竜華「せやろちゃうわ!」
恭子「なにマジマジと観察しとんねん」
由子「あー、やっぱり意匠も大事なんやねー」メモメモ
京太郎「まぁ観察というわけではないですけど、洗濯方法くらいは調べないといけませんし」
怜「使用済みやったら大惨事やわ」
京太郎「一応、手袋はつけておりますので、ご安心を」
怜「……なんかばっちぃもんみたいにせんといてや、傷つくわ」
恭子「恥じらい捨てた罰やで」
怜「いやいや、捨ててへんて。京にしか見られへんやろから、安心して置いといたわけやし」
京太郎「そこで安心されても困るんですけど……まぁでも、俺を信頼してみなさん、部屋にお招きくださったわけですからね。それを裏切るようなことはいたしません」
竜華「さすがやわぁ……」
恭子(……なんか腑に落ちん)ムスー
怜「それに、ちゃんと見て可愛い言うてもろたわけやし、目的は達成やな」
京太郎「怜さんはもう少し、分別を弁えていただければと」
怜「お、おう……手厳しいな、ごめんやで」
京太郎「いえいえ。では、俺は洗濯のほう進めてきますので」
由子「うん――うん?」
竜華「え、結局洗うん?」
恭子「シーツのほうやろ……やろ?」
京太郎「えっ」
怜「上だけとはいえ、下着を手洗いされるんはちょっと……」
京太郎「………………」
京太郎「……着用はされてないんですよね?」
怜「まぁ、そらな」
京太郎「では、信用して部屋に戻しておきます。畳んでベッドに置いておきますので、あとで片づけておいてくださいね」
恭子「おお、洗う気ではおったんか……」
竜華「さすがやわぁ……」
由子「そこはさすがで片づけちゃだめなのよー」
恭子「まぁそっちは任せて、私らは料理に戻ろか」
京太郎「こっちは洗濯機回したら終わりですから、あとで手伝いにいきますよ」
由子「あとは炒めて、煮込んだら終わりやから大丈夫よー」
京太郎「了解です。では、煮込み中にスープのご用意を」
竜華「……ん?」
京太郎「あとはそうですね、簡単なサラダも作っておきましょうか」
恭子「…………負けた」
由子「か、カレーはカレーだけで終わったらあかんの……?」
怜「スープってどんなん?」
京太郎「エンドウ豆を裏ごしして、コンソメと合わせて冷製ポタージュにしようかと。カレーとの相性もいいですし」
怜「……完璧やな」
京太郎「ありがとうございます!」
恭子「ええ嫁になれそうやな……」
竜華「これ対抗できる女子おるんか……?」
由子「もう竜華の家で雇てあげたらええと思うのよー」
竜華「――っ!」
恭子「その手が、みたいな顔してんと。カレー仕上げんで」
恭子「――では、手を合わせましょう」
人 人 人 人 人
全員『いただきます!』
京太郎「んっ――おぉっ、うまいですっ!」
恭子「そ、そんなん市販のルーやし、普通やろ」
京太郎「はは、確かに。まぁ俺のスープも市販のコンソメですから、そうおかしな味にはならないと思います」
由子「……その口振り、普段は違うみたいなのよー」
京太郎「うーん、特別なときとか、仕込み時間があるときは、コンソメも作りますね」
竜華「どうやって……?」
京太郎「簡単に言うと、色々な具材でダシを取って、卵が熱で固まる効果を利用して、済んだ色に仕上げるんです」
怜「時間かかる?」
京太郎「まぁそれなりには」
由子「……教わるんなら、このポタージュの作り方でよさそうなのよー」
京太郎「具材をの裏ごしで手を抜かないことと、生クリームとコンソメスープの比率を間違えなければ、問題なく作れると思いますよ。レシピ置いておきます」
恭子「そうか……一人暮らし始める前に、そういうレシピ聞いといたらよかったんやな」
竜華「え、そんなん悪いやん」
京太郎「ふむ……じゃあ部長に掛け合って、そういうページも用意しておいてもらいます。あんな写真より、そっちのほうがいいですよ」
恭子「それは助かるなぁ」
怜(あれはあれでええんやけど)
竜華(言うたらショック受けそうやし、言わんとこか)
由子(なのよー)
京太郎「あ、そうだ。ちょっと事情がありまして、デザートのほうは無理なんですが……食事用の料理だけで大丈夫ですか?」
恭子「ええと思うけど……事情ってなに?」
由子「あれちゃうかな。師匠の人に、未熟者が人に教えるとは~みたいに言われたとか」
京太郎「まぁそんなとこです」
竜華「料理はええの? 料亭とか旅館の人らに教わったいうて……」
京太郎「その辺りの料理は載せませんからね。家庭料理の範囲だけで、簡単なものをチョイス予定です」
怜「その頭ン中、なにが入ってるんやろなぁ……」
恭子「家事のことしかないんちゃうかと疑いたなるな」
京太郎「い、色々考えてますよっ」
由子「女の子のこととかー?」
京太郎「」
竜華「お、おもちのこととか……」
京太郎「いや、ちがっ……」
怜「太もものこととか」
恭子「やらしい」
京太郎「違いますって、麻雀のこととかですよ!」
~食後
京太郎「うぅ、誰も信じてくれない……」
恭子「冗談やて、ごめんな」
由子「そういえば、今日は麻雀の試合見にきたんやったね」
京太郎「はい、天王寺の試合を」
怜「私らもチケットもろてんねんなぁ、これが」
京太郎「そうなんですか?」
竜華「うん。せっかくやし、一緒に行こうや」
京太郎「はい! あ、でも、応援席は違いますよね」
怜「おお、そういうたら」
恭子「洋榎がくれたやつは、天王寺側やわなぁ」
由子「で、竜華らは大阪側……」
竜華「!? 京太郎くんのこれっ、特別観覧席やん!」
恭子「……洋榎、張り込んだなぁ」
由子「よっぽど見に来てほしかったみたいなのよー」
京太郎(……そうなのか、洋榎先輩……ありがとうございます、しっかり応援しますのでっ)
怜「ふーむ、それやったら中では一緒におられへんな……」
京太郎「残念ですけどね」
竜華「まぁしゃーない……そういうことやったら、試合の時間まで、一緒に遊ぶしかないわな」
恭子「せやな」
京太郎「はい――って、待ってください!」
由子「どうしたんー?」
京太郎「あの、すっかりくつろいじゃってましたけど……大学のほう、そろそろテストの時期なのでは?」
恭子「――私らが、そんなん忘れて遊んでると思うか?」
京太郎「え、違うですか?」
由子「レポート類は提出済なのよー」
怜「試験も、あと2、3いうとこかなぁ」
竜華「早くに始まったから、わりと片づいてるんやで。残ったやつも、月末に寄ってるから今日は大丈夫や」
京太郎「そうですか……それならいいんですけど」
恭子「さて――洗いもんも終わったし、なにするか決めよか」
竜華「食べてすぐやし、ゆっくりしたいなぁ」
怜「映画とか?」
由子「どっかでお茶するいうんもありなのよー」
京太郎「ここではだめなんですか? すぐご用意できますけど」
恭子「光熱費抑えたいし、日中はなるべく、冷房効いたモールとかに行くんや」
京太郎「なるほど、確かに……」
竜華(あとは京太郎くん休ませたげたいしな)
怜「もしくは――プール」キランッ
恭子「ゆっくりはどこいってん」
京太郎「いいですね、プール!」
由子「食いついたのよー」
怜「ここ来る前に、エサ撒いといたからな」フッ
恭子「あんたほんま、どんだけ罠張ってんねんな……」
竜華「試合時間までやと、あんまり遊べへんけど」
京太郎「暑い時間だけ過ごせれば、それでいいんじゃないでしょうかっ」
恭子「めっちゃノリノリやで」
怜「引くわー」
由子「誰のせいなのよー」
竜華「うーん、まとまらへんな……とりあえず、多数決にしよか」
~幕間 原作158局にて 湧・明星登場
京太郎「……明星ちゃんはあれだな、まぁ元気っぽいとこは近いか」
明星「ありがとうございます!」
京太郎「……湧ちゃんどうしよう」
春「ツンデレっぽくしたのに、すごく気弱でおしとやかそう……」
湧「こ、この際ですから、原作のキャラクターに寄せていきましょう……」
京太郎「ここまでひたすらツンツンしてたのに180度転換は、キャラぶれとかいう以前に、情緒不安定に思われそうだな」
湧「で、でも、その……私は、そういう性格なわけですし……」
京太郎「………………」
初美「なんですか、その『こういう湧ちゃんもいけるやん!』みたいな顔はー」
小蒔「そ、そうなんですかっ、京くんっ!」
京太郎「なにも言ってないじゃないですか!」
霞「あとは巴ちゃんのおもちが、ちょこっとあるのが判明しちゃったわねぇ」
巴「ちょこっとは余計です!」
京太郎「と、とにかくあれです……湧ちゃんについては、少し態度を和らげていくということで……」
湧「はい、頑張ります」
京太郎(いけるやん!)
明星「私はどうしましょう」
京太郎「……あんまりはっちゃけすぎない、純粋な元気キャラでいこうか」
明星「穏乃さんと若干かぶりそうですけど、わかりましたっ」
怜「みんな、水着は持ったな! 行くで!」
京太郎「…………」
恭子「どないしたん、京太郎くん」
京太郎「いえ、まさかプール行くとは思ってなかったので……」
竜華「水着ないん?」
京太郎「ええ、そういうことです」
由子「あらー、ブーメラン見られへんのよー」
怜「うわ、恭子がめっちゃガッカリしてる」
恭子「してへんわ! 変なキャラづけすな!」
竜華「言うて、一緒にプールで遊べへんのもなぁ……」
由子「んー……あ、プールここにしよか。ここやったら、併設してる売店で買えたはずなのよー」
竜華「ほんまっ?」
怜「ゆーこ、有能」
恭子「うーん……私らはそれでもかまへんけど、京太郎くんはどうなん?」
京太郎「え? まぁ水着が手に入るなら、それでも――」
恭子「そうやなくて、言うたら買わんでもええもんを買うわけやし、無駄な出費やん?」
竜華「……そういうたら、京太郎くんも一人暮らしやしなぁ」
怜「ほな、うちらでカンパしよか」
京太郎「いやいや、さすがにそんな――」
怜「うちは100円までしかだせへんけど」
京太郎「えぇ……」
由子「全員で400円、小学生のお小遣いレベルなのよー」
京太郎(全員100円ですか!?)
