中学に入るまで、私に友達はいなかった。
その頃の私は、
お姉ちゃん達と一緒に日々を過ごしていた。
だから、無理に友達を作る必要は無かった。
そもそも、友達なんていらなかった。
お姉ちゃん達と本さえあれば、生きていられたんだ。
けれど…そんな日々は、ある日突然失われてしまった。
理由はよく覚えていない。
――もしかしたら、2回戦の後に脳裏をよぎったあの光景なのかもしれない。
お姉ちゃんが私を許さないのは、そのせいなのかもしれない。
…それでも私は、あの光景を思い返そうとは少しも考えなかった。
そしたらきっと、私がIHに来た意味が無くなってしまいそうな気がしたから。
皆のことを、裏切ってしまうような気がしたから。
部長、染谷先輩、優希ちゃん、それに和ちゃんのことを。
…あれ?
誰か一人、忘れているような気がするよ。
そういえば、私は中学からの三年間…どんな風に日々を過ごしていたんだっけ。
確か授業は普通に受けていた。
休み時間中は、ほとんど誰とも話さず本を読んでばかり。
あの中学に給食は無かったから…昼休みはいつも、レディースランチを頼んでた。
私は、それを食べなかったのだけど。
…じゃあ、そのレディースランチは誰が食べたんだろう?
私には、何も思い出せない。
『日替わりのレディースランチがめちゃくちゃうまそうでさ…』
そんなことを言ってたのは、一体どこの、誰であったか。
『咲は何やらせてもダメだからなァ』
そんな風に言ってきても許せた相手は、誰だったのか。
私をここに導いてくれた、独りぼっちじゃなくしてくれた…あの人は一体誰だったっけ。
やっぱり何にも思い出せない。
私を麻雀部に連れて行ってくれた人は、もう…どこにもいない。
誰一人として、あの人の事は覚えていない。
かつて私の傍にいてくれた、優しい男の人のことを。
悲しい気持ちのはずなのに、私はもう…涙一つ流せない。
最終更新:2013年10月14日 14:37