新子憧はお洒落好きである。
穏乃とともに山を駆けていた幼少時には特に気にしてはいなかった。それは穏乃が傍にいたからだ
中学に入れば穏乃ほどに子供っぽいというか、己に忠実な人間ばかりではなくなった。
そして女らしさによって序列が決まるような空気さえあった。
このころ、初めて自分が他人から見てどうなのかという疑問を覚えたといっていい。
身長は思ったより伸びなかった。姉を見て期待していたのだが、150という平均より小さい場所で止まった。
胸は多少膨らんだ。だが、玄や宥のように豊満と呼べるものでは決してなかった。
だから――外側を飾ることにしたのだ。
髪を伸ばし、化粧を覚え、着こなしを勉強し、一端の――いや周りから見れば美少女と呼べる存在になった。
男が苦手になったのは、変わった自分を見て明らかに下心のある所作へと移った人間への警戒心。
実質免疫がないことからの逃避に近い。
だからだろうか、「女」として見てくるくせして「人間」として接する、見た目とは違った人間が気になったのは。
ある意味では同族意識に近い。
彼も見た目は軽いくせして中身は誠実のお人よし。自分は遊び慣れているように見えて中身は純情で少し流されやすい。
話していくうちに警戒心は薄れ、その代わり距離は近くなったくせに一向に変化の見えない態度にもやっとして。
ちょっと隙を作れば見てくるくせに、実行には移さないところにイラっとして。
ある日かがむ様に命令して、首を傾げながらも素直に従う彼の首に手を回してさらに引き付け、背を伸ばしてやっと唇が微かに触れた。
憧「わ、分かったでしょ? 私の気持ち」
京太郎「あ、う、ああ」
お互いに顔を真っ赤にして視線をそらしながら、身長差にキスのしずらさを思い返して。
憧「今度からはヒール履くから、今度はそっちから……」
次の約束なんてしちゃって。
結局のところ、簡単に結論を述べれば新子憧というのはどこまでいっても乙女なのであった。
カン
最終更新:2018年01月27日 20:51