~部活後、臨海女子部室
京太郎「――で、負けちゃいました」
アレクサンドラ「ふむ……ネリー、牌譜はある?」
ネリー「あ」
明華「なにしに行ってたんですか……」
京太郎「手順を追って後から採譜はしました。PCに取り込んだデータ、あとでメールに送ってくれるそうです」
アレクサンドラ「そう……まぁ聞く限りだと、直取りされたんじゃないのよね?」
京太郎「はい」
アレクサンドラ「なら打点か、早上がりの練習かしらね……とはいえラストの役満か、やっぱり早上がりよね」
ハオ「久しぶりの、四局での捲られですか」
京太郎「だなぁ……ここで勝ちきれない悪癖は、いい加減なんとかしないと」
アレクサンドラ「そこまでに飛ばす、という意味でなら、打点かもね……三尋木プロとかに、秘訣聞いてみたら?」
京太郎「テンパイ速度にも影響しそうなので」
明華「いきなりトッププロの真似事は、厳しいでしょうしね」
ネリー「ネリーが先に勝ちたかったなー」
京太郎「すまん……けど、巴さんも、随分と俺に負けてたから、今日こそはって燃えてたんだと思うぞ」
ネリー「ネリーはそれで、ツモに合わせられた……昨日」
ハオ「京太郎が相手のツモに合わせるのが得意と知っていて、巴は見事に対応しましたね。さすがは年上、経験が違います」
明華「少し、冷静になれましたね……自分たちの麻雀の方向も、まだまだ固める段階ではなさそうです」
アレクサンドラ「そうね……負けてきたのはいただけないけど、いい影響を持って帰ってきたし、却ってよかったんじゃないかしら」
京太郎「次は勝って、その上でいい影響を持って帰りますよ」
一年A「頑張ってください、先輩!」
一年B「次はぜひ、私をおともに!」
一年C「なんでもしますから、遠慮なくお申し付けください!」
京太郎「ああ、ありがとう。機会があったら頼むよ」ニコッ
一年ズ「」ズキューン
アレクサンドラ「……まったく、綺麗に締めたと思ったのに」
ハオ「これだから京太郎は……」
明華「これでこそ、かもしれません」
ネリー「むー」
京太郎「そういえば、初めて役満上がったのも巴さんからだったな……」
明華「そうなのですか?」
京太郎「はい、永水にいたとき――あれは、良子さんと初めて会ったときだったと思います」
ハオ「……永水は最初の派遣だったはず」
アレクサンドラ「そのときからプロと縁があったのねー、なんかずるいわ」
京太郎「ずるくないですよっ」
ネリー「勝ったの?」
京太郎「ああ、そのときはその役満でトップだった……まぁあれは、完全に運だったと思うけどな」
アレクサンドラ「数ヶ月越しに返されたってわけね。いい先輩じゃない」
京太郎「油断というか、甘えというか、その辺を見透かしてくれたような気がします」
明華「昨年以上のチームを作るためには、その人たちより強くならなければなりません」
ハオ「その人に負ける京太郎に負けていてはいけない、ということでしょうね」
京太郎「俺もインハイ優勝で、少し気が緩んでたのかもな……引き締めていこう」
ネリー「明日からも頑張ろうねっ!」
部員『おーっ!』
アレクサンドラ「連休最後に、いい締めができてよかったわ。それじゃ、今日は解散よ」
京太郎「お疲れさまでした!」
~連休三日目、昼
京太郎「さて――今日の午後はなにをしようかな」
京太郎「練習するか、来週からに備えて買い物するか――」
京太郎「気分転換に遊ぶのもありか」
京太郎「――そうだな。休みだからって、休んでる場合じゃない」
京太郎「……もしもし、ハオか? ああ、ちょっと頼みが――うん、そうだ」
京太郎「なら話が早い。場所は――わかった、すぐに行く」
京太郎「夏のインハイでも優勝したいからな……今日はとことん練習するぞ!」
~連休三日目、午後 部室
京太郎「お待たせ――あれ?」
ネリー「遅いよっ」
京太郎「ネリー、それに……」
明華「ハオだけ抜け駆けなんて、許しませんよ」
京太郎「明華先輩……ハオ、これは?」
ハオ「寮を出ようとしたら見つかりまして。言い訳に言い訳を重ねたのですが、バレてしまいました……」
京太郎「秘密特訓失敗か……」
明華「そういうことは、まず先輩である私に話をしてくださいね?」
京太郎「はい、すいません」
ネリー「どうしてハオだけに言ったの?」
京太郎「練習場所の心当たりが多そうだったのと、同級生だったからかな」
ハオ「頼りにしてくださって、嬉しいです」
明華「むー」
ネリー「むー」
京太郎「いや、悪かったってば……先輩も」
明華「いいですか? 京太郎はいま、臨海女子の部員です。強くなろうとするなら全員で協力し、ともに強くなりたいと思っています」
京太郎「はい」
ネリー「全員に言ってよねっ?」
京太郎「そうします」
ハオ「さて――それでは始めましょうか」
京太郎「いや、まだほかの部員に連絡できてないからな。そういうことなら、やっぱりみんなにも――」
三人『その必要はありませんっ!(ないよっ!)』
京太郎「えええええ……」
京太郎「――で、この四人でってことでいいのか?」
ネリー「それが一番成長できるよ、たぶんねっ」
明華「いつもは監督が邪魔をして、四人で囲めませんから」
ハオ「時間はたくさんあります、しっかり打ちましょう」
京太郎(監督、なんて不憫な……)
京太郎「まぁすぐに効果は出ないかもしれないけど、今日みたいなことを減らすためにも……」
京太郎「とにかく打ちましょう! よろしくお願いします!」
ハオ25000→19000
明華25000→22000
ネリー25000→22000
京太郎25000→37000
ネリー「ふっふっふ、これは次で引いちゃうよー」
京太郎「――なら、その前に引けばいいってわけだ」
ネリー「いくら京太郎でも、そこまで上手くは――」
京太郎「――ツモ、跳満だ。3000、6000」
ハオ「手がつけられませんね、これは……」
明華「狩宿さんのやり方を真似るなら、三人で奪い合いですね。京太郎に吸われ尽くす前に」
ネリー「こんなの考慮してないよ……なんでこれが、あっちでできなかったの!」
京太郎「すいません……」
ハオ「それができるようになるための練習ですよ、ネリー?」
ネリー「むー、わかってるけどぉ……」
明華「京太郎は魔王ではなく人間ですから。負けるときもありますよ、許してあげましょう?」
ネリー「……そうだね」
京太郎「魔王でも負けることがあるんだぞ……」
明華「まぁ……ところで、魔王とはどなたのことです?」クスクス
京太郎「」
ハオ「京太郎が魔王とまで呼ぶ打ち手、ぜひお名前をお伺いしたいところ」
京太郎「い、一般論やから(震え声)」
明華「うふふ……さて、少し試したいことがあります。歌ってもよろしいでしょうか?」
京太郎「ぜひ」
ハオ「構いませんよ」
ネリー「明華の歌、好きだよ」
明華「ありがとう――では」
ハオ25000→17000→16000
明華25000→21000→19000
ネリー25000→21000→20000
京太郎25000→41000→45000
明華「……なるほど、やはりそうなりますね」
京太郎「あれ?」
明華「いえ……今日は喉の調子が、さほどよくありませんから。試してみましたが、また調子のいいときにでも、披露しますね」
京太郎「無理なさらないでください」
明華「ええ、ありがとう」ニコッ
ハオ(……京太郎のオカルト、その確認だったのでしょうか……?)
ネリー(ふーん、やっぱり京太郎のはそれっぽいね……)
京太郎「? どうした、二人とも?」
ハオ「いえ、なんでもありませんよ」
明華「京太郎が素敵ですから、見てしまうのでしょうね」
ネリー「それはあるかなぁ」フフー
京太郎「からかうなって……よしきた! 1000、2000」
ハオ「さて、かなり厳しくなってきましたよ」
ネリー「京太郎から直取りか、三倍以上か……誰かリーチかけてくれたら、倍満でも届くんだけどー」チラッ
明華「リスクが大きいですね……どうしましょうか」
ハオ「ここは直取りのほうが、取れ高が大きそうです」
京太郎「振り込み、差し込み――考慮するなら、やっぱり俺も早く上がるしかないか」
ハオ25000→17000→16000
明華25000→21000→19000→18000
ネリー25000→21000→20000
京太郎25000→41000→45000→46000
明華「……通りますか?」
京太郎「残念、そこは通りません。1000点です」
明華「はぁ……手牌の調子がいいと、やはりこうなってしまいますね」
ハオ「ツモ上がりは、そうそう期待できませんね、これは」
ネリー「やらしー罠だよね!」
京太郎「よ、読み合いレベルの問題だから」
明華「うふふ……でも、京太郎のそれ」
明華「こちらの調子がいいと、狙い澄ましたように直撃を決めてくる……カウンターのような上がり、とても好きですよ、私は」
京太郎「それは……恐縮です」
ハオ「はぁ……上がられていてそれでは、先が思いやられますよ、明華」
明華「べ、別に上がられて喜んでいるのではありませんからっ」
ネリー「でもそれで、余計に開いちゃったんだよね……三倍以上しかないのかー」
京太郎「――ここで逆転されたら、今日の経験が活きなかったことになる。やらせねーぞ」
ハオ25000→17000→16000→13000
明華25000→21000→19000→18000→19000
ネリー25000→21000→20000→21000
京太郎25000→41000→45000→46000→47000
京太郎「――テンパイ」
ハオ「はぁ……京太郎、練習とはいえ、そこでノーテン終了ということも考えましょう」
京太郎「大会ならそれもある。けど、せっかくの練習だし、一局でも多く続けたいだろ」
明華「京太郎らしいと申しますか……」
ネリー「ネリーに逆転のチャンスくれたんだよねっ、わかるよ♪」
ハオ「いえ、誰かを飛ばそうという目的でしょう」
明華「まぁこわい」クスッ
京太郎「純粋に受け取ってねっ!?」
京太郎トップ
ネリー「はぁ……だめだったー」パタン
京太郎「あっぶね……うーむ、上がりきれない。ここの改善はどうすれば……」
明華「しのぐので精いっぱい……これでは厳しいですね」
ハオ「私もいいところなしです……なんとか京太郎の前で、華麗な上がりを披露したいところですが」
京太郎「雑念が混じると、いい結果が出ないぞ」
ハオ「説得力がありますね」フフッ
ハオ(――しかし、確信できました。普段の上がりなら上がれているものが、上がれない……これは京太郎の支配によるものでしょう)
明華(地力を上げる、という意味では……京太郎との練習は、最高の卓になりますね)
ネリー(ずっと帰らないでくれないかなぁ……)
京太郎「――さて、悩んでても仕方ない。このまま続け――る、前にだ」
ハオ「はい?」
京太郎「少し休憩しよう。お茶の用意をしてくるから、検討でもして待っててくれ」
ネリー「わーいっ♪」
明華「お昼も軽く済ませて、すぐにこちらに来ましたからね」
京太郎「では、少しお腹に溜まるものも用意しますよ」
ハオ「明華の好きないくら丼なんてどうです?」
京太郎「少しどころかガッツリ入るな……」
明華「構いませんよ?」
ハオ「えっ」
京太郎「えっ」
明華「じょ、冗談ですっ///」カァッ
京太郎「よかったんですか? イクラ丼じゃなくて」
明華「ですからっ、冗談ですっ!」
ハオ「海ブドウにタラコに数の子……」
京太郎「夕食にお出ししたい……」
ネリー「はむはむ」
京太郎「ってことで、今日はお茶とドライフルーツを用意しました」
明華「このくらいでちょうどいいです……」
ハオ「これはどういった趣向で?」
京太郎「ロシアでよく食べられるものだけど、グルジアのほうにもあるらしくて」
ハオ「なるほど」
京太郎「練習しながら食べるなら、こんな感じのほうがいいだろ? 手を止めるなら、飲茶にしたかもしれないけど」
明華「京太郎はしっかりお昼を食べたでしょう? このタイミングではまだ、飲茶をする余裕はないかと」
京太郎「俺自身のことより、お嬢様方が満足されるか、ですよ」
ネリー「飲茶したい!」
ハオ「同感です――が、まずは練習です」
ネリー「ざーんねん」ハムハム
明華「それでは再開しましょうか」
京太郎「ですね。あ、お茶のお代わりが欲しいときは言ってくれて大丈夫だから。先輩も、どうぞ遠慮なく」
ネリー「お代わり!」
京太郎「少々お待ちくださいね、お嬢様」
