「……夢?」
咲は、周囲に目を向けた。
眠っていながらも体を支えようと咄嗟にしがみついたのだろう、シーツや掛け布団がずり落ちていた。
「なんだ……夢だったんだ……」
咲は、自分の寝ぼけ加減に苦笑し、それから、なんとなく、指先を唇に当てた。
京ちゃんとキスをする。
随分とリアルな夢だった。
まだ感触が残っているような気がする。
「やだな……なんで、あんな夢見たんだろ」
京太郎とは昔からの付き合いだし、毎日顔を合わせてはいるのだが、少なくとも恋愛の対象として意識した事はない。
ない筈だが、夢に出て来るというのは、意識のどこかに、そんな願望があるからだろうか。
「京ちゃん……」
咲は、ひとり赤面しながら、もう一度呟いた。
最終更新:2012年06月23日 11:05