京太郎「えっ」
菫「!?」
哩「そろそろ、そこの性悪にも灸ばすえたらんち、思っとったとこやけん……」
智葉「下着か? 全部か?」
哩「そこは負けたもんへの恩情ったい……自分で決めてよかよ」
智葉「なるほど、負けたときの保険か……」
哩「ほえ面かかせたるっ……」
京太郎「あの、菫先輩……」
菫「……智葉を飛ばすか、誰も飛ばさないか、だ……できるな?」
京太郎「ど、努力しますっ……」
京太郎「――え、えっと……すいませんっ、東風戦でお願いできませんかっ!?」
智葉「ほう、誰かを飛ばすなど東場だけで十分ということか」
京太郎「じゃなくて! 短期での瞬発力つけたいので、ってことです」
哩「……まぁ、私は別に……」
菫「私も異存はない」
智葉「ならそうしよう」
京太郎「ありがとうございます……では、よろしくお願いします」
京太郎(よし……これで誰かを飛ばすってことにはならなそうだな、うん……)
京太郎「いざとなれば、俺が脱ごう……」キリッ
智葉「ほう――そういう趣味があったのか。なら、君を狙うとしようかな」
京太郎「趣味じゃないですから!」
哩「なんね、言うてくれたら、そういうん好きな子紹介――」
京太郎「だから違うって!」
菫「やめないか、京太郎くんはそんなことを好む人間じゃない」
京太郎「菫先輩……」
菫「生粋のドSなんだぞ、彼は……脱ぐより、脱がせるほうが好きなはずだ……」ゾクッ
京太郎「」
京太郎(だめだこの人たち……早くなんとかしないと……)
智葉25000→
哩25000→
菫25000→1000
京太郎25000→49000
京太郎「――ロン、24000です」
菫「」
智葉「」
哩「」
京太郎「…………?」
菫「は……は、いっ……っっ……」プルプルッ ジワァァッ……
京太郎「――あっ」
智葉「……いや、恐れ入った……」
哩「こ、こいがほんまもんの、Sッ……はぁぁっ、たまらんとぉ……」
京太郎「違うんですってぇぇぇっっっ!」
菫「あうぅっ……あ、あと、1000点っ……うっ、うぁぁぁぁ……」
京太郎(ま、まずいっ……なんとか、ここで踏み止まらないとっ……)
智葉25000→49000 ○トップ
哩25000→
菫25000→1000→-23000
京太郎25000→49000 ○二位
智葉25000→22000
哩25000→24000
菫25000→1000→2000
京太郎25000→49000→50000
智葉「……ちっ、入らないか」
菫「で、でんばいぃ……生き残ったぁ……」グスッ
哩「本気で泣きすぎやろ……」
京太郎「大丈夫ですよ、俺がなんとか――」
智葉「なるほど、介錯は自分の手で、ということか」
京太郎「そうじゃなくて!」
智葉「いや……それなら、ノーテンにして終わらせればよかっただろ」
京太郎「…………あっ」
智葉「ただ脱がしたいだけか、麻雀に夢中で忘れていたのか……前者なら少し引くぞ」
京太郎「ご、誤解ですからっ」
菫「こんな状況でなんてっ、やだぁぁ……」ヒッグ エグッ
哩「あーあー、もー泣かんね。ほれ、ハンカチ」
智葉25000→22000→18000
哩25000→24000→20000
菫25000→1000→2000→-2000
京太郎25000→49000→50000→62000
京太郎「――ツモ、4000オール……じゃねーよ! しまった!」
智葉「……おめでとう」
哩「くっ、智葉を脱がす予定が……」
菫「」グスッ、ヒグッ ガタッ ヌギッ
京太郎「い、いいですから! 脱がなくて!」
菫「……だめだ、それでは……私が約束一つ守れない女だと、京太郎くんに思われてしまうっ……」
京太郎「思いませんから! そもそも、これは哩さんと智葉先輩の賭けでしたし!」
智葉「――私が脱ぐことになったら、止めなかったというわけか」
哩「……まぁ、私はもう見られとるしな。一回も二回も変わらんけん……」
京太郎「止めましたよ!」
菫「や、やっぱり脱ぐ! ケジメはつけさせてくれ!」ヌギッ
京太郎「なんでそうなるんですか!」
哩「やれやれ、収集つかんとよ、これじゃ」
智葉「仕方ない、折衷案を提示してやるか……」
智葉「菫――」
菫「止めるな智葉! 私のプライドの問題だ!」
智葉「さすがに大学内で全裸など、痴女めいたことはさせたくない……ということで」
智葉「下着だけ脱げ、そのまま」
菫「………………は?」
京太郎「」
哩「そっちのが鬼畜やろ……」
智葉「肌を晒さないで済むだけ、マシだろう? どうしても全裸を見せたいなら止めん。級友になんと触れ回るか、考えるところだが」
菫「っ……わ、かった……」
京太郎「ちょっと!? ほんとにやめましょうって!」
哩「上がった京太郎が言うても……説得力なかよ」
京太郎「」ソウデシタ
菫「……あ、あまりこっちを見ないでくれ……」スルッ スルスル
京太郎「ちょぉ――っっ!? で、出てますからっ、終わったら呼んでください! あと、脱ぐのやめてもいいですからねっ!」ガタッ ガチャッ バタンッ
「なかなか艶めかしく脱ぐな、菫」
「お前らも見るな!」
「女同士、気にせんでよかよ」
「私が気にするっ! くっ、こんなっ……お前らに見せるくらいなら、まだ――」
「まだ?」
「……いや、なんでもない……」
「はぁ~ん……」
「なにも言ってないだろ!」
「いいから、脱ぐなら早く脱げ」
「脱いだ下着はどうすると?」
「……タオルにでも包んでおく」
「そのタオル、間違って京太郎に貸さないようにな」
「するか!」
「ほれ、次はブラやろ」
「……服を脱がないほうが難易度が高いんだが」
「仕方ないな……」
「……っ……はぁ……布一枚ないだけで、こんなに頼りないとは……」
「長いスカートでよかったち思うとき」
「上は大変だな、そんな薄いブラウスと肌着一枚で……汗でもかいたら、間違いなく透けるぞ」
「た、タオルで隠してはだめか?」
「それは下着を包んでおくんだろう?」
「あ……あっ、あぁぁぁ……やだぁぁ……京太郎くんに、なんて思われるかっ……」グスッ
「全裸よりマシだろ……」
「まぁ、肌着で最低限はカバーできるだろ……先端とかな」
「なんの慰めになる!」
京太郎「……やべぇ、帰りたい……けど、智葉先輩との約束があるし……」
京太郎「……っていうか、ちょっと見たい……すいません、菫先輩……」シャキーン
麻雀結果、京太郎トップ
??「――もう、いいぞ……入ってくれ」
京太郎「……し、失礼しまーす……」
菫「なっ……ま、まだだ! こら智葉!」タプーン
京太郎「!?」
菫「っっ……ぁ、やっ……み、見る、なっ……」ガバッ
京太郎「すいませんっ!」グルンッ
菫「い、いや……いい、君になら……」
智葉「――だそうだ、よかったな京太郎」
京太郎「……智葉先輩、そういうイタズラは、さすがに……」
智葉「私なりの、菫への罪滅ぼしだったんだが」
菫「なんのだっ……」
智葉「……見ての通り、あいつはデカいもちが好きだ。それでうまいこと、籠絡してやればいいだろう」ボソッ
菫「~~~~~っっ!? そ、そっ、そんなはしたないことはしない!」カァァッ
哩「……その格好のどこが、はしたなくないと……」
京太郎「……菫先輩、着られましたか?」
菫「……もういいぞ、本当に着たからな」フゥ
京太郎「すいませんでした、本当に」フカブカー
菫「いや……それだけ京太郎くんが強くなったということだ。私も嬉しいよ、先輩として」
智葉「そもそもの原因は、哩が妙なことを言いだしたせいだしな」
哩「その原因の原因、忘れたち言いよるんか……」
智葉「言われてるぞ、京太郎」
京太郎「すいません、急に大学に来てしまって……一人じゃなく、全員に連絡しておくべきでした……本当にすみません」
哩「きょ、京太郎が悪いんやなか!」
智葉「――まぁ冗談はさておき。私もさすがに反省している……明日、昼食でも奢らせてもらおう」
菫「ん……まぁ、反省しているなら許そう……一度だけならな」
哩「二度目はなかよ」
智葉「肝に銘じておく」
京太郎「めでたし……とは言いませんが、これで落着ですね」
京太郎「さて――約束の時間までは、まだありますね。どうしましょうか……」
智葉「そうだな、もう一局打つか――いや、誰か来たようだな」
コンコンッ
菫「……空いてます、入ってください」
哩「そん格好で、よう入れる気になるばい」
菫「っっ! しまったっ……」
智葉「忘れてたのか……」
哩「普段からノー下着やと?」
菫「なわけがあるか!」
京太郎(……そういえば、いま菫先輩は、上下とも……やばい、これはやばい……)
ガチャッ
ハオ「失礼します」
智葉「……ハオ?」
菫「君は臨海の……」
哩「銀メダリストか」
ハオ「サトハ、お久しぶりです。それに……白糸台のスミレ、大会ではどうも」
哩「私は初めてやね……」
ハオ「存じています、新道寺のマイル」
智葉「準決勝卓まで出た連中は、一通りチェックしたからな」
哩「そりゃ光栄ったい」
京太郎「で――ハオはなにしにきたんだ?」
智葉「そうだぞ、連絡もなしに」
ハオ「それはこちらのセリフです……京太郎! 大学に行くときは、私も連れて行ってくれると、言ったではないですか!」
菫「…………ほう」
智葉「……いや、遊んでないで練習しろ……」
哩「留学生からもモテとうね……まぁしゃーなか。この男ぶりやけん……」
京太郎「あー、そういえば……すまん、今日は練習とは別件だったんで、ついな」
智葉「――まぁ、連れてこなくて幸いだったな」
哩「……下手しとったら、こん留学生ちゃんが脱がされとったわけか……」
ハオ「は?」
菫「そ、そんなことより! 別件で訪ねてきたとは?」
京太郎「いえ、ちょっと智葉先輩に、個人的な用事がありまして」
智葉「おいっ……」
菫「なっ!?」
哩「……そいは、予想外やったと……」
ハオ「……どういうことですか、サトハ」
京太郎「あれ?」
智葉「はぁ……お前というやつは、本当に浅慮というか……」
智葉「――夕方に、少し頼みたいことがあるだけだ。お前らが邪推するようなことはない」
ハオ「今後もそうならないと、言い切れますか?」
菫「うむ。言いたくはないが、気のないフリをして籠絡された女子は、数限りないぞ」
京太郎「えっ」
哩「しかも本人気づいとらんし……罪な男ったい」
京太郎「……冗談ですよね?」
菫「ともかく――後輩に無理やり、なにかを頼むのはどうかと思うが」
京太郎「大丈夫ですよ、無理やりじゃありませんから」
菫「君はなんにでもそう言うだろう……そういうところが、心配なんだ……もっと自分を大事にしてくれ」
智葉「ひどい言われようだ……」
哩「で、なに頼もうとしとったと?」
智葉「――家のことで少しな」
ハオ「家の?」
菫「……ああ、なるほどな」
哩「辻垣内組の……」
智葉「次にそれを言ったら吹き飛ばすぞ」
哩「じょ、冗談やけん……」
京太郎「えっ……さ、智葉先輩の家の用事で、しかも組って……」
智葉「哩の性質の悪い冗談だ。うちはまっとうな、堅気の商売をしている」
京太郎(筋モンの常套句だぁ――っっ!)
