その……下着より、から……だ……の、ほう……見たいもんとちゃうんか」

京太郎「まぁ、うん……いや、あれはだから、普段見られないもんだったから、つい視線が――お、俺も興味あんのは中身だから!」

泉「ほんまかいな……」

京太郎「ほんとだっての! お前らが入ってきたとき、俺がどんだけ目を皿にしたか……あっ」

泉「…………」

京太郎「いや、あの、な?」

泉「……どっち」

京太郎「え?」

泉「私と原村とのどっちや!」

京太郎(泉か、和か、のどっちか……?)

京太郎「――泉」

泉「嘘やな」

京太郎「」

泉「嘘やろ?」

京太郎「……すいませんでしたぁっっ! おもっきり、和が見たかったです!」

泉「はぁ……ま、それはしゃーない。正直、女として羨ましいし……風呂場では、ガン見したくもなる」

京太郎「だよなっ!?」

泉「調子のりな」

京太郎「」ハイ

泉「もう、なんやの……なんで男子と、風呂上がりにこんな話せなあかんのや……」

京太郎「すまん、ほんと……」

泉「とにかくや……私は別に、怒っとらへんし……京太郎くんが、怒ってへんねんやったら……今日のことは、水に流したいんや」

京太郎「お風呂だけにな」

泉「」ジロッ

京太郎「」スマセン

泉「……ごめんな、理不尽に怒ってしもて」

京太郎「俺こそ、不快な思いさせたりして、悪かった……あと、風呂場では守ってくれて、助かった」

泉「ほな……これで仲直り、ええな?」

京太郎「あざっす!」

泉「あとで原村……和にも、謝っとかなあかんで」

京太郎「そうするよ……」

京太郎「……風呂はほんと天敵だな……入浴時間、暖簾の不具合……あと起こりそうなことってなんだ?」

京太郎「今後もあるとしたら、ほんと困る……なんかの呪いか? 霞さんたちに見てもらったほうがいいかも……」

京太郎「はぁ、気分転換しないと――」

京太郎「……誰かに、電話してみるか」

京太郎「……そうだな、なんというか……酸いも甘いも噛み分けた、大人の女性と話したいとこだ」

京太郎「そして……なるべくなら、おもちがあるほうが嬉しい……」

京太郎「……はやりさん、かな」


京太郎「もしもし、夜分にすみません。瑞原プロでしょうか」

はやり『そうだぞ☆ いつでも京太郎くんの電話を待ってます、瑞原はやりだよ~』

はやり『っていうか、どうしたの? 瑞原プロなんて他人行儀な……いつもみたいにはやりん☆って呼んでね☆』

京太郎「呼んでないっす……いえ、お伺いしてませんでしたけど、付き人さんとかマネージャーさんとか、そういう方がいたら、困るかなと思って」

はやり『そっか……気を遣ってくれたんだね。ありがとう、だけどそういう人はいないから――あっ』

はやり『そうだ、はやり閃いちゃった♪』

京太郎(やな予感が……)

