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~3月某日

久「――さて、本日は悲しいお知らせがあります」

まこ「…………ああ、もうそんな時期か……」

咲「なんもかんも……」

優希「先輩が……」

和「京太郎くん……」

久「過ぎたことを言わないの!」

京太郎「それで――次の学校はどこなんですか?」

久「なんかこうやって、直接伝えるのも新鮮ね」

京太郎「ですね。電話でいつものやり取りも好きですけど」

久「あらそう? 嬉しいわ、ダーリン」

京太郎「当然のことだよ、ハニー」

和「そういうのいいですから」

咲「早く言ってください! 龍門渕だったら嬉しいんですけど!」

京太郎「それは俺も嬉しいですね」

まこ「あっちは二年――来年の三年だけじゃ、連絡も取りやすいわ」

優希「これはもう、フラグにしか聞こえないじぇ……」

久「では、結果発表――次の派遣先は、白糸台高校!」

咲「」

和「SOA」

久「――と、同じ東京にあります、臨海女子高等学校に決まりましたー」

まこ「脅かすな、あほう!」

優希「でも、近いのは事実だじぇ……はぁ……」

京太郎「東京に戻ることになるのか……それに臨海となると、色々大変ですね」

久「そう?」

京太郎「留学生も多いみたいですし。去年の夏だけみても、フランス語と中国語でしょ?」

咲「ネリーさんはグルジア語だよ」

京太郎「なんだよそれ……うお、これか」スマホチェック

和「それに中国語は、地域によって複数に分かれると聞きますが……」

京太郎「全部マスターするのは、時間かかりそうだな……」

まこ「する気かい」

優希「そんなことよりメキシカンの友人を作れ!」

京太郎「そうだな。メキシコの留学生がいれば、俺のタコスの評価でもしてもらうか」

京太郎「けど楽しみだな……せっかく覚えた中華とフレンチ、味わってもらうとしよう」フッフッフ

久「――麻雀部のマネージャーとして行くんだからね、忘れないように」ムスー

京太郎「それはもちろん」

和「ですが、男子個人優勝者なら、対局のほうでも重宝されそうですね」

咲「京ちゃん、合宿しようね、合宿!」

京太郎「団体優勝も考えると、白糸台との合宿になりそうだけどな……」

優希「来年はムロが入ってくるじぇ!」

京太郎「だから誰だよ、それは……」

久「ともかく……月末までに、準備はしておいてね」

京太郎「了解ですっ」

まこ「……今日は、送別会でもするか。わしの家で」

京太郎「まだもうちょっとあるじゃないですか! しんみりするの、やめましょうよ!」

まこ「あれを見て言えるんかい」クイッ

咲「……京ちゃん……寂しくなるなぁ……」

和「京太郎くん……せめて最後にもう一回、一緒にお出かけしたかったです……」

優希「しばらくタコスが食えなくなるじぇ……」

京太郎「――9月のときとは、えらい違いだな……ま、そのうち戻ってくることもあるだろうし、心配すんな」

京太郎「三人も、しっかりまこ先輩を支えろよ?」

和「はい……」

まこ「心配せんでええ。久の残したツケじゃけえ、お前さんは気にせんと、派遣先のことに集中しんさい」

久「そこで私のせい?」

咲「でも事実ですよね」ニッコリ

優希「容赦ないじぇ……」

京太郎「先輩、ありがとうございます。それじゃ、今日の練習しましょうか」

まこ「だから送別会じゃと」

京太郎「そうでした」テヘペロ

~3月末日

京太郎「そんじゃ、またな」

咲「軽いよ!」

和「京太郎くん……あの、なんとかして、残るというわけには――」

京太郎「まぁ無理だろ……いや、できなくもないんでしたっけ?」

久「できるわよー」

優希「なら――」

久「ただ、そうなるとこのスレも終わりねぇ……」

まこ「実質無理っちゅうわけかい」

京太郎「なら続けるしかないですね……」

和「あ、あのっ……」

京太郎「ん?」

和「また……メールでも電話でも、連絡してください……私も、しますから!」

京太郎「――ああ」

咲「私も!」

京太郎「お前は慣れないことすんなって」

咲「ひどい!」

京太郎「まぁ、こっちからこまめにする……ようには、意識する」

優希「煮え切らないじぇ」

京太郎「しょうがねーだろ。初めての学校はやばいくらい緊張すんだから……」

久「麻雀名門校だしねぇ。競争とか激しくって、ピリピリしてるかも」

京太郎「の、望むところですよ」

まこ「こらこら、脅すんじゃないわい……ま、身体に気ぃつけんさい」

京太郎「うっす。まこ先輩も、無理しすぎて身体壊したり、しないでくださいね」

まこ「ああ、わかっとる」

京太郎「あ、そうそう。これはみんなになんですけど――」

久「なになに?」

京太郎「前にみんなが来たとき、カピーが顔と匂いを覚えたみたいなんで。よかったら、時々遊びに行って、相手してやってほしいです」

咲「わかった、そうするね」

優希「私のオキニのタコスを食わせてやるじぇ」

京太郎「カピーに刺激物食わせるなよ! 絶対だぞ!」クワッ

和「……そのとき、京太郎くんのお部屋の掃除もしておきますね」ニコッ

京太郎「」

咲「そうだね。隠してあるの、処分していかないと」

優希「手伝うじぇ」

久「……どんなのが好きか、見ておかないとね」

まこ「やめたりんさい……」

京太郎「まこ先輩だけが良心ですっ……」

久「大きいのばっかりだったらどうする?」

まこ「焼却でええじゃろ」

京太郎「」

和「異議ありです」

京太郎「やめたげてよぉ!」

咲「――じ、実際どうなのっ、京ちゃん!」

京太郎「うぇっ!?」

久「そういうのばっかりだったり?」

京太郎「じょ、女子高生が話題にする話じゃないですよ!」

久「残念、もう私ってば女子大生なのよね」

和「きょ、京太郎くん……」モジモジ

優希「……まぁ、考えるまでもないと思うじぇ」

まこ「ここはそれ以外の趣味を聞きだしたほうがええんじゃ――」

京太郎「も、黙秘権を行使します!」

京太郎「と、とにかく、俺はそろそろ行きますからね!」

久「いいわよ。帰ってきたら、隠してあったので大いにいじってあげるから」

京太郎「ひどい!」

まこ「――素直に言うたらどうじゃ」

和「わかってると思いますが――ちゃんと帰ってきて、ということですからね?」

京太郎「……も、もちろんわかってましたよ?」

久「……別に、そんなこと言ってないけど……」

咲「私は帰って来てほしいからね、京ちゃん……お部屋も、掃除してるから。捨てたりしないからね」

優希「おう! ちゃーんと机の上に重ねておいてやるじぇ!」

京太郎「やめて! 中学のときオフクロにそれされてんだから!」

咲「――身体に、気をつけてね」

和「無理をしないでください。周りが厳しくても、自分のペースで頑張ってください」

優希「生水は飲まないこと」

まこ「お腹だして寝んのはやめんさい」

久「湯上がり、パンツ一枚もやめなさいよ」

京太郎「はい……って、最後のほうおかしくないですか?」

久「いまさら改めてお別れっていうのも、なんだしね。ま、しっかりやんなさい」

京太郎「部長に言われてやってるんですが……」

久「……ごめんね」

京太郎「すいませんっ、冗談ですからっ」

久「わかってるわよ」クスッ

京太郎「はぁ――それじゃ、また」


~新幹線内

京太郎「ふぅ……とりあえず、お気に入りの巫女モノだけは確保できてよかった。これを見られたら、なにを言われるかわからないからな……」


憧「おねーちゃーん、私も手伝う」

望「あら珍しい」

憧「……なんとなく、巫女服を着たほうがいいかもって思って」

望「は?」

春「大勝利」

霞「毎朝毎晩、制服以外はこれだものね」

小蒔「京太郎さんの好みに合って、よかったです」

初美「……姫様の考える好みより、かなりアレな嗜好なのですけどねー」

京太郎「……ふぅ。やっぱり巫女さんは最高だぜ」

京太郎「っと……そんなことより、日誌書かないとな」

【3月最終日】

 名残惜しいけど、今日で長野とはしばしの別れとなる。
 明日からは東京で、臨海でお世話になるとのことだ。
 女子校だというのももちろんだけど、名門校で、留学生同士の競争が激しいと噂の学校で、どんなことが待っているのか。
 不安ではあるが、楽しみでもある。

…………

『……ようやくこのときが来ましたか』
『やったね。これでお菓子食べられる、タダなんだよね?』
『ええ、そうですよ。先輩方は大変残念でしょうけれど』
『……近いこともありますカラ、こまめに顔をだしまスヨ?』
『お前は春から仕事だろ』
『そんなことを言ッテ、自分だけOGとして顔をだすのデハ?』
『ありえますね』
『しない!』
『どうか同じクラスになれますように……』
『来月からクラス替え。三人一緒もありかな?』

『臨海か……うちの大学はそちらに近くてよかったな』
『これはひょっとして、私にもワンチャン……?』
『とはいえ、卒業生でもないのにおしかけられませんからね……街で出会えるのに期待、とかでしょうか』
『あっちから雑用しに、大学来てくれたりはせんと?』
『お前、顔見知りでもないのに発想が図々しすぎるだろ……』

…………

~清澄

「なんかさ、あっさりじゃなかった? ほかの学校だと、こう……」
「それだけ、私たちとは近い距離感なんですよ」
「まぁほかの学校は1、2ヶ月の付き合いだけど、私らは半年の付き合いになるからな!」
「……そのうち五ヶ月ほど、ロクに指導しなかったけどね……」
「また久がネガティブループに」
「なんだかんだ、一番一緒にいたがってるのは先輩なんですよね……」
「私も負けてないつもりですけど」
「のどちゃんは待つ女って雰囲気だじぇ」
「……待って戻って来てくださるなら、いくらでも待ちますが」
「次はいつになるんかのう……」



