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~部活終了


まこ「よし、今日はここまでにしとくわ。各自、片づけに入りんさい」

京太郎「よぉーし! 久々の掃除当番だ!」

和「なぜそこまで……」

咲「これも私が可愛いからだよね!」

優希「それはもういいんだじぇ、咲ちゃん」

久「それじゃ、あとよろしく~」

ムロ「お疲れさまでしたー」

ミカ「先輩のことは私にお任せください♪」

久「……やっぱ残ろうかしら」

まこ「ええけぇ、あんたははよう帰りんさい」

和「……少し前から気になっていましたが、加藤さんは京太郎くんが好きなんですか?」ボソボソ

ミカ「え? はい、そりゃもう」

咲「……ど、どのレベルかにもよるよね」ヒソヒソ

ミカ「嫁入り不可避です」

優希「おうふ……随分ぶっちゃけるじぇ」

ミカ「だって先輩方に比べたら、一年ハンデありますからね。押して行かないと、追いつけるものも追いつけません」

ムロ「……なんで私を見ながら言うの」

まこ「お前らは掃除せんならはよう帰れ」

京太郎「――ふぅ、掃除はいいなぁ……自動卓も、隅から隅まで綺麗にしてやるぞー」

京太郎「あとは、仮眠用ベッドのシーツ代えて、と……明日は朝から、洗濯と布団干しだな」

京太郎「……よし、それじゃ帰るとするか」


~遭遇なし


京太郎「暗くなる前に、みんな帰ってくれたみたいでよかった……」

須賀母「だったら泣かないの」

京太郎「さ、寂しかったわけじゃねーんだからな!」

須賀母「……待っててって言っとけばいいだけでしょ」

京太郎「へっ、男がそんな女々しいこと言ってられっかよ」

須賀母「泣いてるほうが女々しいでしょ……まったく、あんたは変なとこで見栄張るんだから」

京太郎「男は見栄張ってなんぼだろ」

須賀母「お父さんは張らないとこではとことん張らないわよ」

須賀父「おう、飛び火させんのやめーや」

京太郎「オヤジ、それでいいのかよ……」

須賀父「俺と愛宕の共通認識よ。まぁここぞってとこで張りゃいいってことだな、うん」

京太郎「俺は常にかっこつけたい! そしてモテたい!(切実)」

須賀父「そこは見栄張れよ……」

須賀父(――でも実際は、かなりあれなんだろ?)

須賀母(かなりあれよ。その気になればあっさり10人くらい嫁ができるわよ)

京太郎「モテてえええええええええ! ギブミー彼女!」

カピー「キュイー…… (気づかないのがご主人様のいいところですね)」




~第三週土曜、夜

京太郎「――ってことで、今日は夜通し、いかにすれば彼女ができるか考えたいと思う」

嫁田『つまんねーことで電話してくんな』

京太郎「」

京太郎「――ってことで、今日は夜通し――」

姫松男子『明日はえーんだよ、お前も知ってるやろ』

京太郎「」

京太郎「どうやったら彼女ってできんの?」

モブ田『俺が知りたいわ』

モブ子『その気になりゃできるだろ』ガツガツ

京太郎「スカイプしながら飯食ってんじゃねーよ」

京太郎「はぁ……有益な意見はなかったなぁ」

カピー「キュキュイ (ドンマイです、ご主人様)」

京太郎「ありがとなー。さて、夜通しできなかったせいで、時間も余っちまった――」

京太郎「……そういやあれだ、今月もそろそろ終わりだよな」

京太郎「ってことは……そろそろデートしたいなと思うわけですよ、須賀さんは」

カピー(上条さんは、みたいな言い方してる……)

京太郎「ってかデートしてぇ……そしてあわよくば彼女作りたい」

京太郎「いや、それは望みすぎか……まぁとにかく――」

京太郎「デートしよう!」

京太郎「日程は、まぁ明日しか無理なんだけど……」

京太郎「――あ」

京太郎「そういえば、今週って照さんがこっちにいるんだったな……」

京太郎「………………」


京太郎(照さんは、俺のことを本気でどう思ってるんだ……?)

京太郎(俺にとっては、いい先輩で、ちょっと天然だけど可愛い人で、あと麻雀が強い……)

京太郎(……それで、初恋の相手だ)

京太郎(そんな人が、当時と同じ距離感でいると、色々と……悩ましいというか、困惑するんだよなぁ)

京太郎(照さんがどういうつもりなのか、聞いてみるいい機会かもしれない……)

京太郎「――よし」ピッピッ

京太郎「……出るかな、照さん。あと今日は、どこにいるんだろ……」

京太郎「………………」プルルルル プルルルル

ピッ
照『お待たせ京ちゃん! ごめん、咲が取るの邪魔してて……』

咲『なんでそういうこと言うの!』

照『いいからあっち行ってて』

京太郎「騒がしいですね……というか、咲がいるってことは、今日はご実家ですか?」

照『うん。京ちゃんの家でもよかったんだけど――』

京太郎(いや、それはよくなくないか?)

照『明日もオフだし、月曜も試合はないから、ゆっくりして帰れるなって思って――』

照『……ごめん、話しすぎた。京ちゃんの用を聞いてない』

京太郎「いえ、大丈夫です」

京太郎「照さんと話すの久々ですし、ゆっくり話してくれていいですよ」

照『そう?』

咲『だめでしょ、ちゃんと聞いてあげないと――』

照『いいから、あっち行ってて』

京太郎「……改めたほうがいいですか?」

照『ううん、平気。部屋に戻ったから』

京太郎「そうですか……」

照『それでね、今日は久しぶりに小学校とかにも行って――』

京太郎「学校、入れました?」

照『うん。なんかサイン書いてって頼まれたから、置いてきたよ』

京太郎「いいですね。後輩たちが、照さんを目標にするかもしれません」

照『……それなら嬉しい。麻雀を好きになってくれる子が、少しでも増えるなら、続けてる甲斐もある』

京太郎「大丈夫ですよ。麻雀してる照さんは、本当に綺麗でかっこいいですから……誰だって憧れます」

照『きょう――』

京太郎「はい?」

照『……ううん。なんでも』

京太郎「そうですか」

照『うん』

照(……京ちゃんも? とは聞けなかった)

照(なぜなら、京ちゃんはとっくに私に憧れてる、それを通り越して好きになってるから)

照(…………はっ! つまり今日の電話は、プロポーズ!?)

照『…………っ……きょ、京ちゃん』

京太郎「はい?」

照『その、私ばっかり話してるのもなんだから……なにか言って』モジモジ

京太郎「えーっと……それじゃ、ちょっとだけ用事を済ませてもいいですか?」

照『え、早速!?』

京太郎「……なにか、まずいですか?」

照『ちょっと待って、心の準備がまだ』

京太郎「あ、はい」

照『すぅ……はぁ……』

京太郎「…………」

照『ひっひっふー』

京太郎「それは違います」

照『あーあー、アメンボ赤いなあいうえ――アメンボって赤くないよね?』

京太郎「知ってるんでしょ? 北原白秋です」

照『さすが』

京太郎「そろそろ大丈夫ですか?」

照『……うん、お願いします。ふつつかものですが』ペッコリン

京太郎「では――その、単刀直入に言います」

照『はい』

京太郎「……明日、俺とデートしてください」

照『………………あれ?』

京太郎「え、なんですか、その反応は……」

照『予想外だった』

京太郎「にしては、動じてないですよね」

照『ハードルを高くしてたら低いのが来た感じだから』

京太郎「はぁ……あの、すいません……」

照『謝らなくていい。京ちゃんのそういう、段階を踏むところは嫌いじゃない。むしろ好き。大好き』

京太郎「……えっと、つまり――」

照『うん、大丈夫。誘ってくれて、嬉しい……楽しみにしてるから』

照(つまりこれは、デート後にっていう流れだよね……よし、緑の紙は持っていくことにしよう)

京太郎「あの、俺とデート、なんですけど……本当にわかってます?」

照『もちろん。大丈夫、京ちゃんと一緒なら、どこにだって行くよ』

京太郎「……わかりました。ありがとうございます」

京太郎「その……退屈させないように、頑張ります」

照『京ちゃん』

京太郎「はい」

照『……いつも通りで大丈夫だよ。京ちゃんと一緒にいて、退屈だったことなんてないから』

京太郎「照さん……はい!」

照『念のために確認するけど、二人だよね?』

京太郎「もちろんです!」

照『ん、なら安心。それじゃ、明日……あ、朝から迎えにいこうか?』

京太郎「……すいません、昼からの予定です」

照『』テルーン

京太郎「朝は練習ありますからね」

照『……わかった。私も行く』

京太郎「はは、それはみんなが喜びますよ」

京太郎(冗談、だよな?)

