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~清澄

京太郎「おーし。それじゃ、こんな相手と当たったらどう対処する――前大会牌譜からの抜粋でいくぞ」

ミカ「わー」パチパチパチ

ムロ「よろしくお願いします」

「せんぱーい!」
「先輩の指導、久々だぜ……」
「そろそろ和菓子のご指導を……」
「いや、麻雀中だからさ……」
「先輩大好きなのはわかるけど、落ち着きなって」
「私と練習するのに、先輩の指導ばっかり気にしてぇ……」

京太郎「…………はいそこー、イチャイチャするなら叩きだすぞー」

春「さっきの対局で、姫様としてたのはいいの?」

京太郎「」

ミカ「これは手痛いカウンター」

ムロ「ぐうの音も出ないな」

「さて、先輩はどう返すか……」
「はたまた誤魔化すのか……」
「参考にしますっ……」

京太郎「なんのだよ! ああもうっ、いいから始めんぞ!」

春「はい、始めます。では皆さん、もっと前のほうへ」

「あ、誤魔化した」
「けどアシスタントの方が、うまく追従を……」
「この押し引き……勉強になる……」

ミカ「これが清澄一年の女子力磨き」

ムロ「女子力を激しく取り違えてるような……」

京太郎「とまあこのように、落ち着いて、相手の動きの違いを観察することが大事だ」

春「ね、簡単でしょ?」

「いやむずい(直球)」
「理論は理解できた」
「理解できた(実践できるとは言ってない)」

ミカ「ふんふむ、なるほどなるほどー」

ムロ「現状把握と並行してっていうのが、なかなか難しいかな……でもできないと、全国なんて夢のまた夢か」

「いけるいける」
「半分くらいはなんとかね……頭痛いなぁ」
「秋大会までに、なんとかやってこう」

京太郎「……やっぱ全国的に、男子より女子のほうが上なのかなぁ」

春「清澄は、さらに特殊な環境だと思う……」

京太郎「……テスト明けなせいか、妙に麻雀した気分になったな」

まこ「普段から真面目にしとらんからじゃあ、まったく」

京太郎「そ、そんなことはけして……」

霞「でもねぇ……隙あらばお掃除しようとするし」

京太郎「うっ」

和「気がついたら調理教室でなにやらやっていますし……」

京太郎「ぐっ」

煌「なにかあるごとに買いだしに出ていませんか?」

京太郎「ごっ」

姫子「しかもあれよ、佐々野いちごがモールでイベントやっとるたびに、買いに行っとらん?」

京太郎「あ、それは偶然です(真顔)」

春「誰、それ……」

久「え、姫松の一回戦見てないの? 広島鹿老渡高校の佐々野いちごさん、いまは広島のアイドル雀士よ」

小蒔「アイドル……そ、そういうのがいいんですかっ、京太郎さんっ」

京太郎「だから知らないですって! あー、でもポスターは見ましたね、なかなか可愛い子で――」ハッ

優希「やっぱりだじぇ、このい――男はぁ……」

初美「どうしてこう、口を滑らせるんでしょうかねぇ……やれやれですよー」

咲「結局有名人がいいの!? テレビに出てるのがいいの!?」

京太郎「言いがかりつけんな!」

良子「京太郎……こう言ってはなんですが、私もそこそこメディアには露出していましてね。以前ははやりさんとグラビアの仕事なども――」

京太郎「あ、それは持ってます。月マ(月刊麻雀マンスリー)の昨年8月号、巻頭グラビアですよね。ポスターつきの」スラスラッ

良子「……知っていましたか、それはなにより」ニッコリ

京太郎(…………密かにヘビーローテだったことは、墓まで持っていこう)

和「……もしもし瑞原プロですか? ええ、牌のお姉さんのことで少々――」

京太郎「お忙しいところに電話しない!」

春「……私も、グラビアしたい」

良子「プロになるなら可能ですが、滝見の一人娘に許されるとは思えませんね」

霞「では私が――」

初美「石戸なんてもっとですよー! あと霞じゃ発禁になっちゃうですよー!」

明星「お姉様をわいせつ物のように言うのはやめてください!」

湧(そこまでは言ってない……けど、実質言ってるか……)

小蒔「で、でしたら、あの……私、が……」

全員『………………』

京太郎「――小蒔先輩、いけません。先輩は、ご自分を大事になさってください」キリッ

小蒔「え……ぁ……はい、そう……します……///」カァッ

良子「つまり私は大事にしなくていいと」

久「そもそもグラビアのお仕事を、そういう風に思っていると」

京太郎「言葉の綾ですよぉっ!?」

煌「――はいはい、みんなして京太郎くんをいじめない」

京太郎「煌せんぱあああああい!」

煌「あなたも、そういった男の子な話題を口にしないように」

京太郎「うぅ……はい」

姫子「まぁ……うちらの練習中だけなら、してもええけんな」ナデナデ

京太郎「ありがとう、ございます……けど、別に話題にしませんって」

咲「ほんとかなぁ」

京太郎「清澄ではまったくしてなかっただろうが!」

久「そういうとこは紳士的だったわねぇ、視線は別として」

霞「そうねぇ、視線は別として」

和「別として」

春「別として」

京太郎「ちくしょおおおおおおおおお!!」

煌「さて、練習にも興が乗ってくる頃ですが――そろそろ、解散のお時間が近づいておりますので、練習のほうは切り上げましょうか」

京太郎「しかもこの流れで切られるとか……辛いです……」

姫子「ま、最後の掃除やらなんやらは、新道寺のほうでやらせてもらうけん――各校のみなさんは、荷物の整理のほうに戻ってよかです」

煌「荷物がまとまり次第、もう一度こちらへ集合していただき、そこで終了の挨拶と参りましょう」

姫子「それでは――練習のほう、お疲れさまでした」

『お疲れさまでしたー!』

京太郎「……掃除って、みんな帰られてからでしたよね?」

煌「ええ、そうですよ。トイレ掃除、お風呂掃除もありますからね。途切れず時間を取って、一斉清掃という形になります」

姫子「それがどうかしたと?」

京太郎「――いえなんでもないですよ?」

煌(あー、嘘ですね)

姫子(なんばしよるつもりか!)ガルルッ

京太郎(よし――このままさりげなく、みなさんのお弁当作りにいくか……)

京太郎「いよーし、仕込み終了! あとは仕上げて、詰めるだけだ」

「おっす、お任せください!」
「おにぎりとかそっち系は、先輩が握られたほうが」
「みなさん喜ばれるかと思います!」

京太郎「ん……ならそうするか。けど、3つ分だけは、お前らがそれぞれ作れよ?」

『えっ』

京太郎「……なんだ、作りたくねーのか?」

『い、いえっ! そういうわけではないですがっ、それなら作らせていただきますので!』

京太郎「いや、いまさら否定すんな……まぁいい、んじゃそれは任せるとして――」

京太郎「こっちはどうするかな、手伝ってもらうか……」

「俺が!」
「いや俺が!」
「なにを、俺だ!」

京太郎「いやお前らではなく」

京太郎「――姫子先輩、少しよろしいですか?」

姫子「――っ!?」ビクッ

姫子「ななっ、なんっ……なんでっ、背後に!?」

京太郎「分身と瞬身です――ま、それはともかく……覗いていらっしゃるなら、入ってきてくださいよ」

姫子「い、いや、手が必要そうならち思うただけで……」

京太郎「なら、手伝っていただけませんか? 俺はおにぎりしなきゃいけなくて、あいつらは揚げ物、焼き物の仕上げがありますから」

京太郎「俺が隣で指示しますので、こちらの和え物を仕上げていただけないかと」

姫子「……私で、役に立てるとやろか」

京太郎「ええ、もちろん。昨日の朝食で、姫子先輩の腕はわかってます……安心して、お任せできますよ」

姫子「そっか……うん、よかよ。そういうことなら、私に任しとけばよか」ドンッ

京太郎「では、材料はできてますので、あとは調味料を用意して和えるだけです。やりましょうか」

姫子「~♪」

京太郎「あー……ところで、煌先輩は――」

姫子「……聞かんで」

京太郎「あっ……(察し)」

煌「姫子ォ――――ッッ! あなたじゃないとできないことがあるのに、どこ行ってるんですかァ――ッ!」

姫子(すまん、煌ぇ……私は――恋に生きる!)キリッ

煌(キリッ、ではなく!)バンッ

煌「えー、それではみなさん、三日間の合宿、お疲れさまでした」

「……あの、新道寺の部長さん……」
「どうしてバケツを持って……」
「そして頭にはいっぱいに水の入った洗面器を……」
「こぼれません?」

姫子「あー、こいはなぁ……深ぁい理由ばあって――」

煌「そこ、申し訳ないですがご静粛に」ニッコリ

「アッハイ」

咲「……で、京ちゃんはなんなの、そのおっきな包み」

京太郎「すごくいいものだ」

和「なるほど……婚姻届ですか」

京太郎「ねーよ」

春「等身大京太郎タペストリー……」

京太郎「あるか!」

煌「――京太郎くん?」

京太郎「」スマセン

煌「はい、では――皆さんと全国で再び、顔を会わせる日を楽しみにしております」

煌「遠方より、本当にありがとうございました――地元に、学校に……ご自宅に帰られるまでが合宿と心得られ、お気をつけてお帰り下さいませ」

煌「――では、一同整列!」

新道寺勢『はい!』

煌「ご参加くださった永水、清澄両校の皆さん、そしてご指導くださった戒能プロに、礼!」

新道寺勢『ありがとうございましたっっ!!!』

咲「ひゃっ……」

まこ「あ、ああ、いえ……こちらこそ、ありがとうございました」

和「さすが花田先輩、すばらしい部長ぶりです」

優希「新道寺の部長は鶴姫だじぇ……」

久「ああいうのも、結構憧れるわよねぇ……」

京太郎(ええ……)

霞「ほら、小蒔ちゃん」

小蒔「はい――私どもも、大変お世話になりまして、心より御礼申し上げます。またの機会がございましたら、ぜひよろしくお願いいたしたく存じます」

春「今後とも、末永いお付き合いを……まことに、ありがとうございました」

永水勢『ありがとうございました!』

まこ「おんしらも頭を下げい!」

清澄ーズ『あ、ありがとうございましたぁっ!』

久「……ありがとうございました」

良子「では引き上げましょう。ところで清澄の男子は、荷物がないようですが――」

「か、戒能プロにお声を!」
「おおおおお、俺たちの荷物はですねっ、あのっ」
「先輩の家に置かせていただいてるので、帰り道に回収します。お気遣いなく」

「…………ちっ」
「ふんっ、デレデレしてさぁ……」
「あとでお仕置きしなきゃ……麻雀を楽しませなきゃ(使命感)」

京太郎「咲……」

咲「私のせいじゃないよ!」

良子「それはともかく――京太郎の家、ですか。よいことを聞きました」ニッコリ

和「あ、その流れはもう、初日に私たちで済ませましたので」

春「良子姉さん、遅い……」

良子「」

霞「さ、帰りましょうか――」

京太郎「あ、良子さんはお車ですよね?」

良子「ええ、そうですが――」

京太郎「食べる暇があるかわかりませんが、こちら――昼食のお弁当を、ご用意させていただきました。時間がありましたら、どうぞお召し上がりください」

良子「これは……サンクス、京太郎。ありがたく頂戴しますよ……おいしくいただきましょう」

京太郎「はい、それでは――本日は、ありがとうございました」

~京太郎の家

京太郎「さぁて――じゃ、荷物取りに行くか」

「うぃーす」
「すいません、少々お待ちを」
「すぐ戻りますので」

咲「ああ、いいよ、気にしないで」

和「それより三人は、ここで待っていてはどうですか」

優希「日頃の労いに、私らが取ってきてやるじぇ。なに、遠慮はいらねえ」ビシッ

久「あ、それ私もしたいんだけど」

まこ「……永水の皆さんも見ておられるけえ、悪ふざけはよさんか」ビキッ

四人『』

春「……ここで乗るほど、空気が読めなくはない」

霞「竹井さんとは違うタイプだけれど、あの子も立派に部長なのね」

小蒔「べ、勉強になりますっ……」

湧「……姫様があんな怒り方されるようになったら――」

明星「あかん、夢に見てまう」

初美「ま、それがないからこその姫様なんですけどねー」

京太郎(で――だ、このあとどうするか……)

京太郎(みんなが帰ったら、俺は合宿所に戻って掃除だ――ただ、見送りを手短に済ませて、少し買い物をできればっていうのもある……)

京太郎(見送るか、買い物か……掃除に間に合わせようと思ったら、どっちかしかできないが――)

