~木曜終了
【二年目7月第一週木曜】
放送はまだですが、なんかテレビ出るかもしれません。
といっても、麻雀して料理してと、やってることはいつもと同じです。
ただ、プロの方々と対局できたのはよかったかな、と思います。
あ、これは高麻連の許可もあるので、練習ではありません。大丈夫です。
そういったわけで、関係者の方々、お世話になりました。
放送は、地方限定なので見られない方もいらっしゃるとは思いますが、お近くの方はよろしければご覧になってください。
それと、サインはきちんといただきましたので。
明日お渡しします、では。
……………………
『なんていう番組!』
『地方班、特定と録画とエンコとうpは任せる』
『任せすぎィ!』
『動画データさえくれれば、変換とうpは任されてもいい』
『放送終わってからにせんね……』
『そんなこともあろうかと、編集したてのデータがここに』
『ファッ!?』
(流出は)まずいですよ!
『違法ななにか?』
『コネ?』
『コネの部類に入る。見られない人のためにここにうpするって言ったらくれた』
『でかした!』
『有能』
『よしお前、京ちゃんの家に行って洗濯前のシャツをくんかくんかしていいぞ』
『いらんやろ……?』
『本人は?』
『不許可』
『認められるわけがない』
『本人なら私の隣で寝てるけど』
えっ……えっ?(トナリチラー
……誰も、いないよな?(ドキドキドキドキ
『京太郎が怖がって周囲を警戒してる、やめてあげて』
なんでわかんの!?
『見えるようになりたいなら、早くこっちに来て修業しましょうね』
自衛のためには見えたいんだけど、見えるようになったら自衛必要なんだっけか
それも困るな……
『ところでプロって誰?』
『大分からベテランと新人が一人ずつ』
『新人って誰や』
『銘刈さん』
『ああ……沖縄の』
『ニライカナイの子ですねー』
『ああ、塞に完封された』
『女子大生に飛び火させちゃだめー』
『お前のような女子大生がいるか!』
『そこ、おばあちゃんとか言わない!』
『よーし、そのケンカ買った』
塞さん落ち着いてるけど、れっきとしたJDだろ! いい加減にしろ!
『……そこに京ちゃん。もう一人は?』
『野依プロです』
『へぇ』
『ほう』
『ふぅん』
『なるほど』
『おk把握』
『や、已むに已まれぬ事情があったのでは……』
『それで許されると?』
『そんなわけないね』
『プロこっわ……』
……そこまで特定しなくてもいいよね?
いや、でも放送見たらバレるわけだし……
というか、これあれだ。今後、こういう仕事増えるやつだよな?(フラグ
~新道寺
「ああああああああ、よかったあああああああああ!」
「喜びすぎやろ……」
「よかったですね、友清」
「額に入れて飾ろおおおおおおおお! あ、部室に置いたほうがいい?」
「……OGやし、ご利益のありそうやな……」
「友清が手元に置いておかないなら、ぜひ」
「や、卒業すっときに持って帰っとやけどね」
「……夏大のお守りくらいにはなるか」
「それ以降は、京太郎くんのサインか私物を置かせてもらいましょうか」
「それだ!」
~清澄
「――これ、いいのかしらねぇ」
「渡した側が、ええと判断したんじゃろ」
「見ましょうよ、早く早く!」
「? どうして自分で再生させないんだじぇ?」カチッ
「咲さん、ここをクリックするだけですよ」
「…………あっ」
「なるほど、再生方法がわからなかったんですね」
「……そんなことないもん」
「す、すいません!」
「あーあ、ムロはっきり言うなぁ」
「動画、始まってるわよ。おー、銘刈さんだ。本当にプロなのね」
「なんをいまさら……で、件の野依プロもじゃな」
~少女視聴中
「……京太郎くん、調子悪いんでしょうか」
「というか、手抜き……?」
「にしては真剣だじぇ」
「なにをしちょるんじゃ、あいつはぁ……」
「プロを立てようとしてる、とか?」
「京太郎先輩が? ないない」
「そうよね。相手が誰であっても、全力で潰しに行く子だもの」
「咲さん、どう思われ――咲さん?」
「…………これ、たぶん狙ってる」
「狙ってるって――」
~対局終了
「……やったね、京ちゃん!」
「ああ、そういうこと――」
「野依プロもおるちゅうのに、よくもまぁ……」
「手を抜いていたのではない、という証明でしょうか?」
「偶然と思われるかもだじぇ」
「でも、やっぱり理由がわかりませんね。±0で3位になった理由――」
「見てればわかるんじゃない?」
~料理ルール説明
「あー」
「あー」
「あー」
「あー」
「あー」
「あー」
「あー」
~白糸台
「たかみー! 亦野先輩! 私もやってみるっ、打とっ♪」
「え、いまから? まぁいいけど……」
「変なクセつかないかな」
「大丈夫だいじょうぶ、ほら、高校100年だから!」
「意味がわかんないよ……」
「101年じゃないの?」
「そうだった!」アワーン
「にしても、簡単に±0できると思ってるのか、私たち相手に……」
「これは、上下関係を厳しく教えてあげる必要があるかな?」
「ふふん、じょーとーだね! さぁ、かかってきなさい! 全国チャンプが胸を貸してあげよう!」ドーン
「うわぁ、調子に乗ってる……」
「実力は認めるけどね――でも、胸は貸してくれなくて大丈夫かな」タプーン
「……淡、育ったねぇ」ストーン
「亦野先輩、どんくらい貸してほしい?」
「いらないよ!」
~宮守組
「銘刈さーん、がんばれー」
「京太郎くん、調子悪すぎない?」
「読みも甘いしねぇ……でも、飛ばないようにはしてるかな」
「タカイトコ、ヨケテル!」
「言ってる間に最下位で最終局……で、銘刈さんは3位」
「やっぱり塞、プロなれたんじゃない?」
「だーかーら、無理だってば」
「大卒でもプロの道はあるよー」
「サエト、シロデ、シアイ! ミタイ!」
「見たいなー」ジー
「見たいなー」ジー
「……豊音がなるなら考える」
「えー、ほんとー?」
「トヨネ、ナロウ!」
「あっさり言うなぁ……」
「でも豊音ならスカウト来るよね、たぶん――って、あれ?」
「うっわ、三倍満ツモ!」
「これ逆転できなくない?」
「チーム戦だし、それでいいんじゃないかな」
「あー、なるほど……」
「――そっか、そういうことだったんだねー」
「ナニガ?」
「ふふー、ヒントはね……ポイントだよー」
「――あっ」
「え、これを狙ってたってこと? なんでまた……」
~料理ルール説明
「あー」
「あー」
「あー」
「アー」
~臨海女子
「……これは故意の±0ですね」
「舐めプ?」
「じゃないでしょ。おそらくだけど、番組の趣旨に合わせてこうなったんじゃない?」
「なんらかの理由で3位以下を狙っていたが、手抜きと思われては困る、ということですか」
「おそらくだけどね。はい、じゃあやってみよう」
「えっ」
「±0を?」
「いまから!?」
「そう、いまからね。はい、動画はあとあと」
「待って! キョウタローの料理が!」
「沖縄料理、というのも興味あります。海ぶどうは使われるのでしょうか」ワクワク
「明華が好きそうですね、あれは……」
「じゃあ成功した人から見ていいわよ」
「よし、やろやろ! ±0、サクッと終わらせるよー」
「サクッとと言われても……」
「そう簡単に成功させられるものでも」
「三人で狙うなら、多少はマシよ。私が邪魔するだけだから」
「自分だけ楽して!」
「グズグズ言わない、これも練習よ。去年夏の準々決勝、サキがやったじゃない」
「チャンピオンの妹……」
「あの子は慣れていたそうですが」
「実力ある相手のいる場をコントロールする練習よ。はい、座った座った」
「くぅっ……」
「京太郎と最近会っていないからか、昔のまともな監督に戻りつつありますね」
「キョウタロー、早く帰ってきて……」
~有珠山
「どうしてHTBはこういう番組をしないんですか」
「え、結構やってんだけど。私しょっちゅう出てるぞ?」
「そうね。赤土プロはそういうのないけど」
「なんで? 試合出てっから?」
「そ、それじゃまるで、爽先輩が出てないみたいです……」
「」
「成香も言うようになったわね……」
「え――ち、違いますっ、私そういうつもりでは……」
「ふ、ふふ……ええんやで、成香……」
「どうして関西弁なんですか」
「っていうか、爽が出てる番組ってどれよ」
「ほら、これこれ。いきなり呼びだされた爽が、北海道のあちこちで体当たり企画を――」
「どうでしょうのパクリ!」
「同じ局だけど……」
「あっちは全国、世界を股にかけるようになりましたから」
「これは京太郎くんを呼んでも、番組映えしませんね……」
「そうね、あの子だったらこれくらい、なんでもなくこなしちゃうだろうからね……」
「私がなんでもかんでも失敗してるみたいに言うな!」
「というか、麻雀のマの字もねー時点で、全然違う番組なんだけど……」
「いや、ほんとやってんだってば。雀荘飛び込みで、頼まれる軽食の人気トップ10まで当てるとか――」
「帰れまテンのパクリ!」
~東日本プロ
「照、京太郎が妹の真似してるけど」
「咲の真似じゃない。必要に迫られただけ」
「負け惜しみでスカ」
「別に負けてない」
「これ、野依プロはわかってた?」
「気づかないわけない。でも協力はしてないね」
「まぁそうだね……」
「試合じゃないのにお仕事頼むのは、ずるいと思うぞ☆」
「野依さん、移籍で試合出られんからね~」
「え、そういう決まりあるの?」
「シロ、規則くらい把握しましょうよ……」
「しょうがないでしょ、移籍考えるような時期じゃないし」
「移籍経験者ってこの中だと――」
「はやりさんが神泉から、小鍛治さんが恵比寿からかねぃ」
「神泉?」
「いま二部だよ」
「はやりさん抜けたからか……」
「それとは別だぞ☆」
「エースがいたからはやりちゃんも抜けたんだよねぇ……」
「そのエースさんは?」
「……寿引退した」
「あっ……」
「こ、この話題はこれくらいにしまショウ」
「どうしてそうなるの!?」
「気ぃ遣ってんじゃねぇっ、ひよっこどもが★」
「おっと、ブラックはやりんが」
「ロンされるぞ、逃げろ!」
「……こなれてきたな、新人どもも」
「いや~、例年より早いねぃ、知らんけど」
「移籍経験者ってこの中だと――」
「小鍛治さんが恵比寿からかねぃ」
「なんでまたつくばに」
「あんまりにも強くなりすぎて敵がいないから、一線をを退いたとか」
「実家暮らし出来る地元に帰りたかった説」
「いや、ちょっと待って……ふくすこラジオで聞いた記憶が――」
「地元チームがなくなりそうだったからだよ!?」
「ああ、なんか聞き覚えあります」
「で、実家暮らしがなんだって?」
「敵のいない麻雀界から引くとか、格闘家じゃないんだから」
「あなたたちねぇ……」
「でも移籍する人ってあまり多くないね」
「野依さんにしても、>>1の見落としのせいでこうなっただけだからな」
「よっぽどの理由がない限り、一つのチームにずっといたほうが、色々と優遇されるしねぇ」
「よほどの理由?」
「寿引退とか」
「あっ……」
「こ、この話題はこれくらいにしまショウ」
「どうしてそうなるの!?」
「気ぃ遣ってんじゃねぇっ、ひよっこどもが★」
「おっと、ブラックはやりんが」
「ロンされるぞ、逃げろ!」
「……こなれてきたな、新人どもも」
「いや~、例年より早いねぃ、知らんけど」
~7月第一週金曜、朝
京太郎「……うおお、マジでアップされてやがる」
京太郎「放送前にいいのか、これ?」
京太郎「……テレビ局のサイトでリンク誘導してやがる!」
京太郎「まぁ麻雀関係者くらいしか見られないし、普通のファンはテレビで見ることになるんだろうけど――」
京太郎「スポンサーあたりから苦情は出そうだな……」
京太郎「――スポンサーの公式サイトでも、リンク張られてやがるじゃねーか」
京太郎「もうやだこの業界……はぁーあ、学校行こ……」
京太郎「――この気配は、哩さん?」
哩『いや、着信表示ば見ようや』
京太郎「見ましたってば。おはようございます」
哩『んー、おはよう。よか朝やね……って、それよりも!』
京太郎「あ、はい」
哩『京太郎がまさか、うちの地元でもタレントデビューばしよるとは思わんかったと』
京太郎「う……いや、デビューとかではなく、偶然で……」
哩『話題の高校生執事雀士の放送をいち早く――』
京太郎(……テレビ局HPの煽りか)
哩『話題の派遣執事高校生出演中は、当社スポンサーのこの番組!』
京太郎(あー、筆頭スポンサーの会社だ……)
哩『偶然でもここまで言われっとは、もうデビューと言っても過言やなか』
京太郎「過言ですってば……ところで、その……」
哩『ん?』
京太郎「……その、どうでしたか?」
哩『北九州の料理ば、ようできとったよ?』
京太郎「いえ、ではなく……麻雀のほうで」
哩『ふんむ……手抜きでしたんやなく、真剣にその位置を狙ったわけやけんね……私は、失礼やとは思わんかったと』
京太郎「そうですか……」ホッ
哩『――番組の成否まで考えず、普通に打てばいいものを』
京太郎「えっ」
哩『いまのは菫ばい』
『こら、お前勝手に――』
『待て、この流れ……』
『え、全員分やるつもりですか?』
哩『で、智葉は――そんなに料理がしたければ、また店に来ればいいものを……』
『言ってないだろ!』
京太郎「言ってないんですか……」ショボン
哩『京太郎が落ち込んどるけど』
『そ、そういう意味ではなくてっ……』
哩『相手が楽しそうだからよかったが、真面目な相手なら心証を悪くしたぞ。今後は気をつければいいが――』
『やめろおおおおおお!』
京太郎「はは、ご心配をおかけして……すいません」
哩『で、巴は――鹿児島のローカルにも出てほしいですね。霧島を紹介する番組もあって、参拝者が増えれば潤いますから』
『……そんなこと、言いましたか?』ゴッ
哩『じょ、冗談ばい、そんなっ……あああああああああああ!』
京太郎「哩さん!?」
哩『し、死ぬかと思ったぁ……関節はいかん、関節はぁ……』
京太郎(い、いったいなにが……)
『……巴がますます怖くなっていく』
『お前そんなキャラだったのか?』
『地元では
霞さんが、こういう役回りでしたからねぇ……私もそれなりに鍛えてはいますから、なにかあれば示威行為も辞さない覚悟ですよ?』
京太郎(自慰行為だと!? いったいなにがあああああああ!)
