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~再び臨海

京太郎「お、お疲れ様でーす……」

はやり「遅いぞっ☆」

京太郎「すいません!」

アレクサンドラ「瑞原プロ、ありがとうございました。タクシーをお呼びしましたので、どうぞ」

はやり「きょ、京太郎くんっ、送って――」

アレクサンドラ「試合はなくとも、チームと合流しないとでしたよね。お疲れ様です、では――」

はやり「はやぁぁぁぁぁ……」

京太郎「……いいんですか」

アレクサンドラ「キョウタロウのせいで、チームに迷惑をかけさせてもいいなら、残っていただいたけど?」

京太郎「――ありがとうございました」

アレクサンドラ「いえいえ。それより、サトハはどうだった?」

京太郎「日本刀みたいでした。しかも目を離したら、一気に迫ってくる感じで」

アレクサンドラ「でしょう――でも、勝った?」

京太郎「まぁ……でも東風戦だったので、次があれば、半荘で打ってみたいです」

アレクサンドラ「あ、本当に勝ったのね……でもどうして東風のみ?」

京太郎「いえ、カバン忘れてたので……お、あったあった」ヒョイ

アレクサンドラ「……サトハも呆れてたんじゃない?」

京太郎「なぜそれを!?」

アレクサンドラ「もういいから……とりあえず、今日はお疲れ様。帰ってゆっくり休みなさい」

京太郎「はい――お疲れ様でした」

京太郎「――もしもし、メグ先輩?」

メグ『キョウタロウ! ハヤリさんが、帰ってこないのでスガ、なにか知りませンカッ?』

京太郎「すいません、先ほどまでこちらに……タクシーに乗ったので、間もなくそちらに着くかと思いますが」

メグ『そうでスカ……それならよかッタ。そうそう、それと申し訳ナイ。夕方の用事を、勝手にキャンセルにしてしまいまシタ』

京太郎「問題ありませんよ……そちらは大丈夫でしたか?」

メグ『ええ、なんとかなりましたノデ……実は仕事のこトデ、私のアシスタントをお願いしたかったのデス』

京太郎「えっ……て、テレビの仕事じゃないですよねっ?」

メグ『はは、新人にそんな仕事はそうそうありませンヨ。イベントスタッフのような仕事を、お願いする予定だったのデス』

京太郎「なるほど……そういう仕事なら、急でも対応できそうですし、面白そうですね」

京太郎「またお手が必要なら、いつでも声かけてください」

メグ『サンクス……やはり君に頼んでよかった、キョウタロウ』

メグ『どうでショウ、チームのマネージメントアシスタントになる、というノハ?』

京太郎「ははは、学校がなければそれも面白いと思いますけど……臨海のマネージャーとして、みんなを支えないといけませんから」

メグ『そうでしタネ……ではキョウタロウ、後輩たちをよろしくお願いしマス』

京太郎「はい、もちろん」

メグ『安心しまシタ……では、また』

京太郎「ええ、それじゃ……失礼します」


~火曜、夜


京太郎「あぁ^~疲れたんじゃぁ^~」

京太郎「……ってくらい、ほんと疲れた……」

京太郎「大学との往復、疲れるな……うーん、今度からは、カバン忘れずに持って行って、直帰って形にするか」

京太郎「さて……今夜はどうするかな」

京太郎「――よし、今度どこかに出かけよう! 女の子と!」

京太郎「そうだよ、せっかく東京にいるんだから――知り合いも多いし、誰かひとりくらい付き合ってくれるだろ、お情けで!」

京太郎「……言ってて悲しくなりますよ~、ほんとに……さて、誰を誘ってみるかな」

京太郎「付き合ってくださりそうで、こっちで誘えそうな優しい人は――この人たちかな」

京太郎「――試合のこととかもあるし、シロさんを誘ってみよう」

京太郎「お詫びもしたいしな……うぅ、怒ってなきゃいいけど……」

京太郎「と、とりあえず電話だ……」


シロ『――――は?』

京太郎「……ですから、その……ご都合よろしければ、今度の休みに……どこか出かけませんか?」

シロ『……誰と?』

京太郎「俺とです」

シロ『誰が?』

京太郎「シロさんが、です」

シロ『……二人で?』

京太郎「もちろんです」

シロ(もちろん……あれ、なんだろ……////)カァッ

シロ『……二人で、出かけたいんだ……へぇ……』

京太郎「だ、だめでしょうか……」

シロ『……私と二人で、出かけたいの?』

京太郎「ぜひ!」

シロ『…………いいよ、付き合ってあげる』

京太郎「本当ですかっ!」

シロ『うん』

京太郎「もう冗談とか利きませんからね!」

シロ『冗談じゃないよ、約束したからね』

京太郎「いやっふぅぅぅっっっ!」

シロ『……そんなに嬉しいの?』

京太郎「そりゃもう!」

シロ『……そっか///』

京太郎「それで、日程なんですけど――」

京太郎「――来週末、連休の初日ってことでどうでしょうか」

シロ『いいけど……合宿とか、試合とかないの?』

京太郎「えっ」

シロ『だって連休だし……まぁもう遅いけど』

京太郎「えっ」

シロ『連休初日でしょ? スケジュール入れたから……楽しみにしてるね』

京太郎「えっ」

シロ『それはなんのえっ?』

京太郎「いえ……楽しみに、しててくれるんだなって」

シロ『あ――』

京太郎「シロさんも、楽しみにしててくれるんですか?」ニヤニヤ

シロ『………………バカ』

京太郎「あはは、すいませ――」

シロ『楽しみに、決まってるでしょ……すごく嬉しいよ。いまから待ち遠しい』

京太郎「――あぅ……////」

シロ『どう、まいった?』

京太郎「降参です……」

シロ『先輩は強いでしょ? それじゃ、来週はよろしく』

京太郎「はい、お任せください」キリッ

シロ『期待してる。それじゃ』


京太郎「いよっしゃああああああああああああ!」

シロ「……京太郎とデートか……これはもう結婚しかないかな(飛躍)」

~火曜、終了


【4月第一週火曜】

 大学デビューしました。

 大学の敷地というのは初めて入ったけど、高校とはさすがに雰囲気が違った。
 といっても、やることはやはり麻雀。
 今回は自分のミスで、東風戦しかできなかったが、次回はもう少し長く打ちたいところだ。

 ……って、そういえば今日は麻雀しかしてなかった。
 これはまずい、明日からはもっと、執事として励む必要がある。

…………

『……いや、いいんじゃない?』
『麻雀部なら、麻雀してて普通やろ』
『それはそうですが、執事としての彼を、もっと見ていたいのも事実です』
『そもそも大学に行ったのはなぜでしょう……』
『さぁな』

 ……自分を優先してる場合じゃないな。執事としての役割を果たせと言われるなら、なおさらだ。

『きっと意地悪な先輩に、無理やり呼びだされたはず。京ちゃんかわいそう』
『言われてるぞ、意地悪な先輩』
『あらあら、意地悪な先輩になっちゃったのかしら』
『わ、私じゃありませんから!』

 無理やりじゃないんだけど……まぁ、呼ばれたら断らないから、そう思われるのか。

『……まーた私だけ会えんかったと?』
『わざと先輩ば避けようち言うんか、許せんばい』
『……偶然ではないでしょうか?』

『そんなことよりオープン戦勝てない』
『ま、まだ開幕前やから……』
『っていうか誰! オープン戦は新人試すだろうから、気軽にやれって言ったの』
『エースがいるとこ、ガチすぎる……』
『そろそろ落ち着いて、試しに来る頃じゃないでしょうか』
『京太郎が観戦に来てくれたら勝てるけど……』
『こういう状況でも連勝し続けた新人が20年前にいたとか』
『10年前でしょ!』
『そういや宮永は?』
『ここまでの収支は全部プラス。なお恵比寿は』

 さすがだなぁ……でも恵比寿、オープン戦はたしかによくないらしい。
 シーズン始まったら変わるんだろうか……。
 あと、西のオープン戦最下位は広島らしい。

『なんでや! ちゃちゃのん関係ないやろ!』

 あっはい。

――――――――


~清澄

「これは叩かれる流れですね」
「京ちゃんが大会のインタビューで言ってくれたから、大丈夫だよ!」
「……麻雀の練習して、文句なんて言われない実績だじぇ」
「実際、言われておらんと思うがのう」


「――これ、私が呼んでたら確実にアウトだった?」
「だろうな。よかったな、今月は東京で」
「こちらからお世話に行く、くらいのほうがいいかもしれませんね」
「美穂子は働き者ねぇ……」


~白糸台

「この意地悪なのってスミレじゃないよね?」
「弘世先輩はそんなことしない」
「というか、意地悪で呼んだわけじゃないと思うけど……」
「だよね!」
「まぁ――京太郎くん相手だし、普通に会いたくなったら呼ぶんじゃない?」
「誠子もそうなの?」
「……ノーコメント」


~永水

「巴ちゃん、なんてことを……」
「姫様ー、これ巴じゃないですよー、たぶんー」
霞さん、変なこと書くから……」
「うふふ、ごめんなさいね」
「っていうか、どこにいてもやること変わらないじゃないですか、この人の場合」
「なになに、怒ってる系? 湧ってば、いつからそんなに、京太郎先輩の心配するようになったの?」
「心配とかじゃなくて!」
「湧……大丈夫」
「春先輩?」
「うちに来たときは、いっぱい楽させてあげればいいから……」
「そうですよね! 前の姉様たちみたいに、あの服着て――」
「明星」ゴッ
「……じょ、冗談です、はい……」
「京太郎さん……無理なさらないでくださいね、心配になります……」


~宮守勢

「あー、これなんとなくわかるかも」
「ウチノ、センパイタチ!」
「言ってないからバレてないけど、京太郎くん大人気だもんね」
「先輩から呼べって言われて、断れなかったんだよー。かわいそうだよー」
「菫……は、ないわよねぇ。けど辻垣内さんも、そういうのに応じる人じゃないと思うんだけど」
「じゃあ……永水の巴さん?」
「あの人も、芯は強そうだよー」
「タダ、アイタイダケ!」
「……なのかなぁ。どう思う?」
「私はさすがにしないけど……」
「……わ、私は、会いたかったら……よ、呼んじゃうかなー///」
「ワタシモ!」
「……まぁ、ほどほどにね」


~阿知賀

「そういやさー、有姉の大学ってどんな感じ?」
「えっと……楽しいよ? 鹿さんも学校に入ってくることあってね、あったか~いの」
「そうじゃなく、学校の雰囲気とかじゃ……」
「女子大生のおもちや、いかに……」
「玄ちゃん?」
「じょ、冗談だよっ……」
「私が大学に行くとしたら――」
「え゙っ」
「……穏乃、無理しないほうがい……」
「だ、大学だけが進路じゃないのです!」
「……どうしてみんな、必死に止めるんですか……」
「大丈夫だよ、穏乃ちゃん」ナデナデ
「うぅっ、宥さぁ~んっ」
「あー、悪かったわよ……で、なに?」
「いや、京太郎と一緒だったら楽しいだろうなーって思っただけ」ウェヒヒ
「そうだね~。夏に優勝したら、女子大の進路も選べるかもしれないって、誰かが言ってたよ~」
「一緒の大学……大学か、どこがいいんだろ」
「高卒で働くかもしれないもんね! 旅館とか、料亭とか!」
「……神社とか」
「なるほど、つまり私のお婿さんになるのか」
お姉ちゃんはどっか行っててよ!」
「だってそうでしょ? それともなに、ほかに神社の娘さんで、心当たりあるの?」
「う、わ……わた……っっ……もういい!」
「はっ! きっと永水なのです! だって、あれだけのおも――」
「玄ちゃん?」
「……なんでもない、です……」


~姫松

「――ってことですけど、実際大学ってどうです?」
「授業時間長すぎるのよー」
「京太郎くんおったら、長ても平気や思うけど……」
「一緒の大学とか、憧れますよね」
「いやいや、プロになるかもわからんで? なんちゅうても、春の個人チャンプやからな!」
「……お姉ちゃん、なんでおるん?」
「洋榎、宿舎は」
「門限守ったら自由時間くらいあるわ!」
「まぁまぁ先輩方……」
「そういやヒロ、今日は張り切っとったのよー。広島の佐々野はええカモにしとるのねー」
「……けど、試合後のライブでカメラ全部持っていかれたわ。あーっ、くそっ!」
「アイドルやからなぁ、あれでも」
「瑞原プロほどやないですけどね」
「……京太郎くんがテレビの仕事しだしたら、佐々野さんとも必然的に、会うたりするんやろか……」