はやり『京太郎くんっ、私の付き人やってみない? お給料もだすし、学校の時間も保証するよ☆』

京太郎「あー、やっぱそうなりますよね……」

はやり『どうかなっ?』

京太郎「魅力的な提案ですね」

はやり「そうでしょ☆ じゃ、決まりだね。来月から、よろしくお願いしちゃうぞ☆」

京太郎「――――えっ」


~4月

京太郎「……えっ」

はやり「今日からよろしくね、付き人クン☆」

京太郎「」

京太郎「魅力的な提案ですね」

はやり『でしょ? はやりもそう思ってたんだ~』

はやり『でも――やってくれないんだよね?』

京太郎「う……まぁ、そうなりますね、いまのところ……」

はやり『いまのところ?』

京太郎「はい。いまの俺は――多くの人が、日誌を見てくださってるとは思いますけど、所詮はTDN高校生です」

京太郎「目立った実績も、これといった能力もない、言ってしまえば一般人ですから」

京太郎「そんな俺が、はやりんさんの――人気アイドルの付き人なんてなっても、誰も納得してくれません」

京太郎「はやりさんの所属チーム、大宮も。事務所も、レコード会社も、ファンの方もです」

はやり『……そんなの、はやりが言えば誰も――』

京太郎「それだとしたら、なおさらできません。それは、はやりさんの評価を貶めることですから――付き人が、アイドルにさせることじゃありません」

はやり『――――そう、だね……ごめんね。はやり、ちょっと(婚期を)焦ってた……』

はやり『ありがとね、注意してくれて。助かっちゃったぞ☆』

京太郎「いえ、わかっていただければ」

はやり『でも、その考え方……誰よりも、付き人に向いてるって思うな☆ アイドルのことを第一に、それからファンを、所属する団体を……大事に考えてくれてる』

はやり『そういう子に、もっとアイドルと関わってほしいよ。それこそ、ファンを蔑ろにするような子がアイドルするより、よっぽど大事なことだと思う』

京太郎「……ありがとうございます。だけどはやりさん、俺は関わりたくない、とは言ってないですよ?」

はやり「……えっ?」


京太郎「俺が、認められるくらい努力すればいいんです――」

京太郎「手始めに、全国優勝を……ね」

はやり『……そうだね。だけど、それだけじゃまだ、足りないと思うよ?』

京太郎「そうですね。もし有名になるなら、それこそ照さんみたいに、個人戦連覇と団体連覇、くらい決めないとでしょうし」

京太郎「まあ、優勝はその一歩目ってことです。男子の道は狭い、だけど――プロにだって、なれるらしいですし」

はやり『!! なるのっ、プロに!?』

京太郎「……もっと強くなれたら、そういう道も目指したい、とは思ってます」

はやり『……うん、わかった……それじゃ、それまではやりも、現役でいるからね☆』

京太郎「はは、わかりました……」

京太郎「――寿引退なんて、しないでくださいね」

はやり『うん、もち――えっ』

京太郎「よーし、目標ができた気がする……また明日からも、全国に向けて練習、頑張りますよ」

はやり『あ、うんっ、えっ……いやいや、そうじゃないぞ☆ その、寿――結婚しちゃ、だめってことは……それは、その……』///

京太郎「それじゃ、おやすみなさい。夜遅くまで、ありがとうございました」

はやり『うん、おやす――じゃなくて! さっきのはやっぱ――』ブツッ

京太郎「あれ? はやりさーん……だめか、電池切れかな?」

京太郎「……頑張ります、俺」


はやり「電池ぃぃぃぃっっっ! あぁぁっ、せっかくだったのにぃぃっっ! もうやだぁぁっ!」バタバタ



~連休二日目、朝

京太郎「……知らない、天井だ」

京太郎「うーん、はやりさんと電話したあと、あっさり寝たんだっけ……疲れてんのかな」

京太郎「時間は……5時半、いつも通りくらいか?」

京太郎「さて、どうしたものか」

京太郎「――よし、清澄の部屋に起こしに行こう」

京太郎「っていっても、どうせ閉まってるだろうから……さて、閉まってたらどうするかな――」


~清澄高校、大部屋

カラカラカラ
京太郎「」

京太郎「えっ、ちょっ――」


まこ「」スースー

京太郎(眼鏡外してるとこは、対局以外じゃ見ないな。寝顔かわいい)

優希「だじぇぇぇ……ぬへへへ、まだまだタコスなら食えるじぇえ……」

京太郎(もう食えないじゃねえのかよ!)

咲「」クークー

京太郎(相変わらず寝相いいな)

和「ん……すぅ……んぅ……」

京太郎(エトペンが谷間に!?)

久「…………すぅ……くぅ……んんぅ……」コロン

京太郎(肌蹴すぎぃ!)


京太郎(……いやいやいや、落ち着こう。いや、落ち着いてる場合じゃない)

京太郎(なんで開いてんだよ、乙女が無防備すぎるだろ!)

