◎神境某所

京太郎(白目)「」シュゥゥゥゥゥ

霞「…私は悪くないわ」

明星「お姉さまはやりすぎなんです!」

初美「まったくなのですよー。何も“降ろして”まで、雷(比喩に非ず)を落とさなくてもよかったんじゃないですかねー!」

巴「はっちゃんも鬼門開いてましたけどね!」

湧「に、兄様に見られた…絶対お姉さま方と比べられちゃった…」ズーン

明星「湧!今は結界の維持に集中して!六人がかりでもお兄様の動きを止めるので精いっぱいだなんて…」

小蒔「ごめんなさい…私だけ力になれなくて…」

春「“降ろして”ないんだから仕方ない…それにしても京太郎のあの姿は一体…」


須賀父「皆さまご無事ですか!」


小蒔「おじさま!」

須賀「姫様!大事がなくて何よりです…。この部屋を覆う熱気…やはりか。この馬鹿息子めが」 

京太郎(白目)「」カハァァァァァ…


霞「一体京太郎君に何が?」

京太郎「…京太郎に宿る柱…彦火火出見尊が目覚めかかっているのです」

巴「彦火火出見尊というと…ここ霧島にも祭られてる神様の一柱ですよね?」

須賀父「神代一族が神を“降ろす”一族ならば、我ら須賀は“宿す”一族といえますな。
    中でも京太郎は約十数世代ぶりに現れた“宿す者”なのです。京太郎をここにお預けしたのも、
    コントロールできる力が身につくまで余計な刺激を与えないようにするためだったのですが…」

初美「じゃあ今の京太郎は…」

須賀父「京太郎であって京太郎ではありません。彦火火出見尊の神格が、よりにもよって中途半端な
    状態で表に現出しかかっているのです」

湧「だから今の兄様から“降ろした”ときの姫様と同じような気配が…でも中途半端というのは?」

須賀父「ええ…穀霊神…稲穂の神の依代たる証拠の、瑞穂の如き黄金色の髪が逆立っている。おそらく意識無きままに、
    “実らせる”、“豊穣を導く”という彦火火出見尊の神格、いわば本能に従って動こうとしているのです」

明星「でも…どうしていきなりそんなことに?」

須賀父「それが申し訳ございません…全く心あたりがないのです。…いやまてよ…穀物…稲…実らせる…稲妻?」ブツブツ


霞「…!」ギクッ


須賀父「いや、こんな晴れた日の…しかも屋内でそれはありえんな。よしんば稲妻に打たれたところで
    キノコじゃあるまいし、神霊の関わらぬ自然発生的な雷が目覚めのカギになることは…」ブツブツ

明星その他六女仙「…」ジト目

小蒔「霞ちゃん…」

霞「こ、この際!原因がどうであれ関係ありません!問題なのは!この状態の京太郎君をどうするかです!」

初美「これはひどいのですよー」

巴「私や春なら祓えませんか?」

春「そう。相手が神憑きなら専門」

須賀父「馬鹿息子のためにありがとうございます。お頼みしたいのは山々なのですが…いくつかの理由でそれは無理なのです」

明星「と、仰いますと?」

須賀父「まず、そもそもあれは所謂“降りて”いるのでなく、言わば“出ている”状態です。
    どちらかといえば、祓うというより封じる方の術式が必要になります」

巴「それでも私たち二人がかりなら…」

須賀父「お気持ちは大変有難いのですが…そもそもいまの京太郎の視界に皆さまの姿を晒すをだけで充分に危険なのです」

霞「何故です?」

須賀父「彦火火出見尊は、立ち上る炎の中で母である木花咲耶姫命から生まれ落ちたとされております。
    そのため、縁結び・子宝・多産・安産…すなわち、懐妊の神としての神格も持つのです」

霞「縁結び…子宝…懐妊…」

小蒔「多産…安産…」

須賀父「?今何か邪悪な気配が…気のせいか?まあ流石に、あの馬鹿息子が恋情・慕情…あるいは劣情を持っているとは
    思いたくありませんが。万が一、いや億が一にも、奴の中に姫様や六女仙の方々への身の程知らずな感情がほんの僅かでもあれば…」

霞「あれば?」

須賀父「彦火火出見尊の持つもう一つ神格、心願成就。これと先ほどの多産・安産の神格が結びつき…おそらく皆さまを次々に無理矢理…」ガクブル

初美(無理矢理どころか全員妊娠バッチコイ状態だと思いますけどねー…まあ私もですけど)

須賀父「そしておそらく力尽きると同時に神格は引っ込み、元の京太郎の意識が戻るでしょうが…
    そんなことになっては、大恩ある神代に連なる皆さまに顔向けができませぬ…!!」

小蒔(霞ちゃん)

霞(ええ。小蒔ちゃん)


須賀父「かくなる上は私の命に代えても何とか封い ドゴッ  あべし!!」バタン


初美「当たり前のように脳内で会話してますねー…まあでも」シュルリ

霞「ええ…おじさまはこれで当分は目覚めないわ」ポフン

明星「甘いですよお姉さま。おじさまではなくこれからは“お義父さま”です」バッ

巴「まずは順番から決めましょうか」スルッ

小蒔「さ、最初は私からですからね!」パサリ

春「まあそれは仕方ない」タユン

湧「ちゃ、ちゃんとできるかな…」ペタン



全員「「「「「「「ジュルリ…」」」」」」」」


(人生)カン(完)!

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最終更新:2018年05月02日 20:54