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 ~少女たち対局中~

アレクサンドラ「そこで捨てるのは甘いんじゃないかしら。冷静に場を見て」ズズ

アレクサンドラ「リーチ、と……」パクパク

アレクサンドラ「はぁ、おいしい……」ズッ

アレクサンドラ(……あれ? お茶、さっき飲み干したような……)チラッ

京太郎「………………」

アレクサンドラ「」ビクッ

アレクサンドラ「あ、ちょ……ちょっと待って!」

ハオ「はい?」

明華「長考ですか?」

ネリー「ささやき作戦かな?」

アレクサンドラ「じゃなくて! キョウタロウ、ちょっと」

京太郎「はい!」

アレクサンドラ「あの……もしかして、ずっとそばにいなかった?」

京太郎「はい、いましたけど」

アレクサンドラ「…………なんで?」

京太郎「邪魔にならないよう、陰からサポートするためです」

アレクサンドラ「……いや、うん……気持ちは嬉しいわよ?」

京太郎「それなら幸いです」

アレクサンドラ「ああ、いや、そうじゃなくてね? その……もうちょっと、わかりやすくしててちょうだい」

京太郎「はぁ……」

アレクサンドラ「その……たぶん、他三人は見えてたわよね? 私の背後にいたってことは」

京太郎「おそらくは。まぁ三人にも、お茶を注いだりしてましたが」

アレクサンドラ「え、全然気づかなかったわ」

京太郎「そりゃもう。監督がお茶を飲むか、お菓子を食べてるときにしたことですので」ペッコリン

アレクサンドラ「」

京太郎「周りが気にならないくらい、集中してお召し上がりくださって、嬉しかったです」

アレクサンドラ「~~~~~~~~~~っっ!!」カァァァァッ

京太郎「これからもなにかありましたら、陰からサポートを――」

アレクサンドラ「キョウタロウ」ガシッ

京太郎「はい?」

アレクサンドラ「――やめなさい」

京太郎「……はい――って、え?」

アレクサンドラ「いるならいるとわかりやすくして!」

京太郎「で、でも、執事は……」オロオロ

アレクサンドラ「わかりやすく!」

京太郎「はい!」

アレクサンドラ「あと、サポートばっかりしない! 傍についてなくていいからっ、練習してなさい!」

京太郎「で、でも、監督があんまりおいしそうに食べてたので、なにか言われるかと……」

アレクサンドラ「そ、そういうの見てるのも禁止だから!」

京太郎「ええええ……」

アレクサンドラ「えーじゃない!」

京太郎「うっす」

アレクサンドラ「はぁ……っていうか、普段もそういうことしてたの? 君は……」

京太郎「してたりしてなかったりですね。お世話のし甲斐がある人には、そんな感じも多かったですけど」

アレクサンドラ「なに、私はお世話しないとダメそうだった?」

京太郎「なんていうか、仕え甲斐がありました。品があって、かっこいい女性って雰囲気で」

アレクサンドラ「――そう」

京太郎「はい」

アレクサンドラ「ん……まぁ……たまになら、いいけど……」

京太郎「ありがとうございます!」

アレクサンドラ「でも、女子が食べてる顔は見ないように」

京太郎「承知いたしました」

アレクサンドラ「それじゃ、お茶のお代わりだけ淹れて、移動なさい」

京太郎「かしこまりました」

アレクサンドラ「はぁ……まぁ、うん……恥ずかしいとこ見られたんじゃなければ、いいか……いや、自分的にはアレなんだけど……」ブツブツ

ハオ(ちょろすぎです)

明華(こじらせるとこうなるんですね、注意しないと……)

ネリー(おもちないのに、どうして……)

~金曜、夕方

京太郎「――あー、外が暗い」

明華「行かないで、京太郎!」

京太郎「まあ、俺もそうしたいのは山々なんですが……」

ハオ「私たちと智葉、どちらを取るんですか!」

京太郎「どっちも取るかな」

ネリー「どっちかした助けられないの! 片方助けたら片方は落ちるの!」

京太郎「崖っぷちのやつかよ……それって難問だよなぁ」

アレクサンドラ「で、どっち?」

京太郎「助けてほしいほうを助けますけど、その後は助けられなかったほうのことを考えて、一生を過ごします」

明華「そんなっ……」

ハオ「それは選んだほうへの裏切りです!」

京太郎「ならどっちも助ける、本当にそんな状況なら」

京太郎「いまの答えは、そういうこと言って困らせる相手への、模範解答って習った」

ネリー「えー、ずるい!」

京太郎「そう、男はずるいんだよ」

アレクサンドラ「……で、なんの話だっけ」

京太郎「仕事行かないとだし、下校時刻なんで帰ります、と」

アレクサンドラ「あ、そうか」

明華「わかりました……では京太郎、仕事中は私たちのことを想っていてくださいね」

京太郎「すいません、お客様のことで頭がいっぱいになりそうなので」

ハオ「お客として行けなければ考えてはもらえませんか……」

ネリー「お金かかるの……?」

京太郎「普段は考えてるんだから、仕事中だけは許してくれよ」

ネリー「なら許す♪」

アレクサンドラ「……今日の夕食、辻にしようかしら」

明華「財布確認しないでください」

ハオ「これだから大人は」

京太郎「……では、俺は失礼しまーす」

京太郎「……ハオだな?」

ハオ「よくおわかりで」

京太郎「いや、じゃなくて。なんでついてきてんだよ、練習は?」

ハオ「京太郎を見送るために、抜けてきたんです」

京太郎「余計に名残惜しくなりそうだけどなぁ」

ハオ「であれば、私を連れて逃げてください」

京太郎「智葉先輩にすげー怒られそうなんだけど」

ハオ「でしょうね」クスクス

京太郎「まぁ……どうしても練習がイヤなら、連れて行くけど」

ハオ「それは残念。どうしてもイヤ、などということはありませんから」

ハオ「京太郎に勝つために、練習は怠れません」

京太郎「俺ももっと練習しないとなぁ……雑誌に載るくらい、強さで有名になってみたいもんだ」

ハオ「載ったではないですか。麻雀トゥデイのインハイ記事、相当特集が組まれていましたが」

京太郎「そういえば……けどさ、女子だと定期的にあるじゃん、そういうの」

ハオ「ありますね。原村和や宮永照、佐々野いちごなどはすごい人気ですし」

京太郎「臨海もよく見るだろ? 二人だって、世界でも有名な選手だしさ」

ハオ「ありがとうございます……その自信も、京太郎と打って少し欠けているのですが」

京太郎「謙遜するなよ、ハオは強い……だから俺も、全力で追いかけて、普段以上に打てるんだから」

ハオ「……まったく京太郎は、私を悦ばせるのが上手ですね」

京太郎「ほんとのことだ。まぁ、その――雑誌のことは置いといてだ」

ハオ「はい」

京太郎「自信持って、強くなったって言いたいし……こうさ、大会とかで――『あ、あいつは……須賀京太郎!?』みたいな反応がほしい」

ハオ「ふふっ、なんだか子供みたいですね」

京太郎「悪いかっ!」

ハオ「いえいえ、可愛くていいと思います」

京太郎「くっそぉ……」

ハオ「まぁ、次の大会の予選では言われると思いますから、安心してください」

京太郎「ならいいけど……」

ハオ「あと、雑誌で特集しないのは、もう一つ理由があるからですよ」

京太郎「へ?」

ハオ「京太郎の最新情報は、日誌で見られますから」

京太郎「……あっ!」

ハオ「特集を組んでも、日誌に負けるんでしょうね……それだけ皆さん、京太郎のことを見ています」

ハオ「もちろん私も。ですから――」

ハオ「これからも、夢中にさせてください。すべて、見届けますから」ジー

京太郎「ああ……わかった。努力する」

ハオ「では……今日のところは、お仕事を頑張ってきてください」フリフリ

京太郎「っと、いつの間にか……それじゃ、また明日」

ハオ「はい、行ってらっしゃい。京太郎」


~金曜、夜

京太郎「んー、さすがに今日は忙しかったか……金曜だもんなぁ」

京太郎「しかもさすが辻というべきか……お客さんも、有名な人がいるもんだ」

京太郎「麻雀のトッププロもよく来るんだし、当然っちゃ当然なんだけど……」

京太郎「戦車道、西住流の家元が来たのはちょっと驚いたな……本家ってたしか、九州だったと思うんだけど……」

京太郎「まぁいいか。とりあえず、ニュースでも――」

『先鋒戦での点差が響き、恵比寿は二位。横浜が圧勝ですね。続きまして――』

京太郎「…………」

京太郎「……女の子と遊びたい」

京太郎「あああああああああ、疲れたから女の子に癒されたい!」

京太郎「そんな素直さもいいと思う、男子高校生だし」

京太郎「誰か優しい人が付き合ってくれるといいんだけど――」

京太郎「そうだな、菫さんの誕生日プレゼントはまだ買ってないし――」

京太郎「一緒に遊びに行って、折を見て欲しそうなものを調べて、コッソリ買ってもいいし、すぐにプレゼントするのもありか……」

京太郎「よし、そうと決まれば電話だ!」

京太郎「もしもし! 京太郎です! 菫さんですか!?」

菫『』

京太郎「す、すいません、つい気合が――」

菫『あ、はい……いや、うん、大丈夫だ』

京太郎「コホンッ……改めまして、京太郎です。今朝はありがとうございました」

菫『いや、お茶をごちそうになったのは私だからな。ありがとう……久しぶりの君のお茶は、本当においしかったよ』

京太郎「菫さんにその一言をもらえただけで、感無量です」

菫『お世辞を言うな、まったく……それで? そこまで持ち上げて、なにが目的かな?』

京太郎「えーっと……すいません、なんか露骨でしたか?」

菫『むぅ、本当にそうだったか……少しがっかりしたぞ?』

京太郎「いえ、さっきのは本当ですから」

菫『ふふ、ならいいよ。それで、用件というのは?』

京太郎「えー……」

京太郎「今度の日曜日なんですけど――」

菫(うん、これは……なるほど、照の試合のことか?)

京太郎「よろしければ、一緒にどこかに出かけませんか?」

菫『――え』

京太郎「……今度の日曜、俺と遊びに行きましょう」

菫『なっ、えっ……えええっっ!?』

京太郎「あー、やっぱまずかったですか……すいません、それならいいんで――」

菫『いや!』

京太郎「……はい」

菫『じゃない! いやじゃないから、大丈夫!』

京太郎「……えっと、それは……オッケーってことですか?」

菫『あ、ああ、問題ない……その、あれだろう? 照の試合を、一緒に見に行ってほしいと――』

京太郎「違います、けど……」

菫『』

京太郎「それだと、だめですか……?」

菫『京太郎くん――』

京太郎「……はい」

菫『楽しみにしている。日曜だな?』

京太郎「……はい!」

菫『その、少し驚いてはいる……私を、そんな風に見てくれているとは、思っていなかった』

菫『なんだ、その……色々と、そういうこともあったのに……君はまるで動揺を見せないからな。きっと対象外なんだろうと、思っていたんだ』

京太郎「……俺は、菫さんを魅力的な女性だと思っています。それは間違いありません」

菫『……嬉しい。すごく嬉しい……本当に楽しみにしている』

京太郎「午前中は練習がありますから、午後からですけど……大丈夫ですか?」

菫『ああ、それで構わないよ。だが、正確な場所と時間は早めに決めないとな、なにしろもう二日前だ』クスクス

京太郎「う――すいません、急で」

菫『まったくだ。女性をデートに誘うなら、もっと余裕を持とうか』

京太郎「はは、次までには修正しますので」

菫『そうしてくれ……時間は、こちらは余裕を見ておくから、そちらで決めてくれて構わないよ』

京太郎「わかりました、追って連絡します」

菫『ああ……それじゃ、日曜日に』

京太郎「はい、失礼します」

京太郎「――やったぜ!」


菫「……え、次までに修正……つ、次までっ、ということは……また、誘ってくれるのか……」////////



~4月第三週金曜、終了



【4月第三週金曜】

 そういえば、最近は差し入れの写真を上げていなかったと思いだす。
 気合を入れて作ってみました。プディング・オ・ショコラノワールです。
 卵の撹拌は、もう少し工夫できそうかな。
 某洋菓子店の店長は卵の王子と言われるほど、扱いが上手いらしいし。