~4月0日、荷物整理

京太郎「――よし、これで一通りの片づけは終わったな」

京太郎「臨海は寮みたいだけど、さすがに女子寮には住めないし……ま、どこのギャルゲだよって感じだしな」

京太郎「学校にも街にも近いし、このマンションは悪くない位置だ……っていうか、こんないい場所抑えてる連盟って、やっぱすごい……」

京太郎「さて、それじゃ恒例のレギュラー確認やっとくか」


京太郎「去年のデータになるけど、まずは辻垣内智葉さん……まぁこの人はいないんだよな」

京太郎「優希や漫先輩と打ってたし、個人決勝にも残った凄腕だ……目つきが筋の人って感じ」

京太郎「それにおもちのほうも――む?」

京太郎「……なるほど、これはサラシ……そういうのもあるのか」

京太郎「ちなみにサラシは胸を押さえる道具ではなく、本来は武士がお腹に巻いて、切られても内臓が飛びだないように、押さえるものだったらしい」

京太郎「しかし、サラシだったとなると……お会いできないのが、ますます残念だな……」


京太郎「次、次鋒の?慧宇さん……え、同い年!?」

京太郎「見えねぇ……大人っぽいなぁ。しかもすげー美人」

京太郎「ストイックな感じなだろうな、真面目そうな顔してる……俺みたいなのは、あんまり好きじゃないかもしれないな」

京太郎「……いいおもちだけど、あんまり見ないようにしよう(見ないとは言ってない)」


京太郎「で――これまた美人だな、フランスからの留学生、中堅の雀明華さん」

京太郎「この人は一つ上か……清楚な顔立ち、上品な雰囲気……透華お嬢様みたいな方だな」

京太郎「……おもちは、こっちのほうが」ボソッ

ハギヨシ「」ニッコリ

京太郎「ま、まま、まぁ、失礼なことはさておき――しかし、見事なおもちだ……」

京太郎「でも、こういう人もそんなのは嫌うだろうし……こっちもあまり見られない、か……生殺しだぜ」


京太郎「この人は知ってる、はやりさんとチームメイトになったメガン・ダヴァンさん」

京太郎「一昨年の夏、透華お嬢様と同卓についたこともあるとか――プロにもなるくらいだし、相当強いんだろうな、やっぱり」

京太郎「おもちは……アメリカの方にしては、慎ましそうだ」

京太郎「やっぱりおもちと雀力は反比例……? いや、けど大きくて強い人もいっぱいいるし、一概には……」ブツブツ


京太郎「コホン――最後はネリー・ヴィルサラーゼ。チビっ子枠だな」

京太郎「咲ともやり合って、秋には淡にも勝ってる――けど、春に勝ったのは淡だった」

京太郎「っていっても、この小さな身体で一人日本に来て頑張ってるなんて……立派だな」

京太郎「お腹とか空かせてないかな。なんだったら、こまめに飯とか作ってやりたい……グルジアの料理って知らないけど」


京太郎「で、監督さんがやり手らしいな、ここは……アレクサンドラ・ヴィンドハイムさん」

京太郎「美人だけどおもちはない、そして年齢不詳。ただ――」

京太郎「これだけ強い人が揃う臨海で監督を務めるくらいだ、相当強いんだろう」

京太郎「こんな人に認めてもらえれば、俺も捨てたもんじゃないってことだ……マネージャー以外のとこでも、いいところを見せていこう」


京太郎「と――いうところか。ふぅ……」

京太郎「とりあえず、辻垣内さんとダヴァンさんはいないとして、ほか三人と――三年のほかの留学生か、4月からの新入生がレギュラーになるんだろう」

京太郎「まずは夏に向けてのランキング戦か。その中で、部員を平等にフォローしていかないといけないな」


京太郎「さて――確認はこんなとこにして、今日は街に出かけて、使えそうな店を探すとするか」


京太郎「さすが東京、店は多いし、開店時間は長いし、なにより――品揃えが素晴らしい」

「ありがとうございます」

京太郎「いえ、こちらこそ助かりました……また来よう」

京太郎「ひとまず、食材とか日用品はこんなもんで……必要があったら、いつでも買いにこられそうだ」

京太郎「あとは、適当にブラついてから、帰るとしよう――」

京太郎「――なるほど。食堂とか、食事できる店も多いと思ったら、ここは大学も近いのか……」

京太郎「うーん、それにしても……どうも見覚えがあるような気がするな。東京には何度か来てるから、そう見えるだけか?」

京太郎「いや、でもこの場所とか……たしか、つい最近見たような気が――」

??「あっ……」

京太郎「いつだったかな……最近ってことは、大会中のはずだけど……」

??「京太郎くん……か?」

京太郎「えっ?」

菫「おお、やはり……大会以来だな。元気にしていたか?」

京太郎「菫先輩、お疲れさまです」

菫「はは、そんな疲れるようなことはしていないがな……たしか、今月は臨海だったな」

京太郎「はい。えっと、菫先輩はどうしてこちらに?」

菫「臨海女子とうちの大学は距離が近くてな。部屋もこの辺りにあるから、買い物や食事で、この界隈はよく散策しているんだ」

京太郎「そうなんですか。よろしければ、またよさそうなお店なんか、紹介してくださると助かります」

菫「ああ、もちろん――ただ、その必要があるとは思えないがな?」

京太郎「えっ」

菫「両手に荷物を抱えて、もう贔屓の店ができたと見えるが?」クスクス

京太郎「まぁ、いいお店ではありました……でも、先輩のオススメなら覗いてみたいですよ」

菫「そうか……では機会があれば」

京太郎「ええ、よろしくお願いします」

菫「すまないな、どうせならこれからでもというところだが、いまはツレと用事を済ませるところで――」

京太郎「あ、ご友人と一緒でしたか。すみません、お時間を取らせて」

菫「いや、声をかけたのは私のほうだからな。それにあいつも、少し遅れて――」

??「すまない、菫。少し遅れ――ん、そっちのは……?」

菫「お、噂をすれば、だ……なに、それほど待っていないよ、智葉」

京太郎「さと、は……えっ、まさか!」

智葉「……須賀、京太郎?」

菫「そう、須賀京太郎だ……ふふ、なにを驚いている。昨日日誌を確認して、今月は臨海かと呟いていただろう?」

智葉「……よく見ているな、お前は」

菫「偶然な」

京太郎「――あっ……は、はじめまして、辻垣内さ――先輩」

京太郎「今月より、先輩の母校である臨海女子にてお世話になります。よろしくお願いします」

智葉「――――――」

智葉「ああ、よろしく――なるほどな」

京太郎「はい?」

智葉「いや、すまない……照やシロ、それにうちの後輩が騒ぐわけだと思ってな」

京太郎「はぁ……」

智葉「もちろん、巴や菫も――」

菫「おい! よ、余計なことを言うなっ」

智葉「おっと……まぁとにかく、映像や写真で見るよりも、精悍な顔つきだと思った。それだけのことだ」

京太郎「あ、ありがとうございますっ、辻垣内先輩」

智葉「――智葉でいい。それに、無理して先輩をつける必要はないぞ。卒業生とはいえ、君との関わりがあったわけでもないのだから」

京太郎「そうですね……でも、臨海の誰かと一緒にお会いしたとき、俺が先輩とお呼びしなかったら、おかしなことになりそうですし(無礼だと怒られたり、的な意味で)」

智葉「……ああ、そうだな……(さんづけを冷やかされたり、的な意味で)」ハァ

京太郎「それでは――どうぞお見知りおきください。なにかあれば、遠慮なくお申し付けくださいませ」

智葉「顔見知り程度の年下を、コキ使う趣味はないさ」

智葉「……いや、ちょっと待て」

京太郎「はい」

智葉「……もしかしたら、なにかあるかもしれない。連絡先を渡しておく、君のもくれないか」

菫「なっ――」

京太郎「わかりました」

菫「きょ、京太郎くん!?」

智葉「落ち着け、そういうつもりじゃない」

菫「そ、そそ、そういう――い、いや、なにも誤解してなど――」

智葉「……もういい、少し黙っていてくれ、ドM」

菫「だからドMじゃないと言っているだろ!」

京太郎「せ、先輩っ……往来でドMとか叫ばないでくださいっ……」

菫「あぅっ……う、うぅぅぅぅ……」

智葉「――よし。それでは、なにかあったら連絡する。そっちも、余計なことでなければ連絡して構わない」

京太郎「ありがとうございます」

智葉「ではまたな。菫、行くぞ」

菫「京太郎くん、誤解しないでほしい……本当に私は、その……え、Mではなくて――」

京太郎「はい、わかってます」ニコッ

菫「……よかった……」

京太郎「誰にも言いませんから」

菫「よくないいいいいいいいいいいいい!!!」

京太郎「じょ、冗談ですってば……でも、ちょっと残念かもしれません」

菫「へ――」

京太郎「先輩にそういう一面があるなら、ちょっと素敵だなって思いまして……って、これだと俺のほうが、変な趣味みたいですね」

菫「………………」

京太郎「すいません、忘れてください」

菫「…………い、いや、その……じ、自覚がないわけではなくて、だな……私にも、そういう部分がなくも……なきにしも、あらずというか……」ボソボソ

京太郎「それじゃ、菫先輩。それに智葉先輩、また……失礼します」

智葉「ああ、さようなら」

菫「き、きき、君が……そういうなら、私も……や、やぶさかでは、ない……い、いや、やっぱりまだ――」

智葉「……いつまでやってる。彼はもう帰ったぞ」

菫「…………えっ」

~4月第一週月曜

「――というわけで、本日よりひと月、男子学生がここで学ぶことになります」

京太郎「はじめまして……あ、日本語で大丈夫ですか?」

「全員が読み書きもトークも可能です」

京太郎「では――改めまして、はじめまして、須賀京太郎です」

京太郎「麻雀部に所属というのが条件ではありますが、それ以外の面は皆さんと変わりません」

京太郎「共に、学生生活を楽しみましょう。また、執事としての修行中でもありますので、なにかございましたら遠慮なくどうぞ」

京太郎「それでは、短い間ですがよろしくお願いします、お嬢様方」

「」ズッキューン

京太郎「……?」

京太郎「ど、どうぞよろしく……」

「質問があります、彼女はいますか!」
「好きな食べ物は!」
「好きな女の子のタイプは!」
「お風呂ではどこから洗いますか!」
「なぜ執事服なんですか! ちょっと写真撮らせてください!」
「私の隣に座ってください! すぐこの子どかしますので!」

京太郎「」

「大丈夫、男子が来て戸惑っているだけです。すぐに落ち着きますよ」

京太郎「そういう雰囲気に見えないんですが、それは……」

??「………………」

京太郎「……それで、俺の席はどこになるんでしょうか」

「ここっ、隣に――」
「すぐにどかせますからっ」

京太郎「いや、それはもういいんで」

「男子主人公の席は、窓際一番後ろと決まっている」

京太郎「というと――あっ」

ネリー「ん?」

京太郎「えーっと……ヴィルサラーゼさんの後ろですね」

「空けておいたからね」

京太郎「隣はいつものモブ子ですか」

モブ子「ウェーイwwwwwwwwwww」

京太郎「あいつうぜぇな……」

「では朝のHRはこれまで。授業の準備を怠らないように」


京太郎「ふぅ……よろしく、ヴィルサラーゼ」

ネリー「えっと――」

ネリー「………………」ホー

京太郎「どうかしたか?」

ネリー「イケメンだねっ」

京太郎「…………は?」

ネリー「よろしくっ、キョウタロー」

京太郎「あ、うん」

ネリー「あと、ネリーでいいよ。ヴィルサラーゼ、長いから」

京太郎「失礼じゃないなら、喜んで。よろしくな、ネリー」

ネリー「うん!」

京太郎(……かわいいな)

モブ子「ロリコンの血が騒ぐかね?」

京太郎「半日くらい黙っててくれ、頼むから」


ネリー「ねぇねぇ、お願いしてもいいの?」

京太郎「ああ、なんでも言ってくれ」

ネリー「お菓子、焼いて! タダで!」

京太郎「(タダで?) ああ、わかった……けど、いまは無理だな」

ネリー「えぇ~」

京太郎「授業始まるからな」

ネリー「そっかぁ……授業も、タダじゃないもんね」

京太郎「ま、そういうことだな」

京太郎(やけにお金を気にしてるけど……色々事情があるのかもな)

ネリー「じゃあ約束だね」

京太郎「ああ、昼か放課後にな」

ネリー「うん!」

京太郎「――そういえば、ネリーは電話持ってないのか?」

ネリー「あるよ」

京太郎「あるのか……」

ネリー「どうして?」

京太郎「ん、いや……なにかあったら、それで連絡してくれればいいと思ってな」

ネリー「わかった。それじゃ、キョウタローの番号、登録しとくね」

京太郎「ああ、これが俺の……自分でできるか?」

ネリー「平気だよ」

京太郎「ん……なんだ、このシール……備品?」

ネリー「部の備品なの。部員は一つずつ貸してもらえるの、持ってない人は」

京太郎「ああ、なるほどな」

ネリー「これならお金かからないから」

京太郎(特待生への配慮なんだろうな)

