~十数分後
はやり「はい、そーゆーわけで☆ 今日はよろしく! でも最初は、京太郎くんの指導からだけどね☆」
まこ「」
優希「」
和(……相変わらず、素敵な衣装です)
咲「ふわぁぁぁ……ありがとう、京ちゃん!」
京太郎「ああ、いいって……それじゃ、はやりさん。よろしくお願いします」
京太郎「それとこちらどうぞ。今日は少し暖かいですし、冷たい抹茶ご用意しました。お茶請けもよろしければ」
はやり「ありがと☆ それじゃ、始めよっか」
まこ「……なんで来られるんじゃ……すごいの」
和「事前に呼んでいたようですね、おそらく」
優希「なんで予想できるんだじぇ……」
京太郎「修行の成果だよ」
咲「愛だよね!」
京太郎「はいはい」
咲「誠意がないよ!」
はやり「それじゃ、今日は大会に向けて、ちょーっと難しくやっちゃうから☆」
京太郎「よろしくお願いします」
はやり「だけど大事なのは、いつも通りのリズム……忘れないでね、心臓の音に合わせて、落ち着いてね☆」
京太郎「はい!」
京太郎「……っ……こ、こっちで」
はやり「京太郎くん、アウト~」デデーン
京太郎「ぬわーーーーっ!」
はやり「ダメダメ、いつも通りって言ったのに、気負ってるよ」
京太郎「んー、そうかもしれませんね……難しくって言われたの、意識してます」
はやり「うん、そう思って言ったからね」
京太郎「えっ……あ、あああ! そういうことですか!」
はやり「そういうことだよ☆ じゃ、次はもっと難しくやるからねー、頑張ろう☆」
京太郎「はい、頑張ります……平常心、平常心……」
はやり(って、言ってる間は落ち着けないんだよねー。かわいいぞ☆)
京太郎「――ふぅ。ちょっと休憩だな……咲とはやりさんが、えらく楽しそうだけど――」
まこ「ありゃ本気はだしとらんなぁ」
京太郎「本気――ではないですね。けど、俺がよく打ってもらう手加減よりは、かなりガチですよ」
まこ「ちなみに、本気はどんなんじゃ?」
京太郎「たぶん、倒れるくらいだと思います。健夜さん、良子さん、大沼プロが本気で来られたとき、倒れましたから」
はやり「あれはひどかったよね☆
すこやんと良子ちゃんは、怒っておいたから☆」
京太郎「……聞こえてるんだ」
まこ「よそのことに構ってるっちゅうことは、まだまだ余裕あるっちゅうことか」
京太郎「そんなトップに追いつくために、今日も特訓だ」
優希「麻雀のとは言ってない」
京太郎「ま、麻雀のだよっ(震え声)」
京太郎「けど、三人とはやりさんが打ってたら、俺らが打てないんですよね」
まこ「――っ! す、すまん、すぐに場所空けさせるけえ……和っ、優希! どっちか京太郎と――」
京太郎「」
京太郎「い、いいですから! そういうつもりじゃないですから!」
まこ「だ、だがわしらはお前に……もっと麻雀を打たせようと……」
京太郎「打ってます! 毎日いっぱい打ってますから!」
まこ「ほ、ほんまかぁ……?」
京太郎「ほんとですって。だから――」
京太郎「ちょっと牌譜整理でもしてていいですか?」
まこ「」
まこ「だ、誰かすぐに席を空けろーっ!」
京太郎「落ち着いて先輩! 普通ですからっ、これが勉強になりそうだから言ってるんです!」
まこ「ええんじゃあ……京太郎、もう働かんでええ……麻雀を、するんじゃ……」
京太郎「…………」
京太郎(……夏までの間、きっと俺を一番気遣ってくれてたのは、まこ先輩だ……)
京太郎(だから、こんな反応してしまうんだ……う、うん、きっとそうだよな、うん……)
京太郎「まこ先輩、それなら一緒にしましょう。で、先輩が重要と思う牌譜、選んでくださいよ」
京太郎「それ見て勉強しますからっ」ニッ
まこ「あ……あ、ああ……わかった……それでええんなら、そうするか……」
京太郎「……先輩が、色々抱え込む必要、ないですよ」
まこ「……ああ、すまんな……」
京太郎「ふぅー、今日もよく練習したな」
はやり「お疲れさま、京太郎くん☆」
京太郎「ありがとうございました、はやりさん」
はやり「ううん、呼んでもらえて嬉しかったぞ☆」
京太郎「お前らも整列! 挨拶忘れんな!」
咲「あっはい! あ、ありがとうございました!」
和「本日はご指導、ありがとうございました……それと、露骨な勧誘はちょっと……その、学校の先生とか、お嫁さんとかにもなりたいので……」
はやり「お嫁さん★」ゴッ
京太郎「お、落ち着いてくださいっ……」
優希(東場の私より、何倍も速かったじぇ……正直、勝てる気がしなかったじぇ……)
京太郎「優希、どうした?」
優希「いや……あ、ありがとうございました、だじぇ」
まこ「うちの後輩が世話んなりました。これ、なんかあったときに使うよう言われとる、タクシーチケットです、どうぞ」
はやり「ありがと☆ だけど気を遣わなくていいよ、やっこちゃん呼んだから」
まこ(そっちのほうが気ぃ遣うんじゃが……)
はやり「さて――それじゃ、やっこちゃんが来るまで、一緒に待ってようか、京太郎くん☆」
京太郎「えっ」
咲「なっ」
和「…………」
優希「……そ、そう来るか……」
まこ「……京太郎、どうするんじゃ」
京太郎「おれぇ?」
京太郎「――で、だ」
優希「おう」
はやり「片岡さん、だっけ? あなたまで残らなくても、大丈夫だよ?」
優希「……そうは思うけど、その……」
優希「……京太郎! お前ちょっと、耳塞いでるんだじぇ!」
京太郎「えっ」
優希「いいから!」
京太郎「アッハイ」
京太郎(……なんも聞こえない。さすが師匠お手製の安眠耳栓だ……)
はやり「それで、どうしたのかな?」
優希「……私らは、先に帰った三人もだけど……京太郎に色々と押しつけたこと、後悔してるんだじぇ」
はやり「……そっか。だけど、京太郎くんは気にしてないって言ってるし、それは事実だと思うよ」
優希「それはわかるじぇ……だけど、だからってそれに甘えて、これからも色々押しつけるってのは、もうしたくないじぇ」
はやり「だから――京太郎くんの代わりに、やっこちゃんが来るまでの相手をしてくれるのかな?」
優希「京太郎が瑞原プロと待つっていうなら、それで構わないじぇ。だけど、京太郎も疲れて、休みたいこともあるはず――」
はやり「うん、そうかも☆」
優希「そういうときは、私ら――ほかの部員が残るから、京太郎は帰らせたいっていう……お願い、だじぇ」
はやり「……ん、なるほどね。わかったよ☆」
優希「ほ、ほんとか!? で、ですか?」
はやり「うん☆ あなたと、清澄の子たちが京太郎くんを大事にしてることはわかったし……私も、わがままで一緒にいさせたいわけじゃないからね」
はやり「できうる限り、京太郎くんの意思を尊重したい……それは今後も、そうするつもりだよ」
優希「ほっ……」
はやり「よしよし、よく頑張ったね。私にそういうこと言うの、怖かったりしなかった?」
優希「へへっ、対局より怖いこともなかったじぇ」
はやり「ふふっ、対局だと若い子は無意識に潰そうってしちゃうから★」
優希「えっ」
はやり「なんてね☆ ジョーダンだぞ☆」
優希(こ、怖かったじぇぇぇぇ……)ガクガク
京太郎(……まだ外しちゃだめなのかなー)ボー
数分後、靖子さんが車で迎えに来て、はやりさんは帰って行った。
京太郎「優希ー?」
優希「おう?」
京太郎「さっき、なに話してたんだ?」
優希「ふふん、お前にはまだ早いじぇ。大人になったら教えてやるかなー」
京太郎「なっ……は、はやりさんとそんな会話をっ……俺だってまだしたことねーんだぞ!」
優希「……なにを想像してんだじぇ、このスケベっ!」
京太郎「でまぁ、優希を送って家に帰ったわけだけど――」
須賀母「おかえり」
須賀父「うまいぞ」
カピー「キュキュキューウ (お帰りなさい、ご主人様!)」
京太郎「すき焼きするなら待っててくれよ!」
須賀母「あんたの肉は置いてあるわよ」
カピー「キュウウウン (ごめんなさい……)」
京太郎「カピーは悪くないって」
京太郎「おっと――そうそう、オヤジ。愛宕の小父さんから聞いたんだけど――」
須賀母「…………」
須賀父「……なんだ」
京太郎「俺らが九州にいた頃さぁ」
須賀父「ああ……」
京太郎「なんか、綺麗なおねーちゃんいる店で、モテモテだったって?」
須賀父「」
須賀母「へぇ……」
須賀父「……ご、誤解するなよ? あれは愛宕に連れてかれて、仕方なく――」
須賀母「京太郎」
京太郎「は、はい」
須賀母「残ったお肉、全部食べていいからね」
京太郎「ありがとうございます!」
須賀母「あなた」
須賀父「は、はい……」
須賀母「あっちで、ゆっくりお話ししましょう?」ニッコリ
須賀父「」
京太郎(グッドラック……)
京太郎(しっかしあれだな、雅枝小母さんと反応一緒じゃねーか……どこも奥さんって怖いな)クワバラクワバラ
京太郎「はぁー、うまかった……なんだかんだ、一人だとすき焼きとか鍋とか、しないもんなぁ」
京太郎「すき焼き風に肉を炊くってくらいか、やっても……はー、幸せ」ゴロゴロ
カピー「キューキュキュー (ボクもですー)」コロコロ
京太郎「よし、今日もやることやったら遊ぼうな」
京太郎「……いや、今日はいいか。遊ぼうな、カピー」
カピー「!!」
京太郎「連休中は構ってやれなかったし、ゆっくり遊ぼう……で、一緒に寝ようなー?」
カピー「キュゥゥ~ン! (ご主人しゃまあああああ)」
京太郎「よしよし、それじゃボール遊びからだな。慌てず、落ち着いてなー」
~3月第三週月曜、終了!
