巴「後悔、してない?」
京太郎「…………」
巴「京太郎くん」
京太郎「そんな余地ありませんでしたよ。俺たちは許婚ですから」
巴「そっか」
京太郎「そうです」
巴「京太郎くんさ、変わらないよね。小さい頃から」
京太郎「変わらずにいたかったですよ。本当に」
巴「変わってないよ。今だって子どもみたいに拗ねてる」
京太郎「なにが言いたいんですか」
巴「分からない」
京太郎「え?」
巴「どんな風に言葉を選んだら京太郎くんを傷付けずに済むか、分からないの」
京太郎「いいですよ、別に。もう子どもじゃないんだから」
巴「…………」
京太郎「…………」
巴「姫さまのこと。小蒔ちゃんのこと、今でも好きなんでしょ」
京太郎「そう思いますか」
巴「ごめんね。本当にごめん」
京太郎「須賀の家と六女仙との婚約は掟ですから、巴さんが謝ることじゃありませんよ」
巴「でも私と小蒔ちゃんが逆の立場だったら。もしもそうなら京太郎くんはそんな思いせずに済んだよ」
京太郎「ねえ、やめましょう。これから夫婦になるんですから、不要なわだかまりを作りたくない」
巴「わかってる。わかってるけど」
京太郎「むしろ、こちらこそ申し訳ないです。俺の身の程知らずが原因で巴さんに気を使わせてしまって」
巴「身の程知らずだなんて、そんなこと」
京太郎「いいんです。分かってますから」
巴「…………」
京太郎「…………」
巴「ねえ、京太郎くん」
京太郎「はい」
巴「私ね、京太郎くんのことがずっと好きだったよ」
京太郎「え」
巴「まだ小さい頃からずっと、あなたが小蒔ちゃんを思うのに負けないくらい。ずっと」
京太郎「巴さん」
巴「だからね、本当にごめんなさい。今すごく幸せなの、私」
京太郎「俺、色々無神経なこと言って」
巴「うん、正直ちょっと傷付いた。やっぱり勝てないな、小蒔ちゃんには」
京太郎「…………」
巴「京太郎くんさ、私のこと好き?」
京太郎「…………」
巴「そっか」
京太郎「これから、好きになります」
巴「そう言ってもらえるとうれしいな」
京太郎「ごめんなさい」
巴「時間はいくらでもあるもん。私たち、これから結婚するんだから」
京太郎「それでも、ごめん」
巴「いいよ、許してあげる」
京太郎「…………」
巴「だからさ、もう泣かないでよ。旦那さまの目元が腫れてたら格好付かないぞ」
京太郎「…………」
巴「本当、ちっちゃい子みたい」
最終更新:2013年09月07日 22:31