…………


『これが食べられたら三尋木プロにも打ち勝てるのに……』
『はっはっは、いつでも相手してやんよ~』
『宮永が取られたわけでもないんやけどなぁ』
『相手が悪い――で片づけるんは、さすがに乱暴やな。まぁ俺もそっちに寄りたいわけやし』
『おとなげないですね。まぁシーズン中ですから仕方ありませんが』
『プロの世界が厳しいってこと、伝わればいいんだけど』
『と、二部リーグからカップ戦参加で、各チームの大将を飛ばし続けてる人からのコメントです』
『れ、レギュラーがペナント行ってるせいだよ……』
『毟られた一部のプロは、実家で野菜作りするってコメントしてたぞ☆ チームが全力で引き留めてるとか』
『あー、わかるわ』
『経験者は語るんすね』
『誰が札幌の美人ルーキーだって証拠だよ!』
『そうですか、ありがとう。ハルエニッキすごいですね』
『それほどでもな――あ』

 ……北海道に行くから、ぽこじゃか影響されたのかな?
 ていうかあの人、まだブログやってんのか……あのタイトルで。

『テルーどうしたのさー』
『まぁ気持ちはわかるけど。本当に強い人は本当に強いって、わかったんじゃない?』
『京太郎くんのお菓子にも反応できないくらい、ショックだったみたいだね』
『こんなにおいしそうなのに……』
『だから涎!』
『私は今日からまた次鋒だったし、大丈夫かな……』
『あ、ダルがって三尋木プロ避けようとしてる』
『サボリ、ダメ、ゼッタイ』
『チームの意向ということもありますけれど』
『ペナント始まったばかりだし、ルーキーはむしろ積極的に、代表レベルと打ちたいはずよね』
『っていうか、私が打ちたい!』
『ころ――私もだ。地元のgmプロとは比べるべくもない打ち筋、心が滾るぞ』
『……一応、同世代なんだけどなぁ』
『プロ歴はあちらのほうが長かったですよね』
『高卒と社会人転向……言うなればマーとカイエン。あっちは大学だけど』
『つまり高卒ルーキーは強い?』
『フレッシュオールスターが楽しみじゃのー』
『ちゃちゃのんのファンやめます』
『なしてじゃ!』

 オールスター、夏だったっけ。
 いつもはフレッシュってあんまり見なかったけど、今年は知ってる人も多いし、楽しみだな。

『プロリーグもええけど、その……そろそろ、あれやん?』
『ああ、あれやったな』
『あれなぁ……どうなるやろ』
『ちょっと、その関西のノリやめてよ』
『あれ、で話を続けて、最後に、あれってなに? みたいな流れのやつだよね』
『……いや、あの……派遣の時期やなって、思っただけやねんけど……』
『あっ』

 監督も、俺がずっといるって思っててくれたんだよなぁ。
 次がどこになるかわからないけど……そこでもしっかりやっていこう。

『……忘れてるとか、薄情だと思う』
『私はずっと待っているんですが、いつになるのでしょう』
『来月もいいんだけど、その次よね、大事なのは』
『予選があるってことは、突破すれば本選でも一緒だもんね』
『まだ行ってない学校は二校……行ってない学校より、行ったことある学校で予選通過のほうが、周りもサポートしやすいと思う』
『そんなことはありませんよ。たとえ初めて派遣を受け入れても、しっかり支えさせていただきます、ええ!』
『……そいより、先輩が最近、こん執事のメールばっかりしとるんは……い、いや、そんなはずは――』
『今年のうちは、あまり強くないから……須賀さんが来てくださると、とてもありがたいです……』
『あれ、そういやうちって、正式には来てないんだっけか?』
『そういえば……仕事で来てたし、顔合わせもしたから、派遣済みかと思ってた』
『ひどくない、二人とも?』
『じゃあ三校か……』
『それなら五月、七月、九月になりますね』
『だから予選の月にが初派遣でもいいじゃん! 秋とかそうだったはずだしさ!』
『もういっそプロになって、解説で参加すればいいよ』
『誰か知らないけどいいこと言った』
『いいわけないよっ! そんなのだめ!』

 まぁ、さすがにプロは無理だろ……うん。

――――――――


~清澄

「――京太郎くんは春に、清澄で全国優勝しました」
「だじぇ」
「それなら当然、夏も清澄で連覇だよね」
「はい。そうでなければ、正確な連覇とは思ってもらえないでしょう」
「そ、そういうものですか?」
「そういうものだよ」
「あ、はい……」

「……なに言うとるんじゃ、あいつらは」
「清澄になるよう、理由をこじつけてるのよ」
「京太郎くんは個人戦だからな。どこの学校でも、さほど実力にブレがあるとは思えない」
「でも……やっぱり清澄にいたから頑張った、ということもあるんじゃないでしょうか」
「美穂子はいいこと言うわね」
「悪かったな、悪いことを言って」
「あら、拗ねなくてもいいじゃない。ゆみもリアリスティックな言葉だったわ」
「なんちゅう八方美人な……」
「それでこそ久ですから」
「はぁ……まぁ、そんでええんなら、ええんですけど……」


~白糸台

「ウタって何回か打ったことあるけど! そんな強くなかったし!」
「そりゃあね。指導に来たら、多少は加減するだろうから」
「舐めプとかちょー許されザルだよ!」
「お猿さん?」
「見ザル、聞かザル、言わザル、許されザル」
「私は真剣なの!」ガオー
「まぁ私たちもさ、宮永先輩がこのまま終わる人じゃない、とは思ってるけど」
「仮に、この三連戦で勝てなくても――」
「勝つもん!」
「勝てなくても」
「…………ん」
「宮永先輩を、格好悪いなんて思わないでしょ?」
「…………まぁ、そりゃあ……」
「悔しいのはわかるけど、宮永先輩がすごい人なのは変わらないんだから。私たちは信じて応援しよう、ね?」
「……はーい」

「ふぅ……なんていうか、尭深も副部長らしくなったよね」
「そう? ありがとうございます、部長」


~龍門渕

「で――実際うちって、応募してたっけ?」
「してるよ。ねぇ透華?」
「もちろんですわ!」
「うむ。あの京太郎はよい打ち手だった、日々の練習の相手に不足なし!」
「萩原さんも、鼻が高い?」
「いえいえ、私はなにもしていません。彼自身の強さ、そして魅力、努力の賜物ですから」
「謙虚だなぁ」
「さすが執事は格が違った」
「それほどでもありません」ニッコリ
「……経験が活きたな」
「??? 皆はなにを言っておるのだ、透華?」
「さぁ……たまによくわからないことで、意気投合してますわねぇ」ウーン



~永水

「滝業もあるし、夏場はうちがいいと思うのだけど」
「まぁ春でもしますけどね」
「うん、する……」
「いえ、センパイではなく……」
「秋も冬も、修行メニューはありますよー」
「……未経験の素人には、厳しいと思いますけど。幼稚園小学校のときって、そうだったじゃないですか」
「いえ、京太郎さんならきっと大丈夫です」
「いざとなったら私が一緒にするから、大丈夫だってば」
「……明星、いつもより京太郎寄り……なにかあった?」
「へ? い、いえ、別に……」チラッ
「……いま、手元の文房具に視線を向けましたねー」
(するどっ)ギクッ
「そして今日は明星の誕生日……」
「そして、霞さまがなにも仰らない……」
「あらあら、私まで関係あるの?」ニコニコ
「つまり――」
「どうぞ姫様」
「どういうことでしょう?」
「ズコー」
「この文房具は、須賀さんからのプレゼントということではないですか?」
「そうなんですかっ!?」
「……あー、はいはい。正解です。京太郎センパイが送ってくださいました」
「私は指輪をいただいて、明星ちゃんは文房具、春ちゃんはなにを?」
「……ふ、服///」
「えっ」
「ホントですかっ!?」
「え、うん……どうしたの?」
「だって……ね、ねえ、お姉さま?」
「え……えっとね、春ちゃん。男性が女性に服を送るのは――」ボソボソ
「………………~~~~~~~~~~~っっっっ!?!?」/////////////
「……最低ですね、あの人」
「まぁ京太郎がそこまで考えてるわけないと思うですよー」
「??? あ、あの、男性が服を送るのは、なにが……」オロオロ
「姫様にはまだ早いお話です」
「私は春ちゃんや明星ちゃんより年上です!」プンッ


~宮守組

「はぁ……もう宮守で優勝してくれることはないのよねぇ」
「イマハ、ナキ、ボコウ……」
「いやあるから! 麻雀部がなくなりそうってだけで!」
「で、でも部員はいないみたいだって……う、うぅ、うわぁぁぁーんっ!」
「な、泣かないで、豊音!」
「コウナッタラ、キョータロニ……」
「……頼めば行ってくれて、麻雀部維持して、全国優勝はしてくれそうよね……」
「知り合いも、麻雀部員もいない学校でね……いや、知り合いとか友達はいるはずだけど」
「さすがにそれはねぇ。京太郎くんが麻雀打つ環境を作れるための派遣――の、はずでしょ?」
「実質ね。まぁ建前も、麻雀部のマネージャーっていう扱いだから、麻雀部がないと無理だろうし……」
「なにより、京太郎くんにはもっといいところで打ってほしいよー」
「ウン……」
「まぁ私たちにできることは……インハイ優勝校、白糸台で打ってくれるよう祈るくらいかしら」
「それだと、私たちも手伝えるもんねー」
「そ、それはさておいて……」
「サエ、カオアカイ!」
「赤くない!」
「はいはい、ツンデレはいいから」
「ツンデレじゃない!」



~阿知賀

「なんかねー」
「うん」ダバー
「穏乃、涎」
「わ、わわわっ」
「穏乃ちゃん、お腹空いちゃったかな?」フキフキ
「ウェヒヒ、すいません……」
「……もう慣れちゃったわね、なんか」
「それで、どうしたの?」
「おっと、そうそう……なんかねー、来月から先生来るみたい。麻雀できる人」
「あ、ここで言っちゃうんだ……」
「灼ちゃんは知ってたの?」
「そりゃ、部長だし……」
「あ、部長から言ったほうがよかったか。ごめーんね♪」
「わずらわし……まぁいいよ。私だったら、来週くらいになってたかもだし」
「それってコーチっていうか、監督できる先生ってことですかっ」
「よかったね~」
「まぁ、そうらしいってことだけど……詳しい話は、来てからみたいね」
「話が潰れちゃう可能性もあるのかな……」
「うーん、それだとちょっとあれよねぇ……そろそろ夏に向けて、本格的にチーム作りしたいわけだし」
「でも、そうなっても夏は獲りに行きたい」
「私もです!」
「大丈夫だよ! 阿知賀のドラゴンロードが、ばっちりエースを務めるからね! お任せあれ!」
「玄ちゃん頼もし~」パチパチ
「えへへ~、なのです」
「……あかん」
「あかんやつよねぇ……お願いっ、ちゃんと来てください! なんでも――はしないけど、できることはしますから!」
「じゃあお菓子作ってよ、これ!」
「あんたにするわけじゃないから!」ビシッ
「洋菓子不足だよね、もう何ヶ月も……」ハァ


~姫松

「あのチャンピオンが――とも思うねんけど……」
「あの三尋木プロなら――ともなんねんなぁ」
「う~ん、おいしそうやわ~」
「ちょっと代行! お菓子なんて見てる場合ですかっ、お菓子なん――て……」ゴクリ
「漫ちゃん、しっかり!」
「言うても、それやったらどういう場合や~?」
「んー……そう言うたら、別に……なぁ?」
「まぁ宮永照が負けてるっていうのはショックやけど、私らにそこまで影響はなぁ……」
「それよりも、来月いうか再来月に京太郎くん来てくれるかどうかのほうが、大事ちゃうの~ん?」
「あ、まさにそれです」
「あとは夏の予選もやで~」
「はぁ……」
「どないしたん、漫ちゃん」
「いや、春の決勝あったやん……あの中にどうやって割り込んだろかと思て、悩んでんねん……」
「……大星、宮永、神代、憩ちゃん……冷静に考えたら、おっそろしいメンツやなぁ」
「こ~ら~、悩んでるヒマあったら、練習や~」
「わ、わかってますて……」
「絹ちゃんもやで~。洋榎ちゃんやったら、むしろ楽しんでるんとちゃうか~?」
「せや――私らが、お姉ちゃんの代より強うせなあかんねんっ!」
「そうや、絹ちゃん! 勝てば京太郎くんも来てくれる!」
「頑張ろ、漫ちゃん!」

(いや~、しかし実際……うん、辛いなぁ……どないしよか~。末原ちゃんみたいに、魔改造するしかあらへんかな~)