~3月第三週火曜
京太郎「ふぁぁぁ……お、オヤジおはよう」
須賀父「……貴様、ただでは済まさんぞっ……」ボロッ
京太郎「………………いや、うん……悪かった」
京太郎「けど、特定の人がいるのに、そういうとこに行くほうが悪いよな、うん」
久「あら」
京太郎「あ……おはようございます、部長」
久「部長はやめなさいったら」
京太郎「じゃあなんて呼べば?」
久「ハニーでいいじゃない、前呼んでたでしょ?」
京太郎「ハニー、今朝も綺麗だね」
久「」
京太郎「……すいません」
久「や、うん……ご、ごめん、やっぱり部長でいいわ」//////
京太郎「そうですか?」
京太郎「で、部長。こんな朝からどうしたんです」
久「あのね。卒業した学生が、大学入るまではヒマを持て余してる、とか思ってない? 色々やることだってあるのよ」
京太郎「なるほど、それは失礼しました」
久「まあヒマなんだけどね」
京太郎「ハニーてめぇこの野郎!」
久「ふふっ、だってさぁ? 普段この時間ってば登校に使ってたでしょ? その時間に寝てていいとなっても、なかなかそうはねぇ……」
京太郎「あー、それはあるかもしれませんね」
久「だからね? 京太郎に会えたらいいなーって、ここを歩いてたの。やっと会えたわ」
久「おはよ、京太郎」
京太郎「……っ……っす、おはようございます」
久「ふふ、そっちはさっき言ったわよ、おはようって」
京太郎「い、いいじゃないですかっ」
久「あら照れちゃって、かわいいわねー」
京太郎「からかうだけなら、もう行きますよ」
久「ああ、ごめんごめん。そうねぇ……ヒマといえば、今日はね、ルーフトップのシフト入ってないのよ」
京太郎「へえ」
久「だから、部室に遊びに行っていいかしら?」
京太郎「え、朝からですか?」
久「仮眠もできるし、それでもいいかもね。まあ放課後になるだろうけど」
京太郎「ぜひお願いします!」
久「……ふふ、いい返事ね。それじゃ、部室で待ってるわ」
京太郎「ありがとうございます!」
久「さーて、と……せっかくだし、一緒に行きましょうか」
京太郎「えっ」
久「いいじゃない、私服のお姉さんと登校できるなんて、儲けものでしょ?」
京太郎「……まあ、部長と登校ってのはいいですね」
京太郎「俺があちこち行ってたせいで、結局……在校中は、半分も会ってませんでしたから」
久「――あれは、私のせいでしょ。あんたは気にしなくていいの」
京太郎「気にしますよ……卒業式、行けませんでしたし」
久「……ん、ならお相子で」
久「だから償いとか、お返しとかなしにして――学校、行きましょ?」キュッ
京太郎「!! ちょっ、部長っ……」
久「あら、咲や和とはよく繋いでるじゃない。私だけはダメなの?」
京太郎「……見に余る光栄でございます」
久「ならよしっ……さ、急ぐわよ、京太郎♪」
~3月第三週火曜、昼
咲「どういうことなの、京ちゃん!」
京太郎「なにがだよ……」
咲「が、学校に部長が――じゃない、久先輩いたよ!」
京太郎「…………いま?」
咲「いまだよ!」
京太郎「なにやってんだ、あの人……いや、今朝登校中にお会いしてさ」
京太郎「で、遊びに来るとは聞いてたけど……放課後だって言ってたぞ」
京太郎「ま、ヒマなんだろうな。あんま気にしなくていいだろ?」
咲「気にするよ! さっきものすごいセクハラされてたんだから!」
京太郎「マジか! なにされたんだよ、お前……」
咲「私じゃなくて、ほかの女子だけどね……しかも満更でもなさそうだったし」
京太郎「マジか……部長、羨ましすぎる……」
咲「………………」ジー
京太郎「――じゃなくて、許せんな、うん」
咲「ふーん」ジー
京太郎「…………ちなみに、なにしてた?」
咲「知らない! ふーんだっ、京ちゃんのバカ!」
京太郎「……怒らせてしまった。というか、咲は最近、よく怒ってるよなぁ……そういうときは近づかないほうがいいって、オフクロに聞いたような」
京太郎「……あ、開いてる。失礼しまーす」
まこ「ん? おお、京太郎か」
京太郎「まこ先輩、お疲れさまです……えっと、その……噂、聞かれました?」
まこ「……久か」
京太郎「です」
まこ「ま、大会前じゃけえ、しゃーないわ。こっちとしても助かるしの……来月からはあっちも大学じゃ。今週だけなら、好きにさせたってもええ」
京太郎「そうですね……まあ、今日のは俺が頼んじゃったわけですけど」
まこ「そうだったんか……京太郎が頼んだなら、わしらにとやかく言う理由はないわ」
京太郎「えっ」
まこ「お前が久を嫌っとらん、っちゅうなら問題ないってことじゃ。わしが危惧しとったんは、そこだけじゃ……お前が嫌がるようなら、帰らせようとは思っとった」
京太郎「……うーん、結構言ってると思うんですけど。俺は誰のことも嫌ってないし、気にしてないですって」
まこ「お前が優しいいうことは、ようわかっとる……だからの、気になるんじゃ。気遣うて、言うてくれとるんじゃないかと……」
京太郎「まこ先輩!」
まこ「は、はい!?」
京太郎「俺は、清澄麻雀部の、部員ですか!?」
まこ「なっ……あ、当たり前じゃ!」
京太郎「ですよねっ? 俺もそう思ってます、だから――同じ部員、仲間に気遣いなんてしません!」
京太郎「気に入らないことは言います、謝れと思えば、そう言います! それは先輩が相手でも――部長が相手でも」
まこ「……そりゃ、両方わしのことかいの」
京太郎「……部長と、久さんが相手でも……です……」
まこ「くっふ……すまん、冗談じゃ。その言葉、信じさせてもらうわ……あ、それとな――」
まこ「わしのことは、先輩でもええ……来年以降、新入生が入ってきてもな。代わりに――久のことは、部長と呼んでやってくれ」
まこ「わしに気ぃつこうて、部長と呼ばせんようしとろうが……結局、一番そう呼ばれたがっとるんは、あいつじゃけえ」
京太郎(……まこ先輩が入るまで、部長は一人だったんだよな……シロさんたちは、それでも三人だった……)
京太郎「――わかりました。部長命令、ありがたく頂戴します!」
まこ「……ああ、ありがとな」
京太郎「お仕事、手伝いますね」
まこ「ん……こっちの書類、記入漏れがないかチェックしていってくれんか」
京太郎「了解です」
~3月第三週火曜、放課後
京太郎「さて、このときがやってきたか――いざ!」
ガチャッ
久「はーい、いらっしゃーい」
京太郎「お疲れさまです、部長」
久「……はいはい、お疲れさま」
まこ「……くくっ」
久「なによ」
まこ「いやぁ、別になぁ?」
和「久先輩、おヒマなんですか?」
久「そうよー、すっごいヒマよー。バイトもないし、ヒマでたまんないわー」
優希「どうするんだじぇ、買いだしでも行ってもらうとかか?」
咲「お掃除してもらうのもいいかも……」
久「……一応、監督だからね? OGは敬ってね?」
京太郎「そうだぞ、お前ら。買いだしとか掃除なら、俺がやるっての」
久「……ごめんなさい大丈夫平気だから私がやるからそんなのやりますむしろやらせてくださいなんでもしますから……」
京太郎「お、落ち着いて部長!」
久「ごめんねっ……ごめん、京太郎っ……」ギュゥッ
京太郎「部長……大丈夫ですから、俺はなにも気にしてないんです……」ギュゥッ
久(……計画通り)ニヤァッ
和「!!」
咲「……見た、いまの?」
優希「か、完全に狙ってたじぇ、最悪の悪女だじぇ!」
京太郎「こら! 誰が悪女だ、失礼だろ!」
久「ぐすっ、ううん、いいの……私が悪いんだから――」
京太郎「部長は悪くないです……よしよし」ポンポン
和「」ギリギリギリギリ
咲「」ゴッ
優希「」タコスッ
まこ「……ええから、そろそろ練習せんかい。本大会までは、一分一秒が大事なんじゃぞ」
京太郎「さて、部長も泣き止んでくれたし、練習するか」
和「……最初から泣いてませんでしたよね」
咲「京ちゃん……私、不安になるよ……」
優希「まったく、あのチェリー野郎め……」
久「だからいいんじゃない、かわいくて」
まこ「あんたは自重せい」
京太郎「さて、指導をお願いするんだけど――どうしようか」チラッ
久「」ソワソワ
まこ「……くふっ」
和「むっ……あんなことしたのに、いざとなるとあざといですね」
咲「ずるいよね!」
優希「さて、京太郎の選択やいかに――」
京太郎(うるせぇ……)
京太郎「……えっと、それじゃ――」
久「」バッチコイ
ガチャッ バーン!
