「京太郎くん、ゆっくりしてってなー♪」
「は、はいお母さん!それにしてもホントに若くてお綺麗ですね!」
「やだわぁ、こんなおばさんつかまえて!」
「………」
清水谷竜華は、恋人が母親に鼻の下を伸ばすのを忌々しく睨み付けていた。
それもこれも恋人を紹介すると伝えたら、露出だらけの服装で出迎えた母が悪い。
しかも、既にいい歳にもかかわらず若々しく色気たっぷりなのだから反則である。
「…京くーん?君は誰の恋人だったかな?」
「痛っ、痛たたた!?お、俺が愛してるのは竜華さんだけです!」
「んむ、よろしい」
須賀京太郎は、耳を引っ張られると慌てて恋人に許しを請うた。
竜華も満更では無いようで、ふふんと得意げな顔でその謝罪を受け容れる。
「まぁ、ふたりとも話に聞いたとおり仲良しさんやねぇ?若いっていいわぁ♪」
「………」
が、自分が痴話喧嘩の原因とは露知らずはしゃぐ母親はいただけない。
竜華の母親は、もはや天然を通り越して歩く有害図書、存在がわいせつ物陳列罪である。
今日も服装に気合いを入れた結果が、大きな胸空きの上着と短いタイトスカートなのだ。
常識外れなどという次元ではない。竜華はこの母の血を引く自分に軽く絶望した。
「…絶っ対にああはならん。子どもにもあないな格好はさせん!」
「いやでもお母さん、竜華さんに似てすっごい美人じゃ無いですか」
「だからなおさらイヤなんやっ!京くんも、義理は果たしたからさっさと帰るで!」
「あ、もうちょっとだけお母さんとお話を…」
「そないに乳が見たいなら、あ、後で見せたげるからっ!」
「ま、マジですか!?」
「マジやからっ!だから人の母親の胸をそんなジロジロ見んといて!」
「あらまぁ、仲良しさんやねぇ♪」
イチャつきながら喧嘩する娘とその恋人を見ながら、その元凶はのほほんと笑うのだった。
完
最終更新:2019年03月11日 01:01