―― 俺には一人の幼馴染が居た。
宮永咲と言う名のその幼馴染は色々と放っておけない奴だった。
知らない道を歩けばすぐ迷子になる。
人見知りが激しすぎてあまり人と話せない。
低血圧で朝も中々、起きられず、俺が起こしに行く事もザラだった。
勿論、意外と家庭的だったり良いところは沢山あるが、それと同じくらいに欠点も多い。
俺にとって宮永咲とはそういう相手だったのである。
―― けれど、そいつは俺が知らないだけで凄い奴だった。
麻雀という運の要素が強いゲームで連続プラスマイナスゼロ。
それがどれだけあり得ない事かなんて初心者である俺にだって分かる。
そんなの狙ってやろうとしてもほんの一つの誤差によってあっさり狂ってしまうのだから。
だけど…それを咲はやった。
俺がポンコツと思っていた幼馴染は、コイツは俺がいなきゃダメだと思ってた奴はそれを俺の目の前で成し遂げたのである。
―― それからは…まぁ、色々あった。
咲の入部に対して和が良い顔をしなかったり…いつの間にか二人が仲が良すぎるくらい良くなっていたり。
皆で優希の為にタコスを作ろうとして悲惨な結果になったり…皆で合宿したり。
咲の入部によって俺が牌を握る機会は減ったけれど、その日々は決して悪いものじゃなかった。
人見知りだった咲に友人が出来るのは嬉しかったし…それに麻雀部の皆は良い奴ばっかりだったから。
―― でも、ただ良い奴ってだけじゃなくて凄い奴でもあったんだよな。
ついこの間まで麻雀なんて興味もなかった俺は知らなかったが、長野は女子校生雀士にとって魔境と呼ばれるような環境だったらしい。
長年、インターハイへの切符を握り続けた名門風越。
そしてその風越に勝ち、去年インターハイ進出を決めた龍門渕。
その二つがしのぎを削る県予選は、どちらかがインターハイへと勝ち進むものだと思われていた。
けれど、実際にインターハイへの切符を掴んだのは風越でも龍門渕でもない。
2ヶ月前まで団体戦にすら登録出来ないくらい部員のいなかった俺達、清澄だったのである。
―― その喜びを皆で分かち合って、少しした頃には…。
練習、合宿また練習。
インターハイ出場を決めて、安心している余裕なんて無名校の俺達にはなかった。
清澄の大躍進の影で泣いている高校の為にも無様な姿は見せられない。
そう自分に言い聞かせるように皆は麻雀へと打ち込んだ。
今まで以上とはっきり言えるその姿は雑用として付き合っているだけの俺にも気合が入ってしまったくらいである。
―― そして東京へ。
多くの人の期待と想いを背負って、インターハイの会場へ。
その道中には俺も付きあわせて貰える事になった。
部長は荷物持ちだなんて冗談めかして言っていたけれど、なんだかんだ言って俺に気を遣ってくれているのだろう。
ならば、俺に出来るのはそんな風に気を遣ってくれている部長たちに今まで以上に尽くす事。
そう思いながら東京の地に初めて足を踏み入れた瞬間、俺の意識は途切れ… ――
―― 目が覚めたら俺の目の前に真っ白い天井が広がっていた。
京太郎「…ぁ…れ…?」
反射的に漏れた声は俺が思っていた以上に掠れていた。
まるで数ヶ月もの間、ろくに声を出していなかったようなその震えに俺は困惑を覚える。
そもそもここは一体、何処なのか。
俺がさっきまで居たはずのホームとは別の場所なのは俺にだって分かった。
けれど、記憶と今の状況を繋ぐラインがまったく見つからない。
まるでごっそりと自分の記憶が抜け落ちているような気持ち悪さ。
それに抗うように身体を起こした瞬間、俺の身体に激痛が走った。
京太郎「っつぅ…」
身体の内側でのたうつようなそれは筋肉痛を何十倍にも強くしたような痛みだった。
ハンドをやってた頃とは比べ物にならないそれに起き上がろうとした動きが中断する。
そのまま崩れる俺の身体を受け止めてくれたのは柔らかな感触だった。
ふと痛む首を動かして周りを見ればそこには白いシーツやベージュ色の壁が見える。
その他には机と花瓶、そしてそこに活けられた花くらいか。
首が動く範囲では他にベッドや人も見えないし…多分、病院の個室か何かなのだろう。
京太郎「(…でも、なんで病院にいるんだ?)」
俺の中にある最後の記憶は駅のホームに降り立った瞬間だった。
こんな風に身体中が傷んだり、病院に担ぎ込まれるような怪我なんて一つもない。
前日、緊張して眠れなかったくらいで、健康体そのものだと自信を持って言っても良いくらいだ。
という事は俺が覚えていないどこかに理由があると思うんだけど…正直、それがまったく分からない。
どれだけ記憶を探ろうとしてもその瞬間から先の『何か』は見つからなかった。
京太郎「(ってか…皆は無事なんだろうか?)」
俺がこうして怪我をしてるって事はあの時、同じ場所に居た皆も同じように怪我をしている可能性が高い。
いや、俺以上に怪我をしている可能性だって否定出来ないどころか…それこそ最悪の事態だってあり得る。
……そう思った瞬間、俺の背筋がゾッと冷えた。
京太郎「(…寝て…られるか…!)
折角、これからインターハイに乗り込むぞって気合を入れていたところなんだ。
皆、俺よりもずっとずっと凄い奴で…これからだったんだよ…!
そんな皆の安否も確認せずに寝てなんかいられない…!
身体が痛かろうが何だろうが、やっぱりベッドから起きて状況を確認しないと…!!
―― ガチャ
京太郎「え?」
そう思って再び身体に力を入れた瞬間、俺の視界の端で扉が動き出す。
まるで俺の目覚めを知っていたようなそのタイミングの良さに俺は驚きの声をあげた。
けれど、未だに掠れ続けているその声が来訪者に届くはずもない。
結果、その扉は俺にお構いなしに開き、その向こうから…
モモ「京…さん…」ジワッ
京太郎「…え?」
パサリとその女性の持っている花束が堕ちた。
それに反比例するように浮かぶ涙の理由が俺にはまったく分からない。
そもそも俺はこんなに綺麗な女性なんて見たことがないんだから。
いや…より正確に言えばなんとなく認識のしづらさが敦賀の東横さんに似てるかなって感じはあるけれど。
東横さんのお姉さんか何かだろうか…?
モモ「京さんっ!」ダキッ
京太郎「うぉあ…!!」
そう思っている間に見知らぬ女性は俺へと抱きついてくる。
瞬間、豊満なおもちがギュって押し当てられて!ギュムギュム来て!!
な、なんという戦闘力…!
これは和に並ぶ…いや、もしかしたらそれ以上なんじゃないだろうか…!?
京太郎「ぐっ…」
モモ「ご、ごめんなさい…!!」パッ
なんて事を考えていたら身体に激痛が走った。
まぁ、起き上がる事も出来ないくらい痛いんだから、抱きしめられたらそりゃそうなる。
でも、ちょっと惜しかったかなって思うのは彼女の胸がそりゃもうナイスなサイズだったからだけじゃない。
抱きついてきたその柔らかな身体から漂ってくる匂いはそりゃもう素敵なものだった。
京太郎「いや…大丈夫ですよ」
京太郎「男としては役得だったんで」
モモ「…え?」
まぁ、確かに痛かったが、それよりも幸せだったからな。
流石に情けないんでわんもあぷりーずなんて言えないが、もう一回されても一向に俺は構わない。
でも、今はそれよりもちゃんと状況の確認をしないとな。
このナイスバディなお姉さんだって一体、誰なのか俺には分からないままだし。
京太郎「それより…えっと、貴女は誰ですか?」
モモ「き、京さん…?じ、冗談っすよね?」
京太郎「う…」
瞬間、お姉さんの目に浮かぶのはさっきの感動の涙ではなかった。
まるで俺の返答が悲しくて悲しくて仕方がないと言わんばかりのその反応に俺の胸が痛む。
正直、ここで冗談だったと撤回してあげたい。
けれど、そんな事をしても何の解決にもならないんだ。
ここは心が痛むけど…はっきりと首を横に振るべきだろう。
モモ「~~っ!な、なんで…!?わ、私はモモっすよ!!」
モモ「京さんの恋人の東横桃子っす」
京太郎「…え?」
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。
ちょ、ちょっとまって。
まずこのお姉さんが東横さんってのがまずおかしい。
だって、東横さんって俺と同い年だったし。
こんな女子大生オーラプンプンしてる年上のお姉さんじゃない。
俺のおもちスカウターも高校時代の彼女よりも今、目の前にいるお姉さんの方が一回り以上大きいと判断してるしな。
例え、彼女が東横さんだったとしても俺の恋人っていうのがまずあり得ない。
俺と彼女は合宿を通じて多少面識があるだけの…それこそ友人とさえ言えないような関係なんだぞ?
京太郎「ま、待って。待ってください…」
京太郎「貴女が東横さんで…そして東横さんが俺の恋人?」
京太郎「何かの間違いじゃ…」
モモ「間違いなんかじゃないっす!!」
モモ「私は正真正銘、京さんの恋人っすよ!」
モモ「信じられないなら証明してあげても良いっす!!」グッ
京太郎「ちょおおおおおお!?」
そう言ってお姉さんが手をかけたのは自身の服だった。
そのまま勢い良く脱ぎ捨てようとする彼女を俺はすんでのところで止める。
正直、このまま脱衣シーンを見たい気持ちはあったけど…それは流石に不誠実が過ぎるし。
ここはとりあえずお姉さん…いや、東横さん(仮)を落ち着かせる為にも頷いておこう。
京太郎「わ、分かりました!分かりました!!」
京太郎「貴女は東横さんで、東横さんは俺の恋人です!!」
モモ「…東横さん…?それに敬語…」グスッ
モモ「や、やっぱり身体で証明するしか…!」ガバッ
京太郎「ち、ちょっとまって!モモ!!だ、大丈夫!大丈夫だから!!」
モモ「ホントっすか?」
京太郎「うん!信じた!超信じたから大丈夫!」
モモ「…良かった…ぁ」ポロ
…ふぅ。
どうやらこれで落ち着いてくれたみたいだ。
…しかし、俺が覚えてないってだけでこんなに取り乱すなんて…一体、俺とこの東横さん(仮)に何があったんだ?
とりあえずよっぽど俺が大切なのは伝わってきたけれど…でも、俺が記憶している東横さんにはそんな様子はなかったし。
…何はともあれ、俺と彼女に何かしらの関係性があるのは事実みたいだし…早く思い出してあげないとな…。
モモ「私…京さんに忘れられたら生きていけないっす…」
京太郎「お、大げさな…」
モモ「…………」ジィ
あ、やばい。
これマジな目だ。
本気で死ぬ事だってあり得る目だ。
そんな目なんて見た事ないけど凄みで分かる。
京太郎「だ、大丈夫だって。俺がモモの事忘れる訳ないだろ」
モモ「えへへ…♪」ニコ
京太郎「でも、ちょっと記憶に混乱があるみたいだから…俺がどうしてここにいるのか教えてくれないか?」
モモ「分かったっす」
―― それから東横さん(仮)が説明し始めた言葉は俺の理解を超えているものだった。
どうやら俺は東横さん(仮)とのデート中、暴走した車両の前に飛び出した子どもを助けたらしい。
が、そのお陰で俺は車に跳ねられ、こうして重症を負い、一ヶ月近い間、意識不明だったそうだ。
無論、俺にはそんな記憶は一切ない。
けれど、東横さん(仮)のような美人とデートした事を忘れるはずがないし…これは…もしかして…。
京太郎「…ごめん。モモ。鏡とか持ってないか?」
モモ「あるっすよ。はい」スッ
京太郎「…ありがとう」
…正直、ここから先を見るのは怖い。
だけど、こうして俺に説明するモモに嘘を吐いている様子はまったくないんだ。
少なくとも彼女の主観では間違いなく事実を言っている。
それが俺の記憶とすれ違っているのは恐らく… ――
京太郎「…………あぁ」
―― …鏡の中に映っていたのはまったく知らない男の顔だった。
無論、見覚えはある。
それはオヤジの面影を微かに残した青年の顔なのだから。
まるで俺の兄貴のようにそっくりなそれが、今、俺が持つ手鏡に映っている。
……もう疑う余地はない。
東横さん(仮)が言っている事は事実で…間違っているのは俺の方なんだ。
モモ「…京さん?」
京太郎「…モモ、先生を呼んでくれるか?」
モモ「あ…そうっすね。京さんが目を覚ましてくれた事が嬉しくてすっかり忘れてたっす」ニコニコ
京太郎「…っ」
幸せそうな彼女の顔に俺の胸が痛んだ。
きっと彼女は本当に東横さんなのだろう。
その笑顔は加治木さんの隣で何度か見た事があるものだった。
一体、どういった経緯があったのかは分からないが、彼女は本当に俺の恋人で、俺の無事を喜んでくれている。
…そんな彼女に「俺はここ最近の記憶を全て失ってしまいました」なんて言える勇気は俺にはなかった。
モモ「じゃあ、ナースコール押すっすね」
京太郎「悪い。頼む」
そういえば、東横さんは影が薄くて他の人には見えない体質だったっけ。
…でも、なんで俺にはこうしてはっきりと見えるんだろうか?