菫「……横から口を挟むが、安心してほしい。智葉の家は、まっとうな割烹だよ」
京太郎「ああ、そうなんですか、おどろ――割烹?」
智葉「言っただろう、和食の腕を借りたいと」
京太郎「そういえば……」
ハオ「そう言って家に連れ込んで、両親に紹介するつもりでは……」
智葉「どこぞのアラフォーと違う。そんな真似はしないと誓おう」
哩「多方面にケンカ売るんは、どうやろ……」
智葉「ただ、こちらとしてもある程度のレベルは求めるし、逆にこちらの条件が、君の承諾を得られないかもしれない」
智葉「それを決めるために、今日は時間を取ってもらった」
菫「要するに――夜行動の3が埋まるということだな」
智葉「そういうわけで、夕方だけ時間をもらう。それまでは自由だ。ハオと打つなら打てばいいし、簡単な調理器具ならあるから、自由に給湯を使えばいい」
ハオ「打ちましょう、京太郎!」
哩「そういうたら、京太郎は料理もお菓子も得意やったと?」
菫「絶品だぞ」
京太郎「褒めすぎですって。嗜み程度です」
京太郎「うーん、とはいえ……さっき打ったばっかりだし、菫先輩も……両手塞がってて、その……目のやり場にも困るしな……」
京太郎「ハオには悪いけど、麻雀以外でなんとか済ませてもらおうか……」
ハオ「…………っっ」キラキラ
京太郎(……こ、この期待に満ちた視線……裏切れないっ……)
京太郎「……じゃあ、打つか?」
ハオ「はいっ!」パァァッ
京太郎(やべぇ、かわいい……)
智葉「メンツはどうする?」
哩「菫、隠しながら打てよる?」
菫「……と、対面でなければ……」
ハオ「そういえば、なぜずっと胸元を隠すように?」
菫「ふ、深い意味はない!」カァッ
ハオ「そうですか」
京太郎「ハオは素直でいい子だな」
ハオ「そ、そうですか?」////
智葉「うちの後輩を誑かすな」
京太郎「誤解!」
哩「どーでもええけん、さっさとメンツ決めんね」
哩「なら、一人は私が入る」
ハオ「もう一人、どちらでもどうぞ。できればスミレに、リベンジを果たしたいところですが」
菫「あ、ああ、では――」
智葉「無理しなくてもいい。私が入る」
菫「いや、別に無理など……」
ガチャッ
巴「こんにちはー……って、京太郎くん?」
京太郎「あ、巴さん。お疲れさまです」ジー
巴「袴なんて学校に穿いてこないから!」
京太郎「そうですか……」シュン
ハオ「そちらは?」
智葉「永水女子の狩宿巴だ。準決勝には残らなかったが、シード校は全員チェックしたはずだぞ」
ハオ「ああ……失礼、服装が違うので」
京太郎「ほらやっぱり!」ガタッ
巴「たぶん、巫女装束のことを言ってるんだと思うよ?」
京太郎「袴だって似たようなものじゃ――」
巴「全然違いますっ!」クワッ
――このあと滅茶苦茶、巫女装束と袴の違いを力説された
巴「――ふぅ……どうかな、私たちがあの服で出場していた理由、わかったかな?」
京太郎「アッハイ」
菫「巴にあんな一面があったとは……」
智葉「やれやれ、京太郎のせいでとんだ時間を食ったな……さて、打つとしようか」
京太郎「すいません……って、俺のせいか……?」
巴「あ、麻雀するの? それなら、私が入りたいな」
哩「そういえば、巴はまだ京太郎と麻雀しとらんかった?」
巴「はい、清澄が合宿した、先月の連休以来のはずですけど」
智葉「――なら入るといい。菫も、構わないな?」
菫「……ああ、大丈夫だ」(さりげなく胸を隠す)
巴「……ちょっとごめんね……あの、菫さん……」ヒソッ
菫「っっ! な、なんだ?」
巴「あの、寒かったこれ着てくれていいよ?」
巴「もしかして、なにかで濡れちゃいましたか? さすがに、男子高校生の前で、ノーブラは……菫さん、おっきいですし」ヒソヒソ
菫「~~~~~っっっ//// す、すまん、恩に着る……っ」バサッ
京太郎「あぁ……」
哩「露骨にガッカリな顔するんやなか」
京太郎「し、してないですっ」キリッ
ハオ「……ああ、なるほど。罰ゲームかなにかだったのですね、私はてっきり、そういう習慣なのかと」
哩「ほう、気づいてたか……」
ハオ「そのくらいの観察力と注意力はありますよ」
哩「それは、楽しみったい……」
京太郎(なにが楽しみなんだろう……)
巴「ごめんごめん、お待たせっ。さ、打とうか。ハオちゃんも、よろしくね」
ハオ「ええ、よろしく。たしかトモエも次鋒で、巡り合わせによっては当たっていましたからね……楽しみです」
巴「みんなほど上手じゃないから、あまり期待しないでよ?」
京太郎「それじゃ、よろしくお願いします」
智葉「巴はいい女だな、女性に対する気遣いが、まさに淑女だ」
菫「私を気遣い、かつ京太郎くんに聞こえないよう、注意してくれたしな……」
巴「勝ったらなにしてもらおっかな~」
京太郎「えっ、これそういうルールなんですか!?」
巴「え? 私たち四人……と、虜先輩は、だいたいそうやって打ってるけど?」
京太郎「……哩さん」
哩「だらだら打ってても、張り合いなかとよ。人生必要なんは、刺激と潤いたい」
京太郎「じゃあ、さっきのあれも……」
哩「ああいうんは、特別やろ」
京太郎「そうですか……」ガッカリ
京太郎「いや、それなら――俺が勝ったら、今度は袴で学校来てください!」
巴「こだわるね……まぁいいけど」
智葉「……いいのか」
菫「意外だが……いや、好意ある相手に服装をリクエストされれば、嬉しいものか……」
京太郎「やったぜ。」
哩「なら私は……」
ハオ「ふむ……では私に勝てたら、菫と同じ格好をしてあげます」
京太郎「!?」
ハオ「お楽しみに……まぁ、勝てれば、ですが」
京太郎「――面白い、やる気になったよ」ゴッ
ハオ「そう来なくては……」
哩「なんち不純な……まぁ、私は今回は見合わせとくか。さっきので、色々考えないかん……」
巴「え、また強くなってるの、京太郎くん……うーん、ちょっと軽率だったかな」
京太郎「あの、一応……男子個人のチャンプなんですけど、俺……」
ハオ25000→17000
巴25000→17000
哩25000→17000
京太郎25000→49000
京太郎(あれ……なんだろ、巴先輩と打つと、すげー楽に打てる……)
京太郎「もしかして、勝利の女神……」ハッ
ハオ「そ、そう言われるとさすがに照れますね……////」
京太郎(すまん、ハオじゃない!)
哩「女神……ふふ、悪くなか……」
京太郎(哩さんも違います!)
巴「またそうやって、女の子を口説くんだから……ほんと、監視役が必要だよね」
京太郎(なんで本人が勘違いしないのっ!?)
智葉「お前じゃない、座ってろ」
菫「まだなにも言ってないだろ!?」
京太郎「――ツモです、8000オール」
哩「うー、これはいかん……手ぇつけられんったい」
ハオ「……あの、さっきの賭けですが、やはりなかったことに――」
京太郎「約束だろ?」ゴッ
巴「どんな約束したの?」
京太郎「…………あっ! そ、それより、巴さんも! 袴着る約束、忘れないでくださいよ!」
巴「いいけど……京太郎くんが来る日に穿いてくる、とは限らないよ?」
京太郎「」
巴「もちろん、穿いてきたよって連絡もしないからね?」
京太郎「のおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ハオ25000→13000
巴25000→19000
哩25000→19000
京太郎25000→49000
ハオ25000→13000→12500
巴25000→19000→18000
哩25000→19000→18500
京太郎25000→49000→51000
京太郎「ツモ、500、1000です」
哩「くぁっ! あーもうっ、いまのは上がれよったはずやのにっ……」
京太郎「す、すいませんっ」
哩「や、謝らんでよかよ。ちぃと声ばおっきかったか、すまん」
ハオ「しかし……トップ確定するや、早上がりで駆けていきますね。より多く稼ごうとする、団体戦とは違いますか」
巴「こういうと気を悪くするかもしれないけど、京太郎くんは個人戦のスペシャリストになるんだよね、団体に出ないから……」
京太郎「というよりも、いましか見えてないって感じなんですよね」
ハオ「では、約束のことも忘れたり……」
京太郎「それはない」キッパリ
ハオ「……京太郎の、スケベ……」ボソッ
京太郎「け、健康的なだけだ!」
ハオ25000→13000→14500
巴25000→19000→17500
哩25000→19000→17500
京太郎25000→49000→50500
ハオ25000→13000→14500
巴25000→19000→17500→12300
哩25000→19000→17500
京太郎25000→49000→50500→55700
京太郎「それです、巴先輩。5200」
巴「はい……はぁー、ほんと強くなったね。ちょっと寂しいなぁ」
京太郎「……よし、このまま……このままいけば、袴だっ……」ハァハァ
巴「……そういうとこも、余計に強くなってるね。ちょっと怖いよ」
ハオ「……賭けは、最下位とトップでのみ成立ですよね?」
京太郎「うそぉっ!?」
哩「いや、そういうもんやろ」
京太郎「なん……だと……ぐおぉぉっ、袴か、ノーブラか……迷うっ……」
ハオ(このままなんとか逃げ切るっ……)
巴「私は袴くらいいいけど……負けるのはやだしなぁ、頑張ろうかな」
京太郎「――っっ! そうだ、二人が飛んだら、二人ともってことでどうですか!」
巴「……その場合、飛ばなかったら不成立、でいいよね?」
京太郎「そうきたかっ! ぬわぁぁっ……ど、どうすれば……」
哩「ちゅーか、この状態で二人飛ばんとやろ……」
ハオ「……まぁ、連荘もありますし。役満ツモなら二人トビです」
巴「はぁ……それなら、連荘はなし。役満ツモなら、二人成立ってことでいいよ」
ハオ「トモエ、勝手に!」
京太郎「聞きましたよ! 絶対ですからね!」
巴「はいはい、頑張ってね」
ハオ「なんてことをっ……」ヒソヒソ
巴「大丈夫だって。そうそう役満なんて出ないよ」
ハオ25000→13000→14500
巴25000→19000→17500
哩25000→19000→17500
京太郎25000→49000→50500
京太郎「うーん、無理だったか……」
ハオ「テンパイ……ノーテン罰符は、とっくに学習しています」
哩「はぁ、テンパイ崩してようやく流局……けど、上がらせてよかったなぁ、この上がりやと」
巴「結果論ですよ。もしかしたら、もっと高かったかもしれませんし」
京太郎「とにかく、このまま逃げ切るか……それとも、攻めたほうがうまくいくか?」
ハオ「深く悩むと失敗しますよ。ときには勢いが大事です」
京太郎「……そうだなっ、そうするか!」
智葉「……口車に箱乗りしてるぞ」
菫「素直だからな、京太郎くんは……これで調子が崩れると面白いところだが」
ハオ25000→13000→14500→14000
巴25000→19000→17500→12300→14300
哩25000→19000→17500→16500
京太郎25000→49000→50500→55700→55200
巴「おっ……ツモ、500、1000」
哩「そんな安手で大丈夫か?」
巴「大丈夫です、問題ありません」
ハオ「最終局勝負ですか……ですが、点差は絶望的ですよ」
巴「まぁ、上がられるよりはマシだったはず……と、思いたいかな」
京太郎「よしっ……よしっ……このまま、上がれば袴とノーブラっ……」
ハオ「なんか怖いことになってますし……」
巴「うーん、永水にいたときは、もっと抑えてる感じだったのに……」
哩「賭けの内容が、相当魅力的みたいやね」
ハオ「……賭けは、最下位とトップでのみ成立ですよね?」
京太郎「うそぉっ!?」
哩「いや、そういうもんやろ」
京太郎「なん……だと……ぐおぉぉっ、袴か、ノーブラか……迷うっ……」
ハオ(安手っ、とにかく安手でいいから上がるっ……)
巴「私は袴くらいいいけど……負けるのはやだしなぁ、頑張ろうかな」
京太郎「――っっ! そうだ、二人が飛んだら、二人ともってことでどうですか!」
巴「……その場合、飛ばなかったら不成立、でいいよね?」
京太郎「そうきたかっ! ぬわぁぁっ……ど、どうすれば……」
哩「ちゅーか、この状態で二人飛ばんとやろ……」
ハオ「……まぁ、連荘もありますし。役満ツモなら二人トビです」
巴「はぁ……それなら、連荘はなし。役満ツモなら、二人成立ってことでいいよ」
ハオ「トモエ、勝手に!」
京太郎「聞きましたよ! 絶対ですからね!」
巴「はいはい、頑張ってね」
ハオ「なんてことをっ……」ヒソヒソ
巴「大丈夫だって。そうそう役満なんて出ないよ」
哩「そいより、ハオ。あんたは上がらんと、最下位じゃなかか?」
