穏乃「京太郎! 明日は何処行こう!?」めらめら
京太郎「うーん……一度、穏乃の麻雀を見てみたい気がするよ」
穏乃「げっ……その、ま、まあ、大会まで楽しみにしててよ!」
京太郎「何だその顔? インハイに行くんだ~って豪語しといて、実力のほうはもしかして……」
穏乃「違う違う! 色々あるんだよー……乙女にはね」きらっ
京太郎「はははは、乙女、ね」
穏乃「馬鹿にするなー!」うがー
穏乃ちゃんの家は、和菓子屋を営んでいる。
私はあまり行かなかったんだけど、最近は行く理由が出来た。
玄「……」じぃー
窓から中を覗くと穏乃ちゃんが男の子と話をしていた。
須賀京太郎、くん。
穏乃ちゃんの友達。
私とはあまり親しくない。
交流する機会も無いし。
仲睦まじす話す穏乃ちゃんと須賀くんを見て、少し羨ましかったりする。
どうにかして、彼と仲良くなれないかな。
玄「こ、こんにちは~」すー
穏乃「!!!」
京太郎(うお……すげー可愛い人だな……)
京太郎(……あれ、穏乃?)
穏乃「……玄さん」
玄「穏乃ちゃん、こんにちは」
穏乃「何か用事が?」
玄「特に無いんだけど……ふらっと立ち寄っちゃったんだ」
穏乃「そうですか……」
穏乃「京太郎! 私は玄さんと話して来るから……ちょっと待ってて!」ぴゅー
がっ
玄「わ、わー!」ぴゅー
京太郎「こ、行動がはえーよ……」はは
穏乃ちゃんに連れて来られたのは、家の裏側だった。
大した距離じゃないのに、汗を拭う穏乃ちゃんに少しほっとする。
さっき、ちょっと穏乃ちゃんの顔が変なふうに見えたけど、気のせいだったみたい。
穏乃「いやー、びっくりしましたよ……玄さん、来るなら来ると言ってくれれば良かったのに」
玄「その……ごめんね?」
穏乃「全然! 問題ないので、大丈夫です!」ぶいっ
玄「あっ……じゃ、じゃあ~……」そわそわ
穏乃「???」
玄「穏乃ちゃんに、相談があるんだけど……いいかな!?」ずいっ
穏乃「相談ですか? はい、何でもどうぞ!」
玄「須賀くんと仲良くなりたいんだけ」
穏乃「は?」
玄「……えっ?」
穏乃「あ、すいません! ……続けて下さい」
玄「う、うん……そのね? 穏乃ちゃん、あの男の子とよくお話してるよね?」
玄「それで、私もそれ見てたら……須賀くんと……」
玄「お、お近づきになりたいなぁ~っ! って……」てれてれ
玄「思わなくもないというか……!」くらくら
穏乃「へえ……」
穏乃「新鮮ですね、顔を赤らめて男のことを話す玄さんを見るのは」
玄「え?」
穏乃「何でもないですよ」にこっ
玄「……」ぞくっ
玄(あれ? 今の何だろう)
穏乃「いいですよ。私が玄さんと京太郎の仲、取り持ちますね」
玄「えへへ……ありがとう、穏乃ちゃん」
玄(どうして私は今)
穏乃「……」
玄(この子のことを、怖いと思っちゃったんだろう?)
数日後。
須賀くんとは随分仲良くなれた。
今日はなんと、家に招いてしまった!
