京太郎「いまから、シロさんの部屋に伺ってもいいですか?」
シロ「……いいけど、男子禁制の女子寮だってわかってる?」
京太郎「あれ……そうでしたっけ」
シロ「そうだよ」
京太郎「じゃあどうしましょう……」
シロ「京太郎が決めて」
京太郎「いや、でも……怒られませんか、俺が行ったら」
シロ「バレればね」
京太郎「だめじゃん……」
シロ「バレなかったらへーき」
京太郎(そういう問題か……?)
シロ「問題さえ起こさなきゃ大丈夫でしょ。ほかの選手に迷惑かけるとか」
京太郎「……入口からシロさんの部屋まで、どのくらいですか」
シロ「一階の奥だから、すぐだよ」
京太郎「じゃあ大丈夫かな……」
シロ「隣の部屋、外で部屋借りることにした同期のだったから、空いてるし……声出ても、たぶん大丈夫だと思うけど」
京太郎「声?」
シロ「……まぁ、私はそんなにださないと思うけど……一応」
京太郎「なんの話ですかっ!?」
~シロの部屋
京太郎「……結局、来てしまった」
シロ「寮監さんが留守でよかった……」
京太郎「帰るときいたら、まずくないですか?」
シロ「なら泊まっていって、夜中コッソリ帰れば?」
京太郎「いや、シロさん今日試合ですよねっ? それ行ってる間とか、どうすりゃいいんですか」
シロ「……そうだったね。それは来て欲しいし、うーん……」
京太郎「行っていいんですか?」
シロ「うん。そのために……はい、これも渡そうと思ってたから」
京太郎「観戦チケット……大部屋じゃなくて、対局室の?」
シロ「麻雀経験者にしか渡せないんだけど、インハイチャンプなら問題ないと思う」
シロ「でも声はださないようにね。みんな集中してるから」
京太郎「選手はよくしゃべりそうですけどね、洋榎先輩とか」
シロ「洋榎は……胡桃もいつも言ってたなぁ」
シロ「っていうか、デート中にほかの女の名前はやめて」ムー
京太郎「あ……すいません、つい……」
シロ「つい、で出てくるくらい、洋榎と仲いいの?」
京太郎「まぁ普通です。シロさんと同じくらいかと」
シロ「……かなり仲いいんだね」
京太郎「そうですか?」
シロ「……そうでしょ。お互いの部屋、行き来するくらいだから」
京太郎「……たしかに……でも、洋榎先輩とはそういうのないですね」
シロ「なら私の勝ち」
京太郎「ですね」
シロ「……よかった」
京太郎「さて――それじゃ、部屋に来たわけですし、早いとこ用事を済ませちゃいましょう」
シロ「っ……うん、それじゃ……さ、先にシャワー……」
京太郎「必要ないです」
シロ「!! だ、だけど、ほら……今日暑くて、汗もかいたし……さっきも言ったと思うけど……」
京太郎「終わってからのほうがいいですよ。また汗かくわけですから」
シロ「そ、それはそうだけど……臭いとか、さすがに……」
京太郎「窓開ければ大丈夫じゃないですか?」
シロ「!? 閉めて、それはっ……あと、電気も消して……」
京太郎「点けないと、よく見えないですよ」
シロ「あ、う……そう、だけど……私も、京太郎の……見たいし……」
京太郎「ああ、そういえば久しぶりですね、シロさんの前でするのは」
シロ「したことない、と……思うけど……あ、でも私は何回か、見られたかな」
京太郎「そうでしたっけ?」
シロ「……忘れるとか、さいてーだと思うけど」ダル
京太郎「いや、でも宮守にいたときはシロさん、あんまり動いてなかったですし、俺がほとんどしてましたよ……たぶん」
シロ「……全然、覚えてない」
京太郎「ひどい……」
シロ「ごめん……それじゃ、今日……もう一回、思いださせて」シュル…
京太郎「そうですね……なら、始めましょうか」
シロ「…………これは?」
京太郎「はたきです。天井とか棚の上は俺がやりますので、シロさんは手の届くとこの埃を落としてください」
シロ「あれ……?」
京太郎「いえ、ですから掃除……片付いてはいますけど、この機会に一通り、片づけさせてもらいます」
シロ「……掃除、だったんだ……」
京太郎「なんだと思ってたんですか」
シロ「ナニ……いや、なんでもないよ……」
京太郎「終わったら、俺が窓拭きしますので。シロさんは掃除機かけてくださいね」
シロ「はいはい」ダル
シロ「はぁ……ダル……」ゴロン
京太郎「お疲れさまでした。どうぞ、お茶淹れましたので」
シロ「ん、ありが――え、どうやって」
京太郎「ティーセットで」
シロ「私、持ってないけど」
京太郎「大丈夫です、いつも携帯してますから」
シロ(……もういいや、深く聞かないでおこう)
京太郎「シロさん?」
シロ「ううん、なんでもない……いただきます」
京太郎「どうぞ。思ったより片付いてましたし、掃除しやすかったですよ」
シロ「綺麗にできてると思ってたんだけどなぁ……」
京太郎「いえ、十分綺麗でしたって。けど、それならどうして、ちゃんと生活できてない、みたいなフリしてたんですか」
シロ「京太郎が来てくれるかと思って」
京太郎「……罠だったのか」
シロ「そう。かかっちゃったね」
京太郎「そんなことしないで、普通に誘ってくださいよ」
シロ「そういうのは男からアプローチして」
京太郎「う……」
シロ「返事は」
京太郎「……はい」
シロ「よろしい……でも、来てくれたし許してあげる」
京太郎「ありがとうございます!」
シロ「いい子いい子……うーん、やっぱりもったいない」
京太郎「なにがですか」
シロ「自慢したい」
京太郎「はい?」
シロ「先輩と同期に見せびらかして、羨ましがられたい」
京太郎「そんな大それたものでも……」
シロ「大それたものだよ、京太郎は……いつも、隣にいていいのか悩む」
京太郎「シロさんが悩むだなんて……」
シロ「おかしい?」ギロッ
京太郎「い、いえ……そうではなく、そんなことで悩まなくても……俺のほうこそ、シロさんと一緒にいられて嬉しいくらいですから」
シロ「京太郎……」
京太郎「自慢するようなものはないと思いますけど、試合のあとにでも、余裕があれば紹介してくださると、嬉しいです」
シロ「ん……わかった。なら余裕ができるように、絶対勝つ」
京太郎「頑張ってください」
シロ「いいの?」
京太郎「もちろん」
シロ「今日の相手は恵比寿だよ」
京太郎「……えっ」
シロ「私は先鋒じゃないけど、相手の先鋒はいつも――」
~夜、試合開始~対局ルーム
『圧倒的な先鋒戦! 強い、強すぎるぞ――っ! これがインハイ最強チャンプ、宮永照なのか――っ!』
『元チャンプ、ですけどね。とはいえ高卒でのこの活躍は、見事の一言でしょうか』
照(まさか京ちゃんが来てるなんて……驚いたけど、今日は愛の力で絶対に勝つ)テルテル
京太郎「すっげ……いつも好調だとは聞いてたけど、今日はいつにも増してやばいな」
京太郎「まるで……そう、まるで……去年の夏大会、準決勝卓みたいだ……」
玄「」カタカタ
宥「く、玄ちゃんっ!? どうしたの、玄ちゃんっ!」
京太郎「次鋒がシロさん……頑張って、巻き返してください……っ」
シロ(……ダル……やばいなぁ、今日の照……まぁ京太郎連れてきたからか、うかつだったかも……)
シロ(なんとかしないとなぁ……)
「ごめん、シロ……あとよろしく」トボトボ
シロ「はい。まぁ……なるべく、取り返します」
シロ(とはいうものの、ダルくなりそう……京太郎分が不足してきてるし……)
シロ(観戦してくれてるだけじゃ、足りないなぁ……)ドウシヨ
京太郎「――シロさんっ!」タッタッタッ
シロ「――っ!」
シロ「京太郎……どうしたの、ここは関係者以外……」
京太郎「わかってます! 5分だけ、警備の人が時間くれましたっ……」
シロ「なんでまた……あっ」
シロ(……そういえば、ここの警備員さん女性もいたっけ……)ジロッ
京太郎「?」ビクッ
京太郎「と、とにかくっ……あの、点数、大変だと思いますけど……」
シロ「うん……」
京太郎「……っ……」ギュッ
シロ「………………えっ」
京太郎「…………っ」ギュゥッ
シロ「……あの、こういうときは……なにか、激励とか……」
京太郎「……わかってます、でも……いい言葉が、浮かばなくてっ……」
京太郎「すいません、でも……応援してますから、最後まで……」
シロ「…………ん」ギュゥ
シロ「……任せて」
シロ「あそこ、一番いい席だから……見てて」
京太郎「はいっ……」
シロ「勝ったら婚約発表ね」
京太郎「はい――えっ」
シロ「冗談……いまは、ね」
シロ「それじゃ、行ってくる……」
京太郎「が――頑張ってください!」
シロ「頑張るの、ダルいけど……頑張るよ」
~デート仮終了
~試合終了後
京太郎「残念でしたね……」
シロ「ごめん、捲れなくて」
京太郎「いえ、シロさんは十分なほど迫りましたよ……チームの勢いは、あれでついたと思います」
先輩1「はいはい、うちらのせいうちらのせい」
先輩2「ごめん、私のせいで……」
先輩3「よし、反省会だ」
先輩4「まぁ長いペナント、そういうこともあるよ。今日は2位まで迫れただけで上々、切り替えていく」
京太郎「いえ、その、誰のせいとかではなく……」
シロ「すいません、生意気な後輩で」
先輩1「うわっ、シロのくせに先輩面してる、なっまいき~」
先輩2「インハイチャンプで料理上手な彼氏とか、爆発しろ」
先輩3「彼氏とは聞いてないが」
先輩4「じゃあ召使だ」
京太郎「いえ、執事です」
シロ「それでいいの……?」
テレビ『それでは、本日のWOMは恵比寿先鋒、宮永照選手です』
照『京ちゃん、勝ったよ! どうして帰っちゃったの!』
シロ「……呼ばれてるよ、京ちゃん」
先輩2「おのれ宮永……許さん! お前も爆発しろ!」
先輩1「誰でもいいのか……」
先輩3「なるほど、あっちが彼女か」
先輩4「シロは愛人か」
京太郎「…………どうしてそうなるんですか」
シロ「ごめん、困った先輩方で……」
京太郎「いえ、シロさんが謝ることでも……」
シロ「あっちが愛人だよね」
京太郎「とりあえず謝りましょう、照さんに」
先輩1「しかし、順位が上がらんなぁ」
先輩2「まぁあと100試合はあるし、なんとかなるよ」
先輩3「と、戦犯が申しております」
先輩4「これで何位だったか、うちは……うお、6位か。恵比寿、横浜、大宮、千葉、札幌、安定してるな」
京太郎「照さん、咏さん、メグ先輩にはやりさん、一つ飛んでレジェンドか……」
シロ「絃は知らないの?」
京太郎「絃……霜崎絃さんですか?」
シロ「知ってるのに飛ばしたの?」
京太郎「いえ、すごく強い人だって、阿知賀にいたときに噂を……」
シロ「ああ、そういえば練習で付き合ったとかなんとか……その子、千葉だから」
京太郎「へぇ……シロさんたちの代、頑張ってますね」
シロ「関西のほうもね。私たち、宮永照世代らしいから」
京太郎「やっぱり代表格は照さんなんですね」
シロ「そうだね……京太郎はきっと、須賀京太郎世代だよ」
京太郎「宮永咲世代かもしれませんよ。もしくは大星淡世代」