~千里山

「いやー、泉がそんなに、京太郎くんに戻って来て欲しがってるとはなぁ」
「なんでそうなるんですかっ!」
「なんでもなんも。あんたが言わな、誰も気づいてへんやん」
「いや、忘れてないて言うてはりますけど」
「でも言いだしたんはあんたやし」
「それは……まぁ……い、いや、ですけど! 別に戻って来て欲しいとかそういうんとは――」
「なんや、欲しないん?」
「……欲しいです」
「――ということです監督」
「いや、それを私に言うて、どないしろっちゅーねんな」
「……姫松に来た際には、どーかこっちにも京太郎くんのおこぼれを」ヘヘー
「まぁ――荒川に勝つ練習いうたら、京太郎に勝つ練習やろなぁ」
「そういうことで……」
「浩子も会いたがってるやろしなぁ」
「そういうこ――はっ!?」
「……ま、絹にちょっと言うとくくらいは、考えといたろ」ニヤッ
「やっ、ちゃ、ちゃいますておばちゃ……監督!」
「……ほーん、そういうことすか」
「なんや泉、その目ぇは」
「べーつーにー? なんでもないですけどー?」
「ぬがああああああああああああ!」
「はいはい、遊んどらんと練習しーやー」


~関西大学組

「そういうたら、うちらどうなるん?」
「……元々は、それぞれの母校に顔だす、いう感じに考えてたらしい」
「それに加えて、大学やなくて、ここで練習するならこの四人がおる、っていうパターンもあるらしいのよー」
「高校で打つ場合は、それぞれの母校に顔だせると」
「なるほど、うちらは千里山、あんたらは姫松と」
「で、この四人と打ちたなったら、ここに顔だすわけか。それはどっちの学校からでも?」
「みたいなのよー」
「ふむ――って、ちょっと待ち」
「どしたん、キョコタン」
「誰がキョコタンや! そやなくて! こ、ここ、ここって……ここっ!?」
「ニワトリかな」
「あの必死な感じが足らん、やり直し」
「だれが鳴き真似しとるかい! いや、だから真面目に……えっ、京太郎くんがここに来るん?」
「らしいな」
「わ……私と由子が住んでるこの部屋にかい!」
「あ、そーいえばそうやったのよー」
「……あかん、あかんで!」
「おー、竜華、反応おっそいな」
「怜!? 気づいてたんか!」
「いや、そらそうやろ……」
「そんなんっ……ひ、一人暮らしの部屋に男の子呼ぶとか……あ、危ないやん!」
「京が危ない?」
「……ないのよー」
「それよりも、その……は、恥ずかしいやろ! わ、私ら……その、お風呂とかも、ここで……やし……たぎ、とかも……」ゴニョゴニョ
「下着なんかタンスにしもてるし、ええやん」
「他人事や思て!」
「え? いや、私は別に家でも部屋でも来てもろてええけど」
「あらー」
「と、怜……?」
「竜華もせやろ?」
「え、そ、そらそ――って、なに言わせんの!」
「くっ……千里山二人は毒されてもうてるでっ、由子!」
「まぁ、ちょっと恥ずかしいんは事実やけどー……私も、そこまでイヤやないよー?」
「ゆ、由子まで……っっ……みんな不潔や――――っっ!」

「……などと言いつつ、嬉しそうなキョコタンでしたとさ」
「誰がキョコタンや! あと嬉しそうにしてへんわ!」
(にやけてるやんな?)
(にやけてるのよー)



~関東大学組

「……こっち、いや、これのほうが……い、いや、でも……ちょっと、胸元が緩すぎるような……」
「そ、そうだ! その……み、みみ、見えることも考慮すると……あ、アンダーウェアにも……」
「清潔感……大人っぽさ……あるいは……す、少し、大胆なほうが……」
「あああああああああああ! 私はなにを考えているんだっっ!」ガンッガンッ

「……菫は来てないのか」
「あ、智葉さん、お疲れさまです」
「まぁ用事ばあるやろし、ほっとけばよかち思うとよ」
「今日はどうでしたか、お店のほうは」
「ああ、三尋木プロが来ていたな。一人で静かに飲んでいたよ。それ以外は、いつも通りだ」 ※家元は通常のお客様です
「いやー、あの宮永が稼ぎ負け。しかも圧倒的に。まったく、世間は広か」
「……まぁおかげで、面白いものが見れたぞ」
「へぇ?」
「あんなものじゃつまらない、と三尋木プロが言ってな」
「……私らの代のチャンピオンが、つまらんち言うか」
「で、京太郎くんは?」
「さすがだな、巴は……照の底力は、きっと三尋木プロを楽しませてくれる、だとさ」
「はぁ~、よか男は違うったい。私も言われてみたか~」
「でも悔しいですね。京太郎くんの顔、想像がつきます」
「まぁ……いい顔は、していたな」
「智葉さん、顔があか――」
「赤くない!」カァッ

「あ、赤は、さすがに狙いすぎだ……く、黒……青……ぴ、ピンクはだめだ、私にはそんな……」
「無難に白……う、いや、やっぱり……黒、か……」
「あああああああああああ! だから私はなにを! まずは服だ! さっさと決めないと!」
「……まったく、もっと早く誘ってくれればいいものを……日曜日に、たっぷり償わせてやるからなっ」////



~関東プロ

「ちーっす! おっと、お集まりで……」
「……どうも」
「照、落ち着いて」
「大丈夫、私はこれ以上ないくらい冷静」
「どうでもいいですけど、日誌のここって時間軸どうなってるんでしょウネ?」
「超執事的ななんやかんやだぞ☆ たぶん☆」
「便利だね、執事……」
「まーまー、一年目のガキに打ち負けるとか、代表失格っしょ? 許せってー」
「いえ。自分の足りないものが見えました……明日、明後日。見ていてください」
「足りないもの……あっ」
「大丈夫、私も同じでスヨ」
「メグちゃんはそこまでじゃないでしょ。私も、ギリ……爽もかな?」
「ハルちゃん酒癖わっる!」
「それ言ったらよー、私だって足りてねーっつーね」アッハッハ
「……咏ちゃん、酔ってる? まぁ、赤土さんほどじゃないけど……」
「いやー、辻で一杯。いや二杯? いやー、たぶんもっとっす……ま、祝杯、ご褒美、そんな感じで」
「京ちゃん!」ガタッ
「照、落ち着いて」
「大丈夫。今日の日誌はそこに触れてないから」カタカタカタカタ ッターン
「絃ちゃんの検索はややっ☆」
「私に隠し事なんて、京ちゃん……」ドヨドヨドヨ
「あ、やっぱり落ち込んでた」
「――んで、京太郎くんなんて言ってました?」
「あー……っていうか、私って赤土さんに敬語のがいんすかね?」
「年齢で言うと――」
「やめて」
「年齢の話はご法度だぞ☆ 無礼講でもだぞ★」
「まぁ私もハルちゃんタメ口だし、へーきじゃないかと!」
「あんたは年上への敬意を覚えようか」
「……だって、ハルちゃんだし」
「赤土先生だし」
「晴絵さんはちょっと……」
「赤土さん、大人っていうのはね――」
「この醜態で牌のお姉さんはちょっと……」
(あれ、ブーメラン? たしか京太郎くん、酔っ払い三人に捕まったって、昔……)
「この人が教師……阿知賀の生徒はすごいのでスネ」
「地味に一番傷ついた!」
「……それで三尋木プロ。京太郎、照のことなにか言ってましたか?」
「あー? そうだねぃ……ま、そいつは内緒にしとく。宮永もさー、聞きたかねーっしょ?」
「……まぁ、どっちでもいいです。次に三尋木プロは、京ちゃんから慰めの言葉を頂戴するはずなので」ゴッ
「おっほ、そいつぁ楽しみ~♪ 今日は深酒はやめとこうかね~」

(まー、あれだよねぃ……気分よく飲もうとして、あんなこと言われたら……ちょっとばかしイラッとしたし――)
(……よし、あと二戦ガチでやる。大人の度量? 知るかい、そんなもん!)ワッカンネー
(京太郎の……ブワァ――ッカ!)



~関西プロ

「まぁ妥当ですかね」
「……至極当然!」
「そら、うちらも代表戦は見とったし、わかりますけど」
「俺なんか、三尋木プロの打ち方には惚れぼれした口やし……」
「でも面白くありませんよね」ムスッ
「珍しい!」
「そうですね、利仙がその態度……まぁ、世代のトップは世代の代表ですからね」
「くっそ、底力みせーや、宮永!」
「っていうメール送っとくか。お前がそんなやと、俺が小鍛治プロに勝って、新人王もらうで……っと」
「……いいんですか、セーラ」
「へ? まぁ、発破やしこんくらい――」
「今日はあっちも、集まって飲んでるはずなので、おそらく――」
「来た!」
「あ、野依プロにきましたか……はい、セーラ」
「はい? ん…………ん? えっ――」
「お、どうしたセーラ? なんかおもろいもんでも――」
『それくらいの意気で来ていただけると嬉しいです。当たるとしたらカップ戦でしょう、楽しみにしています。 健夜――って伝えておいてね』
「」
「さすがセーラさん。グランドマスターに目をつけられるなんて、大物ですね」
「そそ、そ、そうやろ……さ、ささ、さすが、や、ややや……」
「セーラ、しっかりせえ! あとそれ、うちのネタや!」
「小鍛治プロも人が悪いことを……」
「ぐう畜!」
「どのみち、小鍛治プロは大将ですからね。セーラと当たることはないでしょう」
(……言ってあげない良子ちゃんも、かなりあれだよね……私? 私はほら、口下手だから)プンプンッ

~臨海女子

「次の、派遣……」
「まだ活動日で二日、スケジュール的には一週間上乗せです。猶予はありますよ」
「やだー! キョウタローいなくなるの、やだ……」
「こればかりは、自分たちではどうしようもありません……」
「それなら転校とか!」
「雑用大成功10回が必要ですが、私たちではもう……」
「行動回数も減ってるし、10回は無理だよぉ……ふぇぇ……」
「ネリー、私たちがそう言っても、京太郎を困らせるだけです」
「それもやだぁ……」
「行動回数が減って、大成功も5回でいいかと考えているようですし、きっとなんとかなります」
「ほんとにっ!?」
「――まぁ、次の派遣以降だと思いますが」
「次っていつさ!」
「……6月に来てもらえると、助かりますね」
「そうですね」
「6月……予選、キョウタローと一緒に出られますように……」
「出られますように……」
「出られますように……」


~4月第三週土曜

京太郎「土曜か……ってことは、いよいよもって、あと一週間……」

追い回し「そうそう。昼から、新しい人が入ってるの、知ってます?」

京太郎「マジで!?」

追い回し「で、月末には元の脇板も戻って、来月からの態勢が整うってことです」

京太郎「そっか……ともかく、これで一安心だな」

追い回し「いやー、新しい人が、京太郎さんみたいに優しいかどうか……」

智葉「京太郎に甘えるな。そもそもこいつが甘すぎるだけだぞ、なぁ?」

京太郎「返す言葉もございません……」

追い回し「マジすか……せっかく憧れの辻に入れたのに、辛いです……」

智葉「なら辞めるか?」

追い回し「辞めません!」

辻垣内父「……まぁ、そのやる気ならやっていけるだろ」

追い回し「親方! おはようございます!」

智葉「お父さん、早いですね」

辻垣内父「様子を見に来ただけだ。京太郎、そろそろ時間じゃないのか」

京太郎「おっと、そうでした」

辻垣内父「なんなら、本格的にこっちに入っても構わんぞ」

京太郎「すいません、片手間のつもりはないんですけど……やっぱり、まだまだやりたいことがあるので」

智葉「お父さん、京太郎を困らせないでください」

辻垣内父「ここに連れてきたのはお前なのになぁ」フッ

智葉「そ、それはっ……」

京太郎「お気持ちを無碍にして、すみません」

辻垣内父「お前も智葉も、冗談が通じんな。気にせず、学校に行って来い」

京太郎「はい……それでは」

智葉(お父さんの冗談はわかりにくい……)