照『任せておいて。それじゃ、明日……えっと――よろしくお願いします』ペッコリン

京太郎「はい。こちらこそ……それでは」

照『うん……また明日』

照『……また、明日……また言えた』

京太郎「……照さんが東京に行ったからですよ、言えなくなったのは」

照『ごめん……』

京太郎「冗談です。それじゃ、また明日……」

照『うん、また明日!』


京太郎「……………………ふぅぅぅっっ、やったっ!」

京太郎「やったぞカピー! 照さんがデートしてくれるって!」

カピー「キュイーッ! (おめでとうございます! でも知ってました!)」

照「……ふぅ……」

照「京ちゃんと、デートかぁ……」

咲「!? ちょっと、いまのどういうこと!」

照「あ、咲いたの?」

咲「そりゃいるよ! リビングだもん!」

界「……俺も聞き捨てならねぇなぁ」

照「お父さんには関係ない」プイッ

咲「私は認めないからね!」

照「咲には関係ない。でも帰ったら、お土産話してあげるから」

咲「いらないよ!」

照「あ……でももしかしたら、帰らないかも?」ムフー

界「」

咲「~~~~~~~~~っっ!! そ、そんなことにならないよ!」

照「なぜ?」

咲「私のときは、そういうのなかったもん!」

照「咲は私の妹。妻の妹とのデートで、お泊りはありえない。あとおもち的にもありえない」

咲「誰が妻なの! あと、おもちはお互い様でしょ!」

照「私。そして私のほうが1ミリは大きいはず」

咲「……認めない!!」

照「なら麻雀で決着つけるしかないか……」フゥ

咲「いいよ、望むところ!」

照「あ、そうそう。麻雀といえば……明日は、私も練習行くから」

咲「ふーん、いいんじゃない?」  ←佐久かどこかに参加すると思ってる

照「でも朝は起こさないからね、寝坊しちゃだめ」

咲「子供じゃないんだから……」

界「こ、子供だろ! お前ら二人とも、まだまだ子供だ!」

咲照「お父さんは黙ってて!」

界「……めげるわ」

~5月第三週日曜、朝

ブーッブーッブーッ

京太郎「お? はい、もしもし」

シロ『おはよう』

京太郎「おはようございます……はっ、はっ……ふぅっ……」

シロ『あ、忙しかった? 右手とか』

京太郎「いえ、大丈夫です……ランニング中で……はぁっ、ふっ……」

シロ『ああ、そっち……かけ直したほうがいい?』

京太郎「問題ありません。それより、結構朝早いのに、珍しいですね」

シロ『起こされた』

京太郎「先輩にですか?」

シロ『宅配』

京太郎「…………ああ」

シロ『まだ開けてないけど、サイズ的に指輪?』

京太郎「惜しいです、けど違います」

シロ『指輪じゃなかったか……やっぱあの人たち頼りになんないな』

京太郎「はい?」

シロ『先輩たち。箱見て、絶対指輪だって。なんか爆発しろって言われたし』

京太郎「大変でしたね……なんかすいません」

シロ『京太郎が悪いわけじゃない。それより、開けてみていい?』

京太郎「ええ、どうぞ」

シロ『じゃあ遠慮なく――あ、その前に』

京太郎「?」

シロ『ありがと、覚えててくれて』

京太郎「いえ……お気に召すものを贈れたか、わかりませんし」

シロ『選んだのが京太郎なら、よっぽどじゃない限り大丈夫じゃないかな』シュルシュル

シロ『…………おー』

京太郎「……いかがでしょうか」

シロ『これは……あんまりつけたことないけど、イヤリング……かな?』

京太郎「はい。その……シロさんって、髪をあまり伸ばされないので、耳周りがスッキリしてるかなー、と」

シロ『なるほど』

京太郎「そのアクセントになれば、と……あとは、そういうのを着けているシロさんを見たくて」

シロ『ふんふむ』

京太郎「デザインとしては、おとなしめのものを選んだつもりですが」

シロ『悪くない』

京太郎「ほんとですか!?」

シロ『上品で、あと可愛い……』

京太郎「ありがとうございます」

シロ『ただ、問題は――』

京太郎「なにかありましたか!」

シロ『これまで京太郎が、何人に貴金属を贈ったか』

京太郎「……は?」

シロ『私は何番目なのかな?』

京太郎「……ひ、一人目――」

シロ『――では、ないよね?』

京太郎「はい……」

シロ『何人目?』

京太郎「えと……ガラス細工とかは抜きでいいですか?」

シロ『アクセ系なら込みで』

京太郎「はい……」

京太郎「――えっと……淡、小蒔先輩、塞先輩、豊音さん――」

シロ(塞は……あれか、簪。豊音も? なんだろ……そういや、髪飾りつけてたな、あれかな)

京太郎「それに灼先輩、絹恵さん、セーラ先輩……」

シロ(さすがに多い……)

京太郎「で、良子さんと――シロさん、なので9人目ですね」

シロ『あれ、意外に少なかった』

京太郎「どういう意味ですか」

シロ『もう全員に手当たり次第、アクセ渡してたらどうしようかと思ってたから』

京太郎「んなことしませんよ……」

シロ『ごめん、せっかくくれたのにね』

京太郎「いえ、それは別に……」

シロ『イヤリングは気に入ったよ、ありがとう……たぶんこれは、似合ってると見ていいと思う』クルッ

京太郎「え、つけたんですかっ、いま? 見せてくださいよ!」

シロ『いいけど……あ、いや――その前にクイズ』

京太郎「なにぃっ!?」

シロ『私がどうして、あんな質問したと思ってるか……一応、聞いておきたい』

京太郎「……俺が手当たり次第、貴金属を配りそうなやつと思ったからですか?」

シロ『だからごめんってば……それが答えなら、それでもいいけど』

京太郎「……たぶんですけど、俺が誰になにをあげたか、ちゃんと把握してるか……その確認、でした?」

シロ『』

京太郎「……うっ、違いましたか」

シロ『驚いた……鋭いね、京太郎なのに』

京太郎「どういう意味ですか」

シロ『だいたい正解だってこと。こういうプレゼントを、なにも考えないで渡してるんじゃないって、わかってよかった』

シロ『……あ、疑ってたわけじゃないから』

京太郎「いまさら!」

シロ『ほんとなのに……』

京太郎「そりゃちゃんと覚えてますよ。お世話になった人たちへの贈り物なんですから、似合うものをチョイスしてるわけですし」

シロ『まぁたしかに』

京太郎「とはいえ、気に入っていただけるかは、別ですけどね……」ハハ

シロ『たぶん、みんな気に入ってるよ』

京太郎「そうでしょうか……やっぱり、人に物贈るのは緊張しますよ」

シロ『大丈夫。もらった私が喜んでるんだから、間違いないよ』

京太郎「シロさん……」

シロ『ありがとう……これは、ダルがらずにちゃんと手入れするから』

京太郎「はい……」

シロ『で、毎試合つけていく』

京太郎「女性はアクセサリーも変えたほうが、いいと思いますよ。服装やTPOに合わせて」

シロ『そう言われても、貴金属はあんまり持ってない……っていうか、全然……』

京太郎「あー」

シロ『なにその反応』

京太郎「いえ、別に」

シロ『今日、誕生日なんだけど』

京太郎「おめでとうございます」

シロ『ありがと……で、なにその反応』

京太郎「……シロさんらしいなって」

シロ『どうせお洒落とかしないよ』フンッ

京太郎「え? いや、そうじゃなくて……わざわざ飾らなくても映えるくらい、綺麗だからだなーっと」

シロ『』

シロ『……バ、バカ……なに言ってるの、急に』

京太郎「で、正解だったってことは――見せていただけるんですよね?」

シロ『な、なにをっ?』

京太郎「やだなぁ、さっき仰ったじゃないですか。イヤリングがどれだけお似合いか、見せてくれるって」

シロ『……あぁ、そういえば』

京太郎「忘れないでくださいよ!」

シロ『……あれだ。生で見たほうが、臨場感とか見栄えも違うと思うけど』

京太郎「見たいときに見るほうが、いい印象を覚えるはずです」

シロ『外さないと、ほら……朝食のとき、先輩に見られるし』

京太郎「いま見せてくだされば、外しても大丈夫っす!」

シロ『……そんなに、見たい?』

京太郎「ぜひに!」

シロ『はぁ……わかった』

京太郎「やったぜ。」

シロ『ほんと、甘え上手……じゃああとで写真撮ったら、送るから』

京太郎「あーざーっす!」

シロ『……あんまり期待しないように』

京太郎「えっ……や、やっぱりデザイン的に――」

シロ『じゃなくて……引っ張ってハードル上げたから、変に期待されてても困る』

京太郎「……はっはっは! なに言ってるんですか、大丈夫ですよ!」

京太郎「俺は似合うと自信を持って贈ったんです、それを先輩が気に入ったんなら――」

京太郎「それは、よくお似合いだってことですよ。安心してください」

シロ『………………キザ』

京太郎「ひどい!?」

シロ『だけど…………うん、ありがと……』

京太郎「送ってくださいますか?」

シロ『……見たいだけだね』

京太郎「うぅ……否定はしません」

シロ『ふふっ……いいよ、あとで送る』

京太郎「っしゃぁ!」

シロ『……ありがとね、すごく嬉しい』

京太郎「いえいえ、お気に召してよかったです」

シロ『大事にする』

京太郎「贈った甲斐があります」

シロ『いい誕生日になるよ、今日一日』

京太郎「はい……誕生日、おめでとうございます。本当に」

シロ『ん……じゃ、ね。朝からごめん、ありがとう』

京太郎「いえ。またいつでも、かけてきてください。では」

京太郎「シロさん可愛いです、似合ってますよ……と」カチカチ

『いまのメール、照とかに転送していい?』

京太郎「絶対にNO!」

『ごめん、もう送っちゃった』

京太郎「」

照「……そういえば、今日ってシロの誕生日だった」

咲「誰?」

照「小瀬川白望」

咲「ああ、宮守の……」

照「たぶん京ちゃんがなにかあげたのかな……で、それが似合ってると」フンフム

照「律儀だね、京ちゃんは。さすが私の旦那様」ムフー

照「シロにはメールしといてあげよう。たんおめ、私の旦那様からのプレゼント、大事にしてね、と」カチカチ

シロ「……は?」

シロ「……オーケー、ならば戦争だ……と」カチカチ

京太郎「……なにやら嫌な予感がするのう」


~日曜、登校

京太郎「……シロさん、マジで照さんにメールしたのか?」

京太郎「あとで会ったとき、なにか言われそうだな……」

京太郎「……いやいや。俺は誕生日プレゼントを贈って、それが似合うって言っただけだし」

京太郎「……いや、でも照さんにあげたのって……お菓子だったし。うーむ……」

久「なーに難しい顔してんの、朝っぱらからー」

京太郎「あ、部長……おはようございます」

久「背中伸ばして、シャキッとしなさいよ。女にモテないわよ」パンッ

京太郎「あたっ……いいですよ、自覚してますし」

久「……ほんっとダメねー」

京太郎「ひどい!」

ムロ「ん? あ、おはようございます! 監督、先輩」

久「あら、おはよ」

京太郎「おーっす」

ムロ「……あの、先輩? 監督になにか言われたんでしょうか」

久「ちょっと、どういう意味!」

ムロ「い、いえ、先輩が悩んでるご様子だったので……で、お隣には監督がいらっしゃったので」

久「京太郎、なんとか言ってやりなさい」

京太郎「部長が俺に、お前はモテないって言うもんでな」

ムロ「は、はぁ……そうなんですか?」

久「だいぶニュアンス違うわよ」

ムロ「なんだかよくわかりませんけど……先輩はモテないってことないと思いますけど」

京太郎「いや、別にモテなくてもいいんだよ。彼女ができればそれで」

ムロ「……それも大丈夫だと思うんですけど」

久「ほっときなさい、ムロちゃん。このバカはそういう生き物なのよ」

京太郎「なんでですか! いいじゃないっすか、俺が彼女欲しがったって!」

久(……なら私がなってあげる、とか言ってもあれよねぇ……)

ムロ「欲しがるのはいいですけど、学校ではあまり大声で言わないでくださいね。後輩として少し恥ずかしいので」

京太郎「う……はい」

久(グッジョ)

ムロ(だって練習どころじゃなくなりそうですし……ミカとか和先輩とか)

久(そうなのよねぇ……でもムロちゃんもでしょ?)ニヤニヤ

ムロ(監督ほどではないと思います)

久(でも否定はしない)

ムロ(むぐっ……)カァッ

久(あらあら、初々しいわねぇ)

京太郎(楽しそうだなぁ、なに話してんのかわかんねーけど……)

京太郎「……なー、なに話してんだ?」

ムロ「せ、先輩には関係ありませんっ!」

京太郎「」




~部室

京太郎「」

まこ「」

和「」

優希「」

ムロ「」

咲「……ごめん、みんな」

「……本物?」
「だと思う……宮永先輩にそっくりだし」
「角とか……とか……」

咲「なに?」ニコー

「ヒッ」
「言ってませんおもちとか言ってません」
「こいつが言いました!」
「やめろっ、シニタクナーイ」

ミカ「おおおお、すごい! 本当に宮永プロだ!」


照「みなさんおはようございます。プロチーム恵比寿所属、宮永照です。いつも妹がお世話になっております」

照「本日は少しでも、そのお礼ができればと思い、練習に参加させていただきます」

照「なにかわからないことなどありましたら、遠慮なく聞いてくださいね。どうぞよろしくお願いします」ペッコリン


久「……それは営業モード?」

照「失礼な、本心だよ」

京太郎「なにやってんすか照さん!」

照「あ、京ちゃん。シロにはなにあげたの?」

京太郎「」

咲「なんの話?」

照「朝話したでしょ。シロの誕生日、京ちゃんがなにかあげたみたい」

京太郎(やめてぇ! 広めないで!)