京太郎(ってツッコミは、忍び込んだ俺が言うことじゃない……ここに男子は俺しか泊まってないんだから、俺を信頼してのことだろ?)

京太郎(いや、マジどうしよう……)

京太郎「……うん、春とはいってもまだ3月。明け方は寒いからな」

京太郎「……み、見ないようにな、うん……見ないように、布団を……」ゴソ

京太郎(やっぱあれかな、おもちがつっかえて捲れるんだろうか……)ゴソゴソ ムニュン

和「っ……ぁっ……んくっ……」

京太郎(ともかく、大会近いのに風邪引くと大変だからな……ちゃんとかけ直しておかないと)フニュッ ムニュゥ

和「んぅっ……はぁ……ぁんっ……あっっ……」ビクンッ

京太郎(しっかしあれだな……俺の布団と違って、ずいぶん柔らかい……いいなぁ、女子部屋)ムニュムニュ

和「はぁっ、あっ……んっ、ふっ……んぁっ……はぁっ……」モジモジ ビクッ

京太郎「っていうか、掴めなさすぎだろ。布団かけるだけだから、ちょっとだけ失礼しまっす!」クルッ

モミモミ フニュフニュ

和「んっ……んんぅっ……はぁっ……」

京太郎「」

京太郎「……冷静になろうね?」

京太郎「」

モミモミ

京太郎(………………アイエエエエエエエ!?)

京太郎(ナンデ!? オモチナンデ!?)

和「くぁっ……んっ、だ……だ、めっ……み、んな、が……あぅっ……」

京太郎(どんな夢見てんの!?)

京太郎(ってそうじゃねえ! て、手を離さないとっ……)バッ

和「ぁ――やっ……まっ、てぇ……」キュッ

京太郎「」

和「ぃ……です、からぁ……しば、らく……こ、して……」ムニュムニュ

京太郎(わーどーしよー こまったぞー てをつかまれてしまったー むねにおしつけられてるー)

京太郎(うわあああああああああああ! 違うっ、違うんだっ、俺は布団を直したいだけなんだああああああああ!)

京太郎(そりゃいたずらごころで入ったのは悪かったよ! けど違うだろ!? 布団をかけて、風邪引かないようにって、それだけで――)

和「きょ……た……くぅん……んっ……あっ……」

和「いっ……んくっ……くぁぁっ……も、とぉ……つ、よ……」ビクッッ ビビクンッ

京太郎「」

京太郎(……すぅ、はぁ……お、落ち着け、ままま、まだだ……あああ、あわ、あわてて……)


京太郎「お、落ち着いて、ここ、これを持って離せば――」ギュッ

和「――っっ! んぅっ……」グイッ

京太郎「!?」

ドサァッ

京太郎「ぁ……お……のど……」

和「ふふふぅ……ひゅかまえ、ましたぁ……えへへ……」ギュゥゥッ

京太郎(エ、エトペン、すまない……お前の位置を、奪っちまった……)モミュゥゥゥッ ムニュン

エトペン(ええんやで。のどぱいパフパフ、最高やろ?)

京太郎(くっそゲッスいペンギン野郎が!)

和「んぅ……くぅ……むにゃ……」

京太郎(やばい……起伏のたびに、お、おもちが……顔っ、顔挟んで……あぁぁぁ……)

和「きゅふぅ……きょ、たろ……く……ぅん……んぅ……もっとぉ……」スリスリ

京太郎(やめてやめて、頭撫でちゃダメ。あと脚でスリスリもやめて……)

京太郎(と――とにかく、頭を抜いて、それから……)グイッ

和「あっ……ま、待って――」ガバッ

京太郎「え――」

和「………………えっ」

京太郎「」

和「」パチパチ

和「………………」ボー

京太郎「ゆ、ゆめだよー」

和「……きょ、たろう……く……ん?」ゴシゴシ

京太郎「これはきっと夢なんだ。目が覚めたら布団の中で、すぐ朝ご飯準備して、朝練して、昼ご飯作って――」

和「なん、ら……夢、ですか……ふぁぁ……」ムニャムニャ

京太郎(ほっ)