哩「だからこの辺のはずやろ……」

巴「この地図、本物なのかな……」

京太郎「……なにやってんですか、二人とも。朝から宝探しですか?」

哩「おった」

巴「すごい、本物なんだ……」

京太郎「へ?」

哩「っとと……おはよう、京太郎」

巴「おはよ、京太郎くん。今日もお仕事ご苦労さま」

京太郎「あ、はい、おはようございます、お疲れさまです……で、なんなんですか、それ」

哩「こいか?」

巴「ある日、私たちの部屋のポストに入ってたんだよね……京太郎くんの通学ルートだって」

京太郎「……わかりました。描いたやつはこっちでしめときますので」

哩「知っとったと?」

巴「なんで知ってて止めなかったの……」

京太郎「いえ、事後報告でしたし……まぁ、渡した相手が先輩たち四人だって聞いてたので、まさか信じないだろうと思いましたから」

哩「」

巴「う……」

京太郎「でも、よく考えれば気持ち悪いと思ったり、あるいは今日みたいに、俺のこと心配して見に来てくれる可能性もありましたね……」

哩「えっ」

巴「そ――そうそうっ! 心配でね、うん! でも、知り合いが描いたものなら、危険もないみたいでよかったよ」

京太郎「ありがとうございます……それと、心配おかけして、すみませんでした」

哩「いやいや、気にせんでよか。無事ならそれで、なぁ?」

巴「はい。それじゃ、京太郎くん。気をつけて、いってらっしゃい」

京太郎「いえ、その前にお二人をお送りしますよ」

哩「そんな気にせんで――」

京太郎「あとは、少し注意を」

巴「え?」

京太郎「今回は本物だからよかったですけど、もしもタチの悪い連中が、先輩たちを拐す目的だったらどうするんですか」

哩「そ、それはさすがにテレビの見すぎやなかかと……」

京太郎「いえ。綺麗で優しい先輩たちですから、どこで誰に目をつけられててもおかしくありません」

巴「あ、う……あ、ありがと……///」

京太郎「今後は、そういうことがあったら、連絡してください。こっちが心配になりますよ」

哩「……はい」

巴「ごめんなさい……」

京太郎「いえ、嬉しかったのは本当ですから……それじゃ、行きましょうか」

京太郎「お送りしたら、朝のお茶をごちそうしますので」

哩「ん、そいは楽しみやね」

巴(……遅刻、しないのかな?)マァイイカ



~土曜、放課後

京太郎「学校行く途中だったの、忘れてた……」

ネリー「それで遅刻したの!?」

ハオ「……徹底した執事精神ですね」

京太郎「すまん……」

明華「そう思うなら、烏龍茶のおかわりを」

京太郎「はい、申し訳ありません」コポコポ

アレクサンドラ「……状況が見えないんだけど」

ネリー「お昼のお茶だよ」

ハオ「お昼を軽くして、飲茶です。時間はずいぶんと早いですが」

明華「たまにはこういうのも悪くないかと」

アレクサンドラ「……部室でしないようにね」

京太郎「あ――」

ハオ「そういえば、なぜ部室で?」

ネリー「お昼が終わったから、部活行こうってなって――」

明華「途中で会って、お昼の話をして……」

京太郎「あまり食べてないから、お腹が空くかもとか、そんな話を――」

アレクサンドラ「なるほど、それならいっそ、先に補充しておこうと」

ハオ「そうみたいです」

アレクサンドラ「そうみたい、じゃない!」

明華「失礼しました。すぐに片付けましょう」

ネリー「まだ食べてるのにー」

アレクサンドラ「まったく……いつからこんなことに……」

京太郎「どうぞお茶です」

ハオ「こちらの点心も、よければどうぞ」

アレクサンドラ「ありがと……」ハム

アレクサンドラ「……ハッ!」

ハオ「――かかりましたね?」

明華「共犯ですね」

ネリー「わーい、お茶の続き♪」

アレクサンドラ「私としたことが……なんてこと」ガクッ

京太郎(でも食べるのはやめない……)

ハオ「京太郎、おかわりを準備しましょう」

京太郎「……そうだな、行くか」

アレクサンドラ「――それじゃ、始めましょうか」

「……なんか部室、中華くさくない?」
「私もそう思う」
「あの、部長――」

部長「気のせいです。それじゃ、卓についてくださーい」


ハオ「……換気はしたのですが」

明華「ですから、アロマかお香でごまかしましょうと」

ネリー「なれれば気にならなくなるよ」

京太郎「そういう問題じゃないだろ……ま、今後は対策するか」

ハオ「あ、またやる気なんですね」

アレクサンドラ「懲りなさい、君たちは」

明華「ふふふ、監督も共犯ですよ……」

ネリー「これがバレたら……大変だよね?」

京太郎(なんかエロい……っと)

京太郎「それじゃ、練習始めましょう」

アレクサンドラ「はい、今日はどうする?」

京太郎「では、指導に……」

アレクサンドラ「誰と?」ジー

京太郎「え、と……それは、ひと――」

明華「…………」ジー

ハオ「…………」ジー

ネリー「…………」ジー

京太郎「――り、では……ないですね、はは……」

京太郎「では明華先輩、たまには一緒に」

明華「たまに……ええ、そうですね。私なんて、たまにがお似合いですから……」

京太郎「本当はいつも一緒がいいんですが、あまり練習時間を削らせるのも、申し訳ないですからね」

京太郎「先輩の麻雀してる姿は綺麗ですから、俺も好きですし――」

京太郎「そういうところも、一年に見せてやりたいんです。お願いします」ペッコリン

明華「」

明華「なにを言ってるんですか、京太郎。一年の指導は先輩の役目です、気にする必要なんてありません」

明華「さ、行きましょう。皆さんお待ちかねでしょうから」


アレクサンドラ「……うまく誘導したようにしか見えない」

ハオ「明華も面倒くさいようで、ちょろいですからね……」

ネリー「でも京太郎は本心で言ってるから、すごいよね!」


明華(綺麗で好きと言われました/////)

京太郎「――本当に、綺麗ですよね」

明華「ファイッ!?」ビクンッ

京太郎「いえ、先輩の指」ヒョイ

明華「うひゅうっ!」ビビクンッ

京太郎「マメとかできないんですか?」フニフニ

明華「ひゃんっ……あ、え、と……もう、あまりそういうのは……あ、んっ……」ビクッビクッ

京太郎「もう一人、マメができないって人知ってますけど……こういうのって、長くやってるとそうなるんですかね」ギュッギュッ

明華「っっ……ぁっ、くっ……んっ……そ、う……かも、し、れま……ぅっ……せ、んぅっ……」モジッ

京太郎「いいなぁ……俺ももっと頑張らないといけませんね。なんせ、けっこうマメできてますから。あ、こっちは包丁ダコです」

明華「はぁっ、はぁっ……そ、そう……ですか……ぁ……」ハァハァ

京太郎「あれ……せ、先輩? なんか、汗が……大丈夫ですか?」

明華「は、いぃ……でも、少し……疲れたので……こうしてて、いいですか?」ギュッ

京太郎「おっと……はい、支えてれば大丈夫ですか?」

明華「ええ……できれば、少し強くしていただけると……」

京太郎「わかりました。楽になるまで、俺に任せてください」ギュー

明華(はぁぁ……部活中に、なんてことを……でもこれは、素晴らしい……なんて素敵な……)ギュー


~20分経過


京太郎「……大丈夫ですか?」

明華「ええ、これ以上は……抑えきれなくなりますから」

京太郎「ならいいんですけど(抑えきれなくなる?)」

明華「さ、参りましょうか」

京太郎「はい」


一年ズ「……遅いね、先輩たち」
一年ズ「今日は指導なしかな」
一年ズ「あ、なんか来たっぽい」
一年ズ「また監督かなー」


明華「では、指導を行いましょうか。まず歌います」

一年ズ「」

明華「そしてツキを呼び込み、風を集めます。これは捨て牌に回せば、防御にも使えます」

一年ズ(できんわ!)

京太郎「……咲と同じタイプだな、この人」

明華「ふぅ……どうでしたか、京太郎。私の指導力は」

京太郎「いえ、すばらしかったです」

明華「そうでしょう? 京太郎にも、いつでも教えてあげますから」フフー

京太郎「ありがとうございます。では、戻りましょうか」

明華「ええ」

京太郎(……意外にも、あのあと普通に指導してたな……どうして最初はああだったのか)コレガワカラナイ

ハオ「……おかえりなさい」

ネリー「どーだったの、明華は」

アレクサンドラ「別に心配とかはしてないけど、念のためね。あくまで念のため」

京太郎「すばらしかったです」

明華「うふふー」

ハオ「くっ……」

ネリー「ネリーよりよかったんだ……」

アレクサンドラ「……なーんか納得できない」

明華「まぁまぁ、いいじゃないですか。それでは、こちらも練習しましょう」

京太郎「そうしましょうか。さっきので、俺もちょっとは強くなれたかもしれませんし」

明華「まぁ。すぐに効果は出ませんよ、京太郎♪」

京太郎「はは、冗談です。でもそれくらい、いいご指導をしていただきましたので」

ハオ「……明華、どれだけ上機嫌なんですか」

ネリー「褒められたの、嬉しかったのかなぁ」

京太郎「では、今日も真面目に対局を」

アレクサンドラ「……も?」

明華「では私がお相手を♪」

ハオ「そうはいきません」

ネリー「そこは公平にいかないとね!」

京太郎「じゃ、牌譜取りますので。始めてくださーい (慣れた)」

京太郎「では――よろしくお願いします」

明華「頑張ってくださいね、京太郎」ギュー

京太郎「……はい」

京太郎(後頭部におもちが当たって集中できない(直球))

ハオ「……今日は随分と落ち着いてますね、明華。対局できないというのに」

明華「二人きりで指導できて、甘えさせていただいたので」

ネリー「なにそれ!」

京太郎「いや、先輩……一年もいましたから」

明華「あ、そうでした」

アレクサンドラ「どうでもいいけどニヤけない、キョウタロウ。集中して」

京太郎「に、ニヤけてませんっ」キリッ

明華「まぁ、ともかく……今日は色々と、本調子ではありませんから。応援に専念しますね」

アレクサンドラ(……ほかの練習すればいいでしょ)

ネリー(でも言わない監督)

ハオ(二人して頭の中で会話を……)

明華「頑張ってくださいね、京太郎♪」ギュッギュッ

京太郎「御意!」デレー


監督25000→30800
ネリー25000→
ハオ25000→19200
京太郎25000→


京太郎「……これはひどい」

アレクサンドラ「声にださない」

ネリー「やらしーこと考えてるからだよ!」

京太郎「!? か、考えてないし!」

明華「そうですよ、ねぇ?」

京太郎「も、もも、もちろんです!」

ハオ「……どの顔が言いますか」

京太郎「口だよね!?」

アレクサンドラ「はい、ロン。5800よ」

ハオ「……はぁ」

京太郎「俺を見てため息つかないで!」

京太郎「くっ、名誉挽回しなければっ……」

明華「がんばれ♪ がんばれ♪」

アレクサンドラ(……邪魔してるように見えてきた)


監督25000→30800→30100
ネリー25000→23700
ハオ25000→19200→18500
京太郎25000→27700


京太郎「………………」

明華(……あら、いい集中ですね……気にしてないのでしょうか)フニフニ

アレクサンドラ「ちょっと明華、なにしてるの!」

明華「え? 別になにも……」

ハオ「乗せてるじゃないですか!」

ネリー「こっちは真面目にやってるのに!」

明華「え? いえっ、これは偶然――」

京太郎「――ツモ、700、1300です」

アレクサンドラ「えええええ……」

ハオ「なんてタイミングですか……」

ネリー「それじゃまるで、明華のおかげだよ……」

京太郎「へ?」

明華「な、なんでもありません……さ、その調子で頑張りましょう♪」

京太郎「はぁ……」

監督25000→30800→30100→
ネリー25000→23700→
ハオ25000→19200→18500→10500
京太郎25000→27700→35700


京太郎(……なんかよくわからんが、俺は名誉挽回するんだ! うおおおおおお!)

京太郎「――ロンだ! 満貫、8000!」

ハオ「っ……いけません、これはっ……」

アレクサンドラ「……正念場よ、ハオ。集中して」

ハオ「当然ですっ……」

ネリー「大丈夫、ネリーが止める! 絶対に……」

京太郎「なら、俺が先に上がるまでだ」

ハオ「絶対に、飛ばされませんっ……」

明華「頑張って、京太郎……」ギュッ

京太郎「う……ま、まずい、邪念が……」

ハオ「……勝機っ……」

アレクサンドラ「フラグ立てない」

ネリー「掃除阻止!」

監督25000→30800→30100→28100
ネリー25000→23700→21700
ハオ25000→19200→18500→10500→8500
京太郎25000→27700→35700→41700 トップ


京太郎「――っ……ツモ、2000オールです! お疲れさまでした!」

ネリー「お疲れさま! やったよ!」

ハオ「はぁ……危ないところでした」

アレクサンドラ「まぁ、それはそうなんだけど……あの、君たち負けてるからね? そこは反省してよ?」

明華「……惜しかったですね、京太郎」

京太郎「え?」

明華「いえ、その……もう少しで、ハオがトビでしたから」

京太郎「……ああ、そういえば……」

明華「意識、してませんでしたか?」

京太郎「う……はい、すいません」

明華「どうして謝るのですか?」

京太郎「いえ、掃除しに行けなくて……」

明華「……ふふっ、京太郎は勝ったじゃないですか。喜んでいいんですよ」

明華「とても素敵でした……よく頑張りましたね」エライゾー

京太郎「ありがとうございます……次は、もっと頑張りますので」

明華(ああああああああああ! 京太郎かわいいですっっ!)

