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~新幹線車内、日誌

【7月最終日】

 明日からは全国大会です。
 出場される方も、そうでない方も、大会中に得るものは大きいでしょう。
 俺も同じです。
 この大会で、もっと成長できればと――そう思いながら、東京へ向かっています。

 このひと月、新道寺で得られた経験を活かして、一つでも多く勝てるよう邁進いたします。
 新道寺でお世話になったみなさん、本当にありがとうございました。

……………………

『ちょっと待ってください! 北海道に戻って、そこから一緒に東京じゃないんですか!』
『そりゃないぜ、京ちゃーん』
『宿の予約も終わってるんだよ? 同じホテル、ちゃんと取ってあるからね。勝手に別の宿取らないように』

 ……は?

『どこの宿。私も取り直す』
『同じく、私たちも取り直しましょう』
『そんな余計な予算ないわい……』
『京ちゃんだめだよ! お、おおお、女の子と一緒なんて、そのっ……よくないよ!』

 ……すでに女子と同じ部屋で、何度か寝泊りしてるって言ったらどうなるんだ。
 まぁ今回は、師匠と同じ宿を取らせていただいてるんだけどな……あ、揺杏さんか由暉子にメールしとこう。

――――――――

~新道寺

「京太郎……」
「私たちも、京太郎くんに教わったことを活かして、一つでも先へ進みましょう」
「そん通りです、花田先輩!」
「そう、やな……そん通りよ! よし、円陣組むぞ! 新道寺集合!」

「勝つぞォ――――ッッッ!!!」
『えいっ、えいっ、おぉ――――っっっ!!!!』

~7月最終日、終了


~新千歳

京太郎「――え」

由暉子「京太郎! よく帰ってきてくれました……嬉しいです」ギューッ スリスリスリ

京太郎「ゆ、由暉子!? あれ、俺は新幹線で、東京へ――」

揺杏「ほい、執事さんからの預かりもの」ピラッ

京太郎「しつ――師匠ですか!?」バッ

ハギヨシ『女性のお願いを無碍にしてはいけません。東京入りくらいは、北海道代表として一緒にするように』

京太郎「こ、これは師匠の字……イエス、マスター!」ビシッ

成香「い、いいのかな?」

京太郎「もちろんです! 俺は今月、有珠山高校の一員なんですから! 一緒に動かないと」

揺杏「調子いいなぁ、こいつ……」

由暉子「なんでもかまいません。一緒に行けるなら、それだけで……」スリスリ

成香「ユキちゃん、そろそろ交代。一人だけでマーキングしちゃだめだよ」

由暉子「もうですか? 仕方ありません……」

京太郎(え、マーキングってなに?)

揺杏「それより京ちゃん――これ、試合用のユニフォームな」ポンッ

京太郎「え、俺の分ですか?」

揺杏「そうそう。女子エースの由暉子の分と、男子エースの京太郎の分な――それ着て、しっかり目立ってこい」

京太郎「――押忍!」

京太郎「では、そろそろ搭乗時間ですね、行きましょうか」

揺杏「よし、行くぞ!」

由暉子「ちょっと待ってください、揺杏先輩」

成香「どうしてナチュラルに隣に座ろうとしてるの」

揺杏「そこはそれ、私部長じゃん、部長」

由暉子「それならなおさら、誰かの隣というのは問題があります」

成香「そうだね。公平を期して、一人席に座らないと」

京太郎「2人ずつで座れるよな!?」

一年ズ「あ、私たちは2人ずつで4席いただいてますので」

顧問「……私も端の2人席にいるから、余った人は私とね」

京太郎「遠足バスの最前列かよ……」

揺杏「あ、先生いらっしゃったんですね」

顧問「泣くよ?」

由暉子「なるほど、真ん中は三列シートなんですね」

成香「つまり、左右に一人ずつ座れる……」

京太郎「……俺、窓際が――」

三人「は?」

京太郎「なんでもないです」

一年ズ「京太郎さま、弱いです」

京太郎「三人に勝てるわけないダルルォ!?」

顧問「あ、くじ引き作ったから、よかったら使ってね」

三人「ではありがたく」

揺杏(遠征のときはユキに取られたからな――)

成香(ここは絶対に譲ってもらう、できれば右――)

由暉子(独占したい……やっぱり京太郎窓際のほうがいいんでしょうか……)

成香「右!」

揺杏「左!」

由暉子「」

京太郎「……じゃ、座るか」

由暉子「待ってください! もう一回! 泣きの一回!」

揺杏「往生際が悪い!」

成香「帰りのチャンスもあるし、行きは我慢してね」

由暉子「くっっ……わかりました……では、ホテルの部屋は相部屋でお願いします」

顧問「あなたたちは先生と同じです!」

揺杏「なん……だと……!?」

成香「横暴です!」

一年ズ(残当)

由暉子「じゃあ京太郎はどうなるんですか!?」

京太郎「いや、だから別のホテルで――」

顧問「同じホテルで一人部屋です」

京太郎「は?」

揺杏「はい、執事さんのメモ」

ハギヨシ『北海道代表として、同じホテルに滞在するべきです』

京太郎「イエス、マスター!」

一年ズ「つまり、私たち4人が一部屋、先輩方と先生で一部屋、京太郎さまはお一人と」

京太郎(相変わらずさま呼び慣れねぇ……まぁ先輩はさま付っていう有珠山の伝統なら仕方ない)

由暉子「……仕方ありません。誰とも相部屋でないなら、それでよしとしましょう」

揺杏「だな」

成香「ご飯は一緒に食べられるみたいだし、大丈夫だね」

由・揺・成(……買い物行くフリして、部屋に行けば問題ないし)

京太郎(……嫌な予感がするのう)



~機内

京太郎「……あのー」

成香「ん?」ギュッ

揺杏「トイレ禁止な。ここから移動しないように」ギュッ

京太郎「トイレくらいは行かせてくださいよ……」

由暉子「くっっ……」ギリギリギリ

成香「はぁ……久しぶりの京太郎くんの手、大きくてあったかい……」スリスリ

京太郎「ちょ、成香さんっ……」

成香「この手に触れてると、全国でも頑張れる気がするの……」

京太郎「う……い、いくらでも握っててください……」

成香「うん、ありがとう♪」

揺杏「じゃあこっちもな」ギューッ ニギニギ スリスリ

京太郎「っっ……」

揺杏「あれ、なんも言わんの?」

京太郎「え、ええ、はい……」

京太郎(裁縫やってるだけあって、指の動きが繊細というか……器用な、動きをっ……)ビクンビクン

揺杏「手が汗ばんできたね~」クチュクチュ

京太郎(やめろぉ!)「ナイスゥ!」

一年ズ(ゥーッ!)

顧問(東京まで二時間くらいかー、寝よ……)zzzzz




~成田?羽田?

京太郎「うぅ、寝不足だ……」

成香「寝かせなかったからね」

揺杏「ちょっと激しくしすぎた」

ザワ・・・ザワ・・・
京太郎「言葉選べ!」

由暉子「大会中は私が寝かせませんっ……」

顧問「はい、移動しますよー。バスと地下鉄だから、迷わずついてきてください」

一年ズ「先生、注意とかは」

顧問「あの子たちの指導はほぼ諦めました。一年のみなさんはまっすぐ育ってください」

一年ズ「お、おう……」

京太郎「あ、そういえば今日の予定はどうなってましたっけ」

揺杏「えっと、とりあえずホテル行って、荷物置いて休憩したら、会場移動だな。書類提出と会場の下見で」ギュッ

京太郎「了解です。あ、書類はどなたが?」

成香「私だよ。揺杏ちゃんだと心配だから」

揺杏「なにおう!?」

京太郎「安心しました。では、俺の分もお渡ししておきますね」

成香「じゃあ一緒にファイリングして……はい、京太郎くんが持っててね」

京太郎「は、はい……ではお預かりしておきます」

成香「京太郎くんなら失くさないから、安心」ギュッ

京太郎「プレッシャーすごいんですけど……まぁ、失くさないようにします」

由暉子「ちょっと待ってください! もう飛行機は降りたのに、いつまで隣席気分なんですかっ」

揺杏「いいじゃん、別にさー」

成香「そうそう。先輩だし、たまにはこれくらい」

由暉子「そういうのは電車とバスの席を決めてからにしてもらいましょう!」

京太郎「……た、たまには一年とも座って、交流したいんだけど」

先輩ズ「は?」

一年ズ「いいえ、私たちは遠慮しておきます」

先輩ズ「だって」

京太郎「くそっ、くっそぉっ!」

 なんか交代で三人に囲まれたそうです


~ホテル

京太郎「会場まで15分、いい立地だぁ――あ、色々な荷物は俺の部屋にまとめておきます」

顧問「はい、よろしく」

由暉子「ではお願いします」ノシッ

京太郎「――荷物に乗らない」

由暉子「私のことはお構いなく。お部屋までで結構ですので」

京太郎「……俺としても非常に残念だけど、大会中に問題は起こしたくないからな」ヒョイ

由暉子「あんっ……仕方ありません、納得します」

由暉子(お姫様抱っこで下ろしてもらえましたし、よしとしましょう)

揺杏「しっかし……チラホラほかの学校もいるなぁ。それに、結構見られてるような」

京太郎「去年の夏はベスト8ですしね、注目されますよ」

成香「いや、京太郎くんを見てるんだって」

京太郎「いやー、男子チャンプくらいで、そこまでは……」

一年ズ(相変わらず自分の価値をわかっていらっしゃらない……)