京太郎「どうだ、登録できたか?」

ネリー「できたよ。ネリーのも登録してあげる」

京太郎「いいのか?」

ネリー「練習に、なるからね……あれ?」

京太郎「どうした?」

ネリー「知ってる字。サトハの名前?」

京太郎「ああ、智葉先輩な……昨日会って、少し話したから」

ネリー「元気だった?」

京太郎「普段のあの人は知らないけど、健康そうだった。元気もよかったし」

ネリー「そっかぁ……大会のとき、元気なかったから心配してた」

京太郎「……きっと、ネリーの応援してたからだろうな」

ネリー「うん……夏の団体戦のときも、同じ顔してた」

ネリー「ネリーが負けると、サトハはいつも悲しそう……」

京太郎「……ネリーが悪いわけじゃない。あまり思い詰めないようにな」ナデナデ

ネリー「……うん」

京太郎「次、負けないように頑張ればいい……っていうのは、競争がない俺の甘い考えなのかね」

ネリー「ううん……監督もサトハも、そう言ってた」

京太郎「なら――そうしようぜ」ナデナデ

ネリー「うん!」

ネリー「それいい、もっとして」

京太郎「へ? こうか?」ナデナデ

ネリー「……あったかい。気持ちいい」

京太郎(そこはかとない犯罪臭……)

ネリー「キョウタローの手は、すごいねっ」

ネリー「あったかくなれる」

ネリー「おいしそうな、お菓子もつくれる」

ネリー「おっきくて、頼もしいねっ」

京太郎「そんな大層なもんでもないって……」

ネリー「ネリーの手は、麻雀しかしない……」

京太郎「……ちっちゃくて可愛いだろ、いいじゃないか」

ネリー「……そう?」

京太郎「それに麻雀も強い。咲も言ってたぞ、あと和も」

ネリー「サキ、ノドカ、聞いたことある」

京太郎「夏に団体で咲と、春は個人で和と試合してるぞ」

ネリー「サキ、ノドカ……そうだったね」

ネリー「相手の名前、あんまり気にしないから」

ネリー「キョウタローは、二人を知ってるの?」

京太郎「ああ、知らないのか……俺、二人とは同じ学校なんだよ」

ネリー「そっかぁ……キョウタローは、麻雀も強いの?」

京太郎「どうだろうな……いや、まだまだ弱いと思う」

ネリー「そうなの?」

京太郎「でも、強くなろうとは頑張ってるよ」

ネリー「ネリーも、強くなりたい」

京太郎「なら――一緒に頑張ろうぜ。よろしくな」ポンポン

ネリー「んっ!」

 ネリーはとりあえずこんなかな……

~昼

京太郎「さすがに……一学期早々、フルタイム授業はないか」

京太郎「いや、普通なら始業式だけのはずだけど……やっぱ名門校は、学業実績も作らないといけないからか」

ネリー「オトナのジジョウだね」

京太郎「難しい言葉知ってんな」

ネリー「監督がよく言ってるよ」

京太郎「……監督さんって、厳しい? 優しい?」

ネリー「やさしーよ。あと、胸もお尻もやせてるよ」

京太郎「手厳しいな……」

ネリー「それより部室行こっ」

京太郎「お、そうだな……いや、お昼はどうするんだ?」

ネリー「午前中だけのときは、部室棟の食堂だよ」

ネリー「特待生は、一日2食までタダだよ。お得!」

京太郎「なるほどな――」

京太郎「ということは――ネリーはよく、そこの食堂で食べてるんだな」

ネリー「うん。おいしくてタダだから、毎日食べてる」

京太郎「どんなの食べてるんだ?」

ネリー「ヒガワリ! あとは……シチューとか」

京太郎「和食は?」

ネリー「よくわかんない」

京太郎「だよな……魚はどうだ?」

ネリー「食べるよ。でも生は苦手」

京太郎「ふむ……なら、魚を洋風の調理にすればいけるか。あとは肉と、たしかグルジアでは――」

ネリー「??」

京太郎「ナンみたいなパン、チーズを練り込んだのとか、トルティーヤ系も……」

京太郎「それに……お菓子も食べたいって言ってたしな、うん」

ネリー「部室、行かないの?」

京太郎「いや、もちろん行くぞ。けどその前に、俺の作ったご飯食べてくれないか?」

ネリー「いいけど……お金ないよ?」

京太郎「それもタダでいいよ。その代わり、普段の学食とどっちがおいしいか、比べてくれないか?」

ネリー「いいよ!」

京太郎「よし、それじゃ行こう」

ネリー「どこで作るの? 寮のキッチン使う?」

京太郎「いや、女子寮に入るのはまずいからな……調理教室にしよう」

ネリー「勝手に使うと、怒られるよ?」

京太郎「大丈夫、鍵はもう借りてるからな」ジャラ

ネリー「えっ」

京太郎「色々練習がてら、使わせてもらおうと思って、午前中に頼んでおいたんだ」

ネリー「変わってるね、キョウタローは」

京太郎「なに、執事ならこれくらい当然だ。さ、行こうぜ」

~調理教室

京太郎「さて、と――まずはお茶だな。これ飲んで、待っててくれ」

ネリー「……チャイ?」

京太郎「ああ。うまく淹れられたかはわからないけど」

ネリー「……おいしいよ、あったかい」

京太郎「そうか。ならよかった……じゃ、少し待っててくれよ」

京太郎「――時間は取らせない、すぐに完成させるからな」キリッ

京太郎「さ――待たせたな」

ネリー「もうできたの?」

京太郎「ああ。まずは主食、ハチャプリだな。普通のイメルリ(チーズを練り込んだパン)とチャディ(とうもろこしパン)――」

京太郎「あとは地方によって違うらしいから、アジャルリ(パンを窪ませ、卵と溶かしたチーズを入れる)、ロブアニ(大豆入り)、クブダリ(お肉入り)を作ってみた。好きなの食べてくれ」

ネリー「すごい! 懐かしいの……日本では、全然食べてなかった……」

京太郎「で、スープと……肉料理はヒンカリだ。本当は中華の、小龍包なんだけど――似てるから、そっちに寄せてみた」

京太郎「あとは串焼きも。で、こっちは魚だな。フレンチの感覚を取り戻したかったから、ムニエルにしてる」

ネリー「……ほんとに、お金いいの?」

京太郎「ああ、もちろん。味見してもらってるわけだから、それでトントンだ」

ネリー「トントン?」

京太郎「あー……お金の代わりに、味見してもらってるってことだ」

ネリー「なるほど……食べていい?」キラキラ

京太郎「どうぞ」

ネリー「いただきます!」

京太郎「あ、それはするんだ」

ネリー「サトハに教えてもらったよ!」

京太郎「なるほど。お行儀に厳しそうな人だったしな」

ネリー「おいしい! 学食のもおいしいけど、これもおいしい!」

京太郎「そりゃよかった……これからも時々作るけど、そうなったら食べてくれるか?」

ネリー「うん!」

京太郎「ありがとな……あ、量は多いだろうから、食べきらなくても大丈夫だぞ。残ったら俺が食べるから」

ネリー「大丈夫、いっぱい食べるから」

京太郎「……無理してないか?」

ネリー「してない、おいしいよ!」

京太郎「ならいいけど……デザートは小さめにしとくか」

京太郎「砂糖漬けのフルーツを乗せた、一口パイにしとこうかな」

京太郎「――ほんとに、食べ切れるもんなんだな」

ネリー「……国では、いっぱい食べられないこともあるから。日本に来てからは、しっかり食べてるよ」

京太郎「そっか……俺には想像もつかない、厳しい世界があるんだな」ナデナデ

ネリー「チャイちょーだい!」

京太郎「ほい、どうぞ……って、やばい!」

ネリー「どうしたの?」

京太郎「気がついたらいい時間じゃねーか! 部活っ、何時からだ!」

ネリー「一時だよ」

京太郎「過ぎてる!?」

ネリー「大変だぁ」コクコク

京太郎「飲んどる場合かァ――ッッ!」

ネリー「おいしいよ?」

京太郎「あ、うん……」

ネリー「もったいないから、飲んでから行こうね」

京太郎「はぁ……わかったよ」

~十分後くらい

アレクサンドラ「初日から遅刻とは、余裕だねー」

京太郎「申し訳ありません」

ネリー「ごめんなさい」

アレクサンドラ「はぁ……まぁいいわ。ともかく、全員に紹介しとこうか」

アレクサンドラ「みんなー、集合ー」


京太郎「うーむ、初日から印象最悪だな……」

ネリー「大丈夫、みんな優しいよ」

京太郎「だとしても、時間にルーズな人間っていうのは、信用してもらえないもんなんだよ」

ネリー「世知辛いね」

京太郎「時々むずかしい言葉知ってんな、ネリーは」

ネリー「勉強したから」

京太郎「さて……それじゃネリーも、あっちに行ってなさい。俺はこっちで、みんなに挨拶だ」

ネリー「うん! またあとでね、麻雀しよう」

京太郎「ああ」


アレクサンドラ「――はい。かねてよりの希望通り、ようやくキョウタロウが来てくれたわ」

アレクサンドラ「挨拶して、キョウタロウ」

京太郎「はい」

京太郎「はじめまして、臨海女子麻雀部の皆さん」

京太郎「本日よりお世話になります、須賀京太郎と申します。初日から遅刻してしまい、申し訳ありません」

京太郎「口での謝罪は無意味かと思いますので、これより信頼していただけますよう、雑用周りを中心に務めて参ります」

京太郎「なにか気になる点や、用事がありましたら、遠慮なくお申し付けください」

京太郎「それでは――どうぞよろしくお願いします、お嬢様方」

アレクサンドラ「私も?」

京太郎「もちろん」

アレクサンドラ「ちょっと照れるわ」

ハオ「赤くなってますね、少し」

明華「年甲斐もなく」

アレクサンドラ「聞こえてんのよ、あんたたち」

アレクサンドラ「しょーがないでしょ、背高いし、若いし、イケメンだし、麻雀強いし」

ハオ「がっつきすぎです」

明華「ですが、わからなくはないですね」

京太郎(なんの話してるんだろ……お?)

明華「どうも、はじめまして」ニコッ

京太郎「どうも……えっと、雀先輩?」

明華「明華と呼んでくださいな」ニコニコ

京太郎「では――よろしくお願いします、明華先輩」

明華「……あの、もう一度よろしいですか?」

京太郎「……明華先輩」

明華「……はい、いいですね……あなたの声で名を呼んでもらえると、心地いいです」ニコッ

京太郎「恐縮です」ドキッ

ハオ「明華、抜け駆けはよくありません」

明華「あら、失礼」

京太郎「えっと、一年の……ハオさん? 慧宇さん?」

ハオ「ハオで結構ですよ。私も京太郎と呼んでいいなら」

京太郎「なら、ハオ――よろしく」

ハオ「こちらこそ、京太郎」ニコッ

京太郎(うーん、やっぱり二人とも美人だな……)

明華「私も京太郎と呼んで構いませんか?」

京太郎「ええ、もちろん」

明華「では京太郎……さっそくですが、電話番号とアドレスを交換しません? お近づきの印に」

ハオ「名案ですね。私も」

京太郎「ええ、ぜひ」

アレクサンドラ「じゃあ私も」

ハオ「気をつけてくださいね、京太郎」

明華「おかしなメールが来たら、拒否設定をお忘れなく」

アレクサンドラ「いい加減にしなよー、あんたたち……ん?」

京太郎「どうかしました?」

アレクサンドラ「ちゃっかりサトハの番号が入ってるんだけど」

ハオ「なっ――」

明華「これは糾弾せざるを得ませんね」

京太郎「ぐ、偶然会いまして、昨日……」

ハオ「偶然を装ったという可能性は?」

明華「ありそうです……さすがは智葉、抜け目がないですね」

アレクサンドラ「あと、ネリーのも入ってるね。部の備品のだけど」

ハオ「同じクラス、なんて羨ましいんでしょうか……」

明華「同じ学年なだけ、マシだと思うのですが……」

ネリー「クラスのみんなも、大はしゃぎだったよ」

ハオ「でしょうね……」

明華「想像がつきます」

アレクサンドラ「人の顔見てコメントするの、やめなー」


京太郎「では――中断させてしまい、申し訳ありませんでした。部活、再開ですね?」

アレクサンドラ「そうね。それじゃ、続けましょう。明華、部長、そっちは任せるから」

明華「お任せください」

京太郎「それじゃ俺は――」

アレクサンドラ「………………」

アレクサンドラ(チャンピオン、男子とはいえあの圧倒ぶりは、かなりの実力よね)

アレクサンドラ(どうしよう、ハオとネリーに相手させてみる?)