~ということで、最寄駅

京太郎「では――来月、東京で」

小蒔「はいっ……そのときは、私も……ぜ、全国一位を、必ずやっ……」

京太郎「ええ……頑張りましょう」

小蒔(……京くんの、隣に立ちますからっ)ボソッ

京太郎(あー……コホンッ……俺も、こまちゃんの隣に立てるよう、頑張るからな)ボソボソッ

小蒔「~~~~~っっ!!!」ゾクゾクッ ////

霞「あらあら、小蒔ちゃんになにを言ったのかしら?」

京太郎「こ、これと言ってなにも……あの、本当にお疲れさまでした。在校生でも監督でもないのに、こんな遠方まで――ありがとうございます」

霞「小蒔ちゃんのためだからね……それと――京太郎くんにも、会いたかったから」フフッ

京太郎「――畏れ入ります」

春「京太郎っ……最後っ、ギュッてして!」ダキッ

京太郎「……おうっ、今月残りも、しっかりな!」ギューッ

春「えへへ……」スリスリ

初美「この隙にー……京太郎、京太郎」

京太郎「あ、はい。なんでしょう」ナデナデ

初美「はるるを撫でながら……まぁいいですけどねー。それで、今月後半は、私がお勤めでこちらに来ることがあります、もし会ったらちゃーんと、挨拶するんですよー?」

京太郎「あ、はい……えっ、大丈夫なんですか?」

初美「なにがですか?」ゴゴゴゴゴゴ

京太郎「そういうことではなく! 霞さんとの、話し合いなどは……」

霞「どうしてそこで、大丈夫かそうでないかという話になるのかしら?」ニッコリ

京太郎(しまった、多段墓穴掘削術をっ……)

初美「――ま、今回のは霞の自業自得ですよー」

霞「はいはい、反省してます……まぁこれでもはっちゃんの家も名家で、人前ではしっかりしてるから、大丈夫よ。京太郎くんが心配することないわ」

京太郎「は、はぁ……」

初美「ほう、やっぱりそういうことだったと」

京太郎「」

春「京太郎、いいからこっち……集中して」スリスリムニュー

京太郎「おおう……」

明星「姫様、止めなくていいんですかっ」

小蒔「こまちゃんの、とな……隣、にぃ……えへへへ……」フニャー

湧「姫様、お気を確かに!」

咲「――はい、そこまで春ちゃん! 交代だよ!」

春「ちぇ……」

優希「というわけでドーン! 私からだじぇ、京太郎!」

京太郎「へいへい……これでいいか」

優希「高い高いすんな! まったく、失礼なやつだじぇ……」スッ

京太郎「どっちがだよ……んじゃ、全国も頑張れよ」パンッ

優希「おう! 京太郎もな!」パンッ

ミカ「おおおお、なんて男らしい……」

ムロ「なんというか……逞しいですね、片岡先輩」

まこ「しおらしゅうするんが、恥ずかしいちゅうとこじゃろ……素直になりゃあ、京太郎の意識も変わると思うんじゃが」

久「それが優希の攻め方であり、いいところなのよ。さて、私も私らしくやりますか――」

久「きょ~たろぉ~~っっ!」

京太郎「――っっ!」ガシッ

久「ちょっと、なんで止めるの!」

京太郎「いえ……嫌な予感がしたので」

和「ですね」

咲「声がなにか企んでたよ」

久「失礼ね! はぁ、まったく……なら、一つだけ言っとくわよ、京太郎」ピシッ

京太郎「うっす」

久「変な女には騙されないこと」

まこ「そこかい!」

咲「でも大事」

和(もう手遅れでは……)

京太郎「はぁ……よくわかりませんけど、了解です」

久「じゃね~、東京で……あ、京太郎。ここ、なにかついてるわよ?」チョンチョン

京太郎「え、どこっすか」チラッ

久「…………」ニヤッ

和「――危ない!」

咲「逃げて京ちゃん!」

京太郎「は――?」

久「視線が右に寄ったわね……左が隙だらけよ♪」チュッ

京太郎「――っっ!!」

全員『――っっ!!!!!!』

久「ま、頬っぺたならノーカンでしょ。狩宿さんもやったって聞いたし、大星さんも誕生日にしてたんでしょ?」

京太郎(別のときは、めっちゃ恥ずかしがってたけど……あと、俺から尭深先輩にしたのは内緒にしとこう)

和「っっ……きょ、京太郎くんっ……」ズイッ

京太郎「は、はいっ……」

和「……私は、来月……咲さんの付き添いで、東京に行くことになります」

京太郎「ああ……けど、試合を見ておけば、次と次の次の大会で、きっと役に立つ」

和「はい――私は、自分の未熟さを感じているところなので……今日は、なにもしません」

京太郎(なん……だと……そんな、それじゃのどパイは……)

まこ「わかりやすい視線が」

久「バカね」

和「――ですから、京太郎くんもお預けです」グイッ

京太郎「ちょっ、顔掴むな……」

和「たまには、きちんと顔を見てくださいね?」

京太郎「い、いつも見てるだろっ」

和「ふふっ、そうかもしれません……では――来月、頑張ってください」キュッ

京太郎「……ああ、ありがとう」ギュッ

ミカ「握手です」

ムロ「見ればわかるって……誰に言ってんの」

咲「京ちゃんっ、今度は私も一位になるから――絶対、なるからっ……」

京太郎「春と小蒔先輩がすげー顔で睨んでる」

咲「いいもん! ここに淡ちゃんがいたって、そう言ってるから!」

京太郎「はぁ……お前はあれだな、時々顔に似合わず、大胆なことやらかすよなぁ……」ガシッ

咲「あたっ……あああ、頭押さないでっ、縮むっ、縮むからぁっ……」

京太郎「まぁけど――そういうとこが咲なんだよな。しっかりやれよ、咲」ガシガシッ

咲「――うんっ! って、髪乱れるっ、ホーン潰れるから!」

まこ「それじゃ、名残りは惜しいが――またの、京太郎」

京太郎「はい。まこさんも、お気をつけて――あ、あのっ、まこさんは東京には――」

まこ「わしは長野で、後輩の指導につく」

京太郎「……そうですか」

まこ「そんな顔するな。本当なら、去年お前にしてやらんといかんかったことじゃあ……相手は違うとるが、その分の穴埋めじゃと思うとれ」

京太郎「……先輩は、いいんですか?」

まこ「ああ、構わん。後輩のために時間が使えるっちゅうんは、幸せなことじゃ……試合でも全力をだしきったんじゃ、なんも後悔はありゃせん」

京太郎「――っす……お疲れさまでしたっ、先輩――」

京太郎「ありがとうございました……まこ、部長っ……」

まこ「――――っ!」

まこ「お、まえっ……っ……バカッ、なにをっ……」ウルッ

久「部長取られちゃった……」

和「いえ、当然の帰結ですよ」

咲「本当は、夏に優勝したら、久さんを久さんって呼んで――」

優希「部長を部長と呼ぶことになる予定だったんだじぇ」

ミカ「でも、この夏で染谷部長が引退だと思いだして」

ムロ「ここで採用したと――ガバガバですね、設定が」

京太郎「(なんかメタいのは無視して……)部長、俺がその分頑張ります……学校は違いますけど、部長に教わった分……しっかり打ってきますから」

まこ「……ははっ、なんじゃそりゃあ……わしが教えた分より、色んな人に教わった分をださんか……そのほうが、ずっと伸びるわ――頑張れよ、京太郎」

京太郎「うっす、頑張ります!!」



~買い物

京太郎「さて、いつものモールです」

京太郎「あとはサンディ……監督と、尭深先輩――なんだけど……」

京太郎「はっきり言っておく……三週の人たちは今日までです!」

京太郎「来週の日曜は、買い物するなら四週のエイスリンさん、もしくは理沙さん――あるいは来月一週の爽さん、誠子先輩、そんなとこだ」

京太郎「まぁ今月のお二人はすでに買ってるから、実質来月頭のお二人用ってことかな」

京太郎「なので――まぁ早い話、サンディと尭深先輩……どっちかは……うん」

京太郎「いや、あの、懐具合がさ……はぁ……」

京太郎「ふぅ……さ、反省はあとにしよう。まずはどっちに買うか、そこからだ」

京太郎「……まぁ、なんだかんだでお世話になったし、やっぱ監督だな……礼儀として」

京太郎「尭深先輩には、きっとまた機会があるはずだ――たぶん……」

京太郎「しかし……監督は、なにを贈れば喜んでくれるだろうか……」

京太郎「んー……ハンカチとかでもいいんだけど、いつもスーツだから趣味がわからん……」

京太郎「とりあえず、日頃の激務を癒すって意味でも……入浴剤とかが、あのくらいの女性にはいいって……」

京太郎「聞いたような、てないような……あ、けどこれはいいな」

京太郎「疲労回復効果に加え、アロマによるリフレッシュも……ふんふむ」

京太郎「すいません、これいただきます。送り先は――」

「はい、ありがとうございます。プレゼント包装で?」

京太郎「ええ。お願いします」

~合宿所

京太郎「遅くなりました! ただいま戻りました!」

姫子「遅か!」

京太郎「す、すいません!」

煌「まぁまぁ……というか、姫子は怒ってませんよ、京太郎くん」

京太郎「え、どういうことですか」

煌「まぁ少し遅れているとは思っていたでしょうけど、なにかあったのではと、心配していたというのがメインですからね」

京太郎「そうだったんですか……すいません、姫子先輩」

姫子「ううん……なにごともなく、戻ってこられてよかった……そいない、始めっか」

煌「ですね、一応準備はしていましたが」

京太郎「はい、掃除しましょう! 隅から隅まで!」

姫子「うーんこの」

煌「どれだけしたかったんですか……」

京太郎「そういえば、割り振りはどうなってましたっけ」

姫子「一応、こん表の通りになっとるけん……」

煌「対局室、宿泊室、食堂、厨房、トイレとお風呂が掃除箇所。まずは前四つに全員を割り、終わり次第、残り二つに移動です」

京太郎「ふんふむ……で、俺は? 全部ですか?」

姫子「なわけあっか!」

煌「そんな無体は申しません、安心してください」

京太郎「そうですか……」

姫子(なんで落ち込んどるのか……)

