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~サンディのマンション

京太郎「」

恒子「これはすっごいねー」

京太郎「なんだこのマンション……いくら稼いでたら、こんな場所に住めるんだ……」

恒子「トッププロとかも、こういうとこ住んでるけどねー。あ、すこやんは別ね」

恒子「そうそう、知ってる? すこやんっていい年してるのに、実家住まいでさー。家ではいっつもジャージなの」

京太郎「地元チーム所属ですし、一人暮らしよりは経済的じゃないですか?」

恒子「まぁそうだけど……すこやん、いくら稼いでるか知ってる?」

京太郎「……聞かないでおきます」

恒子「まぁともかく、そういう人たちと同じようなマンションだねー、これ」

京太郎「て、手土産買ってくればよかった……」

恒子「あれ? でも持ってるじゃん、それ」

京太郎「これは店のじゃなくて、俺が作ったやつなんで……」

恒子「すっご! 派遣執事のお菓子って、業界じゃすっごいレア物なんだよ!」

京太郎「そんな大したものじゃ……ちょっと待ってください、いまのはどういう――」

恒子「よーし! それじゃさっそく、それも食べたいし、上がらせてもらおっか♪」

京太郎「質問に答えろぉーっっ!」

京太郎「みさきさんから伝わってたのか……」

恒子「あとはプロの人たちが、現場で自慢してるからねー。そのせいで、一回くらい食べてみたいって、色んな人が」

京太郎「俺に教えてくれてる人たちに、申し訳ないな……俺のなんて、まだまだなのに」

恒子「一高校生が作れるってとこが、いいのかもねー。あ、ちなみに一番自慢してるのは、なぜか宮永プロだから」

京太郎「照さああああああああああああん!」

サンディ『インターホン取ってすぐの言葉がテルなの……?』

京太郎「あっ……す、すいません! おはようございます、監督」

サンディ『待ってたわよ、キョウタロウ。さ、入って入って』

京太郎「ありがとうございます。お邪魔します、監督」

京太郎「それと――なんかいきなり、変なことになっちゃって、すみません」

サンディ『ううん、まさか合法的に呼べるなんて思わなかったから。むしろありがたいわ』

京太郎「……えっ」

サンディ『それよりも、監督はないでしょう? いまは教師と教え子じゃないんだもの、名前で呼んでよ』

京太郎「……アレクサンドラ、さん?」

サンディ『もうちょっとフランクに』

京太郎「……まさか」

サンディ『はやく、はやく♪』

京太郎「……お邪魔します、サンディ」

サンディ『ええ、どうぞ、どうぞ。あ、アナウンサーさんも、どうぞ』

恒子「……えっ、あ、はい……ども……えっ」

京太郎「……いまのとこは、放送しないでください」

恒子「えー……いや、まぁ……う、うまくカットして、なんとか……うん……」

京太郎「なんかすいません……じゃ、行きましょうか」

~サンディの部屋

京太郎「……ひとまず、インターホンを」ピンポーン

京太郎「あ、福与アナ。お先にどうぞ、レディファーストです」

恒子「お、ごめんね~。それじゃ、おっさき――」

サンディ「いらっしゃい、キョウタロウ!」ガチャッ ギュッ

恒子「ひゃうっ!?」

サンディ「…………やるわね、キョウタロウ」

京太郎「危ないところでした……あの、カメラありますんで、そういうのはさすがに」

サンディ「別にいいのに……」

京太郎「ハオみたいなこと言わないでくださいよ……」

サンディ「そうだ、ハオ! なんでハオが!」

京太郎「いえ、出迎えに来てくれたんですよ」

サンディ「くっっ……だからあの子たち、私をあんなに引き留めたのね……っ」

京太郎(なにがあったんだ……)

恒子「あ、あのー、そろそろ放してもらっていいですかね……?」

サンディ「おっと、失礼……ようこそ、福与アナ。何度かお会いしたこともありましたか」

恒子「え、ええ……その、そういうときとは、雰囲気が違うような……」

サンディ「オンオフはしっかり切り替えるのが、いい女の条件だと思いません?」

恒子「そ、そうですね」ヒキッ

京太郎「あ、そうだ……監督、これ、手作りで申し訳ありませんが、お茶菓子にどうぞ」スッ

サンディ「……ありがと、キョウタロウ。さ、上がってちょうだい」

京太郎「……中もハンパなく広いですね」

サンディ「二人でも三人でも暮らせるわよ」

京太郎「ルームシェアですかー」

サンディ「もうっ、わかってるくせに……」スリスリ

京太郎「あ、お茶淹れますね」

恒子「……際どい攻防戦、ややヴィンドハイム選手が押しているようですが、須賀選手、負けずに華麗な回避」

京太郎「実況しないでください」

京太郎「――というか、監督……ほんと、これ放送されるんですよ?」

サンディ「……私は構わないわ、本当に。でも、キョウタロウはいやなの……?」ウルッ

京太郎「俺がなにか言われる程度なら気にしません。でも、このことで監督の仕事に影響が出たり、監督が周囲になにか言われるのは、我慢なりません」

サンディ「……そうね」

サンディ「ま、それはそうだわ……キョウタロウに責任取らせるのも、汚いやり方だものね」

サンディ「オーケー、控えます。福与アナ、さっきまでのはここで、消去していただける?」

恒子「……個人的な記録にしとくのは、だめですかね?」

サンディ「なら、私のほうでデータを預かっておくわ」ニッコリ

京太郎「消してください!」

恒子「はいはーい」ピッ

京太郎「確認しますね」

恒子「なぜ!?」

京太郎「なんか健夜さんが、データ消させるために取っ組み合いしたって言ったの、思いだしまして」

京太郎「疑ってかかるべきかな、と」

恒子「うぬぬぬ、すこやんめぇ……」

サンディ「それで――今日の目的は、京太郎のプライベート撮影? インタビュー?」

恒子「どっちもですー。でも撮影メインなんで、勉強風景でも見せてもらえたら」

サンディ「そうなの……キョウタロウ、どこかわからないとこ、ある?」

京太郎「いえ、特には」

サンディ「そういえば、キョウタロウの成績って気にしたことなかったわね……ちょっとテストしてみましょうか」

京太郎「いいですけど、問題はどうします?」

サンディ「テスト用のがあるわよ、作り立てのやつ」

京太郎「俺がみんなに教えるとか、考えないんですか?」

サンディ「教えちゃダメよ?」

サンディ「――って言ったら、教えないでしょう? 信用してるもの」

京太郎「……了解です。では、やりましょうか」

恒子「さて、唐突に始まったテスト勝負! 勝利の行方はどちらに――あ、この紅茶とシュープディングは、京ちゃん作です。ちょっといただいてみましょう」

恒子「んひゅっっ!」ビクンッ

恒子「あぅっ、は……な、なにこれっ……すんごいおいひぃ……」

京太郎「すっごい撮影されてますけど、大丈夫ですか?」

恒子「な、生じゃないし……」

京太郎(なんかエロいこと言ってる……)

サンディ「ライブのことだからね」ニコッ

京太郎「」アッハイ

恒子「こ、これは色んな人が自慢するわけだわ……」

京太郎「出がけに急いで作ったんで、ちょっと雑ですいません……」

恒子(これで雑!?)

サンディ「そんなことないわ、とってもおいしいわよ」

京太郎「お口にあってよかったです。監督は特に、舌が肥えてますから」

サンディ「キョウタロウの作ってくれたものは、とてもおいしかったわ……できれば、本格的な料理も食べてみたいわね」

京太郎「そういえば、飲茶やオードブル的な軽食は、おだししたことがありましたね」

サンディ「あとはお菓子がメインだったわね」

恒子「楽しそうな部活ですねー」

京太郎「休憩でしっかりオフにできるよう、差し入れは大事ですからね」

サンディ「本格的に、そっちの道には入らないの?」

京太郎「どうでしょうね……いくつかお誘いをいただいていますし、進路の一つとして、熟慮したいですけど」

サンディ「……旦那様がシェフ、あるいはパティシエ……ありよね……すごくありだわ……」

恒子「なにやら野望がもれていますが……しかしテスト勝負はどうなったのか!?」

京太郎「あ、そうでした……監督、テストを」

サンディ「そうね――それじゃ、勝負しましょうか」

京太郎「点数勝負ですか? 満点は勘弁してくださいよ、監督の問題、初めてなんですから」

サンディ「それじゃ……95点以上なら、京太郎の勝ちね。それ未満なら、私の勝ち」

京太郎「負けたらどうするんです?」

サンディ「京太郎が負けたら、お昼をご馳走してもらえるかしら。京太郎が勝ったら、ディナーをご馳走してあげる」

京太郎「監督の手作りですか?」

サンディ「それでもいいけど、京太郎の勉強になるなら、いいお店でもいいかしらね」

京太郎「なら――」

京太郎「――取っていただいたホテルにも、おいしそうなレストラン、入ってましたよね」

サンディ「……ホテルのディナー? ふふ、だったらそれにしてあげる。頑張りなさい?」

京太郎「了解です」

恒子「……あのー、ちなみにそれ、私は――」

サンディ「デートの邪魔、しないわよね?」

恒子「で、できれば撮影を……」

サンディ「私は構わないけど……」

京太郎「できれば午後は、自由に動きたいんですけど……」

恒子「じゃー私も賭け! そのテストで――」

京太郎「別の賭け提示してくださいよ。それじゃ、まずはテストからです」

サンディ「まだめくっちゃだめよ……時計のアラームで、開始ね」

京太郎「はい、お願いします――」

京太郎「……あ、ここミスって――」

ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ

サンディ「はい、終了ね。それじゃ、採点しましょうか」

京太郎「ああああああ……」

サンディ「94か……惜しかったわね」

京太郎「あああああああああああああ!」

サンディ「残念、ディナーはまた今度ね……では、お昼はお願い♪」

京太郎「はぁ……ま、仕方ないですね。それに、監督にご馳走できるなら、どっちにしても得でした」

サンディ「私も、どっちにしても得だったわね」

京太郎「ホテルのディナー、高くつきますよ?」

サンディ「二人きりのディナーなら、安いものよ」

恒子「……などと、二人の世界に入り込んでいます。私、非常にいたたまれなくなっています、はい」

京太郎(そうは見えん……)