京太郎「俺は――お近づきの印に、お菓子でも焼いてきます」

アレクサンドラ(ズコー)

ハオ「それは楽しみです」

ネリー「さっきのもおいしかったよ」

明華「あら、すでに手料理を食べたの、ネリー?」

ネリー「うん、おいしかった」

ハオ「それで、どういったものを作るのです?」

京太郎「いま言ったら、もったいないだろ?」

ハオ「そうですね。では、楽しみにしておきます」

明華「私も。ですが、少し意外でした」

京太郎「なにがです?」

明華「京太郎は最初、部室の掃除をすると聞いていたものですから」

京太郎「――――しまった」

明華「ふふっ、別にいいんですよ。それでは、楽しみに待っていますね」

京太郎「……はい、お任せを」



~調理教室

京太郎「さて、再び戻ってきたわけだが――どうするかな」

京太郎「飲茶に寄せるか、フランス菓子にするか……これはなかなかの難問だぞ」

京太郎「――悩みましたが、ダックワーズ……ダコワーズをご用意しました」

明華「まぁ素敵。日本発祥の、小判型ですね」

ネリー「これもおいしそう……綺麗なお菓子」

ハオ「まぁお昼をいただいたばかりですからね。飲茶では少し重いでしょうから」

京太郎「すみません、監督。休憩のタイミングもわかりませんので、対局中にも摘めるものを、と思って」

アレクサンドラ「休憩はまとめて取っていないからね。個人に任せてるのよ」

京太郎「そうなんですか」

アレクサンドラ「これからも折を見て、ブレイクが必要だと思ったら、だしてちょうだい」

京太郎「かしこまりました」

京太郎「とりあえず、対局継続で食べていただくことになったか……お茶を淹れて回ろう」

京太郎「失礼いたします、お嬢様」スッ

明華「ありが――お嬢様?」

京太郎「あっ……す、すいません、明華先輩っ……お茶、お注ぎいたします」

明華「ふふっ、謝らなくてもいいですよ」

京太郎「……綺麗なブロンドでしたので、思わず……気をつけます」

明華「大丈夫、お嬢様と言われて気に障ったりはしませんから」

明華「でもお上手ですね。日本人はブロンドが好きみたいだけど……京太郎もそうなのですか?」チラッ

京太郎「ああ、染めてる人は多いですね……俺のは天然です」

明華「海外の血が?」

京太郎「違うと思います……なので、理由はわかりません」

明華「そうなんですか……でも、あなたの髪もとても綺麗です。それにフワフワ」サワサワ

京太郎「うっ……」ゾクンッ

明華「? 髪を触られるのは、苦手ですか?」

京太郎「いえ、大丈夫です。ただ、あまりされないことなので、ちょっと気持ちよく――」

京太郎「――なんでもないです、忘れてください」

明華「……気持ちよく、なっちゃいました?」

京太郎「あー、いや、その……はい」

京太郎「――先輩の撫で方が、優しかったので……」

明華「そうでしたか?」サスサス

京太郎「……はぁ……」

明華「ふふっ……お茶はまだですか?」

京太郎「――っと、失礼しました……どうぞ」

明華「ありがとう……いい香り。淹れ方が上手なのですね」

京太郎「お気に召してよかったです」

明華「……こんなお茶なら、毎日飲みたいですね。女子寮なのが残念です」

京太郎「お昼なら、ご馳走できるかと思いますが」

明華「そうですか? では……機会があれば、お願いしましょうか」

京太郎「はい、喜んで」

明華「……これを飲み終えた頃、もう一度来てくださいな。お代わりをお願いします」

京太郎「かしこまりました……明華先輩」

明華「お嬢様でもいいんですよ?」クスクス

京太郎「あまりからかわないでください……」


明華(本当に、そっちでもいいのですけど……)


京太郎「ところで、監督は召し上がってくださいましたか?」

アレクサンドラ「うん、いただいたわよ。とてもおいしかったわ」

京太郎「それはよかったです。あのくらいの甘さは、大丈夫……か」

アレクサンドラ「女の子は甘い物好きだからね。多少甘くても、問題ないわ」

京太郎「みたいですね、参考にします」


明華「女の……子……?」

ハオ「子とはいったい……うごごごごご」

アレクサンドラ「あんたらてきびしーよ、毎度」


京太郎「あれだけ食べた後に、ネリーはよく食べられるな……それとも、それだけ飢えを知ってるってことなのか……」

京太郎「……重く考えても、俺一人でどうにかできる問題じゃない、か」

京太郎「さて――悩んだときは掃除に限るな」

京太郎「掃除はいい、曇った心も晴れ晴れとして、悩みも吹き飛んでくれる……」

明華「あら、どうやら見られるみたいですね、お掃除する京太郎を」

ハオ「あれが噂の……楽しみですね」

ネリー「なにかすごいの?」

明華「その部屋にいる人間にも気づかれず、部屋を見違えるほど綺麗にしてしまうとか」

ネリー「へぇー」

ハオ「さて、どうしましょう。見ていたほうがいいのでしょうか」

アレクサンドラ「もう一つ、あの子についての噂を知ってるんだけど」

明華「なんですか?」

アレクサンドラ「あの子に構うあまり、部員が練習しなくなることもあるんだって」

明華「それは困りますね」

ハオ「我々も少し眺めたら、練習に戻りましょう」

ネリー「勝たないとだめだもんね」

アレクサンドラ「……ほんと、ちゃんとやってね?」


京太郎(すげー見られてて、やりづらい……)

京太郎「……まぁ、いつも通りやっておくか」ササッ

明華「! すごいですね、ずっと見ていたのに、いつの間にか綺麗になっていますよ」


京太郎「ここの掃除は……部員ってことはないんだろうな。やってるとしたら、業者さんかな? こういうとこは、こまめにやらないんだろうなぁ」テキパキ

ハオ「……いつもより、埃が少なく感じられますね。心なしか、空気がおいしいです」


京太郎「こういう隅のほうも、意外と見落としがちなんだよなぁ」

ネリー「!! 50円落ちてた! もらっていいの?」


京太郎「ふぅ――こんなとこか」

アレクサンドラ「気は済んだ? それならそろそろ、練習参加してもらえるかな」

京太郎「はいっ」

アレクサンドラ「……あれ、牌が綺麗になってる……?」

京太郎「さっきついでに、磨いておきましたから」

アレクサンドラ「……みんなが練習で掴んでたはずなのに、そんなこと起こり得るのかしら……」

京太郎「――結構遅い時間だけど……部活は何時までなんですか?」

明華「遅くまでやりますよ。学内に寮があるので、多少遅くなっても問題ありませんから」

京太郎「……わかりました」

ハオ「でも京太郎、あなたは学外から通っているはず。早めに帰ったほうがいいのでは?」

京太郎「みんなが練習してるのに、マネージャーが帰れるわけないさ」

ネリー「残業代、出ないよ?」

京太郎「ブラックにはもう慣れたよ」

アレクサンドラ「君が慣れてても、そういう噂立つのは困るからねぇ……誰か、昇降口まで送ってあげて」

京太郎「えー」

明華「本人もこう言ってますし……」

ハオ「だめですよ、明華」

アレクサンドラ「一応、私先生だし、キョウタロウは生徒だしね……はい、また明日」

京太郎「……お疲れさまでした」

ネリー「明日も、おいしいお菓子食べさせてね」

京太郎「ああ、努力するよ。じゃあな」

京太郎「やれやれ、もうちょい続けてもいいんだけど……一応、建前上の下校時刻は過ぎてるし、仕方ないか」

京太郎「明日もあるし、遅くならないように帰るとしますか」

~少年下校中

京太郎「夕方でも、かなり明るいなぁ、都会は」

京太郎「白糸台のときより、都市部に近いからかな。人も多いし……もしかしたら、知ってる人がいるかもしれないな」

京太郎「っていっても、知ってる人も数えるほどだし、そううまくは――」

はやり「あっ……お~いっ、京太郎くぅ~んっ☆」

京太郎「その声は……はやりさん?」

はやり「あったり~☆ どうしたの、こんなところでっ?」

京太郎「今月から臨海に通ってますので。いま帰るところです」

はやり「そうなんだ――って、あれ? 臨海は寮制だって聞いてるけど?」

京太郎「女子寮なので、さすがに俺が入るわけにはいきませんから。でも、聞いたって――ああ、わかりました」

はやり「そっ☆ そうだ、紹介しとこうかな――おぉ~い、メグちゃ~ん☆」

メグ「どうしましタカ、ハヤリ? おや、そちらは……」

京太郎「ご一緒されてたんですか」

はやり「そだよ~。あ、メグちゃん、こちらは須賀京太郎くん。もちろん、知ってるよね?」

メグ「ええ、モチロン……あと一ヶ月、いえ……二ヶ月早ければ……」ガックリ

京太郎「あぁ……なんか、すいません」

メグ「いえ、あなたが気にすることデハ……はじめまして、キョウタロウ。大宮の新人、メガン・ダヴァンといいマス」

京太郎「存じています……はじめまして。須賀京太郎です、今月は臨海に通っていますので……」

京太郎「しばらくはこちらに滞在します。なにかありましたら、遠慮なくお申し付けください、ダヴァン先輩」

メグ「ええ、ヨロシク……ではさっそくですが」

京太郎「はい、なんなりと」

メグ「ラーメン、手打ちできるのなら、お願いしたいのでスガ?」

京太郎「――ああ、ダヴァン先輩だったんですね、ラーメン」

メグ「えっ?」

京太郎「日誌でだいぶ前に、ラーメンのリクエストがあったので……一応、それからコツコツと練習はしてました。ですから、ご用意できますよ」

京太郎「北九州か、北海道の方だと思ってたんですけど……まさかって感じです」

メグ「……驚きまシタ、そんな昔の日誌のことマデ、覚えているなンテ……」

京太郎「まぁ、こまかいこと覚える神経質さくらいしか、取り柄がないもので……それで、どうしましょう? すぐに召し上がられるなら、家でご用意しますけど」

メグ「それはありがタイ、さっそくお願いしマ――」

はやり「だめだぞっ☆」ゴッ

メグ「」ビクッ

京太郎「ぁ――そうでしたね、はやりさんと一緒ということは、なにかお仕事で?」

はやり「ちょっとね、反省会かなっ☆ ということで、せっかくのお誘いはまたの機会ってことで」

メグ「残念デス……そウダ!」

京太郎「はい?」

メグ「携帯を貸してくだサイ。私の番号を、登録しておきまショウ」

京太郎「わかりました、お願いします……なにかありましたら、いつでもご連絡ください」

メグ「……どういうことでスカ」

京太郎「えっ」

はやり「どうしたの?」

メグ「ハオ、明華、ネリー、監督はいいデス……が、なぜ! サトハの番号まで!」

京太郎「あー……昨日、偶然お会いしまして」

メグ「……偶然会って、サトハが番号を教えたのでスカ?」

京太郎「そう、ですね……なにか頼むことがあるかもしれないから、と――」

メグ「なるほど、やはり隠していたようでスネ……あのメガネの奥に、デレを!」

京太郎(違うと思う……)