シロ「あと二年、大会は3回か……一回は大星が勝った、あとはどっちかな」
京太郎「勝ったほうが世代を背負うんですか」
シロ「そういうもんだよ……京太郎は連覇確定だね」
京太郎「うっ、プレッシャーが……」
シロ「嘘ばっかり」
京太郎「嘘じゃないですって」
京太郎「油断はできません。強い人はどこにでもいますし、急に現れるものですから」キリッ
シロ「京太郎みたいにね」
京太郎「俺は皆さんに強くしてもらったので」
シロ「ふぅん……真面目だね、相変わらず」
京太郎「もちろんです」
シロ「そこが好き」
京太郎「ありがとうございます」ペッコリン
シロ(……好きって言ったのに、なんて反応……)
先輩1「脈、ないのかな……」
先輩2「シロかわいそう……」
先輩3「仕方ない、東京モジョーズの新メンにしてやるか」
先輩4「ありがたく思えよ」
シロ「慎んでお断りします」
京太郎「シロさんは美人ですし、モテそうですからね」
シロ「京太郎……///」
先輩1「ほう」
先輩2「よく言ったな、チャンプ」
先輩3「だが我らの前でそれは命取りよ」
先輩4「覚悟しろ……その唇もらったーっ!」
京太郎「ヒェッ」
シロ「唇はだめ。それ以外ならいいです」
京太郎「シロさん止めてぇ――っっ!?」
――唇は死守しました。あ、ちなみに反省会 in 東京女子寮です。男子禁制は投げ捨てるもの。
~4月連休初日、夜
京太郎「はぁ、ひどい目に遭った……」
京太郎「でもシロさんのかっこいいところは見られたし、よかった……って、ちょっと待て」
京太郎「今日、デートだったのに……結局、家と、シロさんの部屋と、対局観戦しかしてない」ハッ
京太郎「あんなんでよかったのかな、シロさんは……なんか申し訳ないような」
京太郎「帰り際、楽しかったとは言ってくれたけど、あの人もあれで、気を遣ってくれる人だし……」
京太郎「ああ さいしょから やりなおすことが できれば……」
京太郎「いやいや、まだ次の機会もある……そのとき挽回しよう」
京太郎「――今日中に電話、しておくか……」
京太郎「……もしもし、京太郎です」
シロ『うん、私だけど』
京太郎「いま、大丈夫で――」
『誰だぁーっ、彼氏かぁーっ!』
『あれでしょ、召使いの……』
『執事じゃなかったっけ』
『でも犬っぽくもある』
シロ『……ごめん、部屋出たから大丈夫』
京太郎「ずいぶん酔ってらっしゃいましたね」
シロ『いつもこんな感じだよ』
京太郎「まさかとは思いますが、シロさんは……」
シロ『呑んだら大問題。寮監さんも厳しく見てるから、大丈夫』
京太郎「ならいいですが……って、厳しいなら、俺が入るときに追いだされてもおかしくなかったですね」
シロ『うん、まぁ……ただ、あの人ね、高校麻雀のファンなんだって』
京太郎「へぇ」
シロ『今度サインほしいってさ』
京太郎「してあげたらいいじゃないですか?」
シロ『……京太郎のだよ』
京太郎「俺ェ?」
シロ『君』
京太郎「いや、俺のサインなんて……っていうか、サインとかないですし」
シロ『色紙に名前書くだけでいいと思うよ。去年、豊音が原村和とか神代小蒔にもらったとき、そんなだったし』
京太郎「わかりました……字の練習しときます」
シロ『よろしく。それがあれば、出入り自由になるから』
京太郎「……寮監さん、厳しいんですよね?」
シロ『鬼だよ』
京太郎「厳しいってなんだっけ……」
シロ『それで、電話してきてくれたってことは、次の約束?』
京太郎「ではないんですが……」
京太郎「シロさんの声が聞きたくて、つい」
シロ『……調子いいこと言って』
京太郎「ほ、本当ですって」
シロ『……ありがと、嬉しい』
京太郎「今日はご飯食べて掃除して、あんまりゆっくりって感じでもなかったですし」
シロ『いつも通りだったね……宮守にいたときの』
京太郎「ですね」
シロ『でもわかった』
シロ『ああいうのが、私たちには合ってるんだって』
シロ『京太郎もそう思わなかった?』
京太郎「確かに……一緒に暮らしてるみたいな空気が――」
シロ『えっ』
京太郎「一緒に暮らしてるみたいな空気だなって、そんな風に――」
シロ『……うん』
京太郎「宮守でのアパートも、そんな感じでしたもんね」
京太郎「あのときは、まだ二校目の派遣で、心細かったですけど――」
京太郎「シロさんのおかげで、そういうこともなかったし……寂しくもなかったです」
シロ『いまは、寂しい?』
京太郎「ん……どうでしょう。確かに、一人だと持て余すときもありますけど……」
京太郎「こうやって、シロさんに電話をすれば、声も聞けますからね」
シロ『隣にはいないけどね』
京太郎「そこは寂しいですね、やっぱり」
シロ『そっか……京太郎がその気なら、いつでも一緒に住むよ?』
京太郎「マジすか!」
シロ『2DKか2LDKね。部屋はちゃんと分けるけど』
京太郎「ですよね……」
シロ(そうじゃないと、我慢できなくなるし……)
京太郎「まぁでも、ひとつ屋根の下はまずいですか、さすがに……」
京太郎「シロさんのお父さんにも、怒られそうですし」
シロ『大事なのは私たちの気持ちで、父さんは関係ないよ』
京太郎「まぁそうですけど……って、あれ? 一緒に住む流れですか?」
シロ『そのうちね。京太郎がいいなら、いつでもいいけど』
京太郎(おおう、マジだこの人……)
京太郎(……いやいや、ここは冷静になろう、うん)
京太郎「……いまは、お互いの生活を重視したほうがいいですよ。環境が変わったばかりですし」
シロ『……ん、わかった』
シロ『優等生だね、京太郎は』
京太郎「ええええ……普通のことなのに……」
シロ『あ――部屋別が嫌だった?』
京太郎「そこは関係ないです」
シロ『感情的には一緒でいいんだけど、理性的に反対したっていうか……』
京太郎「いえ、ですから――」
シロ『それなら1LDKでも1DKでも――』
京太郎「そこは関係ないですってば!」
シロ『じゃあどうして』
京太郎「……もしかして、シロさん的にはわりと本気ですか?」
シロ『私はいつでも本気だけど……京太郎はそうじゃなかった?』
京太郎「……いえ、そういうわけじゃ……シロさんのほうが、冗談なのかと思ってましたから……そうか……」
シロ『どうしたの?』
京太郎「そういうことなら、もっと真剣に考えようと思って……それでいいですか?」
シロ『――いいよ』
シロ『そのほうが嬉しい……結論が同じでも、真剣に考えてくれたなら、許す』
京太郎「ありがとうございます……でも、一緒に住むとなったら、家事は平等ですからね」
シロ『えええ……』
京太郎「そういうのが、ルームシェアの大事なとこですから」
シロ『ルームシェア、か……まぁそれでいいかな』
シロ(……実際にしたら、ちゃんと同棲だって言ってあげよう……ふふふ)
~連休初日、終了
~4月連休二日目、朝
京太郎「……お、昨日の試合が載ってるな」
京太郎「やっぱり照さんがデカく取り上げられてる……」
京太郎「『小鍛治健夜の再臨か、いや――彼女ならばそんなコメントはしない』」
京太郎「『宮永照曰く、これは愛の力』……いや、それは健夜さんが怒るだろ」
京太郎「……あ、ヒロインインタビュー遅れたのも書いてあるな」
京太郎「『京ちゃんがいたのに終わるといなかったというか鬼なる』」
京太郎「――って、俺を探してたのか、なるほど」
京太郎「まぁ昨日はあくまで、シロさんの応援だったし……仕方ないな、うん」
京太郎「毎日チケット送ってくれそうだったから、行けそうな日は連絡しますって言ったんだけど……」
京太郎「そういえば、一回も行ってあげられてないな、照さんの試合……なにげに昨日が初めてか」
京太郎「そのうち、連絡して行ってみようかな。でもヒロインインタビューに呼ばれるのは困る」
京太郎「まぁ――俺が見てたからって、あれだけ活躍してくれたのは、素直に嬉しいんだけどな」
照『いつでも籍を入れる準備はあるよ、京ちゃん』
京太郎「……おかしい、幻聴が……疲れてるのかな」
咲『そうだよ』
照『咲は黙ってて』
京太郎「……姉妹ゲンカはよそでやってほしいなぁ」
~二日目、学校
京太郎「――ってことがありましたんで。今日はちょっと、帰って休んでいいですか?」
アレクサンドラ「いいわけないでしょ。さ、始めるよー」
京太郎「ですよねー」
明華「だいぶお疲れですね、京太郎」
京太郎「まぁ、はい……たぶん、初めてプロの試合見たんで、昂ぶってるだけかと」
ハオ「よければその昂ぶり、鎮めて差し上げますが///」
京太郎「ハオこそ顔赤いぞ、帰って休んだほうがいいんじゃないか?」
ハオ「……いえ、大丈夫です」
京太郎「あ――なんだったら看病するけど」
ハオ「あぁ、急に立ち眩みが……部屋まで送っていただけますか?」チラッ
明華「ああ、頭が……なんだか脚も、力が入りません……」クラッ
ネリー「胸が痛いよう」
京太郎(成長痛かな?)
ネリー「ふんっ!」ベシッ
京太郎「痛い」
ネリー「失礼なこと考えるから」
京太郎「読心術!?」
アレクサンドラ「いつまでも遊んでないで、練習してほしいんだけど」
ハオ「遊びではありません! 私たちは病気なんです!」
アレクサンドラ「頭のね」
明華「どちらかといえば心です……そう、これは恋のやま――」
アレクサンドラ「またベタな……」
ネリー「監督、あっち行っててよ!」
アレクサンドラ「……泣くわよ?」
京太郎「お疲れさまです……」
アレクサンドラ「誰のせいだと思ってるの」
京太郎「俺ェ?」
アレクサンドラ「わかってるなら、あの三人元に戻してきて」
京太郎「理不尽っす……」
京太郎「ふぅ……三人も元に戻って、無事に一年の指導も終わったな」
明華「ご迷惑をおかけしました」
京太郎「そんな。俺なんていつも、迷惑かけ通しですし」
ハオ「頼りになります、京太郎は……」
京太郎「そんなことないって。それより、俺たちも練習しようぜ」
ネリー「よーし、打つぞー」
京太郎「おう、やるか!」
アレクサンドラ「……キョウタロウがいなくなったら、まともになるのか壊れるのか……後者だったら大変だわ」
京太郎「さて、と――まずはどうするかな」
京太郎「んじゃ――とにもかくにも、練習するか」
明華「そうですね。それでは、いつものから参りましょうか」
ハオ「ネリーと監督は、まだ抜けていませんでしたね」
ネリー「ふーんだ、今日も勝っちゃうからね」
アレクサンドラ「まぁ、キョウタロウと打つのはなんだかんだで楽しいからね。私も、ちょっとは楽しみにしようかしら」
京太郎「それはありがたいですけど……あの、決まるまで、また俺は……」
明華「大丈夫です、すぐに決めますから」
京太郎「ならいいんですが……」
明華「……こ、こんなはずでは……」
ハオ「勝ちました、京太郎!」
京太郎「おめでとう……それじゃ、えっと……明華先輩……」
明華「ふぐっ……う、うぅっ……」
京太郎(マジ泣きっ!?)