~千里山

「セーラおつー」
「お疲れー」
「……いや、お前らなんでおんねん」
「江口にお届け物ですて言うたら、あっさりと」
「ザル警備やな、大丈夫か?」
「アホか! お前らの顔が割れとるからや!」
「えっ」
「な、なんで!?」
「……元千里山の部長で大将」
「はい」
「元千里山の先鋒エース」
「ほい」
「インハイ見てはったんやから、そら知ってはるわ!」
「おー、なるほど……」
「なんか恥ずかしいなぁ」
「恥ずかしいんはこっちや……んで、なにしに来てん」
「へ? いや、別に」
「驚くかなーと思て。まぁたいしたリアクションやなかったな」
「京連れてきたら、驚くかもしれへんなぁ」
「……先輩ら大騒ぎするし、よそのプロの先輩らも来るからやめてくれや、ほんま(迫真)」


「――という写メと報告が」
「なにしてるんや、あいつら……」
「大学生もプロも、楽しそうですね……」
「そういうたら、今日は洋榎も絹恵らと会うてるて……まぁ、シーズン始まるまでやな」
「始まったらやばいんですか?」
「やばいで、めっちゃやばい。打った内容そのまんま、給料に反映するわけやからな……あと、チーム内の立ち位置とかにも」
「……プロはキツそうですね」
「大学も、単位やら就職やらコネやら、色々忙しはずやで」
「……Jk万歳やなぁ……」
「あと二年やけどな」
「あんたは一年や」


~臨海

「今日はほとんど話せませんでしたね……」
「ネリーはいいですね、教室が同じで」
「まぁね! でも今日は、よく電話してたと思う」
「着信見たけど、メグとサトハばっかりだったわよ」
「なっ!」
「……本気で先輩方と、袂を分かつときが来たようですね……」
「日本語上手になったわね……それはともかく、OGとの関係は良好に保つのがいいわよ」
「お金かかるの?」
「かからないように、良好にしとくのよ」
「なるほど!」
「……良好に保ちつつ、京太郎は渡さないように、ということですね……努力しましょう」
「力の入れる方向、間違えないでよ?」



~プロ

「――で、遅れるとこだったんだぞ☆」
「なにやってるの、はやりちゃん……」
「キョウタロウに電話シテ、迷惑をかけてしまいまシタ……」
「京ちゃんはそんなの気にしないよ」
「……まぁ、気にしたほうがいいかもだけどね……ふふっ」ニヤニヤ
「どうしたのシロ、不気味な顔して」
「別に」キリッ
「――怪しいデス。以前サトハが隠し事をしていたとキモ、こんな態度だったと記憶していマス」
「へぇ……シロ、飲もうか」
「お茶で口は軽くならないよ」
「ぐぬぬ」
「……若い子たち、楽しそうだなぁ」
「はやりたちもまだまだ若いぞ☆」
「毎年この時期は、こう感じちゃうんだよね……はぁ~」


「しかし……シーズン始まると、ますます会えなくなりそうですね」
「忍耐!」
「いや、わかってますけどね……」
「まーまー、気にしすぎだっての。どーんと構えてりゃ、そのうち機会があるってぇ~の」
「……三尋木プロは、すぐに関東に戻られるからいいですけどね」
「いやー、オープン戦は忙しいねぃ。東奔西走って感じで」
「毎年!」
「まぁ、風物詩ですよね……こういうとき京太郎くんが傍にいれば……この意地悪な先輩の気持ちも、わかります」
「迷惑!」
「それを迷惑に思わないやつだからねぃ、京太郎は……」


~4月第一週水曜

京太郎「なんだかんだで三日目か……そろそろ慣れておかないと、来週から新入生が来るんだよな……」

京太郎「新入生もそうだけど、新入留学生もだ……いったいどんな子が来るのか」

京太郎「……来週からも、立派なおもちの女子に恵まれますように」パンパンッ

京太郎「さて、行くか」

京太郎「――あ」

智葉「あ、とはなんだ」

京太郎「っと……おはようございます、智葉先輩」

智葉「ああ、おはよう。昨日はありがとう」

京太郎「いえ、俺のほうこそいい練習をさせていただきました」

智葉「……そうやって、いつでもいい顔をしていると、そのうち疲れで倒れるぞ」

京太郎「大丈夫ですよ。これでも、普段から鍛えてますから」

智葉「……確かに、服の上からでもわかる」

京太郎「じ、ジロジロ見ないでくださいっ」

智葉「婦女子のような声をあげるな、軟弱者め」

智葉「そうそう、婦女子といえば――例の先輩が、私たちの部の部員になった」

京太郎「えっ」

智葉「……まぁ驚くだろうな」

京太郎「ちょ――ちょっと待ってください! あの先輩から離れようとして、部を立ち上げたんじゃないんですか!?」

智葉「そのはずだったが……どうやら、君のことをよっぽど気に入ったらしい」

京太郎「」

智葉「そう嬉しそうな顔をするな」

京太郎「皮肉ですか」

智葉「実際嬉しいだろう? 性格はまぁあれだが、見てくれのいい女性だ」

京太郎「俺はどっちかっていうと、性格重視なので」

智葉「貴重な情報だな。昼飯一回で、菫にでも売ってやるとしよう」

智葉「ともかく――練習相手に不足するようなら、彼女が呼べば飛んでくるはずだ。うちに来るなら、そのことは把握しておいてくれ」

京太郎「はぁ……って、また行ってもいいんですか?」

智葉「昨日言ったろう? 次は、半荘で頼む――と」

智葉「今日明日中に、というわけでもない。また時間があれば、顔をだせばいい。巴にも、挨拶しておきたいだろう?」

京太郎「あ、そうですね……では、また近いうちに」

智葉「ああ……それと――」

京太郎「はい?」

智葉「……いや、なんでもない。遅刻しないようにな」

京太郎「了解です。では」

~昼

京太郎「――ってことで、智葉先輩に会った。ついでに、学校に呼ばれた」

ネリー「また行くの? 今日も行っちゃうの?」カチカチ

京太郎「いや、どうだろうな――って、なにやってんだ?」

ネリー「メール。ハオと明華に」

京太郎「なんて?」

ネリー「キョウタローが、サトハと連絡してたら、教えてって言われたよ」

京太郎「なんでまた……」

ネリー「さぁ……」


ハオ「――朝からサトハと密会していたようです」

明華「まぁ、不潔ですね。サトハに抗議しておきましょう」

ハオ「しかも学校に呼ばれたそうです」

明華「破廉恥極まりないですね、大学側に抗議しておきましょう」

京太郎「なんだろう……もしかして、ハオたちも智葉先輩に会いたいのか? まぁ、強い人だしな、当然か……」

ハオ「おや――京太郎、奇遇ですね」

京太郎「ハオ、ちょうどよかった」

ハオ「え?」

京太郎「実はいま、ハオのことを考えてたとこでさ」

ハオ「――そ、そうですか……」

京太郎「ちょっといいか?」

ハオ「え、ええ、もちろん! 立ち話もなんでしょう、どうぞ座って」

京太郎「いつもここで昼飯を?」

ハオ「ええ、まぁ」

京太郎「あれ、じゃあ友達も一緒だったりするのか」

ハオ「いつもはそうですね。今日はたまたま、違いましたが」

ハオ(そしてその明華もいません。よいタイミングでした、京太郎)

京太郎「なら少し話すか……そうだ、お茶でも淹れるよ」

ハオ「どうぞお構いなく。それで、その……私のことを、考えていたと言っていましたが?」

京太郎「そうそう、実はな――おっと。はい、お茶。熱くはないはずだけど、気をつけてな」

ハオ「――っ!? い、いま、どこからお茶を……」

京太郎「ははは、なに言ってんだよ。いま淹れてただろ?」

ハオ「……あ、ああ、はい……えっ」

京太郎「?」

ハオ「いえ……」

ハオ(これが、よく日誌で言われていた……深くは考えないほうがよさそうですね)

京太郎「でさ――さっき、ハオのことを考えてたって話だけど」

ハオ「はいっ!」

京太郎「えーっと……もしかしてなんだけどさ、ハオも――」

ハオ「…………」ワクワク

京太郎「智葉先輩の大学、行きたいのか?」

ハオ「――――は?」


京太郎「ほら、ネリーからなんか、そういう連絡するよう言われてるって聞いてさ。そうなのかと思って」

ハオ「あ……ああ、ええ、と……それは……」

ハオ(……京太郎の挙動を窺っていた、とは言えませんね……)

ハオ「――は、はい、まぁ……」

京太郎「そっか。なら――」

ハオ(くっ……なんてことでしょうか……これでは、妙な誤解を……)

京太郎「なら――次は、一緒に行くか」

ハオ「えっ――」

京太郎「先輩に会いたいってのもわかるしさ。あれだけ強い人なら、当然だろうし」

ハオ「い、いいのですかっ?」

京太郎「そりゃ、レギュラーの練習になるほうがいいだろうし。もしよければ、だけど」

ハオ「ぜひ!」

京太郎「わかった……なら、次に行くときは、一緒に行こう。声かけるからな」

ハオ「……はいっ、よろしくお願いします」


~放課後

ハオ「~♪」

明華「上機嫌ですね、ハオ。なにかいいことでもありましたか?」

ハオ「――いえ、なんでもありませんよ。あくまで私事です」

明華「そうですか。まぁ構いませんけれど、そろそろ練習が始まりますよ」

ハオ「準備は整っています、いつでもどうぞ」

明華「ならいいのですけど――」


京太郎「遅くなりましたー!」

ネリー「お待たせ。さ、練習しよう」

明華「部長と監督を呼んできますね」

京太郎「あ、俺が行きますよ!」

明華「……では、一緒に」

京太郎「はい」

明華「――ということなので、ハオ、ネリー。少し外します」

ネリー「いってらっしゃい」

ハオ「ええ、お気になさらず」

明華「……ふむ……」

京太郎「どうかしました?」

明華「なんでもありませんよ。では、行きましょう」ニコッ


明華(……あのハオの落ち着きぶり、なにかありますね)

ハオ(今日は結局、大学に行くのでしょうか……)

ネリー(来る前にドーナツつくってくれた。おいしかった……しかもタダだった!)

京太郎(ネリーだけじゃなく、みんなにも作らないとな……練習もする、ご奉仕もする。両方やらなくちゃならないのが、執事のつらいとこ――いや)

京太郎(両方できるってのは、幸せなことだな)



アレクサンドラ「――ってことで、来週末はランキング戦ね。とりあえず、そこでレギュラー決定だから。一年込みでやるわよ」

京太郎「はやいですね、もうレギュラー固定なんて」

アレクサンドラ「予選までに、何回かやるのよ。データも集計したいからね。それで、大会のレギュラーを固定する」

京太郎「なるほど」

アレクサンドラ「――場合によっては、一年の指導とかお願いするからね」

京太郎「心得ました」

アレクサンドラ「あとナチュラルにお茶淹れないの。くつろいじゃうじゃない」

京太郎「ミルクはご入り用ですか?」

アレクサンドラ「いらないわ。あと砂糖もね」

京太郎「かしこまりました」


明華「監督の立場を利用して、そういうのはどうかと……」

ハオ「問題になりますよ、控えられたほうがいいと思います」

アレクサンドラ「私がなにをしたっての」

ネリー「キョウタロー、お茶ー」

京太郎「はいはい、少々お待ちくださいなっと」


京太郎「さーて、今日はなにから始めようか」


京太郎「とりあえず、なに作るか決めないとなー。なんにしよう……」

アレクサンドラ「……いや、指導頼むって言ったでしょ。ちょっとは練習しといてよね」

京太郎「――あ、はい」


京太郎「それじゃ、俺は二軍か三軍のほうにでも――」

ハオ「――なにを言ってるんですか?」ニコニコ

明華「せっかくの機会です、一緒に打ちましょう」ギューッ

ネリー「キョウタローと麻雀したいな」

京太郎「……わかりました。では、よろしくお願いします」

京太郎「やっぱり半荘勝負ですかね?」

明華「ええ、もちろんです」

ハオ「どうぞよろしく。男子チャンピオンの力、体験させていただきますよ」

ネリー「よろしくね!」

京太郎「ああ、よろしく。俺のほうこそ、胸を借りるつもりでやるよ」

ネリー「貸すほどないよ?」ペタペタ

明華「まぁ、大胆なのですね」フフッ

ハオ「たしかに、監督よりは貸せるかと思いますが……」

アレクサンドラ「いちいちこっちに飛び火させなくていいから。とっとと始めなさいって」


京太郎(相手は団体の決勝まで残った学校、そのレギュラーだ。しかもネリーは、個人でもかなりの実力者。油断せずにいこう)