健夜「こんにちは、京太郎くん!」
京太郎「」
久「」
ほか四人『』
京太郎「ど、どうぞ、お茶です……」
健夜「ありがとう」
久「……えっと、小鍛治プロ……このような狭い場所に、どういったご用件でしょうか」
健夜「それがね! 聞いてよっ、はやりちゃんが昨日ね、電話で自慢して来て――」
京太郎(で、指導を求めてるならと、ついやってきてしまったらしい――どうすんだこれ)
久「……京太郎。せっかくだし、小鍛治プロにご指導いただいたら?」
京太郎「あ、はい……いや、でも――」
久「あら、そのほうが強くなるわよ。ですが、小鍛治プロ。その分、ほかの子にもしっかりご指導願いますね」
健夜「うん、そこは任せてほしいな」
久「それと――今後は、なるべくアポイントを取ってあげてください。京太郎は温厚な性格ですが、何度も同じことがあると、さすがにストレスを感じることもありますから」
健夜「うっ……そ、そうだよね、宮永さんに注意されたのに……ごめんなさい、京太郎くん」
京太郎「ああ、いえ……って、咲が?」
咲「してないよ!」
和「ではお姉さんのほうでしょうね」
優希「立派だじぇ~」
まこ「さすがチャンピオンじゃ……」
京太郎「それじゃ……健夜さん、よろしくお願いします」
健夜「あの、ごめんね、私――」
京太郎「いえ、はやりさんだけにお願いした俺が悪かったんです……あとで、咲と打ってやってください」
健夜「…………はい、それじゃあ、今日はちょっと真面目に指導します」ゴッ
京太郎「!?」
健夜「さすがに自動卓まで取ったら悪いからね……手積みで、やろうか」
京太郎(こわい……)
京太郎「――ふぅ……これで、どうでしょうか」
健夜「うーん、普通ならそれでもいいんだけど……私ならこう」
京太郎「え、だけど……」
健夜「そうしたら、こう積もって――」
京太郎「えっ」
健夜「次にこれが入ってきて――」
京太郎「!?」
健夜「はい、あっというまに緑一色。ね、簡単でしょ?」
京太郎(なんでやねん)
健夜「さ、京太郎くんもやってみよう!」
京太郎「あっはい」
京太郎「……できちゃった」
京太郎「――――――」
久「――でね、それが――」
京太郎「………………」
久「ツモッ……」ダァンッ
和「それ、インカレでやるのは控えてくださいね」
久「わかってるわよー」
京太郎「…………」
咲「どうしたの、京ちゃん?」
京太郎「いや、なんでもない……健夜さんとの対局は、どうだった?」
咲「すっごく楽しかったよ!」
京太郎「……そっか、よかったな」
咲「うん! 今度は本気のあの人と、打ってみたいなぁ……京ちゃんは打ったんでしょ? 羨ましい……」
京太郎「はは、倒れちまったけどな」
咲「そ、そうだったね、ごめんっ」
京太郎「いや、だけどほんと、いい経験になったからな……打ってもらえてよかった」
咲「そうかぁ……よかったね」
京太郎「ああ」
京太郎(……部長、気にしてなきゃいいけど)
京太郎「そうだ、せっかくだし昨日の続きをしよう――」
まこ「おい待て」
京太郎「はい?」
まこ「……久も小鍛治プロもおるのにっ、なんでわざわざそれなんじゃっ」ヒソヒソ
京太郎「えっ、だ、だってほら、昨日のは中途半端だったし……気になると、集中できなくなるっていうか」
まこ「試験前の学生かっ」
京太郎「それに、その……牌譜チェックとかじゃないと、まこ先輩、指導してくれませんし……」
まこ「うっ……や、まぁ、それはのう……」
まこ「正直に言えば、わしなんかよりもよっぽど……京太郎のほうが、強うなっとるからじゃ」
京太郎「……えっ」
まこ「なんじゃ、気づいとらんかったんか……まったく、自分のことは過小評価するやつじゃあ、相変わらず」
京太郎「……な、ならなおさらですよ!」
京太郎「牌譜見るのは苦手ですから、ご指導、お願いします!」バッ
まこ「……はぁ、まったく仕方ない……小鍛治プロや久に恨まれるじゃろが……」
京太郎「大丈夫です、俺がちゃんと説明しますから」
まこ「…………約束じゃぞ?」
京太郎「はいっ……っていうか、先輩怖がりすぎですよ」
まこ「うむ……京太郎はええのう、物怖じせんで。久はともかく――小鍛治プロは、わしらみたいな高校生にとっては、雲の上の存在じゃけえ」
まこ「その辺に、遠慮はあるかもしれんな……」
まこ「ま、ええわい。昨日の続きから整理していくか」
京太郎「はい、お願いします」
~3月第三週火曜、下校
京太郎「はぁ~、さすがに目が疲れた……ちょっと肩にも来ますね」
まこ「お、京太郎も眼鏡にしよるか?」
京太郎「一応持ってますよ、変装用ですけど……ほら」
まこ「変装って……眼鏡かけたお前にしか見えんわい」
京太郎「おかしい、竜華さんは気づいてなかったのに……」
和「はぁ、肩が……」トントン
咲「くっ」
優希「ぐぬぬっ、あれだけ吸ってるのになじぇ……」
和「す、吸わせてません!」
健夜「ふふ、楽しい部員だね」
久「お恥ずかしい……」
京太郎「で――今日は東京……えっと、ご実家は茨城でしたっけ?」
健夜「あ、今日はこっちでホテルかな。たぶん、週末までいるかも」
京太郎「えっ」
健夜「……はやりちゃんと靖子ちゃんがこっちにいるみたいだし、一緒に遊ぼうと思って」
京太郎「そのあと東京まで戻られるんですよね、それで大会のお仕事――キツくないですか?」
健夜「大丈夫だよ、まだまだ若いからね」
京太郎「――ですね」
健夜「ま、まだまだ若いからねっ」
京太郎「なにも言ってないですよ!?」
健夜「……実際さぁ、2X才ってどうなのかな……」
京太郎(なぜ伏せたし)
健夜「たとえばさ……ほら、一般論だよ? 一般論として――たとえば京太郎くんが、12歳年上と付き合うとなったら、どう?」
京太郎「うーん……まあ、好きなんだったら、年齢とか気にしないんじゃないですか? その人の外見か内面か、そういった部分が好きになったんでしょうし」
健夜「っっ、だよね!」
京太郎「えっ、はい」
健夜「~♪ よしよしっ、元気出てきたぞっ、ありがとうね、京太郎くん♪」
京太郎「いえ、よかったです……その、健夜さん?」
健夜「ん?」
京太郎「本当に、健夜さんはお若いですよ……とても可愛らしいです」
健夜「!?」//////
京太郎「さ、帰りましょう。駅までお送りしますから。ホテルってその辺ですよね?」
健夜「ほ、ホテ!?」
京太郎「……健夜さんがご宿泊されるホテル、です」
健夜「あ、ああ……うん、そうだよ」
京太郎「では、行きましょう」
~3月第三週火曜、夜
京太郎「……部長、怒ってるかな」
京太郎「いや、あの人は怒る人じゃないけど……健夜さんだって、悪気があったわけじゃないし……」
京太郎「だけど、申し訳なくはあるよな……はぁぁ……」
カピー「キュキュ~、キュゥキュウ (ご主人様、元気だしてください……)」
京太郎「ああ、わかってる……俺が悩むことじゃないんだ、きっと……でも――」
京太郎「俺があそこで、部長を選んでれば……あの人は喜んでくれただろうな、とは思うんだよなぁ……くそっ」
京太郎「まああれだな、グチグチ言ってても仕方ない……遊ぶか」
カピー「キュゥイ (わぁい^^)」
京太郎「それと、お風呂掃除とブラッシングもしてやろうなー、よしよし」
カピー「キュイキュイキュイ (だいしゅきっ、だいしゅきっ)」ペロペロ
~数十分後
京太郎「よーし、これでさらに可愛くなったぞ」
カピー「キュゥゥ…… (ぶ、ブラッシング技術が……しゅごい……)」ビクビクッ
ピンポーン
須賀母「はいはーい。いったい誰かしら……」
京太郎「ん? 珍しいな、夜中に客か……」
須賀母「あら……え、そうなの? あ、どうぞ上がって……京太郎ぉーっ!」
京太郎「おれぇ?」
須賀母「あんたにお客さん、さ、どうぞ」
京太郎「」
咲「こんばんは」
まこ「邪魔するけえ」
優希「お、おっす」
久「やっほ」
和「お、お邪魔します……あ、あの、お義母さま! これつまらないものですが、どうぞ……」
須賀母「あらあら、ご丁寧に……京太郎、お茶ぐらいだしなさい!」
京太郎「……はっ! なんだ夢か」
優希「しっかりしろ! 夢じゃないじぇ!」
京太郎「お、おう、とりあえずお茶を……」
須賀母「で、誰が本命?」
京太郎「いいからどっか行ってろ!」
京太郎「……で、どうしたんですか、みんなして」
咲「私は久しぶりにカピーちゃんと遊びに」
まこ「大会での遠征申請に、京太郎の母君の承諾をいただき忘れてての」
優希「わ――たしは、その……お前が疲れてないか、様子を見に……」
久「私は部活での文句を言いに」
和「私は会いたくて」
京太郎「!?」
和「冗談ですよ。さっきお渡ししたおみやげ、あれのおすそわけです。皆さんの家を回って、最後にここに来たら偶々……」
京太郎「そっすか……まあ、なんもないとこですけど、ゆっくりしてってください。っていっても、結構遅いですから、無理しないでくださいね」
咲「なにいってるの、どっちかの家に泊まるなんて、よくあったじゃない」
和「!?」
京太郎「界さんがいないときだけな……」
優希「お、親父さんがいないときに、だとっ……」
久「やるわね、咲……」
まこ「……まさか、お前が咲の家に……」
京太郎「逆に決まってるでしょ!?」
咲「そ、そうですよっ、お父さんもいないのに、男の子を泊めるなんて、さすがにっ……」
和「ご両親がおられないからと、男子の家に泊まりに行くのもどうなんでしょうか……」
優希「のどちゃん家なら完全にアウトだじぇ」
咲「カピーちゃーん、久しぶりー」
カピー「キュゥ…… (咲か、久しいな)」
咲「あれー? 雰囲気変わったかなー?」
カピー「キュッ、キュキュ~ (おっと、こっちだったか……サキ、久しぶりっ!)」ゴロゴロ
咲「あ、いつものカピちゃんだ。よしよし、久しぶりだから、わかんなかったのかな?」ナデナデ
優希「おぉ……京太郎のペットにしては、よくできた愛くるしさだじぇ」
和「ありですね」
まこ「はい、確かに……いや、すんません、夜分に書類いただきに来てしもうて」
須賀母「いえいえ。部長さん、なのよね? うちの子、頼りないところがあるから、面倒おかけするけど……よろしくね」
まこ「ははは、なんの。京太郎は、部の誰よりしっかりしとって、よう助けてもろとります」
須賀母「ならいいんだけど……」
久「さて……京太郎」
京太郎「はい」
久「……まあ、小鍛治プロが悪くないのは、私にもわかるわ。で、あそこで怒って追い返せなんて、言いません」
京太郎「はい」
久「……文句、言いづらいわね」
京太郎「言ってください」
久「そういう趣味なの? ヘンタイ」
京太郎「そうじゃなくて!?」
久「ふふ、冗談よ。ごめんなさい……はぁーあ、でもね、言いにくいっていうか……ちょっと残念ではあったわ」
京太郎「……ですね」
久「登下校で会えることも、私がオフの日も少ないのに……その一日を、ほとんど一緒に打てなくて終わっちゃうなんて」
京太郎「すみません……けど、小鍛治プロがいらっしゃったなら、みんなと打たせてやりたいなって……」
久「それは、私もそう思ったわ……っていうか、その……私も、小鍛治プロと打っちゃったし……///」
京太郎「……俺の指導、ほったらかして……」ボソッ
久「っっ! さ、先に指導をあっちに頼んだのは、京太郎でしょ!」
京太郎「部長が受けなさいって言ったんでしょうが!」
久「あ――あれはっ、断って私にお願いしてほしかったのよ、察しなさい!」
京太郎「ンな面倒なのわかりませんって!」
久「ほんっと、鈍感なんだから! これだからどうて――」
京太郎「関係ないでしょおおおおおおおおおお!」
和「……仲良くケンカしだしましたけど」
優希「ほっとこうじぇ、犬も食わないじぇ」
まこ「同感じゃ」
咲「けど、このままだと京ちゃんの小母さんが――」
須賀母「……本当に、前の部長さんが本命だったのね……けど、相性よさそう」メモメモ
和「先輩、その辺で」
まこ「京太郎に迷惑かけるんじゃないわい、まったく」
優希「それより、せっかくみんないるんだじぇ、なんかしようじぇ!」
咲「!? み、みんな行動はやいよっ、待って」
久「京太郎が悪いんでしょ!」
京太郎「俺じゃないですよ!」
久「……ごめん、そうよね。私よね、全部……ごめんなさい、また……甘えるような態度で……」シュン
京太郎「っっ……す、すいません、部長……ちょっと言いすぎました……やっぱり、俺が頼めばよかったんです、部長に……」
久「そうよね。はい、それじゃ京太郎が悪いってことで」
京太郎「――――ぶ、部長ぉぉぉぉぉっっっ!」
久「あははっ、はー、すっきりしたわ……うん、私も悪い。あんたも悪い。んでもって、小鍛治プロはもっと悪い――でも、いい練習になった。それでいいでしょ」
京太郎「……はい、そうですね」
久「ん……じゃ、せっかくだし、邪魔が入らない状況で……麻雀、する?」
京太郎「えっ……」
久「指導でもいいし、対局でもいいわよ……せっかくメンツもいるんだから、好きに選べばいいわ」
京太郎「――好きに選んだとして、です」
久「はい」
京太郎「選ばれなかった人が、打ってないから~って、あとから言ってきたら?」
久「あなたに任せます」
京太郎(ずるい……)
久「ふふっ、女はずるい生き物よ。勉強になった?」
京太郎「竜華さん、優しかったなぁ……宥さんは、癒してくれた……
霞さんは、あったかかった……」
久「」ビキッ
京太郎「じょ、冗談ですからっ……(でもないけど)」
久「で、誰と打つのっ」
優希「……ん、大丈夫そうだじぇ」
咲「どうしたの、優希ちゃん」
優希「いや……昨日は瑞原プロ呼んで、今日は小鍛治プロが押しかけて……その対応で、疲れてんじゃないかってな」
優希「先輩とも約束してたみたいだし、それがダメになって、悩んでるかと思ったけど……さすが先輩、見事に解決しちまったじぇ」
和「ゆーき……」
優希「……やっぱり、京太郎にはああいう、年上のほうが……いいの、かもしれないじぇ……」
和「――SOA」
咲「なぜそこでオカルト!?」
和「年上がいいとか年下がいいとか、同級生がいいとか……年齢による好みなんて、そんなオカルトありえません」
和「あるのは一つ――その相手が好きかどうか、それだけです」
和「彼が誰かを選ぶまで――もしくは、私を選ばないまで、私は諦めません」
和「諦めるなら、ゆーきはそこで見ていればいいです。指を咥えて」
咲「の、のどかちゃん、言いすぎじゃ……」
和「咲さんも、そうされるならご自由に。私は――とにかく、あの二人を邪魔してきます!」ダッシュ
まこ「途中まではまともじゃったのに……急に小さい……」
咲「――行こう、優希ちゃん!」
優希「……わかったじぇ、いつまでもあのうざい痴話ゲンカ、見せられるのはゴメンだじぇ!」
まこ「やれやれ……ならわしも、久々に久の暴走止めちゃるかのう」
和「京太郎くん! いつまで先輩とばかりイチャイチャしてるんですか!」
京太郎「和!? イチャ――し、してねーよ!」
久「」ムッ
和「じゃあ私ともおしゃべりを――あら、なぜ麻雀の準備を?」
咲「あ、打つの!? 私も入れてー!」
優希「なら私も入るじぇ」
まこ「現部長が参戦せんわけにもいかんしのう」コキッ
京太郎「……えっと、一人抜けて、四人で打って、俺とそいつで牌譜取るっていうのは……」
久「あら、それでもいいわよ?」
和「じゃあ私が抜けますね」
咲「それも京ちゃんが選ぶんじゃないの?」
優希「だじぇ」
まこ「ほれ、遠慮せんと選べ」
京太郎「」
京太郎(……まあ、交代で打つことになるだろうし、最初は見ていよう)
京太郎(……なら、誰と?)