哩『……清澄で悪い影響受けちゃったかなぁ、っち言うとったよ……あたたた……』
京太郎「いや、そういうことでも……うーん、なくはない、のかな……?」
哩『宮永妹が得意やち言うとったか……あん姉妹は、ほんま別格やね』
京太郎「咲とは動機が違いますしね、俺の場合。それにたぶん、次は狙っても難しいですよ。最後とか、ほぼ運でしたから」
哩『まぁ誰も怒っとらんし、番組も問題なかった……急な出演にしては、これ以上なく完璧やったやろ』
京太郎「――ですね。まぁ問題が起きるまでは、俺も前向きに考えときます」
哩『そいがよか……はぁ、しかしうまそうな治部煮やったと……里心の起こって、どうしようか困っとっとやけど――』
哩『そいば見て思いだしたんは、治部煮カレーんことばい』
京太郎「あー、やっぱ来ますか」
哩『どげんやった?』
京太郎「すげーうまかったですよ、和風カレー。蕎麦屋のカレーっていう感じですよね、あのダシの加減は。それよりも濃くて、ちょい辛みは薄いですけど」
哩『具材は治部煮?』
京太郎「……そういえば、そうでしたね。チキンカレー、レンコン、ニンジン、きぬさやにしいたけも――で、水煮でしょうけど、タケノコもありましたから」
哩『ふむ……よし、今夜はカレーばすっか! ちゅうわけやけん、みんなうちで食べてってな』
『カレーか、久しぶりだな』
『ちゃんと作れるのか? その謎のメニューは』
『……お鍋二つにして、二種類作りません?』
哩『保険ばかけんな!』
京太郎「はは、仲良さそうで安心しました」
哩『笑てる場合やなかと。京太郎は、次のミッションがあっとやけん』
京太郎「……3つ目ですか」
哩『まぁ3つ目は大した量はなかち聞いとっとよ。なんでも、ダシ茶漬けがあるちいう噂ばい』
京太郎「これははっきり裏メニューじゃなく、噂なんですか?」
哩『注文した先輩ば、おらんかったんでな……まぁ、そろそろ厨房の人らとも打ち解けとるとやろ? 世間話で聞いてみたらよかよ』
京太郎「わかりました……それじゃ、先輩たちはカレー、おいしく作ってくださいね」
哩『大丈夫やって、カレーくらい誰んでも――なぁ?』
『まぁ、な……』
『だがなんなんだ、このそこはかとない不安は……』
『占っておきましょうか?』
哩『……じゃ、じゃあまたな、京太郎』
京太郎「はい、お疲れさまです――大丈夫かな……?」
~金曜、昼
京太郎「――さて」
「おう、らっしゃーい」
「さて、今日はなんばすっと?」
「普通の定食もうまかよ。ウナギの煮付け、トロットロになっとるよ~」
京太郎(……やべえ、うまそう)ジュルッ
京太郎「じゃあそれ一つと――」
「あい毎度ぉ!」
「ウナ定、入りましたー!」
京太郎「〆にダシ茶漬けいきたいんですけど……って、注文の流れが料理屋みたいになってる……」
「ダシ茶漬けってほどのもんでもなかよ?」
「ほれ、兄ちゃんが昨日作ったアレの派生で――」
京太郎「えっ?」
「なーに惚けとっとよ。ほれ、野依プロが喜んで食っとったアレばい」
京太郎「――な、なんでここの人も知ってるんですか!?」
「いや、学校のスタッフもサイト見られっから」
京太郎「ファッ!? いや、俺が初めて来たとき、驚いてたじゃないですか!」
「あんときはあれよ、興味なかったんで見てなかったっつーかな」
「兄ちゃんよう来てくれるし、生徒もみーんな噂ばしとるけんね」
「それでこんところは毎日見とるとよ」
京太郎「な、なんてこった……で、えっと……ごまさばの茶漬けってことですか?」
「冷や飯しかなかったときに、あつ~いダシばかけて、ネギ散らして食うのがたまらんのよ」
「大葉のままでも合うけどね」
「ウナギが濃い味やけん、〆にはピッタリやと思うよ」
京太郎「うまそうですね。じゃ、ウナギ食ってからもう一回、注文に来ますよ」
「おう、ダシ引いて待っとくからなぁ」
京太郎「――しかし、この食堂すごいな。いちいちダシも引いてるって、どっかの板さんだったのかな……」
京太郎「……色々と、勉強させてもらうかな、しばらく」
京太郎「――率直に言うと、うまかった」
京太郎「旬のマサバとかだと、脂乗っててメインも張れるようになりそうだ」
京太郎「あとはダシか……材料自体は一般のものだけど、味のバランスは料亭なんかで供されるものと、ほとんど変わらない……」
京太郎「……うますぎて二杯も食ってしまった。小遣いがやべぇ……バイトしなきゃ」
京太郎「……というか、本だよな。レシピ作って、師匠に許可もらって、出版できれば……」
京太郎「いや、それ以前に節約しろって話か――ん?」
京太郎「もしもし……」
仁美『あー、私や……』
京太郎「その声は……江崎先輩?」
仁美『仁美でよかよ。まずは収録お疲れさん』
京太郎「今日はみんなに言われますね……ありがとうございます」
仁美『そのことで急いどったわけか、昨日のあれは。なんちゅうか、悪かったね』
京太郎「いえ、俺こそ失礼をいたしまして……申し訳ありません」
仁美『野依プロにも世話んなっとるんやし、頼まれごとば無碍にするより、よっぽどよかことやろ』
京太郎「そう言っていただけると……とはいえ、昨日の謝罪も短く済ませて、それ以降連絡もしなかったのは、言い訳できませんね」
仁美『疲れて帰ったところで、今朝も早かったやろうに電話ばしろとか、無理は言わんよ』
京太郎「……ほんと、なにからなにまで――」
仁美『ま、お昼くらいは電話来るやろ思うてたのに、一向にかかってこんけん――こうやってかけたわけやけどな?』
京太郎「大変申し訳ありませんでしたぁ!」
仁美『あっはっは、冗談ばい。政治は悪くても、京太郎は悪ぅなかよ』
京太郎「俺の行いを政治のせいにしないで!」
仁美『――まぁ、そういうことで、昨日のことば気にしとらんかち思うて、電話しただけやけん。京太郎、そんな畏まらんでよかよ』
京太郎「……はい、ありがとうございます」
仁美『まだ新道寺に来て一週間経っとらんやろ? しばらくは学校ば慣れっことに集中しとってよ。私もまた、ヒマがあったら顔ばださせてもらうけん』
京太郎「ありがとうございます。その際は、ぜひおもてなしをさせていただければ」
仁美『高校生執事のもてなし、期待させてもらうとよ。それじゃ、またな~』
京太郎「はい、お疲れさまでした――」
京太郎「……新道寺の人たち、みんな優しいなぁ」
仁美「……ほれ、電話もしたし。嘘やなかったやろ?」
美子「むうぅ、ほんまやったと……」
仁美「あ、それはそうと昨日、モールで佐々野いちごがイベントやっとってな――」
美子「ええっ、あの大人気新人プロのちゃちゃのんこと広島の佐々野いちごプロが!?」
仁美「………………セリフが説明すぎん?」
~金曜、放課後
京太郎「犯人は――お前だ!」
モブ子「私だったのか」
京太郎「ヒマを持て余した――」
モブ子「麻雀部員たちの……」
京モブ『遊び』
京太郎「っじゃねーよ! どっからあんな映像を……」
モブ子「いや、やるつもりはなかったんだけどね? なんか高麻連の偉い人たちが、期待してるっぽかったんで、よかれと思って」
京太郎「どうよかれと思ったんだよ……」
モブ子「みんな喜んでるし、局もスポンサーもオッケーだしたし、気にしねーってことで一つ!」
京太郎「まぁいまさら気にしねーけど……あれ、俺の許可は?」
モブ子「?? いらないでしょ?」
京太郎「いるダルルォ!?」
モブ子「オッケーオッケー、そんじゃ次からは、須賀許可も取るから」
京太郎「頼むぞ、マジで……」
モブ子(須賀母の許可だがな!)
モブ子「――ところで」
京太郎「おう?」
モブ子「なんか金ない金ないっつってるけどさぁ……昨日のあれ、バイトじゃないの?」
京太郎「あー、まぁな……けどあれは小遣いじゃなく、買い物用の資金に回してるから」
モブ子「……チームからもらうのだけじゃなくて、テレビのギャラも全部?」
京太郎「………………えっ」
モブ子「えっ」
京太郎「そうか――ギャラがチームに入って、そこから俺の取り分が出たのかと思ったけど、そうじゃなかったのか……」
姫子「なーにを頭抱えとっと?」
煌「経済について考えているそうですが」
姫子「真剣な横顔もよかねぇ……」ウットリ
煌「ええまったく、目の保養になりますね」
京太郎「博多からは、依頼分の報酬――で、テレビからは出演のギャラ、か……それがあれば、俺の懐ももっとあったかいだろうに」
京太郎「いまからでももらえないかな……うーん、でも局にはかけづらい。理沙さんにも聞きづらい。覚さんにでも聞いておくとしよう」
京太郎「とりあえず――昨日は簡単に済ませてしまったから、今日は気合いを入れよう」
京太郎「そしてすでに……仕込みは済ませてある」キランッ
京太郎「そろそろいい頃合いだし、給仕の支度を始めておくか」
京太郎「っつーことで、調理教室行ってくっからー」
「待って、ここ教えてって」
「私もここ、ここだけでいいから!」
「私はここ! からここまで!」
京太郎「ラスト多すぎぃ! それはあとにしてくれ……一問目だけは教えてくから」
「やったぜ」
「京ちゃんやさしー」
「京ちゃんすきー」
「は?」
「私のほうがすきだし」
「むしろ愛してるし」
「一周して憎らしいくらいだし!」
京太郎(なにいってんだこいつら……)
京太郎「――よぉーし、いい感じだ。キンキンに冷えてるっ、ありがてぇっ……」
京太郎「ふむ、そうだな……このまま持って行って、注文受けてからお渡しするほうがいいか」
京太郎「今日も暑いし、これはうまいと思うぞ――」
~三年勉強室
京太郎「お疲れさまでーす、冷たくて甘いシャーベット、いかがですかー」
煌「おや京太郎くん、お疲れ様」
姫子「売り子みたいなことばして……」
友清「はぁ~、助かったぁ……よし、休憩しよう! 休憩!」
姫子「ん、そうやね……で、京太郎」
京太郎「押忍、なんでしょうか!」
姫子「――そのすごか台車はなんね?」
京太郎「アイス屋のショーケース、見たことありません? あれを改造して、移動できるようにですね――」
煌「そういうことを聞いてるのではないと思うのですが……」
姫子「もーよか、わかったけん……で、またこがんも作って……」
友清「ミルクバニラ、ヨーグルト、チョコレート、イチゴ、キウイ、スイカにメロン……」ホァー
京太郎「お好きなものをどうぞー。もう1ケースあるんで、集中しても大丈夫ですよー」
姫子「……そがんも作ったとか」
煌「では私はヨーグルトをいただきましょう」
京太郎「はい、毎度です!」
煌「……おいくらですか?」
京太郎「お代はいりません。代わりに、笑顔をいただきましょう」フッ
京太郎(なんつって)
煌「……こ、こうでしょうか?」ニ、ニコッ
京太郎「――あ、はい。どもです……えっ」
姫子「………………私はチョコ!!! こ、これでよかかっ!?」ニッコー
京太郎「は、はいっ、ども……」
友清「キウイ!」ニコニコッ
京太郎「はい、あざっす!」
京太郎(冗談のはずが、思いもかけず笑顔祭りだぁ!)
京太郎(いまさら冗談でしたとは言えない……)
姫子「どうしたと、京太郎?」ニコッ
京太郎「う……(かわいい)」
京太郎「いえ、なんでもないっす」
姫子「変な京太郎ばい」クスクスッ
京太郎(ぬあああああああ! かわいいいいい!)