ハオ25000→21100
明華25000→
ネリー25000→28900
京太郎25000→


ネリー「ロン――3900」

ハオ「はい……」

明華「ハオ、京太郎を見つめすぎです」

ハオ「誤解を招くようなこと、言わないでください」

京太郎「ハオみたいな美人に見られると、緊張するんだけど」

ハオ「そうですか? では見ておきましょう、上がれる確率が上がりそうです」

明華「……では私も」

アレクサンドラ「真面目にやんないと意味ないわよー。特にハオ、いまのはありえない」

ハオ「……すいません。ただ――」チラッ

ネリー「? どうかした?」

ハオ「いえ、私のミスでしたね……少し、気合を入れます」

ハオ(ネリーは京太郎から上がろうとしていたはず、ですが……見逃したわけではないし、フリテンでもなかった……どういうことでしょう)

アレクサンドラ(……どこかで牌譜見た覚えがあるわ。日本のプロ……シュウイチロウ、だったかしらね)


京太郎「防御に徹しても勝てないからな……なんとか差を詰めて、後半につなげないと」


ハオ25000→21100
明華25000→37000
ネリー25000→28900→16900
京太郎25000→


明華「ロンです、満貫……12000いただきますね」

ネリー「んぐっ……はい」

ハオ「好調ですね」

明華「素敵な殿方が同卓だと、牌の進みも軽やかです」

京太郎「お世辞はどうもですけど……これだけフルで追いかけても、まだ届かないのか……」

明華「これでも、世界ランカーです。男子のチャンピオンといえど、そうそう負けはしませんよ」

京太郎「――なら、なおのこと勝って見せたくなりましたよ」

明華「なら、勝てればホッペにベーゼを差し上げますね」

京太郎「マジっすか!」ガタッ

アレクサンドラ「お座り」

京太郎「す、すいませんっ……うおぉ、雑念がっ……」

ハオ「明華、はしたないですよ」

明華「あら、失礼」

ネリー「もーっ、二人だけで盛り上がらないでっ」


京太郎「なんとしてでも勝たないと……ベ――だ、男子のメンツに賭けてっ」

アレクサンドラ(おー、動揺してる動揺してる)

ハオ25000→21100→18100
明華25000→19000
ネリー25000→28900→25900
京太郎25000→37000


京太郎「――ツモ、跳満。3000、6000です」

明華「――っっ!」

ハオ「一閃、という感じですね。まるで、そう……サトハのような」

京太郎「智葉先輩はもっと鋭いですよね。対局中は、ずっと刀の切っ先が向けられてるような気分でした」

ネリー「吸った分が持っていかれたぁ……」

アレクサンドラ「サトハの刀は、抜くまでは納められてるけれど……キョウタロウには、抜き身で見えたのね」

京太郎「……えっ、実際の話じゃないですよね?」

ハオ「そりゃあ、イメージでしょう」

アレクサンドラ「もちろん。ただ、抜き身のイメージが見えたということは、それだけ京太郎が鋭いか――なんらかの理由で、サトハが必要以上に威圧していたか」

ハオ「……なんらかの……」

明華「理由……」


京太郎(あれ、二人の気配が……これは、次の局から来るかっ)

ハオ25000→21100→18100
明華25000→19000
ネリー25000→28900→25900→24900
京太郎25000→37000→38000

ハオ(……ネリーが、かなり濃厚ですね)

明華(ベタオリ、ラストに賭けましょうか)

ネリー(……これはもらったかな、しかも高いよ)

京太郎「ロン――」

ネリー「え――」

京太郎「1000点……って、大丈夫か?」

ネリー「あ、うん……はい」

アレクサンドラ「全然感じてなかったって顔ね」

ハオ「――実際、私たちもまるで感じていませんでしたが」

明華「少なくとも、大会ではこんな上がりはなかったような……」

アレクサンドラ「残念ながら、ほかの男子が弱すぎたのね。するまでもなく、勝ててたってことでしょうし」 ※カウンターしたかどうか、忘れました

京太郎「そんなこともないですけど……」

アレクサンドラ「だけど、普段の練習ではよくやっていたんでしょう? 昨日今日、覚えた打ち方ではない」

京太郎「まぁ……そうですね。コツコツ勉強してましたから」

ハオ「なるほど……余裕で男子チャンピオンになった実力には、理由があるということですか」

明華「ラストに賭ける、という余裕もないでしょうか……なんとか差し切りたいのですが」

ネリー「直取りなら十分余裕だよね」

京太郎「そう易々とは上がらせないつもりだけどな――」


ハオ25000→21100→18100
明華25000→19000
ネリー25000→28900→25900→24900
京太郎25000→37000→38000


ハオ25000→21100→18100→15100
明華25000→19000→20000
ネリー25000→28900→25900→24900→25900
京太郎25000→37000→38000→39000


京太郎「うーん、上がれなかったか……けど、次こそ――」

ハオ「…………なるほど、そう来ましたか」

京太郎「え?」

明華「正直なのですね、京太郎」

京太郎「はい?」

アレクサンドラ「いまの、ノーテンにしておけば終了じゃない。あなたのトップで」

京太郎「あぁ――なるほど、気がつきませんでした」

京太郎「でも、せっかくの練習ですし、そういうのなしで打ちたいじゃないですか」

ネリー「かっこいー」

京太郎「ありがとよっ」

ハオ「男らしいですね」

明華「では、そのお情けをいただいて……勝ちを頂戴しましょうか」



京太郎トップ、上がり止め、というかハオの飛び終了

京太郎「――ロン、48000」

ハオ「は――」

京太郎「国士無双――」パラッ

アレクサンドラ「エクセレント」

明華「トレビアン」

ネリー「わお」

ハオ「…………完敗です」

京太郎「いや、出来すぎだったけどな、さすがに……けど、これ以外だとなんも上がれなさそうだったからなぁ」

ハオ「それこそノーテン終了でよかったでしょう」

京太郎「いやいやいや! いまのは、明華先輩が来てただろ!?」

明華「そうですね……このままなら、小四喜あたりでしたか」パラッ

京太郎「こわっ!」

明華「残念です。勝てたらご褒美を用意してもらおうと思っていましたが」

京太郎「ちなみになにを?」

明華「実は私、和菓子に目がなくて」

京太郎「……お作りしますけど?」

明華「ですから、ご褒美にいただきたかったんですっ」プンッ

京太郎「それはなんというか、申し訳ないです……」

ネリー「輪菓子、食べたよ! 練習の前に、揚げてもらった」

明華「」

ハオ「ほう……」

京太郎「あれは和菓子じゃなくて、ドーナツな……まぁ、輪菓子っちゃそうだけど」

明華「ず……ずるいですっ、ネリーだけ!」

京太郎「で、ですからいつでもご用意するって……」

明華「勝って食べるから意味があるんですっ!」

ハオ「理不尽な怒り方を……それでも年長者ですか」

明華「年長者でもレディは甘いモノに弱いんです!」

京太郎(……和菓子か、材料あったかなぁ……)


京太郎トップ



京太郎「落ち着きましたか、明華先輩」

明華「はい……すみません、恥ずかしい姿を」

京太郎「いえ、そんなことは。むしろ得した感じですし」

明華「えっ……」

京太郎「好きなものもわかったし、なんか拗ねてて可愛かったですし」

京太郎「これってあれですよね、トップ取れたご褒美ですよね」

明華「……ふふっ、そうかもしれません」

明華「だけど、それだけでは申し訳ないですし……そうですね、もう一ついいものをあげましょうか?」

京太郎「マジすかっ! やったぜ!」

明華「それでは――少し視線を下げて、あちらを見ていただけますか?」

京太郎「はいはい」スッ

明華「いいですか? あっちですよ? そのまま視線を逸らさないで――」

京太郎「はい」ジー

明華「……んっ」チュッ

京太郎「ふいっ!?」ビクゥッ

明華「……うふふ、してしまいました」

京太郎「ちょっ、えっ……えっ!?」

明華「約束したでしょう? トップになったら、ホッペにベーゼをあげますって」

京太郎「してないですよ!」

明華「……?」

明華「あ――失礼。あれは別の世界線でしたね」

京太郎「世界線ってなに!?」

明華「まぁいいじゃないですか。双方ともに得をして、損はしなかったんですから……ね?」

京太郎「……確かに、そうですけ――え?」

明華「はい?」

京太郎「あの……俺が得したのはわかりますけど、明華先輩はどうして得を?」

明華「――――あっ」

明華「それは、その……内緒ですっ」

京太郎「なんで!?」

明華「と、とにかくです……さっきの対局は、とてもいい麻雀でした」

京太郎「あ、はい……ありがとうございます」

明華「これに慢心せず、もっと強くなってください」

京太郎「はい……なんか、丸めこまれてません?」

明華「気のせいです」

京太郎「はい……」

ハオ「見ました」

ネリー「私も見た」

アレクサンドラ「私は見てない……面倒なことになりそうだし」

ハオ「それでも監督ですか」

アレクサンドラ「結果だせばオッケー。実際キョウタロウは見事だったし。あれで明華の調子が上がるなら、止める理由はないわね」

ハオ「教育的な視点とか……」

アレクサンドラ「文化的に、挨拶でしょ」

ハオ「というか、見てないことにしたのでは」

アレクサンドラ「……なにも見てないわ」

ネリー「でもキョウタロー嬉しそう、私もしてくるね」

ハオ「いけません、ネリーにはまだ早いです。ここは私が」

ネリー「同い年……」

アレクサンドラ「タイミング悪すぎるから、また別の機会にしてちょうだいよ。っていうか、まだ休憩じゃないし」

ネリー「じゃあ休憩中にしてくるね」

ハオ「ですから、まだ早いと――」

京太郎「――ふぅ……まぁ、色々言ったけどすげー得した……ほっぺチューは、シロさんとかにもされたけど……うん、明華先輩のもまた別格だな」

京太郎「これはこの先も、いいことありそうだぜ!」ヒャッフー

京太郎「さて――まぁ、せっかく教えてもらって言わないのもなんだしな、うん」

京太郎「――そういえば、和菓子のなにが好きか、とか聞いてなかったなぁ」グツグツ クルクル コネコネ

京太郎「けど、わざわざ和菓子指定なら、餡子はお嫌いではないだろうし……おそらく、こういった生地もお嫌いではないはずだ――」

京太郎「ということで、このカステラ生地と、大納言の餡子で――しっとりと、上品な甘味に仕上げた」

京太郎「どら焼きで勝負!」

明華「まぁ――まぁまぁまぁ!」

アレクサンドラ「……ほんと、隙あらば仕事しようとするのね、まぁ構わないけど」

ハオ「まさかとは思いますが、買ってきたりは――」

京太郎「餡も生地も、俺の手作りです。東京には色々とツテもありますから。小豆なんかも、電話すれば届けてくださいます」

ネリー「こっちもおいしそぉ……ねっ、食べてもいいのっ?」

京太郎「もちろん。さ、明華先輩も――あっ」

京太郎「……あの、餡子は大丈夫でしたか? あとになって聞くのもなんですけど」

明華「もちろんです……本当にありがとう、京太郎。こんなにおいしそうなどら焼きは、初めてですよ」

京太郎「実際においしいかどうか、ぜひ判定してください。お茶はなにを?」

明華「お抹茶をお願いします」

京太郎「承りました。みなさんも、どうぞお好みのお茶を。なにが合うかわからないという方は、こちらでチョイスしますので」

ハオ「抹茶ではない緑茶をお願いします」

京太郎「ハオは――まぁ、中華で餡はよく使われるもんな」

ハオ「そうですね。揚げたものでないなら、緑茶のほうがおいしくいただけますし。ご存知ですか? 中国では実際、緑茶のほうが好まれているんです」

京太郎「らしいよな。こまかく茶葉までは調べられなかったけど」

ハオ「大丈夫。和のお菓子には、日本茶が合いますから」ハムッ

ハオ「――んくふっ、あうぅっっ」ビビクンッ

アレクサンドラ「……なに、いまの声」

ハオ「あっ、んぅっ……な、なん、ですか……この、おいし……さぁっ、んっ……」ビクビクッ

ネリー「はぁぁぁ……おいしぃぃ……」ハムハム

京太郎「詰まらせないように気をつけろよ」

ネリー「おいしいよ、キョウタロー!」

京太郎「そりゃよかった」

明華「んっ、あぁぁ……はぁっ、んくっ……くふっ……」ビクンッ

アレクサンドラ「……えっ、ほんとになに……媚○でも入ってんの?」

京太郎「よくわかりませんけど、最近はこういう反応が、おいしいものを食べたときのものだって、学習してます」

アレクサンドラ「食べるの怖くなってきたわ……」ハムッ

京太郎(でも食べるんだ)