恭子「あれやったら、やめとくけど?」
京太郎「いえ、それだと皆さんの水着が見られないので(大丈夫ですよ、水着はもう一着欲しかったので)」
怜「逆ゥー!」
恭子「ほんまはったおすで、あんた……」
京太郎「違うんです! マジで水着は欲しかったんですよ、もう一着別のが!」
竜華「そうなん? なんで?」
京太郎「俺としては普通のつもりだったんですが、どうもあの水着、あまり一般的ではないようなので……」
怜「あー、なるほど」
由子「だからええのにねー」
恭子「同意求めんといて。まぁそれやったらええけど……」
竜華「ほな、まず水着買いに行こか」
怜「オッケーや。そんならみんな、100円ずつこの封筒に入れてやー」
京太郎「いえ、ほんといいので……」
~売店
京太郎「広いですねー、ここ」
怜「できて2年ほどやから、設備も新しいし、人気のデートスポットやで」
竜華(次は二人で来られへんかなぁ……)
恭子「ちゃっちゃと買ってきぃ」
京太郎「うーっす」
由子「せっかくやし選んだげよか」
怜「ええな、乗ったわ」
竜華「なるほど……京太郎に似合うやつを選んで、好感度アップいうイベントか……」
恭子「――やて。どうなん?」
京太郎「プレッシャーすごいんですけど」
竜華「そうと決まったら、さっそく――」
怜「よっしゃ、うちはこれや!」バーンッ
竜華「なんでブーメランにしたん!?」
恭子「ブーメラン以外て言われてんのに」
怜「だってこれが一番似合いそうやし」
京太郎(おお、なんだこのメタリックなの、いいじゃん! すげーじゃん!)
由子「私はこれー」
竜華「あ、かっこええやん」
恭子「由子のファッションセンスは、ほんま頼りになるな」
京太郎(サーフショーツ、たぶんこれが妥当なとこだと思うけど……)
竜華「ほんなら、私は――あ、これにしよ」
恭子「ぶっ!」
由子「紐!?」
怜「グラディエーターいうやつか……横が紐んなってるメンズ水着て、初めて見たわ」
京太郎「あ、あの、竜華さん……さすがにこれは――」
竜華「見たい」ギンッ
京太郎「アッハイ」
恭子(気圧されとる……)
由子「さて、あとは恭子だけなのよー」
怜「どんなエグいん選ぶか、楽しみやな。トリやし」
恭子「勝負の方向性間違うてるで」
恭子(さて、どないしよか……キワモノ選んでもしゃーない、かといって無難なんもおもろないな……)
竜華「なにげにノリノリで探しとる」
由子「わくわくなのよー」
恭子「――お、これにしよ」ヒョイ
怜「ふーん、豹柄か……悪ぅないな」
竜華「ワイルドな感じでええやん」
京太郎「……この四つから選べと?」
四人『うん』
京太郎「………………はい」
京太郎「んー……それじゃコレにしますね」
怜「よっしゃ」
恭子「って、なんでまたそれやねん!」
京太郎「うぅ、すいません……けど、なぜかこれを選んでしまうんです……」
由子「ブーメランの呪いに縛られてるのよー」
竜華「グラディエーター……」
京太郎「そ、それはまたの機会に……」
恭子「海やったらともかく、レジャープールでこの水着て、ある意味ヘンタイやな」
京太郎「そこはそれ、パーカーも着てますし、なんとか……」
怜「まぁなんでもええやん。はよ行かんと、泳ぐ前に試合見に行かなあかん時間になるで」
恭子「おっと、そうやった」
由子「はー、京太郎くんに水着見られるん初めてやし、ちょっと緊張するのよー」
竜華「そ、そういうたらそうやな……」ソワソワ
怜「万が一がどうこういうて、処理は毎日してるし平気やろ」
竜華「ちょっ、なに言うてんの!?」
京太郎「それじゃー、俺はこっちなのでー」スルー
恭子(ややこしなるまえに逃げたな……)
由子「またあとでねー」
竜華「ま、またねー……ちょっと怜、どうするん! 京太郎に毛深い思われてしもたやろ!」
怜「そんなん思わへんて、京は」
恭子「むしろそっちが好きまであるな」
竜華「そ、そうかな……それやったらええねんけど……」
由子(ええんや)
~お着替え後
京太郎「とりあえず、休憩場所はキープして、っと……」
京太郎「怜さんの水着、楽しみだなぁ……はっ、いかんいかん!」
京太郎「邪な気持ちはない、あれは純粋に、似合いそうだから送っただけなんだ」キリッ
京太郎「……みなさんが来られるまで、お茶の支度でもしとくかなぁ」カチャカチャ
「なぁ見てや、あの子……」
「っっ……な、なんちゅう水着を……」
「すごい自信やな……っていうか、着るだけあるは……」
「はぁ、はぁ、ええ身体してるやん……」
「一人かなっ、声かけてみよかっ」
「複数連れや思うけど……さすがに彼女かなぁ、どうやろ……」
京太郎(……なんか注目集まってるような)
京太郎(プールサイドでお茶の準備は、さすがに目立つかぁ……)
「きょーおーちゃん♪」
京太郎「ん?」
「お待たせなのよー」
京太郎「あ、お疲れさまです。俺もいま来たとこなので――」
「それやったらよかったけど――」
京太郎「………………」
「ん、どないしたん?」
京太郎(て――――)
京太郎(天国かここはっ!?)
怜 フリルのついた白ワンピ、濡れると脇腹の生地が透ける
竜華 黒ビキニ、ショーツの端は紐で結んだデザイン
由子 オレンジのビキニ、ロングパレオ
恭子 ボーダーのホルターネックビキニ、パーカー
怜「ほれほれー、どうや? 京が選んでくれた水着やでー? あ、京のもうちが選んだやつやし、完璧やな」
京太郎(か、可憐だ……怜さんが怜さんじゃないみたいだ……)
怜「……なんや、失礼なこと思わんかったか?」
京太郎「滅相もございません」
竜華「な、なんか恥ずかしなぁ」モジモジ
京太郎(……なにも言うことはない。俺はもう、ここで死んでも悔いはない)キリッ
由子「むー、さすがに物量には敵わんのよー」
京太郎(チラリズムと脚線美……さすが由子先輩、よくわかっていらっしゃる――)
恭子「場所取りごくろーさん」
京太郎(スパッツもそうだったけど、恭子先輩は案外、スポーティな服が似合う……パーカーと相まって、まさに健康美って感じだな)ウンウン
恭子「なにを納得しとんねん……」
怜「まぁええやん、似合うとるってことやろ?」
竜華「そ、そうなん? よかったぁ……えへへ」
由子「さて、ほなお約束の――水着コンテストやね」
京太郎「ふぅ……えっ?」
怜「誰が一番かわいい?」ウフーン
京太郎「」
竜華「お、お遊びみたいなもんやから、気軽に選んでな?」
京太郎(ンな無茶な!)
恭子「あ、あんまジロジロ見なっ」
京太郎(どうしろと!?)
京太郎「……え、と……恭子先輩、ですかね」
恭子「な――」
竜華「むー……まぁ、しゃーないか」
怜「パーカーでうまいこと隠したんがそそったか……うちも羽織ればよかったな」
由子「姫松おったときも、偉い懐いとったもんねー。思い入れがちゃうんかなー」
恭子「そ、そそ、そんなことあらへんやろっ」カァァッ
京太郎「み、みなさんお似合いですよ、本当にっ」
怜「で、一番は恭子と……」
竜華「物量に頼っててもあかんか……もう一歩先に進まんと、勝てへんいうことやな……」
由子「ちなみにどこがよかったー?」
京太郎「その……自然な感じ、ですかね。恭子先輩自身、かなり悩んで選ばれたんでしょうけど……その選ばれた水着が、本当にハマってるって感じで」
京太郎「まさに、これしかないって気がしました……それで一目見た瞬間、思わず見惚れたと申しますか……」
恭子「~~~~~~~っっ!」
怜「おー、真っ赤になっとる」
由子「代行にスカート穿かされたときより恥ずかしがっとるのよー」
竜華「ま、負けへん、勝負はこれからやっ……」タプンッ
京太郎「…………」クルッ ジー
怜「めっちゃ欲望に素直や」
由子「結局はそうなのよー」
恭子「あ、あ、あんたなぁっ……」ブルブルブル
京太郎「――はっ! ち、違うんです、これはっ……」
このあと滅茶苦茶機嫌取った。
恭子「ほんまにっ、ほんまにあのアホはっ……」プンプンッ
由子「まーまー、男の子やししゃーないのよー」
怜「そうそう。うちらもまだ成長するし」
竜華「せやな」
由子「せやろか」
恭子「もう遅いやろ、さすがに……」
怜「希望を捨てん限り、可能性は無限大やで」
竜華「えらいかっこええな」
由子「それはともかく、せっかくやしプール入ろや」
恭子「……はぁ、そうやな。たしかここは、スライダーがおもろいて――」
京太郎「お任せくださいっ」ダッシュ
恭子「ちょ、コラ! プールサイドで走りな――」
京太郎「お待たせいたしましたっ」シュンッ
恭子「ひぃんっ!?」ビクッ
竜華「い、いきなり出てきた……」
由子「次元連結システムのちょっとした応用……?」
怜「それは?」
京太郎「スライダー用のボートです。貸出多くて、3人用と2人用になっちゃいましたけど」
恭子「………………」
由子「あーあ」
京太郎「え?」
怜「学習せんなぁ、ほんま」
京太郎「えっ、えっ?」
竜華「あ、あああ、あのっ、その……2人用、誰と乗るん?」
京太郎「え――――あっ」
恭子「はぁ、アホやなぁ……」
京太郎「い、いやっ、違うんですよっ! 俺はほら、3人用で後ろにつくとか、もしくはボート乗らずに下で写真撮るとか、そういう予定でですね――」
怜「能書きはええ」
由子「乗ればわかるのよー」
恭子「もう慣れたもんやろ、選び」
京太郎「…………はーい」
竜華「っっ!!」ワクワク
京太郎「……まぁ、では……怜さん、一緒に乗りましょうか」
竜華「」ガクッ
恭子「……ん、まぁ……そのほうがええか」
由子「そっちのが安心できるのよー」
怜「もう大丈夫やねんけど」
由子「私らはわかってるけど、京太郎くんにしてみたら、心配やろしねー」
怜「……そうなん?」
京太郎「……いえ。そうでなくても、怜さんと一緒に乗りたかったですよ。でなければ、水着を贈った甲斐もありませんし」ニッコリ
怜「……おおきにな」
恭子「ええ話やなー」
怜「でも竜華と一緒にも乗りたかったやろ?」
京太郎「はい」ソクトー
竜華「っっ!!!」パァァァァッ
恭子「笑顔まぶしいな!」
由子「まぁ交代で乗ったらええんとちゃうかなー」
恭子「ま、とりあえず行こか。時間もったいないし」
竜華「せ、せやな! 急いで交代せんと、全員京太郎と乗れへんしなっ」
由子「そういうことなのよー、それじゃあゴー」
怜「……京」
京太郎「はい?」
怜「……ありがとうな」
京太郎「いえ、そんな――」
怜「私、前座るから、京うしろな。そんで、ちゃんと抱えといて――ええな?」
京太郎「……はいっ」
怜「しっかり抱きしめるんやで?」
京太郎「え、あ、はい」
怜「変なとこ触ったらあかんで?」
京太郎「ぜ、善処しますっ」
煽った側の怜が、なぜか真っ赤になっていたという話
~一時間ちょっと後くらい?