由暉子「ふむ――とりあえず京太郎、このタスキを」

京太郎「あん? なにこれ」シュルッ

京太郎「――サインおことわり?」

揺杏「あー、それは確かに」

京太郎「なんすかこれは」

成香「ホテルとか会場で、人が集まって来ちゃうと迷惑だからね。牽制しておかないと」

京太郎「そんなことあるわけ――と思いましたけど、北海道の予選ではありましたしね」

由暉子「そういうことです。今月の京太郎は、私たちの京太郎ですから――それを忘れないように」

京太郎「……おう、了解。でもタスキは外す」

由暉子「どうしてですか!」

京太郎「恥ずかしい」

成香「……一理あるかも」

京太郎「まぁちゃんと断るようにするから」

由暉子「……わかりました」

揺杏「んじゃ、とりあえず荷物運ぶか。まだ余裕あるし、一時間後にロビー――で、いいですかね?」

顧問「はい、大丈夫です。ただし、ホテルからは出ないようにね」

全員『はーい!』

京太郎「さて、それじゃ荷物も運び終わったし、書類も持った――待ち合わせまで、なにしてようか」

京太郎「師匠にご挨拶に伺おう――」

京太郎『師匠、もう到着されてますか?』

ハギヨシ『ええ、一週間前に……須賀くんは今日ご到着でしたね』

京太郎『はい、いまし方。それで、師匠にご挨拶に伺おうかと――いまはホテルでしょうか』

ハギヨシ『そうですね。お嬢様方になにかありましたら、すぐに移動する予定ではおりますが』

京太郎『では少しだけ。お部屋の詳しい座標は――ああ、そこならわかります。では、移動しますので』

京太郎「ご無沙汰しております、師匠」

ハギヨシ「飛雷神も随分上達しましたね」

京太郎「マーキングだけじゃなく、知らない場所は座標がないと難しいので、まだまだですけど」

ハギヨシ「その年でこれだけの練度なら十分でしょう」

ハギヨシ「しかし、今日は書類提出の日かと思いますが……みだりに移動していては、同チームの方々に叱られるのでは?」

京太郎「そうですね、ホテル外には出ないようにと言われていました」

ハギヨシ「おやおや」

京太郎「まぁホテル内からホテル内の移動ですし、大丈夫かと」

ハギヨシ「ふふっ、まったく……須賀くんのような生徒を持った先生は、ご苦労されるでしょうね」

京太郎「うぐ……た、確かに師匠にもご迷惑を……」

ハギヨシ「いえいえ、私のほうはあまり手もかかっていませんし……さ、どうぞ。せっかく来たのです、お茶でも飲んでいきなさい」

京太郎「っっ……気配もなく、お茶だけを……さすが……」

ハギヨシ「慣れですよ。須賀くんもあと二年あれば、このくらいはできます」

京太郎「だといいんですけど……っっ……す、げぇっ……香りだけじゃない、茶葉本来の味が……全身に広がるみたいだっ……」

ハギヨシ「お茶は本当に奥が深いですからね……研究次第では、まだまだ質を上げられるでしょう」

京太郎「っっ……ご指導、ありがとうございますっ……」

ハギヨシ「ふふ、指導などとんでもない。私は友人として、もてなしをしただけですよ――ん?」

京太郎「どうかされましたか?」

ハギヨシ「お嬢様方よりお呼びがかかりそうです。残念ですが、ここまでですね」

京太郎「はい――」

京太郎「――師匠、なにかお手伝いできることはありませんか」

ハギヨシ「ふむ……お時間はまだよろしいのですか?」

京太郎「はい。一時間後に集合なので、まだ余裕が」

ハギヨシ「では少々手をお借りしましょうか。移動は私がやりましょう、肩を掴んでいてください」

京太郎「はいっっ!」

透華「ハギヨシッ!」パチンッ

ハギヨシ「はっ」

京太郎「はっ」

一「えっ」

智紀「須賀、くん……?」

純「なんでだよ!」

ハギヨシ「少々事情がありまして――それはともかくお嬢様、衣様のことでしょうか」

透華「え、ええ、そうですわ! あの子がホテルで迷子になっているようですの。探してきなさい!」

ハギヨシ「はっ……では須賀くん、ご協力を」

京太郎「心得ました!」

透華「……まぁよろしいでしょう。須賀さんの実力は衣も認めていますし、顔を合わせても、逃げられるということはないでしょう」

一「それじゃ、ボクらはトイレとか浴場のほうを見て回ろうか」

純「だな。ハギヨシ、京太郎、ほかは頼んだぞ」

智紀「私は、連絡係で待機してる……」

透華「そうですわね、入れ違いになっては困りますし……では皆、行動を開始なさい」


京太郎「さて、どこから探すか――」




~屋上

京太郎「確か衣様は、高いところがお好きだとか――」

京太郎「屋上は鍵がかかってるだろうから、こっちの展望台か、展望ホテルのほうか――」

衣「む……?」

衣「おお、京太郎ではないか!」

京太郎「っと……こ、衣様! その場所は危なくありませんかっ?」

衣「なに、この程度の高みから落ちるほど耄碌してはおらん……しかし奇遇だな。京太郎もこのホテルに逗留しておったか」

京太郎「いえ、俺はもう少し離れた、別のホテルで――師匠へのご挨拶に伺った次第です」

衣「うむ、そうか。師への恩義を忘れぬ姿勢、実に天晴」

京太郎「ありがとうございます」

衣「衣も再び京太郎に会えたことは、非常に嬉しく思っているぞ。有朋遠来とはこうした状況なのか――」

京太郎「もったいないお言葉でございます」

衣「ふふっ、構わんかまわん♪ それより、ハギヨシへの挨拶に来て、なぜこのような場所に? 宿は別のはずだが……」

京太郎「っと、そうでした――衣様のお姿が見えず、透華お嬢様がご心配されていました。俺と師匠は、捜索の命を受けて参った次第です」

衣「おお、そうか――ふむ、少し風を浴びたかっただけなのだが、久方ぶりの景色ゆえ、時を忘れていたようだ」

衣「ご苦労だったな。では戻ろう、共をせよ」

京太郎「はっ」

衣「それにしても……ふふっ、ハギヨシより先に見つけるとは、やるものだな♪」

京太郎「――いえ。おそらく師匠は、俺に機会をくださったのでしょう」

衣「ほう?」

京太郎「透華お嬢様に呼ばれた師匠に、俺が無理を言ってついてきてしまったので……なにしに来たのかと言われないよう、お気遣いくださったのだと思います」

京太郎「師匠はすでに衣様を見つけられていて、俺が初動を誤れば、師匠がこちらにいらっしゃったのではないでしょうか」

衣「ふむ――だろうな、あそこにいる」

京太郎「え――し、師匠!」

ハギヨシ「おや、見つかってしまいましたか」

衣「ふふっ、とーぜんだ♪ 衣の目から逃れられるものか」

ハギヨシ「おみそれいたしました……それでは衣様、参りましょう」

衣「うむ」

ハギヨシ「須賀くんも、お手柄でしたね」

京太郎「いえ、逆にお気遣いをいただいて……」

ハギヨシ「いえいえ、須賀くんなら見つけてくれると信じてのこと――それに応えてくれたのですから、師匠冥利に尽きるというものです」

京太郎「師匠……」ジーン



~部屋

透華「衣、無事でしたのね!」

衣「狭いホテルで迷うはずもなし!」

純「いやー、迷いかねないだろ、衣は」

一「まぁ無事に見つかってよかったよ」

智紀「それじゃ、会場に行く?」

京太郎「っと、俺も集合時間ですね――それでは透華お嬢様、衣様、師匠、みなさんも。失礼いたします」

透華「ええ、助かりましたわ。大会での活躍、期待していますわよ」

衣「京太郎の試合は再来週であったな。それまで滞在するのであれば、折を見て相手をしてもらおうか」

純「ま、来るなら歓迎するぜ。けど、それで調子崩さねーようにな」

一「手土産作ってきてくれてもいいからね、採点してあげるから」

智紀「あ、その前にお宝ショット……」パシャッ

師匠「では須賀くん、ご武運を」

京太郎「はいっ、ありがとうございます!」

~再び、滞在してたホテル・ロビー

京太郎「お待たせしまし――げっ、俺最後ですか?」

由暉子「遅いです」ムー

成香「お部屋にも行ったんだけど、出なかったし……」

揺杏「どこ行ってたん? 風呂?」

京太郎「はは、ホテルの探索に……」

由暉子「子供ですか、まったく」

揺杏「ま、時間はまだだからいいけど……それじゃ、揃ったし行くか」

成香「そうだね――でも、その前に」クンクン

京太郎「えっ」

成香「……別の女の子の匂いがするみたいだけど、なにしてたらこんなのつくのかな?」ジー

京太郎「」

成香「……なんてね、冗談だよ?」ニコッ

京太郎「な、ななん、なんだ、冗談ででで、ですか……」

由暉子「はい、冗談です。でも――」

揺杏「その動揺――間抜けは見つかったようだな」

京太郎「――っ!!」

由暉子「サインでもしてたんですか」ジー

京太郎「や、そうじゃなくて……」

成香「記念撮影? お部屋にでも連れ込まれた?」

京太郎「ち、違いますけど……」

揺杏「じゃあ廊下でくんずほぐれつか!」

京太郎「ほぐれってねぇよ! あと、会いに行ったのは男の人から!」

成香「きゅふふ」

京太郎「そっちでもなくて! ちょっとお世話になった人に、お礼とご挨拶を……」

揺杏「ほーん。で、なんで女の匂いで動揺すんの?」

京太郎「その方がお世話されてる方々に、女性がいらっしゃっただけです」

由暉子「……では、その方たちに会わせてください。ホテル内にいるんですよね?」

京太郎「う……」

成香「いないの? どうして? ホテルからは出ないようにって、言われてたよね?」

京太郎「その、ホテルから出ないように、移動をしたので……せ、セーフかなーっと、あははは」

揺杏「なにわろてんねん」

京太郎「すいませんでしたぁぁぁぁぁっ!」



~会場入り

京太郎「――着いたので、離してもらえないでしょうか」

由暉子「だめです」ギューッ

成香「マーキングし直しです」ギューッ

京太郎(だからマーキングってなんですか!)

揺杏「そろそろ交代じゃない?」

京太郎「いや、会場着きましたし、マジで離れてもらわないと……人の目が……」

一年ズ「移動中でもかなり見られてましたし、いまさらかと……」

京太郎「その理屈はおかしい」

「来たぞ、去年ベスト8の有珠山だ……」
「男子チャンピオンもいる……」
「須賀きゅううううん、こっち向いてええええええええええ!」
「写真いいですかっ、写真!」
「サインくださいっ、サインンンンッッ!」

京太郎「」

成香「すごい人気だねー」

京太郎「目が笑ってないです」

由暉子「いつ撮られるかわかりません、私たちは離れないほうがいいですね」

揺杏「由暉子たちだとちっさいからな、枠外にやられる可能性もある。私が一緒についてるよ」ギュッ

成香「ずるい!」

由暉子「そうですっ、どうせ顔だけアップになったら、誰が一緒でも同じじゃないですか!」

京太郎(だったら全員離れててもいいんじゃ……)

揺杏「ま、とりあえず書類提出に行くか」

京太郎「ですね。ま、全員で移動するのもなんですし、先生と一年はここで待っててください」

顧問「顧問なのに……まぁいいんだけど」

一年ズ「目立つだなんだ言いつつ、結局は先輩方を連れていかれるんですね」

京太郎「」

一年ズ「いえ、怒ってるとかじゃなく、素朴な感想です」

京太郎「棘があるよぉ!?」

由暉子「まぁいいじゃないですか」

成香「この子たちもそれだけ、京太郎くんのことを慕っているんです」

揺杏「ほらいくどー」

京太郎「あ、はい……では行ってきます」

京太郎「ふぅ、提出が済むと、なんとなく肩の荷が降りますね」

揺杏「失くしたらやばいからなー。まぁでも、ここからが重要なんだけどさ」

京太郎「はい。明日が開会式、明後日はもう一回戦ですからね」

由暉子「京太郎、見守っててください」ギューッ

京太郎「ああ、任せとけ」

成香「私も、頑張ります」

京太郎「サポートは任せてください」

イチャイチャ

京太郎「ただいま戻りました――あれ?」

顧問「お、お、お帰りいいいいい!」

一年ズ「待ってたんですよ、もう!」

京太郎「そんな泣かなくても……なにされたんだ?」

姫子「なんもしとらんと!」

京太郎「じょ、冗談ですよ……姫子さんはそんな方じゃないってわかってます」

咏「師匠を疑うなんて、悪い弟子だねー、知らんけど」

京太郎「いえ、ですから冗談で……ご無沙汰してます、咏さん」

健夜「有珠山の子たちだと思って、ちょっと挨拶しただけなのに」

京太郎(麻雀でじゃないよな?)