ハオ「……京太郎?」
京太郎「――わかった、役満ツモなら二人とも成立、ツモならずなら、賭けはなしだ」
ハオ「約束ですからね!」
哩「いや、そこは勝つ気で当たらんでどうすると……」
ハオ25000→13000→14500→
巴25000→19000→17500→16200
哩25000→19000→17500→
京太郎25000→49000→50500→55700→
京太郎「それです、巴先輩……1300です」
巴「はい……はぁー、いまのは上がれると思ったんだけどなぁ」
ハオ(――いま、不思議な感覚でした……いつもの調子で、私も上がれる気配を感じていたのに、最後が引けなかった……なぜ……)
京太郎「……よし、このまま……このままいけば、袴だっ……」ハァハァ
巴「……そういうとこも、余計に強くなってるね。ちょっと怖いよ」
ハオ「ところで……賭けは、最下位とトップでのみ成立ですよね?」
京太郎「うそぉっ!?」
哩「いや、そういうもんやろ」
京太郎「なん……だと……ぐおぉぉっ、袴か、ノーブラか……迷うっ……」
ハオ(安手っ、とにかく安手でいいから上がるっ……)
巴「私は袴くらいいいけど……負けるのはやだしなぁ、頑張ろうかな」
京太郎「――っっ! そうだ、二人が飛んだら、二人ともってことでどうですか!」
巴「……その場合、飛ばなかったら不成立、でいいよね?」
京太郎「そうきたかっ! ぬわぁぁっ……ど、どうすれば……」
哩「ちゅーか、この状態で二人飛ばんとやろ……」
ハオ「……まぁ、連荘もありますし。役満ツモなら二人トビです」
巴「はぁ……それなら、連荘はなし。役満ツモなら、二人成立ってことでいいよ」
ハオ「トモエ、勝手に!」
京太郎「聞きましたよ! 絶対ですからね!」
巴「はいはい、頑張ってね」
ハオ「なんてことをっ……」ヒソヒソ
巴「大丈夫だって。そうそう役満なんて出ないよ」
哩「そいより、ハオ。あんたは上がらんと、最下位じゃなかか?」
ハオ「……京太郎?」
京太郎「――わかった、役満ツモなら二人とも成立、ツモならずなら、賭けはなしだ」
ハオ「約束ですからね!」
哩「いや、そこは勝つ気で当たらんでどうしよると……」
ハオ25000→13000→14500→12900 ●最下位
巴25000→19000→17500→16200→14600
哩25000→19000→17500→15900
京太郎25000→49000→50500→55700→60500 ○トップ
京太郎トップ
京太郎「ぐっ……うぅぅうっっ……」
巴「どうしたの?」
京太郎「~~~~~~~~~っっ……ツモ、1600オールですっ……」
哩「連荘なし、終了やね。お疲れさん」
ハオ「お疲れ様でした……賭けは不成立ですが、ここまでやられるとは思いませんでした……」
巴「お疲れさま……京太郎くんの男の子が、強かったってことかな……」
京太郎「――い、いや、あれはあくまで副産物で……たんに、勝負に熱が入っただけでして……」
ハオ「そうは見えませんでしたが」
巴「同じく」
哩「このエロ太郎が」
京太郎「違うんですよおぉぉぉっっ!」
ハオ(…………とはいうものの、さすがに可哀そうでしょうか……?)
ハオ(……いえ、約束は約束です……それに、さすがに……下着なしで、学校はありえません……)
ハオ「……すいません、京太郎」
京太郎「えっ?」
ハオ「あっ、いえ! なんでも……ない、です……ええ……」
京太郎「そうか?」
智葉「――決着もついたな。時間も頃合いだぞ、そろそろ行こうか」
京太郎「えっ……あ、ほんとですね。つい集中していました」
智葉「……くれぐれも、店ではそういう面を見せないようにな」
京太郎「わ、わかってますよっ」
智葉「ならいいが……」
菫「……私は少し用事がある。京太郎くん、またな」
京太郎「はい、お疲れさまでした」
巴「それじゃ、私も……用事、お付き合いしますね」
菫「――あ、ああ、そうだな……上着も返したい、そうしようか」
哩「なら私は一人寂しくかえ――いや」
ハオ「?」
哩「臨海の寮やろ? 送ってやるけん、準備できたら声かけてくれんか」
ハオ「……ありがとうございます、ですが、よろしいのですか?」
哩「念のためにな。一人で寮ば帰っても、おもろいこともなかろーもん」
ハオ「では、お言葉に甘えて」
京太郎「すみません、哩さん。ハオも、本当なら俺が送ってやらないといけないのに」
智葉「それを言うなら、私が謝ることになるな」
ハオ「サトハは、京太郎の独占を謝るべきです。京太郎のクラスに」
智葉「……どういうことだ?」
京太郎「ああ……まぁ、その……道中で話しますよ」
智葉「まぁ、間をつなぐのにちょうどいいか……では、また明日な」
京太郎「お疲れさまでした――って、智葉先輩、早い!」
智葉「早くついてこい」
~金曜、夕方
智葉「………………」
京太郎「…………あの」
智葉「なんだ」
京太郎「いえ……やっぱり、今日の先輩、ちょっと変じゃないですか?」
智葉「一週間も一緒にいないだろう」
京太郎「まぁ、そうなんですけど……けど初対面の智葉先輩は、あんなイタズラをするようには――」
智葉「……あの二人には、だいたいあんな風だが……たしかに、少し緊張はしているかもしれないな」
京太郎「緊張?」
智葉「それをほぐそうと、必要以上には――いや、いまはそのことはいい」
智葉「ともかく、実家に男を連れて行くのだからな。緊張しても当然だろう」
京太郎「……そうですね」
智葉「まぁ、そういうつもりで連れて行くわけではないからな。それだけが救いだ」
京太郎「あっはい」
智葉「さて、着いたぞ」
京太郎「はい――辻?」
智葉「辻垣内だからな。単純というか、なんというか……」
京太郎「」
智葉「どうした?」
京太郎「……ここが、智葉先輩の?」
智葉「実家だ」
京太郎「すげぇ……」
智葉「……かもしれないな」
京太郎「かもしれないどころじゃないですよ! ここ、めちゃくちゃいい値段するけど、めちゃくちゃおいしかったんですから!」
智葉「なんだ、来たことがあるのか? 学生が来るような店じゃないぞ」
京太郎「理沙さんに教えてもらったって、シロさんに――あっ」
智葉「なるほど、シロとデートだったか……まぁ、うちの味を知ってるなら、話も通しやすい」
京太郎「で、デートではなくっ……」
智葉「照れることはないだろう。照や菫が聞いたら、喜ぶだろうがな」
京太郎「て、照さんにだけはっ……」
智葉「軽はずみに行動しておいて……まぁいい。ともかく入ろう。裏口になるがな」
京太郎「ちょっ、智葉先輩っ……」
智葉「――ただいま戻りました」
辻垣内母「おかえりなさい、智葉さん……あら?」
智葉「ただいま戻りました。それと――こっちは、後輩の須賀京太郎。春の全国高校生麻雀大会、男子個人チャンピオンです」
辻垣内母「まぁ、そうなの……ん? だけど智葉さん、高校は女子校だったはずよね?」
智葉「そこは事情が……ともかく、京太郎、挨拶」
京太郎「ぁ――は、はじめましてっ! 智葉先輩の後輩、現在は臨海女子二年――本来なら、長野清澄高校に通っています、須賀京太郎と申します!」
辻垣内母「これは、どうもご丁寧に……それと、先日はご来店くださいまして、ありがとうございました」
京太郎「覚えててくださったんですかっ」
辻垣内母「あれやこれやと、料理に興味を持ってくださってましたから。主人なんて、どこかの店の料理人かもしれない、なんて言ってましたよ」
智葉「間違いではありません。奈良の松実館という老舗旅館で、板場に入っていたと聞いています」
京太郎「追い回しですが」
辻垣内母「まぁまぁ、お若いのに……智葉さんにも、もっとそういった経験を積んでもらいたいのだけど――」
智葉「……大学を出ましたら……それで、お父さんは?」
辻垣内母「奥にいるけど――えっ、もしかして、そういう?」キランッ
智葉「なにがそういうかわかりませんが、違います……」
辻垣内母「なにがかわからないのに、違うんだ?」
智葉「とにかく、お父さんに会わせてください!」
辻垣内母「はいはい……須賀さんも、よかったら上がってくださいな」
京太郎「失礼しま――」
智葉「板場を使うかと思いますので、こちらで構いません。なぁ?」
京太郎「はい……」
辻垣内母「まったく……智葉さん、お茶くらい淹れて差し上げなさい。それじゃ、少しお待ちくださいね」
京太郎「いえ、お構いなく」
智葉「……京太郎、お茶」
京太郎「はい!」
智葉「はぁ……冗談だ。あまり上手くはないが、淹れてやる。座っていろ」
辻垣内父「智葉、帰っていたのか」
智葉「ただいま戻りました……京太郎」
京太郎「お、お邪魔しています! 智葉先輩の後輩、須賀京太郎と申します!」
辻垣内父「……ああ、先日の。その節は、ご来店ありがとうございました」
京太郎「あぅ……い、いえ。色々とお伺いして、申し訳ありませんでした……」
辻垣内母「老舗旅館の、追い回しさんだったみたいですよ」
辻垣内父「ほう、それはそれは……お若いのに、大したもんだ」
京太郎「いえ、俺くらいの年で板長、脇板なんて人もいらっしゃいますし」
辻垣内父「確かに。それだけ、この世界は腕がものを言うわけです」
京太郎「説得力があります。あのときは、本当にごちそうさまでした」
辻垣内母「……そういえば、あのときはお連れさんがいらっしゃいましたね。それなら、やっぱり智葉は違うのかしら……」
智葉「ですから、それは違うと――まぁいいです。本題に入りたいのですが」
辻垣内父「――心配はいらない。俺一人でも、脇板が見つかるまでは、回していけるからな」
智葉「いままで二人で回していたのを一人にすれば、単純に負担は二倍です。追い回しを入れても、料理の手伝いはできませんし――」
智葉「脇板にせよ、焼き方にせよ、助を入れるのは自然ではないですか」
辻垣内母「そうよねぇ……お願いした人たちが無理だったのだから、智葉さんのツテというのを、聞いてみたらどうかしら?」
辻垣内父「ツテもなにも……そちらの須賀さんに、手伝ってもらおうというところだろう」
智葉「…………はい」
京太郎(……なるほど。事情はわからないけど、脇板さんが抜けて、いまはご主人が一人で回してるのか……)
辻垣内父「気持ちはありがたいが、学生では一日に数時間程度しか入れないだろう。それに勉学や……後輩ということは、麻雀もしているんだろう?」
京太郎「はい」
辻垣内父「ならば申し訳ない――ということもあるし、日中や朝の仕事に入れないのは困る」
智葉「そもそも一人で回そうとしていたなら、そのくらいはなんとかしてください」
辻垣内母「あらあら」
辻垣内父「むぅ……」
智葉「昼の営業はメニューを減らして対応するみたいですし、あとは夜です。そのときに、料理が多少なりとできる助が必要でしょう」
辻垣内父「だがなぁ……」
智葉「――もし、彼の腕が心配なら、ここで試してくださって構いません」
京太郎「!?」
智葉「お父さんのお気に召さなければ、遠慮なく切ってください……京太郎、それでいいか?」
京太郎「えっ、あの……まぁ……はい」
智葉「よし」
辻垣内父「智葉、勝手に話を――」
辻垣内母「いいじゃないですか、あなた」
辻垣内父「お前まで……」
辻垣内母「私も智葉も、あなたの身体を心配して言ってるんですよ?」
辻垣内父「……それは、わかっているつもりだ」
辻垣内母「それに――私、一度でいいからやってみたかったんです。料理勝負の、審査員っていうの」ウキウキ
智葉「……お母さん、別に勝負ではありませんから……」
京太郎「――そんなこんなで、なぜか料理を作ることになってしまった……」
智葉「事前に、腕を借りたいと言っておいただろう」
京太郎「はい」
智葉「……その、すまないな」
京太郎「えっ」
智葉「いや、つい……父を心配してのこととはいえ、京太郎には負担をかけてしまった」
智葉「父の言うことももっともだ……その、いまさらだが――」
智葉「営業時間は、さっき伝えたとおりだ……無理なら、そう言ってくれても構わない」
京太郎「――わかりました」
智葉「……そうか、うん……わかった。父には私から伝えて――」
京太郎「やりますよ。ま、見ててください」
京太郎「――智葉先輩のお父さん、説得してみせますよっ」
智葉「――――よろしく、頼む」ニコッ
京太郎「――本日の献立に用意されていましたものを、俺の知る方法で仕上げさせていただきました」
京太郎「ウドのマリネ、ワラビの天ぷら、コゴミの和え物から――」
智葉「……うん、おいしい」
辻垣内母「そうね、山菜の旨味がわかるわ」
京太郎「椀物につみれ汁、ご飯はカニ飯と山菜の――」
辻垣内父「うむ……」
京太郎「水物は果物でいいと思いますが……せっかくなので、和菓子を」