ネリー「ウソ泣きだよ」
アレクサンドラ「はいはい、目薬しまって」
明華「はぁ……残念です、京太郎」
京太郎「ええ、はい……ま、まぁ、また機会ありますから。今回は、仕方ないですね」
明華「仕方ないので、隣に座っていますね」
京太郎「いや、あの、後ろに張りつかないでください」
明華「大丈夫ですよ、壁役なんてしませんから。こうしてピッタリと……寄り添っているだけです」フー
京太郎「にょわっ!? ちょ、み、耳に息は……あふんっ」
ハオ「」ゴゴゴゴゴゴゴ
ネリー「あれいいのっ?」
アレクサンドラ「無理に離すとおかしくなりそうだし」
京太郎「集中できにぃ……」
アレクサンドラ「はい、それじゃよろしく」
ハオ「よろしくお願いします」
ネリー「負けないよっ」
京太郎「よろしくお願いします」
京太郎(胸が当たって集中できない……」
ハオ「聞こえてます」
京太郎「」
明華「ふふ、ごめんなさい、京太郎」ムニュ
京太郎(でも離れないんですね……まぁいいや)
アレクサンドラ(……なんかイラッとするわね)
ネリー(ネリーもあと3年あれば……)
アレクサンドラ25000→7000
ネリー25000→16000
ハオ25000→16000
京太郎25000→61000
京太郎「――ツモ、大四喜です」
三人『』
明華「さすがです、京太郎!」ギュー
京太郎「妙に風牌の集まりがよかったです……勝利の女神様のおかげですかね?」チラッ
明華「も、もう、いやです、京太郎……///」
ハオ「」イラッ
アレクサンドラ「――私情とか関係なしに、明華はちょっと離れてなさい」
ネリー「うん、明華の影響かもしれないもんね」
明華「自風以外も集まってるのに……」スッ
京太郎「ああ、女神様が……」
ハオ「京太郎?」ニコッ
京太郎「」ナンデモナイス
アレクサンドラ「はい、それじゃ続行ね……しかし、初っ端親かぶりか、キツいわね……」
ネリー「キョウタロー相手に先制されるのはなぁ……」
ハオ(……負けたら京太郎の言うことを一つ聞く、と自分を追い込んでみましょう)
京太郎(いかんいかん、誰かに頼ってちゃいけない……自力で勝つんだ!)
アレクサンドラ25000→7000→6000
ネリー25000→16000→14000
ハオ25000→16000→15000
京太郎25000→61000→65000
京太郎「ツモです、1000、2000」
アレクサンドラ「……止まらないわね、これは」
ネリー「ジワ削れ……しかも親流れちゃった……」
ハオ「さて、困りましたね……」
明華「全員が直取り狙ってますよ、京太郎。気を抜かないように」
京太郎「でしょうね……まぁ、逃げ切ってみせますよ」
明華「あら、それはつまらないです。全員を飛ばしてくださいな」
京太郎「無茶振りですよ、それは」
アレクサンドラ「……こっちも、そう簡単に飛ばされるつもりはないからね」
ネリー「ムー、バカにしてぇ……」
ハオ「三人とも飛んだら、ご褒美をあげますよ。絶対にさせませんけど」
京太郎「ほう……なら、ご褒美をもらうとしようか」ゴッ
明華(あ、集中力が雑念に……)
ハオ(わかりやすいですね……)
ネリー(目が怖い……)
アレクサンドラ(男の子ねぇ……そういうご褒美とは言ってないと思うけど)
アレクサンドラ25000→7000→6000→7000
ネリー25000→16000→14000→15000
ハオ25000→16000→15000→12000
京太郎25000→61000→65000→66000
京太郎「――これは、デカイぞ……っ」
ハオ「声にださないように」
アレクサンドラ「……で、それ上がれるの?」
ネリー「もうあんまり残ってないよー」
京太郎「ツ、ツモったらあぁぁぁっ!」
京太郎「……あっ」
アレクサンドラ「はい、おつかれー」
ネリー「これとか当たりっぽいねー」
京太郎「お、俺の当たり牌がぁぁっ……」
ハオ「ノーテンです……ノーテン罰符、これは本当にジワジワきますね」
アレクサンドラ「中国麻雀にはないルールだものね」
京太郎「ふ、ふふふ、大丈夫だ……これはあれだ、点数のバランスを取るために、残っているハオを削っただけで……」
明華「ネリーが同じ点数になりましたが」
京太郎「えっ」
ハオ「ふふ、三人飛ばし、期待してますよ?」
京太郎「ぐぬぬぬっ……ま、まだまだっ……」
アレクサンドラ(……だめっぽいわね)
ネリー(普通にしてればかっこいいのになぁ)
点数計算省略、京太郎トップ
京太郎「――ロ……ロンッ……」
アレクサンドラ「おー、偉いえらい」
ネリー「ウソッ! 逆転手だよっ!?」 ※役満ツモで、京太郎は48000に、ネリーは51000になる、はず
ハオ「それを張ったネリーもすごいですが……やはり、京太郎ですね」
明華「誘惑に負けず、よく上がりましたね」
京太郎「さすがにヤバイと思いましたから……ああああ、ご褒美が……」
ハオ「練習なんですから、欲をだしてもよかったと思いますけど」
京太郎「練習だからって負けるの嫌だろ……ネリーだってそうみたいだし」
ネリー「っっ……ま、まだ役満直撃で逆転できるし! 続行だよねっ?」
京太郎「んー、そうしたいのは山々だけど、ほかにもすることあるからな……ここで切ります」
アレクサンドラ「それがいいでしょうね。いやー、しかし本当に強いわ……今日は特に調子がいいわね」
京太郎「やっぱり女神様が――」チラッ
明華「////」
ハオ「それはもういいですから」ビキビキ
ネリー「うー、悔しいっ!」バタバタ
京太郎「俺だって悔しいっての……はぁ、ご褒美が……」
アレクサンドラ「どんだけ楽しみにしてたのよ」
明華「ちょっと引きます」
ハオ「ご褒美がなにとも言っていないのに……あ、ちなみにこれです。今朝買いました、コンビニの新作チョコです。春限定ですよ」
京太郎「」
ネリー「あげないの?」
ハオ「飛び切りませんでしたからね。最後に粘ったネリーにあげましょう」
ネリー「わーい」
京太郎「しょんなぁ……」
京太郎「ご、ご褒美……」ドヨーン
アレクサンドラ「………………キョウタロウ、ちょっと」
京太郎「は、はい!」ビクッ
京太郎「……すいません、いちいち引きずって」
アレクサンドラ「いや、それはいいんだけど……」
京太郎「じゃあ、なにか用事でしょうか」
アレクサンドラ「……まぁ、そうとも言えるし……そうじゃないとも……」ブツブツ
京太郎「?」
アレクサンドラ「あー……あの、ね……その……」
アレクサンドラ「……あげてもいいけど」
京太郎「はい?」
アレクサンドラ「だから……なんていうの、ご褒美? みたいなものを」
京太郎「」
アレクサンドラ「最近、よく頑張ってるし……というよりは、練習でずっとトップでしょう?」
アレクサンドラ「さすがに労ってあげたい、とは思ってたから……」
京太郎「……あぇ、ひはふはい」ギュー
アレクサンドラ「夢じゃないわよ」
京太郎「な、なな、なんでもいいですかっ」クワッ
アレクサンドラ「教師と生徒ってことを考えた内容ならね」
京太郎「ええええ……」
アレクサンドラ「不満ならなしよ」
京太郎「わあああっ! ちょ、ちょっと待ってくださいっ……」
アレクサンドラ「早くね」
京太郎「じゃ、じゃあ、えっと……っっ! ひ、膝枕!」
アレクサンドラ「……そうね、ギリギリ、それなら……ありかしら」
京太郎「いやっふぅっ!」
アレクサンドラ「はぁ……部室はまずいわね。じゃあこっちで。仮眠室あるから、そこのベッドでしてあげる」
京太郎「」ガタッ
アレクサンドラ「膝枕だけよ?」
京太郎「わかってますよ?」
アレクサンドラ「……やっぱりやめようかしら」
京太郎「きょ、教師がウソつくなんてよくないですっ」
アレクサンドラ「あー、はいはい……それじゃしてあげるから、おとなしくされてること。いいわね?」
京太郎「はい、了解です!」
京太郎「……ふぅ」
京太郎「パンツスーツでも、いいもんだな……むしろ隠されてる分、色々想像を掻き立てられるというか……」
アレクサンドラ「はぁ……恥っずかし……なにやってるのかしら、私は……」
京太郎「ありがとうございました!」
アレクサンドラ「はいはい、いいからもう戻りなさい……」
京太郎「いよしっ! このあとも頑張るぞ!」
ハオ「気合入ってますね、京太郎」
ネリー「なにかいいことでもあったのかな?」
京太郎「べ、べべべ、別にそんなことはっ……」アセアセッ
ハオ「…………そうですか」ジトー
ガチャッ
アレクサンドラ「はーい、休憩終わりよ。そろそろ再開しましょうか」
明華「……監督、どちらに? そういえば、京太郎もさっき外から戻ってきましたが」
アレクサンドラ「ちょっと仕事よ。キョウタロウのことは知らないけど」
明華「そうですか……あ、監督。スーツのパンツに、皺が寄ってますよ」
アレクサンドラ「!?」バッ
明華「冗談です。皺が寄るようなこと、してたんですか?」
アレクサンドラ「……別に?」シレット
明華「そうでしたか、失礼しました」ニコッ
ハオ「…………京太郎?」ジー
京太郎「ちゃうねん」
ネリー「?」
明華「はぁ……結局こうなるんですね。監督も参戦とは、面倒になりました……」
ネリー「そうなの? 大人はお金で言うこと聞かせるし、ずるいよね」
アレクサンドラ「それだったらトッププロが一番有利じゃない?」
ハオ「あとは財閥の娘とか……」
明華「料亭の娘とか……」
ネリー「京太郎、お金好き?」
京太郎「そりゃ、ないよりあったほうがいいだろうけど……悪い、日本人の俺には、綺麗ごとしか言えないかもな」
ネリー「……そっかぁ」
京太郎「まぁ、だからこそだ……困ったことがあったら、俺に相談してくれよ。たぶん、ちょっとくらいは力になれるからさ」
ネリー「そうなの? お金かかる?」
京太郎「友達価格だからな、無料相談で大丈夫だよ」ポンッ
ネリー「えへへー、トモダチ♪」
明華「あ、あら……なんだか二人が、雰囲気よく……」
ハオ「明華がお金とか気にしてるからです」
アレクサンドラ「嫌われるわよ?」