勿論、記憶にある中でもうっすらとは見えていたし、誰かと一緒の時ははっきりと見えるんだけど。
けど、一人でこうしているときにここまではっきり見えた事はなかった。
…やっぱり俺が忘れているだけで、俺にとって東横さんが特別な所為か。
京太郎「(…何にせよ…何とかしないと)」
このままじゃ俺は彼女のことを不幸にしてしまう。
こんなにも俺の事を慕ってくれている恋人を傷つけてしまうだろう。
それは男として決して許容出来るものじゃなかった。
まずは専門家に記憶を取り戻す方法を聞いて、努力してみよう。
―― けれど、そんな俺の意気込みは思いっきり空振りに終わった。
色々と検査した結果、俺の記憶の欠落は事故った時に強い衝撃があったかららしい。
まるでジグソーパズルにボールがあたったように記憶がバラバラになって関連づけ出来ていないそうだ。
細かい説明は良くわからないが、これを直す根本的な治療法や特効薬はない。
時間の経過に任せるしかないというのが専門家の意見だった。
京太郎「(…でも、それじゃ遅いんだよ)」
東横さんは素直に俺の無事を喜んでくれている。
そんな彼女に記憶喪失の事を知られたくはなかった。
今はまだ事故の混乱でどうにか誤魔化せているけれど、このままずっとこうしてはいられない。
少なくとも記憶の回復に一年も二年もかけているような余裕は俺にはなかった。
京太郎「(…くそ。どうしたら良いんだよ…!)」
無論、どうする事も出来ない。
俺に出来る最善はきっと全てを彼女に打ち明ける事だ。
けれど、その時に彼女が悲しむ姿を想像するだけで胸の奥が張り裂けるように痛くなる。
元々、東横さん自身が儚い雰囲気の美少女な所為か、決して泣き顔なんて見たくないんだ。
コンコン
京太郎「あ、はい」
モモ「失礼するっす…」
京太郎「…あ」
そんな事を考えながらベッドに横たわる俺の病室に再び東横さんが入ってくる。
けれど、その顔はさっきよりもずっと焦燥しきったものだった。
まるで明日世界が滅ぶって知ってしまった人のようなその表情に…俺は理解してしまう。
既に彼女が全てを知ってしまった事を…今の彼女はありありとその顔に浮かべていた。
モモ「京さ…ん…っ。私…私…」グスッ
京太郎「……モモ」
モモ「っ…!」
京太郎「…こっち来てくれるか?」
モモ「…………」コクン
俺を見て目尻に顔を浮かべながらも東横さんは従順に頷いた。
そのままトテトテと俺のベッドへと近寄ってくる姿はまるで大型犬のよう。
けれど、その尻尾は辛そうに項垂れ、微動だにしていない。
そんな彼女の頭に俺はためらいながら手を伸ばし…。
京太郎「…」ナデナデ
モモ「京さん…」
京太郎「ごめんな、モモ」
モモ「…なんで謝るっすか…?」
京太郎「モモの事…ちゃんと覚えてられなくてさ」
そのまま彼女の髪を撫でても何の解決にもならない。
少なくともこうして東横さんと話していても、俺の記憶はまったく蘇らないのだから。
でも、悲しんでいる美女を前にして何もしないなんて出来ない。
ましてや、彼女は俺が覚えていなくても恋人なのだから尚の事。
モモ「……大丈夫っす」
京太郎「でも」
モモ「京さんの手はちゃんと覚えてるっすよ」
京太郎「え?」
モモ「私の一番、気持ち良い撫で方をちゃんと覚えてくれてるっす」
…そう…なのか?
正直、俺は意識せずに撫でてたけど…でも、確かにそうなのかもな。
咲を撫でる時と東横さんを撫でる時ではまた手の動きが違うし。
脳は忘れても身体はしっかりと彼女のことを覚えているんだろう。
モモ「それに…私は忘れないっすよ」
モモ「例え、京さんが忘れても…京さんと過ごした日々は私の中にあるっす」
モモ「だから…私は大丈夫っす」
モモ「大丈夫…大丈夫…だから」ポロ
京太郎「モモ…」
…それでも大丈夫な訳ないよな。
恋人に忘れられてしまったなんて、それこそ別れるくらい辛い出来事なんだから。
最初からずっと俺の事を大好きオーラ出してた東横さんからすれば天国から地獄へ突き落とされたものだ。
それでもこうして気丈に強がろうとしてくれているのは俺に心配を掛けさせない為。
そう思うと胸が傷んで俺の目尻も暑くなるけど…しかし、記憶が蘇る事はなかった。
モモ「ごめん…なさい」
モモ「一番、辛いのは京さんなのに…私…」ゴシゴシ
京太郎「…良いんだよ」
モモ「でも…っ」
京太郎「良いんだよ」
京太郎「俺はモモの恋人なんだろ?」
京太郎「だったら…弱みくらい見せてくれよ」
京太郎「甘えてくれよ、…な?」
モモ「…京さん…」ダキッ
京太郎「…ん」
そんな俺に出来る事なんてモモを慰める事しかない。
それが分かっている所為か、抱きついてくる彼女にいやらしい気持ちが湧き上がる事はなかった。
胸の中で泣きじゃくる東横さんに対して、ただただ申し訳ない気持ちだけが胸を支配する。
モモ「…京さんはやっぱり最高の人っす」
モモ「記憶がなくても優しくて強くて格好良くて…私の自慢の恋人っすよ」
京太郎「持ち上げ過ぎだって」
モモ「そんな事ないっす!」ギュゥ
けれど、十数分もそうやって泣いていたら東横さんも落ち着いてきたのだろう。
甘えるように俺を褒めながら強く抱きしめてくる。
瞬間、俺の身体に痛みが走るが、俺はそれを表に出すのを噛み殺した。
俺には恋人がいた記憶はないが、ここが格好つけなきゃいけないところである事くらい知っているのである。
モモ「そんな京さんと一緒にいたいけど…そろそろ面会時間も終わるっす…」ショボン
京太郎「そうか…もうそんな時間か…」
モモ「…京さん」
京太郎「…また今度、来てくれるか?」
モモ「当然っす!何をおいても即座に京さんのところに駆けつけるっすよ!!」
京太郎「ありがと。でも、自分の生活を大事にな」
京太郎「俺なんかは何時でも会いに来れるんだからさ」
…こういっちゃなんだけどホント犬みたいだな。
俺がこうやって言わなきゃ、本当に毎日見舞いに来そうな勢いだ。
勿論、これだけの美女が毎日来てくれるなんて男冥利に尽きるけど、だからって彼女も自分の生活があるだろうし。
聞いた話によると俺が覚えている時間よりも、既に十年が経過しているらしいからな、今…。
モモ「あ、それと…これ」スッ
京太郎「ん?」
モモ「京さんの日記帳っす。検査の時、部屋においてあったの持ってきたっすよ」
京太郎「…そんなもんつけてたっけ?」
モモ「確かつけはじめたのはインターハイが終わってからだって話だから、今の京さんは覚えてないと思うっす」
京太郎「…そっか」
俺、日記帳なんてつけてたのか。
俺の知る『俺』は面倒くさがり屋だったと思うけど、結構マメなトコロがあったらしい。
でも、そのお陰でこうして俺は失った十年間を自分の目線で振り返る事が出来るんだ。
今は俺の知らない『俺』に感謝しておくとしよう。
モモ「じゃあ…京さん」スッ
京太郎「ん…」
モモ「…また、また必ず来るっすよ」
京太郎「あぁ。待ってる」
モモ「はいっ」
俺の言葉に笑みを浮かべる東横さんにはまだ無理が見えた。
当然の事ながら、思いっきり俺の胸で泣いたところでそう簡単に恋人の記憶が失われた事を受け入れる事なんて出来ないだろう。
けれど、それでも、彼女は前向きになろうとしてくれている。
そんな彼女に応える為にも…俺も早く記憶を取り戻さないと。
―― そう思いながら俺は彼女の残した日記帳を開いて……。
今日はモモが俺の恋人になってから清澄訪問だった。
今日までサプライズって事でモモが恋人になった事を皆に隠してたけど、これで大手を振って威張れるぜ。
優希なんかは今まで人の事、キャプテン ルサンチマンだの非モテ王子だの馬鹿にしてくれてたからな。
まぁ、それはさておき。
モモが俺の恋人だって紹介した時の皆の顔は中々に素敵だった。
優希は呆然とし、咲は口を開けて、和は信じられなさそうな顔をしていたし。
ただ、一年生三人が寄ってたかって、「本当に京太郎で良いのか」みたいな事をモモに聞いてたのはどうかと思う。
そんなにお前らの中で俺の評価が低いのか。
そんなに俺の事を異性として意識出来ないのか。
まぁ、別に良いけどな!!俺にはモモがいるし!!
可愛いステルス系犬基質依存美少女が恋人だし!!
ただ、そのモモを咲が凄い意識してるように見えたんだよなぁ。
モモに対してあれこれ根掘り葉掘り聞いてたし。
しかも、料理の腕とか掃除のやり方とかさ。
アレじゃあまるで小姑みたいじゃないか、ってくらい。
もしかしてアレが修羅場だったのか?
いや、でも、最後は普通に仲が良い感じだったし…。
うん、女の子って良くわかんねぇ。
なんか今日は不思議な事が起こった。
突然、ラーメンが食いたくなって、夜中に屋台に食べにいったら同じ屋台に小鍛治健夜プロ、瑞原はやりプロ、野依理沙プロがいた。
しかも、三人共かなり酔っ払っていたみたいで顔が真っ赤だったんだよなぁ。
それだけならまだ大人って大変だな、くらいで済んだんだけど…いきなり横で青春トークし始めてさ…。
あの頃は良かった、だの、私達にもあんな頃があったんだなぁ、みたいな事言われると凄い居たたまれなくなったというか。
正直、華やかな世界にいる女子プロって結婚願望とかまったくなくて過去なんて振り返らない!なんて風に思ってたから結構、意外だった。
けど、本当に意外だったのはこれから。
そうやって三人が話している間に、いつの間にか理想の恋人の話になってさ。
そりゃまぁ、俺も男の子だし、下世話だと自覚してるけど、プロの好みって気になるじゃん。
だから、隣で素知らぬ顔をしてゆっくりラーメン啜ってたら、何故か三人共年下で良いって言い出したんだよなぁ…。
養ってあげるから、主夫して欲しいとか、働かなくても良いから帰りを待ってて欲しいとかそんな切実そうな言葉が出てきた。
…で、ほら、お酒飲んでる人ってさ、やけに気が大きくなってよそに絡む人っているじゃん。
瑞原プロはそのタイプだったらしくて、隣の俺に絡んできた。
お姉さん達どう?とか魅力的?とかいける?とかさ。
その勢いに気圧されながら頷いてたらなんか気に入られてしまったみたいで…。
それから三人と一緒のホテルに連れて行かれてしまった。
正直、彼女いない歴=童貞の俺としてはドキドキだったんだけど、三人共あんまりお酒が強くなかったみたいであっさり酔いつぶれてしまって。
とりあえず色々と後始末してから帰ってきた。
…初めての逆ナンがこんな結果に終わった俺は流石に泣いて良いと思う。
普通はさ、体育祭って文化系の奴らはあんまり複数競技に出されないじゃん?
なのに、なんで俺、徒競走から何から出まくってるのかなぁ…。
いや、確かに運動は嫌いじゃないし、ココ最近、背も伸びたけどね?