辻垣内母「はぁ……すごいのね、智葉よりも若いのに、こんなに上手に作れるなんて」
辻垣内父「予想していたよりは、かなり上の腕前だった……刺しを任せるかはともかく、焼きに関しては、まず問題ない」
智葉「では――」
辻垣内父「あとは、須賀くんの希望次第だが……どうする?」
辻垣内父「――給料はあまりだせないがな」
京太郎「………………」
智葉(京太郎……)
京太郎「はい――」
京太郎「俺で、お役にたてるなら……よろしくお願いします!」
智葉「――すまなかったな、今日からさっそく入ってもらうことになって」
京太郎「いえ、俺としてはいい修行になりますから、むしろありがたかったです」
智葉「そうか……そう言ってもらえると助かる。月末には、新しい脇板の目処もつくそうだ。それまでは京太郎に焼き方を、もう一人別に追い回しが入る」
智葉「面倒を見てもらうかもしれないが、これからも――よろしく、頼む」スッ
京太郎「っ……い、いいですって、頭上げてくださいよ、智葉先輩!」
智葉「なに、これくらいは当然の――」
京太郎「いえ、ですから……そういう部分をしっかりすると、俺は……先輩じゃなく、お嬢さんって呼ばないといけないじゃないですか」
智葉「……松実の、姉妹のことはそう?」
京太郎「そう呼ぶと怒られましたので……」
智葉「ふふっ、なるほど……まぁどちらでもかまわないが、お嬢さんという柄でもない」
京太郎「では、そういうことなので……頭なんて、もう下げないでくださいね」
智葉「ああ……まぁ、なんというか……肩の荷が下りたよ。これからはしばらく、楽になりそうだ」
京太郎「……板長のこと、心配だったんですね」
智葉「ま、まぁな……悪いか?」
京太郎「親のことですもんね……大丈夫、これからは俺が、しっかり手伝いますから」
智葉「……頼りにしてるぞ、焼き方」
京太郎「お任せあれ!」フンスッ
智葉「……その返事は、どうも不安を煽るな……」
~金曜、夜
京太郎「久々の板場、だったなぁ……ちゃんと動けてたのかどうか……」
京太郎「まぁ、人が減ったからか、メニューも絞ってるみたいだし……旦那さんと女将さんもよくしてくださるし、なんとかなりそうだ」
京太郎「けど、これいいのかな……まぁ、料理人ってこうやって色んな板場回るみたいだし、いいんだろうけど……」
京太郎「日誌に書いて、確認しておこうかな……ふぁ……」
辻垣内父「――なら、さっそく入ってもらうとしようか」
京太郎「よろしくお願いします!」
智葉「……私も入ります。さすがに、京太郎だけに負担はかけられませんし」
辻垣内母「あら珍しい。それじゃ、着物着付けないといけないわね」
京太郎「」ガタッ
辻垣内父「おい」
京太郎「はいぃっ!」
辻垣内父「包丁は持ってるか?」
京太郎「あ、はい」スッ
辻垣内父「……一応確認しておくが、学校帰りだよな?」
京太郎「はい」
辻垣内父「……まぁいい。メニューはここにある通り、須賀くんの担当はここからここになる……一通りやってみせる、一度で覚えろ」
京太郎「了解です!」
辻垣内父(……即答、か……板場経験があるからこそだな。まぁ覚えてもらわんと、こっちも困るわけだが)
辻垣内父「――うん、まぁいいだろう」
京太郎「ありがとうございます」
辻垣内父「いま作ったんだ。お客様に提供するときは、もう少し早く頼むぞ」
京太郎「――心得ました」
辻垣内父「よし、なら開店の準備を進める。女将、智葉、開けるぞ」
辻垣内母「はいはい、こちらも大丈夫ですよ……智葉さん、背筋を伸ばすっ」
智葉「はい……ふぅ、しかしこれは、胸が……」
京太郎(――85、6、7……いや、88?)ピピピ
智葉「……なにを見ている」
京太郎「ふぁいっ!?」ビクッ
京太郎「いえ、とてもお似合いです」
智葉「そうか? まぁ、馬子にも衣装というからな……」
京太郎(そういうことじゃないんだけど……)
智葉「まぁ給仕の衣装など、食事の邪魔にならなければいだろう」
智葉「要は、お客様に食事を楽しんでいただける場を作れるかどうかだ」
京太郎(……それでも、華やかな女性が傍にいると、飯がうまいと思うんだけどなぁ……)
智葉「どうした?」
京太郎「いえ……本当に、お似合いですから」
智葉「……そうか、ありがとう」
智葉「さて、開店の時間だ。板場は任せたぞ」
京太郎「はいっ」
辻垣内父「いらっしゃいませ……ええ、入ってますよ」
辻垣内母「お待たせいたしました、若竹と山菜の和え物です……こちら、お代わりは? はい、冷ですね」
智葉「焼き方、蟹のグラタン追加だ。あと、マキはまだあるか?」 ※マキ=クルマエビ
京太郎「はい、まだいけます! ふぅ、あっつぅ……」
辻垣内父「水分忘れるな、まだまだ暑くなるぞ」
京太郎「はいっ」
辻垣内母「いらっしゃいませ――あら、三尋木プロ、いらっしゃいませ」
京太郎「ん?」
咏「いやー、お久です、女将ぃ~。今日は若手連中つれてきたんだけど、奥の座敷空いてっかい?」
辻垣内母「ええ、ご用意できます。何名様ですか? ……はい、承りました、奥へどうぞ」
智葉「いらっしゃいませ。どうぞ、ご案内します」
咏「お、辻垣内の智葉ちゃんじゃん。プロ来りゃ~よかったのにさぁ」
智葉「……家のことがありますので」
咏「まぁそっかい、こんな立派な店ならねぃ……ところで、その……」
智葉「なにか?」
咏「いや、その……臨海、にさぁ……いま、いるじゃん?」
智葉「京太郎ですか?」
咏「だ、だからどうってことでも、ないんだけどねぃ? その……どうしてっか、詳しく知ってっかい?」
智葉「――本人に確認してはどうでしょうか」
咏「ん~、それはそれで、忙しかったら気の毒かなってねぃ」
智葉「存外に気を遣うんですね……まぁ、いまならさほど混んでいません、大丈夫でしょう」
咏「店は関係なくね?」
智葉「――京太郎。三尋木プロがご用のようだ、伺っておけ」
京太郎「はい! えっと……いらっしゃいませ、咏さ――三尋木プロ」
咏「」
咏「ちょ――えっ、やっ……あれ、なんで!?」
若手1「どうしたんすか、三尋木さ――あっ、こいつ知ってます!」
若手2「うそっ、須賀京太郎!? ホンモノ!?」
若手3「ファンです! 握手してください!」
京太郎「あ、や……いまは、その――」
辻垣内父「はぁ……あとで、座敷に挨拶に行かせますので。とにかく、奥へ――智葉、案内だ」
智葉「はい」
京太郎「――というわけです」
咏「はぁ~……ま、確かに。京太郎の腕じゃ、そういう引き抜きもあるってもんかい……そんじゃ今日の焼き物は、あんたの仕事か……こいつぁ楽しみだねぃ」
若手4「うぅぅ、握手ぅ……サイン……」
若手5「背ぇたっかぁ……しかも、かっこい……」
若手6「彼女いるのっ?」
京太郎「いません」
咏「――いっとくけど、手ぇだしたらすこやんと徹マンさせっから」
若手7「りょ、料理楽しみだなー」
若手8「グランマこわいグランマこわいグランマこわい」
若手9「鰆の焼きってできますか!」
京太郎「今日は入ってないですね、すみません」
若手9「そっかぁ……」
咏「ふぅ……」
京太郎「あはは、すいません、庇っていただいて……」
咏「えっ? あ、ああ、いや……まぁねぃ、あんくらいは……ところで――」
京太郎「はい?」
咏「ほんとに、彼女おらんの? その……さっき女将にチラッと聞いたけど、ここって白望と来たんだろ?」ヒソッ
京太郎「あのときは……ええ、楽しかったです」
咏「!?」
咏「あ、ああ……そう、か……そういう……」
京太郎「――ご主人……板長に、色々と伺って、うまいもんいっぱい食べて、味の研究もできて……はぁ、最高でした……」
咏「………………えっ」
京太郎「はい?」
咏「……いや、うん……そんなもんだろうねぃ……」
京太郎「シロさんには申し訳なかったですけど、シロさんもそれでいいよって、黙って見ててくださいましたし」
京太郎「ああいう気遣いができるんですよね、シロさんは……その辺りは、やっぱり尊敬できます」
咏「…………私だって、ほら……後輩ら、連れてきてるわけだし……」ボソボソ
若手1「う、咏さんの優しさ、五臓六腑に染みわたるっす!」
若手2「須賀京太郎にも会えましたし!」
若手3「サインください!」
京太郎「サインとかないですけど」
若手4「名前書くだけでいいんで! このカバンに!」
京太郎(高そうだな……これには書けないだろ……)
若手5「私は抱き締めてください!」
京太郎「じゃあ――」
咏「やる気なん?」
京太郎「ま、まさかぁ……」
若手6「シロ……東京の小瀬川?」
若手7「あいつの長考で、リズム崩れて倍満っ……絶対許さん!」
京太郎「あれは先輩の持ち味なんです。長考の間は、なるべくリラックスしとくと、対応しやすいですよ」
若手8「そうなんだぁ……ありがとう!」
若手9「和菓子ってできます?」
京太郎「できますよー」
咏「後輩のが楽しんでるってーの……あーもう! 女将! 一番たっけぇの、冷で!」
~回想終了
京太郎「なぜか咏さんが酔ってて……意識はちゃんとしてたけど、すげー説教されたな……」
京太郎「けど、咏さんをイメージしてって和菓子だしたら、許してくれた……よかった」
京太郎「個人サービスはどうかって思うけど……知り合い相手には、やっぱりやっちゃうよな、うん」
京太郎「有名店だし、ほかのプロも来られるのかな……楽しみだけど、ちょっと緊張する……」
~4月第一週金曜、終了
【4月第一週金曜】
今日は色々とあり、大学で練習を。
そこで起こったことは割愛、申し訳ありませんでした。
夕刻からは、ある料亭へ。本日よりしばらく、助に入ることになった。
なるべく早く、この店の料理を覚えなければ。
とはいえ、もちろん部活も疎かにはしないつもりだ。
来週からは新入生も入る。きちんと先輩の役割を果たさなくては。
…………
『寝耳に水とはこのことですね。どこのお店ですか』
『野依さんお気に入りの、あの店だねぃ。いやー、若手連れてったらいきなり京太郎いて、驚いたってーの』
『あ、京太郎と行った店だ……』
『ちょっと、今日行ったなら教えてよ!』
『そうだぞ☆ せっかくの花金なのに』
『次に行けるの、いつでしょうか……来週、いえ、再来週……あれ、週末も、行けたような……』
そういえば、シロさんが言ってたんだっけ。
理沙さんが誰に言ってるか知らないけど、何人かには気づかれたかもしれない……店、大丈夫かな。
『――あかん、知ってる人らだけで話進めてるで』
『っていうか料亭って、どういうことやねん……』
『プロのお気に入りって高そう……』
『う、ううう、嘘なのです! 京太郎くんが、よその板場なんて……』
『板長さんの話だと、いい料理人は色々なお店にお手伝いに行くみたいだよ~』
『……そのまま、婿入りするとか』
『阻止』
『許さない』
『……安心しろ、それはない』
智葉先輩なら、どんな男でも捕まえられそうだもんなぁ……あの店、経済界のすごい人たちも、たまに使うらしいし。
『なくないと思う。京ちゃんはかっこいいから……でも、そこに娘さんがいなければセーフ』
『いるぞ。とびっきりの美人だ。しかもおもちがでかい』
『……おもちだけなら、なんとでもっ……』
『だから、それはないと言って――』
『京ちゃんダメだよ! おもちなんかに惑わされないで!』
『そうだじぇ、あんなのただの脂肪だじぇ!』
……友情崩壊するから、それは撤回しようか。
『おもちはいいと思う……でも、料亭よりも京ちゃんには、神社にちかい観光地で料理屋を開いてほしい』
『いい考えね。茶店や、それこそ料亭でもいいと思うわ』
『なんでも構いません……傍にいてくだされば、それで……』
『うちの執事になるいう約束は……』
『そんな約束いつしたん!』
『京太郎に日本は狭すぎます。料理にしろ麻雀にしろ執事にしろ、海外でするべきです。フランスとか』
『中国とか。香港、いいところですよ』
『キョウタロウの髪色なら、アメリカしかありまセン。広さも申し分なしデス』
海外かー。一回行ってみたいんだよなぁ、修学旅行とか……いや、無理か。
なら卒業旅行とか、新婚旅行で……あ、その前に彼女作らないとな……はぁ。
――――――――
~清澄
「りょ、料亭……」
「もうすっかり、執事ともかけ離れてますよね……」
「京ちゃんは麻雀部だよ!」
「私らが……私らの、せいで……京太郎は、こんなになっちまったんだじぇ……」
「っ……ごめんなさい、京太郎くんっ……」
「せめてもの詫びに、客にでもなるしか……」
「でも、お店の名前がわかんないですよ……」
「――藤田プロに、聞いてみるわい。野依プロのお気に入りなら、知っとるかもしれん」
「お願いします!」
(……けど、料亭って……お高いんじゃなかったじぇ?)
