VRアプリ『京ちゃんと一緒』β版、原村和の場合
和「京太郎くん、お弁当作ってきたので一緒に食べませんか?」
『いやそれはいいんだけど、これ弁当じゃなくて重箱』
和「あーん……はむ」
『和、フェイントで自分の口に入れないで、空ぶるの悲しいから』
和「ん……」
食まれた唐揚げから滴る油が薄紅色の唇の光沢をより強調し、和は体を寄せて上目遣いからゆっくりと目をつむる
『え、これもしかしてアレなの? 唇合わせて齧れってこと?』
和「……ん、はっ。どうでしたか?」
『和さん、破壊力高すぎだから中庭では止めよう? みんな見てるから』
和「ふふ、京太郎くんとの仲なら見せつけるぐらいでちょうどいいかと」
『和って第一印象とだいぶ変わったよな』
和「それを引き出したのは京太郎くんです。貴方相手じゃないとこんなになりません」
『お、おう。光栄です』
咲「和ちゃん、最近高嶺の花に奇行が目立つって噂になってるからもうちょっと控えた方がよくな」
和「何を言っているんですか咲さん。私はただβテスターとしての務めを真面目に果たしているだけです」(真顔
咲「えぇ?」(困惑
和「あ、すみません。『私の京太郎くん』から連絡があったので少し出ますね」
優希「のどちゃん、友達との会話を打ち切ってまでってそれもうリアルに支障きたして」
和「私はβテスターとして真摯に攻略しているだけです」(真顔
優希「あ、うん。もういいじぇ」
同じアプリをやっている友人すら引くほどの真剣さ(?)に水を差せるのはただ一人
京太郎「おーい、和ちょっといいか?」
和「なんでしょうか須賀くん?」(即答&小走りで距離詰め
京太郎「今から買い出し行くんだけど何か足りない物とかなかったか?」
和「もう、部長は相変わらずですね。買い出しなら私も一緒に行きますから道すがら話しましょう」
久「いや和、あなたは練習を」
和「ナニカ?」(真顔
久「イエ、ナンデモナイワ」(震え
まこ「恋愛シミュレーションゲームでリアルに最強のラスボスができるとか意味わからんな」
周囲の空気を簡潔にまとめた染谷まこの言葉に、その場にいた三人の女子は深刻な顔で頷くしかなかった
カン
最終更新:2019年03月11日 01:38