京太郎「どうぞお嬢様、お代わりと――クレーム・オ・ブリュレを」
明華「メルシー」
京太郎「お嬢様も、どうぞ」
ハオ「え、ええ、どうも」
ネリー「ネリーも!」
京太郎「もちろんです、どうぞ――はっ!」
明華「あ、気づいたようですね」
京太郎「気づきますよ、そりゃ!」
ハオ「その割には楽しそうにしてましたが」
京太郎「そりゃ楽しいからな……ってそうじゃなくて、練習しにきてんだぞ、俺ら!」
ネリー「よーし、そろそろ打とう!」
明華「さっきもその流れでしたのに、京太郎がみんなにおかわりを配りだしたから……」
ハオ「そうしたら明華が、ドライフルーツだけでなく少しお菓子を、なんて言いだすから……」
ネリー「ハオも、いいですねって言ってた……」
京太郎「ネリーがなんでもうまそうに食べてくれるんで、つい……だめだ、このままじゃ!」
京太郎「練習再開するぞ!」
明華「その前にお代わりを――」
京太郎「お待たせいたしました、お嬢様……さ、始めましょう!」
ハオ「さすがに二度はないですね」
ネリー「飽きちゃうしね」
ハオ25000→
明華25000→13000
ネリー25000→
京太郎25000→37000
京太郎「――ロンです、12000」
明華「あんっ」
京太郎「ちょっ、なんて声だすんですかっ」
明華「失礼、不意打ちだったもので……」
ハオ「序盤の好調は、相変わらずですね」
ネリー「ここで上がれたらだいぶ楽なんだけどなー」
京太郎「俺も、この調子を最後まで維持できればだいぶ楽なんだけどなぁ……」
ハオ「それは楽というか……」
明華「魔王の誕生、ですね」
京太郎「はは、仰る通りで……さて、集中していきますか」
ネリー「大丈夫、キョウタローを魔王になんてさせないからねっ」
京太郎「できれば魔王にならずに勝ちたいとこだ」
咲(魔王魔王言わないで欲しいなぁ……)
ハオ25000→24600
明華25000→13000→12300
ネリー25000→24600
京太郎25000→37000→38500
京太郎「――ツモ、400、700だな」
ハオ「っっ……はい」
明華「驚きました、いまのはさすがにハオのタイミングかと」
ネリー「ハオのほうが早くテンパイはしたよね。だけど――」
ハオ「ええ、そこから驚くほど当たりが来ませんでした。まぁ当然ですが」
京太郎「こっちに集まってきたからな……だすわけにもいかないし、こうなるだろ」
ハオ「幅広く待ちを変えるべきでしょうね……もっとも、京太郎を避けながら、ということになりますが」
明華「はぁ、本当に厳しい……でもこれを制すれば、夏の優勝も現実味を帯びるでしょう」
ネリー「アワイには、絶対に勝ちたいからねっ」
京太郎「いまの女子は、個人も団体も淡か……ちゃんと練習してっかな、あいつ」
ハオ「……やけに気にかけますね、彼女を」
京太郎「え――」
明華「あらあら、妬けてしまいます」ゴッ
京太郎「そ、そんなつもりでは……」
ネリー「絶対勝つッッ!」
京太郎(全員のテンションが……)
ハオ25000→24600→25600
明華25000→13000→12300
ネリー25000→24600
京太郎25000→37000→38500→37500
京太郎「――うぐ、手が止まった感……」
ハオ「では頂戴しましょう――1000点です」
京太郎「うっ……なんか、気合が入ってるな」
ハオ「当然です。なんでもかんでも、大星淡に渡すわけにはいきませんから」
明華「その意気です」
ネリー「明華も上がらないと」
明華「わ、わかっていますっ」
京太郎「――だよな。目指すなら優勝、目指すならトップだ……俺も気合入れよう!」
ハオ「……はぁ」
京太郎「あれー?」
明華「だいたい合っていますが、絶妙にずれていますね」
ネリー「乙女心がわかんないね、キョウタローは」
京太郎「なんかひどい!」
ハオ25000→24600→25600→24600
明華25000→13000→12300
ネリー25000→24600
京太郎25000→37000→38500→37500→38500 トップ
京太郎「ロン――1000点、と。これで終了だ」
ハオ「むっ……もう少し、速さが足りませんでしたか」
明華「惜しかったですね……なんて、人を気遣っていられる成績ではありませんね」
ネリー「ネリーも……」
京太郎「先行逃げ切り……これが俺には合ってんのかなぁ……」
明華「なぜか京太郎はラス親が多いですから、そのほうがいいかもしれませんね」
ハオ「ええ。逆転で捲るのもよさそうですが、リスクを考えれば先行、早上がり型でしょう」
京太郎「だよなぁ……」
ネリー「でもかっこよく追い上げるキョウタローも見たいよ?」
京太郎「……そうか?」
ハオ「はいはい、その気にならない」
明華「まぁ――とは言いましても、狩宿さんがそうだったように、私たちは型を定めるには早すぎますから」
京太郎「もう少し模索してもいい、ってことか……」
ネリー「だけど弱くなるのはだめだよ」
明華「臨海に行って弱くなった、なんて言われては困ります」
京太郎「――安心してください。一度通った学校は、俺にとっても母校ですから」
京太郎「みんなのためにも、顔に泥を塗るようなことはしない――約束します」
明華「」キュン
ハオ「」ポッ
ネリー「」エヘー
京太郎「……ど、どうしました?」
明華「い、いえ、別に……」
ハオ「はぁ……やっぱり、いいものです……」
ネリー「かっこいいね、キョウタロー!」
京太郎「お、そうか? ありがとよっ」
~特訓終了後
京太郎「ふぅ――あ、そういえば気になってたんだけど」
ハオ「はい?」
京太郎「昼もそうだけど、夕食って寮ではどうしてるんだ?」
明華「休日のお昼は、思い思いにしていますね。朝のうちに、昼のお弁当が必要か、各自で決めます」
ネリー「それはお金かからないの。外で食べるとお金かかるね」
ハオ「夜は寮で食事が取れます」
京太郎「そうか……なら残念だけど、今日はここまでだな」
明華「――と言いますと?」ピクッ
京太郎「時間があるなら、うちで夕食でも――と思ったんだけどな。まぁ大したものは用意できないから、それなら寮で食べたほうが――」
ハオ「もしもし? ええ、外食の予定が……はい、私たちの分はなくて構いません」
ネリー「あのねっ、あのねっ! カレーが食べたいのっ!」
明華「いいですね、カレー。日本のカレーは各食卓の味が出るといいますから。京太郎の家のお味、ぜひ知っておきたいです」
京太郎「え、いいんですか、あれ?」
明華「もちろん。京太郎と食事なんて、普段はできませんから……数少ない機会は、逃したくありません」
京太郎「わかりました……で、カレーでいいんですか? ハオも?」
ハオ「はい、では――ええ、もちろん。カレーは好きです。福神漬けやらっきょう漬けも」
ネリー「かっらいのがいいな! すごいの!」
明華「私は普通よりも、ややマイルドにお願いします」
京太郎「了解しました。俺はちょっと辛いほうが好きだけど……ハオは?」
ハオ「京太郎と同じものを。辛すぎなければ平気ですから」
京太郎「なら、三種類作ることにしよう。トッピングはどうします? 簡単に用意できそうなものなら、カツとかオムレツとか、色々と――」
ネリー「チキンがいい!」
明華「カレーといえばビーフですね」
ハオ「チーズと合わせてみたいので、チーズオムレツなんていかがでしょう」
京太郎「えーっと……ビーフカレーをベースに、チキンカツとチーズオムレツ、あとはサラダを用意しますね」
三人『はいっ!』
京太郎「それじゃ、少し買い物して帰りましょうか」
ネリー「荷物持つね!」
京太郎「はは、ありがとな」
ハオ「では私は京太郎の手を……」キュッ
京太郎「こら」
明華「では私はこちらを――」キュッ
京太郎「先輩まで!」
ネリー「むー……ずっるーい! ネリーも!」ガバァッ
京太郎「うおぉっ!? 意外な跳躍……やっぱり穏乃系女子……」
~午後行動終了
~連休三日目、夜
京太郎「さて、今日も一日、無事に終わった……」
京太郎「課題、というかあれは、俺の弱点だな……きっと夏以降、そこをついてくるやつらも多くなるだろう」
京太郎「それに対応しつつ、連覇――春夏も、二年連続もしてみせるっ!」
京太郎「それと、巴さんにも借りは返さないとな」
巴「狩宿だけに――ごめん、なんでもない」
照「いいね」
京太郎「……なんだいまのノイズは。さて――」
京太郎「――連休も最後だし、誰かに電話してみようかな」
京太郎「あ――そういえば特打ちのこと、監督にも伝えておかないとな」
京太郎「そうとなれば……と」
京太郎「――もしもし、夜分に恐れ入ります。ヴィンドハイム様の携帯でしょうか」
アレクサンドラ「あ、はい……いや、うん、そうだけど……どうしたの?」
京太郎「よかった……あ、京太郎です。お疲れさまです」
アレクサンドラ「うん、お疲れさま……なにかあった?」
京太郎「ええ、ちょっと……それで、連絡しておいたほうがいいかと思って」
アレクサンドラ「悪い話?」
京太郎「かもしれません、規則によっては」
アレクサンドラ「オーケー、ゆっくり聞くわ」
京太郎「えっと、まず俺たちがしたことですが……」
アレクサンドラ「たち……なに、複数犯?」
京太郎「俺が主謀ですね。で、ハオを誘ったら明華先輩とネリーも来たので、四人で午後から、部室を使いました」
アレクサンドラ「……四人で、ね……すごいことするわね、あなたたち」
京太郎「そこから夕方までみっちりやりました」
アレクサンドラ「――歯に衣着せない物言いね……や、やったって……まぁいいけど」
京太郎「とりあえず、報告はそれだけです――問題になりますか?」
アレクサンドラ「……行為自体は、本人たちがいいなら構わないけど、部室を使ったのはちょっとね……」
京太郎「う、まずかったですか……一応、ハオに確認はしたんですが」
アレクサンドラ「場所を変えて、キョウタロウのその気がなくなるのを怖がったんじゃないかしら」
京太郎「俺はどこでも大丈夫だったんですけどね。ただ、部室のほうが道具も揃ってて、近くて、便利なので――」
アレクサンドラ「ど、道具っ!? いつの間にっ……」
京太郎「いや、いつの間にもなにも、普段から使ってますし……あ、勝手に使うのがまずいってことですか?」
アレクサンドラ「普段からっ!? い、いや、しかも勝手にって……私物じゃないのっ!?」
京太郎「そりゃ、部の備品ですし……」
アレクサンドラ「……アンビリバボー……え、なにそれ、私物のそんなのが部室に……? いつから……?」
京太郎「………………」
京太郎「…………なんの話ですか?」
アレクサンドラ「だ、だ、だからっ……その、あんたたちが使った、道具とか……の……」ボソボソ
京太郎「雀卓と雀牌ですよ?」
アレクサンドラ「――――ん?」
京太郎「ですから、卓と牌と……麻雀関係の道具です、けど……」
アレクサンドラ「……ど、どうやって使ったの、それ……」
京太郎「へ? いえ、普通に……」
アレクサンドラ「…………もしかして、あの……麻雀の練習してたってこと、四人で?」
京太郎「はい、もちろん」
アレクサンドラ「」
京太郎「あの……いったい、なんの話だと――」
アレクサンドラ「わ――わかってたから! 大丈夫、間違ってないから、問題なし、ノープロブレム!」
京太郎「アッハイ」
アレクサンドラ「あと言葉が足りない! ちゃんとした言葉を使いなさい、こっちは日本語歴短いんだから!」
京太郎「すいませんっ!」
アレクサンドラ「はぁ……ほんっと、なに考えてんのよ……疲れてるのかしら」
京太郎「かもしれませんね。見ていても、忙しそうですし」
アレクサンドラ「そりゃどうも……で、なんの報告だったの?」
京太郎「いえ、明華先輩がいたとはいえ、部長にも監督にも伝えず、無断使用だったので……事後報告をと」
アレクサンドラ「あー、そう……出るとき、掃除とロックはしておいた?」
京太郎「ええ。牌も綺麗に磨いてあります、新品同様に」
アレクサンドラ「それはやりすぎだと思うけど……」
京太郎「それで、無断使用については……」
アレクサンドラ「無断って言っても、練習なんでしょう? なら構わないわよ。普段から、練習なら入っていいって、鍵は複数人が管理してるし、寮にも置いてあるはずだから」
京太郎「ああ……それで、ハオだけでも開けられる状態だったんですね」
アレクサンドラ「うん、そういうことね。まぁキョウタロウは寮に入れないから、一人では無理だと思うけど」