京太郎「も、もうお代は十分いただいたかなー、と思うんですが……」
姫子「そげん言われてもなぁ……」ハムッ
姫子「ん~~~っっ!」パァァッ
姫子「――っちゅう具合で、食べると笑ってしまうけんね。仕方なかよ」
京太郎「っ……ありがとうございますっ」
京太郎(これは止められん! 嬉しいこと言ってくれるなぁ……)
姫子「しっかし、ほんま熱かぁ……拭いても拭いても、汗の滝のごたる……」フキフキ
ツゥー ポタッ
京太郎「…………」
姫子「はぁ、中も濡れてきて……」グイッ フキフキ
京太郎「…………」ブフウッッ
京太郎(え、ちょっ、えっっ!? そっ、えっ!?)
京太郎(そ、そんなんありなのか!? ブラウス開きすぎだろ!? だよな!? 下着見えてます! そんなとこ開いて拭かないでください!)
京太郎(と思いつつも見ちまうううううううううう! くそうっ、男のサガが悔しい! でも見ちゃう!)ビクンビクンッ
京太郎「………………」
京太郎(いやこれは仕方ない俺はここで給仕の仕事をしているなにかあればすぐ動けるようにだから相手の姿を観察するのも仕事の一環であってだな)
京太郎(つまり――見ます! すいません!)ジー
京太郎(……お、おお、おおおお……)
京太郎(思った以上に、でかいっ……あと、下着がやべーくらい可愛いっ……)
京太郎(シャツ着て、透けないようにしてるのにっ……シャツ引っ張って拭くから、全部見えるっ、私にも見えるぞっ……)
京太郎(ピンクってキツいと下品なのに、淡いとなんでこんな上品なんだろうな……)シミジミ
京太郎(そこに汗のアクセントがやばい。首筋から鎖骨に流れて溜まって、溢れたら谷間に流れ込んで、それを拭こうとする悪循環――)
京太郎(俺にとっては善循環だけどな!)
京太郎(これまで色んな女子校に通ったけど、ここまで無防備なとこはなかったぞ……ありがとうございますっ、ありがとうございます!)
京太郎(ん? シャツを戻した……くっ、汗が引いたか!? なら、お茶をお淹れしよう。そうだ、水分補給は大事だからな。そして暑いときこそ熱い飲み物で――)
「……うっ……たろうっ……京太郎!」
京太郎「うおっ! はい!?」
姫子「………………京太郎」ジロー
京太郎「………………あっ」
姫子「………………なにか言うことは」
京太郎「す――」
京太郎「すいませんでしたあああああああああああああ!」ドゲザッ
姫子「はぁ……いや、油断しとった私もわるか……」
京太郎「ですよね!」
姫子「調子ば乗ったらいかん!」ベシッ
京太郎「イタァイ! すいませんっ、マジすいません!!」
姫子「まったく――京太郎がそがん男やったとは、まったく……」ブツブツ
煌「まぁまぁ姫子、健康的な男子高校生なら仕方ありませんよ」
京太郎「き、煌さん……」
姫子「そげん言うても、煌――」
煌「和もよく見られると言ってましたからね。前情報はすでにあります、知らないほうが悪いですよ」
京太郎「」
姫子「は、原村和っ……う、あれと比べられっとか……」
京太郎「だ、大丈夫です! 先輩のもすごくよく――あっ」
姫子「~~~~~~~っっっ!」ブルブルブルッ
煌「いまのは京太郎くんが悪い」
京太郎「ですよねえっっ!」
姫子「記憶をなくせええええええええええええええええ!!!!」
――なんか色々あって一時間ほどの記憶が消えました
京太郎「――うぅ、頭が痛い……いったいなにが……?」
姫子「疲れとるんやなかか?」
京太郎「そうかもしれませんね……あっ」
姫子「ん?」
京太郎「姫子先輩、汗すごいですよ……お拭きしますね」スッ
姫子「ふぇ?」
京太郎「失礼します」フキフキ
姫子「んひゅうっ!?」ビビクンッ
煌「なにをやってるんですか、あなたは!!」スパーンッ
京太郎「あだっっ! はっ、すいませんっ、つい……」
友清「つい、で女の胸元ば拭きよっとか……」
京太郎「胸じゃないですっ、鎖骨ですよ!」
煌「姫子はそこそこありますから、ほぼ胸ですよ……」
京太郎「すいませんでした、姫子先輩……」
姫子「だ、だだっ、だだいっ、じょっ、じょじょっ……」ビクンビクンッ
京太郎「――しかし、なんでまたあんなことをしてしまったんだ……普通だったらひと言了承取るのに……」
煌(……いや、取らずにしそうですけど)
友清(それを喜ぶ女性陣サイドにも問題が……)
姫子(か、軽ぅ拭かれただけやのに……肌が、ピリピリすっとぉ……)ゾクゾクッ
京太郎「……さて、買いだし行ってくるかな」
煌「お待ちなさい、京太郎くん」
京太郎「おっと、なんでしょうか」
煌「最近よく買いだしに行っていますが、そんなに買うものがありますか?」
京太郎「…………すいませんっっ!! 私物の買いだしですっ!!」
煌「はぁ……まぁ部活中ではないですから、自由ですけれどね」
姫子「まぁまぁ、そうきつぅ言わんでも……」
友清「私物って、なにを?」
京太郎「食材ですね。なるべく新鮮なものを使いたいので、翌日には使い切る感じにしてますので――」
煌「ごめんなさい、私が悪かったです」
姫子「煌もこう言うとるばい、許してやってくれんね?」
友清「なんなら荷物持ちに付き合うとやけど……」
京太郎「ええ……な、なんで謝られてるかわかりませんけど、大丈夫ですからっ!」
京太郎「そ、それより……お三方はなにか、買うものありませんか? 俺がついでに買ってきますので」
煌「……私は、なにもありません……きょ、京太郎くんは、ゆっくり買い物をしてらしてくださいな」
京太郎(気を遣われすぎてるっっ!)
姫子「………………あ、あー、そいない私は――ちょっとおいしいお茶ば飲みたかよ。お勧めのあったら、買ってきてくれんね?」
京太郎「なるほど……わかりました、手配しておきます」
煌「姫子、あまり無理を言うのは……」
京太郎「いえ、なにかあるなら、そのほうが嬉しいですよ。お役にたてるんですから」
姫子「ほら、京太郎もこう言っとう」
友清「京太郎、すまんが消しゴムば頼めん? チビとったやつが、本格的に欠けだしてきおって――」
京太郎「了解っす」
煌「ぁ――あの、京太郎くん」
京太郎「はい!」
煌「私は、本当になにもありませんので……お二人からの頼まれもの、忘れないようにしてくださいね」
京太郎「――はいっ! では、行ってまいります」
姫子「気ぃつけっとよー」
京太郎「うっす……あ、姫子先輩――」
姫子「ん?」
京太郎「……ありがとうございました」ボソッ
姫子「――なんのことよ?」
京太郎「いえ、こちらのことです。それでは、おいしいお茶を探してきますので」
姫子「ん、よろしく~」
友清「よ、よく消える消しゴムも!」
京太郎「ま○ま○クンでいいですよね」
友清「N○M○のがよう消えっとやろ!」
煌(ま○ま○くん、最近もありましたっけ……?)
~駅前、モール
京太郎「ふぅ、だいたいは買えたな。あとは消しゴムか――」
~文房具屋
京太郎「――よし、ま○ま○クン確保っと」
京太郎「N○M○でもいいんだけど、友清先輩は結構使うからなぁ……カスが飛び散らないこっちのほうが、あの人向きのはずだし」
京太郎「さーて、それじゃ帰るとしますか」
京太郎「さて、早いとこ帰らないとな――」
霞「……あ、あら~、京太郎くんじゃない? 奇遇ね~(棒読み」
京太郎「――え、霞さん?」
霞「って、すごい荷物じゃない。どうしたの……部活?」
京太郎「いえ、私用の買い物がほとんどで――そんなことより、霞さんはまた、こちらでお仕事ですか?」
霞「ううん、今日はオフなのだけど……私の好きなお店が、こっちにテナントを構えたって言うから、足を運んでみたのよ」
京太郎「ああ、そうなんですか……では邪魔するのもなんですし、俺はこれで――」
霞「お待ちなさい」ガシッ
京太郎「うぉっ」
霞「あのね、邪魔なわけがないでしょう? あなたは私の大事な後輩で、姫様にとっても――」
京太郎「え、小蒔先輩がなにか?」
霞「――大事な後輩だからね?」
京太郎「あ、はい……」
霞「そんな子と話すのも、一緒にいるのも、邪魔だなんて思わないわよ……それより京太郎くんは、これから家に帰るの?」
京太郎「あー……いえ、食料品は学校に置いておかないといけないので、戻る予定ですが」
霞「……やっぱり部活かしら」
京太郎「違いますっ、私用です!」
霞「……ふふっ、はいはい。わかっているわ」
京太郎「ほっ……」
霞「まぁ咎めようとも思ってないけれど……それより、そんな荷物大変でしょう。車があるから、新道寺まで送ってあげるわね」
京太郎「――えっ」
霞「車よ?」
京太郎「いや……えっ? あの、鹿児島から……?」
霞「そんなわけないでしょう? 福岡からよ。分社で車を借りて、それを使ったのよ」
京太郎「あ、ああ、なるほど……でも、いいんですか?」
霞「ええ、せっかく会ったんだもの。少しでも長くお話ししたいと思ったら、ちょうどいいんじゃないかしら」
京太郎「……ありがとうございます。では、お言葉に甘えまして」
霞「ええ、甘えられました……お買い物は? これで全部?」
京太郎「はい、終わってます」
霞「そう。それじゃ、行きましょうか」
~部室
京太郎「……あの、本当に荷物は自分で――」
霞「ちゃんと守衛さんに通したんですからね、校内に入るのは大丈夫のはずよ?」
京太郎「いえ、誰かに見られると、色々と――」
煌「おや京太郎くん、お疲れさ――あら、そちらは……」
京太郎(めっかったあああああああああ!)
姫子「京太郎、お茶淹れて――なっっ、永水の石戸霞!?」
友清「おおおお、本物! サインばほしか!」
姫子「友清ォ!」
姫子「じょーだんよ、じょーだん」
霞「新道寺の皆さんね。永水OGの石戸です。いつも京太郎くんがお世話になっています」ペッコリン
姫子「……うちの京太郎やけん、世話するんは当然やなかか?」カチン
煌「その通りですよ。石戸さんがことさらに気を遣う必要はないかと存じますが……」
霞「あら、ごめんなさい。京太郎くんとは、一年近い付き合いなものだから、まだ永水の子だっていうイメージが抜けないのよ」
姫子「……それはそれは。なら、いまは新道寺の選手やち、はっきりと教えといたほうがよかかね」
京太郎(火花があああああああ!)
煌「姫子、ケンカ腰はいけませんよ」
姫子「ケンカなんちしとらんよ。向こうの対応に合わせとるだけやけん」
霞「うふふ、面白い子ねぇ……京太郎くんも、楽しそうでなによりだわ」ニコニコ
京太郎(それ本音ですかっ、皮肉ですか! 顔で読めない!!)