健夜「ん?」

京太郎「な、なんでもありません……お疲れさまです、健夜さん」

ネリー「京太郎! あーん、寂しかった――って、腕が塞がってる!?」

京太郎「う、すまん……っていうか一人か? 明華さんやハオはなにを――」

巴「……なにこの状況。京太郎くん、有珠山でなにやってるのかな? 姫様怒るよ?」

京太郎「違うんですっ、これにはワケが――携帯しまってください! 電話しないで! 霞さんに言わないで!」

はやり「まぁまぁ、落ち着いて☆ とりあえず、そこの小娘どもは離れようか★」

京太郎「はやりさん――え、いまなんて……」

揺杏「なんか濃いのが集まってきてんねー」

成香「この人数で済んだのは、運が良かった……のかな?」

由暉子「そうですね。下手をしたら全学校の部員が来ててもおかしくないですし、OGが先輩ぶって取り囲んでてもおかしくないですし、プロが権力を笠に攫っていってもおかしくありません」

京太郎「落ち着け由暉子」

由暉子「はい、落ち着きました」

姫子「おのれ有珠山、目の前でイチャイチャとぉ……ぜ、絶対お前らには負けんけん!」

ネリー「こっちもだよ! 有珠山倒すって、全員本気なんだから!」

京太郎「なんで目の敵にされてんだよ……」

咏「やれやれ、小娘どもはかわいくていいねぃ」

健夜「こっちもこっちで、解説担当で揉めるんだろうけどね……」

はやり「すこやんは女子決勝のお仕事があるから、去年みたいに解説入れないなんてことになるかも☆」

健夜「縁起でもないよ!」

巴「あ、そうそう。はいこれ、京太郎くん」

京太郎「え、なんですかこれ」

巴「永水のみんなが泊まってる宿のメモ。失くしたら祟られるから、注意してね」

京太郎「ちょっと待って、いまなに言いました!?」

巴「祟られるのが嫌なら、一回は会いに行ってあげてね」ニッコリ

京太郎「お、おっす……」

姫子「それじゃ、私はそろそろ戻るけん――京太郎、大会で浮かれるんはわかっとやけど、あんま羽目ば外さんようにね」

京太郎「あ、はいっ、お疲れさまです! 気をつけます!」

ネリー「あっ、やばい、ハオから電話……ネリーも戻るけどっ、京太郎! ちゃんと優勝してよ!」

京太郎「……ああ、頑張るよ」

巴「私も戻るけど――菫さんと哩さんと智葉さんも会いたがってたから、会ったら声かけてあげてね」

京太郎「……えっと、今日はご一緒ではないんでしょうか?」

巴「今日は私用だったからね。応援にはみんなで来るから、そのときにでも♪ それじゃあ、またね」

京太郎「……今日会ったこと、言わないほうがいいんだろうな」

咏「やーれやれ、面倒ばっかしょい込むねぃ、京太郎は」

京太郎「俺がなにげに楽しんでるっていうのも、問題なのかと」

咏「んじゃしょい込みついでに、時間あんなら一局どうだい?」

はやり「だめだぞ、咏ちゃん☆」

健夜「私たちもそろそろ打ち合わせ。移動するよ」

咏「げっ……ま、しゃーないやね」

京太郎「えりさんにあまり負担かけないようにしてあげてくださいよ……」

咏「はーあ、美人に甘いねぃ、京太郎は。まぁえりちゃんは真面目だかんねぃ、もっと適当でもいいのにさぁ」

健夜「咏ちゃんが適当すぎるんだよ……」

はやり「咏ちゃんと福与ちゃんのコンビも見てみたいけどね☆」

健夜「やめて、放送事故だよ!?」

京太郎(だろうなぁ……)

咏「んじゃな、京太郎~」ヒラヒラ

健夜「ごめんね、忙しいタイミングで来ちゃって」

はやり「試合は再来週だけど、調整はちゃんとするんだよ」

京太郎「はい、ありがとうございましたっ」

揺杏「しーっかし、あれだなぁ……予想はしてたけど、くっついてるくらいじゃまったく気にしないし」

成香「さすがって感じだよね……これで牽制できちゃうのは、名前もないモブファンだけかぁ」

由暉子「仕方ありません、私たちもそうですし……いまはできることで、できる戦いをしましょう」

京太郎(少なくとも麻雀の話じゃないってことだけはよくわかる)

京太郎「じゃ、とりあえず戻りましょう。移動で疲れましたし、今日はホテルでゆっくり休養、明日の開会式に備えるってことで」

顧問「そ、そうですね、帰りましょう……」ガタガタ

京太郎「だ、大丈夫ですか……? まぁプロの方々ですし、迫力ありますからね……」

一年ズ(い、言えない……実は一番プレッシャーを背負ってたのは、永水OGの人だったなんて……)

京太郎「日本代表エースにグランドマスターに牌のお姉さんが集まってたせいか、注目度が倍以上になってるような気が」

揺杏「それを派遣執事が集めたってのも要因なんだけど」

成香「マスコミがいらっしゃると困りますし、今日はもうホテルに戻りましょうか」

由暉子「賛成です。ホテルでしっぽりと休みましょう」

顧問「表現がおかしい!」

京太郎(先生がツッコミしてくれるから楽でいいなぁ)

一年ズ「京太郎さまはそこまでツッコミ要因ではないかと」

京太郎「!?」



~で、ホテル

京太郎「お疲れ様でしたーっと」

由暉子「夕食まではまだ時間がありますね、どうしましょうか」

成香「練習は……ホテル内ではできないね。近くに練習場や雀荘はあるけど」

京太郎「あー、そっか。自動卓持ってくんの忘れてたな……」

揺杏「京ちゃん、ここは清澄じゃないから大丈夫だって」

京太郎「風評被害! 別に清澄でもそればっかり運んでたわけじゃないですから!」

成香(運んでたことは否定しないんだ……)

「監督、しっかりしてください!」
「だめだじぇ、心が折れてるじぇ……」
「なにがあったんですか、監督!」
「あ、あっちで、京太郎が……」

京太郎「――ん?」

揺杏「まずい、京ちゃんに気づかれたか――防衛陣形!」

成香「うん」

由暉子「ここは通しません」

京太郎「えぇ……っていうか、なんか聞き覚えのある声だったような――」

淡「あーっ! キョータローだー!!」ダッシュ

シズ「えっ、京太郎!? うわっ、ほんとだ!」ダッシュ

京太郎「おう?」クルッ

淡「キョータロー♪」ダキッ

シズ「京太郎おおおおおおおおお!」ピョーンッ

京太郎「うおっ!? 淡! 穏乃!?」

由暉子「上から!?」

成香「と、届きません!」

揺杏「京ちゃん逃げて!」

京太郎「無理ですよ! うおっと、あぶねっ!」ガシッ ガシッ

淡「ナイキャッ! キョータローもここのホテルなんだ、ナーイスッ♪」

京太郎「俺もって……白糸台もか?」

穏乃「阿知賀もだよ!」

京太郎「その二校だったら、もうちょい高いホテルに泊まれたんじゃないのか?」

淡「なんか近いからって理由でここにされた。寝坊なんてしないのにー」ブー

京太郎「あ……(察し)さすが誠子先輩、賢明だな」

淡「どういう意味だこらー! ま、キョータローとシズーもいるなら、大正解だったけど」

穏乃「私も、淡と京太郎がいるなんて思わなかったよ!」

京太郎「そっちはなんでここ?」

穏乃「へ?」

京太郎「あー……いや、なんでもない」ナデナデ

穏乃「ウェヒヒ」

京太郎(こいつ、阿知賀が去年いいとこ泊まってたこととか知らねーんだろうなぁ。まぁお金とか気にしない、いい子に育ってくれ)

由暉子「いつまでくっついてるんですか!」グイー

成香「いったん離れてください! 京太郎くんはうちの子なんです!」

淡「やーだよーだ! 私は私よりよわっちいやつの言うことなんて聞かない!」

京太郎「いいから離れろ。それと先輩たちは弱くない」ポイッ

淡「あわっ! ひっどーい!」

穏乃「っと、そうだね、重かったよね!」ヒラリッ

京太郎「お前はむしろ軽すぎる。ちゃんと飯食ってんのか?」

穏乃「食べてるよー、今日だってめっちゃ食べるよ!」

京太郎「あー、そういや晩飯はバイキングだっけか」

バタバタバタッ
憧「ちょ、シズ! 二階からダイブして、大丈夫だったの!?」

玄「穏乃ちゃん、ケガはない!?」

京太郎「憧、玄さん! それに――」

灼「あ、京太郎だ」

宥「京太郎くんもここだったんだね~」

京太郎「宥さん、それに灼先輩も……」

灼(……あれ? 私だけ先輩?) ←軽くショック

京太郎「宥さんは監督ですか?」

宥「違うよ~。自腹でついてこようとしたら、コーチ枠ってことで連れてきてくれたんだ~」

灼「うちの監督は、熊倉先生だから」

京太郎「あ、そうでした……あとであいさつに行かないと」

揺杏「くっ、阿知賀勢のお出ましか……どうする、京ちゃん。部屋に逃げるか」

京太郎「いや、なんでそこまで警戒を……」

淡「あ、アコー! どうっ、E乗った?」ムニュッ

憧「ひああああっっ!? バカッ、アホッ、やめなさいっっ! まだ乗ってないわよ、たぶん……」(リッツ絵だとFはありそうだけど……)

京太郎「…………」

揺杏「お前がそういう態度だからだよ!」ベシッ

京太郎「すいませんっ!」

由暉子「私だけでは足りませんか」タプーン

成香「……ごめんね、京太郎くん」

京太郎「わああああああ! 気にしないでくださいっ! っていうか、そんなのこだわってませんから!」

淡「私もやっばいんだよねー、FっていうかGくらいありそうに描かれてるから♪」

京太郎「」

成香「~~~~~~~~っっっ!!!」ゲシッ ←無言の蹴り

京太郎「すいませんっっ!」


誠子「やれやれ、相変わらず京太郎くんの周りは騒がしいなぁ」

尭深「淡ちゃんのせいもあると思うんだけど……お久しぶり」

京太郎「誠子先輩、尭深先輩! ご無沙汰してます」

灼(あ、私だけじゃない)ヨカッター

誠子「灼も久々、元気してた?」

灼「うん、問題なし。そっちは部長どう?」

誠子「いやー、慣れないよね、ほんと。二年からやってた灼は偉いよ」

尭深「副部長も楽じゃないしね」

玄「そうでしょう、そうでしょう!」

憧「いや、副部長あたしだから」

宥「あ、副部長といえば……」

穏乃「あぁ――――っっ!」

京太郎「うおっ!? どうした、穏乃!」

穏乃「和――っ! それに咲もいる!」

京太郎「――は?」

由暉子「――っ!」

揺杏「清澄、だと……」

成香「京太郎くん、大丈夫だから……」

京太郎「いや、別に平気ですって! それより、和に咲って……あっ、マジだ。あとは優希と……部長?」

久「――っ!」ビクッ

咲「み、見つかっちゃった……」

和「っ……行くしかありませんね……」

優希「監督、大丈夫だじぇ! 私らで支えるから――」

淡「あれ、悪待ちの人がなんかしにかけてる」

誠子「そういうこと言わない」

憧「けど変ね、いつも余裕かましてる人なのに」

宥「風邪かなぁ……ちょっと寒いし」ブルブル

成香「夏真っ盛りなんですけど……」

灼「宥さんはちょっと変わってて」

京太郎「部長、どうしたんですかっ」

久「あ……きょ、京太郎……ごめんね……ごめんなさい、本当に……自動卓を合宿所に持って来させたのは、自分でも最低だって――」

京太郎「あ……だ、大丈夫ですって! 気にしてないです、俺は全然!」

揺杏「あー、なるほど。あれ聞かれてたのか」

尭深「なに言ってたの?」

由暉子「練習場所の話をしていて、自動卓を持ってきてればここで練習できたのになー、と京太郎が」

咲「そんな拷問みたいな荷物運びしなくていいから!」

久「」


和「フレンドリーファイア!?」

優希「監督しっかり!」

京太郎「咲ィ! お前なぁ!」

咲「ああああああっ、ごめんなさい部長、じゃなかった監督! 違うんです!」

京太郎「あれ、そういやまこさんは?」

和「うちは、その……出場者は咲さんとゆーきだけですから、付添は私と監督で……部長のほうがと、進言はしたんですけど……」

京太郎「あー……そっか。まぁ来年も考えると、和で正解だろ、うん。あんま気にすんな」

和「はい……」

玄「京太郎くん、和ちゃんにだけ特別優しくないかな」ヒソヒソ

淡「それあるー! でも大丈夫、私たちも育てばね……いまの5倍は優しくされるよ!」

穏乃「え、なんか関係あるの!?」

憧「あるかもしんないけど、京太郎が和に優しいのは……たぶん、それと関係ないとこ……かも」イジイジ

宥「あったかいんだけど……心が、寒いよぉ……」

揺杏「……私ら有珠山に、阿知賀、白糸台、清澄かぁ……なにこのホテル、関係者多すぎない?」

誠子「さすがにこれ以上はないと思うけど……少なくとも、派遣先はないはずだよ。見てないし」

灼「ご飯のときとか、すっごい騒がしくなりそ……」

尭深「永水も一緒だったら、色々面白かったかもね」ワクワク

京太郎(なんか妙な会話をされてるような……というか、あんまりロビーの真ん中で騒いでるのもあれだな……)