京太郎「そうですね」
京太郎「――そういえば、監督の部屋には麻雀の道具、ありますか?」
アレクサンドラ「そりゃまぁ……ん?」
アレクサンドラ「あの……先に言っておくけど、家はダメよ?」
京太郎「え?」
アレクサンドラ「いや、ほら……私は教師でしょう?」
京太郎「はい」
アレクサンドラ「で、あなたは生徒」
京太郎「はい」
アレクサンドラ「ほら、まずいでしょ? 私の部屋にあなたが出入りしたりしてたら、色々と……」
京太郎「……ああ、なるほど」
アレクサンドラ「あ、わかってくれた?」
京太郎「テストとか、学校関連の書類があると、まずいですもんね」
アレクサンドラ「わかってないっっ!」
京太郎「」ビクッ
アレクサンドラ「そうじゃないでしょっっ……あぁっもうっ……」
京太郎「い、いえ、でも……だからこそ、部員も出入りしたことない、わけですよね?」
アレクサンドラ「え――」
京太郎「明華先輩や部長、ハオやネリーもそうですし、あとは智葉先輩やメグ先輩なんかも……」
アレクサンドラ「……女子?」
京太郎「はい。臨海は女子校ですし」
アレクサンドラ「それはあるけど……一回や二回や、ほかにも何回か」
京太郎「えっ」
アレクサンドラ「ん?」
京太郎「お、俺だけダメなんですか……あれですか、嫌われてる的ななにかですか」
アレクサンドラ「……えと、確認するわよ?」
京太郎「は、はい」
アレクサンドラ「……私の部屋の雀卓確認したのは、今日みたいな練習で、部員を誘ってうちに来るのはどうだったか――という確認のため?」
京太郎「そう、ですけど……?」
アレクサンドラ「」
アレクサンドラ「~~~~~~~~~~~っっ!! んっとにっっ……」
京太郎「」ビクッ
アレクサンドラ「……はぁ……ごめんなさい、ちょっと冷静じゃなかったわ……普通、そういうことよね……」
京太郎「あの、大丈夫ですか?」
アレクサンドラ「うん、問題ない……まぁ、練習にくるならいらっしゃい。でも一人はダメ、誰かと一緒に来るように、わかった?」
京太郎「はい。さすがに俺も、一人暮らしの女性教師を、一人で訪ねたりしませんよ」
アレクサンドラ「」イラッ
京太郎「そういうのは、卒業してからですよね」
アレクサンドラ「――――――ぇ」
京太郎「あれ、監督?」
アレクサンドラ「……え、と……それは、卒業して……問題がなくなったら、私の部屋に……?」
京太郎「まぁ……お邪魔でなければ、そういう機会もあるかな、と……」
アレクサンドラ「……な、なんてことない部屋よ? 飾り気もないし」
京太郎「監督がいるじゃないですか」
アレクサンドラ「うっ……」
京太郎「俺としては、それだけで十分、訪ねる動機にはなりますよ」
アレクサンドラ「そ、そう……なんだ……」
京太郎「もちろん、監督の気持ちが優先ですけどね」
アレクサンドラ「き、気持ちっ!?」
京太郎「それはもちろん。お忙しいときに行くのもよくないですし、そもそも歓迎されないなら、行きませんから。安心してください」
アレクサンドラ「あ、うん……いえ、その……それは、大丈夫だと思うから、うん……」
京太郎「そうですか? なら、卒業後――そういうことがあれば、ぜひ」
アレクサンドラ「は、い……ええ、いいわよ……」
京太郎「えーっと、それでなんの話――ああ、そうでした。そういうわけで、午後は部室で練習を、という報告ですね」
アレクサンドラ「え、ええ、そうだったわね……収穫はあった?」
京太郎「俺には、先行逃げ切りが向いてるかな、という意見が。でもまだ、型を決めるのは早いだろう、とも」
アレクサンドラ「うん、でしょうね……たしかに、いまのままで負ける可能性はある」
アレクサンドラ「とはいえ、型を決めずとも、あなたの勝率はずば抜けているわ」
アレクサンドラ「言うなれば、臨機応変――それがあなたに相応しい型かもしれない」
京太郎「……難しいですね、それは」
アレクサンドラ「できる限りのサポートはするわ……キョウタロウも、うちの大事な部員なんだから」
京太郎「ありがとうございます……それでは、失礼します」
アレクサンドラ「うん。わざわざ報告ありがとう……それじゃ、また明日」
京太郎「ええ、おやすみなさい」
アレクサンドラ「……落ち着きなさい、相手は子供。しかも高校二年生、オーケー?」
アレクサンドラ「……ダメね、全然オーケーじゃない……どうしましょ」ハァ
~4月連休三日目、終了
【4月連休三日目】
本日で連休も終わり、ということで高校と大学、両方で練習を。
結果から言えば、さすがは大学生。
男子のインハイチャンプになり、少し気持ちが浮ついていたのかもしれない。
諌めていただき、ありがとうございました。
それを受けて、午後からは対策会議と練習。
練習中に思ったことだけど、やっぱり臨海女子という学校は、相当だ。
この環境にいられる幸運を、いまは大事にしないといけない。
そうそう、途中で焼いたクレームブリュレです。
プリンやプリンタルトはよく作ってましたが、定番のこっちはあまり作っていなかったでしょうか。
ご好評いただき、よかったです。
…………
『私のいない間に、そんなことが……』
『仕事中に聞かなかったのか?』
『仕事中にそんな時間はない』
『大変だね、料亭は』
『プロって案外楽なのかも……』
いや、どっちかっていうとプロのが大変かと……。
『ふーん、プロが楽、ねぇ……』
『いい度胸だぞ☆』
『新人プロを囲むベテランの会、なんてどうでしょう』
『べ、ベテランっていうほどじゃないよ!』
『囲んでなにするつもりなんすか……』
……麻雀を楽しむんじゃないかな?
『楽しそう!』
『最初のうちはそうやろな……』
『そのうち目が死んでいくんだよ。10時間後には死屍累々だから』
『そんなに続くんか、ベテランの会……』
『だからベテランじゃないから!』
プロじゃないやつが食いついてるんですが、それは。
『っていうか、京太郎が負けたの?』
『こう言っちゃ大学の人らに悪いけど、意外やな』
『料亭の子が知らんとなると、あとの面々やと特にねー』
『その前に、料亭の子が誰かバレてるのが問題じゃないの?』
『ここでは名前伏せてもバレてるんが普通やし、ええやろ』
正直、大学生の人たちもかなり強いですよ……高校より授業時間が長いっていうんだから、驚きだ。
いつ練習してるんだろうな、ほんと。
『で、誰が勝ったの?』
『私の先輩に決まっとう』
『うちの前部長じゃないかな』
『……すいません、どっちでもないです。私です』
『まぁ、すごいわね』
『ちょっと驚きですよー』
『ですが、京太郎さんとの付き合いは、全学校でも一番だと思いますから』
『傾向と対策も得意だし、実は一番の天敵なのかもしれない……京ちゃん、次は頑張ってね』
――ああ、連敗なんてしない。次は俺が勝つ、そして部屋の掃除をさせてもらう!
『そういえば、勝ったときにお部屋の掃除がしたいと言われました。負けたら相手の部屋を掃除する仕様みたいですね、京太郎くんは』
えっ。
『――京ちゃん、私と打とう。全力で』
『京太郎くん、ちょっと北海道来てよ。お相手するから、ガチで』
『西のほうが近いで、京太郎! ちょっと寮まで来てんか?』
『俺とこも頼むわ……あ、ちゃんと勝負してからでええからな』
『そ、そそ、掃除って! そうやって部屋に上がるつもりっ!? さいってー!』
『サイッテー!』
『逆に勝てば、京太郎くんの部屋に行けるわけだよね』
『なるほど』
『閃いた』
『けど、掃除する部分が見つからないんじゃないの? 京太郎くんの部屋は』
『そういえばそうだったわ』
『絶望した』
いやー、俺の部屋なんて散らかってますよ?
そんな部屋を掃除させるのは申し訳ないし……うん、これは今後も負けられないな。
――――――――
~清澄
「ぐぬぬっ、私が先に勝ちたかったじぇ……」
「随分強くなっているはずなのに……どこかに隙があるんでしょうか」
「これ辻垣内さん以外ってことですよね?」
「その中だと、弘世さん、狩宿さん、あとは――誰かしらね」
「新道寺の白水いうんが、同じ大学のはずじゃの……」
「副将の方ですね」
「九州の子の先輩否定、弘世さんでもない……狩宿さんなのかしら」
「永水の次鋒の人でしたっけ」
「おお! つまりそれに勝った部長は……」
「麻雀に関して、そういう強弱関係にはならんじゃろ……事実、わしじゃ京太郎には勝てんわ」
~白糸台
「女子チャンプに挑む前に、勝手に負け星つけてるし!」
「まぁ、これは仕方ないよ……毎日何局も練習してるんだし」
「私はまだ負けてないもん!」
「そろそろ外で練習したほうがいいかもね」
「高校よりは、京太郎くんみたいに大学か、プロを回りたいね」
「それじゃテルーと!」
「恵比寿が高校生の相手なんて、してくれそうにないけど……」
「淡ちゃんの青田買い……っていうアプローチは、したくないしね」
「だね。そういう使い方は、私も嫌い。淡はうちの大事な部員だしさ」
「亦野先輩、タカミー……」ブワッ
「ま、宮守の人たちがこっちに近い大学みたいだし、その辺で当たってみるよ」
「あっ、それじゃあの人がいい! おっきー人、キョータローよりも!」
「姉帯さんだね。プロも注目してたみたいだし、いいと思うよ」
~永水
「巴ちゃん、すごいです!」
「そうねぇ……どうやって上がったのか、また聞いてみたいわ」
「……お部屋の掃除、京ちゃんが……羨ましい……」
「殿方を部屋に上げて掃除なんて、普通に無理です」
「巴さん、どうしたんでしょうね」
「巴は日頃から片づけてますし、良識ありますからねー。心配ないんじゃないですかー?」
「あら、私なら日頃から片づけているけれど、お願いするかもしれないわよ?」
「わ、わわ、私は……」
「姫様はさすがに……ご当主様たちも、お許しにならないかと」
「京ちゃんの、写真……隠しておいて、わざと見られたり……そ、それも恥ずかしいかなっ……///」
「勝たないと掃除してもらえないんですよー? はるるー?」
「初美さん、春先輩聞こえてないです」
~宮守組
「これ巴よね、たぶん……すごいわね」
「インカレで当たるときは、要注意だよー」
「うちは弱小もいいとこだからね!」
「デモ、コトシハ、ツヨイ!」
「ま、私たちが入ったからね……なにせ豊音がいるもの」
「これでシロがいればなぁ」
「そうだねー。でも、もう一人のメンバーになってくれそうな先輩もいるし、いっぱい勝てるよー」
「イイトコ、ミセナイト」
「そうね……って、京太郎、インカレ見るのかしら」
「ワカンナイ……」
~阿知賀
「えーっ、京太郎負けちゃったんだ……」
「っていうかわざとでしょ。負けて掃除しに上がり込むとか、ほんっと……」
「そういう言い方は、勝った人に失礼」
「そうだよ、憧ちゃん?」
「あ、ごめん……そういうつもりじゃ……」
「京太郎くんの掃除技術は、松実館の仲居に欲しいくらいなのです!」
「板場にも欲しいし、京太郎くんが二人いればなぁ……」
「それなら、
お姉ちゃんも私も困らないよね!」
「……なんか、とんでもないこと言ってない?」
「聞き流しとこ……」
「でもいいなぁ……私の部屋も、掃除してくれないかな……麻雀もできるし、一石二鳥だと思うんだけど」
「し、シズの口から四字熟語だなんて……」
「穏乃、大丈夫?」
「お熱でもあるのかな……」
「あったか~くしとく?」
「みんなひどい!」
~姫松
「あれだけ強い京太郎くんでも、負けてまうんやなぁ……」
「っていうことは、うちらも憩ちゃんや宮永に勝つチャンスは、なんぼでもあるいうことやな」
「そうやで~。そのチャンスを大会で掴んだら、上位に行けるわけや~」
「上位? ちゃいます、うちらが欲しいんはそれやない――」
「優勝です……トップに立たな、意味ありませんから!」
「お、おお……なんや二人とも、やる気やな~」
「当然です!」
「京太郎くんが優勝したんなら、それに見合うには同じく優勝しかないんですから!」
「勝つで、漫ちゃん!」
「勝つで、絹ちゃん!」
「目指せ、優勝!」
「Vやねん、姫松!」
「……まぁやる気があるんは、ええことやで~」
~千里山
「いやー、大学生は怖いなぁ……あの京太郎くんでも、隙が見えるんか」
「呑気に言うてる場合とちゃうで。逆に言えば、それくらいせんとインハイのトップは難しい言うことや」
「それはそうですけど……」
「しっかり頼むわ、エース」
「え、私に丸投げですか!?」