京太郎「ふむ……んじゃ優希、お前は見学な」
優希「なっ――」
久「それで、あと一人は?」
京太郎「俺です」
優希「!?」
京太郎「俺と優希で牌譜取りますんで、まずは四人で打っててください」
和「……あとで、交代ですからねっ」
京太郎「わかってるよ」
咲「勝ち抜け? 勝ち残り?」
まこ「抜けて、優希と交代じゃな」
久「なるほど、それでいきましょう」
和「あとは順次、女性が交代なわけですね」
京太郎(えっ、俺は?)
咲「というか、牌譜というか、結果と点数移動だけでいいですよね」
まこ「じゃな。夜のレクリエーションじゃいうのに、疲れることしてもしゃーないわ」
久「じゃ、勝ち抜けは京太郎と楽しくおしゃべりってことで」
和「ありですね。了解です」
京太郎(あ、はい、諦めました)
京太郎「……ま、俺の家だし仕方ないよな」
優希「そーそー、自業自得だじぇ」
京太郎「はいはい。ならのんびり見とくか」
優希「おうっ……で、だ……京太郎?」
京太郎「ん?」
優希「その……なんで、私だけ抜けさせたんだじぇ?」
京太郎「おー、なんか言いたいことがありそうだったんで。昨日とかも、はやりさんになんか言ったろ?」
優希「……ん、まぁ……けど、それは――」
京太郎「気になるから、それを聞かせろってことで抜けさせたんだよ」
優希「……言わないって言ったら?」
京太郎「別に、どうしようもないかな。それはお前の自由だし」
優希「そうか……」
京太郎「ただ――俺がタコスを作るかどうかも、俺の自由なんだよなぁ……」
優希「――っっ! ひ、卑劣だじぇ!」
京太郎「ふはははっ! なんとでも言え!」
優希「ぐぬぬぬっ……別に、どってことないことだじぇっ……」
優希「ただ――京太郎が、やりたいことをやれるようにって、言っただけだじぇ……」
京太郎「……おう」
優希「それについては、私も瑞原プロも、同意見だったじぇ……あと――」
優希「今日は……小鍛治プロが来て、先輩との約束がなくなって、色々悩んでそうだったんで……」
京太郎「なんだ、慰めてくれようとしてたのか?」
優希「っっ! そ、そんなわけねーじぇ! いつまでもウジウジしてたら、からかってやろうと思っただけだじぇ!」
京太郎「――そっか、ありがとよ」
優希「なんでお礼言うんだじぇ!」
京太郎「そら……俺のこと、そこまで考えてくれてたなら、礼くらい言うだろ」
京太郎「なにより、お前が……あの優希がそうまで心配してくれたってのは、結構クルもんがあった」
優希「――し、心配なんてっ、私はただっ……」
京太郎「罪滅ぼし、か?」
優希「……ぅっ……そんな、つもりはないじぇ……別に……」
京太郎「だよな。お前らが気にすることじゃねーんだ、そんなの……優希はいつも通り、偉そうな態度で、生意気なこと言ってればいい」
優希「……余計な、お世話だじぇ」
京太郎「そうそう。そうじゃねーと、こっちの調子が狂う」
優希「……ふんっ、バーカ。言われなくても、こっちは……いつだって、いつも通りだじぇ……この犬っ……」
京太郎「……おうっ」
和「……ええ、ですから、はい……咲さんの家に……明日は終業式ですから、荷物もいりませんし……えっ、制服!?」
咲「……私のじゃ、小さいもんね」
久「私のでも辛いでしょうね……朝から取りに帰るしかないんじゃないかしら」
まこ「和以外は、家の連絡は無事に終わったんかいの」
優希「バッチリだじぇ」
和「ふぅ……ああ、嘘まで吐いて男の子の家に泊まるなんて……これは、もう、責任を取っていただくしか……」////
久「戻ってきなさい」
まこ「最近の和は歯止めが利かんのう」
優希「咲ちゃんとイチャイチャしてたときも、こんなだったじぇ」
咲「へ?」
久「それは咲と京太郎? 咲と和?」
咲「ど、どっちともそんな、してないですからっ」
和「咲さんとは、たしかにすごく仲良かったですが……あくまで、女の子としての友情ですし……」
久「私と美穂子みたいなもんね」
まこ「ゆみさんと東横も――」
久「……そうね」
優希「目を逸らしたじぇ……」
和「それにしても、どうしてこんなに女の子の寝間着があったんでしょう、この家……ま、まさか!」
まこ「京太郎に限って、あり得るか?」
和「ないですね」
咲「へたれだからね」
優希「意気地なしだじぇ」
久「否定できないわねぇ」
京太郎「ぶぇっくしょ!」
京太郎「なんか変な噂してやがるな……」
ハギヨシ『おや、風邪ですか?』
京太郎「いえ、大丈夫です……ありがとうございました、女性用の寝間着を揃えてくださって」
ハギヨシ『ふふ、私からの、全国大会出場祝いですよ……では、グッドラック (今夜は的な意味で)』
京太郎「はい、頑張ります (全国大会的な意味で)」
~3月第三週水曜、朝
咲「すいません、小母さん。朝ご飯まで」
須賀母「こんな狭い家に泊まらせたんだもの、このくらいはね。みんなも遠慮しないで、どうぞ」
和「……っ……お、おいしいっ……」
優希「京太郎の飯より、圧倒的だじぇ……」
久「さすがです、お義母さま。こんなにおいしい料理なら、たくさん食べて京太郎くんも大きくなるわけですね」
須賀母「あら、お世辞でも嬉しいわね」
まこ「いやいや、世辞じゃあありませんて。本当にうまいです、秘訣はなんじゃろうか……」
須賀母「愛よ」
京太郎「なぜそこで愛ッ!?」
須賀母「母親の愛を信じられんのか」
京太郎「はいはい」
久「だめよ、京太郎。お義母さまの言うことを信じないと」
和「そうですよ。お義母さまは京太郎くんのことを想ってくださってるんですから」
須賀母「優しい子たちねぇ。あんた、幸せ者だわ」
京太郎「……まぁ、いい部活だとは思ってるよ」
須賀母(こんな子たちに想われて、ってことなのにねぇ?)ヒソヒソ
京太郎「?」
咲「お、小母さんっ////」
和(バ、バレてますっ……)
まこ(そりゃ、あんだけ露骨にしとりゃのう……)
優希(けど、本人は気づいてないじぇ?)
久(親子でも、違いはあるものねぇ)
京太郎「さて――あ、和は家に制服取りに帰るんだよな」
和「はい、そうですけれど――」
京太郎「ちょっと遠いしな、送ってくか。そのあと、一緒に学校行こうぜ」
和「ふぇ……よ、よよよよ、よろしいんですかっ!?」
京太郎「あ、ああ、まあ……親御さんに見つかるとまずいか? 外泊、咲ん家だって言ってるし……」
和「大丈夫です! 父は帰ってませんし、母はもう家を出てるはずですから!」
京太郎「じゃ、じゃあ行くか、うん」
京太郎(謎の迫力……)
京太郎「ってことで、咲は学校まで、みんなの案内な」
咲「結局おもちなんだね」
京太郎「なんのこと!?」
優希「私は咲ちゃんに借りるから、咲ちゃん家に寄ってくじぇ」
咲「まあ、サイズ近いからね……それじゃ、行こっか」
久「っていうか、なんでまこは持ってるのよ」
まこ「わしは着替える前に、書類に気づいて、そのまま来たんでの」
咲「はーい、行きますよー。あと和ちゃん、これ」
和「……ブザー?」
咲「京ちゃんがなにかしたら、これ鳴らしてね」
和「わかりました (使うとは言ってない)」
京太郎「信用ないな……」
優希「当然だじぇ」
京太郎「さて、俺らも行くか」
和「は、はい……お隣、失礼します」
京太郎「改まるなって。にしてもさ、よく許可が下りたよな、咲の家とはいえ、外泊なんて」
京太郎「転校のこととか、仕事のこととか――和の両親は、もっと厳しいと思ってたけど」
和「……厳しい、とは思います。ですが、夏の大会の決勝戦を見てもらって、私が麻雀を、この麻雀部をいかに好きか、わかってくれたみたいで……」
和「多少は、融通を利かせてくれるようになったのかもしれません」
京太郎「そっか、よかったな……まあ、俺の家に泊まってたってバレたら、転校させられかねないだろうけど」
和「そのときは東京でしょうから――臨海女子か、白糸台高校へ通うことにします」
京太郎「ああ、どっちも麻雀強いからな……」
和「――ふふ、それだけじゃありませんよ?」
京太郎「というと?」
和「どっちも、京太郎くんの派遣先ですから。変わらずお会いできます」
京太郎「……だな。そうなったらよろしく」
和「ええ、こちらこそ――とはいえ、最善はここから離れないことですが」
和「いざとなったら、一人暮らしを許してもらうか――下宿とか、考えないといけませんね」
京太郎「咲の家とか、優希の家だな。それか住み込みバイトってことで、まこ先輩の家も――」
和「……も、もしくは花嫁修業で、京太郎くんの家という手もありますね」ドキドキ
京太郎「」
和「ほ、ほらっ、お義母さまが、とってもお料理上手ですしっ! 教えていただけるなら、最高じゃないですか!」アセッ
京太郎「あ――あ、ああ、そういうことか……まあ、たしかにオフクロの料理は……悔しいけどうまいからな。けど、和の料理も負けてないって」
和「……あ、ありがとうございますっ///」
京太郎「しかし、驚いた……和がそんな冗談言うなんてな」
和「わ、私も、少しくらいは……どうでしたか?」
京太郎「心臓に悪かった……」
京太郎(その五万倍くらいやっふぉおおおおおおおおお! って感じだったけど)
和「すみませんっ……その、ちょっとテンションが……」
和(ふ、踏み込みすぎましたね、気をつけましょう……)
京太郎「ああ、でも……それくらい距離感が近いのも、いいかもしれないな」
京太郎(くそおおおおおおおおお! なんで俺は、それもいいなって言えなかったんだ!)
