高久田「よう須賀、忘れてないよな?この勝負、勝った方が…」
京太郎「ふっ…学食一週間、頼み放題!」
パァン!
京「うおおおおおおお!!!」
咲「京ちゃーん、がんばってー!」
和「ファイトです、須賀君!」
優希「負けたら麻雀部の恥だじょ犬ぅー!」
副会長「いま戦いの火ぶたが切って落とされました一年生男子によるクラス対抗借り物競走、選手一斉にスタートです。
実況は私内木一太、解説は学生議会長の竹井久でお伝えします」
久「どうもー」
副会長「先頭から抜け出たのは須賀選手、中学時代ハンドボールで鍛えたという足腰が有利に働いていますね」
久「んーこれ借り物競争だからねー、足の速さよりも難易度の低いお題を引き当てる運と、
それをこの大観衆の中から瞬時に見つけ出す思考の洞察力と判断力が重要ね。
コンマ数秒の脚力の差なんて問題じゃないと思うわ」
副会長「なるほど、おおっとですが須賀選手、お題を確認するや否や自身のクラスへ猪突猛進だー。
逆に二番目にお題を獲得した高久田選手、苦悶の表情でフリーズしているぞー」
久「これは須賀く…選手が運も味方につけたみたいね」
久(高久田君はあのお題を引き当てちゃったみたいねー、見もの見もの)
京(俺の引いたお題は『麻雀部員』、超イージー!俺を除いて5人のうちの誰か連れていけばクリア!)
京(部長はダメ!解説役だし目立ちすぎる!染谷先輩もダメ!ゴール前の判定員を任されてる!)
京(和を連れていくとおそらくタコス娘が邪魔をする!逆に優希を連れてくとおそらく後が面倒!
あと二人のクラスの応援位置はスタート地点後方でここから遠い!)
京(だったら和たちとは違うクラスの咲!場所もここから最短距離!)
京(どうよこの読みと判断!麻雀部での河読みと牌効率が活きてるぜ!)
咲「わっわっ、京ちゃんこっち来る!」
京「咲、一緒に来てくれ!」
咲「やっやだよ!恥ずかしいよ」
京「いいから!」
咲「ちょっちょっと京ちゃん!」
優希「京太郎のやつ、咲ちゃんの辺りへ突っ込んでいったじぇ」
和「『同じ中学の人』…とかだったのでしょうか…」
優希「お?のどちゃんこっちにも誰か来るじぇ」
京「おい咲!もっと走れって!」
咲「そんな京ちゃんいきなり…あっ京ちゃあぶな」
ごっつんこ!
副会長「あーっと前を見ていなかった須賀選手と猛追していた高久田選手、
動線が重なって衝突してしまいました。大丈夫でしょうか」
京「っつつ…!あってっめ高久田!和も!?」
高久田「っつう…わっわりわり須賀、わざとじゃねえって!」
咲「原村さん!?」
和「みっみやながさん…私も…連れてこられて…息が…」
京「くっそ行くぞ咲!」
久「!」
咲「うっうん!」
副会長「須賀選手なんとか持ち直して一着でゴーール、
しかしお題と連れてきた人物が合致しているかどうか判定を待たねばなりません」
副会長「合致しない場合は二着の高久田選手の判定に移ることとなります。
それでは判定員の方、お題の読み上げと判定を」
京「染谷先輩、お願いします!」
咲「はぁ…はぁ…もう走れない…」
まこ「わりゃ京太郎、なかなかやるがな。お題の方はえーっと…」
まこ「!?」
まこ「おい、これええんかあんたら…『好きな人』って」
京・咲「えええっ!?」
京「いっいや俺の引いたお題は…!」
咲「きょ京ちゃんなにこれこんなの私…」
久「はいはーい、ストップストップ」
京・咲「部長っ!?」
まこ「あんたなんしに…ああわかった。これあんたの悪戯心じゃな」
久「いまは学生議会長、だからフェアに取り扱わないとね。
確かにそのお題を含ませたのは私だけどそれ引いたの後ろの高久田君よ。
さっき二人が交錯したときにお題を取り違えちゃったのが見えたわ」
久「だから須賀君のお題は高久田君の持ってるこっち、これで読み上げて、まこ」
京「び…びっくりしたぁ」
咲「う…うん…」
お昼休憩
まこ「というのがさっきの借り物競走の顛末なわけじゃ」
優希「はえー」
和「でもどうして須賀君は宮永さんを?」
京「それはこれこれこういうわけで…」
優希「私の理由だけ納得いかんぞ京太郎!」
まこ「まぁ一番悲惨じゃったのは全校生徒の前で告白失敗したあの二着の子じゃな」
優希「のどちゃんもつれないじぇ」
和「そっそんなお話したこともないのにいきなり良いお返事なんてできませんよ…!
気持ちはうれしいですけど…」
久「………確証バイアスって知ってる?須賀君」
京「?なんすかそれ」
和「心理学用語の一つですね。自分の選択や仮説を裏付けるために有利な情報ばかりを集めて、反証を軽視してしまうというものです。
でもいまそれが何の関係が?」
久「須賀君の説明だと消去法で合理的に咲を選んだように聞こえるけど、
最初から咲のことが頭にあってなんやかんやの理由を付けて私たちを除外したんじゃない?」
京「それは…どっちが先かといわれると一瞬で考えたものですから…」
久「ヒトの感情って理屈じゃ推し量れない部分があるものね」
優希「感情って?」
久「愛だとか恋だとかって感情」
京・咲「!!!」
和「よくそんな恥ずかしいことが臆面もなく言えますね…」
優希「おお!?京太郎、お前そういう理由で咲ちゃんを引っ張り出したのか!?」
京「ばばば馬鹿言うなよ!おお俺は別にそんなつもりじゃ」
久「じゃーあ聞いちゃうけど、もし高久田君のあのお題を須賀君が引き当てたら…
須賀君はいったい誰を選んでたのかしらぁ?」
京「そっそれは…」
咲「あ…あの!」
咲「そ…その辺にしてあげてください部長。京ちゃん…困ってるじゃないですか…」
京「咲…」
久「…そうね。ごめんね咲。ちょっと調子乗り過ぎた」
咲「いえ…」
久「さて!そろそろお昼の部が始まるわね。まこ、和、優希、行きましょうか」
まこ「京太郎、咲に助け船出してもろうたんじゃ。男見せぇよ」
京「ええ~…」
咲「………」
京「………」
咲「…ぶ、部長の悪戯にも困るよね。今回のはちょっとさ」
京「…ああ」
咲「あっ、でも私がもたもた走ってたせいでもあるしごめんね京ちゃん」
京「いや…」
咲「…なんか変なかんじになっちゃうよね、こんなの…」
京「咲!」
咲「あっはい!」
京「…後夜祭のフォークダンス、一緒に踊ってくれないか」
咲「………うん!」
~カン~
最終更新:2019年03月11日 01:44