「あほ。そうやないけど、あんたが屋台骨にならんでどうするっちゅう、浩子のありがたい激励やろ」
「そ、そうやったんですか、部長……」
「えっ? あ、ああ、うん、そやで」
「…………監督」
「て、照れ隠しやろ。浩子は昔からそういうとこあってやな――」
~臨海
「隙――というわけでもありませんが、麻雀で言うなら当然のことなんですよね、冷静に考えれば」
「はい。弱いものを狙い、強いものが上がる前に、その相手から根こそぎ吸い上げる」
「……それがキョウタローより早くできれば、ね」
「一昨年の夏でしたか……メグが龍門渕を相手に、似たようなことをしたはずですね」
「ああ、牌譜を見ました。龍門渕透華の雰囲気が急激に変わった直後、メグは別の相手を飛ばしています」
「でもキョウタローも、簡単に上がられるわけじゃないよね」
「まぁ……守備も攻撃も、かなりのレベルでまとまっていますし……爆発力もありますから」
「隙はないのに、欲望には素直でわかりやすく、そこが可愛らしいというか……」
「それにかっこいいよね」
「まったくです……ああ、京太郎……って、そうじゃなくて!」
「おっと、話が逸れてしまいましたね」
「休み中はずっとキョウタローと打てて、楽しかった!」
「まだ続けますか……まぁいいです。そうですね、できれば旅行にも行きたかったところですけど……」
「さすがに、優勝を逃しておいてそれでは、理事の方々も怒られるでしょうし」
「ネリーはいいよ、キョウタローといられたら、ずっと部室でも」
「私もです」
「もちろん私も……明日からは、違うクラスになりますがね……」ハァ
「えへへ、同じクラスでよかった♪」
「同じ学年でさえないなんて……早く放課後にならないかしら」
「まだ明日にもなってませんよ、明華」
~臨海側大学
「見事だったよ、巴」
「なるほど……これは巴を褒めると同時に、京太郎の詰めの甘さを責めるべきかな?」
「まぁ、私のはラッキーでしたけど……哩さんが勝負に出てくれたことも含めて」
「大会で似たような状態やと、私も突っ込まんかったち思う」
「だろうな。だが逆に言えば、大会でも同じ状況でそうせざるを得ないよう相手を誘えば、似たような状態は作れるわけだ」
「悪いこと考えとる顔ばい、菫」
「失敬な」
「自分の手牌にもよりますけどね。今回は京太郎くんがうまく上がって、流れが遠のいたのもプラスに働いてますから」
「故意にその流れを呼ぶのはリスクが大きい……よほど相手が強くない限りは、する必要がないな」
「できれば今日の卓は、智葉にも見ていてもらいたかったが」
「――それだ。哩、なぜ言わなかった!」
「止めよったやろ! 聞かんと出ていったんは智葉のほうったい!」
「ま、まぁまぁ、落ち着いて……」
「――しかし智葉も、随分と京太郎くんに入れ込むようになったものだな」
「おお、確かに」
「な――そ、そんなことはっ……その、あれは……じ、実家を手伝ってもらっているからであって、別に他意があるわけでは……」
(赤くなってるぞ)
(赤うなっとるばい)
(真っ赤ですね……)
「な、なにを笑っている!」
『別に』
~関西大学組
「落ち込んでる――っちゅうわけでもなさそうやな」
「負けても前向きなのはいいことよー」
「まぁ練習でよかったやん。これで反省できたら、ええことづくめや」
「いーや、こういうときこそ傍で支えたらなあかん。ああ、京太郎……ほんまは悔しいんやろなぁ」
「……竜華おかしないか」
「京太郎くん絡むと、誰もかれもおかしなってしまうのよー」
「罪な男やで……」
「ちょっと東京行こかなぁ……」
「先月行ったとこやろ……」
「こっちも明日から学校なのよー」
「言うてるだけやって。竜華は根は真面目やから、男のことでそんな――」
「もしもし、叔父さん? うん、うち……部屋のことやけど――」
「……おい」
「ほ、ほんまに大丈夫やのー?」
「……ダメかもわからんな」
~関東プロ
「はい、持ってきましたよ……言っておきますけど、ここで見るだけにとどめてくださいね。あと、口外禁止ですので」
「わーい、ありがと☆」
「お久しぶりデス、監督」
「元気そうで安心したわ、メグ」
「で、これが京ちゃんの負けた牌譜?」
「最初のほうは上がってんだねぃ。ここの打点が高けりゃ、十分逃げ切れたっつーか、飛ばせてるっしょ」
「自分を基準にしないように」
「相変わらず、詰めが甘いね……まぁ唯一の負け筋って感じ?」
「だと思う。それと、三尋木プロの言葉も一理あるかな」
「火力より速さだと思うぞ☆」
「どっちもだってば」
「……トップ勢はほんと、無茶ばかりデス」
「そういう世界なのよ、プロっていうのは」
「照としてはどっち採用?」
「……まず速さ、っていうか地力をつけないと話にならない。それができてから、火力の底上げだね。三尋木プロに教わるのもいいと思う」
「本音は?」
「いますぐ駆けつけて慰めて、一晩中みっちり麻雀したい」
「私も。じゃ、行く?」
「うん」
「……新人さんがとんでもないこと言ってるんですけど」
「あはは、ちゃんと止めますので、大丈夫です」
「おうこらルーキーども」
「それはまず、私たちに勝ってからにしてもらうぞ☆」
~関西プロ
「しゃーないなぁ、京太郎は……」
「負けることもあるやろ、相手も素人ちゃうで?」
「まぁそういうことです。二人もプロ入り前、京太郎くんに負けたことはあるはずです」
「立ち直り!」
「そうですね、京太郎さんは常に前を向いていますから……きっとすぐ、狩宿さんに再戦を挑まれます」
「しかし巴ですか……ふふ、面白い因果です」
「どういうことっすか?」
「いえ、京太郎くんが派遣されて間もない頃、永水で私と卓を囲んだことがありまして」
「永水って……初めての派遣のときやないですか」
「手が早い!」
「そ、そこは重要ではありませんっ」
「そうですね。私がお会いしましたのも、一ヶ月目のことですから」
「利仙まで!」
「と、ともかく――そのとき、京太郎くんは巴から役満を上がり、トップに立ったことがあります」
「なるほど!」
「狩宿さんの、意趣返しになったわけですね……」
「そこまで根が深いものではないと思いますが……まぁ、これで巴が役満和了だったなら、さらに素晴らしい」
「いやー、さすがにそれはないんとちゃいます?」
「俺もそう思うわ」
「いずれにせよ、京太郎くんにはこの経験を糧に、成長してもらいたい……なにせ、私の愛弟子ですから」
「私の!」
「まぁまぁ、いずれは私の夫になるということで、一つ」
「さらっとなんか言うてるで、こいつ」
「ニコニコしてるけど、えらい野望やな……」
「り、利仙?」
「うふふ、冗談でございます」
~4月第三週月曜、朝
京太郎「野菜洗い終わりました!」
辻垣内父「ああ……いや、そういうのは追い回しにやらせるから、無理するなよ」
辻垣内母「そうよ。京太郎くんがなんでもやっちゃうと、下の子が覚えられないわ」
京太郎「はい、だからあいつに教えながらって感じです」
追い回し「京太郎兄さん、ありがとうございますっ!」
京太郎「あー……俺はあれだ、ここの弟子ってわけじゃないから、兄さんじゃないほうがいいかもなぁ」
辻垣内父「確かにな」
辻垣内母「じゃあ若旦那とかにしとく?」
智葉「お母さんっ! 余計なことを言わないでください!」
辻垣内父「……本人の意思も確認せず、そういうのはいかんだろう」
追い回し「京太郎さん、そこんとこどうなんすか」
京太郎「智葉先輩に俺が釣り合うはずないだろ」
追い回し「美人っすもんねぇ、お嬢さん……」
智葉「……京太郎、学校に行かなくていいのか」
京太郎「――っと、そうでした。それじゃ、お先に失礼します!」
追い回し「お気をつけて!」
辻垣内父「寝るなよ」
辻垣内母「いってらっしゃい」
京太郎「行って参ります!」
智葉「…………おい」
追い回し「はい?」
智葉「――無駄話してる暇があったら、次の仕込みに移れ」ギロッ
追い回し「は、はいぃっっ!」
辻垣内母「あらあら、相手にされなかったからって、八つ当たりはだめよ?」
智葉「そ、そういうことではありません!」
京太郎「朝から別の場所、それも板場で仕事……阿知賀を思いだすなぁ」
京太郎「なんて言ってる場合じゃない、今週も頑張らないとな!」
京太郎「さて――今週は、なにに力を入れるべきかな」
京太郎「そうだ、いくら麻雀で強くなっても、俺の役目は派遣マネ……執事だからな!」
京太郎「これまで以上に、部員のみなさんに尽くさないと。よぉし、やる気が出てきた!」
京太郎「しかしあれだな、寮が学校に近いからか、やっぱり臨海の生徒は少ない……誰かに会わないもんか」
京太郎「……うん、知ってた」
モブ子「まぁそういうこともある」
京太郎「お前は寮住まいなのに、なんで外にいるかなぁ」
モブ子「いや、最近出てないことに気づいて。たまには顔だしとかないと、忘れられるかなーって」
京太郎「そういえば……連休中は練習してたか?」
モブ子「してたっつーの。あんたが一軍と打ったり大学行ったりしてる間に、どっぷりねっぷりとね」
京太郎「そうか……なんかすまんな」
モブ子「いやー、別にいいっていうか。それだけ学校の生徒に馴染んでくれれば、オリキャラの出番も必要なくなるからね、いいってことよ」
京太郎「けど差し入れは食うんだろ?」
モブ子「食うねぇ、最低二人前は」
京太郎「…………ちょっと肥えた?」
モブ子「いやああああああああああああ! ハッキリ言うなあああああああああああ!」
~教室
京太郎「……ネリーは変わらないなぁ」
ネリー「なにそれすっごいシツレイ!」
ハオ「そうです、よくないですよ、京太郎」
京太郎「ああ、悪い意味じゃないんだ……って、ハオ? なんで?」
ハオ「いいじゃないですか、朝礼まで友人の教室にいるくらい、普通でしょう?」
京太郎「まぁそりゃそうか」
~三年教室
明華「……隣ならともかく、学年まで違うと近寄りがたいですね……ふぅ」
~4月第三週、昼
京太郎「――さて、あっという間に昼休みだな」
ネリー「お腹空いたー!」
京太郎「俺もだよ……さて、昼飯にするか」
ネリー「今日はなに?」
京太郎「まぁ普通の弁当だよ。ちょっと男子向けかな、ミートボールを凝ってみたりもしてる」
ネリー「おいしそう……」
京太郎「あとはザワークラウト風のサラダ、白身のフライ、プチオムレツ、デザート――そんなとこか。ほい」トンッ
ネリー「いただきます!」
京太郎「よしよし。あ、その前に手を拭いてからな。おしぼりだぞ」スッ
ネリー「ありがとっ……今度こそ、いただきます!」
京太郎「よく噛んで食べるんだぞ」
ネリー「おいひぃっ!」モグモグ
「……なんで当然のようにお弁当を」
「しかもあの優しい目は……まるで、彼氏かお父さんのようっ……」
「かなりの隔たりがあるたとえなんですが、それは……」
京太郎「ふふ、デミグラスソースでしっかり煮込んだミートボール。これはもはやミートボールというか……ハンバーグボールだ!」
ネリー「卵入ってたよ?」
京太郎「それは当たりだな。今日はいいことあるぞ」
ネリー「わーいっ♪ なら今日は、京太郎に勝てそーだね」
京太郎「むぅ、巴さんに負けた以上、あまりデカいことは言えないな……負けないように頑張るか」
ネリー「勝ったらお掃除、楽しみだなー……あ、でも机の引きだしは開けないでね? 日記入ってるから!」
京太郎「ああ、わかった」キリッ
ネリー「……絶対だよ?」
京太郎「わかってるって!」
京太郎(どんなこと書いてんだろ……)
京太郎「…………ネリー?」
ネリー「なぁに?」ムグムグ
京太郎「口元にご飯がついてるぞ」ヒョイ
ネリー「ん? あ、ほんとだ」パクッ
京太郎「ちょまっ!?」
ネリー「ん?」モグモグ
京太郎「いや、まぁいいんだけど……」
ネリー「変な京太郎」
京太郎「ネリーは、人の手から物食べるのは、あんまり気にならないのか?」
ネリー「? 気になるよ? 毒でもついてたら大変!」
京太郎「毒って……まぁ、その点については、俺を信用してくれてるってことか」
ネリー「うん♪ 京太郎はやさしーからね」
京太郎「そりゃどうも……もう一個食べるか?」ヒョイ
ネリー「あむっ」パクッ
京太郎「俺が使った箸からでも、躊躇しないんだなぁ」
ネリー「むしろ大歓迎!」
京太郎「えっ」
ネリー「あっ」
京太郎「………………」
ネリー「な、なんでもないよっ////」モグモグモグ
京太郎(頓着しないっていうか……理解した上でやってるっ!?)