だからって運動部ばりにこき使うのはどうかと思う。
まぁ、二人三脚にだけは出てよかったと思ったけどさ。
なにせ、キング・オブ・ポンコツの咲が流されるままに二人三脚にエントリーしていたし。
あいつを俺以外の誰かと組ませたら間違いなく足を引っ張る。
アレでいて咲は負けず嫌いで恥ずかしがり屋だし、全校生徒の前で転んだとかなると泣きそうになるだろう。
だから、俺がパートナーとして立候補したんだが…まぁ、やっぱり最下位だった。
一応、練習はしたんだけど、こればっかりは仕方ない。
咲は謝ってきたけど、ちゃんと転ばずに完走出来ただけでも凄いんだって返しておいた。
でも、咲って結構、気にしいな性格だからなぁ…。
気にしすぎなきゃ良いんだけれど。
京太郎「ふぁぁ…あ…」
京太郎「(やっべ。そろそろ眠い)」
京太郎「(本当はもうちょっと読んでいたいけど…まだ意識が戻ってすぐだしな…)」
京太郎「(とりあえず今日はこんなところにしておこう)」カチッ
京太郎「(…でも、日記の中の俺って結構、充実した生活してたんだなぁ)」ゴソゴソ
京太郎「(咲と運動会はともかく、まさかプロとお知り合いになるだなんて)」
京太郎「(結果は悲惨な事に終わったみたいだけど…それでもインターハイ前で記憶が止まってる俺としては驚きだ)」
京太郎「(ま、日記を見る限りろくに連絡先も交換していないみたいだし、もう日記に名前が出てくる事はないだろう)」
京太郎「(少なくとも俺はプロとは何の関わりもないようなごく普通の男子高校生な訳だし)」
京太郎「(何はともあれ……今日はもう寝てしまおう)」
京太郎「(…寝て起きたら記憶が戻っているかもしれないしな…)」
コンコン
京太郎「あ、はい。どうぞ」
和「失礼します」ガララ
京太郎「あー…えっと…和…か?」
和「はい。原村和です」
和「面影ありますか?」
京太郎「そりゃまぁ…バッチリな」
和「そうですか…なんだかそう言われると照れくさいですね」
京太郎「そうか…?」
和「えぇ。あの頃から私も大分、変わったと思いますから」
和「なにせ、もう十年ですしね」
京太郎「いや…つっても綺麗になったぞ」
和「あれ?これってもしかして口説かれてます?」
京太郎「く、口説いてねぇよ」
京太郎「そもそも俺にはモモって恋人がいるんだから、くどく訳ないだろ」
和「そうなんですよね…京太郎君には桃子さんがいるんですよね…」ジィ
京太郎「な、何だ…?」
和「いえ、未だに桃子さんがいったい、京太郎君の何処に惚れたのか理解出来なくて」
京太郎「おい」
和「ふふ。冗談ですよ、冗談」
和「あ、それよりこれお土産です」スッ
京太郎「お、フルーツの盛り合わせか」
和「後で桃子さんにでも剥いてもらってくださいね」
京太郎「和はやってくれないの?」
和「あくまで私は様子を見に来ただけですから」
京太郎「あー…悪い。忙しいのか?」
和「いえ、桃子さんに話を聞いて、旧友の顔を見れるくらいには余裕がありますよ」
京太郎「旧友…か」
和「…やっぱり実感湧きませんか?」
京太郎「そりゃ…まぁな」
京太郎「俺にとっては急に十年間も未来に飛ばされたみたいだし」
京太郎「正直、ついていくので精一杯だよ」
和「…そうですか」
京太郎「まぁ、医者が言うには意識もはっきりしてるし、何時かは戻るそうだけどな」
京太郎「それまで日記でも読みながら気長に待つよ」
和「あぁ、そういえば京太郎君、日記をつけていましたっけ」
京太郎「おう。俺自身、なんで日記なんてつけてたのか分からないくらいだけどさ」
京太郎「まぁ、これが色々と書いてあるんだけど、まったく記憶になくて」
京太郎「まるで他人の日記覗き見してるみたいだよ」
和「そうですか…なんだか気になりますね」
和「今度、見せてもらって良いですか?」
京太郎「見せると思ってるのか?」
和「もう。イケズですね」
和「まぁ、何か聞きたい事があったら何時でも連絡してきてください」
和「桃子さんほどではありませんが、私も色々と京太郎君の事を知っていますし」
和「気になる事があれば出来るだけお答えしますよ」
京太郎「あぁ。ありがとうな」
和「さて、それでは渡すものも渡しましたし、そろそろ帰りますね」
京太郎「え?もうか?」
和「えぇ。あまり長居していると桃子さんに嫉妬されてしまいそうですし」
和「それに京太郎くんの顔を見て安心したかっただけですから」
京太郎「そっか。悪いな。ろくにお構いも出来ずに」
和「良いんですよ。それよりゆっくり身体を直してください」
京太郎「あぁ。ありがとうな」
和「いえいえ。これも友人としての勤めですから」
京太郎「…あー…それもちょっと気になってたんだけど」
和「え?」
京太郎「いや、なんだか和が大分、俺と親しげな感じだったからさ」
京太郎「まるで優希の奴に対してやってるみたいに冗談も口にしてたし」
京太郎「その…和と俺はそんなに仲が良かったのか…?」
和「…そうですね」
和「まぁ、キッカケは些細なものでしたね」
和「私が絡まれていたところを京太郎君が恋人のフリして助けてくれて」
和「それから急速に仲良くなっていった感じでしょうか」
京太郎「そ、そんな王道ラブコメな経験が俺にあっただと…!?」
和「まぁ、噛みまくりでしたけど」クスッ
京太郎「やっぱり締まらないなぁ…」トオイメ
和「でも、嫌じゃなかったですよ」
京太郎「えっ」
和「ふふ。冗談です」
和「それで受験シーズンになって同じ参考書を読んでいるのが分かって…ついでだから一緒に勉強するかって事になったんですよね」
京太郎「…それってモモには…?」
和「勿論、桃子さんも一緒でしたよ」
和「それで私と桃子さんも仲良くなっていった感じですね」
和「今では桃子さんも京太郎君も優希や穏乃、憧に負けないくらい大事な友人です」
京太郎「な、なんか照れるな…」
和「照れてくれないと困ります。私の方が恥ずかしいんですから」プイッ
京太郎「わ、悪かった」
和「…まぁ、別に怒っている訳じゃありませんし、大丈夫ですよ」
和「私も京太郎君には色々と借りがありますしね」
和「…だから、出来るだけ早く良くなってください」
和「私に出来る事ならなんでもお手伝いしますから」
京太郎「あぁ、ありがとうな、和」
和「いいえ。どういたしまして、京太郎君」クスッ
咲が結婚した。
相手はなんと大阪の荒川憩さんだ。
同性との恋愛とか結婚とか口についてどう思うか相談されてたからてっきり咲と和は付き合っているもんだと思ってたんだがなぁ。
正直、結婚式への招待ギリギリにカミングアウトされてすげぇ驚いた。
どうやら咲にとって和はあくまでもお友達であったらしい。
和ェ…。
今度、気晴らしに買い物でも誘ってやろう。
近くのエトペンのぬいぐるみも売ってるファンシーショップも出来た訳だし…少しは励ましになるだろう。
まぁ、それはさておき。
結婚式は同性同士とは言え、結構、派手で大規模なものだった。
咲の友人はあんまり多くはなかったけれど、荒川さんの交友関係ってすげぇ広いんだなぁ。
そんな人が咲に惚れるなんて一体、どんな奇跡だと思ったが、どうやら荒川さんは面倒見が良すぎてポンコツが好きなタイプだったらしい。
あの清澄での運動会をたまたま見ていた荒川さんは咲の危なっかしい足取りに一目惚れしたのだと惚気けていた。
正直、その感性は良く分からないけれど、俺の知るかぎり荒川さんは立派な人だ。
きっと咲を幸せにしてくれるだろう。
俺や和があいつの保護者をやる時間ももう終わりなんだな…。
そんな事を思わず漏らしたら和が俺の隣でボロ泣きしてた。
…思いっきり失恋した訳だし、今日くらいは思いっきり泣かせてやろう…。
ごめんなさい、あくまでも日記なので家庭については入れる余裕がありませんでした…!!
美人って凄い得だと最近、思う。
普通、いきなり後ろからルー大柴みたいなイングリッシュをスピークしてる女性に話しかけられても普通は無視するだろう。
正直、俺も明らかに不審人物全開の言葉に振り返るのをやめようと思ったくらいだ。
だが、明らかに困っている様子だったし、せめて話だけでも聞いてあげよう。
そう思った俺の前にいたのはソロモンの傭兵こと戒能プロだった。
…いや、ね。
確かにね、東京は都会だよ。
長野とは比べ物にならないほど発展してるよ。
だけど、この短期間にプロと縁が出来る確率ってどれくらいなんだろう…。
ちょっと俺の人生確変起こしすぎじゃないかなぁ…。
あ、ちなみに戒能プロはどうやら道に迷ってたみたいでした。
結構、しっかり者のように見えて抜けてるですね、みたいな事言ったら顔を真っ赤にして拗ねられた。
年上なのに、すげぇ可愛い(可愛い)
恋人にするのならああいう人が良いなぁ。
おもちも大きいしな!!!!!!!
なんだか最近、マホにメチャクチャ懐かれている気がする。
なぁ、マホが入学する前から色々とメールしたり、初心者同士で一緒に打ったりして交流はあったけれど。
正式に清澄麻雀部の一員になった今は小学生が親を慕うみたいに俺に懐いてんだよなぁ。
京太郎先輩、京太郎先輩ってさ。
正直、モモとはまた別のベクトルで可愛い。
俺は副会長みたくロリコンじゃないから性的なものではないけれども。
こう頭を撫でてやりたくなる父性的可愛さと言うか。
一途に慕ってくれてるのが分かるから何でも叶えてやりたくなるんだよなぁ。
なんて言ったらモモに拗ねられました。
どうやらここ最近、俺がマホに構いっぱなしで面白くなかったらしい。
地方予選前で部活優先なのは仕方がないとはいってもモモを不安にさせるのは流石にな。
まだ地方予選前で気が抜けないけど今度気晴らしついでにデートに誘ってみるかな。
京太郎「(…うん、いや、まぁ、その…うん)」
京太郎「(とりあえずマホの事に関しては別に今更、驚くような事じゃない)」
京太郎「(俺が知っている頃から結構、仲は良かったしな)」
京太郎「(色っぽい関係じゃなかった事は文章からも伝わってくるし問題じゃない)」
京太郎「(戒能プロの事も驚いたが、まぁ、インターハイの最中だしな)」
京太郎「(会場の近くにプロもホテルをとっているだろうし、決してあり得ないって訳じゃない)」
京太郎「(…だから、問題は咲の結婚だよ!!!)」
京太郎「(あの咲が結婚!?しかも、荒川さんと!!?)」
京太郎「(接点ねーだろ!つーか同性だろ!!)」
京太郎「(俺の知らない間にどんなミラクルがあれば、そんな結果になるんだ…!!!)」
京太郎「(つーか、和が失恋って事はやっぱり咲の事ガチで狙ってたんじゃねぇか!)」
京太郎「(正直、結構、前から怪しいと思ってましたよ!!)」
京太郎「(…でも、失恋、したんだよなぁ…和)」
京太郎「(今日会った和は別に普通だったからもう吹っ切れたのかもしれないけど…)」
京太郎「(いや…あの時、友人の中に咲の名前がなかったあたり、まだ完全に忘れられた訳じゃないんだろうな…)」
京太郎「(…今度来た時は励ましてあげられるように言葉を考えておこう…)」
コンコン
京太郎「あ、はい。どうぞ」
照「失礼します」スッ
京太郎「え…えっと…」
照「…分からない?」
京太郎「…ごめんなさい。その、俺…」
照「大丈夫。大体の事情は聞いてるから」
照「高校からの記憶なくしたんだって?…それじゃちょっと厳しいかも」
京太郎「…厳しい?」
照「…ヒント」スッ
照「私は京ちゃんにとって頼れるお姉さん」
京太郎「…え?」
照「ヒントその2」
照「私は京ちゃんと一緒にお風呂に入った事がある」
京太郎「ちょっ!?て、照さん…!?」
照「…まだ分からない?」
照「じゃあ、ヒントその3」
照「私は京ちゃんと長い夜を一緒に過ごした事も…」
京太郎「てるてるううう!?」
照「…ん」ニコ
照「ようやく思い出してくれた?」
京太郎「いや、京ちゃんって呼んだ時点で大体、二択まで絞れるからさ…」
京太郎「あの時点で気づいてたって」
照「…京ちゃんが照さんとかそんな他人行儀な呼び方するのが悪い」ムスー
京太郎「し、仕方ないだろ…てるてるなんて呼び方、この歳になって出来ないって」
照「可愛いと思うのに…」
京太郎「流石にもうアラサーのおっさんがてるてるはないだろ…」
照「大丈夫。京ちゃんまだまだ若いから」
照「だから、てるてるって呼んで?」
京太郎「いや、あの…」
照「呼んでくれなきゃお見舞いのお菓子あげない」
京太郎「ハロウィンか何かか」
照「あ、でも、それだと私がお菓子独り占め出来る…?」ウーン
京太郎「見舞いに来たんじゃねぇのかよ」
京太郎「まったく…相変わらずてるてるには振り回されるなぁ…」フゥ
照「…そう言いつつなんだかんだ言っててるてるって呼んでくれる京ちゃんが好き」ニコ
京太郎「い、いや、それはその…なんつうか…つい癖で…」
照「ふふ。京ちゃん可愛い」ナデナデ
京太郎「あー…うん」
京太郎「そうだな、てるてるってこういう人だったな…」
照「こういう人って?」
京太郎「人の話聞かなくてゴーイングマイウェイだけどなんでか逆らえない人ってぇか…」
照「…京ちゃんが寝てる時に毎日、てるてるには絶対服従って睡眠学習させた成果が今…」
京太郎「ちょっと待て」
照「…勿論、冗談」メソラシ
京太郎「せめてこっち見てから言おうか、てるてる」
照「それより…どう?」
京太郎「え?どうって…?」
照「私…大人になったでしょ?」
照「少しはドキッとした…?」
京太郎「いや、昔と正直、スタイルとか変わってないし」
照「~~!」ペシペシ
京太郎「いたたたっ!わ、悪かった!悪かったって!!」
照「…ちゃんと胸はサイズアップしてる」
京太郎「そうは見えな…いててててっ」
照「京ちゃんの意地悪」ムゥ
京太郎「ごめん。さっきの分、仕返ししたくてさ」
照「…じゃあ、本当のところはどう?」
京太郎「まぁ、その…すげぇ大人っぽくなったよ」
京太郎「最後に会った時から背も伸びて…顔も綺麗になってるし」
京太郎「(…まぁ、高校からだと殆ど変化がないとは言わないでおこう)」
照「…そっか。嬉しい」ニコ
照「…京ちゃんも昔よりずっとずっと男らしくなってるよ」
照「…男らしすぎてトラックに引かれたって時は心臓が止まるかと思ったけど」
京太郎「あー…心配掛けてごめんな」
照「今回だけは許してあげる」
照「でも…次、同じ無茶したら許さないからね」
京太郎「あぁ。肝に命じておくよ」