アレクサンドラ「――あ、ほんとにおいしい。日本で初めて食べたのよりおいしいかも」

京太郎「よかった……実は監督の評価が、一番怖かったりしてました」

アレクサンドラ「そう? まぁよっぽどじゃない限りは、おいしくいただくわよ」

京太郎「安心しました。それでは、ほかの部屋にも配ってきますので、失礼します」

京太郎「――ふぅ、よその部屋はよその部屋で、大惨事だったな……ただいま戻りましたー」

京太郎「さて、どなたか呼んでおられるようなら――」

明華「…………」ポロポロポロ

京太郎「」

京太郎「みょ――明華先輩! ど、どうされんたんですか!」

明華「あっ……京太郎っ……」グスッ

京太郎「な、なにか不手際でも!?」

明華「いえっ、違うんです……ただ――」

明華「あなたが、和菓子を作ってくれたことと……それが、こんなにおいしかったことで、二重に感動してしまって……っ」

京太郎「な……なんだ、そうでしたか……って、そんなにですか?」

明華「ええ、本当に……前のダコワーズでも、お料理上手なのはわかっていましたけれど……」

明華「以前口にした和菓子をだしてくださった店で、和菓子作りというものは難しいと、伺っていましたから」

明華「さすがに京太郎でも、通常以上のクオリティはないと思っていて……嬉しい誤算、というものでしょうか」

京太郎「大げさですよ……でも、そんなに喜んでくださったなら、作った甲斐もあります」

明華「大げさではありません。本当に、毎日でも食べたいくらい――あっ」

明華「ち、違いますからっ、いまのは――その、そういう意味では、なくて……」モジモジ

京太郎「毎日なら、お味噌汁を作りたいところですね」

明華「――――――」

明華「で……で、ででっ、ですから! そういう意味ではないとっ!」カァッ

京太郎「ふふ、わかってますよ、冗談です」

明華「……もうっ、そういう冗談はだめですよ。趣味が悪いです」

京太郎「すみません、でも――」

京太郎「あんな風に、おいしそうに召し上がってくださるなら……和菓子でもお味噌汁でも、毎日作りたいなって思います」

京太郎「本当に可愛い、いい笑顔でしたから」

明華「ぁ……うっ、あ……そ、そんな……ことっ……」/////

京太郎「あ、先輩に可愛いなんて、さすがに失礼ですね……すいません」

明華「そ、そんなこと――」

京太郎「とてもお綺麗でした」

明華「」

明華「…………はうっ」パタン

京太郎「!? せ、先輩っ、明華先輩――っっ!」


明華(は、はは、あはははは……夢ですよね、こんな……こんな素敵な、夢が……ああ、もう覚めないでくださいな……)


~夕方


京太郎「今日は執事業にも励めたし、結構よかったかな。この調子でいこう」

京太郎「さて、あとは掃除して、整備して、遅くなりそうな部員を寮まで送って――」

アレクサンドラ「下校時刻よー」

京太郎「……あの、俺はいつまで早く帰ればいいんですかね」

アレクサンドラ「寮生じゃない以上は、仕方ないわね」

アレクサンドラ「ほら、多感な女子生徒も多いから。男子がいると、風紀が乱れるって声もあるし」

京太郎「まぁしょうがないですね」

アレクサンドラ「それにこれは、キョウタロウのためでもあるわ」

京太郎「なぜ?」

アレクサンドラ「あなたのクラスの女子も、全員が寮住まいなの」

京太郎「…………ああ、そういう」

アレクサンドラ「四六時中、お風呂を覗かれる心配や、部屋の施錠の心配なんて嫌でしょう?」

京太郎「そこまで!?」

アレクサンドラ「あなたの性的な魅力は、女子を刺激しすぎなの。気をつけなさい」

京太郎「普通、男女で逆なんじゃ……まぁ、わかりました」

アレクサンドラ「まぁ気をつけなさい。現役のレギュラーが全員ときめきになれば、守ってくれるだろうから、寮住まいも許可するわよ」

京太郎「いや、そこまで無理したくはないですよ……それじゃ、お先に失礼します」

京太郎「しかし、電話がかかってこないと、帰り道は寂しいなぁ」

ハオ「――おや、そうなのですか?」

京太郎「ああ、そうな――なにしてんだ、ハオ」

ハオ「見送ろうかと思って追いかけてきたのですが、声をかけそびれまして」

京太郎「……追いかけてきすぎだろ。学校からすごい離れてるっていうか、ほぼ俺の家の近くだよ!」

ハオ「大丈夫ですよ、ここから帰るくらいは、なんてことありません」

京太郎「……まぁ、そうだな。よし、それじゃ帰るか」

ハオ「そっちは学校ですよ」

京太郎「わかってるよ、ハオを送ってくんだから。ほら、早く来いって」

ハオ「私はむしろ、京太郎の部屋に行きたいのですが」

京太郎「ハオが一人暮らしとかなら、それもいいんだけど……寮の門限もあるだろうし、監督たちも心配してるぞ」

ハオ「…………はぁい」

京太郎「そうそう、素直が一番」

京太郎「――というか、ちゃんと声かけてくれよ。さっきのタイミングがなかったら、それこそ家までついてきてたんじゃないのか?」

ハオ「そうすればよかったと、いま後悔しています」

京太郎「家に来たって、ロクなもんないぞ?」

ハオ「京太郎がいるじゃないですか、それだけで十分です」

京太郎「……まぁ、それなりのもてなしはできると思うけどな」

ハオ「そういう意味じゃありませんよ?」

京太郎「どういう意味なの……」

ハオ「それは追々、わかってもらいます……では、送っていただいて、ありがとうございました」

京太郎「おっと、もう学校か。それじゃ……今度は、ついてくるんじゃないぞ?」

ハオ「もちろん。ここまで送ってもらえたので、満足です」

京太郎「変わったやつだな……じゃ、また明日な」

ハオ「ええ、また明日……ありがとうございました、京太郎」


~夜

京太郎「はぁ――ハオは、なんていうかミステリアスだな……」

京太郎「なに考えてるかわかりにくい……いいやつではあるんだろうけど」

京太郎「明華さんも、ミステリアスというか、神秘的な美人って印象だったけど……意外とお茶目で、親しみやすい人だな。あと可愛い」

京太郎「ネリーは……よく食べるよな、まるで穏乃だ」

京太郎「俺から三人への印象はこんなもんだけど、三人はどう思ってることか……機会があったら聞いてみたいな」

京太郎「監督は――まぁ、あのまんまだな。美人だけどそっけない、かと思えば思いやりがあって……」

京太郎「……なんであれで、おもちがないかなぁ……残念でたまらん」

京太郎「まぁ、足りないおもち分はハオと明華さんで、十分以上に補給できている……臨海はいいところだよなぁ」シミジミ

京太郎「そうだな、色々あって疲れも溜まってくるころだ。今日は早めに寝るとしよう」

京太郎「差し入れ作っただけだからなぁ、なかなか回復しない……掃除と、買いだしもできれば……」ムニャムニャ

京太郎「そういえば、来週からは一年の指導とか言われてるし、疲れを取って万全に行動するのは、今週のほうが都合いいのかもしれない」

京太郎「よし、しっかり休んで明日に備えるかな」

~水曜終了

【4月第一週水曜】

 今日は久々に、しっかりお菓子作りができた。
 作ったのはどら焼き。和菓子好きな方がいて、喜んでいただけた。
 あの笑顔を見るためにも、また差し入れを頑張ろう。

…………

『こんな笑顔でよければ、いつでも。毎朝でもお見せしに行きますが?』
『待ちなさい、それは京太郎に迷惑です』
『その通り。京ちゃんを迎えに行くのは幼なじみに決まってる』
『つまり私だね』
『……きょ、京太郎さんを迎えに行くのは私ですっ』

 いや、自分で起きますから……。
 でも本当にいい笑顔だったよな、おいしいもの食べてるって顔を見せてくれるのは、励みになる。

『京太郎くんが笑顔を褒めるなんて、いままであったでしょうか……』
『相当いい笑顔だったんかのう』
『私も、そんな笑顔しとったのにぃ……』

 え――そういえば、あまり言ってなかったか?
 おいしそうに食べてくれる人(の笑顔)が好きだって、書いておいたほうがいいかもしれないな。

『そんなことよりどら焼き……おいしそう……』
『京太郎のお菓子見ると、あの感覚が思いだされてゾクゾクする』
『わかります』
『ふきゅ』

 和菓子に関しては、穏乃の家の影響が大きいんだよなぁ……あそこのお菓子は、本当においしかったから。
 それまでも独学と、師匠に教わった範囲で作ってはいたけど、味の指標は高鴨堂に倣ってる気がする。
 また機会があれば、阿知賀に行きたいんだけど……自分で選べないからなぁ、こればっかりは。

――――――――

~臨海側大学

「――和菓子もできるのか。ますますいいな、これは……」
「なにがいいんだ、智葉」
「……なんでもない。気配もさせず、近づいてくるな。危うく抜刀するところだぞ」
「あ、日誌ですね。わっ、どら焼きおいしそう……」
「和菓子か……最近はあんま、食べに行く機会もなかとね」
「京太郎くんのお菓子、和菓子も洋菓子もおいしいですよ」
「初めて会った、永水との合宿のときも、羊羹を作ってもらったな」
「それ以外もですね、黒糖揚げ饅頭とか、きんつばとか、大福にお団子、ぜんざいなんかもレパートリーみたいです」
「あかん、涎が出てきとう……」ズズッ
「はしたないぞ、哩」
「腹減る時間に言うんがわるか!」
「大学でも、なんとか作ってもらえないものか……」
「今週なら、一回目の行動で大学に行けば、二回目で作れるようだ」
「行動一回に減る、来週以降は……?」
「高校で行動するか、大学で行動するか、選ぶことになるはずだな」
「ならこっちにいる間は、しばらくチャンスはありますね。哩さんも、よかったじゃないですか」
「まぁ――哩の場合は、まず出会うところからだな」
「せからしか!」



~白糸台

「あ、おいしそう……渋いお茶に合いそうだなぁ」
「尭深のお茶だけでも、十分おいしいんだけどね……甘いモノが恋しくなると、京太郎くんの重要性を思い知らされるよ」
「和菓子もいいけどさー、最近見てないよ、クリームとか! せっかく優勝したのに、お祝いもしてくんなかったし……」
「私たち団体戦あったからね……」
「でも優勝できたのは、京太郎くんのおかげでしょ?」
「――なんで?」
「だって、インタビューのあとで、頑張れって言われて、ギューッてされてたでしょ?」 ※というシーンがあったとお考えください
「み、見てたの!? あっ……」
「へー、そんなことしてもらってたんだ……ご利益あったね」
「ち、違うから! あれ無理やりされただけだし!」
「そっか……じゃ、京太郎くんにメールしとこうかな」
「なんてっ」
「えっ? うちのエースを抱っこするの禁止、本人が言っても禁止って」
「そ――」
「困るの?」ニコニコ
「……別に」
「ふーん」ニヤニヤ
「へー」ニコニコ
「うぅ……うううううっ、か――勝ったと思わないでよねっ!」タタタタッ
「あ、逃げた」
「照れなくてもいいのに」