メグ「これは私も負けていられナイ……まずはキョウタロウ!」

京太郎「はひっ!」ビクッ

京太郎「なんでしょうか、ダヴァン先輩」

メグ「その呼び名を変えまショウ。ダヴァンではなく、メガン――メグと、呼んで構いません」

京太郎「……愛称っぽいんですけど、いいんですか?」

メグ「メガンより、響きがよいデス……」

京太郎「では――今後ともよろしくお願いします、メグ先輩」

メグ「ええ、ヨロシク」

はやり「……挨拶はもういいかな?」

メグ「はい。では行きまショウ」

はやり「それじゃね、京太郎くん☆」

京太郎「はい、お疲れさまでした」



~4月第一週月曜、夜

京太郎「いや、驚いたな――」

京太郎「まさか初日にして、去年のレギュラー全員と知り合えるとは、思わなかった……」

京太郎「っていっても、智葉先輩やメグ先輩は、そうそう会えないだろうけどな、うん」

京太郎「いやぁ、初日にして色々あった。ちょっと疲れたかもしれない……」

京太郎「さて――誰かに電話しておこうか。誰がいいかな……」

京太郎「そうだ。大会中はゆっくり話せなかったし、シロさんに電話してみようか」

京太郎「――と思って、電話したんですけど」

シロ「……ん、そうなんだ」

京太郎「あれ、お疲れみたいですね」

シロ「まぁね……オープン戦あったから」

京太郎「試合!? しかも、一軍ですか!」

シロ「オープン戦だからだと思うよ……よそだと、照とかメグも出てたみたい。関西は知らないけど」

京太郎「……すごい、シロさんがプロみたいだ……」

シロ「プロだから……」

京太郎「そうでした」

京太郎「あー、でもそれなら……あまり電話しないほうがいいですかね」

シロ「……なんで?」

京太郎「いや、お疲れなら早く休みたいかなと思いまして」

シロ「……はぁ……わかってない、京太郎は」

京太郎「えええ……」

シロ「京太郎だって、疲れたら掃除したりしたくなるでしょ?」

京太郎「それは普通のことですよね?」

シロ「……まぁ、そうだとしておく」

シロ「それと同じように、私は疲れてるときほど、京太郎と話したいの」

京太郎「……なぜ?」

シロ「そ、れは……察して」///

京太郎「ふむ――――」

京太郎「なるほど――」

シロ「わ、わかった……?」

京太郎「グチですね。いいですよ、お聞きします」キリッ

シロ「………………バカ」

京太郎「あるぇぇぇ……?」

シロ「はぁ……もういいよ、それで」

シロ「まぁ確かに、ちょっとヤなこともあったし……」

京太郎「いいですよ、聞かせてください」

シロ「ん……ヤなことっていうか、私の打ち方についてかな」

京太郎「はい」

シロ「私、たまに長考するでしょ?」

京太郎「しますね。でも、そのときほど高打点、そして和了率も高い。シロさんの持ち味ですよねっ」

シロ「……うん、ありがとう」

シロ「でも、それが対戦相手には不服っていうか……リズム狂わせる長考も、たいがいに――みたいに言われてね」

京太郎「……なるほど……」

シロ「怒ってくれないの?」

京太郎「まぁ――とりあえず、最後まで聞きます」

シロ「……ま、いいか」

シロ「まぁ最後っていうか、それだけなんだけど」

京太郎「えっ」

シロ「別にルールには抵触してないから、問題はないんだけどね。かく乱みたいに思われたから、スポーツマンシップ的な注意だと思うんだけど……」

シロ「あとはそれで、先輩にもちょっと言われたかな……なるべく控えたほうがいいって」

京太郎「…………そうですか」

シロ「だけど――これは、私にとって大事だと思う」

シロ「控えた結果勝てなかったら、プロとしてやっていけない」

シロ「控えなくても問題はないけど、セコい作戦とか思われても、それはそれで不満だし」

シロ「……どうしたらいいと思う?」

京太郎「……そう、ですね……」

京太郎「――もう答えは決まってるんじゃないですか?」

シロ「……それはそうだけど」

京太郎「なら、その通りにすればいいと思います、俺は」

シロ「……まぁ……そのつもりでは、いたけどさ……」

シロ「どっちでもいいから、言って欲しかったな」

京太郎「あー……その、俺が意見するなんてのも、おこがましいかと思って」

シロ「そんなことないよ。京太郎に言ってもらえたら、なんかしっくりと納得できたかもしれないし」

京太郎「そうでしたか……なんかすいません、ちゃんと答えられなかったみたいで」

シロ「ううん、そんなことない……元々グチの電話なわけだし、こっちこそ、京太郎を嫌な気分にしてなきゃいいけど」

京太郎「俺は別に……あの、シロさんは大丈夫ですか?」

シロ「うん、聞いてもらえてよかった。明日から、また頑張るね」

京太郎「――シロさんの口から、頑張るなんて言葉が聞けるなんてっ……」

シロ「怒るよ?」

京太郎「すいません……」

シロ「まぁ自分でもちょっと意外だった」

シロ「……たぶん、開幕してからの試合を、京太郎に見て欲しいからだと思うよ」

シロ「頑張ってレギュラーになろうって、思ってるんだ……」

京太郎「――応援、してますね」

シロ「ありがとう……そうだ、しばらくは東京だよね?」

京太郎「はい、臨海ですから」

シロ「そういう行動が導入されるかわからないけど……試合、出られるとなったら来てね」

京太郎「ええ、もちろんです」

シロ「ありがと……グチのほうもね。それじゃ、また」

京太郎「はい、失礼します……おやすみなさい」

シロ「おやすみ」

京太郎「ふぅ……プロっていのも、大変なんだな……けど、俺はシロさんの打ち方が好きです」

京太郎「――ちゃんと、言ってあげたらよかったな」

京太郎「さて、近況連絡して、寝るとするか」

京太郎「――今日から、というか昨日から東京です。そちらからは遠いですが、元気にやってます」

京太郎「白糸台とはライバルになってしまいました……今月の俺は、白糸台に勝てるよう、みんなをサポートする生活です」

京太郎「こんなとこか――さて、おやすみなさいっと」

~4月第一週月曜、終了


【4月第一週月曜】

 本日から――正確には昨日からだが、臨海女子へ派遣されることに。
 女子校には慣れていたつもりだったが、ここの活気はまた別格だ。
 留学生が多いからか、クラスでは非常に注目されたように思う。

 あとは、男子が珍しかったのか、クラスの女子がやけにもの珍しそうに、俺を触っていた。
 いつの間にか行列になっていたので、一日十人まで、と冗談めかして言うと、整理券が配られだした。
 クラスメートの麻雀部員に尋ねたが、よくわからないらしい。

 ともあれ、なかなか面白そうな学校だと思う。
 今日はまともに麻雀できてはいないが、明日からは練習したいところ。

 そうそう、それともう一つ。
 本日は大学の入学式だったはず、おめでとうございます。
 お近くの大学に通ってらっしゃる方は、なにかありましたら遠慮なくお申し付けください。
 先輩の要望には、可能な限り――それ以上のご期待に、添いたいと思いますので。

 高校の入学式は来週だから、後輩ができるのはもう少し先か。
 その日まで、少しでも先輩らしくなれるよう、研鑽しておこう。

…………

『よろしくね、キョウタロー』
『部内に男子がいるのは新鮮で、とても楽しいです。あとクラスの女子は、自重したほうがいいですね』
『二年生は怖いですね……よかったら、三年のクラスに来られては? 学力的には問題ないのでしょう?』

 まぁそうですが……実害があるわけでもないですし、大丈夫だと思います。
 心配してくれて、ありがとうございます。

『――まぁ、学校のほうに集中するといい。君の先輩たちには、あまり無理を言わないよう言っておく』
『と言いツツ、自分が一番無理を言う未来が見えマス』
『ちゃっかり一番に番号登録してましたし』
『典型的なツンデレです。そういうのを日本男児が好むと、本能で理解してるのでしょうね』
『――お前ら、言いたいことはそれだけか』

『私たちも無茶を頼む気はない。が――男子個人チャンピオン、それも他を圧倒する実力者が、練習に付き合ってくれれば嬉しい』
『袴は着ませんけどね』

 マジかよ……こんなんじゃ俺、大学まで足を運びたくなくなっちまう……
 まぁ頼まれれば行きますけど

『キョウタローのご飯、おいしかったよ。いっぱい作ってくれて、嬉しかった。また作ってね』
『そんなに作ったの!? 私も、そういうのしてほしかった!』
『なにに張り合ってんの、あんた……』
『留学生いうことは、その母国の料理とか? いや、まさかそこまでは――』
『英)京太郎は母国の料理を調べて、最高レベルの味でだしてくれるわよ。とってもおいしいんだから』
『なに書かれてるかわからへん……』
『意訳すると、京太郎は天使だってさ』
『ダイタイアッテル!』

『去年のメンツやと、フレンチとか?』
『中華もだよね』
『フレンチかは知らんけど、前に……コ……コフィン、とかいうの食べたわ』
『コフィンはフランスの料理ですね、たしかに。でも今日いただいたのはお菓子、ダコワーズでした』
『タコス!?』
『よく見てください、ダコワーズですよ。ダックワーズというほうが馴染むでしょうか』
『中華……唐揚げ!?』
『近いものはありますけど、中華は本当に種類が多いです。私は作ってもらうのもいいですが、一緒に作りたいですね。できれば女子寮にも――』
『そ、そこまでです! 野望がもれては困りますから!』

 野望……?
 なんだろう、嫌な予感がするのう。

『そんなとこより白糸台おいでよ、楽しいよ』
『それよりテレビのお仕事しないかな☆』
『それよりも、プロの付き人しようよ』
『プロ勢の主張が激しい。シーズン始まるのに、大丈夫なのかな』
『北海道って結構冷えるね、この時期でも』
『あれでアラサー新人とか嘘でしょ……めちゃくちゃ強いんだけど、勝てる気がしない』
『あ?』
『あ?』
『アラフォー?』
『アラサーだよ!』


~清澄

「京ちゃぁん……早く帰ってきてよぉ……」
「京太郎くん……もう、限界です……」
「京太郎……タコス、タコスぅ……」
「……しゃきっとせんかい、お前ら!」
「京太郎ぉ……」
「あんたもか! はぁ……まったく、お前らがそんなんじゃと、京太郎も愛想尽かして、臨海に行ってしまうわ――」
「さぁ咲さん、夏に向けて練習です。白糸台に、大星さんに――そして臨海女子に負けていられません」
「京ちゃんを奪おうとするなら……全部ゴッ倒す!」
「この対局……東二局はこない!」
「」
「……京太郎ぉ……」
「あんたは戻ってこんのかい!」


~白糸台

「なんで臨海なの!」
「近いね」
「でも遠いよね」
「遊びに行っていいっ?」
「だめだよ」
「だめだね」
「どーして!」
「練習あるし」
「向こうの練習の邪魔になっちゃうし」
「あっちで練習するから!」
「――それやって、淡の強さを見せるのが、一番もったいないから」
「チャンピオンを抱える学校として、それは許可できません」
「う~……」
「はいはい、唸らないの」
「次のチャンスを待とうね」
「次っていつさ!」


~白糸台側、大学

「……キョータロ、シロ、オコラセタッテ」
「あらま」
「珍しいよー」
「なに言ったか、詳しく聞いてみて」
「……ムツカシイ」
「はいはい。ちょっと貸して……あ、きた」
「ふむふむ……シロが相手に悪く言われて、先輩にも注意されて、それを庇えなかった、か――」
「うう、プロは怖いよー」
「まぁシロが甘えてるのもあれだけど……」
「これは京太郎くんが悪いね」
「ミカタ、シテアゲテ……」
「グチなんて言わなさそうなシロが、せっかく頼ったんだもんねぇ……なるべく、優しくしてあげてほしいとこだけど」
「また変な遠慮しちゃったんだろうね。麻雀のことに関しては、あれだけ実績あっても、まだ不安がってるし……」
「京太郎も、ずっと苦しんでたんだよー。仕方ないよー」
「……しゃーない。そっちは私たちで甘やかしてあげますか」
「可愛い後輩のためだしねー」