京太郎「――えーっと、ちょっと移動しませんか。話すなら端のソファのとこで……部長もお疲れみたいですし」

揺杏「んー? 大丈夫だけど」

誠子「うん、荷物置いてきたとこだしね、平気だよ」

灼「ありがとう、京太郎」

京太郎「……わざとですよね?」

三人『うん』

京太郎「うぐぅ……すいません」

揺杏「さすがに目の前でそれされるとへこむ」

誠子「所属校でそれだとねー、わかるわかる」

灼「たまにでいいから、部長って言ってほし……」

京太郎「わ、わかりました……また折を見まして――」

揺杏「まぁ名前呼びのが気持ちいいからいいんだけど」

京太郎「ああもう! と、とにかく、久さん……立てますか?」

久「――ん、大丈夫……久しぶりに刺激されて、ちょっとぐらついちゃったみたい」

京太郎「大事を取って、少し休んでください。水もらってきますので」

久「ごめんね、ありがと」

優希「心配したじぇ」

和「すいません、京太郎くん。咲さんも、不用意な発言は控えてください」

咲「私のせい!? まぁ、余計なこと言っちゃったけど……」

久「ううん、いいのいいの」

成香(……もしかしてあの人、わざとだったんじゃ……?)ジー

久「……ん? どうしたの、本内さん?」ニッコー

成香「い、いえ、なんでもありません……」

由暉子「やはり、油断ならない人たちばかりですね……」

~夕食の時間まで情報交換とか

「奈良も大学リーグは厳しいでしょ」
「そうだけど、やえちゃんたちもいるし、なんとかやれてるかな~」

「そっちの部長、そんななんだ……やっぱ楽できてるかも、私。灼でよかった~」
「私もそうだなぁ。誠子に感謝しないと」
「ゆ、揺杏ちゃんも真面目にはやってくれてるんですっ」

「なにこの流れ、やめてくんない?」
「そういえば憧も、後輩からは呼び捨てされてるの?」
「それはない。うちで先輩相手もタメ口なのは、憧だけだよ」

「ねぇ、ちょっと揉んでもいい? そっちのユキーのもできれば」
「な、なにを言ってるんですかっ!?」
「淡ちゃん、落ち着いて!」
「そうだよ! 和だって困ってるじゃん!」
「私は構いませんけど」
「ででで、では是非に――あ、いえ、お姉ちゃん、なんでもないですの――くぁwせdrftgyふじこ」


京太郎「……お久しぶりです熊倉先生。ご無沙汰しておりました」

トシ「久しぶりねぇ、須賀くん。あら、ちょっと大きくなったかしら?」

京太郎「最後に先生にお会いしてからだと、どうでしょうか」

トシ「ふふっ、人間的にという意味よ。ああ、そうそう。遅くなったし、いまさらだけど、全国出場おめでとう」

京太郎「ありがとうございます。先生にご指導いただきましたことを忘れず、臨みたいと思います」

トシ「はぁ、本当に……須賀くんは真面目でいいわね。昔の男子学生雀士ときたら、チンピラみたいなのとか、じーっと黙りこくってるようなのばっかりだったのよ」

京太郎「はは……俺もそう変わりませんよ。それにそういう方々も、いまなら皆さん、落ち着いた大人になられているのでは?」

トシ「……そうでもないのよねぇ」ハァ

京太郎「どんな大人なんですか……」

トシ「たぶん大会に来てるのもいるでしょうから、機会があれば紹介するわ」

京太郎「あ、ありがとうございますっ」

トシ「ええ……あら、もうこんな時間。そろそろ移動したほうがいいかもしれないわね、穏乃も限界みたいだし」

京太郎「本当ですね……では、ちょっと言ってきます」


京太郎「揺杏さ――ぶ、部長……そろそろ食事行ける頃合いかと」

揺杏「部長ってなんか気持ち悪いな」

京太郎「お前がへこむ言うから呼んだんダルルォ!?」

揺杏「まーまー、冗談だって。けどやっぱ揺杏さんのが嬉しいから、そっちでなー」

京太郎「はいはい……で、移動しましょうか、揺杏さん」

揺杏「んー、そうだな。成香ー、ユキー、行くぞー」

由暉子「あ、はい」

成香「そうだね。じゃあみんな、またあとで」

京太郎「テーブルは学校ごとにわかれてそうですけど」

揺杏「たぶん都合よく隣とかになってて、よその学校も移動しまくってると思うから、適当に話せるだろ」

京太郎「まぁ食事チケットつきだし、そうなるか……それじゃ、行きましょう」




~で、レストラン。今夜はバイキングだ!

京太郎「……さて、どこのテーブルに行くべきか」

揺杏「こらこらこら、なんでサーブ側なんだよ」

由暉子「座ってお食事してください」

成香「こっち空いてるよ」

京太郎(なぜかどのテーブルも一席用意されている……いや、この四校だけじゃなくて、ほかの学校もだよ? おかしくね?)

京太郎「……では失礼します」

成香「いらっしゃい」

揺杏「そうそう、先輩は立てないとなー」

誠子「……で、その大量の皿はなに?」

京太郎「みなさんのお好みのものがあれば、取りに行ってこようかと……」

灼「いやマナー違反だから」ズバッ

京太郎「」


玄「自分たちのは自分で取りに行くから、心配しなくていいよ~」

京太郎「はい」

尭深「それより私は、成香と揺杏の間に座ったのが気になる」

成香「だって京太郎くんは、有珠山の子ですから」

揺杏「まぁ私らが見てないと、なにしでかすかわからんし」

京太郎「おまいう」

灼「けど実際、京太郎は変なとこで警戒薄いから」

尭深「それわかる。もう隙だらけだよね」

京太郎「えっ」

誠子「落ちないけど、既成事実は作り放題、みたいな」

京太郎「そ、そんなことないです……ほら、俺って自意識の化け物みたいなとこありますし(震え声)」

成香「ないよ」

揺杏「流され放題だよ、お前」

京太郎「マジすか!」

玄「積極的じゃない子は不利だよね~」

京太郎「そんな風に思われてたなんて……」

「……そ、そうなのか」
「隣のテーブルでよかった……メモっとこう」
「物陰に連れ込めばなんとかなるかな……」
「トイレとか……大浴場とか……」
「いっそ部屋に……」

京太郎「なんか物騒なささやきが周囲から聞こえるんですが」

灼「いけない。周りに情報もらしちゃったね」

誠子「さすが人気者、注目されてるね」

京太郎「めちゃくちゃ怖いんですけど」

尭深「大丈夫だよ。京太郎くんとなにかあれば、小鍛治プロと麻雀を楽しむことになるわけだし」

京太郎「なんですかその物騒な処遇!?」

成香「物騒って言っちゃうんだ……」

玄「いっけないんだー、赤土先生に教えちゃおっかなぁ」

京太郎「やめて! 赤土はやめてぇ!」

揺杏「おいおい、うちの地元プロにきびしーこと言うなよー。っと、そろそろご飯取りに行こうぜー、お腹空いちった」

誠子「ん、そうだね。穏乃じゃないけど、私もかなり限界だし」

京太郎「え、ここで話切り上げるんですか!? 不安しかないんですけどっ!」

灼「いいから、一緒に来なさい」

京太郎「御意」

成香「やっぱり流される……」

玄「年上には弱いっていうデータもあるしね~」

尭深「だからこっちの席に来てくれたのかな?」




~食事中

玄「ところで――実際のところ、京太郎くんは赤土先生のことどう思ってるの?」

京太郎「どうって……強いですよね。あと頼りがいありますし、たまにダメなとこありますけど、それはそれでお世話欲をかき立てると言いますか」

揺杏「意外なほど高評価だった」

成香「それなのに、あんな扱いしてるんだ……」

灼「ハルちゃんが優しくて怒らないから、京太郎も甘えてるだけ」

京太郎「あ、甘えてませんっ」

誠子「一回り離れてるし、そこは甘えてても仕方ないんじゃない?」

尭深「学校ではどうだったの?」

灼「……あんま変わらなかったかな」

成香「在籍当時だと、まだ京太郎くんもそこまで強くなかったし……指導とかもしてもらってたんじゃ?」

揺杏「それでその態度はどうなん……」

玄「指導はどっちかって言うと、憧ちゃんがよくしてあげてたかな~」

尭深「へぇ……それであんなに育ったんだ」

京太郎「風評被害!」

誠子「え、なにが? 京太郎くんの実力のことだよね?」

京太郎「」

成香「……なに想像したの」

灼「やらし」

京太郎「ご、誤解です」

揺杏「お前の頭ン中はそのことばっかりか」

京太郎「違いますって!」

玄「仕方ないのです! おもちの魅力に抗える男子なんていません!」

京太郎「違うつってんダルルォッ!?」

京太郎「確かにでかいのは好きだけど、そこまで節操なくはありません!」

揺杏「でけぇ声で叫ぶな!」

京太郎「すいません!」

尭深「そっかぁ」ニコニコ

誠子「半端ない敗北感が……」

灼「これは屈辱」

玄「まぁまぁ、みんなもまだ成長するのですっ! そのためにもぜひ、松実館でご宿泊、ご入浴を!」

成香「ご利益あるの?」

玄「ふっふっふ、もちろんなのです……私とお姉ちゃんを見ていただければ、その目でわかっていただけるかと」

成香「……っ! た、確かにそうだよねっ……新子さんも、すっごく育ったみたいだし……」

京太郎(そこは関係ないような……あいつたぶん、そんなに松実館で風呂入ってないよな?)チラッ

「……なんかこっち見てない?」
「とんでもねーこと叫んだあとこっち見るとか、とんだ変態だじぇ」
「まぁまぁお二人とも」ニコニコ
「比較するのは仕方ありません」ニコニコ
「さいってー……」/////
「ふふふ、育てた甲斐があったね」ニヤリ
「ただいまっ、いっぱい取ってきたよ! って、どうしたの?」ゥ?

