ひさしぶりに部活が休みの週末、天気も良かったので一人のんびり散歩をしていたところ。
出発時の快晴が嘘のような大雨に襲われ、結局バス停で雨宿りをする羽目になった。
「あーもう最悪!! よりにもよって何でこんな家から離れてから降るかな」
ずぶ濡れになったスカートを絞りながら、少し顔を出して外の様子を伺う。
空は辺り一面が淀んだ雲で覆われ、この雨は当分止みそうにない。
それと同時に、道の向こう側からくる一人の傘を差した歩行者に気がついた。
「げっ!?」
見覚えのある長身に金髪、それなりに整った顔。
間違いなく私が大嫌いな“あいつ”だ。
「――大星、何やってんだこんなとこで」
「……別に」
よわっちい癖にやけにテルーに気に入られてる須賀京太郎。
おまけに私と金髪が被ってる。
「おいおい、お前ずぶ濡れじゃねぇか」
「うっさいな!! 須賀には関係ないでしょ!」
「いやそうは言っても、風邪引いちまうぞ」
「大丈夫だってば……ッくしゅん!」
「ほら言わんこっちゃない」
季節が夏だが、曇天の下に濡れた服のままでいるのはさすがに寒い。
身体をさすりながら寒さを紛らわせていると、頭からジャケットを被せられる。
「着てろよ、少しはマシになるだろ」
「い……いらないってば!! ジャケットが濡れちゃうし!」
「そんなの気にすんな……それに……ほら……いろいろ透けてるし……」
「ふぇ?」
一瞬私の身体に目を落としたかと思えば、須賀は顔を赤くしてそっぽを向いた。
見てみると、ジャケットの隙間からは濡れた服に透けて下着が……
「あわぁ!?」
「……な?」
「へっ、変態! 覗き魔! 女の敵!」
「俺のせい!? 」
………………
…………
……
結局、私はジャケット借りて須賀の傘に入れてもらって帰った。
まさか初めての相合傘の相手が須賀になるとは……
「じゃ、このジャケットは洗って返すから」
「別にいいけど」
「あ、洗わなくていい!? まさかスケベな妄想に利用するつもりじゃ……」
「ないない」
私が言うと、須賀はこれっぽちも迷うことなく首を振った。
それはそれで腹立つなぁ……
そこで私は、ふとある違和感に気付く。
須賀の左肩の辺りが不自然に濡れている。
――まるでそこだけ傘を差してなかったように。
「……」
ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、不覚にも須賀をカッコいいと思ってしまった。
《この子が素直になるのは、もう少し先のお話》
最終更新:2014年03月31日 22:28