京太郎「ふぅ……そろそろ休憩にしますか。お茶、お淹れしますよ」
恭子「……水着のどっから、その準備はだしたんや」
由子「もう突っ込んだら負けなのよー」
怜「……ほな、準備は任せたで。うちはちょっと……」
竜華「あ……わ、私もちょっと……」
恭子「……私も行こかな」
由子「じゃあ私もー」
京太郎「……………………」
京太郎「!」ピコーンッ
京太郎「ええ。では俺は、お茶を用意しておきますので」
京太郎「……危ない危ない。気づかなかったら、どちらへ――とか聞いちゃうとこだったな」
京太郎「そういうデリカシーのないことしてると、また怒られるってばっちゃも言ってたし――」
京太郎「おとなしく、お茶淹れときますかねー」
「……なーなー、そこの君?」
「高校生、やんなぁ? ちょっと時間あらへん?」
「うちらと泳がへん? 女だけで来てて、退屈しててんわぁ」
京太郎「――――え?」
「君やで、き・み♪」
京太郎「お、俺っすか!?」
「そうやでー。へー、背ぇ高いなぁ」
京太郎「あ、あざっす……」
「な、一緒に泳ごうやぁ」ギュッ ムニュッ
京太郎「はおっ……」シャキーン
京太郎(こ、これはまさか――逆ナンってやつですかぁっ!?)
「なーなー、ええやろぉ?」
「お姉さんら社会人やから、色々奢ってあげられるしー?」
「気持ちいいこと(スライダー)、一緒にしよ?」
京太郎(俺の人生に、逆ナンされるなんてことがあるとは――)ジーン
京太郎(しかし、ここは……慎重に言葉を選ばなければ……)
京太郎「大変申し訳ございません」ニッコリ
「え?」
京太郎「本日は私、お嬢様方のお供で参りましたので、そのような時間はございません」
「ん、んん?」
「お嬢……え?」
京太郎「女性に恥をかかせてしまい、申し訳ございませんが……なにとぞ、ご容赦のほどを」ペッコリン
「な、なんやろ、これ……」
「お金持ちの人の付き人、いうことかな……」
「なんか仕事中みたいやし、しゃーないな……ほ、ほなそういうことで」ペコッ
京太郎「はい、ごきげんよう――」
京太郎「ふぅ……なんとかやり過ごせたか」
京太郎「……もったいなかったなぁ」
怜「行ってきたらええのに」
京太郎「一人か、ヤロー同士で来てたら、行ってたでしょうねー。どうぞ、お茶です」
怜「あれ、驚かへんの?」
京太郎「声かけられたあたりから、隠れて見てたじゃないですか」
由子「なんや、バレとったのよー」
京太郎「……あの、もしかしてさっきの、仕込みですか?」
恭子「そんな余裕なかったやろ。マジもんの逆ナンやで」
京太郎「あ、そうですか……ドッキリみたいなのじゃなくてよかったです」
竜華「まぁちゃんと断ってくれたみたいで、安心したわ」
京太郎「みなさんと遊びに来てるのに、それを置いてよそへは行きませんよ」
恭子「めっちゃもったいなさそうにしとるけど」
京太郎「あんな誘われ方、したことないですしねー。貴重な体験だったってことです」
怜「それだけぇ?」
京太郎「ええ、それだけです」
由子「ま、真相は京太郎くんの胸の中にしかないのよー」
京太郎「ほんとですって!」
恭子「まぁなんにせよ――ちゃんと断ったんは正解や」
京太郎「……あの、さっきから、なぜカメラを?」
竜華「プールドキュメンタリー、京ちゃん逆ナンさる――配信中や」キラーン
京太郎「おいカメラとめろ」
帰宅、洗濯物取り入れ、試合会場へ
~シェアルーム
京太郎「はい、これで全部ですね」
怜「干したてのお布団~」ゴロゴロ
恭子「こら、皺になる」
由子「花粉とか虫とかおるし、掃除機かけたほうがええのよー」
竜華「……さっきかけてへんかった?」
京太郎「かけておきましたよ」ニッコリ
恭子「……仕事はようて助かるわ」
京太郎「ありがとうございますっ!」
怜「今日一番のええ笑顔やなぁ」
由子「京太郎くんは、家事褒められるんが好きやねー」ナデナデ
竜華「由子ずるい!」ナデナデ
京太郎「あはは、ありがとうございます……それじゃ、洗濯物畳み終わりましたら、参りましょうか」
恭子「そやな。あ、京太郎くん、場所わかるか?」
京太郎「はい、調べてましたから」
怜「よっしゃ、行くで! セーラがヒロに勝つとこ、しっかり見せてもらおか」
竜華「大阪ダービーやし、天王寺には負けられへんなっ」
恭子「いーや、勝つんは洋榎や」
由子「洋榎も夏は調子上げてくるからねー、悪いけどこっちがもらうのよー」
京太郎「……俺も洋榎先輩にもらいましたし、洋榎先輩の応援になりますね」
竜華「えー」
怜「セーラにチクんで?」
京太郎「やめてくださいよ!」
恭子「一緒に応援できへんのが残念やなぁ」
京太郎「お飲み物がご入り用の際は、いつでもお呼びください」
由子「控室挨拶も行くんやろ? よろしく伝えといてなー」
京太郎「はい、もちろん」
怜「ほな、出発やー!」
~試合会場、入場口
「チケットを拝見――あ、お客様はこちらですね。どうぞ」
京太郎「はい、失礼します…」
京太郎「んー、まずは観覧室入ってと。どなたから挨拶行くべきか――」
~洋榎
京太郎「まずは礼儀として、洋榎先輩だよな――」
京太郎「えーっと、天王寺の控室は……お、ここだ」コンコン
「お、なんや?」
「おとなしいノックやな……初めてちゃうか」
「係員ではないわな……誰かの知り合い?」
「おーい、心当たりー?」
「……あ、うちかもしれません。ちょい失礼します」ガチャッ
京太郎「あ、洋榎先輩。お疲れさまです、今日はありがとうございました」
洋榎「京太郎、来てくれてんな! 久しぶりやなー!」ダキッ
京太郎「!? あ、は、はい、お久しぶりで――」
「男!?」
「――洋榎」
「詳しぃ聞かせてもらおか」
「そっちの少年も中はいり」
京太郎「え、あ、あの……どうしましょう」
洋榎「よっしゃ、外で話そか」
「逃がすか!」ガシッ
洋榎「じょ、冗談ですて……京太郎、とりあえず入りー」
京太郎「はぁ……では、お邪魔します」
全員『邪魔するんやったら帰ってー』
京太郎(全員で!?)
京太郎「あ、そうだ。これ、つまらないものですが――福岡のお土産です。よろしければみなさんでどうぞ」
洋榎「おお、わざわざすまんなー」
「……福岡土産?」
「本千鳥やん、大阪土産やろ」
「まぁなんでもええ。それより、君は――」
全員『あっっ!!!』
京太郎「えっ?」
全員『派遣執事!!!!』
京太郎「は、はい……どうも、はじめまして」
洋榎「よっ、有名人っ」
京太郎「どれだけの人が知ってるのか、たまにすごく気になりますね……」
「ほんでや」
京太郎「はい」
「君と洋榎の関係は」
京太郎「先輩と後輩です。一時期、姫松にもいましたので」
「聞いてないなぁ」
洋榎「言うようなことちゃいますし」
「浮いた話の一つもないと思とったら、ちゃんとあるやん」
「隅におけへんなぁ、洋榎も」
洋榎「そらどーもです」
「ほんで、派遣執事くん――須賀くんも、福岡くんだりからよう来たなぁ」
京太郎「せっかくお招きいただいたのに、断るなんてとんでもないことですから」
洋榎「ようできた後輩やで、ほんま」ナデナデ
京太郎「――あの、いいですか?」
「どうしたん?」
京太郎「なぜみなさん、俺と写真を?」
「記念。あとは魔除けやな」
京太郎「魔除け!?」
洋榎「プロ麻雀界には、ジンクスがあってな」
京太郎「はぁ」
洋榎「あんまり男っ気ない生活送っとると、一生結婚できへんいう呪いがあるんやて」
京太郎「……麻雀界に限らなくないですか、それ」
「いやいや、それがやな」
「麻雀界やと、その……実例が色々と……」
京太郎「………………そーですかー」
洋榎「正直に言うてみ、誰のこと想像した?」
京太郎「誰も想像してませんよ!」
「いやー、よかったわ。おおきになぁ、執事くん」
京太郎「いえ、お役に立ててよかったです」
京太郎「では、ほかにも挨拶にお伺いしますので、これで失礼します」ペコッ
洋榎「……セーラとこも行くんか?」
京太郎「はい。近くまで来ましたし、ご挨拶しないわけにも参りませんから」
洋榎「んー……まぁオカンとこにも通っとったし、しゃーないか」
「……洋榎、あんたあれやな」
洋榎「へ?」
「いや、割と束縛するタイプやねんなぁて」
洋榎「――ちゃ、ちゃいますて!」カァッ
「なんやその反応!?」
「まるきり乙女やん……」
「へー、あの洋榎がなぁ……おもろいからとっとこ」パシャッ
洋榎「なっ、なにっ……京太郎! もうええから、はよ行き!」
京太郎「あ、はい……では、失礼します」
「めっちゃ照れとる!」
「照だけに」
「宮永おらんやろ!」
「あの子はそういうんなさそうやなぁ……常に冷静で、淡々としてそうやわ」
京太郎(……絶対にそれはないです)
~セーラ
京太郎「で、こっちが大阪の控室か――」
京太郎「……向こうと違って、こっちは俺が来てること知らないんだよなぁ。大丈夫かな」コンコン
「お? 誰か来た?」
「え、試合始まる?」
「まだやん……なんやろ」
「あ、俺出ますわ」ガチャッ
セーラ「はーい、なんかありました――か……」
京太郎「あ、セーラ先輩! お久しぶりです、ご無沙汰しておりました」ペッコリン
セーラ「」
セーラ「え、あ……きょ、京太郎!?」
京太郎「はい、須賀です。あ、これお土産です、よろしければ」スッ
セーラ「お、おう……って待てや! なんでっ、いきなりっ!?」
京太郎「……その、チケットをいただきまして、応援に来たんです。で、せっかくなのでご挨拶にと」
セーラ「そ、そうか……けど、ここまで入れへんのんちゃうか?」