京太郎(いかん、誤解を招いた……)

成香「………………目の保養は済んだ?」

京太郎「そ、そんなことはけして……」

誠子「まぁでも、実際はそこまで気にしないってよく聞くよね」

京太郎「そう! そうなんですよ!」

揺杏「まぁ信用はないけど。そういうこと言ってるやつほど、彼女が小さかったら大きいのと浮気するっぽいし」

京太郎「マジだとしたら、大多数の男はその男を軽蔑すると思いますけど」

灼「だろうね」

尭深「目で追うのも浮気だとしたら?」

京太郎「すいません、それだけは勘弁してください。それはもう反射なんです、身体が勝手になんです」

玄「私は触らなければセーフだと思うな~」

灼「そりゃ触ったら完全にアウトだし……」

誠子「まぁサイズのことは置いといて――それ以外だと、どういう子に惹かれる?」

京太郎「ちょっと待ってください、この話題ずっと続くんですか?」

尭深「あんまりしたことない話だし、この機会にね」

成香「興味あります」

京太郎「メモ帳しまってください!」

揺杏「よそのテーブルもすげー注目してるし、気にすんな」

京太郎「余計にするわ!」

灼「いいから答える」

京太郎「アッハイ」

玄「なんでもいいよ~。髪が長いとか、気が強いとか、面倒見がいいとか、おいしくご飯を食べてくれるとか」

京太郎「急に言われてもなぁ……」

京太郎「――そうですね、やはりお仕えしたくなるような方でしょうか」キリッ

灼「は?」

揺杏「それ好きなタイプじゃなくね?」

京太郎「い、いいでしょ、別に! 惹かれるのはってことですし」

玄「うまく逃げたね」

成香「じゃあちょっと考えてみる?」

尭深「まず、名家とかのお嬢様だよね……」

誠子「私らの中にはいない? あ、玄とかは老舗のお嬢様か」

玄「えへへ~、そこまでお嬢様でもないけどね。庶民だよ、庶民」

灼「憧も神社の子だし、地元だと名家かな」

成香「ほかだと……やっぱり、龍門渕の方でしょうか」

京太郎「透華お嬢様と衣様には、師匠がいらっしゃいます。俺なんかがお仕えするなんて畏れ多いことです」

揺杏「お、おう」

誠子「筋金入りだね」

尭深「あとは……やっぱり永水のお姫様とか」

京太郎「――小蒔先輩は、そういう相手ではないです」

玄(おやぁ? 一瞬、間があったような……)

揺杏「いつも着物のプロ……三尋木プロも、いいとこじゃない?」

灼「聞いたことあるね」

京太郎「へー、知りませんでした」

誠子「あとは、元千里山の清水谷さんの家も資産家だっけ」

尭深「よく知ってるね」

誠子「うん。弘世先輩に聞いたことあってさ」

揺杏「あれは? 臨海の辻垣内……京太郎も働いてたし」

玄「うちと似たような感じなのかな~」

京太郎(ふぅ、なんとか話題を逸らせてよかった……)

灼(……うん、やっぱりあれだ)

灼(久しぶりに話して思ったけど、京太郎と話すの楽しいな)

灼(これは……そういうこと、なんだろうなぁ)

灼「ねぇ、京太郎」

京太郎「はい、なんでしょう」

灼「私のことも、灼さんって呼んでくれない?」

京太郎「え」

玄「ど、どうしたの灼ちゃん、急に」

灼「玄と宥さんもそうだし、おかしくないでしょ?」

京太郎「え、ええ、まぁ……」

尭深「あ、だったら私もいいかな。さんづけされるの、経験してみたい」

京太郎「……まぁ構いませんけど……えっと、灼さん、尭深さん」

灼「はうっ」

尭深「っっ……」ゾクゾクッ

京太郎「……恥ずかしいんですけど」

揺杏「くっ、なんてことだ……」

成香「誠子さんはどうします?」

誠子「え? い、いやー、私はまだいいよ、うん……ほら、先輩って呼ばれるほうが希少なとこあるし」

玄「一理あるね」

尭深「あとは、さんづけで呼ばれてるの宮永先輩に聞かれたら、大変だし?」

誠子「そ、そんなことは考えてないけどっ」

揺杏「あの人、やっぱ怖いん?」

京太郎「優しい先輩ですよ」

誠子「まぁ、京太郎くんにはね……」

尭深「優しいけど、厳しいよ。麻雀については特にね」

成香「チカちゃんも爽先輩も、そういう意味では優しかったかなぁ」

灼「うちも宥さんは、厳しいタイプではないよね」

玄「お姉ちゃんはとっても優しいのです!」


~お食事終了

京太郎「――ご馳走様でした」

全員『ご馳走様でした!』

トシ「明日は開会式だから、朝寝坊しないようにね」

阿知賀勢「はーい」

久「咲、二度寝しないように」

咲「なんで私だけなんですか!」

顧問「うちの子たちもね」

有珠山勢「はーい」

白糸台監督「各班、班長は点呼忘れないように」

白糸台勢「はいっっ!」

京太郎「……白糸台以外、緩いなぁ」

誠子「そういう校風だからね」

尭深「それじゃ、ひとまず解散だね」

トシ「消灯時間は一応11時よ。あまり遅くまで起きてないようにね」

灼「はい」

京太郎「妥当ですね」

久「遅くまで起きて、データ整理とか調整メニューとか考えないように」

京太郎「……はい」

白糸台監督「では解散。他校のみなさんも、ありがとう」

顧問「ありがとうございました」

揺杏「さて――」

成香「夜です」

由暉子「お楽しみの時間です」

穏乃「枕投げ!」

和「だめですよ、穏乃」

優希「このメンツなら、麻雀したいとこだが……」

咲「出場者だらけだからね。普通には無理かな」

淡「うー、つーまーんーなーいー」

憧「とりあえず、お風呂行こっか」

玄「賛成!」

宥「………………」

玄「あ、汗を流したいだけなのですっ」

宥「なにも言ってないよ?」ニコニコ

京太郎「……風呂、か」

京太郎「一人で入ろう」トボトボ



~お風呂はカットです、反省はしていない

京太郎「あぁ~生き返ったぁ~」

京太郎「露天大浴場、最高だな……安いホテルだけど、それは本気でありがたい」

京太郎「さて、先生方もおっしゃってたし、今日は早めに寝るかな。移動の疲れもあるし――」

京太郎「――早めに寝たいんだけど」

淡「まーまー、いいじゃん、たまにはさー」

京太郎「女子はみんなで風呂じゃなかったのかよ」

淡「行ってきたよー。で、いったん解散したんだけど、私だけこっちに来たのだ!」

京太郎「なにしにだよ……」

淡「んー? 久しぶりだったから?」

京太郎「答えになってねーぞー」

淡「あとは、お風呂上がりの淡ちゃんを見せてあげようかと」

京太郎「はいはい、かわいいかわいい」

淡「でっしょー♪」クルックルッ

京太郎「ってかなんでジャージ……ホテルの浴衣あっただろ」

淡「胸きつい」

京太郎「お前っ、大勢を敵に回すぞ!」

淡「それに動いてたら、なんか肌蹴ちゃうんだよねー」

京太郎(それは見てみたかった……)クッ

淡「あ、見たいって思ったでしょ! 変態! エロ助!」

京太郎「……否定はしない」

淡「えっ」ドキュッ

京太郎「……ま、一般論でな。正直、可愛い子の浴衣姿とか最高だと思う」

淡「あわっ、あわわわわっ」カァッ

京太郎「……っつかお前、髪濡れてんぞ。乾かしてやろうか?」

淡「ふぇっ、えぇぇっ!?」

京太郎「あー、つってもドライヤーは脱衣場か……部屋になら置いてあるけど、来るか?」

淡「なっ、ひっ……い、行かないっ! バカッ、へんたーい!」ダッシュ

京太郎「あ、おいっ……なんだったんだ」


淡「ぐぬぬぬっ……からかうつもりだったのに、キョータローめぇ……」

淡「……………………行けばよかったかも」ハァ

淡「っていうか、浴衣着ればよかった……あーでも、浴衣で部屋行ってたら……~~~~~~っっっ!」/////

ジタバタ モンモン
誠子「あれなに」

尭深「お年頃だねぇ」

誠子「おばさん臭いよ……」




~ってことで、0日目終了


~二年目8月第一週月曜

~朝

京太郎「ホテルとか旅館はいいなぁ、朝から大浴場が使えて」

京太郎「パルクールのあとの風呂ってのは、どうしてこうも格別なのか……ふぅ……」ブクブクブク


~朝食

京太郎「おはようございます。どうぞお席のほうへ、お飲み物はいかがなさいましょう」

由暉子「で――どうしてホテル側の立ち位置になってるんですか、京太郎……ミルクセーキ(意味深)を」

揺杏「しかもスタッフから指示とか受けてるし、それで動いてるし……んー、ブラック」

成香「それを認めるホテル側がすごいのか、溶け込む京太郎くんがおかしいのか……オレンジジュースください」

京太郎「いえいえ、そんなおかしなことじゃありませんよ」スッ

顧問「おかしいと言いながらナチュラルにスタッフ扱いだし、もうこれどっちもおかしいよね」

京太郎「スタッフの方がお一人、欠勤になったとお伺いしましたので。なにかお役に立てることがあればと申し出ましたところ、快諾いただいたんです」

由暉子「京太郎を断るわけがないので当然かもしれませんけど、それでもよく承諾されましたね」

揺杏「なにしたわけ。あれか、女社長たぶらかしたか?」

成香「そうなの、京太郎くん」ジロッ

京太郎「違いますよ! この、龍門渕バトラー養成コースの卒業証明を見せたので、技術と信用の問題をクリアできたわけです」

由暉子「なんですか、その妙な証は……」

揺杏「聞いてもよくわかんなそうだし、別にいいけど……それより、メニューはどれがおすすめ?」

京太郎「エッグベネディクトがおいしいですよ。それ以外だと、フリッタータのサラダ、スフレオムレツ、スープはコンソメよりポタージュが味も深くて――」

成香「なんだか卵に偏りがあります……」

京太郎「わ、和朝食のメニューもありますよ。だしまき、おひたし、味噌汁に焼き魚」

成香「じゃあ京太郎くんが作ったものがいいな」

由暉子「! 私もそれ!」

揺杏「私もー」

京太郎「はいよろこんで! ただいま、お持ちします!」

顧問「」

一年ズ「先生、考えるだけ無駄です。せめて京太郎さまに負担をおかけしないよう、自分たちのは自分たちで取りに行きましょう」

顧問「もうやだこの部の顧問」

誠子「おはようございまーす」

尭深「来てるのは……有珠山の子たちだね」

淡「あれ、キョータローは?」

京太郎「おはようございます。昨夜はよくお休みになられましたか?」

誠子「」

尭深「」

淡「なんで働いてんのさー!」

京太郎「そりゃお前、義を見てせざるは勇無きなりっていうからだろ」

淡「ぎをみ……なに?」

誠子「全ッ然話が見えない……」

尭深「人手不足だから手伝ってるってことじゃないかな」

京太郎「さすが尭深さん。どうぞ、少し渋めの緑茶です」

尭深「ありがとう。はぁ、やっぱり朝はお茶だね……」

誠子「尭深はいつもじゃない」

京太郎「誠子先輩にはコーヒー、ミルクのみ。淡は……」

淡「わくわく」

京太郎「よくわかんなかったし、牛乳にしといたぞ」

淡「えー、これ以上大きくってー? しょーがないなー」ゴクゴク

京太郎(なんも言ってねぇ……)

誠子「よし、パン取ってこよっと。尭深は? またご飯?」

尭深「うん。入ってくるとき、炊き込みご飯が見えたから気になって」

京太郎「頑張りましたっ」

尭深「京太郎くんが炊いたんだ……ふふ、期待しとこっと」

淡「私もお米にする!」

京太郎「ではごゆっくりー。あ、いらっしゃいませ。おはようございます――」

誠子「よく働くなぁ……っていうか、開会式に遅れないよね?」

京太郎「はい、大丈夫です。いざというときは、影分身残して行きますので」

誠子「そ、そう……(深く突っ込まない)」




~飛ばして、会場

京太郎「ここが、全国大会の会場……」

揺杏「昨日も来たろ」

京太郎「そうでした」

成香「春にも来てるんだよね……?」

由暉子「去年の夏も来たはずですが」

京太郎「こ、今年はほら、ディフェンディングチャンピオンとして来てるから」

揺杏「そうそう、うちのチャンピオンだからなー。期待してるぞ、京ちゃん」ポンポン

京太郎「任せてくださいっ」グッ

成香「ほかの学校の男子の人たちも、京太郎くんに注目して――あれ?」

由暉子「ないですね。むしを目を逸らしてます……腕をグッとしただけでというやつでしょうか」

京太郎「いや、チャクラ使ってないし、攻撃もしてないけど」

(え、そんなことしてくんの?)ドンビキ
(こわいわーチャンピオンこわいわー)
(とずまりすとこ)

