全国会場
明華「京太郎君、荷物少し持ちますよ」
京太郎「大丈夫です、雀先輩。持ってもらうのは俺のプライドにも関わりますので」
明華「むぅ」
少しむくれる明華。その原因は断られたことよりも、やはり呼ばれ方か。
レギュラーの面々と違い、京太郎と初めて会ったのは4月に入ってから。
同級生だけどクラス分けは別になり、彼が麻雀部に入らなければ多分接点はなかっただろう。
第一印象はあまり良くなかった。私や明華の胸の膨らみに、分かりやすく視線が向いていたからだ。
でも一ヶ月足らずでそれは払拭されることになる。
私達よりは落ちるけれど、基礎をしっかり積んだ雀力。麻雀以外でも気配りなど
抑えるところはしっかり抑えていたからだ。
マネージャーとして拾い物、とは4月末の監督の言葉だけど
雑事減らされてこれで結果出せなかったら私クビかしらね、とは5月末の監督の言葉である。
その頃には私も、京太郎の胸への視線を「男の子だから」と半ば諦めていた。
明華が「視線の割には、ずっと先輩呼びですねえ」なんて言わなければ、
そのままでいられたはずだったのに。
意識しなかったわけではないけど、私と彼は互いに名前の呼び捨てだ。
深い意味なんてない。気づいたらそうだっただけ。
でも、あの愚痴を耳に入れなければ今ほど考え込むこともなかった。
自分以外に呼び捨て合っているネリーの存在にも。
ネリー「力はあるんだねー」
京太郎「なんだそのメッチャ含みのある言い方?」
ネリー「いくらで聞きたい?」
京太郎「勘弁してください」
羨ましい、と思ったのはいつだろう。いや、自覚したのは、だろうか。
抱いたその感情に最初は蓋をした。
過ごす日々の中で薄れていくと根拠もなく思った。
部活が同じなだけ、だから接点が無ければ大丈夫と思い込めた。
その些細な接点すら致命的だった。
監督、智葉、メグの3人相手に決めた三家和。
退路も無い中で、突破口を見つけた、いや創り出した京太郎に見惚れた。
次の瞬間、彼の腕に抱き付いたネリーに腹が立ってしまう。
ずっと彼を後ろで見ていたのだから、不思議はないはずなのに。
それ以降は二人の遣り取りを盗み見たり、聞き耳を立てることが増えた。
見える所ではあけすけで、お互い遠慮も躊躇もしない。
そのくせネリーは京太郎の膝に座りたがり、許した彼をきちんと労う。
見えない所ではどうなのか、と邪推したことは一再では足りない。
多分同じようなことを明華も考えている。
学年の違いもあり、差はむしろ顕著というべきだろう。
先程のように先輩呼びだ。メグも同じく。
智葉相手には部長呼びである。失礼があるわけではない。
部活の同級生、先輩、部長そのままであることを考えれば妥当と言っていい。
同じクラス、同じ学年、同じ部活のネリーがいなければ、だ。
以上、ハオ視点でした。
カンッ
最終更新:2018年04月26日 22:28