京太郎「特別観戦室だと、ご挨拶に入れますので」
セーラ「あー、そういうたらそういうんも……それやったら、怜たちにもそれにしたらよかったなぁ」
京太郎「お二人も、一般席から応援すると仰ってました」
セーラ「って、会ったんか?」
京太郎「はい。午前中に」
セーラ「そうかぁ……けど、怜と竜華だけやなくて京太郎まで見とるとなったら、ますます負けられへんなっ」
京太郎「はい、頑張ってください――」
セーラ「そんなん言うて、試合中は別のチーム応援やろ?」
京太郎「う……まぁ、その……」
セーラ「いや、それはしゃーないて。まぁでも、かっこ悪いとこは見せへんし、楽しんでいきや」
京太郎「そうします――では、失礼します」
「ちょい待ち」
「話終わったんやったら、こっちおいで」
京太郎「……やっぱりですか」
セーラ「せ、先輩……京太郎はほら、よそのチームの応援ですし」
「そんなん関係ない!」クワッ
セーラ「いや、あるでしょ!?」
京太郎「い、いえ、大丈夫です、セーラ先輩……ご心配、ありがとうございます」
セーラ「……京太郎の心配とちゃうんやけど」ハァ
「おーおー、ようできた彼氏やなぁ」
セーラ「かっ……ちゃ、ちゃいますって!」
京太郎(あー……そういう心配でしたか)
「隠すな隠すなー」
「けどあれやな、マスコミに見つかったらめんどいかもしれへん」
「うちのチーム、セーラのことドル売りしようとしとるしなぁ」
京太郎「ドル売り……?」
セーラ「アイドルや……ほら、佐々野とかみたいなん」
京太郎「あー、なるほど。まぁセーラ先輩、美人ですからね」
セーラ「な――」カァッ
「さすが彼氏」
「まぁまぁ、中にお入りよ」
「お茶菓子食べていきやー」
京太郎「い、いえ、俺はこれで……」
「……ん? そういうたら君、どっかで――」
京太郎(あ、このパターンは)
「んー?」
「あっ……」
全員『派遣執事や!!!』
京太郎(またか……)
「ちょっと脱いでみてくれへん?」
京太郎「はぁ!?」
「いや、あの写真合成ちゃうかなー、思てて」
「高校生であんな肉体してる子、おるわけないやん?」
「あと高校生の半裸見たい」
京太郎「直球ですね!?」
「まーまー、悪いようにはせんから……」
「ほら、おとなしゅうして――」
セーラ「ちょ、先輩っ、まずいですて! 問題なりますよ!」
「問題が怖ぁて、高校生ひん剥けるか!」
セーラ「ひん剥くな言うてるんですよ!! ええから京太郎、もう行き!」
京太郎「え、あ、はい……あの、大丈夫ですか?」
セーラ「お前がおるほうが大丈夫ちゃうわ!」
京太郎「そ、そうみたいですね……では、試合頑張ってください」
~良子&ちゃちゃのん
京太郎「さて、あとは広島と松山――」
良子「……京太郎?」
京太郎「え――あっ、良子さん!」
良子「なぜこんなところに……いけませんよ、京太郎。私に会いたいからと、こんな場所まで忍び込んでは」メッ
京太郎「違いますって! 特別観戦です、ほら半券!」
良子「ほう――なるほど、洋榎の招待ですか」
京太郎「あ」
良子「なに、隠す必要はありません。しかし、そうですか……京太郎が見ているとなれば、全力全開で行かねばなりませんね」ゴゴゴゴゴゴゴ
京太郎「良子さん、本日のオーダーでは……」
良子「副将です。残念ながら、新人組とは当たりませんね」
京太郎「そ、それはなにより……」
良子「副将で試合を決められるよう、頑張りますよ」ニッコリ
京太郎(あかん)
良子「しかし、こんなことなら中堅でお願いすればよかったですね……洋榎、セーラ、いちごが中堅で見えるのですから」
京太郎「そうなんですか。洋榎先輩とセーラ先輩がそうなのは知ってましたけど……」
良子「興業ですからね、注目の集まるカードはわりと組まれるのです。いちごも加わったことで、松山も中堅は新人になりました」
京太郎「へー、楽しみですね」
良子「……よければ、うちの控室へ来るといい。その子は京太郎のファンですから、激励されれば喜びます」
京太郎「……なんか、逆じゃないですか? 普通は俺が、プロの方のファンであるべきかと……」
良子「知名度的には、圧倒的にあなたが上ですからね。もちろん、私のファンになるなら大歓迎ですが」ニッコリ
京太郎「師匠のファンでない弟子なんていません」
良子「……よくできた弟子ですね、本当に」ギュッ
京太郎「!? ちょ、ひ、人に見られたらまずいのでは――」
良子「私は気にしません。さぁ、控室に案内しましょう」
京太郎(おおおおお、おもちが腕にぃ!)
いちご「お――京太郎じゃ! おーい、京太郎ー!」
京太郎「えっ……あ、よ、良子さん、ほら! 誰かが……」
良子「……いちごですし、大丈夫でしょう」ギュー
いちご「京太郎っ、なんで大阪におるんじゃ? あ、もしかしてちゃちゃのんの応援かのう?」ニッコー
京太郎「こんにちは、昨日振りです。今日は洋榎さんの応援で、こちらにお招きいただいたんです」
いちご「なんじゃ、そうかぁ……しかも洋榎の応援いうことは、試合中の応援は期待できんのう」
京太郎「はい、そればっかりは……でも、いい試合になると思っていますから。頑張ってください!」
いちご「うむ、任せるんじゃ!」
良子「さて、話は済みましたね。うちの控室に来る約束ですよ」グイグイ
京太郎「う……い、いえ、そろそろ時間が――ほら、試合始まりますし」
良子「む――確かにそうですね。本当なら、その……試合前に、マッサージをお願いしたかったのですが……」モジッ
京太郎「それはまたの機会ということで――」
良子「本当ですねっ!? 約束ですよ!」カッ
京太郎「は、はいっ」ビビクンッ
良子「よろしい――では京太郎、副将戦の応援はお願いしますよ」
いちご「むー、戒能プロはええのう」
良子「あなたは昨日口説かれたのでしょう? それ以上を望むのは贅沢というものです」
いちご「わ、わかっとります」
京太郎「では、俺もそろそろ戻りますので……お二人とも、頑張ってくださいね」
良子「ええ」
いちご「うむ!」
~試合観戦、特別観覧席
京太郎「会場は違うけど、この特別席も二回目か……」
京太郎「前は菫さんが一緒だったけど、今日は一人……一人だと持て余すな、この部屋」
コン、コンッコンッ
京太郎「ん、んん?」
京太郎(怜さんたちか……? いや、普通のチケットだと、この部屋がある通路には入れない……)
京太郎(試合間近ってことを考えると、選手の方たちではない――)
京太郎「……会場スタッフの方でしょうか?」
「いえー、私ども、マンスリー麻雀パラダイスの取材スタッフなのですが――」
京太郎「………………えっ」
「こちら――えーっと、須賀京太郎さんのお部屋でお間違いないでしょうか?」
京太郎(む……どこから聞きつけられたんだ? いや、会場内で見られたか……)
京太郎(だとしても、なんの用だ……取材かな。うーん、けど勝手に取材受けて、変なことになるのもなぁ……)
京太郎(それに、今日の俺は洋榎先輩の応援と観戦に来てるんだし、集中できないのも困る――)
京太郎(――よし)
京太郎「……いいえ、違いますけどー(裏声)」
「おっと、そうでしたか……失礼しましたー」
京太郎「ふぅ……お、試合が始まる」
~少年観戦中……
京太郎「先鋒と次鋒までは、拮抗してるな……大阪が少し優勢に見えたけど、運が及ばなかったってとこか」
京太郎「動くとしたらそろそろ……中堅戦からだな。おっ、先輩たちだ」
洋榎『さて、今日は京太郎も来とることやし――悪いけど、飛ばさせてもらうで』
セーラ『そう簡単にやらせるか。っちゅーか、流れは大阪のほうにあるからな……ここで俺がデカいの当てたら、大将まで待たんでも決着やろ』
いちご『ふ、二人だけに盛り上がらせんけぇの! ちゃちゃのんも、今日はやる気が違うんじゃ!』
松山の中堅(……いつもはやる気ないの?)
『さすが、同学年三人が卓を囲むとあって、盛り上がっているようですねぇ』
『若手三人ですからね、勢いと華やかさがあります――その勢いを松山のベテランがどう止めるか、見どころになると思います』
京太郎「えーっと、最近五試合の牌譜は見られたはず……お、これか」
京太郎「うお、松山の人安定してるな……いちごさんは、一軍デビューから間もない。戦績としては、ちょっと負け越し……」
京太郎「こう言っては悪いけど、広島的には興業目的で、いちごさんを中堅にしてる感じか……けど、ここで活躍を見せれば、その評価は覆らせられる」
京太郎「頑張りどころってわけだ……で、大阪ダービーのお二人は、と」
京太郎「まぁ知ってたけど、洋榎先輩の防御率はすごい……チーム内では実は一位。セーラ先輩はチーム二位の打点率、だけど失点も多い……」
京太郎「勝ち越し率は五分で、勝ったときの稼ぎはセーラ先輩が上――負け越しでのマイナスは、洋榎先輩のほうが小さい――」
京太郎「……なんていうか、盾と矛の試合だな」
『――天王寺の盾、大阪の矛。どちらに軍配が上がるでしょうかっ』
京太郎「うわああああああ、感想かぶったああああああああああ!」
京太郎「くそっ、なんか恥ずかしい……ふぅ、しかし――これはどっちが勝つか、読めないな……」
京太郎「うーん……全国時の戦績でも、大阪のお二人が拮抗……いちごさんは、少し劣る感じだけど――」
京太郎「なんとなく――今日はいちごさんが、麻雀の神に愛されてそうな気がする」
ちゃちゃのん(――はっ! な、なにやら期待されとる感じがするのう!)
