プールではしゃぐ咲に思わず見とれた。
水に濡れた髪で笑う姿がいつもと違って妙な色気がある。
「…咲の奴、やっぱり機嫌いいな」
俺は関係ない独り言を漏らして、錯覚を打ち消した。
「どーん!」
「わぁっ」
ビーチボールを受け止め損ね咲が楽しそうにプールに沈む。
錯覚だろ?
俺は和や風越のキャプテンみたいなおっぱい美少女が好――…
「隙あり!」
「いってぇ!?」
突然タコスからビーチボールを当てられ俺はプールに沈んだ。
「な、何すんだっ」
「気を抜くな、小僧。まぁ、私の水着姿に見とれる気持ちもわかるがな」
「いや、全然」
「何をー」
いつもみたいにタコスをあしらっている内に、内心の動揺が収まった。
「あはは、京ちゃん、大丈夫?」
「ん、あぁ。サン…きゅ」
小走りに近付き、手を差し出す咲に再び見とれる。
何でだ?相手はあの咲だぞ?何考えてんだ?俺!
「ん?あれ?京ちゃん、どうしたの?大丈」
「隙あり」
「きゃあっ」
心配そうに覗き込む咲の手を俺は乱暴に引いて、プールに沈ませた。
「ちょっ、ちょっと。京ちゃん!酷いよ!心配したのにっ」
「あはは、わりーわりー」
「もうっ。それならどーして目を逸らすの?」
仕方ないだろ。まともにお前の顔が見れないんだから。
可愛らしく頬を膨らませて抗議する咲を無視して、俺は和にボールを投げた。
おしまい
最終更新:2012年06月23日 11:02