インハイ開始時くらいの時期です
軽風が吹いた
同じチームに属する彼女らは恐らく心地よい風が吹いた程度の認識だろう。誰から吹いたものなのかに気がついたのは恐らく私だけ。
私が風に関連する能力を持っている故に気がつくことができたのだと思う。
少しすれ違っただけなのに、先ほどの闘牌の疲れを吹き飛ばすような、清々しい風をすれ違う彼から感じた。
「…どうかしましたか?」
風の主から声をかけられる。どうやら無意識のうちに彼を見つめていたようだ。
流石にあなたから風を感じたので見つめていましたとは言えないので適当に誤魔化す。
「そうですか…暑いので熱中症には気をつけてくださいね。」
そう微笑む彼からまた爽やかな風が吹いてきた。気持ちいい。心地よい。もっとこの風を感じていたい。
「待ち合わせならあっちにこの場所も見えるカフェがありますから無理せずそこで待つのもいいと思いますよ」
そう言われて周りを見渡すと一緒にいた彼女らはどこにも見当たらなかった。どうやらおいていかれてしまったらしい。なら利用させてもらおう。
「今ですか?買い出しの帰りなので、少しなら時間はありますよ」
少し気恥ずかしいが、エスコートの申し入れ。これが運命なら彼は答えてくれるはず。
「そこなら俺の目的地にも近いですし、喜んでお送りしますよ」
こういうのを確か僥倖というのであったか。食べ物に釣られてきた日本で、こんな出会いをするとは思わなかった。
「自己紹介がまだでしたね。俺は須賀京太郎っていいます。」
須賀京太郎さん。あなたはどんなモノを運んできてくれるのだろうか。
私の心を揺らすように、
一陣の風か吹いた
最終更新:2017年10月12日 21:41