明華「京太郎はそんなことにこだわりません!」
京太郎「――って、そんなことしてる場合じゃない、練習しましょうよ!」
明華「京太郎が休憩中に席を外しているから、そんなことになるんです」
京太郎「あ、すいません」
ハオ「明華、きつく言いすぎですよ」
明華「えっ」
ネリー「大丈夫、キョウタロー?」 (さっきのセリフ、漢字にしてたなんて……言えない……)
京太郎「ん? ああ、問題ないよ」
アレクサンドラ「はいはい、ケンカしない。和やかにいきましょ」
明華「そ、そんなつもりではっ」
明華(いけません、なんだか私の立場が……こ、ここでなんとか逆転手をっ……)
京太郎(おお、明華先輩、気合入ってるな……これは、邪魔しないようにしないと)
ハオ「……噛み合ってませんね」
アレクサンドラ「これがタイミングってものよ」
ネリー「よーし、打つぞー」ブンブン
京太郎「さて――部活後半も、気合入れていくぞ!」
京太郎「――ってことで、俺は調理室お借りしてきます!」
明華「えっ」
ネリー「えーっ! 打とうよぉ!」
京太郎「そうしたいんだけどさ……ほら、俺って一応、執事として来てるわけだしさ。みんなの差し入れもしっかりしないと」
京太郎「ネリーなんか、おいしそうに食べてくれるから、こっちも作るのが楽しみなんだよ」
ネリー「……そういうことなら、仕方ないけど……」ニヘ
ハオ「ですが、それなら休憩に合わせてもよかったのでは?」
京太郎「まあ、休日は休憩二回挟むし、お昼に近いほうが糖分いるだろうと思ってさ」
京太郎(……あと、その……休憩中は……)チラッ
アレクサンドラ(……おばか、こっち見ないの)クイクイッ
京太郎(すません)ペッコリン
アレクサンドラ(不自然な挙動しない)メッ
ハオ「…………もういっそ、声にだしてもらえます?」
明華「バレてないと思ってるなら言いますけど、バレバレですから、そのサイン」
アレクサンドラ「……別に、そういうのじゃないし」
京太郎「と、とにかく行ってきますんで! あとはよろしく!」ダッシュ
ネリー「あ、逃げた」
明華「はぁ、仕方ありません……とにかく、おいしく差し入れが食べられるように、練習に励みましょう」
ハオ「そうですね……しかし、予想外でした……京太郎は無類のおもち好きと聞いていたのに、なぜ……」
アレクサンドラ(……冷静よね、私?)パタパタ
ネリー「監督、顔赤いよ。お熱?」
アレクサンドラ「お、お熱とかじゃなくて、流れでそうなっただけだからねっ?」
ハオ「なんの話をしてるんです……」
明華「随分とお熱のようですし、しばらく冷ましましょう。練習はこっちで進めておきます」
アレクサンドラ「だから違うって――」
京太郎「――ふぅ、なんか久々にまともなもんを作る気がする」
京太郎「一応、描写がないだけで、普段から差し入れしてる設定なんだけどな……よしっ!」
京太郎「そうだな……明華先輩も気合入ってたし、それを後押しさせていただくか」
京太郎「となると、和菓子なわけだけど……ふーむ、餡子は使いたい。粒がお好きみたいだし、粒餡にしておこう」
京太郎「で、季節のものを絡めると……うーん、やっぱり桜餅かな、ちょっと急がないと」
京太郎「餡を作りながら、餅の準備を進めて~」
京太郎「あー、もち米買っといてよかった。おっと、お茶はやっぱりほうじ茶だな。けど、抹茶の準備も――」
京太郎「……明華先輩、喜んでくれるかな、どうだろう」
京太郎「あああああっ、やっぱりイクラの握りとか用意したほうがよかったかっ?」
京太郎「けど、握りはそこまでしっかり教わってないし……や、やっぱりこれでいいよな、うん……」
京太郎「――って、そんなこと考えてる場合じゃない! 集中して、仕上げてしまわないと……よし、できた」
京太郎「――お待たせしました。休憩のお供にどうぞ、桜餅をご用意しております」
京太郎「ほうじ茶、抹茶、煎茶、あとは麦茶も用意しています。遠慮なくお申し付けください」ペッコリン
一年A「あ、あの、須賀先輩……お茶汲みなら、私たちが……」
一年B「そうですっ! その、上手に淹れたいですし……手取り足取り、ご指導いただけましたら……」
京太郎「いやいや、大丈夫だって。そんなことより一年は、しっかり麻雀牌に触れて、練習してくれよ」
京太郎「……雑用も大事な仕事だけど、みんなが部のためにできることは、雑用よりも練習だ」
京太郎「うまくなって、来年の――それから再来年の、そのまた先の、臨海女子を支えてくれ、な?」
一年C「ぐう聖……」
一年D「」キュン
一年E「濡れた」
明華「はいそこまで」
ハオ「せっかくの京太郎の好意です。雑用を引き受けようとする気持ちはわかりますが、そういった提案はまた後日に」
アレクサンドラ「……いつもより、おいしいわね。なにか特別な作り方を?」
京太郎「いえ、いつも通りです」
アレクサンドラ「そう……なら、食べる側の気持ちのせいかしらね」
京太郎「はい?」
アレクサンドラ「な、なんでもないから」
ネリー「お代わり、キョウタロー!」
京太郎「ゆっくり食えよ。和菓子だけど、餅なんだからさ。喉に詰まらせるなよ、ほらお茶」
ネリー「うん、大丈夫っ」モキュモキュ
京太郎(穏乃っぽいなぁ……穏乃の場合は、和菓子より洋菓子なんだけど……っていうか和菓子だと、色々批評されそうだなぁ)
穏乃「ふぇっくしょいっっ!」
灼「……口、押さえて」
穏乃「す、すいませんっ」
玄「穏乃ちゃん、風邪? 花粉?」
穏乃「いや~、そうじゃないんですけど……なんか急にムズって――たぶん、京太郎が噂してました!」ドヤァ
憧「はいはい、妄想してなさいっての」
穏乃「むーっ、ほんとだって! そういう感じしたの!」
憧「それよりそれ、ロンだから」
穏乃「」
京太郎「おっと――そうそう、忘れないように、明華先輩の様子もお伺いしておこうか」
京太郎「……明華先輩、いかがですか?」
明華「あ……京太郎、ええ……とってもおいしいですよ。桜の香り、優しい餡の味、とても気に入りました」
京太郎「お口に合ったなら、なによりです」
京太郎「どうぞ、お茶のお代わりです」
明華「ありがとう……うふふ、どうして座らないのです?」
京太郎「執事がお嬢様と同席するなど、滅相もございません」
明華「なら、お嬢様の命令です。お座りなさい?」クスッ
京太郎「では、失礼しまして……」
明華「そうだ、京太郎はもう食べたんですか?」
京太郎「もちろん、味見をしていないものを、皆さんにおだしできませんから」
明華「そうではなく、休憩のお菓子として、ということです」
京太郎「いえ、それは――」
京太郎「……あ、あーん」
明華「はい、よくできました♪」スッ
京太郎「はむっ」
明華「おいしいですか?」
京太郎「はい。美人の手からいただけると、よりおいしいってものです」
明華「ふふ、そうですか……でもそれは、京太郎のお菓子が本当においしいからですよ?」
京太郎「なら、嬉しいです」
明華「……ところで、私、美人ですか?」
京太郎「そりゃもう、めっちゃくちゃ美人です」
明華「京太郎、美人は好き?」
京太郎「えっ」
明華「……あっ! た、他意はありませんよっ? 一般的に、です! 男性の意見として!」
京太郎「あ、はい……えっと、それは……もちろん、好き……です、が……?」
明華「……ふふっ、それはよかった。さ、もう一口どうぞ♪」
京太郎「はむっ……うん、うまいです」
京太郎「ただ、その……さっきのは、撤回します」
明華「さっきの?」
京太郎「美人の手から――っていうのです」
明華「えっ……」
京太郎「明華先輩の手からいただけると――でしたね」
京太郎「先輩は間違いなく美人さんですけど、そうでなかったとしても……先輩に食べさせてもらえれば、おいしかったでしょうから」
明華「……もう、変なことを言わないでください」
京太郎「あ、すいません」
明華「でも……嬉しいです、そう言ってもらえると……」
明華「京太郎が、女性を外見で判断するのではないと、よくわかります……」
京太郎「明華先輩……」
明華「もちろん、それが本当なら、ですけどね」ニッコリ
京太郎「ほ、本当ですってっ」アセッ
明華「どうでしょう。そんなことを言って、京太郎の周りには綺麗な女性ばかりですから、信用なりませんね♪」
京太郎「う、うぅぅ……なんか、トゲがありますね……」
明華「機嫌、直したいですか?」
京太郎「はい」
明華「では、反対に私にも、あーんしてくださいな」
京太郎「――仰せのままに、お嬢様……どうぞ、お口を……あーん」
明華「はむっ♪」
京太郎「今日は練習もできたし、差し入れもできたし、充実してたなぁ」ツヤツヤ
京太郎(しかも膝枕も……これはまた、怜先輩にも報告しておこう)キリッ
ハオ「真面目な凛々しい京太郎も素敵ですね」
明華「ええ、まったくです」ポー
アレクサンドラ(……変なこと考えてるんでしょうね、また)
ネリー「早くネリーの能力が、本編でも明らかになりますように……」
京太郎「んじゃ、今日はここまでですかね」
アレクサンドラ「急に素に戻らないで……まぁ、そうね」
明華「では一年生、片づけや掃除にも手を抜かないで」
京太郎「よーし、掃除担当は俺についてこい!」
ハオ「だめです」
ネリー「京太郎の当番は終わったでしょ」
京太郎「ひどい! イジメですよ、監督!」
アレクサンドラ「あー、今日も平和ね」
京太郎「責任放棄しないで!」
明華「――どうしてもしたいなら、今度私の部屋を掃除させてあげますから」
京太郎「マジですかっ!」
ハオ「!?」
ネリー「ずるい、ネリーもしてほしい」
明華「ええ、本当ですよ。ですから今日のところは、これで上がってくださいね」ニコッ
京太郎「わかりました、約束ですからね!」
明華「ええ、もちろん」
京太郎「それじゃ、お疲れさまです!」
ハオ(……そんな手が……)
ネリー(ネリーは掃除苦手……)
アレクサンドラ(……そういや、うちも結構アレよね……お願いしようかしら)
明華(さて――ある程度掃除しつつ、洗濯物をそれとなく放置、くらいで誘えるでしょうか……?)