咲「控えめに言って、京ちゃんに怯えてる感じじゃないの」

京太郎「はぁ? 小鍛治プロじゃあるまいし、俺はそこまでのことやってねーだろ?」

優希「サラっととんでもねぇ毒吐きやがったじぇ」

和「赤土先生……」ホロリ

久「ご本人がいらっしゃらなくてよかったわね」

玄「それは赤土先生のことなのか、小鍛治プロのことなのか……」

灼「小鍛治プロ……ハルちゃん、早くリベンジして……」ゴッ

誠子「灼が燃えだした」

尭深「本番は明日からだよ?」

穏乃「いやー、遅刻しなくてよかったね!」

憧「朝起きて、あんたがいなかったときはどうしようかと思ったわよ……」

京太郎「なんだ、穏乃も走りに行ってたのか?」

穏乃「うん、軽くね!」

淡「朝からよく疲れることするよねー」

京太郎「健康的に汗をかいて、それを風呂で流すのがいいんだろうが」

穏乃「ねー?」

京太郎「なー?」


和「妙なシンパシーがあるようですね……」

由暉子「おもちがなくとも、やはり強敵のようです……」

憧「なんの対抗心なの、あんたたちは」

宥「そろそろ学校ごとにわかれたほうがよさそうだよ~。開会式に入らない人は、こっちで固まって客席に移動するからねー」

久「それじゃ、私と和はあっちね」

京太郎「お疲れさまです」

久「はいはい。あ、それと京太郎、開会式であいさつすると思うけど、考えてる?」

京太郎「…………え」

灼「あ、やっぱり」

誠子「まぁ例年なら女子だからね。仕方ないんじゃない」

尭深「京太郎くんならアドリブで対応できるだろうし、大丈夫だよ」

京太郎「ちょちょ、ちょっと待ってください、聞いてないんですけど! 揺杏さん、どうなんですか!」

揺杏「ああ、聞いてたっけか。教えてないけど」

京太郎「おいィ!?ちとsyれならんしょマジで……」

成香「用意された挨拶より、そのときに思ってる言葉で勝負したほうがいいよ、京太郎くん」

由暉子「連盟も、そういったことに期待してのことだと思います」

京太郎「そ、そうなのかな……まぁ、うん……考えてはみるけどさ」

咲(……女子だと淡ちゃんになるから、男子にしたのかな)

優希(まぁ京太郎のが話題性もあるしな、ありえるじぇ)

京太郎「うーん、とりあえずある程度の形だけ考えておいて、と――」

咏「うぉーい、きょうたろー!」

京太郎「咏さん?」

良子「だけではありませんよ」

はやり「そろそろ開会式だからね、その前に顔見ておこうと思って☆」

理沙「……しっかり!」

晴絵「……あれ? なんで私、新人の枠じゃないの?」

靖子「求めすぎでしょう、さすがに……」

健夜「あはは……ところで京太郎くん、さっき聞き捨てならないこと言わなかった?」ニコッ

京太郎「い、言ってないですっ……お疲れさまです、みなさんっ!」

「うたたんきたああああああ!」
「生咏たんかわいういいいいいい!」
「はやりーん! は、はーっ、ハアアーッ!! ハアーッ!!」
「野依さんマジ天使!」
「戒能さんのけしからんあれをこんな間近で……ゴクリ」
「グランマが通られるぞ、道を開けろ!」
「あ、あんなメンツの中で平然としてるとは……やっぱ須賀京太郎、はんぱねぇ……」
「ハルちゃん輝いてる!」


晴絵「……誰も私に反応してくれない」ズーン

靖子「教え子さんがいるじゃないですか。私なんて、完璧にスルーですよ」

晴絵「教え子以外にもチヤホヤされたいの!」

灼「ひどい……」

晴絵「いや、ごめん、違うのよ! でもそれ以外の声も欲しいっていうか……」

京太郎「めんどくさい人だな……」

憧「引くわ」

晴絵「うっさい!」

トシ「ほほ、相変わらずねぇ」

晴絵「え――あ、熊倉先生。ご無沙汰してます、阿知賀のみんなは、ご迷惑おかけしてませんか?」

トシ「ええ、みんないい子よ」

咏「お、トシさーん」

トシ「咏さんも、活躍してるようでなによりだわ」

咏「まぁはい、なんとかやってますよー」

トシ「みんなも、お仕事お疲れさまね。今年もよろしく」

はやり「こ、こちらこそ、よろしくお願いしますっ」

理沙「しますっ……」

健夜「ま、また改めてご挨拶に……では、失礼しますっ」

京太郎「あれ、もうお帰りですか?」

靖子「まぁ、ひと言声をかけるだけ、と決めてたからな……私たちは関係者側に列席だから、これで」

京太郎「はい、ありがとうございました」

咏「おーう。挨拶、期待してっかんねー」

京太郎「あ……ああああああああ、忘れてたああああああああ!」

良子「ふふふ……そんなこともあろうかと、原稿を用意しておきましたよ」スッ

京太郎「マジすか! ありがとうございます!」

久「……中、チェックしといたほうがいいわよ」

京太郎「え」パラッ

良子「ちっ」

京太郎「えーっと……公私ともに戒能良子から愛されるこの須賀京太郎に、太刀打ちできるものなら挑んでこい――なんですかこれは!」

良子「手元に置いておきたいほどの愛弟子ということです」

京太郎「それはありがたいですけど、この挨拶はちょっと……」

由暉子「貸してください、燃やしておきますので」

良子「ではこちらのバージョンで――」

はやり「はいはい、良子ちゃんいくよ☆」

健夜「っていうか、いつ用意したのあれ」

靖子「お前、ちょっとは自重しろ……相手は未成年だぞ」

咏「あっはっは、読んだときの会場の反応、見てみたかったけどねぃ、知らんけど」

晴絵「油断も隙もないわね……それじゃ、まともな挨拶考えときなさいよー」

京太郎「あ、危なかった……」

久「はぁ、仕方ないわね……私の用意した原稿を使いなさい」

京太郎「……いえ、遠慮しておきます」

久「んま、警戒心の強いこと」

誠子「当然じゃないですかね……」

尭深「あ、そろそろ移動みたい」

和「では、私たちはここで」

宥「みんな、またあとでね~」

京太郎「はい、お疲れさまでした」


~開会式の挨拶

「では――前回大会男子チャンピオン須賀京太郎、前へ」

京太郎「はい!」

京太郎(……冷静に考えたら、俺って春のチャンピオンだろ? 夏は別だと思うんだけどなぁ……)

「京くんですっ、京くんが挨拶を!」
「ひ、姫様、落ち着いてっ」
「やべぇ、威圧感パねぇ」
「確か前回の大会では、目があっただけで役満振り込んだやつがいたとか」
「ああ、ありましたねぇ」
「合宿でもようやっとったと」
「あれは大変やったなぁ……」
「これどこまで乗っかればいいんですかね」
「会場、ざわつきすぎじゃないかな……」
「宮永先輩の挨拶のときは、もっと静かだったよね」

京太郎(や……やりづれえええええええええええ!)

京太郎(あー、もうっ……とにかく、無難に終わらせよう)


京太郎(………………いや、やっぱりこう、挨拶するならなにかを残さないと)

京太郎(世話になった人たちも見てるのに、無難に、誰も言えるようなことを言っていいのか?)

京太郎(いや、よくない)

良子(では先ほどの原稿を――)

京太郎(あれは由暉子が燃やしました)

良子()