和「へー」ジトー

優希「相変わらずだじぇ……」

まこ「ちなみにわしがもろうたんは、店で使うようになったハンドベルじゃ」

咲「業務用品じゃないですか……」

照「私はこれ」ペロン

ムロ「写真……?」

ミカ「うわああああああああ! チューしてる!!!!!」

ザワァッ……

京太郎「ミカちゃん落ち着け! 頬にされてるだけだろ!?」

和「一回は一回です!」

優希「き、きき、貴様というやつはっっ!」

咲「なにこれ」

照「誕生日に東京来てくれたから、サービスした」

久「あんたなにやってんの……」

まこ「で、小瀬川さんにはなにやったんじゃ」

京太郎(……帰りたい)

優希「おぉ、ダルいお姉さん似合ってるじぇ」

和「さすがにセンスいいですね」

咲「私にはこういうのくれないのに……」ムー

照「咲にはまだ早い。大人になってからにしなさい」

まこ「すでに誕生日いうたら、久は――」

久「なぁに?」

まこ「…………さ、さて、部活始めるか」

ミカ「……どうしたんだろうね」ヒソヒソ

ムロ「あんたわかってて言ってるでしょ」

京太郎「そろそろ携帯返してくんないかな……色々とやばいのが入ってるし」

照「大丈夫」

京太郎「照さん」

照「尭深の昔の写真は、内緒にしといてあげる」

京太郎「!? み、見たんですか……?」

照「見たよ。石戸さんとか愛宕さんとか、巴とか」

京太郎「」

照「大丈夫、私もそろそろ育ってるから」

京太郎(それはないです)

京太郎「打とう……打って忘れよう、色んなことを」

照「午後の約束は忘れないでね」

京太郎「もちろんです」

久(……モロに聞こえてるんだけど)

和(なんですかっ、午後ってなんなんですかぁぁっ……)

咲(家に来たら邪魔してやるっ……)

優希(うぅ、羨ましいじぇ……)

まこ「ええから練習せんかい、ほれ箱」

照「なにあれ?」

ムロ「当たりを引けば、京太郎先輩と対局です」

ミカ「最近は私たちがよく引いてます」

照「ほう」ギュルルルルル

京太郎「威嚇しないでください」

照「気合い入れてるだけなのに……」テルーン

久「よーし、引いた!」

照「当然の結果」

ミカ「あわわわわ」

京太郎「おうふ……」

咲「ミカちゃん、代わろうか?」

ミカ「だだ、大丈夫です……」

和「震えてますよ」

優希「なに、武者震いというやつだじぇ?」

まこ「そうは見えんが……」

久「まぁこれも経験よ」

ムロ「グッドラック」

ミカ「ががが、頑張りますよー」

京太郎「無理はしないように。んじゃ、やりますか」

京太郎(照さん相手に、手加減はないな……うん)ジー

照「?」

照「!!」

照「(・ω<)」パチーン

京太郎「部長と同じことやってます、照さん」

照「!?」

久「私のほうが可愛いでしょ?」

照「それはない」

久「だって。どう、京太郎?」

京太郎「……イーブンで」

ミカ「ギリギリ逃げ切れてないですね」

京太郎「あーもう! いいから始めるぞ!」

京太郎「一応確認ですけど……照さん、手加減したりは――」

照「京ちゃんがするならするけど、指導だし」

京太郎「……照さんがするならします」

照「…………」

京太郎「…………」

久「なんで動いたら負けみたいになってるの」

ミカ「どっちでもいいですよ、私は本気です!」

ムロ(そりゃそうでしょ、余裕ないでしょ)

京太郎「……じゃ、やりましょうか」

照「よろしくお願いします」

久「はい、よろしくー」

ミカ「が、頑張ります」ジワッ

京太郎「落ち着いていこう。大丈夫だからな」ポンッ

ミカ「っ! はい!」ニコッ

照「」ギュルルルルルルル

久「おとなげないわねぇ……」

久25000→
照25000→26000
ミカ25000→24000
京太郎25000→


照「……まただ」

京太郎「?」

照「ロン、1000点です」

ミカ「は、はいぃ……」

久(東一から照が上がるんだ……やっぱり、京太郎が入ると妙なことになるわねぇ)

照(前に京ちゃんが見せた鏡のイメージ……あれのせい?)

