臨界高校 部室
ネリー「うう~...奥歯が痛い...」
京太郎「なんだネリー、どうしたんだよ」
ネリー「ああ...キョウタロー。なんか右の奥歯の所が痛くて」
京太郎「ちょっと口開けてみろ。見てやるから」
ネリー「あーん」
京太郎「あー...親知らずか。奥歯の更に奥の方から生えてるな」
智葉「よう。どうしたんだお前ら」
京太郎「あ、智葉先輩。ネリーの奥歯に親知らずが生えてるんですよ」
ネリー「サトハー、助けて~」
智葉「ロキソニンでも飲んどけ。三十分したら痛みが和らぐ」
ネリー「やだぁ!今すぐネリーは親知らず抜いて欲しいの!」
京太郎「そんなもん無理に決まってんだろ」
京太郎「金を幾ら積まれたってどこも最初から抜歯手術しねぇから」
ネリー「くぅ、親知らずの恩知らず!」
智葉「恩知らず、か。なぁネリー、そんなに歯が痛いのか?」
ネリー「痛いよ!しかも麻雀の邪魔になるなら尚更抜きたいよ!」
智葉「そうか。まぁ最初から歯を抜いてくれる医者を知らんでもない」
ネリー「本当?!幾らするの?」
智葉「まぁ待て。話は最後まで聞け」
智葉「その医者はな。アル中なんだ。だが腕は悪くない」
智葉「その日にもよるが、酒が入って無い時の腕の冴えはピカイチだ」
智葉「勿論、お前が嫌いな無駄金は一切取らん。そういうこともしない」
ネリー「やったぁ!で、初診料は幾らなの」
智葉「ああ、歯を抜くくらいなら一回2000円程度だ」
智葉「勿論、失敗したら代金は貰わないという触れ込みでだ」
ネリー「失敗?失敗って日本の医者なんでしょ、その人」
ネリー「ネリーのいた国より、ずっと進んだ医療の従事者なんでしょ?」
智葉「ソイツはな、紹介された客しか見ない」
智葉「なぜかというと、雇われていた時分に手酷い失敗をしたらしくてな」
智葉「詳しくは知らんが口答えをする患者と手術のことで揉めたらしい」
ネリー「その人は結局どうしたの?」
智葉「タチの悪い客に医者が本当に報復したって言えば分かるだろ」
智葉「麻酔の量を減らして、手術中に痛みを感じさせるとか」
智葉「関係ないところに注射を何回も打ち続けるとかな」
智葉「まぁ大事になる前に辞めて、開業医をしているんだがな」
智葉「他にも色々あるが、ネリーのケースだと....」
智葉「運が良ければレントゲン取ってくれて手術してくれると思うぞ?」
智葉「素面の時でさえ、運が悪ければ最初から抜歯手術だからな」
ネリー「ひぃいいいいい!」
京太郎「う、嘘ですよね?そ、そんな無免許の藪なんて...」
智葉「おいお前ら、私の実家がどんなところか知ってるだろ?」
智葉「連中、金さえ積めば合法非合法問わずになんでもやるんだ」
智葉「医者の倫理観なんてものがソイツにあると思うか?」
智葉「まぁ、ネリーは可愛いからな。可愛がられると思うぞ」
ネリー「ひっ、やだ...やだよぉ」
智葉「手術中に口答えしたら口の中切り刻まれるぞ?」
京太郎「うわぁ...先輩の顔あくどい」
智葉「人聞きの悪い事言うな。それとな、今の医者は私の身内だ」
智葉「だから、な?お金の事は心配するな、ネリー。口利いてやるから」
ネリー「や、やっぱり我慢する!うん、だ、大丈夫だよ!!」
ネリー「お金は大事だけど、い、命には代えらんないよ...!」
智葉「そう言う問題じゃないだろ、ネリー」
智葉「自分の身体のことでさえ、金さえ払えばなんでもいいは辞めろ」
智葉「確かに親知らずは最終的に引っこ抜くもんだ」
智葉「だけど、親から貰った体に傷をつけるのはなるべく避けろ」
智葉「親知らずも、お前が親から貰った体の一部なんだから」
ネリー「うん。分かった」
智葉「そうか。じゃ、部活始めるぞ~」
部員達「はいっ!」
京太郎「先輩。さっきの医者の話ってどこまでが本当なんですか」
智葉「ああ、開業医の下りと患者と揉めた所は本当だ」
智葉「レントゲンは撮るし、ちゃんと患者の話は聞いてくれる」
智葉「だけどなぁ...さっき話した所に一つだけ真実が混じってるんだよ」
京太郎「ひぃっ!」
智葉「ま、それを考えるのも良い時間つぶしになるんじゃないか?」
智葉「何はともあれ、親知らずは生え終わりが一番楽に抜ける」
智葉「今日の所はこれでいいだろ?」
京太郎(先輩のヤクザネタは本当に心臓に悪いぜ...)
智葉「おっと、ところで京太郎」
京太郎「なんです?」
智葉「お前、アウトレイジって映画知ってるか?」
智葉「全部で三部作なんだが、その最終章がついこないだ出たんだ....」
智葉「どうだ、今日の帰りに私の家で見ていかないか?ぶっ通しで全部作」
智葉「勿論、ネリーも誘って見ようじゃないか。な?面白いぞ~」
完
最終更新:2019年03月11日 01:02