~永水

「やる気ねぇ、小蒔ちゃん」
「い、いえ、その……でも、幼なじみ、とは……幼い頃に、付き合いがあったということで……年齢が、関係するわけでもないですし……」
「っていうか、それ本当の話なんですかー?」
「間違いありません」
「私は、小学校に上がってから、ようやく姫様――小蒔ちゃんにお目通りしたから、知らないのよねぇ」
「私は、もっとちいさかったはずだし……」
「同じく」
「そんな昔からちょっかいだして――って、それ以前にですよ。須賀さんが、どうして姫様と近しい仲にあったんですか」
「……それは、わかりませんが……」
「ここに来ても、京太郎のほうは、まるで覚えてなかったですしねー」
「昔のことだから、お父様たちの世代なら知っていそうだけれど……」
「事情があったら、聞くに聞けない……」
「まぁ――エンディングになれば語られるんじゃないですか。どうせフレーバー設定ですし」
「エンディングって?」
「姫様エンド」
「それは阻止」
「はるるもブレないですよー」
「……私も、阻止したいのだけれど……」チラッ
「負けませんっ、私っ」グッ
(小蒔ちゃんのこと考えると、どうしたものかしら……)ハァ



~おまけ

シロ「笑顔、か……」ニコッ

照「え、それで笑顔なの?」

シロ「照に言われたくないよ……」

照「これを見ても言えるの?」ニコッ キラキラキラッ

シロ「!?」

照「私の外面を、侮らないでもらいたい」フッ

シロ「完全に無駄遣いでしょ……っていうか、その作り笑いを京太郎にも見せるの?」

照「京ちゃんのお菓子を食べたときは、普通にこれ以上の笑顔見せてるから」

シロ「ふーん……」

照「――でも、京ちゃんはあまり表情が変わらなくても、感情を読み取ってくれる。そこが京ちゃんの京ちゃんたる京ちゃん」

シロ「なにそれ、意味わかんない」

照「それ知ってる。この前、スクールアイドルとか言う子が言ってた」

シロ「それはともかく……まぁ、そうなんだよね。京太郎はわかってくれるから……でもそれに甘えて、あまり表情に出ないのもどうかなって」

照「無理をしても京ちゃんは喜ばない。それだけは確か」

シロ「……ずるいなぁ、照は」

照「なぜ」

シロ「そのわかってます感……すっごい腹立たしい」

照「未来の嫁として、わかっているのは当然」

シロ「そのケンカ買った」

照「じゃあいつもの店で打つ?」

シロ「あそこは小鍛治プロとか瑞原プロとか野依プロが出入りするからいや」

照「じゃあ、どっか開拓しよう」

シロ「地元でしょ、どこか知らないの?」

照「雀荘とか行ったことない……」テルーン

シロ「はぁ……しょうがない、探すか。ダルいけど」



~4月第一週木曜


京太郎「やっぱり早寝早起きは基本だよな。朝の日課が終わって、登校準備が終わっても、まだ余裕がある」

京太郎「早く言って、部室の掃除してー、自動卓の整備してー、昼の下拵えとかー、食材補充とかー……はぁ、やることいっぱいだなぁ」ニヤニヤ

京太郎「よし、張り切って行くぜ! 忙しいって素晴らしい!」

京太郎「よーし、一番――なにぃっ!?」

ネリー「あ、キョウタロー、おはよ!」

京太郎「は、早いな、ネリー……いつもこの時間に?」

ネリー「違うよー。今日は日直だから」

京太郎「ああ、なるほど……けど、早すぎないか? もう一人もまだ来てないみたいだし」

ネリー「人にやってもらうより、自分でしたほうがいいから……」

京太郎「……誰も、対価なんて要求しないからな」ポンポン

ネリー「うん……」

京太郎「それに、一人でやるより二人でやるほうが、効率もいいしな」

ネリー「そうだね……」

京太郎「――ってことで、俺も手伝ってやるよ。終わらせて、それから朝ごはんにしよう」

ネリー「食べてきたよ?」

京太郎「早起きしたら、その分空くのも早いだろ。もうちょい詰めとけって。簡単なの作るから」

ネリー「じゃあベーグル、卵挟んで!」

京太郎「べ、ベーグルか……まぁ、できなくはないな、うん」

ネリー「ほんとっ?」

京太郎「おう。それじゃ、さっさと終わらせて、調理室に行くぞ」

ネリー「うんっ!」




~お昼


ネリー「お腹空いちゃった……」グギュー

京太郎「燃費悪いな……ほら、弁当用にしておいてよかっただろ?」

ネリー「朝の残り!」

京太郎「食堂か購買行くまで、これでなんとか持ちこたえろ……」

ネリー「ありがとう!」パクッ

京太郎「うまいかー? しっかり食べて、大きくなれよー」

ネリー「大丈夫、頑張って監督よりは大きくするから」

京太郎「そういう意味じゃねーよ!」

ネリー「でもハオと明華のこと、よく見てるから」

京太郎「見て――なく、は……ないけど……」

ネリー「二人とも見られて嬉しそうだから、私も頑張るね」

京太郎「ああ……あ? なんで嬉しそうなんだ……っていうか、バレてんのかよ!」

ネリー「あれだけ見てるからね」

京太郎「マジかよ……うぅ、気づかれてないと思ってたのに……」

ネリー「女はね、男の視線に敏感なんだよ」

京太郎「ネリーみたいな子に言われると、なんかショックだ……」

ネリー「明華がそう言ってたよ」

京太郎「あ、自前のセリフじゃないのね……安心したよ」ポンポン

ネリー「……むっ、バカにしてる」

京太郎「してないっての」

ネリー「時々、キョウタローは子供を見る目でネリーを見るよね」

京太郎「んなことないって」ジー

ネリー「ほらまたー! もー、キョウタロー知らない!」


京太郎「いかん、怒らせてしまったか……実際、子供を見るみたいじゃなく、妹を見る感じなんだけどな……」

京太郎「ハオは――いないか。ま、毎日いるもんでもないだろうからな」

京太郎「しっかし、ここは気持ちいいなー。芝がいい……天気もいいし、昼寝したくなるぜ」ゴロン

モーイッポフーミダセルー ワターシマッテタヨー
京太郎「――と、思ってたら電話か……もしもし?」

メグ『はい、もしもし。いま大丈夫でしょウカ?』

京太郎「メグ先輩……どうしました? 仕事ができました?」

メグ『いえ、その確認デス。なにかあれば、また連絡するノデ……そのときはよろしく、と伝えておこうカト』

京太郎「なるほど、了解です。でもいちいち確認しなくても、師匠からの用事でもない限りは、先輩命令優先ですよ」

メグ『オー、マスターシツージ……いえ、それはともかくデス。明華たちの相手をしていたら、こちらは気にしなくてよいデス』

メグ『どちらかを優先するナラ、まず優先するノハ、キョウタロウの学校生活でショウ』

京太郎「メグ先輩……」

メグ『その中で、三人や監督、それ以外の部員のことをして、余裕があればでこちらは構いまセン』

メグ『臨海での生活は楽しかッタ……キョウタロウにも、それをわかってもらいタイ。前のラーメンも、そのために教えたのでスヨ?』

京太郎「――ありがとうございます。いただきましたホタテの鶏ガラ醤油。ホタテがバターで軽くソテーされてましたね、それもポイントみたいです」

メグ『さすが、わかってくれてイル……そうそう、塩にトッピングするとキハ、ソテーのときにガーリックも入れるヨウ、オーダーするといいデス』

京太郎「また……その注文、絶対メグ先輩が作ったやつでしょ」

メグ『これはハオに教えてもらったのでスヨ』

京太郎「マジっすか」

メグ『ハオの国は、麺にもガーリックの使い方にも明るい、いい国です。私の見識も広がりまシタ』

京太郎「はは……まぁ、それも試してみます」

メグ『では京太郎。余裕があレバ、仕事をお願いしまスネ』

京太郎「はい、それでは」

京太郎「……なるほど、ホタテとバター、鶏ガラ醤油にガーリックだと、クセが強くなるんだな……ふむふむ」ズルズル

~木曜、放課後


京太郎「――さぁ部活だ!」

明華「張り切っていますね。なにかいいことでもありました?」

京太郎「はい! いま明華先輩に会えました!」

明華「え――」

京太郎「なんてのはどうでしょう?」

明華「ぁ――あ、ああっ、また……もうっ、そうやってからかうのは――」

京太郎「いや、いまのは本当ですけど」

明華「~~~~っ! そ、そうやって、あ、ああ、あなたはっ……」

京太郎「さ、今日も頑張りましょう!」

明華「はぁ……もう、わかりました……」


ハオ「……明華が、順調に……これは、なんとかしなくては……」

ネリー「なんとか?」

ハオ「集中狙いです! 今日の練習は、明華を狙いましょう!」

アレクサンドラ(……負けた明華を慰める姿か、明華を支えて共闘する姿しか見えない……)