京太郎「…そういやてるてるってさ、こんなところに来て大丈夫なのか?」
照「え…?」
京太郎「いや、てっきりてるてるは麻雀プロになって忙しくしてると思ってたんだけど…」
照「私は…」
照「…確かにプロ雀士だけど…でも、相方が起きたと聞いて来れないほど過密スケジュールじゃない」
京太郎「…相方?」
照「相方」
京太郎「…誰と誰が?」
照「京ちゃんと私が」
京太郎「…………え?」
照「京ちゃんと私は仕事上組む事が多かったから」
照「そこで色々やってたら京ちゃんと私がワンセットで扱われる事が多くなって」
京太郎「(あー…なんだろう。記憶はないけど目に浮かぶぞ)」
京太郎「(あっちこっちにポンコツっぷりで迷惑かけるてるてるとフォローしようとする俺の姿が)」
照「気づいたら一緒にラジオ番組とか出来てた」
京太郎「ら、ラジオ!?」
照「うん。結構、人気ではがきも毎回百通以上来る」
京太郎「って事は俺、ラジオ関係の仕事でもやってたのか…?」
照「ううん。アナウンサー」
京太郎「え?」
照「京ちゃんはアナウンサー」
京太郎「…俺が?」
照「意外だった?」
京太郎「あぁ…てっきりもっと地味なサラリーマンとかやってると思ってた」
照「アナウンサーもある種、サラリーマンみたいなもの」
京太郎「まぁ、確かにそうかもしれないけど…」
京太郎「つか、俺がアナウンサーって…人気とかあったのか?」
照「顔も良いし、声も優しいから結構、人気だったよ」
照「ラジオに耳が孕むなんてハガキが来た事もある」
京太郎「マジかよ…流石にそれは怖いぞ…」
照「実際、京ちゃんは良い声してるから自身を持って良い」
照「何より…京ちゃんは何時も一生懸命だったから」
照「どんな仕事でも一生懸命取り組んでいたから」
照「だから、私も安心して京ちゃんとお仕事が出来るし…見ている聞いている人にも熱意が伝わってるんだと思う」
京太郎「そっかな…」
照「うん。そう」
照「誰よりも一緒に京ちゃんと仕事していた私が保証する」ニコ
京太郎「あー…ありがとな。てるてる」
京太郎「あまりにも職業が意外すぎてちょっとびっくりしたけど…ちゃんと出来てるようで安心した」
京太郎「でも、それなら早めに復帰出来るよう頑張らないとな…」
照「大丈夫。ゆっくり休んで良い」
京太郎「いや、でも、ラジオ番組だってあるのにさ…」
照「リスナーから届いてる手紙は京ちゃんの事故に対して概ね同情的だったから大丈夫」
照「とりあえず京ちゃんが落ち着くまで代わりの番組もあるから」
京太郎「…そっか。それなら良いんだけど…」
京太郎「なんかそうやって聞くと色々と不安になるな…」
京太郎「こうやって休んでいる間に仕事取られて首になったりしないか、とかさ…」
照「…それこそ大丈夫」
京太郎「そんなに俺って人気なのか?」
照「ううん。人気は中堅ってところだけど」
照「でも、京ちゃんが無職になったら私が養ってあげるから」
京太郎「…え?」
照「京ちゃんは主夫をしてくれたら良い」
京太郎「いや、あの…主夫って」
ブルル
照「…あ、ごめん。そろそろ時間」
照「また来るから」スタスタ
京太郎「あ、うん…」
京太郎「…………」
京太郎「いや、流石に本気じゃないよな?」
京太郎「だって、俺、モモがいるし…相方ならてるてるがそれを知らないはずないし」
京太郎「それを主夫ってそんな
プロポーズみたいな…」
京太郎「はは。まったくてるてるったら」
京太郎「あんまり表情が分かりにくいから冗談かどうか分からないんだっての」
京太郎「…………」
京太郎「…………」
京太郎「…でも、念の為、後でちゃんと日記チェックしとこう…」
てるてるは日本の麻雀界でもトップと行っても良いプロだ。
正直なところ若手ではナンバーワンだとそう言っても良い。
けれど、そんなてるてるはあんまりメディアに露出したりはしない。
ドル系でも売れる顔を華やかさを持ちながら、プロとしてコメントを求められた時も当たり障りのないコメントを返すだけ。
実力は確かではあるが、あまりそれ以外の部分で推していくには若干、物足りない人材。
それが宮永照という人だった。
…が、そのてるてるが唯一、隙を見せる人物としてここ最近、俺の名前があがっている。
きっとこの前の収録でてるてるがついつい口を滑らせ、俺を京ちゃんと呼んでから、完璧なプロとしての顔を崩してしまったのが原因なのだろう。
麻雀が強いだけじゃなく面白みがある人物として、とりあえずラジオ番組をやってみないかという話が来た。
無論、何時、仕事がなくなってもおかしくはないアナウンサーとしては二つ返事で頷くしかなかった訳だけど…正直、今では後悔している。
毎日、定時で収録しなければいけないラジオと全国を飛び回る事もおかしくはないアナウンサー。
この二つを両立させようとするのは結構、厳しいものだった。
その上、収録だって、席について駄弁っていたら終わりという訳じゃない。
収録前には入念は打ち合わせがあるし、ハガキの内容にも何百通と来るハガキにも目を通しておかなければいけないんだ。
決して楽な仕事なんてないっていうのはここ数年で分かっていたけど、思っていた以上にキツイ。
咲と同レベルにはポンコツなてるてるにお菓子を補充したり、迷子にならないかチェックしたり、となると毎日がクタクタだ。
正直、モモがいなかったらもうめげてたかもしれない。
だけど…こうして俺を癒してくれる恋人がいるんだから…もうちょっと頑張ろう……。
こんな事、本来ならば日記に書く事じゃないと思うんだけど…。
ついに今日、モモとエッチしちゃったぜ、ヒャッホゥ!!
苦節、2ヶ月…!!
こっちに対してアプローチしながらも、肝心な時になると怖がるモモを勇気づけるのに結構時間が掛かったけど…!
何とか目立った失敗なく、恋人としての初めての営みを成功させる事が出来た。
いやぁ…にしてもエッチって超気持ち良いんだな。
正直、センズリとかとはまったく比べ物にならなかった。
世の中の高校生カップルが夢中になってやりまくるのも分かる。
あれは麻薬だ。
気持ち良い上に何時も以上にモモが可愛く見えて仕方がないんだから。
時間切れの連絡が来なかったら俺たちはきっと何時までも合体しっぱなしだっただろう。
なにせ、後半は俺だけじゃなくてモモ自身も乗り気で腰振ってたし。
初めては女の子への負担は強いと聞いていたけど、あの様子を見る限り、モモも気に入ってくれたみたいだ。
ラブホ出る時もまた来ようねって言ってくれてたし…ホント、俺の恋人はエロ可愛すぎる。
あぁ、早くまたモモとする機会が来ないかなぁ…。
偶然っていうのはホント馬鹿にできないもんだよなぁ。
今日はラジオ局への移動中、ドラマの撮影に遭遇した。
まぁ、それそのものはこの街で暮らしていたらそれほど珍しい事じゃないんだけどさ。
ただ、そこで演じてた女優がまさか部長…じゃなくて竹井先輩だなんて思ってもみなかった
しかも、主演。
さらには、ゴールデン。
最近、かなり人気だって聞いてたけど、あっちこっちでドラマに引っ張りだこみたいだなぁ。
このままいけばドラマの女王なんて呼ばれるんじゃないだろうか。
なんて思いながら脇を通りすぎようとしたら何故か気づかれた。
あのやけに目ざとい目はどうやら社会人になっても変わっていなかったらしい。
そのままロケ車へと引きずり込まれ、収録準備が整うまで色々と話をした。
どうやらあっちも俺の仕事を知っていてくれたらしく、ラジオも聞いてくれてると言っていた。
正直、ゴールデンで主演やるような女優に聞いてもらえていたなんて思わなかったからちょっと嬉しい。
お互いに時間がなかったからそれ以上は話せなかったけれど…また改めて話が出来れば良いな。
まぁ…同じテレビに映る仕事つっても活躍している分野がまったく違うからなぁ…。
お互い忙しい身だし、今回みたいな偶然がない限り、また会うのは難しいかもしれない。
…あぁ、切実に休みが欲しい…一日だけで良いから。
京太郎「(…うん。まぁ、とりあえずな)」
京太郎「(モモとの性活なんて赤裸々に日記に書いてるんじゃねぇよ、俺!!)」
京太郎「(もし、誰かに見られたらどうするんだよおおおお!!)」
京太郎「(いや、まぁ、日記は基本、他人に見られる事を想定してたら書けないと思うけどさ!)」
京太郎「(でも、ちょっとこれは赤裸々過ぎじゃないですかねぇ…)」
京太郎「(……まぁ、でも、これは貴重な資料だし?)」
京太郎「(とりあえずすぐめくれるようにちょっとだけ折り目つけておこう…)」オリオリ
京太郎「(んで…やっぱり仕事は忙しいみたいだなぁ)」
京太郎「(特にラジオに関しての愚痴は結構、きつそうだった)」
京太郎「(でも、てるてるの言う通り、アナウンサーって仕事を結構、真面目にやってるんだなぁ…)」
京太郎「(つか、竹井先輩、今、女優なのかよ…)」
京太郎「(しかも、ゴールデンで主演って…人気女優って言っても過言じゃないじゃん)」
京太郎「(まぁ、元々、華がある人ではあったけど、それでもびっくりした)」
京太郎「(俺がアナウンサーって聞いた時と同じくらいびっくりした…)」
京太郎「(…でも、やっぱり俺の知ってる時間からそれだけかけ離れてるって事なんだよなぁ)」
京太郎「(…そう思うとちょっと寂しいけど…)」
京太郎「(…それ以上に寂しい思いをしている子がいるんだ)」
京太郎「(早く何とかしないとな…!)」
コンコン
京太郎「お、はーい。どうぞ」
モモ「京さん、大丈夫っすか」ガチャ
京太郎「あぁ、モモか」
京太郎「おう。すこぶる健康的だよ」
京太郎「医者も回復力が凄いっって褒めてくれてたよ」
モモ「確かに京さんの回復力は凄いっすね…」
京太郎「ん?前も似たような事あったのか?」
モモ「あ、いや、そういうんじゃなくてその…」カァァ
京太郎「え?」キョトン
モモ「そ、それよりご飯はどうっすか!?」
京太郎「あー…病院食な」
京太郎「悪くはないんだけど、意外と味気なくってさ」
京太郎「意識がまだ高校生な所為か、あんまり食べた気がしないんだよなぁ…」
モモ「そう言うと思ってお弁当持ってきたっす!」スッ
京太郎「お、おぉ…!!」
モモ「ど、どうっすかね…?」ドキドキ
京太郎「あぁ、うめぇよ。最高だ」モグモグ
モモ「良かった…」ホッ
京太郎「そんなに不安になる事ないって」
京太郎「これだけ出来れば十分過ぎるくらいだろ」
モモ「でも、京さんは私とは比べ物にならないほど出来るんっすよ…」
京太郎「そう…なのか?」キョトン
モモ「はい。そりゃもう凄いもんっすよ」
モモ「大学時代には知り合いのスーパー執事さんに太鼓判押されたって聞いたっすよ」
京太郎「は、ハギヨシさんに!?」
モモ「今も収録にお菓子持って行ったら、よそからもスタッフがゾロゾロと集まってくるとか何とか」
モモ「あんまりにも上手だから料理番組も持ってみないかって話もあったっすよ」
京太郎「…俺って本当にアナウンサーなんだよな…?」
モモ「アナウンサーがメインのマルチタレントって言ったほうが正しいような気がするっす」
京太郎「あー…」
モモ「でも、そうやってポンポンお菓子を振る舞うから餌付けされる人も多くて…」
モモ「照さんとか特にそうっす」
モモ「ていうか、照さんがラジオの仕事受けたの京さんのお菓子を楽しみにして受けた節さえあるくらいっす」フゥ
京太郎「あー…うん。なんだかその光景が目に浮かぶわ」
京太郎「(…多分、主夫になってくれって言ってたのもそれ関係なんだろうなぁ…)」
モモ「…だーかーらー…恋人としてはちょぉっと不安と言うか不満なんっすよね」
京太郎「え?」
モモ「勿論、二人に意識が戻った事を伝えたのは私っすけど…」
モモ「でも、私の知らないところで京さんと会っているのはちょっとなぁって…」
京太郎「まぁ、たまたま時間が合わなかっただけだろ」
京太郎「あんまり気にする事はないと思うぜ」
モモ「そりゃそうっすけど…でも、二人とも魅力的っすもん」
モモ「特に照さんとか…アレで中々、本気なところもあるし…」
モモ「記憶が消えている間に、京さんが二人の事を好きにならないなんて言い切れないっす…」ショボン
京太郎「…もう。まったく」スッ
モモ「あ…」
京太郎「大丈夫だって」 ナデナデ
京太郎「そんなに心配しなくてもさ、モモだってすげぇ魅力的だから」
モモ「ホントっすか?」
京太郎「あぁ。正直、こんなに美人なモモが恋人とか記憶を失う前の俺が羨ましいレベルだからな」
京太郎「多分、俺がこう思うってことは、今の俺も昔の俺もモモにゾッコンなんだよ」
京太郎「だから、心配なんてしなくても大丈夫」
京太郎「記憶がなくなっても、俺はモモの事大好きだからさ」
モモ「…はいっす」ギュゥゥ
京太郎「はは。そうやって抱きついてきたら食べられないだろ」
モモ「京さんがあんなに嬉しい事言うのが悪いっすよ…!」
京太郎「そりゃ男としては落ち込んでる恋人を放っておけないだろ」ナデナデ
モモ「んふぅ…♪京さんのナデナデ好きっす…♥」
京太郎「あぁ。俺もモモの髪撫でるのは結構、好きかもな」
京太郎「サラサラしてて優しくて…撫でてるだけで心が落ち着くみたいだ」
モモ「ふふ。だって、この髪どころか私は全部、京さんのものっすからね」
モモ「一杯、撫でてリラックスしてくださいっす」ニコ
モモ「あ、でも、こうやって撫でてたら食べられないから…」
モモ「よし!私があーんしてあげるっす!」グッ
京太郎「え?いや、でも…」
モモ「ダメっすか?」
京太郎「いや、勿論、ダメって事はないけど…」
モモ「じゃあ、お箸貸してくださいっす」スッ
京太郎「お、おう」
モモ「はい。じゃあ、あーん♪」
京太郎「あ、あーん…」パクッ
モモ「…どうっすか?味は」
京太郎「あー…さっきよりもちょっと恥ずかしくて分かんないかも」
モモ「えー…」
京太郎「…でも、幸せの味がする…かな」
モモ「ふふ、私も幸せっすよ、京さんっ」ニコニコ
ついに以前からオファーのあった料理番組が始まった。
アナウンサーとしてじゃなく、タレントとしての初めて持つレギュラー番組にすげぇ緊張する。
…そんな俺に多分、スタッフも気を遣ってくれたんだろうな。
俺と一緒にレギュラーとして料理する事になったのはてるてるだった。
……うん、いや、まぁね。
仕事で組む事も多いし、プライベートでも仲が良い人ではあるよ?