和「……はぁ」
京太郎「ふぅ……」
~終業式
京太郎「……眠い」
咲「執事さんがそんなんでどうするの!」
京太郎「執事でも眠いもんは眠――zzzzz」
咲「起きて! ちょっと、京ちゃん!」
「こらそこー、宮永か。静かにしろよー」
咲「!? 私ですか!?」
京太郎「なにしてんだ、咲。静かにしろよ」
咲「なんで起きてるの!? ずるい!」
京太郎「静かにしろって、だから……」
咲「り、理不尽っ……」
咲「今日、レディースセット注文してあげないからねっ」
京太郎「っっ……い、いいから、別に(震え声)」
京太郎「午前中だけだし、学校で昼飯食うかわかんねーし、いざとなったら和と優希もいるしっ」
咲「じゃあ二人にも言っとくからね!」
京太郎「優希はタコスで釣れるだろうし、別にいい」
咲「じゃ、じゃあ私はタコス二つつけるもん!」
京太郎「なら俺は三つだ」
「こらそこー! 夫婦漫才やめろ!」
咲「嫁さん違います!」
京太郎「こんなおもちない嫁はいやです」
咲「」ブチッ
京太郎「じょ、冗談だからっ……」
「――講堂の外に立ってろ、な?」
『はい……』
優希「ちっ、タコス大量ゲット計画がおじゃんだじぇ……」
和「なにを言ってるんですか、優希……」
和(でも、お、お嫁さんになるなら、やっぱり……っっ……有利、断然有利ですっ)ガッツポ
京太郎「ひどい目に遭った」
咲「こっちにセリフだから!」
京太郎「くそうっ……おら、お茶だよ!」
咲「ありがと!」
和「……ケンカしてるのか、ケンカのフリなのか、はっきりしてください」ヒクヒクッ
優希「ただのジャレ合いだじぇ、犬も食わねーじぇ」
まこ「わしまで睨まれてしもうたけえの……反省せい、二人とも」
『すいませんでした……』
まこ「ほんまにお前らは――んで、成績のほうはどうじゃった?」
京太郎「まあまあです」
優希「そ、そこそこだじぇ」
和「いつも通りでしょうか」
咲「ちょっと上がってました」
まこ「うむ……春の大会は、問題なさそうじゃな。まあ、テストでの赤点も大丈夫じゃったけえ、当然かいの」
京太郎「で、今日からの練習はどうなるんですか?」
まこ「午前中は練習するが、午後は各自に任せたい。克服すべきポイントは……監督から聞いてくれ」
久「はい、監督です」
咲「今日もいるんですか……」
久「大丈夫、今日だけだからね。あと午前中だけ」
和「午後はどうされるんですか?」
久「バイト……あれ、シフト入ってたかしら」
まこ「わしに聞くなっちゅーとろうが……入っとったわ」
久「ってことなんで、ルーフトップにいるわ」
優希「質問だじぇ、午後は部室は使えないのかー?」
まこ「鍵はわしと――和か。なら、一年で残るやつがおれば、そっちに預けときんさい。管理者は、鍵かけ忘れんように」
咲「了解です!」
京太郎「じゃ、とりあえず練習ってことですね」
まこ「ああ……練習、じゃけえの? 練習じゃ、わかっとるな?」
京太郎「あ、はい」
京太郎「釘さされてしまった……」
優希「呼んだかじぇ?」
京太郎「呼んでねーよ」
京太郎「さて、午前中はどうするかな……」
京太郎「さて、それじゃ――」
久「ああ、そうそう。京太郎」
京太郎「はい?」
久「頼んでおいたからね、コーチ」
京太郎「は?」
久「そろそろ着かれる頃かしら……あ、玄関でお迎えしてちょうだい」
京太郎「はぁ……」
健夜「や、やっほー」
京太郎「……連日、お疲れさまです」
健夜「きょ、今日はいいよねっ、ちゃんと頼んでもらったんだしっ」
京太郎「あ、はい。よろしくお願いします……」
健夜「よーし、張りきっちゃうぞー」
和「いまさらですが、トッププロがこんな場所にいらっしゃるなんて……」
優希「つくばは二部、とはいえ本人は世界でも名の知れた打ち手だじぇ」
まこ「まあ大会まで付き合うてくださるんなら、ありがたいわ。時間のある限り、打たせてもらうとええ」
久「他人事みたいに言わず、あなたも打ちなさいよ」
咲「そうですよっ、夏もまた、団体優勝するんですから。全体のレベルアップです」
まこ「はいはい、わーとるわい」
健夜「さて――今日は打点アップの心得から始めようかな」
京太郎「そんなものが……」
健夜「最短手での上がり、それもいいんだけど、そこから近い、もう一歩上の形を目指してね――」
京太郎「――おぅふ」
健夜「はいはい、集中だよー。サボっちゃだめー」
京太郎「上がりの形想定して、そこから狙える一歩上模索して、それ目指して効率上げて、打点上げて……かつ、元の形も視野に残してって」
京太郎「き、きついです、糖分足りなくなります……」
健夜「お砂糖舐めながら、頑張ろうね」ニッコリ
京太郎「」
健夜「あと、周りの捨て牌も忘れないでね。手牌も、ある程度のアタリはつけてね」
久「鬼だわ」
まこ「あれが雀鬼か」
咲「楽しそうだなー」
優希「どこがだじぇ……」
和「……ありですね」
優希「えっ」
京太郎「」チーン
優希「生きてるかー?」
京太郎「なんとかな……」
まこ「さて、一応はこれで終わりじゃ――ま、しばらく残っとっても構わんが」
和「私たちはどうしましょうか……ネトマよりも、牌に触っておきたい気もしますが」
咲「ネトマはもういいよぉ……」
久「それじゃ、バイト行ってくるからねー」
健夜「靖子ちゃんとはやりちゃん、そろそろ空いてるかな……」
京太郎「疲れた……が、休んでる暇などない」
京太郎「と、とりあえず……牌譜でも眺めよう」
まこ「またかい……しゃーないわ、わしも残って見たる」
京太郎「ありがとうございます、まこ先輩」
まこ「……ま、得意な範囲でくらい、世話してやりたいしの」
京太郎「こういうのって、どのくらい見てれば覚えるもんですかね」
まこ「ふーむ……牌譜だけ見るよりは、盤面も見ながらのほうがええじゃろうな」
まこ「それで……まあ、五年か十年か、それくらいは――」
京太郎「……な、長いですね」
まこ「なに、わしの経験則じゃ……人によっては、もうちょい早うなるかもしれんわ」
京太郎「希望が湧いてきます」
まこ「遅うなるかもしれんがな」
京太郎「なんということだ……まあ、言ってても仕方ないですね」
まこ「うむ。悩むよりも、考えながら見ろ……そうじゃな、あとは――」
まこ「見るだけじゃなく、盤面を想像しておくとええ。卓の広さ、牌の形なんぞはどこも同じじゃ。実際の状態を想像しとけば、今後思いだすのも容易いはずじゃあ」
京太郎「なるほど……想像しながら、見る……あの、まこ先輩みたいにぼやけさせるやり方は――」
まこ「あれはわし専用」
京太郎「ですよね」
まこ「ふむ……細目にするとか、そいうんもあるが……」
まこ「お前さんには、実際の形をはっきり想像するほうが、合うとるんじゃないかの」
京太郎「……わかりました、それでやってみます」
まこ「うむ、精進しょうじん」
~午後活動終了
京太郎「――はぁ、終業式だけだったからか、練習が余計にハードに感じられた……」
京太郎「うーん、最近ちょっとだらけてるかもなぁ」
京太郎「差し入れもあんまり作ってないし、掃除も……そ、そうだ、掃除っ……掃除を、掃除を……」
京太郎「っっ……落ち着け、昨日カピーのお風呂も掃除したし、問題ない……」
カピー「キュキュキュ、キュゥ~ (辛かったら、やめてもいいんじゃよ?)」
京太郎「大丈夫だよ、マート……いや、カピー。辛くはないんだ。むしろ、掃除と雑用は心地いい時間なんだ……」
カピー「キュキュウ、キュッ (無理はしないでくださいねっ)」
京太郎「カピーは優しいなぁ」ナデナデ
京太郎「さて、ちょっと癒されたし、夜はなにをしようかな」
京太郎「うん、癒されたしこのまま寝るか、な?」
カピー「キュキュッ (いいと思います! 遊んでほしいですけどっ)」
京太郎「じゃ、おやすみ……」
カピー「キュウキュウ、キュキュ、キュ~ (むー……でも、昨日はサキたちに遊んでもらえたから、今日は我慢します。おやすみなさい)」
~水曜終了
~3月第三週木曜
京太郎「ふぁぁ……早く寝ると、早く起きられて目覚めスッキリって感じだな」
京太郎「さて、ちょっと走りに行って――それから筋トレだな」
京太郎「ふぅ……シャワー浴びたついでに、お風呂掃除してしまった」
須賀母「それはいいんだけど、そろそろ行かないと……練習、始まってるんじゃない?」
京太郎「!?」
京太郎「やべえ、ちょっと遅れそうだ……」
京太郎「はっ、はっ……これ、ギリギリじゃないか……ん?」
まこ「はっ、はっ……しもた、学校がないからと、油断しとったわ……」ハァハァ
京太郎「まこ先輩! どうしたんですか、こんな時間に……」
まこ「京太郎かっ、見りゃ、わかるじゃろっ……はぁっ、はぁっ……」
京太郎「朝のジョギングですね」
まこ「あほなっ、ことっ、言うとるっ、場合かっ……」
京太郎「ですね、遅れないように、急ぎましょう」
まこ「くっ、ほんまにしもうたわ……お前と遅れたら、ほかの連中になに言われるかっ……」
京太郎「へ? まあ、部長なのにどうこう、とかは言われそうですよね……っていうか、俺は関係ないんじゃ」
まこ「あっ……い、いや、別になんでもないわい」
京太郎「そうですか?」
まこ「……二人して遅れたら、二人でどっか行っておったとか、思われんかのう……」
京太郎「ああ、ルーフトップの朝番とかってことですね。そういえば、早朝シフトってあるんですか?」
京太郎「でも開店前か……掃除とか、料理の仕込みとかですかね」
まこ「旅館じゃないわい。まったく……」
京太郎「やっぱないんですか……あ、でも。もしそういうのがあれば、遠慮なくおっしゃってください」