煌「まぁ、厨房は京太郎くんたちが綺麗にしてくれましたからね、大丈夫です。食堂か対局室、宿泊室を見てもらいたいところですが――」

京太郎「わかりました、まずはその三つを!」

煌「どれか一つです!」

京太郎「えええ……」

姫子「ついでに言うと、宿泊室は禁止やけん」

京太郎「なぜですか!」

煌「誰が泊まっていたか、わかってますか?」

京太郎「もちろん。新道寺、清澄、永水の各部員――あ」

姫子「恥ずかしかもん忘れとって、それを京太郎に見られたと知ったら――」

煌「一生モノの傷でしょうね、ええ」

京太郎「須賀京太郎、全力で対局室を掃除します!」

煌「よろしい」

姫子「ちゃんと担当の部員も使って、一人でやらんように。よかと?」

京太郎「はは、当然じゃないですか」

煌「………………」ジー

京太郎「と、当然じゃないですか(震え声)」

姫子「怪しかなぁ……」



~対局室

京太郎「――さて、やるかな」

「あの、先輩……」
「うちらはどがんしたら……」
「ご指示をお願いします」

京太郎「ああ、ここは俺に任せてくれていいぞ。何人かは牌の清掃に残ってもらうけど、あとは宿泊室か食堂のほうに――」

??「やっぱり――」

煌「そんなこったろーと思っていましたよ、ええ」スパーンッ

京太郎「たっ……え、煌先輩!? なぜここに……」

煌「あなたは人を使うのが極端に下手ですからねぇ、監視役が必要でしょうと」

京太郎「そ、そんなことないですって……ほら、飯のときも後輩たちと一緒に――」

煌「確かにそうでしたねぇ。なぜか男子を使うのは上手なんですから、あなたは……」

煌「それを女子にもうまく当てはめればいいのですが、なぜそれができないんでしょう」ハァ

京太郎「いやいやいや、普通の作業なら俺もそうしますって。ただ、掃除になると重いものを動かしたり、どうしても力が要りますから……」

煌「――確かに、一年生はここを掃除するのが初めてですし、慣れない作業は不便を強いられるでしょう」

京太郎「でしょっ!」

煌「ですが――来年、あなたがいない間に掃除をするとなって、その作業を説明できない先輩になったら、それも困る……違いますか?」

京太郎「う……」

煌「私たち先輩や、あなたの同級生は、一年も二年も前からここを使用し、その片づけをこなしてきました」

京太郎「はい」

煌「力が要ることは認めますが、けして女子にできないわけではない……もちろん、京太郎くんの紳士的な心遣いは、みな感謝していますし、嬉しいことでしょう」

煌「ですが――それは女性を見くびることへの免罪符ではありませんよ?」

京太郎「――っ! 俺は、そんなことはけして……」

煌「ええ、もちろんそれもわかっていますとも」ニコッ

煌「だからこそあなたは、ここにいる一年生たちを上手に使い、みなに指導をしなければいけないんです……お願い、できますね?」

京太郎「――はいっ」

煌「よいお返事です……では、しっかり頼みましたよ」

京太郎「お任せを」ペッコリン

煌「あなたたちも――指示を待つだけでなく、作業を探して京太郎くんに確認を取る、そういうことも忘れないように動いてください」

『はい!』


京太郎「……煌先輩、なんて素敵な人なんだ……俺も、ああいう先輩になりたいもんだな」




~お掃除します

京太郎「まずは雀卓の掃除からだ。中の細かいところは(俺の)定期メンテに任せるとして――」

「ん?」
「いま、メンテの前になんて――」

京太郎「任せるとしてぇ! 外の埃を拭いて、綺麗に磨いていこう。それが終わったら端に寄せて、部屋の掃除だ」

「はい!」
「いや、メンテの前になにか――」

京太郎「で! 部屋の担当は床と窓、残りは牌磨きをしておいてくれ。部屋が終わって卓を戻したら、きちんと並べておくように」

「はい!」
「メンテ――」

京太郎「よぉし! それじゃ作業開始だ!」

京太郎「埃は擦るんじゃなく、拭いて集めて取り除くんだ。叩いて浮かせて、掃除機で吸うってのも効果的だぞ。ただ、埃が舞うから吸わないように注意してな」

京太郎「運ぶときは、時間をかけてもいいから複数人で、丁寧に運ぶように。相手は精密機械だってことを、忘れないように」

京太郎「床は水拭き、乾拭き、ワックスがけ、それから乾拭きだ。ワックスは俺がやるから、その前に乾拭きは徹底しておいてくれ」

京太郎「ああ、窓の外側は俺がやるから、内側だけ丁寧にな」

京太郎「牌磨きは、混ざらないようにわかれてやれよー。最後に揃ってるのも確認するように、忘れるな!」

「……ガチな掃除だね」
「あれだよね、年末とかにやるやつだよね」
「ほかのとこも、こんな風にやってんのかな……」
「いや、普通に学校の教室掃除と変わらんやり方やったと……」

京太郎「いいか! 掃除を楽しくするコツは――本気ですることだ! 本気で綺麗にした場所で練習する、それを楽しみにするといいぞ!」

「前半はまぁわかる」
「後半はちょっと……」
「でも先輩が言うならそれでいいか」
「京ちゃん先輩と掃除するの、楽しいしね」

京太郎「京ちゃん先輩!?」

「何人かそう呼んでますよー」
「全員でそう呼べるよう、流行らせ中です!」

京太郎「やめろぉ!」

「建前?」
「ナイスゥ!(本音)」

京太郎「本音のやめろだよ!!」



~掃除、まだまだ続くの巻

京太郎「なんなんだよ、京ちゃん先輩って……」

煌「まぁまぁ、かわいいじゃないですか」

京太郎「いや、煌先輩だって、煌ちゃん先輩とか困るでしょ?」

煌「……京太郎くんがそう呼びたいなら、吝かではありませんが」

京太郎「えっ」

煌「さて――あとはトイレとお風呂ですね。どっちにしますか?」

京太郎「……えーっと……さっきの宿泊室理論で言うと、どっちもまずいのでは……」

姫子「けど――どっちかはせんといかん」

京太郎「ですよねぇ……んー、じゃあ――」

京太郎「んー、じゃあ――お風呂で」

煌「では姫子」

姫子「ほーい。私と一緒やけんね。ちゃんと言うことば聞くように」

京太郎「ああ、そういうあれですか。了解です」

姫子「じゃ、しゅっぱーつ……あ、そうそう」

京太郎「はい?」

姫子「一応、忘れもんとかは確認ばしとるけど……もし、見つけたら――すぐ報告するように」

京太郎「あ、はい……もちろん」

姫子「そいが規格外のサイズやからと、ガン見ばしようもんなら――」

京太郎「も、もんなら……?」

姫子「目」

京太郎「め?」

姫子「つぶすけん♪」ニコッ

京太郎「」

姫子「ほい、出発しゅっぱーつ♪」

京太郎(忘れ物がありませんようにいいいいいいい!)




~掃除終了

京太郎「いやー、広い脱衣所、浴室だったな……松実館を思いだして、つい力が入っちまった」

姫子「――あれ!? い、いつの間に掃除ば終わったと?」

京太郎「やだなぁ、さっき片付いたじゃないですか」

姫子「目つぶししとらんのに!」

京太郎「したかったんですか!?」

姫子「そういうわけやなかとやけど……」

京太郎「まぁ脱衣所はみんなに任せて、浴室はしっかり磨かせてもらいましたんで。今後、ここを使う人も気持ちよく入れると思いますよ」

姫子「そっかぁ……浴室には、忘れもんはなかったと?」

京太郎「――――――」

京太郎「――えーと、まぁ……ありましたね」

姫子「…………」スッ

京太郎「潰さなくて大丈夫ですよ!」

京太郎「こちらです。洗顔フォーム、トラベル用ボトルのシャンプー、リンス……あとはお風呂で使う髪留めですね」

姫子「なるほど……各部長に連絡ばして、確認しとかんとね」

京太郎「なんでしたら、届けにいきますので」

姫子「せいぜい、洗顔くらいやろな……ボトルはほぼ空やし、髪留めも百均で買えるタイプやけん。一つ二つなら、宅配で送ればよか」

京太郎「そうですか、わかりました」

姫子「それじゃ、これで終わりやね……みんなお疲れ!」

京太郎「俺は煌先輩のとこに行って、こっちが終わったの伝えてきます」

姫子「任せたー。最後は玄関でミーティング、そんで解散やけん」

京太郎「了解です」



~連休最終日、夜

京太郎「ふぅ――なんだかんだで遅くなったな」

京太郎「色々あったけど、無事に合宿が終わってよかった……残り二週間、来月のために頑張らないと」

京太郎「……さしあたっては明日のために、俺がやるべきことは――」


~合宿終了ミーティング

姫子「ほい、みんな三日間お疲れさま!」

京太郎「お疲れさまでした!」

姫子「これで合宿ば終わりになっとやけど、帰るまでが合宿やけん。まだまだ気ぃば緩めんように」

京太郎(――だな、帰りに事故なんて遭ったら大変だし)

姫子「というわけで――恒例の合宿打ち上げ、今回は寮でやるぞー!」

『おーっっ!!』

京太郎「………………えっ?」

~打ち上げ in 新道寺寮

京太郎「どうしてこうなった」

煌「まぁまぁ、料理はケータリングと寮母さんにお任せしておきましたから、大丈夫ですよ」

京太郎「そこですよぉ! こうなるのを予想して、準備しておかなかったなんて……これが師匠なら、フルコースで用意できてたはずなのに……」

姫子「あ、そこなんや……」

友清「けどせっかくの打ち上げやし。京太郎も、仕事は忘れて羽を伸ばせばよか」モグモグ

煌「友清の言う通りです。ということで、まぁおひとつ――」カチンッ

京太郎「おわっ、先輩にお酌なんて……大丈夫ですよ、手酌で」

友清「お茶でもお酌っていうもんなんか……」

姫子「そいは知らんと――ただ、そのお酌ば私もやる!!」ガチャーンッ

煌「あ、こら姫子! 私が先に言ったんですから、あとにすればいいでしょうっ」

姫子「京太郎が遠慮ばしとるし、先輩やなかほうが――」

京太郎「あんたも先輩でしょうがっっ!」

「それでしたら――」
「うちら、同級生組が……」
「もしくは私たち!」
「京ちゃん先輩を慕う会の会員が――」

姫子「は?(威圧)」

「あ、なんでもないです」
「後輩からなら遠慮なく受け取られるかと……すいません、いいです」

友清「はっはっは、人気もんやねぇ、京太郎。ほら、打ち上げは無礼講やけん、先輩からやいうて遠慮ばせんでもよか」トクトクトク

京太郎「あ、すいません……おっとっと――」

姫子「こらあああああああ!」

煌「友清おおおおおおおおおお!」

「京ちゃん先輩、これ食べました?」
「ここのお店のチューリップ、絶品なんですよー」
「おにぎりは寮母さんと私たちでご用意しましたのでっ」
「この博多名物明太子入りを、ぜひ! アーンなさって!」

京太郎「あ、ありがと……いや、あの……その京ちゃん先輩ってのは――」

「いいじゃないですかー、京ちゃんせんぱーい」
「清澄の子も、原村さんのことのどちゃん先輩って言ってましたしー」

京太郎(加藤ァ!)

「おにぎりどーぞ、京ちゃんせんぱーい」
「唐揚げもどうぞ、せんぱーい」
「京ちゃーん」

京太郎「先輩はどうしたぁ!」

友清「まぁまぁ、無礼講やけん」

京太郎「あんたそればっかだなぁ!?」

京太郎「にしても――合宿は無事に終わってよかったですよ」

煌「そうですねぇ。一応、合宿所では夜に色々あったんですけどね」

京太郎「えっ」

姫子「各部屋から代表ば選出して、寝間着美女コンテストばしたり」

京太郎「詳しく!」

友清「入浴中にあった、石戸、神代、原村による、女子力(意味深)アップ講座とか――」

京太郎「こまちゃ――小蒔先輩になにさせてんだ!」

姫子「ほう、石戸と原村はよかとか……」

京太郎「――いえ、そういうわけでも」

煌「これは和に報告しておきませんと」

京太郎「わたくしが悪ぅございましたぁ!」ドゲザッ

煌「あとは――愚痴大会ですね」

京太郎「愚痴ですかぁ……まぁ色々あるでしょうね、皆さん」

友清「ははは、他人事のように言うな、原因」

京太郎「………………は?」

姫子「そうよ、原因」

京太郎「え、と……えっ?」チラッ

煌「まぁ――違うのもあるにはありましたが、大方の内容は、あなたが原因でしょうねぇ」

京太郎「」

姫子「はぁ……自覚ばないとか、そりゃ愚痴もたまろうもんよ……」

友清「誰がなに言ってたか、気になる?」

京太郎「気になるけど聞きたくないです」

煌「でしょうねぇ。私たちも本人には伝えにくいです、さすがに」

京太郎「………………え、そんなに?」

姫子「聞いてて腹立たしくもなりよったと」

京太郎「」ダラダラダラ

友清「そうだな、たとえば――」

京太郎「やめろぉ!」

姫子「ナイスゥ!」

煌「まぁ、一つくらいなら、聞いておくと戒めになるかと」

京太郎「煌先輩まで!?」

姫子「んでは――誰の愚痴ば、聞きたか?」

京太郎「ちょ、マジで言うつもりですか! っていうか、言った人の許可とかは!」

友清「了承済みだ」

京太郎「」

煌「愚痴大会の参加資格が、本人に伝えることの許諾、でしたからね」

姫子「さ、張り切って選んでこー♪」

京太郎「ええええ……」

春「――京太郎は、鈍すぎる」

全員『わかる』

春「電話もいっぱいしたし、優勝したときは抱き合って喜んで、いっぱい……」

春(…………舐めたことはいいかな?)