(英)シロには優しくしてあげてね。その分、私が甘やかしてあげるから……よし、送信♪)

「あれ、エイちゃん。いまメールした?」
「オクッテ、オイタヨ!」
「ありがと。ま、新環境に慣れるまで、だけどね」
「私はずっとでもいいよー。最後まで責任もって甘やかすよー」
「……それはどうだろ」


~永水

「臨海女子、ですかー」
「あまりコネがないわねぇ」
「巴さん、菫さんからなんとか……」
「もういいじゃないですか、気にしても仕方ないですよ。クラスの女子に騒がれて、嬉しそうですし」
「そうは書いてないと思うけど……」
「京ちゃんは、そんな性格じゃない」キリッ
「それはどうかしらねぇ、男の子だし」
「きょ、京太郎さんは誠実な殿方です! フラフラと浮ついたことはしません!」
「…………妄信って怖いですよー」
「は、はしかみたいなものよ、きっと」
「あれだけ女性にだらしない人もいないと思いますけど」
「……見える。次に永水に来て、いざ帰るときに湧が泣きわめく姿が」
「ありえません」
「……とりあえず、巴には時々、様子を見てもらいますよー」
「そうしよう。前に、監視役って言ってくれてた……」
「あれは冗談だったと思うのだけれど……」
「いえ! 巴ちゃんにお願いしましょう!」
「はぁ……はいはい、わかりました」


~臨海側

「……いや、困るんですけど。私も学校始まりましたし」
「どうした?」
「いえ、ちょっと……変なことを頼まれてしまって」
「大方、京太郎の様子を見るよう、お姫様に頼まれたのだろう」
「モテる男がそばにおる言うんは、厳しかねー」
「っていうか、気にしなくても京太郎くんは、どうこうなりませんって……」
「ほー、えらい自信やなかと?」
「だって京太郎くん、奥手ですから」
「……色んな女と出かける様子を、見られているようだが?」
「そこに、特別な意味がないんですよねぇ……いや、それなりにはありそうですけど、友達の延長といいますか……」
「ふむ、なるほど」
「経験者は語る、か」
「!?」
「そうなのか巴!?」
「違いますよ! 話作らないでください!」
「盛り上がってきたと……ここは、とっておきを開け――」
「――我々はまだ未成年だ、忘れるな?」
「は、はは……じょ、冗談やけん……」


~阿知賀

「……ハルエ、行っちゃったわねー」
「一応、顧問の先生はいるけど……やっぱり麻雀初心者だね」
「指導者がほしいね」
「それはそうだけど……心当たりがなぁ」
「ご、ごめんね、練習相手ならできるんだけど……」
お姉ちゃんは大学に集中してくれていいのです!」
「やえさんなんかは、行くなら晩成に行くだろうし……」
「一応、ハルちゃんも離れる前に、心当たりには連絡してくれたみたい」
「そうなんだ……でも、いまいないってことは……」
「あああああああ! なんかモヤモヤするぅぅ!」
「結局三人とも、決勝卓には進めなかったし……」
「団体も個人も、白糸台の時代って感じになっちゃたもんね……」
「……こ、こういうときこそ、声だしていかないとっ」
「って言われてもなぁ……あ、宥姉、見本見せてよ」ワクワク
「え、えええええっ」
「宥さん、バチッと頼みます!」
「が……がんばって、いこーっ」
「かわいい」
「かわいい」
「かわいいです!」
「さすがお姉ちゃんなのです!」
「も、もういやぁぁっ……」カァァッ


~姫松

「……本気で再建せんと、まずいなぁ~」
「すいません、力不足で……」
「準決勝までは行けたけどなぁ……力負け、してしもたなぁ」
「……悔しいですっ……」
「まぁ悩んでもどうにもならへんよ。とりあえず、新入生も入ってくるから、弱気だけは見せんと行こか~」
「そう、ですね……」
「こんなとき、お姉ちゃんやったら……って、あかん! いまの姫松は、私らの代やねんからっ……」

『――というような状態でして』
「……私からは、なんも言うことないなぁ。厳しいようやけど、やっぱりいまの部員の問題や」
『ですよね……』
「で、絹ちゃんは?」
『愛宕先輩にかけてます』
「まさか相談してへんやろな……」
「ヒロはそういうん、私ら以上に突き放すのよー」
『それは絹ちゃんもわかってるはずなんで』
「そらそうか」
「しゃべることで、力もろて、元気なってほしいのよー」

「――あ、お姉ちゃん? うん、私……生水飲んでへん? お腹だして寝てへんか?」
『あったりまえやろ……なんや、絹ぅ。うちがおらんで、寂しいんか?』
「ちょっとだけ」
『しゃーないなぁ……いや、そういうときこそ京太郎にかけへんで、どないすんねん』
「!? えっ、やっ……そ、そんなん……迷惑かもしれへんやん。新しい学校、行ったとこやのに……」
『アッホやなぁ! そういう不安がってるときにこそ、支えてくれる女に弱いんやて、男は』
「そうなん? っていうか、なんでおねーちゃんがそんなことわかるん?」
『――って、オトンが言うてたわ』
「なんやの、それ」
『ええからかけてみーて。そんでうまくいったら、儲けもんや。女は行動力――ちゃう、女は度胸やで』
『失敗考えてウジウジするより、ドーンとぶち当たったほうが、スッキリするやろ!』
「…………そうやんな……悩んでも、なんも……うんっ……」
『お?』
「おおきに、おねーちゃん! 私も頑張るわ!」

「……やーれやれ、手ぇかかる妹やで……ま、そこが可愛いんやけどな」


~千里山

「……なんでいるんすか、先輩ら」
「大学と近すぎるんが悪い」
「これからもちょいちょい顔だすから、サボりなや」
「私らはええですけど――監督がなんて言うか」
「まぁまぁ。見つからん時間にするし――」
「ほう。そらおもろい……で、すでに見つかった場合はどうするんや」
「」
「……部長、練習始めましょか」
「そうやね。ほな先輩方、ごゆっくり」
「ちょちょちょっ、待ちぃや! 浩子! 泉ぃ!」

「――心配しとったほど、落ち込んでないですね」
「準決勝までは残れたからな……言うたら、あんたらの記録と一緒や」
「きっついわぁ」
「監督のほうは、大丈夫でした?」
「うちの心配はええ。うちより優秀な監督がおったら、元より場所は空けるつもりやしな。肩叩かれんいうことは、そういうことやろ」
「ま、甲子園でも毎年毎年、ベスト4まで行く学校もいませんしね」
「一年も入れて、ここから叩き直しになるんかぁ……」
「他人事みたいに言いなや、あんたらの仕事やで。コーチ」
「えっ」
「頑張ってな、竜華」
「園城寺も、無理のない範囲でやってくれたらええで」
「……うちは、その……病弱ですし」
「……ま、あんじょうしとき」


~臨海

「思った以上に好青年でしたね。料理も上手で、これからが非常に楽しみです」
「ええ。でも――サトハと仲良くしていたのは、本当に意外でした」
「そう? サトハ好きそうだよ、キョウタローみたいなの」
「なにげに面食いですからね、サトハも」
「軽い男は嫌いと言っていましたが、顔を合わせれば彼がそうでないのは、一目瞭然ですし」
「大会も見てましたからね。あの決勝の卓を見れば、彼がストイックなのはよくわかるはず」
「今日は麻雀できなかったもんね。明日から、楽しみ!」
「そうですね……できれば明日は、お昼もご一緒したいでしょうか」
「キョウタローのご飯、おいしいよ!」
「そういえば、なにを作ってもらったんです?」
「えー……グルジアのご飯、パンとお肉と……あとは、小麦粉で焼いたお魚?」
「ムニエル、でしょうか……」
「母国の料理を、用意してくれたのですか……努力に頭が下がりますね」
「??」
「……つまり、彼はネリーの国のことを調べて、料理を調べて、わざわざ用意してくれたということです」
「えっ……そうなの?」
「おそらくは。グルジアの料理というのは、あまり一般的でもないですし」
「そうなんだ……優しいね、キョウタロー」
「ちゃんとお礼は言いましたか?」
「うん!」
「はぁ……私も早く、彼の手料理を食べたいです」
「私は一緒に作りたいですが」
「それも素敵ですねぇ……でも、お嬢様に包丁を握らせるでしょうか」クスッ
「お嬢様?」
「いえ、こちらの話ですよ」


~プロ、東

「いやー、オープン戦はフレッシュだねぃ。どこもかしこも、新人ラッシュ」
「それ相手に無双するのやめようよ、咏ちゃん……」
「メグちゃん、すっごいショックみたいだったぞ☆」
「まーまー、プロの洗礼ですって」
「次こそリベンジしマス……」
「ま、いつでもかかってきなー……って、あんま落ち込んでなさそうだけど?」
「さっき京太郎くんに会ったからだぞ☆」
「なんだと」
「はやりちゃん、詳しく!」ガタッ
「……では、私はこレデ……」
「まぁ座りな」ガシッ
「さ、飲んで飲んで。ウーロン茶でいいよね?」
「……ハ、ハヤリさん……」
「これも経験だぞ☆」

「……シロ、どうしたの?」
「ん、ちょっとね……照はよかったね。安定してた」
「周りは調整段階だろうから、なんとも……そんなことより京ちゃんのクラスの女子をなんとかしたい」
「それは同感……電話で言っておけばよかった」
「電話したの? ずるい」
「照もすればいいでしょ」
「……は、恥ずかしい///」
「なに言ってんの、いまさら……」ハァ


~プロ、西

「利仙、お疲れ!」
「ありがとうございました……とはいえ、試合では不甲斐ない面ばかりで……」
「これから!」
「……まぁそれはええねんけど。なんでこう、俺らばっかり誘うんですか?」
「若手との交流というやつです。別に友人から聞いているであろう、京太郎くんの話を聞きだそうなんてことは、考えていません」ニコニコ
「……や、あの……ほんまに聞いてないですよ? っちゅーか、そういうんはほら、日誌で見てますし……」
「日誌といえば……臨海女子のクラスメートが、相当激しくボディタッチしているとか」
「破廉恥!」
「まぁ、海外からの友人ですからね……その辺りは、友情の挨拶という可能性も……」
「目ぇ笑てないですよ、戒能プロ……」


~4月第一週、火曜

京太郎「――いやー、一人暮らし再開しても、なかなか慣れないもんだな」テキパキ

京太郎「朝起きるのも一人、そこから訓練行って、朝飯作って、昼飯も用意して――」テキパキ

京太郎「で、飯食って、洗物片づけて、荷物用意したら――もう学校始業の一時間前だ」

京太郎「はぁ、家はかなり楽させてくれてたんだよなぁ……いかんいかん、ホームシックになってる場合じゃない」

京太郎「とりあえず、サクッと学校に行ってしまおう」

京太郎「――お? 電話とは珍しい……もしもしっ」

メグ『モシモシ? キョウタロウの電話でしょウカ?』

京太郎「はい、そうです。おはようございます、メグ先輩」

メグ『グッモーニッ。いい朝でスネ、今日も頑張りましょう』

京太郎「はいっ、ありがとうございます……って、それだけですか?」

メグ『いえ、実は予約の電話なのデス。こうしなければ、キョウタロウはすぐに予定が埋まルト、ハヤリさんから聞きまシタ』

京太郎「予約?」

メグ『ええ……ただ、こちらも確定ではありませんノデ、必要になればそのとき、また電話をしマス』

メグ『夕方から少し、時間を取っておいてくれると、ありがたいのでスガ』

京太郎「なんだかよくわかりませんが、わかりました」

メグ『よかった……では、とりあえずこのことは、頭の隅に留めて、ひとまずは学校を頑張ってくだサイ』

京太郎「はい、いってきます……で、いいんですかね?」

メグ『ええ、いってらッシャイ』

京太郎「メグ先輩も、お仕事いってらっしゃいませ」

メグ『ありがトウ』


~学校、昼


京太郎「さー飯だ、飯だ!」

ネリー「ご飯だね! 食べに行こうっ」

京太郎「…………作ったほうがいい、よな?」チラッ

ネリー「うんっ!」

京太郎「…………調理室、行くか」

ネリー「やったね」

「ちょっと待つのです、ネリーちゃん」

ネリー「?」

「キョウタロウくんは、全員の共有物です!」
「たとえ同じ麻雀部でも、クラスのルールには従っていただきます」
「独占の権利はありません!」

京太郎「俺の意思はどこへ……」

モブ子「なら意見してみれば?」

京太郎「怖いからやめとく」キリッ

京太郎(まぁキツいこと言うようなら、さすがに止めるけど……)