京太郎「……なんでしょうか」

久「ううん、なんでも」

照「続けよう」

京太郎「あ、はい」

久25000→
照25000→26000
ミカ25000→24000→16000
京太郎25000→33000

京太郎「――ロン、満貫。8000点」

ミカ「うぅぅぅ……はい」

久「鬼畜」

照「ドS」

京太郎「なんでですか!?」

照「私は久狙いだった、たぶん次で当たってた」

久「ちなみにこれ」トン

照「ロン」

京太郎「マナー違反ですよ、二人とも」

照「それは認める。それに、京ちゃんが悪いとも思わない」

久「そうね。麻雀なら上がれるところから上がるのは基本、そこから学べることもあるし」

京太郎「でしょう?」

照「でもかわいそう」

久「思いやりも大事よね」

京太郎「ミカちゃん、なにか言ってやって」

ミカ「ドSな先輩も素敵ですよ」

京太郎「」

照「まぁかく言う私も、後輩と打つときは毟り取ってたけどね」

久「鬼畜ねー」

照「菫はもっとひどかった。泣いてる子もいた。ドMのくせに相手泣かせるなんてひどいと思う」

京太郎「それテレビでは二度と言っちゃだめですからね?」


久25000→24600
照25000→26000→25600
ミカ25000→24000→16000→15300
京太郎25000→33000→34500


京太郎「――で、相手の親は早めに流すことを心がける」

ミカ「ひどい……」

久「でもセオリーよね」

照「うん」

京太郎「それじゃ、次は俺の親だから、そこで実践し――」

久「逆転手狙いつつそれは、厳しいわねー」

照「この状況だと、一位……京ちゃんはそれ以上に早く上がって、上がり止めになる」

ミカ「どうすればいいんでしょう……」

久「神に祈りなさい」

照「早く上がろうとする京ちゃんより早く、逆転手を作る。昔の京ちゃんなら、最終局で手こずることが多かったし」

ミカ「……最近の京太郎先輩は?」

照「隙がない。集中を反らさせたりして、隙を作るしかないかも」

ミカ「こ、こんな感じですかね」チラッ

京太郎「……スカートめくらない、はしたないぞ」

ミカ「見ましたね?」

京太郎「お前が見せてんの! だから見せるなって!」

久「はぁー、あっつい」パタパタ

京太郎「露骨に胸元引っ張らないで!」

照「……あー、あつい」パタパタ

京太郎「どうぞ、冷たい飲み物です」

照「……あれー?」

咲「お姉ちゃんがやってもね……」

和「咲さん、涙拭いてください」


ミカトビ、京太郎トップ


京太郎「――はい、お疲れさまでした」

ミカ「お疲れさまでしたー」

久「……お疲れ」

照「さすが京ちゃん」

京太郎「しょうがないじゃないですか、すげーよかったんですから!」

照「別に咎めてないのに」

久「心にやましいことがある証拠ね」

京太郎「くそぉっ……」

ミカ「そんなことより……京太郎先輩、なんか普通に宮永プロに勝ってるんですけど……」

久「だって、宮永プロ?」

照「あまりこういうことは言いたくないけど……京ちゃんは普通に強い。本気のトッププロでもない限り、たぶん敵わないレベル」

京太郎「それは言い過ぎでは……」

照「もちろん私も、簡単に負けるつもりはなかったけど……いや、言い訳になるから、それはいい」

照「とにかく、私もまだまだだってこと……それに無敗でいると、婚期も遠のくって聞いてるし」

久「あー」

京太郎「……一応弁解しておきますけど、あの人も…リオの東風では銀メダルですから、負けてますよ?」

照「あの人って?」

久「誰のことかしらねー」

京太郎「……俺をはめやがったな!?」

ミカ「誰のことなんですか、せんぱーい」

京太郎「ちがっ……違うんだって! 無敗って言うから……しょうがないだろ!?」

久「まぁ冗談はともかく……これは今年の夏も、優勝狙えるわね」

照「それは春から心配してない。来年の二つも取れるはず」

ミカ「となると――先輩も卒業後はプロでしょうか?」

照「だと思う」

京太郎「いや、勝手に決めないでください。俺はまだ、そういうの決めてないからさ」

ミカ「先輩なら、なんでもできそうですからねー、羨ましいです」

久「けど、決めるなら早いほうがいいわ。高二の夏が終わったら、卒業まであっという間よ」

京太郎「……はい」

京太郎「進路か……先輩はどうするんですか?」

まこ「わしか? まぁ婿取りじゃな」

京太郎「!?」

まこ「店を継ぐなら、いうことじゃな。どっちにしろ、大学は行かんわい」

京太郎「まこ先輩は頭いいし、進学してもいいと思うんですけど」

まこ「それよりは経理やらの勉強がしたいけぇの。実地で経験しながら、勉強して資格でも取るわい」

京太郎「就職は、ルーフトップにってことですか?」

まこ「よさそうな店があれば、よそでもええと思うとる。幸い、バイトは足りとるわけじゃし」

京太郎「なるほど……」

まこ「まぁ切り盛りしてくれる旦那がおれば、主婦業に集中するわい」カッカッカ

京太郎「先輩、家庭料理上手ですもんねぇ……いい奥さんになりますよ」

まこ「そ、そうか……?」

和「」ガタッ

咲「」ガタッ

優希「」ガタッ

京太郎「……な、なんだ?」

和「いえ、進路のお話に参加しようかと」シレッ

咲「私は進学かなぁ」

京太郎「いや、プロ行けよ」

咲「えー……京ちゃんが行くなら行くけど」

京太郎「進路ってそういうもんじゃねーだろ」

優希「先に行けだのなんだの言ってそれはないじぇ」

京太郎「う……そういや、お前は?」

優希「私はタコスキングになる!」

京太郎「なるほど、就職だな……和は進学だよな?」

和「そうですね、教育学部を考えています」

京太郎「先生になりたいんだっけ?」

和「まだ漠然と、ですが」

京太郎「みんな色々考えてんだよなぁ……」

優希「私の扱いだけ雑だじぇ!」

京太郎「答えが雑だからだろ……」

ミカ「先輩はやっぱり、執事になるんじゃないんですか?」

京太郎「コネを考えても、就職先の当てが龍門渕しかないしなぁ……けど、師匠に迷惑かもしれないし」

ムロ「じゃあ進学ですね。T大とか」

照「それはダメ。菫や智葉と一緒じゃない」

京太郎「だめって理由にはなりませんよ」

京太郎「なんにせよ……真面目にかが得ないとなぁ」

久「はいはい、悩むのもいいけど、そろそろ練習に戻ったら?」

まこ「おお、そうじゃった」

照「部長さんでしょ、しっかり」

まこ「う……はい、すいません」

久「うちの後輩いじめないでよ」

照「久はなんだかんだ甘いから」

久「そりゃそうよ、私は優しい女だもの」

京太郎「ソウデスネ」

久「なぁに?」

京太郎「いえ別に……さーて、練習練習」

咲「練習(するとは言ってない)」

和「練習(料理)」

優希「練習(タコス)」

京太郎「……最後のはどうかなぁ」

照「………………」ジー チラッチラッ

京太郎「……照さん、なに食べたいですか?」

照「えっ、いいの?」

京太郎「はい、どうぞ」

照「パフェ! あとはプリン!」

京太郎「ふむ……わかりました、やってみます」

照「あとはね、チョコと、クレープと――」

京太郎「……わ、わかりました。頑張ります……」

照「うん! 待ってる!」キラキラ

「私の知ってる宮永プロと違う」
「こういう人だったのか……」
「でもかわいい」

照「そんなことはない」キリッ

京太郎「いや、かわいいですよ」

照「やっぱり?」

咲「はいはい、おやつ作るんでしょ」

和「お姉さんはあちらに。打ちたがってる子たちがいるので」

照「ああ、京ちゃん……」

京太郎「……じゃ、いってきまーす」

「よし、いくか――」
「今日のはプロにおだしするんだ、緊張するな……」
「ま、いつも通りやろうぜ」


照「……なにあれ?」

久「京太郎の弟子」

照「京ちゃん、立派になって……」ホロリ

咲「別にお姉ちゃんが育ってたんじゃないじゃない」

照「夫が立派になれば妻は嬉しいもの」

咲「じゃあ私も嬉しいね」

和「じゃあ私も」

久「じゃ、私もー」

ミカ「私もってことで!」

ムロ「なんなのこの人たち……」

優希「の、乗り遅れたじぇ……」

まこ「わしらにはわしらのキャラがあるわ」

京太郎「さて――プリンは俺がやろう。お前はクリーム、そっちはスポンジ準備、あとはフルーツのカットと各種ソースな」

『了解です!』

京太郎「――さぁ、ショウタイムだ!」

京太郎「よし――ここで締めに、オリーブオイル」ダバァ

「ファッ!?」

京太郎「……いや、冗談だぞ? ほい、完成だ」

「これは……カタラーナ?」

京太郎「三層になってて、カタラーナ、チョコプリン、プリンとなっている」

「底にフレーク、スポンジ、ベリーソースがあって、間にクリーム……」

京太郎「上に三層プリン、そしてフルーツを散らし、チョコプリッツを刺して完成だ」

京太郎「お茶の準備はできてるな! 行くぞ!」

『うっす!』

京太郎「お待たせしました、照さん」

照「ほおぉぉぉっっ……プリン、チョコ、クリーム……クレープは?」

京太郎「ここで仕上げをします……焼き上げたクレープ生地を畳んで、ソースを巻いて……飾り付けて、クレープ添えです」

照「全部盛りだ……食べていいっ?」

京太郎「はい、どうぞご遠慮なく」

照「はむっ!」ベチャー

京太郎「……ごゆっくりどうぞ」

照「おいひい……」ポヤー

京太郎「ふぅ……それじゃ、みんなの分も準備するかな」

咲「なんか差がある!」

京太郎「――失礼いたしました。すぐにご準備いたしますので、少々お待ちを」

和「京太郎くんにとって、お姉さんだけは特別なんでしょうか……」

照「当然」

京太郎「いえ、そういうことではないです」

照「」テルーン

京太郎「まぁ特別ってことはない、はず……そう見えるか?」

優希「必要以上に気を遣ってるじぇ」

まこ「お客さんだからじゃろか」

照「そんな、ひどい……」

京太郎「……そうか、そういう風に見えてたのか……」

照「そんなことないよね?」

京太郎「ないです。大丈夫ですよ、照さん」

照「うん」ムフー

久(……とはいえ、特別ななにかがあるわよねぇ。午後云々関係なく……)ムスー

京太郎「さて……んじゃ、そろそろみんなのも作っていくからな」

「もう作りました」
「配ってます」
「先輩、お茶を」

京太郎「……あ、はい」

ミカ「いやー、男子頼もしくなったねー」

ムロ「……給仕だけすればいいってわけじゃないでしょ、執事だって」

ミカ「応対が求められることもあるもんねー」ニヤニヤ

ムロ「なによ、その顔」

ミカ「べーつーにー?」ニヤニヤ


京太郎「出遅れるとは不覚……お茶くらいは丁寧に淹れさせていただこう」


京太郎「――部長、お茶どうぞ」

久「んー、ありがと」

京太郎「……なにかありました?」ボソッ

久「……なにかって?」

京太郎「いえ、なんと言いますか……さっき照さんのほう見てから、雰囲気が――」

久「なにそれ、照に嫉妬してる的な?」

京太郎「じゃなくて……って、嫉妬?」

久「…………言ってない」

京太郎「いや、言いまし――」

久「言ってないって言ってるでしょ!」ガーッ

京太郎「でもなんで嫉妬なんて――」

久「だからしてないって……」

京太郎「ああ!」

久「っっ!?」ビクッ

京太郎「……今日はあまり話せてなかったですもんね、すいません」

久「違っっ……」

京太郎「…………」

久「……違うわよ。別に……それじゃ、私が京太郎と話したがってるみたいじゃない」

京太郎「俺は話したいですけど」

久「だったら、私が嫉妬してるとか関係ないでしょ」

京太郎「いえ、俺が話したがってるのと同じで、部長も俺と――」

久「話したがってません」

京太郎「」ショボーン

京太郎「……それじゃ、どうして嫉妬――」

久「してません」

京太郎「じゃあどうして様子がおかしいんですか?」

久「……別に?」

京太郎「こっち見てくださいよ」

久「いいでしょー、別に。パフェ食べてるの、邪魔しないでよ」

京太郎「クリームついてますよ」

久「ちょっと!? 頬ならいざ知らず、唇でしょそこ!」

京太郎「いや、ほっといたら部長、舐め取りそうでしたし……」

久「いいじゃない、それくらい!」

京太郎「だめです。もう少し上品な振る舞いをお願いします」

久「なんでよ!」

京太郎「そのほうが綺麗だからです」

久「きっ――って、いつもは違うっていうの?」

京太郎「絶対評価なら問題ないですけど、相対だと……上品のほうが綺麗です」

久「」イラッ

京太郎「まぁ……どっちも綺麗なのは事実ですが」

久「」カァッ

久(くっ……やばい、悔しい……ちょっと嬉しいっ……)

久「……ちょ、調子に乗らない! 京太郎が私の評価なんて、百年早いのよ!」

京太郎「評価というか、印象を語っただけで……」

久「いいから! もうっ……ほら、別におかしくないでしょ? 普通にしてるんだから、そっとしといてよ」

京太郎「うーん……なんか違うんですよね。だっていつもの部長だったら――」

京太郎「『嫉妬? してるわよ、可愛い後輩がよその卒業生にご執心なんだもの』……とか言って、余裕見せてるじゃないですか」

久「……し、してないし。っていうか似てないし!」

京太郎「モノマネのクオリティはこの際いいので……ひょっとして、調子悪かったりします?」ペトッ

久「ひぅっ!?」ビクッ

京太郎「……ちょい熱いですね。顔も赤いですし……もしかして、調子悪いんですか?」

久「……あー、うん、もうそれでいいわ……そうそう、ちょっと体調悪くって」

京太郎「大変じゃないですか! どうしましょう、帰るなら送っていきま――」

久「……へーきへーき。ほら、月に一回はあることだし、いつものことよ」

京太郎「月にって――あ……」

久「……察した?」

京太郎「…………すいませんでした」ドゲザー

久「はぁ……まぁいいけどね。あんまりしつこいと、そういう恥をかくわよ」

京太郎「気をつけます……あの、本当にすいませんでした」

久「……ふふっ、もういいわよ。心配してくれてありがと」

京太郎「いえ……それじゃ、その……お大事に」

久「はーい、ありがと」

久(はぁぁ……なんとか誤魔化せた。けど、違うとはいっても、なんか周期把握されたみたいで妙な気分だわ……)モジッ

京太郎(……女子には色々あるんだよなぁ。このデリカシーのなさは、反省しないと……)




おまけ

照「……久」

久「なによ」

照「京ちゃんと私の近すぎる距離は気になると思う、それは仕方ない」

久「……百歩譲って全部事実としましょう。それで?」

照「だからといって、京ちゃんに当たるのはどうかと思う。京ちゃんはあんなに、久のことを気にかけてるのに」

久「……別に、普通じゃない?」

照「普通であれだけ気を遣うなら、京ちゃんは毎日気苦労が絶えないね」

久「……そういうやつなの、あの子は」

照「ふーん、そうなんだ」

久「そうよ」

照「引退しても卒業しても、ずっと部長って呼んで慕ってくれて――」

久「…………」

照「よその学校の部長も部長って呼ばないで――」

久「……えっ、そうなの?」

照「よそでの会話でその部長に矛先が向きそうになったら、全力で守ろうとするのが――普通なんだ?」

久「…………あ、あいつにとってはそうなのよっ」

照「どんだけ嬉しいの。すっごいニヤニヤしてるよ、久」

久「し、してないわよっ」ニマァァァッ

照「…………まぁあとで鏡見ればいいよ、それは」

照「だけど、京ちゃんはそれくらい久のこと気にしてるんだから……もっと大事にしてあげればいいと思う」

照「私の次くらいには、大事に思ってそうだし」

久「……ちょっと、どうして照の次なの」

照「一番が私なのは揺るがないから」キリッ

久「それこそあんたの思い込みでしょ!」

照「何度も言うけど、事実だから」

久「いまの説明聞いてたら、どう考えても一番は私じゃない!」

照「久が頼りないからかもね。私は頼りがいあるから、一番に思っててもそこまで気遣わない」

久「そうかしら? 普通はそういうの関係なしに、一番気遣うものだと思うけど」

照「むむむ」

久「ぐぬぬ」

京太郎「……あれ? 部長元気になったな……」

和「ソーデスネー」

咲「そう思うんならそうなんでしょ、京ちゃんの中ではね」

優希「今日も平和だじぇ」

まこ「……ふぅ、茶がうまい」

ミカ「あの人たち、先輩のこと好きすぎでしょ」

ムロ「あんたが言うな」

~部活終了

まこ「――よーし、今日はここまでにしとく」

全員『お疲れさまでした!』

久「さーてと、帰りますか」

照「それじゃ京ちゃん、行こう」ギュッ

京太郎「えーっと……その、片づけが、まだ――」

照「そんな……」シュン

京太郎「すぐ終わりますから、待っててください」

照「うー……うん、わかった」テルッ

京太郎「お昼になに食べたいかも、決めておいてください」

照「それは京ちゃんのエスコートに任せようかと」

京太郎「マジすか」

和「……京太郎くん、話してばっかりいないで手を――」

京太郎「う、すまん」テキパキ

和「……いえ、すいません」

優希「ドンマイだじぇ……」

まこ「京太郎はなにしとっても、身体が動いとるけぇの……」

咲「お姉ちゃんも邪魔だし、外で待ってたら?」

照「ひどい物言い」

久「でも一理あるじゃない。ほら、行くわよー」

照「え、ちょ……京ちゃん、助けて!」

京太郎「まぁ邪魔ではないですけど、埃っぽくなるでしょうから……学食か喫茶室で休んでてください。すぐ行きます」

照「きょ、京ちゃーん!」

咲「さて――それじゃ京ちゃん、自動卓のメンテもしとこうか」

和「ベッドシーツや布団カバーも洗濯したいですし」

優希「牌も磨いてやらないとだじぇ、ピッカピカにな!」

まこ「……そうじゃな」

ムロ「あ、あの、そういうのは私たちで――」

ミカ「しっ! 口をだしちゃだめっ……」

ムロ「いや、一年の仕事だし――」

ミカ「よーく見て、先輩たちの目を……」

ムロ「目? ……あっ」

咲(ちょっとでも長引かせる!)