ハオ「……はいはい、終わったんですから離れましょうね」

ネリー「今日は監督が調子よかったよね」

アレクサンドラ「そうね……だけど京太郎が、二局からずいぶんと集中し始めたわ」

ハオ「なにか心境の変化でもありましたか?」

京太郎「いや、そういうのではなく……なんていうか、不真面目に見られてる気がしたからな」

京太郎「ちょっと――いいとこ見せようと思っただけだよ」

アレクサンドラ「」キュン

ネリー「負けたのは悔しいけど……かっこよかったよ!」

ハオ(最後は邪念で乱れていたような……)

明華(このまま持って帰りたいですね……)


~土曜、夕方

京太郎「さて――それじゃ、俺はこれで」

明華「はい。お気をつけて」

明華(と――気持ちよく送りだすフリをして……)

ハオ「また明日、ですね」

ハオ(昨日のように、また送りにいきましょう)

ネリー「遅刻しちゃだめだよ?」

京太郎「ああ、わかってるよ。では、お先に失礼します、監督」

アレクサンドラ「……うん、気をつけて」

京太郎「はい」

アレクサンドラ「……いや、危ないし……よかったら、車で送って――」

明華「ダウト」

ハオ「アウト」

ネリー「ギルティ」

アレクサンドラ「……別に他意はないわよ?」

明華「だったら私たちを寮まで送ってください、以上」

ハオ「では京太郎、仕事でも無理しないように」

ネリー「さよなら!」

京太郎「あ、ああ……じゃ、また明日な」

ハオ「……京太郎!」ハァッハァッ

京太郎「ん、ハオ? どうしたんだ、連日……なんか息荒れてないか?」

ハオ「いえ、ちょっと……はぁっ……ふぅ……」

ハオ「本当に、抜け駆けにも苦労します……」

京太郎「抜け駆け?」

ハオ「いえ、こちらの話で……また、校門までお送りしますね」

京太郎「無理しなくてもいいんだけど」

ハオ「好きでやってることです、お気になさらず」

京太郎「ならいいけど……」

ハオ「今日は危ないところでした」

京太郎「トビ終了か?」

ハオ「はい。この調子では、もう京太郎に勝てないかもしれません……」

京太郎「そうか? 俺はいつも、いつ負けるかヒヤヒヤしてるんだけど」

ハオ「そう、弱気になることもあるという話です。もちろん、負けたくないから必死になってはいますから」

京太郎「弱気に勝たないと、誰にも勝てないからな」

ハオ「はい……そうだ、京太郎。なぜ私が京太郎に勝ちたいか、わかりますか?」

京太郎「部屋の掃除か?」

ハオ「ふふ、それもあります……でも、部屋は基本的に片付けていますから、そこまで掃除をお願いすることはありません」

ハオ「根本のレベルが違うにしても、です」

京太郎「じゃあどうして?」

ハオ「……京太郎が、今日言ったのと同じです」

ハオ「いいところを見せたいんですよ、京太郎に」

京太郎「――っ」

ハオ「……本当は、京太郎が来たら、そうしてみせる予定でした。でも、実際は京太郎のほうが、私より強かった……」

ハオ「そんな京太郎に認められ、憧れてもらえるように、私は勝ちたい――そういう雀士になりたいのです」

京太郎「……認めてるし、強いと思ってる、っていうのは言ってほしくない?」

ハオ「正解です」

京太郎「だよな――なら、俺も負けないように頑張るか。ハオが勝ちたいと思ってくれる選手で、あり続けようと思う」

ハオ「お願いします……願わくば、京太郎がいる間に勝ちたいものですが」

京太郎「ああ。ハオの部屋に行ける日を、楽しみにしてるよ」

ハオ「京太郎……ふふっ、そんなことを言われては、このまま寮に招待したくなってしまいます」

ハオ「練習に戻らないといけませんから、それはまた――では、京太郎」

ハオ「……いってらっしゃいませ」ペッコリン

京太郎「――ああ、いってきます」


~4月第三週土曜、夜

京太郎「ふぅ、お疲れさま、と」

京太郎「普通に考えれば、トビ終了するには得点がいるんだよなぁ……」

京太郎「火力、どうにか底上げしたいけど……まずは確実に上がれるように、か」

京太郎「難しいもんだな、麻雀ってのは」

京太郎「さて、そんなときは――なにかするのがいいのかな」

京太郎「明日は、その……菫さんと、デートだからな」

京太郎「恥ずかしい格好を見せないように、万全で臨むことも必要だし……どうしたものか」

京太郎「――昨日、あんな風に言ったあと、帰られたからなぁ……咏さん」

京太郎「で、今日の試合だろ……ちょっと、電話してみるか」


京太郎「…………」

咏『あいよ、三尋木だけど』

京太郎「あ、咏さん……京太郎です、ご無沙汰――でもないですね」

咏『京太郎!? あ、うん……まぁ電話は久しぶりじゃね? わっかんねーけど』

咏『んで、どしたん?』

京太郎「えと――」


京太郎「今日の試合、すごかったですね……っていうか、すごすぎました」

咏『あー、うん。ちょっとね……本気でやってみた。本気の本気』

京太郎「……いつもは手抜きってことですか?」

咏『うーん、そうじゃないんだけどねぃ……たとえばよ?』

京太郎「はい」

咏『京太郎はさ、練習でも試合でも、あと大会でも真剣に打つだろ?』

京太郎「そりゃもちろんです」

咏『でもさ――たとえば、負けたら誰かの命が、くらいの重い展開になったと想像してみ?』

京太郎「え、なんですかそれ!?」

咏『たーとーえーばーだっつってんしょ? あ、ちなみに今日のは、そういうんじゃないんで~』

京太郎「ならいいですけど……で、負けたら……ですか?」

咏『そうそう。まぁそんくらい大事なもんがかかってる、くらいのノリだよ』

咏『いつもが真剣だとしても、そうなりゃ余計に本気になるっしょ? なんね?』

京太郎「まぁ、なると思います――で、今日の咏さんはその、本気の本気でってことですか」

咏『そういうこった、うん』

京太郎「どうして、そんな……?」

咏『そりゃ決まってるっしょ?』

京太郎「みんながテルテル言うからムキになったんですね、わかります」

咏『!? ちょっ、違――』

京太郎「いや、でもメディアとかそんな感じでしたし――」

咏『だからちげーっての!』

京太郎「じゃあなんでですか?」

咏『うっ……え、と……そりゃー、ほれ……あれだよ!』

京太郎「あれ?」

咏『……だーっ! もうそれでいいよ! はいはい、ムキになりましたーっと!』

京太郎「なに怒ってんですか……」

咏『怒ってねーっての!』

京太郎「……けど、そうか……咏さんも、そういう感じに打つんですね」

咏『あん?』

京太郎「いえ、ムキになったり、本気になったり……なんていうかいつもは、飄々としてて、掴みどころない感じですから」

咏『えー、そうかねぃ……』

京太郎「ほら、テレビとかでもわっかんねーって言ってますし」

咏『いや、うん……まぁあれは、なんてーか……感覚的なモンだから?』

京太郎「いつも楽しんでるのか、ただ仕事としてやってるのか、やる気があるのかないのか、それも見えなかったんですけど……」

咏『うっは、ひっで~。わりと楽しんでんだぜ、これでもさ~。じゃなきゃ、後輩連れて飯行ったりとかしないっしょ?』

京太郎「俺はそっちよりも、今日の試合のほうが、咏さんの楽しんでる雰囲気を感じました」

京太郎「誰が相手でも、いい勝負より圧勝したいっていう――完膚なきまで、相手を叩こうっていう、強者のスタンスかなって」

咏『え……い、いやー、そこまでは……』

京太郎「かっこよかったです。で、すげー強かったです」

咏『……ほんとに?』

京太郎「俺は――咏さんから目が離せませんでした」

京太郎「あんな麻雀もあるのかって、俺に感じさせてくれました」

咏『きょ……きょう、た……えっ』

京太郎「素敵でした」

咏『~~~~~~~~~~~~~っっっ!!!』

咏『あ、う……お、おう、まぁねぃ……その――』

咏『あ、あんくらいちょろいってことさ、うん!』

京太郎「はい! あの――」

京太郎「昨日は、失礼しました……咏さんがどれだけ強いかも知らない、軽はずみな発言だったと思ってます」

咏『えっ……あ、あー、あれね! うん、まぁ気にすんなっての、あれくらいさー』

咏『私もちょいおとなげなかったかなー、なんつって思ったわけだし』

咏『わかってもらえたんなら、本気を見せた甲斐もあるよ』

京太郎「咏さん……ありがとうございました!」

咏『あっはっはっは、いいってことよ。あ、でも今日みてーなのは、あんましないから』

咏『いや、さすがに疲れっしさ、うん……ま、そのうち、機会がありゃやってみるかねぃ』

京太郎「楽しみにしてます」

咏『あっはっは、なにを他人事みたいに♪ 京太郎相手にやるっつってんのにさー♪』

京太郎「――え」

咏『目の前で魅了してやんのも、悪くねーっしょ? んじゃ、期待してろよ~、ほんじゃねぃ♪』

京太郎「ちょ、まっ――咏さんっ、咏さーんっ!?」


咏「やっべえええええええええええ! やべやべやべっ、なんだあれ! くっそ……すっげ恥ずかしいぃぃっっ!」ジタアタ

咏「はぁぁぁ~~~~~~~~~……すっげ、嬉しい……」ギュゥッ


京太郎「あかん、蹂躙されてまう……つ、強くならないと(迫真)」


~土曜、終了




京太郎「ま、まあ、なんとかしよう……あとは、誰かにメールを――」

京太郎「理沙さんたちも、あんな試合することはあるんですか?」

京太郎「ああいう人と当たったら、どうやって戦う?」

京太郎「見てるだけで熱くなりました、と。宥さんもプロになれば、毎日熱くなったかもですね」


京太郎「……よし、こんなところか。今日は寝よう……おやすみなさい」


~今度こそ土曜終了


~4月第三週日曜、朝

京太郎「日曜は休みだから、朝ゆっくりできていいよなぁ」

明華「は?」

ハオ「8時部活開始、7時半集合はなかなか辛いのですが」

ネリー「成長期はゆっくり寝ないとだめなのに!」

アレクサンドラ「……堂々と批判しないでよ」

アレクサンドラ「仕方ないでしょ? 夏の大会ではどうして、最良の結果が求められるんだから」

アレクサンドラ「スポンサーの機嫌を取るためにも、しっかり頑張ってちょうだい」

ネリー「はーい」

ハオ「まぁ、もとよりこれ以上負けるのはゴメンですからね」

明華「打倒清澄、白糸台ですね」

京太郎「今年は部長がいませんから、清澄はどうなりますかね」

臨海部長「へ?」

京太郎「あー……竹井久、昨年の部長です」

明華「牌を叩きつけてた方ですね」

京太郎「申し訳ありません、うちの部長が」

ハオ「マナーは最悪ですが、外連味はありますね」

京太郎(難しい単語知ってるなぁ)

アレクサンドラ「ともかく、春優勝の白糸台は平均点も高いし、目下の仮想敵よ。再来月の予選大会までは、白糸台対策を中心にするから」

明華「心得ました」

ハオ「頑張りましょう、京太郎」

京太郎「だな」

ネリー「来月京太郎が白糸台に行って、再来月に戻ってくるとかいいよね」

京太郎「スパイさせんな!」

アレクサンドラ「いいわね、採用」

京太郎「」

アレクサンドラ「ジョークよ、ジョーク」

京太郎(目がマジだったし……)

ハオ「ところで――朝ゆっくりと言ってましたが、普段は何時に起きているのですか」

京太郎「辻は5時入りで仕込みだから」

ネリー「そんな時間に起きたくないなぁ」

京太郎「起きるのは4時半くらいだぞ」

ネリー「」

明華「お肌に悪そうです」

京太郎「智葉先輩は6時頃だったので、大丈夫そうですよ」

明華「……智葉も朝から?」

京太郎「え、はい……そりゃ、娘さんですから」

ハオ「……なるほど、そうやって……」

ネリー「ずるい!」

京太郎「えっ?」

アレクサンドラ(……料理人でもなく、経営にも携わっていなければ、早朝に店に行く必要、ないのよね)