友清「それはそうと、そろそろ下校時刻やけん。部外者は早めん帰ったほうがよかち思いますが」
霞「あら、そうなの? それじゃ京太郎くん、またね」ヒラヒラ
京太郎「あ、はいっ、お疲れさまでした!」
姫子「はぁ~……やれやれ、帰ったとか」
煌「からかわれただけのようでしたね」
京太郎「……すいません、部外の方を中まで案内してしまいまして」
煌「いえいえ、部活中でもありませんし、構いませんよ」
姫子「荷物ば運んでもろうたんやろ? 仕方なかよ……そいよか、そろそろ帰り支度ばせんとね。京太郎も急がんと」
京太郎「あ、はい! ただいま――」
京太郎「――はい、もしもし」
美子『もしもーし。もう下校時刻やけど、ちゃんと帰っとう?』
京太郎「もちろんですよ。全員お送りして、俺も帰るとこです」
美子『そう? なら帰るまでは、うちが京太郎くん独り占めやね』
京太郎「はは、恐縮です……」
美子『あ、そういうたら、仁美とも会ったっち聞いたけど、ほんなこつ?』
京太郎「ええ、お会いしました。少し失礼がありましたので、印象悪かったかなと思いますけど」
美子『んー……そうでもなかったみたい。あんま気にせんでよかよ』
京太郎「???」
美子『ふふ、気にせんでよかー。そいよい、今日は変わったことばなかったと?』
京太郎「変わったこと……あー、先ほど買い出し行ったときに、色々とありましたっけ」
美子『え~、そうなん? 聞かせてほしかぁ』
京太郎「では家に着くまで、手短にですけど――まず買いだしっていうのが、、いつもの食糧品と……」
美子『え、いつもそんなん買うとるん?』
京太郎「ええ、毎日使うものですから。で、その途中で消しゴムを探して――」
――霞さんの話題をだすと、やっぱり大きいほうが……などの呟きが聞こえたとかなんとか。
~電話、手抜きになってたので続きから
美子『――たとえばここに、二つのチームがあっとするやろ?』
京太郎「……はい?」
美子『一つのチームは、宮永照、愛宕洋榎、宮永咲、高鴨穏乃がおっと』
京太郎「めちゃくちゃ強いっすね」
美子『で――もう一つのチームには、石戸霞、神代小蒔、原村和、真屋由暉子がおると』
京太郎「………………はい」
美子『どちらのチームも五人目のメンバーを探しとっとよ。そこで白羽の矢ば立ったのが、京太郎くん』
京太郎「……お、俺は男子なんで、その――」
美子『男女混合団体の対抗戦やけん』
京太郎「はぁ……」
美子『――どっちに入っと?』
京太郎「………………えと、家に着きましたので、その件についてはまた今度ということで」
美子『あ、こら! どっちに入るかだけ、簡単にスッと答えんと――』
京太郎「では失礼します」ピッ
京太郎「……ふぅ、危ないところだった」
京太郎「……とりあえず、Aチームにはエイスリンさんか灼先輩、Bチームにはシロさんか絹恵さんだな」
京太郎「あとは控えに初美先輩と巴さん、憧と淡を配置すれば――」
京太郎「……はっっ!!」
京太郎「いかんっ! 俺はいったいなにを考えてるんだ……なんか、差し入れの直後くらいから、おかしいな……あれ、差し入れ?」
京太郎「おだししたのは覚えてるが、そのときなにかあったような……だめだ、思いだせない……」
京太郎「……こういうのは考えてないときに、ふと思いだせるもんだよな、うん」
京太郎「とりあえず、なんかしとくか――」
京太郎「誰かと電話でも……俺のメモリも、女子の名前が増えてきたもんだ。感慨深いぜ」
京太郎「……あ、そうだ。臨海の三人から、監督がどうこうって連絡があったんだった」
京太郎「気になるし、ちょっとかけてみるか――」
京太郎「………………あ、もしもし、須賀です。ご無沙汰してました。いま大丈夫ですか?」
アレクサンドラ『……もしかして、キョウタロウ?』
京太郎「はい、お久しぶりです……って、着信に名前の表示、ありませんでした?」
アレクサンドラ『ああ、ちょっと忙しくてね。名前確認してなかったのよ』
アレクサンドラ『………………』
サンディ『キョウタロウ! この時期に電話をくれるだなんて……嬉しいわ!』
京太郎(なんかテンションが変わった!?)
サンディ『予選は終わったけどね、色々と大変なのよ。明華は奇行が目立つし、ハオは辛辣だし、ネリーも生意気になってきたし!』
京太郎「は、はぁ……なんかすいません」
サンディ『いいのよ! 確かに奇行はキョウタロウの贈ったアレのせいだと思うけれど、京太郎絡みはある意味仕方のないことだから!』
京太郎「ハオとネリーは、その……どんな感じですか?」
サンディ『ひどいのよ、あの子たち! 私が真面目に仕事してるのに、ランキングがどうの、キョウタロウがいないと真面目になるだの、好き勝手言って!』
京太郎「あー、それはあいつらが悪いかも――」
サンディ『キョウタロウがいるときの私は、優先順位をキョウタロウ基準にしてるだけで、いたって真面目なのに! おかしいわよねっ?』
京太郎「……あ、はい」
サンディ『はぁ……やっぱりキョウタロウね。あなたならわかってくれるって思ってたわ』
サンディ『麻雀のほうも、しっかりやっていたみたいだし……±0、狙ってできたのは見事だったもの』
京太郎「ありがとうございます」
サンディ『あの子たちにもさせてみたんだけど、どうも難しいみたいだったし……そうね、今度の連休あたり、うちに来て実践してみない?』
京太郎「連休は――すいません、こちらの部長に予定を聞いてみないとわからないので、どうも」
サンディ『そう……でもなるべく、こっちに来てくれると嬉しいわ』
京太郎「一応、提案はしてみます」
サンディ『それで、私の家に泊まってちょうだいね。話したいことがいっぱいあるのよ』
京太郎(あかん)
京太郎「――あ、ありがとうございます。その際には、ぜひ……」
サンディ『……え、と……あの、いいの?』
サンディ『自分で言っといてなんだけど、ほら……私たち、少し年の差があるし……』モジッ
明華「少し(18差)」
ハオ「そろそろ、また19差になりますね」
ネリー「監督、かわいそう……」
京太郎「……そ、そうですねー。それじゃお泊りはなしですね、色々問題ありますので」
サンディ『なっ……shit! まさか裏目に出るとは……こんなことなら良識ある大人なんて演じないで、録音でもして言質を盾にすればよかったわ……』
京太郎(なんか恐ろしいことを!)
サンディ『でも仕方ないわね、キョウタロウの真面目さは魅力の一つだもの……あ、そうそう。真面目といえば――』
サンディ『ね、部員を真面目に練習させるのって、どうすればいいと思う?』
京太郎「――は?」
サンディ『真面目に練習させる方法よ』
京太郎「いえ、あの……皆さん、真面目にされてませんでした?」
サンディ『あなたがいたときはね! でもねぇ、さっきも言ったけど、最近どうも舐められてるというか……私のことを軽視してる感じがするのよねぇ』
京太郎(……まぁ、うん……確かに少し、威厳が損なわれてしまったかもしれないな)
サンディ『ねぇ、学生がやる気を起こすときって、どういうときかしら』
京太郎(……それを考えるのが、教師の役割だと思うんですが……あれ、監督は教師だけど、仕事は監督一本なんだっけ?)
京太郎「……俺がなにかしましょうか?」
サンディ『ダメ』
京太郎「…………えっ」
サンディ『ダメ、ぜーったいダメ!!』
京太郎「……なぜでしょう?」
サンディ『そんなおいしいご褒美なんてもったいないでしょ! っていうか、私が欲しいわよ、それは!』
京太郎「」
サンディ『そもそもキョウタロウがいない状況なんだもの、そんな一時しのぎじゃ、長続きしないでしょ』
京太郎(そっちの理由を最初に持ってきて!)
サンディ『はぁ、いい考えってないものねぇ……自分の頃は、規律を守るなんて当たり前だったから、不真面目だったり監督軽視だったりなんて、あり得なかったわよ』
京太郎「いい選手だったんですね、さすが」
サンディ『それしかできなかっただけよ。だからいま、こうして悩んでる――』
京太郎「教え子のために悩めるって、いい監督の条件ですよ。俺が教え子なら嬉しいです」
サンディ『忘れてるようなら思いださせてあげるけれど、あなたは私の可愛い教え子なのよ、キョウタロウ?』
京太郎「――そうでした。すいません、監督」
サンディ『そこはすいませんじゃないよね?』
京太郎「ありがとうございます――ですね」
サンディ『うん、よろしい。はぁ……あいつらも、キョウタロウほど素直ならいいのに』
京太郎「俺もそれほど素直じゃないってか、捻くれてるほうかと思うんですが」
サンディ『日本人の気質だからかしらね。よその子と比べれば、十分すぎるほど素直よ……』
サンディ『うーん、やっぱりエサで釣るしかないか……』
京太郎(せめてご褒美って言って!)
サンディ『京太郎だったらどうする? ちなみにだけど、なにかするって、なにするつもりだった?』
京太郎(………………この人、これ聞くためだけに、こういう話の流れにしたのか?)
サンディ『ねー、キョウタロウー、どんなことしてくれる予定だったのー?』
京太郎(……監督にじゃなくて、部員にだってこと、忘れてるんじゃないか……?)
京太郎「んー……買い物とかの、荷物持ちですかね。男手が必要といえば、そういう感じかと」
サンディ『荷物持ち、買い物……はっ! つまりデート!』
京太郎「えっ? いや、あの、そういうのではなく……あくまでアシスタントというか、小間使い的な……」
サンディ『キョウタロウとのデート……確かにそれなら、あの子たちもやる気になるわよね……』ブツブツ
京太郎「あのー、監督ー、聞いてますかー?」
サンディ『けど、やる気を通り越して殺る気になって、麻雀卓が血に染まっても困るわよね……』
京太郎(なにいってだこの人)
サンディ『ごめんなさい、キョウタロウ。さすがにそれは、許可しかねるわね』
京太郎「いや、あの……はい、まぁたとえばですからね」
サンディ『……あら? ちょっと待って、でもそれが出てきたってことは、京太郎のやる気スイッチもそこにあるってことかしら?』
京太郎(やる気スイッチて)
サンディ『つまり――私とデートがご褒美なら、京太郎はとても真面目に練習に臨む、そういうことかしら?』
京太郎「……え? まぁ、それは……うーん……そうかもしれませんね」
サンディ『ほんと!?』
京太郎「えっ……はい、もちろん」
京太郎「だって監督みたいな美人の、それも外国の女性とデートするなんて、普通ないことですよ?」
サンディ『――――』
京太郎「そりゃテンションも上がって、真面目になりますって。男子高校生なら、だいたいそうだと思いますけど」
サンディ『――ぁ……そ、そう……なんだ……へぇ……』
京太郎「まぁでも、教師が生徒の指導するのに、デートなんて条件用意できませんし、あくまでたとえですよね、これも」
サンディ『………………そうよね』
京太郎(あれ?)
サンディ『はぁ……あまりいい考えは出なかったわね、結局』
京太郎「すいません、お力になれなくて」
サンディ『? なにを言ってるの、キョウタロウが十分、私の力になってくれたわ』
京太郎「え、でも――」
サンディ『……こうして電話をくれて、グチを聞いてくれて、一緒に知恵を絞ってくれた。それだけで十分すぎるくらいよ』
京太郎(グチは勝手に言ってたんですが、それは……)
サンディ『ありがとね……さて、と――元気出たし、お仕事頑張ることにしようかしら』
京太郎「……無理なさらないでくださいね?」
サンディ『平気よ。確かに面倒も多いし、キツいこともあるし、あの子たちは小生意気だけど――私、この仕事好きだもの』
サンディ『キョウタロウにも会えたし、ね?』
京太郎「……はい。俺も監督に、お会いできました」
サンディ『それじゃ、今度は顔を会わせてお話しましょ――おやすみ』
京太郎「おやすみなさい。失礼します」
京太郎「……やっぱり教師とか、こういう仕事ってストレス溜まるんだろうなぁ」
京太郎「監督も、うまくリフレッシュできるといいんだけど……たまには今日みたいに、電話してみたほうがいいかな」
京太郎「っと、もうこんな時間か――そろそろ寝ないと」
「テスト勉強、お疲れさまです。なにかありましたら、いつでも聞いてください」
「この時期なんかは、テスト回数少ない阿知賀とかが、若干羨ましいです」
「神社関係の仕事、九州全域で色々あるんだな。春もなにかしてるのかもしれないけど、テストもあるし、無理するなよ」
京太郎「……よし、と。さて寝るかー」
~金曜日程、終了
【二年目7月第一週金曜】
俺は実は、とんでもなく破廉恥な男なのではないかと、最近思い至りました。
師匠に教えを乞い、執事として皆さんの元へ参じているというのに、これではあまりに情けない。
ということで、煩悩を戒めるために、時折こうして決意を新たにさせていただきます。
環境に慣れると気が緩む、というのはこういうことかもしれません。
今後も皆さんに無礼のないよう、真摯に、そして紳士に務めて参りたいと思う所存です。
……………………
よし、書いたぞ。
これからはしっかりと、硬派な俺にならないとな……。
『……え、いまさら?』
『最近思い至るまでもなく、破廉恥極まりないだろ』
痛い。
『……高校生男子なら普通。気にしないほうがいい』
『京ちゃんを惑わせる私の魅力のほうが悪い、そう思ってる。照だけに』
『自分で名乗るな、このバカ!』
『むしろ普通の男子より理性があるほうだと思うんですが……』
『そ、そうでもなかやろ……』
『この反応の違いは、京太郎くんと接した時間に関係があるかもしれませんね』
う……でも一理あるか。
そうだな、初対面の方にとっては、俺なんてデカくてガラの悪い男に見えてしまうんだし。
騙すとかってわけじゃないけど、なるべく安心できるよう、より紳士的でないとな……反省。
『それプラス、女子校のメンバーは男子に免疫ないから、しゃーないんとちゃいます?』
『いや、中学のときはいたでしょ』
『中学から女子校なんだけど、阿知賀……』
『阿太峯は?』
『あっちもそうよ』
『なら小学生の頃はいたよね、これでよし』
『男女七歳にして席を同じうせず、とは言いますが』
『小学生の男子を、男性として考えるのは難しいですね』
『あの頃の男子って、うるさくてバカだし』
『バカなのは最近でも変わらない』
『……そうかも』
くそうっ、なんて言いようだ……全国の男子、立ち上がれ!
『……でもそこが可愛い』
『まったくもって同意』
『尻尾振ってるワンちゃんみたいに見えるのよー』
『時々、お座りしてる犬にも見える』
『待てされてるときのにも見える』
んん?