京太郎「不肖、須賀京太郎。先輩のために、全力で駆けつけますので!」
まこ「……ま、気持ちだけもろうとくわ」
京太郎「ちょっ、本気ですからねっ」
まこ「部活に遅刻するようなやつに、朝の仕事は頼めんのう」カッカッ
京太郎「ぐっ……否定できない……」
まこ「ほれ、ええから走らんかい。遅刻はごめんじゃあ」
京太郎「うぃっす!」
まこ「……わしのために、か……ふふっ、面映ゆいもんじゃ」
京太郎「間に合いました」
まこ「ギリギリセーフじゃな」
優希「たるんでるじぇ、京太郎」
京太郎「俺だけぇ?」
咲「部長、なにかあったんですか?」
まこ「いや、ちょいと二度寝しての……すまんすまん」
和「二度寝……そして、二人して遅刻……な、なにをしてたんですかっ」
まこ「さぁてのう……」ククッ
和「!? きょ、きょ、京太郎くん! 部長となにがあったんですか!」
京太郎「いや、すっげえ呼吸乱れてさ、ほんと疲れた」
和「こ、こここ、呼吸がっ……息を荒くして、疲れて……はわわわわわ」
優希「……なにを想像してるんだじぇ、のどちゃん……」
咲「何ヶ月か前からか、和ちゃんかなりおかしくなっちゃってるよね」
優希「けど、その分麻雀も強くなってるじぇ……」
咲「麻雀強くなると、なにか犠牲にしないといけないのかなぁ……」
優希「人間らしい感情とか……」
咲「おもちとか……」
京太郎「おーい、落ち着いたかー?」
和「す、すいません、お見苦しいところをっ……///」
京太郎「気にすんなって。そういう和も、結構かわいいし」
和「かわっっ……///////////////」
まこ「……ほれ、いつまでイチャついとるんじゃ。さっさと練習始めんかい」
京太郎「はい!」
京太郎「遅刻だー!」
まこ「いかん、遅刻じゃ!」
咲「わーん、遅刻しちゃうー!」
久「……なにやってんの、あんたたち」
京太郎「あ、部長、おはようございます!」
久「はい、おはよう……で、なによ揃って」
まこ「すまんが、いまは構うとる暇はないんじゃっ……」
久「まったく、私がいないからってたるんでるんじゃない?」
咲「そ、それとは関係ありませんっ……前から、よく寝坊はしてましたからっ」
京太郎「お前の遅れる理由は迷子だけどなっ」
咲「そんなことないよっ!」
まこ「そもそもっ、京太郎の突っ込む位置がおかしいわっ」
久「……走りながら漫才するって、疲れない?」
まこ「というか、なんであんたもついてくるんじゃっ」
久「えー、ヒマだし」
咲「ならっ、先輩もっ、行きましょうよ! 練習!」
まこ「アホッ! こいつはヒマじゃないわいっ、朝からうちで仕事じゃ!」
久「ちぇー、バレちゃった」
京太郎「いや、バレちゃったじゃなく……って、ついてこないでっ、ルーフトップ行ってくださいよ!」
久「むー……仕方ないわねえ。なら、京太郎はこっちにも顔だしなさい、約束よ」
京太郎「はいはい、わかりましたからっ、お店行ってくださいってば」
久「んじゃねー。遅れちゃだめよ、あんたたち」ヒラヒラ
まこ「ふぅー、助かったわい……」
京太郎「って、落ち着いてる暇ないですよ!」
咲「そうだっ、急がないと!」
まこ「はぁ、和に怒られてしまうわい……」
咲「そういえば、和ちゃんが副部長なんですよね、いまは……」
京太郎「あ、そうだ。全然関係ないんですけど、まこ先輩」
まこ「なんじゃあ」
京太郎「予選優勝したら玉子焼きって約束、あれどうなりました?」
まこ「おお、忘れとったな」
咲「えー、なんですか、それ! 私も食べたいです!」
京太郎「お前約束してないだろ……前に部室で会ったとき、思いだすべきでしたね」
まこ「ふむ……ま、それなら今日の昼、店で食わしてやるわ」
京太郎「マジすか! ひゃっふぉう! そうと決まれば、ほら、急ぎましょう!」
まこ「まずは練習ありきじゃっちゅうに……まあ、急ぐんに異論はないわ」
咲「先輩っ、私も!」
まこ「……そっちは、全国優勝したらじゃな」
咲「ハードル高い!」
~学校着
和「遅いです」
優希「たるんでるじぇ」
京太郎「もうそれは、部長に言われたっての……」
和「その部長も遅れてらっしゃるじゃないですか。しっかりお願いします」
まこ「すまん……」
京太郎「それと、部長ってのは久部長のほうな」
優希「やっぱりややこしいじぇ」
咲「お、遅れた分、ちゃんと練習するからね」
和「そうですね。三人とも卓についてください」
優希「さーて、私はタコスでも追加するかぁ!」
京太郎「息整える時間くらいは……」
和「息が切れた状態で、いつも通り打ってください。体育会系では、よくやる練習だそうです」
咲「麻雀部なのに……」
まこ「まぁ、最近はかるた部でも筋トレやマラソンするらしいしの……」
~1時間半後くらい
京太郎「和、容赦ないぜ……さて、俺はルーフトップに行くとするか」
まこ「うむ、終わったら待っとればええ。帰ったら作ってやるけえ」
京太郎「ありがとうございます!」
和「なんの話ですか?」
咲「京ちゃんが部長の手料理食べさせてもらうんだって」
優希「なぬ!?」
和「……私も、お弁当を作ってすぐに伺います」
京太郎「咲っ、誤解招く言い方すんな!」
咲「ふーんだっ、だいたいあってるもんっ」
まこ「和が睨んできおる……こわいのう」
~ルーフトップ
京太郎「ちはーっす」
久「はーい、いらっしゃい。遅刻はだめよ」
京太郎「もういいじゃないですか……」
久「ふふっ、そうね。それにこっちに来てくれたし、許してあげる」
久「はい、座って座って。お茶にする? コーヒー? 紅茶? それともわ・た・し?」
京太郎「じゃあたわしで」
久「…………はい、どうぞ。遠慮なく食べなさい、私の奢りだから」トンッ
染谷母「洗い場の亀の子、お皿に乗せないで~」
京太郎「じょ、冗談ですからっ……あの、お茶を……」
久「私じゃないんだ、ふーん……ま、いいけど。はい、お茶」ドンッ
京太郎「あつっっ! ちょっ、めちゃくちゃ熱いんですけどっ!」
久「私の愛情の熱さよ」
京太郎「火傷しそうですね!?」
京太郎「飲み終わるまで見てるなんて、ひどい……とりあえず、練習するかな」
久「ふーんだ」
京太郎「あ、あのー、部長……れ、練習に付き合っていただけないでしょうか……」
久「……たわしとやってればいいでしょ」
京太郎「……はい……」
ゆみ「なに、気にすることはない。よければ私が打とう」
久「!!」
京太郎「いいんですかっ、ゆみさん!」
美穂子「……それなら、私も入りますね。あっちの対局も終わりましたので」
久「!?」
京太郎「ありがとうございます、美穂子さん!」
久「……っっ」プルプルプル
ゆみ「……さーて、私たちは三人で楽しく打とうか」チラッ
美穂子「そ、そうですね、せっかくですから、色々と指導しながら……」チラッ
久「」ガタッ
久「し、仕方ないわねっ、私も付き合ってあげるわよ!」
ゆみ「……無理しなくていいが」
美穂子「や、やっぱり楽しく打ちたいですからね、麻雀は」アセッ
久「う、ぐっ……」
京太郎「部長! 入ってくださるんですかっ?」
久「……京太郎が、どうしてもって泣いてお願いするならね」プイッ
京太郎「お願いします! この通りです!」フカブカー
久「…………しょ、しょーがないわねー。そこまで言われちゃねー」ニヤニヤ
久「まったく、私がいないとだめなんだから……いいわよ、打ってあげる」
京太郎「ありがとうございます!」
ゆみ(やれやれ……)
美穂子(ふふ、久さん嬉しそう……)
美穂子25000→24200
ゆみ25000→24600
久25000→24600
京太郎25000→26600
京太郎「ツモ――400、800です」
美穂子「相変わらず、早いですね」
京太郎(……あれ、なんだろう、褒められてるはずなのに悲しい……)
ゆみ「これは負けていられないな」
京太郎「部長との合宿の成果ですよ」
久「そ、そう? ふふっ、よかったわ」~♪
ゆみ(わかりやすいやつだ……)
美穂子(逆に心配です……)
久「でもここからよ、気を抜かないように」キリッ
京太郎「はい!」
美穂子25000→24200
ゆみ25000→24600→8600
久25000→24600
京太郎25000→26600→42600
京太郎「ロンです、16000」
ゆみ「――っっ! しまった……迂闊だったな。相手は清澄だというのに」
美穂子「そうですね」
久「ちょっと! 清澄を魔界みたいに言わないでちょうだい!」
京太郎「そうですよ。俺だって、初めて一年ちょっととはいえ、まだまだ初心者ですし……」
ゆみ(どこがだ……)
美穂子(そろそろ熟練者を名乗っていい頃では……)
久(……私がちゃんと、教えてあげられれば……ううん、言ってても仕方ないわね)
京太郎(なんとも言い難い視線を浴びている、なぜだ……)
美穂子25000→24200→22200
ゆみ25000→24600→8600→16600
久25000→24600→20600
京太郎25000→26600→42600→40600
ゆみ「ツモだ、満貫。2000、4000だな」
美穂子「さすがです、ゆみさん」
ゆみ「これでも、天江や宮永と打っていた身だ。魔物の扱いには多少の経験がある」
久「誰が魔物よ!」
京太郎「俺だって違います!」
美穂子「ま、まあまあ、言葉の綾ですよ」
ゆみ(……この中だと、一番魔物は……美穂子じゃないだろうか……)
点数移動省略
京太郎トップ
京太郎「ツモ――500オールで終了です」
久「あー、もうっ、手牌最悪っ!」
ゆみ「お疲れくらい言ってやれ……お疲れ、京太郎くん」
美穂子「お疲れさまでした」