和(普通の相手ならいざ知らず、特別な相手であるお姉さんが相手なら……)

優希(できることはなんでもやるじぇっ……)

まこ(……ノータッチじゃ、うむ)

ムロ「……なるほど」

ミカ「部長は達観してるね」

ムロ「どこにも角を立たせないんだろうね。ただ――」

ミカ「あー、うん。どのみち、京太郎先輩だったら――」

京太郎「ん、了解」

京太郎「――終わったぞー」

咲「」

和「」

優希「」

まこ「……ご苦労さん。さて、戸締りするけぇ、みんな出ろー」

ムロ「……だよね」

ミカ「っていうか、私たちなにもしてない」

京太郎「じゃ、お疲れさまー。さて――」

京太郎「もしもし、照さん? どちらにいらっしゃいますか?」

京太郎「はい、ではすぐに――いえ、大丈夫です。大丈夫ですから、絶対行きますから」

京太郎「いいですね、絶対動かないでくださいよ? 一歩もだめですからね? いや、フリじゃないですから!」

京太郎「バラエティ出演で変な影響受けないでください! いいから、そこにいてくださいよ!?」

京太郎(くそっ、動かれると合流が大変だぞっ……)

京太郎「――そこで待っていてください、お菓子をお持ちしているところなので」

照『!!』

京太郎「俺がそこに到着する頃が食べ頃かと思いますので、待っててください、ね?」

照『うん、そうする』

京太郎「では、すぐにお伺いします――では」ピッ

京太郎「ふぅ……手持ちの材料で、移動中に作らないとダメだな、これは――」

京太郎「でも、嘘を吐くわけにはいかない……すぐに仕上げよう!」キリッ

咲(……なに言ってんだろ、京ちゃん)

和(どういう人かを知らなければ、おかしな人にしか見えませんね)

優希(いや、知っててもおかしな人だじぇ)

まこ(ええからはよう帰らんか)

ムロ(……部長もでは)

ミカ(うわー、言っちゃうかぁ……だめだよ、ムロ。そういうの)

京太郎「お待たせしました、照さん」ゴロゴロゴロゴロ

照「大丈夫、本読んでたから」

京太郎「それはよかったです……おっ」チーン

京太郎「焼き立てのラングドシャです」

照「シガレット型だね」

京太郎「はい。このタイプはまだ、召し上がっていただいてなかったので」

照「いただきます」サクッ

照「さくさくさく……ちょっと甘さ控えめ?」

京太郎「休憩の差し入れで、糖分たっぷりになりましたからね」

照「それはお気遣いをありがとう」ペッコリン

京太郎「いえいえ」

照「でも大丈夫。普段の糖分はもっと多いから」

京太郎「大丈夫なんですか……?」

照「そういう生活を続けてたけど、春の健康診断は問題なかったよ」

京太郎「ならいいんですが……まぁでも、実際はそれも試作品だからなんですよね」

照「そうなの?」

京太郎「はい。その中に別のペーストを入れようと思ってまして。このくらいの甘さがちょうどいいだろうと思ってるんです」

照「ペーストのほうは?」

京太郎「これの加減で、ペーストの味も決める予定なので」

照「なるほど……これならそっちを甘めにしたほうがいいかもね。こっちはもう少し押さえていいと思う」

京太郎「わかりました……ありがとうございます」

照「役に立てたかな」

京太郎「もちろんです。さすが照さんですよ」

照「えへへ……はい、ごちそうさまでした」

京太郎「お粗末様です。では、帰りましょうか」

照「違うよ、行くんでしょ?」

照「このままデートなんだから、帰っちゃだめ」ギュッ

京太郎「――はい。それじゃ、行きましょう」

咲(ぐっ……ぐぬぬぬぬぬっ!)

まこ(……これ以上見とるんは、さすがに――)

和(まぁ……逆の立場でこのことを知ったら、さすがに不快ですからね……)

優希(はぁ……虚しくなってきたじぇ、帰るか……)

照「さて――お昼はどうしようかな?」

京太郎「本来ならご馳走したいところですが……うちは母がいまして」

照「望むところ。ぜひご挨拶を」キリッ

京太郎「それは構いませんが、家だと俺が台所に入れませんので」

照「??」

京太郎「昔、台所めちゃくちゃにしたことがあって、それ以来入るの禁止されてるんですよ……」

照「そうなんだ、意外……でもこれは悩ましい。お義母さんへの挨拶か、京ちゃんの手料理か……」

京太郎「……照さんのご実家では――」

照「咲がいるからやめといたほうがいい」

京太郎「……あ、はい」

照「お父さんもいるし、うるさくなるのは困る」

京太郎(おじさん、すいません)

京太郎「でもそうなると、料理はどのみち無理ですね……」

照「そんな……」

京太郎「うーん……あ、ルーフトップならキッチン使えるかもしれませんけど」

照「だめ。アラサー軍団とか久がいる」

京太郎(すげぇ辛辣な単語を聞いた)

京太郎「事情を知らない優希の家か、両親があまり家にいない和の家――」

照「……だめだよ」

京太郎「ですよね……なら、オフクロを説得するか……」

照「確かに、それなら私もお義母さんに挨拶できるし、京ちゃんのお料理も――」

照「ん?」

京太郎「どうされました?」

照「お昼をどうするにせよ、ご挨拶には伺ってもいいんじゃないかな」

京太郎「……そうですね」

照「じゃあ決まり。まず京ちゃんの家に行こう、そのあとのことは、そのとき考える」

京太郎「ええええ……ちょっとアバウトすぎませんかっ?」

照「大丈夫、なんとかなるよ……」

京太郎「………………」


~須賀家、リビング

京太郎「えーっと……」

須賀母「あらまぁ、いらっしゃい。京太郎が女の子連れてくるなんて、咲ちゃんとか麻雀部の子くらいのもので……はじめまして、京太郎の母です」

照「はじめまして、お義母さん。突然お邪魔してしまい、申し訳ありません」

京太郎「いや、あの、照さ――」

須賀母「まぁ、礼儀正しいのね。我が家ならいつでも歓迎だから、遠慮しないでちょうだい。そういえばあなた、どこかで見たことが――」

照「以前、体育祭のときに、京ちゃんの応援に駆けつけましたので。お昼に少し、お顔を拝見しております」

須賀母「ああ、そうだったのね。ふふ、ごめんなさい。大勢いらしたものだから、個別にご挨拶もできなくって……京太郎がいつもお世話になっているわね」

照「とんでもありません。私こそ、京ちゃんにはいつもお世話になっております」

京太郎(……なぜか話が弾んでる。っていうか照さん、営業モード全開だ……)

須賀母「でも――それ以外にも、なんだか見覚えあるのよねぇ。それに、京ちゃんって呼び方は……」

照「先ほど名前の出ました、咲――宮永咲は、私の妹ですから」

須賀母「え――確かに、色々と……」ジー

京太郎(……胸を見るな、失礼だろ)

須賀母「髪の毛といい、そっくりだわ……宮永さんのところの家庭事情は、ある程度聞いていたけれど……それじゃあ、あなたが――」

照「申し遅れました、宮永照と申します。京ちゃんとは小学校時代から、親しくさせていただいてました」

須賀母「んまっ、そうだったの? ちょっと京太郎、なんでさっさと言わないの、十年遅いわよ!」ベシッ

京太郎「いてぇ! ってか十年前って小1くらいだろ! 照さんと親しくなったのはもうちょいあとだ!」

須賀母「そういう問題じゃないの! まったく……ごめんなさいね、照ちゃん。この子ったら……あ、照さんのほうがよかったわね。こんな立派なお嬢さんなら」

照「いえ、お好きにお呼びください。どちらかといえばちゃん付けのほうが、お義母さんの娘になれたようで、嬉しく思います」キリッ

須賀母「まぁ……それなら、照ちゃんって呼ばせてもらうわね」

照「よろしくお願いします」ペッコリン

京太郎(俺もういらないんじゃないかな……)

須賀母「せっかく来たんだもの、ゆっくり――と思ったけれど、それは無理かしら?」クスッ

京太郎「え……ちょ、それは失礼じゃ――」

照「ええ、お義母さんともっとお話したくはありますが、今日はデートですから。のちほど出かけたく思っております」ニコッ

須賀母「……至らない息子だけれど、どうぞよろしくね、照ちゃん」

照「お任せください」キリッ

京太郎(俺が一人娘で、照さんが彼氏みたいになってるし……)