洋榎「んー? なんやいちご、調子よさそうな顔しとるやん」
セーラ「ほー、要警戒やなぁ、これは」
松山さん「……試合中は、なるべく静かにね?」
京太郎「……マジでいちごさんに牌が集まっていくな」
京太郎「これは洋榎先輩、ちょっと厳しそうだな……まだイーシャンテンだ」
京太郎「あ、いちごさんが鳴いて――張った。セーラ先輩も、リーチはしないけどダマで張ってる……くっ」
京太郎「――奇跡は起こらないから奇跡って言うんですよ、か」
京太郎「しかし、洋榎先輩はすごかった……一局は二人の上がり牌をギリギリまで集めて、溢れそうなところで松山の53手に差し込んだ」
京太郎「次の曲ではしっかり上がって、次も下りる素振りを見せながら――二人にリーチをかけさせた上で、満貫和了」
京太郎「締めるとこはしっかり締めて、攻めるとなったら冷静に前に出てる……」
京太郎「実力は同じくらいのはずなのに……この一局に限っては、洋榎先輩はセーラ先輩を圧倒してたな」
洋榎『せやろ』
セーラ『いきなりなんやねん……』
洋榎『いや、京太郎が絶賛しとるんちゃうかなと思て』
いちご『こ、こんなはずではっ……』
セーラ『俺もやて……はー、くそっ! 一局目で完全に歯車狂ったなぁ。無理に上がりにいってしもたわ』
洋榎『おかん曰く――』
セーラ『は、監督?』
松山さん『愛宕元プロの助言ですか、気になりますね』
洋榎『ええ女は、家庭も子供も守る――けど、それ以上に点棒を守るもんや』
セーラ『お、おう……え、なにそれ。いつ言うてたん?』
洋榎『たぶん小学校上がる前やった思うけど……まぁとにかくや。守備いうんはそれだけ大事いうことやな、自分の流れは待てるし、相手のリズムも崩せるわけやし』
セーラ『……俺は聞いてないなぁ』
洋榎『高校んときはあれやぞ、長所伸ばさせんのが一番やて指導してたらしいし』
いちご『ずるいんじゃあ、自分だけ!』
洋榎『ずるいことあるか! さて、これで天王寺の勝ちはもろたも同然やな』
セーラ『ぐっ……あーあ、ベンチ戻りづらいわ』
いちご『ちゃちゃのんもじゃあ……』
松山さん『……良子に託しましょう』
京太郎「……うーん、予想は完全にはずしたなぁ。いちごさん、あと一歩って流ればっかりで……まぁ今回は、相手が悪かったってやつか」
京太郎「俺としては、応援しにきたチームが、それも洋榎先輩が勝ったわけだし、もっと喜ぶべきだな――うん、そうだ」
京太郎「お疲れさまでした、洋榎先輩――かっこよかったですっ」
洋榎『せやろ』
セーラ『それはもうええねん!』
いちご『あああああ、次のスタメンが遠のくのう……』
~試合終了
京太郎(その後――良子さんが稼ぎ返したものの、中堅戦での天王寺のリードは覆らず……)
京太郎(今日の試合は天王寺が一位、続いて松山、大阪、そして広島という結果に終わった――)
良子(待ちなさい、私の活躍をもう少し――)
京太郎(すいません、メインは洋榎先輩なので……)
良子(……解せません)
~天王寺控室
京太郎「――し、失礼しまーす」
「おお、派遣執事!」
「応援ご苦労、大勝利やったで!」
「褒めてー、京ちゃん褒めてー!」
京太郎「お、お疲れさまです、おめでとうございます……あの、京ちゃんっていうのはやめてください」
「いーじゃん京ちゃーん」
「いや待て、洋榎がキレそうなっとる!」
「ああ、それはあかんわ!」
洋榎「な、なってませんてっ」
京太郎「洋榎先輩っ、すごかったですよ!」
洋榎「……ん、ま、まぁな」
京太郎「なんていうか、全員の手どころか山の中まで全部見えてるような――完全に掌握した動きでしたね」
洋榎「まぁ――あれや。呼んどいた手前、負けるわけにもいかんやろ。そんなとこ見せたら、京太郎に舐められそうやし」
京太郎「舐めませんって……けど、今日のを見て、より尊敬したのは本当です」
洋榎「……ん、そうか。ええとこ見せた甲斐あったな!」
京太郎「はい――」
京太郎「素敵でした……それ以外の言葉が見つからないくらいですっ」キラキラキラッ
洋榎「」
洋榎「ぁ――そ、そら、おおきに……いや、っていうか、な……なに、言うてんねんっ……」////
「照れとる」
「めっちゃ照れとる」
「タコみたいになっとる」
「っつーわけで、お前の能力はバレバレのヒョウモンダコ」
洋榎「だ、誰がヒョウモンダコなんですか! 京太郎も京太郎やっ、ワンパな褒め言葉は手抜きやろっ!」ビシッ
京太郎「けど――本当に、素敵だったので……」
洋榎「//////」ボシュゥッ
「こいつちょろいな」
「ちょろすぎて心配や……」
「おかしな男に引っかからんかったらええけど……」
「京ちゃんの資質をチェックせなあかんか……」ガタッ
京太郎(なんか言いだしたぞ……)「あの、洋榎先輩、大丈夫ですか?」
洋榎「あああああ、当たり前やっ、なんともないわ!」
京太郎「そ、そうですか。ならいいんですけど……とにかく、今日はおめでとうございます」
洋榎「ま、長い長いペナントの一試合やけどな……けどまぁ、自分ヒーローで勝つんは、やっぱ気持ちええわ」
京太郎「では、俺はこれで失礼しま――」
「まぁ待たれよ」ガシッ
京太郎「」ビクッ
「これからミーティングして、そっから寮で飯やねんけど――」
「まぁ軽い祝勝会もするわなぁ、ダービー勝ち越したわけやし」
京太郎「は、はぁ、そうなんですか……」
「――来るやろ?」
京太郎「…………え、えーっと」チラッ
洋榎「…………?」
京太郎(助けてくださいっ!)パクパク
洋榎(…………いや、無理やろ)
京太郎(そこをなんとか!)
洋榎(ふんっ、人をからこうた罰ちゃうか?)
京太郎(からかってませんって! 本当に素敵だったんですっ)
洋榎(っっ……あ、あほやなっ、お前はほんまぁ……)
洋榎「…………えーっと、その、先輩ら――」
「おう?」
「洋榎もそのほうが嬉しいんか、んん?」
「大丈夫やて、ちゃんとお前の隣に座らせたるし」
「まぁ、ちょこーっと? お猪口にお酌はしてもらうけど~」
京太郎(楓さんみたいなこと言いだしたぞ……さっきはアシモフだし)
洋榎「………………」ムー
京太郎(先輩、頑張ってください!)
洋榎(……まぁ、京太郎に意地悪してもしゃーないしな)
洋榎「えーっと、すんません……実はうちとこいつ、今日は実家のほうに顔だす予定なんですよ」
京太郎「……えっ?」
「……本人、驚いてるけど」
洋榎「まぁこいつに言うてませんでしたし――あ、でも寮のほうには言うてありますし、チームマネにも言うてますから」
「確認してー」
「りょうかーい」プルルルルル
「……マジやったわ」
「マジか……」
京太郎「――え、マジなんですか?」
洋榎「今日来るて言うたら、久々に顔ださせぇておかんがなぁ。キヌも楽しみにしとったし、ええやろ?」
京太郎「まぁ……新幹線はギリギリにしましたから、まだ時間ありますし」
洋榎「おし、決まりやな! っちゅうことで、うちらはこれで失礼しますー」
「むううううっ……せっかく男子高校生がおる、華やかな飲み会になると思たのに……」
「まーたモテへん女同士の慰め合いかぁ……」
京太郎(……なんかどこの寮でも同じこと言ってる気がする)
「まぁしゃーないわ。恋人の親御さんへの挨拶は、基本やしなぁ……」
「洋榎も彼氏持ちか……爆発しろドあほ」
洋榎「――――へ?」
京太郎「な、なに言ってるんですかっ!?」
「隠すなあああああああ!」
「余計惨めになるやろ!」
「わざわざ女の家で両親に会うてっ、そういうことやろが!」
洋榎「ちゃ、ちゃいますわっっ! なに言うてるんで――」
京太郎「そ、そうですよ! これは、その……お、俺の親と先輩の親が昔からの知り合いで、その縁で俺のこともよくしてくださってるからで――」
洋榎「ちょっ、おまっ、アホ――」
京太郎「へ?」
「お、お、お……」
「幼なじみ属性きたああああああああ!?」
「なんやそれ勝ち確やんけ!」
「さ、ささ、最近の幼なじみは負け確やから……」
京太郎「あああああああ、さらなる誤解を!」
洋榎「どない収拾つけんねん!」
――宥めるのはマネージャーさんに任せて、ひとまず撤収しました。
~愛宕家
洋榎「はぁ、明日からどないしょ……」
京太郎「ど、ドンマイですっ」
洋榎「誰のせいやと――はぁ、もうええわ。とにかく上がり……ただいまやでー」
京太郎「あ、はい……こんばんは、お邪魔しますー」
雅枝「おう、おかえりー。京太郎も、よう来たなぁ」
京太郎「お邪魔します、えーっと……監督?」
雅枝「千里山の子になるんやったら、いつでも歓迎すんでー」
京太郎「お邪魔します、雅枝小母さん」
雅枝「おばさん言う響きが気に入らんなー」
京太郎(どうしろと……)
絹恵「千里山の子になるてどういうことなん!?」ダッ
京太郎「あ、絹恵さん――お久しぶりです、こんばんは」
絹恵「京太郎くんっ! よう来てくれたなぁ、待っててんで~。ほら、上がって上がって♪」
京太郎「はい、お邪魔します」
洋榎「こらこらこら! 実の姉に対して、なんか軽ないか!?」
絹恵「えー……でもほら、京太郎くん来てくれてるし」
洋榎「むぐ……そ、それに京太郎も! なんでうちが先輩で、キヌはさんやねん!」
京太郎「え……えーっと、なんででしょうか?」
絹恵「そない呼んでって、私が言うてんもん」
京太郎「そういえばそうでしたか……けどもう長いことそう呼んでますし、慣れちゃいましたね」
絹恵「ふふっ、そうかなぁ? 恥ずかしいけど、嬉しいわぁ」
洋榎「……うちも、そっちにせえ」
京太郎「え?」
洋榎「姉妹でわける必要ないやろ! 今日から、うちも……ひ、洋榎さんて呼ぶようにしぃ!」
京太郎「……えーっと、はい……洋榎さん」
洋榎「…………っっ!」トゥンク
絹恵「むぅ……なんかお姉ちゃん、前とちゃうなぁ。ちょいちょい九州でも会うたりしてるし、そのとき京太郎くんとなんかあった?」
洋榎「な、なんもあらへんてっ。あー、それより今日は疲れたなー、飯できとるかー?」
雅枝「はいはい、もう冷めるとこやで。手洗いしてき……京太郎、ちょっと」グイッ
京太郎「お? はい、なんでしょう」
雅枝「…………娘二人は、親の私が言うのもなんやけど、ようできた子らやし、器量もええ」
京太郎「ですね」
雅枝「けど――どっちもはやれん。それはお父さんも同じ意見や、ええな?」
京太郎「…………はい。いや、あのですね、俺たちそういう関係では――」
雅枝「そういう関係になる前に、はっきりしとくいう話や……ま、どこの親でも姉妹両方やるわけあらへんし、当たり前のことやけどな」
京太郎「そ、そう、ですね……肝に銘じておきます」
雅枝「よろしい――ほな、手ぇ洗ってきぃ」
京太郎「お、押忍!」
松実父「ふぇっくしょい!」
玄「お父さん、風邪?」
宥「最近、また寒いから……」
玄「夏場だし、汗かくくらいだよ、お姉ちゃん……」
松実父「うーん、誰かが噂でもしてるのかな……しかし私が体調を崩す前に、京太郎くんに継いでもらわないとなぁ……両方もらってくれてもいいから」ボソッ
玄「……お父さん?」
宥「変なこと考えないでね?」ニコッ
松実父「は、はい……」
~夕食
洋榎「久々のオカンの飯、やっぱうまいなぁ」
雅枝「よう噛み締めや……あとあんた、試合後のあれなんやの」
洋榎「あれて?」
絹恵「家庭と子供と点棒っていうやつ」
洋榎「言うたんオカンやろ?」
雅枝「アホ、あれはお父さんが言うたんや」
京太郎「ぶっ!」
愛宕父「お、そうやったか?」
絹恵「しかも本人忘れてるし……」
洋榎「まぁええやん。結果的に、うちが守って大勝利やったわけやしな」
京太郎「はい、お見事でした」
雅枝「セーラの出来には色々言いたいけど……まぁ、今日のはええ試合やったわな」
絹恵「さすがお姉ちゃんや」
洋榎「せやろー、さすがやろー?」
愛宕父「おう、さすが俺の娘や! よし、ご祝儀に小遣いやろ」
洋榎「ほんまか!」
雅枝「もう稼いどる娘にやらんでええ」
愛宕父「あ、はい……」
洋榎「毎月の小遣いは制限されとんのに……」
愛宕父「うーん、けどもう祝儀袋に入れてしもたもん、もっかいだすんも――お、そうや。京太郎にやろか」
京太郎「は!? い、いや、嬉しいですけど申し訳ないので、遠慮します……」
愛宕父「ええねんてっ、かまへんかまへん! 須賀に借りとった金返すだけやし!」
京太郎「それこそ親父に渡してくださいよ! 雅枝小母さん、なんとか言ってください!」
雅枝「千里山に通うとったら止めたけど、いまのあんたは、一人暮らししてる知り合いの子やしなぁ」
洋榎「娘と扱い違いすぎやろ!」
絹恵「京太郎くん、もろといたら? 色々頑張ってるんやし、来月の滞在費にもなるんやし」
京太郎「いえ、そういうわけにも……小父さんも、付き合いなんかでなにかと入り用でしょうし」
雅枝「……娘の友達に懐具合心配されてんで」
愛宕父「……泣けてくるわ」グスッ
洋榎「あーあー、おとん泣いてしもたわー」
絹恵「京太郎くん、あかんやん」
京太郎「俺のせいですか!?」
京太郎「では、当初の予定通り、洋榎さんに差し上げてはいかがでしょう――九州のほうに来ていただいたり、俺もお世話になっていますから」
洋榎「京太郎……」ジーン
雅枝「……ま、今日は頑張ったみたいやしな。無駄遣いせんように」
洋榎「ええんか! おとん、おおきにな!」
愛宕父「おう、これからも頑張るように」
絹恵「よし、私ももっと頑張ろ……っ」
京太郎「ですね。来月は、その絶好の機会なわけですし」
絹恵「うん!」
雅枝「私も絹恵もおらんようなるけど、プロのお姉ちゃん家に呼ばんようにな」ジロッ
愛宕父「よ、呼ばへんわっ。俺は雅枝一筋やぞっ! なぁ、京太郎!」アセッ
京太郎「俺ェ? えと、はい……小父さんは、見るからに誠実そうですからね」
愛宕父「せ、せやろー?」
雅枝「須賀のお父さんと、ええ店行っとったんやろ?」ニコッ
愛宕父「」
洋榎「……京太郎かて、色々やっとるしなぁ」
京太郎(飛び火した!?)