和「なわけないじゃないですかっっ!」

京太郎「ですよねぇっ!?」

和「なっ、なな、な――なんっ、なにっ、し、して……」

京太郎「ごめんっ、ほんとごめんっ……そんなつもりじゃない!」

和「じゃ、じゃあどういうつもりで!」

和「わ、私の個室じゃないんですっ、その――み、みんなっ……咲さんだって、いるのに――」カァァッッ

京太郎「違うんだって! たしかに――その、いたずらで入った、それは最低だし、許されることじゃない!」

和「い、いいいい、いたっ、いたず――な、なにをしたんですかっ!?」

京太郎「なんもしてねぇぇぇっっ!(おもちいじったけど、あれはノーカン!)」

 ※ここまで小声、ここからも小声

京太郎「朝から起こしたら驚くだろうけど、どうせ開いてないだろうなーって思ってたのに、部屋が開いてて――」

京太郎「これはやばいと思ったけど、つい入っちまって、そしたら和が――」

和「わ、たしがっ……あ、えっと……な、なんでしょうかっ」

京太郎「……布団、肌蹴てたから……それだけ、かけてやろうと思って――本当なんだ! 信じてくれ!」

和「ふ、とん……それだけ、ですか……?」

京太郎「それだけだ!」

和「……本当に?」ムー

京太郎「誓って!」

和「……か、身体に……さ、触ったり、なんて……」カァァッ

京太郎「っっ……し、してな――」

京太郎「――く、ない……」

和「…………え」

京太郎「……っ……すまない、俺っ……俺は、最低だ……」

京太郎「最低の、痴漢野郎だ……和に、触っちまった……わざとでは、ないけど――」

京太郎「俺に拒むつもりがあれば、いくらでもできたのに……不可抗力を言い訳にして、すげえ触った――」

和「す、すごく――ぇ、あっ、えっ……」

和(ど、どど、ど……どこまでっ、どこまでですかっ!?)