京太郎「え――それでは、春のチャンピオンとして、開会の挨拶を」

京太郎「コホン――俺が見ているのは、優勝だけです」

全員『――っ!』

京太郎「学校は変わってしまいましたが、今回の大会も俺があの旗を持ち帰る――そのために俺はここまで来ました。あの旗を持ってきたんです」

京太郎「あの旗は――ここにいる誰にも渡さない」

京太郎「奪いたいなら、全力で挑んできてください。そして、いい大会にしましょう」

京太郎「選手代表、男子チャンピオン――須賀京太郎」ペッコリン


ざわ・・・ざわ・・・

  ざわ・・・ざわ・・・


京太郎「ふぅ……」

淡「あのさぁ」

京太郎「お? あれ、なんでお前も?」

淡「挨拶はしないけど、旗返すのはやるから」

京太郎「あー、なるほど。んで、あのさぁってなんだよ」

淡「――自分だけずっるーーーーーーーーい!」

京太郎「は?」

淡「私もやりたかった! 優勝しか見えてない、全員ぶちのめす! ってやつ!」キラキラキラッ

京太郎「そこまで言ってねーよ」

淡「言ったも同じだよ! なんかねっ、楽しみになってきた!」

淡「また優勝しよっ! ダブルで!」

京太郎「――学校が違うから、あんまり大声では言えないけど」

京太郎「一回だけ言っとく……おう、頑張ろうな!」

淡「うんっっ♪」

京太郎「どうでしたかっ?」

揺杏「京ちゃん……よくやった!」b

由暉子「かっこよかったです!」b

成香「うん、よかったと思うよ」

京太郎「あざっす!」

京太郎「けど――あれですね。結構煽ったんで、男子の選手からは睨まれるかと思ったんですけど……」

姫松男子A「いやー、下手な社交辞令よりは、よっぽど熱かったて好評やで」

京太郎「おっ、久々ぁ!」パンッ

姫松男子A「おう、お久ぁ!」パシッ

姫松男子B「男子もそうやけど、連盟も盛り上がっとんな」

京太郎「……いや、そうなるならさ、俺じゃなくて淡に任せても同じだったと思うぞ?」

姫松男子C「それは俺に言われても知らんわ」

姫松男子D「淡ちゃんはかわいいけど、女子ん中にはよう思わんやつもおるからちゃうか?」

京太郎「あー……そっか、そういうこともあるか……」

揺杏「ごく一部だよ、そーゆーんは」

由暉子「……くだらないことをする人は、どこにも一定数いるものですから。ただ、大星さんが同じことを言っていても、私たちは歓迎したと思います」

成香「うん、そうだね……そのために、みんな頑張ってきたんだもん」

京太郎「ですね……とにかく、言ってしまった以上は、優勝するしかないです」

揺杏「そうそう、頼むよー」

由暉子「私たちも、負けませんので」

成香「女子団体、個人、男子個人、総なめにしようね」

京太郎「はい!」

有珠山ズ『有珠山――っ、ファイト――ッ、オーッ!』

久「ふーむ、原稿より面白かったわね」

優希「くくく、言ってくれるじぇ、京太郎め……」

咲「よーし、私も頑張るぞー」

和「調整はお任せください……と言っても、個人戦は再来週ですけど」

久「ま、それまでは団体でも観戦して、対策練りましょ」

衣「ふふふ、剛毅なものだ」

一「キャラ変わっちゃってたね」

智紀「ランナーズハイ……?」

純「走ってねーけどな」

透華「ぐぬぬぬ! 春に優勝していれば、私があの場にいた可能性もっ……」

照「京ちゃん、かっこよかった……」

菫「お前なんで列席してないんだ!」

智葉「そして誰も気づかなかったのか……」

巴「迷ってたんですか?」

哩「まぁ開会式やけん、それはええやろけど……解説はしっかりな」

誠子「いやー、いい挨拶だったね」

尭深「淡ちゃんのテンションも上がって、これは期待できるね」

淡「やってやんよ!」

小蒔「私たちも、負けるわけにはまいりません」キリッ

春「はい」

明星「目指すは優勝ですね!」

湧「足を引っ張らないよう、励みます……」

シロ「京太郎の挨拶以外は普通だったね……」

塞「普通でいいのよ、普通で」

胡桃「っていうか、意外過ぎたんだけど……」

エイ「英)あれはやばいわ、録画しておけばよかった。放送されてたわよね、誰が録画してないかな……」

豊音「英)録画セットしてきたよー。帰ったら一緒に見ようねー」

エイ「トヨネ! アイシテル!」ガバッ

絹恵「言い切れるもんやなぁ……」

漫「なにが京太郎くんをあそこまで……」

浩子「まぁなんにせよ、正面アングルで押さえられてよかったわ……」ジー

泉「撮影しとったんですか!?」

浩子「生放送や」

雅枝「」

ネリー「うああああああ、あれはやりたかった!」

ハオ「私たちは春と来年夏、二回チャンスがありますね。京太郎と一緒にできるかもしれません」

明華「留年しましょうか……」

サンディ「いや、留年しても出場できないから」

穏乃「うっは、テンション上がる!」

憧「恥ずかしげもなく、よくやるわねー」

灼「まぁ京太郎だし」

玄「京太郎くんだもんねー」

姫子「ん……哩先輩ばおっと」

煌「おや、本当ですね。ご挨拶に行っておきますか?」

姫子「いや……会うんは優勝してから、その報告ばすっときよ」

煌「そうですね。京太郎くんに負けていられません」

友清「京太郎んキャラとは違うとりましたけどね。でも、らしかっちゃらしかったとです!」

京太郎「それじゃ、いったん戻りましょうか」

揺杏「そーすっかー」

由暉子「全員いますか?」

成香「先生、点呼をお願いします」

顧問「あ、はい……一年生、いなくなってませんかー?」

一年ズ『大丈夫です!』

京太郎「よし、それじゃ帰るぞ! それから練習だ!」

揺杏「えぇー」

京太郎「いや、えーじゃなくて……」

由暉子「まぁでも、調整くらいにはしておくべきですね」

成香「はい、明日は一回戦ですからね」

京太郎「む……それもそうですね、わかりました」

揺杏「私もそれが言いたかった」

京太郎「はいはい。では、そういう形ということで」

揺杏「こらぁ! 先輩に敬意を見せろ!」

京太郎「尊敬してますよ、揺杏さんのことは」

揺杏「っ……な、ならいいけど」

由暉子「ずるい!」

成香「いまのは言わせたよね!」

顧問「はい、それじゃ帰りますよー。一年生、しっかりついてきてねー」

一年ズ「あの、先輩方は……」

顧問「子供じゃないんだから、ほっといても勝手に帰ってきますよー」

一年ズ『えぇ……』



~ホテル

京太郎「……まさか放っていかれるとは思わなかった」

京太郎「さて、予定では一応、調整で打つんだけど――」

京太郎「俺だとうまく調整できないって言われるんだよなぁ、最近……どうしたもんかな」

京太郎「――どうですか、調子は」

揺杏「んー、たぶん大丈夫。いつも通りって感じだな」

由暉子「そうですね。引きも波がありませんし、手が止まる感じもありません」

成香「卓全体が見えてると思うよ」

京太郎「そうですか……それで、なんですけど――」

揺杏「ダメ」

京太郎「まだなんも言ってないダルルォ!?」

成香「京太郎くんと調整すると、ペースが崩れちゃいそうで……」

京太郎「」

由暉子「すいません、京太郎。私は構わないんですが、先輩方がこう仰るので」

揺杏「ユキ、それはずるくね?」

成香「これは総意のはずだよね?」

由暉子「すいません、大会さえなければ京太郎と打ちたいという私の欲求が、つい口をついて」

京太郎「……要するに、由暉子以外は俺と打ちたくない、と?」

由暉子「はい」

成香「違います! 調整だから、京太郎くんに負けたら、調子が崩れちゃいそうだって言ってるの」

揺杏「モチベ奪う気かよぉ」

京太郎「……わかりました」

成香「そういうことだから、ごめんね?」

京太郎「いえ、先輩方が仰ることもわかります。ですから――」

由暉子「ですから?」

京太郎「せめて、どなたかの隣でサポートさせていただきたいなと……だめでしょうか」

揺杏「じゃあ私の隣な」

由暉子「待ってください。お二人は口を揃えて拒否ったじゃないですか。やはりここは私が――」

成香「あれは三人の総意だってば! 先鋒が一番キツいんだから、私の底上げのほうが重要だと思うの!」

京太郎「……それならいっそ、一年のどっちかのサポートに入りたいなと――」

三人『は?』

一年ズ『いいえ、私たちは遠慮しておきます』

京太郎「あ、はい」

揺杏「よしよし。それじゃ、京太郎が私らから選ぶってことで、どう?」

由暉子「異議なしです」

成香「そうだね。一番揉めないかも」

京太郎「異議あり!」

成香「却下します」

京太郎「」

揺杏「んで、誰にする?」

京太郎「えぇ……」

由暉子「はぁ、暑いです……」パタパタ

成香(露骨に胸元開いてるっ……)

揺杏(くっ、アイドルらしい育成が裏目に出たかっ……)

京太郎「はぁ、わかりました……とにかく、午前中は三人とも見ますってことで、最初は――」

京太郎「最初は――」

京太郎「確かに、先鋒は重要です。大将も」

成香「!」パァッ

由暉子「!」キラキラ

揺杏「…………」

京太郎「ですが――それより重要なのは、部長の実力です」

揺杏「!」

京太郎「部長になる人というのは、同級生からも後輩からも頼られる存在ですから。ちゃらんぽらんにしてても、決めるところはしっかり決めるからこそ、部長なんです」

揺杏「お、おう」

由暉子「部長職に嫌な思い出でもあるんでしょうか……」

成香「清澄の人かな?」

京太郎「コホン――ですから、まずは揺杏さんです。調整ですから厳しく打ち方を変えたりはしませんけど、途中で、ウィークポイントを指摘します。フォローの仕方も」

揺杏「ん、了解」

京太郎「まずは重点的に揺杏さん、そこから順番に、一年二人も見ていくから。それでは、始めましょう」スッ

揺杏「…………京太郎、椅子座っていいよ」

京太郎「いや、隣にって言ってるんですけど」

揺杏「私の隣だったら、そっち側の家とも隣になるじゃん! だからこう、京太郎が椅子に座るだろ?」

京太郎「はぁ」ストン

揺杏「で――その上に私が座ると」

京太郎「!?」

成香「!?」

由暉子「!?」

揺杏「おー、視線が高い、すげー新鮮」

京太郎「お、俺が見えにくいんですけどっ」

揺杏「んなことないだろー? 座高高いんだし、私の肩越しに見えるじゃん」

京太郎「脚短くてすいません!」

揺杏「いや、そこまでは言ってないし……っていうか長いほうじゃん? たぶん」

京太郎「ほっ……いや、安堵してる場合でもない。この体勢はおかしくないですかっ!?」

揺杏「だーいじょうぶだって、なぁ?」

成香「………………そうだね、いいんじゃないかな」

由暉子「時間がありません、早急に済ませましょう」

揺杏「ほら」

京太郎「なんか鬼気迫るものを感じるんですが」

揺杏「いーからいーから、サポよろしくなー」

京太郎「……はい」

成香「…………次は私、早く終わらせて次は私、早く終わらせて次は私……」

由暉子「戦争は仕掛ける側が悪いです」

京太郎(やっぱり鬼気迫ってると思うんですけど(名推理))

京太郎「――そこです、揺杏さん」

揺杏「ひゃうっ!?」ビビクンッ

京太郎「ちょっ、なんて声を……」

揺杏「んっ、あっ……ば、かぁっ……んくっ……耳に、息がぁ……んはっ……」ゾクゾクッ

成香「………………」

由暉子「………………」

京太郎「…………い、いいから聞いてください」

揺杏「ちょ、待てっ……波が、引くまでぇ……」ビクッビクッ

揺杏「――――っ……ふぅっ、はぁっ……」ゾクンッ

揺杏「はぁ……んで、なに?」

京太郎「…………いま、これを切ろうとしたじゃないですか」

揺杏「ん、だっていらねーし。次たぶんここ入るから、これでリーチだろ?」

京太郎「これが由暉子に当たります。なので、これは抱えてこっち切ります」ニギッ

揺杏「――っ!!」///

成香「手をっ……」

由暉子「それは私のっ……」

京太郎「そう、手を読んで、待ち牌を把握するんです。目の前のリーチに釣られず、そこで一歩止まって、場を観察するのが揺杏さんには必要です」

成香(手を握るなんてっ……)

由暉子(それは私の手ですっ、私の手を握るための手ですっ、京太郎っ……)

揺杏(やばいな……京太郎の手に握られてると、はんぱなく落ち着く……あー、これ握って、いや握られて試合行けないかなぁ、行きたいなぁ……)ポヤー

京太郎「……あの、聞いてますか?」

揺杏「あー、うん……きーてるきーてる」

京太郎「駄目みたいですね……なら、先に次の人から――」

成香「はい!」

由暉子「私に!」

揺杏「だぁっ! まだ終わってねーだろ! ほら次っ、京太郎はよ!」

京太郎「やる気あるなら、最初から見せてくださいよ……じゃ、続けますからね」

一年ズ(今日も平和です)




~調整終了

京太郎「――だ。とにかく、次鋒はやることというよりは、流れに合わせて動き方を決めるほうが難しい。もちろん、稼げるときには稼いでいいからな」

能登もとい藤堂「は、はい」

京太郎「さて――それじゃ、午前中はこんなとこですかね」

揺杏「だなー、そろそろお昼行くか」

由暉子「はい、お腹ぺこぺこです」

成香「ホテルはお昼はないからね。レストラン使うか、外で食べるか、なにか買ってこないと」

京太郎「そこは、俺の出番で――」

揺杏「せっかくだし、どっかで食べようぜー」

京太郎「いえ、ですから――」

由暉子「いいですね、東京はいいお店が多いです。いつかどこかで聞いた、辻というお店もランチ営業を再開されたとか」

京太郎「だから、俺が――」

成香「あそこはお昼だけで最低5千円はするからねー、またにしようよ」

京太郎「あの、俺がご用意――」

揺杏「さて、どこにするかな……ホテルのレストランもいいけど、外の珍しい店もいいなー」

京太郎「…………ぐすん」

由暉子(泣いてる京太郎、ありです)

