アットウィキロゴ
照「京ちゃん、大丈夫だった? 変なことされてない?」

京太郎「照さんたちが、いかに先輩に対して礼儀を払っていないかを教わっていたところです」

良子「こ、この期に及んで私たちの悪口を吹き込むなんて……」

咏「汚いなさすがベテランきたない。あもりにも卑怯すぎるでしょう?」

いちご「…………わ、私はそんなこと……ないと思うんですがのう……」

はやり「まぁいちごちゃんは芸能生活もあるし、その辺りわきまえてるよね。きっと大成できるよ」

いちご(できとらんかったら潰すいうことか……)ガクブル

良子「とはいえ、この業界は実力が物を言う世界ですし……」

咏「そーそー。強いやつこそ正義だってね。私なんてチームで最年長でもないのに、先輩たちに言うべきことは言ってるよん?」

京太郎「一理ありますね……」

照「私は先輩たちに無礼を働いたりはしない。ただ、京ちゃんに手をだすなら容赦はしない」キリッ

京太郎「俺になにがあっても、先輩方には敬意を払ってください」

照「……いじめられても黙って耐えろと?」

京太郎「そんな人がいるなら教えてください。容赦はしません」ゴッ

照「京ちゃん!」ヒシッ

はやり「はいはい、離れて」グイグイ

照「京ちゃん助けて!」

京太郎「これはいじめじゃないのセーフです」

良子「なかなかのガバ判定ですね」

咏「まぁけど実際さぁ、年下ってのはこう、生意気なほうが可愛げあると思うんだけど?」

はやり「自分を正当化しようとしないの」

咏「いや、私のことじゃなくてですって。私はほら、後輩にタメ口されても気にしませんし」

京太郎「咏さんにタメ口で話しかける人がいるんですか?」

咏「うーん、いねーなぁ。宮永でさえ、敬語使ってるしねぃ」

はやり「されてみれば、どんな気分になるかわかるよ。はい、いちごちゃん」

いちご「えっ!? い、いや、そんな、さすがに……」

咏「あー、いいっていいって。試しにやってみな~」

いちご「えっと……う、咏はグラビアの仕事とかせんのかのう? 需要はあると思うんじゃが――」

咏「いい度胸してんな、いちごぉ!」

いちご「えぇっ!?」

良子「はは、怖いもの知らずですねぇ、いちごは」

いちご「だってやれって!」

照「親しき仲にも礼儀ありという名セリフを知らないの? さすがにいちごが悪い」

いちご「」

京太郎「……これがいじめですね、よくわかりました」ナデナデ

いちご「うっうっうっ、京太郎ぉ……」グスグス

はやり「じょ、冗談はさておき、公の場ではみんな、先輩に対しては礼儀正しいよ?」

良子「まぁそうですね。協会の偉い人などに対して、無礼があっては大変ですから」

京太郎「ああ……熊倉先生とかに対しては、皆さん恐縮してますもんね」

照「そもそも、なんの話からこうなったの?」

京太郎「はやりさんと良子さん――を含めて、俺がお世話になってるプロの皆さんは、年齢差を気にしないで仲いいなって話です」

照「…………あー、そうなんだ」

咏「まぁ、そうなるのは不思議じゃないと思うけどねぃ」

京太郎「そうなんですか? 学生の場合、一学年離れてても、仲はいいけど気後れしたりとかありますけど」

いちご「そういうこととは違うんじゃ」

良子「趣味が合うんですよ。それに夢中になっている間は、無礼講のような形が許されているのです」

京太郎「趣味……」

はやり「ちょ、ちょっと良子ちゃんっ」

良子「いまさらでしょう」

京太郎「っ! なるほど――」

京太郎「皆さんそれだけ麻雀が好きってことですね! 対局に熱中するあまり、言葉遣いにも気が回らなくなる……こればかりは仕方ないですね」

はやり「…………はぁ~あ」

京太郎「あれ?」

咏「まぁそうなるかね、京太郎だと」

京太郎「え」

照「大丈夫、そこが京ちゃんのいいところだよ」

京太郎「あ、ありがとうございます……」

良子「――京太郎にしても、そういうところがありますからね」ハァ

京太郎「え!?」

いちご「自覚なしじゃったんか……」

京太郎「そ、そんなことはないと思うんですけど……」

はやり「晴絵ちゃんに対しては、ずいぶんだよね?」

京太郎「う……い、いや、あれは……」

照「時々、一部の学年上の子たちに対しても、横柄な口を叩くことがあるって聞いてるけど」

いちご「覚えがないか? そんなことはないじゃろ?」

京太郎「…………あり、ます……」

咏「京太郎の場合は、麻雀してるとき以外でそうなるほうが多いけどねぃ」

京太郎「」

良子「つまり、京太郎にも私たちを非難する資格はない――そういうことです」

京太郎「う……うわああああああああああああ!」

良子「ですから、私たちの言葉遣いに対しても、あまり気にしないように」

咏「いや、その理屈はおかしい」

照「だから京ちゃん、年上に対しても普通に話すのは私だけにして――あれ、京ちゃん?」

京太郎「お、俺は……先輩方に、なんて失礼な態度を……」

いちご「聞こえとらんのう」

はやり「というか照ちゃん、それさっき私が言ってたのとまったく同じことだよ」

照「!」

良子「あー、これは照の将来が見えましたね」

咏「はやりさんルートか、残念だねぃ」

はやり「二人のそういうとこだからね!」

京太郎「とりあえず晴絵先生、爽さん、揺杏さんにはしっかりお詫びしておこう……」

はやり「年上は大勢いるのに、その3人だけなんだ……」

良子「ある意味、特別扱いではないでしょうか」

咏「よし、改めさせて正解だな」

いちご(ひどいのう)

照「過ぎたことは仕方ないよ、京ちゃん。はい、あーんして。切り替えていこう」

京太郎「はい、そうします……モグモグ」

良子「そっちのあなたも、隙あらば間接キスを狙わない」ヒョイ

照「私のスプーン!」

咏「ほい、新しいの。それより、いつまでもここでまったりしてていいんかねぃ?」

いちご「確かに、人が増えてきてますし……有名人が多いせいで、目立ってしもうとるかもです」

はやり「人目が少ないとこに逃げようか」

良子「いやらしい」

はやり「そ、そういう意味じゃないよ!」

いちご「逃げるというても、どこに……」

照「カラオケとか?」

咏「どっかホテルの一室かねぃ」

照「……カラオケ」

咏「人の口がかてーホテルっしょ」

良子「入るときに目立たないという点においても、ホテルですかね」

いちご「入って不自然ないのは、カラオケかと……思いますけど……」

はやり「どっちもありかな……京太郎くんはどっちがいい?」

京太郎「え?」

照「カラオケだよね?」

咏「ホテルにしとこうぜー、な?」

京太郎「」

京太郎(カラオケできるホテル……ホテルにはだいたい、カラオケマシンはあるよな……)

京太郎(いや待て、そういやそういうホテルにはカラオケがあるって聞いたことあるな……うん、この案はまずい、誤解される)

京太郎(なら普通にカラオケにしとくか……けど、カラオケにしたってそういう使い方をするやつが少なからずいるって聞くし……)

京太郎(俺はともかく、この人たちがそういう誤解を受けるのもよくない……なら、ちゃんとしたホテルに入ればいいか)

京太郎(たぶん、皆さんが泊まってるホテルに帰ってゆっくりしようってことだろうし――よし)

京太郎「そうですね。では皆さんのホテルに戻りましょうか。そこで、お茶とお菓子をご用意いたしましょう」

咏「っしゃ!」

良子「大人げないですよ」

照「……マドレーヌ焼いてくれる?」

京太郎「はい、喜んで」

照「ならいいよ」

はやり「ふふふ、私も手伝っちゃうよ」

照「はやりさん、料理できたんですか」

京太郎「はやりさんのお菓子作りの腕はプロ級ですよ」

照「さすが瑞原プロです、よろしくお願いします」キリッ

はやり「こ、この子は……まぁいいか。いちごちゃんも、それでいい?」

いちご「も、もちろんですっ」

咏「なら、そろそろ行こうかねぃ」

良子「ええ。人が増えてきましたし――おや?」

「あ、あの、すいませんっ……」

良子「やれやれ、見つかってしまいましたよ」

はやり「日本代表がいるからー」

咏「新人王候補のせいじゃね?」

照「アイドルが二人もいるからでは」

「あなたは――麻雀インハイチャンピオンで、派遣執事の須賀京太郎さんですよねっ!」

京太郎「………………え」

五人『……………………』

「え、派遣執事!? ほんとだ!」
「しゃ、しゃ、写真! 握手!」
「はいはい、押さないで! 並んでくださーい!」

京太郎「モブ子てめぇ!」

モブ子「げ、バレた……」

「やっぱり本物だ!」
「サインください、サイン!」

京太郎「ちょ、ちょっとすいません、いま忙しくて――」

照「……じゃ、私たちは先に戻ってるから」

京太郎「えっ!? ちょ、照さん!?」

はやり「ごゆっくり、京太郎くん」

良子「まぁプロになったときの練習になりますよ」

咏「仕事の手伝いで慣れてるっしょ、まぁ頑張りな」

いちご「え、えっと……気ぃつけての!」

京太郎「ちょっとおおおおおおおおお!?」




~ホテル

京太郎「お、お待たせしました……」

はやり「お疲れさま~」

照「おかえり京ちゃん」モグモグ

咏「お前ほんとよく食うな」

いちご「それで太らんのはずるい」

良子「胸も太らないのでイーブンでは」

京太郎「た、ただいまお茶の準備を……」

良子「もういただいてますので、お代わりのときにお願いします」

京太郎「う……はい」

はやり「それより京太郎くん、ちょっといいかな?」

京太郎「は、はい、なんでしょう!」

はやり「風の噂に聞いたんだけど、京太郎くんってマッサージが上手なんだって?」

照良子咏『――――っ!』ビビクンッ

京太郎「上手というほどでは……嗜みがあるだけですが」

照「あ、あ、あの、はやりさん、別の話をしましょう」

咏「そ、そーだよねぃ、うん!」

良子「京太郎、お茶を! 焼き菓子に合うフレーバーを――」

はやり「ど、どうしたの、みんな……」

いちご「それでな、京太郎。軽くでええからやってもらえんかって、さっきはやりさんと二人で話しとったんじゃが――」

はやり「あ、そうそう。ほら、ボウリングで疲れてるだろうから、みんなに順番に――」

照「み、みんな!?」

咏「い、いや、それは、その……」

良子「ぜ、全員の前でというのは、さすがに……いや、ですが……うぅ……」

はやり「???」

いちご「???」

京太郎「マッサージ、ですか……うーん」チラッ

京太郎「時間的に、全員は難しいですね……お一人だけということでしたら、可能かと思うのですが」

はやり「はや~、そっかぁ~」

いちご「残念じゃのう」

照(ホッ)

咏(こ、これなら流れるよな……な?)