恒子「ところで話は変わりますが、先ほど拝見したところ、こちらのキッチン――あまり使われている形跡がございませでした」

サンディ「ちょ、ちょっと!?」

恒子「さて、材料の有無等も思案のしどころですが――須賀選手、いかがでしょう」

京太郎「インタビュー、取材っていうより実況ですね……まぁ、あまり使われないなっていうのは、さっきお茶お淹れしたときに、気づいてましたよ」

サンディ「」

京太郎「まぁでも――あんまり、であって少しは使われているようです。念のため、包丁は研がせていただきました」

恒子「いつの間に!?」

サンディ「し――仕方ないでしょ! だって、その……忙しいし、家で食事することもあんまりないし……」

京太郎「冷蔵庫には牛乳、バターなどの乳製品とジャム、あとはパン、塩や砂糖があるくらいでしょうか。それ以外はお酒ですかね、おそらく」

サンディ「見たの!?」

京太郎「いえ、勘です」

サンディ「」

恒子「おーっと! 当たっているようだぁーっ!」

京太郎「あ、一応ここはオフレコで」

恒子「まぁ流れ次第で♪」

サンディ「やめて! お願いだから!」

京太郎「まぁ、さすがにその材料だと、フレンチトーストくらいしか作れませんし……せっかくなので、買い物行きましょうか」

恒子「お、いいですねー。では買い物実況に突入ということで!」

サンディ「あぁ……なんだか、いらない恥をかかされたわ……」

京太郎「お忙しいなら仕方ないですよ。ところで、ビタミン類はサプリメントでは?」

サンディ「……イグザクトリー」

京太郎「栄養だけなら、問題ないと思いますが……せっかくなので、今日は心を込めて、色んな料理をおだししますね」

サンディ「それはいいんだけど……その、呆れたでしょう?」

京太郎「?」

サンディ「だって……いい年した女が、こんな……」

京太郎「まず、監督の年齢を知りませんけど……人には人の、生活リズムやスタイルがあります。それを否定する気も笑う気もありません」

京太郎「なにより――俺は監督のことを尊敬していますから。それを支えたいと思いこそすれ、呆れたりなんてできません。絶対に」

サンディ「キョウタロウ……」

京太郎「その泣きそうな顔も、魅力的ですけど……笑顔のほうが、見ていたいですから」

京太郎「俺の料理で、笑顔に変えてみせます」

サンディ「…………っ!」キュン

京太郎「さぁ――ショウタイムだ!」

恒子「その前に買い物ですけどね」

京太郎「仰る通りで」

恒子「あと、いまのすごいの撮影してましたよ?」

京太郎「すごいの?」

恒子「めっちゃ口説いてたやつ」

京太郎(……慰めただけのつもりなんだけど、口説いてたか……?)

サンディ「福与アナ」

恒子「な、なんでしょう」ビクッ

サンディ「焼いて! コピーして! 永久保存したいから!」

恒子「わ、わかりましたっ」

京太郎(……まぁ、監督も問題ないみたいだし、あれは放送されてもいいな)

~やや離れたスーパーマーケット

京太郎「さて、なににしようか……材料は使い切れる程度にしておかないと」

サンディ「……ずっと住んでくれるなら、いっぱい買ってもいいのよ?」

京太郎「明後日には帰りますからね、長野に」

サンディ「寂しい……」

京太郎「ま、明後日の夜まではいますし、なにかあれば呼んでください」

サンディ「寝つけないときに、呼んでも?」チラッ

京太郎「寝酒用のおつまみですね。保存の利きそうなもの、作っておきますよ」

サンディ「もうっ、そういうことじゃないのに」イチャイチャ

恒子「……あの、先月の京ちゃんはこっちにいたんですけど、そのときも……こんな?」ドンビキ

京太郎「まさか、教師と教え子ですよ?」

サンディ「公私のけじめはつけてます」

京太郎「ではなく――まぁ、普通の教師と生徒でした。今日のは、友人らしくというか……」

京太郎「非常にありがたいことですが、プロの人たちにも許していただいてる、そんな接し方です」

恒子「」

恒子(……え、すこやんとか三尋木プロとかはやりんとかも!?)

恒子(ま、マジすか、この高校生……いや、そりゃかっこいいし、頭いいし、お菓子作り上手だったけど!)チラッ

京太郎「?」

恒子(……しかもちょっとかわいいし)

京太郎「福与アナ?」

恒子「な、なんでもないんで! おとなしくしてるんで、どぞ、フツーに、お願いします」

京太郎「はぁ……あ、福与アナはなにかダメな食材、あります?」

恒子「へっ、わ、私?」

京太郎「そりゃ、一緒に食べていただくんですし」

サンディ「えー」

恒子「その反応はそれで……いや、じゃなくてね? その、午後は付きまとわないでー、的なこと言ってたし」

京太郎「そこまで露骨に言ったつもりはありませんよ。ここまで付き合わせて、あと料理するところまでいらっしゃるなら、召し上がっていただかないわけにも」

恒子「……ありがとね、気ぃ遣ってもらっちゃって」

京太郎「とんでもありません。それで、苦手なものは?」

恒子「大丈夫、食べられるだけで大満足です!」

京太郎「健康的でいいですね」

恒子「っ……あ、えと……ありがと……」

京太郎「はい」

サンディ「私も! なんでも食べるからね!」

京太郎「はしたないです、監督」

サンディ「」

京太郎「冗談ですって!」

サンディ「キョウタロウの、意地悪……」グスッ

京太郎「さて――それじゃ、和食と洋食はどっちがいいですか?」

サンディ「洋食!」

恒子「和食!」

サンディ「…………」
恒子「…………」

京太郎「じゃあどっちも作りましょう」

二人「!?」

京太郎「サン――監督は洋食で、福与アナは和食でいいですよね?」

サンディ「い、いやー、その……二種類は、さすがに手間、よね?」

恒子「そ、そう思いますよー。ど、どっちかに統一でも、いいから……うん」

京太郎「まぁ一種類でも二種類でも同じですから」

恒子(そこは一人前でも二人前でも、だから!)

サンディ(時々京太郎の思考力に圧倒される……そこも素敵なんだけど)

京太郎(まぁ……どっちでもいいなら、揃えてもいいかな?)

京太郎「では――監督が勝負で勝ったわけですから、洋食にしますね」

サンディ「ありがとう……」

京太郎「いえいえ。そうだな……女性向けならあっさり、でもせっかくお作りするなら、ボリュームもそこそこにしたい……」

京太郎「胸肉をピカタに、ならオードブルは魚……鰹のカルパッチョとかか。キャベツと人参のポタージュ、温野菜も揃えて――」

サンディ「すっごい熟慮してる……凝ったものでなくてもいいのよ? オムレツとか、簡単なのでも」

京太郎「オムレツって実は、案外難しいんですよ。料理人が最初に練習する料理ですし」

サンディ「そうなんだ……」

京太郎「……好きなんですか?」

サンディ「まぁ、少し……子供っぽい?」

京太郎「かわいいですよ?」

サンディ「……もうっ、からかわないのっ」

京太郎「本当にそう思ったんですけど……それじゃメニュー変更して、オムレツをメインに考えていきます」

サンディ「……ねえ、キョウタロウ」

京太郎「はい?」

サンディ「その……本当に、か……かわ……」

京太郎「かわいいと思いますよ」

サンディ「……ありがと」

京太郎「さて――それじゃ、始めるか」

サンディ「あ、なにか手伝うこと――」

京太郎「食器だけ、いくつかご用意いただけたら」

サンディ「なにがいる?」

京太郎「メイン用の皿、サラダ用のボウル、スープの皿――あとはナイフとフォーク、スプーンがあれば」

サンディ「……えっと、同じものは二枚ずつしかないけど、数があればいいかしら」

京太郎「ええ、大丈夫です」

恒子「手馴れた様子の須賀選手。ヴィンドハイム選手は実に初々しい」

京太郎「……あの」

恒子「あ、私のことは気にしないでー」

京太郎「気になりますって……っていうか、これどういう番組になるんです?」

恒子「まー、番組っていうかドキュメンタリーっていうか。局のサイトで流すんだよー」

京太郎「料理番組ですか」

恒子「わかりやすくやってくれたら、それもできるねー。あ、そういえば前に、すこやんはやりんと、料理番組やってたっけ?」

サンディ「そうなの?」

京太郎「ローカル放送でしたけどね」

恒子「オッケー! それじゃ、そのつもりで説明しながら、料理よろしく!」

京太郎「インタビュー完全にどっか行ってますね」

恒子「じゃあインタビューもするから! 答えつつ料理解説して! それじゃ、アクション!」

京太郎(やりづらい……)

~昼食作り

京太郎「どうぞ、鶏ミンチと野菜のオムレツです」

京太郎「それにスープと、こちらは前菜に予定していましたカルパッチョです」

京太郎「ご飯よりはパンかと思い、ご用意しております。どうぞ」

恒子「」

サンディ「素敵……」ポー

京太郎「では、冷める前にいただきましょうか」

恒子「いただきまーす!」

サンディ「いただきます」

恒子「うまっっ!」

京太郎「ありがとうございます」

サンディ「やっぱりおいしい……こんなご飯なら、毎日食べたいわね」

京太郎「そうできたらいいんですが」

サンディ「いつでも大丈夫よ! 歓迎だから!」ガタッ

京太郎「あの、食事中に立つのは……」

サンディ「失礼……立食パーティのクセが」

恒子(それは関係なくない?)

京太郎「そそっかしいですね、監督は」

サンディ「んぅ……意地悪」

京太郎「でも、普段の監督は真面目で大人でしたから。そういう一面は、かわいくて新鮮ですね」

サンディ「……そう?」

京太郎「ええ、もちろん」

恒子(……これは放送したら血の雨が降りそう……ありだなっ!)ヤッタゼ

京太郎「あ――そうだ、午後の予定なんですけど」

サンディ「どうするの? ここで休んでいく? それともホテルに戻る? どっちでもいいわよ」

恒子(さて、徐々にいかがわしくなって参りました)ワクワク

京太郎「でもいいんですけどね。俺としては――」

京太郎「午前中に一緒に勉強できなかったんで、麻雀部のメンバーと出かけようかと」

サンディ「」

京太郎「東京には結構いましたけど、あんまり真面目に観光とかしたことなかったので」

恒子「おー、おのぼりさんみたいだねー」

京太郎「いや、まぁ……おのぼりさんですし、一応」

京太郎「ってことなんで、撮影はここまでってことで」

恒子「えーっ」

京太郎「いや、ほかの子もいるんでさすがに……カメラ慣れてない子が、楽しめないかもしれませんし」

サンディ「私はっ! 私も緊張して、あまりキョウタロウに甘えられなかったのに……」

恒子(十分だったと思いますけど)