成香「泣いちゃだめだよ、さ、行こう?」

京太郎「誰のせいやねん」

京太郎「滞在期間長いですし、ファミレスとかのがいいと思いますよ」

揺杏「そういうもん?」

顧問「正直、この人数分の宿泊費と食費考えると、そのほうがいいですね。寄付金も無限ではないので」

京太郎「どうしても変わったとこ行きたいなら、自分たちの小遣いで個人的にって感じでしょう」

由暉子「個人的……なるほど」

成香「そういうことだね」

京太郎「どういうことだってばよ……」

揺杏「デートでってことだろ、言わせんな恥ずかしい」

京太郎「え、二人ともそういう相手が!?」

由暉子「誰かが誘ってくれればいくんですけどね」チラッ

成香「そういう人がいればねぇ」チラチラッ

京太郎(…………よその男子が声かけにこないよう、監視しておこう)ギンッ

揺杏「さて、なんか知らんが気合も入ったみたいだし、行くかー」



~ハミレス

京太郎「はー、涼しい」

揺杏「生き返るわ~」

由暉子「さすがに混んでますね……よその制服も、チラホラ見えます」

成香「すいません、9人で入れますか?」

「はい、奥のお席が空きましたので、そちらへどうぞー」

京太郎「いいタイミングでしたね――って、あれは……」

揺杏「んぁ?」

由暉子「どなたでしょう……」

成香「どこかで見たような気も――」

京太郎「どこかでじゃないですよ! あちらは――」

透華「あら、須賀さんではありませんの」

京太郎「は! ご機嫌麗しゅう、透華お嬢様!」

揺杏「えぇ……」

由暉子「あ――思いだしました、龍門渕の人です」

成香「長野代表……清澄に勝ってきたところだ」

純「オレらからすれば、去年の清澄がうちに勝って行ったとこなんだけどな」

一「仕方ないよ純くん。清澄の実績はすごかったからね」

衣「ふふ、ならば今年は我々が、その実績を上書きしてやればいいだけのこと」

京太郎「衣様も……ご機嫌麗しゅう。師匠はいらっしゃらないのでしょうか」

智紀「ハギヨシさんなら、どこかにいると思う……」

京太郎「あー……確かに、気配だけはありますね……特定は難しいですけど」

一「まだまだだね」

京太郎「すいません、精進します……」

純「まー、オレらもわかんねーんだけど」

揺杏「いや、ちょっと待ってよ! 龍門渕って超金持ちじゃなかった? なんでファミレスなんか来てんの?」

京太郎「失礼ですよ、揺杏さん」

衣「家がどれだけ富んでいようと、我々は一介の学生ゆえ、使える小遣いは知れているぞ」

一(まぁカードで払うから同じなんだけどね)

純「あと、こいつがファミレスのエビフライとタルタル好きなんだわ」

揺杏「へー、んじゃ私もそれ入ったやつにしよーっと」

衣「ほう、わかっているやつがいるようだな」

由暉子「とりあえず座りましょう」

京太郎「そうだな。周りにも迷惑だし」

智紀「………………」

透華「どうしましたの、ともきー」

智紀「須賀くんが普通に話しているのが、新鮮で……」

一「あー、そういえば」

純「オレらにも敬語だしな、あいつ。透華と衣には特に」

透華「そのうち慣れますわ」


京太郎「………………」

揺杏「面白そうだし、私らにもそういう感じで接してみるってのは?」

京太郎「無理です」

揺杏「んだとこら!」

成香「もー、騒いだら迷惑だよ」

京太郎「そうですよ、後ろの席にもいらっしゃるんですから……すいません、騒がしくて――」

京太郎「――あれ?」

咏「いやー、別にいーって、知らんけど。ファミレスなんてそんなもんだしさ」

京太郎「咏さん!?」

咏「おっと、京太郎じゃん。へー、こんなとこで会うとは奇遇だねぃ」

えり「お久しぶりです、京太郎くん」

京太郎「えりさんも……ということは、打ち合わせですか?」

えり「そんなところです。そうそう、以前いただいたチョーカーは、実況の日につける予定ですから」ニッコリ

京太郎「あ、はい……わざわざどうも」

咏「……ちょい待ち、なにそれ。チョーカーって?」

えり「おっと……いえ、なんでもありませんよ?」

京太郎(え、なんでそんな意味深な誤魔化しを――)

咏「へぇ~……京太郎!」

京太郎「はい!」

咏「……ちょっと話聞かせてくんね?」

京太郎「しょ、食事が先でよろしいでしょうか……」

えり「…………」ニヤニヤ

京太郎「楽しんでないでください!」

揺杏「まーまー、いいじゃん京太郎」

由暉子「そうですね、私も俄然、興味が出てきましたので」

成香「詳しく聞かせてね、お昼のあとにでも」ニコニコ

京太郎(ヒェッ……)

純「あっち面白そうだな……」

透華「よしなさいな、はしたない」

一「そうだよ、盗み聞きなんてよくない」

智紀「でも……派遣執事の一挙手一投足は、情報として価値がある……他校との練習試合を優先してもらう、いい餌になるから」

衣「ふむ――それにあの小さいのは、あれで高名なプロだったな。話を聞くついでに、あわよくば対局を申し込んでみるぞ」ゴゴゴゴゴ

透華「もうっ、衣まで……」

一「ボクら、この大会のあとで練習試合って、する機会あるのかな……」

京太郎「――ということで、その……誕生日を思いだしたときに、せっかくだからと……」

咏「ほーん……そんだけ?」

京太郎「……と、仰いますと?」

咏「そ、そりゃ、あの……ほら、なぁ?」

揺杏「女子アナ口説いてどうこうって下心じゃねーのかアァン?」

京太郎「ち、違いますよっ! ねぇ、えりさん?」

えり「そうですか? 私は年下の男性に口説かれているのかと、少し嬉しかったですけど」

京太郎「えりさぁん!?」

由暉子「そういえば、京太郎は年上好きっていうデータが……」

成香「こ、ここまで年上じゃないとだめなの……?」

衣「ほう、そうだったのか。ならば京太郎、衣のことを姉と呼んで慕ってもいいぞ」

京太郎「いえ、あの……衣様には、さすがに畏れ多いと申しますか……」

一「じゃあボクらは? 純くんはお兄さんって感じで」

純「あ?」

京太郎「いや、あの……それだと、先輩方全員がそういうことを仰いそうなので……」

透華「論点がずれてきていましてよ」

智紀「透華も、すっかりノリノリで……」

咏「っていうか、あのチョーカーはそれかぁ……なーんか、えりちゃんっぽくねーと思ってたんだよねぃ、そういことかよ……」

由暉子「正直に言いますと、死ぬほど羨ましいです。京太郎からチョーカーもらうなんて」

揺杏「ユキ、人目があるところではそういうの控えて」

由暉子「あ、そうですね」

えり(……ポスト瑞原プロを狙ってるというのは本当でしたか)メモメモ

京太郎「というか――俺が年上好きって噂、マジでどこが出所さんなんですか?」

成香「自分で言ってたって、もっぱらの噂だけど」

京太郎「マジすか」

一「違うの?」

京太郎「いえ、まぁ……間違ってはないですけど……特別好きってこともないですよ? 年下だって全然オッケーですし」

透華「節操がありませんこと」

京太郎「申し訳ございません!」orz

智紀「透華、土下座までさせなくても……」

透華「め、命じていませんわ! 須賀さんもおやめなさい!」

咏「あー、そういや思いだしたわ。奈良で飲んだとき、私が最初に会ったとき、ンなこと言ってたっけねぃ」

純「それ口説かれてたんじゃないっすか?」

咏「――――えっ」

えり「いえ、それはないでしょう。ほかのプロも大勢いらっしゃったそうですし」

咏「なんで知ってんだよ!」

えり「戒能プロを始め、色んな方からお聞きしています」

咏「良子ォ!」

成香「京太郎くん、学校の先輩には礼儀を尽くしてるのに、それ以外の年上だとかなり積極的だよね……」

揺杏「そもそも礼儀尽くされてない先輩もいるんだけど」

由暉子「赤土プロはどうなるんでしょう」

京太郎「さ、最低限の礼節は弁えてるつもりなんです(震え声)」

衣「気にすることはないぞ、京太郎。年上に惹かれるのは、いわば母性に惹かれるようなもの。男女だけでなく、人間である以上、根源的な愛情に惹かれるのはやむを得まい」

京太郎「こ、衣様……」

衣「衣のことも遠慮なく、衣おねーちゃんと呼ぶがいい」

京太郎「――っ!」

京太郎(こ、これは……呼ぶべきだろうか……確か衣様は、年上らしく接されることを喜ばれる……ああ、でも師匠がどこかから見てらっしゃるのに、それは――)

咏「ちょい待ちチビッコ、そういうのはもっと年上が呼ばれてからにするべきじゃないかい、知らんけど」ゴゴゴゴゴ

衣「プロともあろうものが、個人の感情を強制させまい? 京太郎が呼びたいと思うなら、好きに呼べばよいのだ」

衣「年功序列に理解はあるが、立場や年を笠に着る行動は看過できぬ」ゴゴゴゴゴ

えり「三尋木プロ、あまり学生相手にそういうことは――」

一「最初の原因なのに、いまさら……」

揺杏「で、京ちゃんどうするん?」

京太郎「えっ」

純「だな。ここでお前が決めれば、丸くは収まらないかもしれねーけど、とりあえずはまとまる」

成香「男の見せ所だね」

京太郎「あの――」

透華「スパッと決めなさいな、男らしく!」

京太郎「はいっ!」

衣「よし、では呼ぶがいい」

京太郎「あっ」

咏「どうすんだー、京太郎ー?」

京太郎「………………えーっと」

京太郎(…………仕方ない。衣様の期待を裏切るわけにもいかないし、断って恥をかかせるなんてもってのほかだ……ですよね、師匠!)

ハギヨシ(知らんがな)

京太郎「――こ……衣、おねーちゃん……」カァッ

揺杏「」ブハッ

成香(かわいい)

咏「」

えり「……」●REC

京太郎「ちょっ!? なに撮影してるんですか! 福与アナみたいなことを!」

えり「たまにはアナウンサーとして、視聴者の需要にもお応えしようかと」

衣「まぁよいではないか、京太郎。おねーちゃんは気にしないからな」ナデナデ(必死に背伸び)

京太郎「う……は、はぁ……衣様がそう仰るなら……」

衣「おねーちゃんだ」

京太郎「……おねーちゃんが、そう仰るなら」

衣「そうだ、おねーちゃんにすべて任せておけ」ムフー

透華(……外部の人間に呼ばれたことで、ずいぶんとご機嫌になったようですわ)

純(ナイスだ京太郎、骨は拾ってやる)

一(ボクも録音しとこうかな)

智紀(大丈夫、私が撮影中)

三人(グッジョブ)

由暉子「……でもこれ、あれですよね。姉でない人を姉と呼んでいることが知られたら、本当の姉属性を持った人たちがどう思われるか――」

智紀「興味深い」

揺杏「えーっと……宮永姉、松実姉、愛宕姉か」

成香「その人たちは、お姉ちゃんになりたいわけじゃないだろうから、大丈夫だと思うけど……」

えり「それでも心中穏やかではないでしょうね」

純「宮永姉には正直教えてやりたいな」

京太郎「やめてくださいマジで」

一「じゃあ松実のお姉さん?」

智紀「……なにげに重そう」

京太郎「生々しい!」

成香「愛宕の洋榎さんは、サバサバしてそうですけど……」

透華「ああいう女性ほど、裏ではショックが大きいものですわ」

京太郎「……なんとなくありそうですね」

衣「ははは、心配無用だ。衣おねーちゃんが守ってやるぞ、京太郎」

京太郎「はぁ……ありがとうございます、衣おねーちゃん」

咏「」

えり「いつまで寝てるんですか、三尋木プロ」

咏「はっ……こ、これで勝ったと思うなよおおおおおおおおおお!!!!」

由暉子「あ、逃げました」

えり「では、私たちはこれで。京太郎くんもそうですが、みなさん――悔いのない試合を」

全員『あ、ありがとうございまーす……』




※とある食事処

良子「は? 三尋木プロ、どうされたんです? はぁ、はぁ……はぁ、そうですか」ピッ

健夜「どうしたの、良子ちゃん。咏ちゃんなんだって?」

良子「天江衣が京太郎の姉になったと、よくわからないことを供述していて」

照「この暑さだから、おかしくなったのかも」

シロ「あり得る」グテー

咲「失礼だから……まぁでも、お姉ちゃんはそのうち、京ちゃんにお姉ちゃんって呼ばれるかもね」

照「は?」

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最終更新:2026年01月19日 22:57