でも、あの人、料理番組で呼んじゃいけないタイプの人だろ!?
とりあえず家庭的なところ見せてあげようって思って材料切ってもらおうとしたらいつの間にか指まで切ってるし!
第一回目は生で出すって話だったから今更、止めて修正なんか効かないし…俺がその場でてるてるの指を手当する事に…。
でも、流石にこれだけだと可哀想だし、普段のてるてるを褒めちぎってたら、いつの間にかてるてるが真っ赤になって…。
そんな状態で材料切るのは危ないから鍋を任せたら、鍋が爆発した。
そりゃもうボンッと凄い音を立てて蓋が浮いた。
流石に頑丈な鍋だったから破裂まではしなかったけど…俺がとっさにてるてるを庇わなかったら彼女は火傷してたかもしれない。
代わりに俺が火傷しちゃったけど…まぁ、てるてるが無事なら安いもんだ。
ただ、後で原因を聞いたところ、さっきのミスを帳消しにしようと勝手にてるてるが隠し味を入れようとしたかららしい。
てるてるェ…。
それからはだいたい、アクシデントもなく進んでいってゲストさんに食べてもらうところまでこぎつけたんだけど…。
食べた瞬間、ゲストさんが泣いた。
そのまま俺に告白してきた。
いや、あの俺、テレビ的にNGなんで発表はしてないんですけど、恋人いるんですがっ!!
ってか、ゲストさんガチムチの男優さんだったんですが!!!
最後の最後にアレは肝が冷えた…と言うか、尻の穴がキュってしたぜ…。
東京は色々と特別な街だと言うけれど、最近は本当にそうだと思う。
今日は試合の中休みだったけれど、咲は慣れない土地にグロッキー。
和はそんな和の看病で、優希はタコスの食べ歩き。
先輩二人も何処かへと出かけていった。
お陰で東京に知り合いなんてろくにいない俺は一人さびしく街へと出た訳である。
とは言え、一時間もしない間に一人で東京観光なんて寂しくて仕方がない事に気づいたんだよな…。
結局、手近なところで時間を潰そうと近くのTSUTAY○で麻雀本を探してた。
んで、同じ店舗内に併設してあるスターバッ○スの中でどれがいいか吟味してたら相席を申出されて。
別にそういうの気にしないから頷いたら、それが阿知賀の先鋒、松実玄さんだった。
それだけならまだ顔と名前だけは知ってる人と相席になったってだけで済んだんだろうけどな。
彼女が呼んでたのはグラビア雑誌だった。
しかも、それ熱心に読みながら「おぉ…このおもちは中々なのです…」とか「このおもちは偽物なのです…」とか独り言言いまくってた。
…まぁ、普通は思いっきり敬遠するタイプの人だと思うんだけど、何故かそのおもちって言葉が気になって。
ついつい話しかけてしまったら、なんと玄さんは俺と同じおっぱいスキーだった。
しかも、俺に勝るとも劣らない戦闘能力測定を持っている。
そうと分かったら、もう性別の垣根なんてまったく関係なかった。
俺たちは初めて同レベルで語り合える仲間と手を取り合って、街へと繰り出し、あっちこっちで女の子を観察しながら話し合った。
もしかしたら俺の人生の中であれが一番充実した時間だったかもしれない。
でも、そんな時間もすぐ終わって…俺も彼女も戻らなきゃいけない時間になった。
流石に日も堕ちてるしって事で玄さんを送ったんだが、途中で彼女が躓いてしまって。
それを支えようとしたら、見事にπタッチ、もといおもちタッチしてしまった。
それは玄さんも事故として許してくれたんだけど…俺がその場でつい「素晴らしいおもちですね」なんて言ってしまったんだよな…。
お互いに顔を真っ赤にして沈黙して…狼狽もあったとは言え、その話題は流石に酷い。
当然、玄さんも顔を真っ赤にして、俺の目の前から立ち去っていった。
一応、連絡先も交換してあるけど…これ、どうやって謝れば良いんだろう…。
高校時代はまだ夢のある時期だ。
どんな夢でも心から信じれば、まだ実現できるとそう思える若さがある。
けれど、そこから夢を実現できる奴なんて実際にはどれくらいいるだろうか。
俺には分からないけど…俺の友人である片岡優希はその中の一人だった。
前々からメキシコでタコスの修行をして店を持ちたいと言っていた優希は卒業後、マジでメキシコに飛んだ。
あれだけあったプロへのオファーを全て蹴っ飛ばして、夢を叶えにいったのである。
正直、それだけでも格好良いと思うが、数年前、マジでタコスの店を作りやがった。
しかも、本場でかなりの修行を積んだのか開店直後から大評判。
あっという間に二号店三号店を拡大し、タコスを一気に日本の中に広めた。
そんな店を話題やネタに飢えているテレビ局が見過ごすはずがない。
俺の参加するニュースでも取材する事が決まり、俺はカメラを持って旧友に会いに行った訳だ。
で、久しぶりにあった優希は結構、背が伸びていた。
スタイルはそのままだけど、大分、大人っぽくなっている。
厨房に入る所為か、化粧ッ気なんかはなかったが、それでも印象は大分変わってた。
まぁ、中身は相変わらずタコス馬鹿だったんだけどな。
一日三食タコスで、其の上、毎日試作品の試食もしてるとかホントやりすぎだ。
その上、こっちまで試作品食べさせまくりやがって…俺以外のスタッフともすぐタメ口で話すくらい仲良くなってるし。
外見変わって少しびっくりしたけど、相変わらずでちょっと安心した。
その日はそれで仕事終わりだったから撮影班には帰ってもらって色々と思い出話も楽しめたし。
色々と有意義な仕事だった。
京太郎「(…そっか)」
京太郎「(優希の奴、麻雀プロじゃなくてタコスの店作ったのか)」
京太郎「(前々からそうなりたいって言ってたけど…まさか本当に夢をかなえるなんて)」
京太郎「(あいつってホントすげぇよなぁ…)」
京太郎「(しかし、印象が変わったって書いてあるけど…一体、どれくらい変化したんだろうか…)」
京太郎「(ちょっと気になるし…次に和が来たら写メか何かないか聞いてみるかな」
京太郎「(次は…松実さん…玄さん…?の事か)」
京太郎「(でも、俺と同レベルでおっぱいの事を話せる女の子なんて本当にいるのか…?)」
京太郎「(そもそも阿知賀の情報は俺も雑用の一環として集めてたけど、あの人、黒髪ロングの清楚そうな人じゃなかったっけ?)」
京太郎「(そんな人がグラビア見て、こんな事言いながら俺とおっぱい…いや、おもちを語るって…)」
京太郎「(正直、想像がつかないな…)」
京太郎「(ただ、事故とは言え、松実さんの胸を揉んだ昔の俺が羨ましくて仕方がない)」
京太郎「(料理番組は…まぁ、うん。そうなるよな、としか)」
京太郎「(さっきモモに話を聞いた時に嫌な予感がしたんだよなぁ…)」
京太郎「(昔っからてるてるは天然というかかなりマイペースな子だったし)」
京太郎「(料理が得意じゃないタイプなのは目に見えていた)」
京太郎「(まぁ、流石に第一回からここまでアクシデント続きとは思わなかったけれど)」
京太郎「(…つか、俺、何故か男に告白されてたみたいだけど、色々と大丈夫なのか?)」
京太郎「(ほ、掘られたりとかしてないよな?そうなんだよな?)」
京太郎「(な、なんだか不安になってきた…)」
コンコン
京太郎「あ、どうぞ」
シロ「…こんにちは」ガチャ
京太郎「え、えぇっと…」
シロ「…あ、大丈夫。人違いじゃないから」
シロ「私、小瀬川白望」
シロ「京太郎とは一応、同じ局の先輩アナウンサーになる」
京太郎「あ、先輩でしたか…。ど、どうも」ペコッ
シロ「気にしないで良い。京太郎はまだ実感わかないだろうし」
シロ「それにそんな風に構えられるとこっちもダルイ…」
京太郎「え?」
シロ「そういうの関係なしって感じだったから」
シロ「ダルくないように適当にして」
京太郎「は、はぁ…」
京太郎「(…いや、でも、適当って難しいだろ…)」
京太郎「(なんせ記憶はないけど相手は俺の仕事の先輩なんだぞ…?)」
京太郎「(下手な事言ったら後々、ぎくしゃくするかもしれないし…)」
京太郎「(それに何より…小瀬川さんもすげぇおもちをおもちの美女でして…)」
京太郎「(気だるげでアンニュイな雰囲気が何処か退廃的で弄ばれたくなるというか…!)」
京太郎「(こう部長…あ、いや、竹井先輩とはまた違った魔性を感じると言えば良いのか)」
京太郎「(何にせよ、こんな美女が一緒だと緊張するよなぁ…)」
シロ「…京太郎」
京太郎「え?」
シロ「またおっぱい見てる」
京太郎「す、すみません…!!」
シロ「…別に良い。京太郎ならダルくないし」
シロ「でも、あんまりそういう事よそでやらない方が良い」
シロ「アナウンサーは人気商売だから」
シロ「スキャンダルは出来るだけ控えないとダルい事になる」
京太郎「はい…」
シロ「……でも、何も覚えていないのにプロ意識持つのも難しいし」
シロ「とりあえず…何か質問ある?」
シロ「…あ、ダルくない程度で」
京太郎「え、えっとそれじゃあ…俺、小瀬川さんとどうやって知り合ったんですか…?」
シロ「さっきも言った通り、私と京太郎は同じ局のアナウンサー」
シロ「一応、私が二年先輩になる」
シロ「でも、途中までは分野が違ったし、それほど面識はなかった」
シロ「だけど、京太郎が少しずつ顔出ししていくようにつれて私と京太郎の顔が似てるって視聴者の中で話題になって」
シロ「気づいたら昼の番組でそっくりさんアナウンサーとして出る事になった」
京太郎「な、なんていうか…すみません」
シロ「…どうして?」
京太郎「いや、だって、俺なんかとそっくりだなんて不名誉でしょうし…」
シロ「別に気にしてない。それに仕事だから」
シロ「それに京太郎は色々とお世話してくれるから好き」
京太郎「…え?」
シロ「私、深夜帯や早朝でニュースや天気読み上げなきゃいけないから」
シロ「でも、私、ダルいの苦手で…毎日、遅刻ギリギリで」
シロ「そんな私を迎えに来たり、食事作ったり、寝かせてくれたりしてたのが京太郎」
京太郎「…アナウンサーやりながらですか?」
シロ「うん」
京太郎「(俺ェ…)」
京太郎「(いや、まぁ、確かにこの人、放っておけない雰囲気あるけどさ!!)」
京太郎「(咲のようにポンコツじゃないけど、私生活がダメな雰囲気はヒシヒシ感じるけど!!)」
京太郎「(だからってそこまでお世話してたらそりゃ身体がもたないだろ…)」
京太郎「(つーか、それモモは大丈夫だったのか…?)」
京太郎「(下手したら恋人蔑ろだって怒られてもおかしくないと思うんだけど…)」
京太郎「…でも、小瀬川さんはなんでアナウンサーになったんです?」
シロ「一日一回、ニュースを読めばそれで一生暮らしていける楽な仕事だって聞いた…」
シロ「実際は打ち合わせやら色々あってすごいダルかった…もう辞めたい…」
シロ「…でも、京太郎がかえってくるまでは頑張る」
京太郎「え?」
シロ「私、京太郎に沢山、借りがあるから」
シロ「京太郎が入院してる最中の穴は出来るだけ私が埋めるようにしてる」
シロ「何時か京太郎が帰ってきた時、すぐさまバトンタッチ出来るように」
京太郎「…小瀬川さん」
シロ「だから、今はゆっくり休んで…いや、やっぱり早く帰ってきて」ダルーン
シロ「もう無理…レギュラー複数とかマジで無理…」
シロ「許容量超えてる…ダルすぎて泣きたい」
京太郎「えっと…ごめんなさい」
京太郎「後、ありがとうございます、小瀬川さん」
シロ「……感謝してる?」
京太郎「えぇ、勿論」
シロ「…じゃあ、ちょっとだけ頭撫でて」
京太郎「え?」
シロ「…それで私、明日からまた頑張れるから」
シロ「ダルいの我慢するから」
京太郎「…分かりました」ナデナデ
シロ「…ん♪」
多分、シロは枕営業するくらいなら止めるんじゃないかなぁ…
それに基本、シロはマグロっぽいし、あんまりそういう意味では人気なさそう
逆にそういうのが似合うのはキャップじゃないかな?