良子(夕方近くで助かりましたね……)


はやり「あ、それなら一人だけやってもらおうよ。それをビデオで撮影して、あとの子はそれを見ながら、私たちでするっていう形で――」

いちご「おお、いい考えじゃ!」

照「ぶふぉっ!」

咏「ビ、ビ、ビ、ビデオ!?」

良子「まま、待ってください! さすがにリスクが高すぎます!」

京太郎「なるほど……」

照「落ち着いて! よく考えて、京ちゃん!」

京太郎「ああ、でも……慣れてない人が真似をするのは、される側が少し危ないかもしれませんね」

咏「だ、だよな! ビデオはあぶねーよ、映像に残るのは危なすぎる!」

京太郎「ですから施術風景だけじゃなく、指南ビデオのような形で撮影されれば、あるいは――」

良子「ど、どんなマニアックなものを撮るつもりですか!」

京太郎「え? いや、普通に……俺の手元を撮ってもらいつつ、患者の意見や感想を聞きながら、反応を撮影して――」

三人『絶対ダメッッッ!』

京太郎「えぇ……」


~廊下

京太郎「追いだされてしまった……」


~室内

はやり「どうしちゃったの、三人とも?」

良子「はやりさん、悪いことは言いません。京太郎の施術を受けるなら、第三者の目がないところで受けたほうがいいです」

はやり「んん?」

いちご「どういうことじゃ、照?」

照「私は、自分が受けたあとのことは覚えてないけど……私の前に淡が受けたとき、その声と反応から素直に官能を覚えた」

いちご「かんっ……」///

はやり「」

咏「私は個人用控室だったけど、そのあと足腰立たなくなったし……試合までトロットロになってて、ひどいもんでした」

はやり「と、トトッ、トロッ……な、なにされるの、それ……」

良子「普通のマッサージです……だからこそ、質が悪いというべきか……」

咏「あれを受けてる姿を映像に残されるとなったら、それこそ責任を取ってもらうしかなくなります」

照「淡は私含めて5人に、私も4人に見られてます……誰もその話題を振ってこないから助かりますけど、正直、思いだすだけでも死ぬほど恥ずかしいし気持ちいい」キリッ

咏「お前はやめさせたいのかやってほしいのかどっちなんだよ!」

照「ふ、二人なら大歓迎ってことを言いたいだけです」

良子「まぁ、私も一人で受けていたから言えることですが……人に見られていたとあれば、消え入りたくなるのは間違いありませんね」

いちご「ど、どんなテクニシャンなんじゃ、いったい……」ゴクリ

はやり「い、い、いちごちゃん、はは、はしたないよっ」カァッ

照「とにかく、この状況でマッサージを受けるのはやめておいたほうがいいです」

咏「そうです! 一人だけってのが、そいつの心にどれだけ傷つけるか……」

良子「そんな気持ちをいちごに味わわせるべきではありません!」

いちご「なんでちゃちゃのんに決まってるんじゃ!?」

はやり「いちごちゃんの……でも、いちごちゃんなら……」チラッ

いちご「そこまで聞いて誰がやる気になりますか!」

照「入っていいよ、京ちゃん」

京太郎「あ、はい……では、失礼します」

はやりいちご「………………」ジー

京太郎「え……あ、あの?」

はやりいちご「!」ビビクンッ

良子「まぁ二人のことは気にしないで」

咏「そうそう、お茶でも飲みねぃ」

京太郎「あ、はい。いただきます」ゴクリンコ

照「おいしい?」

京太郎「は、はぁ……」

咏「お菓子も食いねぃ」

京太郎「い、いただきます……」

良子「――で、結論なのですが」

京太郎「なんのですか」

照「京ちゃんはマッサージ禁止」

京太郎「…………はい?」

咏「ただし二人きりのときを除く」

京太郎「…………うん?」

良子「二人きりのときは相手にマッサージして構いません。が、大勢にいるとき、その全員もしくは特定の相手にマッサージすることは禁止です」

京太郎「あの、仰ってる意味がよく――」

良子「わかりましたね?」

京太郎「わ、わかりました……」

良子「よろしい」

京太郎「えーっと……では、はやりさん……先ほどのは……」

はやり「なかったことにしてください」

いちご「ちゃちゃのんも同意見です」

京太郎「あ、はい……えぇー……」

撮影しながらマッサージして、四人に感想とかコメントされながら一人がマッサージされ続ける



京太郎「では、お身体のほうは大丈夫なんですね?」

はやり「ま、まぁ試しにって思ってただけだからね? ちゃんとストレッチもしたし、大丈夫だよ~」

いちご「う、うん、そうなんじゃ」

京太郎「ならよかったです。でも、無理そうならちゃんと言ってくださいね?」

咏「おいおい、もう約束忘れたか~?」

京太郎「いえ。ですから――別室に移動して、そこでマッサージさせていただこうかと」

良子「そうか!」

照「その手が!」

はやり「――二人とも?」

良子「……いえ、なんでもありませんよ?」

照「まぁそういうのもありかなとは思いますが、さすがにみんな一緒なときに、二人だけで個室になんてそんな、考えもしていませんでした」

いちご「本音もれすぎじゃ!」

京太郎「え、えっと……結局、マッサージのほうは……」

はやり「大丈夫だから」ズゴゴゴゴゴ

京太郎「は、はい……まぁどっちにしろ、そろそろ暗くなってきましたからね。マッサージの時間もありませんし」

咏「そろそろ夕飯食わないとなぁ……京太郎も、明日は決勝だしな。しっかり食べていきなよ?」

京太郎「そうですね、今日の夕食と明日の朝食は大事で――ん?」

良子「どうかしましたか?」

京太郎「い、いえ……それでは、今日は楽しかったです。お付き合いいただきまして、ありがとうござました」

照「どこ行くの?」ギュッ

京太郎「ホテルに戻らないと、夕食に間に合わないので……そろそろお暇しようかと」

はやり「ふふ、おかしなこと言うねぇ?」

咏「しっかり食べてけって言ったろ~? ここで一緒に食ってくんだよ、当然だろ?」

京太郎「あー、やっぱりですか……」

良子「不服ですか?」

京太郎「いえ、そういうわけでは……」

いちご「そろそろレストランも開くし、行くとするかの!」

京太郎「………………」

京太郎「……そうですね、行きましょう」

照「うん。京ちゃんは私の隣ね」

良子「まったく照は……仕方ありません、反対隣は私に任せなさい」

咏「やれやれ、がっつくねぃ……なら私は左前にするかねぃ」

いちご「確か、一番話しやすいのがそこじゃったような……」

はやり「京太郎くんなら、どこにも満遍なく話しかけられるからね~。よぉし、はやりは正面に陣取っちゃうぞ」

いちご「ちゃちゃのんは、はやりさんのお隣に失礼します」

京太郎(左に照さんがいるなら、右側から右手で食べさせやすい……)

京太郎(そして右手側には良子さん……肘がたまたま当たっちゃったりしても、もはや不可抗力)

京太郎(正面にははやりさん……胸元が隙だらけになったら、見逃さないようにしないと……)

京太郎(目がもたれてきたら、しっとり美人の咏さん、ふんわり美少女のいちごさんを清涼剤に……完璧な布陣だな)

咏「――みてーなこと考えてねーかい?」

京太郎「考えてません!」

良子「肘で触るぐらいはかまいませんよ?」

京太郎「考えてません!!」




~その頃、有珠山勢

顧問「須賀くんからの連絡で、外食して戻るそうです」

揺杏「は?」

成香「決勝前だっていうのに……」

由暉子「特製のすっぽんコースをお願いしておいたのに……仕方ありません、明日の朝から食べてもらいましょう」

(朝からすっぽん!?)
(胸やけしそう……)
(決勝の前夜になにを食べさせるのか……)
(そしてなにをする気だったのやら……)

~レストラン

京太郎「まぁ、そうですよね。ここってプロの方が全員泊まってるわけですもんね……」

咏「ああ、私らも迂闊だったねぃ」

照「京ちゃんと食事できることに夢中で、すっかり失念してた」

はやり「あはは、まぁ食事するだけだし大丈夫だよ、うんうん」

いちご「ほうかのう……」

良子「ということですので、皆さんはあまり、こちらのテーブルに近づかないようにお願いします」

健夜「差別反対!」

理沙「横暴!」

晴絵「不正を許すな!」

京太郎「あんた途中で一緒だっただろ!」

利仙「あらあら、そうだったのですか?」ゴッ

爽「りせちー、顔こええよ」

靖子「食事中に騒ぐなよ……」

絃「写真撮っとこう」パシャパシャ

シロ「デートじゃなかったならどうでもいい」

メグ「でも一緒には遊びたかったのデハ?」

セーラ「やめたれや」

洋榎「決勝前に余裕やなこいつ……」

健夜「――で、なにして遊んでたの?」

照「京ちゃんに脱がせやすい服を選んでもらってました」

京太郎「基準が違う!」

良子「あとは一緒にタマを転がしたり、棒を寝かせたり起こしたり」

京太郎「ボウリングね! ボウリング楽しかったですね!」

爽「こいつ必死だなwwwwwwwwwwwww」

シロ「京太郎、私にも選んで。インナーだけでもいいから」

京太郎「それは誰のも選んでませんよ!」

咏「そうだっけ?」

京太郎「え……いや、あのときのあれは違っ……」

利仙「へぇ……三尋木プロの下着をお選びになったのですか。随分と仲がおよろしいのですね」

京太郎「」

靖子「お前ほんと、なにやってんだよ……」

理沙「色キチ!」

セーラ「……竜華と怜には言えんな、これは」

洋榎「うちも絹恵には黙っとくわ」

京太郎「変な気遣いやめて!」

メグ「では言ってもいいノデ?」

京太郎「やめてくださいお願いします! なんでもしますから!」

はやり「ん?」

いちご「記者がいっぱいおるこの状況で、この会話はまずいんじゃ……いや、やめとこう……ちゃちゃのんの勝手な予想で混乱させたくないのう」

絃「たぶん勝手な予想じゃないと思うからセーフ」

京太郎「もうアウトでしょ、こんなの……(絶望)」


 なお、京太郎周りではよくある会話として、特別視される記事にはならなかったもよう

京太郎「こんなの絶対おかしいよ」





~二年目8月三週日曜、朝


京太郎「うん、いい朝だ。決勝に相応しいな」キリッ

由暉子「おはようございます」

揺杏「ゆうべはおたのしみでしたね」

成香「ぐっすり眠れましたか?」

京太郎「……おはようございます。その、昨日のことなんですが――」

由暉子「まぁまぁ。詳しい話は朝食を取りながらにしましょう」

揺杏「昨日ごちそうしようとした分を、ちゃんと取っておいてもらってるからな」

成香「朝から精をつけて、試合で頑張ってください」

京太郎「あ、はい……」


~朝食

京太郎「……なんでしょうこれは」

由暉子「スッポンです」

揺杏「詳しくは忘れたけど……なんだっけ?」

成香「身をほぐしてどうこう、と」

京太郎「あー……そうですね。すっぽん鍋、まる鍋とも呼ばれますけど、一般には四つ解きをして身を切り分け、臭い消ししながら煮込みます」

京太郎「これは煮込んでダシにしたあと、身をほぐして……葛饅頭ですね、それに包んで具材にしたんでしょう」

京太郎「ほぐした身と、煮込んで取った旨味で、すっぽんそのもののおいしさを味わう料理ですね」

由暉子「なるほど、さすがですね」

揺杏「ということで、たっぷりお食べなさい」

京太郎「朝からまる鍋……しかも夏場ですよ」

成香「今日のために精をつけてもらおうと、昨晩食べてもらう予定だったんだよ?」

京太郎「そうでした! すいません、いただきます!」

 少年食事中……

咲「うわ、朝からなんかすごいの食べてる」

京太郎「すっぽんだよ」

優希「スッポンか……噂ではそれをバーガーにできるみたいだな。それなら、タコスにも合いそうだじぇ」

和「すっぽん……生き血なんかもいいみたいですよ」

京太郎「(なににいいんだよ……)まぁ、あれは酒で割ったりして飲むもんだから、未成年にはきついな」

和「そうですか……でも、その……やっぱり身だけでも、効くんですよねっ?」

京太郎(なにが和の興味をここまで駆り立てるのだろうか……僕にはわからない)

尭深「本当にわからない?」

久「わかってるくせにぃ、このスケベ♪」

京太郎「僕にはわからない!」ムッシャー

憧「……朝から胸やけしそうなもん食べてるし」

宥「でもあったかそう……」

玄「あ! 京太郎くん、写真! 写真撮らせて! 板長さんに送っておくから!」

誠子「吉野ですっぽんってだせるの?」

灼「たぶん無理じゃないかと……」

京太郎「色々な料理を知っておくことは、料理人の引きだしになりますからね。俺もこれは、別のとこで教えてもらったわけですし」

穏乃「京太郎、それ私も食べたい!」

淡「私も!」

由暉子「残念ながら……」

揺杏「京太郎の分しかないんだよなぁ」

成香「ごめんね? また冬になったら、一緒に食べよ?」

二人『そっかー』

京太郎(一人分にしては多くないかな? まぁ一般論でね?)モゴモゴ

京太郎「ごちそうさまでした」ウップ

由暉子「テラテラして、精力が満ち溢れてますね」ドキドキ

揺杏「これは期待できそうだ……」

成香「頑張ろうね!」

京太郎(落ち着け。いかがわしい気持ちはないんだ、今日の試合の話なんだ)