京太郎「今日の仕事第一回目は――これだ!」

京太郎「――昨日はギリギリの勝利だったからな、もっとうまくならないと……」

ネリー「ラスト役満で……」

ハオ「私を飛ばして……」

明華「私のベーゼを受け取るくらい圧勝だったのに……ギリギリ?」

京太郎「コンマ次第では普通に負けてましたからね……もっと強くならないといけません」

京太郎「ということで、今日は俺も、真面目に練習しますよ!」

京太郎「ということで、みんなが監督からどんな風に教わってるか、ちょっと見せてもらいたい」

明華「……えっ」

京太郎「えっ?」

ハオ「教わって……まぁ、大会前の対策なんかは聞きますけど……」

ネリー「基本自由だよ。対局してれば怒られないし」

京太郎「…………そうなの?」

アレクサンドラ「ごめん、遅れたわ。それじゃ、練習――は、もう始めてるわね」

京太郎「監督っ」

アレクサンドラ「どうしたの、キョウタロウ」

京太郎「えっと……あっ! せっかく臨海に来たんですし、監督にご指導いただきたいと――」

アレクサンドラ「――まぁ、別に構わないけど?」

京太郎「あれ?」

アレクサンドラ「なんなの、その反応」

京太郎「あー、いえ……断られるかと思ってましたので。ご指導いただけるなら、ぜひ」

アレクサンドラ「なんで断るのよ……またあの子らに、なんか吹き込まれた?」

京太郎「……イエ、マサカ」

アレクサンドラ「……指導しないどうこうってことなら、あの子たちは完成してるからよ?」

アレクサンドラ「そこにある完成した打ち筋に、私が介入する余地はないの。もっとも――初めて一年足らずの少年相手なら、一晩中でも教えてあげるわよ?」

京太郎「は――やっ、あのっ、そのっ……」

ハオ「阻止」

明華「危うく通報するところでした」

アレクサンドラ「……冗談でしょ。はいはい、それじゃ始めるわ、こっちの卓につきなさい」

アレクサンドラ「――ふぅん、基礎は十分ね。って、あの三人相手にできてたんだし、それは当然か」

京太郎「どこかおかしいとこないですか?」

アレクサンドラ「んー、そうね……強いて言うなら、色々と無理してるかなって思うわ」

京太郎「無理、ですか?」

アレクサンドラ「無理して早上がりしたり、無理して打点上げたり、無理して相手を押さえたり――」

アレクサンドラ「開き直って真正面から相手にしようとするところだけが、キョウタロウらしい打ち方と言えるかしらね」

アレクサンドラ「人の打ち方を真似たらそうなるのは仕方ないけど、無理なく打てるスタイルにするか、真似を無理なくできるようにするか――」

アレクサンドラ「どちらにせよ、そのために回数を重ねるのが一番のようね、いまのところは」

京太郎「とりあえず、このまま打ち続けろってことですか?」

アレクサンドラ「自然体で、ね?」

京太郎「あ、はい……」

京太郎(って言っても、それが一番難しいんだよな……自然に、自然に……)ギクシャク

アレクサンドラ「それロン」

京太郎「」

アレクサンドラ「ふふっ、わかりやすく乱れてるわね……ま、頑張りなさい、少年」

京太郎「はい」

アレクサンドラ「そういうとこ、結構好きよ」

京太郎「はぁ……えっ!?」

ハオ「阻止」

明華「通報」

アレクサンドラ「だから冗談だって……」

京太郎「うーん、自然に自然に……」

ハオ「いい大人が学生を惑わせるなんて……」

明華「しかも名門校の監督が部員にです。これは由々しき問題です」

ネリー「お金かかる?」

ハオ「下手をすれば賠償責任にも――」

アレクサンドラ「ならないわよ。一線越えなきゃ、合意の場合は問題ないの」

明華「なんっ――」

ハオ「や、やはり本気でっ……」

アレクサンドラ「だから冗談だって……いや、ほんと飽きないわね、あんたたち」

ネリー「むー……キョウタロー!」

京太郎「自然に……えっ、なんだ?」

ネリー「監督、お胸にもお尻にも肉ないよっ?」

京太郎「え、知ってるけど――あっ」

アレクサンドラ「ほう」

ハオ「……まぁこればかりは仕方ありませんよね」ニコニコ

明華「持って生まれた素質というか、天命というか……」ウフフ

京太郎「ご、誤解ですから」

アレクサンドラ「次の指導は容赦しないから、覚悟しておきなさい」

京太郎「」

京太郎「なんてことだ……なんてことだ……」

京太郎「と、とりあえず大学に避難しよう……いや、でも勝手に行ったら怒られるかな……」

カガヤイテー ピッ
京太郎「もしもしっ、智葉先輩ありがとう!」

智葉『』

智葉『……なっ、なんだいきなりっ……なにかあったのか?』

京太郎「いえ、ちょっと部室にいづらい雰囲気で……もしよかったら、そちらに寄らせていただけないかと……」

智葉『――まぁ、いいだろう……まったく、仕方のない奴だ』

京太郎「ありがとうございます! では、すぐに参りますのでっ」

智葉『ああ、こちらとしても呼ぶ手間が省けた……そうそう、それとそっちでは、こちらに来ることを言うなよ? 面倒に――』

京太郎「すいませんっ、ちょっと大学に行って参ります! おそらく直帰になりますので、では――」

智葉『』

京太郎「あ、すいませんっ。では、急いで行きますからっ」

智葉「はぁ……また面倒になりそうな気がする」

ハオ「監督のせいです」

明華「それとサトハの陰謀です」

ネリー「キョウタロー、また行っちゃった……」

アレクサンドラ「別に逃げなくてもいいのにねぇ」


~大学

京太郎「――そういえば、今日はどなたがいらっしゃるんだろう……おっと、ここだな、新部室っていうのは」

コンコン
京太郎「失礼しまーす、須賀京太郎です。お邪魔してもよろしいでしょうか!」

智葉「鍵はかかっていない。入って構わないぞ」

京太郎「では――」

京太郎「失礼しまーす」

菫「や、やあ、京太郎くん」

京太郎「菫先輩もいらしたんですね、こんにちは」

智葉「ようこそ、第六麻雀部へ……で、今度はなにをやらかした」

京太郎「うっ……そ、そんなにいつも、なにかやらかしてるわけでは……」

智葉「なんにせよ、居づらくなるようなことをしたのだろ?」

京太郎「はぁ……監督を怒らせてしまいまして」

智葉「監督を? それは珍しい……本当に、なにをしたんだ?」

京太郎「……いえ」

菫「失言でもしたか?」

京太郎「……はい」

智葉「そういうのには、気を遣うほうだと思っていたが」

京太郎「遣ってましたよ! ただ――ネリーに乗せられたというか、流れで……」

智葉「流れで?」

京太郎「……監督の、その……身体的な特徴に、触れてしまったというか……」

智葉「――はぁ……呆れるな、本当に」

京太郎「面目次第もございません……」

菫「わかっていると思うが、男子が思っている以上に、女性は気にしているものだ。今後は気をつけろ」

京太郎「はい……」

智葉「まぁ……監督も根に持つタイプじゃない。きちんと謝罪しておけば、明日には忘れてくださるだろう」

京太郎「そうします……それで、その――」チラッ

智葉「?」

菫「?」

京太郎「そちらの方は……?」

智葉「そちらの……」

菫「方……?」

哩「そういう扱いば、好かんち言うとるやろ……」

智葉「冗談だ、ガチでへこむな」

菫「すまない、どうも普段のポンコツぶりを見ているとな……」

哩「誰がポンコツと!」

京太郎(で――誰なんだろう……)

智葉「すまんな、紹介が遅れた……こいつは、白水哩」

菫「新道寺女子出身、私たちの同期だ」

哩「そういうことやけん、よろしゅう頼むばい」

京太郎「あ、はい。よろしくお願いします、お二人の後輩の、須賀京太郎と――」

哩「あー、構わん。日誌見て、だいたいは把握しとるけん……」

京太郎「あ、ありがとうございます……新道寺っていうと、阿知賀や千里山、白糸台と準決勝で試合した学校ですね」

哩「おほっ、嬉しか~。ちゃんと知っててくれよったと?」

京太郎「それに、たしか――理沙さんの母校でもあったはずですし」

哩「理沙?」

智葉「――野依プロのことだろう」

菫「まぁ、名前で呼ばれるとピンと来ないな、普通は」

京太郎「すいません……その、改めまして、よろしくお願いします」


京太郎「よろしくお願いします――えーっと、白水さん」ニコッ

哩「……はぁ~、思うとった以上に……よか男やね」

京太郎「は――」

智葉「真に受けるな、京太郎」

菫「その通りだ。哩も本気ではない……なぁ?」

哩「ん……いや、その……ほんなこつ、思っとうよ?」

智葉「頬を染めるなっ!」

菫「お前……そんな見境ないやつだったのか……」

哩「なっ……し、失礼な! 普通の男なんぞ、歯牙にもかけん! けど――」

哩「この顔で!」ビシッ

京太郎「へ?」ペタペタ

哩「この礼儀んよさで!」ビシィッ

京太郎「いえ、そんな」

哩「おまけにこのガタイ、麻雀の強さ……普通の女子なら、よか男や思うて当然やろ」

哩「まぁ――二人がそう思うとらんなら、それでも構わん。私は純粋に、京太郎ば気に入った、そいだけんこと」キリッ

智葉「言い切った上に開き直ったぞ」

菫「……別に、私が……気に入ってないとか、そういう話では……」ボソボソ

京太郎「あの、お二人がなにか……」

哩「気にせんでよか。そいよか京太郎、巴と智葉、菫の番号は知っとうと?」

京太郎「え、ええ、まぁ」

哩「ふむ、私だけ呼べんいうんも不便やね……携帯貸さんね。交換しとけば便利やろ」

京太郎「あ、はい……ありがとうございます、白水さん」

哩「哩でよかよ。けど、先輩じゃなかと?」

京太郎「それは、新道寺でお世話になりましたら、そのときに――ということで」

哩「ん、りょーかい。まぁ、ずっと哩さんでん、気にせんでよかけど」

京太郎「それじゃ、そのときに哩さんが、俺のことをもっと認めてくださっていたら、さんづけの許可を改めてちょうだいします」

哩「そりゃあ楽しみばい。期待せんと、待っとうからね」バンバンッ

京太郎「痛いっ、痛いですっ」

哩「こんくらいのほうが気持ちよかと? あ、いや――そやった、京太郎はSやったとね。そいは楽しみ――」

智葉「いい加減にしろ、ヘンタイ! ドMは一人で十分だ!」

菫「私はドMじゃない!」


京太郎「じゃあ――とりあえず、麻雀しましょうか」

智葉「そうだな……クールダウンにもなる」

菫「たまには落ち着いて話したいものだが」

哩「京太郎には連覇もかかっとう。練習に付き合うたらんとね」

京太郎「ありがとうございます、では――」

京太郎「前にお約束した通り、今回は半荘でお願いします」

智葉「ああ、それで構わない」

菫「さて、そろそろインカレに向けて本腰も入れたい――集中するか」

哩「講義ん拘束ば長うて、練習時間ば貴重やもんね」

京太郎「貴重なお時間いただき、ありがとうございます……俺も、練習相手として恥ずかしくないよう、頑張りますから!」


菫(……なんとなくだが、京太郎くんは……)

智葉(初対面には、猫をかぶっているきらいがあるな……まぁ、それほどかけ離れた猫ではないが、必要以上に気を遣っているような……)

哩(はぁ~、真面目なもんばい……姫子と花田も、真面目ちゅうたら真面目やったとやけど……)

智葉25000→→21100
哩25000→28900
菫25000→
京太郎25000→


哩「そいは通らん――ロン」

智葉「……はい」

京太郎「あの、なにか怒ってます……?」

智葉「別に」

菫「さっきのことで集中できていない自分に、苛立っているだけだ。子供っぽいだろう?」

智葉「菫――」

菫「おっと……すまない、少し黙ろう」

智葉「そうしてくれ」

京太郎「すいませんでした」

智葉「……いや、いい……」

哩(なんね、ようわからんけど……これは、チャンスやね!)


智葉25000→→21100
哩25000→28900
菫25000→9000
京太郎25000→41000


菫「…………」

菫(そろそろ、射抜けるか……?)ピクッ

京太郎「…………」タンッ

菫「……っ……」

智葉「…………」タン

哩「んー、なかなか……」トン

菫(……バカな、また――いや、宥のときとは違う。クセは直っているはずだ……なぜ……)タンッ

京太郎「――ロン」

菫「!?」

京太郎「……倍満、16000です」

菫「なっ……」

智葉「心だけでなく、牌も射抜かれたか?」ククッ

菫「――いま、そういう気分ではない……少し、混乱もしているからな」

智葉「おっと、それはすまない……黙っておこう」

京太郎(んー……いまの、菫先輩らしくない打ち方だったな……なんていうか、素直に俺に……寄せられてた? ような……)

哩(ほー、これが今年の男子チャンピオン……なるほど、たしかにすごか打ち筋やね。射抜くのが得意な菫から、逆に射抜くとは……)


智葉25000→→21100
哩25000→28900
菫25000→-7000
京太郎25000→57000


菫「…………」

菫(そろそろ、射抜けるか……?)ピクッ

京太郎「…………」タンッ

菫「……っ……」

智葉「…………」タン

哩「んー、なかなか……」トン

菫(……バカな、また――いや、宥のときとは違う。クセは直っているはずだ……なぜ……)タンッ

京太郎「――ロン」

菫「!?」

京太郎「――清老頭、32000です」

智葉「――見事。菫は腑抜けすぎだぞ」

哩「さっき私に上がられておいて――」

智葉「う、うるさいっ」

京太郎「あの、菫先輩……?」

菫「あ、ああ……はい……私の、飛び終了だな」

京太郎「大丈夫ですか?」

菫「ああ。役満なんて上がられたのは、本当に久しぶりでな……しかも、射抜こうとしたはずが、見事に射抜かれた。どうして気づいた?」

京太郎「え――いえ、射抜くとか、そういうのはわかりませんでしたけど……」

菫「……なら、無意識に避けていたというのか? いや、避けたことよりも、その直後に射抜いたことがむしろ――」

智葉「検討したいなら――先に牌譜にしておこうか」

菫「そうだな……私がやっておこう」

京太郎「いえ、俺がやりますよ。こういうときのための、後輩なんですから。こき使ってください」

菫「後輩に負けた先輩に、そんな権利はないだろう?」

智葉「そうだな。京太郎、させてやるといい。君に使われるのが、幸せなようだ」

菫「だ――誰がそんなことをっ……」

哩「菫……そん気持ち、よーくわか――」

菫「お前にわかられたくないっ!」

京太郎「あっははは……はぁ……」


京太郎(先輩が言わんとしていることは、なんとなくわかる……弘世菫という雀士は、相手の待ちを寄せていって、それを射抜く打ち方だったはず……)

京太郎(けど俺は、寄せられてる感覚なんてなかったし……むしろ、先輩のほうが、俺に寄せられてるような捨て方をしてた……)

京太郎(俺の実力、というわけでもなさそうだけど……でもこの感覚、大会のあとからたまに感じるんだよなぁ……うーん、変なクセにならなきゃいいけど)