絹恵「……どういうことなん、お姉ちゃん」
京太郎「ご、誤解ですって……」
洋榎「海ではいちご口説いとったんやろ?」
京太郎「ごふっ!」
雅枝「ほう……」
愛宕父「ど、ど、どういうことや京太郎!」クワッ
雅枝「あんたがいいな」
愛宕父「」ハイ
絹恵「そ、そうなんっ、京太郎くん!? やっぱアイドルがええのん!? 一番ははやりんなんか!?」
京太郎「ごほっ、ごほっ……違います、落ち着いてください!」
絹恵「じゃあ嘘なん!? お姉ちゃん騙したん!?」
洋榎「いや、騙してへんで」
京太郎「ちょっとおおおおおおおおお!」
雅枝「なんやおもろなってきたな」
京太郎「楽しむのやめて!」
愛宕父「愉悦……」
京太郎「和のお父さんの口癖やめて!」
絹恵「原村を口説いとったんか!?」
京太郎「違いますってば!」
京太郎「――じ、事実として、こう……いちごさんを口説いた格好にはなりましたけどっ」
雅枝「ほー」
愛宕父「」ガタッ
洋榎「クックッ……おとん、座っててええて」クククッ
愛宕父「」ストンッ
絹恵「そ、そんな……」フラッ
京太郎「わああああああああああ!? た、ただですねっ、それは――海に行ったとき、ミスターコンテストをやってたからで!」
絹恵「ミスコンと、なんの関係がっ……」
京太郎「その、途中の審査で、そういう企画で……アイドル佐々野いちごを口説け、みたいな感じになって……俺は部員の推薦で出場してましたので、結果として……」ゴニョゴニョ
絹恵「えっと……つまり、いちごさんのことが好きいうわけやない、と?」
京太郎「いえ、好きは好きですけど――」
絹恵「いやあああああああああああ!」
京太郎「恋愛感情ではないですっ、はいぃっ!」
雅枝「――まぁ、あれやな。一応、誰かと付き合うとるわけやなかったら、とやかく言われる筋合いはないわな」
京太郎「……いえ。俺は色んな人のご厚意を受けて、あちこちでお世話になれてるわけですから。軽々しく、そういうイベントに出るべきではなかったです」シュン
雅枝「……ヒロ」
洋榎「う……す、すまんかったな、京太郎……堪忍してや」
京太郎「いえ……大丈夫です。俺のほうが、勝手に取り乱してしまって」
絹恵「私も、ごめん……そうやんな、京太郎くんが誰を口説いてても……き、気にすることと……」ガタガタ
洋榎「めっちゃ震えてる! キヌ、すまんかったて……」
雅枝「正直に言えたいうことは、ほんまに特別ななんかはないいうことや……あんまり気にせんでええやろ」
絹恵「うん……うんっ、そうやな……」
京太郎(……俺はいったい、なぜこんなに必死になって言い訳してるんだろうか)
愛宕父(女心は大変やねん……いずれわかるで)
京太郎(すでにちょいちょいわかっちゃってるんですが……)
絹恵「要するに、私が口説かれるようになれ、いうことやな――頑張るわっ!」ゴッ
京太郎(なんだか妙な流れに……いや待て、これはもしかして……絹恵さん、俺のことを……そういう対象として見てくれてるのか!?)シャキーンッ
京太郎「お、俺も捨てたものじゃないのか……よし、俺も頑張ろう!」
洋榎「ふぅ……なんやようわからんけど、二人とも元気なったな」
雅枝「あんたはちょっと反省しぃ」
洋榎「か、堪忍……」
京太郎(……でも、そうだな)
京太郎(なんだかんだで、俺は色んな人と二人で出かけたりしてるし……誰かとの真剣な付き合いっていうのも、少しは考えてみてもいいのかもしれない)
京太郎(もちろん、一人前になるための努力は当然だけど――)
京太郎(人生の潤いを求めるのも、同じくらい大事なんじゃないか……な?)
京太郎(っていうかぶっちゃけ――彼女欲しい!
エンディング見ようよ!)
京太郎(うぅ、はっきりと――この人は俺に好意を持ってる、ってことがわかればいいのに……)
全員『なんでわからんねんっっ!!!!』
~買ってないので、感想まとめの画像でチラッと見ただけですが
友清「…………」
煌「一年だったんですねぇ、友清」
友清「は、はい、実はそがんとでした」
姫子「そんわりには、思きしタメ口やったと……」
友清「なんもかんも、原作では出ないとわりきった>>1が悪かです……」
京太郎「……あ、これあれか。俺と同級生ってことか」
友清「そーなるとやね」
煌「つまり……来年も新道寺への派遣はある、ってことですかね」
姫子「ようやった友清ぉ!」
京太郎「えぇ……そうなる、のか?」
友清「嫌やったら、別に来んでもよか」プイッ
京太郎「……いや、別に嫌ではないけどな」
友清「……ふへへ」パァッ
京太郎「ただ、そうなると好感度の処理とか色々……」
煌「……ときめきからでいいんじゃないですか、この反応ですし」
姫子「……うちの一般女子が好感度162やし、そっからでよかとやろ」
京太郎「高すぎませんかね」
友清「べっっ……別に、そがん、こと……高ぅはなかち思うと……」カァッ
京太郎(やっべかわいい)
煌「まぁミカや明星さん、湧さんのキャラクターもミスってますしね。いまさら友清一人、どってことありませんよ」
姫子「そん通りよ。今日から友清は一年、素直で純朴な感じでいけばよか」
友清「は、はいっ」
京太郎「ただなぁ――」
煌「まだなにか?」
京太郎「……海で、友清は――あ、名前は朱里だっけ。朱里はナイスバディって感じにしちゃったじゃないですか」
姫子「あー……」チラッ
友清 改め朱里「な、なに見よっとですか! 京太郎もっ、やらしか目で見んな!」バシッ
京太郎「いたい」
~食後 洋榎自室
京太郎「ふぅ……すいません、お待たせしました」
洋榎「おー、お疲れさん。オカンも別にええて言うてたのに、律儀に洗いもんしてくれるとはなぁ」
京太郎「むしろ洗い物しかできなかったのが申し訳ないですよ……それで、お話とは?」
洋榎「ふふふ……これや」チャッ
京太郎「ああ。試合中もかけてくださってましたね、これ……普段から?」
洋榎「んー、ここぞっちゅうときだけかな。今日はその、ここぞっちゅうときやったからな」
京太郎「試合中のジンクスみたいなやつですね。野球でも、ボックス入る前にする行動で、ジンクスかけてる人とかいらっしゃいますし」
洋榎「久も髪結んだりしとるしな」
京太郎「全国ではずっと結んでたような気もしますけどね……」
洋榎「まぁ――これつけると、なんやよう集中できるしな。成績も上がってきた気ぃするわ」
京太郎「気に入っていただけたようで、よかったです」
洋榎「で――どやった?」
京太郎「…………ええ、お似合いだと思いました」
洋榎「そ、そうか……ふふっ」ニヤー
洋榎「けどあれやねんなぁ……やっぱかけとると、オカンに似てきたやの、妹さんがどうのて、色々言われたりはするわ」
京太郎「洋榎さん的には、あまり好ましくないんでしょうか」
洋榎「いや、全然?」
京太郎「あ、いいんですか」
洋榎「まーその辺はどうでもええねんけど、うちを通してオカンやキヌも見られてる――っちゅう実感は湧くなぁて思て」
京太郎「麻雀界で愛宕家っていうのは、有名ですもんね」
洋榎「ただや、うちはそれでええとしても――オカンはともかく、キヌはどうやろなぁて思て」
京太郎「ああ……なるほど」
洋榎「キヌはサッカーでもええとこいったし、周囲に見られるプレッシャーには弱ない。けど、うちを通して見られて、余計なプレッシャーもらうんは、うちの望むとこやない」
京太郎「洋榎さん、絹恵さん大好きで妹想いですもんね」
洋榎「ま、まぁうちとこは仲良し美人姉妹で有名やからなっ」
京太郎「この業界、仲いい姉妹多いですね、ほんと……」
洋榎「まぁそれはともかく――キヌが嫌がるようやったら、メガネは控えよかなぁと思ててん。で、そうなったときのために、今日はちゃんと京太郎にも見せといたわけや」
京太郎「ありがとうございます……洋榎さんの強いとこ、見せていただきました」
洋榎「ふふん。で、や……キヌに聞いてみたけど、その辺は気にしてないみたいや。うちもメガネ似合うて周囲から言われて、なんや嬉しいらしいしなぁ」
京太郎「絹恵さんも、洋榎さん大好きで姉想いですしね……」
洋榎「ま、うちとこは仲良し――」
京太郎「それはもういいので」
洋榎「…………で、そうなるとや」
京太郎「うす」
洋榎「あとはメガネくれた京太郎が、実際見てどう思うかだけ、気にしとこ思てな。そんで、わざわざうちの部屋に呼んだわけやねんけど」
京太郎「俺からは、さっき言った通りです。それにプレゼントしたものですし、試合でも使っていただけるなら、これほど嬉しいことはありません」
洋榎「ん――ほな、これからも使わせてもらうわ」チャッ
京太郎「あ、外しちゃうんですか」
洋榎「言うたやろ、これはとっておきや♪」
洋榎「誰にでも気安う見せるもんとちゃう、勝負メガネ――いうことやな」
京太郎「……そうなると、強くなればなるほど、拝見できなくなるってことですね」
洋榎「そやなぁ……まぁそんときは、京太郎だけがうちのメガネ姿、独占できるちゅうわけやろ」
京太郎「え、いいんですか?」
洋榎「言うたやろ――誰にでも気安う見せるもんちゃう、勝負メガネやもん♪」カチャッ
京太郎(…………かわいい)
京太郎「……照れますね、それは」