京太郎「なら、監督も一緒に回りません?」

サンディ「それができればねぇ……午後から会議があるの。仕事に生きる女ってどう?」

京太郎「素敵だと思います。かっこいいですよ」

サンディ「そ? ありがと……ということだから、午後からは一緒にいられないわ」

京太郎「残念です」

サンディ「私もよ……でも、夜は空いてるからね。ホテルの部屋、間違えないように」

京太郎「はぁ……?」

サンディ「おっと……それじゃ、私はここまでね。福与アナも、お疲れさま」

恒子「んー、残念だけど……まぁ編集もしたいし、このくらいでいっか」

恒子「ご協力、ありがとうございました!」ペッコリン

京太郎「いえ、思ってたよりも楽しかったですよ。福与アナが気取ってないからですかね」

恒子「あはー、よく言われます」

サンディ「それは褒められてるのかしら……まぁいいわ」

恒子「――あ、そうそう。肝心なこと忘れてた」

京太郎「?」

恒子「どこまで放送していい?」

京太郎「えっ」

京太郎「んー……まぁ、撮った分は構いませんよ」

恒子「マジでっ!?」

サンディ「リアリィッ!?」

京太郎「え、あ、はい……まぁ、そんなにおかしいとこもなかったと思いますし、いいですよね?」

恒子「えっ……あ、ああ、うん! そりゃもう、バッチリだから! 任せといてねっ!」

サンディ「あぁ……なんだか、嬉しいんだけど……ちょっと、恥ずかしいかもしれないわ……」

サンディ「でも、つまりキョウタロウもそういうつもりってことで、いいのよねっ?」

京太郎「え、まぁ……放送されてもいいとは思います」

サンディ「やったぜ。」



~午後

京太郎「さて、待ち合わせは駅前ってことだったっけ……ん、メール?」

京太郎「ホテル前? まぁいいけど……なんでだろ」

京太郎「ということでやってきました、ホテルの前」

京太郎「俺のほうが早かったか……ま、少し待ってれば来るだろ」

京太郎「一番乗りは誰か、予想してみるかな」

ハオ「京太郎! 会いたかった……」ソッ

京太郎「ハオ! いや、朝も会っただろ?」

ハオ「朝からいままで、待ち遠しかったのです……」

京太郎「あー……悪かったな」

ハオ「なにかされませんでしたか、監督に!」

京太郎「な、なにかって……」

京太郎「テストしただけだって。まぁ点数はあんまりだったけどな」

ハオ「なんだ……普通に勉強してたんですね」

京太郎「カメラも回ってるし、当然だろ」

ハオ「そういえば……福与アナはいらっしゃらないんですか?」

京太郎「撮った映像の編集とかがあるって、帰ってったよ」

京太郎「それに、午後はみんなで回るんだから、気を遣うことはないほうがいいし」

ハオ「そうですか……では、それを見るのを楽しみにしておきましょう」

ネリー「キョウタローーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!」

京太郎「うぉっと! ネリー、でかくなったな!」

ネリー「ほんとにっ!? へへー、頑張ったからね、マッサージ!」

京太郎「……いや、そうじゃなく……っていうか、冗談……」

明華「京太郎、お久しぶりです」

京太郎「明華さん、お元気そうで」

明華「そんなわけないでしょう? 京太郎がいなくて、胸がしぼむところでした」

京太郎「なんてもったいないことを!」ガタッ

明華「では、これからはずっといてくれます?」ジー

京太郎「はは……いじめないでくださいよ」

明華「仕方ありませんね。ひとまずは、今日のお出かけで許してあげます」

京太郎「ありがとうございます」

ハオ「みんなも集まりました。そろそろ行きましょうか」

京太郎「だな――で、みんなは東京って詳しいのか?」

ネリー「さぁ」

明華「私もあまり出掛けませんから」

ハオ「普段は麻雀ばかりですし……どこかへ行くときは、智葉が連れて行ってくれていましたから」

京太郎「そっか……じゃ、智葉さん呼んで――」

ハオ「いけません」

ネリー「だめ」

明華「許されません」

京太郎「」

ハオ「ひとまず――どこに行くか、案をだしてみませんか?」

京太郎「東京か……スカイタワー、東京タワー、雷門、お台場……」

ネリー「観光以外でもいいよ」

明華「いいですね、お買い物しましょう。私たちに似合う服、選んでいただきたいです」

京太郎「そりゃメイド服ですよ。男は執事服、女性はメイド服が一番です」

ネリー「ビョーキかな?」

明華「京太郎のためなら着てもかまいませんけど」

ハオ「私もです」

ネリー「!? ね、ネリーもだから!」

京太郎「じゃ、メイド服はまた買いに行くとして――どこに行くかな」

「だめだこの人たち……」
「早くなんとかしないと……」
「京太郎先輩のためならメイド服着てもいいけどね」
「着たところで家事能力はコールド負けという」
「やめーや」


京太郎「……あ、そういえば雷門は行ったことがあったな」

ハオ「そうなんですか?」

明華「こう言ってはなんですけれど、よく時間がありましたね」

ネリー「いつ行ったの?」

京太郎「大会中だな。個人戦で穏乃が負けたとき、慰労会みたいなのの前に、一緒にな」

ネリー「シズノ……」

ハオ「阿知賀女子の大将でしたね」

明華「デートですか」

京太郎「いや、じゃなくて……憧もいたし」

ハオ「Wデートですか!」

京太郎「意味違うだろ、それ」

京太郎「うーん、まぁなんにしても……大勢でうろつくのもなぁ」

明華「そうですね。交通費もかかりますし……」

京太郎「ま、せっかくだしスカイツリーでも行くか。そこでお茶しながら、色々話そう。どうだ?」

ネリー「ネリーはどこでもいいよ!」

ハオ「私も異存はありません」

明華「お任せします、京太郎」

京太郎「はい……すいません、なんかいつもと変わり映えしなくて」

明華「いえ。京太郎と出かけるのは初めてですから、それだけでも嬉しいくらいです」

京太郎「明華さん……」

明華「京太郎……」

明華「………………」スッ

ハオ「そこまで」

ネリー「目閉じないの!」

明華「失礼、そういう流れかと」

京太郎「ま、まぁとにかく行こうか」

明華「清澄はどうでしたか? 困ったことはありませんか?」

京太郎「ありませんよ。それより、そっちはどうでした?」

ハオ「すごかったですよ」

京太郎「なにが?」

ネリー「キョウタロー不足で。恐慌状態だよ」

京太郎「なんなのそれは……」

ハオ「まず監督が抜け殻でした」

ネリー「そして一年が必死に穴を埋めようと――」

京太郎「おお」

明華「調理室を爆破しました」

京太郎「!?」

「違います!」
「料理をしようとしただけで……」

京太郎「……ま、またレシピとか手順ノート置いとくから」

「でも明華先輩もひどかったです! 髪のキューティクルがボロボロになってました!」

明華「ちょっ……」

京太郎「……三日で?」

「ハオ先輩も、髪の毛結ばなくなってて……」

京太郎「それはちょっと見てみたい」

ハオ「そうですか?」スルッ

「ネリー先輩は食欲がなくなってました」

京太郎「それは嘘だな」

ネリー「ホントだよ! キョウタローのバカ!」

京太郎「大変だったんだな、みんな……」

明華「戻ってくる気になりましたか?」

京太郎「仮になっても、できないですかあら……」

京太郎「けど、よその学校はそこまでじゃないと思いますし……それだけ俺を気にしてくれてたと思うと、嬉しいですね」

ハオ「京太郎のいる生活に、それだけ馴染んでいたんですよ」

ネリー「毎日寂しいんよぉ……」

京太郎「……悪いな。なるべく連絡するから」

ネリー「絶対だよ?」

京太郎「ああ」ポンポン

ネリー「えへへぇ」

ハオ「……くっ」

明華「あざといですね……」

~スカイツリー

京太郎「た、たけぇ……」

明華「素敵な眺めですね……」

京太郎「はい」

明華「できれば二人で来たかったですね……夜景なんかも、綺麗なんじゃないでしょうか」

京太郎「二人は少し恥ずかしいですけど」

明華「そんなことありませんよ。私は京太郎と二人なら、どこへでも……」ソッ

京太郎「っ……先輩っ……」

ピピッ ピピッ ピピッ

ハオ「はい、時間です」

ネリー「交代!」

明華「10分交代は短いですよ!」

ハオ「決まったことです。なにしろ部員が多いですから」

ネリー「次はネリーだよ♪」

京太郎「……なぁ、みんな一緒じゃだめなのか?」

全員『ダメ』

京太郎「」ハイ

ハオ「――とはいえ、それではさすがにあんまりかと思いますので」

明華「私に時間を!?」

ハオ「ではなく――最後に一人選んで、喫茶店の予約に行ってきてください」

京太郎「……あれ? ツリーを回るんじゃなくて?」

ネリー「両方はずるい!」

明華「なるほど……ツリーを観光するか、皆が回っているうちに喫茶店の予約待ちをしておくか、ですか……」

ハオ「釣り合いは取れていると思いますが」

京太郎「うーん……まぁ、そいうことなら、みんなで見てくればいいよ。予約待ちは俺がしておくから」

明華「あら、それなら私がお付き合いしますよ」

ハオ「いえ、ここは同学年の私が」

ネリー「同じクラスのネリーが」

「後輩の私が!」
「一番弟子の私が!」
「一番弟子は私だから」
「私は前世から後輩なので!」

京太郎「釣り合い取れてないじゃないか(憤慨)」

ハオ「まぁ選ぶのは京太郎ですし」

京太郎「」

京太郎「それじゃ――クラスメートの縁だ、ネリー、一緒に待つか」

ネリー「!!!!」

ハオ「」

明華「」

「せ、先輩方の顔から生気が……」
「い、行きましょう、ツリー見て回りましょう!」
「しっかり! 傷は浅いです!」


京太郎「……大丈夫か?」

ネリー「気にしてもしょうがないよ」ベター

京太郎「で……なんだっけ、食欲がなくなってたって?」

ネリー「うん……キョウタローと一緒に食べないと、おいしくなくて……」

京太郎「そう言ってくれるのは嬉しいけど、しっかり食べないとな」

ネリー「わかってる……もったいないもんね、お金かかってるし」

京太郎「それもそうだけど、寮のご飯は寮母さんが作ってくれてるんだろ?」

ネリー「そうだよ」

京太郎「なら、作ってもらったご飯はしっかり食べないと、その人たちの気持ちが報われないよ」

京太郎「ネリーたちにしっかり食べてもらって、大きくなってもらいたい、健康になってもらいたい」

京太郎「その上で、おいしいって言ってもらえたら最高だからな」

ネリー「そっかぁ……」

京太郎「いただきますって食べて、ごちそうさまって食べ終わって、おいしかったですって言ってあげれば、明日から頑張ろうってまた思えるんだよ」

ネリー「キョウタローもそう?」

京太郎「ああ。おいしそうに食べてもらって、おいしいって言ってもらえると、本当に嬉しいもんだ」

ネリー「……ん、わかった。キョウタローがいなくても、しっかり食べるね」

京太郎「おう、そうしてくれ」

ネリー「それでバインバインになるね」

京太郎「お、おう……頑張ってくれ」

ネリー「むー」ジトー

京太郎「な、なんだ?」

ネリー「本気にしてない!」

京太郎「い、いや、そんなことは……まぁ、その……」

京太郎「そのままのネリーが好きだよ、俺は」

ネリー「」

京太郎「……どうした?」

ネリー「す……すすす、すっ……えっ、えぇっ!?」カァッ

京太郎「あー……まぁ、その……そこまで大袈裟な話では――」

ネリー「ど、どういうこと!? ちっちゃいほうが好きなの!? 監督ストライクなの!?」

京太郎「どこで覚えたんだよ……いや、そういうんじゃなくて……」

ネリー「おっきくないほうがいいの!? どうしよっ、いっぱい特訓したから、そろそろおっきくなるのに!」

京太郎(たぶんならないと思う――じゃなくて!)