由暉子「昨夜の下着ローテ、ずらして正解でした……」

揺杏「衣装もバッチリだぜ」

成香「アレもちゃんと用意してあるから……」

京太郎(聞こえない聞こえない)

京太郎「それじゃ、会場に向かいましょうか」

由暉子「はい、行きましょう」

揺杏「そんじゃ、みんなもあとでな」

成香「お先に失礼します」

咲「頑張ってね、京ちゃん」

和「落ち着いて、いつも通りなら絶対に大丈夫です」

優希「チャンピオンフラッグは預けたじぇ」

久「連覇、期待してるわよ」

玄「京太郎くんならできますのだ!」

憧「しっかりやんなさいよ」

灼「みんなで見てるから」

穏乃「いっぱい応援するから!」

宥「前向きに、ね」

淡「……わ……私の分も、お願い!」

誠子「私はあんまり、心配してないんだよね」

尭深「私も。京太郎くんのこと、信じてるから」

京太郎「――ありがとうございます、みなさん。行ってきます!」

~会場入り、控室前

京太郎「さて、受付も終わっていよいよなんだけど――」

由暉子「今日は誰でしょう」

揺杏「たぶん京太郎のファン」

成香「あはは、当たり前だよー」

京太郎「……開けますね」ガチャ


穏乃「やっほー!」

淡「私だ!」

京太郎「……おかしい、俺たちのほうが先に出たはずなのに」

巴「まぁまぁ、こまかいことは気にしないで」

京太郎「巴さんも来てくださったんですか。ありがとうございます」

巴「準決勝は哩さんに負けちゃったからね、頑張ったよ」

由暉子「穏乃さんと淡さんですか。よろしくお願いします。もうお一方は……」

揺杏「昨年の永水次鋒、狩宿巴。現在は東京の大学に進学し、辻垣内智葉、弘世菫、白水哩、壊れた先輩とともに麻雀部を設立。インカレ制覇を目指している。胸の成長は止まっている」

巴「余計なお世話です!」

成香「どうしてデータ収集が趣味なキャラクターみたいな解説を……」

京太郎「と、とにかく励みになりますよ! きっと勝利をお伝えできるよう、頑張りますから!」

穏乃「うん、頑張って!」

淡「さて――それじゃ、そろそろお茶淹れてよ」

京太郎「おう!」

巴「いや、おうじゃなくて。私たちが淹れる側でしょ、普通……」コポポポポ

由暉子「あ、私やりますよ」

揺杏「もう淹れてるし任せていんじゃね?」

京太郎「申し訳ありません、巴さん……」

巴「あはは、いいよ別に。それより、テレビつけないと」

成香「そうでした。解説はどなたでしょうか……」





「本日の解説は、新人プロの佐々野いちご選手にお願いしております。佐々野プロ、よろしくお願いします」

いちご「よ、よろしくお願いします……」カタカタ

「なにやらスマホが震え続けているようですが」

いちご「うわああああああああ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、違うんじゃあぁ……」


京太郎「……これはひどい」

淡「テルーじゃないじゃん!」

穏乃「小鍛治プロでもないんだ……」

巴「これ、どうやって決めてるんですかね……」

由暉子「広島も、高卒アイドルプロも加入したことですし、ここで一気にファンを増やしたいところでしょうから」

揺杏「捻じ込んできたわけか……必死だな」

成香「捻じ込んだプロの運命やいかに、っていう状態なんだけど……」

京太郎「……いちごさんには強く生きてもらいましょう」

巴「見捨てた!」

京太郎「俺にどうしろって言うんですか!」

由暉子「仕方ありませんよ、切り替えていきましょう」

淡「テルーにラインしとこ。解説しないの? なんで? と……」

京太郎「追い打ちはやめて差し上げろ」

穏乃「あ、そろそろ時間だよ」

揺杏「だな。京太郎、準備はいいか!」

京太郎「俺はいいんですけど、解説(の身の危険)が心配です」

成香「それはいま心配してもどうにもならないし……さ、準備しよう」

京太郎「はい……まぁこれまでの経緯もありますし、時間をかけると余計にいちごさんが被害を受けそうですからね」

巴「じゃ、今回も一局かな?」

京太郎「……なるべく早く終われるよう、頑張ってきます」


~対局場  BGM:エンドール武術大会

京太郎「はぁ……」

白糸台B「おう、暗い顔してんな」

白糸台C「決勝まで来て、なんでこの世の終わりみたいな顔を……」

モブ8「ククク、来たようだな……我が常勝の贄となるものが!」

京太郎「……なんだこいつ」

白糸台C「ああ、こういうやつらしい」

京太郎「どういうやつだよ……」

白糸台B「まぁでも、俺らと同い年で、実力はかなり高いらしいぞ?」

モブ8「クク、当然よ……モブ7に勝ったからと、調子に乗られては困るな。この我こそが、高校麻雀の魔王となるのだ!」

京太郎「いや、魔王は咲だろ……あ、やべ」


咲「」ゴッ

優希「咲ちゃん、オーラは抑えるんだじぇ!」


白糸台B「お前は魔王の婿とか大魔王の旦那とか言われてるけどな」

京太郎「言われてねえよ!(たぶん)」


咲「」ニヘー

和「ちょろすぎませんか……」


照「あっちの子はわかってるみたい。ジュースを奢ってやろう」

シロ「9本でいい」


京太郎「まぁいいや……とにかく、よろしくな。っつか今年は全員2年か……」

白糸台B「俺らの時代が来たな!」

白糸台C「そして……その覇者は俺だ!」

白糸台B「言うじゃん」

白糸台C「言うだけならタダだし」

白糸台B「確かに」

モブ8「ええい、黙れ! 魔王――改め覇王となるのは、この我だ!」


「さて、始まりました決勝戦……注目の須賀選手、及び同ブロックのB選手が優勝候補となっているようです」

いちご「えっと……反対ブロックはどうなんでしょう?」

「Cくんは同チームにてBくんのライバル、ダブルエースとも言われており、対抗馬となるでしょう」
「モブ8くんは、今年になって赤丸急上昇といったところですが……このメンバーの中では、一段落ちる形として見られています」

いちご「つまり……やっぱり京太郎がド本命なんですね」

「まぁ、はい……そうですね」


京太郎「ふぅ……とにかく平常心だ。張り切るとロクなことにならないからな、落ち着いていこう」

白糸台B「落ち着こうって考えが、すでに落ち着いてないよな」

白糸台C「言えてるwwwwwww」

京太郎「うるせぇ!」

モブ8「おぼっ、ぼぼっぼ、おちつっ、落ち着け……やれる、俺は……いや、我はやれるっ……」

京太郎(ああ、意外と小心キャラなのね……で、あのキャラクターで平静を保っていたと。メンタルコントロールとしてはありかも)


白糸台B25000→21800
白糸台C25000→23400
モブ825000→23400
京太郎25000→31400


京太郎(破竹じゃなかったら三倍→役満だったのにいいいいいいいい!)

京太郎「ツ、ツモ……1600、3200です」

B「ガハッ」

C「よし、よし! 俺が2位の可能性!」

モブ8「ぬっ、ふっ、ふふ……やるようだな……」

京太郎「……次もツモったら、モブ8くんが2位になるんじゃね?」

B・C「!?」

モブ8「おお、マジだ! ……い、いや、我はそんなもので満足せんぞ。目指すは優勝なのだ……」

京太郎「……ははっ、そうだな! なら俺も、全力で受けて立つぜ!」

モブ8「あ、嘘です、嘘、待って。ちょっとくらい手加減してもいいんじゃよ?」


白糸台B25000→21800
白糸台C25000→23400→17000
モブ825000→23400
京太郎25000→31400→37800


京太郎「ロン――6400だ」

C「あああああああああ、やらかしたあああああああ!」

B「まだだ、まだ終わらんよ!」

8「あ、あかん、死ぬ……イヤダーシニタクナーイ」

京太郎「ふぅ……やっぱり決勝だな。一筋縄ではいかない……いちごさん、申し訳ないです」


由暉子「京太郎、慎重ですね」

巴「一気に行こうとして、空回っちゃってるかな」

穏乃「でも余裕はありますよね!」

淡「あれだよね、ヨコヅナズモーってやつだ!」

揺杏「ああ……でも……」

成香「解説の方の声が……」


いちご「あ……あ……あぁ……」

「あの……スマホをいじっていないで、解説を……」

いちご「は、はい……例えばリーチ前のここで、一瞬手を止めてこちらを切っていましたが……大物手を狙った結果、進みが遅くなりましたね」

「須賀選手にしては珍しかったでしょうか?」

いちご「そうですね。普段の京太郎なら、早上がり重視で進め、結果として点数が高いという形なのですが――」 ブーッブーッ

いちご「ひっ……ち、違います、そんな……よく知ってますアピールなんかでは、けっして……」

(大丈夫なんだろうか、この人……)


白糸台B25000→21800→-14200 4位 トビ
白糸台C25000→23400→17000 3位
モブ825000→23400 2位
京太郎25000→31400→73800 1位


京太郎「ロン――悪いな、四喜和だ」

B「」

C「ふぅ……おつかれ。しかし8、お前ほんっとすげー豪運だな」

8「こ、これぞ覇王の天命よ(震え声)」


「き、決まったー! まさかの劇的な役満でB選手のトビ、ここで須賀選手の春夏連覇が決定いたしました!」

いちご「ほおおおおおお、セーフ! セーフじゃな!? 三局までなら、時間までここで解説するって聞いとるんじゃ!」

「え? は、はぁ、まぁ……なんでそんなに嬉しそうなんですかね……」


由暉子「やりました」

揺杏「よっしゃあ!」

成香「さすがうちの京太郎くんです!」

巴「京太郎くん、おめでとうっ……」グスッ

穏乃「やったよ淡!」パシッ

淡「ふふん、キョータローなら当然だし!」パァンッ


京太郎「はぁぁ……これで、夏も優勝か……ようやく、去年のあいつらに追いつけたわけだ」

B「なんだお前、そんなこと気にしてたのか?」

京太郎「そんなこととはなんだ!」

C「まぁ確かに、清澄の優勝はすごかったけどさ……それから一年でのお前の活躍も、それどころじゃないくらいすごかったんだぞ?」

8「うむ。言いたくはないが、まさに覇王の所業よ……おそらく清澄の者どもこそ、お前に置いて行かれたと思っていることだろう」

京太郎「……そうなら嬉しいけどな。まだまだだよ、俺なんて……」

B「お前が俺なんてだったら、俺らはどうなるんだよ!」

C「なんかもう、こいつムカつく!」

8「激しく同意だ! っつーことで、胴上げすんぞ! おらぁ!」

京太郎「おい、馬鹿、やめろっ……おいいいいいいい!?」

BC8「わーっしょい! わーっしょい! って、お前デカいんだよ! 重すぎるわ!」

京太郎「だからやめろっつったろおおおおおおおお!」



~控室

由暉子「さて――」ガタッ

揺杏「おっと、どこへ行く?」

由暉子「決まっているでしょう……京太郎の祝福に」

成香「全員で、だよね?」

巴「ここで迎えてあげるのがいいんじゃないかな?」

淡「へ? なんで行かないの? 私行ってこよーっと!」ダッ

穏乃「私も!」ダッ

由暉子「あ、だめです、待ってください!」ガシッ

揺杏「そうだぞ小娘ども! ここは年長順だ!」

巴「だったら私が先では……」

成香「現役高校生限定です!」

淡「うぬぬぬぬぬ、放せぇぇっ……」

穏乃「な、なんで止めるの? みんなで行けばいいのに!」


京太郎「はぁ……毎度、この胴上げはきつい……」フラッ

巴「ふふっ、お疲れ様、京太郎くん」

京太郎「巴さん……」

巴「それと――優勝おめでとう。京太郎くんなら勝てるって、信じてたよ」ニコッ

京太郎「ありがとうございますっ……」

巴「……遠慮しないでいいよ。ほら……ギュッてしてあげる」スッ

京太郎「っっ……やりました、巴さんっ……」

巴「うんっ――おめでとう、京太郎くん……」ギューッ

小蒔「」

春「」

霞「」

初美「あー……巴ちゃん、なんてことを……」

明星「でもこれ、春先輩もやってなかった?」

湧「しーっ!」

智葉「…………」ムスッ

菫「…………」ムスッ

哩(露骨に機嫌ば悪ぅなっとったい……)