『……特定の一人を男子代表にするのはやめて差し上げろ』
『だいたいが女子校である以上、最近接する男子なんて、その一人しかいないのでは……』
『寂しか青春やね……』
『グランマコース、待ったなし!』
『変なコース作らないの! 訴えるよ!?』
……大勢の異性と接することができてる俺は、実は華やかな青春なのかもしれない。
って、いかんいかん! 紳士的にって言ってるのに、その考えは危険だぞ……。
――――――――
~新道寺
「……忘れたと思とったけど、思いだしたみたいやね」
「なにか失礼を働いたと思って、頑張ったんじゃないですか?」
「まぁ反省しとるみたいやけん、許したったらええんやなかか?」
「そうですねぇ。見た限り、他校生のせいということもありますし……あれくらいの所業なら、許容するどころか推奨していた風です」
「おかしいやろ!? 痴女の集団か!」
「……リザベされたときの姫子も相当やろ」
「あれは危ないですよね……控室にカメラが入っていたら、放送禁止になるところです」
「同性間はセーフやろ!」
「……いや、その考えはおかしい」
「むしろ異性間のほうが自然ですし……まぁ許されるか別問題ですが」
「意外に純情やけんなぁ、姫子」
「これも他校のデータになりますが――月替わりの頃には、推奨するように意識が変化しているそうですよ?」
「なんやそれ……怖かなぁ」
「……私も、別にその……そこまでイヤかちゅうと、そうでもなか……ただ、いきなりでビックリしたちゅうか……京太郎にも、意外に男らしかとこもあっとやね思て――」ブツブツ
~姫松
「……男子か」
「男子なぁ……あいつらアホやな」
「アホやし……その……なぁ?」
「う……うん、そやなぁ……」
「どないしたん~、二人とも~?」
「代行も経験ありません? ほら、男子の視線て……」
「あかんて絹ちゃん、代行は……ほら」
「あっ……」
「……うちもそこそこあるんやで?」
「そ、そうですか」
「大変ですよねぇ」
「……あとはあれやな。顔のほうが、見られてるかもしれへんな~」
「あ、ああ、代行美人ですもんね……」
「う、羨ましいです……はは……」
「……なんなんっ!?」
「なんでもないですって!」
「そのでかいのを見られるんが誇らしいんか!?」
「そんなん言うてませんやん!」
※共学設定でやってるけど、日和とか本編読む限り、やっぱ女子校っすよね? 男子の気配が微塵もない……
~千里山
「……小学校中学校もそうやけど、親戚のおっさんらもおるし、男くらいどってことないんちゃいます?」
「そのおっさん言うんは、うちのあの人のことか?」
「それ含めていうことですよ……」
「うちはそこまで親戚多くないですし、滅多に顔合わせませんからね」
「なるほど、男慣れてないアピールか」
「なかなかやな、泉。ポイント高いで」
「なんですかそれ!? ほんまのこと言うてるだけですやん!」
「けど、そう思たらそれでやったか……」
「なにがや?」
「京太郎くん来てしばらく、泉は若干、距離感ありましたからね」
「そうなんか、泉?」
「うっ……べ、別にそういうわけやなくて……ただの対抗心です……」
「対抗心?」
「同じ一年で、ただの素人レベルやったんが急成長したから――いうとこやろ」
「そ、そうですよっ、悪いですか!?」
「悪うないで。負けん気が強いんはええことや」
「原村にもずっとライバル意識持っとるしなぁ……どうせ持つなら、宮永高鴨大星あたりに持ってほしいとこやけど」
「あ、あの辺にも負けませんよっ……そのうち、ちゃんと……」
「……ヘタれなんか、自分を弁えとるんか」
「変なとこで冷静なせいで、色々損してる気ぃしますね、泉は」
~大阪大学組
「うちは男子おったし、その中の一人いう感じやったな……」
「色々とトビ抜けてはおったのよー」
「そ、そうなんか……その、それやったら――たまたま近くにおったからて、京太郎のこと気にかけるようになった……わけやない、やんな?」
「なんやりゅーか、自信ないんか?」
「ちゃ、ちゃうけどぉ……言われてみたら、同年代の男子って、あんまよう知らんなて思て……」
「華の大学生がなに言うてんねん……」
「学校の男子たちより、京太郎くんのがグッと大人びてるのよー」
「それなぁ。むしろ京に慣れ過ぎたせいで、まったく興味湧かへんわ……」
「わかるっ!」クワッ
「必死すぎや、落ち着き」
「か、勘忍……」
「あれやな、少女マンガで言うところの、王子様状態やな」
「けど、あれはほとんど偶像視しとって、異性として見る言うより、テレビタレントみたいに扱ってるやん?」
「……京太郎くんの周囲は、全員が虎視眈々いう感じなのよー」
「狙う側がこれまた、個性的でレベル高いからなぁ……」
「わ、私も負けてへんやろっ?」
「まぁ、私みたいな凡人よりはなぁ……美人でスタイルよくて、ええとこのお嬢様やし」
「それだけ聞いたら勝ち組やな、許せへんわ」
「えっ、えっ?」
「竜華ー、京太郎くんくらいは諦めてほしいのよー」
「な、なんでそうなるんっ!?」
~西日本プロ
「……いまさらですが、初めての学校が永水というのは大変だったでしょうね」
「ですねぇ……こう言ってはなんですが、どこの馬の骨とも知れない殿方を、お姫様のいる学校に突っ込むなんて考えられません」
「お姫て――ああ、大袈裟でもないんか」
「神代の姫!」
「石戸もおるし、周りが……なんやったか……せ、仙女で固めてあるからやろ?」
「六女仙ですね。まぁ霞がいれば間違いはないと、本家も思っていたことでしょう」
「あれも結局は、殿方に免疫のないおぼこですからね。あれだけの王子様が傍にいては、守るどころでないのも当然でしょう」
「王子要素あるか? 金髪くらいやん」
「まー俺はありがたかったけどな、京太郎おるんは。食堂で一緒に食うとったら、食いすぎやと思われることもなかったし」
「……自重」
「セーラさん、最近はグッと女性らしくなっていますのに、食事風景は殿方顔負けですからね……」
「食事とか旅番組で一緒んなると、若干恥ずかしいんやけど」
「お前に言われたないわ!」
「いや、確かに洋榎は所作に品があります。さすがは愛宕雅枝の娘、というところでしょうか」
「おかんと比べられんのもなぁ……」
「ソーリー、そういう意味ではなく……厳しい躾けの賜物、ということです」
「あっ……そら納得です」
「良妻賢母!」
「麻雀も強いのに、女性としても優れて……お話に聞く、熊倉先生と同じようなタイプでしょうか」
「……別格」
「あの人は、そういう次元ではありませんからね……そこだけは、まったく物怖じせずに接している三尋木プロに感心しますよ」
~阿知賀
「ふむ……まぁああいう男が傍にいると、女としても気が引き締まるでしょ? そういう意味でも京太郎は、理想的な同級生でしょうねぇ」
「宮守にいたときも、そんな風でした……?」
「どうかしら……私もあまり、部室には行かなかったからね。でも、五人とも京太郎を弟のように思って、可愛がっていたように見えたけれど」
「あ、わかります……もっとも私は、その弟みたいな子に、お世話焼かれる側でしたけど……」
「京太郎くんは頼れる弟なのです!」
「私にとってはお兄ちゃんみたいだったなぁ……料理上手なお兄ちゃん!」
「わ、私は……まぁ、その……色々、気は遣うようになりました……」
「ほほ、いい影響があったようね……そろそろこっちにも、もう一回来てほしいところだけれど……どちらにせよ、全国のあとになるわねぇ」
「後輩一同、がっかりしてますし」
「ま、一番がっかりしてるのは、うちの妹ですけどね!」
「どっから入ってきたの、
お姉ちゃん! ミーティング中って言ってるでしょ!」
「ただのガールズトークがミーティングとは片腹痛いわよ、妹!」
~土曜、朝
京太郎「――さて、俺の仕事はなんだ?」
モブ子「どしたん、いきなり。頭打った?」
京太郎「そう、俺の仕事は――お嬢様方へのご奉仕だ」
モブ子「意味深」
京太郎「その役目に雑念など不要――煩悩などなおさらだ」
モブ子「こいつ、聞いちゃいねえ」
京太郎「っちゅーこって、今日から気分を改めて、自分を殺して奉仕に徹しよう」キリッ
モブ子「なお三日と持たないもよう」
京太郎「持つよぉ! 見てろよぉ!」
モブ子「土日越えたらあれじゃん、テストじゃん。すぐにいつものキャラに戻るっしょ?」
京太郎「もど――らねぇ……よ?」
モブ子「あっ……ふーん」
京太郎「くそう、言ってろ! 俺の本気、見せてやるからな!」
モブ子「見せたけりゃ見てやるよ(震え声)」
京太郎「くっそがああああああああああああ!」
モブ子(京ちゃん相変わらず面白いな……)
~勉強
京太郎「――質問ですか? はい、構いませんよ。どうぞこちらへ」
京太郎「なるほど、ここですか。ここは――」
京太郎「どうでしょう、わかりにくくありませんか? それはよかった……では、またなにかありましたら」
煌「………………」
姫子「……なんか、距離を感じっと」
友清「姫子があんなことばすっから……」
姫子「私のせいやなかやろ!?」
煌「……とにかく、気を遣わせているのは間違いないでしょう。午後までには改善を、いいですね?」
姫子「え、私が!?」
煌「いえいえ、みんなで考えるんですよ。なるべく二年の意見も聞いて、早めに解決すべきです」
姫子「……そらそやけど――」
友清「どれ――ここは一番手にうちが……」
煌「えっ」
姫子「……まぁ人柱にはよかか」
友清「失礼な! ちゃんと京ちゃんの心ば解かして、いつもの京ちゃんに戻してやっと!」
煌「いつから京ちゃんと呼ぶようになったんですか」
友清「距離を詰めるには、まず自分から距離を縮めんと」
煌「一理あ――る?」
姫子「微妙やな……」
京太郎(……はい、全部聞こえてます。が、俺は執事、執事だぞ、執事)ブツブツ
煌「――京太郎くん、ちょっといいですか?」
京太郎「はい、なんでしょうか」
煌「………………日誌は読んでいます」
京太郎「ありがとうございます」
煌「京太郎くんの考えはもっともですし、それを否定する気はありません。むしろ尊重したいとさえ考えています」
京太郎「…………はい」
煌「ですが……こう言ってはなんですが、昨日のことのあてつけのようにも見えます」
京太郎「――そんなつもりは、けして……俺が至らなかったことを痛感して、引き締め直しただけで……」
煌「で、あれば。急に変えるのではなく、少しずつ節度を持って臨む、ということでよいのではないですか?」
京太郎「それは……そう、なんですけど……」
煌「先ほども言いましたが、言い過ぎがあったとはいえ昨日のこと、落ち度はどちらにありましたか?」
京太郎「……俺です」
煌「そうですね。その加害者側がその態度では、あてつけと取られてもおかしくありません。誤解を招くような行為は、なるべく減らすべきでしょう」
京太郎「……仰る通りです」
煌「――もちろん、京太郎くんがそうすべきだと思っているのなら、そのままでもいいです。ですが、一つだけ言っておきましょう」
京太郎「はい」
煌「私たちは――いつもの京太郎くんのことを、嫌いだったことはありません。距離感を感じさせず、これからも傍にいてくれると助かります」
京太郎「煌先輩……」
煌「――と、私からはそんなところでしょうか。では京太郎くん、そろそろ朝の勉強はおしまいですが――」
煌「午後までには、その曲がったヘソを戻しておいてくださいね?」
京太郎「……はい」シュン
煌「……怒っているわけじゃありませんからね?」ナデナデ
京太郎「……はいっ」
煌「よしよし、少し元気が戻りましたね。よかったです」
~土曜、昼
京太郎「……ふぅ、若干顔がだしづらいな」
京太郎「別に怒ってなかったし、普段通りでいいと言ってくださるなら、それでいいんだ……」
京太郎「ただ、そのことでご不快な思いをさせていたら……くそっ、こんなところで新たな問題が生まれるとは思わなかった!」
京太郎「はぁ……入りづらい」ウロウロ
姫子「……悩んどっとこもかわいかぁ」
煌「趣味悪いですよ。声かけてあげたらどうですか」
友清「朝にしっかり飴と鞭をあげた煌こそ、その役目やなか?」
煌「はて、飴と鞭なんて知りませんが。私は普段通り、先輩が後輩に接するよう、話しかけただけですので」
友清「そうやって人畜無害な顔して、いいとこば持っていきよるんか! おそろしかぁ……」
姫子「煌はよかねぇ……そげんして、誰からも愛されっとやから」
煌「お二人がやさぐれすぎなんですってば……ほら、そんなグチをもらしているヒマがあるなら、一声かけていらっしゃいな」ドンッ
姫子「のわっっ! むむむ、無理! すぐは無理やて! ちょいインターバルをやね……」
煌「朝からいままで、何時間経ってると思ってるんですか!」
友清「きょーおーちゃんっ♪ なにやっとか、はよう教室ばいかんね」グイグイ
姫子「」
煌「ほら見なさい、グズグズしているから、友清にだし抜かれてるじゃありませんか」
姫子「な、な……てか、なんねあのキャラは……」
煌「でも京太郎くん的にはありのようですね。露骨に媚びたキャラも」
姫子「ふ、ぐっ……ぐぅぅぅっ……」
煌「ほらほら、ほかの先輩後輩同級生も、続々と声をかけてますねぇ」
姫子「そ、そげん言うても……どがん顔ばして話せばええかぁ……」
煌(乙女か!)
