◎長野県某所 ≪雀荘:嶺上開花≫
咏「私が初めてここに来たのはもう三年も前になるかねぃ」
京太郎「ええ。今日と同じような、春なのにやけに冷える夜でしたね」
咏「仕事が早く終わって時間が空いて、たまたま寄った雀荘がここだった」
京太郎「世の中にはこんなに強い打ち手がいるのかよ…と、正直思いましたよ」
咏「その言葉、そのまま返すぜ。あんたの冷静で鋭い打牌を中々捉えられなかったしねぃ
半荘9回やって5-4でトップを勝ち越されたなんて、私の記憶にもそうそうはないよ」
京太郎「ふっ…ほとんどが暴牌ばかりでお恥ずかしいかぎり」
≪回想≫
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京太郎手牌:12399m12349s123p【ツモ9s】
京太郎(ドラは9m…4sにくっ付けば純チャンは捨ててピンフ三色に固定だったが、このツモならやむなし)
【4s】タン
咏「チー」カシャ ≪副露≫ 345(赤)s
【1s】タン
京太郎(鳴かれた?テンパイ気配…だが待ちが絞れねえ)
咏「ツモ。2000/4000」パチン
咏手牌:99m111333p南南【ツモ南】 ≪副露≫ 345(赤)s
京太郎(東場の西家で出アガりのきかないツモり三暗刻…しかも俺が2枚押さえたドラとのシャンポン)
咏「ふふん」ニヤリ
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咏手牌:2233445566788s
咏(6巡目テンパイの高めメンチンピンフリャンペーコーを今度は念入りにダマ…)
京太郎「…」スッ
【5m】タン
咏「…」
京太郎「ツモ」
京太郎手牌:111234666m7s発発発【ツモ7s】
咏(こんな止められかたいつ以来だろうねぃ)
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京太郎「世界大会の男女混合団体戦…そのチームの副将を俺に?」
咏「悲しいけど、麻雀ってのは情熱と実力がかみ合った時期ってのがそう長くないからねぃ。
あんたを一介の雀荘のマスターで終わらせたくないんだよ」
京太郎「本音ですか?」
咏「ふっ。まあ万が一にもあんたを他の国に奪られるのが心底怖いってのが正直なところだけどねぃ」
京太郎「…」
咏「まあ後は…」
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『さあ副将戦もいよいよオーラスというここで、ラス親の◇◇代表の××選手によもやの1s待ち国士無双テンパイだ!』
9m発中西南1p99p9s白東北1m
『先鋒で宮永選手が稼いだリードはありますが、須賀選手が振り込めば一気に順位が動きますね』
京太郎「…」スッ
【1m】タン
【東】タンッ
【9s】ダンッ
◇◇代表(ナメテンオカ?)
●●代表(オイオイ)
○○代表(保証ハアルノカ?コノキョウダ!)
京太郎「ツモ。2000/4000」パチン
12345(赤)1s5(赤)67p【ツモ1s】
◇◇代表&●●代表&○○代表「「「!?」」」
『ここで副将戦終了ー!須賀選手が満貫をツモアガってラストとなりました!』
『終わってみれば、須賀選手が各国の大物手を悉く潰してリードを堅守した結果になりましたね。先ほどの1s一点止めも見事です』
『その須賀選手が控室へと戻っていきます』
咲「お疲れさま」
京太郎「…!咲」
咲「凄かったよ京ちゃん。昔よりさらに雀力に磨きが掛かってるね」
京太郎「ふっ…お前ら姉妹に言われちゃお世辞にしか聞こえねえけどな。後は任せる」
咲「ん」
京太郎「…」
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『まあ後は、惚れた女の邪魔をしないように身を引いたとか言いながら、その娘の
代名詞を自分の雀荘の店名にしてるような未練ったらしい男が見るに堪えなくてねぃ』
『…返す言葉も』
『飲み会のたびにその娘の愚痴を聞かされるこっちの身にもなってほしいけど』
『あいつなら…俺よりもっといい男が見つかりますよ』
『女ってのはねぃ。25を過ぎると色々焦るもんなんだよ』トオイメ
『あいつは今…』
『まああの娘もかわいいからね。そういう話はあるみたいだけど、上手いこと全部断ってるみたいだねぃ』
『…』
『その理由が分かんないくらい鈍い感性だっててんなら、まあ私の見込み違いだってことだけどねぃ』
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京太郎「…なあ咲」
咲「何?京ちゃん」
京太郎「試合が終わったら話があるんだけど…いいか?」
カン!
最終更新:2019年03月11日 00:53