ネリー「そ、そういうことじゃないから! 違うから!」
京太郎「心の声が聞こえただとぉっ!?」
「あー……お弁当が甘い、甘すぎる」
「整理券、完全に無意味になってるし……」
「ネリーいいなぁ……私も麻雀部入りたい……」
「麻雀部は入部試験まで作られちゃったからね、仕方ないね……」
京太郎「ネリーが妖怪お箸舐めだったなんて……」
ネリー「違うもん! そういうのじゃないの!」
ハオ「なんて羨ましい……」
明華「すぐに私と学年変わってください」
京太郎「」
ハオ「冗談ですよ?」シレッ
明華「さすがにそこまで、レベルが高くありませんから」
ネリー「ネリーも違うよ!」
京太郎「ほう」
ネリー「ただ――う、うぅ……笑っちゃダメだよっ?」
京太郎「わかった、笑わない」
ネリー「……そういうの、気にしないで食べさせっこできるの……すっごく仲いいってことだと思って」
ネリー「キョウタローと、そういう風にできるのが……嬉しいなって、思ったの……」
京太郎「………………そうか」
ネリー「お、おかしくないよねっ?」
京太郎「おかしいわけないだろ。俺はむしろ、ネリーにそう思ってもらえて嬉しいよ。ありがとな」ナデナデ
ネリー「えへへっ……よかったぁ」
ハオ「私は信じてましたよ、ネリー」
明華「気持ちはよくわかります……私も、そういう関係には憧れますから」
京太郎「………………そうですね」
ハオ「ネリーへの返事とあまり変わらないのに……」
明華「なぜかニュアンスが違って聞こえます……」
京太郎「ご、誤解ですっ!」
アレクサンドラ「楽しそうね、あんたたち」
ネリー「うん、楽しいっ♪ 今日も頑張るよっ!」
京太郎「そういえば、家族のためにネリーは、日本で麻雀してるはずだ……」
京太郎「普通、そういうの気にしないのは家族間だもんな。そういう、家族みたいに近い関係が、恋しいのかもしれない」
アレクサンドラ「………………」
京太郎「どうかしましたか?」
アレクサンドラ「いや……まぁ、それでいいわ」
京太郎「?」
ネリー「……そっちになっちゃったか」
ハオ「まぁ京太郎ですからね」
明華「わかっていたことでしょう」
ネリー「そうだよね……」
京太郎「理解したはずなのに、疎外感を感じる……これが、国境……」
明華「私の見せ場のセリフを使わないでください」
京太郎「すいません!」
ハオ「そんなことより、練習始めましょう」
京太郎「そうだな……」
アレクサンドラ「そのために声かけたんだけどね」
京太郎「うっす……それじゃ、やりますかっ」
京太郎「…………あれ?」
明華「どうしました?」
京太郎「いえ、朝から執事として頑張ろうって誓ったような……」
ハオ「ネリー報告を」
ネリー「キョウタローは、授業の間の休みで教室ピカピカにしてたよ。ここだけギョーシャさんが入ったのかって、先生たちが騒いでた」
アレクサンドラ「反省」
京太郎「つい……」
ネリー「あとね、お弁当食べてたらジッと見てたクラスメートのために、マドレーヌ焼いて配ってたよ」
明華「羨ましい……」
ハオ「隣のクラスにもぜひお願いします」
京太郎「わかった、任せてくれ」
アレクサンドラ「いや、そうじゃなくて……ともかく、そこまでやってるなら、部活中くらい頑張らなくていいでしょ」
京太郎「でも、俺は派遣のマネージャーとして――」
アレクサンドラ「なら、ここでは選手として扱います。それじゃ、対局始めるわよ!」
京太郎「それじゃ牌譜を――」
ハオ「京太郎」
京太郎「」ハイ
ネリー「それじゃ、誰が抜ける?」
明華「いつもので決めましょう」
明華「」
アレクサンドラ「連休中に内緒で打ってるからそういうことになるのよ」
ハオ「おや、ご存じでしたか」
ネリー「羨ましいなら混ざればよかったのに……」
京太郎「いや、俺が連絡しておいたんだよ。無断使用はまずいかなって」
アレクサンドラ「ちょっ……」
明華「へぇ……ご自分はこっそりお電話しておいて、その言い草ですか」ニコニコ
アレクサンドラ「じ、事務的な連絡よ」
ハオ「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
ネリー「メンツ決まったし、キョウタローも入ってよ」
京太郎「おう。それじゃ、明華先輩……よろしければ、また隣にどうぞ」
明華「いいのですか?」
京太郎「もちろん。お茶をお淹れしましたので、ゆっくりとご観戦ください」
京太郎「――よければ応援してくださると、張り切りますよ」
明華「ふふっ……では――」
明華「がんばれ♪ がんばれ♪」
京太郎「よぉし! やる気になりました!」
明華「えらいぞー♪」ナデナデ
アレクサンドラ「……普通の応援なのに、いかがわしく感じるのはどうしてなの」
ハオ「ハートの記号が入力されたら、もっと大変でしたね……」
京太郎「これは負けられないな――さて」
京太郎「今日は半荘で、しっかり打ちますよ!」
明華「あら……それだと私は、参加できそうにないですね」
ハオ「残念でしたね」
明華「そうでもありません。半荘なら、誰かの飛び終了もあり得るでしょう?」
アレクサンドラ「露骨な掃除狙いしないの」
ネリー「ふふーん、その前にネリーが勝つよ! 今日はね!」
京太郎「そうはいくかって。では、お願いします!」
監督25000→
ハオ25000→
ネリー25000→18600
京太郎25000→31400
京太郎「ロン、6400な」
ネリー「むぎゅっ」
アレクサンドラ「さて、それをラストまで維持できるかどうかね」
京太郎「わかってますって……」
ハオ「京太郎ならできますよ、信じています」
京太郎「まぁ頑張ってみますか」
明華「がんばれ♪ がんばれ♪」
アレクサンドラ「もうそれはいいから……っていうか、ハオは励ましてる場合じゃないでしょ」
ハオ「おっと、そうでしたね。私も勝たないと、掃除してもらえないんでした」
京太郎(……別に、言ってくれればするんだけどな)
監督25000→13000
ハオ25000→
ネリー25000→18600
京太郎25000→31400→43400
京太郎「ロン――満貫……裏乗って跳ねました、12000です」
ネリー「すっごーい」
アレクサンドラ「いったぁ……いまのは痛いわね。つまり効果的ってこと、いいわよ」
京太郎「ありがとうございます!」
ハオ「と――余裕の指導のように見えますが」
明華「見るからに焦っていますね。チャンスですよ、京太郎」
京太郎「はい!」
アレクサンドラ「うう、うるさいわね……京太郎も油断しない、ここからなんだから」
京太郎「はい!」
ネリー(それを見ながら上がりを狙うネリーだった……)
ハオ(私もいますよ……京太郎の隙は終盤です、必ず捲って見せます)
監督25000→13000
ハオ25000→24000
ネリー25000→18600
京太郎25000→31400→43400→44400
ハオ「………………」タンッ
京太郎「ロン、1000点だけど」パラッ
ハオ「……はぁ……はい」
京太郎「ど、どうした……?」
ハオ「いえ、どうにかツモ上がりはできないかと苦心していたのですが、やはり無理だったな、と……」
アレクサンドラ「その点においては、キョウタロウのディフェンスは言うことなしね」
京太郎「ありがとうございます」
ネリー「言ってる間に、点差が大変なんだけど」
ハオ「出上がりが無理だと考えれば、監督は31400、ネリーは25800、私は20400……」
アレクサンドラ「それを三人で奪い合う、か……はぁ、面倒ねぇ」
明華「その前に京太郎、誰か飛ばしてくださいねっ」
京太郎「はは、頑張ります……」
監督25000→13000→10400
ハオ25000→24000→21400
ネリー25000→18600→16000
京太郎25000→31400→43400→44400→52200 トップ
アレクサンドラ(さすがに今回は……うーん、けどツモは難しいかしら?)チラッ
京太郎「――ツモ」
アレクサンドラ「は――?」
京太郎「2600オール、で終了ですね。お疲れさまでした」
ハオ「お疲れさま……はぁ、今回はどうにも」
ネリー「っていうか、キョウタローしか上がってないような……」
京太郎「すいません、明華先輩……飛ばし切れなくて」
明華「いえいえ、素敵でしたよ、京太郎」
京太郎「ありがとうございます」
明華「えらいぞー♪」ナデナデ
京太郎「あ、ありがとうございます」デレー
ハオ「……はいそこまで」
ネリー「ケントーしようよ!」
アレクサンドラ「そうねぇ……明華、牌譜」
明華「え?」ナデナデ
アレクサンドラ「……ほんとに見てるだけなら、一年の指導行ってくる?」
明華「冗談ですよ。はい、ご確認を……でも今回は、最後までしっかり集中できてましたね、京太郎」ナデナデ
京太郎「あ、はい……いえ、あの、いつまで撫でてるんですか……」
明華「ふふ、失礼……京太郎の髪は柔らかくて心地よいので、つい」ナデナデ
ハオ「くっ……」
ネリー「実はこれ、対局しないほうが楽しいんじゃ……」
アレクサンドラ「そう思うなら譲ってあげたら? 対局相手」
ハオ「それとこれとは別です」
ネリー「わざと負けるとかやだもん」
京太郎「みんな真剣なんだな……俺も負けてられない」キリッ
明華「凛々しい顔もいいですね」ナデナデ
京太郎「撫でるのはやめないんですね……まぁいいですけど。それじゃ、検討しましょうか」
京太郎「さて――それじゃ俺は、一年の指導に行ってきますので」
ネリー「えー」
ハオ「えー」
明華「えー」
アレクサンドラ「えー」
京太郎「…………あの」
アレクサンドラ「ジョークよ、ジョーク」
明華「私も行きますね」
ハオ「では私も」
ネリー「ネリーも」
アレクサンドラ「はいはい、あんたたちは練習」
ネリー「えー」
ハオ「えー」
明華「えー」
アレクサンドラ「………………」
京太郎「そろそろ謝ったほうがいいかと」
アレクサンドラ「……いや、逆に思いついたわ」
京太郎「はい?」
アレクサンドラ「キョウタロウ」
京太郎「はい」
アレクサンドラ「選んでいいわよ」
京太郎「えっ」
京太郎「えっと、それでは――」
京太郎(……つまり、まだまだ指導初心者の俺に、指導のやり方を教えようってことだよな?)