アレクサンドラ(まぁ教えないけど。智葉の思惑を教えても、得するの智葉だけだし)


京太郎「よくわからん……」

明華「いいから始めましょう。今日は二回行動できますからね」

京太郎「あ、はい」

京太郎「それじゃ、さっそく打ちましょう!」

ハオ「いいですね、やる気があるようで」

ネリー「今日は勝つよ!」

明華「では、こんなこともあろうかと用意していました――これを」

アレクサンドラ「キョウタロウ、引いて」

京太郎「あ、はい」

ハオ「おや、私が外れましたか」

明華「ふぅ、勝たないと掃除してもらえませんね……頑張らないと」

京太郎「よろしくお願いします」

アレクサンドラ「それじゃ、今日は東風戦ね」

ハオ「なぜですか!」

ネリー「長いと京太郎が飛ばすでしょ? そうしたら、ハオのお部屋に行っちゃうもん」

ハオ「だからいいんじゃないですか」

明華「まぁまぁ、ここはいつも通り、京太郎に決めてもらいましょう」

京太郎「なんか俺の負担が増えてる……」

京太郎「それじゃ、半荘で」

ハオ「京太郎、ありがとう!」ギュウッ

京太郎「……なに、気にするな」

明華「……そうですか」

京太郎「え、なんで怒ってるんですか!」

ネリー「別に怒ってないよ」

アレクサンドラ「そうね。私たちが勝つ可能性もあがるわけだし」

京太郎「そうですね、気は抜きません!」

ハオ「頑張ってくださいね」ギュー ムニュ

京太郎「おう!」

監督25000→37000
ネリー25000→21000
明華25000→21000
京太郎25000→21000

アレクサンドラ「ほら来た――ツモ、4000オール」

京太郎「いってぇ……」

ネリー「おとなげないよ!」

ハオ「本当ですね」

明華「自分の部屋くらい、自分で掃除してください」

アレクサンドラ「君たちもでしょ……あと、私監督だからね? 練習で手抜いたら意味ないでしょ」

京太郎「さすが監督、俺も負けられないな……」

アレクサンドラ「……キョウタロウは本当にいい子ね。ずっといてちょうだい」

京太郎「!? ど、どうしたんですかっ、いきなり……」

アレクサンドラ「手厳しくない教え子が嬉しくて……」

ハオ「なんてあざとい!」

明華「これは……負けられません!」

ネリー「8000差、これくらい余裕……余裕……」

京太郎(おお、みんなの気合も……燃えてきたぜ!)


監督25000→28000
ネリー25000→24000
明華25000→24000
京太郎25000→24000


アレクサンドラ「んー、ツモならず、か……はい、テンパイ」

ネリー「ノーテン」

明華「ノーテンです」

京太郎「ノーテン……はぁ」

明華「どうしました?」

京太郎「いえ、ちょっと……」

アレクサンドラ「私の当たり牌を、せっせと集めてたのよね」

ネリー「へー、すごーい」

アレクサンドラ「すごーい、じゃなくて……君たちもそれくらいやってよ、頼むから」

明華「それは私の打ち筋ではありませんし……」

ネリー「ネリーも攻撃のが得意だし」

アレクサンドラ「だから、意図してやってって言ってるのよ……」

ハオ「確かに……では京太郎、あとでその方法を教えてください。二人きりで――」

アレクサンドラ「はい! 続きやるわよ! 集中して!」

京太郎「はい!」

ハオ「……むぅ」

監督25000→28000
ネリー25000→24000→27900
明華25000→24000
京太郎25000→24000→20100


ネリー「ロォン! 3900、安めだよ!」

京太郎「ぐっ……はい」

明華「うーん、流れが来ませんね……」

アレクサンドラ「……キョウタロウ、調子悪い?」

京太郎「いえ、そんなこともないんですけど……」

ハオ「なにか用事があって、気が逸っていますか? あるいは、気が散っているというか……」

京太郎「そ、そんなことないって!」

明華「あっ……(察し)」

ネリー「……ふぅん」ムスー

アレクサンドラ「……飛ばしたいなぁ」

ハオ「みんな、頑張ってください。この際許します」

京太郎「四面楚歌とはこのことか……」


監督25000→28000
ネリー25000→24000→27900→11900
明華25000→24000
京太郎25000→24000→20100→36100


京太郎「やられっぱなしじゃいられないな……ってことで、ロン!」

ネリー「えーっ、こっち!?」

明華「監督じゃないんですか……」

アレクサンドラ「いや、私やられたほうだからね?」

京太郎「しかもデカい! 倍満、16000だ!」

ネリー「うっ……ピンチかも」

ハオ「その調子です! 頑張って、京太郎!」

明華「激しい手の平返しです……」

アレクサンドラ「8000以上取れば私ね。これは勝負しがいがあるわ」

明華「スキャンダル! 名門校教師が、教え子と連中に賭け!」

ネリー「負けた部員は教師の私室掃除!」

ハオ「週刊誌の格好のネタですね……」

アレクサンドラ「……あのねぇ」

京太郎「大丈夫ですよ。見られないように部屋に入る方法は、いくつかありますから」

アレクサンドラ「えっ」

明華「……そ、そうですか」

ネリー「そ、そんなことより続けようよ」

京太郎「……あれ?」


監督25000→28000
ネリー25000→24000→27900→11900
明華25000→24000
京太郎25000→24000→20100→36100

アレクサンドラ「……ふぅ」

京太郎「」ビクッ

アレクサンドラ「……残念、終了よ」

京太郎「ほぁぁぁぁ~~~~~~……あ、お疲れさまでした」

明華「お疲れさまです……ふぅ、私たちの策が功を奏しましたね」

ネリー「惜しかったね、監督!」

アレクサンドラ「……関係ないから、普通に」

ハオ「なかなか飛びませんね」

京太郎「そうそうないって、飛ぶのなんて」

明華「やっぱり、普通に打たないと掃除は期待できませんね」

ネリー「それじゃ続きだね!」

京太郎「ちょっと休憩挟もうぜ、さすがに疲れた……」

アレクサンドラ「だめ。そのまま続けてこそ、集中力と判断力が身につくの」

京太郎「鬼ぃ!」

ハオ「知ってました」

明華「かわいそう、京太郎……私が外れたら、膝枕してあげますからね」

京太郎「やる気出ました!」

明華「まぁ……//」

ネリー「ネリーもするよ!」

ハオ「二人だけにいい格好はさせません」フッ

アレクサンドラ「……練習だって言ってるのに」

京太郎「でもいいんですか、明華先輩」

明華「はい?」

京太郎「膝枕なんて、気軽にするものじゃないと思いますし」

明華「……バカですね、京太郎は」

京太郎「ええええ……」

明華「気軽になんてしませんし、させませんよ? 当然じゃないですか」

京太郎「ですよね」ガクー

明華「気軽ではなく、してあげるから……意味があるのではないですか」

京太郎「えーっと……つまり、してもらえるってことですか?」

明華「ええ、特別です。京太郎だけ、特別ですよ?」

京太郎「……嬉しいです」

明華「ふふ、それはよかった。ではどうぞ、遠慮なく――」

ハオ「ストップ」

ネリー「まだ明華が外れたわけじゃないし!」

アレクサンドラ「そもそも、京太郎が対局続けるかもわかんないし」

京太郎「う、うう……明華先輩の膝枕がぁ……」

明華「京太郎……運命は、残酷ですね……」

ハオ「重くされても困ります」

ネリー「次どうするの、京太郎!」

京太郎「膝枕が……」

明華「いいですよ、どうぞどうぞ」スルスル

アレクサンドラ「スカート上げない!」

京太郎「――わかりました、練習しましょう!」

明華「えっ……」

京太郎「それはまた、お時間があるときに……人目がないほうが、明華先輩も落ち着くでしょうし、ね?」

明華「京太郎……はい、ぜひ!」ニコッ

ハオ(……その前に私がしてあげましょう)

アレクサンドラ(……まぁ、私が前にしてあげてるんだけどね)

ネリー(……でも京太郎重たいだろうなぁ……むしろ私がしてもらうほうがいいかも)

京太郎「――疲れた」

ネリー「京太郎、目が死んでるよ」

京太郎「こんなに練習したら、腕がおかしくなるよ……」

明華「普通の練習量ですよ」

アレクサンドラ「いかに練習不足かよくわかるわね」

京太郎「うう、掃除したい、お料理したい……」

ハオ「余計疲れませんか?」ナデナデ

アレクサンドラ「ナチュラルに撫でない」

京太郎「疲れないって……雑用は体力もいらないしさ」

明華「おかしなこと言いだしましたよ」

ネリー「監督しごきすぎ!」

アレクサンドラ「えっ、わ、私のせいなのっ?」オロオロ

京太郎「なんだか監督が優しくなった……さて、ちょっと回復したし、どうしようか」

京太郎「だめだ、もう我慢できん!」

明華「はいぃっ! お、お膝ですかっ、どうぞっ///」

ハオ「明華、落ち着いて」

ネリー「いつの間にかキョウタローの手にホウキとチリトリが!」

アレクサンドラ「――いえ、違うわ。チリトリには、すでに埃が!」

京太郎「……まだだ、まだ足りませんっ……ちょっと掃除してきます!」バァンッ

明華「ああ、行ってしまった……京太郎、寂しいです……」

アレクサンドラ「……ま、終われば戻ってくるでしょ」

ハオ「物足りませんが、練習しますか」

ネリー「キョウタローいないとつまんないよー」

アレクサンドラ「……優先一位がキョウタロウ、みたいに言わないでよ、ほんと」

京太郎「よし、やるぞ……まずはこの部屋からだ!」

京太郎「掃除するけど、気にしないように!」

京太郎「よし終わり! それじゃ!」

一年A「……えっ」

一年B「来たとこだよね……って!?」

一年C「み、見たこともないほど綺麗になってる……」

一年D「ナニソレイミワカンナイ」

京太郎「失礼します! ここも掃除しますので!」

京太郎「終わりました!」

二年A「……あ、はい」

二年B「あんなのがいるレベルなんて……レギュラー取れるわけないじゃないっ」

二年C「いや落ち着け。麻雀関係ないから」


京太郎「はぁ、やっぱり掃除は落ち着くなぁ……体力気力、ともに満タンだ!」ヒャッホウ

アレクサンドラ「……なるほどね。各校が混乱するわけだ」

ハオ「京太郎、おいたわしい……」

ネリー「幸せそうなのが、逆に痛々しいね」

明華「よくできましたね、京太郎。ご褒美に膝枕してあげますよ、こっちにいらしてください」ポンポン

京太郎「わーい」

アレクサンドラ「わーい、じゃない!」

アレクサンドラ「……まったく、私がしてあげたことも忘れて……これだから男ってのは……」ブツブツ

ハオ「え? なんですか?」

アレクサンドラ「なんでもないわよ!」

ネリー「っていうか、それハオが言うんだ」

ハオ「京太郎は忙しそうですから……」

京太郎「……ふぅ」

明華「いかがですかー?」ナデナデ

京太郎「溶けそうです……」デレー

明華「それはよかったです///」

京太郎「……はっ!」

明華「どうしました?」

京太郎「いえ、くつろいでる場合じゃないなと……そろそろ練習も終わりですし」

ハオ「そうですね、今日も頑張りました」

アレクサンドラ「その割には、頑張ってる描写が少なかったけど……」

ネリー「見えないところで頑張ってるからね」

京太郎「それじゃ、あとは掃除と備品の整備をして――」

ハオ「どこを掃除しろと言うんですか……」

アレクサンドラ「とりあえず、その子帰らせなさい」

明華「はい。では京太郎、家までお送りしますね」

ネリー「だめだよ、明華。レギュラーミーティングだよ」

明華「うぅぅ、意地悪……」

京太郎「休日はそんなこともしてたんですか」

アレクサンドラ「まぁそうね」

京太郎「では、その際のお茶菓子にでもしてください。どうぞ」

ハオ「おいしそうなカップケーキですね、焼き立てで、いい香りです」

ネリー「おいしい!」

明華「さっそく食べではいけませんよ」

アレクサンドラ「ありがと……それじゃ、気をつけてね」

京太郎「お疲れさまでした。失礼します」


~午前行動終了


~日曜、午後

京太郎「さて――菫さんとのデート、ようやくこのときが……」

京太郎「来週が誕生日だけど、引っ越しの準備も考えると、今日くらいしかお祝いできそうにないな……」

京太郎「ないならないで、イベント挟みそうだけど――今日するなら、二人っきりってことになる……」

京太郎「あ、なんか緊張してきた……どうしよう」

京太郎「……よし、最初は内緒にしつつ……料理をだすところで、お祝いって形にするか」

京太郎「それなら、それらしい食材と――シャンパンはまずいな、季節柄、シャンメリーなんかもあまり売られてないし……」

京太郎「――ま、ないならないで用意するか」

京太郎「さて、菫先輩にも連絡しておかないとな」


菫『……はい、弘世です』

京太郎「え? あ、京太郎です……いつもなら、私だ、って出ません?」

菫『っ……まだ、三人がいるからな……その……仕事の電話っぽくしてるんだ』ボソボソ

京太郎「なるほど……それで、待ち合わせのことなんですけど」

菫『あ、ああ……はい。13時、ですよね』

京太郎「そのとき、駅前って言ってましたけど……俺の家に来ていただけませんか?」

菫『』

京太郎「……あれ? 菫さん、大丈夫ですか?」

菫『ひゃいっ! あ、お、あっ……は、はい、大丈夫、だっ……です!』

京太郎(……ほんとに大丈夫かな?)