姫子「そ、そのうち、さりげなく話しかけっとやけん……いまは、いまはソッと……後生やっ……」コノトーリ
煌「……まぁ、なんでも、いいですけれど。それならそれで、勉強会始めちゃいますよ」
京太郎「……そうだな。どんな態度でも、やることはいつも通りでいいんだ。普段通り、気負わず……その上で、心を無にしよう……」ブツブツ
煌(まーだ悩んでますねぇ、あの子は……あとで少し、甘やかしてあげましょうかね)
姫子(ふにゅううううう……どげんしたもんかぁ……)
煌(おやおや、これは――)
京太郎(あああああああああ! まだ姫子先輩と全然話してないのに! 教室回って来ちまったよおおおおおおお!)
姫子(どげんしたらよかったああああああああああああい)
友清(お腹空いたな……)ギュルー
京太郎(……と、とにかく、いつも通りにしていよう)
京太郎「……ど、どこかわからないとこありましたら、お気軽にお願いします」
友清「すまん、京太郎……こっからここまで、全部」
京太郎「多すぎィ!」
姫子「もう二日後にはテストですからね、それだけ必死になるということですよ」
京太郎「そういえばそうですね……わかりました、友清先輩。順番に見て行きましょう」
友清「ありがと京ちゃん! 頼りになっとぉ……もうこの手は離さんばい!」ギューッ
姫子「!!!!」
京太郎「あははははありがとうございます超苦しい」ギュゥゥゥゥ
煌「友清、京太郎くんが紫色の顔になってます。チアノーゼの症状ですよ」
姫子(あ、あ、あ、あんな抱きついて……ううううう、羨ましかなぁ……)
姫子(……私も、あんな――)フラッ
姫子「…………あ、うぅ……」ガシッ
京太郎「――っ! ひ、姫子、先輩……? どうされました?」
姫子「う……」
京太郎「あの――」
姫子「う……うー☆」
京太郎「」
煌「は?」
姫子「いや、違うっ……う、わ、私もっ……ちょっとだけ見てほしか、よかと?」
京太郎「…………ええ、もちろんです。友清先輩、そういうことですから、途中までやったら、姫子先輩のほうを見させていただきますね」
友清「うぅ、夢も希望もありません……」
京太郎「大袈裟な!」
煌「そうですよ、友清。私も見てほしいところがあるのに、独占はよくありません」
京太郎「煌先輩もですか?」
煌「ええ。科目も違いますから、あとでも構いませんので」
京太郎「わかりました――」
京太郎(さて、まずは友清先輩のを三分の一ほど見て、それから――)
京太郎「――じゃ、友清先輩はここまでをもう一度おさらいして、一人でも解いてみてください」
友清「の、残りは?」
京太郎「全部通しでやっちゃうと、そのときだけわかった気になって終わっちゃうので。すぐにおさらいすると、忘れにくいもんですから」
京太郎「残りはあとです」
友清「はぁい……」
京太郎(……どう考えても成績は悪くない理解力なのに、どうしてこうなるのか。勉強が嫌いってことかな?)
京太郎(進学校新道寺の授業が、難易度高いってのもあるだろうけど)
京太郎「さて――姫子先輩、お待たせしました」
姫子「う、うん。よろしく……」
京太郎「はい、お任せを。古文現代語訳ですか」
姫子「ここんとこ、授業休んどったけん……それがよりにもよって、ばりややこしかとこやって……」
京太郎「んー……そうですね、二種類に取れちゃうとこですから――」
京太郎「こういう場合は、登場人物の関係まで把握しておけば、わりと戸惑いませんよ」
京太郎「まず身分の差がありますから、ここが尊敬だと、こっちでおかしなことに――」
京太郎「――となりますので、こっちの意味が正解です」
姫子「なるほどぉ……」
京太郎「で、予想問題は今夜の公開予定だったんですけど……ここからここ、切り取って問題本文になると思います」
姫子「マジか」
京太郎「マジです。ということで、ここの暗記はほかより厚めにしておきましょう」
姫子「ん、りょーかい」
京太郎「たぶんいまのとこは出るでしょうし、あとはここの意味と、ここの対象――あとは文法関連をいくつか、でしょうね」
姫子「……なんでわかっと?」
京太郎「勘です」
姫子「なんち、適当やね」
京太郎「適当ですよ。けど、俺が教師ならそこをだすっていう予想ですからね。教師陣を信頼してるってことです」
姫子「ふーむ、そいない……私も、信じてみっとかね」
京太郎「ええ。あとで戻ってきますので、そのときに答え確認、させていただきます」
姫子「はーい、いってらっしゃい」
京太郎(ふぅ……よかった、自然に話せる。次同じことがあっても、おもちに目は奪われないようにしないとな)キリッ
煌「おや、あちらはもういいのですか?」
京太郎「ええ、ご質問いただいた部分は終わりました。では、合間にという形で申し訳ないのですが――」
煌「いえいえ、大丈夫ですよ。ではよろしく――しかし、色々な科目をハシゴして、頭が疲れませんか?」
京太郎「範囲が広いわけでもありませんから、大丈夫です。では、よろしくお願いします」
煌「ふふ、そうですか。さすがですね……よろしくお願いするのは、こちらのほうですが」
~通常行動2
京太郎「ふぅー……肩の荷が下りた気分」
煌(よほど気にしてたんですねぇ……)
姫子(……次から、見られるくらいで騒がんようにしたほうがよかか?)
友清(あー、これヤバい……ほんっとヤバいわー、半分は諦める感じにしとこっかなぁ)
京太郎「土曜は日が長いし――これはあと2回くらい行動できるかもな。それくらい気分が軽い」
煌「申し訳ありませんが、ルール破りの3回行動はNGです」
京太郎「あっはい」
煌「代わりと言ってはなんですが――テスト前の日曜に関しては、午前中の登校を午前行動の選択に入れる、ということを検討中です」
京太郎「午前行動?」
煌「夜行動の一部に、登校と買い物を加えて選択肢にする、というもののようです」
京太郎「買い物が二回できるってことですか?」
煌「ええ、そうです」
京太郎「……けど、小遣いは決まってるんですよね?」
煌「はい。二回分で15000円です」
京太郎「世知辛いなぁ……」
煌「……では、二回買い物に行った際は、一回目の残りに+5000リッツされるというのはどうでしょう」
京太郎「ありがたや!」
煌「あくまで、テスト前の日曜だけの処置ですからね。勘違いしないように」
京太郎「はい!」
京太郎「よぉし、明日の選択が広がったことだし……今日はあと、なにをするかな」
京太郎「よし、気合入れて差し入れだ!」
京太郎「時間もちょうどいいな……たまにはしっかり、ケーキ焼くとするか」
煌「……えっ?」
姫子「いまなんば言いよったと?」
煌「いえ、空耳でしょう。きっと……ねぇ、友清?」
友清「えーっと、えーっと、ここでいちくりあがって……」
煌「友清ぉ――っ!」
姫子「キャパシティ超えて、小学生化しとっとぉ……」
京太郎「ってことで、行ってきます!」
煌「あ、京太郎くんが……」
姫子「そいよりこっちやろ……友清を元に戻さんと」
煌「そ、そうでしたっ……友清、しっかり! つるかめ算はもういいですから!」
友清「く、くりあがりは……」
姫子「そいもいらんと!」
~調理実習室
京太郎「……先輩たち騒いでたな。なにかあったのか?」
京太郎「うーん、けど深刻そうではなかったし……ま、なにかあれば連絡来るだろ、うん」
京太郎「さて、ホールケーキだけど――生地にスポンジとイチゴのムースを使い、生クリームとフルーツでデコレーションだ」
京太郎「チョコもいいんだけど、久々に王道のクリームで攻めたい所存――」
ひな「あー、なんか語尾を派遣執事に使われた気がする所存ー」
綾「えっ! ひなまだ会ってないよね、おにーさんと!」
ひな「ないねー、おかしいねー」
灼「そこ、騒ぐなら廊下に出て」
憧「中等部、初等部も練習するならってことで、受け入れてるんだからね」
綾「す、すいませんっ」
玄「ふぅ~む、将来有望な子たちは……」ワキワキ
宥「玄ちゃ~ん、なにしてるのかな~?」
穏乃「ゆ、宥さんが見たこともない笑顔をしてらっしゃるっ……」
京太郎「……なんか別次元のビジョンが見えたような」
京太郎「さて、ここで最後に追いオイーブオイルを――って、なんでやねん!」
京太郎「ムラなくクリームを塗り、ナパージュでコートしたフルーツを飾ってと――よし、完成だ」
京太郎「で、同じものをあと5つ――急ぐとするか」
~10分後
京太郎「お待たせいたしましたー……どうかしました?」
友清「おお、もうそんな時間か」
姫子「あ、起きた」
煌「元に戻ったと思ったら、完全に落ちてましたからね……まぁ戻ってなによりです」
京太郎「よくわかりませんが――本日はホールケーキを、各学年にお二つずつご用意しております」
キラキラキラキラ
煌「……どちらのお店でお求めに?」
京太郎「ははは、いま焼いてきたんですよ」
煌「……やはり」ガクリ
姫子「……いくらんなっとやろなぁ」
友清「このサイズだと、似たようなのが4000円くらいだったかな?」
姫子「……とりあえず写真に撮って、日誌に上げとくか」パシャッ
京太郎「ちょっ、姫子先輩!」
姫子「え?」
「おいしそう、こんなことは許されない」
「うちにも、うちにも持ってきてよおおおおおおおおおお!」
「阿鼻叫喚」
「うちの大将の涎が止まらなくなった」
京太郎「……ほらー」
姫子「ふふん、そんための自慢やけん」
京太郎「はぁ……じゃあいまから来た人にだけ、一切れ差し上げます、と」カタカタ
「了解、すぐ行くから待ってて」
「余計なこと書かない! 完全に行く気になっちゃったじゃない!」
「無理だから! 九州遠いからね! ね!?」
「先輩方が荷造り始めてるんですけど、責任取ってくださいよ、早く」
京太郎「……じょ、冗談ですよー」
煌「もう通用しませんね、これは」
姫子「あーあ」
友清「……全部食べきって、なくなったから終了って言えば?」モグッ……ビクッビクッ
京太郎「そ れ だ」
煌「いや、それではなく」
姫子「どっちみち無理やろ……」
京太郎「助けてくださいよぉ!」
京太郎「姫子先輩!」
姫子「んー? まぁ、私が上げてしもうたせいもあっとやしなぁ……」モグモグ ビクッビクッ
姫子「とはいえ、すでに来ようとしとるもんは、止めるにも……お、よかこと思いついたと」
京太郎「なんすか! 秘策ですか!」
姫子「ハードルば上げればよか。まず、いまは土曜の午後やろ?」
京太郎「……ですね」
姫子「普通なら家に帰っとう時間ばい。これやったら、麻雀ばしよっても、部活にはならんと」
京太郎「まぁ、そうですけど……部員同士はもちろん、他校生とやっても、問題ではないですか?」
姫子「息抜きのネトマ、これはゲームやち判断されるやろ。家でやっとるもんも、ようけおっとやろし」
京太郎「ですね、ログインしたら見覚えある感じの人たちがいっぱいですし」
姫子「やけん、いまからログインするけん、勝った人だけこっちに来てもよかち書き込めばよか」
京太郎「え……姫子先輩に、ですか?」
姫子「なんでそうなると……京太郎に決まっとるやろ?」
京太郎「うげ、俺っすか……」
姫子「冗談とはいえ、あんなこと書いた責任ば取らんとやろ」
京太郎「うーん、そうなんですけど――」
京太郎「――わかりました。やりましょう」
姫子「んー、それでこそよ♪」
京太郎「……で、あの。なにをされてるんですか?」
姫子「せっかくの機会やしな。京太郎の打ち回し、全員で見守ってやろうち思っとうよ」
京太郎「……練習じゃないですよね?」
姫子「もちろん、余興よ、余興」
京太郎「……えーっと……テスト勉強でお忙しい中、足を運んでいただくのも悪いですし――」
「テストじゃないから! うちテストじゃないから!」
「うちも違う! すぐ近くだし!」
「いや、奈良福岡は近くないから……」
「私はもうテストなんてない、それに仕事もないからチャンス」
「宮永ァ! マネージャーが探してたぞぉ!」
「お前、人に迷惑かけるなよ……」
京太郎「――足を運んでいただくのも悪いですから、息抜きも兼ねて、ネトマで遊びましょう」
京太郎「買った方には、ケーキを贈る――のも悪いですね。今日中ですから遅くなりますが、こちらから作りに向かわせていただきます」
姫子「!?」
煌「ちょっ、それはさすがに……」
「へぇ、いいの?」
「これは乗らざるを得ないぞ☆」
「余興に加えてケーキかい、こいつは楽しみだねぃ」
京太郎「……あの、なんかログインできなさそうな方たちまで乗って来てるんですけど」
友清「どうせログインできんで諦めるし、よかとやろ?」
京太郎(そうなんだけどなんかひどい!)
煌「そんなことより、実際に負けたらどうするおつもりですか?」
京太郎「うーん、まぁ負けたら行くしかないでしょうね。けど、ネットだとオカルト系はあんまり反映されませんからね、なんとかなりますよ」
「仕方ありません。日帰りできる愛媛なら、そう悪くないでしょう」
京太郎「……この人さえ乗り切れば、なんとかなるかと」
姫子(……宮永照もおるんやなかか?)