京太郎(となれば――相手は当然……)
京太郎「では監督、よろしくお願いします」
アレクサンドラ「え――えっ、私!?」
ハオ「」
ネリー「」
明華「」
アレクサンドラ「えっと、なんで?」
京太郎「やっぱり他者の指導なら、監督のご指南が不可欠かと」
アレクサンドラ「ああ……そういえば、あんまり強いから忘れてたけど、キョウタロウは麻雀歴一年なんだっけ」
京太郎「ただ打つだけならなんとかなりそうですけどね」
アレクサンドラ「オーケー。なら、私が一緒に行くから――こらそこ、寝てないの」
ハオ「はっ……」
ネリー「なんだ夢か」
明華「いやな夢でしたね……」
アレクサンドラ「いや、現実だから。私とキョウタロウは一年の指導に回るから、あとはよろしく」
部長「お気をつけて」
明華「あ、いたんですね」
部長「ずっといました……」シクシク
ネリー「うぅ、どうしてこうなったの」
ハオ「次のチャンスを諦めない」
明華「切り替えていきましょう……とにかく、京太郎に掃除してもらえるよう、私たちも強くならないといけません」
ハオ「そうですね、やりましょうか。部屋の隅々まで、京太郎に見ていただかないと」
ネリー「キョウタローより強くなって、離れられなくしちゃうよっ」
部長(みんなヤンデレ気質だなぁ……)
レギュラー(私もいるけど、気づかれてないほうがよさそう……)
アレクサンドラ「――で、私でよかったの、本当に?」
アレクサンドラ「こう言っちゃなんだけど、三人とも教えるのは結構上手よ?」
京太郎「監督に断られたら、そうする予定でしたけど……監督が来てくださるなら、心強いですから」
京太郎「色々聞きたいこともありますし……よろしくお願いします」
アレクサンドラ「……麻雀の指導について、聞きたいことよね?」
京太郎「はい」
アレクサンドラ(ほっ……確認してよかったわ)
アレクサンドラ「はいはい、任せない……じゃあ行きましょ」ギュッ
京太郎「ちょおっっ!?」
アレクサンドラ「いいでしょ、腕組むくらい。海外じゃ挨拶よ」
京太郎「そ、そうなんですか……」
アレクサンドラ(なわけないでしょ? まぁちょっとくらい、役得があってもいいわよね)
~4月第三週月曜、夕方
京太郎「……っと、こんな時間か。ここらへんで終わりですかね、監督」
アレクサンドラ「そうね、京太郎はここまでかしら」
後輩A「お疲れさまでした!」
後輩B「すごく参考になりました、ありがとうございます!」
後輩C「またご指導よろしくお願いします!」
後輩D「できれば寮で!」
後輩E「いっそ私の部屋で!」
京太郎「力になれてよかったよ。それじゃ、また明日な」
アレクサンドラ「はい、お疲れさま――それじゃ、一年生? ここからはかなり厳しくやるから、しっかりついてくるように」
後輩F「えっ」
後輩G「な、なんでそんなっ――」
アレクサンドラ「麻雀部に入った以上、男のこと考える暇なんてないってこと、教えてあげるわね」ニッコリ
後輩ズ「ひ、ひいいぃぃぃ――――っっっ!」
京太郎(……お、声出てるなー。まだまだ頑張れるなんて、さすが一年。フレッシュなもんだ)
~帰宅
京太郎「誰にも会わなかったな……って、そりゃそうか。みんな今頃、練習してるんだろうからなぁ」
京太郎「……ってことは、その間は俺も家で練習してないと、どんどん後れを取っていくわけで……」
京太郎「ふーむ、どうにかして改善できればいいんだけど……ま、とりあえずは仕事行くかな」
~夜
京太郎「――ふぅ、今日も一日頑張ったな。さて、今夜はどうするか」
京太郎「……誰かにメールするかなー。連休中は、あんまりできなかったし」
京太郎「誰に送ろう……」
京太郎「そうだな、塞先輩……全国大会の前に、ちょっとお会いした以来か」
京太郎「大学生の連休とか、どんなだったか聞いてみたいな」
「ご無沙汰しています、京太郎です。体調崩されてはいらっしゃいませんか?」
「連休中は仕事や部活ばかりでしたが、そちらはどうでしたか?」
「大学生の連休の過ごし方なんかを、聞いてみたいなと思いまして」
「学校の勉強などで、お忙しかったでしょうか?」
京太郎「……妙に堅い文面になってしまった。なんもかんも政治が――おっ」
『シロと遊んでプロの試合観戦したり――が、抜けてるわよ?』
『こっちはねー、まぁバイトしたり、ご飯食べに行ったり、あとは練習もしてるかしら』
『インカレの大会は、高校生とプロが動かない冬から新春にかけてが多いのよ』
『よかったらまた、コーチに来てよね。いつでも大歓迎だから』
京太郎「」
京太郎「やっぱり長い付き合いだからか、バレてたな……」
京太郎「ふーむ、どう答えるべきか……」
京太郎「――ふむ」
「ならいつか、機会があれば一緒に見に行きませんか?」
「生で見ると、臨場感も違いますし、いい練習になるかと思います」
「すぐってわけにはいきませんけど、タイミングが合えば、ぜひ」
『な、えっ、えぇっ!?』
『や、あの、そういうつもりでは……』
『い、いやいやいや! 行きたくないとかじゃなくてねっ?』
『まぁ、うん……言いたいことはわかるから、その……』
『ち、近くに来たときね? あと、私が時間あれば、だから』
『いつになるかわかんないけど、楽しみにはしてるわ』
京太郎「……よかった。それに、試合観戦のあと、一緒に練習だってできるしな」
京太郎「白糸台に行ったときなんかに、誘えたらいいんだけど……」
京太郎「あとは……あ、そういえば監督、あのあとも指導続けてらしたな……」
京太郎「どうなったか、確認しておこうか」
「お疲れさまです、京太郎です」
「俺が帰ったあとも、一年の元気な声が聞こえてて、張り切ってるのがわかりました」
「それはいいんですけど、無理してる子はいませんでしたか?」
「もしいるなら、それとなく気を遣ってやりたいので、教えていただけると助かります」
京太郎「いやー、さすがに失礼かな。監督だって、そんな無茶させたりしないだろうし……」
『お疲れさま。こっちもあのあと、二時間ほどで終わったから、たいしたことはないわ』
『練習は厳しいのが当然だしね。少し乱暴かもしれないけど、ついてこられないなら、そこで落ちるだけよ』
『その競争に勝てないと、一軍レギュラーは難しい――それが臨海女子の麻雀部だから』
『とはいえ、京太郎の心配はもっとも。よほど無理しているようなら、こっちからも注意するわ』
『そういった子は、いまのところいないわね。京太郎に指導してもらって、嬉しそうだったし』
京太郎「……そっか。まぁ普通はそういうもんだよな、レギュラーとか……」
京太郎「俺の予選出場は、学内予選とか選抜とか、レギュラー争いがないしな……甘えてるのかもしれない」
京太郎「それに、監督もしっかり気を配ってらっしゃるし、俺が気にすることもないのかな」
「なら疲れが取れるように、差し入れなんかも頑張りますね」
「それを一年が覚えて、俺がいなくなってからもおだしできるようなら、監督たちも助かりそうですし」
「練習で疲れても元気になるし、一石二鳥ですね、これは」
『練習しなさいっての……まぁ、一年への思いやりはいいわね』
『そういう、アメとムチ、だっけ? 言っちゃえば、厳しい環境はムチだけみたいなものだから』
『キョウタロウのアメは、あの子たちも喜ぶと思う』
『ただ、あの子たちが同じものをだせるかどうかはねぇ……』
『キョウタロウのお菓子は、キョウタロウにしか作れないわ』
『私はあれ、すごく好きだから』
京太郎「ヒューッ! やったぜ、すげぇ絶賛だ!」
京太郎「まぁ、一ヶ月もせずに、同じ味を再現されたら……俺の修行が足りないってことか」
京太郎「そっちも怠らず、精進していかないとな」
京太郎「監督が喜んでくださってたなら、もっとおいしいものを提供していこう」
アレクサンドラ(……ちょっと、あれかしらね……露骨すぎた? でもこれくらい書いても、わかんないだろうしなぁ……)
京太郎「ふわぁ……そろそろ、いい時間だな……眠い……」
京太郎「っと、いかんいかん。連休も開けたし、近況メールもしておかないと――」
京太郎「――多い(迫真)」
京太郎「いまさらながら、めちゃくちゃ知り合い増えたよなぁ……」
京太郎「メール打つのも一苦労……けど、それも楽しいなっと」
京太郎「ほい、連絡終わり……明日に備えて、今日は休もう」
【4月第三週月曜】
自分がする側に回って、他人の指導が大変なんだとよくわかった。
打ち方を教えるのもそうだが、相手に自分のクセがつかないか、なんてことも気になる。
いま見ている一年は全員が経験者、しかも相当な麻雀歴があるから、そこまで気を遣う必要はないと言ってもらってはいる。
とはいえ、途中からクセがつくことくらい普通にあり得る。
そして今後、完全な初心者に指導する可能性もあるのだから、今後は先達の上手な指導法も、注意して見て行かなければ。
まぁ自分が未熟なのに他人に指導なんて、まだまだ早いし、そうは任されないと思うけど。
個人的な感想でいえば、熊倉先生の指導が、一番わかりやすかったかと思います。
…………
『……まぁ仕方ないか』
『そもそも指導者歴が違いすぎるしなぁ……』
『これまで何人プロいしてきたんだか……』
『噂では1000年生きてるらしいぜ』
『さりげなくウソ混ぜるんじゃないわよ、性悪ジジイ』
『申し訳ありません、先生。あとで注意しておきます』
『なにをやってるんだ、あいつは……』
懇切丁寧というわけでも、優しいわけでもないのに……なんというか、ツボを押さえてるんだよなぁ、的確に。
まぁ麻雀以外の指導なら、師匠一択だけどな。
『で、インハイチャンプのなにが未熟だって?』
『インハイチャンプとはいえ、日々勉強だからね。連覇した私が言うから間違いない』
『えー! チャンプって王様だよ、女王様だよ! 未熟なわけないじゃん!』
『お前、もっと謙虚ってものをだな……』
『謙虚もすぎると、卑屈になる……』
『でも京ちゃんの場合、なぜか卑屈に感じない』
『謙虚やからなぁ』
『謙虚すぎる、でも卑屈じゃないって、すごいよね』
『どうしてこんな謙虚に……チラッ』
『なにがあったんやろなぁ……チラッ』
『なんもかんも……チラッ』
………………。
『元々の性格だな』
『誰とでも、視線が合うんだと思う……』
『分け隔てないしね』
『なら三年にも差し入れしてください』
『隣のクラスにも』
『うちはもらってたよ?』
『詳しく』
『あれは学園祭の試作品!』
『いいなぁ、一緒に学園祭』
『そういえば、大学の学園祭……呼んだら来てくれるかな』
『テレビの仕事……』
『それは来てくれないでしょ……』
ほっ……。
――――――――
~清澄
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「…………チャンピオンになって、言うてくれたからかのう」
「そ、染谷さん、そんなはっきりと……」
「まぁ本人たちも反省してるし、これ以上は誰も責めないだろう」
「でも意外です。原村先輩は部長のとき、私やマホにも丁寧に指導してくれてましたから」
「かふっ……」
「の、和ちゃん、しっかり!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「部長っ……いや、元部長にも飛び火したじぇ!」
「す、すいませんっ、そんなつもりは――」
「あー、構わん、ムロ。気にせんでええ、そのうち治るけえ」
「原村の場合は、同期に魔物がいたことも大きいだろうな。そちらに意識を向けるあまり、自分のことで手一杯だったんだろう」
「わ、私のせいですかっ!?」
「そんな、宮永先輩のせいでは……」
「――はい、咲さんのせいじゃありません。私が、勝手に視野を狭めていただけです……」
「あの、皆さん……宮永さんを自然に魔物と呼ぶのは……」オロオロ
「……いいんです、もう慣れましたから」ハハハ
「お姉さんの流れ弾が咲ちゃんに被弾だじぇ」
「まぁいずれにせよ、その彼もいまやインハイチャンプ。名門校で後輩指導を任されるくらいだ。どこの学校に行っても大丈夫だろう」
「京ちゃんは戻ってきます!」
「京太郎くんは戻ってきます!」
「京太郎は戻ってくるわ!」
「京太郎は戻ってきよります!」
「京太郎は戻ってくるじぇ!」
「――だそうです」ヨクシラナイ
「あ、ああ……すまない」
~白糸台
「まーた淡は……」
「だってそーじゃん! テルーだって完璧だったし! プロいっても余裕じゃん!」
「……そういえば、そろそろ恵比寿と横浜の試合入るよね?」
「あー、代表の親善試合も終わるし……あの人先鋒で、ペナント戦に出てくるよね」
「???」
「ま、その試合は部で観戦しようか……淡には特に、しっかりと」
「ふぁーい?」
「わかってないね……麻雀で完璧っていうレベルは、本当にすごいんだって」
「練習と指導では、明らかに手を抜いてたからね。本気を見たら、淡もわかると思うよ」
「だといいけどね……ふふっ」
「……さっきからなに見てるの、尭深」
「京太郎くんからのメール」
「なんで!」
「びっくりした……淡ちゃん、どうしたの?」
「私には来てない!」
「なんで淡優先なのさ……で、京太郎くんなんだって?」
「連休はどうでしたかー、こっちはこーで、生のプロの試合はすごかった、宮永先輩は気合入ってた――等々」
「あれって絶対、京太郎くんが見に行ってたからだよね」
「そうだろうねぇ。淡ちゃんも、京太郎くんが見てたから、インハイチャンプだし」
「そ、そんなのかんけーないし!」
「うんうん、関係ないね」
「そうだったね、ごめんごめん」
「わかればよろしい!」ムフー
(ちょろいなぁ)
(かわいいなぁ)
~永水
「うちにきたら、明星と湧ちゃんの指導は京太郎くんも見てくれそうね」
「お断りします」
「そーんなこと言ってー、嬉しいんでしょ?」
「じゃあ湧の分は、私が受ける……」
「はるるも指導する側ですよー」
「で、では私が!」
「小蒔ちゃん、部長でしょう?」
「そうでした……」ションボリ
「なら姫さ――こ、小蒔先輩は、私の指導をお願いできましたら……」
「わ、わかりました!」
「じゃあ私は京太郎先輩にお願いしまーす!」
「……明星は、私が」
「えー」
「……明星」
「は、はいっ! すいません、お姉さま……よろしくお願いします、春先輩」
「OGがしゃしゃり出て、後輩脅かすのはいかがなものかと思いますよー」
「お、脅かしてなんてないわよっ。ちょっと注意しただけで……」
「まぁ――実際のとこ、はるると姫様の指導よりは、京太郎の指導のほうが伸びそうですけどねー」
「うぅ、すみません……」
「言い返せない……京ちゃん、とっても強いから」ニコー
「男の方の指導では、集中できないと思います」
「まぁ……明星のほうは、ちょっと視線が気になっちゃうかもですねー」
「え~、そうなんですか~?」タップーン
「私が指導しているときは、そうだったわねぇ」ドタプーン
「勉強教えてもらってるとき、そうだった……」タプンッ
(なんの話でしょうか……?)プルンッ
「………………不潔です」
「男の子ですからねー、仕方ないんですよー。見る以外はしないヘタレですから、安心ですよー」
「なにが安心できるんですか!」
~宮守組
「やっばい、デート誘われちゃったわ」
「はっ!?」
「ダレカラ!」
「お父さんは許さないよー!」
「誰がお父さんよ……はい、京太郎くんから」
「なんっ――って、なーんだ。デートじゃなくて練習じゃない」
「試合観戦ならデートでしょ。シロもそうだったし」
「それだったら聞いてるよー。塞とそういう話したけど、私はプロの試合見たことありますかーって」
「ワタシモ! コッチ、キタラ、ミニイコウッテ!」
「まったく、あの子は誰彼かまわず――ん?」
「私、来てないんだけど」
「」
「キ、キニシナイ、ホウガ……」
「あ、私のせいだと思うよー」
「なんで!?」
「みんな見たことないと思うから、聞いとくねーって言ったから。塞、エイスリンさん、私の順番で聞いて、私がそこで止めちゃったんだー」
「そ、そうなんだ……なら、仕方ない……のかな……?」
(……そこでメール止める?)