どきどきが止まらないけど、凄く嬉しい。
穏乃ちゃんには感謝しないとね。
京太郎「初めてお邪魔したけど、お姉さんが居たんですね。なんていうか、宥さん、良いですね……」
玄「ふふっ、是非お姉ちゃんとも仲良くしてね」
京太郎「もちろんですよ!」
玄「須賀くんと仲良くなれて、良かったなあ……」
京太郎「なんですか、急に?」
玄「だって、須賀くん優しいし、一緒にいて楽しいし……」
玄「こうやって……」じぃぃ
京太郎「っ!?」
玄「目を合わせると、ぽわぽわしたり、どきどきしたり、不思議な気分になるの」
玄「こんなの須賀くんだけ……♪」
京太郎「は、はえ! それは、どうも……!!」どきどき
京太郎「……はは」
京太郎「少し、わかるな」
玄「ん?」
京太郎「俺も玄さんと仲良くなれて、良かったってことですよ」
京太郎「玄さん、優しいし、一緒にいて楽しいし、それに」
京太郎「……」
京太郎「……ってやっぱり言えねえよ! 恥ずかしすぎる!」かあーっ
玄「え、えええ!? 気になるよ!?」
京太郎「ま、まあ……」
京太郎「とにかく、貴女と出会えて良かったって思います。何となくだけど、玄さんとなら、ずっと上手くやってけそうだ」
京太郎「これからもよろしくお願いします」にこ
玄「須賀くん……」にへらっ
玄「こちらこそ、よろしくお願いします」ぺこ
玄「で、ですね……」そわそわ
京太郎「?」
玄「そのー……えっと……」そわそわ
京太郎「?」
玄「えへへ……」にこにこ
京太郎「どうしたんですか玄さん……?」
玄「はっ! ごめんね。あのね……」
玄「須賀くんのこと……京太郎くん、って……呼んでもいいかな!?」にこっ
京太郎「っ!」
京太郎「構いませんよ……はは……」
京太郎(なんだよなんだよ、照れるな……)
宥「二人ともあったか~い……♪」
二人「「!!?」」くるっ
宥「まるで"恋人"みたい……♪」もぞもぞ
お姉ちゃんは、なんと、炬燵から出現した!
季節外れで部屋の隅にある、炬燵から!
って……
玄「い、居るなら居るって言ってよ、お姉ちゃん!?」かあああっ
京太郎「びっくりした……」
宥「ご、ごめんね……?」
玄「い、いいけど~……」
お姉ちゃんはその後、のろのろと部屋を出ていった。
それにしてもお姉ちゃん……
とんでもない爆弾置いてっちゃったよ~……
京太郎「恋人、かぁ……」
玄「!!」びくっ
京太郎「欲しいな、恋人」ぽけー
玄「……」
玄(この、流れ。イケる?)
玄「京太郎くん」
京太郎「はい?」
玄「じゃあ、私が京太郎くんの彼女選挙に、立候補するよ」にこっ
京太郎「えっ……」
京太郎「だ、駄目ですよ。そんな軽々しくそういう事言っちゃ……」
玄「軽くなければ?」
京太郎「……え?」
玄「真剣なら、京太郎くんは、私と付き合ってくれる?」
玄「ずっと好きでした」
玄「わ、私と……」
玄「付き合って下さい!」
京太郎「──……」
京太郎「すいません、玄さん」
京太郎「今は付き合えない」
玄「っ!」うるっ
京太郎「堅いって、思われるかもしれませんが、俺は交際には真剣でいたいから」
京太郎「貴女への気持ちが固まらない内に、答えは出せない」
玄「……」うるうる
京太郎「すいません……」
玄「えへへ」すっ
京太郎「玄さん……?」
玄「いいよ、気にしないで……でも、私が京太郎くんを諦めないのは……許してくれる?」
京太郎「……許すも許さないもないですよ。気持ちに嘘はつけませんから」
玄「えへへ、じゃあ、京太郎くんっ」
玄「改めてよろしくね!」にこっ
玄(たとえ、返って来なくても、私は待ってる!)
京太郎「……はい。よろしくお願いします」にこ
京太郎(綺麗な涙……)
京太郎(ありがとう、玄さん)
京太郎(俺がその涙、預かれるような男になるまで)
京太郎(待っていてくれたら、その時は──)
最終更新:2014年03月31日 21:27