それは、なんでもない練習日。
部室内に五人の人間が揃った時点で、竹井久は口火を切った。
久「じゃあ全員揃ったし、今日も練習と行きましょうか」
咲「えっとその、京ちゃんは買い出しですか?」
久「『京ちゃん』? 新しい入部希望者かしら? まこ、知ってる?」
まこ「いや、わしも聞いとらんの」
優希「咲ちゃん、寝ぼけてるのか?」
からかっているでもない、本気で訝しげな皆の様子に宮永咲の唇が震える
咲「な、なに言ってるの? 京ちゃんは『須賀京太郎』だよ!? 知ってるでしょ?」
さらに首をかしげる3人、それに対して全く異なる反応を示した人間がいた。
和「須賀くん、ですか? もしかして、金髪で胸をチラチラ見てくる私たちと同じ年の」
その言葉に咲は顔を輝かせる、希望にすがるように言葉を口にした。
咲「そう、そうだよ、エッチでお間抜けさんで、でも優しい男の子!」
しかし返ってきた返答は、彼女の望むものではなかった。
和「咲さん、奈良に行ったことがあるんですか? 須賀くんと知り合いだなんて初めて知りました」
久「だあれ、それ?」
和「長野に転校する前の友人です。今はどこの高校に行ってるんでしょうか」
雑談に興じる皆の傍らで、咲は悪寒に体を震わせる。
咲「え、え? 京ちゃんは私の幼馴染で、奈良になんか、え?
そ、そうだ、写真が……ない、なんで!? 入学式の時に一緒に撮ったのに!」
混乱する彼女に対して優希が手を伸ばす。
優希「咲ちゃん、調子悪いなら休んだ方が」
咲「京ちゃん、京ちゃん、どこにいるの!? 帰ってきてよ、私に笑いかけてよ!」
これは異なる世界の記憶を持った少女が一人の少年を探す物語。
少年は彼女を知るか、それとも……
IFルート 『須賀京太郎の消失』 始まらない
最終更新:2016年12月01日 20:39