嫌々、男に身体開いていくのも似合うと思う(ゲス顔)
あ、ちなみに好感度上昇は複数回お見舞いに来ると起こります
モモはそれ以上がない状態なので判定はありませんでしたが、恋人より下の関係の女の子は良い雰囲気になると
好感度がアップし、告白してきたりアプローチしてきたりもあり得ます
またキャラが語ってるのが全てではないので、日記の内容によっても地味に関係が変化します
まぁ、凄いややこしいけど、「この二人、くっつかない方がおかしいだろ」と私に思わせたら勝ちって事です(無茶ぶり)
この前、逆ナンされた小鍛治プロからお呼び出しがあった。
どうやら前回の醜態に対してのお詫びと口止めをお願いしたいらしい。
元々、他人の醜態を広める趣味はないし、大人も大変だなぁ、くらいで済んだからわざわざ呼び出さなくても良かったんだけどなぁ。
でも、アラフォー呼ばわりされているとはいえ、美人のプロからのお呼び出しともなればお付き合いしなきゃいけないだろう常識的に考えて。
あ、ちなみにシラフの小鍛治プロはすげぇマトモな人でした。
寧ろ、凄い腰が低くて、こっちの方が申し訳なくなってしまったレベル。
リバースした自分の醜態を思い出したのか目尻に涙を浮かべて顔も真っ赤にしていたし。
だから、ついついお詫びは小鍛冶プロとのデートが良いって言っちゃったんだよなぁ…。
まぁ、デートと言っても服を選んで、適当にカフェで駄弁ってただけだけれど。
でも、最初は緊張してた小鍛冶プロも途中からリラックスして楽しんでたみたいでよかった。
俺が少ない小遣いで勝ってあげた服も大事そうに抱えて帰っていったし。
でも、「後ではやりさんや理沙さんに自慢しよ♪」なんて言ってたのは流石に冗談だよな…?
そもそも俺がプレゼントしたのプロからしたら端金の安物だし。
一応、似合うと思ってプレゼントしたけど、人に自慢するほどの事じゃないだろう。
ましてや相手がこの前一緒に飲んでた瑞原プロや野衣プロだなんて…。
……なんだか嫌な予感しかしない。
シロさんは凄いアナウンサーだ。
一見、抑揚のないあの声は、しかし、信じられないほど通る。
まさに天性のものと言っても過言ではないそれは世のアナウンサー全てが欲しがるものだろう。
…ただ、シロさんはそれ以外がちょっとなぁ。
仕事に対しての情熱はそれなりにあるんだが、私生活がダメダメ過ぎる。
ちょっと目を離したら、机の上でグテーとしている事なんてもう数え切れないくらいだ。
ただ、収録中の集中力は凄いし、先輩として色々と面倒も見てもらって尊敬はしてるから、今まで面倒を見てきたけれど…仕事が増えてきた最近はきつい。
そんな風にモモに漏らしたら彼女の方から俺やシロさんとのルームシェアを言い出してくれた。
確かに一緒の部屋に住んでいたらシロさんの面倒も見やすいし、いざと言う時はモモの手も借りられる。
でも、それはモモと俺と二人っきりでいる時間が減るって言う事も同義なんだ。
それでも良いのかと尋ねる俺にモモは「今更、京さんが小瀬川さんの事見捨てられるとは思ってないっすから。それより京さんのが無理しない方が大事っす」と返してくれた。
…本当にもう…この子は俺には勿体無いくらいの良い子だ。
まさかここまで俺に尽くしてくれるなんてさ。
多分、シロさんもルームシェアの話を断ったりしないだろうし…三人での同棲生活が始まったら出来るだけモモの献身に応えられるようにしよう。
日本には昔から牌のお兄さんという人気ヒーローシリーズがある。
時代場所モチーフこそ違うがおおまかに麻雀牌を使って、悪人と戦うという話の流れは一貫している。
…で、そんな番組の主役、牌のお兄さんに何故か俺が選ばれてしまった。
いや、あの…俺、俳優じゃなくてアナウンサーなんですけど?
まぁ、仕事だし、全力でやっていたら…何故か映画の制作まで決まった。
どうやら今年のシリーズは中々に人気だったらしく、早々に終わらせるのは惜しいとの事。
迫力ある絵をとる為にほぼスタントなしで撮影してた身としては嬉しいやら恐ろしいやら…。
で、今日はそのチケット前売り会兼サイン会だった。
作中のヒーローとしての姿でサイン会だなんて絶対に人が来ないだろ、と思ってたけど、何故かすげぇお客さんが殺到した。
しかも、子どもよりもお母様たちの方が熱狂してたような気がするのは気のせいだろうか?
まぁ、女の人にちやほやされるのは俺も嫌いじゃないし、嬉しいけれど。
なーんて事を思ってたら何故か列の向こうからモモとシロさんが出てきた。
とは言え、知り合いだからと対応変える訳にはいかないし…他の人と同じようにサインしたら顔を真っ赤にして喜んでくれてた。
家に帰ってきたら俺のサイン入り色紙がそれぞれ部屋に飾ってあった。
解せぬ。
京太郎「(アナウンサーとは何だったのか)」
京太郎「(これもう絶対、アナウンサーじゃなくてマルチタレントだよな!?)」
京太郎「(普通、アナウンサーが俳優としてドラマに出たりしないし!!)」
京太郎「(しかも、牌のお兄さんって俺も昔見てたニチアサの定番じゃん!!)」
京太郎「(それに俺が主役で出演…?しかも、映画まで決定しただって……?)」
京太郎「(なんだろ…あんまりにもすごすぎて実感わかないぞ…?)」
京太郎「(これ本当に俺の日記なのか?)」
京太郎「(実はハギヨシさんの日記とかじゃないよな…?)」
京太郎「(でも、同棲のところにモモが恋人だってはっきりとそう書いてあるしなぁ…)」
京太郎「(つか、俺の事を気遣って、自分からルームシェアを言い出してくれるなんて…)」
京太郎「(あー…くそ…良い子過ぎて今すぐ会いたくなってしまったじゃないか…!)」
京太郎「(今度、お見舞いに来てくれた時にはそれこそ思いっきり甘やかしてあげよう)」
京太郎「(でも、小鍛治プロも可愛いよなぁ…)」
京太郎「(高校生の俺に買えるものなんてたかがしれてるのに嬉しそうにしてるみたいだし)」
京太郎「(こんなに可愛い人なのに、どうして恋人いないだの結婚出来ないだのイジられるんだろう…)」
京太郎「(ちょっと勿体無いよなぁ…)」
京太郎「(なんて…モモっていう恋人がいる俺が言って良いセリフじゃないか)」
コンコン
京太郎「はーい」
竜華「失礼しまーす」
竜華「…お、良かった。元気そうやね」
京太郎「え、えぇ。お陰様で」
竜華「あー…そっか。うちの事も分からんのか」
京太郎「すみません…」
竜華「ええよ。内心、予想もしとったしね」
竜華「とりあえず自己紹介しよっか」
竜華「うちは清水谷竜華」
竜華「須賀くんとは…うーん、まずは大学の先輩と後輩かな」
京太郎「大学…ですか」
竜華「そう。うちと知り合った経緯は、入学してきた須賀くんとレクリエーションで一緒になって、そのまま意気投合した感じやな」
竜華「お互いなかなか、目を離せへん相手が身近に居て世話好きやったっていうのもあるんやろうなぁ」
竜華「あれこれ愚痴やあるあるネタ話しとったら、仲良ぅなっとったって感じ」
京太郎「なるほど…」
竜華「まだまだ大阪の事分からんって言う須賀くんに色々と案内したり、一緒に食べ歩きしたり」
竜華「うちがインカレで頑張っている時には応援してくれた事もあったっけかなぁ…」
竜華「まぁ、その…ちょっと恥ずかしいけど…もつつもたれつで色々やってきた友達…やね、うん」カァ
京太郎「すみません。そんな相手なのに俺…」
竜華「ええよ。聞いた話によると別に一生、記憶が戻らへん訳やないんやろ?」
竜華「ちょっとさびしいけど、でも、何時か思い出してくれたらそれで構わへんよ」
竜華「それより、今日はこっちが本題やで」スッ
京太郎「それって…」
竜華「君とうちが北大阪の大会で実況と解説やっとった時の映像をDVDに焼いてきたんよ」
竜華「後、ついでにDVDプレイヤーも」スッ
竜華「これがあれば少しは昔の事を思い出すキッカケになるんちゃうかなって思って」
京太郎「ありがとうございます。助かります」
竜華「ふふ、なんか須賀くんにそうやって感謝されるのも久しぶりで新鮮やね」
京太郎「え?」
竜華「さっきは持つつ持たれつって言ってたけど、須賀くんドンドンハイスペックになっていくんやもん」
竜華「あんまりうちがお世話する事なくて寂しかったんよ?」クスッ
竜華「だから、今日は思う存分、お世話させてもらうわ」ニコ
京太郎「…う」ドキッ
―― DVD再生中
京太郎「んー…」
竜華「どうかした?」
京太郎「いや、やっぱりあんまりしっくり来ないですね」
竜華「まぁ、須賀君からすれば八年か七年くらい後の自分やしねぇ…」
京太郎「もう立派なアナウンサー過ぎて自分って感覚がまったくないです…」
竜華「ふふ。まぁ、実際、須賀くんは凄いアナウンサーやったんやで」
竜華「入社してからトントン拍子にレギュラー増やしてって、テレビ番組で主演までやってたし」
京太郎「後は料理番組にラジオまでやってたんでしたっけ?」
竜華「そうそう。須賀くん、無意味にハイスペックやからあっちこっちから引っ張りだこで」
竜華「…だから、ちょっと寂しかったんよね」
京太郎「え?」
竜華「うちがこうして須賀くんと組んだのはこれが最後」
竜華「これから後はうちよりも宮永照プロとの組み合わせがおおなったから」
竜華「この時までは須賀くんの女房役言うたらうちやったのになぁ…」
京太郎「…し、清水谷さん…?」
竜華「ふふ。冗談冗談」
竜華「寂しいのはほんまやけど、須賀くんが思ってるような感情はないって」
竜華「こっちに来たのも試合の都合が大きいしね」
京太郎「それはそれでなんか寂しいんですか」
竜華「こうしてお見舞いに来ただけで許してぇな」クスッ
竜華「まぁ、寂しがらせたお詫びになんかしてあげよっか」
京太郎「時間とか大丈夫なんですか?」
竜華「うん。大丈夫。まだ一時間はゆっくり出来るし」
竜華「それより何かして欲しい事ある?」
京太郎「うーん…特には思いつかないですね」
竜華「えー…折角、須賀くんのお世話出来ると思って張り切ってたのに…」
京太郎「あはは。すみません」
竜華「あ、じゃあ、身体拭くとかどう?」
京太郎「え?」
竜華「長い間、入院しとってお風呂もちゃんと入れてへんやろ?」
京太郎「い、いや、それはそうですけど…」
竜華「よし。じゃあ、身体拭いてあげるね、えっと、タオルタオル…」
京太郎「いや、何もそこまでしなくても…」
竜華「大丈夫やって。うち須賀くんの身体なんか見てもなんとも思わへんし」
竜華「それよりすっきりした方がええやろ?」
竜華「うちは怜の看病で慣れとるし、安心して任せてええんやで」ニコッ
京太郎「う…」
※この後、メチャクチャフキフキされた
ここ最近の俺の多忙っぷりは結構なものだった。
レギュラー番組はどんどん増え、アナウンサー以外の仕事に呼ばれる事も多くなっている。
それ自体は嬉しいのだけれど、でも、疲労自体は溜まっていて…ついにシロさんから休めと先輩命令をくだされてしまった。
会社もここ最近の俺の多忙っぷりはやばいと思ってくれていたらしく、一日だけ休みを取ってくれた。
それだけじゃなく福利厚生として友人つきの一泊二日奈良温泉旅館への旅を用意してくれたのである。
なんと太っ腹。
流石は日本でも有数なテレビ局である。
勿論、俺が誘うのは恋人であるモモだ。
最近は寂しい思いをさせていた事だし、一緒に温泉に行こう。
そう言った俺に対して彼女は涙を流して喜んでくれた。
…………が、当日、何故かシロさんもついてきた。
福利厚生課が休みを用意したのは俺だけじゃなく、シロさんもだったのである。
しかも、何かの手違いか、俺達に用意されていたのは三人用の部屋。
折角、思いっきりモモとイチャイチャ出来ると思ったのに!!のに!!!!
とは言え、流石にシロさんに気を遣わせるのも可哀想だしなぁ…・。
もう三人で同棲してる訳だし、ここは運命だったと諦めて三人一緒に温泉旅館を楽しもう。
そんな風に話していたら玄さんが入ってきた。
今はもう立派な若女将として働いている彼女にはもう高校時代のおもちハンターっぷりは見られない。
もう落ち着いてしまったのかなぁ…なんてちょっと寂しく思ってたら、去り際に「後で一杯、お話しようね」って耳打ちされてしまった。
正直、色っぽくてゾクゾクしたけど…お陰でモモに拗ねられてしまってなだめるのに苦労したんだよなぁ…。
で、そんなモモを落ち着かせるのに家族風呂を取った。
シーズンオフだからか到着後でも楽に取れたから安心したのも束の間。
シロさんもダルイから一緒に入りたいって言い出した。
それ自体はまぁ、今までもよくあった事だから特に問題はない。
でも、今までは水着着用してたんだよ!!
だけど、今回はそんな準備なんてしてないから完全に全裸。
いや、この時点で俺もどうかと思ってたよ?