春「とにかく――私なりに、アピールはしてる……」

春「だけど、京太郎は……たぶん、私がそこまで京太郎を……す、す……き……///……だって、気づいてない……」

春「気づいてなくても優しくしてくれるのは、京太郎のいいところだけど……すぐに応えてくれなくてもいいから、せめて気づいてはほしい……」

春「……これ、みんなも思ってる?」

一部『ウンウン』

春「特に、永水は最初の派遣先で……その中で同級生だった私は、一番仲良くなれたと思う……」

春「でも、京太郎の中では友達どまりだって思うと……ちょっと寂しい……」

春「京太郎のためなら、なんでもするのに……」ハァ

(ん?)
(いま――)
(やめましょう、彼女は本当に、京太郎くんになんでもしそうです)
(あなたもでしょ……)

~春の愚痴終わり


煌「――――――」

京太郎「は、春はなんて……?」

姫子「う、うむ……なんち言うたらええか……」

友清「はっきりとは言えん……さすがに、協定違反やろうし……」

京太郎「そこまで!?」

煌「たぶん、あなたの想像とは違いますけど……では、端的にご紹介しましょう」

京太郎「は、はい……」

煌「――京太郎くん、あなたは鈍いです。鈍すぎます」

京太郎「ぐふっ……」

煌「もう少し……なんというか……じょ、女性の気持ちを考えなさい! あと、その子の目をしっかり見て……どう思われているか、少しは気づきなさい!」

京太郎「は、はい! 善処します!」

煌「はぁ……そんなところです」

京太郎「そうか……つまり、なにか春が怒るようなことをしてたわけか……今度謝って、次からは気をつけないと……」

姫子(だーめだこりゃ)

友清(まったく通じてない……なるほど、強敵なわけやね)

京太郎(……この分だと、咲もやばそうだな……)

京太郎「え、と……咲とかも、なんか言ってました?」

煌「もちろんです」

京太郎(もちろんか……)

姫子「宮永はなんち言うとったか、確か――」


~咲の場合

咲「……京ちゃんは、気遣いが足りない」

「えっ」
「あんだけ気遣われとるのに……」
「それはちょっと贅沢ではないでしょうか」

咲「そ、そういうことじゃなくてっ……た、たとえば! たとえばだけど!」

咲「私と……和ちゃんが、並んでたりすると……」

「あっ……」
「それは……お、男の子なら仕方ないのでは……」
「仕方ないとわかってるからこその愚痴では?」

咲「そういうところのデリカシーが欠けてると思うんです! 見るにしても、両方ちゃんと見る! 片方見ないなら両方見ない!」

「おそらく、本人も十分気をつけとるとは思うが……」
「実際、派遣前よりはだいぶ減ってるわよねぇ……」
「女子ばかりの場所だものねぇ、必要以上に気を遣ってるはずよ」

咲「そ、そうかもしれませんけど……なんか、こう……眼中にないのかなぁって、思ったりもするわけで……」

咲「京ちゃん、昔っからそういう人が好きで……クラスのおっきい子とか、話すときは完全に見てたし……」

「いつも通りだじぇ」
「最近は顔を見てくれることも増えましたけど……」
「胸を見てないとは言ってない」

咲「将来的には、なんて希望も……お姉ちゃん見てたら、言えないし……」

「宮永照への風評被害」
「風評じゃないんだよなぁ……」

咲「言葉でからかったりはしない……まぁ、たまにはされたけど……あんまりされないですから、そういうとこは優しいって思うんですけど……」

咲「贅沢かもしれませんけど、誰かと一緒にいるとき、比べるみたいにはしないでほしいなぁって……思います」

~咲さんの愚痴終了


姫子「………………最低や」

京太郎「!?」

煌「宮永さんの要求はたった一つ、たった一つのシンプルな答えでした」

京太郎「お、俺はあいつを怒らせたんですか……?」

友清「むしろなぜ怒られないと思っているのか」

姫子「あんなぁ、京太郎――胸の成長には、個人差っちゅうもんがあっと!」

京太郎「お、おっしゃるとおりです!」ビクッ

煌「……その個人差ゆえに、見比べてしまうこともあるでしょうけど……そういうときこそ、意識して堪えてください……」

京太郎「…………つまり、咲の愚痴はそれですか」

姫子「それよ」

煌「まぁ、執拗にそのことを話のネタにされる、ということはないようなので……そこは嬉しいとも言っていましたがね」

京太郎「その……なんか、すいませんでした……気をつけます」

姫子「よろしい」

友清「では次の相手――」

京太郎「まだやるんですか!?」

 ――このあと何人か聞かされ、かなりのダメージを追いました。なお、ヒッサは愚痴なしだったもよう


京太郎「はぁ……師匠みたいに、執事力53万もあれば、愚痴られることもないんだろうなぁ……」

姫子「なんね、その執事力いうんは……」

京太郎「いえ、こっちの話で……」

煌「そのお師匠さんが、どんな方かは存じませんが……京太郎くんは、京太郎くんらしくでいいと思いますよ」

京太郎「いえ、でもそれだけ愚痴があるっていうことは……」

姫子「まぁ……言いたいことは、確かにあるとは思うばい」

煌「ですが――そこも含めて京太郎くんだと思っていて、言いたいことはあっても、嫌いになるわけではないということです」

京太郎「でも、傷つけているわけですから……それなら、改善したいですよ」

煌「そう思うことは大事です……とはいえ、そのことで京太郎くんらしさがなくなることは、誰も望まないでしょう」

姫子「ああいう愚痴いうのは、言ってる間が楽しい――そういう考えもあっと」

煌「すべてがそうではありませんけどね……ただ、欠点を減らすよりは美点を増やすほうが、皆さんの望むところかと」

姫子「悪く思われんことより、よか思われることば、大切にすっとよか……」

京太郎「はい……意識しておきます」

煌「ええ、そうですね。そういう素直なところは、私も好ましく思います」

姫子「ちゃんと反省できっとは、男らしゅうてよか」

友清「ということでよ、京太郎」

京太郎「はい」

友清「素直さと男らしさ、どっちを意識して伸ばしていく?」

京太郎「!?」

煌「いいですねえ、興味があります」

姫子「どっちば伸ばしていくか、聞かせてほしか」

京太郎(なにいいぃぃっっっ!? こ、ここでそういう話になんのかよ!)

京太郎「そ、そうですね……では、これからはもう少し男らしく……悪いところはすっぱり反省し、前向きに活かしていくことを意識しようかと」

姫子「ふふー、そーかそーか♪ うんうん、偉かよー」ナデナデ

京太郎「お、押忍」

煌「それはまた……大変でしょうが、頑張ってくださいね。そういう姿を見れば、同い年の子や後輩たちもよりあなたを慕うでしょうからね」

京太郎「そういうもんですかね……」

姫子「私は年上やけど、男らしいとこば見たかって思うとよ?」

京太郎「先輩は……こう言っては失礼かもしれませんけど、年下みたいな可愛さがありますからね」

姫子「」

煌「あら、これは」

姫子「そ……そそ……そがん、こと……なかよ……」カァッ

京太郎「そういうとこですよ、先輩」

姫子「ふぇ?」

京太郎「そうやってはにかむとことか、本当に可愛いです」

姫子「~~~~~~~~~っっっ!! ば、ばかぁっ、もう知らんと!」プイッ

煌(かわいい)

友清(かわいい)

京太郎(かわいい)


~回想終了

京太郎「男らしく、か……男らしくってなんだろうな(哲学)」

京太郎「そもそもこの現代社会において、男らしく、女らしくという概念を持ちだすことこそ、時代にそぐわない考えであり、ジェンダー論的には――」

京太郎「……いかん、なに言ってるかわからなくなってきたな……」

京太郎「とにかく、そういうことを意識することが、そもそも○○らしいって意識に欠けてる気がする」

京太郎「俺が理想とするのが、俺の思う男らしさだと考えれば……俺はこのまま、師匠を目指すことが正しいわけだ、うん(暴論)」

京太郎「まぁ、そこに少々のエッセンスを加えるとすれば――」

京太郎「すれば……」

京太郎「……そういう嗜好が芽生えるのも、ままやむを得ないことである」ゴソゴソ

京太郎「合宿中は、あいつらも泊まってたしな……今日は久々に、秘蔵本のソロチェックを……」イソイソ

モーイッポフーミダセルー ワターシマッテタヨー
京太郎「おわぁっっ!?」ビビクンッ

京太郎「で、電話だと……誰から――」

京太郎「あ――」


~霞からの電話

京太郎「もしもし、京太郎です」

霞『あ――も、もしもしっ! 霞です……あの、いま大丈夫かしら?』

京太郎「ええ、大丈夫です。なにかありましたか?」

霞『え、ええ、その……ちょっとね』

京太郎「忘れ物ですか? それとも、帰り道になにか――」

霞『う、ううん! そうじゃないのだけど……学校には無事、帰り着いたわ』

京太郎「そうですか、それはなによりです」

霞『それで反省会をして、小蒔ちゃんを送って、さっき家に帰ったのだけど……そうしたら、家の者が――』

京太郎「ご家族になにか!?」

霞『ああ……そうではなくて、家の使用人がね……小包を、私に……』

京太郎「――あ、ああ、なるほど……そっちでしたか」

霞『こ、心当たり、あるのね?』

京太郎「ええ、一応――」

京太郎「俺からのプレゼントです――無事に届いたようでよかった」

霞『あ……ありがとうっ……あの下着だけじゃなかったのね……』

京太郎「あれは皆さんが選んだやつですよ!?」

霞『ふふっ、そうだったわね……ね、開けてもいいかしら?』

京太郎「ええ、もちろん――開けてなかったんですか?」

霞『一応、本当に京太郎くんからなのか、確認してからと思ってね……それじゃ、失礼して――』シュル

霞『――これは……腕時計?』

京太郎「はい。お仕事中につけられるかはわからなかったんですけど、霞さんも社会人ですから、時間を気にされることも増えるのではと思いまして」

霞『そうね……確かに、色々な場面で時間厳守は求められているわ……ありがとう、京太郎くん』

霞『服の袖も長いから、つけていても大丈夫よ……本当にうれしい。大切にするわね』

京太郎「よかった……」

霞『本当はね――』

京太郎「はい?」

霞『本当はね……ちょっとだけ、期待してたの。だから無理を言って、合宿にも参加させてもらったのよ』

京太郎「えっと、期待というのは……」

霞『その……お祝い、してもらえるかなって思って……それで、あの下着とパーティをもらって――それだけで私は、とても幸せだったわ』

霞『あとは、個人的なプレゼントもあれば――なんて考えるのは、さすがに贅沢かしらって思っていたのだけど……まさか本当にもらえるなんてね』

霞『すごく……すごく、嬉しいっ……』グスッ

京太郎「か、霞さん!?」

霞『京太郎くんが、こんなに私のことを考えてくれてたなんて……私、全然知らなかった……』

京太郎「そんな――」

京太郎「霞さんのことは、いつだって気にしています!!」

霞『――っっ!!』

京太郎「初めての派遣で、右も左もわからなかった俺に……初めて会う男相手に、優しくしてくださいました」

京太郎「そんな霞さんに、少しでもなにかできることがあるならって、俺はいつも考えてます……」

京太郎「ですから、その――霞さんは、俺にとって少し、特別な人ですよ」

霞『あ……え、あ……えっ?』

京太郎「むしろこっちこそ……受け取ってもらえなかったらとか、色々と思い悩んでいました」

霞『そんな……京太郎くんがくれるものなら、その……紐の水着なんかでも、嬉しかったと思うわ。喜んで受け取ったはずだもの』

京太郎「ええええ……ま、まぁともかく……俺のほうこそ、喜んでいただけてすごく嬉しいです」

京太郎「仕事のときも、つけてくださると聞いて……本当によかった」

霞『みんなにも自慢するわ。京太郎くんにもらった、私の宝物ですってね』フフッ

京太郎「はは、照れますね」

霞『あら、いいの? 本当にしちゃうわよ、自慢』

京太郎「ええ、いくらでも――どんどん自慢してください」

霞『……ふふっ、ありがとう。それなら、思う存分自慢するわね』

霞『春ちゃんや小蒔ちゃん、あと巴ちゃんも――なにかあるごとに、自慢してきてたのよ』

京太郎「う……」

霞『そのたびに咎めるようなことも、少し言ったのだけど……私も、あの子たちと一緒だったわ』

霞『こんなに嬉しいことなら、自慢したくなる気持ちもわかるもの……本当にありがとう。大事にするわ』

京太郎「はい……ありがとうございます。それと――」

京太郎「お誕生日、おめでとうございます」

霞『……はい。ありがとうございます、京太郎くん』

京太郎「それでは――連休合宿、お疲れさまでした。ゆっくり休んでくださいね」

霞『ええ、ありがとう……京太郎くんもね。おやすみなさい』

京太郎「おやすみなさい。失礼します」



~連休三日目終了



【7月連休】

 無事に連休日程、合宿のほうが終了しました。お疲れさまです。
 相手校のみなさんも、お疲れさまでした。十分に休養を取ってください。

 さて、今回の合宿の総括ですが――まず、とても懐かしい友人に再会できたことが挙げられます。
 本当に驚きましたが、とても嬉しかったです。
 そして、合宿中ながら各校のご参加をいただき、お祝い事の時間を取らせていただいたことも、忘れてはいけないでしょう。
 なにより、他校を二つも招いての合宿というのは、俺の初めての経験です。
 全員の成長に繋がっていたなら、これ以上喜ばしいことはありません。

 合宿での経験を活かし、今月残り二週間、頑張っていきましょう。

……………………

 ま、こんなとこか……にしても、こまちゃんとのことどうするか……
 とりあえず、オヤジに電話でもしてみるかな……いや、俺が思いだしたってことは、知られないほうがいいか

『清澄は去年の夏、うちと鶴賀と龍門渕集めて合宿したし! だから初めてじゃないはずだし!』

 ……………………あ

『あーあ』
『これは……誰か知らんけど、コメントのやらかし?』
『空気読めよ……』

 違う、違うんです! いやマジで! そういう含みは一切!