ネリー「……よくわからないけど、お金かかるの?」

「ルールに従えばかかりません!」

ネリー「じゃあわかった」

「ではおとなしく、この整理券を受け取ってください。それと抽選券も」

京太郎「なんだあれ」

モブ子「京太郎との触れ合い券。抽選で当たれば無条件で、それ以外は整理券順で、触れ合えるようになる。お願いもできる」

京太郎「……俺に拒否権は?」

モブ子「なんでも言えって言ったの、あんただし」

京太郎「そうでした……なぁネリー、別に無理に従わなくても――」

ネリー「おもしろそう!」キラキラッ

京太郎「ちくしょう!」

京太郎「結局、ネリーは抽選に外れて、おとなしく引き下がっちまった……くそう」

京太郎「――あれ、また電話が……って、またメグ先輩?」

京太郎「はい、もしもし」

メグ『お昼でスヨ、キョウタロウ!』

京太郎「あ、はい」

メグ『あ――ひょっとシテ、お弁当だったのでしょウカ?』

京太郎「ええ、まぁ……色々あって、いまは食堂ですけど」

メグ『なら好都合デス!』

京太郎「はぁ……」

メグ『あまり広めると、買い占められる恐れがあるので内緒でスガ……』

京太郎「なんです?」

メグ『臨海女子の学食は、ラーメンが絶品なのデス。麺は手打ち、スープは三種から選べる優れモノ。それでお値段一杯500円! これはお得!』

京太郎「…………わかりました、いただいておきます」

メグ『そうしてくだサイ。おそらく、学食ラーメンの印象が、180度変わりマス』

京太郎「学食のタコスを、執拗に勧めてくる友人を思いだしましたよ」

メグ『タコスはありませンネー。ですがタコスラーメン、というのも面白そうデス。帰る前に、学食アンケートへ書いておいてくだサイ』

京太郎「もし導入されても、メグ先輩は食べに来られませんけど」

メグ『エッ』

京太郎「えっ?」

メグ『行きまスヨ?』

京太郎「来るんですか……まぁ卒業生ですから、問題ないと思いますけど」

メグ『ですカラ、リクエストはしっかりとお願いします。具材については、キョウタロウの好みで構いませんノデ』

京太郎「どんなアンケートで――うおっ、マジで記入欄が細かい!」

メグ『ええ、素晴らしい学校でシタ……おかげで、ラーメンには困らなくなりましたかラネ』

京太郎「あんたの仕業か!」

メグ『オススメは鶏ガラ醤油、ホタテと煮卵、チンゲン菜炒めトッピング、カト』

京太郎「……どーも。なんていうか、塩に合いそうな具ですね」

メグ『そこを敢えて、鶏ガラ醤油に合わせるのデス。鶏ガラスープにホタテの旨味が溶け込んで、クセになりまスヨ』

京太郎「試してみます……というか、わざわざ電話までして、ラーメンの販促ですか?」

メグ『……私が好きだった味ヲ、キョウタロウにも知ってもらいたいと思いまシテ。その味を共有できれば、学生時代を共有せずトモ、同じ思い出を語レル――そう思いませンカ?』

京太郎「メグ先輩……」

メグ『ふふ、恥ずかしいことを言いまシタ……後輩たちには内緒でスヨ』

京太郎「はい……貴重な情報、ありがとうございました」


京太郎「――うん、うまい……この味が、メグ先輩の好みか……覚えておこう」



~あっという間に、放課後

京太郎「始業式には半限授業、翌日からは六限授業か……さすが名門校、どういうカリキュラム組んでるんだか……」

ネリー「だけど、勉強楽しいよ」

京太郎「ネリーはいい子だなぁ」

ネリー「そう?」

京太郎「お前に似てるんだけど、勉強すげー苦手なやつがいるんだよ……」

ネリー「そうなんだ……もったいないね。お金かかってるのに」

京太郎「……だな。ほんと……日本はそういうとこが充実してるから、ありがたみがわかんねーのかも」

ネリー「勉強はいいよ。可能性、広がる」

京太郎「なんか……すごいこと考えてんだな、ネリーは」

ネリー「監督が、そんなこと言ってたよ」

京太郎「あ、そう……しかし、さすがだな監督」

ネリー「よくわかんないけど、楽しいからちゃんと受けてるの」

京太郎「偉いえらい」ナデナデ

ネリー「へへー」

京太郎「さて、勉強はこのくらいにして、部活行くか」

ネリー「はーい!」


~部室

明華「朝も昼も会えないなんて、本当にちゃんと登校していましたか?」

京太郎「いましたよ……ネリーが証人です」

ネリー「いたよ。今日はクラスの三人が、京太郎と触れ合ってたよ」

ハオ「……京太郎は動物ですか」

ネリー「動物だよね?」

京太郎「まぁそうだけど……たぶん、聞かれてる意味は違うぞ」

ネリー「よくわかんない」

明華「ハオが知らないということは、他クラスや他学年は、自由に出入りし、かつ触ってもいいのかしら」

ハオ「触るのですか?」

明華「触りますよ?」

京太郎(……どこを触るつもりだろう。ちょっと気になってきた……)

アレクサンドラ「いいから、そろそろ練習始めてよー」

京太郎「はいっ!」

アレクサンドラ「まじめで結構」ウンウン



京太郎「――そういえば、今日から先輩たちは大学だったな」

京太郎「あとは、部活後半くらいに、用事が確定したら電話が来るんだっけ……覚えておこう」

京太郎「そうだな、せっかくいい学校にいるんだし――俺も真面目に、練習するか!」

京太郎「――となると、誰かに教えてもらう必要があるんだけど……やっぱり監督かな……」

??「ちょっと待った☆」バーンッ

京太郎「!?」

アレクサンドラ「!?」

はやり「こんにちはっ☆ メグちゃんの電話聞いちゃって、ついラーメン食べにきちゃいました☆」

京太郎「……なにやってんですか、はやりさん……」

アレクサンドラ「瑞原プロか……初めて釣れたにしては、中々大物ね」

京太郎「どういうことです?」

アレクサンドラ「マネージャーとして優秀、選手としても有望、そこに加えてもう一つ、キョウタロウを呼んだ理由はあるのよ」

京太郎「執事として使える……」

明華「目の保養になる……」

ハオ「セクハラを……」

アレクサンドラ「あんたら私をなんだと思ってんの」

ネリー「そういう気配を感じさせるからだよ?」

アレクサンドラ「てきびしーわ……いや、だからね? キョウタロウを置いとけば、それに釣られてプロも来るんじゃないかってことよ」

京太郎「あー……」

はやり「否定はできないかなっ☆」

京太郎「そこは否定しましょう」

はやり「でも今日は、本当にラーメンをいただいたんだよ。ついでとして、ご挨拶に来たんだけど」

アレクサンドラ「うちのダヴァンがお世話になってます」

はやり「オープン戦の活躍次第では、開幕レギュラーもありますよっ☆」

京太郎「さすがメグ先輩……」

はやり「さ、そんな先輩に負けないよう、京太郎くんもしっかり練習しようね☆」

京太郎「はい……えっと、監督?」

アレクサンドラ「許可します。そっちが終わったら、レギュラー候補の面倒を見ていただきますが」

はやり「お任せ☆」

京太郎「それじゃ、よろしくお願いします……」

はやり「いやー、久しぶりだねっ、練習見てあげるのも☆」

京太郎「大会で、忙しかったですからね……よっと」

はやり「さて、どっちを切るのかなー?」

京太郎「なんで対面から手牌が見えてるんですか……」

はやり「それくらい余裕だぞ☆」

京太郎「…………では、こっちで」

はやり「はや~、それは通しかな~」

京太郎「やったぜ。」

はやり「でも、そこは通さず振っておいたほうがよかったんだぞっ☆」

京太郎「えっ」

はやり「ほら、ツモっちゃったぞ。しかも高め☆」

京太郎「」

はやり「相手がツモりそうで、鳴いてずらせない場合は、安く差し込んで流そうね☆」

京太郎「……はい」




~部活後半

京太郎「ぬぁぁぁぁ……はやりさんの待ち、全然読めにぃ……」

ハオ「相手は仮にもプロです。そう易々と、相手にはできません」

京太郎「けど先輩たちの何人かは、そういう人たちを相手にする世界に飛び込んだんだよなぁ……」

ハオ「私もそのつもりですよ」

明華「私もです」

京太郎「マジすか……プロ、ねぇ……」

京太郎「ほんと、どんな仕事してるんだろ……そういえば、メグ先輩からの電話はまだかな?」


~大学対局

京太郎「――お、メールが……二通?」

京太郎「一通はメグ先輩……あ、用事なくなったのか……まぁ仕方ないな」

京太郎「で、もう一通は――」

京太郎「智葉先輩? なんだろう……」


『――困った先輩方がいてな。京太郎に会ってみたいらしい。練習がてら、うちの大学に来てくれると助かる』

『もちろん、用事があるなら構わないが』


京太郎「……ふむ」



京太郎「――ってことなんですけど」

はやり「大反対だぞ☆」

アレクサンドラ「もう十分、指導はされたでしょう……次はレギュラーの分です」

はやり「はややぁ……でも、ちゃんと受けないと、今後京太郎くんの指導できなくなるペナルティもあるし……」

京太郎(そんなのあるのか……)