由暉子「ああああああ! 先輩方が邪魔するからですよ!」

揺杏「お前が出し抜こうとするからだろ!」

成香「私たちは共同戦線って決めてたじゃないですか!」

淡「ふぅ……争いはなにも生まないってことが、よくわかった」

穏乃「私たちは争いたかったわけじゃないのにぃ……」




~控室帰還

京太郎「ただいま戻りました」

由暉子「お帰りなさい、京太郎。それと――おめでとうございます」

揺杏「かっこよかったぞ! よく勝ってくれたな!」

成香「素敵でした……とっても、とってもぉ……」ボロボロッ

京太郎「ありがとうございます……」

穏乃「すごかったよ、京太郎! 来年は私がやるからね、見てて!」

淡「それはこっちのセリフだ! ってことだからキョータロー、私が次に優勝するまで負けないでね!」

京太郎「ああ、待ってるぞ。二人とも、ありがとうな」

由暉子「……ところで、狩宿さんは?」

京太郎「ああ、なんか用事があるとかで帰っちゃったけど……だから先に、俺に挨拶しときたかったらしい」

揺杏「マジかっ……」

成香「逃げたんですか……あとで永水と大学側に抗議しておきましょう」

京太郎「??」

穏乃「あ、あははは……」

淡「とりあえず、インタビューの準備しとく?」

京太郎「そうするか……」

いちご「では東一局から振り返りましょう。ところで、インタビューのほうはどなたが行っとるんじゃ?」

「えっとですね、確か――」

照「私だ」

淡「テルー!」ダキッ

照「おっと……よしよし。でも重いから降りて」

淡「ふぁーい」ピョンッ

京太郎「照さん。お疲れさまです」

照「うん……おめでとう、京ちゃん」

京太郎「ありがとうございます」

照「さて、と――では須賀選手。まず率直なご感想をお聞かせください。優勝を決めた気分、いかがでしょうか」

京太郎「そうですね……とにかく嬉しいということと、春のときと違い、自分の実力を自覚できたようで……どこか誇らしい気分です」

照「なるほど。対局では少し慎重な立ち上がりを見せていましたが、その辺りは意識していましたか?」

京太郎「どうでしょうね……振り返ってみると確かに、少し集中しきれていなかったかな、という気もします。ただ、少しずつゲームに入っていって、最後には牌しか見えていませんでした」

照「うん……あ、いえ……そうですね。傍から見ていても、最後の一局はゾーンに入ってたというか、普段通りの須賀選手だったように思います」

京太郎「ありがとうございます。照さんの御墨付ほど心強いことはありません」

照「結婚しよ」

京太郎「え」

淡「なに言ってるの!?」

由暉子「そうです! 私としたあとですから、重婚になってしまいますよ!」

京太郎「してないし、しないから!」

揺杏「いきなりなに言いだしてんだよ、そこのプロは!」

照「失礼、取り乱しました。あんな笑顔であんなこと言われたので、つい」

成香「わかりますけど、自重してください」

京太郎「わかるんですか……」

照「コホンッ……えー。そうですね、では次に……この勝利を、誰かに捧げるとしたら誰に捧げますか?」

京太郎「今日まで応援してくださった、支えてくださった、ご指導くださった皆さんに――」

照「あ、そういうのはいいので」

京太郎「……はい」

京太郎「んー……では、三尋木プロに」

照「は? なんであの人なの?」

京太郎「て、照さん、仕事!」

照「コホン――なぜ三尋木プロなのでしょうか。ほかにも優れたプレイヤーは多くいらっしゃいますし、魅力的な女性も多いと思われますが。私とか」

京太郎「……今大会の優勝もそうなんですが、自分の麻雀が劇的に変わったな、と思うことがありました。そのきっかけは間違いなく、三尋木プロの指導のおかげだったと思います。だからです」

照「……なるほど。ではあくまで、麻雀の指導者としての感謝、ということですね?」

京太郎「え? えーっと……それは、その……まぁ……」

照「でははっきりとお願いします。麻雀を指導してくださった三尋木プロに、教え子として感謝し、この勝利を捧げます、と。あくまでお礼です、と」

京太郎「なんかしつこくないですか!?」

由暉子「まぁまぁいいじゃないですか」

揺杏「そうそう。表彰式まで時間ないしさ」

成香「ささっと宣言して、インタビュー終わらせましょう」

京太郎「えぇ……」

咏「~~~~~っっっ!」//// ジタバタ

はやり「うわぁ……」

健夜「咏ちゃん、みっともないよ」

靖子(年下にそういうことを言うほうが……いや、やめておこう)

理沙「辛辣」

シロ「でもグッジョブ、照」

セーラ「あいつ大物すぎるやろ」

洋榎「さすがのうちでも、インタビューでこんな圧力はかけられんわ……」




~表彰&閉会式

京太郎「おっ」

ネリー「京太郎! おめでとう!」ダキッ

京太郎「おっと……ありがとな、ネリー」

ネリー「フフーフ、これで一緒のお立ち台! 一緒の写真で新聞と表紙!」

京太郎「ああ、よろしくな」

ネリー「それでね、その……一つだけ、お願いがあるんだけど……」モジモジ

京太郎「……難しいことか?」

ネリー「そ、そんなに難しくないよっ、たぶん……それに、迷惑でもないと思うし」

京太郎「んー……まぁ、とりあえず言ってみてくれ」

ネリー「えっとね……表彰式で、写真撮るでしょ?」

京太郎「ああ、そうだな」

ネリー「その写真……撮るときに、その……お、お、おひっ……」

京太郎「おひ?」

ネリー「お姫様だっこ、してもらいたい……なって……」カァッ

京太郎「………………」

ネリー「ご、ごめんっ、無理だよね! やっぱりなしで――」

京太郎「いいぞ」

ネリー「えっ」

京太郎「そのくらい、お安い御用だ!」ガバッ ヒョイ

ネリー「わお!」

京太郎「……やっぱ軽いな、ネリー」

ネリー「え、えへへ……あ、ありがと、京太郎」

京太郎「ああ、このくらい気にするなよ。それじゃ、行くぞ?」

ネリー「うん!」


「こちらに目線お願いします!」
「須賀選手、こちらにも!」
「ヴィルサラーゼ選手もお願いします!」


サンディ「ファッ〇」

明華「あのビッ〇……やってくれますね……」

ハオ「これは許されませんね、ええ」


淡「ああああああああ、もおおおおおおおおおおおお! なんで私じゃないの、なんで!」ガシガシガシッ

尭深「お、落ち着いて、淡ちゃん」

誠子「ここまで取り乱した淡なんて初めてだよ……逆に面白い」


ネリー「ね、京太郎?」

京太郎「どうした?」

ネリー「ネリーは、いままで色々なこと経験したけど……今日が一番、幸せな日だよ!」ニコッ

京太郎「そっか……それはよかった」

ネリー「ありがと、京太郎!」チュッ

京太郎「へ?」

ネリー「えへへ、お礼♪ ほっぺだけどね」

「うおおおおおおお!」
「撮れ! 撮りつくせ!」
「フィルムが切れても構わん、ベストショットだぁ!」

大好き以上の全攻略キャラ『ああああああああああああああああああああああ!』


~撮影後、賞状と優勝旗授与

「えー、こほんっ……色々あったが、男子個人優勝おめでとう。これまでも励むように」

京太郎「はい!」

京太郎(春夏連覇……そして、念願の夏優勝……ついにやったんだな、俺……)

京太郎(う……ん……? なんだ、この感じ……)

「……くんっ……須賀くん? どうかしたかね」

京太郎「あ、いえ……なんでもありません。ありがとうござました」

京太郎(うーむ、なんか……また俺の中で、なにかが変化したっていうか……切り替わった感覚があったような……気のせいかな……)

健夜「……うわ、またえっぐいのになったし」

照「京ちゃんの鏡、また綺麗になった……これはもう、やっぱり私が結婚するしかない」キリッ

トシ「あらまぁ……ほとんど完成している子だと思ったのに、まだ先があったのねぇ。本当に面白い子だわ」




~二年目9月一週0日


 二年夏の大会を、優勝という最高の結果で。
 それも春夏連覇という快挙のおまけつきで達成した京太郎だが、派遣執事生活はまだ終わらなかった。

 それは周囲から望まれたことが理由でもあり、久の叶えた願いの期限が切れていないことも理由ではあったが――。
 最大の理由はやはり、京太郎がそれを望んだことになるだろう。

京太郎「――で、今月はここか……久々だな」

 見上げるのは歴史を感じられる大鳥居と大社。
 霧島の歴史と神域を保護する神代大社――ここが、京太郎が本日より世話になる場所だ。
 訪れるのは二度目で(滞在でなければさらに何度か)はあるが、この地域ではまさしく王族のように扱われる一族、組織の敷地内である。
 失礼があっては許されないと、明日より永水女子へ通うことが決まっている京太郎は、挨拶のために足を運んでいた。

霞「いらっしゃい、京太郎くん。迷わなかったかしら?」

京太郎「霞さん……お久しぶりです、ご心配ありがとうございます。わかりやすい道中でしたから、すぐに着けましたよ」

 それはなによりね、と微笑んだ霞に案内され、境内に足を踏み入れる。

京太郎(さすが……神秘的というか、気圧されるというか……外の空気とは全然違うな)

 ともすれば飲み込まれてしまいそうな空気に、キンと耳鳴りがした。
 同時に湧き上がる恐怖にも似た感情を、唾液とともにゴクリと飲み下す――と。
 その音が頭に響き、耳鳴りが掻き消されたとき。
 気がつくと目の前には、大きな社務所が現れていた。

霞「さ、上がってちょうだい。皆も待ち侘びている頃よ」

京太郎「お、お邪魔します……」

 本来ならば、社の事務を取り仕切っている方に挨拶するのが筋だろう。
 大社を取りまとめる宗家の当主、小蒔の父親に目通りすることは、さすがに叶わないはずだ。
 そこには、一高校生に過ぎないという京太郎の立場もあるが――それに加え、家柄という複雑な問題も絡んでいる。

 いまは縁遠くなってしまっているが、京太郎の父方の実家は、神道や神の力というものに深く関わりのある家系だった。
 その家は北九州において権勢を誇り、南九州に根付いている霧島神境、神代家とも密接な仲だったという。
 中でも、京太郎の曽祖父と小蒔の祖父という先代の当主同士は親友とも呼べる間柄であり、それぞれが溺愛する曾孫と孫――つまり京太郎と小蒔は、許嫁のような扱われ方をしていた。

 だが、ある事件をきっかけにそのすべては崩壊し、両家の関係は悪化とまではいかないが、同業他社という程度の関係に落ち着いてしまっている。
 京太郎と小蒔に至っては、その記憶まで封印されており――最近になって思いだすまで、二人は互いのことすら忘れていた。
 もっとも、思いだしたからといって、その頃の関係に戻れたわけではない。
 いまの二人の仲は、友達以上恋人未満やや友達寄り――という程度のもので、他の女子が割り込む隙は十二分以上に存在していた。