(トッププロのお気に入りとなると……お小遣い、数ヶ月分は覚悟しないといけませんね……)
~ルーフトップ
「へー、京太郎が料亭ねぇ……あ、もしもし靖子? 野依プロのお気に入りの――」
「流れるように携帯の操作を……さすが久さんです!」
「というか、行くつもりか? 学校もあるのに……というか、高級料亭なんか行ったら、バイト代が全部パーになるぞ」
「――ふんふん、なるほど……でさぁ、靖子も一緒に行かない?」
「藤田プロを……? どういうことでしょうか」
「聞いていればわかる……いや、聞かなくてもわかった」
「やーね、奢らせたりしないわよ。でも私たちお酒飲めないし、ちょっとくらい多く負担してくれるわよね?」
「な、なるほど……」
「そろそろ止めたほうがいいかもしれんな……」
~白糸台
「料亭だって。あ、それじゃ京太郎くん、魚捌けるんだ……いーなー、一緒に釣りに行けないかなー」
「いいね。ほら、近くに渓流がある合宿所とか、あったし」
「お昼は川で釣りして、そこで捌いて、料理もしてもらえるといいかもね」
「誠子はできないの?」
「できなくはないけど、人に作ってもらったほうがおいしいでしょ。それに相手はプロだし」
「高校生だけどね」
「はは、そうだった……って、淡? さっきから黙って、どうしたの?」
「なんでもないよ! こんな……せっかく男子女子の個人チャンプなのにっ! 麻雀もしないで料理してるキョータローなんて知らない!」
「おこだね」
「怒ってるねー」
「怒ってないもん!」
「じゃあ、どういう京太郎くんならよかったの?」
「女子チャンプに試合申し込むのが普通でしょ!」
「……宮永先輩に申し込んだ男子、いたっけ?」
「皆無だったよ」
「だよね……」
「バーカ! キョータローのバーカ! ふんっ!」
~永水
「さて――巴ちゃんから連絡が来たわよ」
「なんて言ってる?」
「はるる、落ち着くですよー」
「どうやら、辻垣内さんのご実家が、辻という料亭を経営しているみたいね」
「おー、ミシュラン三ツ星、○○ナビの口コミでも☆5近い評価ですよー」
「お値段は……学生には、少し高いですね……」
「……すこ、し……?」
「さすが姫様……」
「ち、違いますっ! その、控えめに言っただけで……お、お高いです……」
「小蒔ちゃんのお小遣いは、私たちと変わらないものねぇ……経費関係は、処理していただけるけれど」
「京ちゃんが料亭にいるのに、訪ねてもいけないの……?」
「――経費にしましょう」
「えっ」
「ど、どうやって……」
「一年を連れての初合宿。まずはやる気を煽るべく全国大会の会場を下見、そのために東京に行きます」
「な、なるほどっ」
「そして――お夕食を、そちらでいただけばいいのではないかしら」
「いい考えです!」
「さっそく手配する……」
「いいのかな……」
「……男子一人のために、そこまでする必要ないでしょ……」
「でも会いたそう、湧」
「誰が! っていうか、須賀さんだって合宿したら、東京から離れるかもしれないじゃない」
「あっ――お、お姉様っ、大事なことを見落としてますっ!」
~宮守組
「前にシロが自慢してたよね。辻って料亭で二人で食事したって」
「合宿中に、抱きついて練習してたあとのことだっけ……」
「…………ハァ、キョウタロ……エット、ス、スエナガク……チガウ、フツツカノモデ……」
「不束者、だよー。エイスリンさーん」
「アリガト! エット……フ、フツツツカ、モノデ……」
「……エイちゃんはなにやってるの、前々から」
「さぁ……でも、なんとなく……京太郎くんが絡んでそう」
「それはわかってるけど」
「だよね……ちょっと豊音、エイちゃんなにやってるの?」
「え? よくわかんないけど……日本で、女性が結婚相手の実家へ挨拶に行くとき、どう挨拶するかって言われたから、知ってる範囲で教えてるんだよー」
「けっっ……」
「こんっ……!?」
「エイスリンさんが日本人と結婚してくれたら、ずっと日本にいられるよー。ちょーうれしいよー」ワーイ
「…………ま、まさか、ねぇ?」
「きょ、きょきょ……京太郎くんに限って、なな、ない、わわ、よっ……」
「京太郎がどうしたのー?」
「っっ! な、なんでもないから!」
「そう?」
(――大丈夫、勘違いはしすぎてないわよ……これは、その……ま、万が一のための、練習だから……はぁ、京太郎……でも、楽しみにしてるから♪)
~阿知賀
「どどどど、どうしよぉぉぉっ、お姉ぢゃ~~~~ん」ブワッ
「大丈夫だよ~。普通のことだって言ってるからね~」
「じゃあどうして板長さんとお父さんが真剣に相談してたのぉぉっっ!」
「……旅館に料亭に、忙しいわねー、あいつも」
「料亭って、和菓子作るんですかねっ」
「作らないとおも……普通は水菓子って言って、果物だすだけだから」
「灼ちゃん物知りだね~」
「料亭って聞いて、密かに調べてたもんね、灼」
「……憧こそ、スマホですぐ探してたでしょ。検索内容は料亭・野依プロ・お気に入り」
「どこかわかった、憧っ?」
「わかんなかったー。ブログとかやっててくれたら、書いてそうなんだけどなぁ……」
「大丈夫、ハルちゃんに聞いたら返事きた……辻っていうお店だって。臨海の辻垣内さんの実家みたい」
「つ、辻垣内さんっっ」ビクッ
「玄ちゃん?」
「ああ……チャンピオンと辻垣内さんと囲んだときのトラウマが……」
「玄さん、しっかりしてください!」
「あのときは、昔の憧ちゃんもいたのにね~」
「片岡さんと私は別だから!」
~姫松
「緊急会議や」
「……いや、あの……練習中で……」
「おねーちゃん、仕事とか練習は……」
「昨日先輩飛ばしたから、今日は免除やねん……って、それはどうでもええ! 代行どこや!」
「はぁ~い、呼んだ~?」
「おったぁ! 代行やったら知ってるやろっ、野依プロのお気に入りってどこや!」
「……おねーちゃん、それ……日誌の?」
「おかんが教えてくれへんからな……子供に酒は早い言うて。酒飲まんでも入れるやろ、飯屋くらい!」
「あ~……でも、オススメせぇへんかなぁ」
「なんでですか?」
「たぶん、洋榎ちゃんの想像の10倍くらいするで?」
「千円の十倍、一万くらいか」
「……想像の、50倍やったわ」
「五万!?」
「しっかり食事したらなぁ……まぁ数品なら、もう少しマシやと思うけど」
「ご、ごまん……」クラッ
「おねーちゃん、しっかり!」
「京太郎くん、すごいとこで料理してるねんなぁ……」
「はいはい、雑談おしま~い。練習再開やで~。あ、洋榎ちゃんはそっちに寝かしといたらええから~」
「ご、ごま……給料、いつ入るんや……」
~千里山
「――噂で聞いたことあります。野依プロは、辻の常連やって」
「……うちが酔うて言うた、とかやないな?」
「ちゃいます。ネットのどっかで、そんなんを見たなーって」
「そういうたら……東京の小瀬川さんと、大会中に京太郎くんがご飯食べに行った噂になったん、そこやなかったですか?」
「さすが泉。京太郎くんのことはしっかり覚えとんなぁ」
「そ、そういうんやなくて! 大会中に余裕やなって、怒っとっただけで……」
「怒ってたんはほんまやろな」
「監督っ……」
「冗談や」
「泉は本気やけど」
「もういやや、この親戚二人……」
「けど、そうか……辻って、たしか辻垣内智葉の実家ですよね」
「ネットの噂て、怖いもんやな……洋榎には内緒やで?」
「はいはい、心得てます」
「せ、先輩特権で、無理やり実家に!?」
「妄想逞しいなぁ、泉……」
~東京大学組
「お疲れ」
「ああ、少しな……そうだ。菫、哩」
「なんね」
「その……夕方は、すまなかったな。色々と……」
「……ふふっ、らしくないぞ、智葉」
「いつものことやろ。もう慣れた……いうても、抑えてくれるいうんなら、ありがたか」
「実家のほう、落ち着いたみたいですね」
「ああ、おかげさまでな」
「京太郎くんの、だろう?」
「……まぁな。思った以上だった……あれだけの腕があって、麻雀の腕も立つ、おまけに菓子やお茶もできるとうのだから、驚きだな」
「すべて彼の努力だぞ」
「才能あってこそ、やと思うが……」
「才能も、磨かないと意味はありません……あ、そうそう、話戻っちゃうけど、智葉さん?」
「どうした?」
「ごめんなさい……永水のみんなに、お店のこと言っちゃった……」
「あぁ……別にいいさ。学生がおいそれと寄れる店ではないし、言い触らされることはないだろう? 情報が情報だけに」
「……え、ええ、そうですね……」
「顔色悪かよ? 大丈夫か?」
「は、はい……」
(……永水は、予算が潤沢のようだからな……嫌な予感しかしないぞ)
(京太郎、か……あと二年、卒業まで腕を磨けば……いや、それは望めないな。私の婿など、私なら御免こうむる……)
~大阪大学組
「怜! なんやの、執事の約束て!」
「そういう約束を……」
「したんか!?」
「したような……してないような……」
「なんや妄想か」
「そんなこったろうと思ったのよー」
「失礼やなぁ……」
「っていうか、臨海女子なにしてるん! 料亭で働くてっ、麻雀部はどないしてるん!」
「部活終わったあと、やと思うけど……料亭が夜中までやるんやったら、京太郎くん、忙しすぎへんかな」
「心配なのよー。誰か京太郎くんの部屋で、家事してあげる人がいるんとちゃうかなー」
「うちの出番か」フッ
「あんたやない、座っとり」
「……ち、ちなみにこのメンツやと……私は、最近そこそこ勉強中いうか……」
「恭子の作った煮物は、しばらく食べたくないのよー」
「ぐっっ……そういう由子の! ゆ、由子の……ハンバーグは……」
「はー?」
「……めっちゃおいしかったわ!」
「ふふふー、当然なのよー」
「へー、真瀬ちゃん料理得意やねんなぁ」
「ま、竜華には敵わへんやろけどなぁ」
「なんであんたが偉そうやねんっ」ペシッ
「お、竜華ちゃんも得意なんやー。今度一緒に、ご飯作らへん?」
「ええなぁ、週末とかどう? 大学一緒やったら、お弁当とかも交換できんのになぁ」
「審査員はうちやな」
「いや、そこは仲よう食べたらええやろ」
「ええツッコミやで」
「嬉しないわ!」
~プロ、東
「咏ちゃんが裏切った!」
「いや、まぁ……若手を連れて行ってるわけですし……」
「新人には未成年もいるでしょ? 料亭に連れて行くなんて、どうかと思うぞ☆」
「……私たち、いまいるのって――」
「それは言わない約束デス……」
「で――シロは、このお店知ってるんだよね?」
「智葉の実家だよ」
「そうなの、ダヴァン?」
「私は詳しくは知りませンガ……家が大きな料亭だと、聞いたことはありマス……」
「のれん分けもいくつかあって、そっちではお嬢って呼ばれてるみたい」
「なら、そっちから人を回してもらえばいいはず」
「サトハのダディは、とても優しく、自分に厳しい人デス……弟子の店に、負担をかけたくないのでショウ……」
「見かねた智葉が、京太郎に無理強いした感じかな……まぁ、無理強いじゃないだろうけど」
「京ちゃんは優しいからね」
「どうする、行く?」
「……あっちの二人次第、かな」
「若手……若手、あ、いや……そもそも私たちも飲まないんだし……」
「うぅぅぅ、咏ちゃんずるぅい……誰か飲める子と、飲めない子で……」
「……シロが行ったときは?」
「食事だけ。あと、京太郎がすごく楽しそうだった。眼福」
「ずるい」
「練習付き合ったからね。役得」
「抱きついてただけと聞きましタガ」
「――このあと、時間あるなら卓開こうか」
「ダルいけど……勝ったらなにくれる?」
「京ちゃんの写真、小4のときの」
「乗った」