菫『でででで、ではっ、13時にお伺いします! 失礼します!』

京太郎「はい、お待ちしております」


菫「こ――こうしてはいられないっ……」

哩「どげんしたと?」

巴「急なシフト変更とかですか?」

菫「あ、ああ……一度家に帰る! すまん、またな!」

智葉「いや、同じ方向――そんなに急だったのか」

巴「お忙しそうですね」

哩「まぁよかよ。来週の菫の誕生日、どうすっか話合わんとね」

菫「しゃ、シャワーを浴びてっ……下着っ、変えないとっ……」ハワワッ

京太郎「これでよし、と」

京太郎「大人数でのパーティはよくあったから、大皿メニューばっかりだったけど……二人でのお祝いだし、コース料理に近いものにしようか」

京太郎「前菜に、海鮮と野菜のテリーヌを……スープはポタージュにして、あと――」

京太郎「メインは……いまの時期だと、羊だな。ラムチョップをステーキに――」

京太郎「飲み物は、ミネラルウォーターで……デザートに、シャンメリーと紅茶のジュレをだそう」

京太郎「待ち合わせまで時間がない、急いでかからないとな」

京太郎「――よし、冷製はこれで大丈夫だろう」

京太郎「スープもよし、あとはメインにゆっくりと火を通して――ん?」

ピンポーン
京太郎「いらっしゃったな。先にお出迎えしないと」

京太郎「いらっしゃいませ――菫さん」

菫「……は、はいっ……その、来た……ぞ……」プルプル

京太郎「お待ちしておりました。どうぞ、入ってください」

菫「あ、ああ……失礼、しますっ……」

京太郎「……菫さん?」

菫「ひゃうっっ!? あ、な、なんだっ? なにかおかしいかっ!?」

京太郎「いえ、とんでもない。いつも通り、お綺麗です――いや、いつも以上でしょうか」

菫「~~~~~~~~っっっ////」

京太郎「ただ、ちょっと顔が赤いようなので心配で。どうかされたのかと――熱でもあるんですか?」スッ ピトッ

菫「ふあぁっっ!」

京太郎「……ちょっと熱いかな。大丈夫ですか? もし体調がよろしくなければ、別の日にでも――」

菫「だ――大丈夫だ! 問題ない……ただ、ちょっと……か、かか、覚悟を決めた、だけで……」

京太郎「――なら、いいんですけど……(覚悟?)」

京太郎「それでは、改めましてどうぞ。狭いところですが」

菫「い、いや、大丈夫……ん?」ヒクッ

菫「いい香りがする……オリーブと、これは……羊、ラムかな?」

京太郎「さすがです。ええ、昼食の準備をしていまして」

菫「えっ……と、もしかして……家に来るよう言ったのは、その……昼食の、ためか?」

京太郎「はい、そうですよ?」

菫「な――そ、それならそうと早くっ……」

京太郎「あー、でもそれだけってこともないです、一応」

菫「ふきゅっ」

京太郎「どっかの誰かみたいな声ださないでください」

菫「すすす、すまんっ! そ、そうだよな、うん……大丈夫、相応の準備はあるから、安心してくれ」

京太郎「はぁ……? では、もう少しですので、ゆっくり座ってお待ちください」

京太郎「コースのつもりですけど、皿ごとに席を立つのも申し訳ないので……並べさせていただきました」

菫「ああ、構わない……見事な出来栄えだ、本当に感心するよ」

京太郎「ではどうぞ、お召し上がりください」

菫「うん、いただきます……っ……おいしい、とても」

京太郎「よかったです、お口にあって」

菫「しかし、随分といい材料のようだが……その、こう言っては失礼かもしれないが、高くついただろう?」

京太郎「いえ、普通の素材ですよ。下拵えを入念にしましたので、それが味にも現れているんです」

京太郎「修業で教えていただいた技術を使って、なにより時間もたくさん使えましたから」

京太郎「気にせず、楽しんでいただけると嬉しいです」

菫「そうか……すまない、細かいことを。せっかく用意してくれたんだ、おいしくいただくよ」

京太郎「はい」ジー

菫「うん、おいしいな」モグモグ

京太郎「ありがとうございます」ジー

菫「……あの」

京太郎「はい?」

菫「……あまり、見ないでくれ。その……恥ずかしいからな」

京太郎「すいません、食べている表情がとても素敵なので」

菫「っっ……そ、そういうことを、言うなっ……」

京太郎「それと、菫さんの食べ方が上品で、見惚れてしまうっていうのもあります」

菫「~~~~~~~~っっ! だからっ……やめ、ないか……」カァァッ

京太郎「それだけおいしそうに食べてくださるのは、とても嬉しいです……ありがとうございます」

菫「そ――それこそだ! 京太郎くんの料理が、本当においしいから……私も、つい笑顔になるんだ」

京太郎「え……」

菫「前に、少し言葉尻をとらえてしまったことがあったが――これを食べればわかる」

菫「君がいつも、どれだけ相手のことを考えて作っているか……丁寧に仕事をしているか」

京太郎「そ、そうですか……」カァッ

菫「私をもてなそうと、これだけのものを用意してくれた……その気持ちに触れれば、笑顔になるのも仕方ないことだろう?」フフッ

京太郎「……ですね」マッカッカ

菫「どうした京太郎くん、顔が赤いぞ?」ニヤニヤ

京太郎「うぅ……辱められた、お嫁に行けません……」

菫「君はもらう側だろう。それとも婿入りか? どちらも構わないよ、私は」

京太郎「はは、そうで――えっ?」

菫「……あっ!! な、なんでもないっっ!」

京太郎「……はい」

菫「……そ、それより、冷めないように食べようっ……」

京太郎「そ、そうですねっ! はははっ……」

京太郎(い、いまのは――いや、一般論だろっ!? 一般論だよなぁ!?)

菫(思わずなにを言ってるんだ、私はあぁぁあぁっっっ!!!)

京太郎「――お待たせしました、デザートだけは冷やしておきたかったので……どうぞ、紅茶とシャンメリーのジュレです」

京太郎「まぁ、シャンメリー風のシロップ、という感じですけどね、本当は」

菫「ふふ、まるでクリスマスだな」

京太郎「それならチキンだったかもしれませんね。羊はイースターでよく食べられるように、4月が旬なんです」

京太郎「そして、こっちのデザートは、お祝い気分をだしたかったので」

菫「え?」

京太郎「どうぞ、コーヒーです……こちらに、少しラテアートを。といっても、文字ですけどね」

菫「あ、ああ……ん、筆記体? H……は、ハッピー……っっ!?」

京太郎「――お誕生日、おめでとうございます……少し早いですけどね」

菫「……っっ……ああ、ありがとう……これは、とても驚いたよ……」

京太郎「すいません、ギリギリまで、こういった趣向にするか迷っていたので。本来なら、ケーキのほうがよかったかもしれませんが……」

菫「いや、その……こう言ってはなんだが、ケーキでは普通のように思えてしまうからな」

菫「……私がコーヒー党だと知ってくれて、こんな趣向を凝らしてくれたのは、本当に嬉しい」

菫「ありがとう……京太郎」

京太郎「え……」

菫「いつまでも君づけしていては、子供扱いのように感じないか? 私は君を、そう思っていないという……その、気持ちだよ」カァッ

京太郎「……こちらこそ、ありがとうございます。菫さんが思ってくださるように、一人前の男として、恥ずかしくない振舞いを心がけます」

菫「そ、そういうつもりでは……まぁいい、堅苦しくなるからな。それでは、いただくとするよ」


菫(……ああ、でもこの後で……私が、彼に――い、いただかれて、しまうのかっ……////////)

京太郎(……あ、また赤くなってる……本当に大丈夫かな、菫さん)

京太郎「すみません、片づけを手伝わせてしまって」

菫「いや、私が言いだしたことだ。それに、こうしたほうが近くにいられる。デートらしいだろ?」

京太郎「……はい」

フワッ
京太郎「……ん? 菫さん、香水かなにか、つけてますか?」

菫「いや?」

京太郎「そう、ですか……でも、その……」

菫「どうした?」

京太郎「あ、いえ……すいません。いい匂いがするな、と思ってしまって、つい」

菫「――あっ!」

京太郎「えっ?」

菫「い、いや、なんでもないっ/////」

京太郎「――シャワー、浴びてこられました?」

菫「!?!?!?!?!?」

京太郎「あ、すみません、また……」

菫「い、や……いいっ、構わないっ……」

菫「少し、汗をかいたから……あ、浴びて、きた……」

菫「シャンプーか、トリートメントの匂いだと……思うよ……」カァッ

京太郎「いい香りですね」

菫「あ、りが、とぅ……」

京太郎「うちに来てくださいって言ったから、気を遣わせてしまいました?」

菫「そ――ん、な……ことも、なくは、ないような……」モジモジ

京太郎「あー、なんかすいません……」

菫「き、気にしなくていい……私が、勝手にした、ことだから……」

京太郎「だけどラッキーでした。湯上がりの菫さんと、一緒にいられるなんて」

菫「きゅふっ」

京太郎「菫さん」ボソッ

菫「ふぁいっっ!!?」

京太郎「――このあと、どうします?」

菫「ど、どどど、どう、とはっ……?」ドッドッドッ

京太郎「どこか、行きたいところはあるかな、と思いまして」

菫「イ、イキた――って、え?」

京太郎「お祝いの席になりましたけど、家の中でなにか、というのもなんですし――せっかくの、その……デートですから」

京太郎「俺もいくつか考えてはいますけど、なにかしたいこと、行きたい場所があればと思いまして」

菫「――――えっと、つまり……」

菫「家に呼んでくれたのは、この……私の、お祝いのため、だったのかな?」

京太郎「はい」

菫「」

京太郎「……えと、なにか――」

菫「いいいいいいいいいいいいい、いや!!! いやいやいや! なんでもない! そ、そうだよなっ、当然だ、うん!」

京太郎「あ、はい……」

菫(あ、危なかったああああああああああああ! ま、また妙な勘違いをして、恥をかくところだった!!)

京太郎「それで、行きたい場所なんか――」

菫「わ、わかってる! その……ひ、ひとまず、洗い物を片づけてだな――それから考えよう、な?」

京太郎「そうですね、そうしましょうか」

菫「ほっ……」

京太郎(まぁそれはいいんだけど……ぐっ、このいい香りが……俺の理性を揺るがすっ……)

菫「~♪」フフフーン

京太郎(鼻唄歌いながら洗い物してるうううううううううううう! か、かわいい、やばい……)

菫「ほら、早く洗った皿を渡してくれ」

京太郎「は、はい、少々お待ちを」

京太郎「それで、どこか行きたい場所はありますか?」

菫「う、うん、そうだな……」

菫(……別に、このままここで、コーヒーを飲んでいるだけでも、いいのだが……)

菫(せ、せっかく二人きりなのに、それは……い、いや、だからこそこのまま――)

菫「だああああああああああ! なにを考えているんだっ!」ガンガンッ

京太郎「」ビクッ

菫「――あ」

京太郎「お、お気になさらず」

菫「あ、うっ……す、すまないっ……」カァッ

菫(バカ者ぉぉぉぉっ! 落ち着けっ、弘世菫! こんなときこそ大人の余裕を見せなくてどうする!)