 閑話休題

 ともあれ、そうした家の当主に挨拶することなど叶うはずもない京太郎は、別の方々に挨拶をすることになる。
 それは事務方の責任者でもなければ、観光責任者というわけでもないが、一個人と呼んでいい相手でもない。
 神域において絶大な力を持つとされる、六つの家――その跡取りである六女仙という、この地域ではやんごとない立場と言って差し支えない方々だ。
 もっとも、いまは家を離れている方もいるため、全員にお会いできるというわけではない。

 それでも、久々の再会というのはやはり、心躍るものになる。

京太郎「……まぁ、夏の大会で全員に会ってますけどね」

霞「ふふ、そう言わないで。みんなも気にしているのよ――優勝直後の巴ちゃんとの抱擁とか、ねぇ?」ゴッ

京太郎「」

霞「うふふふ。さ、奥でみんな待っているわ……感動の再会、楽しみねぇ?」

京太郎(帰りたい……)


~応接広間

春「京太郎!」ガバッ

小蒔「京くん!」ガバッ

京太郎「っと……久しぶりだな、春。それに……こまちゃん」

春「本当に久しぶり……キョウタリウム、補給しないと……」スリスリスリスリ クンクンクンクン スーハースーハー

京太郎「犬か!」

小蒔「………………」クンクンスーハー スリスリスリ

京太郎「こまちゃんまで!? ちょっ、お姫様がこんなことしてるの、誰かに見られたらまずいからっ……」

小蒔「お姫様じゃないです……いまはこまちゃんです……」スリィ…

京太郎「いや、あの……でもなぁ……」

初美「まーまー、二人もずっと楽しみにしてたんですから……遠路はるばる、ごくろーですよー」

京太郎「はぁ……今年もお世話になります、初美さん」

明星「遅くなりましたけど、優勝おめでとうございます! 京太郎先輩!」

湧「今年は私たちも、部活に参加していますので……よろしくお願いします」

京太郎「ああ、よろしく。明星ちゃん、湧ちゃん」

霞「はい――それじゃ、挨拶も一通り済んだし、さっそく決めちゃいましょうか」

京太郎「決めるって、なにをですか?」

春「京太郎の居候先」

京太郎「――――――は?」

初美「忘れたんですかー? 京太郎が言ってたんですよー、次にうちに来たときは、こっち方面の修行もしたいって」

小蒔「そのための場所として、誰かの家に居候していただこうということです……うちは、さすがにダメだったんですが……」シュン

京太郎(そういえば、そんなことを言ってたような……)

京太郎「あー、でも、ほら……あれですよ。そんな本格的なのじゃなくて、危ないのが見えちゃってもうまく対処するやり方みたいなのを――」

春「そんな方法はない」

京太郎「えっ」

霞「もう見えてしまった時点で、本格的な対処をしないといけなくなってしまうのよ。以前、永水の校舎で会ったのも、本当は危なかったのよ?」

京太郎「」ゾワッ

初美「なまじ素質があるせいですかねー。京太郎は見えやすいみたいですから、一度本格的な修行をしたほうがいいんですよー」

京太郎「マジすか……」

小蒔「まじです」エヘン

京太郎「……でもそれ、居候しないとダメなんですかね?」

春「だめ」

霞「というよりは――なにかあったとき、近くにいたほうが対処しやすいからなのよ」

京太郎「…………よろしくお願いします」

明星「センパイの完全降伏、いただきましたー♪」


湧「でも、どうやって決めるんですか?」

初美「決まってますよー。私たちが集まってなにか決めるとなれば、方法はもちろん――」

春「麻雀しかない」ゴッ

霞「小蒔ちゃんは残念だけど抜きにして、私とはっちゃん、それに春ちゃんと――」チラッ

明星「あ、私はお従姉様にすべて委ねますので」

小蒔「明星は霞ちゃんと同じ家ですからね……」ズルイデス  ※という設定で

明星「だから、あと一枠は――湧、任せたよ?」

湧「え……えっっ!? わ、私も、やるの……?」

霞「ふぅん……まぁいいわ。それじゃ、準備しましょうか」

湧「ちょ、ちょっと待ってください、そのっ……わ、私は、須賀さんと住むなんて……無理ですっ、無理……」

初美「初々しいですねー」

春「京太郎、どうする?」

京太郎「そこで俺に振るか!? いや、まぁ……本人が言ってるし、三麻でいいんじゃないか?」

霞「京太郎くんが入って、勝てば選べるっていうのもありだけれど?」

京太郎「……嫌がられたときのダメージが大きいので、勘弁してください(よし、ナイス言い訳!)」

霞「……嫌がる?」

初美「京太郎を?」

春「ありえない」キリッ

明星「……いや、つまりですよ。嫌がるかもしれない相手を選ぶってことですよね? ということは、一人拒否った――」

湧「!?」

霞「へぇ……そうなの、京太郎くん?」

京太郎「誤解です、とんでもない誤解です!!」

湧(……そうまで否定されるのも、なんだか少し……って、私はなにを考えてるのっ……)ブンブン

初美「ま、それなら三人で打ちますかねー」

小蒔「あ、あの、私も入っていいですか? 普通に、練習としてですけど……」

春「もちろん」

霞「そうね、コクマのことも考えるなら、そうしておいたほうがいいわ」

小蒔「は、はい! 頑張ります――ので、えっと……京くん、後ろで見ててもらえますか?」

京太郎「え」

春「は?」

霞「あらあらあらあら、練習といえど真剣勝負で助言もらうのはいけないと思うわ」

初美「……まぁ練習ですし、いいんじゃないですかねー」

明星「おっと、2対2ですねー」

湧「ここは須賀さんに決めてもらっていいんじゃないでしょうか」

京太郎「えっ」

春「京太郎、すっぱり断って?」

小蒔「京くん、お願いします……」

霞「……京太郎くん、わかってるわよね?」

京太郎(不幸だ……)

 その後――断るのも申し訳ないという理由で、京太郎は小蒔を見守ることにしたのだが、対局を制したのは春だった。
 霞、初美の能力対策ができていたことも大きいが、それ以上に大きかったのが地力の差だ。
 一年間、ほぼ麻雀詰めで雀力を磨き、ついには全国五位にまで上達した実力――。
 なにより、京太郎への想いが普段以上の力を発揮させたといえる。


~滝見家

京太郎「……でかいな」

春「京太郎好きでしょ? 大きくなってよかった」ポヨン タプン

京太郎「そっちじゃなくて家!」

春「役割とかの関係で、偉い人をお招きすることもあるから。あまり小さいと、失礼にあたってしまう」

京太郎「ああ、なるほど……権力とか影響力とか、そういうのも大変なんだな」

春「お父さんたちは、あまり気にしていないと思うけど」

京太郎「そっか……ところで、俺が来るかもしれないってことは、ご両親には?」

春「もちろん」

京太郎「なら安心だな」

春「言ってない」

京太郎「」

春「大丈夫。京太郎のことは家でもよく話してる。きっと気に入ってもらえる」

京太郎「……なんて説明すればいいんだよ、この状況」

春「これから一ヶ月、うちで寝泊まりする?」

京太郎「俺、春のお父さんに殴り殺されるかもしれん……」

春「大丈夫……さ、入って」カラカラカラ

京太郎「くそうっ、お邪魔します!」


~玄関にて

滝見父「なんだ貴様は! なんの用があって我が家に参った!」ムキムキー

京太郎「(おおう、ものすごいマッソーなおじさんが……)は、はじめまして。自分は須賀京太郎と申します」

滝見父「名前など聞いておらん! なんの目的かは知らんが、早々に立ち去れ!」

京太郎「っ……」

春「お父さん、落ち着いて……」

滝見父「春は黙っていなさい。私はこの男に話しているんだ」

春「でも……京太郎は、私のお客様だから」

春「それと……とっても大事な人」ポッ

滝見父「なん……だと……おい貴様! うちの春になにをしたぁ!」ガシッ

京太郎「ぐっっ……」

春「お父さん、やめてっ……」クイッ

滝見父「黙っていなさいと言っているだろう!」ドンッ

春「あっ……」フラッ

京太郎「っっ……春っ!」バッ ガシッッ

滝見父「ぬぅっ!? 私の組み手を抜けただとっ……」

京太郎「春、大丈夫かっ?」

春「うん、平気……京太郎が支えてくれたから」ニコッ

京太郎「そうか…………滝見さん、失礼を承知で言わせていただきます」

滝見父「ほう、なにかな?」

京太郎「ご自分の娘をあんな形で突き飛ばすのは、さすがに可哀想です……春に謝ってください」

春「京太郎……私は平気」

京太郎「けど……いくら親とはいえ、あれはない。春があんな目に遭わされるなんてことを、俺が許せない」

滝見父「ほほう。許せないか……なら、どうするかね? 私が謝らなければ、無理やりにでも頭を下げさせるか?」

京太郎「荒事は嫌いです。それに、無理やり頭を下げさせても意味はない……形だけでも下げさせたいだけなら、そうしても構いませんが」

滝見父「ふん、自分の腕を相当に過信しているようだ」

京太郎「ご自由に受け取ってください。ただ、荒事は望まないと申し上げました。ですから、もし謝ってくださらないのであれば――」

滝見父「謝らないなら、どうする?」

京太郎「春を連れて、この家を出ます」

滝見父「は!?」

春「えっ!?」

京太郎「端的に言えば誘拐ですね。あるいは駆け落ち……とは違うか?」

春「駆け落ちでいい!」キリッ

京太郎「……まぁとにかく、そんな形です。娘に暴力を振るって平気でいられるような父親の元に、春を置いておけませんから」

滝見父「き、貴様……それは犯罪だぞ! わかっているのか!」

京太郎「必要とあらば、春のためです」

春「京太郎……」ポー

滝見父「そ、そんなことをしても、いずれは捕まる……滝見の、霧島の力を甘く見ているようだな」

京太郎「そんなつもりはありませんが……春一人を守る力はあるつもりです。権力が必要なら、心苦しいですが伝手を使って庇護を求めてもいい」

京太郎「そのくらいの覚悟はできています」

春「きょう……たろぉ……」トローン


滝見父「ぬ、ぬぬぬ……そこまで春のことを……大事な女だと思っているのか!」

京太郎「当然です。俺にとって春は、かけがえのない――」

春「か、かけがえのない……?」ドキドキ

京太郎「かけがえのない――大切な友人です」ドヤ

春「………………」シュン

滝見父「………………くっ、くくっ……ははははははっ! 残念だったなぁ、春よ! ははははは!」

京太郎「――え?」

滝見父「ははははっ……っと、いかんいかん。春、大丈夫だったか? 芝居とはいえ、ついやりすぎてしまった」

春「それは平気。でもいまは、心のほうが若干痛い」

京太郎「えっ、えっ? いや、あの……え?」

滝見父「ははははは、それは心が健康な証よ! まぁあまり落ち込むな、なかなか見どころのある、誠実で真摯な若者のようだからな!」

春「それは当然。京太郎以上の男の子は、たぶん日本にいない」

滝見父「ほほう、春がそこまで入れ込んでいるとは……いやいや、これから一ヶ月が実に楽しみだな」

京太郎「………………あの! どういことですか、これは! 春もだぞ!?」

春「……ごめんなさい。お父さんが京太郎の人となりを知るために、本音を見せられる場を整えると言って」

滝見父「そういうことだ、はははは! いや、笑うのは失礼だな、うむ……この通り、申し訳なかった!」ドゲザッ

京太郎「うおおっ!? いえ、そんな、そこまでされなくとも……きょ、恐縮ですっ……」ドゲザガエシッ

春「私も、ごめんなさい……」ミツユビー

京太郎(なんだこの状況……なぜ俺たちは、玄関で土下座合戦を?)