「私もデス!」
「私も!」
「
すこやん、おとなげないぞ☆」
~プロ、西
「洋榎はどうしました?」
「なんや、姫松の監督に聞いてくるって言うてましたけど」
「ああ……野依プロが口を割らないと思ったんですね」
「なんでも、愛宕監督――あ、千里山の、です。洋榎さんのお母様は、教えてくれなかったとかで」
「なるほど……やれやれ、そそっかしい子ですね」
「教える……」
「はい、理沙さんは優しい方ですから」
「利仙!」ダキッ
「利仙のが年上に見えてまう……」
「ふ、複雑……」
「野依プロは、外見幼いですからね……京太郎くんにも、そう言われていましたか」
「…………////」
「そんで、そこ高いんですか?」
「高い! でもおいしい!」
「私もそれは保障しますよ。はぁ……そろそろシーズンが始まりますから、なかなか行く機会が……」
「交流戦は来月ですよね。野球とおんなじで」
「そうでしたねぇ。お二人なら、別口のお仕事で、訪ねられそうですが……」
「日帰りだと、そうもいきませんし……」
「安価次第!」
「メタいなぁ……」
~松実館
「東京は名店が多いですからね。いい修行になるんじゃないでしょうか」
「うん、そうだね――でも……そうなると、本格的にとそちらへ移る可能性も……」
「いやぁ、ここは京太郎の義理堅さを信じましょうや」
「けど、あれっすよねぇ? そっちに年頃のべっぴんな娘さんがいりゃあ、コロッと――」
「ほう……うちの玄や宥以上の娘がいると?」
「」
「――A、仕事に戻るか」
「はい、板長」
「ちょ、待――」
「Bくん」
「は、はい……」
「ちょっと、話をしようか?」ニッコリ
「」
~第一週土曜、朝
京太郎「そういやモブ子、お前、俺が来た初日って俺のクラスにいなかったか?」
モブ子「ま、幻やろ……」
京太郎「……クラス、間違えたのか」
モブ子「記憶にございません」
モブ子「そうそう、それと同学年いる学校は、私あんまり出張らないんで、よろー」
京太郎「へいへい」
モブ子「ほら、一年の世話とかも増えるしさー」
京太郎「へいへい」
モブ子「……ちょっとは寂しがってもいいんじゃよ?」チラッ
京太郎「へいへい」
モブ子「ホリーシィット!」ダンッ
京太郎「――今日は、誰にも会わなかったし、電話もなかったな……」
モブ子「あれじゃない? 料亭勤務なんて始めたから、おこってんだよ、たぶん」
京太郎「……智葉先輩もか?」
モブ子「あぁ……それはそれでおかしいか」
モブ子「のんびり休養したら、ってことじゃない?」
京太郎「そうするか……いや、休養とかなくて大丈夫だけどな」
モブ子「そういうブラック企業が喜ぶ考えはどうかと思うよ」
~昼はなし、部活
京太郎「よし――部活だっ!」
ネリー「その前にお昼っ!」ガバッ
京太郎「そうだな、どこで食う?」
ネリー「調理室!」
京太郎「なにが食べたい?」
ネリー「ちょーおいしいもの!」
京太郎「グルジア料理?」
ネリー「じゃなくてもいいよ。キョウタローが好きなのがいい」
京太郎「……ありがとな」ナデナデ
ネリ「エヘヘー」
京太郎「それじゃ、昨日教わった料理からいくつか、作ってみるか……ネリーは、米のご飯でも大丈夫か?」
ネリー「なんでも食べるよ!」
京太郎「よしよし、それならどんどん大きく――」
ウェヒヒ
京太郎「……ならないかもしれないな」
ネリー「!?」
京太郎「あ、いや……ま、まあいっぱい食えば、大きくなるかもしれないな、うん」
ネリー「まだまだセーチョーキだもんね」
京太郎「……俺も、まだ伸びんのかなぁ」
ネリー「運動もしないとね」
京太郎「だな。けど麻雀部だと、そう運動する機会もないし、大変だな」
ネリー「おっきくなるって大変だね」
京太郎「俺にできることは、ご飯を食べさせることくらいだな……さ、行こうぜ」
ネリー「うんっ」
~部室
京太郎「お疲れさまです!」バーンッ
ネリー「遅刻しなかった!」バーンッ
明華「……当然ですからね、それは」
アレクサンドラ「さて――それじゃ始めますか、練習」
ハオ「その前に、確かめたいことがあります。京太郎」
京太郎「ん?」
ハオ「……その、聞いた話ですが……ネリーを大きくしようと、お昼にどこかへ一緒にいったとか……本当ですか?」
京太郎「ん、ああ、本当だよ。ネリー(の背)を大きくしたくて」
ハオ「ほ、本当だったんですか……ネリー(の胸)を大きくするために……」
明華「由々しき問題です! 育てなおさなくとも、十分育ったものがあります、ここに!」
京太郎「――ああ、たしかに」
ハオ「――っ」グッ
明華「……っ」フッ
京太郎「監督は大きいですもんね。あ、気にしてたら申し訳ないですけど」
ハオ「」
明華「」
アレクサンドラ「――ケンカ売ってんの?」
京太郎「えっ」
ネリー「監督、お尻も胸もちっこいよ?」
京太郎「なんの話!?」
京太郎「――ものすごく理不尽に怒られた、もうやだ……普通、身長の話でしょ、どう考えても……」
アレクサンドラ「日頃からおもちに対して、並々ならぬ情熱燃やしてるほうが悪い」
ハオ「あんなに凝視しておいて……」
明華「目が合うより、そっちに気づくほうが多いです……」
京太郎「ご、誤解です……」
ネリー「本当に?」
京太郎「…………ちょ、ちょっとは、見てる……かな?」
ハオ「/////」
明華「/////」
ネリー「むー」
アレクサンドラ「……まぁ、男子高校生だしねぇ」
京太郎「くそぉぉっっ! 本能がっ、憎いっ……」
アレクサンドラ「――そうそう。明日の日曜から、通常行動は一回になるから、気をつけてね」
明華「明日は入学式ですからね」
京太郎「ああ……平日じゃなく、休日なんですね」
ハオ「昼行動はできますから、ご安心ください。その……よければ、雀荘で一局……」カァッ
京太郎(顔赤らめて雀荘に誘うってのも、新鮮だな……いいねっ)グッ
ネリー「コウハイかぁ……えへへ、楽しみっ」
京太郎「ともかく、気を取り直して打ちましょう!」
ネリー「わーい」
明華「では私が隣に」ガタッ
ハオ「では反対に私が」
ネリー「ネリーは対面に」
アレクサンドラ「……いや、私も入れてほしいんだけど」
明華「だめです」
アレクサンドラ「……私、監督だからね?」
ハオ「なぜ今日に限って?」
アレクサンドラ「いや、そろそろ真面目に説教しないといけないかと思って……あとは、新入生くる前に、一緒に打って確認しときたい」
京太郎「そんな、説教されるようなこと……」
アレクサンドラ「してない?」
京太郎「」スマセン
アレクサンドラ「よろしい」
ネリー「でもフコウヘイ!」
明華「そうですね。無理やり一枠に入るというのは、些かフェアではありません」
ハオ「ここはやはり――」
京太郎「じゃんけんですかね」
アレクサンドラ「――最下位になった子は、キョウタロウと交代ね」
京太郎「えっ」
ハオ「ということですから、京太郎はそこで座って、見守っていてください」
京太郎「あ、はい」
明華「できれば紅茶をくださいませんか」
京太郎「心得ました」
ネリー「抹茶ラテ! あれおいしかった!」
京太郎「ちょっと待ってな」
アレクサンドラ「牌譜も取っといてね」
京太郎「急に忙しくなった!」
明華「――こんな、はずでは……」
監督「僅差で決まる勝負なんだから、リーチは慎重にね。それじゃ、これで決まりかしら」
ハオ「さ、入ってください、京太郎」
京太郎「ああ……明華先輩、お疲れさまでした」
明華「ふふ、無様なところを見せてしまいましたね」
京太郎「いえ。あれは俺でもリーチしてましたし……同じ考えだってわかって、嬉しかったです」
明華「まぁっ……」パァァッ
ネリー「キョウタロー、はやくー」バンバン
京太郎「わかってるっての。それじゃ、明華先輩……仇は取りますからね」
明華「それは嬉しいですが……できれば、相対したかったものです」
京太郎「そういうものですか」
明華「強引に打ち負かされるにせよ、軽やかに打ち倒すにせよ……どちらにせよ、楽しめそうですから」
京太郎「では、またの機会に、必ず」
明華「はい、楽しみにしてます」ニコッ
京太郎「お待たせ! さぁ、打とうか!」
京太郎「――ふぅ……落ち着いて……」
ハオ(今日こそ勝ちます……とはいえ、あのときの違和感はまだ……)
ネリー(能力まだ実装されないなー、本編で出番あってからかなー)
アレクサンドラ(んー……やや手加減、くらいでいいか)
ハオ25000→9000
監督25000→41000
ネリー25000→
京太郎25000→
ハオ「ぐっ……」
監督「疲れてきたかしら。でも団体は、前後半戦だから、二連戦は普通よ」
ハオ「はい……」
京太郎(つっえ……これは、どうやって逆転するかな……)ウーム
ネリー(あ、キョウタロー逆転狙ってる……真剣な顔、かっこいいなー)
明華(……逆に考えましょう。卓のことを考える必要なく、京太郎を見つめていられるんだと……)
京太郎(……なんか視線を感じる……)
ハオ25000→9000→8000
監督25000→41000
ネリー25000→
京太郎25000→26000
監督(ハオも集中してきたわね……ここは降りておこうかしら)
ネリー(んー、ハオが怖い……こっちでいいかな)
京太郎「………………」
ハオ(絶好の配牌、ツモ、これは……上がれます――)
京太郎「ロン」
ハオ「――やはり、ですか……」
京太郎「1000点だ、なんか悪いな」
ハオ「いえ……上がられた身としては苦痛ですが、それは理想の上がりです。お見事ですよ」
監督(役満をノミ手で、か……これされると、立て直すのがきっついのよね……)
ネリー(意地悪だなぁ、キョウタロー……ネリーにはしないでね)
明華(……ドS疑惑、やはり本当なのでしょうか……)
ハオ25000→9000→8000→6000
監督25000→41000
ネリー25000→27000
京太郎25000→26000
京太郎「…………こっちかな」トンッ
ネリー「………………」
ハオ(あれが切れた……なら、こちらでしょうか……? ということは、これなら通る――)
ネリー「ロン、2000点!」
ハオ「……はぁ……もう、わかりません……なぜそれが、京太郎には見えているのか……」
監督「はいはい、その辺はあとで説明するから……とにかく、キョウタロウに惑わされず打ちなさい。二人の打ち筋は違うんだから、ハオは自分のペースを守って」
ハオ「はい」
監t……アレクサンドラ「京太郎はハオを惑わさない」
京太郎「してませんよっ!」
明華(打つ筋やブラフで惑わすのは、よくあることのような……)
ネリー(まぁ言わないけど……まずはこれ、逆転しないとね……ふっふー、どうしよっかなー)
京太郎(言ってる間に、15000差か……キツいな、ほんと)
ハオ25000→9000→8000→6000→-42000
監督25000→41000
ネリー25000→27000
京太郎25000→26000→68000
京太郎(――小三元でも、複合で……ドラ乗って……おぉ! ギリギリ届いた!)ニッ
アレクサンドラ「――顔にださない」
京太郎「おっとと、すいません……あっ」
ハオ「……えっ」
京太郎「――大三元です」
ハオ「えぇぇっ!?」
アレクサンドラ「場に二枚、ドラ表示に一枚……誰も鳴いてないし、可能性はあったわね……」
ハオ「……ちなみに、こちらの場合は……」
京太郎「それだと倍満だったな。どっちにしろ、ギリギリ捲れてる」
ハオ「はぁ……完敗です」
ネリー「今日はハオの日じゃなかったね」
ハオ「これで三連敗です、京太郎には……」ショボン
京太郎「大丈夫か?」