京太郎「えーっと、試合は一人一回まで。半荘一試合、オーラストップで勝利です。他ルールは公式準拠で――では、お待ちしています、と」
姫子「……本当に、平気と?」
京太郎「まぁ……みなさんが見ていらっしゃるのに、情けないとこはお店できませんから」
京太郎「それに、姫子先輩のせっかくの提案で――逆に先輩に心配をおかけするようなことは、いたしませんよ。まぁ見ててください」キリッ
煌「フラグにしか聞こえないんですが」
姫子「いや――ここは京太郎ば、信じっとよ」キリッ
京太郎「さぁ――ショウタイムだ!」
――勝ちました。
~夕方
京太郎「――あ~、疲れた……」
煌「お疲れさまでした」
姫子「圧巻やったと……」
友清「なんか後半、ネトマ見てただけだった気がするんだが……」
京太郎「まぁ、今日まで真面目にやってましたし、なんとかなるでしょう……とりあえず帰ったら、テスト予想問題アップしときますので。明日にでも、解いてみてください」
姫子「明日は朝からも、一応教室開けて勉強しとるけん」
京太郎「わかりました。それでは俺も、顔を――」
煌「姫子、さっきまで無茶していたんですから、明日の朝くらいは休ませてあげましょうよ」
姫子「っと、そうやった……ごめんな、京太郎」
京太郎「いえ、自分の撒いた種ですから」
モブ子「意味深」
京太郎「てめぇ、どこから出てきやがった!!」
煌「はいはい、ケンカしないで」
姫子「そいじゃ、帰るとしよか……友清ー、窓閉めたぁ?」
友清「閉めたぞー。そいじゃ、今日も一日、お疲れさんでしたー」
姫子「お疲れー、京太郎もゆっくり休んで――あと、明日は自由にしててよかよ」
京太郎「はい、お気遣い、ありがとうございます」
京太郎「もしもし――」
哩『京太郎? 私やけど』
京太郎「そろそろかなと思ってましたよ、哩さん」
哩『今日は学食の休みやったはずやけど……ダシ茶漬けばどうなったと?』
京太郎「ああ、それは昨日いただきました。ごまサバをご飯に乗せて、熱いダシをかけていただくんですけど」
哩『……やばか。聞いとるだけで、超うまそうやね』
京太郎「実際うまかったですよ。うなぎの煮付け定食くったあとなのに、茶漬けで二杯いっちゃいましたもん」
哩『すごかなぁ……さすが男の子やね』
京太郎「で、その4ですか、次は」
哩『そろそろ考えっとがきつぅなってきたそうやけど……』
京太郎「は?」
哩『いや、>>1の都合よ。その4はやね、屋台名物の焼きラーメンやと』
京太郎「あー、そういえばありましたね、そういうのが」
哩『新道寺スペシャルがあんまりにも注文されんけん、余った麺の処理のために、焼きラーメンばだすようになったち言われとる』
京太郎「へー……ってそれ、裏メニューじゃなくないですか?」
哩『男子受けしそうなメニューやけん、焼きラーメンばしよっても、まるで注文の入らんようなってな……』
京太郎「あ……」
哩『で、曜日限定メニューちなった、それが焼きラーメン。トッピングやなかけど、一緒についてくるとり天が、量も多くてうまかよ』
京太郎「…………」ゴクリ
哩『月曜か火曜か、どっちかが焼きラーメンの日らしいけん、来週行ってみっとよかよ』
京太郎「テスト中って開いてましたっけ?」
哩『あー、そういえば……再来週になっとか』
京太郎「ですよねー。んじゃ、再来週を楽しみにしときます」
哩『ん、そうすっとよか。さて、そいじゃ――ネトマの話ばしよか』
京太郎「……参加されてました?」
哩『しとったよー。インカレ組は練習にもなるし、だいたい参加しとるんやなかかな』
京太郎「あー、なるほど……そういえば巴さんいましたね。それじゃ、菫さんや智葉先輩も?」
哩『当然、当然。なかなかレアやったと、全員の負けたときの反応は――あっ』
哩『……そ、それじゃこの辺でな。だ、大丈夫やて、言うてなか! あっ、あっ……ああああああああああ!!!』プツッ
京太郎「」
京太郎「……哩さん、ご無事で」
~夜
京太郎「さて――夜だ」
京太郎「とりあえず、テスト問題は上げたし……明日の朝なにするかも考えつつ、夜どうするか考えようか」
京太郎「……二回目の買い物は、少し財布のひもを緩められるけど――」
京太郎「それでも、根本から予算を増やすには、やっぱり稼がないとだよなぁ……」
京太郎「師匠にも見ていただきたいし、オリジナルレシピ、考えてみるか……」
京太郎「デザート、それもオリジナルか……材料や手法はありきたりでも、それを組み合わせてなにかを生みだす、ってのが一つ」
京太郎「もしくは、工程からしてまったく独自のものを行使する――というのが、一つ」
京太郎「あるいは食材同士の目新しい組み合わせ、なんてのもよさそうだ」
京太郎「とりあえず、一通り考えてみるかな――」
京太郎「飴生地でコーティングした中に、柔らかな食感をふんだんに包んで――」
京太郎「うん、これはなかなか……」
京太郎「けど、手を汚さないようにもしたい……それなら、飴生地を別の皮で包む……で、頭だけは飴を見せておくか」
京太郎「問題は中の柔らかさだよなぁ……フルーツ系のホイップ、あるいはカスタード、チョコ、もしくはジュレやペースト……」
京太郎「っと、もうこんな時間か……とりあえず、今日はここまでにしとこう」
京太郎「形は見えてきたけど、全体像が甘いな……それに問題は味、それに作りやすさと食べやすさだ」
京太郎「できれば季節関係なく食べられる、そんなデザートにしたい」
京太郎「今月中にできるかはわからないけど、たまには考えるようにしよう」
~土曜、終了
【二年目7月第一週土曜】
えー、なんというか――お疲れさまでした。
というか、参加者が想像を絶するほど多くて、驚きを隠せない感じです。
ネトマは運極振りでないと、なかなか勝てないものですが……巡り合わせの結果か、なんとかすべて首位で終わらせていただきました。
実際に卓を囲むと、また別の要素も加わるので、この結果は参考として考え、今後の励みに致します。
それでは、ささやかなお礼ではありますが、明後日からのテストのために、予想問題を制作してみました。
まぁ作ったのは数日前ですが――各学年、それぞれの科目でご用意してあります。
時間、試験順など合わせながら、ご自由にご利用ください。
問題文については、英語・フランス語・一部の中国語であれば訳せますので、日本語ではなくそちらのほうがいいとおっしゃる場合は、ひと言お願いします。
……………………
『ではフランス語を』
『中国語……いえ、せっかくですし、そのままで』
『ねぇキョウタロウ、うちの講師枠が一つ空いてるの。卒業したらうちに来なさい』
フランス語訳、三年の問題か――まぁすでに訳されたものがあるんですけどねー。
ということで、上げておこう。
『お礼がお礼になってない不具合』
『現役学生はおとなしく勉強しなさい』
『大学生やプロにとっては、まったく無用なのですが……』
『え、年上が年下に別のお礼を要求するんですか?』
『ちょっと考えられへんわ……』
『おとなげないよね』
『社会人としてどうかと思うぞ☆』
『京太郎くんの迷惑も考えてください』
うん、言われるとは思ってた。
けどあれだ、この期に及んでデザートの写真上げたら……土下座会見ものだよな?
『テストの話に流れてるが、京太郎のやったことも相当おかしなことだと思うんだが』
『ああ、確かに』
『ネトマ何局か知らないけど、全部首位とか……』
『ここでのどっちの意見をドーン』
『……雑念が入ると、色々と乱れてしまうんです』
『のどっちでも負けるとは思わなかった。京太郎GJ』
俺もネトマで和に勝てるとは思わなかった。
同卓だった第一の師匠さんのおかげだな。
『そっちもそうだけど――あんなおいしそうなの、いきなり写真うpはおかしいと思うんだけど!』
『その上「俺の元まで来たら身も心も満たしてやるよ」とか言われたら行かざるを得ない』
言ってませんし!
『お腹いっぱいにしてやる、じゃなかった?』
『お腹いっぱい……あっ』
『え、そういうアレなん? やっべー』
『マジかよ京ちゃん、さすがにドン引きだわ』
一切れあげますっていっただけだろおおおおおおおおおおおお!!!
――――――――
~東日本プロ
「……いや、下ネタに持っていくのやめよーよ」
「お腹いっぱい、まではセーフだと思います」
「その直後のこれな、こりゃーマズいよねー、知らんけど」
「それ誰だ?」
「私たちの中にはいないカト」
「え、じゃあ西の人?」
「北の人の可能性」
「そもそもプロが書いたんじゃないという可能性」
「高校生がこんなの書いてたらさすがに引くぞ☆」
「じゃあ大学生ですか?」
「うーん……心当たりがない」
「……意外に、本当に高校生かも」
「こ、こんな発想する子いるの!?」
「……わかりません」
~白糸台
「てへっ」
「尭深、あのさぁ……」
「私は察しただけだし」
「っていうか、よくそういう発想が数秒で出るよね」
「ついだよ、つい。あと閃きがね、ふと」
「んー? これ、なんかおかしいの?」
「……淡はそのままでいてね」
「ふぇ?」
「淡ちゃんは天使だね」
「よくわかんないけど、私は天使にも悪魔にもなれるよ!」
「悪魔……叛逆……うっ、頭が……」
「それよりおいしそーだなー、ケーキ……食べたいなぁ、京太郎の……(ケーキ)」
「京太郎の(意味深)」
「た~か~み~っ!」
「はい、もう言いません」
~阿知賀
「ふっきゅぅぅぅぅぅっっ……」
「はわわわわわわ……」
「……いや、スルーすればい……」
「ああああああ、ケーキおいしそおおおおおお……」ダラダラダラダラ
「穏乃ちゃん、お口チャックしようね」フキフキ
「お、おにーさんのでお腹いっぱいいいぃぃ……」プシュー
「これがどうしたのー?」
「そっとしときな。綾は難しい年頃なんだよ」
~清澄
「あれは絶対に、戒能プロだと思います」
「んー……まぁちょくちょく言ってるし、そうでしょうねぇ」
「まぁ長野まで来させるんも、京太郎の負担がでかすぎるけぇの……あん人なりの、親心みたいなもんじゃろ」
「のどちゃんなら勝てると踏んだが……とんだダークフォースがいたもんだじぇ」
「え、ベイダー卿?」
「先輩、それはダークホースです」
「レート2位だし、ダークホースってほどでもないのかな……」
「こっちの京ちゃんのお嫁さんは、惨憺たる結果だったわね」
「うぅ、牌が見えないよぉ……」
(普通は見えんわ)
「お姉さんは、こっちでもお強いですよね……私の卓以外では、お姉さんとの対局が一番競っているかと」
「ま、なんにせよ、京太郎に会うんは全国までお預けじゃな。そんときはわしの分まで、労うたってくれ」
「なんか申し訳ないわね、OGなのに……」
「じゃあ私と代わってください!」
「あんたはいいから」
~千里山
「――なにげに荒川も倒しとるな、京太郎」
「というか、憩ちゃん参加してたんが、意外っちゃ意外ですね」
「前の合同練習でそれっぽいこと言うてましたし、自然やないですか?」
「ああ、なんやっけ……予選で勝ったほうを派遣先に、とかいうあれか」
「いまからやと、それもありやて言えるな」
「めちゃくちゃカッコ悪いですよ、勝ったからて……」
「……あ~の~? 合同練習でそういうこと言うの、ほんまやめませんか~?」
「おう荒川、個人戦気張りや」
「泉も負けんとな」
「うぃーす」
「はぁ、もう……でも京太郎くん、ほんま強うて敵わんなぁ……またどっかで打つのが楽しみですよーぅ」
~永水
「……あれは京太郎が悪い」
「そ、その通りですっ、私たちは悪くありません!」
「そうねぇ。近くにいるんだもの、それならって考えちゃうわ」
「……いや、その理屈はおかしいですよー」
「まぁでも、ああいうこと書くほうも書くほうですけどね、確かに」
「なんで?」
「なんでって……ほら、影響力あるんだからさぁ」
「ほうほう、湧ちゃんも影響されちゃったかー」
「っっ! そうは言ってないでしょ!」
~7月第一週日曜、朝
京太郎「清々しい朝だな――」
照「須賀だけに」
京太郎「……一応、学校でも勉強会はしてるって話だけど、出席は自由だ」
京太郎「俺としても、みんながテストやってくれてるとしたら、いつでも質問に応えられるよう、ネット環境のある場所にいるほうが都合がいい」
京太郎「まぁでも、新道寺の生徒だってことを考えれば、行くのがいいかもな」
京太郎「ただ――今月は、誕生日の人多いし……揺杏さんとか、もう過ぎてるし……」
京太郎「できれば、今日は買い物に……とはいえ、予算もカツカツなんだけど――」
京太郎「――よし、決めた」
京太郎「とりあえず買い物だ。予算? なんとかなるなる!」
~モール
京太郎「さて、やってきました。駅前ショッピングモール……これがなかったら、博多辺りまで行ってたかもしれない」
京太郎「まずは店を――とりあえず、この階を一通り回って、見繕ってみるかな」
京太郎「んで、最初は誰のプレゼントを探すか――あるいは、誰にお土産を買うか、なんてのも考えないと」
京太郎「――そうだな、まずははやりさんだ」