(京太郎、気が利くのに利かないのね……)
~阿知賀
「うちは憧がいるし、灼さんもいるし、宥さんもコーチにいるから心強いですね!」
「そうねー。ま、シズに教えてもらってもわかんないでしょうし、指導はこっちに任せときなさい」
「ひどっ!」
「穏乃は強くなってくれればいい。大将なんだから」
「そ、そうですか? ウェヒヒ、頑張ります!」
「でも実際のところ、お姉ちゃんも忙しくなったらって思うと――コーチが欲しいよねっ」
「赤土先生みたいな人、阿知賀にはいないもんね……」
「お姉ちゃんも、もうヘタになっちゃってるし、そもそもハルエほどじゃないしねー」
「お姉ちゃんをディスるのはこの口か!」
「ひはっ! ひはいひはい! んっ、もう! お姉ちゃんは出てって!」グイグイ
「ご、ごめんね、憧ちゃん……」
「宥姉のことじゃないから!」
「お姉ちゃんをいじめないように!」
「お、玄ちゃんは優しいね~」
「え、あ、ありがとうございます……」
「お姉ちゃん二人いるとややこし……」
「――ってことなんだけど、京太郎、誰か心当たりないー? っと……」
「!? ちょっと、なんで京太郎が出てくんの!」
「え? メール来てたから、ついでにー」
「メール……まさか、みんなも……?」ジッ
「わ、私は来てないわよっ、今回は!」
「私もだよ、灼ちゃん!」
「私もないよ~」
「……ならい……」フゥ
(バカシズ! 灼だけメール来なかったこと何回もあるんだから、気ぃ遣いなさいよ!)
(ご、ごめんっ……)
(……まぁ、メールとかは来ないけど……クリスマスと誕生日は、忘れないんだよね……まったく、それでバランス取ってるとか、なしだから……)
~姫松
「ほうほう、面白いな~」
「練習中にメール見て相槌打たんといてください」
「あ~、堪忍な~」
「なにが面白いんですか?」
「京太郎くんが負けた試合の経過~。メールついでに、聞いてみました~」
「――はい、レギュラー全員集合!」
「そっちで牌開いといて。代行、メール開いてこっち」
「えっ、えっ、え~?」
「なるほど――それじゃいまから経過通りに打つんで、一人は採譜な」
「結果はわかってるから、検討しながら打っていきましょう。ほな、よろしくお願いします」
「あ、あんな~、まだメール途中で~」
「あとにしてください、練習中です」
「インハイチャンプの倒され方です。いい練習になりますんで、協力してください」
「ま、まぁそやねんけど~。せめて、その返事だけでも……ほ、ほら、印象悪なってまうし~」
「却下です。はよツモってください」
「うぅ、教え子が怖いわぁ……善野監督、戻ってきはらへんのかな~」
「……けど、そうか……こういうことも、メールの返事で聞いてみたらええんやんな……迂闊やったわ……」
「え? 漫ちゃ――主将、いまなんて?」
「な、なんでもあらへんよっ。ほら、続き続き!」
~千里山
「熊倉先生って、どんな人やったんですか?」
「難しい質問やな……まぁ、優しい人やとは思うわ。ただ、色々と柔軟いうか、人によっては絡みにくいっちゅう印象やな」
「監督とは正反対ですね」
「そうかぁ、うちは優しいないかぁ……正直モンやなぁ、泉」
「ちゃ、ちゃいます! そことちゃいます!」
「あーあ、泉は……普段からそういうことばっか言うてるから、ポロッと出てまうんやで」
「部長おおおおおおおおおおおお!?」
「まぁ優しいのうても、いつかわかるで、これが愛のムチやて――ほな、特打ちしよか。強なりたいやろ?」
「なりたいですけど、それとこれとは……いやああぁぁぁあっっっ!」
「いやぁ~、千里山はさすが、厳しぃやってますねーぇ」
「……なんでおるん、荒川さん」
「いえいえ、ちょっとお願いがありまして~」
「電話じゃ無理なんですか?」
「うん、そやねん。京太郎くんが、こっち来たら関西リーグの試合も見てみたい言うもんやから、試合のチケット押さえられへんかな~って」
「お断りします」
「あんっ、そうイケズ言わんと~」
「……いや、ヒロちゃんにもおばちゃんにも、そんなん言うたらめっちゃ怒られますし。しかも自分ならともかく、他校の女子なんか、なおさらですよ」
「ふーぅむ、まぁそらそうかぁ……わかりました、おおきにです~」
「……しかし、あのアホはほんま、どこまで攻略する気ぃやねんな」
「いやいやいや、攻略とかやなしに//// ただ、近況報告的なメールで////」
(わっかりやす! 真っ赤やで……麻雀でもこんだけわかりやすかったらなぁ――)
~臨海女子
「監督とネリーは、ほぼ確実に残りますね……」
「はい、私か明華、どちらかが離れることが多いです」
「ネリーも前は外れたよ?」
「そのときは、京太郎が東風戦で回してくれたり、その後、大学に連れて行ってくれたり、優遇されているではないですか」
「そ、そうだったっけ……?」ニヘー
「顔が緩んでます!」
「由々しき事態です」
「でも明華だって最近は、外れてもキョウタローにベッタリしてるよ!」
「それしかすることがないからです!」
「ほかの卓に入ればいいのでは……」
「京太郎の卓を見ていたほうが練習になりますから」
「どっちにしても、入るのは勝った人なんだから、最初の予選で勝てばいいんだよ!」
「それはわかっています……」
「とはいえ、忘れがちですが、ネリーも監督も、相当な打ち手ですからね……」
「へへー」
「まぁ、そこに負けている場合ではない、という主張もわかります」
「京太郎との麻雀が待っているなら、なおさらですね」
「ということで、学年が同じハオかネリーは譲ってください」
「では同じクラスのネリーですね」
「監督だからっていつも一緒に行動する監督が譲ればいいよ!」
「一理あります。今日だって監督という立場を利用して、指導と言いながら――」
「移動するとき、腕を組んでいましたよっ、いやらしいっ……」
ギャーギャーワーワー
「……あのさぁ、そういう話は、本人いないとこでやんなさいよ」
「ですが事実です」
「……まぁ、事実だけどさ」
「いやらしいっ」
「さっきのメールもキョウタローからでしょ!」
「そっ……明華だってベッタベタしてたでしょっ!?」
「開き直った!」
「これだから大人は!」
「あーもー、黙りなさい! 白黒つけるなら、卓開くわよ!」
「望むところです!」
~臨海側大学
「そういや――明日は私の誕生日やけん」
「知ってる」
「おめでとう」
「そ、そんなおざなりに……もちろん思えてますよ、哩さん」
「ああ、うん、ありがとう……で、なんでこん話ば持ち出したかっちゅーと……」
「はい」
「京太郎はそんこと、知っとるかちゅーて思って……」
「どうでしょうね」
「巴が急に冷たく!?」
「そりゃそうもなるだろう」
「自業自得だな」
「二人まで――は、いつもんことか……いや、そんなことより!」
「なんだ、騒がしいな」
「今日は働いとるときとか、そげん話ばしとらんかったかと――」
「してない」
「まぁ、仕事中だろうしな」
「休憩とかなかか!?」
「あっても京太郎くんですよ? 仕事のために、板場離れるわけないじゃないですか」
「まったくだな」
「むっ、うぅぅぅ……くそぉ、連絡でん来たら、さりげなくアピールするっちゅうのに……」
「さりげなく?」
「そんな真似ができるのか、哩」
「できっと!」
「はぁ……まぁ、あれですよ。一度でも言っていれば、忘れていないと思いますよ」
「そいがなぁ……はっきり言うたかどうか、覚えとらんのが……」
「ふっ……」
「よかったな、却って諦めがつくだろう」
「ようなか!」
「ま、まぁまぁ……大丈夫ですよ。そうなっても、私たちでささやかなお祝いしますから、ね?」
「うぅ、優しかなぁ、巴……でもそれは、誕生日に気づかれんちゅう前提やなかか……?」
「かもしれませんねー」ニコニコ
「実は巴が一番怖い」
「本人にはとても言えないな」
~関西大学組
「なるほどなー、関西のペナントか……そういうたら、見に行ったことないなぁ?」
「ないのよー……って、怜ちゃんもメール?」
「そういうたら、由子とルームシェアしたんは言うたけど……」
「四人でつるんでるんは、言うてなかったなぁ……いや、だからってやで? どっちかにだけ連絡するんはどうやろなぁ?」
「同じ連絡で両方するよりは、効率的やと思うけどな」
「恭子、顔怖いで」
「怖ないわ!」
「交互やったりなんやったりで、そのうちくるやろー? それより、この中で関西の試合見たことある人ー」
「…………」
「…………」
「まぁそうよねー。うち、恭子、怜、竜華はないのよー、っと」
「ちょちょちょ、勝手に送りなや!」
「そうやで! 聞かれたらこっちから言うわ!」
「でも一回で済ませたほうが……」
「いやー、京のことやし、四人の分送ったら、四人一緒にいるて気づいて、ほならメールは四人のうち一人でええかなーって思うんちゃう?」
『…………ありうる』
「メールの確率増やすためにも……」
「ここは、伏せとくほうがええやろな……」
「異議なしなのよー」
~関西プロ
「こん中で熊倉先生知ってるんは――」
「私と野依プロでしょうね。利仙は、聞いたことがありましたか?」
「いえ。赤土プロの社会人時代の牌譜は見たことありますが、そのときのスカウトが熊倉先生だった、というくらいしか」
「俺とこでは、監督がちょっと話題にだしてたくらいですかね」
「うちでは言うてなかったな」
「まぁ、ご自宅で仕事の話もなんでしょう。指導に来ていただいたならともかく」
「公私!」
「とはいえ、偏った人選のパーティのとき、少しだけ顔をだしておられましたよね?」
「日本麻雀連盟の役員に、顔見せでしょうね」
「どんだけ顔広いんや……」
「まぁ長くやっておられますからね」
「妖怪!」
「の、野依プロはあんま好きやない感じなんやろか……」
「微妙!」
「まぁ、尊敬はしてるんですが、相性の問題でしょうね……」
「書き込みにもありますね、1000年生きてるとか」
「南浦プロ?」
「前後を見ると、そんな感じですね……最後は大沼プロでしょう」
「年とっても付き合いあるんは面白そやなぁ」
「愛宕雅枝プロよりも、もっと前の時代ですからね……当時の牌譜も、ほとんど残っていませんよ」
「古事記!」
「どんだけ前やねん……」
~関東プロ
「先生はまだ宮守に?」
「春の間はそのはずです」
「ってことは、夏には移動か~」
「一ヶ所に滞在すること、あんまりないみたいだよね……困ったおばあちゃんだぞ☆」
「皆さんは打ったことがありまスカ?」
「あるよ……」
「まぁ、うん……勝てるには、勝てるんだけどねぇ……」
「なんていうか……難しいんだよねぇ、場が」
「私のときは、パワープレイだったけど」
「タイプが違った?」
「そこ! そこなんだよ、あの人の怖いとこは……」
「柔軟というか、上手いっていうか、乱れるっていうか……」
「四人しかいないのに、あの人だけ何十人もいるみたいな打ち回しで、的が絞れやしねーっていう……」
「……進化した京ちゃんみたいですね」
「!」
「それ、だ……?」
「いや、まぁ、京太郎はそこまで……けど、もしかしたら……」
「そこも微妙なのでスネ……」
「まぁ京ちゃんの麻雀はまっすぐだから。性格と一緒で」
「ドSだけどね」
「だがそこがいい」
「同意」
「ちょっとそこ!」
「未成年らしからぬ話しない!」
「これだから最近のルーキーはよ~」
「……皆さんがウブすぎるのデハ?」
「しっ、メグ……」
「そのことには触れない、業界の掟……忘れたの?」
「ソーリー、失念していまシタ……」
「聞こえてるからね?」ニコッ
「」
~4月第三週火曜、朝
京太郎「今日は哩さんの誕生日だ。無事にプレゼントは届いたかな」
京太郎「まぁ使えるのは来年からだけど、あのデザインはすごくよかったし、贈れるのはあのときしかなかったんだよなぁ」
京太郎「っていうか、とっさに贈ったけど、気に入らないデザインだったらどうしよう……」
京太郎「悩んでも手遅れだが……お叱りを受けたら、お詫びしておかないとな」
京太郎「さて――今日も一日頑張ろう」
京太郎「こっちの修行もしておかないとな……いざ師匠と行動するとき、置いて行かれると困るし」
京太郎「とはいえ、朝からこれは……はぁ、堪えるなぁ……」
モブ子「朝から疲れてるとか、いやらしい……」
京太郎「そういうことにも縁があればなぁ」フゥ
モブ子(それはひょっとしてギャグで言っているのか?)