だって、おもち美女二人と狭いお風呂とかさ、まず無理だから。
最近、忙しくてちゃんと性欲処理出来てないのもあって絶対勃起するから。
でも、片方は恋人で、もう片方はそういうのまったく気にしないシロさんなんだよなぁ…。
結果、俺は押し切られてそのまま家族風呂へと連れ込まれた。
で、洗いっこ。
うん、俺とシロさんとモモで洗いっこ。
しかも、スポンジ不可。
いや、もうね、無理だって。
そんなの絶対無理だって。
元々、おもちに弱い俺がおもち美女二人に手でボディソープ押し付けられるとかぜってー無理だから。
もう洗いっこが始まって一分もした頃にはムスコもガチガチで、二人の事を襲いたくて仕方がなくなった。
でも、モモはともかくシロさんは俺の先輩な訳でそんな事する訳にはいかない。
だから逃げようとしたんだが…時既に時間切れ。
二人によって全身ボディソープだらけになった俺はツルンと滑って…二人はそんな俺を支えようとして失敗。
そのまま転倒した俺が気づいた時には…その、なんつーか、三角形になっていた。
俺を下にしてモモが顔面騎乗、シロが騎乗位で素股しているような状況。
それから何とか抜けだそうにも二人はなかなか、どいてくれなくて…。
そうしてる間に、玄さんがお背中お流ししまーすって入って来た。
で、まぁ、そりゃ…逃げるよな。
だって、完全にアレ今にも3P始める態勢だったし。
実際、俺のチンポもガチガチだったんだから言い訳しようもない。
…でも、久しぶりに玄さんに会えたのに…こんな誤解されてしまって…ホントどうしよう…。
今日の国会で一夫多妻制が導入された。
なんでも少子化に歯止めをかける為の苦肉の策らしい。
正直、そんなもので少子化が止まるほど簡単な問題ではないと思うんだけどなぁ。
まぁ、制度として確立しても、多くの男がその恩恵に預かる事はないだろう。
そんな風にハーレム作れるほど立派な男なんてまずいないからなぁ。
なーんて事を大学の食堂で話してたら、竜華さんに意外そうな顔をされた。
…俺ってそんな変な事言ったかなぁ…。
それとも男にとって都合の良い法案の設立に喜ぶと思われていたとか?
一応、アナウンサー希望な訳だし、俺としてはこれから日本がどう変わっていくかの方が関心が高かったんだけど…。
まぁ、普段が竜華さんのおもちを視線で追っかけてる訳だし、そんなふうに思われても仕方ないか。
それよりもこれからはちゃんとそういうのを自制出来るような立派な男になろう…。
ごめん、話をふくらませられなかった…!!
竜華さんがついにプロ入りを果たした。
インカレでの成績不振に悩んだり、実力の壁に悩んでいたところを見ていたから凄い感慨深い。
本人は二軍チームからの開始やけどね、と笑ってたけど、それでも十分だろう。
何より、半荘くらいならゾーンを維持出来るようになり、<<怜ちゃん>>とやらを使いこなせるようになった今の彼女ならプロでも活躍出来るはず。
きっとそう遠くない内に一軍として、テレビの前で視聴者を沸かせる麻雀プロになれる。
そんな事を言ったら、じゃあ、須賀くんも頑張ってアナウンサーになって一緒に解説実況しなきゃね、って言われてしまった。
そうだよなぁ…俺がちゃんとアナウンサーになれたら竜華さんとも組める時が来るんだ。
もう少ししたら竜華さんが卒業して接点がなくなる…なんて寂しがってる場合じゃない。
ただの夢や目標ってだけじゃなく、こうして待ってくれてる人が出来たんだから…今まで以上に頑張らないとな。
それはさておき、プリ入り記念に竜華さんが以前からほしがってたチョーカーを贈ってみた。
海外の有名ブランドで結構、質の良い奴。
彼女以外の子にこんなもん贈るもんとちゃうでー?と言いながらも竜華さんはニコニコしながらつけてくれた。
一緒にアクセショップ行った時にもかなり見てたから、喜んでくれていたんだろう。
でも、これでうちも須賀くんの女になったんやなぁ、って言うのはちょっと反則じゃないかなぁ。
勿論、竜華さんが俺にそういう感情抱いてないのは分かってるけどさ。
でも、彼女いるのについつい目でおもちを追っちゃうくらい竜華さんは魅力的なんだ。
それなのにそんな嬉しそうに言われたらそりゃドキッくらいはしてしまう。
悔しいからその後は飲み屋に連れて行って、本人が酔いつぶれるまで騒いでやった。
さらに部屋へと運んで、朝用に味噌汁と魚を焼いて、ご飯も起きる頃にセットしておく。
くくく…世話好きな竜華さんが朝起きた時に悔しがる姿が目に浮かぶぜ。
京太郎「(友達とははたして何だったのか)」
京太郎「(いや…そもそも友人というよりは仕事上の先輩って言う方が近いんだろうけれども)」
京太郎「(しかし、そんな相手と俺はどうして温泉に行ってるの?)」
京太郎「(なおかつ、一緒の部屋で寝て、家族風呂で混浴してる訳!?)」
京太郎「(あまつさえ松実さんが背中を流しに来たとかいったい、どういう事なんだ…)」
京太郎「(もしかして俺ってモテてる…?)」
京太郎「(いや、それこそまさかだろ)」
京太郎「(幾らアナになったからって行ってもこれまでの俺の人生を振り返ったらそんな事あり得ないのわかってるし)」
京太郎「(其の次が一夫多妻の話だったから、ちょっと変なふうに意識しちゃっただけだな、うん)」
京太郎「(で…ここは清水谷さんがプロ入り果たした時の奴か)」
京太郎「(もうこの時点で俺はアナになるのを決めてたんだよな)」
京太郎「(で、実際にそれを清水谷さんに話して…約束も叶えた)」
京太郎「(正直、立派すぎて俺じゃないみたいだ)」
京太郎「(でも、ここでもおもちを追ってしまうって書いてあるし…)」
京太郎「(こういう部分は大学生まで変わらなかったんだろうなぁ、俺…)」
京太郎「(まぁ、何はともあれ、清水谷さんとの記述が見つけられて本当に良かった)」
京太郎「(折角、次もお見舞いに来てくれるって行ってたのに思い出せないとか申し訳無さすぎるからなぁ)」
―― 翌日
シロ「…京太郎」ガチャ
京太郎「あれ?小瀬川さん?」
シロ「…ん」ダルダル
京太郎「どうしたんです?なんか凄い顔が面倒そうですけど…」
シロ「疲れた。癒して」
京太郎「えっ」
シロ「疲れたから癒して」
京太郎「は、はぁ…それは構いませんけど…」
シロ「じゃあ、ベッド端に寄って」
京太郎「え…あ、はい」イソイソ
シロ「…ありがとう」ギシ
京太郎「あ、じゃあ、俺、降りますね」
シロ「…降りなくて良い」ギュッ
京太郎「え?」
シロ「…京太郎は抱きまくら」
京太郎「いや、あの…抱きまくらって…」
シロ「…説明するのダルい」
京太郎「そこ投げないでくださいよ!?」
シロ「…京太郎を抱いてると凄い安心する」
シロ「ダルイのも消えてく。凄い」
シロ「だから、抱きまくら。オッケー?」
京太郎「あんまりオッケーじゃないんですけど…」
シロ「でも、私、こうじゃないと癒やされない」
シロ「…一人でいても寂しいだけ」
京太郎「小瀬川さん…」
シロ「だから、少しの間だけ私の抱きまくらになって」
シロ「そしたらまた明日から頑張れるから」
京太郎「……分かりました」ナデナデ
シロ「…ん♪」
シロ「自分からナデナデもつけてくれるなんて凄い高性能な抱きまくら」
シロ「これは絶対に癖になる」
シロ「だから、京太郎は責任をとるべき」
京太郎「いや、俺、恋人いるんですけど…」
シロ「…仕方ない。ダルイけど毎日、添い寝で我慢する」
京太郎「添い寝以上の事を言うつもりだったんですか…」
シロ「理想は結婚して私の主夫になる事かな」
京太郎「いや、あの俺、恋人…」
シロ「大丈夫。今の日本は一夫多妻だから」
シロ「それに京太郎には一杯、恥ずかしいところ見られてるし…責任取ってもらわなきゃいけない」
京太郎「お、温泉の時の奴ですか?」
シロ「…あ、読んだんだ」
京太郎「えぇ。その…も、申し訳なかったです」
シロ「別に良い。アクシデントだったのは分かってるから」
シロ「何より一緒にお風呂入りたいって言ったの私だし」
シロ「京太郎が気にする必要はない」
京太郎「そ、そうですか…」
シロ「でも、責任はとってほしい」
京太郎「そこに話が戻るのか…!?」
シロ「…それにまぁ、温泉の時だけじゃないし」
京太郎「え?」
シロ「…京太郎のラキスケ前科がそれだけだと思わない方が良い」
京太郎「お、俺まだ何かやらかしてるんですか…!?」
シロ「…………」プイィ
京太郎「ちょ、こっち見て下さいよ…!?」
シロ「そんなに聞きたいならこの婚姻届に判を…」
京太郎「押しません」
シロ「…ダルイ」スリスリ
京太郎「まったく…で、何があったんです?」
シロ「え?」
京太郎「今日は何時もより甘えん坊ですし、何かあったんでしょう?」
京太郎「記憶ないけど…それでも日記読んでるお陰でなんとなく分かりますよ」
京太郎「小瀬川さんが何時も自分なりに頑張っている事も先輩として俺に目をかけてくれている事も」
京太郎「それでもこうやって抱きまくらにするくらいダルイ何かがあったんでしょう?」
京太郎「俺でよければ話してください」
京太郎「例え、記憶がなくても話し相手くらいにはなれますから」
シロ「……」
シロ「…京太郎は不思議」
京太郎「え?」
シロ「どんな京太郎でも…他人をよく見て…そして優しくしてくれる」
シロ「そんな京太郎だから…私は…」
シロ「…頑張ろうって…そう思ったのに…」
京太郎「…小瀬川さん?」
シロ「…ごめん。仕事取られちゃった」
シロ「京太郎の仕事…基本、爽やかな路線だったから…」
シロ「性別も違うし…私じゃ声も雰囲気も合わないってそう言われて……降ろされちゃった…」
シロ「私が京太郎の帰ってくる場所護らなきゃいけなかったのに…護れなくて…」
シロ「…京太郎…ごめん。本当に…ごめん…」
京太郎「……」
京太郎「大丈夫ですよ」
シロ「でも…」
京太郎「そもそも小瀬川さんが俺の仕事を背負う必要なんて何処にもないんですから」
京太郎「俺としては小瀬川さんが無理しなくて寧ろ安心しているくらいです」
シロ「京太郎…」
京太郎「…それにですね」
京太郎「仕事なんて今はどれだけ取られても良いんですよ」
京太郎「こうして休んで英気を養った分、後で全部取り返しにいきますから」
京太郎「だから、そんな風に謝らないでください」
京太郎「小瀬川さんが本来の許容量以上に頑張ってくれてるのはちゃんと伝わってきてますしね」ナデナデ
シロ「…ホント?」
京太郎「えぇ。俺のために頑張ってくれて本当にありがとうございます」
シロ「…ご褒美くれる?」
京太郎「む、難しい事じゃなければ」
シロ「…じゃあ、このまま添い寝して欲しい」
シロ「最近…眠れてなかったから」
シロ「二時間だけ…側で寝させて」
京太郎「…えぇ。大丈夫ですよ」
シロ「……ありがとう」ギュゥ
加治木ゆみさんと言えば、高校の頃、深く沈んでいたモモを見出した恩人だ。
俺にとってもモモにとっても尊敬する人であり、感謝が絶えない立派な女性である。
そんな加治木さんがこの度、オートバイの国際大会に優勝し、凱旋帰国する事になった。
…いや、元々、並の男よりも格好良い女性だったとは言え、まさかレーサーになるだなんて。
てっきり麻雀関係に進むかと思ってたからすげぇ驚いたのを覚えてる。
でも、実際、遠く離れた異国の地で機械の塊を手足のように自由に操る彼女は格好良かった。
モモなんてわざわざお手製の大弾幕を部屋の中に飾ってキャーキャー応援してたくらいである。
そんなモモも可愛かった…ってまぁそれはさておき。
今日はそんな加治木さんへの取材の仕事があった。
久しぶりに会う恋人の恩人は取材に慣れているのか、さらりと仕事を終わらせてくれた。
で、問題はここから。
未だに加治木さんの事を慕っているモモは俺との事をあれこれ報告してたらしいんだよなぁ…。
取材が終わった途端、モモが普段、どんな風に生活しているのか、ちゃんと食べていられるのか、根掘り葉掘り聞かれた。
結婚の意思の有無まで確認された時には流石にモモのお母さんかと突っ込みたくなったぜ…。
まぁ、何とかおメガネに敵ったみたいで、最後にはモモの事をお願いされた。
こうして加治木さんにもお願いされたんだから…モモは本当に大事にしてやらないとな…。
今日はなんと!!なんと!!!なんと!!!!
あの瑞原プロに指導をして貰える事になりました!!!!
ワーイ!しかも、個人授業だぞー!
個室で二人っきりでねっちりみっちりやれるそうだぞー!!
いや、うん。まぁ、その、ね。
あの日、ラーメン屋で出会わなかったらきっとそう心から喜べたんだろうなぁ。
でも、俺はもうはやりんに対しての憧れとか羨望とか完全に消えちゃった訳で。
寧ろ、結婚について悩んでたりしてる姿も見ちゃった訳で。
テレビの中で踊る華やかなアイドルと言うよりも、近所のお姉さんと言う方が意識的に近い気がする。
まぁ、それはそれとして、流石は現役の牌のお姉さん。
指導するそのやり方はすげぇ分かりやすいものだった。
俺はまだ初心者に毛が生えたレベルだったけれど、メキメキと強くなっていったのがわかるくらいである。
まぁ、エロも多分に関係してるんだけどな!!!