京太郎「誕生日……いや、大丈夫だよな? だってはやりさん、まだ29だし、気にする年齢じゃないだろ?」
京太郎「というか――あれだけ綺麗だったら、仮に40歳でもウェルカムカモーンだし」
京太郎「……11年後でも、はやりさん綺麗だろうなぁ」
京太郎「さて、それはそれとして――なにを買うか考えよう」
京太郎「お――」
京太郎「ここは……アンティークショップか?」
「おや、いらっしゃい……お若いお客さんだね」
京太郎「こんにちは。少し見させていただいて、大丈夫ですか?」
「ああ、ゆっくりしていっておくれ」
京太郎「ありがとうございます……これ、素敵なデザインですね。銀ですか?」
「ああ、それは私がフランスにいた頃デザインしたものでね。ちょっと古めかしいだろう?」
京太郎「そうだったんですか? 古めかしいだなんて……すごく引き込まれますよ、思わず見とれてしまうくらい」
「はは、それはどうも……けれど、君のような若い子が贈る相手には、少し落ち着きすぎていると思うがね」
京太郎「んー、確かに同年代相手には、贈りづらいですね。でもいま選んでいるのは、それより少し、大人の女性ですから」
「ふむ……似合うとするなら、一回りくらいは上でないと、と思うが……」
京太郎「ああ、大丈夫ですよ」
「……えっ?」
京太郎「えっ」
「ああ、いや……そうかい、それなら私も賛成だが……えっ?」
京太郎「……なにか?」
「……一応確認しておくが、法には触れないね?」
京太郎「触れてないですよっ」
「それならいいんだが……」
京太郎「では、これをいただきます」
「少し値が張るが、大丈夫かね?」
京太郎「……まぁ、なんとか――はい、お願いします」
「ありがとうよ。では、プレゼント用に包んでおこうか――はい、どうぞ」
京太郎「どうも」
「遠方に送るなら、サービスカウンターで運送サービスやってるよ」
京太郎「あ、はい。ありがとうございます」
京太郎「……まぁ確かにな。15、16くらいのガキが27、28の女性とどうこうなんて聞いたら、危ないよな」
京太郎「逆だったら、よく報道で見かけるし――つくづく、はやりさんたちが紳士でよかった。いや、この場合は淑女、か?」
京太郎「ともかく、いい買い物ができてよかった……さて、あとはどうしようか」
京太郎「で――そうだな、もう誕生日が過ぎてる揺杏さんに贈っておかないと」
京太郎「しかし、揺杏さん……なにがいいんだろうか」
京太郎「服飾関係の道具はもちろん、衣装を贈っても色々ありそうだしな……」
京太郎「専門じゃなさそうななにか――のほうがいいのかな、悩ましい……」
京太郎「ミシンは確か、部室にあったあれ……だよなぁ?」
京太郎「ご自宅に持ってるかもしれないけど、うぅ……」
京太郎「このミシン、俺が使ってるのと一緒だよなぁ? これ、めちゃくちゃ使いやすいんだよなぁ……けど、揺杏さんもそうとは限らない」
京太郎「それに、もっといいものを持ってた場合、邪魔になる可能性すら――」
京太郎「――いや、よく考えろ京太郎」
京太郎「揺杏さんは衣装作りの作業は、だいたい学校でやってた……つまり、私物のミシンは持ってない可能性が高い」
京太郎「それなら、卒業までに一つ持っておいても、不利にはならないはずだ……邪魔になったら、質にでも流してもらえばいいわけだしな」
京太郎「――よし、決めた!」
京太郎「すいません、このミシンください!」
「ひとり言長いですねー。あ、お買い上げありがとうございます」
京太郎「」
京太郎「揺杏さんの住所は……と。うん、これでよし」
京太郎「あー、ちょっと怖いな、大丈夫かな……まぁ贈ってしまったものは仕方ない。先輩の反応を、おとなしく待つとしよう」
京太郎「さて、だいぶ予算は少なくなってきたけど……いや待てよ、残り6000で、午後も買い物なら+5000」
京太郎「で、三週も買い物するとすれば15000だから、合計で26000――今月の誕生日は、残り6人」
京太郎「――よし、なんとかなりそうだな」
「全員5000は無理だよね?」
京太郎「……お、オリジナルレシピが完成すれば、三週の予算が25000だから(震え声)」
京太郎「いや、いまの誰だ!?」
京太郎「さて、それじゃ……あとは霞さんのプレゼント、買っておこうか。今週……というか、連休中だしな」
京太郎「……連休が合宿とかになったら、三週の人たち間に合わないな……」
京太郎「三週誕生日の人には、三週目日曜でも贈れるように、とかに変更するかな……」
京太郎「というか連休が休日になったら、そもそも予算潤沢じゃね?」
京太郎「ま、まぁその分、ほかの人にも土産が送れるとポジティブに考えよう――」
京太郎「で、霞さんにはなにを贈るか――なんだけど……」
京太郎「……いや、その選択肢はおかしいよな?」
京太郎「特に下二つがおかしい、明らかにおかしい」
京太郎「水着は……まぁ、うん……怜さんにも贈ってるし、霞さんに贈ってもおかしなことはないよな。むしろ自然だ、うん」
京太郎「さぁて、なにを買おうかなー」
京太郎「そうだな、霞さんはもう社会人なわけだし――腕時計なんてどうだろう」
京太郎「とはいえ、お務めの際なんかは、やっぱり外すことになるんだろうか……金属はそういう、神秘的なものと相反するって聞くし」
京太郎「けど、いつもこっちで会うみたいに、遠出することもあるんだろうから、やっぱり必須だよな……どうもつけてるようには見えなかったし」
京太郎「――あ、つけてるように見えないって、時計の話な?」
京太郎「普段着とかも見たことないけど、霞さんくらいの年齢なら、可愛い服とかもありそうだからな――」
京太郎「んー、やっぱフォリフォリかな。で、一応、巫女服でも合いそうなものを――と」
京太郎「……お、これなんかいいんじゃないか? すいませーん、これください」
「はい、ありがとうございます。プレゼントでよろしかったでしょうか?」
京太郎「お願いします。住所は――」
「………………あの、こちらの住所なのですが……本当に?」
京太郎「はい、なにか?」
「い、いえいえ、なんでも――そうですか、なるほど……石戸のお嬢様が、へぇ……」
京太郎(……え、知ってんの!? やばい? なんか問題になる?)
「……お客様」
京太郎「は、はい!」
「差し出がましいことを申し上げますが――霧島神境のお嬢様方は、その地にとっては特別な存在でございます」
京太郎「ぞ、存じております……」
「努々――軽い気持ちで踏み込まれぬよう、心していただくよう、お願い申し上げます」
京太郎「お、おっす……」
「――はい、ありがとうございます。それではこちら、石戸のお嬢様にお送りさせていただきますので」
京太郎(……こ、怖かった)ドッドッドッドッ
京太郎「……残り、3000リッツか」
京太郎「どうする……まだ一人、買えなくもないけど――」
京太郎「午後になれば、追加されて……少しいいものが二つ、ということもできる」
京太郎「もちろん、午後に別の予定が入ったら、買い物できないわけなんだけど……」
京太郎「……そうだな、とりあえず二週目誕生日の方たちは買えたわけだし、一度休憩しよう」
京太郎「買い物の続きをするか、別の行動を取るか――そこはまた、飯でも食いながら考えるとするか」
京太郎「テストの反応も気になるしな……チェックしながら昼飯といこう」
~午前行動終了、残り3000リッツ(午後も買い物なら+5000で8000リッツ)
~お昼
京太郎「――俺はなんで、雀荘で飯食ってんだろう」
「それは君が派遣執事だからだよ、須賀京太郎くん」
京太郎「モールに雀荘なんてあるのもそうですけど、いきなり店に連れ込まれるなんて……」
「まぁまぁ、こうやっておいしい麻婆丼をご馳走してあげたんだし、許してヒヤシンス」
京太郎「……はぁ」
「ふふふ、このサインを飾っておくだけで、近隣中高の麻雀部員が、雲霞の如く押し寄せるわ……稼げるのう」
京太郎(無理だと思うんですが)
「ねぇねぇ、ついでだし打ち子していかない? お給料だすよー」
京太郎「無理っす」
「なんと、一時間で2500リッツだ!」
京太郎「」
~二時間後
京太郎「……お金には、勝てなかったよ」
京太郎「まぁいいか、これで5000リッツ……買い物するならこれを宛てて、しないならいつも通り預金しておくってことで――」
京太郎「さて、午後はどうしようか」
京太郎「――ん、やっぱり買い物だな。臨時収入はサッと使ってしまおう、宵越しの金なんて持ってちゃいかんよ、うん」
京太郎「にしても、今月は誕生日の人、ほんとに多いな――」
京太郎「……あと5人、だと……?」
京太郎「下手すると、5人×3=15パターンのプレゼントを考えないといけないのか。まぁたまにかぶらせてるし、それはいいんだけど――」
京太郎「まぁプレゼントだけじゃなく、お土産買うって可能性もあるからな……ひとまず見て回るか」
京太郎「最寄りの誕生日だと……次は洋榎先輩ってことになるのか」
京太郎「……あ、これ……送るとしたら、寮ってことになるんだよな?」
京太郎「………………なんか、大変な騒ぎになるような気がしなくもないな」
京太郎「――ま、いいか」
京太郎「洋榎先輩なら、なんやかんやで上手いことやってくれるよな、うん」
京太郎「ってことで、とりあえずは買う物を決めるか」
京太郎「――そういえば、絹恵さんに聞いたことがあったな」
京太郎「なんか絹恵さんのメガネで遊んで、失くしたとかいう事件が――」
京太郎「今後そういったことがないように、本人にも眼鏡を渡しておくべきではなかろうか」
京太郎「うん、その通りだな」
京太郎「それに……洋榎先輩もあれだ、眼鏡は似合うと思う。眼鏡美人の素質ありありだ」
京太郎「……愛宕の血なのか、監督といい絹恵さんといい、浩子先輩といい、あれだもんな――」
京太郎「テレビ出るときも、ああいうアクセントがあると、より個性がつくと思うんだが……どうだろう?」
「あー、天王寺の愛宕洋榎っすか? 確かにねー、お母さんの愛宕元プロも、眼鏡美人だったっすもんねぇ」
京太郎「で――似合うと思いません?」
「思うっす」
京太郎「ですよねぇ……」
「まー自分は愛宕雅枝のファンですけどねー、いまだに」
京太郎「マジすか」
「お客さん、知り合いなんっしょ? サインもらってくんねっすかー?」
京太郎「いや、初対面の相手用のサインくださいとは言えないんで」
「ケチっすねー」
京太郎「それはともかく、洋榎先輩には――これなんて、似合うんじゃないですかね」
「……いや、こっちっすね」
京太郎「……いやいや、本人見たらわかりますって。絶対こっちですよ」
「こっちが一日何時間眼鏡と向き合ってると思ってんすか!」
京太郎「るせぇ! こっちはこれだって言ったらこれなんだよ! これを寄越せぇ!」
「ちっ……へいへい、んじゃこれっすね。包みますよーっと……はぁ」
京太郎「……露骨に嫌そうにしないでくださいよ」
「だって絶対、愛宕洋榎ならこっちっすよぉ……」
京太郎「――そのうちテレビで確認できるだろうから、まぁ見てな」
――のちに店員は雅枝ファンから洋榎ファンになるのだが、それはまた別の話
京太郎「……で、勢いで送っちゃったけど、これ大丈夫かな……」
京太郎「ま――大丈夫だろ(根拠なし)」
京太郎「さて、残りは……さっきのバイトで稼いだ、5000リッツか」
京太郎「……連休中に賭けて、これは土産に回す……?」
京太郎「それとも、誰かにプレゼントを買っておくか……」
京太郎「貯蓄に回して、将来の彼女とのデート資金にするか……」
健夜「大丈夫、私がだすよ」
はやり「なんでも買ってあげるぞ☆」
咏「甘やかしゃしないけどねぃ……ま、よくできた弟子には、ご褒美くらいやらんとねぃ。知らんけど」
理沙「……任せて!」
良子「――マッサージと引き換えなら、ね」
照「私が稼いでくるから、京ちゃんは家でご飯作って待ってて」
シロ「それなんか違わない?」
京太郎「……だあっっ! デート資金ったら資金なんだ!」
京太郎「はぁ……とにかく、どうしよう……」
京太郎「海外の方向けだと、この辺とかか――」
京太郎「アレ――サンディ……いや、監督とかエイスリン先輩は、こういうの似合いそうかな……」
京太郎「ん、これは――」
京太郎「この髪飾りは……金髪に映えるだろうなぁ」
京太郎「確かに、海外にはブロンドの方が多いから、こういうデザインで海外向けに作られるんだろう……」
京太郎「にしてもこれは、エイスリン先輩のために作られたような……」
京太郎「桜がモチーフか、悪くない……」
京太郎「これをつけた先輩、綺麗だろうなぁ……」
「――ありがとうございまーす。では、お会計のほうお願いしまーす」
京太郎「――はっ!? い、いつの間にレジに……」
「……嫌ならやめてもいいんじゃよ?」
京太郎「いえ、やめません……はい。お願いします」
「毎度ありがとうございますー」
――こうして、すっかり軽くなった財布を手に、京太郎は家に帰るのだった
最終更新:2026年01月19日 22:54