カラカラカラ
滝見母「ただいま戻りました……あらあら、こんなところでなにをしているの? あなたも春も、京太郎さんも」

春「あ、お母さん……お帰りなさい」

京太郎「えっ!? は、春のお母様ですか? はじめまして、須賀京太郎と申します! あの、これには事情が――」

滝見父「うむ、京太郎くんの人柄を確認しようと思ってな。私もまだ修行不足、一目で判別するのはなかなかに難儀なものゆえに……」

滝見母「はぁ、まったく……そんなことをされずとも、春の普段の口振りからして、いい子に決まってるではありませんか」

滝見父「念には念をというやつだよ。これも性分と言うべきか、石橋を叩いて壊し、川を泳いで渡る性格なのでな、ははは!」

京太郎「橋使って!」

春「ふふ、お父さんったら」

京太郎「え、ここ笑うとこ!?」

滝見母「ともかく――いつまでもお客様を玄関に留めておくのは忍びないわ。京太郎さん、居間のほうに上がってくださいな」

京太郎「は、はい、お邪魔いたします!」

滝見母「ふふ、そんな他人行儀に畏まらなくて大丈夫よ?」

滝見父「その通りだ。これからひと月、同じ釜の飯を食う仲になるのだから――いわば家族のようなもの」

滝見母「私のことはお母さんと思って」

滝見父「私のことは父親と思って」

滝見夫妻『普段通りの態度で接していいの(よ・だぞ)』

京太郎「………………色々言いたいことはありますけど、とりあえず――春?」

春「はい」

京太郎「……俺がここに居候するって話、ご両親には?」

春「先月から話してる」

京太郎「まだ決まってない時期じゃねぇか!」


~居間にて

京太郎「……たとえお父さんに頼まれたんだとしても、嘘はよくないぞ」

春「うん……ごめんなさい。反省してます」

滝見父「本当に、申し訳ない」

京太郎「まぁ――いきなり男が居候してくるとなれば、心配される気持ちもわかります。でもそれなら、断ってくださっても……」

滝見母「あらあら。そんなことしたら、私たち一生、春に恨まれてしまうもの……ねぇ?」

春「末代まで祟る」

京太郎「それ自分の子孫だからな!? なんなら自分も入ってるから!」

滝見父「ははは、まぁまぁ。そんなわけで、居候自体は構わんのだ。息子ができるようなものと思えば、これがなかなか楽しみでな」

京太郎「それは言いすぎかと思いますけど……」

春「お父さんは格闘技か武道をする相手が家にいればって、いつも言ってたから。あと、言いすぎじゃないと思う」

滝見母「それでも、男親としては気になるところがあったんだと思うわ……本当にごめんなさいね」

京太郎「いえ、こちらはもう気にしていませんから。まぁ、その……組手の相手というのも、もちろんお付き合いしますので」

滝見父「おお、それはありがたい! 先ほどの動きといい、なかなかの使い手のようだからな……ふふ、腕がなるわ」ボキボキ

春「京太郎は強い。ただ、その……別の力の出し方と使い方は、修行しないといけない」

滝見母「それは私の分野かしら……でも、せっかくだし春が指導してあげたいわよねぇ?」

春「う、うん……できれば……」

京太郎「――なら、春に頼もうかな。おじさんとは武道の修練をして、俺は春に麻雀を教える」

滝見母「あら、それじゃあ私は?」

京太郎「え、えっと、その……なんでしょう」ハハハ

春「……家事全般、京太郎が教えてくれる」

京太郎「いやいや、さすがに主婦の方に教えられることなんて……」

春「大丈夫。お母さんは家のお役目があるから。専業じゃないし、色々と隙はある」

滝見母「うふふふ……春ちゃん?」ゴッ

春「……ごめんなさい」ブルブル

京太郎「ま、まぁまぁ……でもそういうことでしたら、お母様がいらっしゃらないときの家事は、俺が引き受けさせていただきますよ」

滝見母「あらあらあら、本当? でも、さすがに忙しくなりすぎないかしら?」

京太郎「いえ。家に泊めていただけるなら、そのくらいはやらせてください。こちらからお願いします」

滝見父「ふむ、そこまで気を遣わずともいいのだが……本人がやりたいと言うなら、止めるのも野暮というものだな」

京太郎「はい、ありがとうございます」

滝見母「それじゃ、申し訳ないけどお願いするわね」

京太郎「お任せください。それでは――これから一ヶ月、よろしくお願いします」

春「こちらこそ。不束者ですが……誠心誠意、京太郎にお仕えします」

京太郎「いや、むしろ俺が仕えさせてもらう感じなんだが……ま、いいか」

春「じゃあ……一回、部屋に行こう? 荷物の整理しないと。私が案内する」

京太郎「っと、そうだな……では、失礼します」ペッコリン

滝見夫妻『ごゆっくり(意味深)』



~部屋?

春「ここ」

京太郎「おう、ありがとう……って、あれ?」

京太郎(机とか本棚とか……タンス? なんで家具が揃って――)

京太郎「…………春さん、つかぬことをお伺いするがね?」

春「なんなりと」

京太郎「ここって……もしかして、春の部屋か?」

春「うん。一緒の部屋」ニコッ

京太郎「アウトォ!」



~部屋

春「廊下の反対側にする? 襖挟んだ隣にする?」

京太郎「もっと離れた場所は……?」

春「私と近い部屋、イヤ?」ウルウル

京太郎「そ、そういうことじゃないんだけど……あー、わかった。それじゃ廊下挟んだ向かいにするか」

春「うん! あの、えっと……時々、遊びに行っていい?」

京太郎「もちろん。ただ、一応ノックはしてくれ。俺も春の部屋に用事があるときは、ノックして返事を待ってから開けるからな?」

春「わかった(着替え中でもいいよって言おう)」グッ

京太郎「それじゃ、荷物置いたら……なにがしたい、春?」

春「一緒にいたい」

京太郎「あー……俺が考えてるのは、麻雀の練習か、おじさんと組手するか、お母様と昼食作りをするか、ここでの修行をするか、なんだが」

春「修行……というか、毎日のお務めは朝にすることになってる」

京太郎「なら、明日の朝からか……どんなことするか、先に聞いておける範囲があるなら、教えて欲しいんだけど」

春「わかった。じゃあ、荷解き手伝いながら説明する」

京太郎「疲れるぞ? 結構、荷物多いしさ」

春「平気。京太郎と同じことをしてたい」

京太郎「……なら、お願いできるか?」

春「はい」ニコッ


春「本がない」

京太郎「も、持ってきてないから(震え声)」


 春から隠しつつ、持ってきていた本(居候するのを知らなかったから仕方ない)を厳重に包装して封印し、他の荷物を片づける。
 その合間に春から聞かされたお務め内容は、基本的には水垢離、掃除、朝拝。
 朝拝のあとに、必要であれば霊的な力を集中するための、頭と身体のトレーニングを行うこともあるという。

京太郎「行うこともあるってことは、しないこともある?」

春「忙しいときとか」

京太郎「それでいいのか? バトルものとかスポ根だと、追い詰められた状況で力をだすために、そういうときこそ励むんだが」

春「そんな状況にはならない」

京太郎「い、いや、でもほら、いきなりすごいのに襲われたりとか……」

春「そういうときは逃げる。逃げられないなら諦める」

京太郎「いや、諦めたくないんだけど……」

春「見つけても凝視したり声をかけたりして、刺激しなければすぐには襲われない。だからそのまま逃げて報告、あとは態勢を整えて封印に動く」

京太郎「……刺激しちゃったら?」

春「諦める。むしろそうならないよう、いつでも余裕を持って自分をコントロールできるよう、頭と身体を慣れさせる」

京太郎「な、なるほど……」

春「夕方も同じことがある。でも部活後は遅くなるから、掃除は難しい。あと、お父さんが京太郎と組手と乱取りをしたがると思う」

京太郎「遅くなってもいいなら、夜に掃除させてもらうんだけど……おじさんの相手は大変そうだ」

春「たまにでいい」

京太郎「そうか、ならそれで……できれば夜も少し修行したいところだし」

春「帰ってから、掃除するかお父さんと戦うか。それが終わったら夕食。あとはお風呂に入って寝るだけ」

京太郎「……勉強と麻雀の時間を取ろう。せっかく一緒に住むんだし、春にもできる限りのご奉仕がしたい」

春「――っ!」ビビクン

京太郎「どうした?」

春「もう一回言って」

京太郎「……勉強と麻雀の時間を取ろう」

春「その次」

京太郎「……せっかく一緒に住むんだし、春にもできる限りのご奉仕がしたい」

春「~~~~っっ!!」ゾクゾクッ ビクビクンッ

京太郎「だ、大丈夫か?」

春「へ、平気……嬉しいだけ」キュン

京太郎「な、ならいいけど……ま、勉強が終わったらちょっとリラックスできるだろうし、そのときに頭のトレーニングさせてもらうか」

春「そっちは、私がお手伝いする……京太郎が力を扱えるようになれたら、私たちも嬉しい」

京太郎「ああ、頼む……それじゃ、春」

春「はい」

京太郎「一ヶ月、よろしくな。いままで通り、仲良くやっていこう」

春「……いままで以上に、仲良くなる」

京太郎「そうだな、そうしよう」

春「うん」グッ


~修行 庭にて

春「それでは……お夕食まで時間があるから、簡単な修行をします」

京太郎「はい、よろしくお願いします」

春「まず服を脱ぎます」

京太郎「え!?」

春「返事は『はい』」

京太郎「あ、はい……えぇ……」ヌギヌギ

春「●REC」

京太郎「黙って撮影すんなぁ!」

春「撮ります」●REC

京太郎「そういうことじゃなくて……その、それも修行なのか?」

春「特にそういうことじゃない」

京太郎「……なら、撮影はいったん止めようか」

春「ん」

京太郎「服は着てていいんだな?」

春「脱いだほうがいいけど……最初だし、着た状態でやる?」

京太郎「……春が教えやすいように頼む。必要なら脱ぐから」

春「じゃあ、シャツだけになって……まず、ここに正座」ポンポン

京太郎「押忍」

春「目を瞑って……背中に意識、集中してて」ギュッ

京太郎「っっ……お、おい、これは――」

春「シッ……私の鼓動を背中で聞いて。その音に、自分の鼓動と呼吸を合わせて……」スー ハー

京太郎「……はい」スー ハー

春「――そのまま呼吸をしていて。私がいまから、少しだけ力を動かしてみるから……それを感じ取って欲しい」

京太郎「…………」

 ジワリ――と背中に温かななにかが伝わり、肩や腕、下は腰回りへと染み広がる。
 その感覚が、いわゆる霊能的な力ということだろう。
 鼓動と呼吸を春と通い合わせ、彼女と一体化したような状態を保つことで、その流れが鋭く感じられる。