須賀母「そうだわ、それならお昼だけでも一緒にどうかしら」

照「よろしいんですか?」スットボケ

須賀母「ええ、もちろんよ。お口に合えばいいのだけれど」

照「体育祭のとき、お義母さんの手料理を少しいただいたのですが、とてもおいしかったです。よろしければ作り方など、お伺いしたいなと――」チラッ

京太郎「――っっ! そ、そのことなんだけど、オフクロ!!」

須賀母「ん? どうしたの、そんな慌てて……」

照(ナイスタイミング、京ちゃん)ムフー

京太郎「実は……今日の昼は、照さんにご馳走したいんだよ」

須賀母「いや、だからいま、その話を――」

京太郎「じゃなくて――俺が、照さんの……あと、オフクロのも、昼飯作ろうかと思ってる。よかったら食ってほしいんだけど」

須賀母「――――――」

照(……京ちゃんの話だと、お義母さんは京ちゃんをキッチンに入れるのはよしとしなかったはず。なんだったら、私からもひと言添えたほうがいいかな?)ジー

須賀母「……あのねぇ、京太郎――」

京太郎「頼む! 一回だけ、これでオフクロが納得しなかったら、二度とは言わないから……」

須賀母「……じゃなくて。そんな頭下げなくても、作りたいなら作ったら? ってことなんだけど……」

京太郎「……………………えっ」

照「えっ」

須賀母「一人暮らしして長いしねぇ、そこそこ自信が出てきたんでしょうし、味見くらいしてあげるわよ」

照(……京ちゃん、話が全然違う……)ジー

京太郎「ぅ――い、いや、だってさ! おかしいだろっ? 前にフライパン焦がしてから、キッチンには入るなって――」

須賀母「それこそ何年前の話よ……っていうか、あれはフライパンどころかキッチン丸焦げにして、家まで危なかったから言ったのよ。もっと上達してからになさいって」

照「それはひどい」

京太郎「ぐっっ……と、とにかく! だったら、昼は作ってもいいんだよなっ!?」

須賀母「照ちゃんさえよければ、だけどね……ごめんなさいね、照ちゃん。この子のワガママ、付き合ってあげてくれる? 我が家のレシピは、また今度ってことで……」

照「ええ、構いません。お気遣いいただき、ありがとうございます……京ちゃん、お願いします」

京太郎「――了解しました。それじゃ早速……っと、その前に買い物か」

須賀母「せっかくだし、いまある材料でやってみてよ。そういう能力こそ、一人暮らしには重要よ」

京太郎「なにがある?」

須賀母「冷蔵庫にメモ張ってあるから、確認してらっしゃい」

京太郎「へいへいっと……それじゃ、ちょっと外しますね、照さん。よかったらオフクロの話にでも、付き合ってやってください」

須賀母「余計なこと言わないの」

照「大丈夫、京ちゃん。私のほうこそ、お話に付き合っていただきたいくらいだから」

京太郎「では、失礼します」スッ

須賀母「まったくあの子は……失礼しちゃうわよねぇ? 照ちゃんはこんなにいい子だっていうのに」

照「そんな……私なんて、京ちゃんに比べたら、全然至らないところばかりですよ」

須賀母「ふふっ、自分では気づかないものなのね……」

須賀母「あ、そうそう――さっきの話なんだけど、ほら……お料理のレシピ。なんだったら、咲ちゃんに伝言しておきましょうか?」ムフー

照「――っっ! え、と……そ、それには、あの……ええと……」アタフタ

須賀母「……ふふっ、わかってるわよ、冗談♪ 妹とはいえ、恋敵に教わるのはイヤだものねぇ?」ニヨニヨ

照「っっ……は、い……」カァッ

須賀母「まぁ――大勢から一人を応援なんてできないけれど、あの子が家にまで連れてくるなら、いい子だって信じてるから……頑張ってちょうだい?」

照「――はい、射止めて見せます!」グッ


~キッチン

京太郎「……大丈夫かな、照さん……っていうか、オフクロが余計なこと吹き込んでなきゃいいけど……」

京太郎「と、気にしてても仕方ないか。こっちはこっちで、やることやらないと――」

京太郎「えーっと、ふむふむ、これなら――いや待て、昨日のご飯が結構残ってんなぁ……」

京太郎「となると、チャーハン……いや、待てよ」

京太郎「そんな手抜きっぽいもんを、オフクロに食わせるのも癪だな……ちょっと手ぇかけてみるか」

京太郎「……ライスはこれでよし。あとは……うん、デミグラスもオーケー」

京太郎「あとはこれを入れて……卵を、包んでっ……」トントン

京太郎「サラダはシンプルに、レタス、ベビーリーフ、サラダ水菜、オニオン――小エビを炒って、散らす」

京太郎「で、卵の白身を使って……コンソメスープも完成。クルトンを浮かせて、と――」


~リビング

京太郎「お待たせしました。デミグラスオムライスです」

須賀母「お昼一食に手間かけすぎ、減点」

京太郎「」

須賀母「はいはい、冗談よ。なかなかうまくできてるじゃない、冷やご飯も使っちゃってくれたのね。まぁそれ以外の材料が、わりと心配だけど」

京太郎「あ、ある程度は抑えたって」

須賀母「で――ナイフ、入れてあげたら? 照ちゃんが限界みたいよ」クスクス

照「っっ……っ……」ダラー

京太郎「……照さん、涎が」ソッ

照「失敬……お義母さんにも、お見苦しいところを」

須賀母「ううん、女の子でもお腹が空いたらしょうがないわ。それに食欲ある子は好きだもの」

照「ありがとうございます」

京太郎「それじゃ、卵にナイフを……はい、どうぞ」ドロー

須賀母「ソース巻き込んで開くタイプは、案外難しいのよね……まぁ及第点かしら」

京太郎「ぐっ……」

須賀母「味の評価はまだだからね?」

京太郎「っす……お願いします」

須賀母「それじゃ、いただきましょうか」

照「いただきます!」

京太郎「どうぞお召し上がりください――っと、俺のも取ってこないと」

須賀母「ふぅーん……これ、教本とかのレシピ通りじゃないわね」

京太郎「懇意にしてる人に教えていただいた」

須賀母「なるほどね。ブイヨンの使い方かしら……こっちのほうが、知られているものよりいいと思うわ」

京太郎「っし!」グッ

照「よかったね、京ちゃん」ハグハグ

須賀母「それは教えた人の手柄――」

京太郎「うぐっ……」

須賀母「まぁ味も、全体的には悪くない。細かいところを指摘してほしいなら、そうするけど?」

京太郎「……おなしゃす」

須賀母「玉ねぎと小麦粉、タイミングを計って、火の通りを計算しないと。形にはなってるけど、甘さの一部が苦味に変わっちゃってるし、小麦粉も滑らかさが足りない」

京太郎「――――確かに……」

須賀母「たぶん最初に篩っただけなんでしょうけど、投入時にも万遍なく入るよう、工夫がいるわね」

京太郎「ふんふむ」メモメモ

須賀母「サラダとスープについては、文句なしね。強いて言うなら、夕食のサラダどうするつもりなの、ってとこかしら」

京太郎「……さーせん」

須賀母「まぁデート帰りに買ってこいなんて野暮は言わないから、安心なさい」

須賀母「さて――あとは、照ちゃんの感想次第かしら」

照「とてもおいしいです。京ちゃんの料理はいつもですが、食べていて嬉しくなる味ですから」ニコッ

須賀母「――ってことだから、合格ね」

京太郎「えっ」

須賀母「照ちゃんのために作ったんでしょ? 照ちゃんが喜んでくれたなら、それが最高評価じゃない」

京太郎「いや、けど……」

須賀母「私を満足させるつもりなら、あと10年ほど頑張ってもらうけど」

京太郎「合格点いただいときます! もうちょい精進しますけど!」

須賀母「よろしい――ま、私もおいしいとは思うわよ。言ってほしいみたいだから注文つけたけど、普通は気づかない程度だし」

京太郎「お、オフクロ……」ブワッ

照「……よしよし、頑張ったね、京ちゃん」ナデナデ

京太郎「うっ……はいっ、ありがとうございます……照さんっ……」

須賀母(……大袈裟じゃないかしら。まぁ本人喜んでるし、それでいいならいんだけど……)パクッ


~食後

須賀母「しっかしまぁ……あの京太郎がねぇ、よくこんなにできるようになったわ」

京太郎「人に恵まれたんだよ」

須賀母「あら、そうなの? さっきも人に聞いたって言ってたし……お礼に伺ったほうがいいかしら」

京太郎「お、俺から言ってるから……」

京太郎(この年でオフクロが挨拶行くとか恥ずかしすぎるし……師匠もお困りになるな、うん)

照「京ちゃん、照れてる?」クスッ

京太郎「……いえ、別に」

須賀母「まぁそれにしても、照ちゃんまで巻き込んだりしないで、自分で言いなさいよ? キッチン使いたい、くらいのこと……」

京太郎「う……」

照「いえ、お義母さん。私がお願いしたことですから」

須賀母「そうなる前に、ってことよ。そしたら今日も、スムーズに連れて来て、スムーズに食事に入れたじゃない?」

照「……仰る通りです」

京太郎「照さぁん!?」

照「お義母さんには逆らえない」

須賀母「うふふ……でも照ちゃんとしては、京太郎にとって重大な局面に居合わせられて、ちょっぴり嬉しかったかしら?」

照「……まぁ、はい……」カァッ

京太郎「照さん……」ジーン

京太郎「照さんのおかげです、ありがとうございます!」ガシッ

照「――京ちゃんが頑張ったからだよ」ポー

須賀母「あらあら、熱いわねー」

京太郎「――す、すいません、照さん!」バッ

照「大丈夫、むしろ大歓迎」ギュッ

須賀母「はぁー……これだったら、前に頼まれたとき、使わせればよかったかしら」

京太郎「え――あぁ! そうだよ、俺一回頼んだよな、確か!」

須賀母「あんな頼み方がありますか! 私の目を盗んでこっそり使おうとする、見つかってから言い訳する、追及されたら引き下がる!」

京太郎「う……いや、あれは――」

照「それは京ちゃんが男らしくなかったね。お義母さんに、きちんと頼むべきだった」

照「……まぁ、私が言うことではないと思うけど」

京太郎「そんなことは……まぁ、はい……あれは俺が悪かった、です……」

須賀母「その通りね」

京太郎「くそうっ……」

須賀母「まぁ私のほうも、一人暮らし長い息子なんだし、ちょっとは見直してもよかったわね」

須賀母「ごめんね、京太郎?」

京太郎「――いや、俺こそ……また使わせてもらえると助かる」

須賀母「そうね、別にいいわよ……夕飯一回作らせて、お父さんに食べさせてみたら面白そう」

京太郎「やめてやってよ……」

照「私なら京ちゃんの料理は必ず当てるけど」

須賀母「そういうものよねぇ?」

照「はい。ですからお義父さんも、お義母さんの料理かどうか、わかると思います」

須賀母「まぁまぁ、そうだといんだけど……」

京太郎(オヤジ、グッドラック……)

京太郎「さて――片づけも済んだし、そろそろ出かけましょうか」

照「ん……そうしようか」

須賀母「あら、そう? もう少しゆっくりしてってもいいのよ? ほら、部屋で二人っきりで話したりとかでもいいんだし、ね?」

京太郎「……なに企んでんだ」

須賀母「別にこっそり出かけて二人っきりにしようとか考えてないわよ?」

照「ありがとうございます」キリッ

京太郎「お礼言わない!」

須賀母「レポートはきちんとね」

照「包み隠さず」キリッ

京太郎「そこは隠してください!」

須賀母「なに、隠すようなことするわけ?」ニヤー

照「きょ、京ちゃん……」ポッ

京太郎「――しません(迫真)」

照「」テルーン

須賀母「はぁ、ヘタレ……」ボソッ

京太郎「……どうします、照さん?」

照「それはもちろん――」

照(……京ちゃんのお部屋は確かに捨てがたい)