京太郎「んじゃ、俺は教室行ってるから、お前も遅れんなよ」
モブ子「いや、一緒に――ぃっ!?」
京太郎「じゃあの」
モブ子「き、消えたっ……いやー、相変わらず人外離れしてんねー、あれ」
~4月連休、昼休み
京太郎「さて、お昼だな」
ネリー「今日は?」
ハオ「楽しみです」
京太郎「…………ハオ?」
ハオ「はい」
京太郎「いや、クラスが……」
ハオ「ネリーにだけお弁当をあげるのは、いかがなものでしょう」
ネリー「だって同じクラスだもん、ねー?」ベター
京太郎「うーん、でも確かに……隣のクラスから来てくれたのに、追い返すのもなんだよなぁ」
ネリー「むー」
ハオ「京太郎、優しい……」
京太郎「まぁ今日は――ほら、ちょっと多めに作ったサンドイッチだからな」
ネリー「すっごーい!」
ハオ「これはおいしそうですね、とても」
京太郎「お茶も色々と用意できるから、好きなのを言ってくれ」
ハオ「ではウバを」
京太郎「了解」
ハオ「その、できましたら……執事らしく……」モジモジ
京太郎「――失礼いたしました。お嬢様。ウバティー、かしこまりました」
ハオ「はうっ」クラッ
ネリー「京太郎で遊ばないのっ」
ハオ「遊んでいません。これも彼の修行です」デレデレ
ネリー「表情がウソついてるよ!」
京太郎「ネリーお嬢様も、どうぞ……こちらのミルクティーは、サンドイッチともよく合いますよ」
ネリー「…………うん、ありがとう」デヘー
ハオ「どうですか、ネリー?」
ネリー「仕方ないよね、修行だもんね」
ハオ「はい、仕方ありません」
明華「…………はっ! なにやら、置いて行かれているような……」
京太郎「ゆっくりお召し上がりください、お嬢様方」
ハオ「はぁ、こういう優雅な気分もよいものですね……」
ネリー「京太郎、優しいよぉ」ムシャムシャ
京太郎「お口元に汚れが」フキフキ
ネリー「わむぅ」
ハオ「あざといっ!」
ネリー「ぐ、偶然だよっ」
京太郎「?」
京太郎「それでは、私は後片付けがありますので」ペッコリン
ハオ「……はっ! しまった、これでは食後に京太郎とイチャつけ――遊べませんっ」
ネリー「すぐ戻ってくると思うよー」
ハオ「いえ、ここは片づけの手伝いなどして、家事もできるところをアピールしていきます。では」
ネリー「ふぅー、お腹いっぱい……明日はなにかなぁ」キラキラ
京太郎「多めに作ったけど、三人ならすぐだったな……明日も来るなら、明日からも多めにしておくか」
京太郎「さーて、片づけ終わりっと」
京太郎「ただいま戻りました、お嬢様が――あれ、ネリーだけか?」
ネリー「執事おしまい?」
京太郎「いや、そういうことでも……ネリーお嬢様、ハオお嬢様は?」
ネリー「キョウタローのお手伝いするんだって」
京太郎「来なかったけど……行き違いになったか。仕方ない、探してくるよ」
ネリー「えー」
京太郎「……ま、そういうわけにもいかないよな」
ネリー「うんうん」
京太郎「それじゃ、食後のお茶にしよう。なにか食べるか?」
ネリー「お茶だけでいいよー」
京太郎「かしこまりました。では、そちらでお待ちください」
ネリー「見てる!」
京太郎「そうか? 退屈だぞ?」
ネリー「そんなことないよっ。淹れ方覚えたら、キョウタローに淹れてあげられるもんっ」
京太郎「――お嬢様にお茶を淹れていただくなど、って言ったら?」
ネリー「おじょーさまめーれーするよ!」
京太郎「なら仕方ない――ではお嬢様、手順通りにやっていきますので、ご覧になっててください」
ネリー「普通にして?」
京太郎「……なら、見てろよ、ネリー。おいしいお茶の淹れ方、ちゃんと覚えるんだぞ」
ネリー「はーい!」
ネリー「結論、お茶は淹れてもらったほうがおいしい!」
京太郎「……ま、いいか。これからも俺が淹れてやるからな」ポンポン
ネリー「えへへー」
~4月第三週火曜、放課後
ハオ「…………」ズーン
明華「ハオはどうしたのでしょう?」
京太郎「あー、実は……」
ネリー「お昼にねー」
少年少女説明中~
明華「な、なんてうらやま……私も呼んでください!」
京太郎「クラスのお付き合いがあるかな、と。それにほら、先輩を呼びだすなんて、あまりにも失礼ですし……」
明華「京太郎なら許しますから!」
京太郎「……はい。では、機会がありましたら」
明華(……これは、自分から行くべきでしょうか……うぅ、しまった……呼ばれなければ訪ねられないじゃないですか、これでは……)
京太郎「なにを難しい顔、してるんだろう……」
ネリー「それよりハオだよ。どうして帰ってこなかったのかな」
ハオ「いえ、先生にちょっとした用事を頼まれて……」
京太郎「そっか、お疲れさん……手伝いに来てくれようとしたのに、悪いことしたかもな」
ハオ「京太郎のせいではありません。それに、お昼がおいしかったですから、それで十分です」
京太郎「ハオはいい子だなぁ」
ハオ「そ、そうでしょうか」テレッ
ネリー「ネリーは!」
京太郎「ネリーもいい子だぞ」ヨシヨシ
ネリー「むふー」ワーイ
明華「わ、私は!」
京太郎「……明華先輩は、裏表のない素敵な先輩です」
明華「なんか二人と違います!」
京太郎「冗談です。素敵なレディだと思っていますよ」
明華「ほんとですかぁ……? むー、いまいち信用できませんっ」プイッ
京太郎「あっ……ほ、本当ですっ、すいませんっ……」
明華「なら、ネリーのようにしてくださいな」
京太郎「これですか?」ナデナデ
ネリー「ふふー」
明華「それです」
ハオ(あざといっ)
明華(なんとでも言いなさい!)
京太郎「では、失礼しまして……明華先輩は、いい子ですね」ナデナデ
明華「ふぁ……///」
ハオ「ぐぐぐ……」
アレクサンドラ「…………わかってると思うけど、練習始まってるからね?」
京太郎「よし、今日も頑張りますよ!」
明華「私もやる気が出来ました!」
アレクサンドラ「現金な……」
アレクサンドラ「まぁいいわ……やる気になったなら、先に一年生の指導から入りましょうか」
明華「」ガタッ
ハオ「」ガタッ
ネリー「」ガタタッ
アレクサンドラ「……キョウタロウ」
京太郎「またですか……」
京太郎「なら、また誰かと一緒に、一年を指導しますね」
アレクサンドラ「そ、そう……じゃあ、誰とにする?」
明華「今度こそ……今度こそ……っ」
ハオ「監督なんかに……」
ネリー「負けないもんっ……」
京太郎(いや、なんかって……)
京太郎「じゃあ――ネリー、行くか」
ネリー「うんっ、頑張るね!」
明華「希望が……」
ハオ「神も仏も……」
アレクサンドラ「……じゃ、行ってらっしゃい」
京太郎「? 監督、怒ってます?」
アレクサンドラ「べ、別にっ! あーもうっ、いいから早く行ってきなさい!」
京太郎「は、はい! すいません! 行くぞ、ネリー!」
ネリー「ガッテンショウチ!」
京太郎(どこで覚えたんだ……)
アレクサンドラ「……あー、しまった……我ながら、なんという……」
ハオ「やれやれです」
明華「あの鬼の監督が、よくもまぁ」フフッ
アレクサンドラ「誰が鬼か。そして鬼相手だとしたら、相当余裕ね、あんた」
京太郎「指導か……とりあえず、普通に打てば大丈夫だよな?」
ネリー「そうだよね。どれくらい強いかわかんないと、教えようがないし」
一年ズ「」
京太郎「ふむ……なるほど、だいたい全員の実力は、なんとなくわかった……」
ネリー「そう?」
京太郎「一応、数字とグラフ化してみたけど、こんな感じだと思う」
ネリー「ふんふむ……それじゃ、この子とこの子は一軍候補で、今後は重点的に打とうね!」
一軍候補一年「」
京太郎「こっちの子たちは、もう少しだな……優しく、検討しながら打とう」
検討組「やったぜ。」
京太郎「残りは、もう少し頑張らないとな……けど、さすがに入学したころの俺の、二十倍くらいは強いな」
残り一年「えっ」
京太郎「……知らないのかもしれないけど、俺は本気で弱かった……けど、練習次第でいくらでも成長できる、そう信じて練習してるんだ」
京太郎「みんなも、いつかはネリーに勝てるくらい強くなる。大事なのは諦めないことだ……一緒に頑張ろう」
一年ズ「は……はいっ!」カンドー
京太郎「さて――じゃ、戻るか」
ネリー「うん……ね、キョウタロー?」
京太郎「ん?」
ネリー「キョウタローは……やっぱりすごいねっ、かっこいいよ!」
京太郎「はは、ありがとな」
京太郎「――という感じです。今後の方針としては」
アレクサンドラ「ふーん、なるほどね……」
明華「ちなみに私たちは――」
ハオ「私たちで練習したり、二、三年の非レギュラーと練習したり、そんな感じでした」
ネリー「誰に言ってるの……」
アレクサンドラ「とにかくお疲れさま。それじゃ、いつもの練習に戻ってちょうだい」
京太郎「はい!」
アレクサンドラ「元気ねぇ……」
京太郎「やっぱり練習は楽しいですからね。指導も新鮮ですけど、俺自身、もっと強くなりたいですし」
京太郎「さて、それじゃ今日も――お?」ブイーン
京太郎「……すいません、失礼します」
アレクサンドラ「またサトハは……」
ハオ「これだからサトハは……」
明華「本当にサトハは……」
ネリー「サトハずるい!」
京太郎「風評被害!」
京太郎「えーっと、電話か……」
京太郎「智葉先輩じゃなくて、哩さんですよ」
アレクサンドラ「……前もそうだったわよね?」
京太郎「そうでしたっけ?」
ハオ「怪しい……」
明華「京太郎は、哩とどういった関係なのですかっ!」
京太郎「ええええ……先輩後輩、でもないし……ひとまずは友人、ですかね……」
ネリー「お友達?」
京太郎「ああ……と、俺は思ってるけど……」
アレクサンドラ「どう思う?」
ハオ「京太郎の認識が大事です。それならば問題ないかと」
明華「とはいえ、この呼びだしで、また大学のほうに……」
ネリー「でも止めたら、京太郎かわいそう……」
最終更新:2026年01月17日 23:44