京太郎(出身地とはいえ、地元をすこし外れれば、そこは未知の土地だ)
京太郎(さて、蕎麦かラーメンか……)
華菜「そーば、そーば!」
美穂子「一緒に外食なんて久し振りね」
華菜「みんなわかってないし!みんな監督につられてラーメンだなんだって……」
美穂子「あら、私と二人じゃ嫌だった?」
華菜「そ、そんなことないし!むしろ願ったり叶ったりだし!」
美穂子「ふふっ、ありがと」
京太郎(あれ福路さん?蕎麦を食べに行くのか。よし、蕎麦だな。となれば……)
美穂子「ここ美味しいのよ」
京太郎(うむ、知らない店だが、佇まいから美味さが伝わる。ここは良い店だ)
店員「いらっしゃいませー、こちらへどうぞー」
京太郎(混みすぎず、空きすぎず、空気もいい。店内にもだしの香りが漂っている)
久「あら、美穂子?」
美穂子「上埜さんも来てたんですか」
久「せっかく教えてもらったから、まこと一緒にね。いまお手洗いに行ってるけど」
京太郎(うえの?げ、部長だ!染谷先輩も来てるって言ってたけど……)
まこ「ふぅ……ん?」
京太郎「!?」メニューサッ!
まこ「……鴨せいろがオススメか」
京太郎(先輩たちの席から離れてて安心してたら、導線的にお手洗いに行かれたらバレる……)
京太郎(そういや、鴨せいろがオススメって……おお、確かに文字面といい、写真といい、美味そうだ。いやはや、口と腹がもう鴨になってしまった)
京太郎「すいません、この鴨せいろ下さい」
店員「かしこまりました。あちらに蕎麦湯がありますので、ご自由にどうぞ」
京太郎(蕎麦湯か……鴨せいろで蕎麦湯?いやしかし、勧めてくるぐらいだ、それも乙なものなんだろう)
久「まこは何にする?」
まこ「鴨せいろじゃ」
久「美穂子は?」
美穂子「私は天ざるを」
華菜「華菜ちゃんは普通にもり蕎麦だし!」
久「なんだご飯もの私だけ?」
まこ「何にしたんじゃ?」
久「天丼」
店員「お待たせしました。鴨せいろです」
京太郎(おお、この香りと存在感!まさに蕎麦界の飛車角!では!)
京太郎「いただきます」
京太郎(ほぉ……この鴨の油が醤油のコクと相まって、さらに鰹のだしが調和して、深みのある濃厚な味が、信州そばの香りを喉に運んでくれている!)
京太郎(鴨肉と一緒にネギを……うん、ネギ、いい仕事してる!鴨肉との相性は抜群だ!)
京太郎「ズル、ズル、ズズ……!ふぅ……」
京太郎(喉に蕎麦が通るたびに、幸せが胃袋に入っていく……)
京太郎(ふぅ、食ったな。しかし、お楽しみはこれからだ!)ガタッ、トンッ
京太郎「ああ、すいません……ん?」
桃子「いえ、こちらこ……あれ?」
京太郎(たしか鶴賀の)
桃子(たしか清澄の)
二人(同類っ!)
京太郎「……」スッ
桃子「……」スッ
京太郎(まさか東横さんに会うとは。だが今は蕎麦湯に集中するんだ。蕎麦湯を飲むんだ!)
京太郎「ズズズ……」
京太郎(ああ、落ち着く。さっきまでの興奮が、この一杯でさまされ、心地よい余韻が生まれている……)
京太郎(もう一杯だけ飲んで、帰るとしよう)
ーーーーそして
京太郎「ごちそうさまです」
店員「ありがとうございました」
京太郎「さて……」
華菜「おい須賀ァ!はやくカラオケ行くし!」
久「はやくしないと奢らせるわよー!」
京太郎「ちょ、勘弁して下さいよー!」
京太郎(結局バレた。そして……)
智美「ワハハ、捕まえたぞー」
ゆみ「こんな店知ってたのか」
佳織「誘ってくれればよかったのに」
睦月「うむ」
桃子「いやぁ、あはは……」
桃子(この気持ち、須賀さんしかわかってくれそうにないっスね……)
カンッ!
最終更新:2014年05月15日 16:16