京太郎「やったぜ、お掃除先が手に入ったぞ!」
京太郎「なら、午後は掃除用具買いに行く、とかでもいいかな」
京太郎「うーん、悩ましい。どうするかな……」
京太郎「さて――飯も食ったし、そろそろ真面目に、午後の計画立てないとな」
京太郎「最近は誰かと出かける休みが多かったし、一人なのは久々だな――」
京太郎「――よし、買い物に行こう」
京太郎「今月誕生日の人、まだいるからな……できれば連絡だけじゃなくてプレゼントも送りたい」
京太郎「あとは、これまで滞在した学校で、お世話になった人にも、なにか送れればいいんだけど……」
~少年移動中
京太郎「東京はいいなぁ、店が豊富で。専門店も多いし、選び放題だ」
京太郎「さて、今月はたしか――」
【三週】16日:哩 18日:春 19日:明星
【四週】22日:セーラ 25日:菫
京太郎「誕生日は残り五人、か……」
京太郎「前の仕様変更で、二週前までは買えるから、一応全員帰るわけだけど……」
京太郎「4週の人たちは、3週の日曜でも買えるからな。予算に無理をする必要はないな、うん」
京太郎「まぁ、来週の日曜に、予定が入る可能性も、なくはないんだけど……」
京太郎「さて、ともかく誰宛の買い物するか、そこから決めよう」
京太郎「ん、とりあえず春のは買っておくか」
京太郎「永水で、たぶん一番世話になったし――」
京太郎「俺の誕生日には、わざわざ鹿児島から大阪まで来てくれたし」
京太郎「なるべく喜んでくれるものを、ちゃんと選んでおきたいな」
京太郎「――ということで、和風の店を選んではみたけど……」
京太郎「なんか奥に、西洋雑貨とか売ってるし……」
店員「いやー、最近和風だけじゃ売れなくて……色々手がけてみてんスよ」
店員「これとかどうですか、いわくつきの手鏡なんですけど――」
京太郎「SOA」
京太郎「いや……うーん、そういうの送ると、除霊して返ってきそうなんだよなぁ……」
店員「えっ、なにそれは」
京太郎「なんで、もうちょいいわくなさそうなのにします」
店員「アッハイ……まぁ、ごゆっくり」
京太郎「まぁ俺がプレゼント買いにきたとは、知らないから仕方ないだろうけど……女の子に呪いのアイテムとか送らないだろ、そもそも」
京太郎「それ以前に、客に呪いのグッズ勧めるか……? まぁ、その手の好事家が多いんだろうな、たぶん。知らんけど」
京太郎「さて、にしても……たしかによさそうなものは、結構多い。どれにするか……」
京太郎「――これは」
京太郎「い、いやいやいや、だめだろ! 春にはまだ早い、うん」
店員「お? お客さ~ん、タイトミニっすか。やっぱ好きなんすね~」
京太郎「ちっげーから! これは買わないっつーの!」
店員「いやいや~、けどこういの、いいもんっすよ? 可愛い子が穿いてたら、ほら……」
京太郎「う、ぐ……」
店員「普段ロングの子が、不意に……自分の前でだけ、こういうのとか……」
京太郎「ぬ、ぐぁぁっ……」
店員「しかもその子のスタイルよかったら、完璧っしょ?」
京太郎「………………ぅ」
店員「?」
京太郎「――買う」
店員「うぃーっす、毎度あり~」
店員「んでですね、スカートに合わせたシャツとかジャケットとか、あと意外にパーカーとかも――」
京太郎「…………なるほど。このスカートだと、こっちかな?」
店員「あぁ~、いいっすね~。いいセンスっすね~」
京太郎「……なんか、上下セットで買ってしまった……4000リッツか、まぁ仕方ない」
店員「あ、下着セットはどうします?」
京太郎「いらねーよ!」
春(……買ってくれても、いい……)
京太郎「春はそんなこと言わない」キリッ
店員「……あー、なるほど。下着とか、結局脱がすし――」
京太郎「そうじゃねーって! いいから、こっちは郵送で!」
店員「りょ~かいっす。いやー、彼女さん幸せ者っすね~」
京太郎「いや、彼女じゃないから」
店員「………………ここだけの話っすけど」
京太郎「なに」
店員「女の子って、彼氏じゃない男に服とか送られても、すげー困るらしいっすよ」
京太郎「」
店員「まぁその女子が、相手のこと相当好きなら大丈夫っぽいすけど」
京太郎「……あ、あの、へんぴ――」
店員「好きの度合いって言っても……まぁ、抱きついたりつかれたりしてて、それを嫌がられないくらいなら大丈夫と思いますよ」
京太郎「……なら、なんとかなるか」
店員(……えっ)
京太郎「まぁ、それじゃそっちは指定日に郵送ってことで……さてあとはどうするかな」
店員(リア爆)
京太郎「そういえば、哩さんも誕生日なんだな……知り合ってまだ、あんまり経ってないけど……」
京太郎「いや、こういうのは気持ちだよな。まぁ、服とかはやめとくかな、一応」
店員「いや~、いいんじゃないっすかね、もうなんでも」
京太郎(なんだろう、急に接客が雑に……)
京太郎「どういうものが喜ばれるかな……そういえば、綺麗な人なのに、あんまり飾り気みたいなのがなかったな……」
京太郎「――そういえば、九州の方は非常にお酒に強いらしい」
京太郎「智葉先輩の店にも、いつか行きたい、いい加減連れてってくれ、飲まんから――なんて言ってたし」
京太郎「哩さんも、お酒好きなのかもしれないな……よし、これにするか」
京太郎「来年の誕生日から、使ってくださいね――と」
京太郎「……ほかの先輩にバレたら、すげー怒られそうだな」
店員「お決まりですか~」
京太郎「あー、はい。それじゃ、このセットを」
店員「このチョイス……これはご友人っすね。ってか、先輩とかっすか?」
京太郎「似たようなもんです。先輩の友達って感じで」
店員「まーそーっすよね。誕生日に服送るような相手がいるのに、ほかの女にってわけも――」
京太郎「こっちも綺麗な人なんですよ」
店員「なん……だと……」
店員「………………はぁ、憎しみで人が殺せたら……」
京太郎(なんか物騒なこと言いだした!)
店員「あ、大丈夫っすよ。モテる男が憎いだけであって、お客さんは別腹なんで」
京太郎(腹ってなんだよ、食う気かよ!)
店員「こっちも郵送っすか? 割れ物注意貼っときますね~」
京太郎「あ、お願いします……」
京太郎「まぁ――とにかく、哩さんもこれでよし、と……」
京太郎「残りの小遣いは……8000リッツ、だいぶ減ってきたな」
京太郎「辻での給料も入るから、なんとかなるけど……また龍門渕で働けないかなぁ……長期休みじゃないと無理か……」
京太郎「さて、あとはどうしようかな」
京太郎「明星ちゃんも、来週か……なにか買っておこうかな」
京太郎「そういえば、正確には
霞さんの妹じゃなくて、従妹みたいだけど……」
京太郎「家は霞さんのとこで、大丈夫かな。っていうか、連絡先を知らない……」
京太郎「いざとなったら、霞さんに言づける感じになりそうだ」
京太郎「にしても――なにあげたら喜ぶかな。最近の若い子って……いや、まぁ一歳下なだけだけど」
京太郎「そういえば、霞さんが言ってたな……」
過去霞『夏休みはね、明星と湧は宿題を済ませるのが遅れて、大変だったのよ』
過去明星『ちょっ、お姉さまっ、それは内緒っ……』
過去湧『人の過去を探ろうとしないでください、不快です』
京太郎「……あれ、なんだろう……思いださなくていいとこまで思いだしたような……」ゴシゴシ
京太郎「まぁとにかく、勉強が少しでも捗るように、新しいステーショナリーセットを贈ろう」
京太郎「新しい文房具って、手元にあるとちょっとやる気になるんだよな。新しいノートは、最初のページだけすげー綺麗に使ったり」
京太郎「……小蒔先輩も、大会の時点で宿題残ってたって聞いたな、そういえば……」
京太郎「指輪とか送ってる場合じゃなかったかも……まぁ、あれはあれですごく喜んでもらえたから、いいか」
残り予算:8000 → 5000
店員「へーい……お、今度こそご友人っすね」
京太郎「というか、後輩かな」
店員「また女っすかwwwwwwwwwwwwww」
京太郎「……いいじゃないっすか」
店員「自分、ギャルゲとかよくやるんすけど」
京太郎「は、はぁ……」
店員「並行で攻略するのって、あんま好きじゃないんで……だいたいは、一人に絞って攻略してましたね」
店員「まぁ、余った時間あれば、攻略しましたけどね。主に爆弾処理でしたけど」
京太郎「そ、そすか……」
店員「ま、そんなわけなんで――一点集中のがいいと思いますよ?」
京太郎「……はぁ」
京太郎「ふむ、妙な誤解を与えてしまってるらしいな……そういうつもりは、毛頭ないんだけど」
京太郎「これはあくまで、世話になった人たちへの恩返しとか義理だからな、うん」
京太郎「さて、そろそろ帰るか?」
京太郎「セーラ先輩は四週目だな。リーグ見る限りじゃ、コンスタンスに試合に出てるし、なんとか労いの言葉を贈りたい」
京太郎「誕生日だし、色々考えたいなぁ……」
京太郎「俺のご飯、喜んでくれてたんだし、そっち系のプレゼントで計画したほうがいいかもしれない」
京太郎「とはいえ、こっちにいると、それも難しいか……それなr、なにがいいかな、セーラ先輩の場合は」
京太郎「――お」
京太郎「ほっそりしてて、よく動くセーラ先輩でも、邪魔にはならなさそうだな……」
京太郎「なにより、デザインがユニセックスでいいな。こういうのなら、先輩も嫌がらないだろうし……」
京太郎「できればもっと、メディアに出るときとか、飾った格好しててほしいんだよなぁ」
京太郎「その辺の願望も込めて、これにするか」
京太郎「ちゃんとつけてくれるかはわからないけど、試合に着けてるのが見えたら……おお、なんか嬉しいかも」
京太郎「先輩が、このブレスを使ってくれますように」パンパンッ
京太郎「じゃ、郵送のほうよろしくお願いします」
店員「お任せあれっすよ~。ま、手続きはしたんで、あとは業者にお任せっす」
京太郎「どもー。それじゃ、また」
店員「ありあっしゃー」
京太郎「うーむ、調子に乗って散在したかな……」
京太郎「けど、週の小遣いは守ってるし、普段はほとんど買い物もないしな……ま、たまの安みくらい、いいだろ」
京太郎「さて、帰りますかね」
京太郎「――連休も明日で終わりか」
京太郎「また誰かと出かけられたらいいんだけど、練習もしないとな……」
京太郎「そういえば、この連休は大学も行ってないし……たまには顔だしてもいいかな」
京太郎「さて、とりあえず今夜は――どうしよう」
~買い物後、帰宅前
京太郎「――おっと、今日は辻での仕事があるんだった。行っておかないと」
京太郎「ん……電話? はい、もしもし」
智葉『…………私だ』
京太郎「……智葉先輩? どうしたんですか? っていうか、携帯じゃないんですね」
智葉『家からだよ。いや、今日の出勤を忘れてないかと心配してな』
京太郎「大丈夫です、覚えてますよ」
智葉『そうか、ならいい』
京太郎「珍しいですね、そんな電話確認って」
智葉『……かもしれないな。いつも、平日は京太郎が大学に来てくれるから、一緒に迎える。心配の必要がなかったんだ』
京太郎「で、今日は俺が遊び惚けて忘れてたら――って心配しました?」
智葉『そんなところだ。昨日は試合を見に行ってただろう? そういうこともあるかと思ってな』
京太郎「え、なぜそれを」
智葉『元インハイチャンプが、ヒロインインタビューで名前を呼んでただろ』
京太郎「あー……そうでした」
智葉『……ちなみに、今日は大丈夫だったのか? その……誰かと出かけたりとか、予定があったんじゃ――』
京太郎「――大丈夫ですよ。辻の仕事は楽しいですし、働かせてもらえて嬉しいんですから」
京太郎「そっちの仕事より大事な予定は、入れてないつもりです」
智葉『……ふふっ、言ってくれるな。開店前の仕込みもある、遅れないでくれよ』
京太郎「了解です!」
智葉『……ん……なぁ、京太郎』
京太郎「はい?」
智葉『その……もし、このまま――』
智葉『……このまま、代わりの板前が見つからなかったら……』
京太郎「――それは……」
智葉『……すまん、なんでもない』
智葉『困らせるつもりはない。お前があちこちの学校に行かなければならない事情は、わかっている』
智葉『今月いっぱい、探せる時間をもらったんだ。なんとでもなるさ』
京太郎「すいません……」
智葉『どうして京太郎が謝る必要がある……いや、私のせいか』
智葉『さっきのは忘れてくれ。気の迷いだ』
京太郎「……はい」
智葉『……謝るくらいには悩んでくれて、嬉しかったぞ』
京太郎「……えっ?」
智葉『な、なんでもないっ……それではな。待っているぞ、早めに来い』
京太郎「……はいっ!」
智葉(……まったく、あいつが……戸惑わせるようなこと、言うから……)
智葉(だが、もし……京太郎が、ずっとうちで……いずれ、お父さんが包丁を置く日がきたら……)
智葉(……っっ……か、考えすぎだ! それに、京太郎も一生この道というわけでは、ないかもしれないからな、うん!)