京太郎「布団を直そうとしたけど、その……和の寝間着が、めちゃくちゃ……ゆ、緩いからっ……」カァッ

和「……あっ……やっっ!」バッ

京太郎「だから、見ないように直そうとして……布団と間違って、思いっきり……本当に、悪かった」

和(……っ……い、けません、これ……あの夢……ほ、本当に――)カァッ

京太郎「で、そのあと手を引こうとしたら、和が寝ぼけて掴んで――そこの、エトペンポジに、顔を……」

和(……覚えてます……夢で、しましたから……思いっきり、抱き締めて――あっ、ああぁああぁぁぁっ!)///////////////

京太郎「そのあとは――本気でやばかったけど、なんとか理性を保って……顔を、抜こうとしたんだ。そしたら――」

和「……私が、待ってって……それで、起きましたよね……?」

京太郎「そ、そう! いや、だけど……触ったのも、事実だ……そもそも俺が、部屋に入らなかったらよかった……」

和「――そう、ですね……」

京太郎「償えることじゃないとは思ってる。和を傷つけたし、怖がらせた……それは、どうしてでも償う!」

和「TSUGUNAIですか……」

京太郎「……和の好きなように、罰を決めてくれ……警察に突きだすのでも、抵抗なんてしない」

京太郎「一生、姿を見せるなっていうなら……そうする……だから――」

和「……わかりました。では、京太郎くん」

京太郎「…………」

和「……罰を、言い渡します」

京太郎「……ああ」

和「一生、私に姿を見せない――」

京太郎「わかった……」

和「――くらいなら……もっと、近くにいてください」

京太郎「――――――えっ」

和「……たしかに、驚きましたけど……起きてすぐに、京太郎くんの顔があったことは……怖いことでは、ありませんでした」

和「それに、その……か、勘違いをしてほしくはありませんけれど! 普通の男性だったら、即警察ですけど!」

京太郎「……だよな」

和「で、ですからそうではなく! その……京太郎くんなら、触られても……そんなに、イヤでは……むしろ、もっと……ウェルカムというか……」ボソボソ

京太郎「えっと……な、なんて? 聞こえにくいんだけど――」

和「――っっ! な、なんでもありません! いいから、黙って聞いててください!」

京太郎「はいぃっ!」

和「えっと、どこまで――と、とにかくです! 今日のことは……ほかの誰かに見られたわけでもないですし、私と京太郎くんだけの事件――ですよね?」

和「……まさか、みんなにもなにか――」

京太郎「し、してない! それだけは誓って! 和だけだ!」

和「///////////」

和「そ、そういうことですからっ、その……大会前に、変な事件になっても困りますし! その……二人の秘密にして、一生、誰にも言わないこと……」

和「これが、二つ目の罰です。いかがですか?」

京太郎「あ、ああ、それはもう……で、一つ目って?」

和「それは――派遣の間は仕方ないですけど、その……もっと近くにっていう、さっきの……です……」

京太郎「……けど、俺は和に――」

和「大丈夫です。京太郎くんがスケベなのは知ってますけれど、無理やり乱暴する方ではないと、知ってますから……」

和「そして、それ以上に優しくて、頼りになって……努力家で、真面目で……ついうっかり、身体に触ってしまったことを白状するくらい、正直ものですから」クスッ

和「離れられるより、傍にいてくださったほうが、心強いです」

京太郎「和……」

和「だから京太郎くん。もっと――もっと、私の傍にいて。私を見てください」

和「そして、困っていたら……助けてください、全力で」

和「それを約束してくださるなら……今日のことは、不問とします」

和「いかがですか?」

京太郎「――約束する」

京太郎「それで許してもらえるなら――とかじゃなく」

京太郎「和のことを、守る――って、俺が言えたギリじゃないか。こんなことして」

和「……いいえ。京太郎くん以外には、言えません」

和「よろしくお願いしますね、私の騎士さん――いえ」

和「執事さん?」クスッ


京太郎「――承知いたしました、お嬢さま」

京太郎「おはようございます、朝食ですよー」

咲「しまった……」

久「そうよね、朝もいるのよね……」

まこ「わしは手伝ったが」

和「私もです」

優希「タコスはどうしたー!」

泉「朝からそれはちょい辛い……」

浩子「イキイキしとんなぁ、あの男は……」


京太郎「和、コーヒーか紅茶か、ミルクもあるけど」

和「では、紅茶をください」

京太郎「トースト持ってきたぞ、熱いから気をつけてな」

和「はい、ありがとうございます」

京太郎「サラダのドレッシング、和風とシーザーどっちにする?」

和「シーザーで……あの、京太郎くん?」

京太郎「ん?」


咲「……なんか、和ちゃんにベッタリじゃない?」

久「臭うわ……なにかあったわね」

まこ「余計なこと言うんは、やめんさい」

優希「けど、のどちゃんの顔もあやしいじぇ」

泉「……やっぱりかぁ、あのおもちやもんなぁ」

浩子「言いな、辛なる」


和「その……や、約束を守ってくださるのは嬉しいですけど、えっと……」

和「も、もっと自然に、節度を守ってくださいっ」///

京太郎「心得ました、お嬢さま」

京太郎「さて、午前の練習だ!」

まこ「気合入っとるのー」

京太郎「そりゃもう!」


京太郎(……昨夜のことも含めて、あんなことになったのは俺が腑抜けてるのと、浮ついてるのが原因だっ……)

京太郎(師匠ならそんなことはないだろうけど……俺には、そこまでの能力はまだない……)

京太郎(だったら、そんなことにならないよう――疲れて倒れるまで、頑張るしかないっ)

京太郎「よし――練習の疲れには、甘い物だよな!」

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最終更新:2026年01月17日 13:32