京太郎「なぁ、ネリー……そりゃな、俺は……大きいのが好きだけどさ」

京太郎(ああ、女の子になに言ってんだ、俺は……)

京太郎「その、無理にそうならなくても……ネリーはいまのままで、十分可愛いと思ってるしさ」

ネリー「だけど……」

京太郎「もちろん嬉しいんだけどな。ただ、大きくないから嫌いってこともなかったし、ネリーのためにしてあげたいことは、いくらでもあるし」

京太郎「それがすべてじゃないんだ……特別なことをすることもなく、ネリーはそのままでいてくれれば、俺にとっては十分なんだよ」

ネリー「むぅ~ん……よくわかんない」

京太郎「うーん……たとえば俺が、修業のやりすぎでおかしくなったら嫌だろ?」

ネリー「どんな修業なのさ」

京太郎「そこは冷静なのかよ! まぁ、例えばだよ……嫌だろ?」

ネリー「イヤ!」

京太郎「そういう風にさ、変わるだけがすべてってことじゃないんだよ……俺はいまのネリーが隣にいて、普通に話せてるっていう状況だけで、十分幸せだ」

ネリー「……幸せ?」

京太郎「ああ」

ネリー「……そっか。えへへ……」コテン

ネリー「なら……それでも、いいかな」

ネリー「あ、だけど……おっきくなってもいいよね?」

京太郎「なるにこしたことはない」キリッ

ネリー「………………」

京太郎「じょ、冗談だから」

ネリー「真顔だったよ! もうっ……だけど――」

ネリー「ありがと、キョウタロー」エヘー



~スカイツリー内、カフェ

京太郎「さすがメイン観光地……カフェ一つにしても、内装が上品だ」

ネリー「お金すごいかかってそう……」

ハオ「かかってるでしょうね」

明華「まぁ今日のところは忘れましょう……さ、京太郎座って」

京太郎「あ、はい」

明華「では隣に」

ハオ「反対側は私が」

ネリー「ずるい!」

明華「だって、さっきは一緒だったでしょう?」

ネリー「その分、ツリー内は見てないもん!」

ハオ「では存分に見てきていいですよ」

ネリー「それにさっきのは京太郎に選んでもらったんだもん! ヤクトクだよ!」

明華「むむ、ネリーが難しい言葉を……」

京太郎「……それじゃ、えーっと」

ハオ「また選ぶのですか?」

京太郎「一人は膝の上なんて、どうだろう?」

京太郎(――なんて冗談で、場を和ませて、と)

ハオ「名案ですね」

明華「ではジャンケンにしましょう、次は」

ネリー「勝っても負けても恨みっこなしだね!」

京太郎「」

「どうしてこうなった、って顔だね」
「私たちからすれば、どうしてそう言ったって感じだよ」
「学習しないなぁ、先輩」
「でもそこがかわいい」
「そんな先輩を見てるだけで満足……ああ、健気な私たち」

京太郎(一年も色々こなれてきてるな……)

明華「最初はグー!」

ハオ「ジャンケン!」

ネリー「ポン!」

明華「ば、バカな……」

ネリー「あ、ありえないよ……」

ハオ「それがあり得るかも……やりました、京太郎♪」ガバァッ

京太郎「うぉうっっ!?」

ハオ「優しくしてくださいね」

京太郎「いや、あの……じょうだ――」

ハオ「ん?」ジー

京太郎「……て、店員に注意されないかなー、と」

ハオ「京太郎が言いだしたことなんですから、守ってくださいね?」

京太郎「はい……」

京太郎(冗談とは言えないな……なら!)

京太郎(ハオを守り通す……俺の膝の上で!)

店員「……あの、お客様……」

京太郎「お構いなく」

店員「いえ、あの……他のお客様の目ざわ――いえ、ご迷惑に……」

京太郎「騒いでいるわけではありません。ただ彼女をひと時も離したくないんです」

ハオ「きゃっ♪」

店員「」ギリギリギリギリ

明華「」ギリギリギリギリ

ネリー「」ギリギリギリギリ

「先輩方が混じってる……」
「あの店員さん、心からリア充を憎んだ目をしてるね」

京太郎「これ以上の行為にはなりません。せいぜいが、アーンをするくらいです」

京太郎「言ってしまえば、子供を抱えた親と同じ行動――と、思ってくださって大丈夫です」

ハオ「中身の愛情は、異なる愛情ですけどね……」スリスリ

京太郎(煽らないで!)

京太郎「ということで――オーダーをお願いします」

店員「……か、かしこまり、ました」ビキビキッ

京太郎(白眼みたいになってる……)

ハオ「京太郎、京太郎のケーキもおいしそうですね」

京太郎「ん、そうか?」

ハオ「はい。ですから……できれば、一口いただけたらな、と」

京太郎「いいぞ、はい……アーンして」

ハオ「んぁ」

京太郎「ホイッ」

ハオ「あむ」

ハオ「んむ、んむ、んむ……ん、おいしいです」

京太郎「だよな。卵の撹拌が、たぶんかなり正確だ……こればっかりは技術だよな。負けられない」

ハオ「なるほど……でも京太郎? 私は、京太郎のケーキに敵うものはないと思っています」

京太郎「そうかな」

ハオ「はい……ですから、どうぞ自信を持ってください」

京太郎「ありがとな、ハオ」

ハオ「いえいえ。そのお礼にといってはなんですが――」

京太郎「ん、もう一口か?」

ハオ「いえ……紅茶をいただけたらな、と」

京太郎「いいぞ……はい、熱いから気をつけろ?」

ハオ「そうではなくて……口移しで」

京太郎「」

明華「さすがにアウトでしょう!?」

ネリー「そうだよ! 店員さんにさっき、そういうのはしないって言ったもん!」

京太郎「い、いや、ハオだって冗談で……なぁ?」

ハオ「いえ、本気ですが?」シレッ

京太郎「冗談でいいんだよっ、そこはぁっ!」

ハオ「まぁ仮にしても……追いだされるだけです。へーきへーき、へーきですから」

京太郎「なにがだよ……」

京太郎「はぁ、しょうがないな……」

ハオ「やりました!」

明華「いけません、京太郎!」

ネリー「やだよぉ……」ウルッ

京太郎「いや、しないっての……」

ハオ「えー」

明華「ほっ」

ネリー「信じてたよ!」

京太郎「まぁ――代わりってのもなんだけど」チュッ

ハオ「!?」

明華「」

ネリー「」

京太郎「……額で、許してくれ。っていうか、俺が許してほしい……その、悪かった。つい……」

ハオ「あ、え……い、いえいえいえいえいえ! そんなっ、その……う、れし……ぃ……で……」カァァァッ

京太郎「……怒ってないか? その、お仕置きにしては、やりすぎたかと……」

ハオ「最高です……京太郎が、連休で戻ってきてくれてよかった……本当に……」ポー


明華「……これは夢これは夢これは夢これは夢」ブツブツブツ

ネリー「こぉひぃかぁぷのぉぞいたら」

「あかん(あかん)」
「やばいね、あれは」
「せ、せんぱーい。額です、額ですから、大丈夫ですよー」


ハオ「……これからは額当てをつけて生活しないといけませんね。間違って洗ってしまわないように」

京太郎「いや、洗顔は大事だぞ。ハオなんて肌も顔も綺麗なんだから、ちゃんと手入れしないともったいない」

ハオ「わかりました。毎日十回は顔を洗いますね」

京太郎「それはそれでやりすぎだ……ほら、いいから紅茶飲んで落ち着けって」

ハオ「はい♪ ん……これも、京太郎が淹れてくれたほうが、何十倍もおいしいですね」

京太郎「……ありがとな。それは最高の褒め言葉だ」

ハオ「はぁぁぁ……やっぱり、京太郎は……なんて素敵なんでしょうか……」

明華「おかしい、こんなことは許されない」

ネリー「す、好きって言ってもらったもん! 幸せのはずなんだもん!」

京太郎「――というわけで、随分と暗くなったな」

ハオ「楽しい時間はすぐに過ぎてしまいますね」

明華「いつまで膝に乗ってるんですか!」

ネリー「早く降りるのー!」グイー

京太郎「俺たちも、いつまでこの店にいるんだろうな……」

店員(さっさと出てけよ……)ビキビキ

店長(追加注文多いし、儲かるなぁ)

京太郎「あ、そうだ。大事なことを忘れてた」

ハオ「はい、覚悟はできています……いつでもどうぞ」ンー

明華「はいはい、降りましょうね」

ハオ「な、なんてことをっ……」

ネリー「キョウタローがそんなことするわけないでしょ!」

京太郎「(そんなこと?) いや、最初に言ってたじゃないですか。メイド服買いに行かないと」

ハオ「」

ネリー「」

明華「」

「うわぁ……」
「が、ガチやでぇ、京太郎先輩……」
「そういうのって普通に売ってるの?」
「アキバとか」
「コスプレ衣装を求めてるんじゃないと思うけど……」

明華「きょ、京太郎? その……そう! そろそろディナーの時間です、買い物はまたの機会にしましょう」

京太郎「……そうですか」シュン

ハオ「明華っ」ヒソッ

明華「私のせいですかっ?」ボソッ

ネリー「ネリーは着てもいいのに」ヒソヒソ

明華「私もそうですがっ」

ハオ「……実際、街中で着るのは勇気が要りますよね」

三人『………………』チラッ

京太郎「ふぅ……(そういえば、ホテル住まいだと夕食作れないな……寮に入れたら、なにか作れそうだけど……)」

三人(お、落ち込んでるーっ!)

明華「どうしましょうっ、買いに行くべきでしょうかっ」

ハオ「でも、それを着て帰ることに……まぁ、それはそれでいいのですが」

ネリー「ネリーは気にしないけど」

明華「――な、流れに身を任せましょう」

ハオ「結局それですか」

ネリー「なんかゆーじゅーふだんだね」

明華「積極的に進言する状況ではないと思いますし」

ハオ「仕方ありませんね……」

京太郎「さて、それじゃ――」

明華「っっ、はい!」

ハオ「ど、どうしましょうか、これから」

ネリー「服にする? ご飯にする? それとも、ネ・リ・ィ?」

明華「そんなのどこで覚えたのですか!」

ハオ「今後は禁止です!」

京太郎(なに言ってんだ、この人たち……)

京太郎「まぁネリーと遊ぶのもいいんだけど、お腹空いたころだろ?」

ネリー「空いた!」グー

「あれだけ食べたのに……」
「ネリー先輩がおいしそうに食べるから、調子に乗って先輩、注文しまくってたもんね」

ハオ「ネリーと遊ぶ(意味深)だなんて……」

明華「明華と遊ぶも加えてください」

ハオ「私もぜひ」

京太郎「…………とにかく、です」

京太郎「――寮って、入って大丈夫かな?」

三人『』

「ファッ!?」
「……え、ちょ、え?」
「こ、ここ、心の準備が……///」
「うわぁ、マジか……先輩、キメに来てますやん……」

京太郎「ほら、俺ホテルに泊まってるしさ」

明華「――ぁ、あ、え……あ、はい……そう、ですね……そちらでも、よいかと……」

京太郎(ホテルのレストラン、高くつくしな……)

ハオ「わわ、私はっ……その、いつでも……じゅ、準備を! そう、準備を整えていますので!」

京太郎「さすがハオだ、頼りになるな」

京太郎(食材の準備もしてるのか……あれ? 量の食材なんて、寮母さんとかの管理じゃないか?)

京太郎(――そうか、自炊用か!)