京太郎トップ

哩「しっかし――本当に強かねぇ、京太郎は」

京太郎「最近は調子がよくて。昨日も、ハオから役満上がれましたし」

智葉「ハオから? それはすごいな……」

菫「好調、というだけでは説明がつかないような気も……うーむ」

智葉「負けた言い訳は見苦しいぞ、菫」

菫「いや……言い訳はしない。そして、京太郎くんが強くなったことは、以前から知っている私にもよくわかるさ」

菫「完敗だよ。これからは、君に教えるより、教えられることのほうが多いだろうな」

京太郎「いえ、とんでもありません……先輩はいつまでも、俺の頼りになる先輩です」

菫「そ、そうか……///」

智葉「珍しい顔だ。その写真、お前の後輩に高く売れそうだな」

菫「やめろ! カメラを向けるな!」

哩「はー、羨ましかねぇ。私もそげん風に、言われてみとうよ」

京太郎「哩さんは、一局目での智葉先輩からの上がり、素晴らしかったと思いますよ」

哩「そ、そうか? ふふ、そりゃ嬉しいったいね……」

智葉「――悪かったな、不甲斐ない、頼りない先輩で」ゴゴゴゴ

京太郎「そ、そういう意味では……」

智葉「あー、もういい! おい、牌譜は取り終わったな? 続きだ、打つぞ!」

菫「やれやれ……まぁ、このままというわけにもいかないしな。役満で飛び終了なんて、言い触らされても困る、リベンジしておこう」

京太郎「しませんって……でも、続きは望むところです」


 ――このあとめちゃくちゃ麻雀した


京太郎「あ~……腕が痛い」

菫「だらしないな」

智葉「普段から麻雀の練習をしていないからだ」

京太郎「すいません……」

哩「お前らが頑丈すぎっだけやろ……大丈夫か? ほら湿布、エアサロンパスもあっとよ」

京太郎「ありがとうございます……優しいですね、哩先輩は」

哩「なっ……そ、そんなこと、なかとやろ? こんくらい、普通の先輩後輩やろ……な、なぁ?」

智葉「私は厳しいものでなぁ、その辺はよくわからんさ」フフフフフ

菫「私も厳しいほうらしい。後輩の現部長がよく嘆いてたよ」フフフフフ

哩「……お、おう」

京太郎「そういう意味じゃないですって! はぁ……ともかく、お疲れ様でした」

智葉「ずいぶん暗くなったな、さっさと帰ろう」

京太郎「みなさん同じマンションでしたっけ?」

哩「というか、寮やね」

京太郎「あ……あれ、寮だったんですか……」

菫「ほう、行ったことがあったかな?」

京太郎「――いえ、その……」

智葉「心配するな。巴の家に押しかけたことは、三人とも知っている」

京太郎「」

菫「……これでも私は、君を紳士的な後輩として、信頼しているつもりだ」

京太郎「お、おっす……」

菫「巴とは清い関係だと信じているぞ」

京太郎「は、はい……」

哩「そいない、送ってもらってなんもされんかったら、シロにならんか?」

智葉「それは逆に、巴に操を立てているとも――」

菫「どちらにせよ巴の勝ちだと……」

京太郎「――ともかく、送っていきます、はい」

京太郎「あっ」

巴「あれっ、京太郎くん?」

京太郎「巴先輩、お疲れ様です」ペッコリン

巴「ど、どうしたの、こんなとこでっ……って――」

巴「みんな揃ってる、ということは……まさか、私だけ――」

京太郎「い、いえ、けして除け者とかではなく……偶然です」

菫「そうだぞ、巴。智葉が京太郎くんを呼びだしてな、たまたま私と哩は時間が合って、部室に行ったらタイミングよく――な」

哩「そういえば、誰にも連絡せんかったと、智葉は……」

智葉「――――すまん、忘れ物をした。先に帰っていてくれ」ソソクサ

巴「……逃げましたね」

菫「えらくベタな逃げ口上だな」

哩「素で忘れとったか、京太郎を独占するつもりやったとか……微妙なとこったい」

京太郎「ま、まあいいじゃないですか……というか、俺もすいませんでした。ご多忙かと思って、連絡もせず……」

巴「あ、ううん! 別に、その……本気で言ってるわけじゃないからね、私も」

菫「巴は冗談が下手だからな……」

哩「うん。なん言うても、真面目に言うてるようにしか見えんと」

巴「」

京太郎「巴さんは、まっすぐなお人柄ですからね。そこが人を惹きつけるんだと思います」

巴「や、やだ、もうっ……///」

京太郎「そして袴もお似合いで」

巴「そんなこと――袴?」

京太郎「はい。お送りするついでに、拝見いたしたく存じ――」

巴「だ、だめーっ! 見せないからっ! っていうか、なんでそう見たがるの、京太郎くんは!」

京太郎「だって似合ってらっしゃるんですもん!」

巴「理由になってないよ!」


菫「……なんの話だと思う?」

哩「京太郎が巴のあられもない姿を見ようとしとう」

菫「だよな……京太郎くんっ、見損なったぞ!」

京太郎「なんですか急に! けど、俺は見損なわれてもっ……巴さんの袴が見たい!」

巴「なんでそこだけ男らしいの! いつもの京太郎くんに戻ってよぉっ……」

菫「だいたいっ、なぜ巴にばかり……その、誰とは言わないが……こう、ほかにもいるだろうっ……」

哩(……明らかに誤解しとるんは確かやけど……ま、ほっといても問題なかね)

~夜

京太郎「結局袴は見せてもらえなかった……がっくし」

京太郎「けど先輩たちとご飯食べられたし、まぁいいか」

京太郎「しかし、菫先輩もそうだったけど、智葉先輩も箸上手で、食べ方も品があるよな……巴さんもどっちかというと上手だし」

京太郎「哩さんは、健啖なタイプだし、作り甲斐あったなぁ……できればまたお邪魔したい……無理かもしれないけど」

京太郎「袴着てくださいって迫りすぎたな、反省しよう……よし、次からはなるべく、言わないように気をつけよう」

京太郎「さて、遅くなったし、いい感じに夜も更けてきたな……」

京太郎「誰かに電話して、寝るとしよう……さて――」

京太郎「そうだ、エイスリン先輩も……臨海のみんなと同じで、留学生なんだよな」

京太郎「大学では、英語で話してくれる人っているんだろうか……」

京太郎「…………」


~ここからだいたい英語

京太郎「――もしもし、京太郎です。エイスリン先輩、いまよろしいですか?」

エイ『キョウ――んっ……ちょ、ちょっと待ってね』


「どうしたの、エイちゃん。誰から?」
「マ、ママカラ! チョット、ソトデ、ハナシテクル!」
「あ、私たちが外そうか?」
「ダ、ダイジョブ、スグオワルカラ!」
「あんまり遠く行かないようにしてねー」
「ワカッテルヨ」