『……擁護というわけではないが、女子ばかりが集まる場所に、男子は呼べないだろう?』

 そう! それ! ナイスです!

『今回も女子ばっかやったち思うけど……』
『宿泊場所もちゃんとずらしましたし』
『……それに去年の合宿、気づかれなかったけど、萩原さんがいた』

 師匠はお嬢様方の護衛も兼ねているからセーフですっ(カタカタッ ッターン

『同じ名目で、京太郎くんも誘えなかったのか?』
『萩原某氏が近くにいたということは、その方が滞在する場所もあったはずだが』

 師匠なら往復に時間かからないからですっ、あの場所に近い宿泊施設はありませんっ(カタカタッ ッターン

『……なんでお前がかばっとんねん』
『まぁ本人が気にしてないなら、当時のことは水に流したほうが』
『でも、かわいそう……』
『うちの子になればいいんです。どんな場所であっても、絶対に一緒に参加してもらいますから』
『うちの子になってもそうする。なにがあっても、京太郎を置いていったりしない』

 優しさが……いまは、痛い……どうしようこれ 

『いっそ私のマネージャーになればいい。どこにいても一緒、ゆくゆくは家族になるから問題もない』
『は?』
『お前にだけは絶対に任せない。あまりにも不憫だ』
『じゃあ私の付き人になればいい。一生養ってあげるから、一生お世話してほしい』
『だらけない!』
『こっちに任せるのも危ないのよねぇ……』
『うちの事務所に入ればいいぞ☆』
『京太郎の一人や二人、いざとなったら囲ってやっから心配いらねーって、知らんけど』

 なんか風向きは悪いけど、話題が逸れた……よかった

『……なんでこうもヒモにしたがるの、大人って』
『そうだよ! 京太郎くんはお料理が好きなんだから、旅館の板前さんとかが向いてると思うのです!』
『お菓子屋さんのほうがいいよねっ! 和菓子も洋菓子も作ろうよ!』
『神職のほうがいいと思います、だそうですよー』
『ふきゅ』
『普通の就職先も考えたってーな……』


――――――――


~清澄

「……他校三校が女子校で、京太郎くんを呼ぶのは難しかったですよ」
「そ、そうですよ……逆の立場だったら、他校の男子って怖いですし……」
「まぁ――やり方はまずかったかもしれんが、よその学校に気ぃつこうた結果なら仕方ないじゃろ」
「……京太郎がそういうやつじゃないって、私らの言葉だけで説明するのは難しかったんだじぇ、きっと」
「あー、うん……ありがとね、気を遣ってもらっちゃって。なんにせよ、私の力量不足だったわ」
「で、そのときの京太郎先輩って、一人残されてなにしてたんでしょうね」
『』
「それ以上いけない」


~龍門渕

「ともきー、なんでわざわざ燃料を……」
「……なんとなく……あの子が、どうして呼ばれなかったのかって……考えたら……」
「あー……まぁうちらのほかにも、女子校だけだったし……ハギヨシはともかく、仕方ないだろ」
「そうですわね。いまでこそ、彼が信用に足る人物だとわかっていますけど、当時の無名な彼をハギヨシと同等には扱えませんわ」
「名の高低で扱いを変えることはないが、清澄の部長がそう判断したのだ。我々としてはむしろ、感謝しておくべきであろうな」
「だね。萩原さんも基本的には外にいたわけだし」
「けど、もしあん時にいたら、ハギヨシももっと仕込めてたんじゃねーか?」
「それはどうでしょう。私も彼も、出会った当時とは状況が異なったでしょうからね。彼には彼の、なすべきことがあったのですよ」


~白糸台

「――とはいえ、想像してみたら結構キツい?」
「うん……一人だけ置いて行かれたら、退部ものかも」
「えー? でもさ、それってキョータローが弱かったからでしょ? いまみたいに強かったら、そんなことなかったわけだし」
「強い弱いで、置き去りはどうかな……」
「なんでー? レギュラーだけの合宿とか、うちでもよくあるじゃん!」
「う、ん……強豪とかならそうかもだけどさ……いや、でも……そう、なのかな……?」
「これは判断が難しいね……淡ちゃんなら置いていったの?」
「うーん……あ、お菓子作れるなら連れてったかも!」
「夏の前は作れなかったはずだよ、聞いたことある」
「えー、そうなのー? うーん、それじゃー……うーん……でもなぁ……」
「おや、存外に悩むね」
「連れてく?」
「……キョ、キョータローがどーしてもっていうなら、連れてくのもヤブカサじゃない!」
「藪笠?」
「吝かだと思う……」
「ああ」


~永水

「懐かしい……」
「友人……」
「友人でいいんですよね?」
「さすがに、その……許嫁とか、そういう話では――」
「ズバッといきますねー、湧」
「家同士ではなく、あくまで当時の当主間の交流だったわけだものね。お気に入りの曾孫同士が仲良くしているのを、楽しんでいらしたんでしょう」
「………………うーん、うーん」
「姫様……?」
「体調が優れませんか?」
「い、いえ……その……そういう事実がなかったか、思いだしてるんです……うーん、うーん」
「そ、そうなの……頑張ってね」
(これは……なかったんでしょうねー、たぶん)
(かわいい)



~宮守組

「シロニ、マカセレナイ!」
「られない、ね」
「まぁ……京太郎くんだったら、シロのお世話は喜んでやりそうだからね……」
「ちょーやさしいよー」
「いやいや、優しさじゃないから。甘やかしは本人のためにならないよ」
「シロニ、キビシク!」
「厳しくはともかく……いまは自活できてるんだし、そのクセがつくまでは楽させないほうがいいわね」
「でも京太郎くんと一緒に暮らすの、ちょーたのしいと思うよー」
(英)京太郎との生活……ああっ、だめよ、京太郎! こんな朝から……もう、仕方ないわねぇ……)ウヘヘヘヘ
「エイちゃんが名状しがたい顔してるんだけど」
「時々、難儀な子よね……この子も」


~阿知賀

「やったね、憧!」
「なにがやったのよ! あとミーティグ中は部外者立ち入り禁止!」
「なにが部外者か! ここはうちの社務所、部室でやらないのが悪い!」
「ぐぬぬ……」
「神社……永水も参加してたし、そこの人たちかな……」
「ま、まぁ京太郎くんの希望っていうわけじゃないし、あんまり気にしてもしょうがないよねっ」
「そうだね~。またこっちに来たときに手伝ってもらえたら、うちで働きたいって思ってくれるかもしれないし……そのときに、お願いしてみようね」
「うちのお店、手伝ってくれないかなぁ……お母さんたちも、なんとしてでもそうしなさいって言ってたし」
「……おばさん、必死よね」
「憧は必死さが足りない!」
「って、いつまでいんのよ、お姉ちゃんはぁ!」グイグイ


~姫松

「そういうたら、洋榎先輩は参加してたんやったっけ」
「うん、そうやで。めっちゃ強なってたって、えらい喜んでたわ」
「ええなぁ、先輩……私らも打てたら、ええ練習できたのに」
「京太郎くんがおるんとおらんのやったら、モチベーション全然違うもんなぁ……」
『はぁ……』

「……代行、これどういうことですか」
「いやいやわ~、末原ちゃ~ん。せっかく顔だしてくれた思たら、そんな怖い顔して~」
「だらけきってるのよー、二人とも……」
「練習はちゃんとしてたんやで~? ちょっとキョウタリウムが足りへんと、こうなることがある~っていうくらいやから~」
「なんやねん、キョウタリウムって……」
「マイナスイオンかなんか?」


~新道寺

「これなぁ……祝い事はわかるけど、再会ってなんなんか……」
「ふむ……永水の子や清澄の子、という意味ではなさそうですが」
「あああっ、もやっとするぅ!」
「本人に聞いてみましょうか」
「……なんか、詮索しとるようで気が引けっと」
「いや、実際詮索ですからね」
「だ、誰やろなーっち言うとるだけで、詮索とは違うけんっ」
「はぁそうですか。じゃああまり気にしないでいいんじゃないですか?」
「気になっとが人のサガやろ! 人間やもん!」
「女のサガでしょうかねぇ……」

(……まぁ、なんとなく想像はつきますけどね……一人、明らかに態度や接し方の違う方がいましたから――)
(ただ、ご本人たちも隠していましたし……そっとしておいてあげましょう)フフッ


~西日本プロ

「……あーあ、俺だけ行けへんかったかぁ」
「まぁまぁセーラ、次がありますよ」ニコニコ
「せやせや。そのうち千里山に行くかもしれへんし、そんとき顔だしたらええやろ」ニヤニヤ
「その通りですよ、気落ちなさらず……ふふっ」
「ドンマイ!」
「いや、そこまで落ちてないからええて……あー、けど思いっきり打ちたかったなぁ、京太郎と!」
「いけませんよ、セーラ。私たちが京太郎と打ちに行くのではなく、私たちはあくまで、コーチング目的なのですから」
「そうそう。ほかのひよっこどもと打つの、忘れたらあかんわ」
「楽しかった!」
「皆さん、若々しいよい打ち方でしたからね……夏の大会が、非常に楽しみです」
「お前いくつやねん……あ、いえ、なんでもないです、はい」


~二年目7月第三週月曜、朝

京太郎「……あ、そういえば」ゴソゴソ

京太郎「どう見ても家の電話番号……なんだけどな……」


~少年回想中

京太郎「……え?」

小蒔「じ、自宅ではありますけど……よ、夜の8時から9時までは、私が出るようにしますのでっ」ズイッ

京太郎「あ、ありがとうございます……えっと、でも……俺がかけて、名乗ったりしたら……色々面倒じゃないですか?」

小蒔「大丈夫、だと思います……周囲の方は、須賀家と密な関係にあることをよしとしていませんでしたが、神代は――」

小蒔「曽祖父さま、お祖父さま、それにお父さまも、気にしていたようには見えませんでしたから……」

京太郎「そう、ですか……えと、では……ありがたく頂戴しておきます」ペッコリン

小蒔「はいっ! あと――京くん?」

京太郎「う……あの、ほかに人が……」

小蒔「いまはいませんっ! ですから、敬語はなしですっ」フンスッ

京太郎「はぁ……はいはい、ありがとな。いつになるかわかんないけど、ちゃんとかけるから……そっちも、出てくれよ?」

小蒔「はいっ、お待ちしております」ペッコリン


~少年回想終了

京太郎「……メールはできないけど、電話はあり……なんだよな?」

京太郎「あれ、けどネトマはできるみたいだし……登録用のフリメは取ってそうだな」

京太郎「その辺は、次に話したときにでも確認しとくか……というか、小蒔先輩、意外と積極的な……いや、昔からあんなだったか」

京太郎「――っと、言ってる間にそろそろやばい、行くとするか」

京太郎「あと、今週の指針も絞っとくか」

京太郎「――そういえば、合宿中はほとんどモブ子を見てないな」

京太郎「参加はしてたみたいだけど、どこに隠れてたのやら……」


~部室

京太郎「――よし、間に合ったぁ! はよーございますっ!」

「おはよーございますっ!」
「京ちゃん先輩、ご相談が!」

京太郎「おう、なんだ。卵白のうまい泡立て方か? 女子は電動使ったほうが楽だぞ。あと京ちゃん先輩いうな」

「あ、そういうんじゃないので(真顔)」
「うちは麻雀部ですよ、麻雀のことに決まってるじゃないですか」
「電動とか、いやらしい……」

京太郎「やらしくねーだろうが、オラァン! って、ンなことより、それじゃ相談ってなんだよ!」

「少々ご意見をお伺いしたい局面がありまして」
「ネトマで面白い相手と当たったらしいんですよー」
「地獄単騎とか地獄カンチャンとか、変な待ちばっかりする人で」
「しかも対局の間に、色々口説いてくるらしいんですよ、その人」

京太郎「………………へー」

京太郎(なにやってだ、あの人……)