ネリー「あ、朝まで……とか……?」モジモジ

京太郎(朝飯か……うーん、置いとけるものなら準備したいけど……)

京太郎「できればな」

ネリー「……はうっ」パタン

「……あっ」
「おっと、気づかれましたか」
「すごいね。完璧に噛み合った会話なのに、まるで噛み合ってない」
「ネリー先輩にそういう知識があったのが驚きなんだけど」

京太郎「それじゃ、寮に行っても大丈夫ってことでいいですか?」

明華「は、い……」

京太郎「三人にも手伝ってもらえると助かります」

ハオ「もちろんっ……な、なんでも……」

ネリー「やり方、ちゃんと教えてね!」

京太郎「俺のクセつくと思うけど、いいか?」

三人『の、望むところです!』

京太郎(すごい迫力だな……)

京太郎「ん――それじゃ、時間もありませんし。すぐ行きましょう」

~臨海寮、からの買いだし

京太郎「食材ねーじゃん!」

ハオ「食材なら食材と言ってください!」

明華「おかしいと思ったんです……」

ネリー「ウソばっかり!」

ハオ「はぁ……京太郎がはっきり言ってくれないからですよ」

京太郎「いや、流れでわかるかと……っていうか、なんだと思ったんだよ」

ハオ「――い、言えるわけがありません!」

ネリー「キョウタロー、デリカシーない!」

京太郎「俺ェ?」

明華「……すみません、勘違いをしてしまって。いまからでも間に合いますし、買い物に行きましょう?」

京太郎「明華先輩……いえ、俺のほうこそ言葉足らずで、すみませんでした」

ハオ「」

ネリー「しまった、やられたっ……」


「……夕飯、なににする?」
「大人数だし、カレーかシチュー?」
「カレーは前、先輩たちが食べたって言ってたような……」
「じゃあシチューだ」
「いっそカレーシチューでは……」
「鍋」
「うーん、あったかいけど……大人数ならそれかな」

京太郎「一年は真面目に考えてて偉いなぁ……」

ハオ「」

ネリー「あれ……評価が、すごく下がっちゃってる……?」

明華「ではせっかくですし、お鍋にしましょう。私たち、寮ではあまり、そういう料理をしませんので」

京太郎「最近はかなりあったかくなってますけど、大丈夫ですか?」

明華「日本では夏こそ熱いものを食べ、暑気払いということをするとか」

京太郎「そうですね……それじゃ、鍋にしましょう」

「やったぜ。」
「先輩のシチューも食べてみたいんだけど……」
「先輩のシチュー(意味深)」
「それはハオ先輩の役目では……」

ハオ「人を汚れ役のようにしないでください!」

ネリー「お鍋って、なにがいる?」

京太郎「ああ、そっか……したことないなら、そこから説明しておかないとな」

京太郎「基本的にメインは肉か魚。魚介類なら色々と入れられるけど、オーソドックスに肉にしておこう」

京太郎「で、それぞれで出汁が違うし、種類もわかれる。たとえば――」

「す、すごい……聞いたこともない鍋料理の名前が……」
「材料と味の説明が、すごく上手……」
「さすが執事……」
「違う! さすが、先輩なのよ……」ゴクリ

明華「あの子たちはなにを言ってるのでしょうか」

京太郎「お腹が空いてるんでしょうね。早いとこ作ってやらないと……それじゃ、買い物の材料は大丈夫ですか?」

明華「ええ。牛肉ですき焼きをする、ということですね。卵もいるのですか?」

京太郎「使わないのもありますけどね。よく知られるのは、そっちだと思うので」

ネリー「……京太郎、エプロンつけて……買い物行かないの?」

京太郎「割り下の準備とかあるからな。大阪とか奈良にいたときは、別の味付けだったんだけど――ま、こっちなら割り下のがいいと思うし」

ハオ「では――」

ネリー「だね」

明華「ジャーンケン!」

ネリー「やったぁ!」

京太郎「それじゃ、ネリーは俺と料理だな。一年の三人もよろしくな」

「はい!」
「がが、頑張りますっ……」
「一番弟子の私にお任せあれ!」

ハオ「こ、これは練習で……」

明華「私、最上級生なんですけど……」

京太郎「だってさ、ネリー」

ネリー「ダッシュでな!」

京太郎「……そういうのはマネしちゃいけません」

ネリー「そうなの?」

京太郎「っていうか、どこで聞いたんだよ、それ……」

ネリー「さぁ?」

ハオ「以前、白糸台と練習場が近かったことがありまして。そこで、大星がそんな感じだったのです」

京太郎「淡ァ!」

淡「へくちっ」

尭深「かわいいクシャミだね」

誠子「京太郎くんが噂でもしてるのかな?」

淡「それだと毎晩出ないとおかしーよ」

ネリー「んーと……それじゃ、気をつけてねー!」ブンブン

京太郎「ま、そんなとこか……すいません、一年と、あとハオのこと、よろしくお願いします」

明華「はい、大丈夫ですよ」

ハオ「私もよろしくされる側ですか……」

京太郎「ハオは、一年のこと頼んだぞ。明華先輩と協力して、無事に買い物を済ませてくれ」

ハオ「っっ、はい!」

「うーんこの」
「扱い、上手くなってるような……」
「私も上手に扱われたい……ハァハァ」

京太郎「なにか困ったことがあったら、電話お願いします。それじゃ、気をつけて」

明華「さて、手早く済ませて帰りましょう」

ハオ「そうですね。一年は野菜を集めてきてください。ネギと白菜と、しら……たき? を」

「しらたきってなんですか!」
「私わかるから、大丈夫だよ」
「さすが日本人、頼りになる!」

明華「……大丈夫でしょうか」

ハオ「おそらくは。ではこちらは、肉とお豆腐を……ん?」

明華「ハオ? どうかしまし――」

サンディ「はぁ……今頃あの子たちは、キョウタロウとご飯でも行ってるのかしら……」

サンディ「ランチは一緒だったんだし、わがまま言えないけど……できれば一緒に、雰囲気のいいレストランなんて行きたかったわねぇ……」

明華「……無視しましょう」

ハオ「そうですね。本人も、ランチが一緒だったので悔いはないと言っています」

明華「では――このまま、お肉屋さんに行きましょう。すき焼き用といえば、切り分けてくれるそうですし」スタスタ

ハオ「一応、一年たちにも連絡しておきます。監督に見つからないように、と」

サンディ「……ん? いまなにか、視線を――」

サンディ「……気のせいか」ガシャンッ ガシャンッ

明華「……容赦なくお酒を購入していますね」

ハオ「ストレス、溜まっているんでしょうか……」

サンディ「まぁ今日は、隣室にキョウタロウが泊まるんだし……ふふ、楽しみにしてなさいよ」ニヤニヤ

ハオ「」

明華「……すごく、通報したいですけど……すると、夏の大会に出場できないかもしれません……」

ハオ「京太郎に注意を促しておけばいいでしょう。ただ、隣室にいるとわかれば会いに行くかもしれませんし、名前はださないように」

明華「そうですね……」

「あ、先輩がたー!」
「揃いましたよ、こっちは」
「先輩たち、まだお豆腐だけじゃないですか!」

ハオ「しーっ! 静かに、声を潜めてっ……」

明華「肉を買い行くのは、あなたに指揮を任せます。私たちは周囲を警戒しますので、お願いしますね」

「」
「あ、はい……わかり、ました……?」
「なんやこれ……なにがあったん?」
「たぶんさっきの、あれやっぱり、監督だったんだよ」
「あっ(察し)」
「監督、お気の毒に……」

京太郎「割り下っていうのは、すき焼き用の出汁だ」

ネリー「ダシ!」

京太郎「煮込むためのスープ、って思えばいい。また別物ではあるけど」

ネリー「うん!」

京太郎「こっちが割り下用の調味料だ。仕上げていくから、順番に取ってくれ」

ネリー「わかった!」

「……いまさらだけど、やることないね」
「材料が来てからだよ。それまでは、テーブルの準備しとこ」
「あっちは手伝わなくていいの?」
「だからやることないでしょ」
「ネリー先輩の邪魔したら、明日からの部活が怖いし(震え声)」

ネリー「…………っっ!」プルプルプル

京太郎「……後輩には優しくな?」

ネリー「してるよ!」

京太郎「まぁ、だろうと思うけどさ……すげー懐かれてるし」

ネリー「でしょ?」

京太郎「それに、練習で手なんて抜いたら、本番で通用するわけないからな……」

ネリー「うんうん!」

京太郎「よし、そのまま叩いて伸ばすスタイルでいこう、ネリー先輩の教育は」

ネリー「まっかせて!」

「」
「」
「詰んだ詰んだ」

京太郎「これまでも――普通に打って、飛ばすときは飛ばして、それでもいまの一年は残ってるんだろ?」

ネリー「ん、そうだよ」

京太郎「まぁ、自分の経験で人に言うのはどうかと思うけど……どうあがいても勝てないっていう状況は、それだけで心折れるもんなんだよ」

ネリー「……キョウタローも?」

京太郎「どうかな……正直、投げそうになったこともある。けど、そういうのを冷却する、いわばクール期間みたいなのもあってな」

京太郎「それでなんとか、気持ちを切り替えて続けていけたよ。俺はあいつらと違う、凡人なんだって」

京太郎「凡人は凡人の速度で、ゆっくり勝てるようになればいいってな」

ネリー「キョウタローは、才能……あると思うの」

京太郎「ネリーに言われると、自信がつくな……まぁともかく、そういう風に思ってもらえるのも全部、思い返せば叩いてくれた人のおかげなんだよ」

京太郎「指導のときは、自分のためにも、しっかりと叩くべきだ。それでも起き上がれるやつが、自然と強くなるんだって、俺は思ってる……ここの一年も、そうだってな」

「」
「せ、せんぱぁい……」ジワッ
「ワイは信じとったで」テノヒラクルー

ネリー「キョウタロー」

京太郎「ん?」

ネリー「……よく頑張ったね。偉いえらい」ナデナデ

京太郎「ああ……って、どこ撫でてんだよ!」

ネリー「お尻だよ?」

京太郎「なぜぇ!」

ネリー「キョウタローおっきいから届かないの!」プンッ

「……京太郎先輩、おっきいんだ///」
「…………」ゴクリ
「ほう、続けて」

京太郎「身長の話だルルォッ!?」

~すき焼き終了

ネリー「ほぁぁぁ……」

明華「ごちそうさまでした」

ハオ「おいしかったです、京太郎」

京太郎「お粗末様……って俺が言うのも変だな。みんながいいもの買ってきてくれて、みんなで作ったからだろうし」

京太郎「それじゃ、片づけは俺が――」

「い、いえ! それくらいは一年が!」
「京太郎先輩は、せっかくの連休旅行なんですから、休んでてください!」

京太郎「そ、そうか?」

『はい!』

京太郎「……じゃあ、任せるかな」

京太郎「なら、俺はデザートの用意を。あ、もう作って冷やしておいたから、あとは食べるだけだ」

明華「……ふふっ、さすがですね」

ハオ「この抜かりのなさは、到底マネできません」

ネリー「デザート! なに!?」

京太郎「悩んだけど、フルーツゼリーにしておいた。あまりしつこくないようにしておいたからな」

京太郎「お腹に余裕があれば、どうぞお召し上がりください」

明華「ん……冷たくて、おいしいですね」

ハオ「ほどよい甘味です……フルーツの酸味とよく合います」

ネリー「おいひい」

「これが京太郎先輩の味……」
「よく覚えておかないとね」
「再現しないとなぁ」
「今度は調理室壊さないぞー」

京太郎「おい」





~夜、深まり

京太郎「さて――片づけも終わったし、そろそろ俺は帰るよ」

ハオ「送っていきます!」

京太郎「こんな遅くに、送らせられないって。俺がまた、送って帰ってこないといけないだろ?」

明華「でも、京太郎にもしものことがあったら……」

京太郎「そのときは、ルーラでもなんでもして、逃げますから」

ネリー「るーら?」

京太郎「いや、こっちの話……まぁ俺よりも、可愛い女の子のほうが危ないからな。帰るのは一人でいいよ」

ハオ「か、かわ……///」

ネリー「ネリーかわいい?」

明華「もう、年上に可愛いだなんて……///」

京太郎「ではこれで……明華先輩」

明華「はい?」

京太郎「お会いできてよかったです。夏大会の予選、頑張ってください」

明華「ええ……もちろんです。といっても、一緒に挑むことになるかもしれませんけれど」

京太郎「でしたね……ハオ。ハオも、昨年以上に活躍するのを、期待してるからな」

ハオ「お見せしましょう……中国麻雀の打ち筋を!」

京太郎「そこはかとないフラグ臭が……ネリーは、個人もあるから体調に気をつけてな」

ネリー「うん……ちゃんと食べて、次に会うときはおっきくしておくからね!」

京太郎(まだこだわってるのか……)