洋榎「おー、赤なっとるやん。こんな美少女にそんなん言われたら、やっぱそうなるわなー」グリグリ
京太郎「はい、なります」キリッ
洋榎「」
洋榎「そ、そうか――」
洋榎「うん…………よしっ、話終わり!」カァッ
京太郎「え、そんな唐突に――」
洋榎「そろそろ帰らなあかん時間やろ。見送ったるから、準備しぃやー」
京太郎「え――うおっ、もうこんな時間ですかっ」
洋榎「ほい、出た出たー。こんな部屋着であれやし、もうちょいええ服で見送ったるからなー」
京太郎「お着替えでしたらお手伝いを――」
洋榎「あ、あほか! ええから出てさらせ!」ゲシッ
京太郎「あうっ! し、失礼しました……では」
京太郎「……つい執事の教えが出てしまった。けど、人によっては危ういからな……ついでも言わないよう、気をつけないと」
照「ドンと来い」ムフー
春「いつでも、手伝ってもらう準備はある……」
シロ「楽できるし、ありがたい……」
和「私の服、着るのに意外と時間がかかりますから……助かります、ええ本当に助かります、他意はないです」
京太郎「……ガチで気をつけよう」
~超番外 次世代を背負うもの 対談・宮永照と西住まほ (提供MHK・SHK)
照「――まほ、みほさんに甘すぎない?」
まほ「そんなことはない。確かに、多少は妹に対して融通を利かせてしまうが、適度な厳しさも残している」
照「じゃあここ――カチューシャさん睨みすぎでしょ」
まほ「大隊長に従うのは当然だ。真っ当な意見ならともかく、副隊長が難癖つけるべきではない」
照「あとエリカさんに厳しくない? みほさんの作戦やらに突っ込み入っただけで」
まほ「内容についてならともかく、名称についてはお門違いだと思っただけだ。みほへの対抗心が、エリカにとってプラスになればいいとは思っている」
照「じゃあ次、ここなんだけど――」
まほ「待て、私だけ言われるのは公平ではない。私からも言わせてもらおう」
照「……どうぞ」
まほ「そうだな――では大きい点として、妹がいないという発言について言わせてもらおう」
照「アニメ版だけだからセーフ。あと、悪い意味ではない」
まほ「知っている。自分の妹ということで騒がれたりして調子を崩さないよう、無関係を装ったことはわかる。だが、それが甘いと私は感じた」
照「普通はそうするでしょ。卓上に他の要素を持ち込むのは、雀士の矜持に反する」
まほ「それは個人の問題だ。勝負事の前に他者を気遣うことは、真剣勝負の醍醐味を壊している。そこまでの気遣いは、優しさを通り越して甘やかしになるぞ」
照「これだから戦車脳は困る。利用できるものならなんでも利用し、有利に立とうなんて考えは、麻雀にはない」
まほ「戦車を馬鹿にするな。それに、卓上でブラフを多用するのは麻雀の専売特許だろう。それこそ、利用できるなら同卓者すべてを利用するくせに」
照「卓上と卓外を一緒にしないでほしい」
まほ「戦車道は生き方そのもの。その個人の抱えるすべてが、戦車道に表れるんだ。だからこそ、戦車道の戦術戦略には個人が見える――隊長の色を最大限に魅せなければ、意味はない」
照「麻雀こそ究極の個。卓を前に、牌を前にすれば、それはもう俗世とは切り離された空間――余計な横槍も陰口もない、剥きだしの自身をぶつけ合うことになる」
まほ「だから私は妹に甘いのではなく、戦車道にまっすぐなだけだ」
照「私は妹に甘いわけじゃない。麻雀に対して真摯でありたいだけ」
京太郎「…………とのことですが、どうでしょうか。妹さん方」
咲「なにこれ、テレビ放映されるってわかっててこれなの? 私が恥ずかしすぎるんだけど」
みほ「お、お姉ちゃん……うぅ、嬉しいんだけど、恥ずかしいよ……」
京太郎「優しいお姉さんを持つと大変ですね。どうぞ、紅茶のお代わりを」
みほ「あ、ありがとうございます……須賀さん」
咲「ありがと、京ちゃん」
みほ「……仲がよろしいんですね。お二人は、恋人同士なんですか?」
咲「そ、そそっ、そんなんじゃ――」
照「それは違う。京ちゃんは私のお婿さんだから。京ちゃん、私もお代わり」
京太郎「はいはい、どうぞ」
まほ「……えっと、いま聞き捨てならない事実があったんだけど……須賀くんは、照の婚約者なの?」
照「そう」
京太郎「違いますから!」
まほ「なんだ、照の妄想か」
みほ「お、お姉ちゃんっ、そういうこと言うのは、あんまり……」
まほ「みほ、厳しいようだがこれも照のためだ。友人として、彼女をストーカーにするわけにはいかない」
照「……友人なら恋路を応援すべきでしょ。自分に男っ気がないからって、僻まないでほしい」
まほ「なんだと……っ」
咲「お姉ちゃん! すいません、西住さん……お姉ちゃんには私が言って聞かせておきます」
みほ「なんて?」
咲「京ちゃんは私のだからって」
みほ「」
照「咲こそ妄想はやめたほうがいい」
まほ「……だめだこの姉妹、早くなんとかしないと」
~愛宕家
京太郎「では、今日はありがとうございました。これで失礼します」
洋榎「おう、まったなー」
絹恵「京太郎くん、またね。来月、東京で」
雅枝「身体に気ぃつけて。大会は万全の状態で臨むようにな」
京太郎「はい、ありがとうございます」
愛宕父「どっちかとどうこうなっとったら、泊まっていかせるんやけどなぁ……」
京太郎「小父さん、そういうこと言ってると、先輩方に嫌われますよ……」
愛宕父「せやろか」
雅枝「あんたら二人はちょっと黙っとったほうがええな」
二人『はい』
絹恵「ど、どうこうなっとらんかっても、泊めてええんとちゃう!?」
雅枝「それはさすがに私が許さん」
洋榎「でも京太郎やで? なんもあるわけない思うけど」
京太郎(ひどい)
雅枝「一理あるけど、世間体いうもんがある。派遣執事が未婚女子二人もおる家から朝帰り、なんちゅう噂が立ったら困るやろ」
絹恵「そ、それはそうやな……京太郎くんに迷惑かけるんは、うん」
京太郎「お気遣いいただき、ありがとうございます」
雅枝「それで千里山に来れんようなったら困るしな」
洋榎「合宿でも旅行でも平気やったのに……」
雅枝「ほんなら、そういうことは合宿でやったらええ」
絹恵(はぁ……最大のチャンス、活かすべきやったなぁ……)
京太郎「では――みなさんもお元気で。失礼します」
~新幹線
京太郎「ふぅ、すっかり遅くなったな……とりあえず帰ったら、簡単に明日の仕込みして、明日は学校行って――」ウツラウツラ
京太郎「zzzzz……」
~二年目7月第三週日曜 終了
~7月第四週月曜
京太郎「うーん、長時間の移動から、翌朝学校はキツいな……」
京太郎「まぁでも、飛雷神で移動するよりは遥かにマシか――ん?」
エーラブーアイハヒートツー
京太郎「はい、もしもし」
エイ『英)京太郎! おはようっ、京太郎の愛は受け取ったわ!』フンスフンスッ
京太郎「……ええっと……えー、あー……英)お、おはようございます……で、なんですか?」
エイ『英)とぼけなくてもいいわよ、京太郎の気持ちはちゃんと伝わったから……素敵な髪飾り、一生大事にするわね』
京太郎「英)……ああ! そっか、今日……よかったです、無事に届いたようで」
エイ『英)むー、もしかして忘れてたのかしら?』
京太郎「英)滅相もございません――お誕生日、おめでとうございます」
エイ『英)……えへへ。ありがとう、京太郎……だけど残念、また京太郎と、一つ年が離れちゃったもの』
京太郎「英)そうですか? 俺はエイスリン先輩が、いつまでもお姉さんでいてくれて嬉しいんですけど」
エイ『英)そう言ってくれるのは嬉しいけれど、一生同い年になれないというのは、少しつまらないわ……一度くらい同じ教室で、同じ授業を受けて、そのまま一緒に下校したかったわね』
京太郎「英)下校はしてましたけどね……まぁ同じ授業なら、俺が同じ学校に行けばできそうですけど」
エイ『英)女子大なのに?』
京太郎「英)……あー、そういえば、そうか……夏の優勝で、女子大進学もできるようになるんでしたっけ」
エイ『英)あら、よく覚えてたわね!』
京太郎「英)いま思いだした感じですけど……俺が別のとこ進学して、エイスリン先輩がそっちに移るっていう選択肢はありませんか?」
エイ『英)ふふ、魅力的なお誘いね……でも、それは無理だわ』
京太郎「英)やっぱりですか……」
エイ『英)ええ。だって、胡桃や塞、豊音と過ごすキャンパスライフ、とっても楽しいもの……だからそこに、京太郎も入ってほしいのよ。もちろん、シロもだけどね』
京太郎「英)エイスリン先輩……」
京太郎(……エイスリン先輩がそう言ってくれるのは、素直に嬉しい。けど――)
京太郎「英)すいません、貴重なお願いですから、もう少しだけ考えます」
エイ『英)そう……でもそうね。私のわがままのために、京太郎の可能性を潰すのは、私も嫌だわ』
京太郎「英)そう言っていただけると、助かります」
エイ『英)きっと京太郎のことだもの、派遣先の学校すべてに、男子用宿泊室を作って――とかお願いしてくれるはずよね』
京太郎「……えっ」
エイ『英)もちろん二週目にも持ちこされるから、宮守にも男子用個室ができるわ。寮とも近いでしょうから、私も気軽に遊びに行けるし――』
京太郎(あかん……っていうか二週目ってなに!)