照(だけど今日は、記念すべき初デート……初デートがお部屋デートなんて、ある意味おいしい――)

照(とはいえ、人によってはからかってきそう……ここは出かけるべきかな)

 ※この間コンマ72秒

照「お出かけしよう、デートらしくね」

京太郎「わかりました。では俺は着替えてきますので――」

照「うん、手伝うね」

京太郎「ここで待っててください!」

照「そう? 遠慮しなくてもいいのに」

京太郎「いや、逆だったら断るでしょ?」

照「断らないよ?」キョトン

京太郎「……そこは断ってください」

須賀母(……これだけ押してもダメとは、我が息子ながら……これはほかの子も苦労するわけだわー)パリッ

須賀母「あ、夕食は用意しないからね。あと、遅くなるならどこか泊まってらっしゃい」エンゴシャゲキー

京太郎「よそ様の娘さんだからなぁ!?」

照「自分の娘のように考えてくださって、嬉しいです」ウルッ

須賀母「はぁ~、やっぱり女の子っていいわぁ……京太郎に妹作ればよかったわねぇ」シミジミ

京太郎(反応おかしいよぉ……)フェェ

京太郎「それはともかく――どこ行くかなぁ……」

京太郎「お待たせしました」

照「うん! それではお義母さん、行って参ります」

須賀母「はーい。気をつけてね、それと――グッドラック」

照「b」

京太郎(なんなのこの人たち……)

京太郎「で――照さんは確か、小学校には顔だしたんですよね?」

照「うん」

京太郎「そうですか……それじゃ、別の場所に――」

照「ううん、京ちゃんと行くのはまた違うと思うから……せっかくだし、一緒に行こう」

照「京ちゃんと出会った場所だから、二人で行っておきたい」

京太郎「――わかりました。では、えーっと……」ポリポリ

京太郎「お手を、よろしいでしょうか?」

照「……ふふっ、どうしたの、急に。いつも普通に握ってるよね」キュッ

京太郎「いえ……デートだって思うと、つい」

照「……それじゃ、こっちだね」ギュッ

京太郎(……あったらなーい)

照「……なに考えてるの?」ジー

京太郎「いえ、別に。誰かに見られて、困ったりしませんか? 照さん有名人ですし……」

照「問題になるくらいならプロやめるよ」

京太郎「それはダメです」

照「なら……問題にさせない。なに言われても平気なくらい、結果だすよ」

京太郎「……わかりました。それなら俺も、覚悟決めます。このまま行きましょう」

照「……なにかあったら、守ってね?」

京太郎「もちろんです、お姫様」

照「ありがとう……京ちゃん」ギュー

~小学校

京太郎「……門、閉まってますね」

照「しょうがないね」ガシャッ

京太郎「ちょ! いきなり登らないで! 問題になりますから!」

照「……昨日もこうしたよ?」

京太郎「常識で判断してくださいいいいいいい!」


京太郎「で、ここの電話を使って、中の人に連絡するんです」ポチポチ

照「なるほど」

京太郎「んー……あ、もしもし。お疲れさまです。自分は須賀京太郎と申しまして、ここの卒業生で――」

照「宮永照です、私もいます」

京太郎「ちょっと照さんっ……え? あ、はい……じゃあここで待ってればいいですか? はい……」

照「どうしたの?」

京太郎「では、待たせていただきます……開けてくれるみたいです。さすがですね、照さんの威光は」

照「京ちゃんも、春のチャンピオンだからね。自信持ったほうがいいと思う」

京太郎「さすがに鳴り物入りの新人プロとは、比べるべくもないですよ……もっと頑張ります」

京太郎「照さんのおまけにならないよう、もっと大きく……強く……」

照「…………大丈夫だよ。京ちゃんは、私から見れば大きくて強くて……とっても眩しいから」

京太郎「ありがとうございます……あ、いらしたみたいですよ」

職員「どうもお待たせしました!」

老教師「やあ須賀くん、大きくなったねぇ。活躍は聞いているよ」

京太郎「先生! まだこちらにいらしてたんですね……お久しぶりです!」

老教師「はは、言葉遣いが随分大人びた……それと、宮永くんも昨日ぶりだね」

照「連日申し訳ありません」

老教師「いやいや、今日は門を乗り越えなかったようで、なによりだ。さすがに注意しても聞かないなんて、小学生みたいなことはしないと安心したよ」

京太郎「照さん……」

照「」テルーン

老教師「ところで須賀くん――」

京太郎「あ、はい」

老教師「うちの孫娘が君のファンでね。サインもらえんかな?」スッ

職員「うちの娘もでして……お願いします」スッ

京太郎「」

照「むー」ムスー

照「京ちゃんはすごいねー。プロじゃなくても、プロより人気者なんてねー」プクー

京太郎「て、照さん、拗ねないでくださいよ……たまたま、お孫さんや娘さんが麻雀してて、日誌が見られたってだけなんですから……」

照「日誌があれば、プロより人気者になれるんだ。ふーん」

京太郎「うぅ……そ、そういうことでもないですよ。特定の人しか、俺のことなんて知りませんし……」

京太郎「ほ、ほら! あれ、昨日のサインなんでしょ? 大勢が見る場所に飾ってあるのに対して、俺のサインは飾るようには書いてませんし……ね?」

照「……だからこそ、心配」

京太郎「え?」

照「私のサインは、不特定多数に向けてのメッセージ、激励みたいなもの……だけど、京ちゃんがさっきしたのは、一人の人間に宛てた、特別なもの」

照「それを求められた京ちゃんは、私より人間として魅力的なんだと思う……」

京太郎「いや、そんなことは……きっとたまたまで――」

照「……魅力的だよ、京ちゃんは」

京太郎「っ!」ドキッ

照「だからね、不安……色んな人にチヤホヤされて、デレーってしてる京ちゃんを見ると、不安になるの」

京太郎「いや、デレーっとは……」

照「してるよね?」

京太郎「……否定できません」

照「正直でよろしい……でも、私にそれを止める権利がないこともわかってる」

照「……ここにいたときも、そうだったから」

京太郎「それは……」

照「覚えてるよね? 私はここで……図書室で一人、本を読んでる暗い子だった」

京太郎(そういえば、咲は違う学校だったのか……理由はわかんないけど)

照「それ以外は、麻雀することしか考えてなかった。だから別に、学校でどう思われようが、気にもしてなかった……あのときまでは」

京太郎「あのとき?」

照「そこの窓、ドンドン叩いて、開けて、男の子が一人声かけてきたの。お前なにしてんの、暗いぞって」

京太郎「……随分失礼なガキですね」

照「私も無視したよ。だけど、その子そのせいで興味持ったらしくて……しつこく話しかけて、本の中身とか色々聞いてきて……」

京太郎「面倒くさいっすね、そういうやつ」

照「うん。だから徹底無視」

京太郎「ひでーっす」

照「反省してます」

照「でも――まぁそのうち、不快でもないし、本の中身くらいは教えるようになったんだよね」

京太郎「やったぜ」

照「なのに、京ちゃ――その子はそうなると、今度はあまり来なくなった」

京太郎「い、忙しかったんじゃないですかね(震え声)」

照「そうかもしれない。だけど私は気になって、気がつくとその子を探してた。学校内を回って」

照「それで見つけた。校庭で元気に遊ぶ、クラスの――学年の人気者やってる、彼を」

京太郎「……いやー、そこまでじゃなかったかと」

照「私はその子を見て、それが眩しくて……またここに逃げ込んだ。それで恨んだ、どうしてあんな子が、私に声なんてかけたのって」

京太郎「………………」

照「……そんな私に、追いかけてきて声かけた子がいた」

京太郎「なにがしたいんですかね、そいつ」

照「その子、謝って言ってた。ごめん、今日はどうしてもあっち行かなきゃだめだったんだって」

京太郎「あー……なんだっけ、上の学年と試合する予定だったかな。勝たないと遊ぶ場所取れなかったんですよねー、あのときって」

照「そうなの?」

京太郎「たぶん」

照「でも私は知らなかったから。もう来ないでって怒鳴った。人気者のあなたの傍にいたくない、消えてって」

京太郎「……また空気読まなさそうっすね、そいつ」

照「その通り。その子は、だったらなんで探しに来たんだよ――って」

京太郎「うわぁ……」

照「私が探してないって言うと、じゃあずっとここにいろって言われた。泣きそうだった」

京太郎「……すいません」

照「でも――そのあと、その子は言ってくれた。明日はちゃんと来る、次に来るときは、いつ来るか言うからなって」

照「別にいいって言っても、お構いなしで勝手に予定言って……私がいないかもしれないのに、次の予定勝手に決めて――」

京太郎「照さん、いないときありましたっけ」

照「……そんなはずない。でも、京ちゃんの約束がない日は……不安だった」

京太郎(あ、京ちゃんって言っちゃったよ)

照「そのまま、本当は来なくなるんじゃないかって……いまと同じくらい、不安だった」

京太郎「おおう、繋がりましたね」

照「……そんな風に思わなくなるために、東京まで行ったのに……全然変わってないね、私」

京太郎「……えっ、それ家庭の事情だったんじゃ――」

照「それは半分、京ちゃんのことが半分」

京太郎(全然知らなかった……え、責任重大すぎね?)

照「……そのうち、忘れちゃったけど」

京太郎(泣くぞ)

照「いや、いまのは語弊が……と、とにかく!」

京太郎「あ、はい」

照「……私は成長してない。だから、あまり不安にさせないで」

京太郎「……俺も不安なんですけど」

照「なにが?」

京太郎「いや、あの……流れでわかりますよね?」

照「???」

京太郎(ガチだこの人……あーもう!)

京太郎「……出会いはそんな感じでしたけど、あのときの照さんは……俺の目には、ものすごく大人びて映ってました」

京太郎「その照さんがいなくなって……俺は、見捨てられたって思ったんです」

照「――――え」

京太郎「俺が子供すぎた、俺が迷惑だった、俺が邪魔だった――気がつくとそんなこと考えてました、そのあとの二年間は」

照「ち、ちがっ……」

京太郎「で、久々に会った照さんは……なんかすごいし、ついでに姉妹揃ってすごいし……」

照「咲は関係ない」

京太郎「あるんですよ……いや、いまはそれはいいです。とにかく、とんでもない姉妹と知り合ったなって思った俺は、なおさら不安になったわけです」

京太郎「俺は二人の知り合いなのか、友人なのかって」

照「…………家族?」

京太郎「それだけ近しく思ってくださるのは嬉しいです」

照(あれ、通じない……)

京太郎「でも――周りはそう見ないんじゃないか、俺のことを、二人の人気にあやかろうとしてる厄介者と思って見るんじゃないか、そんな不安は常にありました」

京太郎「……いまでも、変わらずあります」

照「……さ、咲のせいだよね。叱っておくから――」

京太郎「咲は関係ないです。もちろん、照さんも……俺が、どうしようもなく弱いから悪いんです」

照「京ちゃんは弱くないっ!」

京太郎「照さんがそう思ってくださっても、俺はそう思いません……照さんが、俺の考えとは違って俺を見て不安になるように、俺も照さんたちを見て、不安になるんです」

京太郎「……俺たちは、きっと似てます。昔からずっと……だから声をかけたんじゃないか、そう思ってます」

照「――京、ちゃん……」

京太郎「……照さんが、俺を見て不安になるっていうなら、仕方ないです。それは照さんの感性なんですから」

京太郎「でも忘れないでください。俺は照さんの魅力を知ってます、そしてそれは、大勢の好意を向けられて、忘れるようなものじゃない――」

京太郎「昔からずっと……照さんみたいになりたいって、思ってた……憧れの源なんですから」

照「――私に、憧れて……京ちゃんが……?」

京太郎「はい……宮永照は、須賀京太郎の憧れです」

照(……プロポーズかな?)