「というわけで――これ、プリントアウトした牌譜なんですけど、ぜひご意見を」

京太郎「変わった人の行動は、頭の片隅に置いとけばよし。以上」

「えー、なんかつめたーい」
「ごむたいなー」
「もしかして知ってる人ですかー?」

京太郎「そ、そそそそ、そんなわわ、わけないだろっ、ははは」

「…………」
「…………」
「…………」

京太郎「さて、今日もしっかり朝練するかなー、頑張るぞい」

京太郎「……いやー、だからな? 頭の片隅に覚えておいて、同じ気配を感じたら、悪待ちを疑えばいいんだって」

「悪待ち?」

京太郎「そういう分の悪い待ちな。で、気配がなきゃ普通の対応だ。そうでないと、翻弄されて普通の相手にも勝てなくなる」

「うーん……じゃあ昨日のこれは、運が悪かったってことですか?」

京太郎「まぁそうだな……ただ、二回三回と同じことされてるから、この二回目の時点で逆手に取る機転は欲しいところかな」

「そこで逆手の逆手を取られたら?」

京太郎「相手がうまかったと諦めろ」

「ぶー」

京太郎「悪待ちなんてする人は、基本的にまともに相手はできないってことだ。牌より相手見て対応、これに尽きる」

「経験則ですかー?」

京太郎「ノーコメント。はい、そんじゃちょっと悪待ちやってみるから、卓つけー」

「言ったら悪待ちにならないわけですが、それは……」

京太郎「すると言ったからってするとは限らんぞー」

「ずっる!」
「あー、調子崩しそう……」

京太郎「わかったわかった、ちゃんと悪待ちしてやるから。そのときにどんな感じがあるか、身体で覚えとけー」

「はーい」
「身体に覚えさせるとか……いやらしい……」

京太郎「どーせいっつーんじゃ」



~お昼

京太郎「さすがに終業式直前だな、授業が楽だ……おかげで内職も捗るぜ」

モブ子「なにしてたん?」

京太郎「おお、久々だな……まぁなにってこともない、本読んでただけだよ」

モブ子「おお、エロいのか。あとで回してよ」

京太郎「読むかぁ! 語学のテキストだよ、おらぁ!」

モブ子「ひいっ、勉強の本はやめちくり~」スタタタッ

京太郎「ふっ、勝った……って、あれ? 俺の弁当が――」

モブ子「ふふん、こいつはいただいてくぜ」

京太郎「なっ――ま、待てこらあああああああ!」

モブ子「待てと言われて待つやつがいるかぁ!」ガツガツガツッ

京太郎「走りながら食ってんじゃねええええ!」

モブ子「わはははは――んぐっっ!? げほっ、ごほっ……き、気管に……ぐふっ」

京太郎「弁当箱に吐くなっ!」

京太郎「くそぉ、俺の弁当が……」

煌「おや京太郎くん、珍しい。食堂ですか」

京太郎「煌先輩、お疲れさまです。まぁ食堂は結構きてますよ、面白いメニューがありますから」

煌「なるほど。ということは今日も、そのメニュー制覇ですか」

京太郎「ま、そんなところです――それだけでもないんですけど」

「おー、らっしゃい、お兄ちゃん。今日は弁当なしかい」

京太郎「はは……弁当泥棒が出ましてね、今日は。んじゃ、とり天つき焼きラーメンお願いします」

煌「え、なんですか、そのメニューは」

「あいよ、とり天焼きラー一丁!」

煌「ほ、本当にあるんですね……でもメニューにはありませんよ?」

京太郎「隠しメニューらしいです。哩さんに教えてもらいました」

煌「部長――あいえ、白水先輩にですか」

京太郎「ええ。ほかにも色々聞いてまして、それでよく来てたんです」

煌「なるほど、合点がいきました」

「へい、お待たせぇ!」

京太郎「あ、ども……へぇ、これが焼きラーメン。しかもトッピングだけじゃなく、具材としても刻んだとり天が入ってる……」

煌「ソースになったスープの香りが、これまたおいしそうですねぇ……」

京太郎「……先輩、よろしければ一口いかがですか?」

煌「へ? い、いえそんな、後輩のモノを取り上げるなんてことは、さすがに……」

京太郎「味見くらいでそんな風に思いませんって……さ、どうぞ」アーン

煌「~~~~~っっ!? じ、自分でいただきますのでっ、ええ!」

京太郎「そうですか……」シュン

煌「で、では失礼して……いただきます」チュルッ

煌「ん……へぇ、これはおいしいです。味が濃いのかと思いきや、意外にもすっきりしていて……ですが、とり天自体がよい味を染ませてあって、絡み合うと旨さが跳ね上がりますよ」

京太郎「おお、期待できますね……んじゃ、俺も」ズルッ

煌「へ――」

京太郎「おおっ、うまい! このとり天だけでもご飯が進むってのに、麺を食っててもさらに欲しくなっちまうっ!」ガツガツガツッ

煌(わ、わわ――私が使った箸をそのままぁ――っっ!?)

京太郎「これはうまいっ……すいませんっ、おかわりお願いしますっ!」

煌(……しかも、本人まるで気にしてませんし……)ハァ

京太郎「あれ――先輩、どうされました?」

煌「いえ、なんでもありませんよ。よほどお腹が空いてたんですね、そんなにがっついて」クスクスッ

京太郎「おっと……すいません、みっともないとこを」

煌「いえいえ、男の子らしくてよろしいかと。よければ、しばらく見ていていいですか?」

京太郎「え、ええ、まぁ……なんか恥ずかしいんですけど」

煌「まーまー気にせず……さ、お茶をどうぞ」

京太郎「っと、すいませんっ……先輩にお茶くみなんて」

煌「日頃はしていただいてますからね、たまには。一口分のお礼ということで」

京太郎「そうですか。では遠慮なく……ん、うまいっす」

煌「それはなによりです」ニッコリ



~放課後、部室

京太郎「――さて、部活なわけですが」

姫子「そやねぇ、部活よ」

京太郎「……あの、なんか行動が束縛されてません?」

煌「そりゃあ、来月はもう全国大会ですからね……しっかり練習してもらおうと、こちらも警戒しているんですよ」

京太郎「警戒!?」

姫子「隙あらば色々動きたがるけんねぇ、京太郎は……今週と来週は、最低でも半分は卓についといてもらわんと」

京太郎「だ、大丈夫ですって、ちゃんと打ちますから……」

煌「ええ、ぜひそうお願いします。京太郎くんだけでなく、後輩たちの練習にもなるんですからね。もちろん、私たちもですが」

京太郎「う……はい、わかりました」

姫子「うん、素直が一番よ。そいじゃ、練習始めよか」

京太郎「うぃーす」

 ※最低一度は対局が行われます

京太郎「――まぁでも、確かに大会前ですからね、練習はしておかないと」

姫子「……うん」

京太郎「お、俺もそう考えていましてね……で、練習にご協力願えないかと、各方面を当たってみたわけでして――」

煌「事前に言っておいてください」

京太郎「はい」

姫子「――あ、もう大丈夫ですけん。説教のほうば、終わりましたんで」

理沙「ごめんね?」

煌「いえいえ、野依プロに落ち度はございません。むしろお忙しい中で時間を割いていただき、ありがたい限りです」

理沙「――がんばろう!」

姫子「そいない、私は部員に通達してきますけん。野依プロは京太郎の面倒ば見てもろて、それからレギュラー、二軍上位、の順にご指導いただけましたら」

理沙「よろしく!」

理沙「……ごめんね?」

京太郎「いえ、俺が伝え忘れたということにしておいたほうが、丸く収まりますから」

理沙「もっと早くできたら……」

京太郎「まぁ理沙さんが時間浮いたのも、お昼過ぎてからの、突発的なタイミングでしたからね、仕方ないですよ」

京太郎「けど、理沙さんは大丈夫なんですか? 連休から何回も、こちらに来ていただいてますけど」

理沙「今月中なら……」

京太郎「そうですか――では、お言葉に甘えて、本日もお願いいたします」

理沙「はい――よろしく、お願いしますっ」

京太郎「――つまり、こういうことですよね? っていうか、これが俺の限界なんですけど……」

理沙「ん、完璧!」

京太郎「よかった……しっかし、防御率キープはかなり神経使いますね」

理沙「大事!」

京太郎「あー、それはわかってるんですけど……結局は上がらなきゃいけない、それを保った上で絶対に振らないっていう、バランスがなぁ……」

理沙「あとは経験!」

京太郎「……ですね。では、もう少しお願いします、さっきより厳しいとこでお願いできましたら」

理沙「望むところ!」

京太郎「……しかし、こういう防御面は、専門の人じゃないと教えにくいですよね」

理沙「そう?」

京太郎「俺もいろんな方に教わってますけど、防御面でのご指導は、理沙さんと大沼プロだけですよ」

京太郎「どっちも抜群にわかりやすくて……大沼プロは、さらに厳しい感じでしたけど」

理沙「光栄っ」フフッ

京太郎「大沼プロと一緒、っていうのがですか?」

理沙「そう! もっと頑張る!」

京太郎「……理沙さんは、あんまり厳しくなさらないでくださいね?」

理沙「努力するっ」

京太郎「はは……それじゃ、俺もついていけるよう、努力しますので」


~部活、後半

京太郎「――理沙さん」

理沙「なに?」

京太郎「この……今回みたいな、ご指導いただいたことなんですけど、後輩たちに教えるとき、活用させていただいて大丈夫ですか?」

理沙「いい!」b

京太郎「ありがとうございます……では、後輩たちの防御指導もしっかりやっていきますので」

理沙「よろしく!」

京太郎「はい。さて、それじゃ俺は、差し入れでも――」

姫子「待たんね」ガシッ

京太郎「」

煌「おかしいですねぇ……部活が始まる前に、言っておいたかと思うのですが」

京太郎「も、もちろん覚えてますって……はは……」

姫子「んむ。さっそく、相手ば選んでもらうとしよか」

煌「もう少ししたら、先輩方も顔をだされるそうなので。それからにしても構いませんが」

京太郎「わかりました。では、それまでに差し入れの準備を――」

二人『………………』

京太郎「じょ、冗談ですって……っと、それよりどうして、先輩方が?」

煌「合宿に来られなかったから、とのことです……救済措置でしょう」

姫子「あとは、うちは選手不足やけんね……対局人数稼ぎやろ」

京太郎「なるほど……」

京太郎「それでは――理沙さんにも入っていただいて、姫子先輩、煌先輩と打たせていただければと」

理沙「構わない!」

姫子「私も、そいで構わんと」

煌「トッププロと打てるなんて、またとない機会! もちろんご一緒しますとも!」

理沙「本気で!」

京太郎「えーっと、それは――」

京太郎「それは――」

姫子「――当然やなかですか。本気のプロと打たんで、私らも成長なんてできませんけん」

煌「ええ、その通りです、姫子。野依プロ、全力でお願いいたします」

理沙「――ん?」

京太郎「……はい。そういうことで、お願いできましたら」

理沙「了解! すぅ……はぁ……」ゴッ

京太郎(おぉ、さすがの迫力……うまく対応しないと、軽く飛ばされそうだ)

理沙(……やっぱり、例の鏡の反応は……あるみたい)ググッ

理沙「……半荘?」

京太郎「んー、どうしましょうか」

京太郎「――では、半荘でお願いします」

理沙「了解!」

姫子「さて……トップば取れたら、京太郎にはなんばしてもらおうか……」

京太郎「!? き、聞いてないんですけど……」

煌「大丈夫ですよ。京太郎くんが勝てばいいんですから」

京太郎「そ、そうですよね……ってなんか違う!? 普通は俺が勝てば反対に――とかじゃないんですか!」

姫子「いやん、もう……私になんばさせようち考えとるん?」

理沙「ハレンチ!」プンプンッ

京太郎「誤解ですよ!? ああ、もういいです! そういうことなら、マジで負けませんからね!」

理沙(……煽り上手!)