ハオ「……もっと優しく、慰めてください」
京太郎「すまん……けど、麻雀で手抜きとはできないから……全力で挑んで、勝たないと、失礼だって思うんだ」
京太郎「よかったら……また打ってほしい。ハオとの麻雀は楽しい、いつも」
ハオ「っっ!」
京太郎「……だめか?」
ハオ「あ、あのっ、いえ……本当に、楽しいですか?」
京太郎「ハオの麻雀は、中国麻雀が基礎にあるって聞いてる。その打ち方は、俺にとって新鮮で……とても興味深いんだ」
京太郎「よかったらもっと、ハオの(麻雀の)ことを知りたいな」ニコッ
ハオ「~~~~~~~~~~~っっっ////」
ハオ(わ、私のことを……そんなっ、そんなぁっ……)
アレクサンドラ(……学習しない子ねぇ)ヤレヤレ
ネリー(ネリーの麻雀は、つまんないのかなぁ……)ショボン
明華(……おかしい、ハオとも二回しか打ってないはずです……まさか、昨日?)
アレクサンドラ「――それにしても、あそこから捲るなんてね、ほんと……」
明華「ハオにしては少し珍しかったですね、不用意でした」
京太郎「でしょうね。昨日は大学にまで来てもらったし、ちょっと疲れてるのかもしれないですね」
明華「へぇ……そうなんですか、明華」
ハオ「はい……京太郎には、すごい約束をさせられて……昨日こうだったら、私は……もう、どうなっていたか……はぁぁ……///」
ネリー「大丈夫? しゃべり方、溶けてるよ?」
ハオ「あぁ、まさしくです……もう、私の心は溶けてしまったのかもしれません……」
アレクサンドラ「……新入生入るまでに、元に戻ってよね」
明華「京太郎! 昨日、ハオになにをしたのですかっ」
京太郎「なにもしてないです!」
ハオ「そんなっ……いえ、そうですね。あんなこと、明華に言えるわけありません……」
京太郎「」
明華「……詳しく聞かせてもらえますか?」ニコォッ
――この後滅茶苦茶黙秘した。
~4月第一週土曜
京太郎「えっと……さっきの対局では、俺がハオに役満直撃させて、監督捲ったんですよね」
アレクサンドラ「なにその説明的なのは」
京太郎「二週間も開くと、忘れてるかなと思って」
ハオ「忘れるわけありません、あんな上がりをされて……責任とってもらいますからね」
京太郎「なんのだよ……」
ネリー「ネリーのも取ってね」
京太郎「だからなんの!」
明華「……次は私とも対局――」
京太郎「なんでですかっ!」
明華「」
京太郎「あっ……」
明華「……そうですよね、京太郎に負けた三人にも負けた私となんて、打っても……」
京太郎「間違えただけですぅぅっっ!」
ハオ「京太郎、いまのはさすがに……」
アレクサンドラ「相手は先輩、しかも女子よ?」
ネリー「紳士的じゃないよ……」
京太郎「ちくしょぉおおおおおおおお!」
京太郎「ま、また折をみてフォローしておこう」
明華(ふふ、気にしてます気にしてます……計算通り)ニヤリ
ハオ(悪い顔です……)
アレクサンドラ(……男子が混じったせいか、二人も妙に生き生きし始めてるわね……いい影響ならいいんだけど)
ネリー(お腹すいたなぁ……)グー
京太郎「――あ、メールが……ん、これは……?」
アレクサンドラ「まさかまた、大学に行くとか言いださないわよね?」
京太郎「――――」
アレクサドラ「で、誰からメールだって?」
京太郎「いえ、その……大学に行っても、なかなか会えなかった先輩が、珍しく誘ってくださいまして……」
アレクサンドラ「ほう」
京太郎「それで、えっと……世話になった先輩で、呼んでくださったならぜひ挨拶しなければと……」
アレクサンドラ「ふーん」
京太郎「…………断っておきます」
アレクサンドラ「え、どうして?」
京太郎「だって監督怒ってるじゃないですか!」
アレクサンドラ「別に怒ってないけど? 理由を聞いただけだし、事実確認してるだけだけれど」
京太郎「じゃあ行っていいんですか?」
アレクサンドラ「あの子たちを説得してからね」
ハオ「…………」
明華「…………」
ネリー「…………」
京太郎「…………」
京太郎「……明華先輩、いかがですか? もしかしたら、智葉先輩もいらっしゃるかもしれませんし」
明華「私ですか?」
京太郎「はい……その、よければですけど」
明華「そうですね……もっと情熱的、かつ強引に誘ってくだされば」
京太郎「ええええ……」
明華「だって京太郎、いつもそうやって控えめで……日本人らしく謙虚なのは素敵ですが、たまにはワイルドなところも見たいんです」
京太郎「……それじゃ、残念ですけど」
明華「えっ」
京太郎「あまり乗り気じゃないってことですよね、いまのお答えだと」
明華「!? ち、違います! そうではなく……」
京太郎「いえ、いいんですよ、無理にとは言いませんから。ハオかネリーを誘うことにします」
明華「待ってくださいっ、ですからいまのは――」
京太郎「……なんてね」
明華「……へ?」
京太郎「冗談です。よければ一緒に、なんて言いましたけど、俺だって明華先輩と行きたいんですよ」
京太郎「だから、お声をかけたんです」
明華「京太郎……」
京太郎「行きましょう、急がないと、遅くなります」スッ
明華「は、はいっ……」ギュッ
京太郎「それじゃ――あ、握ってもいいですか?」
明華「も、もう握ってるじゃありませんかっ……」
京太郎「それもそうですね。では行きましょう――ってことで、行ってきます」
アレクサンドラ「……ハラショー」
ハオ「訴訟も辞さない」
ネリー「……はっ! おやつ、用意してもらってない!」グー
明華(強引とは少し違いましたけど……これはこれで、素敵です……私と、行きたいなんて……嬉しいですね)フフッ
明華「でもいいんでしょうか。京太郎、毎日のように大学に顔をだして……」
京太郎「大学に行ってますけど、それ以外は部のために働いてるんです、これでも……」
明華「そうなのですか?」
京太郎「朝、昼と部室の掃除、牌磨き、自動卓の整備はやってますし、時間がないときは簡単になりますけど、差し入れは欠かしませんし」
明華「麻雀は?」
京太郎「う……今日はもう、対局しましたけど……」
明華「そうでしたね……でも一局だけ?」
京太郎「」
明華「ふふ、いまのは冗談です。そうですね、見ていないところでそれだけ働いてくれているなら、たまに大学で息抜きするのは、大目に見ましょう」
京太郎「はぁ……ありがとうございます」
明華「今日は私を誘ってくれたから、特別ですよ?」
京太郎「はい。これからもなるべく、お声をかけますので」
明華「明日からは、一年生の面倒を見る機会も増えますから、時間の使い方は計画的にお願いしますね?」
京太郎「心得ています」
明華「よろしい……では、久しぶりに智葉の顔でも見に参りましょうか」
京太郎「いらっしゃるかはわかりませんけど」
明華「それならそれで、京太郎と楽しく麻雀してると、メールして悔しがらせておきましょう」
京太郎「軽く流しそうですけどね、あの人なら……」
明華(流さないと思いますよ。あまり表にだしませんけど、智葉はとても情熱的で、嫉妬深いのですから)
京太郎「おっと、そうだ……これから行くって連絡しておかないと、また誰かが着替えていたら困るからな……これでよし、と」
明華「京太郎?」
京太郎「はい?」
明華「また――ということは、誰かの着替えを見たのですか?」
京太郎「あ」
明華「……見たのですね」
京太郎「ち、違うんです! いや違わないですけど、違うんです!」
明華「……今度、部室で着替えておこうかしら……」ブツブツ
京太郎「えっ?」
明華「――いえ、なんでもありません。ともかく、どこかに入るときは、たとえ連絡していても、ノックして声をかけるんですよ」
京太郎「了解しました!」
京太郎「失礼します、京太郎です! 入ってもよろしいでしょうか!」
巴「はーい、開いてるよー。入ってはいって」
京太郎「失礼します」
明華「お邪魔いたします」
巴「…………」
明華「あ、恐れ入ります。私、臨海女子三年、雀明華と申します。永水の狩宿巴さん、とお見受けしましたが?」
巴「風神!?」
明華「お恥ずかしいですが、そう呼ばれています」
巴「は、はじめましてっ。京太郎くんっ、お客さんがいるなら、先に言っておいて!」
京太郎「あー……すいません、着替えを恐れるあまり、そっちの連絡を忘れてました」
巴「ああ、それでちゃんとノックして、声かけたのね……」
京太郎「普段してないみたいに言わないでくださいっ!」
巴「でもしてないよね?」
京太郎「」
巴「執事なのにねぇ……」
京太郎「面目次第も……」
巴「まぁ、今日は気をつけてたみたいだしね。今後も忘れないように」
京太郎「はい……」
明華「ふふっ、狩宿さんは、京太郎のお姉さまみたいですね」
巴「京太郎くんが弟か……それもいいかもね」
京太郎「シスコンになりますよ、俺」
巴「はいはい、甘えないようにね」
京太郎「厳しい……」
明華「私が姉なら、甘やかしてあげますよ?」
明華「」キュン
巴「はいはい、ジャレつかない……そろそろもう一人来るけど、練習していく?」
京太郎「え、そりゃしますけど……しない選択肢もあるんですか?」
巴「明華さんは、その監督役なんじゃないの?」
明華「誘われましたが、練習とは聞いてませんね」
巴「ああ、そうなんだ……まぁそれなら、京太郎くんに任せようかな」
京太郎「いえ、練習していきますよ。監督にも少し注意されてますから。大学に顔をだして弱くなるようなら、もう来られなくなっちゃいますし」
京太郎(巴先輩の袴姿見るまで、俺は何度でも大学に顔をだす!)ゴッ
巴「……なんか不純な目的じゃない?」
京太郎「め、滅相もない」
明華「わかりやすく目が泳いでますね」
京太郎「うぐぅ……あ、も、もうお一方、いらっしゃいましたよ!」
巴「誤魔化さないの……まぁいいや。それじゃ、始めようか」
智葉「――また来てるのか、京太郎」
哩「よっぽど暇なんか……それとも、私らに会いたかっち思っとう?」
京太郎「暇ではないですよ、もちろん。会いたいっていうのは否定しませんが」
哩「ふふ、嬉しかこと言うてくれる」
明華「そうやってすぐ、女の子に色目を使うんですから……」
京太郎「使ってませんよ!」
智葉「明華?」
明華「お久しぶりです、智葉」
智葉「ああ……しかし困ったな、メンツが余ってしまった」
京太郎「お茶淹れますし、俺が抜けますよ」
哩「却下」
巴「私たちの共通の考えは、京太郎くんに麻雀打たせることだからね」
智葉「なら私が抜ける」
明華「いえ、私が抜けますよ。学校で打てますし、皆さんと京太郎がどんな麻雀を打つか、見せていただきたいので」
智葉「いいのか?」
明華「ええ。来られたのがお一人なら、入ろうと思っていましたけれど」
哩「なんか悪かことしたね」
明華「お構いなく」
京太郎「なら、早く終わらせて交代しましょう」
巴「すごい自信だね」
京太郎「えっ……ああ! そういうつもりではっ……」
明華「私のために頑張ってくださいね、京太郎♪」
智葉「……ずいぶん明華に好かれているようだな」
京太郎「明華さんは社交的で、誰にでも優しいですよね」
明華「」
智葉「……これだ、まったく……」
哩「全仏が泣いた」
巴「これは仇を取ってあげないとね」
京太郎「なぜぇ!?」
京太郎「これは……まさに四面楚歌だ……」
哩「まぁまぁ、そこまで気張らんでもよか」
智葉「少し反省してくれればいい。言動についてな」
明華「がんばれ♪ がんばれ♪」
京太郎「うぅ、見方は明華先輩だけだ……せめてこの人のために、頑張ろう」
京太郎(半荘勝負だけど――別に、一局で終わらせても構わんのだろう?)
