咏「ちっ、この自販機設計ミスじゃねーの? なんでブロックの上にのせるのか分かんねー。届かんし」
腕を伸ばしてプルプルとしていると、影が差す。その影はそのままひょいっと指先を伸ばして
ガコン、と出口に落ちたジュースを拾って差し出してくる、金髪のガタイのいい少年
京太郎「これかな? 着物のお姫様。んじゃ、俺急ぐからまた縁があったらな~」
ごく自然に何を求めるでもなく、その場を立ち去っていく。その姿に
咏「んー、どっかであの制服見たような? 知らんけど」
ほのかに赤くなっている顔を扇子で仰ぎつつ、一人のプロは脳内検索に入った。
淡「やばっ、財布もケータイも忘れてきた、どーしよっ」
京太郎「相席いいですか?」
淡「今ちょっとこっち立て込んでるの! 話しかけないで!」
京太郎「へーへー、それは悪うございました。あ、おねーさん俺チャーシュー麺、会計はこっちの子と同じで」
淡「へ?」
京太郎「空気を読まずナンパしたお詫びってことで。受け取ってもらえるよな」
淡「あ、うん」
深く考えてなさそうな笑顔にちょっともじもじしつつ、同じ金髪という共通点に喜びを見出す少女がいた
憧「ちょっとしつこいって! 通報するわよ!」
A「いーじゃんちょっとぐらいさー」
B「そーそー、俺らこのあたり詳しいんだぜ」
外見で判断されやすい少女が近寄ってくるナンパ男にビビってるさなか
京太郎「あー、悪い。そいつ俺の彼女なんだわ。ってわけで、いこーぜ」
すたすたと歩いてきた新たな軽そうな男が手を取って軽く合わせる
憧「え?え?」
A「ちっ、男持ちかよ」
B「いけると思ったのになー、くそ」
男たちが場を立ち去るなり、つないでいた手を離して
京太郎「ごめんな、勝手に触って。この辺暗くなると危ないから一人で出歩かない方がいいぜ、ただでさえ可愛いんだから」
憧「か、かわ、ふきゅっ」
変な声をあげる少女を大通りまで連れて行ってから、金髪の少年は連絡先を聞くでもなく歩いて行った
咲「私は京ちゃんと違って遊びに東京に来たんじゃないの」
京太郎「手厳しいこって」
後に、どこからか探し人やってくるとは思いもせずにいつもの調子で幼馴染たちは軽口をたたき合っていた。
お互いがお互いの言葉を悪口だとも感じていない、そんな甘えのある関係。
しかしそれは、外敵の前では脆く崩れないものであると一番近しい少女は気付いていなかった。
カン
最終更新:2018年04月30日 19:51