京太郎「お疲れさまです……どうでしたか、部長!」
久「なにがよ」
京太郎「ラスト、早く上がって流せましたけど、改善されてますかっ?」
ゆみ(尻尾が見える……)
美穂子(ワンちゃんみたいですね)
久「……ええ、お見事よ。それと、その……」
京太郎「はい!」
久「……あの……店に、来てくれて……ありがとう……たわしのこととか、ごめんなさい……」
京太郎「……いえ、俺も変なこと言っちゃったせいですから」
久「怒ってない?」
京太郎「俺が部長を怒るなんてこと、そんなにないですよ」
久「ちょっとはあるんだ」クスッ
京太郎「そりゃ、まあ……シャレにならないことがあれば、さすがに」
久「りょーかい、肝に銘じておくわ」
久「とにかく、お疲れさま――強くなったわね、えらいえらい」ナデナデ
京太郎「ありがとうございます!」
京太郎「ふぅー……やっぱりここで、みなさん相手に打つと、もうこれでもかってくらい練習になりますね……」
美穂子「そう言ってもらえると、嬉しいわ」
久「あら、瑞原プロや小鍛治プロに指導してもらうよりも?」クスクス
ゆみ「とんでもない名前が出てきたな……」
京太郎「指導と対局は、また違いますし……あと、健夜さん最近すっごい厳しいですし……」
美穂子「あらあら、大丈夫ですか?」ナデナデ
京太郎「はい。ありがとうございます」
久「……美穂子ー、お腹すいたー」ムー
美穂子「あっ、そろそろお昼ですね……では、なにか作りましょうか」
久「わーい、よろしくー」
京太郎「……いいんですか、店員さんがこんなことで」
ゆみ「……まあ、いまは客も少ないからな。そろそろまこも帰ってくる、交代すればいい」
京太郎「あっ……それじゃ、俺がしばらく店番つきますよ。まこ先輩には、お昼お願いしてますので」
染谷母「ほっほう、詳しく聞かせていただける?」
京太郎「たいしたことじゃないですよ。まこ先輩の玉子焼きがおいしいって聞いたので、予選突破のお祝いに、ご馳走してもらうんです」
染谷母「へ~、そうなの……あ、そうそう。関係ないけどね、あの玉子焼きは私が教えたんだけど……私のダンナも、あれ大好きなのよね」
京太郎「へー、そうなんですか」
染谷母「……え、ええ、そうなのよ」
久「だめですよ、オーナー。京太郎はかなりのニブチンなんですから」
染谷母「ふふ、そうみたいね」
久(――それにしても、まこも乗ってきたかぁ……いや、義理堅いだけかしら? あの子、なんだかんだでポーカーフェイスなのよねぇ……)ヤレヤレ
ゆみ(……寂しい。誰か私にも作ってくれないものか……)
モモ(先輩、私がいるっすよ~)
~昼食
京太郎「これは――本当に、うまい……です……」
咲「でしょー?」
まこ「なんで咲が得意げなんじゃあ……」
和「あ、相変わらずっ……京太郎くん! こっちも食べてみてください!」
優希「ほんとに用意したんだじぇ、のどちゃん……」
美穂子「さ、久さん。召し上がってください」
久「あ、うん、ありがと……ん、おいしいわ。いいお嫁さんになれるわね、美穂子は」
美穂子「ありがとうございます////」
京太郎「……あれ、そういえばゆみさんは?」
久「モモちゃんとデートじゃない?」
京太郎「じゃあ午後からは打てそうにないですね……」
久「寂しい?」
京太郎「いえ、咲たちもいますし、部長や先輩、それに美穂子さんもいらっしゃいますから」
久「よりどりみどりねぇ……このゼータク者」
京太郎「ほんとに……いい練習環境に恵まれてます、感謝です」
咲「じゃあ午後からは私と?」
優希「そろそろリベンジさせてほしいじぇ……」
和「京太郎くん、口元にお米が」
まこ「作り方? わしよりオカンに聞いてくれんか……いや、勝手に教えると、怒られるからの」
京太郎「さて、午後はどうしようかな――なんか、みんなしてルーフトップに来ちゃったけど……」
京太郎「お客さんが入ってくると、大勢でいるのはな――あ、でも席代払えばお客さんになるのか」
京太郎「部室に戻って打ってもいいんだよな、うん」
京太郎「とりあえず、席代は支払って、と――誰と打とうかな」
染谷母「あら、お仕事もしてもらってるのに、悪いわよ」
京太郎「そうはいっても、部員全員来てますし……」
まこ「もうちょい商売っ気だしてくれんか、オカン……」
染谷母「だしてるわよ? 飲食なんかは、学生割引以外だといっぱい利益上げてるもの」
まこ「さよか……」
染谷母「それに、酔ったお客さんからは……ねぇ?」ニコッ
まこ「」
京太郎「……聞かなかったことにしよう」
京太郎「とりあえず、部員の誰かと打つかな……」
??「あ、店員さーん。ここ空いてるんで、入ってもらっていいですか~?」
京太郎「はい、ただいまー……あっ」
健夜「ようこそ」
はやり「いらっしゃい☆」
靖子「……私一人では、どうにもならなくてな」
京太郎「oh……」
健夜「大丈夫だいじょうぶ、手加減はするから」
京太郎「……すいません、シーズン近いのに、俺のせいで……その、調子悪くなったりとか、しませんか?」
はやり「もちろん、平気だよっ☆」
靖子「まあ、お二人ともベテ――け、経験豊富だからな、調整もうまいはずだ。まあ私は、それなりに加減を――」
健夜「? なに言ってるの?」
はやり「靖子ちゃんも手加減だよ? 当然でしょ?」ニッコリ
靖子「」
靖子「じょ――冗談、ですよね?」
健夜「NO! NO! NO!」
はやり「OH MY GOD……」
靖子「くっっ……本気で打っても勝てるかどうかってとこなのに、この二人相手に手加減しながら打つとか……いや、まだこのほうがマシとも言えるが……」
京太郎「あ、あの、なんだったら普通に打っていただいても……」
靖子「高校生相手に二人が加減して、一人だけ本気とか……恥ずかしい真似ができるか!」
京太郎「いえ、そこそこ本気で打ってくだされば――」
靖子「そんなことはしない! 私も手加減し、かつ勝ってみせる! カツ丼を用意してくれ!」
健夜「本気だね、靖子ちゃん。楽しくなってきたな~」
はやり「本気の手加減か~。期待してるぞ☆」
京太郎(鬼や……)
京太郎(ならせめて、東風戦にするとか……どうだろうか?)
京太郎(――いや、それは覚悟を決めた靖子さんに失礼だな)
京太郎「それでは、半荘で……お願いします!」
靖子「お、おう……」
健夜「やる気だね!」
はやり「わっ、鬼だぞ☆ でもかっこいいな☆」
京太郎(ま、まあ、手加減してくださるなら……俺にも勝てるチャンスはあるん、だよな? うん)
健夜25000→
靖子25000→17000
はやり25000→
京太郎25000→33000
京太郎「ロンです、8000点」
靖子「ほう……まあ、さすがお二人が仕込んだだけありますね」
健夜「し、し、仕込んだだなんて、そんなっ////」
はやり「はやりがしたことなんて、そんな……ねぇ?」
京太郎「いえ、お二人のおかげです、本当に……」
健夜「はうっ」
はやり「きゅぅんっ」
靖子(よしよし、この調子で二人をかく乱しつつ……ラストまで、耐えしのぐっ……)
京太郎(本気をだされていたら、さっきのは上がれていない……)
京太郎(それにちょっとでも本気だったら、はやりさんに上がられてただろうし……ラスト、まくりの女王と呼ばれる人もいる……)
京太郎(この、手加減してくれてる人たちには、圧倒的に勝てるくらいにならないと――)
健夜25000→
靖子25000→-8000
はやり25000→
京太郎25000→58000
京太郎トップ
京太郎「あ――」
靖子「え?」
健夜「あーあ」
はやり「やっちゃったね、やっこちゃん☆」
靖子「えっ」
京太郎「……ロンです、清老頭」バラッ
靖子「」
健夜「次だね」
はやり「ごめんね、やっこちゃん。切り替えていこ☆」
靖子「」ドヨーン
京太郎(こ、声かけづらい……)
京太郎「あ、あの、靖子さん……」
靖子「いや、気にするな……私が、いけなかったんだ」
京太郎「でも――」
靖子「いいんだ。加減していた、そんなことは言い訳にならない。むしろそれで振り込んだなら、加減した自分がその程度になるほど、弱いということだ」
靖子「それを教えてくれたこの場にも、そして君にも、感謝はしている」
靖子「これを糧に、もっと強くなってみせるさ」
京太郎「……っけぇ……」
京太郎「かっこいいですっ、靖子さん!」
靖子「――そうか、ありがとう」
健夜「」イラッ
はやり(手加減だけど……やっこちゃんにも手加減とは言ってないよね★)
京太郎「さて――」
京太郎「でしたら――すみません、こんなこと言うのも烏滸がましいんですけど……」
京太郎「少しだけ、本気を見せていただけないでしょうか?」
健夜「……そうだね。ちょっと本気になっちゃおうかな」
はやり「大丈夫、あくまでちょっとだけだからね」
京太郎(あれ? 思った以上に乗り気だぞ?)
靖子「……おそらく、あまり私の結果は変わらないと思う」
靖子「だが、それでいいなら――少し、気合を入れさせてもらうとしよう」
京太郎「――よろしくお願いします!」
靖子(……というか、お二人の視線がこっちを見てるのが気になるな……)
健夜25000→
靖子25000→17000
はやり25000→
京太郎25000→33000
はやり「あらら、これでも届かないかぁ……さっすがすこやん☆」
健夜「でも、京太郎くんが少し速いかな?」
靖子「っ……」
京太郎「ロン――満貫、です……」
京太郎(……健夜さんは、わざと俺の打点を上げさせた? 下げようと思えば下げられたのを、見逃したのか……)
健夜(打点までは、さすがにね……私に影響ありそうなら、キャンセルかな?)