京太郎(難しく考えてるみたいだな……)

京太郎(……まぁ、のんびり待つか)

菫「えっと……そうだな……」

菫「じ、実は、見たい映画があるんだ……」

京太郎「そうなんですか? それじゃ、見に行きましょうよ」

菫「いや、だけど京太郎の趣味に合うかわからないから、それで迷っている……」

京太郎「どんな映画ですか?」

菫「……笑うなよ?」

京太郎「少女向けアニメでも笑いません」

菫「実は、こ、ここ……これ、なんだ……」

京太郎「ミレとキョウタ……ですか?」

菫「ち、違うんだ! その、そういう趣味が……とかではなく……」

菫「部員が原作のマンガを持ち込んでいたことがあって、それを没収したことがあったんだが――」

菫「返しそびれたのを、つい読んでしまったら、思いのほか面白くて……」

京太郎「そしたら、あれよあれよと映画化されて、ということですか……」

菫「そうっ、そうなんだ! それで……その、少しだけ興味が……」

京太郎「ドM趣味にですか?」

菫「ち・が・う!!!!!」

京太郎「」スマセン

菫「その……その少女は、非常に真面目で融通の利かない性格なんだが……ある日、出来心で試したことがきっかけで、その趣味に目覚めてしまうんだ」

京太郎「菫さんみたいですね」

菫「私はノーマルだ!」

京太郎「わ、わかってますって……その、真面目で融通が利かないっていうところです」

菫「う……やはり、融通が利かない……か?」

京太郎「たとえば、マンガを持ち込んでいても、一回目は口頭注意、とかでよかったじゃないですか? たとえ規則では、没収と決まっていても」

菫「うぐっ……」

京太郎「きっと自分に厳しいから、他人にも厳しくしてしまうんだと思います。もちろん、それが悪いわけじゃないですけどね」

京太郎「菫さんみたいな人がいないと、規則のない緩みきった社会になって、無法がはびこることにもなりかねませんし」

菫「……そうかな?」

京太郎「だから――融通が利かない、という評価をしてしまいましたけど、俺は菫さんみたいな人、すごく好きですよ」

菫「」

菫「」

菫「な、え……ぁ、う、あうっ……」

京太郎「だから、それを気にしたりする必要は――菫さん?」

菫「わひゃいっっ!」ガタッ

京太郎「だ、大丈夫ですか……」

菫「だだ、大丈夫だ、問題ない!」

京太郎「一番いいのを頼んだほうが……まぁとにかく、真面目なのは菫さんの美徳だと思います」

菫「あ、う、うん……そうか、ありがとう……っと、話が逸れてしまったな」

菫「まぁ、京太郎がそう言ったのも関係している……私は、その少女に自分を重ねてしまっていたんだろう」

菫「そんな少女が、自分の隠れた姿に気づいて、唯一それを見せられる相手に身も心も委ね、解放感と安堵を得る話なんだ」

菫「まぁ、過程には問題あるが……そういう相手を見つける、というシチュエーションには惹かれてしまって……おかしいかな?」

京太郎「――いえ、おかしくありません。女の子なら、恋愛ストーリーに憧れるのは当然ですし」

京太郎「かわいいじゃないですか、とても」

菫「~~~~~~~~~っっ……か、からかう、なっ……バカッ……」

京太郎「……真っ赤ですよ」

菫「そっっ……それは、そうもなる……」

菫「白糸台は、女子校だったし……男子なんて、身近にいなかったんだから……」

京太郎(あれ、共学だったはずじゃ……うっ、頭が……) ※原作が女子校とされたため、過去が改変されています

菫「だ、男子に慣れていないんだ……そもそも……」

菫「その男子に、しかも……その、な、仲がいい相手に……そんなことを言われたら――」

菫「……恥ずかしいに、決まってるだろっ……察しろ、バカァッ……」カァァッ

京太郎「」

京太郎「……あ、えと……その、すいません……」

菫「謝らなくても、いいんだが……」

菫「……その、たまになら……言ってもらえると、嬉しいし……な」フフッ

京太郎(やべえええええええええ! かわいいいいいいいいいいい!)

京太郎「でも、ちょっと意外です……菫さんなら、女子からも人気あったでしょうから」

菫「それは――まぁ、それなりにはあったと、自負しているが……」

菫「綺麗とか、美人とか、かっこいいとか……姉になってくれと言われたこともあったな、そういえば」

京太郎「……それは、お姉さまに、とかでは?」

菫「ああ、そうだったかな……よくわかるな?」

京太郎「いえ、なんとなく……」

京太郎(――って、それ意味違いますよおおおお!)

菫「身長もそこそこあるしな。それにこの目つき、麻雀スタイル、とてもかわいい要素なんてないだろう」

京太郎「菫さんの目は、笑ったときがとてもかわいいですよ。背だって、俺から見れば十分低いですし、かわいいですよ」

菫「なっ――」

京太郎「麻雀だって、強くなろうと努力してそうなったんですから。必死に努力した姿を想像すると、それもかわいく思いますし」

菫「や、やめっ……」

京太郎「さっきも言った、ラブストーリーに憧れるところなんて、まさに女の子です……ほら、かわいい要素の塊ですよ、菫さん」

菫「あうっ、あうぅぅっっっ……」///////////

京太郎「では――かわいいお嬢様。この俺とデートしていただけませんか。まずは映画館など、いかがでしょう」ニコッ

菫「――は、い……」

菫「よ、よろしく……頼む……お、お願い、します……」


~映画館

京太郎「さすがに休みは混んでますね。知ってる人がいるかもしれません」

菫「み、見られる前に入ろうっ……」

京太郎「あ、俺と一緒にいるの見られたら、まずいですか?」

菫「そういうことではっっ――」

菫「その、ほら……こ、こういった映画が好きだと思われると、色々と……」

菫「大会で、あのバカが凄まじい解説をしてしまったから……余計に誤解を招いてしまう」

京太郎「ああ……それなら、俺が誘ったってことにすれば問題なしです」

菫「っっ! いやっ、それはそれで――」

京太郎「?」

菫「……なんでもない」

菫(それはそれで……京太郎に、そういう趣味があって……私が受け入れているように思われるだろっ……)

京太郎「――菫さん」

菫「はいっ!」ビクッ

京太郎「おっと……ほら、列進んでます。止まると迷惑ですよ」キュッ

菫「あ……」ドキッ

京太郎「……手も小さくて、握りやすいです。ほら、またかわいい部分ですよ」

菫「やっ……やめてっ、もう……」カァァァァッ

京太郎「うーん、ちょっと心配ですね」

菫「え、なにがだ?」

京太郎「大学は共学じゃないですか、菫さん」

菫「うん、まぁそうだな。だが麻雀部は女子麻雀部だし、問題ないぞ。そもそも、男子で大学に行ってまで麻雀を続けるやつは少ないからな」

京太郎「いえ、そうじゃなくて……学校内で、男子学生に声かけられて、かわいいとか言われて――」

菫「…………」

京太郎「そんな反応してしまったら、誤解を招いたり……色々、大変じゃないかなと」

菫「……京太郎」

京太郎「はい?」

菫「君はバカか」

京太郎「ひどい暴言を!?」

菫「はぁ……あのな、私がそこらの男にそんなことを言われ、『え~、そうですか~』などと、頬を赤くすると思っているのか?」

京太郎「なんすかいまの(ドンビキ」

菫「た、たとえばだ! いいから聞け! というか答えろ!」カァッ

京太郎「まぁ……正直、面白くはないですけど……いまだって、真っ赤になってるわけですし」

京太郎「ちょっと不安では、あります」

菫「……だからバカだと言ったんだよ。京太郎以外にかわいいと言われたところで、なんの感情も湧かない。相手が軽薄であればあるほど、虫唾が走るだけだ」

京太郎「え……お、俺のは……?」

菫「ふむ……まぁ、正直気に入らない」

京太郎「」

菫「……ふふっ、冗談だ。君は嘘や冗談、お世辞を言う性格じゃないことは、わかっている」

菫「それに私自身、君のまっすぐな性格や、誠実な人柄を好ましく思っている」

菫「そんな相手に褒められれば、さすがにくすぐったい……照れもするさ」

京太郎「菫さん……」

菫「もちろん、誠実な男性はほかにもいるだろうが、君より仲良くなった男はいないんだ」

菫「君の言葉以上に照れることはない、安心しろ」

京太郎「そ、そうですか……」カァッ

菫「……さっきの言葉を返そうか? 赤くなってるぞ、京太郎」

京太郎「うぅ……」

菫「さて――それでは、もう少し安心させてあげようか」

京太郎「ま、まだあるんですか……」

菫「自分以上に、他の男子と仲良くなれば――そう思っていないか?」

京太郎「――――いえ、そんな」

菫「誤魔化すのも下手だな」クスクス

菫「まぁ安心していいさ。なにしろ――」

菫「君は、私が肌を晒し、あられもない姿を見せた唯一の男性だからな」ボソッ

京太郎「――――あ、あれは事故とマッサージでっっ!」

菫「そう、事故とマッサージ……そんな事故をこれ以上起こすつもりはないし、君以外にマッサージさせるつもりもない」

菫「その境界を超える人物は、もう出ないよ。きっとね」

京太郎「…………はい」

菫「安心したかな?」

京太郎「…………おっす」

菫「ならばよし。さ――窓口が開いた、チケットを買おう」

~上映中

京太郎(…………さて、冷静に考えてみると、だ)

京太郎(さっきの菫さん、すごいこと言ってたよな……)

京太郎(俺が相手じゃなかったら、プロポーズと勘違いされてもおかしくない……)

京太郎(……もしかしたら、ほとんどそれと同義だったかも――)

京太郎(――い、いやいや、落ち着けっ……そんなはずが……まぁ、たとえそうだったとしても――)

京太郎(俺みたいな未熟者が、そんなことを考えるのは早い……なにしろ師匠でさえ、まだ結婚してないくらいなんだ)

京太郎(俺がそういうことを考えるのは、一人前になったときか――)

京太郎(まぁ、そういう理性が働かないくらい、夢中になったときだろうな)


菫(……我ながらすごいことを言ってしまった、もっとも――)

菫(この鈍感は、気づいてないだろうな……まぁ、だからこそ言えたわけだが)

菫(……気づいてもらいたいと、本気で思ったなら……私も、それなりのシチュエーションを作る必要がある)キリッ

菫(そ、そのときに備えて……この映画も、集中しなければ……)

菫(……………………下に、ボンデージは着込んだほうがいいのだろうか)ウーム


京太郎「――想像以上でした」

菫「……あ、ああ……私も、その……」カァッ

京太郎「大丈夫ですか?」

菫「ああ、大丈夫……しかし、恋愛のきっかけがあれというのは、大丈夫なものなのか?」

京太郎「……どうでしょうね。正直、俺も恋愛経験豊富なわけじゃないので、ピンときませんけど……」

菫「そ、それなりにはあるのかっ!?」ガタッ

京太郎(えっ、いきなり食いついてきた!?)

菫「…………な、なんでもない」

京太郎「――――」

京太郎「――きっかけよりも、感情だと思います」

菫「京太郎……?」

京太郎「映画みたいな、あんなきっかけでもいいですし。その……マンガなんかでよくある、たまたま裸を見ちゃって、みたいな極端なのでもです」

京太郎「本来見られるべきでない部分を見られて、そこから交流が始まるっていうのも、恋愛の形の一つです」

京太郎「むしろ隠す部分がないっていうのは、余計なてらいもなく、本当の自分を見せられる――という点においては、素敵なんじゃないですか?」

菫「……一理、あるような……いや、あるのか?」

京太郎「はは、どうでしょう……でも、少なくとも俺は、映画の二人みたいな関係はいいと思います」

京太郎「依存に見えるかもしれませんけど、本当の自分、隠したい姿を解放して、それを受け入れられて安堵するという関係は、なかなかありませんし」

京太郎「よほどの信頼と愛情がないと、できないことじゃないですかね」

菫「信頼と愛情か……確かに、そうかもしれない」

菫「私もそういう部分に魅せられ、原作を読み耽ってしまったのかもしれないな」

京太郎「菫さんにも、隠しておきたい姿があるんですね」

菫「そっ、そういうことでは――」

菫「………………」

菫「いや……そ、そういうこと、かもしれない……うん……」

京太郎「えっ」

菫「ち、違う! 別に、その……ひ、ひぎゃっ、被虐趣味だとかそういうことではっっ!」

京太郎「菫さん声デカいです!」

菫「――あっ!」

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最終更新:2026年01月18日 23:41