<京太郎⇔和 時空@竹井久1>

私が彼を見つけた時、最初は目を疑った。
男子のインターミドルチャンプ、どこの高校からでもスカウトがかかるであろう人物がなぜかうちの高校に入学していた。

次に思ったのは、チャンスだという打算。
私が目指しているのは女子団体戦でのインターハイ優勝。彼は一見直接寄与しないように見える。
だけど、その肩書に整った容姿。手元においておけば入部希望の女子が増えるかも、なんて。

その打算はある意味で正解で、ある意味では間違いだった。

正解は、まず一人目の1年生が一緒についてきたこと。名前は片岡優希、彼とは中学からの付き合いで粗削りではあるが才能は明らかだった
これでまこも入れれば部員は4人。とりあえず卓を囲んで練習することができるようになったのが大きい。
そしてほどなくして、初心者だという女子も入部を願い出てきた。名前は原村和。
初心者でありながらその頭の回転は速く、基礎を教えればスポンジのように吸収していく。まあ頭が固いところがあるのは欠点だけれど。

誤算は、彼――須賀京太郎という人間が内面も予想以上だったこと。
放っておけば雑用に牌譜整理をしだし、ムードメーカーで面倒見がよくて部員の暴走はしっかり止める。
教わっている立場の和は憧れの目で見てるし、優希も気にしていることは明らか。まこも一目置いている。
当然、実力もある。何もしなくてもインハイでも男子優勝するんじゃないかってくらいに。

私はそんな彼に、いつしか惹かれるようになっていた。表には出さないけれど、笑いかけられればドキドキしてしまう。
部活内四角関係という、ある意味部活クラッシャーになりえる存在になってしまっているのが、私の完全な計算外。

でも手放すなんて考えられない。それほど好きになり始めてるし、この部活の中で潤滑剤のように欠かせないものになっている。
それに――夢の団体戦まであと一人。もう一人女子がいれば団体戦に出れる。

夢と、恋愛。その二つが彼がいれば両方ともかなうんじゃないかって、そんな期待さえ抱いてしまっているのだ、私は。


『4月中旬、竹井久の独白』 カン

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最終更新:2018年01月27日 20:55