だって、はやりさん上手くできたら俺の頭抱きしめてナデナデするし…!!
その上、ご褒美までくれるって言ったらそりゃ全力で取り組むしかないだろ!!!
多分、俺の人生の中であの時間は一番、集中した時間だと思う。
ちなみにご褒美は屋台のラーメンでした。
「本当のご褒美は京太郎君が高校卒業してからね☆」とか言われたけど、期待せずに待っておこう。
これ竜華がインハイで悩んでたのってどう考えてもアナ志望なのに自分よりも遥かに強い京ちゃんが身近に居たからだよなぁ…
今日は宮守の豊音さんとデートだった。
まぁ、それそのものは嬉しいんだけど…経緯としてはちょっと情けないというか。
海で豊音さんがナンパされてるの助けようとして殴られちゃったお詫びだからなぁ…。
しかも、その後、豊音さんにお姫様抱っこで病院まで連れて行かれてしまったし…。
あの時ほどいっそ殺してくれと思った事はなかったぜ…。
まぁ、それはさておき。
デートそのものはとても楽しい内容だった。
テレビで紹介されるような名所がメインだったけど、それでも豊音さんはキラキラと瞳を輝かせて喜んでいたし。
ここ数日で分かった事だけど、豊音さんって結構、ミーハーなんだよなぁ。
だけど、それ以上に純真だから見ていて飽きない。
特に昼から行った遊園地でのはしゃぎっぷりは凄かった。
まるで子どものようにあっちこっちに早く行こう早く行こうって俺の腕を引っ張っていたし。
はしゃぎすぎて途中から履いてた靴のヒールが折れたくらいだ。
あ、勿論、この前の仕返しついでに俺から豊音さんにお姫様抱っこしてあげましたとも。
顔を真っ赤にしながら俺に抱きついてくる豊音さんマジ天使。
でも、天使過ぎて食べ物もお互い別々のを買って、それぞれ食べ比べまでしてたんだよなぁ。
…俺は嬉しいんだけど、つい数日前に出会った男を相手に心を許しすぎじゃないだろうか。
ちょっと豊音さんの将来が心配になった。
京太郎「(今回は…まぁ、前回に比べればまだ普通だよな)」
京太郎「(敦賀の加治木さんがレーサーになってたのは驚いたけど…不思議と似合う気がするし)」
京太郎「(国際大会で優勝って言うのもあれだけ格好良い人ならありえる気がする)」
京太郎「(瑞原プロとの麻雀の特訓も、すでに面識があるんだから決しておかしい事じゃない)」
京太郎「(正直、羨ましいと懷うけど!!抱きしめナデナデなんて血反吐吐きそうなくらい嫉妬するけど!!)」
京太郎「(…しかし、本当のご褒美って一体、なんだったんだろうか?)」
京太郎「(もしかして小瀬川さんみたく婚姻届とか?)」
京太郎「(はは。幾ら瑞原プロが土俵際ギリギリな年頃でもそれはないか)」
京太郎「(それに高校生相手にそんなもの持ち出すほど瑞原プロも焦ってないだろうしな)」
京太郎「(…焦ってないよな?…うん、そうであって欲しい)」
京太郎「(で…一番の謎は…だ)」
京太郎「(豊音さんって…誰?)」
京太郎「(なんか俺の事をお姫様抱っこしたとかそんな事書いてあるんだけど…)」
京太郎「(龍門渕の井上さんみたいな身長高い女の人?)」
京太郎「(でも、可愛いとか天使とかって書いてるからなぁ…)」
京太郎「(一体、どういう人なんだろう…?)」
京太郎「(ちょっと気になるなぁ…)」
京太郎「(うーん…気になるなぁ…)」
京太郎「(この豊音って人、ホント、誰なんだろ…)」
京太郎「(携帯で写メとかチェックしても名前なんて出てないし、分からないんだよなぁ…)」
京太郎「(まぁ、誰か来たら聞けば良っか)」
コンコン
京太郎「(お、早速誰か来てくれたか)」
京太郎「はーい。どうぞ」
豊音「お邪魔しまーす」ガチャ
京太郎「!?!?!?!」ビックリ
京太郎「(で、でけぇ…!?なんだこの人…!?)」
京太郎「(女の人だって言うのに俺よりも遥かにでけぇ…!!)」
京太郎「(俺がベッドに腰掛けているからいくらか主観補正も入っているんだろうけど…)」
京太郎「(それでも2m近くは確実にあるぞ…!!)」
豊音「…………」グスッ
京太郎「ハッ」
京太郎「(し、しまった…俺はなんて事を…!!)」
京太郎「(これだけ大きい人なんだ…こうやって驚かれるのはあまり好きじゃないだろうに…)」
京太郎「(ましてや女の子なんだぞ…!?そういうのがトラウマでもおかしくはない…!)」
京太郎「(ここは何とか…何とかフォローしないと…!!)」
京太郎「あ、あの…!」
豊音「良かったよー」ポロポロ
京太郎「え?」
豊音「京太郎君が事故にあったって聞いて…私いてもたってもいられなくて…」
豊音「前に来た時、包帯グルグルで…機械も一杯繋がれてたから…」
豊音「も、もう…京太郎君とは会えないのかもって…そ、そう思ってたから…」ギュッ
豊音「良かったぁ…本当に良かったよー…」ポロポロ
京太郎「(…あぁ、そうか)」
京太郎「(この人は俺のために泣いてくれていたのか)」
京太郎「(心配して不安で…そしてそれが今、ようやく解決したから)」
京太郎「(気持ちが落ち着いて…今までの揺り戻しが来てるんだ)」
京太郎「…心配掛けてごめんなさい」スクッ
京太郎「そして…ありがとうございます」スッ
豊音「…あ」
京太郎「使ってください」
京太郎「あんまり女の子が泣いているの見るの好きじゃないんで」
豊音「~~~っ!京太郎君っ」ダキッ
京太郎「のわああ!?」
豊音「ぐす…京太郎君…京太郎君…」ギュゥ
京太郎「…少しは落ち着きました?」
豊音「うん…ありがとう」
豊音「後…ごめんね。服汚しちゃって…」
京太郎「この程度、問題ないですよ」
京太郎「それにまぁ、それだけ貴女が俺の事を心配してくれてた証なんで」
京太郎「寧ろ、嬉しいですよ」
豊音「…えへへ、京太郎君はやっぱり優しいよー」
京太郎「そうですかね?」
豊音「うん。そうだよー」
豊音「あ、でも、なんで敬語使うの?」
豊音「も、もしかして私の事嫌いになっちゃったとか!?」アワワ
京太郎「あ、いや、その…実は記憶がないんです」
豊音「…え?」
京太郎「インターハイ直後くらいからつい一週間前までの記憶が飛んじゃったみたいで」
京太郎「だから…その、貴女が誰なのか俺には分からないんです」
豊音「あ、そういえばなんかそんな事メールに書いてあったような気がするよー…」
豊音「でも、京太郎君の意識が戻ったって事しか見てなかった…ごめんね」シュン
京太郎「あ、いえ、良いんですよ。それだけ俺の快復を喜んでくれてたって事でしょうし」
豊音「うん。当然だよー」
豊音「だって、私、京太郎君のファンだもん」
京太郎「俺の…ファン?」
豊音「京太郎くんの出てる番組は全部チェックして録画もしてるよー」
京太郎「ま、マジですか。なんだか照れますね」
京太郎「でも、俺のファンって人に会った事ないんで嬉しいっす」
豊音「えへへ。私も久しぶりに京太郎くんとあえて嬉しいよー」
豊音「あ、自己紹介、まだだったね」
豊音「私、姉帯豊音」
豊音「京太郎君からしたら二歳年上で、出会ったのは私が三年のインターハイの時」
豊音「原村さんの色紙を持ってきてくれたのが始まりだよー」
京太郎「…豊音さん?」
豊音「うん」
京太郎「俺の事、お姫様抱っこした豊音さん?」
豊音「あ、あの時はごめんね。京太郎君を助けなきゃって頭の中いっぱいで…」
京太郎「一緒に遊園地行った豊音さん?」
豊音「うん。あの時はホント、楽しかったよー」
京太郎「俺と間接キスした豊音さん?」
豊音「そ、それは…あ、あの…あのあのえっと…」カァァァ
京太郎「貴女が天使な豊音さんなんですか!?」
豊音「て、天使って…そ、そんな事ないよー」テレテレ
豊音「私、図体ばっかり大きくて可愛げなんてまったくないし…」
京太郎「可愛い」
豊音「ふぇぇ」カァァ
京太郎「あ、いや、すみません。つい」
豊音「う、うぅ…き、京太郎君が私の事辱めてくるよー…羞恥プレイだよー…」モジモジ
京太郎「恥ずかしがる豊音さんが可愛かったものですから」
豊音「か、かわ…っ」
豊音「も、もぉ…年上をあんまりからかうもんじゃないよー?」
京太郎「この年になったら二歳差なんてそれほど大したもんじゃないと思います」
豊音「うぅ…そ、そんな屁理屈言う京太郎君にはビデオ持ってきてあげないよー」プイッ
京太郎「え?」
豊音「私、京太郎君の出てる番組、全部録画して持ってるけど…そんな意地悪するなら次のお見舞いの時に持ってきてあげない」
京太郎「マジですか」
豊音「マジだもん。大マジだもん」スネー
京太郎「ごめんなさい、豊音さん」
豊音「…反省してる?」
京太郎「してます」
豊音「もうしない?」
京太郎「多分します」
豊音「えー…」
京太郎「だって…ねぇ?」
豊音「うー……じゃあ、今回だけ」
豊音「今回だけ許してあげるから次はダメだよー?」
京太郎「さっすが、豊音さんは話がわかるぅ」
豊音「えへへ」
豊音「あ、でも、次に来るのはもうちょっと先になるかも」
豊音「私、実家が岩手の農家だからあんまり家を離れられなくて」
豊音「だから、お見舞いに来るのも遅れちゃって…ごめんね」
京太郎「いえ、気にしてませんよ。こうして来てくれただけで十分です」
豊音「…うん。ありがとう」
豊音「また落ち着いたら絶対に来るから…待っててね」
京太郎「えぇ。勿論です」
アラサーになって落ち着いた豊音なんて豊音じゃない(断言)
今日は大学で飲み会があった。
まぁ、それ自体は別に毎週とは言わずとも毎月一回はあるもんだから良い。
…ただ、今日の竜華さんはやたらと俺に絡んできた。
それも絡み酒って訳じゃなく凄い物理的に。
元々、竜華さんあまりお酒が強い方じゃないから、絡んでくる事は比較的多いんだけどさ。
でも、今日のは俺に腕とか足とか絡ませて来て、あの大きなおもちまでずっしりとですね?
その上、耳元で囁かれるようにいろいろ言われたらそりゃあ辛抱堪らんですよ。
まぁ、話を聞いている限り、最近、中々、怜さんと会えなくて寂しいっていうのが原因らしいんだけど。
まったく…どれだけ怜さんの事大好きなんだよ。
つーか、そんな理由で男に絡んでくるんじゃない。
何時か襲われるぞ、まったく…。
まぁ、恋人がいる俺以外の相手にそうやって絡んでなかったし、一応、相手は選んでるんだろうけどさ。
ただ、そうやって色々と絡まれた所為か、竜華さんの匂いが完全に身体についちゃったみたいで。
俺の帰りを待っててくれたモモがすぐさま般若の顔になった。
しかも、俺の知らない間に首元にキスされてたみたいで、さらに修羅場に…。
その夜は何とか搾り取られまくる事で許してもらえたけど…覚えてろよ、竜華さん。
この借りは何時か絶対返してやるからな…!!
モモは嫉妬したりするけどそれ以上に不安になるので別れ話ではなくすぐにセクロスに移行するイメージ(偏見)
今日は番組の特別企画って事でプロと対局する事になった。
正直、アナになってから麻雀なんてまったくやってなかったからルールとか覚えてるか不安だったんだけど。
けれど、数年真剣に打ち込んでいた所為か、頭も身体もちゃんと覚えてて、しっかり打つ事が出来た。
……で、終われば、まだマシだったんだけどなぁ。
久しぶりだった所為で加減とかまったく分からなくて…後、ついでに久しぶりにやる麻雀楽しくて…ついついマジで打ってしまった。
多分、俺が一番、良く知ってるのがてるてるで、知らずしらずにそっちに基準が引っ張られてしまったんだろうなぁ。
結果としてはプロが一度も和了れないまま、俺が一位になった。
一応、麻雀だからこういう事もありますよね、とフォローしてたけど…対戦相手のプロはガチで凹んでた。
と言うか、対局後のコメントで化物扱いされてしまった。
彼曰く、男子トッププロでもマトモにやりあえるか分からないレベルらしい。
俺なら日本を引っ張って世界一を狙えるとそう断言までされてしまった。
でも、俺はかなりブランクあるし、昔よりも大分、弱くなってるんだけどなぁ…。
少なくとも今、あのインターハイ決勝で渡り合ったような化物たちとやりあえる自信はない。
幾らなんでもリップサービスしすぎですよ、と流してたけれど…放送後、アナとの二足草鞋で良いからプロにならないかってオファーが幾つかきてた。
…どうしよう、コレ。
最終更新:2026年01月21日 22:39