京太郎「さて、急げって言われてるし、早く行くとするかな」
~辻、営業中
辻垣内父「――京太郎、椀種を頼む。それと、カウンターのお客様に先付だ」
京太郎「はい!」
辻垣内母「ごめんね、京太郎くん。そのあとに、今日のお勧め焼き、お願い。二人前ね」
京太郎「了解です!」
智葉「京太郎、生麩はまだ残っているか? 3人様なんだが」
京太郎「いけます!」
智葉「なら、田楽3人前だ」
京太郎「はい!」
京太郎「ふぅ……今日も結構忙しいですね」
辻垣内父「そうだな、ありがたいことだ」
辻垣内母「このあとご予約のお客様も二件あるから、まだまだ忙しくなるわよ」
智葉「焼き方は暑いだろう。こまめに水分を取っておけ。それと、山菜のかき揚げ、2人前だ」
京太郎「はいっ!」
京太郎「板長、こっち上がりました! 女将さん、お願いします! 智葉さん、追加です!」
辻垣内父「よし、いいぞ」
辻垣内母「うん、ありがとう。お仕事早くて、助かるわ」
智葉「しかし――なんだな」
京太郎「はい?」
智葉「執事というと、やはり西洋的なイメージだが……ここでの修業は、そこにも繋がるものなのか?」
京太郎「……ま、まぁ、色々できないと執事は務まりませんし……そう! それに師匠も、和洋中はなんでもこなしますから!」
智葉「そう、なのか……まぁ、役に立っているなら、それでいい」
京太郎「それに師匠はですね、料理だけでなく――」
智葉「仕事」
京太郎「……はい」
智葉「やれやれ……一流の執事とやらになるまで、まだまだ修行が必要のようだな。気が済むまでいてくれて構わんぞ」
京太郎「あ、ありがとうございます……」
辻垣内父「……俺の店なんだがな」
辻垣内母「いてほしいのは智葉のほうなのに、ねぇ?」
智葉「お、お母さん、余計なことを仰らないでください!」
京太郎「んーと……女将さん、ご予約のお客様、そろそろですよね?」
辻垣内母「そうね。でも、時間から前後されることもあるから、あまり気にしないで、だけど手には余裕持たせておいてね」
京太郎「了解ですっ」
ガラガラ
??「こんばんは。予約してました――」
辻垣内母「はい、いらっしゃいませ。ありがとうござます」
健夜「こんばんはー。すみません、急な予約で……」
辻垣内母「いえいえ、なにを仰いますやら……本日もありがとうございます、小鍛治様」
京太郎(おお、さすがグランドマスター……このくらいの料亭でも、毎日通えるくらいなんだろうなぁ)シミジミ
健夜「カウンターでお席とってもらって、大丈夫でしたか?」
智葉「京太郎シートとして、毎日いくつか空けていますから」
京太郎「なんですそれっ?」
辻垣内父「お前目当てのお客様に、座っていただく席だ」
京太郎「いやー、昨日今日入った新人に、ご贔屓はつかないでしょう?」
健夜「そんなことないよ!」
京太郎「そ、そうですか……あ、いらっしゃいませ、小鍛治プロ」
健夜「いつも通りでいいよ、京太郎くん」ニコー
京太郎「そう言っていただけると助かります。まぁ最初は、公私のけじめってことで」
健夜「咏ちゃんもそう言ってたかな、そういえば……」
辻垣内父「京太郎、話し込むのもいいが、先付を――」
京太郎「はい。お願いします、智葉さん」スッ
智葉「うん……どうぞ、小鍛治プロ。蛍烏賊の黄身酢です」
辻垣内父「……うむ」
辻垣内母「うふふっ」
辻垣内父「……なんだ」
辻垣内母「いえいえ、なーんにも」クスクス
健夜「……うん、おいしいね。黄身酢の味もしっかりしてるのに、蛍烏賊の旨味は消えてない。むしろ引き立ててるよね」
京太郎「ありがとうございます」
辻垣内母「お酒、どうされます?」
健夜「あー……今夜も、食事だけでお願いします」
健夜「あ、でも大丈夫です、しっかり食べますからっ。私、健啖なのが取柄で! ほら、名前にも――」
辻垣内母「まぁまぁ、お気になさらずに……無理に詰め込まず、ゆっくりと楽しんでらしてください」
健夜「はい……ありがとうございます」
智葉「しかし、お酒好きな小鍛治プロが、どうして飲まれなくなったんです。肝臓ですか?」
辻垣内父「……智葉、お客様の詮索はよせ」
智葉「……すいません」
健夜「いえ、大丈夫ですよ。えっとね、そういうのじゃないんだけど……京太郎くんに、一度すごい迷惑かけちゃってね」
智葉「……またお前か」
京太郎「またってなんですかっ」
辻垣内父「京太郎、お客様に注文は――」
京太郎「半年以上前のことですよ!」
健夜「ふふっ、それでね……迷惑自体には、京太郎くんもそこまで怒ってなかったんだよ」
健夜「でも、無茶な飲み方してた私たちの身体を気遣って、色々アドバイスしてくれてね……それから、控えるようになって、飲まなくなっていったの」
智葉「なるほど……たち?」
健夜「私と、はやりちゃんと、理沙ちゃん」
智葉「ああ……」
京太郎「レジェンドがいれば役満でしたね」
辻垣内母「そういえば、晴絵さんは北海道でご活躍だとか」
健夜「そうなんですよ。来年、彼女と打つのためにも、今年はつくばを一部に昇格させないといけないんです。今日は、その栄養を補給に」ジー
京太郎「なるほど、そういうことですか……」
京太郎「あの、板長――」
辻垣内父「……いいぞ。やってみろ」
京太郎「ありがとうございます!」
辻垣内父「ただし、お客様にお伺いしてからだ」
健夜「??」
智葉「?」
京太郎「あの、健夜さん……よければなにか、おかずになるもの、作らせていただきます」
健夜「わぁっ……ありがとう、京太郎くん!」
辻垣内母「京太郎くん、気が回るわねぇ」
智葉「……ああ、そういう……」
京太郎「鰆なら、西京か木の芽で――カツオはたたきなら俺が。刺しだと、板長が――」
辻垣内父「……いや、小鍛治プロの分は、引いてもいいぞ」
京太郎「っっ、いいんですかっ?」
辻垣内父「まぁ、お客様におだしできるモノになっているし……そのほうが喜ばれるなら、そうするべきだろう」
健夜「~~~~っっ!?」///
京太郎「焼きは、あとクルマエビなんかもいいですね。揚げ物も、クルマエビ、山菜、春野菜、かき揚げならサクラエビがいいですよ」
健夜「そ、そうかぁ、悩むねぇ……それじゃ、カツオのお刺身いただくよ。あとで、天ぷらもお願いしようかな」
京太郎「わかりました。では、かかります!」
~自宅、夜中
京太郎「――健夜さん、喜んでくれてよかったな。これで来年は、健夜さんとレジェンドの試合が楽しめそうだな」
京太郎「阿知賀のいたとき聞いたけど、はやりさん、理沙さん、それに健夜さんとレジェンドが高校生のとき、一緒の卓に――か」
京太郎「…………こええ」
京太郎「あぁ、10年後の選手でよかったよ、俺……あ、でも男子なら平気だったか」
京太郎「プロでもその光景が見られたらいいけど、理沙さんだけが西だから、全員一緒は日本シリーズでも無理か」
京太郎「……レジェンド、移籍しないかなぁ。パワマー(実況!パワフルプロ麻雀)だと、一年目移籍とかザラだけど……」
京太郎「プロ麻雀、か……まぁ、俺はそこまで高望みはしない」
京太郎「目指せるレベルに達するまでは、練習しかないな」
京太郎「さぁ、明日も頑張ろう」
~二年目4月連休二日目、終了
菫「……私は?」
京太郎「さ、三週目休日と明日がありますから(震え声)」
照「菫はあきらめてもいいんじゃないかな」
菫「なんだと貴様」
【4月連休二日目】
今日は麻雀も執事も、料亭の仕事も頑張れたと思う。
まず麻雀から。
見ていてくださった先輩のおかげかもしれないが、おもしろいように風牌が集まり、いい和了にこぎつけられた。
おかげで勝利、とはいえ、余計な考えが混ざると、打ち筋が乱れてしまう。要対策だ。
差し入れには、なんとなく和菓子を用意してしまう。
季節柄、季節感を取り入れた菓子となると、やはり和菓子だ。春はとみに、その傾向が強くなる。
こちら、本日の差し入れ、桜餅です。粒餡です。一応、こし餡もあります、こちらがそうです。
昼からは少々買い物を。働いているからか、少し散財してしまったかもしれない。これも要反省。
でも無駄遣いではないので、今回は許しておく。
夜は料亭。
さすがに二週間ほども働かせてもらって、少しは慣れてきた。
仕事に、ではなく板場の使い方に、という感じか。
仕事に慣れているか。板場の仕事は、慣れる、慣れないではないと思う。
終わりがない道を歩いてるようなもの。自分より上の方の仕事ぶりを見ていると、慣れるどころではないと思い知る日々。
麻雀と同じです、はい。
…………
『桜餅、うちでも売りだしてるよ! やっぱりこの時期は、売上いいよねー♪ 来月は柏餅とかちまきだね』
『申し訳程度の和菓子屋の娘要素』
『そんなことないよ! 毎日手伝ってるし!』
『お花見の季節で、小旅行のお客さんも大勢いらっしゃってるね』
『……霧島も、桜が綺麗だよ』
『はい。ぜひ京太郎さんに見ていただきたいです……一緒に、隣で』
『そんなことより、クリーム分が足りない! ギブミー洋菓子!』
季節感のある洋菓子……旬のフルーツ以外で、それらしいのあったかなぁ……?