姫子(放っといても、真面目には打ってたち思いますけどね)

煌(本気の野依プロはもちろん、本気の京太郎くんというのも、見てみたかったんです――)


理沙25000→28900
姫子25000→23700
煌25000→23700
京太郎25000→23700


理沙「――ツモ、1300オール」

姫子「ファッ!?」

煌「まだ三巡なんですが……」

京太郎「これはまた……やばいな、追いつけるかな……」

理沙「しっかり!」

京太郎「――はい! 負けません!」キリッ

理沙「よし!」ニッコリ

煌「驚きました……案外と体育会系なのですね」

姫子「そりゃあもう、新道寺OGやけん、当然よ」

煌「……納得です」


理沙25000→28900→47600
姫子25000→23700
煌25000→23700→5000
京太郎25000→23700


理沙「……惜しい」

煌「っ……あ、危ない……ですが、もう少しだけお付き合いいただきますよ」

姫子「さすが、頼れるうちの先鋒よ」

京太郎「煌先輩が飛ばないっていうのは、本当なんですね……」

姫子「飛ばしてやりたい――いう顔ばしとる?」

京太郎「えっ、し、してないですよねっ?」

姫子「さぁどうやろ、京太郎はドSやちいうんが、通説になっとるけん」

京太郎「そんなことないですからっ!」

理沙(…………あるっ……)

煌(はぁー……しかし、なにやら違和感がありますね……生き残ろうとはしているのですが、こう……そうはさせまいとする、奇妙な感覚が……)

理沙25000→28900→47600→63600
姫子25000→23700→15700
煌25000→23700→5000
京太郎25000→23700→15700


理沙(……守りが硬い、この子……健夜さんが言ってた通り……)

煌「はぁっ、はぁっ……」

京太郎「大丈夫ですか、煌先輩?」

煌「ふふっ、人の心配をしている場合ですか?」

姫子「そうやね……このまま手も足もだせず、蹂躙されるんもつまらんと――」

京太郎「――ですね。なんとか一矢……」

理沙「さぁ、ラスト――」


点数処理省略


京太郎「ああ、ありがとうございました……くっ、ラス親で差が……」

姫子「どっちにしろ、完敗やったばい……はぁー、疲れたぁ……」

煌「ありがとうございました……いい勉強をさせていただきましたっ、すばらです!」

理沙「お疲れさま!」

京太郎「お疲れさまです……さすがに、プロの壁は厚いですね……」

理沙「当然!」

京太郎「精進します……」

京太郎(こんな人たちがいるんだ、俺がプロになんて、まだまだ烏滸がましい……もっと、もっと強く――)

理沙(……やりすぎたかも……なんとなく、新しい魔王が……育ってるような……)ゾクッ



~7月第三週月曜、夕方

京太郎「――そろそろ下校ですね。片づけましょうか」

姫子「そやね……ん~~~、今日も疲れたとぉ」グッ

京太郎(――あの膨らみ、C……いや、Dか……)キリッ

煌「なんて顔をしてるんでしょうねえ、あなたは」

京太郎「ど、どんな顔でしょう」

理沙「こんな」ミラー

京太郎「お、おかしい……引き締めていたつもりなのに」

煌「考えていることが手に取るようにわかる顔ですよ、まったく……」

理沙「だらしない!」プンプンッ

姫子「んー? なんかあったと?」

京太郎「な、なんでもありません! 片づけますので、先輩方は、どうぞお先に!」

煌「ではあなたもですね」グイッ

京太郎「なぜぇ!?」

姫子「野依プロの見送りばせんといかんやろ」

京太郎「っと、そうでした……では理沙さん、本日もありがとうございました」

理沙「こちらこそ!」

京太郎「えーっと、お車……ですよね?」

理沙「そう!」

京太郎「でしたら、駐車場までお見送りを」

理沙「送ろうか?」

姫子「――っ!」

煌「あらあら」

京太郎「いえ、そこまではご迷惑ですので。お気持ち、ありがたくちょうだいしておきます……どうぞまっすぐお帰りになって、ゆっくりと休まれてください」

理沙「ん!」

京太郎「では参りましょう。お荷物、お持ちいたします」スッ

理沙「あ、ありがとう」トトトッ

姫子「うむぅ……なんちゅうか、微笑ましかなぁ……」

煌「年の離れた、弟のほうが随分大きく育った姉弟という感じですねぇ」

京太郎「理沙さんはまっすぐ帰っていって――」

京太郎「俺はあのあと戻って五分ほど掃除して、部員を駅と寮まで見送って――」

京太郎「で、家につきましたとさ。今日は色々と、反省するとこが多かったな……」

京太郎「まぁ――前みたいに気絶はしなかったし、ちょっとは成長してるか?」

京太郎「さて、今日はこれからどうするか……」

京太郎「そうだな――学校ではあんまり料理できなかったし、修練も兼ねて、レシピ開発といくか」

姫子「あんまり!?」

煌「そりゃあ……あなたが練習中に摘んでいたお菓子、どこから出てきたと思います?」

姫子「はっ……い、いつの間に……」

煌「その辺りが、私たちにもよくわからないんですよねぇ……」

京太郎「できれば合宿中に、あいつらにも協力してほしかったんだが……こまちゃんのこととか、色々あったしな」

京太郎「ま、どのみちこれは、俺一人で完成させなきゃいけないことだ――さて、やるか」

京太郎「果物はなし――だけど、アレンジとしては可能なように、作っておいて……」

京太郎「トッピングにしてもよし、ジュレにして混ぜてもよし、クリームに合わせてもよし――」

京太郎「……どうせなら、味のバリエも増やしてみるか」

京太郎「生クリームだけでなく、カスタードやチョコ……好みでわけられるほうが、たぶん望まれるだろうな……」カチャカチャ

京太郎「完成まではまだ時間かかりそうだが、その分、誰にでも作れて、満足できるものにしたい……よし、頑張ろう」


~月曜、終了



その前に、夜の電話

~洋榎誕生日

モーイッポフーミダセルー
京太郎「ん? 電話、いったい――はい、もしもし」

洋榎『あ、ようやっと出よったなぁ? 何回かけたと思てんねん』

京太郎「マジですか、すいません……って、着信なかったんですけど」

洋榎『まぁそうやろなぁ、いまかけたとこやし』

京太郎「……すいません、忙しいんで、またでいいですか?」

洋榎『えっ、ご、ごめん……いや、すまんな。学校終わるまで待ってたら、忘れてしもて……いまええか?』

京太郎「はぁ、大丈夫ですけど」

洋榎『そやなぁ……まずは色々言いたいんやけど、これはキヌと間違うたわけやないんやな?』

京太郎「は? 絹恵さんとって――あっ」

洋榎『思い当たることはある、と……つまり、送り主は嘘やないわけか』

京太郎「ああ、はい。洋榎さん宛てに、お荷物をお送りしています」

洋榎『んー……つまり、これは……そういうことか?』

京太郎「お誕生日、おめでとうございます。度の入ってない、いわゆるファッショングラス――おしゃれ用の眼鏡ですけど」

洋榎『え……あ、ほんまや。普通に見えるわ』

京太郎「かけてなかったんですね……」

洋榎『うわ、やっば! めっちゃ似合うやん、これはやばいな……うちの知的なとこまで、テレビでお披露目してまうかもしれんわ』

京太郎「実際のとこ、先輩の解説は……脱線することも多いですけど、基本的にわかりやすいんですよね。理詰めですし」

洋榎『せやろー、さすがやろー?』

京太郎「ええ。ですから、そういった眼鏡をかけての解説は、もっと注目度が上がるんじゃないかと」

京太郎「あと――眼鏡、お似合いかと思いましたので」

洋榎『はは、そらおーきに……いや、しかしほんまやで。めっちゃ似合うわー、これは』

京太郎「え、そんなにですか?」

洋榎『なんや? そう思て贈ってくれたんちゃうん?』

京太郎「あくまで想像ですからね、実物を見ないと、確証はありませんよ」

京太郎「見てみたいなー、洋榎さんが眼鏡かけてるとこ、美人だろうなー」

洋榎『…………え、そんなに見たい?』

京太郎「ぜひに!!」

洋榎『お、おう、そうか……んー、そんならしゃーないな』

京太郎「ええ、ぜひ写真を――」

洋榎『明後日、大阪ダービーの三日目やから、そんときこっち来ぃや』

京太郎「――――はい?」

洋榎『せやから明後日、木曜や。ダービー三日目、優勝も競っとる最高のタイミングやからな』

京太郎「え、えっ、ちょっと待ってください! シーズン継続中でしたっけ?」

洋榎『予選、本選で解説の仕事入る、その間のセミシーズンやで。セミもぎょーさんおるからなぁ』

京太郎「…………はぁ」

洋榎『……うん、いまのはなしやな。まぁそれは置いといてや』

京太郎「いや、でも急にそんな――」

洋榎『夏休みやし、かまへんやろ』

京太郎「え……あ、そういえば」

洋榎『午前練だけやって、そのあとこっち来たらええわ。その予定でホテルとって、新幹線のチケと一緒に、試合のチケット送っといたるわな』

京太郎「ま、待ってくださいって! それにそんなの悪いですよっ」

洋榎『なに言うてんねーん、うちの眼鏡かけたとこ見たい言うたんは、京太郎やろ。いまさら照れなやー』

京太郎「そ、そんなつもりでは……写真で送っていただければなー、と思ったくらいで」

洋榎『はぁー、写真? そんなんあかん、うちの美貌の半分も伝わらんやろ』

京太郎「それは確かにそうですけど……」

洋榎『………………』

京太郎「あれ、洋榎先輩?」

洋榎『あ、ああ、うん……そ、そうやろ? せやから、直接見に来たらええがな、っちゅうことや。チケットもこっちから手配したほうが、安ぅ上がるし、な?』

京太郎「そ、そうかもしれませんけど――」

洋榎『……あかんか? 忙しいか?』

京太郎「……洋榎先輩の負担でなければ、ぜひお願いします」

洋榎『そか!』パァァッ

京太郎「先輩の試合、生では見たことありませんでしたからね……楽しみです、とても」

洋榎『せやろー? 任しときや、リングサイドかぶりつきで見せたるから』

京太郎「いや、そんな席ないでしょう……」

洋榎『まー、そこまで近うはなくても、ええ席用意しといたるからな。期待しとりやー』

京太郎「はい、ありがとうございます――で、その……そちらではぜひ、写真を――」

洋榎『っと、そうと決まったら、いまからチケット手配せんと。なぁーっ、チーフー! 前言うてたチケット、まだいけるかーっ?』

洋榎『おっと……そういうことやから、京太郎! またな! あ、眼鏡はおーきに、大事にすんで』

京太郎「あ、はい、お疲れさまです――切るのはやっ」

京太郎「まぁ確かに、学校は休みなんだけど……まさか大阪行くことになるとはなぁ」

~今度こそ、月曜終了



~二年目7月第三週火曜

~朝

京太郎「……とりあえず、木曜のことは言っとかないとなー」

京太郎「けど、大阪と天王寺の試合は楽しみだ……洋榎先輩とセーラ先輩、どっちも見られるわけだしな」

京太郎「相手は――おっと、そろそろ学校の時間か。急がないと」

京太郎「ルーラじゃないから! 練習描写を濃くするだけだから!」

「ど、どうしたんですかっ」
「落ち着いて、京ちゃん先輩!」
「ここは清澄じゃないんですから!」

京太郎「お前らは清澄をなんだと思ってんだ!」

姫子「しかし……登校中には全然会わんなぁ」

煌「それでいて、哩先輩とはよく電話しているそうですし……年上が好きというのは本当なんですねぇ」

姫子「……私らも年上やけど」

煌「おっと、そうでした。まぁ具体的に、二学年上が好みなのでは?」

姫子「あー……先輩だけやなく、竹井や宮永照もそうやけんなぁ……あり得るかもしれん」

京太郎(妙な誤解を招いてる!?)

「先輩、そうなんですか……」
「うちらとのことは、遊びやったとね……」
「つらかぁ……」

京太郎「お前らはさっさと練習の準備」

『はーい』

京太郎「はぁ、まったく……」

京太郎「あ、先輩――昨日の対局のことで、ちょっとよろしいですか?」

煌「へ――私に、ですか?」

京太郎「はい。理沙さんの直撃をあれだけ受けたのに、ギリギリで残ってましたからね……そのあたりの秘訣を、お伺いできればと」

煌「なるほど……とはいっても、技術的なことではありませんよ。私は打ち手としては平凡ですからね、気持ちの持ちようだと思います」

京太郎「構いません。というよりは、先輩のメンタルの強さを、参考にさせていただきたいと……ぜひ、お願いします」

煌「そうですか、わかりました。では、私が普段から心がけていることなどから、指導していきましょうか」

京太郎「はい、お願いします」

煌「――と、いうのが基本でしょうね。あとは――おや、どうしました?」

京太郎「……いえ、なんでも……ただ、先輩が眩しすぎて……」

煌「そ、そうですか……普通のことだと思うのですが」

京太郎「目がぁ――――っっ!!」

姫子「京太郎、しっかりぃ――っっ!」

煌「なんなんですか、まったく……」

 ――ぐう聖すぎて、真似は無理らしいです。




~昼

京太郎「――ということで、俺も一日十善は不可能でも、一善くらいはと思った!」

モブ子「ほーん、で?」

京太郎「クラスのみんなに、昼のお菓子を差し入れできればと!」ズラァッ

モブ子「ようやったで須藤!」

京太郎「須賀です」

「え、これ食べてもよかと?」
「やぁん、嬉しかぁ♪」
「京ちゃんのお菓子、すんごいおいしいもんねぇ」

京太郎「ああ、どんどん食ってくれ。で、できれば感想もくれると助かる」

モブ子「あますぎず、十分に甘く、それでいてしつこくなく、いくつでも食べたくなる――まさに無限の菓製」

京太郎「お前は食いすぎだ。カロリー控えめだっていっても、限度がある」

「えっ、カロリー控えめ!?」

京太郎「甘味をハチミツで調整してるから、砂糖よりはな。その辺の感想をもらえると嬉しいってことだ」

(やばい……)
(この気遣い……)
(まさしく神対応……)