春「……京太郎の力は、おそらく封印されていたはずなのに、それでも普通に見えてしまうくらいに強い」

春「それを引きだして制御しようと思ったら、そのことを意識しなければならない」

春「自分の中にある、いま動いているのと同じ力を感じること……それが第一歩」

 どのくらいそうしていたのだろうか。
 十分、数十分、ともすれば一時間か、数時間か――。
 時間の感覚すらなくなるほどに、意識と感覚は春の力に集中していた。


春「……ろう……太郎、京太郎……?」

京太郎「ぅ――おっ、あっ……はぁっ、ふぅっ……どうした、春……?」

春「大丈夫……?」

京太郎「え――あ、ああ、なんともないけど……あれ、終わったのか?」

春「うん。離れて、もう目を開けてもいいって言ったけど動かないから……心配した」

京太郎「すまん、全然気づかなかった……なんかずっと、春の感覚が動いてる気がして……」

春「……大丈夫。それはきっと、私のじゃなくて京太郎の……同じ力の感覚だったから、自分のものをそうと捉えていたはず」

京太郎「え、マジか? それじゃ、いまの感覚が俺の……」

春「……初めてでここまで感じられる人は、おそらく希少。元から才覚があって、素質もあったからとはいえ……もしかしたら――」

京太郎「春?」

春「もしかしたら、私では十分に教えられないかもしれない……姫様や霞さんのほうが、うまく指導できると思う」

京太郎「…………なぁ、春」

春「はい」

京太郎「確かにそうかもしれないし、春の家に居候するのが決まったのも、麻雀の結果だった」

京太郎「それでも――俺は断ることだってできたのに、この家でお世話になることにした」

春「……うん」

京太郎「たぶん……俺自身、春の家で世話になりたかったんだと思う」

京太郎「そういう力を扱う方法も、きっと春から教わりたかったんだ……だから春、この際みんなのことは気にしないでおこう」

春「京太郎……」

京太郎「いまのだって、春がわかりやすく教えてくれたからできたんだ。だから俺は、この先のことも春に頼みたい」

京太郎「春に、助けてもらいたい……それじゃ、春に教わる理由にならないか?」

春「!」

京太郎「春、どうだ?」

春「っっ……なる、十分っ……私も、そうしたい……霞さんたちじゃなくて、私が……京太郎に、教えたいっ……」

京太郎「――ならよかった。これからもよろしく頼む、春」

春「……はいっ……」ギュッ

京太郎「……暗くなったし、そろそろ戻るか」ナデナデ

春「はい……お夕食の前に、お風呂にしたほうがいい」

京太郎「ああ、そうだな。座ってて泥もついたし、さすがに汗もかいたしな……」

春「着替え持ってくるから……先に入ってて」

京太郎「おう――って、ちょっと待ちなさい」

春「なに?」

京太郎「……確認するまでもないと思うけど、一緒に入るわけじゃないよな?」

春「……………………もちろん」

京太郎「その間はなんだっ!?」


~お夕食

滝見母「………………参りました」フカブカ

京太郎「と、とんでもありませんっ……その、使いやすいキッチンですし、土地柄なのかいい食材ばかりだったおかげでして……」

春「相変わらず、京太郎のご飯は最高……」ポー

滝見父「はっはっは、これは見事! だが母さんの料理もおいしいぞ? 私はこちらのほうが好きだなぁ」ハッハッハ

京太郎「ほ、ほら、おじさんもこう仰ってますし……」

滝見母「…………本当ですか?」ジッ

滝見父「はっはっは、もちろんだとも! 今日まで私の身体を作り、健康に支えてくれた料理だからな!」b

滝見母「あなた……」ジーン

春「ごちそうさまです」

京太郎「いいご両親だな……いいご夫婦だ」

春「うん……わ、私も……こんな夫婦になりたい」ポッ

京太郎「ああ、理想だよな」

春(微妙に通じてない……)ショボンヌ

滝見母「それにしても……京太郎さんは、どこでこれほどの料理を?」

京太郎「まぁ……話すと長いんですけど、いい先生に――先生方に教わった、ってところでしょうか」

春「京太郎は奈良の老舗旅館や、東京の老舗料亭で働いたりもしてる」

滝見父「ほほう、それはそれは……若いうちから、なかなかの試練を越えているな」ニヤリ

京太郎「試練……と思ったことはないですね。誰かの役に立てるならと、できる限りのことをしてきただけです」

滝見父「はっはっは、それは末恐ろしい! そういう気持ちを保てる人間は、苦を苦とも思わんからな。だが――」

春「だが?」

滝見父「それゆえに危うくもある。自分ができることなら自分が、という気持ちが強すぎるあまり、他者を蔑ろにしてしまうこともあってな」

京太郎「他者を、蔑ろに……」

滝見父「ぞんざいに扱うだけが蔑ろではない。大事にすることは、突き詰めれば甘やかすことにもなるということだ」

春「どうすればいい?」

滝見父「周りに任せることを覚える、それだけの話だ。料亭でも、下の者ができることなら、上はそれを任せたりするだろう?」

京太郎「……はい、その通りです」

滝見父「ただそれだけのことだ。そちらを突き詰めれば、周りを信頼するということだな。簡単のようで難しい、だが大事なことだ」

京太郎「肝に銘じておきます」

滝見父「はっはっは、京太郎くんは生真面目な青年だな! 年寄りの言うことなど、頭の片隅にでも留めておけばいい」

春「忘れていい、と言わないところがずるい」

滝見父「なに、渾身の説教だったからなぁ。年に一度、できるかできないかだぞ?」

居太郎「いえ。本当に為になりました」

滝見母「まったく、この人ったら。春にはこんなに口うるさいことは言わないのに、ねぇ?」

春「うん」

滝見父「はっはっは! そんなことをして春に嫌われたら大変だろう!」


京太郎「……知り合うのが女子ばっかりだからか、娘さん大好きすぎる父親ばっかりな気がする」

春「たとえば?」

京太郎「……え?」

春「誰のお父さんに会った? 誰のお父さんがそういうお父さん?」

京太郎「え、と……そんな食いつくとこか?」

滝見母「ふふふ、これも偵察の一環なのね?」

京太郎(偵察?)

滝見父「いやいや、私も少し興味があるぞ。世の父親と娘の関係、春への接し方の新たな扉になるやもしれん!」キリッ

京太郎「えぇ……えー、そうですね……永水だと、霞さんの――たぶんお父さんだと思うけど、ご当主って方に」

滝見父「ああ。なかなか霞殿に厳しいようだが……あれもあいつなりの愛情でな。立場もあって、人前ではそうするしかないというのも難儀なものだ」

京太郎「……そうなんですか」

滝見母「京太郎くんは、霞ちゃんのことを心配してくれていたのね。でも大丈夫よ、ありがとう」

春「霞さんは強いし、自分の役割をすごく理解してる……尊敬できる先輩」

京太郎「……まぁ、そうか。俺が心配して、どうなるってものでもないか」

滝見母「んー、そうでもないと思うけれど……心配してるってことを、伝えてみたらどうかしら? きっと喜ぶと思うわよ」

春「だめ」

京太郎「えっ……なんでだ?」

春「……なんででも」

京太郎「アッハイ」

滝見母「あらあら」クスクス

滝見父「はっはっは。まぁ石戸のことはいいとして、ほかはどうかな?」

京太郎「うーん……いまプロになってる方のお父さんには、めちゃくちゃ嫌われてましたね。娘に近づくダニめ、みたいな扱いでしたし」

春「よし!」グッ

京太郎「えっ」

春「なんでもない」

滝見父「ほっほう、それはまた強烈な御仁。一応聞いておくが、その娘さんに不埒な真似などは?」

滝見母「あなた、失礼ですよ。ねぇ、京太郎さん?」

京太郎「………………は、はは……いえ、そんな。お気遣いなく……」

京太郎(下着で同衾事件とか、やばい事実がありすぎる……シロさんのお父さんにはバレてなかったはずだけど)

春「なにかしたの? えっと……小瀬川さんに」

京太郎「なんでわかんの!?」

春「お父さんに会ったということは、いままでの滞在先。その中でプロになった人は限られている。あとは一番仲がよさそうな人を選んだ」

京太郎「プロファイラーかよ……いや、ほら、でも照さんとか洋榎さんとか――」

春「京太郎のお父さんと愛宕プロのお父さんは知人、友人と聞いてる。お母さんの愛宕監督とも良好な関係なら、お父さんに嫌われるわけがない」

春「宮永家とは姉妹揃って仲がいい。咲のほうは中学からの付き合い……それならご家族とも面識があって、付き合いが途切れない関係と予想できる」

京太郎(やべーよこの子、完全にプロファイラーだ)


京太郎「……っていうかあれだな、咲のこと名前で呼んでんのか。随分、仲良くなったんだな?」

春「基本的に派遣先同士はみんな仲がいい。ただ、同じ学年は特に繋がりが深くなってるのは否定しない。憧や由暉子とは特によく話す」

滝見母「新子のお嬢さんね。春とは違うタイプみたいで、いい刺激になっているみたいよ」ニコニコ

滝見父「それはありがたいことだ。自分を深め、高めてくれる相手に巡り合うのは、よほど人と縁に恵まれなければ難しい」

春「京太郎の、おかげ……ありがとう」

京太郎「……俺はなんもしてないって。春がいい子だから、みんなと仲良くなれるんだろ」ポンポン

春「あふ……うん、それでも……ありがとう」

滝見母「あらあら」

滝見父「はっはっは! 小瀬川殿の父上のお気持ちが、少しだけわかってきたなぁ」

京太郎「えっ」

滝見父「はっはっは、冗談だとも!」

京太郎(冗談っぽくなかったよ、こええええええええええ!)