京太郎(違います)

照()テルーン

京太郎「本を読んでるだけでもそうだったのに、麻雀打ってるとこなんて……本当に素敵なんですから。その、俺が言うのもなんですけど……自信持ってください」

照「……本当に、私のことを、見てくれてる?」

京太郎「はい、間違いなく」

照「……わかった。うん……その気持ちの大きさや質は、まだわからないけど……」

照「とりあえず、真剣な気持ちは伝わった……だから――」

照「私は京ちゃんのことを、信じる」

京太郎「――はい、ありがとうございます」


照「……ごめんね。疑って……嫉妬して、不安になっちゃって……」

京太郎「いえ……照さんにそこまで言ってもらったのは、喜ぶべきだったんだなって、俺こそ反省しないと」

照「うん……そう。反省すべき、もっと喜んでいいと思う」

照「女の子にキャーキャー言われて、デレデレするのはよくない。わかった?」ムー

京太郎「はい……はは、ありがとうございます」ヘヘッ

照「ヘラヘラしない」

京太郎(えぇー……)

京太郎「……あの、照さん」

照「なに?」ピトッ ギュー

京太郎「いえ……なんか読みます?」

照「……ううん、いまはいい」

照「それより――10年弱前の私から、ひと言いい?」

京太郎「あ、はい」

照「……ありがとう」

京太郎「いえ……えっと、なにがですか?」

照「私に、話しかけてくれて……あのときの京ちゃんがいなかったら、いまの私もいないから」

照「あのとき言えなかったお礼……ありがとう、私を見つけてくれて」

京太郎「……はい、どういたしまして」

京太郎「俺こそ、相手してくれてありがとうございます。嫌がらず、俺のことを求めてくれて――」

京太郎「あれがなかったら、いまみたいな物怖じしないやつには、なれてなかったと思います」

照「私は京ちゃんの恩人だね」

京太郎「はい」

照「それで、京ちゃんは私の恩人――」

京太郎「はい」

照「………………ふむ」

京太郎「照さん?」

照「感謝の気持ちを形にしたい。京ちゃんもしたいよね?」

京太郎「えーっと……はい、まぁ」

照「よろしい。それじゃ、私から形にする……京ちゃんは動かないで。それが感謝の気持ちになる」ギラギラ

京太郎(………………嫌な予感しかしない)

京太郎「――――」

照「………………ん……」チゥ

京太郎「……っ……」

照「…………ふぅ……」

京太郎「……あ、の……」

照「口じゃないでしょ? 淑女協定、ギリギリセーフ」

京太郎「ギリギリですよ!? 端っこちょっと触れてませんでしたか!?」

照「…………さぁ?」テルッ

京太郎「照さん!!」

照「……京ちゃんは避けなかったよね? それがすべて」

京太郎「ぅ――」

照「それに――お互い、小学校の三年と五年のときのことだし、ノーカンノーカン」

京太郎「俺16、照さん18!」

照「だけど、いまのはあの頃の感謝だから……本来なら、あのときに済ませておいたはずの行為だよ」

京太郎「そういう名目ではありましたけど……」

照「……嫌だった?」

京太郎「嬉しかったから、戸惑ってんじゃないですか……」

照「ならよかった。京ちゃんもカウントしないで、あの頃の思い出ってことにすればいい」

照(私はカウントするけど。ギリでも掠っても、一回は一回)コレジュウヨウ

京太郎「照さんは、どういう……」

照「いまのは――あの頃の、二人だけの秘密」

照「大丈夫、もし……いまの私がするなら、もっと真剣になる。それに――京ちゃんのことを、誰よりも考えた上で……する」

京太郎「するんかい!」

照「大丈夫、無理やりはしない。安心して」

京太郎「まぁ、はい……」

照「あ、京ちゃんはしてもいいよ。カモーン」

京太郎「しませんよ!」

照「いいのに……」

京太郎「……真剣になるんですよね?」

照「……うん」

京太郎「なら――俺も、真剣になります。照さんの気持ちを、真剣に考えることにしますからね」

照「……ありがとう」

京太郎「……その、すいません……少し、時間はかかると思いますけど――」

照「それは仕方ない。3年も待たせちゃったからね。それにどのみちあと2年はかかるから、大丈夫」

京太郎「ありがとうございま――2年?」

照「京ちゃんも18になるね、楽しみ」

京太郎「……あ、はい」

京太郎(……進路だけじゃなく、俺は……そろそろ真剣に、考えないといけないのかもしれない)

照(告白(仮)も済ませた、お義母さんへの挨拶も済ませた。結納待ったなし!)ムフー

京太郎(照さん、すっきりした顔してんなぁ……)

京太郎(これ、このままでいて……結局応えられなかったら、俺は……最低だよなぁ、やっぱり)

照「……京ちゃん」

京太郎「――はい?」

照「私は京ちゃんを困らせるつもりはないからね?」ジー

京太郎「わかってますよ、もちろん」

照「なら……そんなに辛そうな顔で悩まないで。普段通り、私を見てくれればいいんだよ?」

京太郎「――でしたね、すいません」

照「……うん! それじゃ、デートの続きに行こう」

京太郎「って言っても、もう夕方……というか、夜ですよね」

照「……お、おとなの時間だね///」

京太郎(かわいい)

京太郎「……まぁ、夕食ですよね。とりあえずは」

照「あとはお泊り?」

京太郎「あれはオフクロの戯言ですので」

照「」テルーン

京太郎(さて――色々と考えなきゃいけないけど、照さんは今日のデートを楽しもうとしてくれてる)

京太郎(なら、俺もそれをエスコートすべきだ――)

京太郎「夕食、どこに行きましょうか」

照「よきにはからえ」

京太郎「仰せのままに――」

京太郎「……ふ、フレンチはいかがでしょう。いいお店があるんです」

照「焼肉じゃないんだ……」

京太郎「えっ」

照「んーん、なんでもない」

京太郎「えっと、それでフレンチは――」

照「私は大丈夫、白糸台でマナー講座あったし」

京太郎「それなら大丈夫ですね……では、まずは着替えましょうか」

照「……えっ」

京太郎「ドレスコードってやつです」

照「……そ、そんな本格的な場所なの?」ガクガク

京太郎「照さんもトッププロになれば、遅かれ早かれ立ち寄る場所です。慣れておいたほうがいいですし、目いっぱいおめかししましょう」

京太郎「もしもし――はい、お世話になっております。はい、貸衣装を……ええ、いくつか。サイズは――」

照(――っ! 私のサイズが、京ちゃんに筒抜け……どうして……でも嬉しい)

京太郎「では参りましょうか。まずは着替えて、それからお店です」

照「……お、お金は任せてね」

京太郎「俺がお誘いするんですから、今夜は任せてください」

照「」キュン

京太郎「緊張しないでくださいね。ドレス以外は、マナー講座通り。それ以外の場面では、取材のときと同じで大丈夫ですから」

照「……うん」

京太郎「照さん……大丈夫、いつも通りでいましょう」キュッ

照「……うんっ!」

京太郎「……いらっしゃらないな」ホー

照「?」

京太郎「いえ、なんでもありません。行きましょうか」

照「変じゃないかな?」クルー

京太郎「お似合いです。社交界に出ても恥じることない、立派なレディかと」

照「……ありがとう///」

照「京ちゃんは、このお店はよく来るの?」

京太郎「プライベートでは初めてです。修業中に3度ほど、勉強させていただきました」

照「へぇ……ん?」

京太郎「はい?」

照「食べに来たんじゃないの?」

京太郎「はっはっは、まさか。すべては一人前のバトラーになるための修業ですよ。ギャルソンとして、失礼のない振舞いを教わっていたんです」

照「そっか……」

照「夏の大会のあと、だよね……私はそんなこと、ちっとも知らなかった」

照「京ちゃんに会って嬉しかったのに、咲とのことも大事だったから……そっちじゃなく、京ちゃんを優先していれば……よかったのかな」

京太郎「――それは違います」

照「でも――」

京太郎「咲とのことは、あのときの照さんがなにより優先すべきことでした、それは確かです」

京太郎「そして、俺は……あの状態で照さんに接されても、きっと……なにも応えられなかった。それどころか、逃げだしていたかもしれない」

京太郎「そんなとき師匠が声をかけてくれて、俺は誇りと武器と目標を得ました。これは、あのとき出会ったのが師匠だったからこそ、得られたものなんです」

京太郎「あのとき照さんが俺じゃなく、咲を気にしたのは……きっと正解でした」

照「それは――それはつまり、京ちゃんが……そのとき、清澄での扱いに――不安を抱いてたってことじゃないの?」

京太郎「――っ!」

京太郎「――冗談でも、そんなこと言わないでください」

照「……冗談じゃない。それがなかったら京ちゃん、部活やめてたよね?」

京太郎「やめてません――」

照「だったら……誇りとか武器とか、そんな言葉出ないよ……」

京太郎「――っ……」

照「この話を続けるのが辛いなら、もう言わない……だけど――」

照「京ちゃんは優しいから、清澄の誰のことも悪く言いたくないと思う」

照「事実、久たちも……少し、すれ違いに近いことはあったかもしれないけど、京ちゃんのことを軽んじたりはしてなかったと思う」

照「それでも……京ちゃんが、不安を抱いてたっていうなら……それが悲しくて、悔しかったなら……誰かひとりにくらい、打ち明けてほしい」

京太郎「――大丈夫です。俺は……そんな風に思ったことは、一度もありませんから」

照「……絶対に?」

京太郎「絶対です。確かに、麻雀についての自信なんてありませんでしたけど……そもそも俺が、自信持ってたことなんて、特にないわけですし」

京太郎「そういう意味で、俺に活かせるスキルが身についたってことです。誇りとか武器っていうのは」

照「…………わかった。ごめんなさい、変なこと聞いて」

京太郎「いえ、誤解がとけてよかった……さ、食べましょう」

照「うん!」ガフー

京太郎「マナー!!」

照「おっといけない」テルテル

京太郎「ほんと頼みますよ……」

京太郎(…………大丈夫、だよな? 嘘は言ってない、本当のことなんだから……)

~デート終了

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最終更新:2026年01月18日 23:45