京太郎「部活で作れない分、こういうとこで作っていかないとなー」

京太郎「――ということで、煌先輩もぜひ」

煌「……まぁ、そういうことでしたら、頂戴しますが」

「おいおい、京ちゃんよぉ? うちの店で営業かい?」

京太郎「あ、すいません……よろしければ、みなさんもどうぞ」

「あらまぁ、嬉しいよぉ」
「こんな若い子からプレゼントなんて、私らも捨てたもんじゃないねぇ」
「男の子の手料理なんて、息子からももらったことないわぁ」

「くっ、おばちゃんどもをあっさりと味方に……やるじゃねえか」

京太郎「料理長も食べてくださいよ、感想聞きたいですし……」

煌「ほむっ……これはいいですねぇ。独特の甘さが、すごく舌に馴染みます……そのおかげか、生地自体も非常に柔らかく、舌に蕩けるようですよ」

京太郎「ありがとうございます。どうぞ、こちらのお茶も合わせて、お楽しみください」スッ

「んふぅぅっっ!?」
「はっ、あぁっ……お、おいしぃぃ……」
「京ちゃんの、京ちゃんの味がするわぁ……」

「うおおおお!? おばちゃんどもが、なんかこう、放送できない状態になってる!? おい京ちゃん、どうなってんだこりゃあ!」

京太郎「仕様です」

「意味が分からんぞ!?」

煌「まぁ直に治りますよ……すいません京太郎くん、もう一つよろしいですか?」

京太郎「ええ、もちろん。煌さんに喜んでいただけるなら、焼いた甲斐がありました」ニッコリ

煌「では遠慮なく……ふむぅ、絶妙! これはクセになってしまいますねぇ、ありがとうございます、京太郎くん」

京太郎「――恐縮です」



~放課後

京太郎「――さて、今日も元気に部活だ!」

「きょーおちゃーんせーんぱいっ♪」
「甘いものくーださい♪」

京太郎「おう、食え食え!」ザラァッ

「わぁい♪」
「いたらきまーふ」サクッ
「んぉいひぃぃっっっ!!」ビビクンッ

姫子「……まったく、そうやってあっちこっちにいい顔してからにっ」プンッ

煌「まぁそう言わずに、姫子もお食べなさいよ」

姫子「……き、煌も同罪やけん! あんな場所で、見せつけるみたくっ……」ギリギリッ

煌「はぁ……偶然会って、ご馳走になっただけなんですが……というかですね、姫子」

姫子「なんね」

煌「いや……あの子たちみたいに、可愛くおねだりすればいいじゃないですか」

姫子「せ、先輩がっ……しかも部長ん私が! そんな恥ずかしかこと――」

煌「姫子みたいな可愛い子に頼まれれば、京太郎くんなら新しく焼いてくるくらい、しそうなものですけどねぇ」

姫子「こと――ば……できっと……できっとぉ……」モジッ

煌「ほら、言ってる間になくなりそうですよ」ポンッ

姫子「――きょ、京太郎ぉぉ~~~~~っっっ!!!」

京太郎「うおっっ! す、すいませんっ、部活前にこんな――」

姫子「うぅ……わ、私の分も……用意して欲しかぁ」ウルッ

京太郎「」

京太郎「す――すぐに焼いて参りますううううううううううっっ!!」ダッシュ

姫子「あ、きょうた――行ってしもた」

京太郎「お待たせしました!!」ヒュンッ

姫子「――っっ!?」

京太郎「どうぞ――焼きたてのマカロンです。ちなみにこの黄色いのは、カレー風味です」

姫子「あ、ああ……えっ、カレー!? なんで!?」

京太郎「女の子は砂糖とスパイスでできてるそうですから――双方のご用意を」

姫子「きょ、京太郎ぉ……」トゥンク

煌(え、ときめくとこですか!? あと、なぜにマザーグース……)

京太郎「さて、お茶も行き渡ったし――俺も部活するかなー」

煌「はやくなさい」

京太郎「は、はいぃっ!」

煌「……一応言っておくと、怒ってるわけではありませんからね? ちゃんと練習してくれれば、私も安心できるというだけです」

京太郎「お、押忍!」

京太郎「――ってことで、どうするかな」

京太郎「――ん? 電話?」

姫子「まさか……」

煌「またですか、京太郎くん……事前に言うようにと――」

京太郎「ち、違いますって! 今回はなにも聞いて――と、とにかくすいませんっ、出させてくださいっ」

煌「はぁ……まぁ、先方に失礼があれば、うちの信用に関わりますからね」

姫子「というか、ナチュラルにプロからかかってくるいうんは、どげんなっとぉ……」

煌「まぁ京太郎くんですから……」

姫子「やなぁ……」

京太郎(聞こえない、聞こえない)

京太郎「っと……はい、もしもし」

京太郎「――お疲れさまです、理沙さん」

理沙『お、お疲れっ……』

京太郎「えーっと、理沙さんは試合がないですから……こちらに来られる、とか――」

理沙『じゃ、なくて……その……』

京太郎「――収録、でしょうか?」

理沙『う、うぅ……ごめんっ……』

京太郎「いえ……いえ、大丈夫です。理沙さんにはいつもお世話になっていますから、ぜひとも協力させてください」

理沙『……ごめんね』

京太郎「そこは、ごめんじゃないですよ、理沙さん」

理沙『……ありがとっ』

京太郎「はい、どういたしまして――それで、どうしましょう。福岡まで出ますか?」

理沙『だ、大丈夫! すぐに――』

京太郎「ああ、通訳の覚さんがお見えになるんですね……わかりました、準備してお待ちしております」

理沙『あ、ありがとうっ』

京太郎「ええ。では、のちほど……ふぅ」

京太郎「――ということで、あとでまた、お仕事行ってまいります!」

煌「……あまり言いたくはありませんが――」

姫子「こんタイミングやと、断るんも手やなかか? 練習の量ば少なかなっと、試合にも影響が――」

煌「引いては、酷使した野依プロの責任問題にも……」

京太郎「だ、大丈夫ですっ……ちゃんとカバーしますからっ」アセッ

姫子「やったらよかやけど……そいない、練習ばしよか」

京太郎「あ、はい。お願いします」

仁美「おっす」ジュゴー

京太郎「お、お疲れさまです……あの、なぜ仁美先輩が?」

姫子「なんか、講義が空いて、暇んなったとかで――」

煌「さっきまで、二年生の指導をお願いしていたのですが――京太郎くんが電話を終えたと知って、戻っていらっしゃったようですね」

仁美「私もあとで大学の練習ばあっし、その前に京太郎と打っときたか。よかとやろ?」ジュゴー

京太郎「もちろんです――あの、お茶お淹れしましょうか?」

煌「いけません。あのジュースがないと、先輩は干乾びてしまいますから」

仁美「!?」

姫子「それに京太郎も予定ば入ったとやろ。時間もなかけん、すぐ打たんと」

京太郎「わ、わかりました……では、お願いします」

京太郎(ちょっと抑えて……その上で、全員を上回る――)

京太郎「んー、時間は……」

姫子「仕事のほうはどうすっと?」

煌「すぐに来られそうなら、東風戦にしておきましょうか?」

京太郎「そう、ですねぇ……」

京太郎「すいません。それでは念のため、東風戦にしておきます」

煌「ええ、構いません。それでは、よろしくお願いします」

姫子「よろしくお願いします」

仁美「よろー」

京太郎(さて――仁美先輩は、どんな打ち方をされるのか……)

仁美(熱か視線ば感じっと……っ)

姫子(東風戦なら、私にも勝ち目があっか……うん、いける!)

煌(どうも、京太郎くんから嫌な感じを受けますね……なるべく、直撃は避けたいところですが……)

姫子25000→
煌25000→22400
仁美25000→27600
京太郎25000→


仁美「ロン――煌は周囲を窺いすぎよ。もっと自分の牌に集中ばして、守るだけやなく上がる気配も見せていかんと」

煌「は、はいっ、すいませんっ!」

京太郎(お見事……かつ、助言も鋭い……あれ、もしかしてすごい人?)

仁美(こ、これはかっこよかとこ見せられたっ……)

姫子(ぐぬぬぬぬぬっ……お、OGにこれ以上見せ場はっ……)


姫子25000→21800
煌25000→2240019200
仁美25000→27600→24400
京太郎25000→34600 トップ


京太郎「ツモ――3200オール、逆転ですね。ありがとうございました」

仁美「」

姫子「さすが京太郎……わざと上がらせて喜ばせて、そこから叩き落とすと――」

京太郎「え、ちがっ……」

煌「噂に違わぬ、ですね――いやはや、しかし勉強になりましたよ。ありがとうございました」

京太郎「なんのですか!? ほ、本当に違うんですって――」

煌「あら? いま校門のほうからライトが――お迎えが来られたのではないですか?」

姫子「おお、そりゃいかんと。はよう準備ばせんと、急がんね、京太郎」

京太郎「あ、は、はいっ……あの、でもわざととかでは――」

仁美「な、なんもかんも……政治が悪い……」ズーン

京太郎「先ぱあああああああああい!?」

京太郎「わざとじゃないのに……」グスッ

「なにを仰ってるかわかりませんが、行ってもよろしいので?」

京太郎「ええ、お願いします――あ、今回の仕事は?」

「前半はいつも通りリハーサルを。そして夜からは本収録、こちらは二本」

京太郎「二本!?」

「同一番組ですが、出番が二回ということですね。一つは料理対決……」

京太郎「また!?」

「洋食のプロと対決です」

京太郎「しかもプロ!?」

「まぁとはいえ、メニューは決まっていましてね……どっ○の料理ショーみたいなアレです」

京太郎「あ、ああ、特選素材とか見せるやつですね……っていうか、なんで俺と……」

「福岡、大分、広島、岡山、高知から集まったヒマな――お手隙なプロ雀士さんが、パネラーとなっていますので」

京太郎「知名度か腕かってことですね……」

「――っ! いえ、そういうことでは――」

京太郎「いいですよ……そういうことなら、師匠のためにも全力で、潰しにいきますから」ゴッ

(……ま、まぁ点火されたならよいでしょう)

「あ、ちなみに広島のアイドルさんはいらっしゃいませんので」

京太郎「はぁ、構いませんけど」

「あら、そうですか。アイドル雀士、お好きなのかと」

京太郎「俺が好きなアイドルははやりんだけです、あと三浦あずさ」

「いまの録音しましたけど、流していいですか?」

京太郎「消せこらぁっっ!!! いや、消してください、お願いします!」

「ん?」

京太郎「これから一仕事するってのに、さらになにさせようってんですか……」

「冗談です――さ、着きましたよ」

京太郎「あ、ありがとうございます――っと、その前に」

「はい?」

京太郎「料理のあとは、なにを?」

「――麻雀を」

京太郎「またですか……」

「今回のは、新人プロと最強男子高校生の、真剣勝負という企画です。あなたの戦績はそのまま――」

「男子高校麻雀の評価と直結します……そのことを意識しておいてください」

京太郎「――わかりました」

「では、よろしくお願いします……局の控室で、野依がお待ちですので」

京太郎「はい、では行ってきます。ありがとうございました」



~控室

京太郎「お疲れさまでーす……理沙さん」

理沙「――お、お疲れ!」

京太郎「今日もよろしくお願いします」

理沙「う、うんっ……ありがとっ」

京太郎「リハはみなさんいらっしゃるんですよね。楽屋ご挨拶、しておいたほうがいいでしょうか」

理沙「んっ……い、一緒に」

京太郎「はい、参りましょう――」


~別の楽屋

京太郎「失礼します」コンコンコン

「どうぞー」

京太郎「失礼します……本日、なぜか共演させていただくことになりました、須賀京太郎と申し――」

「派遣執事!」
「うそやだ本物!?」
「でっかい!」
「おっきい!」
「でもかわいい!」
「彼女いる!?」
「彼氏は!?」

京太郎「いねぇよ! いや、いませんって……っていうか、なんですか、その勢い!」

「プロ雀士は婚期が遅れるらしいのよっ」
「だから有望株にはいまから目をつけて、刈り取っておく!」
「お前は我々のカキタレになるのだ~」

京太郎(こ、この人たち……絶望的にダメだ……けど――)

プルンッ タプッ ムニュッ ムチッ

京太郎(――この感じはおそらく、大卒か社会人からのプロ……なんという色気!)グッ

理沙「………………」ジー

京太郎「……はっ!」

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最終更新:2026年01月19日 22:55