エイ『――ふぅ……お待たせ、京太郎』

京太郎「いえ……それより、大丈夫でした?」

エイ『平気よ。でも、せっかくの京太郎の電話、みんなに聞かれるのは恥ずかしいから、家の外にね』

エイ『あ、近くまで来られるかしら?』

京太郎「そっちまでは離れてますからね……すみません」

エイ『そっか、残念。でも電話くれたのは嬉しいわ。それで、どうしたの』

京太郎「はい。えっと……俺、いま臨海女子にいるじゃないですか」

エイ『そうね。あっ、ダメよ、浮気は!』

京太郎「浮気って……まぁいいです。それより、臨海は留学生が多くてですね、それでエイスリン先輩のことが、妙に気になりまして」

エイ『そういえば、そうだったわね……でもみんな、私より日本語が上手でしょう? それとも、母国語で話してあげてるのかしら』

京太郎「いえ、日本語で大丈夫みたいなので。一応、勉強はしたんですけどね」

エイ『たまには話してあげるといいわよ。私は……とても嬉しかったから。それにいまもね、大学でも、英語で話してくれるひとは、そんなに多くないもの』

京太郎「エイスリン先輩も、日本語上手になってきましたもんね」

エイ『そうかしら?』

京太郎「ええ、もちろん」

エイ『でも京太郎、いまだって英語で話してるじゃない?』

京太郎「それは、エイスリン先輩の英語が、綺麗だからです」

エイ『……そう?』///

京太郎「もちろん、母国語の発音が綺麗っていうのもあるんですけど、英語で話すエイスリン先輩は、まるで歌ってるみたいで、聞き入ってしまうんです」

京太郎「それが聞きたくて、俺も英語で話しちゃってますね」

エイ『ふふ、お世辞でも嬉しいわ。そんな風になんて、言われたことないもの』

エイ「『あ、でも……日本語だと、あまり綺麗じゃないのかしら?』

京太郎「そうですね……日本語だと、可愛いって感じです」

エイ『っっ……もうっ、年上をからかわないのっ』

京太郎「だって本当ですもん。一生懸命言葉を考えて、ゆっくり発音してるのが、たまらなく可愛いですよ」

エイ『……そうなの? 本当に?』

京太郎「はい、本当です」

エイ『嬉しいっ』

京太郎「あと、表情も豊かなのが素敵ですね。ですから、目の前にいらっしゃると、日本語で話したほうが二度楽しめます」

エイ『おもちゃ扱いしないでね?』

京太郎「とんでもない。大事な先輩です、敬意を払ってお話してますよ」

エイ『ならいいけど……』

京太郎「あー、もしかして、失礼とかありましたか?」

エイ『……ううん、そんなことないわ。京太郎はいつも、私やみんなのことを考えてくれてたものね』

エイ『強いて言うなら、そうね……みんなに優しすぎて、私まで優しさが届かないことがあるわ』

京太郎「そんなに優しくしてないと思いますけど……」

エイ『しーてーるーのー!』

エイ『そこを改善して、ここぞというときは、私をしっかり見てちょうだい?』

京太郎「わかりました、目を離しません……絶対に」

エイ『約束よ?』

京太郎「でもいいんですか、エイスリン先輩は?」

エイ『あら、なにが?』

京太郎「その、ほら……女子校女子校と続いて、あんまり男子に見られるのもなぁ、と思いまして」

エイ『』

エイ『っ……ふふっ、本当に……おかしなことを言うわね、京太郎は』

エイ『普通の男の人ならともかく、京太郎に見られてイヤな気持ちになんて、なるわけないでしょう?』

エイ『それどころか……毎日でも顔を合わせて、見つめ合って、触れ合っていたいくらいなのに』

京太郎「そ、それは言い過ぎでは……」カァッ

エイ『言い過ぎ? 逆よ、言い足りないくらい!』

エイ『そのくらい、私は京太郎を大切に思ってるの……両親に紹介しても、恥ずかしくないわ』

京太郎「そうですね――俺も、エイスリン先輩のこと、両親に紹介したいくらいです(友人として)」

エイ『』

エイ『』

エイ『えっ、あ……うっ、えっ、ええぇっっ!?』

京太郎「え……も、もしかして、それは嫌でしたか……?」

エイ『そそ、そんなことないわっ! ちょっと驚いただけでっ、その……』

エイ『大歓迎だから! ドンと来いだから! あ、Don't来いじゃなくて、望むところよってことだからね!』

京太郎「あ、はい……ドンと来いなんて表現、よくご存知でしたね」

エイ『テレビで聞いたの。テレビ、日本語の勉強に役に立つわよね』

京太郎「あはは、そうかもしれません」

エイ『それで、いつ?』

京太郎「えっ」

エイ『ああ、いけない……京太郎はいま東京だものね。帰るにはもうしばらくかかるんだったわ』

京太郎「ああ、はい……そうですけど」

エイ『それじゃあ、そのときを楽しみにしてるからね。バーイ』

京太郎「あ、はい……それでは、失礼します」


京太郎「……んー? なんか誤解されたような、そうでもないような……でも喜んでくれたみたいだし、いいか」


エイ「……夢、じゃないっ……京太郎の、パパとママに……ど、どんな服着ればいいのっ、着物!?」

エイ「と、と、とにかく――そうだわっ……もしもし、ママ!? あのね、実は――」


 この後、誤解を巡って色々あったりなかったりしたそうな――それはまた、別の話。

エイ「うん、そう……結婚!? そ、それは、まだ……ほら、二人とも学生だし――」

~4月第一週、金曜


京太郎「――なるほど、これが戦車道か……実に洗練された、女性の矜持を感じるな」

京太郎「この国際強化選手の、西住さん……どことなく照さんに雰囲気が似てる」

京太郎「お二人とも、それぞれの競技ではスーパールーキーだし、テレビで対談とかしないかな……」

京太郎「今度テレビの人に会ったら、聞いてみよう」


京太郎「そういえば、臨海ではあんまりモブ子に会わないな……」

モブ子「その理由は!」

京太郎「!? 名前を呼んだ途端にだと……」

モブ子「いや、ちゃんと混じってるんだよ? ほかの学生に……ただ、その……」

モブ子「留学生の子って、近寄りがたくって……英語とかできないし」

京太郎「お前の英語力に期待はしてないが、留学生の日本語力に期待できるから大丈夫だぞ」

モブ子「マジでか!? やっふぉー、さっそく留学生と絡んで、くんずほぐれつしてやんよ! まずはハオちゃんからだ!」

京太郎「……そういえばお前、クラスは……」

モブ子「ハオちゃんと一緒!」

京太郎「俺と別やん……」

モブ子「困ったことがあれば力になるから!」

京太郎「お前こそ、留学生多い麻雀部で困ってそうだな」

モブ子「ほんと無理だよ、あそこ層厚すぎ。私、三軍の降格ラインだもん」

京太郎「さすが臨海……四軍まであるのか」

モブ子「五軍までだって」

京太郎「oh……」

ネリー「あーっ!」

京太郎「おう?」

ネリー「キョウタローだ、おはよー!」ピョンッ

京太郎「おっと! 危ないぞ、人に急に飛びつくのは」

ネリー「サトハは大丈夫だったよ?」

京太郎「あの人、凛々しいからなぁ……」

ネリー「じゃあキョウタローも凛々しいね!」

京太郎「えっ」

ネリー「抱きついても平気だったもん」

京太郎「まぁ慣れてるからな、こういうことしてくるやつもいたし」

ネリー「…………誰?」

京太郎「(急に雰囲気がっ!?) ああ、えっと……決勝で試合したことあるだろ、阿知賀女子の高鴨穏乃ってやつだ」

ネリー「シズノ……ちょっと、覚えてる……」

京太郎「同じくらいちっこくて、軽いからなぁ、二人とも……ほら、こんな感じ」ヒョイッ タカイタカーイ

ネリー「!? あ、あっ、あぶないっ!」

京太郎「お? あ、そうか……穏乃は頭に飛びついてくるからなぁ。あいつ、ジャンプ力すげーんだよ」

京太郎「その点、ネリーは飛びついても腰とかだし、穏乃よりは落ち着いてるかな」

ネリー「ほんとっ? 大人っぽい? 女らしいっ?」

京太郎「えっ」

ネリー「……・……だめ?」

京太郎「……い、いやー、おとな……っぽい、かな? うん……まぁ、多少は……そう、見えなくも……」

ネリー「だめかぁ……」ションボリ

京太郎「ね、ネリーは女の子らしいなぁ! 笑顔も可愛いし、素敵な女性になるぞ!」

ネリー「やったねっ!」

京太郎「……ふぅ。この年頃の女の子は、微妙だなぁ……対応が難しいよ」


~金曜、昼


京太郎「年頃の娘さんを持つオヤジって、大変なんだなぁ……愛宕のオヤジさんは、すげーよ」


「……いまの発言、聞きまして?」
「年頃の、娘……オヤジ……まさか、京太郎くんっ……」
「……一児の、パパ?」
「なんてことでしょう!」
「むしろありかも」
「ありだね」
「どうしたら、お義母さまと呼んでいただけるかしら……」


京太郎「……妙な噂が広がる、ひとり言も自重しておこう」

京太郎「どっか行くかな……どうしよう」

京太郎「はぁー、やっぱ春は日差しが気持ちいい……そして屋上、いい風が吹く……」

京太郎「ちょっと寝るかなー……ん?」

モーイッポフーミ……ピッ

京太郎「もしもし、お疲れ様です、京太郎です」

智葉『ああ、お疲れ……電話、出るの早かったな』

京太郎「いえ、なんてことはないです。師匠なんて、電話鳴る前に出てますし」

智葉(それは電話に出られないんじゃないか……?)

京太郎「もしもし? 智葉先輩?」

智葉『ああ、すまない、それでだ……いま、少し話しても大丈夫か?』

京太郎「ええ、まぁ……なにかありましたか?」

智葉『ああ……そうだな、あったといえばあったし、なかったといえばなかった……』

智葉『というか、前々からあったというべきか……』

京太郎「――わかりました」

智葉『なに?』

京太郎「用事がある、と仮定してお聞きします。何時ごろでしょうか」

智葉『……すまないな』

京太郎「いえ、大丈夫です――それで、俺はどうすれば?」

智葉『できれば、いますぐ頼みたいところだが……さすがに急だな。今日のところは、君の腕を見るだけにしておこう』

智葉『夕方、少し早めに部活を上がって、こっちに来てほしい。大学か、寮の前で――寮のほうが近いか。そっちに頼む』

京太郎「腕……麻雀ですか?」

智葉『いや――』

智葉『――――和食の腕だ』


~金曜、放課後

京太郎「ふーむ、なんだったんだろう……」

ハオ「おや、どうかしましたか、京太郎?」

京太郎「ハオ……いや、なんでもないよ」

ハオ「そうですか? 少し悩んでいるように見えますが……よかったら、お話だけでも」

京太郎「大丈夫だよ。俺のことを気にさせて練習が疎かになったら、怒られちまうしな」

ハオ「私は気にしません……そのくらいでナマクラになる腕なら、磨いても勝手に錆びるでしょうし」

京太郎「俺が気にすんの。ほら、そろそろ始まるぞ」

ハオ「……わかりました……でも、大事になる前に相談してくださいね?」

京太郎「そんな重いことじゃないから、大丈夫だって」

ハオ「では……」

京太郎「あ――ハオ!」

ハオ「はい?」

京太郎「――気にしてくれてありがとな、嬉しかったよ」

ハオ「……はいっ!」

ハオ「――といったことがありました」

明華「あら、自慢ですか、ハオ?」

ハオ「違いますよ……今日の私は絶好調だという、宣言です」

明華「なら私は……そのハオに打ち勝ち、見事、京太郎の相談に乗ってみせましょうか」ニコッ

ハオ「できるものなら」フフフフフ

明華「いいのですか? たやすく果たしてしまいますよ?」ウフフフフ

ネリー「二人が怖いよ……」

京太郎「仲良く談笑してるように見えるんだが」

ネリー「京太郎の目は節穴だね」

京太郎「……辛辣な単語を知ってるね、ネリーくん」

ネリー「サトハがよく使ってたよっ」

京太郎「智葉先輩、そういうの使わないようにしましょうよ……」

京太郎「――うんっ、決めた!」

アレクサンドラ「今日の献立?」

京太郎「あ、すいません。今日は大学のほうに」

アレクサンドラ「……昨日も行ったわよね?」

京太郎「あ……はい、でも今日は、ほんとに用事が……」

アレクサンドラ「つまり昨日は無理やり、私を避けるために行ったと」

京太郎「」

京太郎「……電話でも申し上げましたが、本当に申し訳ございませんで――」

アレクサンドラ「ジョークだから。いいわよ、行ってきても。ただ、一年生が入ってきたら、こうはいかないからね」

京太郎「了解です! ありがとうございますっ、監督! 身も心もお美しい!」

アレクサンドラ「……お世辞ヘタだって、よく言われない?」

京太郎「本音を言ったらお世辞と取られることはよくありますが」

アレクサンドラ「ふーん……」

アレクサンドラ「まぁ――その、気をつけて行ってきなさいね。なにかあったら電話していいから」

京太郎「はい、では!」


アレクサンドラ「……本音、か……いやいや、だめよ……あれは高校生、しかも教え子。日本の法律じゃアウト、オーケー?」

ハオ「オーケーです」

明華「通報しました」


京太郎「――っと、そうだ……誰かに一報入れておこう。昨日聞いた予定では、たしかいまの時間、空いてるのは――」

京太郎「もしもし――智葉先輩ですか?」

智葉『名を名乗れ、痴れ者め』

京太郎「すいませんっ、須賀です!」

智葉『わかってる、冗談だ……どうした? 約束までは、時間があるぞ』

京太郎「いえ、実は……気になっちゃったんで、今日これから、そっちにお伺いしようと思いまして」

智葉『…………馬鹿者。夕方だと言ったのは、先方にそう話を通したからだ。こんな早く来られても、連れて行けない』

京太郎「そ、それはわかってますけど……その、どこに行くかとか、そういう話を……」

智葉『――気持ちは嬉しいが、これは私の個人的な用事……頼み事だ』

智葉『その説明をするのは義務だと思うが、君の時間を使って、それを説明するのは申し訳ない』

智葉『だから、移動中にでも話そうと思っていたんだ。いいから、練習を終えてから来るといい』

京太郎「……すいません、そんな風に考えておられるとは、思ってもいなくて……」

智葉『いや、京太郎が謝ることじゃない。こちらの無理を聞いてもらい、気を遣ってくれたんだ。埋め合わせはする』

京太郎「……いえ、そうじゃなくて……もう――」

智葉『………………まさか』

京太郎「そろそろ、大学に着くかな、なんて……」

智葉『――ふっ……ふふっ、ふふふふ……』

京太郎「は、ははっ、はははは……」

智葉『――私がおかしくて笑ってると思うか?』

京太郎「すいませんでしたぁっ!」

智葉『……なぜ謝る?』

京太郎「い、いえ、アポもなしに押しかけてしまったので……すいません、本当に」

智葉『ふふ、勘違いするな……おかしくて笑っていたんだよ、私は』

智葉『なるほどな、これが須賀京太郎か……たしかに、プロまで騒ぐわけだよ』

京太郎「はい?」

智葉『なんでもない……いいぞ、来ても構わない。部室も開けてある、練習して時間まで潰そう』

京太郎「ありがとうございます!」

京太郎「さて――失礼しまーす!」ガチャッ

京太郎「失礼しまーす! 須賀京太郎、入りま――」

哩「は?」

菫「えっ」

智葉「………………ぷっ」

京太郎「………………」

哩「」

菫「お、おい……」

智葉「……ぷっ、ふっ……くくっ……」

京太郎「あ、の……えっ、あれ……お、俺、そろそろ着くっていう、連絡をっ……」

菫「なっ……どういうことだ、智葉!」

智葉「おや、言わなかったか? まぁ、せっかく来てもらうのだから、サプライズに幸運があってもいいかと思ってな」

哩「」

智葉「もう少ししたら、私が着替えようと思っていたんだが……一応、止めるか止めまいか、迷いはしたんだぞ?」

京太郎「そんなサプライズはいいですから!」

哩「い――」

哩「いいから出ていかんね! いつまでそんなやらしか目ぇで見とったい!」

京太郎「あ――」

京太郎「すっ……すいませんでしたぁぁっっ!!」ガチャッバタンッ


京太郎「ぬああぁぁぁっっ……しまった、予想外すぎるけど、冷静に考えればノックしろよ……」

京太郎「こんなミス、シロさんの部屋でシャワー上がりに遭遇していらいだろ……ああぁぁぁぁ……」


哩「さ~と~は~っ!」

智葉「――すまん」

菫「謝るならするな!」

智葉「本当にその通りだ……いや、だがノックするだろうから、そのときに教えればいいかと、思った節も――」

哩「ならお前が着替えとりゃーよかったんやなかっ!?」

智葉「万が一ということもあるしな、うん……」

哩「こっっ……このっ、あ、あぁぁぁ……女しかおらんち思うて、完璧油断しとったぁ……」

菫「上下とも下着、バッチリ見られたな」

智葉「尻を向けて、そのあと振り向いて前も見せてたしな」

哩「言うなっち言うとるやろ!」

菫「まぁ裸でないだけマシだろう」

哩「嫁入り前の娘が裸見られたら、嫁に行くしかなかろうもん!」

菫「……そ、そうだな……うむ……」/////

智葉「……菫、お前まさか……」

菫「違うぞ! あれは事故だ!」

哩「……………………あの、えっと……し、下着程度で騒いで、悪かったばい……」

菫「なぜ謝るっ!?」

京太郎(……それにしても、哩さんは南の国出身なのに、意外と肌が白くて綺麗だったな……)

京太郎(しかも下着は白っ、上下デザインも揃ってた……なんていうか、女としての嗜みを意識しているという感じ……)

京太郎(意外と、大和撫子タイプなのかもしれない……お華とかお茶とか、書道とか戦車とか似合いそうだ……)

哩「――なに黙って見てる」

京太郎「な、なんでもございません……本当に、すみませんでした」

哩「……次から気ぃつけぇ」

京太郎「はい……ノックします」

智葉「それはともかく――」

哩「大事件をあっさり流すんはどうやろ!」

智葉「――菫の裸を見たのか?」

京太郎「……………………見てないです」

菫「だから事故なんだ、事故で女湯が男湯で……それに、私だけじゃないんだ……阿知賀の――」

京太郎「だあぁぁぁっっっ! い、いい、いいから練習! ねっ? インカレの学内予選も近いみたいですしっ、練習しましょう!」

智葉「そうだな、そうしようか」

哩(くっそぉぉぉっ……一人だけなんのダメージも負うとらん……)

菫(潰すっ、今回は智葉狙いだ!)

智葉「あぁ――せっかくだ、脱衣麻雀にでもしようか? 私たちも剥かれれば、哩の気持ちも晴れるんじゃないか?」

京太郎(これ以上煽らないでぇぇっ!)

哩「――――――飛んだら脱ぎ、それだけや」

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最終更新:2026年01月17日 13:34