京太郎「一年も、先輩たちの指導を乗り越えて、成長してくれ」

『はい!』

京太郎「それじゃ――また会おうな」

明華「はぁ……行ってしまいました」

ハオ「そういえば、ただの連休ですから、ほかの生徒もいたのに……忘れてしまってますね」

ネリー「書いちゃったものは仕方ないよ。誰かの部屋で食べてたってことにすればいいよ」

明華「そうですね。あとは――」

ハオ「京太郎が、監督の奇襲を乗り切るのを祈るばかりです……」

ネリー「信じてるからね……」ギュッ



~深夜?


京太郎「ふぅ……シャワーも済んだし、今日は移動で疲れたから……早目に寝るとするかな?」

京太郎「いや、明日も泊まるんだし、今日のうちに経路とか調べておくか」

京太郎「……いいホテルだよなぁ、実際」

京太郎「しかも調べてみたら、俺が払った額の倍以上かかるみたいだし……」

京太郎「監督は、クーポンとポイントで安かったからって言ってたけど……なにかお返し、しないとだな」

京太郎「――ということなんですが、なにがいいと思われますか、師匠?」

ハギヨシ『存じ上げません。リア充爆発しろ』

京太郎「」

ハギヨシ『そう言って欲しいと思ったのでは?』

京太郎「断じて違います!」

ハギヨシ『ふむ、そうでしたか……これは失礼』

ハギヨシ『真面目に返事をするなら、金銭で返すか、物で返すか、奉公で返すかの三種類です』

京太郎「金銭はなしですね」

ハギヨシ『ええ。受け取られないのは間違いありませんから』

京太郎「なら、プレゼントですか……」

ハギヨシ『残念ながら、アレクサンドラ女史の好みがわかりかねますので、中身に関しては須賀くんが決めるしかありません』

京太郎「……貴金属とか、でしょうか」

ハギヨシ『お住まいやホテルの価格からして、釣り合う貴金属なら数十万のものがよろしいでしょう』

京太郎「」

ハギヨシ『冗談です。さすがに学生からの贈り物であれば、その十分の一なら十分でしょう』

京太郎「それでもかなりするんですが……」

ハギヨシ『そのくらいの蓄えはあるでしょう?』

京太郎「まぁ……いざというときのために、貯めてるんですが」

ハギヨシ『それなら、奉公で返すという手もあります』

京太郎「奉公、ですか……けど、毎日は無理ですよ」

ハギヨシ『短期間で返し切る奉公を、ということになるでしょうね。いずれにせよ、選ぶのは須賀くんですよ』

京太郎「はい……」

ハギヨシ『大丈夫。どれを選んだとしても、君ならば最良の選択を取れると、信じています』

京太郎「師匠……」

ハギヨシ『では――グッドラック、須賀くん』

京太郎「はい。失礼します」ピッ

京太郎「俺にできること――か」

京太郎「――もしもし、監督ですか?」

サンディ『』

京太郎「……あ、あれ?」

サンディ『――は、はい! そうっ、あなたのサンディよ!』

京太郎(誰かの反応に似てきたな……)

京太郎「えと、いま大丈夫ですか?」

サンディ『え、ええ、問題ないわ……(隣の部屋とは言わないほうがいいわね)』

京太郎「よかった……えっと、まずは、ホテルのことなんですけど」

サンディ『』ドキッ

京太郎「すごくいいホテル、安く紹介してくださって……ありがとうございます」

サンディ『ああ、そっち?』

京太郎「え?」

サンディ『……失礼、なんでもないわよ。気にしないで、キョウタロウのためならこのくらい……』

京太郎「でも、もらいっぱなしっていうのも、なんですから……」

サンディ『ランチも作ってもらったし、午前中は私のために使ってくれたんだもの。それで十分よ』

京太郎「そうですか? なにかできることがあるなら、なんでも――」

サンディ『ん?』

京太郎「なんでも……出来る限りのことを、させていただければと思ったんですが」

サンディ『…………えっ、本当に?』

京太郎「はい。その、恥ずかしながら貧乏学生なもので、それくらいしかできませんから……」

サンディ『そ、そう……なんでも……できることを……』ブツブツ

京太郎「いまなにもなければ、このご恩にはまた、なんらかの形で報いたいと思っています」

サンディ『……キ、キープできるってこと? この素晴らしい幸運を』

京太郎「は?」

サンディ『い、いつかお願いを聞いてもらえるってことよねっ?』

京太郎「は、はぁ……そのつもりですけど――」

サンディ『っっっ!!』ガッツポ

京太郎「で――なにかありますか?」

サンディ『………………………………』

サンディ『………………っっっ!?!?』ボシュゥッ

サンディ『………………~~~~~っっ!!』ブンブンッ

サンディ『……はぁっ、はぁっ……ふっ、ふぅぅぅ……』ボタボタボタ

京太郎「あ、あの……?」

サンディ『な、なんでも、ないから……その……ほ、保留で、いいかしら……』

京太郎「……そうですね、急に聞いてしまいましたし。ではまた、改めてお電話しますので」

京太郎「そのときにありましたら、なんでもおっしゃってください。もちろん、監督から言ってくださっても大丈夫ですから」

サンディ『……そう、させてもらうわね……はぁ、ふぅ……』

京太郎「それじゃ、おやすみなさい……ありがとうございました」

サンディ『う、ん……おやす、み……っっ……』

京太郎「うん、仕方ないな。またなにか決まったら、ご奉仕させていただこう」

サンディ(だめっ……だめよ、私っ……相手は高校生なんだからっ、自重しなさいっっ!!)ガンッガンッ

~連休初日、終了



~5月第一週連休二日目、朝

京太郎「いやー、今日も飯がうまい!」モグモグ

シェフ「……君はどうして普通に、厨房を使ってるのかなぁ」

京太郎「そんな! 朝の仕込みも手伝ったのに!」

シェフ「いや……うん、それはそうなんだけど……普通は厨房って広かったり使い慣れてなかったりするんだよね」

京太郎「まぁ慣れてますから」

シェフ「……ところで、卒業後の進路は考えてるかい?」

京太郎「ボチボチと」

シェフ「そうかそうか。ではこれを渡しておこう。進路に迷ったら、相談に来なさい」つ名刺

京太郎「ありがとうございます!」

シェフ(ふふふ、わしのよき後継者となりそうじゃ)