『そういえば、私たちとお花見する約束はー?』
…………あっ。
大会中は桜咲かなくて、いまは近いけど別の区域で……あああ、これは来年だなぁ……。
もしくは、俺が大学に行ってから、ということで許してもらおう。
『そんなことより。昨日の試合の放送、どういうこと?』
『ニュースでもやってました。京ちゃん=インハイチャンプだと噂になっています』
『
お姉ちゃんが呼んだの? 違うよね? だってそれなら、京ちゃんが帰るわけないし』
『呼ばなくても会いに来てくれる、これこそ真の愛』
『真の愛があれば、試合後に帰ったりしないんじゃ……』
『』
『つまり、誰か別の目当てがあったってことやな?』
『恵比寿と試合してたのは、新潟、前橋、東京……東京?』
『あっ……(察し)』
『ちょっと本人に確認する』
『黙秘する』
光の速さでバレた……。
『でもこれ、招待すりゃ観戦に来るってことだよねぃ?』
『でも平日は、仕事でしょ?』
『週に一回くらいはいけるってことか……』
『二部の試合は見に行かないよね、さすがに☆』
『ぐぬぬ』
『そろそろうちらもホーム終わりだから。本州で試合するとき、見に来てみる?』
『マジっすかー。先に会えたら後輩たちに自慢できる!』
『先輩ずるいです』
――――――
~後日、某居酒屋
「――で、どうなの」
「……黙秘します」
「つまり黒だね」
「シロなのに黒とはこれいかに、デス」
「ベタだねー」
「……つまり、あれは私じゃなくてシロを見に来たってこと?」
「そう……なるかな」
「ダメだよ、無理言ったら負担になるんだから」
「そうだぞ☆ 普段から働きづめなんだからね、京太郎くんは」
「はぁ……まぁ、ご飯食べに行って、部屋来てもらって掃除して、その延長だったんで……」
「」
「ほーう、小娘ぇ……ちーっと手が早いんじゃねぇかい?」
「楽しかったです」
「ギルティ」
「京太郎が誘ってくれたから。断るほうが悪いでしょ」
「なん……だと……」
「わ、私も誘ってもらったことあるし!」
「
すこやん、すぐバレる嘘はやめようよ……」
「嘘じゃないよ!」
「悲しくてなんも言えねー」
「ああはなりたくないね」
「まったくデス」
「本当なんだってばぁっ!」
~4月連休三日目 朝
京太郎「あー、楽しかった連休も終わりか……」
京太郎「まぁ俺のやることが変わるわけじゃないし、いつも通り頑張ろう」
京太郎「それじゃ――行って参ります」
辻垣内母「はい、いってらっしゃい。気をつけてね」
京太郎「ありがとうございます!」
辻垣内父「……まさか朝の仕事も手伝ってくれるとはな」
辻垣内母「頼りになるわねぇ。智葉にしっかり言っておかないと」
辻垣内父「……そういうことなのか?」
辻垣内母「どうでしょうねぇ」
智葉「――は?」
辻垣内母『朝の仕込みとか仕入れも手伝いに来てくれたのよ』
辻垣内母『明日からも、そうしたいって言ってくれてね……だから、そっちで会うことがあったら、労ってあげてちょうだい?』
智葉「…………はい、承知しました」
智葉「まったく、あの阿呆はっ……ひと言くらい言っておけばいいものをっ……」
菫「智葉がなにか嬉しそうだな」
哩「男ば絡むと、あの智葉もこんなもんったい」
巴「はぁ……姫様と霞さんになんて言っとこうかな」
~学校、部室
京太郎「おはようございます!」
アレクサンドラ「はい、おはよう」
明華「さて――今日こそは私と打ってくださいね、京太郎! そして私に勝てたら、お部屋の掃除をしに来てもいいですからね?」
京太郎「頑張ります!」
ハオ「待ってください……その賭け、私も乗らせてください」
京太郎「おお、マジかっ」
ネリー「ネリーもやるよ!」
京太郎「よっしゃあ! 全員まとめてかかってこい!」
アレクサンドラ「――ちょっと待ちなさい」
京太郎「えっ、まさか監督も――」
アレクサンドラ「なわけないわよねぇ?」
京太郎「」ハイ
アレクサンドラ「……その賭け、対象チェンジ」
明華「はい?」
ハオ「どういうことです?」
アレクサンドラ「あんたたちが京太郎に勝ったら、掃除にきてもらいなさい」
ネリー(ネリーはそのつもりだったんだけど……)
明華「ひどい!」
ハオ「横暴ですよ」
アレクサンドラ「練習になることしないさいって……それか、明華が負けたらハオ、ハオが負けたらネリー、ネリーが負けたら明華、の部屋に行く――とかね」
京太郎「……全員飛ばしたら?」
アレクサンドラ「……なら、それは私の部屋でいいわ」
京太郎「いいでしょう!」
明華「阻止します」
ハオ「命を削ってでも勝利しましょう」
ネリー「今日こそ負けないよー」
京太郎「望むところだ!」
アレクサンドラ(……まぁ、キョウタロウが麻雀するなら、の話だけどね……真面目にやってほしいわねー、ほんと)
京太郎「誰に勝っても掃除できるなら、全力だな」
京太郎「あー、でも……大学も行きたいし、久々の洋菓子もリクエストされてるし、飲茶も作りたいし……」
京太郎「さて、どうしようか……」
ハオ「……まずは京太郎のやる気を搾らないとですね」
明華「対局に旨味をつけたいところです」
ネリー「旨味?」
明華「……失点のたびに、肌色が増えるとかでしょうか」
アレクサンドラ「私をクビにしたいわけ?」
京太郎「さて、どうしようか (二回目)」
京太郎「ま――ここはやっぱり対局だな」
明華「」ガタッ
ハオ「」ガタッ
ネリー「やった!」
アレクサンドラ「――で、誰と?」
京太郎「また俺が決めるんですか……」
アレクサンドラ「いつもこっちで決めてるでしょ」
京太郎「そうでした……」
ハオ「たまには京太郎に選んでほしいですね」
明華「はい、今日のような場合は特に」
ネリー「ネリーのリベンジ、受けてくれるよねっ?」
アレクサンドラ「……一応、候補に入れてていいから」
京太郎(やりづれぇ……)
ネリー「えええええええっっ!」
京太郎「す、すまん……」
ハオ「だめですよ、ネリー。京太郎が困っています」
明華「私はここまで二回、対局できていないんですよ?」
アレクサンドラ「……まぁ、そうよね。となると私か、ハオかネリーだったわけだし……」
京太郎「悪いな、ネリー。ただ、ネリーも外から見てれば、色々と得るものがあるかもしれないしさ」
ネリー「打つほうが楽しいよ……」
ハオ「世の中楽しいことばかりじゃありませんよ」
明華「そうですね。楽しいことも、楽しくないことも、両方経験し、成長するんです」
ネリー「はぁい……」
アレクサンドラ「――それじゃ、勝った人の部屋は掃除してもらえるってことで」
アレクサンドラ「京太郎が誰か飛ばしたら、ネリーの部屋ね」
京太郎「誰も飛ばせず勝ったら?」
アレクサンドラ「掃除禁止」
京太郎「――わかりました」ゴッ
アレクサンドラ(このコのやる気スイッチ、わかんないわ……)
ハオ「私に、勝てるでしょうか……いえ、勝たねば……」
明華「頑張りますからね……すべては、掃除の――いえ、愛のために」
アレクサンドラ(こっちはわかりやすいわね)
京太郎(……まぁ、ネリーがかわいそうって感じはあるし……)
京太郎「……ネリー、俺が誰か飛ばせなくてもいいか?」
ネリー「ん? いいよ、それは。掃除はネリーが勝ったら、してもらうし」
京太郎「なら――東風戦ってことにしましょう。それなら、メンツ変えて二回目できますし」
ネリー「!!」
ハオ「……まぁ、そのくらいなら。短期決戦のほうが、私たちも勝負をかけやすいですし」
明華「京太郎がそれでいいなら、構いませんよ。飛ばしにくくなって、掃除ができませんけれど?」
京太郎「まぁ、同級生困らせるよりはなんぼかマシです」
ネリー「きょ、キョウタロー……ありがとうっ!」ギュゥッ
京太郎「こらこら、しがみつくなって」
アレクサンドラ「……これで素なのよねぇ、困るわ……ま、それじゃ始めましょうか」
ハオ25000→17000
監督25000→21000
明華25000→21000
京太郎25000→41000
ハオ(……これは、勝機っ……)
明華(高めですね、このままいけば……ああ、だめです、京太郎っ……掃除が終わってから……)クネクネ
京太郎「――ツモ」
ハオ「は?」
明華「え?」
京太郎「4000、8000です」
ハオ「」
明華「」
アレクサンドラ「はぁー……きついわね。最近は打点も相当上がってない?」
京太郎「できるかわかりませんけど、なるべく誰か飛ばしたいので」
ネリー「」キュン
ハオ「ぐぬぬぬ」
明華「ま、まだここから……」
アレクサンドラ「……ネバーギブアップはいいことよ」
点数省略、京太郎トップ
京太郎「んー……これは……」
明華(京太郎が親、そして私の倍ツモ……これで逆転ですね)タンッ ※能力で打点が上がります、まぁ実際は反転しますが
京太郎「ロン、1000点です」
明華「へ――」
京太郎「すまん、ネリー。飛ばし切れなかった」
ネリー「ううんっ! いいよ、すごかった……見ていたら得られるっていうの、わかったかもしれない」
京太郎「そっか、そりゃよかった……よしよし」ナデナデ
ネリー「えへへっ♪」
アレクサンドラ「さて――それじゃ、私抜けるから。ネリー入んなさい」
ネリー「はいっ!」
明華「」
ハオ「……お疲れさま、明華」
明華「な――納得いきませんっっ!」ガルッ
京太郎「えっ」ビクッ
明華「次こそっ……次こそ勝ちますから!」ウルッ
京太郎「あ、はい……なんか、すいません」
明華「謝る必要ありませんっ!」キッ
京太郎「はい……それじゃ、俺は次も負けません」キリッ
明華「うぅっ……凛々しい顔も、素敵……」///
ハオ「どうしたいんですか、あなたは……」
明華「本当に、どうしたらいいのでしょう……」
アレクサンドラ「……とりあえず勝って、掃除でもなんでもさせなさいよ」
明華「そ、そうですね、まずはそうしましょう!」
ハオ「強制和了が通じないのは、本当につらいですね……」ハァ
京太郎「――ふぅ、しかし今日も好調だな。すごく打ちやすい」
京太郎「このままの調子で、夏まで保たないかな……」
明華「そんな都合よくはいきませんっ」
ハオ「そのために練習と調整を行うんですからね」
京太郎「わかってるよ」
ネリー「夏も一緒に出たいねー」ベター
京太郎「なんだ、今日はやけに甘えてくるなぁ」
ネリー「ふぇ……そ、そんなことないよっ」バッ
アレクサンドラ「あらあら」
京太郎「なんだよ、照れなくてもいいだろ?」
ネリー「照れてないよっ」
ハオ「さっきので完全にやられてますね、ネリーは……あれ?」
明華「ですが――京太郎? 実は、調整の秘訣というものはあるんです……」
京太郎「なん……だと……マジですか」
明華「ええ、本当に……こっそりとお教えしますので、今日の夜、寮のほうへ――」
アレクサンドラ「ストップ!ベシンッ
明華「はうっ……」
アレクサンドラ「キョウタロウはその辺、苦手なら人に聞く前に、自分でいいやり方を探しなさい」
京太郎「おっす……」
アレクサンドラ「明華は人の好い少年を誑かさない」
明華「ご、誤解です……本当に、いい調整方法が……」
ハオ「要はリラックスすること――とか言うつもりでしょう」
明華「」ギクッ
アレクサンドラ「……アラサー女子じゃないんだから、もっと余裕持ちなさいよ」ハァ
京太郎「ふーむ、いい調整方法ねぇ……確かに、人それぞれだろうしなぁ、そういうのは」
京太郎「思いつめるよりは、ゆっくり考えていくか。さて――」
京太郎「さて、差し入れもしたし、もう一回対局を――っと?」
アレクサンドラ「……来たわね」
ハオ「また智葉ですか」