靖子(ほんっと、怖いな、この人……)
健夜25000→
靖子25000→17000→14400
はやり25000→
京太郎25000→33000→35600
京太郎「ロン――2600です」
靖子「ふぅ……助かりました、というべきですか、小鍛治さん」
健夜「どうかなぁ。今日の京太郎くんは、好調みたいだからね。念のためだから、私のためだよ、これは」
はやり「う……そろそろ終盤かぁ……全力じゃないと、ちょっとキツいかな☆」
靖子(なんとか最終局まで……行ったとしても、いざとなったら小鍛治さんに止められるか……打つ手はないかもしれんな……ほんと、バケモノだよこの人……)
健夜25000→
靖子25000→17000→14400
はやり25000→34600
京太郎25000→33000→35600→26000
はやり「――あれ? ロン、だけど……9600だね」
京太郎「――そっちですかっ……てっきり、健夜さんが来るかと……」
健夜「私だと、靖子ちゃんが一人凹みになっちゃうし……ここからなら、うまくいけば京太郎くんもトップ狙えるからね。まあ、私もまだ三位なんだけど……」
靖子「私が、上がるってこともできるんですか……?」
健夜「そうだね、ラストだし、キャンセルはなしで。割り込みも使ったし、ここからは素で打つよ!」
健夜(……まあ、二位でも私の勝ちになっちゃうんだよね、そのときはどうしようかな……)
健夜(素打ちって言ったし、一位だけ和了にしよっと……)
健夜25000→23000
靖子25000→17000→14400→12400
はやり25000→34600→42600
京太郎25000→33000→35600→26000→22000
はやり「――あ、ほんとにキャンセルしないんだ」
健夜「そうなったらさ、なにも能力ない私不利だよね。まあ今回は、私もギリギリ二位だし、いいよ」
京太郎「??」
靖子「……ああ、終わったか……」
はやり「そうかもね~。えへへー、ってことで、はやりの勝っち~☆ ツモで~す、2000、4000」
京太郎「」
靖子「お疲れさま……京太郎くん」
京太郎「あ、は、はい……お疲れ、さまでした……」ガクッ
健夜「……本気のときは、こんな温く済まさないから」ボソッ
はやり「わーい、大勝利~☆ すこやんに勝っちゃった~」
健夜「ぐぅぅっっ……やっぱさっきの、上がっておけばよかった……」
はやり「あははっ、冗談じょうだん☆ 今度は本気で打とうね、シーズン始まるし……一部で、晴絵ちゃんと理沙ちゃんも呼んで、みんなでね」
健夜「……そうだね、またあの卓に着けるんだ……楽しみだな」
京太郎(よくわかんないけど……四人の、高校時代の試合だっけ……とりあえずレジェンド、頑張れ)
京太郎:三位
健夜「う~、でも悔しい! 京太郎くん、特訓!」
京太郎「えっ」
健夜「さっきのはね、京太郎くんに勝ってほしかったんだよ!」
京太郎「あ、そ、そうだったんですか……すいません、力及ばず……」
健夜「だから特訓するよ! はやりちゃんなんかに負けないように!」
京太郎「なんかって……」
はやり「心外だぞ☆」
靖子「……そろそろ引退しようかなぁ……」
京太郎「靖子さん、心強く持って!」
健夜「今日は遅くまで特訓するから! オーナーさん、この席閉店までお願い!」
染谷母「追加で、モニョモニョ円ちょうだいします~」
健夜「はい、カードで!」
染谷母「毎度です~」
京太郎(とんでもない額が聞こえたけど……気のせいかな?)
健夜「さ、頑張るよ。今日は寝かさないから!」
久「……閉店、何時だっけ?」
まこ「一応、深夜は24時までじゃが……未成年は18時までじゃぞ?」
和「小鍛治プロ……」ブワッ
咲「先輩のお母さん、商売上手ですね」
優希「私は戦慄したじぇ……」
~3月第三週木曜、夜
京太郎「すいません、遅くなりました」フカブカー
須賀母「んー? 先輩の家で練習してたんでしょ? お母さんから電話いただいたし、知ってるわよ」
京太郎「そうだったのか……ごめん、電話する時間なくてさ」
須賀母「事故とかじゃなければいいわよ。ご飯どうする? あっちでご馳走になったみたいだけど」
京太郎「軽食だったし、もうちょっと欲しい」
須賀母「親子丼、すぐあっためられるけど」
京太郎「オフクロ愛してる!」
須賀父「お、俺の嫁だぞ!」
須賀母「あら、似たような顔にモテモテだわ」
京太郎「ふぅ、うまかった……」
カピー「キュキュッキュ! (遊んでください!)」
京太郎「おー、カピー! 今日はなぁ、色々あったけど……すごかったぞ、特に――あれ?」
京太郎「特訓中の記憶が……うっ、思いだそうとすると頭が……」
カピー「キュキュッ!? (だ、大丈夫ですか!?)」
京太郎「ああ、大丈夫だよ……いいや、無理に思いださないでおこう。とにかく、俺はまた一つ、強くなったんだしな」
京太郎「さて、やることやったら、またカピーと遊んでやろう」
京太郎「さて――誰かに電話して、今日の報告をしておきたい……けど、電話したらしたで、違うこと話すんだよなぁ」
京太郎「誰に電話しようか」
京太郎「――そうだ、初日に来ていただいたあと、挨拶も満足にできなかったしな」
京太郎「ご飯のお礼もしとかないとだし、レッツテレフォーンヌ!」
京太郎「……夜分に恐れ入ります、須賀です。狩宿さんの携帯でしょうか?」
巴『ふふ、改まってるとおかしいね……はい、巴です』
京太郎「いま大丈夫ですか?」
巴『うん、平気。お風呂上がったところだから』
京太郎「」ガタッ
巴『座ってていいよ。上がったところっていっても、服もちゃんと着てるから』
京太郎「」ストン
巴『はぁー、男の子だね……くれぐれも、今後永水に行くことがあっても、姫様にそんな態度を取らないように』メッ
京太郎「も、もちろんですっ」
巴『ほんとかなぁ……まあ信用するけど』
京太郎「ありがとうございます!」
巴『それに、私のお風呂上がりなんて想像しても、その……き、起伏もないし、面白くないでしょ?』
京太郎「美人のお風呂上がりですよ? 男子なら反応します」キリッ
巴『は、反応ってっ……////////』
京太郎「いや、あの、そういうんではなく……つい、想像しちゃったり、とかってことです……」
巴『ああ、そういう――って、それでも恥ずかしいよっ!』
京太郎「すいません!」
巴『もうっ……京太郎くんじゃなかったら、たぶん通報してるからね?』
京太郎「えっ……と、それは……俺ならいいってことですか?」
巴『ぁ――やっ、それは、ほらっ……えっと――そう! 想像! 想像だけだからね!?』
京太郎「あ、はい……まあ、そりゃ……触ったりはしませんけど……」
巴『~~~~~~~~~っっ!? そ、そそ、そんなことしたら、ダメだよ!』
京太郎「しませんよ!」
巴『はぁ……あのね、忘れてるかもしれないけど、私も女子校育ちなんだからね? あんまり、男の子に免疫はないの』
京太郎「もちろん存じています。だって巴さん、見るからに清楚ですからね」
巴『せっ――そ、そうかな?/////』
京太郎「立ち振る舞いも大和撫子って感じですし、お料理も上手で、言葉遣いも丁寧で」
巴『ちょっ、や、やめてってば……』
京太郎『立ち振る舞いも楚々としてて、けして声を荒らげたりしなくて、でも凛としてて』
巴『な、う、そ、そんな……』
京太郎『髪も綺麗で、いつも清潔で、なにより優しいですし』
巴『うっ、あ……も、ほんとにっ……』
京太郎「――そんな巴さんと知り合いになった、同世代の男子は俺だけなんですよね」
巴『……そ、そうだよ! 悪い!? 京太郎くんが初めてだよ!』
『……なん、だと……?』
『いまとんでもない言葉が聞こえよらんかったと?』
『まあ私が男でも、菫より巴を選ぶだろうな』
『なぜ私に矛先を向けた!』
巴『ちょっ――な、なに上がって来てるんですか! 電話ですっ、電話中ですから!』
京太郎「……あのー、改めましょうか?」
巴『だ、大丈夫だからっ……はいっ、はい! あとで説明しますっ……それ誤解ですからね!? 広めないでくださいよ!』
京太郎「……なんか、すいません……俺のせいで……」
巴『はぁっ、はぁ……ううん、京太郎くんは悪くないよ』
巴『でも、そんな優しい男の子が、最初の知り合い――ううん、お友達……も、違うかな』
京太郎「と、友達じゃないんですかっ!? ああ、そうか、先輩後輩ですもんね、すみません……」
巴『ふふ、そういうことじゃないんだけどね……とにかく、最初の親しい異性でよかったよ』
京太郎「えっと、中学は明星ちゃんたちもそうだから女子校だと思いますけど……小学校は?」
巴『ほら、姫様を入れるわけだから、当然女子校で……そこに私たちも、前もって入学してるから』
京太郎「なるほど……それじゃ同世代じゃ、正真正銘、俺だけってことですね」
巴『安心した?』
京太郎「安心しました」
巴『ふふっ、そう?』
京太郎「巴先輩、少し危なっかしいというか……色々と、騙されたりしそうで不安です」
巴『そ、そんなことないよっ』
京太郎「大学とかでも、気をつけてくださいね? あと、アルバイトとかするなら、店員も客層も女性が多いところで――」
巴『お母さんですか! もうっ、心配しなくっても、私はしっかりしてます!』
京太郎「ならいいですけど……」
巴『……そんなに心配するなら、傍で守ってくれてもいいのに』ボソッ
京太郎「俺の力が必要なら、いつでも呼んでくださいね?」
巴『!? き、ききき、聞こえた!?』
京太郎「? なにが、ですか?」
巴『聞こえてなかったの!? それであの言葉って……ピンポイントすぎるっていうか、素で言ってたことに驚くべきか……』
京太郎「はぁ……」
巴『もう、私を一番騙しそうな……惑わせそうなのは、京太郎くんだよ……』
京太郎「俺はそんなことしませんよっ、信じてください!」
巴『……信じちゃったらなおさらなんだけど……自覚してないなぁ、ほんとに』クスクス
京太郎「と、巴先輩っ」
巴『はいはい、わかったわよ。信じてあげます……さっきの言葉も、信じるからね?』
京太郎「――はい、もちろん。なにかあったら、すぐに呼んでください。アルバイト先の売り上げに貢献しろっていうのでも!」
巴『ふふっ、それは私に会いたいだけでしょ? なーんて――』
京太郎「そりゃ会いたいですよ」
巴『』
京太郎「大事な先輩で、友人なんですか――ら……あれ、巴先輩? もしもーし」
巴『ふぁうっ、ひゃいっ! あ、えっと、うんっ……そ、それじゃ、また東京でね! じゃあ!』プツッ
京太郎「はい、また――って、切れたし……なにかあったのかな……まあ、さっきの声は菫先輩たちだし、大丈夫か……」
巴「……あ、あんなのって……反則じゃないですか!?」
菫「そうかもな」
智葉「なにがあんなのかも聞かず、よくわかるな」
哩「くそー、ますます気になりよっと……」
京太郎「……それにしても、巴さんの声はいいなぁ。なんというか、わさわさしてくる」
カピー「キュキュキュキュ? (わさわさ?)」
京太郎「いや、なんでもないよ……さて、あとはちょっとだけメール打ったら、遊ぼうなー?」
京太郎「すっごい技も覚えました。これで東京でも、いいところを見せられそうです――なんつってな」
京太郎「さ、遊ぼうか、カピー」
カピー「キュキュイ♪ (わぁい^^)」
~3月第三週木曜、終了
最終更新:2026年01月17日 13:32