エイ『英)それで台風が来て、どうしよう帰れないわ……それなら先輩、泊まっていってください……京太郎、ダメッ、ダメよっ、あんっっ……』
京太郎「英)先輩、しっかりして!」
エイ『英)はっっ! ご、ごめんなさい、つい没頭してしまったわ……』
京太郎(この人、学校では大丈夫なんだろうか……)
エイ『英)ごめんね、京太郎。久々に母国語で話せるから、ちょっとテンションが上がってしまって』
京太郎「英)いえ……先輩方とは、英語では話されませんか?」
エイ『英)みんなの英語の勉強のために、少しくらいはするわね。でもそれ以外では、私の日本語の勉強のために、日本語でお願いしているの』
京太郎「英)ああ、なるほど……俺も日本語のほうがいいですか?」
エイ『英)ダメ』
京太郎「えぇ……」
エイ『英)うふふっ♪ それは私が、京太郎の英語くらい完璧に、日本語を話せるようになってから……ね?』
京太郎「――――」
京太郎「英)はい、楽しみにしています」
エイ『……ま……まだ、少し……しか……話せないけど……』
京太郎「エイスリン先輩?」
エイ『きっと――もっと、上手くなるから……ねっ』
京太郎「英)はい……ありがとうございます」
エイ『え?』
京太郎「英)エイスリン先輩が、宮守に……日本に来てくださって、本当によかった」
エイ『英)……私も。日本に来て、みんなに会えて……京太郎に会えて、本当に嬉しい』
京太郎「……お誕生日、おめでとうございます。これからも、よろしくお願いします」
エイ『ありがとう……こ、こちらこそ、ヨロシク――』
~7月第四週金曜
京太郎「――そんなこんなで、もう週末……そろそろ新道寺ともお別れか」
京太郎「そういえば、来月からは理沙さんも、福岡から兵庫――神戸に移籍だったな。もっとも、大半の日程は大会とかぶってるし、試合は再来月からになるんだろうけど」
京太郎「……ん? 理沙さんといえば、なにかあったような――」
ギュイィィィィィンッ、キキィィィ――ッッ! バンッ、バタンッ!
京太郎「……え?」
ピンポーン
京太郎「……いまの、車の音だよな? え、ってことは、運転手がここに来たってことか?」
京太郎「そんなすげー車乗ってる人に、なんか恨み買うようなことしたっけか……」
ピンポンピンポンピンポーン
京太郎「ああああ! わかりましたっ、出ますから!」ガチャッ
京太郎「何事ですか、こんな朝から――」
理沙「っ……お、おはようっ……」
京太郎「……理沙さん?」
京太郎「どうぞ、粗茶ですが」コトン
理沙「恐縮……」
京太郎「いえ――それより、どうされたんですか、こんな朝から」
理沙「これ!」
京太郎「ベルト……あっ」
理沙「知ってる?」
京太郎「あー……はい、俺がお贈りしたものです」
理沙「よかった!」ニコッ
京太郎「そ、その確認にわざわざ……?」
理沙「お礼!」
京太郎「……それは、ご足労いただきまして。けど、電話でもよかったんじゃ?」
理沙「緊張!」
京太郎「……顔を合わせるよりですか?」
理沙「そう!」
京太郎「まぁ……電話越しだと、相手の顔も見られませんし、会話が難しいですよね」
理沙「っっ!!」コクコクッ
京太郎「わざわざありがとうございます、ご丁寧に」ペッコリン
理沙「こ、こちらこそっ!」
京太郎「あまり高いものをご用意できず、申し訳ないのですが……」
理沙「そ、そんなことないっ」カチャカチャ
京太郎「ちょお!? な、なにしてるんですかっ、いきなり――」
理沙「替える!」
京太郎「かえ――えっ、ベルト付け替えるってことですかっ?」
理沙「そう!」シュルッ
京太郎「お、落ち着いてくださいっ、肌蹴てます! お、おへそが、さっきからチラチラ――」ジー
理沙「見すぎ!」バッ
京太郎「すいません!」
理沙「あっち!」
京太郎「はいっ、よそ向いてます!」
京太郎(――まぁ気配でどういう動きしてるかはわかるんだけど)
カチャカチャ、シュルシュル
京太郎「……もうよろしいでしょうか」
理沙「どうぞ」
京太郎「……つけてくださる、ということですね」
理沙「どうかなっ」
京太郎「俺がいうのもなんですが、よくお似合いかと」
理沙「よかった!」ニッコリ
京太郎「ん……でもどうして、こちらに来てから?」
理沙「確認」
京太郎「……そういえば。けど、ご自宅に届いたのなら、ご自宅を知っている相手から、ということになりますし、俺でなかったとしても、気心の知れた相手なのでは?」
理沙「甘い!」
京太郎「えっ」
理沙「ストーカー!」
京太郎「ああ……確かに、理沙さんほど人気のある方なら、そういうのがいてもおかしくないですもんね」
理沙「っっ……そ、そんなこと……」カァッ
京太郎「……これまでに、そのようなことが?」
理沙「……少し」
京太郎「なんですって!」ガタッ
理沙「だ、大丈夫っ」アセッ
京太郎「大丈夫なんてことありません! さぞお辛い目に遭われたでしょうにっ……」
理沙「も、もう済んだこと――」
京太郎「心の傷に時効はないんですよ!」
理沙「お、おう……」
京太郎「そんなことも知らず、不躾に荷物を送りつけるようなことをして……俺はなんて浅はかなことを……」
理沙「…………」
理沙(ファンの子が、帰り際にお手紙くれたっていうだけなんだけど……)
京太郎「これ以上、理沙さんを不安にさせないためにも、できるだけプレゼントは送らないように……」
理沙「――っ!?」
京太郎「そうだな、同じことを繰り返さないようにして、ここは――」
理沙「だ、だめ! いいから贈って!」
京太郎「ここはやはり、手渡しをメインに――えっ?」
理沙「えっ」
京太郎「……わかりました。そうですね、手渡しのほうが、不安を刺激するかもしれませんし……」
理沙「えっ、あっ、ち、ちが――」
京太郎「今後はチーム事務所のほうにお送りし、事務方へ連絡をしておくことにします」
理沙「!?」
京太郎「あ、大丈夫です! 理沙さんがプレゼントを喜んでくださっていることは、こうして着けて見せてくださったので、わかってますから!」
理沙(わかってない! 色々ずれてる!)アセアセッ
京太郎「――ご安心ください、理沙さん」
理沙「な、なにを……」
京太郎「今後、なにかあれば――俺が必ずお守りします」
理沙「……これは?」
京太郎「なにか危機に陥りましたら、これをお吹きください」
理沙「……こう?」スゥー
理沙(あれ、音が鳴らな――ん?)
京太郎「~~~~~~っっっ!?」ジタンバタンッ
理沙「ど、どうしたのっ?」
京太郎「い、いえ、お構いなくっ……至近距離で音を聞いて、少し耳が……」キーン
理沙「??????」
京太郎「と、ともかく……なにかあれば、遠方であろうと駆けつけられますので……いざというときには、どうぞご使用ください」
理沙「わ、わかった……」
京太郎「ふぅ……では、理沙さん」
理沙「あ、うん」
理沙(はぁ、これでお別れか……)ションボリ
京太郎「……よろしければ、新道寺へいらっしゃいませんか? 大会前の追い込みで、今日は一日特打ちの予定なので」
理沙「えっ」
京太郎「理沙さんがご指導くださるなら、とても嬉しいです」ニコッ
理沙「っっ……行く!」
京太郎「ありがとうございます――では、参りましょう」
理沙「乗って、送ってく!」
京太郎「畏れ入ります」ニッコリ
~7月最終日
京太郎「では――短い間ではありましたが、お世話になりました」
姫子「うん……京太郎がここんおったとは、忘れんけん」
煌「それに、いつ帰ってきてもいいんですからね」
朱里(友清)「それに、来月は東京で会えっとやから、寂しいいうこともなか」
京太郎「だな……その、来月は敵同士ってことになりますけど――お互い、長く勝ち残れるよう、優勝目指して頑張りましょう」
姫子「そうやな……有珠山には絶対負けん」ゴッ
京太郎「えっ」
煌「ふふ、意気込みですよ、意気込み」
京太郎「そ、そうですよね……」
朱里「はように当たって蹴落としてやりたかなんち、誰も思っとらんと」
京太郎「」
姫子「そういうことやけん、よろしゅう伝えとってくれんね」ポンポンッ
京太郎「どういうことですか!?」
煌「絶対に負けませんという、我々の挑戦状ですよ」
京太郎「そんな生易しい物じゃなさそうなんですけど!?」
朱里「去年は五位決定戦で当たった因縁もあっとやし、今年もよか試合ばしたかよ」ニヤァ
京太郎「なに企んだ友清ァ!」
姫子「大丈夫よ。ほかの学校もみーんな、同じように思っとるけん」
京太郎「狙われてるんですか!? 普通なら去年優勝の清澄か、春優勝の白糸台ですよね!?」
美子「京太郎くん、さっきからツッコミばっかしとっとうねぇ」
仁美「なんもかんも政治が悪い」チウー
京太郎「いや、もう、こっちとしても意外で……他校だと、最終日はもっとしんみりしてましたし……」
利仙「風土の違いでしょうか? 九州の女性は芯が強く、夫の帰りを待つのも得意ですし、そのことも影響しているかと」ニコニコ
京太郎「それは、なにか違うような……」
理沙「京太郎くん」
京太郎「理沙さん、お世話になりました」
理沙「ん……しっかり!」ポンッ
京太郎「はい――そうですね、こんなことで動じてられません。大会では、しっかり結果にコミットします」
煌「急に意識高くなりましたね……」
朱里「どうせ意味の半分もわかっとらんと思います」
京太郎「わかってるわ! 力強く約束する、みたいなニュアンスだろ? 今回のだと、必ず優勝を――」ハッ
姫子「……んふっ♪ そいでこそよ、期待しとっと」ポンッ
美子「さすが京太郎くん――まぁ、余裕やろうね?」
仁美「政治とか関係なか」チウー
京太郎(謀ったな、朱里!?)
利仙「……わたくしも、解説のお仕事等で東京に参りますので。男子決勝のお仕事を頂戴いたしましたら、力を尽くさせていただきます」
京太郎「あ、ありがとうございます……まぁ決勝に残るのも、結構勝ち進む必要がありますけどね」
理沙「しっかり!」
京太郎「はい! 気合入れます!」ビシッ
理沙「よろしい」
煌「では――そろそろお時間ですね」
京太郎「っと、そうですね……ではみなさん、お元気で。また東京で、お会いしましょう」
姫子「っ……京太郎も、元気でっ……」ウルッ
煌「夏こそ体調管理は厳しく、ですよ。大会中になにかあれば、私たちにも連絡してください」
朱里「ちゃんと――面倒ば、見たるけんね」
京太郎「おう、サンキュー」
美子「私たちも、哩と一緒に応援しとる予定やけん」
仁美「……グッドラック」
京太郎「はい、尽力します」
利仙「では、ごきげんよう」
理沙「またね!」
京太郎「ありがとうございます――では、行ってまいります!」
最終更新:2026年01月19日 22:56