京太郎「――っていうか、俺が手伝ってよかったのかな。まぁ野菜の皮剥きくらいだしな、うん」

京太郎「まぁおかげで厨房使わせてもらえて、朝飯が作れてよかった……」

京太郎「もしかしたら、あと二日間の昼と夜で、すげー名店行くことになったら、お金がいくらあっても足りないからな……」

京太郎「ご利用は計画的に、だな。まさに……さて――」

京太郎「待ち合わせまで、あと一時間ほどか。どうするかな……ん?」

京太郎「先輩たちから連絡か?」


『京太郎ー、朝だよー』
『そうそう、待ち合わせはもうすぐだよー、起きてるかなー?』
『まだだったら言ってねー、起こしに行くからねー』

京太郎「……いや、寝てたら言えません」

京太郎「………………そうだな」

京太郎「……で、まだ寝てます……起こしに来てください、と」

京太郎「ふぅ……さて、どんな風に怒ってくるかなー、豊音さんは……」

豊音「あ、京太郎から返事だー」

塞「こら、朝ご飯中にお行儀悪い」

エイ「ナンテ?」

胡桃「もう起きてる、とかでしょ」

豊音「えっとねー……」

豊音「」

塞「?」

エイ「ナニッ!?」ガタッ

胡桃「エイちゃん、落ち着いて!」

豊音「……う、ううん、なんでもないよー」

豊音「あ、そうだー。私ちょっと、銀行行かないとー」

塞「え!? ご、ご飯は?」

豊音「大丈夫、もう食べたよー」カッカッカッ

エイ「ハヤグイ!」

塞「まだ途中ってことじゃん……」

胡桃「ちょっ、焦んなくても、待ち合わせの前に寄れば……」

豊音「こ、こんれて……んぐっ……遅れると、困ぅから……」ゴックン

豊音「ごめんねー、待ち合わせには合流するから!」

塞「ちょ、ちょっと豊音!」

エイ「イッチャッタ……」

胡桃「…………怪しい」

塞「京太郎くんのメール見た直後だしね……なんかあったのかな」

胡桃「それだと全員に来るでしょ、メール」

エイ「キョータロノ、イチダイジ!」

塞「……追いかけたほうがいいかな」

胡桃「……だね。私たちも早く食べよ」

エイ「ラジャー!」

豊音「……大丈夫、大丈夫っ……起こすだけ、起こすだけだからっ……」

豊音「で、でも……京太郎から、こんなこと言ってくるなんて……あうぅっっ! だ、だめっ、まだ早いよっ」カァァッ

京太郎「……あれ、返事がこない……なんか嫌な予感がするのう」

~ホテル

ドンドンドンッ
京太郎「……えっ」

豊音「きょうたろー! 大丈夫? 起きてるかなー?」

京太郎「」

豊音「わわっ、大変! 返事がないよー」

京太郎「と、豊音さん!? 起きてます! 起きてますから!」

豊音「ね、寝てるかもしれないから、ちょっとここ開けて!」

京太郎「……冗談だったのに……っと」

京太郎「す、すいませんっ、いま開けます――」ガチャッ

豊音「お、おはよー!」

京太郎「……おはようございます」

豊音「は、入っても……いい、かな?」

京太郎「あ、はい……どうぞ」

豊音「お邪魔しまーす。わっ、すす、すごいお部屋だよー!」

京太郎「ですよね……臨海の監督に紹介してもらったら、こんなとこで……」

豊音「うわーっ、ベッドふかふかだー!」ダーイブッ

京太郎「ちょっ! 豊音さんっ、スカートでそんな無防備に!」

豊音「え?」フワァッ

豊音「はわわわっ! み、見ないで!」バサッ

京太郎「み、見てないです……(ちょっとしか)」

豊音「うぅぅぅっっ……きょ、京太郎の……エッチ……だめなんだよー?」

京太郎「いや、だから見てませんって……(ちょっとしか)」

京太郎「それより豊音さんこそ、その……俺が寝てたベッドに……寝るのは、あまり……」

豊音「へ? あ――うわぁぁっっ!」ガタッ

豊音「ご、ごめんねっ……その、いい匂いだったよー!」

京太郎「」

豊音「…………ま、間違えた……いまの、忘れてほしいよー」カァッ

京太郎「いえ、変な臭いじゃなくてよかったです……」

京太郎「それで――どうされたんですか、こんなとこまで」

豊音「京太郎が起こしてって言ったんだよー?」

京太郎「うっ……すいません、冗談でした」

豊音「えーっ!?」

京太郎「いや、まさか来るとは思わなくて!」

豊音「そ、そんな……京太郎が、嘘……うわぁぁぁんっっ! 私のことだましたー!」

京太郎「違いますよ! いや、違わないんですけど……すいません、こういう冗談で豊音さんが、どう怒るのかって思って……つい」

豊音「ついじゃないの!」

京太郎「すいませんでした!」

豊音「うぅ……そういう意味も、あるかと思って……ちょっとだけ、期待しちゃったのにー……ばかー……」

京太郎「ほんと、すいませ――そういう意味?」

豊音「なな、なんでもないよー」

豊音「えっと……それじゃ、いまから怒るからねー?」

京太郎「はい……お手柔らかに」

豊音「……あ、あんなことしたら、だめなんだからねー?」メッ

京太郎(かわいい)

豊音「あっ、反省してない顔してるー」

京太郎「し、してますって」

豊音「ほんとにー?」ジー

京太郎「……し、してます(震え声)」

豊音「もう冗談でからかったりしない?」

京太郎「はい、しません……」

豊音「……よろしい! それじゃ、許してあげるー」ニコー

京太郎「ありがとうございます!」

豊音「はぁ……ここ(京太郎の宿泊部屋)に来るの、すっごい緊張したんだからねー」

京太郎「そうでしょうね、こんな場所(高級ホテル)だと……」

豊音「みんなにも変なこと言って来ちゃったし、せめて待ち合わせには早く着いておかなきゃー」

京太郎「っと、そうでした……げっ、時間が」

豊音「ふぇ? えええええ!? もうこんな時間!?」

京太郎「豊音さん、急ぎましょう!」

豊音「う、うんっ」グー

京太郎「…………」

豊音「はうっ……」カァッ

豊音「ち、違うの! 急いで来たから、ご飯ちょっとしか食べてなくって……」

京太郎「……ちょっと待っててください。厨房で、サンドイッチの残りもらってきます」

豊音「わ、悪いよー」

京太郎「いえ、俺が賄用に作って、みんなに振る舞ったやつなんで。いっぱいありましたから、まだ残ってるはずですよ」

京太郎「それ食べて、ゆっくり出ましょう」

豊音「で、でも、遅刻がー」

京太郎「それは豊音さんから謝っておいてください。俺もあとで謝りますけど――」

京太郎「誤魔化して出てきた分は、謝らないと、ですもんね?」

豊音「…………はい」シュン

京太郎「それじゃ、もらってきますので。30分だけ、予定ずらしてもらいましょう」

豊音「そう言っておくねー」

豊音「……ごめんね、みんなー、と……」

塞「これはどう思う?」

エイ「キョータロノ、セイ!」

胡桃「異議なし!」

京太郎「……なんだか、また嫌な予感がするのう」

豊音「ほう?(そう?)」モグモグ

京太郎「物入れたまましゃべらないでくださいね?」

豊音「ふぁーい(はーい)」モグモグ


~待ち合わせ

京太郎「――そういえば、今日の待ち合わせは、と」

京太郎「……どこだっけ?」

豊音「忘れちゃったのー?」プンッ

京太郎「お、覚えてますよ?」

豊音「ほんとにー?」

京太郎「えっと、確か――」

~喫茶アー○ン○ルベ

京太郎「お待たせいたしました」フカブカー

豊音「ご、ごめんなさいー」ペッコリン

塞「………………」

エイ「サエ、ゲキオコ!」

胡桃「ご機嫌とったほうがいいよ、京太郎くん」

京太郎「なんでもしますんで許してください!」

塞「ん?」

エイ「イマ――」

胡桃「なんでもするって」

豊音「言ったよねー?」

京太郎「え」

塞「じゃ、とりあえずここのお会計お願いね」ピラッ

京太郎「う、はい……」

エイ「チェリーパイ、オイシカッタ!」

胡桃「時期によっては、カレーパイとかもあったみたい」

豊音「わ、私も半分だすよー」

京太郎「いえ。豊音さんが言った通り、すぐに来てれば間に合いましたから……」

豊音「で、でも、京太郎くんにサンドイッチ作ってもらった分、お金浮いてるし……」

塞「ほう」

エイ「ズルイ!」

胡桃「やっぱりすぐ追いかけないとだめだったか……」

京太郎「ま、まぁまぁ……えっと……そういえば、とりあえずってことは――」

塞「このあと、ちゃんと買い物に付き合ってもらうから」

京太郎「うっす」

胡桃「新しい服いっぱい出てるから、ちゃんと一人一着、選んでもらうからね!」

京太郎「承知いたしました」

エイ「英)下着もね」

京太郎「英)仰せのままに――えっ」

豊音「じゃー、さっそくいこー!」

京太郎「ちょっ、いまエイスリンさんがとんでもないことを!」

塞「エイスリン、なにか言った?」

エイ「ンーン?」

胡桃「京太郎くん、変なこと言って誤魔化さないの!」

京太郎「ち、違うんです、本当に――」

塞「あー、もういいから。とりあえず出ましょ。騒いでると追いだされそうだし」

豊音「あっちの眼鏡のカップルさんが見てるよー」

エイ「テッシュウダ!」

胡桃「あはは、お邪魔しましたー」

「……知り合いですか、遠野くん」
「ま、まさか……はは……」


京太郎「で――服だけですか、買い物は」

塞「色々買うわよー」

胡桃「私たちも花の女子大生だし、アクセサリーとかも気を遣いたいよねっ」

エイ「英)全員分、見立ててね、京太郎?」

京太郎「……はい」

豊音「それじゃ、まずここからねー」

京太郎「あ――そういえば、皆さん服の趣味って同じですか?」

塞「うーん、そうでもないかな……」

胡桃「小物なら貸し借りできるけど、サイズも違うし、あんまりしないからわかんないね……」

豊音「あ、そっかー。お店回るなら、順番決めないとだねー」

エイ「ショッピングセンター?」

京太郎「まぁ、テナントの店もいいですけど、どこかお気に入りのお店があればと」

塞「って言っても、まだ一ヶ月だし、どこになにがあるかまでは……」

京太郎「えっと、案内してくださるって話じゃ……」

胡桃「シャラップ!」

京太郎「英語になってる!?」

エイ「ソコ、ウルサイ!」

京太郎「エイスリンさんが日本語担当ですか……」

豊音「メインは案内じゃなくて、服とか選んでもらうことだからねー」

京太郎「はぁ……あ、でもショピングセンターの場所はわかるんですよね?」

エイ「ワカルヨ♪」

京太郎「なら、そこを目指しつつ、どこかよさそうなお店があれば、覗いていくってことでどうでしょう」

胡桃「ま、そんな感じかな」

豊音「よーし、決まりー」ギュッ

京太郎「おっと」

エイ「イコー!」ギュッ

塞「…………じゃ、行こっか」

胡桃「塞、後ろから行っちゃえば?」

塞「するわけないでしょ! 胡桃こそしたら?」

胡桃「……子供がおんぶされてるように見えるじゃない」

塞「……なんか、ごめん」

豊音「あーっ! ねぇっ、ここ!」

京太郎「ここ? この店ですか?」

豊音「ねっ、ここ寄ってみたい!」

京太郎「俺は構いませんよ。皆さんは、どうですか?」

塞「反対するわけないでしょ」

エイ「カワイイ!」

胡桃「ロングスカート系が多いね」

豊音「えへへー、私の服、そういうの多いからー」

塞「たまには冒険して、ミニも穿いてみたら?」

豊音「そ、それは恥ずかしいかなーって」////

京太郎「はい、ミニはよくないです。豊音さん、無防備ですから」

塞「あー……」

胡桃「納得」

エイ「キヲツケテ!」

豊音「ちゃ、ちゃんと見えないようにしてるよ! ホテルではたまたま――ぁ」

京太郎「」

塞「なにしたの、京太郎くん」

京太郎「冤罪です!!!」

エイ「英)私のはミニを選んでね! 下着もお願いするから!!」クワッ

胡桃「エイちゃんなに!? 必死ですごい捲し立ててるけど!」

エイ「ナ、ナンデモナイ……」

京太郎「……と、とにかく入りましょうか」

塞「こら、逃げない!」

豊音「ほら、塞もー」

塞「ちょぁっ! も、持ち上げないで!」

エイ「ナガイノ……ミジカイノ……」ブツブツ

胡桃「エイちゃんはどっちも似合いそうだもんねー」

ウィーン  イラッシャイマセー


豊音「ふわぁぁぁ……こ、これ、ちょーかわいいよー!」

塞「ん……あ、ほんとね。裾のとこのフリルが、ちょっとお嬢様っぽいじゃない」

エイ「エレガント!」

胡桃「ベージュ……よりは白に近いね。下、透けないように気をつけないとだめだよ?」

豊音「あー、そっかー……膝丈のと合わせて、パレオみたいに穿く感じなのかなー?」

塞「一応それだけでもいいみたいだけど……やっぱ、すごい透けそうよね」

エイ「ドースル?」

豊音「色違いあるかもー」

胡桃「豊音は黒いの、似合うよね」

エイ「アッタヨ! デモ――」

塞「こっちも透けるわよねぇ……」

豊音「ま、まだマシじゃないかなー」


ワイワイ キャッキャ
京太郎「………………」

京太郎「暇だな…………」

京太郎「服以外になにか売ってないか、ちょっと見てみるか?」

京太郎「――いや、いつ決断を任されるかもわからない……用心しておかないと」ゴクリ

塞「……なんでそんな緊張感だしてるの、あんたは……」

京太郎「ひゃい!」ビクンッ

京太郎「いえいえいえ、退屈だなー、とかそういうことはまったく――」

塞「なに言ってんの……ま、いいや。豊音が呼んでるわよ」

京太郎「はっ、ただいま!」


京太郎「豊音さん、なにかいいのはありましたか?」

豊音「うーん、色々あるんだけど……あ、そうだ!」

京太郎「?」

豊音「京太郎くんだったら、私にどういうのを着てほしいー?」

京太郎「……そうですね。やっぱメイド服ですね」

豊音「」

胡桃「そういうこと聞いてるんじゃないの!」ベシッ

エイ「ゴシュジンサマ……」

京太郎「もう一度お願いします」キリッ

塞「いまは豊音のことでしょ!」ペンッ

京太郎「すいません!」

豊音「め、メイドさんもいいんだけどー……それじゃ、この中からなんだけど――」ズラッ

京太郎「」

豊音「どれもいいんだけど、悩んじゃってー」

京太郎「お、多いですね……」

豊音「こっちはすごく気に入ったんだけど、生地が薄いかなーって」

京太郎(さっき言ってたやつか……)