智葉(……まーた妙なことを考えて……)
巴(余計なことは考えないほうが、強いんだよねぇ……)
哩(んー、チャンスかもしれんばい……)
巴25000→24200
智葉25000→24600
哩25000→24600
京太郎25000→26600
京太郎「ツモ――400、800」
明華「さすがです、京太郎!」
智葉「相変わらず――いや、昨日やその前より、格段に早くなっているな」
哩「なんかいいことでもあったと?」
京太郎「いや、そういうことでもないんですけど……なんか調子がいいですね。出がけに役満上がれたからでしょうか」
智葉「……明華、誰が振った?」
明華「ハオですよ」
智葉「ハオか、前も調子が悪そうだったな……スランプなら、たまには息抜きするよう伝えてやってくれ」
明華「ご心配なく。京太郎くんが絡まなければ、十分強いですよ」
哩「……どうしたと、巴。さっきから表情ば暗くなっとらん?」
巴「えっ……いえ、大丈夫です……」
哩「ならいいが……」
京太郎「疲れているなら、ちゃんと言ってくださいね?」
巴「うん、ありがとう」
巴(……なんか、変な感じ……私の結界が、こっちにかかってるみたいな……)
巴25000→13000→11700
智葉25000→19000
哩25000→19000
京太郎25000→49000→50300
京太郎「ロン、1000点です」
巴「……はい。京太郎くん、遠慮しないで、もっとしっかり上がっていいんだよ?」
京太郎「えっ……いえ、遠慮なんてとんでもないです」
巴「そう? ならいいけど……姫様とかはっちゃんとか、いまの京太郎くんみたいな状態だと、すごい点数で飛ばしてくるから」
智葉「神代、薄墨に比肩するほどか」
哩「変なもんでも憑いとるん?」
巴「いえ、そういうのでは……どちらかといえば、神聖な――って、姫様もはっちゃんも、変なものなんて降ろしてません!」
明華「まぁまぁ」
京太郎(……そういえば、俺の中に鏡があるとか……それのことか?)
巴25000→13000→11700→-300
智葉25000→19000
哩25000→19000
京太郎25000→49000→50300→62300 トップ
京太郎「ロン――12000、終了ですね。ありがとうございました」
智葉「……驚いたな。手も足も出なかったとは、このことか」
哩「焼き鳥か……あー、完敗ったい」
巴「……本当に、強くなったね、京太郎くん。初めて派遣でうちの来たときが、もうずっと昔のことに思える」
京太郎「俺が強いと思ってくださるのなら、それはあのときがあったからこそです。あのとき巴先輩に会ったからこそ、俺は強くなったんじゃないでしょうか」
巴「そ、そうかな……///」
京太郎「はい、もちろんですっ」
智葉(出たか……)
哩(出たばい……)
明華(出ましたね……)
巴「それならまだ、京太郎くんの先輩を名乗っても怒られないね」
京太郎「誰も怒りませんよ。俺だって嬉しいですし」
巴「ふふ、そっかそっか……ね、京太郎くん」
京太郎「はい?」
巴「ううん、呼んでみただけ」
京太郎「そうですか」
巴(……ありがとね、京太郎くん……私はもう、京太郎くんには敵わないだろうけど……京太郎くんがそう言ってくれるなら、麻雀は続けるよ……頑張るからね)
京太郎トップ終了
智葉(……強い)
智葉(いや、当然だ……女子ほどではないが、男子のチャンピオン……それも従来のチャンピオンとは桁違いなのだから)
智葉(それでも、少しは対抗しうる……それどころか、まだ私が上だと思っていた)
智葉(なのに、打つたびに思い知らされる……京太郎の、天井知らずの強さを……)
京太郎「――んぱい、智葉先輩っ……」
智葉「――どうした?」
京太郎「いえ、ボーッとされてるようでしたので……少し休まれますか? どうぞ、お茶淹れましたので」
智葉「大丈夫だ……ふぅ、おいしい」
京太郎「お疲れなら、今日のお店はお休みしたほうがいいですね」
智葉「バカ言うな。後輩に仕事を押しつけて寝ていたら、両親になにを言われるか」
京太郎「俺がお願いしてもですか?」
智葉「……京太郎のお願いを聞く義理はあるか?」
京太郎「ないです……」
智葉(……はぁ、まったく……)
智葉「――冗談だ。京太郎のお願いを聞く義理なんて……いくらでもあるに決まってるだろう」
京太郎「えっ」
智葉「だが、休むのはやめておく。せっかくの申し出だが、いまは少しでも、家の助けになりたいんだ」
京太郎「でも――」
智葉「心配するな、それほどヤワではないし、限界は見極めている……ただ――」
京太郎「ただ?」
智葉「……仕事中、最低限の注意で構わないから……」
京太郎「はい」
智葉「……わ、私を……その……見ていてほしい……」カァッ
京太郎「――――」
智葉「だ、だめか?」チラッ
京太郎「――いえ、とんでもない。もちろん、見ています」
智葉「そうか……」ホッ
京太郎「不調の兆しが見えましたら、無理やりにでも休んでいただきます。これは智葉先輩のためですけど――」
京太郎「それがお店のため、引いてはお客様のためですから」
智葉「……うん、そうしよう」
京太郎「すみません、生意気なことを」
智葉「気にするな……私は君に借りがある。しかも、麻雀の腕でも到底及ばないほどだ」
京太郎「そんなこと……」
智葉「お世辞だ、ありがたく受け取っておけ」クスッ
京太郎「あ――ああ、そうですよね、ははっ……ありがとうございます」
智葉(……賞賛を受け取らない頑固なところ、なんとなく……私に似ているような気もするな)フフッ
京太郎「さて、それじゃ早いですけど、今日はここまでで」
巴「今日もお店?」
智葉「ああ、すまないな」
哩「気にせんちよか。大変なときは、お互いさまやけん」
智葉「助かる」
明華「では私もこれで」
智葉「ああ、気をつけて――いや、京太郎」
京太郎「はい」
智葉「店のほうはまだ大丈夫だ。明華を送ってやれ」
京太郎「いいんですか?」
智葉「どちらを優先すべきか、考えるまでもないだろう?」
京太郎「――了解です」
明華「では、よろしくお願いします。お気遣いどうも、智葉」
智葉「気をつけてな」
巴「それじゃ、私たちも帰りましょうか」
哩「こっちは女同士、用心して帰らんとね」
智葉「私が付き添う。部屋で着替えてから店に行きたいしな」
京太郎「それじゃ、なるべく急ぎますので」
明華「まぁ! そんなに私と一緒にいたくないですか?」
京太郎「ち、違いますよっ」
明華「ふふっ、冗談です」
京太郎「それじゃ、明華先輩……お疲れさまでした」
明華「ええ。連れて行ってくれて、ありがとう……また明日ね」ギュッ
京太郎「!?」
明華「」チュッチュッ
京太郎「ちょっ!?」
明華「ほっぺにベーゼは、挨拶ですよ?」
京太郎「あ、ああ、そっか……では、えと……お疲れ――」
明華「私には?」
京太郎「か、勘弁してください……」
明華「えー」
アレクサンドラ「そこのバカップル、それ以上続けるなら不純異性交遊で停学よ」
明華「あら、そんな規則があるなんて思いませんでした。女子校なのに」
アレクサンドラ「部内規則よ。京太郎が来たから作っておいたの」
明華「部員の士気、下がっちゃいますよ?」
アレクサンドラ「一人とそういうことされるほうが、全員のが下がるのよ」
明華「なるほど、納得です……それじゃ、また明日、京太郎」
京太郎「ふぅ――助かりました、監督」
アレクサンドラ「本当に? 鼻の下伸びきって、いまにもハグしそうだったけど」
京太郎「しませんよっ!」
アレクサンドラ「まぁいいけどね……で、今日はもう帰るの?」
京太郎「いえ、智葉先輩の実家で仕事です」
アレクサンドラ「ツジね、それなら送って行ってあげるわ。なるべく早く着きたいでしょう?」
京太郎「いいんですか?」
アレクサンドラ「OGのフォローも、部のためになるからね」
京太郎「いえ、部内規則的に」
アレクサンドラ「私とイチャイチャしたいの?」
京太郎「そ、そういう意味では……」
アレクサンドラ「……ま、安心なさい。あれウソだから」
アレクサンドラ「だから気にしないで、リアシートでも助手席でも、好きなのに座りなさい」
京太郎「ではお言葉に甘えて……」
アレクサンドラ「……助手席なんだ」
京太郎「ダメでした?」
アレクサンドラ「んー……別に? さて、行きましょうか」
最終更新:2026年01月17日 13:35