はやり「まぁ約束だしね。今日の試合は出番ないから、こっちに残ります」

アレクサンドラ「それは助かります。ってことだから、キョウタロウは行ってきていいよ。サトハによろしく」

京太郎「あ、はい……では」

京太郎「えらくあっさりと許されたもんだ……まぁいいか。では、行ってきます!」

ネリー「行ってらっしゃーい」

ハオ「……サトハにはまんまとやられましたね」

明華「一度じっくり話す必要がありそうです」



~某大学

京太郎「――いまさらだけど、場違いすぎる……」

京太郎「いや、この服は魂の服だからいいんだけど……大学に執事服でいるのって、俺くらいだろうなぁ」

京太郎「とりあえずどこに行けばいいか、連絡を――」

京太郎「――おかしい……出ないな」プルルルルル

智葉「すまない、本当に来てくれるとは思わなかった」

京太郎「えっ――あっ、智葉先輩! いまお電話をしていたところで……」

智葉「ああ、出ようとしたところで私も、君に気がついた」

智葉「……ところで、なんだその珍奇な格好は」

京太郎「臨海は男子の制服がないので」

智葉「……よその学校の、学ランなりブレザーなり、あるだろう」

京太郎「ありますけど……よその女子校では、やっぱりこれを来てたもので」

智葉「……まぁいい。ともかく、部室はこっちだ。ついてきてくれ」

京太郎「あ、はい……あの、なにか怒ってますか?」

智葉「……多少な」

京太郎「ぅ……すいません、その……着替えたほうがいいですか?」

智葉「? ああ……いや、そうじゃない。別に服装にはこだわらない、そもそも正装のようだしな」

智葉「怒っているとすれば、先輩の立場を笠に着て、後輩の後輩を大学まで呼び寄せるような上級生に対してだ」

京太郎「なるほど……俺は気にしませんが、智葉先輩が気にされるんですよね?」

智葉「……断ればいいのに、と思ったか?」

京太郎「呼んでくださったことは嬉しいです。ただ、断らなかったことは不思議に思いますね」

京太郎「一度しかお会いしてないのに、こういうのもおかしいですけど……先輩は、理不尽には真正面から立ち向かいそうです」

智葉「――理不尽、か。まぁそうだろう……だが、こんなことはおそらく、今後二度とない」

智葉「あんな上級生がいる部活はもうごめんだ。適当な一年と、私と菫、巴と哩で麻雀部を創設する。今日は――まぁ、一日世話になった先輩への、手切れ金というところだ」

京太郎「ずいぶん高くつきましたね」

智葉「言うものだ……だが、その……来てくれたのは、非常に助かった。これであの女にも、自慢してやれる」

京太郎「――は?」

智葉「……君の日誌を見て、上級生が言ったんだ。私のようなひっつめ髪の地味な女は、こういう男と知り合いにはなってないだろう――とな」

京太郎「…………はぁ」

智葉「……すまない。つまらないプライドのために、安い挑発に乗ってしまった。怒っているか?」

京太郎「怒ってますよ、その先輩とかいう人に」

智葉「なぜ?」

京太郎「智葉先輩は地味どころか、粋な性格と華やかな心をお持ちです。相対して話せばわかるのに、それをわからなかった先輩には、怒りしか感じません」

智葉「――買い被りだ」

京太郎「かもしれませんね」

智葉「おい、そこは否定しないか」

京太郎「その印象は俺の思い込みかもしれませんから……否定できるくらいに、もう少し、智葉先輩のことを知りたいとは思います」

智葉「――それは、いつもの口説き文句かなにかか?」ジロッ

京太郎「くど――ち、違いますよ! 素直な意見です!」

智葉「まぁどちらでも構わないが――ともかく、部室についたぞ。先輩に面通しをしたら……時間は余るだろう。部活代わり、練習の相手になろう」

京太郎「はぁ……わかりました」

智葉「――さっきの言葉は嬉しかった。だが、必要以上に、先輩には絡まないようにな。私のことは気にせず、物腰柔らかに接して、適当にいなしてくれれば、問題ない」

~大学、部室

京太郎「ええ、智葉先輩にはいつもお世話になって――」

京太郎「その先輩の先輩なら、喜んで参ります」

京太郎「どうぞ、お茶が入りました」

京太郎「ほかになにかありましたら、遠慮なく」ニッコリ

京太郎「はい、肩が凝って――ええ、承知いたしました」

京太郎「せっかくですので、そちらで横になってください。全身念入りに、マッサージしたしますので」

京太郎「はは、スケベ心なんてとんでもありません。あくまで、先輩への敬意ですから」

京太郎「それでは――始めますね」ニッコリ

「んああぁぁっっ! ひゃぐっ、あっ、んくぅぅっっ!」

「らめっ、そこっ、ひゃっ……んぅぅっ! んはぁぁっ!」

「ひゃっ、ぐっ……んくっっ、あぁっ、そこっ、そこぉぉっ……」

「もっと、もっとしてっ、そこっ……強くしてっ、突いてっ、グリグリしてぇぇっっっ!」ビクンビクンッ

智葉「」

京太郎「大丈夫ですか、お嬢様――おやすみのようですね。汗をかかれていますので、風邪など召されませんように――」

智葉「…………おい」

京太郎「はい?」

智葉「……な、ななっ……なにをした、京太郎!」

京太郎「ただのマッサージですが(迫真)」

智葉「………………」

「あへぇぇぇ……」ビクビクッ

智葉「………………ただの?」

京太郎「マッサージです。まぁ施術された姿をほかの部員さんがご覧になって、どう感じられたかはわかりませんが」

京太郎「気になさないなら、先輩さんも変わらず、部に顔をだされるかと」

智葉「…………私のことは気にするなと言っただろう」

京太郎「はい。ですから俺も、普段しているように、先輩に尽くしたまでです」ニッコリ

智葉「……ふふっ、そうか――いや待て」

京太郎「はい?」

智葉「普段している……だと? あんな、その……そ、そういうことを、学校でしているのか、お前は!」

京太郎「――黙秘します」

智葉「正直に言ええええええええええええ!!」

智葉「……しかし、京太郎があんなことをしたせいで、面子が足りなくなったぞ」

京太郎「みなさん、帰ってしまわれましたね」

智葉「そりゃ気まずいだろうからな……どうする、練習にならないぞ、これでは」

京太郎「こちらの先輩が起きられても、三人ですからね……あれ? そういえば、菫先輩たちは?」

智葉「用事があるそうだ。終わり次第来るとは思うが、時間はわからない――ん?」

~対局相手、智葉・菫・虜先輩

京太郎「ふむ……それでは、お茶でも淹れてきますね」

智葉「どうしてそうなる! 外から声がしているぞ、誰か来たようだ」

ガチャッ
菫「遅くなりました。お疲れ様で――なんだ、智葉だけか」

智葉「菫か。安心しろ、もう一人そこで寝ている」

菫「ああ、先輩がいらし――」

虜「んっ、あぁぁっ……きょう、た……っ……」ビクビクッ

菫「」

智葉「さて、練習するか。メンツも揃った」

菫「待てまて! どうしてそうあっさり流せる! これはなんだっ、お前なにをした!」

智葉「私じゃない! お前の後輩のせいだ、責任を取るならお前だ!」

菫「一年の私に後輩がいるはず――」

京太郎「あ、菫先輩でしたか。お疲れ様です。あ、お茶淹れましたので、どうぞ」

菫「きょ……京、太郎……くん?」

京太郎「はいっ」

虜「んぐっ、くっふぅぅぅ……」

菫「…………」ジー

京太郎「少々マッサージを」

菫「それなら仕方ない」

智葉「納得するのか!? くそっ、白糸台の後輩教育はどうなってるんだっ……」

菫「そんなことより、なぜ京太郎くんがここにいる」

智葉「…………色々あってな」

菫「話せ」

京太郎「――――こちらの大学に興味があったので、智葉先輩にお願いしました」

菫「なるほど……で、智葉。なんの用で呼んだ」

京太郎「いえ、ですから俺の――」

智葉「君がそんなことを言う性格でないと知っているこいつに、その言い訳は無意味だろ……いい、話す」

智葉「まず、この先輩が原因で――」

 少女説明中……

智葉「――ということだ。笑うなら笑え」

菫「……なるほど、モテないという誹りを撤回させるために、自分の知る一番好みの顔を呼んだということか。笑える話だな」

智葉「…………なんとでもいえ」

京太郎「そ、そうだったんですか……照れますね、なんか。一番好みだなんて」

智葉「その点は菫の戯言だ。信じなくていい」

京太郎「」

菫「お前、本当にモテないだろ」

智葉「これでも高校時代は、ラブレターをもらったこともある」

菫「……私も、ないことはない」

京太郎(……菫先輩はともかく、智葉先輩は女子校……いや、やめよう。俺の勝手な想像で、混乱を招きたくはない……)

智葉「さて、ともかく三人いれば打てるだろう。無理に呼んだ詫びに、練習に付き合う予定なんだ、菫も入れ」

菫「お前、自分の詫びに人を付き合わせるなよ……」

京太郎「すみません。やっぱり帰りますので」

菫「やらないとは言ってない」

京太郎「ありがとうございます!」

智葉「……惚れた弱みか」

菫「可愛い後輩の練習相手をするだけだ。しかし、私で勝てるかどうか……・」

智葉「ほう。それは楽しみだ……お手並み拝見といこう」

京太郎「お手柔らかに。それでは、三人打ちなんで、こっちの手積みのほうで――」

虜「お待ちください、京太郎さま!」

智葉「」

菫「」

京太郎「」

虜「どうされました、京太郎さま!」

智葉「……聞かれてるぞ、京太郎さま」

菫「答えてやりなさい、京太郎さま」

京太郎「丸投げしないでえええええええええええ!」


虜「京太郎さま、対局なら私がいるじゃないですか! 四人で打ちましょう、楽しく!」キラキラ

智葉「誰だこの女」

菫「一応は先輩だぞ、慎め」

京太郎「あ、あの……さまっていうのは、いったい……」

虜「……身も心も、京太郎さまに奪われてしまいましたから////」

虜「あのめくるめく夢のような心地、京太郎さまの指技……私の魂にまで、刻み込まれましたから……」

京太郎(あかん)

智葉「――まぁなんにせよ好都合だ。四人で、先輩がいるなら自動卓を回しても怒られまい」

菫「そうだな(突っ込むのはよそう、巻き込まれたくない)」

京太郎「いいんですか、ほっといて!」

虜「私のことなど、麻雀が打てる石ころのように思ってくだされば」

京太郎「」

智葉「さぁ、準備ができたぞ」

菫「打とうか、京太郎くん (私たちの頃より、さらにパワーアップしたマッサージか……)」ゾクッ

京太郎「……あー、もうどうでもいいです……よろしくお願いします」

虜「不束者ですが、宜しなに……京太郎さま?」

京太郎「……はい」

京太郎「あ――すいません、やっぱ東風戦でお願いしていいですか?」

智葉「なぜだ?」

京太郎「いえ、カバン持ってくるの忘れてまして……下校時刻までに、学校に戻らないといけませんから」

智葉「狼狽え者が……まぁ仕方ないか」

菫「急に呼んだお前が悪い」

虜「ご命令くだされば、私が取りに――その、ご褒美はまた……あの指技を……」モジモジ

京太郎「自分で行きますんで(迫真)」

京太郎「では、東風戦で――よろしくお願いします」

菫「ああ、よろしく」

智葉(さて、男子個人チャンプの強さは……よく考えたら、大会中なら一年チャンプだったな……これは覚悟してかかるか)

虜(京太郎さまのマッサージ……)ポー


智葉25000→26500
菫25000→23500
虜25000→23500
京太郎25000→26500


京太郎「……これは、ベタオリですね」

智葉「なんだ、諦めが早いな」

京太郎「まぁ、たぶん流れますから」

智葉「どうかな――私は随分といいぞ?」

~十数分後

智葉「――――なるほど」

京太郎「テンパイです」

虜「どうでしょう、お役に立てましたかっ?」

京太郎「……ふ、普通に打ってくださっていいですから」

菫「そっちで止まっていたか……」

智葉(なるほど、先輩が菫を止め、結果として菫が私を止める形になったか……つまり、ベタオリ正解だと)

京太郎「さて――続けましょうか」

智葉「気合を入れ直したよ、インハイチャンプ」

京太郎「照さんみたいで照れますね」

菫「照だけに、か?」

智葉「菫……それは、さすがに……」

菫「ち、違うぞ! これは照の口グセなだけだ!」


智葉25000→26500→25700
菫25000→23500→22700
虜25000→23500→22700
京太郎25000→26500→28900

京太郎トップ

京太郎「――ツモ、800オールです。お疲れ様でした」

菫「お疲れ様……また随分と、キレがよくなったな」

京太郎「東風戦ですから、かなり運に助けられましたね」

智葉「……そういうなら、次は半荘で頼もうか」

京太郎「はい、もちろんです。先輩さんも、ありがとうございました」

虜「い、いえっ、そんな……またいらしてくださいねっ////」

京太郎「……アッハイ」


智葉(――須賀京太郎、か……なるほど、これは強い……この年代の男子は、須賀世代と呼ばれることになるだろうな)

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最終更新:2026年01月17日 13:34