豊音「でね、こっちはトップスなんだけどー。京太郎がくれたバレッタに合うかなーって」

京太郎(……俺のプレゼントとコーディネートを合わせてくれるなんて)ジーン

豊音「こっちは可愛いんだけど、私にピンクは似合わないよねー?」

京太郎(そんなことないんだよなぁ……)

豊音「こっちはね、えへへー……ちょっと大胆なんだけど、キャミソールワンピースだよー」

京太郎(……寝間着だよな、うん。まさか普段着になんてしないですよね、させません、ええ)

豊音「あとねー、これが――」


~五分後

豊音「で――ここから一つ選んでほしいのー」

京太郎「……わかりました」

豊音「それとね、お願いがあってー……それに合う、ほかの服のパーツを選んでもらえたらなーって思うんだけど……」

京太郎「」

豊音「だめ、かな……? だめだよねー……」ショボン

京太郎「まったく問題ありません」キリッ

豊音「ほ、ほんとー? わーい!」

京太郎「ではまず、豊音さんの気に入った服から、一点選ばせていただきます」

京太郎「――それじゃ、このブラウスにしましょうか」

豊音「これ? じゃあ合わせてみるねー」ヌギッ

京太郎「試着室ううううううううううう!」

豊音「わわっ、わかってるよー!」


豊音「……ど、どうかな?」クルッ

塞「確かに、バレッタと馴染むわね」

胡桃「黒髪だし、白いのが似合うのは当然だね!」

エイ「チョーカワイイ!」

京太郎「………………」

豊音「きょ、京太郎? もしかして、似合ってな――」

京太郎「はっっ! す、すいませんっ、ちょっと見惚れてしまって……」

豊音「そ、そうなのー?」エヘヘー

京太郎「はい。とてもお似合いです……では、これから服に合わせて、俺が選んでみますね」

豊音「お願いしまーす」

塞「さて、お手並み拝見」

京太郎「ちょ、緊張させないでくださいよ」

胡桃「だって、私たちのも選んでもらうんだし。センス見せてもらうからね」

京太郎「う、そうでした……」

エイ「ガンバッテ! アッ……ガンバレ♪ ガンバレ♪」

京太郎「それ流行ってんですかぁっ!?」

京太郎「――と、こんな具合でいかがでしょう」

京太郎「さっき、ピンク色を気にしていらしたので、思い切ってフレアミニで選んでみました」

京太郎「ただ――外で穿くなら細心の注意を払うか、こっちのスパッツか、このレギンスで対応してください」

塞「細かいわね……」

胡桃「けど、すっごいかわいい!」

エイ「イイセンスダ!」

京太郎「で、こちらはバッグです。いまは大きいカバンをお持ちですけど、こういう小さいバッグのほうが、服に合うかと思いまして」

京太郎「帽子は色々とありますが……ツバの広めのものを選んでいます。俺的には白ですけど、こっちの暖色系もなかなか……」

京太郎「で、せっかく足をだすわけですから、靴もそれらしいものを。こっちのミュールでもよかったんですが、ヒールが少し高いですからね」

京太郎「危ないなと思ったら、こちらの靴がよろしいかと」

豊音「ふあぁぁぁ……こ、これ、変じゃないかなー?」

京太郎「手前味噌になりますが、お綺麗ですよ」

塞「……スケベ」

京太郎「そういう意味ではなく!」

胡桃「でもジーッと脚ばっかり見てるよね」

京太郎「ちゃんと全体見てますから!」

エイ「テレナイ、テレナイ」

京太郎「ガチですってばあああああ!」

豊音「うーん……でも、お高いんでしょー?」

「いえいえお客さん!」

豊音「うわっ、ビックリした!」

「こちらのお客様、素晴らしいお見立てで……私も思わず前屈みです、はい」

京太郎「それ以上、豊音さんを見るんじゃねえ!」クワッ

塞「どうどう、落ち着いて」

胡桃「なんか京太郎くんに声似てるね、この店員さん」

「と、ともかく……これらでしたら、すべてご購入いただいても――このくらいになります、はい」

豊音「!? ほ、本当にー?」

エイ「ジコブッケン!?」

京太郎「いや、服にそういうのは……あれ、古着だとあるんですかね」

塞「さぁ……っていうか、怖いこと言わないでよ!」

「お手持ちで足りなければ、こちら取り置きしておきますし……また、お手荷物になるようでしたら、お預かりしておきます、はい」

京太郎「どうしますか?」

豊音「か、買ったー!」パーンッ

塞「うわっ、即決!」

胡桃「まぁあの値段ならね……納得かも」

「毎度、ありがとうございます。思わず前屈みに――」

京太郎「離れろ貴様ああああああああああああ!」

エイ「オ、オチツイテ!」

豊音「えへー、ありがとー、京太郎ー」

京太郎「お役に立てましたか?」

豊音「うん、ちょー嬉しいよー」

京太郎「それはよかったです」ニッコリ


~豊音買い物終了、から


京太郎「荷物はあとで取りに行きましょう。なんだったら、俺がお部屋までお持ちしますので」

豊音「わー、ありがとー。ちょーうれしいよー」

塞「……私の部屋でもあるんだけど、大丈夫かな」

京太郎「な、なにもしませんよっ」

塞「まぁそういう心配はしてないけどね。シロの隣の部屋でもなにもなかったんだし……」

京太郎「信頼されてるはずなのに、ヘタレと言われてるような……」

エイ「ジャア、ナニカ、スル?」

胡桃「そ、そういうのはよくないよ! マッサージとかだめだからね!」

豊音「ふぇ?」

塞「ああ、そういえば得意なんだっけ。まぁ私は揉ませないけどねー」

京太郎「そんな! 腰をっ、ぜひ腰を!」

塞「………………」

京太郎「……冗談ですよ?」

塞「ほんと大丈夫かしら……あ、ごめん! ここ寄っていい?」

胡桃「唐突だね……」

エイ「ナニカ、アッタ?」

塞「なにかってわけでもないけど、このマネキンの服、結構いいなーって思って」

豊音「よーし、それじゃ入ろー」

京太郎「ここはもう、夏用の新作が入ってますね」

塞「桃鉄仕様だと、来月には夏だからねー」

京太郎「そういえば、塞先輩の夏服ってどんなのですか?」

塞「え、なに急に……うーん、なんだろ。ワンピース系も着るし、普通にカットソーとか、レギンスもあるし、スカートもあるし、パンツもあるし……」

エイ「ナンデモ、ニアウ!」

胡桃「そうかもね、塞の場合は」

塞「え、なにそれ」

豊音「スタイルいいもんねー。背もいい感じだしー」

塞「私としてはもう少し欲しいんだけどなぁ(154cm現在)」

京太郎「宮守だと、ちょうど真ん中ですね。豊音さん、シロさん、それで先輩、エイスリンさん、胡桃先輩と」

塞「…………」

胡桃「…………」

京太郎「え、なんですか?」

塞「いや、別に……」

胡桃「うん、なんでもないけど」

京太郎「そ、そうですか……」

塞(……まぁ、さんはちょっと恥ずかしい……かな?)

胡桃(でも想像してみたら、意外と悪くないんだよね……)

豊音「ねー、入らないのー?」

京太郎「あ、いま参ります。行きましょうか」

塞「ん、そうね……って、エイスリンは?」

エイ「ココダヨ!」

胡桃「ちょっと! ショーウインドウは入っちゃまずいでしょ!」

ウィーン ッシャーセー

京太郎「ここは入っていい場所みたいですね」

塞「ちょっと焦ったわ……」

エイ「ゴメンネ?」

豊音「店員さんの許可があったんだし、大丈夫だよー」

胡桃「さて、それじゃ塞の眼鏡探そっか」

塞「そんなの買いに来てないから!」

京太郎「まぁ視力悪いわけじゃないですもんね。勉強中とかも、使ってませんでしたし」

塞「塞ぐ用だからね、とりあえずは」

京太郎「似合うから好きだったんですけどね、モノクル塞先輩」

塞「すっ――ちょ、ちょっと、やめて……」カァッ

胡桃「塞、赤くなってるよ」

塞「な、なってないって……」

豊音「ちょーかわいいよー」

エイ「ヨー」

塞「あぁぁぁっ、いいから! 私、あのマネキンの試着させてもらってくる!」

京太郎「あ、塞先輩……」

胡桃「はい、それじゃこっちは私たちで」

豊音「色々選んでくるから、そのあと決めてねー」

京太郎「あ、はい」

エイ「ツギハ、ワタシダカラ!」

京太郎「わかってます。では、お待ちしてますので」

京太郎「ふーむ、どうしよう……」

京太郎「というか、女性用のブティックで男一人って、妙に見られるような……」

京太郎「俺は自由を愛する狼だ! ちょっと見て回るとしよう……」

京太郎「お、こっちのほうは小物も売ってるのか、なるほど……結構、質がいいな。それにデザインも悪くないし――」

京太郎「そういや、まこさんがこういうの持ってたような……」

京太郎「話し方からは和風なものを感じるのに、店の制服といい、洋風方面にも明るいんだよなぁ、まこさん」

京太郎「――誕生日、たしか明日だよなぁ……どうしようか」

京太郎「……やめとくか。大それた物送って、困らせるのもなんだし」

エイ「キョータロー?」

胡桃「おーい、京太郎くーん」

京太郎「っと、やべっ……はーい! 戻ります!」

京太郎「……あれ?」

塞「色々迷ったけど、これにするわね」

京太郎「俺が選ぶのはなしですか?」

塞「いや、ごめん……選択肢はあったんだけど、京太郎くん探してる間に、これにしたいなって思っちゃって」

京太郎「ああ、そうなんですか……こちらこそ、すいませんでした」

塞「ううん、それはいいんだけど……で、これに合いそうなの、選んでもらえるかな」

塞「豊音のは結構よかったし、期待してる」ポンッ

京太郎「――はい!」

京太郎「とは言ったものの、どういうのがいいか……選ばれたのは、スカートでした」

京太郎「こういうロングスカートは、豊音さんのイメージだったけど、塞先輩にも似合いそうだな」

京太郎「イメージだと上をネイビーとか、濃い青系にして……そういえば身長の話もしてたし、ヒールもちょっと冒険して――」

京太郎「白のロンスカに合わせまして、ブルーのチュニックを。こちら、ミニスカートやショートパンツにも合うかと思いますので、ぜひ」

塞「う、うん……でもミニは――」

京太郎「ぜひ」

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最終更新:2026年01月18日 23:42