~食後、春の部屋

京太郎「明日から二学期だな」

春「うん」

京太郎「宿題は終わってるよな?」

春「もちろん」

京太郎「となると――あとは明日に備えて寝るだけか」

春「喜んで」

京太郎「ああ、おやすみ。それじゃ、また明日――」

春「違う、そうじゃない」ガシッ

京太郎「え」


春「部屋に戻るなら、もう少しやることがある」

京太郎「えぇ……ま、まぁそういうなら……で、なにかあったか?」

春「夏の大会が終わったら、姫様は引退する……元々は姫様のためにできた麻雀部は、これ以上存続する理由はない」

京太郎「それは……元はそうかもしれないけど、春は――」

春「わかってる。私も麻雀が好きだし、下には明星と湧もいる。姫様にはコクマもあるし、まだ部活を終わらせる気はない」

京太郎「そっか……ああ、そうだな」

春「来年のために、もっと強くなりたい……今夜から、時間があるなら京太郎に特訓してもらいたいの」

京太郎「……わかった。春がその気なら、俺もとことん付き合う」

春「うん、付き合って」ポッ

京太郎「ま、学校に影響がない範囲でな」

春「はい」

京太郎「なら、さっそく――とりあえず今日は東風戦にしとこう。俺は北家に入る、春は残りの家だ」

春「……負担が大きい」

京太郎「はは、悪いな。けど、俺が見て方針を決めるなら、なるべく多角的に春の打ち方を見ておきたい。いまの実力も含めて」

春「ん……京太郎がそう言うなら、私はどんなことでも従う」

京太郎「よし、いい覚悟だ……それじゃ、俺に勝ったらなにか一つ、言うことを聞くってご褒美もつけようか」

春「! な、なんでもいい……の?」

京太郎「まぁ、そうだな……あ、対象は俺だけだぞ。俺に誰かをどうにかさせたりするのはなしで、物理的に可能なことで頼む」

春「問題ない」

京太郎「……あの、法外な金額を要求とかもなしな?」

春「わかってる……京太郎は、私をなんだと思ってるの?」ムー

京太郎「すいません……いや、ついな。っていうか、一応?」

春「私も常識は弁えてるから……そんなことはお願いしない。もったいないし」

京太郎「それならいいんだが……なら、さっそく始めるか。確か春の家だと、手積みになるんだっけ?」

春「うん。卓と牌はここ……では、よろしくお願いします」ペッコリン

京太郎「ああ――よろしくお願いします」

 なお、京太郎が圧勝したもよう。


春「……なんで? 三対一なのに」

京太郎「いや、まぁ……ほら、春が三人分考えてる間、俺は一つ考えるだけでいいわけだし」

春「ずるい」プクー

京太郎「そう膨れるなって、な?」ツンッ

春「ふぁい」プシュー

京太郎「よし――なら、今日はここまでにしよう。続きは明日――放課後だな、部活で」

春「ん……おやすみなさい、京太郎」

京太郎「ああ、おやすみ」

春「すぐにお布団敷くから、泊まって行って」イソイソ

京太郎「さぁて、部屋に戻るかな!」


~それから一週間後

~二年目9月二週月曜

~朝

春「――はい、お疲れ様でした。今朝のお務めと修練はここまでにします」

京太郎「ありがとうございました……さて、朝飯の支度をしないと」

春「私も手伝う」

京太郎「春はゆっくりしてていいんだぞ」

春「旦那様にだけ家事をさせるわけにはいかない」

京太郎「俺はどっちかというと執事だし……旦那様というか、主はむしろ春のほうじゃ……」

春「じゃあ主として執事の仕事を手伝う」キリッ

京太郎「……はいはい。まぁ毎朝のことだし、もういい加減、こうして断るのも失礼だよな」

春「そういうこと」

京太郎「では――よろしくお願いいたします、お嬢さま」

春「……それはなかなか。学校でも、一回だけそれでお願い」

京太郎「え……まぁいいけど。だったら、部活中じゃないほうがいいな」

春「いや、部活中で!」

京太郎「な、なんかよくわからんが、わかった……って、しゃべってる場合じゃない。飯と弁当の準備だ」

春「はい。あ、それからお父さんとお母さんも、お昼は京太郎のお弁当がいいって言ってた」

京太郎「あ、はい……ならせっかくだし、昨日仕込んでおいた角煮を使うか。本当は、夕飯用だったんだけどな」

春「なら、帰りは夕食の買い物に行かないと」

京太郎「だな。ちょっと早めに部活は抜けさせてもらおう……って、大丈夫かな。こまちゃん、コクマの選抜も近いのに」

春「今日は初美さんがオフで、コーチに来てくれるって言ってたから平気」

京太郎「ならいいか。よし、じゃあ忘れないようにしよう」

春「朝はどうする?」

京太郎「昨日いただいた干物をメインにしよう。それと、玉子焼きにアレンジを考えたから、それは俺が。で、味噌汁の具なんだけど――」

春「ん、わかった……それなら――」


滝見父「ははは、なかなか睦まじくやっているようだな。善哉善哉」

滝見母「ええ、あなた。あんな上機嫌な春の姿、なかなか見られないですよ」

滝見父「京太郎くんがいないときの寂しげな姿や、電話やメールを確認した瞬間に輝く様も、捨てがたいものだったがな」ハハハ

滝見母「人に感情を伝えるのが苦手なあの子だから、こんな風に恋愛できるか少し不安だったのだけど……京太郎さんのおかげね、これも」

滝見父「機微を察するのが得意だからなぁ、彼は。それに引っ張られてか、春の表情もわかりやすくなっている」

滝見母「ええ、本当に……そろそろ、他家にも根回ししておこうかしら」

滝見父「ははは、気が早いぞ。二人ともまだ若い、可能性はいくらでもあるのだ。他家の娘さん方も、それはそれは魅力的だしな」

滝見母「それはわかっています、だからこそですよ。あんないい子、狙われていないわけがないんですから」

滝見父「だとしてもだ。若人の恋愛に大人が嘴を挟んで、よい結果を迎えた例などない……彼が一番、そのことを知っている」

滝見母「……そうでしたね。だからこそ、姫様のアピールが怖いんですけど」

滝見父「そうさな……姫がご当主になるまで彼が独身なら、それはえらいことになるだろうなぁ。はははは」

滝見母「そこまでいくと、全員の共有財産になっていそうね……」


京太郎「なにか不穏な噂をされている気がする」

春「よくわらかないこと言ってないで、味見して」

京太郎「はい、すいません……ん、うまい」

春「じゃあこれで完成」

京太郎「おう、こっちもだ。さて、運ぶとするかな」

春「はい……あなた(ボソッ」///


~学校にて

「申し訳ございません。昨日の宿題なんですが、ここをお教えいただけないでしょうか」
「あ、私も! 英語の和訳がさっぱりすぎた!」
「私も……あの、数学を……」

京太郎「ああ。じゃあ近い授業から先に済ませよう。まとめて説明するから、聞きたい人は集まってくれ。じゃ、まず数学から――」

春「…………むー」プクー

モブ子「おやおや、春ちゃ~ん? ご機嫌ナナメですなぁ?」

春「……そうでもない。でも、京太郎と話せないのが退屈」

モブ子「宿題聞いてくればいいのにー」

春「それは夜に、京太郎から二人きりで教えてもらってるからいい」

モブ子「……あー、はい。ごちそうさまです」モグモグ

春「……なに食べてるの?」

モブ子「京太郎の弁当?」モグモグ

京太郎「お前またかあああああああああああああ!」

モブ子「私の胃袋は宇宙だああああああああああ!」ダッシュ

京太郎「クソァ!」

春「……私の、わけてあげる」

京太郎「あ、ああ、ありがとう……けど、量が少なくなるからな。俺は学食でも行くから、それは春がしっかり食べてくれ」

春「ん。それでも、学食は一緒に行く。角煮せっかく作ったんだし、一つ食べてみたほうがいい」

京太郎「そうだな。じゃあそれだけ、俺のランチとオカズ交換しよう」

春「ん♪」

「ちょっとー、せんせー!」
「あの、最後の問題は……」

京太郎「っと……それじゃ春、昼休みはその約束で」

春「はい……えへへ」ニコニコ



~お昼

京太郎「春、行こうぜ」

春「うん」ウデクミー

京太郎「おっと……よし、急ぐか。レディースセットは女子じゃないと注文できないからな」

春「レディースセット?」

京太郎「あるんだよ……ほら、あれ」

春「どうして女子校に、レディースセットがあるの……」

京太郎「あー、それな。俺も去年、同じこと思ったよ」

春「それにこれ、女子じゃなくても頼めるみたい……」

京太郎「え、そうなのか!? うおお、清澄では女子しか頼めないから、こっちもそうだとばかり……」

春「………………誰に?」

京太郎「え?」

春「誰に頼んでもらってたの? 咲? 和? 優希? 先輩?」

京太郎(食いつきがすごい……)「えっと、咲だけど」

春「……これ、私のお弁当」スッ

京太郎「あ、ああ。でもこれは春が――」

春「これを持って、席を取っておいて。私がレディースランチ、頼んでくる」フンスッ

京太郎「いや、あの――はい。よろしくお願いします」


春「お待たせ」

京太郎「ああ、サンキュ。おお、うまそうだ……それじゃ、食うか」

春「はい。いただきます」

京太郎「いただきます……ん?」

春「まずは一口。あーんして」ズイッ

京太郎「あ、あーん……もぐ」

春「おいしい?」

京太郎「お、おう……手前味噌になるけどな」

春「じゃあ私も。あーん」

京太郎「……どれがいい?」

春「ほぇへもひぃ」(どれでもいい)

京太郎「では、このミンチカツを……あーん」

春「もぐ……おいしい。ただ、京太郎が作るほうがおいしい」

京太郎「そりゃどうも。んー、なら今夜はミンチカツにするか」

春「じゃあ、それで献立考えて、放課後の買い物?」

京太郎「だな。メニューはまた、休み時間に考えとくよ」

春「うん、お願い……もぐ……」

春「おいしい」パァッ

京太郎「そう言ってもらえると、作った甲斐がある」

春「毎日、京太郎のご飯が食べられる……とても幸せ……」ホフゥ

京太郎「……ありがとな」ポリポリ



~部活中

小蒔「――といった目撃証言がありました」

京太郎「アッハイ」

明星「ちなみに証言したのは私です」

湧「余計なことは言わなくていいんじゃ……」

明星「ちなみに目撃したのは湧です」

湧「余計なこと言わないで!」

春「問題はないと思う」

小蒔「そ、そんなことありませんっ! 男の子が学内に一人なのに、そ、その人と腕を組んで歩いたり、た、た、食べさせ合いっこしたり!」

小蒔「えっと、その……ふーきに反します!」

春「……食べさせ合いっこは、去年もしてた」

小蒔「!?」

春「だから……今年になって言いだすのは、むしろ言いがかりレベルです」

小蒔「そ、そうなんですか、京くん!?」

京太郎「……まぁ、はい。してましたね、確かに……」

京太郎「……ってか、他校でも」ボソッ

春・小蒔『は?』

京太郎「なんでもありません!」


~少年少女練習中

京太郎「――あ、やべ。そろそろ買い物行かないと」

初美「えー、まさか勝ち逃げするつもりですかー」

京太郎「そ、そんなつもりはないんですけど……ほら、夕飯の支度とか色々ありますから」

明星「主夫みたいになってますね」

春「明星、黒糖をあげる」スッ

明星「わーい!」

小蒔「あ、あと一局だけ……東風戦だけでも……」

京太郎「んー……いや、やっぱり明日だな。最初に打とう、半荘でしっかりとな」

小蒔「わかりました……」シュン

京太郎「そ、そう肩落とすなって……本番に近い形で打つほうが、実力になるんだからさ……」ナデナデ

小蒔「はい……では、あの……また明日、です」

京太郎「ああ、また明日。それじゃ、お先に失礼します」

初美「おつかれですよー」

湧「お疲れさまです」

他部員『お疲れさまです!』

京太郎「おう。それじゃ行くか、春」

春「ん。じゃあ、お先に」

小蒔「――待ちなさい」

明星「姫様のちょっと待ったが出たー!」

初美「そんな古いのよく知ってますねー」

湧(それ突っ込める初美さんもでは……)

春「……なんでしょう」

小蒔「京くんが買い物に行くのはわかりました。でも、毎度のように春が付き合う必要はないと思います」キリッ

春「そんなことはありません。それは家主権限で京太郎を使用人扱いするようなもの。誰の家にいたとしても、そんな扱いは許さない」

小蒔「そ、それは……そう、なんですけどぉ……」シュン

春「京太郎は部活に穴を開けないよう、まとめ買いで買い物回数も減らしてる。荷物が増えるから、人手がいるだけ。努力を認めてあげてください」

小蒔「きょ、京くんには文句なんてありませんっ!」

春「……逆に考えます。姫様の家に京太郎がいる場合、京太郎一人に毎日の買い物を任せますか?」

小蒔「………………任せません」

春「ついていきますか?」

小蒔「………………はい」

春「なら――私がしても、おかしくないですね?」

小蒔「………………う、うぅー、京くーん! 春がいじめます!」ダキッ

京太郎「えぇ……う、うーん、そう言われても……なぁ、春――」

春「京太郎一人に買い物させたら、私がお父さんとお母さんに怒られる」

京太郎「……そ、そういうことだから、こまちゃ――」

小蒔「じゃ、じゃあ私も行きます!」

京太郎「えっ」

春「ど、どうしてそうなるんですか……姫様にそんなことは――」

小蒔「ぶ、ぶちょー命令です!」

春「部活、関係ないのに……」


初美「おもしろくなってきましたよー」ワクワク

湧「わ、私たちはどうすれば……」

明星「ここは『見』に徹しよう」

「……どう見る?」
「姫様優勢」
「京太郎先輩が一人で逃げるに一票」
「春先輩との逃避行に一票」

京太郎「……大会前なのに、早く切り上げるのは感心しない」

小蒔「う、うぅ……でもそれなら、春だって……」

京太郎「春はその分、家で俺と練習してるから――あっ」

初美「お?」

明星「これは……」

春「京太郎?」

京太郎「よし、こまちゃんも一緒に行こう。それで――家にも来てもらう、いいな?」

春「!?」

小蒔「いいんですかっ!」

京太郎「ああ。春の家に行くなら、こまちゃんの家も文句はないだろ? 一緒に夕飯食べて、それから練習すればいい」

小蒔「賛成です!」

春「あ、う……も、門限は――」

小蒔「滝見の小父さまから連絡していただきます!」

春「しょ、職権濫用っ……」

明星「姫様だけずるいー!」

小蒔「大会があるから、特訓は当然です」キリッ

湧「……もう好きにしてください」

初美「まぁ、三人がいいならいいですよー。あと、ほかの部員も納得するなら、ですけどねー」

京太郎「っと、そうですね……と、とりあえず数日に一回だから、大目に見てくれると助かるんだが……」

「全然オッケーです!」
「その代わり、後日の詳細レポートを要求します!」
「あと、差し入れのお菓子はザッハトルテがいいです!」

京太郎「……わかった。じゃあとりあえず、今日は俺と春とこまちゃんは、ここまでで帰らせてもらうな。みんな、お疲れさま。先に悪いな」

春「……お疲れ。レポートは日誌に上げとく」

小蒔「一緒に書きましょう!」

京太郎「練習しに行くんだぞー、遊びじゃないんだぞー」


湧「……ところで、なんですけど」

初美「あー、はいはい。気づいてますよー」

明星「家に『来て』もらおう。それに、春先輩にも滝見のご当主さまたちにも断ることなく、誘ってましたよね」

初美「まったく、数日も滞在してないっていうのに、家族みたいになってるじゃないですかー」

明星「ああ、お従姉さまになんて説明すれば……」

湧「言わなきゃいいんじゃ……」

明星「なぜか起きたこと全部知ってて、帰ったら事細かに追及される気持ち、わかる?」

湧「ごめん……」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2026年01月19日 22:59