京太郎「ごめんな、待たせちゃったか」
穏乃「今来たところだから大丈夫。私のほうこそ急に呼び出してごめん」
京太郎「…………」
穏乃「京太郎?」
京太郎「すごく冷たいぜ、穏乃の手のひら」
穏乃「それは」
京太郎「いつでも呼び出してくれていいんだよ。俺は穏乃の彼氏なんだから」
穏乃「…………」
京太郎「でも今度から山の高台で待ち合わせるのはナシだ。風邪引くぜ」
穏乃「そんなの、平気だもん」
京太郎「また体調崩して先月の花火大会みたいになっても困るだろ」
穏乃「う」
京太郎「次は俺のアパートにでも来ればいいよ。いつでも歓迎するからさ」
穏乃「…………」
京太郎「どうした?」
穏乃「京太郎はさ。私のことを自分ちに連れ込んで、その」
京太郎「…………」
穏乃「恋人同士がすること、したいと思ってるのかな」
京太郎「穏乃」
穏乃「な、なんでもない。忘れて」
京太郎「…………」
穏乃「…………」
京太郎「思ってるよ」
穏乃「…………」
京太郎「俺は穏乃の彼氏だから、ちゃんとしたいと思ってる」
穏乃「そう、なんだ」
京太郎「そうだよ」
穏乃「私たち、恋人同士だもんね。それが普通なんだよね、きっと」
京太郎「…………」
穏乃「京太郎?」
京太郎「なんでもないよ。穏乃があんまり可愛いから見とれてただけだ」
穏乃「そ、そっか」
京太郎「おう」
穏乃「ちょっと、急に抱っこするのは反則だよ。京太郎のばか」
京太郎「いやか」
穏乃「いじわる。いやなわけないって分かってるくせに」
京太郎「彼氏だからな」
穏乃「もう」
京太郎「…………」
穏乃「京太郎」
京太郎「どうした」
穏乃「虫さされ。首のとこ」
京太郎「…………」
穏乃「このへんは藪が多いから食べられちゃったんだよね、きっと」
京太郎「穏乃」
穏乃「九月も終わるのに災難だったね。なんなら私が毒を吸い出して」
京太郎「話したいことがあるんだ」
穏乃「聞きたくない」
京太郎「…………」
穏乃「今のままでいいから」
京太郎「でも」
穏乃「京太郎にとってはそうじゃなくても、私には京太郎しかいないから」
京太郎「…………」
穏乃「連れてって」
京太郎「え?」
穏乃「京太郎のアパート。連れてってよ」
最終更新:2013年10月12日 20:28