明華「これだから智葉は……」
ネリー「キョウタロー取っていくの反対!」
京太郎「まだ決まってないですからねっ!?」
京太郎「で、誰からメールが……」
京太郎「あ、哩さんか」
アレクサンドラ「あら、違った」
ハオ「まぁ私は信じてましたけどね」
明華「いえ、智葉がメールをさせた可能性も……」
ネリー「手間かかってるね」
京太郎(疑り深いな……)
哩『智葉がえらく嬉しそうにしとって、なーんかソワソワしとったい。連休中、こっちに来とらんし、たまには顔ばださんね?』
京太郎「ふむ……まぁ確かに、連休で顔ださないのもなんだな」
京太郎「大学の部活がどうなってるかわからなかった、っていうのもあるんだけど……」
京太郎「――すいません、大学のほうに顔だしてきていいですか?」
アレクサンドラ「はぁ……ちゃんと練習しなさいよ」
明華「……お、お目付け役がひつようではありませんか?」チラチラッ
ハオ「たしかに、あとは道案内も必要でしょう」
京太郎「いや、それはわかるから大丈夫だろ」
ネリー「事故があったとき、連絡できるように二人で行ったほうがいいじゃないかな」
京太郎「…………はいはい、わかりました」
京太郎「……じゃ、ネリー行くか」
ネリー「わぁい^^」
明華「なぜですかっ!」
ハオ「納得のいく説明を!」
京太郎「対局数、少ないからな」
ハオ「むぅ……」
明華「トータルなら、私だって……」
京太郎「すみません、また埋め合わせは必ず……」
明華「……絶対ですよ?」ウワメヅカイ
京太郎「もちろん、お約束します」ニッコリ
明華「わかりました……気をつけて行ってきてください。ネリーもですよ」
ネリー「任せて!」
ハオ「私もですよ、埋め合わせ」
京太郎「わかってるって……それじゃ、行ってきます」
ネリー「きまーす」
アレクサンドラ「はいはい……さ、それじゃこっちも練習しましょうか」
明華「はぁ……京太郎がいないと、いまいち張り合いが……」
ハオ「神は死んだ……」
アレクサンドラ「シャキッとしなさいよ。キョウタロウに報告するわよ?」
明華「一年生! 気合を入れなさいっ、レギュラーに食い込みたいでしょうっ?」
ハオ「手が空いてる人がいれば、どうぞこちらに。相手をしましょう」
アレクサンドラ「……つくづく影響力あるわねぇ、あのコは」
ネリー「へへー、キョウタローとお出かけだねっ」
京太郎「迷子になるなよ、大学行くんだからな」
ネリー「ならないよ。だけど、智葉いるかなぁ」
京太郎「部室にはいらっしゃったみたいだけど、哩先輩が伝えないうちに、どこかに行ってるかもしれないな……」
ネリー「そうなんだ……」
京太郎「まぁ強い人はいっぱいいるから、練習には困らないって」
ネリー「そうだね。京太郎がいれば、どこでも困らないよ」
京太郎「あんまり買い被るなよー」
ネリー「貝、かぶってないよ?」
京太郎「……いいかネリー、買い被るっていうのはだな――」
ネリー「え? ふんふむ……へー、そうなんだ」
~大学
京太郎「――っと、ついたな。こっちだぞ」
ネリー「へー、すごい、おっきいねっ! 臨海よりも大きいかな?」
京太郎「……確かに、臨海も広いからなぁ……おっと、ここだな」
ネリー「おじゃましまーすっ」
京太郎「こらこら! 勝手に入らない、こういうときは……まずノックだ!」
ネリー「マズノック!」
京太郎「失礼しまーす、京太郎です!」
哩「おー、待っとったけん。遠慮ばせんと、入ってこんね」
京太郎「失礼しますっ!」
京太郎「失礼します!」
ネリー「します!」
哩「おー、よく来たばい。ゆっくりして――お?」
菫「ネリーだな」
巴「わっ、すごい」
京太郎「菫さん、巴さん、ご無沙汰してます。あれ、智葉先輩は?」
菫「哩が悪い」
哩「あっはっは……いやー、サプライズで京太郎が来たら面白いやろうち思って、黙っとったら――」
巴「さっきタイミング悪く、出て行っちゃったの。止めたんだけどね……」
京太郎「そうなんですか……」
菫「すまないな、我々しかいなくて」
京太郎「いえ、そんなことは……お二人にもお会いできてなかったので、嬉しいです」
菫「ふふっ、そうか」
巴「また調子いいんだから――ネリーさんも、ゆっくりしていって?」
ネリー「うん!」
哩「すまんね、智葉がおらんで」
ネリー「別にいいよ!」
京太郎「……もうちょっと、残念がってもいいんだぞ?」
ネリー「別にいいんだけど……」
菫「不憫な……」
巴「まぁ、京太郎くんと一緒にいたいだけなんでしょうね……」
哩「菫だって、京太郎と恵比寿ん寮ば行って、照がおらんでも困らんとやろ?」
菫「……それもそうか」
京太郎「その例えは照さんが気の毒ですよ……」
巴「菫さんと照さんの仲の良さがわかるね」
菫「そんなことは――それより、せっかく来たんだし、練習していくといい」
京太郎「はい、そうさせていただきます」
巴「うーん、だけど4人いるね」
京太郎「5人ですよ」
哩「京太郎ば抜くわけなかろうもん。京太郎と、あと3人やけん。綺麗どころ、よりどりみどりったい」
京太郎「ここでも決めることになるのか……」
ネリー「どうする? ネリーは抜けても大丈夫だよ?」
京太郎「そうだな――」
巴「……それじゃ、よろしくね」ゴッ
京太郎「よ、よろしくお願いします……」
哩「あーあ、巴ば怒らせっと、長引くけん……」
菫「京太郎くん、フォローしてやってくれ」
京太郎「俺関係ないですよねぇっ!?」
ネリー「京太郎、ふぁいと♪」
京太郎「はいはい、頑張りますよっと」
京太郎「では――よろしくお願いします。ネリー、しっかり見てろよ」
ネリー「うん!」
巴(あ、かわいい)
哩(おお、巴の怒りが……)
菫(泣く子と地頭には――この場合は、笑う子か)
巴25000→23400
哩25000→
菫25000→
京太郎25000→26600
京太郎「ロンです、1600」
巴「はい」
京太郎「やっぱり巴さんと打つと、手が早くなりますね……まぁその分、打点が厳しいですけど」
巴「京太郎くんと打つと、いっつも狙われちゃうなぁ」
菫「た、たまには私を狙ってくれてもいいんだぞ?」
哩「やっぱり……」
菫「そういうことじゃない!」
京太郎「まぁ、隙あればだれからでも――とは狙ってるんですけどね」
巴「やっぱり、私が弱いからかなぁ。春の大会以降は、なおさら京太郎くんに勝てなさそうだよ」
京太郎「強弱とも違うと思いますけど……それを言うなら、大会前は巴さんと打つと、ちょっとだけやりにくかったんですよね」
京太郎「相性がよくなったのかもしれません、もしかしたら」
巴「あ、あいしょっ……そ、そうなのかなぁ?」///
菫「なにがあったんだっ、京太郎くんっ、巴!」
哩「ほう、ナニかあったら真似しようとかそういう――」
菫「ち、ちち、違う! 勝手な勘違いをするな!」
ネリー(……巴は周りの支配を抑えようとするタイプかー。だけど、京太郎がそれで支配を伸ばしてる?)
巴「私と打つと、普通より打ちやすくなるなら……なるべく一緒には打たないほうが、練習になるかもしれないね」
京太郎「そ、そんなっ……いやです……」
巴「ふふ、冗談だよ」
菫「……巴が悪女になっていく」
哩「京太郎もそういうんば好きそうやね」
京太郎「そ、そんなことないっす!」
巴「私もそんなんじゃありませんっ!」
巴25000→23400→20200
哩25000→
菫25000→
京太郎25000→26600→29800
京太郎「ロンです! 3200で」
巴「うー、刻まれてるー、狙われてるー」
京太郎「ぐ、偶然ですからっ」
菫「……まぁ、私もよくやっていたからな、咎められない」
巴「菫さんが教えたんですかぁ……」
菫「そ、そういうわけではないが……なぁ?」チラッ
京太郎「そうですね、菫さんのは真似できませんから(褒め言葉)」
菫「」
哩「くくっ、残念やったと?」
菫「……いまの私は気が荒いぞ」ムスー
哩「おーこわ。巴が直ったら今度はこっちばい」クスクス
菫「冷静に射抜いてやる、覚悟してろ」
京太郎「お二人、楽しそうですね」
巴「京太郎くんの目は時々節穴になるよね」
京太郎(え、すごい辛辣……)
ネリー(んー、みんな弱くはないけど……やっぱり京太郎だね、これは)
巴25000→23400→20200→17200
哩25000→28000
菫25000→
京太郎25000→26600→29800
哩「お――ロン、3000」
巴「そっち!?」
京太郎「ぐっ……」
菫「気持ちはわかるが、京太郎に警戒を向けすぎたな。そこを狙う容赦のなさ、さすが哩だ」
哩「拾える点は拾う、そいが私の麻雀やけん」
巴「厳しいなぁ……どうやって返そうか……」
京太郎「1800点差……守ってちゃダメだな、これは」
ネリー「ネリー、京太郎が勝つとこ見たいよ……」
京太郎「任せとけ!」
菫「……なかなか微笑ましいな」
哩「こ、こいで勝ってしもうたら……悪者にならんと?」
巴「京太郎くんに勝てるなら、悪者でもいいですけど」
菫「やる気だな、巴……さて、私も狙ってみるか」
菫(……京太郎くんがいるところで狙うと、妙な感覚があるんだが……大丈夫だろうか……)
京太郎(学校で、負けたって報告するのもいやだしな……全力で上がりにいく!)
巴25000→23400→20200→17200
哩25000→28000
菫25000→
京太郎25000→26600→29800
巴25000→23400→20200→17200→49200 トップ
哩25000→28000→-4000
菫25000→
京太郎25000→26600→29800 二位
巴「………………」
哩「むーん……誰も彼も、張ってそうで危なかねぇ……」
菫(……む? これは、巴が……まずいな)
京太郎(うわー、でかいってレベルじゃないぞ……振らないように張るのは、もう間に合わないかな……)
哩「……っ……よぉしっ、通らばリーチ!」
巴「――通りません、国士無双です」
哩「ゴフッ……」
菫「ふぅ……お疲れさま。やれやれ、今日はいいとこなしだな、焼き鳥だよ」
京太郎「ぬああああああああああああ、負けたぁっ! お疲れさまでしたぁっ! 巴さん、さすがです!」
巴「ううん、これは京太郎くんのおかげかも」
京太郎「なんでですか……」
巴「ほら、京太郎くんが――あと哩さんも、私から上がってくれたからね。配牌が偏って、狙いやすくなったみたい」
ネリー「キョウタロー……」
京太郎「うっ……すまん」
ネリー「返ったら部室で特訓だね!」
哩「はぁ……欲ば張ってもロクなことにならん……けど、こうせんと一位も狙えんし……」
京太郎「ともかく、お疲れさまです……それじゃ、巴さんのお部屋の掃除に伺いますね」
巴「――は?」
哩「へ?」
菫「な、なにを言ってるんだ、京太郎くん!」
京太郎「…………あっ、す、すいませんっ、間違えました!」
巴「……どういうことなの」
ネリー「練習で、京太郎に勝てたら、京太郎がお部屋の掃除してくれるんだよっ」
京太郎「ネリーっ、シーッ!」
ネリー「?」
巴「……そうやって、合法的に女の子の部屋に入ってるってこと?」ゴゴゴゴゴゴ
菫「臨海女子は、生徒は寮住まいだったな」
哩「なるほど、女子寮入るために……涙ぐましかね」
京太郎「誤解です! それに、俺が言いだしたわけじゃなくて――」
巴「問答無用です! そこに座りなさいっ、掃除の代わりに、京太郎くんの心の掃除をしますっ!」キッ
京太郎「ありがとうございますっっ!」
――このあと滅茶苦茶説教された。
最終更新:2026年01月17日 23:44