京太郎「あの?」
由子「ん? どうしたん?」
昼休み。青く茂った葉が紅葉し始めた秋の空の下。
長椅子に座る俺と由子先輩。
連れ立って中庭を訪れた俺たち、早々に弁当を片付け今は食後の一休みといった具合である。
のだが。
由子「~♪」
隣り合って座っている。っというには些か近過ぎる距離。
詳しく言えば、俺の側面左側。分子一つ分の空間も作らず密着した状態。
俺の左肩を背凭れに、自身の膝に両手を重ねた由子先輩はただ黙って、けれどこの上なく上機嫌に俺見上げてくる。
京太郎「っ……///」
なんともむず痒い空気。自然と頬に朱が差し込む。
羞恥を払拭するように、視線を彷徨わせながらパックジュースを啜る。
京太郎「あの」
由子「ん~?」
口火を切ったのは俺の方から。
京太郎「由子先輩は、なんでそんなに俺に構ってくれるんですか?」
以前から疑問に思っていたこと。名門姫松のレギュラーと平部員で万年雑用係の俺。
同部内ですら接点か持てなさそうな俺と先輩。
由子「それは私が、京太郎のことが好きだからよー」
京太郎「は?」
素で、素っ頓狂な声を上げてしまった。
普段通りの由子先輩の間延びした声が、世間話でもする気軽さで自然に告げててきた為、一瞬思考が追いつかなかった。
京太郎「それは、どういう……」
由子「どういう意味かは、自分で考えてほしいのよー……」
初めて、由子先輩の視線が外れる。その顔は反対側へと移動し、こちらからは表情が伺えない。
が、僅かに、頬が赤らんでいるようにも見える。
背凭れに乗せていた左腕を由子先輩の薄い肩に回す。
由子「ぁ……」
吐息のように、小さく零れた感嘆符。
身を捻り上体を左に向ける。右手を先輩の頬に添え、やさしくこちらを向けさせる。
再び視線が出会う。いつもどこか余裕のある柔和な笑みではなく、はっきりと見て取れるほどの紅潮。
まぁ俺も似たようなものだろう。
数瞬の静寂。
由子先輩の瞼が静かに閉じられた。
カン!
最終更新:2013年11月30日 17:14